フォトレジストを用いる画像形成方法は、例えば、ブリント回路、ブリント配線基板、半導体積層部品等の製造の分野において、既に、よく知られている。フォトレジストを用いる画像形成は、原理的には、基板上にフォトレジスト層を形成し、所要のパターンを得ることができるように、そのパターンに対応するマスクを介して、上記フォトレジスト層に光照射し、露光させて、フォトレジスト膜を形成した後、そのフォトレジストの特性、即ち、現像液に対する溶解性に応じて、露光部又は非露光部を現像液にて取り除いて、それぞれポジ型又はネガ型の画像を得るものである。
従来よりよく知られている代表的なポジ型フォトレジストは、アルカリ水溶液に可溶性のノボラック樹脂と光照射によってカルボキシル基を分子中に生成するキノンジアジド化合物とからなり、このようなフォトレジストに光照射すれば、キノンジアジド化合物がカルボン酸誘導体に変化して、フォトレジスト膜中の露光部のアルカリへの溶解性を増大させるので、光照射後のフォトレジスト膜をアルカリで洗浄し、現像して、その露光部を除去すれば、ポジ型画像を得ることができる。
他方、ポリイミドを用いるネガ型フォトレジストも知られている。一般に、ポリイミドは有機溶媒に難溶性であるので、例えば、その前駆体であるポリアミド酸にアクリル酸エステルを配合してフォトレジストとしたものが知られている。
一般に、有機ポリマーを成分とするフォトレジストは、光照射によってポリマー自体の構造やその環境の変化をもたらす要素を有しており、そのような変化に対応して、ポリマーのアルカリ等に対する溶解性が変化することを利用して、露光後のフォトレジスト膜を現像し、所要のポジ型又はネガ型の画像を得るものである。このようなポリマー自体の分子構造の変化をもたらす原因は、一般に、光架橋、光重合、光崩壊又は光極性変化のいずれかである。
例えば、光照射によって、主鎖にランダムな切断が起こって、低分子量化するポリマーが知られており、例えば、カルボニル基を含むポリマーは、Norrish 反応のタイプ1及びタイプ2に分解する。この種のポリマーの主鎖の切断は、主鎖のカルボニル基の励起を経て起こるので、エネルギー源として、X線、電子線又は短波長紫外線の照射を必要とし、従って、感度は低いが、非常に高い解像度とすぐれたプロファイルを与えることが知られている(非特許文献1及び2参照)。
しかし、フォトレジストに用いるポリマー成分がどのようなものであれ、従来、フォトレジストに用いるポリマーは、その側鎖等に現像液中のアルカリと塩形成し得る官能基(例えば、カルボキシル基やフェノール性水酸基等)を有するか、又は酸や塩基と反応して、カルボキシル基やフェノール性水酸基を生成し得るような反応性基(保護基と結合したエステルやフェノール型エーテル等)を有することが必須であった(例えば、特許文献1〜3参照)。
従って、例えば、典型的なポリカーボネートを従来のような手法でフォトレジストとするには、このポリマーの側鎖にカルボキシル基、フェノール性水酸基又はこれらを適当な保護基で保護した基を導入しなければならないが、しかし、このような官能基をポリカーボネートの側鎖に導入することは容易ではない。かくして、従来、汎用の樹脂を用いては、フォトレジストを得ることができないという問題があった。
また、従来、フォトレジストに用いるポリマーは、上述したような官能基や反応性基を有することが必須であるとされているので、そのようなフォトレジストを用いて半導体や回路基板の絶縁膜を形成した場合、上記官能基や反応性基の故に、絶縁膜に吸湿性を与えるおそれがあり、また、絶縁膜の機械的特性、耐溶剤性、更には、電機的特性等に有害な影響を及ぼすおそれがあった。
そこで、このような問題を解決するために、最近になって、分子中にそのような特別な官能基や反応性基をもたないポリマーに光酸発生剤を配合してなるフォトレジストを用いて、ポジ型画像を得る所謂反応現像画像形成法が提案されている(特許文献4参照)。
