JP2005067904A - 被覆粒状肥料及び被覆粒状肥料の製造方法 - Google Patents
被覆粒状肥料及び被覆粒状肥料の製造方法 Download PDFInfo
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Abstract
【解決手段】粒状肥料が、ワックス層及びポリウレタン樹脂層により被覆され、かつ、少なくとも1つのポリウレタン樹脂層はワックス層の外側に形成された被覆粒状肥料であって、表面に硬化油とラウリル硫酸ナトリウムとが、該被覆粒状肥料に対して硬化油とラウリル硫酸ナトリウムとの合計量で0.01〜0.2重量%保持されてなる被覆粒状肥料。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、被覆粒状肥料の粒子同士がブロッキングし難い、ワックス層及びポリウレタン樹脂層で被覆されてなる被覆粒状肥料に関する。
【0002】
【従来の技術】
緩効性の肥料としてワックスで被覆した粒状肥料に更にポリウレタン樹脂被覆層を形成させた被覆粒状肥料が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開昭52−38361号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、ワックスで被覆した粒状肥料に更にポリウレタン樹脂被覆層を形成させた被覆粒状肥料は、保存中に被覆粒状肥料の集合体に圧力が加えられる(袋詰めされた被覆粒状肥料を積み上げて保管される等)ことで被覆粒状肥料の粒子同士が相互に固着することがあった。
本発明は、ワックスで被覆した粒状肥料に更にポリウレタン樹脂被覆層を形成させた被覆粒状肥料であって、粒子同士が固着し難い被覆粒状肥料を提供することを課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者は上記課題を解決するために種々検討した結果、ワックスで被覆した粒状肥料に更にポリウレタン樹脂被覆層を形成させた被覆粒状肥料の表面に、少量の硬化油とラウリル硫酸ナトリウムとを保持させることにより、被覆粒状肥料の粒子同士が固着し難いことを見出し、本発明を完成した。
【0006】
即ち、本発明は以下のものである。
(1)粒状肥料が、ワックス層及びポリウレタン樹脂層により被覆され、かつ、少なくとも1つのポリウレタン樹脂層はワックス層の外側に形成された被覆粒状肥料であって、表面に硬化油とラウリル硫酸ナトリウムとが、該被覆粒状肥料に対して硬化油とラウリル硫酸ナトリウムとの合計量で0.01〜0.2重量%保持されてなる被覆粒状肥料。
(2)ワックス層が、マイクロクリスタリンワックスで形成された層であることを特徴とする(1)記載の被覆粒状肥料。
(3)硬化油が硬化ナタネ油、硬化大豆油、又は硬化綿実油である(1)記載の被覆粒状肥料。
(4)粒状肥料が、粒状尿素である(1)記載の被覆粒状肥料。
(5)硬化油とラウリル硫酸ナトリウムとが、重量比で1:9〜9:1の割合である(1)記載の被覆粒状肥料。
(6)ワックス層及びポリウレタン樹脂層により被覆され、かつ、少なくとも1つのポリウレタン樹脂層はワックス層の外側に形成された被覆粒状肥料に、63〜85℃で、硬化油とラウリル硫酸ナトリウムとを合計量で該被覆粒状肥料に対して0.01〜0.2重量%の量を加え、該被覆粒状肥料表面に均一に保持させることを特徴とする被覆粒状肥料の製造方法。
