JP2005043826A - 防音材 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】遮音層2と吸音層3とを積層してなる防音材1であって、上記遮音層2及び上記吸音層3は共に発泡成形体からなり、上記遮音層2は、発泡粒子が相互に略全面で融着してなり、上記吸音層3は、発泡粒子間に空隙を有するように発泡粒子が相互に点融着してなり、上記遮音層2の空隙率は0〜5%、上記吸音層3の空隙率は15〜40%である。また、上記遮音層より上記吸音層の厚みを厚くすることが好ましい。また、上記防音材の全体の厚みをTとすると、上記遮音層の厚みは0.1T〜0.45T、上記吸音層の厚みは0.9T〜0.55Tであることが好ましい。また、上記防音材は車体フロア面をフラット化する車両用フロアフラット材として、上記遮音層を車室側、上記吸音層を車体側に向けて設置して用いる。
【選択図】図1
Description
例えば、スチレン改質ポリオレフィン系樹脂発泡体の小片を発泡させて、小片間に空隙が残るように融着した材料が知られており、この材料を吸音材として使用することがある。
また、樹脂発泡粒子からなる多孔質成形体で、多数の樹脂発泡粒子が隣接する粒子表面の一部で面接合している材料が知られており、この材料を吸音材として使用することができる。
また、第1の通気性吸音層、非通気性遮音層、第2の通気性吸音層を順に積層した材料からなる防音材が知られている。
また、特許文献3にかかる第1、第2の通気性吸音層の間に非通気性遮音層を挟んだ構成にかかる防音材は、構成が複雑である。そのため、単純形状の防音材に適用することができても、複雑形状の防音材として使用することが困難となるおそれがあった。更に、特許文献3にかかる防音材は、ウレタン材、天然繊維材、合成繊維材、フェルト材を通気性吸音層として使用した上で、三層構成を採用しているため、所定の形状に成形するのは容易でないと考えられる。
上記遮音層及び上記吸音層は共に発泡成形体からなり、
上記遮音層は、発泡粒子が相互に略全面で融着してなり、
上記吸音層は、発泡粒子間に空隙を有するように発泡粒子が相互に点融着してなり、
上記遮音層の空隙率は0〜5%、上記吸音層の空隙率は15〜40%であることを特徴とする防音材にある(請求項1)。
遮音層の空隙率は非常に低く、殆どまたは全く通気性がない。そのため、遮音層に入射した音は該遮音層を透過することが殆どなく、ここにおいて反射される。
一方、吸音層は、発泡粒子間に空隙を有し、該空隙は細い通気路を介して相互に連通している。ここで「細い」通気路と表現した意図は、通気路の幅が粒子間空隙の径より小さいことを意味しており、模式図を後述する図3に記載した。
膨張型消音器において、音の平面波が管の軸方向に進行すると、管の断面積が大きくなるところで音響インピーダンスが変化する。そのため、音の一部は反射、音の一部は進行する。その後、管の断面積が小さくなるところで、進行してきた音の一部が反射される。この反射音と進行する音とが干渉しあって音のエネルギーが減衰する。
本発明にかかる吸音層は、多くの発泡粒子に囲まれて形成された大きな粒子間空隙と、該空隙を相互に連通させる細い通気路とを有し、従って吸音層の内部に上述した膨張型消音器が多数存在する。
よって、本発明にかかる防音材の防音効果は非常に高くなる。
更に、本発明にかかる防音材は、発泡粒子を発泡させた発泡成形体からなるため、成形自由度が高く、また成形後の加工も容易である。従って、複雑な形状の防音材を容易に作製することができる。
一体成形する場合の例について説明する。
まず成形金型の成形空間に遮音層用の未発泡の発泡粒子を入れ、水蒸気等を吹き込み発泡させる。発泡終了後、成形空間を拡大し、吸音層用の未発泡の発泡粒子を導入する。そして水蒸気等を吹き込み発泡させる。吸音層は、発泡する際に遮音層と融着し、一体化した状態で成形される。
別々に成形する場合は、別々の金型でそれぞれ遮音層と吸音層を成形した後、例えば接着剤を用いて接着したり、熱融着で接着する等して両者を一体化、本発明にかかる防音材を得ることができる。