例えば、ポリマー成分として、ポリイミドを用いる場合について説明すれば、反応現像画像形成法においては、ポリイミドと光酸発生剤、例えば、キノンジアジド化合物とを適宜の溶媒、例えば、N−メチル−2−ピロリドンに溶解させてなるフォトレジストが好ましく用いられる。基板上にこのようなフォトレジストを塗布し、乾燥させて、フォトレジスト層を形成した後、露光後、所要のパターンを形成するように、マスクを介して、このフォトレジスト層に光照射し、かくして、露光部のフォトレジスト層中の光酸発生剤に酸を発生させたフォトレジスト膜を形成する。この後、このフォトレジスト膜をアルカリを含む現像液で洗浄すると、上記光酸発生剤から生成した酸がアミンと反応して、塩を生成するので、露光部の極性が増大し、その結果として、この露光部のポリマーの主鎖を構成するイミド基のカルボニル基を現像液中のアミンが攻撃して、ポリマーの主鎖をこのカルボニル基の炭素原子において切断する。このようにして、ポリマーは低分子化されて、現像液への溶解性が増して、現像液に容易に溶解するので、フォトレジストは、その露光部が除去されて、ポジ型画像を与えるのである。
他方、近年になって、例えば、半導体や回路基板等の微細加工化に伴って、それに用いられる絶縁膜にも、フォトレジストが用いられている。このような場合には、絶縁膜は、実装時の240〜300℃程度の半田リフロー温度に耐える耐熱性が必要であり、しかも、この際、アウトガスを抑制することが必須である。
現在、このような半導体や回路基板等における絶縁膜としては、ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸に感光剤を配合してなる感光性ポリアミド酸がフォトレジスト成分として広く用いられている。このようなフォトレジストを用いる画像形成においては、得られた樹脂層を最終的に400℃程度の温度で熱処理して、ポリアミド酸の閉環、イミド化を完了させると共に、得られたポリイミド膜中の感光剤を分解除去して、ガラス転移温度300℃程度で低アウトガスの耐熱性ポリイミドからなるパターンを得ることができる。しかし、このように、従来の感光性ポリアミド酸を含むフォトレジストを用いて、基板上に絶縁膜を形成するときは、上記加熱、イミド化処理の後の冷却時の収縮応力によって、基板であるシリコンウエハーに反りが生じ、以降のプロセスや最終製品の信頼性に対して種々の問題が生じる。この問題は、特に、最近のシリコンウエハーの薄型化に伴って顕在化したものであるが、その他の低熱膨張率の基板にも共通する問題である。
更に、このような従来の感光性ポリアミド酸を用いて、絶縁膜を形成するときは、ポリアミド酸の有するアミド酸基やアミド酸エステル基のような官能基は、上記加熱による閉環、イミド化によって、得られるポリイミド膜に残存することはないが、しかし、上記閉環時の脱水や脱アルコールによって、得られる画像の収縮が避けられない。更に、上記加熱、イミド化の際に、一部のポリアミド酸基は閉環せずに分子間で反応して、架橋構造を形成するので、基板への収縮応力が非常に大きくなるという問題もあった。
エム・ハツァキ(M. Hatzaki)、ジャーナル・オブ・エレクトロケミカル・ソサイアティ(J. Electrochem. Soc.)、116(7)、1033(1969年)
山岡亜夫監修、「半導体集積回路用レジスト材料ハンドブック」第46頁、リアライズ社(1996年)
特開2001−66781号公報
特開2001−192573号公報
特開2001−249458公報
特開2003−76013公報
本発明によるフォトレジストは、主鎖中に含まれる炭素原子数2以上の脂肪族炭化水素基の割合が10重量%以上であると共に、ガラス転移温度(Tg)が50〜150℃の範囲にあるポリイミドと光酸発生剤とを含むものであり、このようなポリイミドは、従来、フォトレジストに用いられている全芳香族ポリイミドに比べて、Tgが100℃以上も低い。
本発明において、ポリイミドの主鎖中に含まれる脂肪族炭化水素基の割合とは、ポリイミドの主鎖中に含まれる脂肪族炭化水素基の重量のポリイミドの全重量に対する割合(重量%)をいう。また、本発明によれば、上記脂肪族炭化水素基は基中に酸素原子をエーテル結合の形態にて有していてもよく、この場合には、脂肪族炭化水素基の割合は、エーテル結合の形態にて含まれる酸素原子を除いた炭素原子と水素原子とから脂肪族炭化水素基の割合を求めるものとする。