(7)(6)記載の製造方法で製造される被覆粒状肥料。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明の被覆粒状肥料に使用され得る粒状肥料は、肥料成分を含有する粒状物である。肥料成分は、水稲などの植物栽培において養分を与えるために土壌に施される窒素、リン、カリウム、珪素、マグネシウム、カルシウム、マンガン、ホウ素、鉄等の種々の元素を含有する成分であり、具体例としては、尿素、硝酸アンモニウム、硝酸苦土アンモニウム、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、硝酸ソーダ、硝酸カルシウム、硝酸カリウム、石灰窒素、ホルムアルデヒド加工尿素肥料(UF)、アセトアルデヒド加工尿素肥料(CDU)、イソブチルアルデヒド加工尿素肥料(IBDU)、グアニール尿素(GU)等の窒素質肥料;過リン酸石灰、重過リン酸石灰、熔成リン肥、腐植酸リン肥、焼成リン肥、重焼リン、苦土過リン酸、ポリリン酸アンモニウム、メタリン酸カリウム、メタリン酸カルシウム、苦土リン酸、硫リン安、リン硝安カリウム、塩リン安等のリン酸質肥料;塩化カリウム、硫酸カリウム、硫酸カリソーダ、硫酸カリ苦土、重炭酸カリウム、リン酸カリウム等のカリウム質肥料;珪酸カルシウム等の珪酸質肥料;硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム等のマグネシウム質肥料;生石灰、消石灰、炭酸カルシウム等のカルシウム質肥料;硫酸マンガン、硫酸苦土マンガン、鉱さいマンガン等のマンガン質肥料;ホウ酸、ホウ酸塩等のホウ素質肥料;鉄鋼スラグ等の含鉄肥料等の肥料取締法に定められる普通肥料(複合肥料を含む)を挙げることができる。
【0008】
粒状肥料の粒径(円形相当径)は、製造上の観点から通常1〜5mmの範囲である。
【0009】
本発明に用いられる硬化油とは、不飽和脂肪酸成分を含む油脂に水素を添加して不飽和結合を飽和させて得られる油脂をいい、具体的には例えば、硬化ナタネ油、硬化大豆油、及び硬化綿実油が挙げられる。本発明に用いられる硬化油としては、不飽和結合がほぼ完全に飽和した状態の極度硬化油であることが好ましい。かかる極度硬化油は、通常C14−C24飽和脂肪酸のトリグリセリドである。飽和脂肪酸のトリグリセリドは、1分子のグリセリンに同一又は相異なるC14−C24飽和脂肪酸3分子が脱水縮合して得られるエステル化合物であり、この場合のC14−C24飽和脂肪酸としては、例えばパルミチン酸、ステアリン酸、及びべヘン酸が挙げられる。
【0010】
ラウリル硫酸ナトリウムは、通常、25℃において粉末状のものが用いられる。
【0011】
本発明において、被覆粒状肥料表面に保持される硬化油とラウリル硫酸ナトリウムとの量は、硬化油とラウリル硫酸ナトリウムとの合計量で、本発明の被覆粒状肥料全量に対して0.01〜0.2重量%である。
【0012】
本発明において、被覆粒状肥料表面に保持される硬化油とラウリル硫酸ナトリウムとの割合は、硬化油とラウリル硫酸ナトリウムとが、重量比で1:9〜9:1の割合である。
【0013】
本発明に用いられる硬化油としては、例えば硬化油は、通常、25℃において固体のものが用いられ、好ましくは粉末状の形態のものが用いられる。
粉末状の硬化油粒子の粒径は通常、3μm〜200μmであり、5〜150μmのものが好ましく使用される。また、使用するラウリル硫酸ナトリウムの粒径は通常、30〜500μmであり、100〜300μのものが好ましく使用される。尚、通常の製造においては、被覆粒状肥料表面に保持される硬化油とラウリル硫酸ナトリウムとの粒径は、使用した硬化油とラウリル硫酸ナトリウムとの粒径がほぼそのまま維持される。
【0014】
