JP2005015632A - 蛍光体の製造方法、蛍光体及びプラズマディスプレイパネル - Google Patents
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Abstract
【解決手段】蛍光体を組成する元素を含む原料のうち、不純物含有量が100ppm以下のものを少なくとも1種類用いて蛍光体を製造する。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、プラズマディスプレイパネル等の表示装置や細管型蛍光ランプ等の照明装置等のデバイス、電子機器及び各種蛍光体使用物品に幅広く使用できる蛍光体、蛍光体の製造方法及びプラズマディスプレイパネルに関する。
【0002】
【従来の技術】
蛍光体は、励起線(紫外線、可視光、赤外線、熱線、電子線、X線及び放射線等)を照射することにより、前記励起線のエネルギーを光(紫外線、可視光及び赤外線等)に変換する材料であり、この性質を利用して、蛍光ランプ、蛍光ランプを含むプラズマディスプレイパネル(PDP)、冷陰極ディスプレイ(FED)等に適用されている。
【0003】
近年、フラックスを用いて製造した蛍光体を硝酸、酢酸等で洗浄することによりフラックスを含む不純物を除去し、蛍光体の輝度を向上することが行われている(例えば、特許文献1参照)。また、高純度の希土類元素燐酸塩を原料として蛍光体を製造することにより、不純物としてのFe、Caの含有を防ぎ、輝度の高いLAP蛍光体を得ることが行われている(例えば、特許文献2参照)。但し、LAP蛍光体とは、セリウムおよびテルビウムで付活された単斜晶系燐酸ランタンである。
【0004】
【特許文献1】
特開2000−223042号公報
【特許文献2】
特開平11−29312号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献1に開示された方法は、蛍光体の製造時に使用したフラックスを洗浄により除去するというものであり、反応により蛍光体内部に取り込まれた不純物を除去することができない。
また、特許文献2に開示された方法は、希土類燐酸塩を原料とするLAP蛍光体についてのみ適用可能な方法であり、その他の組成からなる蛍光体の不純物を低減する方法および蛍光体について開示するものではない。
本発明の課題は、不純物に着目することにより、発光効率の高い蛍光体を製造することができる蛍光体の製造方法およびこの製造方法により製造された蛍光体並びにこの蛍光体を用いたPDPを提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明の蛍光体の製造方法は、蛍光体を組成する元素を含む原料のうち、不純物含有量が100ppm以下のものを少なくとも1種類用いて蛍光体を製造することを特徴とする。
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、高純度であり、発光効率の高い蛍光体を得ることができる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の蛍光体の製造方法において、前記不純物含有量が10ppm以下であることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明によれば、より純度の高い蛍光体を得ることができ、製造された蛍光体の発光強度をさらに向上することができる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の蛍光体の製造方法において、前記蛍光体を組成する元素を含む原料を液相中で反応させる工程を含むことを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明によれば、液相中で蛍光体を組成する元素を含む原料を反応させることにより、原料に混入した不純物を除去し、さらに高純度の蛍光体を製造することができる。
【0012】
請求項4に記載の発明の蛍光体は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の蛍光体の製造方法により製造されたことを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載の発明によれば、高純度であり発光強度の高い蛍光体であるので、PDPの蛍光体層に用いた場合、パネル輝度を向上することができる。