このように、主鎖中に脂肪族炭化水素基を有するポリイミドは、テトラカルボン酸無水物成分とジアミン成分とを反応させてポリイミドを得る際に、例えば、テトラカルボン酸無水物成分として、ポリイミドの生成後にそのポリイミド主鎖中に含まれる脂肪族炭化水素基を分子中に有するものを用いるか、又はジアミン成分として、ポリイミドの生成後にそのポリイミド主鎖中に含まれる脂肪族炭化水素基を分子中に有するものを用いるか、又はポリイミドの生成後にそのポリイミド主鎖中に含まれる脂肪族炭化水素基をそれぞれ分子中に有するテトラカルボン酸無水物成分とジアミン成分とを用いればよい。通常、このように、ポリイミドの生成後にそのポリイミド主鎖中に含まれる脂肪族炭化水素基を分子中に有するテトラカルボン酸無水物及び/又はジアミンを従来よりポリイミドの製造に用いられているテトラカルボン酸無水物及び/又はジアミンと共重合させることによって、本発明において用いる上述したような主鎖中に脂肪族炭化水素基を有するポリイミドを得ることができる。
ポリイミドの生成後にそのポリイミド主鎖中に含まれる脂肪族炭化水素基を分子中に有するテトラカルボン酸無水物として、例えば、一般式(I)
(式中、nは2〜12の整数である。)
で表されるアルキレンビストリメリテートテトラカルボン酸無水物を挙げることができる。このようなアルキレンビストリメリテートテトラカルボン酸無水物の具体例として、例えば、エチレン−1,2−ビストリメリテートテトラカルボン酸無水物を挙げることができる。
他方、ポリイミドの生成後にそのポリイミド主鎖中に含まれる脂肪族炭化水素基を分子中に有するジアミンとしては、炭素原子数2以上のα,ω−ジアミノアルカンを挙げることができる。従って、このようなα,ω−ジアミノアルカンとして、例えば、1,8−ジアミノオクタン、1,12−ジアミノドデカン、4,9−ジオキサ−1,12−ジアミノドデカン等を挙げることができる。また、1,5−ビス(4−アミノフェノキシ)ペンタンも、本発明において、ポリイミドの生成後にそのポリイミド主鎖中に含まれる脂肪族炭化水素基を分子中に有するジアミンとして用いることができる。
特に、本発明によれば、ポリイミドは、その主鎖中に含まれる脂肪族炭化水素基の割合が10〜40重量%の範囲であるものが好ましく、10〜30重量%の範囲であるものが最も好ましい。このようなポリイミドは、ガラス転移温度は低いが、耐熱性(耐分解性)は高く、300℃における重量減少率は、通常、0.5%以下である。
本発明の方法において用いるフォトレジストは、上述したような主鎖中に脂肪族炭化水素基を有するポリイミドと共に光酸発生剤を含むものである。本発明において、光酸発生剤とは、紫外線の照射によって酸を発生する化合物である。このような光酸発生剤は、既によく知られている化合物であり、本発明においては、そのような光酸発生剤を適宜に用いることができる。従って、光酸発生剤の具体例として、例えば、キノンジアジド化合物、オニウム塩、スルホン酸エステル類、有機ハロゲン化合物等を挙げることができる。キノンジアジド化合物としては、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホン酸又は1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−4−スルホン酸と低分子芳香族ヒドロキノン化合物、例えば、1,3,5−トリヒドロキシベンゼン、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、クレゾール等とのエステルを挙げることができる。オニウム塩としては、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート等を挙げることができる。これらのなかでは、特に、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホン酸−p−クレゾールエステルが好ましく用いられる。
本発明によれば、このような光酸発生剤は、フォトレジストの全固形分の重量に基づいて、通常、5〜50重量%、好ましくは、10〜40重量%、最も好ましくは、20〜30重量%の範囲で用いられる。
本発明において用いるフォトレジストは、上述したようなポリイミドと光酸発生剤を有機溶媒に溶解することによって得ることができる。好ましい態様によれば、ポリイミドと光酸発生剤を有機溶媒に溶解させた後、0.1〜1μmの細孔を有する濾過膜を用いて濾過して調製される。