本発明の被覆粒状肥料に使用されるワックスとしては、例えば密ロウ等の動物ロウ、カルバナロウ等の植物ロウ、モンタンワックス等の鉱物ワックス、マイクロクリスタリンワックス、セミクリスタリンワックス、パラフィンワックス等の石油ワックス、ポリエチレンワックス等の重合体ワックス、エチレン、プロピレン、アクリル酸等のモノマーの少なくとも2種を重合させて得られる共重合体ワックス、及びフィッシャー・トロプシュワックス等の合成ワックスが挙げられる。
かかるワックスは常温で固体、半固体のいずれでも良いが、本発明の被覆粒状肥料の製造において必要となる加熱温度の点からは軟化点または融点が120℃以下のものが好ましく、肥料の種類によって異なるが、その肥料成分の分解または変質しやすい温度以下の軟化点または融点のワックスを使用し、ワックス被覆することが好ましい。
本発明の被覆粒状肥料においてワックスの量は原料に用いられる粒状肥料に対し、通常0.01〜3重量%、好ましくは0.2〜1重量%である。
【0015】
本発明の被覆粒状肥料に使用されるウレタン樹脂は、ポリイソシアネ−ト化合物とポリオ−ル化合物との反応により3次元架橋することによって生成する熱硬化性樹脂である。また、ポリイソシアネート化合物を2種類以上及び/又はポリオール化合物を2種類以上混合して用いても良い。
【0016】
ポリイソシアネート化合物としては、例えばトルエンジイソシアネート(以下、TDIと略称することがある)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDIと略称することがある)、ナフタレンジイソシアネート、トリジンイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等を挙げることことができ、必要に応じてこれらの混合物を用いることができる。なかでも、MDI、TDIまたはこれらから誘導されるオリゴマー体(ポリメリックMDI、ポリメリックTDI等)が好適に用いられる。
【0017】
ポリオール化合物としては、例えばアミノアルコール、アミン等を開始剤として用い、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン等の脂肪族アルコールとエチレンオキサイドやプロピレンオキサイドとを重付加して得られるポリエーテルポリオール、テトラヒドロフランを重合して得られるポリテトラメチレンエーテルグルコールなどのポリエーテル型ポリオール、イサノ油やひまし油等の水酸基を保有する天然油脂や多価アルコールとポリエーテルポリオールとカルボン酸化合物を反応させる等の方法で得られるポリエステル型ポリオール等が挙げられる。
【0018】
使用するポリイソシアネート化合物に由来するNCO基とポリオール化合物に由来するOH基の当量比、いわゆるNCO/OHは、通常0.9〜1.2の間で調整される。
【0019】
本発明において、ウレタン樹脂原料である未硬化ウレタン樹脂とは、該ポリイソシアネート化合物と該ポリオール化合物の混合物であり、両者が全く反応していないもののみならず、3次元化しない程度に予め一部が反応したものをも意味する。未硬化ウレタン樹脂の形態としては溶媒を実質的に含まない無溶剤型、溶媒にポリオール化合物とポリイソシアネート化合物が溶解した溶液型等何れでも良いが、特に無溶剤型で、かつ加工温度において液状であるものが好適である。
【0020】
未硬化ウレタン樹脂の硬化促進の目的で、触媒を未硬化ウレタン樹脂に添加し、該触媒共存下に硬化を行うことも有用な技術である。該触媒として具体的には、トリエチレンジアミン、N−メチルモルフォリン、N,N−ジメチルモルフォリン、ジアザビシクロウンデセン、イミダゾール、エチルメチルイミダゾール、ジアザビシクロオクタン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノ−ル等のアミン系触媒;尿素等のアンモニア誘導体;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ性化合物;ジブチルスズラウレート、ジブチルスズマレート等の有機スズ化合物が挙げられる。中でもアミン系触媒が好適に用いられる。該触媒はそのまま、あるいは水溶液または水懸濁液として使用に供される。固体触媒については粉砕微粉体化したものを使用するのが好ましい。