この構造は発泡粒子が点融着することで形成される。点融着は融着する領域の面積が狭く、点状に近い状態にあることを示している。即ち、発泡粒子の表面全体が、隣接する他の発泡粒子と融着するのではなく、部分的に融着することで、発泡粒子間に大きな空隙が生じる。
そして、この粒子間空隙と通気路は、前述したごとく膨張型消音器として機能する。通気路から入った音が粒子間空隙に入る際、また粒子間空隙から再び通気路に入る際に音響インピーダンスの変化から、音の一部が反射されて、進行する音と干渉しあって、音が減衰する。
具体的には、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アクリルニトリル・アクリルゴム・スチレン系樹脂等からなる発泡成形体で構成することが好ましい。あるいは、これらの樹脂を2種類以上混合した混合樹脂からなる発泡成形体で構成することが、好ましい。この中でもポリスチレン樹脂とポリエチレン樹脂との混合樹脂からなる発泡成形体は、強度成形性、融着性の観点から特に好ましい。
吸音層は音を吸収するため、厚ければ厚いほど好ましい。遮音層は吸音層から入射する音を反射し、音を通さないため、ある程度の厚みを備えていれば本発明の効果を得ることができる。従って、遮音層よりも吸音層を厚くすることが好ましい。
遮音層の厚みが0.1T未満である場合は、遮音層の厚みが薄すぎて、吸音層で吸収しきれなかった音が遮音層を透過して、防音性能が低下するおそれがある。0.45Tより大である場合は、吸音層の厚みが薄くなりすぎて、十分な吸音効果を得ることが困難となり、防音性能が低下するおそれがある。
従来、車両用フロアフラット材はウレタン系材料で作製することが多かったが、ウレタン系材料は重く、軟らかすぎて踏み心地がよくない。更に、ティビア性能が悪く、衝突安全性に優れているとはいえなかった。
これらの問題を踏まえて、近年は発泡成形体から作製した車両用フロアフラット材が増えてきた。しかしながら、発泡成形体は上記問題を解決することができるが、ウレタン材と比較して防音性に劣るという問題があった。
そのため、本発明にかかる防音材を車両用フロアフラット材として用いた場合、従来知られた発泡成形体からなるものと比較して、ウレタン系材料のような優れた防音性能を持つと共に、発泡成形体が元来備えている軽量で踏み心地がよく、衝突安全性に優れるという特徴を持つ。
また、上記遮音層を車室側、上記吸音層を車体側に向けて使用するのは、一般的に騒音が車体側から入るためである。これにより、車体側から入る音を吸音層で吸収し、吸収できなかった音を遮音層で遮ることができ、車内に音が入ることを防止することができる。
本発明にかかる防音材は、従来技術で示したような三層構成で天然繊維材や合成繊維材、フェルト材等を積層する防音材と比較して、高い成形自由度を備えている。
車両用フロアフラット材は、車室側に面する車体フロアの凹凸を均す部材であるため、下面の形状が複雑であり、この点から本発明にかかる防音材は車両用フロアフラット材に好適である。
人間の可聴音域の範囲において、特に周波数1〜6.3kHzの音は自動車等の各種車両において発生しやすい音である。従って、これらの音を遮ることが可能となれば、より車内の快適性を高めることができる。
本発明における防音材は、上記範囲にかかる周波数の音の透過損失が30dB以上であるため、車内の快適性に大きな効力を発揮する。
これにより、防音性能に優れ、軽量な防音材を得ることができる。
遮音層の厚みが15mm未満である場合は、車両用フロアフラット材として必要な圧縮強度を確保できないおそれがある。また、遮音層が25mmを越えた場合は、吸音層の厚みが相対的に薄くなって十分な吸音効果が得られず、防音性能が低下するおそれがある。
これらの樹脂は、軽量かつ適度に硬くて踏み心地性に優れ、衝突安全性(ティビア性能)に優れているため、車両用のフロアフラット材として用いる防音材として適切である。
本例にかかる防音材1は、図1に示すごとく、遮音層2と吸音層3とを積層してなる。
上記遮音層2及び上記吸音層3は共に発泡成形体からなり、図2に示すごとく、上記遮音層2は、発泡粒子21が相互に略全面で融着してなる。
図3に示すごとく、上記吸音層3は、複数の発泡粒子31間に形成された粒子間空隙33と、該粒子間空隙33を相互に連通させる細い通気路32とを有すると共に発泡粒子31が相互に点融着してなる。また、上記遮音層2の空隙率は0〜5%、上記吸音層3の空隙率は15〜40%である。