上記有機溶媒は、原則として、フォトレジストの不揮発成分、即ち、ポリイミドと光酸発生剤と、必要に応じて添加剤を用いた場合には、そのような添加剤を溶解すると共に、これらの成分と不可逆的に反応しない溶媒であれば、特に、限定されるものではないが、好ましい具体例として、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、ブチロラクトン、シクロヘキサノン、ジアセトキシエチレングリコール、スルホラン、テトラメチル尿素、N,N’−ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、ジグライム、フェノール、クレゾール、トルエン等の非プロトン性極性溶媒を挙げることができる。
本発明によれば、このようなフォトレジストは、必要に応じて、従来より知られている種々の添加剤を含んでいてもよい。そのような添加剤としては、例えば、カップリング剤、均添剤、可塑剤、膜形成性樹脂、界面活性剤、安定剤等を挙げることができる。
本発明によれば、このようにして、フォトレジスト層を基板上に形成した後、所要のマスクを介して、所要のポジ型の画像を残すように、フォトレジスト層に光照射を行う。ここに、光としては、紫外線が好ましく用いられるが、その他の高エネルギー放射線、例えば、X線や電子線も用いることができる。紫外線の照射は、好ましくは、250〜450nm、特に、300〜400nmの中心波長を発する紫外線ランプを用いて行われる。
このようにして、フォトレジスト層に光照射し、露光させて、フォトレジスト膜とした後、このフォトレジスト膜をアルカリを含む現像液で処理して、通常は、現像液に浸漬処理し、フォトレジスト膜の露光部を除いて、ポジ型レジスト画像を得る。本発明において、上記現像液は、アルカリを含む溶液であり、溶媒としては、水、有機溶媒又はこれらの混合物が用いられる。また、上記アルカリは、好ましくは、アミンであるが、このアミンは、アミノ酸を含む有機アミンでもよく、また、無機アミンでもよい。
有機アミンとしては、例えば、メチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、n−ブチルアミン、シクロヘキシルアミン、アニリン、ベンジルアミン等のアルキルアミン類、シクロアルキルアミン類、アリールアミン類、アリールアルキルアミン類や、エタノールアミン、ジエタノールアミン、プロパノールアミン、ジプロパノールアミン、N−メチルエタノールアミン等のアルカノールアミン類、更には、モルホリン、N−メチルモルホリン等のモルホリン類、エチレンジアミン等の(ポリ)アルキレン(ポリ)アミン類、グリシン、β−アラニン等のアミノ酸類を挙げることができる。また、無機アミンとしては、例えば、ヒドロキシルアミン、ヒドラジン、アンモニア等を挙げることができる。
これらのアミンは求核性である。従って、フォトレジスト層に光照射したとき、フォトレジスト層に含まれる光酸発生剤から酸が生じて、露光部の極性を増大させ、かくして、アミンが露光部のフォトレジスト層中のポリイミドのイミド基のカルボニル基に求核的に反応する。
現像液のための溶媒には、水や有機溶媒が用いられるが、特に、有機溶媒としては、ポリイミドと共に、光酸発生剤や種々の添加剤を溶解し得るものが用いられる。好ましい具体例としては、例えば、ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、ブチロラクトン、ジアセトキシエチレングリコール、シクロヘキサノン等を挙げることができる。
本発明に従って、フォトレジスト層に所要のパターンを与えるようにマスクを介して光照射すれば、前述したように、フォトレジスト層中の光酸発生剤は酸を発生するので、このような酸を含むフォトレジスト層をアルカリ、好ましくは、アミンを含む現像液で現像すると、アミンと上記酸との反応によって塩が生成して、露光部の極性が増大する。その結果、現像液中のアミンがこの露光部のポリイミドの主鎖を構成するイミド基のカルボニル基を攻撃し、これによって、このカルボニル基の炭素原子において、ポリイミドの主鎖が切断され、かくして、ポリイミドは低分子化されて、現像液への溶解性が増大する。即ち、本発明によれば、フォトレジスト膜の露光部が現像によって除去され、未露光部が基板上に残存し、かくして、ポジ型画像を与える。