【0021】
触媒を使用する場合の触媒の量は、未硬化ウレタン樹脂のゲルタイム(JISK 5909に準じて測定)が5分以内、さらに好ましくは3分以内となるように調整することが好ましく、ポリイソシアネート化合物とポリオール化合物の総重量に対し、通常0.05〜5重量%程度である。
本発明の被覆粒状肥料におけるウレタン層に存在するウレタン樹脂の量は、原料の粒状肥料に対して通常6〜16重量%程度である。
【0022】
また、ウレタン樹脂層中には、本発明の被覆粒状肥料の性能において許容される範囲で、必要に応じて酸化チタン、ベンガラ等の着色のための顔料や染料;タルク、カオリン、シリカ、カ−ボンブラック、樹脂粉末、クレー等の充填剤としての無機/有機粉粒体;界面活性剤等を含有していてもよい。
【0023】
本発明の被覆粒状肥料においては、粒状肥料がワックス層及びウレタン樹脂層により被覆され、かつ、少なくとも1つのポリウレタン樹脂層はワックス層の外側に形成されている。
【0024】
例えば、粒状肥料表面がワックス層で被覆され、その外側がウレタン樹脂層で被覆された粒状肥料/ワックス層/ウレタン樹脂層構造や、粒状肥料表面がウレタン樹脂層で被覆され、その外側がワックス層で被覆され、さらにウレタン樹脂層で被覆された粒状肥料/ウレタン樹脂/ワックス層/ウレタン樹脂層構造、粒状肥料表面がワックス層で被覆され、その外側がウレタン樹脂層、ワックス層及びウレタン樹脂層の順に内側から被覆された粒状肥料/ワックス層/ウレタン樹脂層/ワックス層/ウレタン樹脂層構造が挙げられ、いずれも少なくとも1つのウレタン樹脂層はワックス層の外側に形成されている。
【0025】
本発明の被覆粒状肥料は、かかる粒状肥料がワックス層及びポリウレタン樹脂層により被覆され、かつ、少なくとも1つのポリウレタン樹脂層はワックス層の外側に形成された被覆粒状肥料の表面に、該被覆粒状肥料に対して硬化油とラウリル硫酸ナトリウムとの合計量で0.01〜0.2重量%保持されている。
【0026】
本発明の被覆粒状肥料における、粒状肥料がワックス層及びウレタン樹脂層により被覆され、かつ、少なくとも1つのポリウレタン樹脂層はワックス層の外側に形成されている被覆粒状肥料は、前記した如くワックス層およびウレタン樹脂層により多層被覆されてなるが、通常各被覆層は内側から順に被覆されるため、層間の部分的物質交換、つまり隣接する層からの物質の混入(例えばワックス層中にウレタン樹脂またはその原料が混入したり、ウレタン樹脂層中にワックスが混入する状況)が起こる場合があるので、本発明において「ワックス層」あるいは「ウレタン樹脂層」は、該ワックスあるいはウレタン樹脂のみを含有する層を指すのみならず、各々「ワックスを主として含有し、ウレタン樹脂またはその原料を少量含有する層」、「ウレタン樹脂を主として含有し、ワックスを少量含有する層」をも含むものである。
【0027】
本被覆肥料は、例えば下記の(1)〜(4)に記載の工程からなる本方法により製造することができる。
(1)i)転動状態の粒状肥料に、層厚が1〜10μmになる量の液状の未硬化ウレタン樹脂を添加後、転動状態を維持しつつ粒状肥料表面を該未硬化ウレタン樹脂で被覆し、次いで該未硬化ウレタン樹脂を熱硬化させてウレタン樹脂被覆物を得るか、