【0014】
請求項5に記載の発明の蛍光体は、蛍光体粒子に含まれる元素のうち、蛍光体を組成する元素以外の不純物元素の含有量が1ppm以下であることを特徴とする。
【0015】
請求項5に記載の発明によれば、不純物元素の含有量が1ppm以下であるので、発光効率を高めることができる。
【0016】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の蛍光体において、前記不純物元素は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、Ti、Fe、Cu、Ni、Cr及びAlから選ばれる少なくとも1種類の元素であることを特徴とする。
【0017】
請求項6に記載の発明によれば、発光効率の低下に繋がり得るこれらの元素の含有量が1ppm以下であるので発光効率の低下を防ぐことができる。
【0018】
請求項7に記載の発明は、請求項4〜6のいずれか一項に記載の蛍光体において、平均粒径が0.01〜1μmであることを特徴とする。
【0019】
請求項7に記載の発明によれば、蛍光体の平均粒径が0.01〜1μmと極めて微粒子であることにより、発光に寄与する面積を増加することができ、発光効率をより高めることができる。
【0020】
請求項8に記載の発明は、請求項4〜7のいずれか1項に記載の蛍光体を含有する蛍光層を有することを特徴とする。
【0021】
請求項8に記載の発明によれば、請求項4〜6のいずれか一項に記載の蛍光体を含有する蛍光体層を有することにより、パネル輝度が向上する。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
まず、本発明に係る蛍光体について説明する。本発明に係る蛍光体の組成は特に限定されるものではないが、例えば、次に示す無機蛍光体化合物を挙げることができる。
【0023】
[青色発光無機蛍光体化合物]
(BL−1) Sr2P2O7:Sn4+
(BL−2) Sr4Al14O25:Eu2+
(BL−3) BaMgAl10O17:Eu2+
(BL−4) SrGa2S4:Ce3+
(BL−5) CaGa2S4:Ce3+
(BL−6) (Ba,Sr)(Mg,Mn)Al10O17:Eu2+
(BL−7) (Sr,Ca,Ba,Mg)10(PO4)6Cl2:Eu2+
(BL−8) ZnS:Ag+
(BL−9) CaWO4
(BL−10) Y2SiO5:Ce3+
(BL−11) ZnS:Ag+,Ga3+,Cl−
(BL−12) Ca2B5O9Cl:Eu2+
(BL−13) BaMgAl14O23:Eu2+
(BL−14) BaMgAl10O17:Eu2+,Tb3+,Sm2+
(BL−15) BaMgAl14O23:Sm2+
(BL−16) Ba2Mg2Al12O22:Eu2+
(BL−17) Ba2Mg4Al8O18:Eu2+
(BL−18) Ba3Mg5Al18O35:Eu2+
(BL−19) (Ba,Sr,Ca)(Mg,Zn,Mn)Al10O17:Eu2+
【0024】
[緑色発光無機蛍光体化合物]
(GL−1) (Ba,Mg)Al16O27:Eu2+,Mn2+
(GL−2) Sr4Al14O25:Eu2+
(GL−3) (Sr,Ba)Al2Si2O8:Eu2+
(GL−4) (Ba,Mg)2SiO4:Eu2+
(GL−5) Y2SiO5:Ce3+,Tb3+
(GL−6) Sr2P2O7−Sr2B2O5:Eu2+
(GL−7) (Ba,Ca,Mg)5(PO4)3Cl:Eu2+
(GL−8) Sr2Si3O8−2SrCl2:Eu2+
(GL−9) Zr2SiO4,MgAl11O19:Ce3+,Tb3+
(GL−10) Ba2SiO4:Eu2+
(GL−11) ZnS:Cu2+,Al3+
(GL−12) (Zn,Cd)S:Cu2+,Al3+
(GL−13) ZnS:Cu2+,Au+,Al3+
(GL−14) Zn2SiO4:Mn2+
(GL−15) ZnS:Ag+,Cu2+
(GL−16) (Zn,Cd)S:Cu2+
(GL−17) ZnS:Cu2+