ここに、本発明によれば、前述したように、ポリイミドが主鎖中に脂肪族炭化水素基を有しているので、分子間に現像液が容易に浸入して、光酸発生剤から生じた酸がアミンと塩を形成しやすくなると共に、アミンによる主鎖の切断がより容易となるので、フォトレジスト膜の短時間での現像が可能となるのである。
また、本発明によれば、ポリイミドと光酸発生剤を溶媒に溶解させて、フォトレジストを調製するが、多くのポリイミドは、本来、溶媒には不溶性であり、特に、イミド基の濃度が高いほど、不溶化しやすい。ここに、本発明によれば、主鎖中に脂肪族炭化水素基を有するポリイミドを用いるので、フォトレジストの調製も容易である。
現像の停止は、通常、非溶剤、例えば、イソプロパノール、脱イオン水、微酸性水溶液中への浸漬や、これら水溶液の噴霧によって行われる。
本発明の画像形成方法によれば、勿論、基板上に形成したフォトレジスト層の厚みにもよるが、通常、0.1〜500μm、好ましくは、1〜100μmの膜厚を有するホジ型画像を得ることができる。このようにして得られたポジ型画像は、必要に応じて、ポストベークを行う。ポストベーク温度は、用いたポリイミドにもよるが、通常、150〜350℃の範囲である。
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
以下の実施例においては、以下の方法でポリイミドからなるポジ型画像を形成した。即ち、フォトレジストを銅箔(ジャパンエナジー(株)製BHY−13B−T、厚み35μm)のシャイニング面上にスピンコート法で塗布した後、熱風乾燥機中、90℃で10分間加熱、乾燥した。このようにして得られたフォトレジスト層の厚さは、約15μmであった。このフォトレジスト層上にポジ型フォトレジストマスク用のパターン(10、20、30、…、200μmのラインアンドスペースパターン)を置き、250W超高圧水銀灯照射装置を用いて、画像が得られる露光量を照射した(紫外線照射量3000mJ/cm2)。この後、現像液中に上記照射後のフォトレジスト膜をその露光部が除去されるまで浸漬した後、脱イオン水で水洗し、乾燥させて、所要の画像を得た。この画像について、現像における残膜率と解像度を調べた。残膜率は下記式に従って求めた。
残膜率(%)=((現像後の未露光部の膜厚、μm)/(現像前の未露光部の膜厚、μm))x100
次に、窒素雰囲気下、ポリイミドからなる画像を300℃で1時間、熱処理した後、解像度を調べた。
別に、フォトレジストを上記と同じ銅箔のシャイニング面上にスピンコート法で塗布した後、熱風乾燥機中、90℃で10分間加熱、乾燥して、膜厚約15μmのフォトレジスト層を形成した後、この銅箔を過塩化鉄水溶液でエッチング除去して、フォトレジストフィルムを調製し、これを用いて室温(23℃)からガラス転移温度Tgまでの平均の線膨張率α1、ガラス転移温度Tg、300℃における重量減少率ΔG及び貯蔵弾性率E’を測定した。
これらの測定において、ガラス転移温度Tgと貯蔵弾性率E’は、粘弾性測定装置RS−II(レオメトリック・サイエンティフィック社製)を用いて測定し、線膨張率α1 は、熱膨張率測定装置TMA−8310(理学社製)を用いて測定した。また、300℃における重量減少率ΔG(%)は、熱重量変化測定装置TG−8120(理学社製)を用いて、300℃でのみかけの重量減少率ΔG300 (%)と150℃でのみかけの重量減少率ΔG150 (%)を求め、ΔG(%)=ΔG300 −ΔG150 から求めた。ΔG150 は水分による重量減少率である。
更に、低熱膨張率基板(線膨張率0〜5ppm)に与える収縮応力を次式に基づいて求めた。
積算収縮応力=(α1(ER+ETg)(Tg−23))/2
ここに、α1 は室温(23℃)からガラス転移温度Tgまでの平均の線膨張率(ppm/℃)であり、ERは室温(23℃)における貯蔵弾性率(Pa)であり、ETgはガラス転移温度Tgにおける貯蔵弾性率(Pa)である。
実施例1
500mL容量のフラスコ内でトルエン175gとN−メチル−2−ピロリドン(NMP)262.38gを混合し、これに2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン(BAPP)25.01g(0.061モル)と4,9−ジオキサ−1,12−ジアミノドデカン(DOD)12.45gを溶解させた。更に、これにエチレン−1,2−ビストリメリテートテトラカルボン酸無水物(TMEG)50.00g(0.122モル)を徐々に加えて反応させた。ディーンスタークを用いてトルエンを除去しながら、温度を高めて、130〜180℃で水の留出がなくなるまで共沸脱水させて、ポリイミドワニスを得た。