ii)a)転動状態の粒状肥料に、ワックスを均一被覆可能な軟化または溶融温度以上の温度条件下、ワックスを添加し、均一分散、被覆状態となるまで転動状態及び該温度条件を維持し、該粒状肥料表面を該ワックスで被覆し、b))転動状態の該ワックス被覆粒状肥料に層厚が1〜10μmになる量の液状の未硬化ウレタン樹脂を添加後、転動状態を維持しつつワックス被覆粒状肥料表面を該未硬化ウレタン樹脂で被覆し、次いで該未硬化ウレタン樹脂を熱硬化させてウレタン樹脂被覆物を得る工程、
(2)粒状肥料またはワックス被覆粒状肥料に代えてウレタン樹脂被覆物を用いて(1)i)の工程または(1)ii)b)の工程をウレタン樹脂の被覆欠陥が無くなるまで1回またはそれ以上繰り返す工程。
(3)必要により(2)の工程の少なくとも1回を下記a)及びb)からなる工程に置き換える工程。
a)転動状態のウレタン樹脂被覆物に、ワックスを均一被覆可能な軟化または溶融温度以上の温度条件下で添加し、均一分散、被覆状態となるまで転動状態及び該温度条件を維持し、該ウレタン樹脂被覆物表面をワックスで被覆し、b))転動状態の該ワックス被覆物に層厚が1〜10μmになる量の液状の未硬化ウレタン樹脂を添加後、転動状態を維持しつつ該ワックス被覆物表面を該未硬化ウレタン樹脂で被覆し、次いで該未硬化ウレタン樹脂を熱硬化させてウレタン樹脂被覆物を得る工程。
及び(4)(1)〜(3)の工程終了後、得られるウレタン被覆物に、ワックスの軟化または溶融温度以上の温度条件下、所定量の硬化油とラウリル硫酸ナトリウムとを保持させる工程。
ただし(1)〜(3)の工程において、(1)ii)の工程及び(3)の工程のいずれかを少なくとも1回は行うことが必要である。
【0028】
(1)ii)a)の工程におけるワックス被覆の具体的方法としては、例えば所定量のワックスを均一被覆可能な軟化または溶融温度以上の温度条件下、転動状態にある粒状肥料に、ワックスを添加・混合し、所定時間転動状態及び該温度条件を維持して均一分散、被覆状態となるまで被覆する方法;及びワックスの軟化又は溶融温度以上の温度条件下、転動状態にある粒状肥料に、溶融したワックスをスプレー−ノズル等を使用して噴霧し、所定時間転動状態及び該温度条件を維持して均一分散、被覆状態となるまで被覆する方法等を挙げることができる。
【0029】
(1)ii)b)の工程におけるウレタン樹脂被覆の具体的方法としては、転動状態にあるワックス被覆粒状肥料に、ウレタン樹脂層の層厚が1〜10μとなる量、好ましくは2〜6μmとなる量の液状の未硬化ウレタン樹脂を添加・混合し、所定時間転動状態を維持して該未硬化ウレタン樹脂で該ワックス被覆粒状肥料表面を被覆し、熱硬化させる方法を挙げることができる。
【0030】
(1)i)の工程におけるウレタン樹脂被覆の具体的方法としては、前記(1)ii)b)の工程で記載した方法におけるワックス被覆粒状肥料に代えて粒状被覆肥料を使用することによる同様の方法を挙げることができる。
(2)の工程におけるウレタン樹脂被覆の具体的方法としては、(1)i)の工程または(1)ii)b)の工程で記載した方法における粒状肥料またはワックス被覆粒状肥料に代えて(1)i)の工程または(1)ii)b)の工程で得られるウレタン樹脂被覆物を用いた同様の方法を挙げることができる。また、(2)の工程で得られるウレタン樹脂被覆物を用いてさらに1回またはそれ以上ウレタン樹脂被覆を繰り返し、ウレタン樹脂被覆における被覆欠陥を防止することが好ましい。ウレタン樹脂被覆においては、未硬化ウレタン樹脂の添加、被覆及び熱硬化の一連の工程を1回で行うこともできるが、未硬化ウレタン樹脂の添加を分割し、1回の添加量を膜厚として1〜10μm程度、好ましくは2〜6μm程度となる量とし、前記添加、被覆及び熱硬化の一連の工程を複数回に分けて所望の層厚とする方法が、均一な層形成のためにも好ましいので、(2)の工程を複数回行うことが、粒状肥料同士の塊状物の発生防止や、被膜の剥がれ防止等の点で特に工業的製造においては有利である。