この防音材1は、図1に示すごとく、吸音層3と遮音層2とが積層して構成される。
本例の遮音層2は厚さ15mm、吸音層3は35mmで、騒音が吸音層3側から入射するようにして使用する。
遮音層2は、ポリプロピレンからなる発泡ビーズを金型に導入して水蒸気を吹き込んで発泡することにより得た、図2に示すごとく、多数の発泡粒子21が融着した発泡成形体からなる。各発泡粒子21は相互に表面210の略全体で融着し、最密充填構造を呈する。各発泡粒子21は断面が略六角形となって密に詰まり、各発泡粒子21間は隙間がないか僅かの隙間しかない。
粒子間空隙33と通気路32とが吸音層3における吸音効果を担う。
即ち、図4に示すごとく、膨張型消音器4は細管42と該細管42より大きな室43とが交互に連結されてなる。膨張型消音器4において、音源41から発せられる音が矢線Oに示すように細管42内を伝わる場合を考える。
細管42から室43に入るところで膨張型消音器4は断面積が大きくなる。細管42内を音の平面波が該細管42の軸方向に沿って矢線Oに示すごとく進行すると、断面積が大きくなるところで音響インピーダンスが変化、音の一部は反射、一部は進行する。
更に音が進行すると、室43から細管42に切り替わるところで、断面積が小さくなるため、進行してきた音の一部がここで反射する。この反射音と進行する音とが干渉しあって減衰する。
また、細管42と室43とを交互に多数連結させることで、音の経路長を長くして、音が減衰する場所を増やして、吸音性能を高めることができる。
図3に矢線Oで音の進行の一例を記載した。このように通気路32から粒子間空隙33に移る時は、上記膨張型吸音器4と同様に断面積が大きく変化するため、ここで音が反射して、音の減衰が発生し、吸音効果を得るのである。
即ち、図5に示すごとく、一つの室43と、該室43の両端に接続された細管42とからなる単純構造の膨張型消音器49について考える。
細管42は全て径が一様な円筒で断面積がS1である。室43は径が一様な円筒で断面積がS2、音が通過する方向は矢線Oで示され、該矢線Oに沿った室43の長さがLである。
この膨張型消音器49に図面左方から音が入射する。
ここで、音の透過損失TLは、TL(dB)=10log{1+1/4(m−1/m)2sin2kL}(m=S2/S1、k=2πf/c、fは音の周波数、cは音の速度)となる。
そして縦軸に音の透過損失を、横軸に音の周波数(ただし単位をc/4Lとする)を取って線図となしたものを図6に記載する。
このように膨張型消音器49における音の透過損失TLは、周期的にサインカーブの山を繰り返す特性を呈する。
図7より明らかであるが、吸音層3の吸音率は1kHz以上の周波数に対し、図6と似た山なりの特性を示しており、吸音層3における吸音のメカニズムが膨張型消音器49と同様であることが分かった。
また、遮音層2は粒子間空隙33と通気路32がないため、吸音率はいずれの周波数においても一様に低かった。そのため、本例の防音材1の吸音率は、吸音層3の特性から来る吸音率に遮音層2の一様な低い吸音率を足した状態となることが、図7より分かった。
本例にかかる防音材1は、積層した発泡成形体の遮音層2と吸音層3とからなる。
遮音層2の空隙率は非常に低く、殆どまたは全く通気性がない。そのため、遮音層2に入射した音は該遮音層2を透過することが殆どなく、ここから反射される。
一方、吸音層3は、粒子間空隙33と該粒子間空隙33とを相互に連通させる細い通気路32とを有する。従って、吸音層3の内部に上述した膨張型消音器4、49と同様の構造が多数存在する。
更に、本例にかかる防音材1は、発泡粒子を発泡させた発泡成形体からなるため、形状の自由度が高く、加工も容易である。
以上、本例によれば、防音性能が高く、形状の自由度が高い防音材を提供することができる。
本例は、実施例1にかかる防音材の性能試験について試料1〜3を用いて説明する。
試料1は本発明にかかる遮音層と同じ材質からなる。試料2は本発明にかかる吸音層と同じ材質からなる。試料3は、実施例1にかかる防音材と同様の構成である。