室温まで冷却した後、このポリイミドワニスにジアゾナフトキノン系感光剤PC−5(東洋合成(株)製1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホン酸p−クレゾールエステル)26.24gとNMP87gを加え、攪拌、溶解させて、フォトレジストを調製した。
このフォトレジストを厚み35μmの電解銅箔のシャイン面上にスピンコート法で塗布し、熱風循環式乾燥機中、90℃で10分間加熱、乾燥させて、膜厚15μmのフォトレジスト層を得た。250W超高圧水銀灯を用いて、このフォトレジスト層に石英製のフォトマスクを介して、i線からg線帯域の紫外線を照射した。i線帯域用の照度計で測定した露光量は3000mJ/cm2 であった。このようにフォトレジスト層を露光させた後、エタノールアミン400g、NMP100g及びイオン交換水100gからなる現像液を用いて、超音波処理下、45℃で露光部が完全に除去されるまで、現像を行った後、イオン交換水で1分間リンスして、ポジ型の画像を得た。
この現像時の残膜率を測定した後、更に、前述したようにして、解像度を調べ、別に、前述したようにして、線膨張率α1、ガラス転移温度Tg、300℃における重量減少率ΔG及び貯蔵弾性率E’を測定した。結果を表1に示す。併せて、この実施例において調製した上記ポリイミドにおける主鎖中の脂肪族炭化水素基の割合を表1に示す。
実施例2
500mL容量のフラスコ内でトルエン157gとNMP236gを混合し、これにDOD28.52g(0.140モル)を溶解させた。更に、これに3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸無水物(DSDA)50.00g(0.140モル)を徐々に加えて反応させた。ディーンスタークを用いてトルエンを除去しながら、温度を高めて、130〜180℃で水の留出がなくなるまで共沸脱水させて、ポリイミドワニスを得た。
室温まで冷却した後、このポリイミドワニスに実施例1で用いたのと同じジアゾナフトキノン系感光剤23.56gとNMP78.62gを加え、攪拌、溶解させて、フォトレジストを調製した。
このフォトレジストを厚み35μmの電解銅箔のシャイン面上にスピンコート法で塗布し、熱風循環式乾燥機中、90℃で10分間加熱、乾燥させて、膜厚15μmのフォトレジスト層を得た。250W超高圧水銀灯を用いて、このフォトレジスト層に石英製のフォトマスクを介して、i線からg線帯域の紫外線を照射した。i線帯域用の照度計で測定した露光量は3000mJ/cm2 であった。このようにフォトレジスト層を露光させた後、エタノールアミン200gとイオン交換水100gからなる現像液を用いて、超音波処理下、45℃で露光部が完全に除去されるまで、現像を行った後、イオン交換水で1分間リンスして、ポジ型の画像を得た。
この現像時の残膜率を測定した後、更に、前述したようにして、解像度を調べ、別に、前述したようにして、線膨張率α1、ガラス転移温度Tg、300℃における重量減少率ΔG及び貯蔵弾性率E’を測定した。結果を表1に示す。併せて、この実施例において調製した上記ポリイミドにおける主鎖中の脂肪族炭化水素基の割合を表1に示す。
実施例3
500mL容量のフラスコ内でトルエン140gとNMP209gを混合し、これにBAPP20.01g(0.0485モル)とDOD9.77g(0.0485モル)を溶解させた。更に、これにTMEG40.00g(0.097モル)を徐々に加えて反応させた。ディーンスタークを用いてトルエンを除去しながら、温度を高めて、130〜180℃で水の留出がなくなるまで共沸脱水させて、ポリイミドワニスを得た。
室温まで冷却した後、このポリイミドワニスに実施例1で用いたのと同じジアゾナフトキノン系感光剤20.93gとNMP70gを加え、攪拌、溶解させて、フォトレジストを調製した。