【0031】
(3)a)の工程におけるワックス被覆の具体的方法としては、前記(1)ii)a)の工程で記載した方法における粒状肥料をウレタン樹脂被覆物を用いた同様の方法を挙げることができ、(3)b)の工程におけるウレタン樹脂被覆の具体的方法としては、(3)a)の工程で得られるワックス被覆物を用いて(1)ii)b)の工程で記載した方法と同様に行う方法を挙げることができる。
【0032】
(1)〜(3)の工程における温度は、それぞれの工程で変化させることもできるが、通常はワックスの軟化または溶融温度以上の温度で、かつ、未硬化樹脂のゲルタイム(JIS K 5909に準じて測定)が5分以内、さらに好ましくは3分以内となるような温度に設定して、各工程を通して一定とすることが工業的には好ましく、具体的には例えば、ワックスが融点70℃のマクロクリスタリンワックスの場合は、通常70〜85℃、好ましくは70〜80℃であり、融点63℃のエチレン酢酸ビニルコポリマーを配合したパラフィンワックスの場合は、通常63〜78℃、好ましくは63〜73℃である。
【0033】
そして前記(1)〜(3)の工程により最終的に得られるウレタン樹脂被覆物に、硬化油とラウリル硫酸ナトリウムとを保持させる方法としては例えば、ワックスの軟化または溶融温度以上の温度条件下、最外層のウレタンによる被覆を終了後、ウレタンの曳糸性が無くなり、ワックスが軟化している状態で、転動状態の該ウレタン被覆物に硬化油とラウリル硫酸ナトリウムとを添加し、硬化油とラウリル硫酸ナトリウムとを該ウレタン被覆物に保持させる方法を挙げることができる。かかる方法を行う温度は、具体的には例えば63〜85℃の範囲である。この方法によって、該ウレタン被覆物の最外層に硬化油とラウリル硫酸ナトリウムとを強固に接合させることができる。
【0034】
本発明の被覆粒状肥料の製造方法において、粒状肥料や被覆粒状肥料を転動状態にする方法としては、特に装置に制限はなく公知、慣用のものを用いることができ、例えば、回転パン、回転ドラム等が挙げられる。該転動装置に加温設備が付設されたものは、高精度の被覆加工を行ったり、加工時間の調整を行うのに好適である。
【0035】
本発明の粒状被覆肥料は、温帯気候に属する地域の水田や畑地で用いることができることは勿論のこと、亜熱帯地域や熱帯地域において植物の育成に使用することができる。
【0036】
【実施例】
以下、製造例、試験例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0037】
製造例1
温度制御可能な転動型の被覆装置に粒状尿素(平均粒径3.0mm)5kgを仕込んだ。被覆装置の回転部を20〜30rpmで回転させ、仕込んだ粒状尿素を転動状態にした。該粒状尿素の温度が70℃になるまで加熱してから、マイクロクリスタリンワックス[日本精鑞株式会社製、商品名:マイクロクリスタリンワックス HI−MIC−1045、融点70℃、20.0g]を加え、10分間転動させた。
次いで、ここに、ポリメリックMDI[住化バイエルウレタン株式会社製ポリイソシアネート化合物、商品名:スミジュール44V10、分子中のNCO基の重量百分率:31%、11.8g]、ポリエーテルポリオール[住化バイエルウレタン株式会社製分岐ポリエーテルポリオール、商品名:スミフェンTM、水酸基価372mg/g、13.1g]、並びに2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール0.3gを混合して得られた未硬化ウレタン樹脂組成物を添加し、3分間転動させた。