試料1〜3はいずれも厚みが50ミリ、大きさは530×530ミリの正方形の板であり、試料1の遮音層はポリプロピレンの発泡成形体、試料2の吸音層はポリスチレンとポリエチレンとの混合樹脂からなる発泡成形体(積水化成品工業株式会社製、ピオセラン)から構成する。
試料3は、実施例1に示したような防音材料であり、試料1にかかる遮音層と、試料2にかかる吸音層とを積層してなり、それぞれ厚さ20ミリと30ミリである。
図8に示すごとく、試料1〜3で中央を仕切った測定槽5を準備する。なお、図8は防音材1で仕切った状態を記載した。
測定槽5の一方の壁面51にスピーカー510を取り付けて、防音材1に向けて音を再生する。壁面51と防音材1を隔てて対向する壁面52に測定器520を配置して、防音材1を透過する音の強度を測定し、スピーカー510の出力と合わせて透過損失を測定する。
測定槽5に試料3の防音材を設置する場合、スピーカー510の側に吸音層3を向けておく。
また、試料1や2についても同様の測定を行う。
同図によれば、遮音層のみからなる試料1、吸音層のみからなる試料2と比較して、実施例1にかかる防音材1は広い周波数帯域において透過損失が高く、優れた防音性能を備えていることが判った。
また、試料3にかかる防音材1は、特に1kHzから8kHzの範囲の防音性能に優れていることが判った。
上記範囲は可聴音域の中でも、車両エンジンノイズ及びロードノイズでよく見られる波長範囲であるため、この点から本例の防音材が車両用防音材用途に優れていることが分かった。
本例は、図10、図11に示すごとく、実施例1にかかる防音材を車両用フロアフラット材61として使用し、遮音層611を車室側、吸音層612を車体側に向けて設置して用いることについて説明する。
上記遮音層611を車室側、上記吸音層612を車体側に向けて使用するのは、一般的に騒音が車体側から入るためであり、車体側から入る音を吸音層で吸収し、吸収できなかった音を遮音層で遮ることができ、車室に音が入ることを防止することができる。
図11に示すごとく、車両用フロアフラット材61は車室側に面する表面は平らで、車体側に面する表面は車体表面の凹凸に沿った凹凸形状を備えている。
車室側の遮音層611は均一な厚みを有し、本例では15ミリである。車体側の吸音層は厚みが不均一である。
本例によれば、軽量で踏み心地に優れ、衝突安全性に優れたフロアフラット材61を得ることができる。その上、本例にかかる車両用フロアフラット材61は防音性に優れている(実施例1や実施例2を参照)。
以上、本例によれば、優れた防音性能を備えると共に、軽量で踏み心地がよく、衝突安全性に優れた車両用フロアフラット材を得ることができる。
2 遮音層
3 吸音層
21、31 発泡粒子
32 通気路
33 粒子間空隙
61 車両用フロアフラット材
Claims (6)
- 遮音層と吸音層とを積層してなる防音材であって、
上記遮音層及び上記吸音層は共に発泡成形体からなり、
上記遮音層は、発泡粒子が相互に略全面で融着してなり、
上記吸音層は、発泡粒子間に空隙を有するように発泡粒子が相互に点融着してなり、
上記遮音層の空隙率は0〜5%、上記吸音層の空隙率は15〜40%であることを特徴とする防音材。 - 請求項1において、上記遮音層より上記吸音層の厚みを厚くすることを特徴とする防音材。
- 請求項2において、上記防音材の全体の厚みをTとすると、上記遮音層の厚みは0.1T〜0.45T、上記吸音層の厚みは0.9T〜0.55Tであることを特徴とする防音材。
- 請求項1〜3のいずれか1項において、上記防音材は車体フロア面をフラット化する車両用フロアフラット材として、上記遮音層を車室側、上記吸音層を車体側に向けて設置して用いることを特徴とする防音材。
- 請求項4において、上記遮音層の厚みは15〜25mmであることを特徴とする防音材。
- 請求項5において、上記遮音層または吸音層はポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂のいずれかまたはこれらの樹脂を2種類以上混合した混合樹脂からなることを特徴とする防音材。
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