このフォトレジストを厚み35μmの電解銅箔のシャイン面上にスピンコート法で塗布し、熱風循環式乾燥機中、90℃で10分間加熱、乾燥させて、膜厚15μmのフォトレジスト層を得た。250W超高圧水銀灯を用いて、このフォトレジスト層に石英製のフォトマスクを介して、i線からg線帯域の紫外線を照射した。i線帯域用の照度計で測定した露光量は3000mJ/cm2 であった。このようにフォトレジスト層を露光させた後、エタノールアミン400gとNMP100gとイオン交換水100gからなる現像液を用いて、超音波処理下、45℃で露光部が完全に除去されるまで、現像を行った後、イオン交換水で1分間リンスして、ポジ型の画像を得た。
この現像時の残膜率を測定した後、更に、前述したようにして、解像度を調べ、別に、前述したようにして、線膨張率α1、ガラス転移温度Tg、300℃における重量減少率ΔG及び貯蔵弾性率E’を測定した。結果を表1に示す。併せて、この実施例において調製した上記ポリイミドにおける主鎖中の脂肪族炭化水素基の割合を表1に示す。
実施例4
500mL容量のフラスコ内でトルエン159gとNMP239gを混合し、これにBAPP26.47g(0.0645モル)とDOD13.17g(0.0645モル)を溶解させた。更に、これに4,4’−オキシフタル酸無水物(ODPA)40.00g(0.129モル)を徐々に加えて反応させた。ディーンスタークを用いてトルエンを除去しながら、温度を高めて、130〜180℃で水の留出がなくなるまで共沸脱水させて、ポリイミドワニスを得た。
室温まで冷却した後、このポリイミドワニスに実施例1で用いたのと同じジアゾナフトキノン系感光剤23.99gとNMP80gを加え、攪拌、溶解させて、フォトレジストを調製した。
このフォトレジストを厚み35μmの電解銅箔のシャイン面上にスピンコート法で塗布し、熱風循環式乾燥機中、90℃で10分間加熱、乾燥させて、膜厚15μmのフォトレジスト層を得た。250W超高圧水銀灯を用いて、このフォトレジスト層に石英製のフォトマスクを介して、i線からg線帯域の紫外線を照射した。i線帯域用の照度計で測定した露光量は3000mJ/cm2 であった。このようにフォトレジスト層を露光させた後、エタノールアミン400gとNMP100gとイオン交換水100gからなる現像液を用いて、超音波処理下、45℃で露光部が完全に除去されるまで、現像を行った後、イオン交換水で1分間リンスして、ポジ型の画像を得た。
この現像時の残膜率を測定した後、更に、前述したようにして、解像度を調べ、別に、前述したようにして、線膨張率α1、ガラス転移温度Tg、300℃における重量減少率ΔG及び貯蔵弾性率E’を測定した。結果を表1に示す。併せて、この実施例において調製した上記ポリイミドにおける主鎖中の脂肪族炭化水素基の割合を表1に示す。
実施例5
500mL容量のフラスコ内でトルエン144gとNMP217gを混合し、これに1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン(APB)18.85g(0.0645モル)とDOD13.37g(0.0645モル)を溶解させた。更に、これにODPA40.00g(0.129モル)を徐々に加えて反応させた。ディーンスタークを用いてトルエンを除去しながら、温度を高めて、130〜180℃で水の留出がなくなるまで共沸脱水させて、ポリイミドワニスを得た。
室温まで冷却した後、このポリイミドワニスに実施例1で用いたのと同じジアゾナフトキノン系感光剤22gとNMP72gを加え、攪拌、溶解させて、フォトレジストを調製した。
このフォトレジストを厚み35μmの電解銅箔のシャイン面上にスピンコート法で塗布し、熱風循環式乾燥機中、90℃で10分間加熱、乾燥させて、膜厚15μmのフォトレジスト層を得た。250W超高圧水銀灯を用いて、このフォトレジスト層に石英製のフォトマスクを介して、i線からg線帯域の紫外線を照射した。i線帯域用の照度計で測定した露光量は3000mJ/cm2 であった。このようにフォトレジスト層を露光させた後、エタノールアミン200gとイオン交換水100gからなる現像液を用いて、超音波処理下、45℃で露光部が完全に除去されるまで、現像を行った後、イオン交換水で1分間リンスして、ポジ型の画像を得た。
この現像時の残膜率を測定した後、更に、前述したようにして、解像度を調べ、別に、前述したようにして、線膨張率α1、ガラス転移温度Tg、300℃における重量減少率ΔG及び貯蔵弾性率E’を測定した。結果を表1に示す。併せて、この実施例において調製した上記ポリイミドにおける主鎖中の脂肪族炭化水素基の割合を表1に示す。