続いて、ここに、前記と同じ組成の未硬化ウレタン樹脂組成物を添加し、3分間転動させる操作を15回繰り返した。さらにウレタン樹脂被覆物を74℃で3分維持し、ウレタン樹脂被覆粒状肥料を作成した。
次いで、上記ウレタン樹脂被覆粒状肥料に、転動状態を維持したままで、硬化なたね油(脂肪酸成分の組成 ステアリン酸:約54%、ベヘン酸:約46%)[川研ファインケミカル株式会社製、商品名:RH−60P、2.0g]及び微粉状ラウリル硫酸ナトリウム[花王株式会社製、商品名:エマール10パウダー、0.5g]を添加して、3分間転動させ、本発明の被覆粒状肥料を得た。
【0038】
製造例2〜4
硬化油及びラウリル硫酸ナトリウムの種類と量とを表1の通りした以外は製造例1と同様にして、本発明の被覆粒状肥料を得た。
【0039】
【表1】
表中、硬化油及びラウリル硫酸ナトリウムの重量比は硬化油及びラウリル硫酸ナトリウムを保持させる前の被覆粒状肥料全量に対する比率である。
【0040】
試験例
内径5cm、高さ6cmのステンレス製円筒をステンレス製パット上に立てて置き、該円筒内に試験用の被覆粒状肥料を一杯になるまで入れた。
次いで、円筒に入れた被覆粒状肥料の上に外径約4.8cm、500gの錘を載置し、70℃で2日間、さらに25℃で4日間放置した。
その後、錘を除いてから、円筒を縦に2分して中の被覆粒状肥料を取り出し、状態を確認した。
【0041】
結果は以下の通り。
製造例1:容器を外すと一部固まりが残るが崩れる。固まりを手で握ると簡単に崩れる。
製造例2:容器を外すと一部固まりが残るが崩れる。固まりを手で握ると簡単に崩れる。
製造例3:容器を外すと一部固まりが残るが崩れる。固まりを手で握ると簡単に崩れる。
製造例4:容器を外すと一部固まりが残るが崩れる。固まりを手で握ると簡単に崩れる。
比較例:形状が維持され硬いため、強く押さないと崩れない。
【0042】
参考例
サンプル瓶に試験用被覆粒状肥料7.5gを入れ、水100mlを加え、25℃で静置した。所定時間経過後、サンプル瓶中の水0.5mlを採り、尿素濃度を測定した。測定した尿素濃度から尿素の溶出率を計算した。
結果を表2に示す。
【0043】
【表2】
【0044】
【発明の効果】
本発明の被覆粒状肥料は、保存中に被覆粒状肥料の集合体に圧力が加えられても被覆粒状肥料の粒子同士が相互に固着難く、施用に便利である。
Claims (7)
- 粒状肥料が、ワックス層及びポリウレタン樹脂層により被覆され、かつ、少なくとも1つのポリウレタン樹脂層はワックス層の外側に形成された被覆粒状肥料であって、表面に硬化油とラウリル硫酸ナトリウムとが、該被覆粒状肥料に対して硬化油とラウリル硫酸ナトリウムとの合計量で0.01〜0.2重量%保持されてなる被覆粒状肥料。
- ワックス層が、マイクロクリスタリンワックスで形成された層であることを特徴とする請求項1記載の被覆粒状肥料。
- 硬化油が硬化ナタネ油、硬化大豆油、又は硬化綿実油である請求項1記載の被覆粒状肥料。
- 粒状肥料が、粒状尿素である請求項1記載の被覆粒状肥料。
- 硬化油とラウリル硫酸ナトリウムとが、重量比で1:9〜9:1の割合である請求項1記載の被覆粒状肥料。
- ワックス層及びポリウレタン樹脂層により被覆され、かつ、少なくとも1つのポリウレタン樹脂層はワックス層の外側に形成された被覆粒状肥料に、63〜85℃で、硬化油とラウリル硫酸ナトリウムとを合計量で該被覆粒状肥料に対して0.01〜0.2重量%の量を加え、該被覆粒状肥料表面に均一に保持させることを特徴とする被覆粒状肥料の製造方法。
- 請求項6記載の製造方法で製造される被覆粒状肥料。
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