比較例1
500mL容量のフラスコ内でキシレン160gとNMP240gを混合し、これにBAPP42.72g(0.104モル)を溶解させた。更に、これにDSDA37.28g(0.104モル)を徐々に加えて反応させた。130〜180℃で水の留出がなくなるまで共沸脱水させて、ポリイミドワニスを得た。
室温まで冷却した後、このポリイミドワニスに実施例1で用いたのと同じジアゾナフトキノン系感光剤24.0gとNMP80gを加え、攪拌、溶解させて、フォトレジストを調製した。
このフォトレジストを厚み35μmの電解銅箔のシャイン面上にスピンコート法で塗布し、熱風循環式乾燥機中、90℃で10分間加熱、乾燥させて、膜厚15μmのフォトレジスト層を得た。250W超高圧水銀灯を用いて、このフォトレジスト層に石英製のフォトマスクを介して、i線からg線帯域の紫外線を照射した。i線帯域用の照度計で測定した露光量は3000mJ/cm2 であった。このようにフォトレジスト層を露光させた後、エタノールアミン400gとNMP100gとイオン交換水100gからなる現像液を用いて、超音波処理下、45℃で露光部が完全に除去されるまで、現像を行った後、イオン交換水で1分間リンスして、ポジ型の画像を得た。
この現像時の残膜率を測定した後、更に、前述したようにして、解像度を調べ、別に、前述したようにして、線膨張率α1、ガラス転移温度Tg、300℃における重量減少率ΔG及び貯蔵弾性率E’を測定した。結果を表1に示す。併せて、この比較例において調製した上記ポリイミドにおける主鎖中の脂肪族炭化水素基の割合を表1に示す。
比較例2
500mL容量のフラスコ内でNMP163gに4,4’−ジアミノジフェニルエーテル13.77g(0.051モル)を溶解させた。更に、これにピロメリット酸無水物15.00g(0.051モル)を徐々に加えて反応させて、ポリアミド酸ワニスを得た。
室温まで冷却した後、このポリアミド酸ワニスに実施例1で用いたのと同じジアゾナフトキノン系感光剤23.3gを加え、攪拌、溶解させて、フォトレジストを調製した。
このフォトレジストを厚み35μmの電解銅箔のシャイン面上にスピンコート法で塗布し、熱風循環式乾燥機中、90℃で10分間加熱、乾燥させて、膜厚15μmのフォトレジスト層を得た。このフォトレジストにおけるポリアミド酸は、ポリイミド「カプトン」の前駆体である。
上記フォトレジスト層を現像し、得られたパターンを窒素ガス中、300℃で1時間、熱処理した後、銅箔をエッチングにて除去してフィルムを得た。このフィルムについて、線膨張率α1、ガラス転移温度Tg、300℃における重量減少率ΔG及び貯蔵弾性率E’を測定した。結果を表1に示す。併せて、この比較例において調製した上記ポリイミドにおける主鎖中の脂肪族炭化水素基の割合を表1に示す。
比較例3
次式(1)
で表される繰返し単位からなるポリエーテルイミド(GE社製ウルテム)24.00gと実施例1で用いたのと同じジアゾナフトキノン系感光剤7.2gをNMP76gに溶解させて、フォトレジストを調製した。このフォトレジストを厚み35μmの電解銅箔のシャイン面と粗化面上にスピンコート法で塗布し、熱風循環式乾燥機中、90℃で10分間加熱乾燥させて、膜厚15μmのフォトレジスト層を得た。
250W超高圧水銀灯を用いて、このフォトレジスト層に石英製のフォトマスクを介して、i線からg線帯域の紫外線を照射した。i線帯域用の照度計で測定した露光量は3000mJ/cm2 であった。このようにフォトレジスト層を露光させた後、エタノールアミン400gとNMP100gとイオン交換水100gからなる現像液を用いて、超音波処理下、45℃で露光部が完全に除去されるまで、現像を行った後、イオン交換水で1分間リンスしたところ、粗化面上にてポジ型のパターンを得た。しかし、シャイン面上では現像中にに未露光部が基板から剥離して、良好なパタンを得ることができなかった。
そこで、粗化面上における現像時の残膜率を測定した後、更に、前述したようにして、解像度を調べた。また、別に、前述したようにして、未露光フィルムを調製し、これについて線膨張率α1、ガラス転移温度Tg、300℃における重量減少率ΔG及び貯蔵弾性率E’を測定した。結果を表1に示す。併せて、上記ポリエーテルポリイミドにおける主鎖中の脂肪族炭化水素基の割合を表1に示す。