(GL−18) Gd2O2S:Tb3+
(GL−19) La2O2S:Tb3+
(GL−20) Y2SiO5:Ce3+,Tb3+
(GL−21) Zn2GeO4:Mn2+
(GL−22) CeMgAl11O19:Tb3+
(GL−23) SrGa2S4:Eu2+
(GL−24) ZnS:Cu2+,Co3+
(GL−25) MgO・nB2O3:Ce3+,Tb3+
(GL−26) LaOBr:Tb2+,Tm3+
(GL−27) La2O2S:Tb3+
(GL−28) SrGa2S4:Eu2+,Tb3+,Sm2+
【0025】
[赤色発光無機蛍光体化合物]
(RL−1) Y2O2S:Eu3+
(RL−2) (Ba,Mg)2SiO4:Eu3+
(RL−3) Ca2Y8(SiO4)6O2:Eu3+
(RL−4) LiY9(SiO4)6O2:Eu3+
(RL−5) (Ba,Mg)Al16O27:Eu3+
(RL−6) (Ba,Ca,Mg)5(PO4)3Cl:Eu3+
(RL−7) YVO4:Eu3+
(RL−8) YVO4:Eu3+,Bi3+
(RL−9) CaS:Eu3+
(RL−10) Y2O3:Eu3+
(RL−11) 3.5MgO,0.5MgF2GeO2:Mn2+
(RL−12) YAlO3:Eu3+
(RL−13) YBO3:Eu3+
(RLー14) (Y,Gd)BO3:Eu3+
【0026】
本発明に係る蛍光体は、蛍光体粒子に含まれる元素のうち、蛍光体を組成する元素以外の不純物元素の含有量が1ppm以下であることが好ましい。
【0027】
ここで、不純物元素とは、蛍光体の結晶母核となる母核化合物および付活剤を構成する元素以外の元素をいい、例えば、原料中に不純物として混入していたものが、後述する蛍光体製造工程において蛍光体粒子中に取り込まれたものをいう。不純物元素は、蛍光体の組成によって異なるが、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、Ti、Fe、Cu、Ni、Cr及びAlから選ばれる少なくとも1種類の元素が挙げられる。
【0028】
次に、上記高純度の蛍光体を得るための製造方法を説明する。
本発明に係る蛍光体の製造方法は、蛍光体の前駆体を液相中で形成する前駆体形成工程と、得られた前駆体を焼成して結晶化した蛍光体を得る焼成工程とを有する。
【0029】
まず、前駆体形成工程について説明する。
前駆体形成工程では、蛍光体を組成する元素を含む原料を分散または溶解させた原料分散液または原料溶液を混合することにより、前駆体を形成するいわゆる液相法で行うことが好ましい。高純度の蛍光体を得るため、原料の不純物含有量は100ppm以下、より好ましくは10ppm以下、さらに好ましくは1ppm以下であることが好ましい。
【0030】
蛍光体の原料組成としては、Ba(NO3)2、BaCl2、BaSO4、BaO、BaCO3、Mg(NO3)2、MgCl2、MgSO4、MgO、MgCO3、Al(NO3)3、AlCl3、Al2(SO4)3、Al2O3、Al(OH)3、Eu(NO3)3、EuCl3、Eu(C5H7O2)3、EuO3、Y(NO3)3、YCl3、Y(CH3COO)3、Y2O3、Y2(CO3)3、B2O3、H3BO3、Gd(NO3)3、GdO3、Zn(NO3)2、ZnCl2、ZnSO4、ZnO、ZnCO3、Mn(NO3)2、MnCl2、MnSO4、MnO、MnCO3、(C2H5O)4Si、SiO2などで純度の高いものを使用すればよい。
【0031】
純度の高い原料を用いて蛍光体を製造することにより、高純度の蛍光体を製造することができ、蛍光体の発光効率を向上することができる。
【0032】
液相法としては、共沈法、反応晶析法、ゾルゲル法等の一般的な液相法を用いる事が出来る。また、蛍光体を構成する元素のうち、少なくとも1種類の元素を含む化合物を核として、他の元素をその核の周辺に液相中で析出させる方法(以下、「母核法」という。)を用いることができる。母核法の例として、シリカ等のケイ素系材料を蛍光体結晶の母核としたシリカ母核法について詳細に説明する。
【0033】
シリカ母核法による前駆体製造工程では、液体にシリカ等のケイ素系材料を分散させたシリカ分散液と、蛍光体を組成する元素のうちケイ素以外の金属元素を含む原料を液体に溶解させた金属溶液とを混合して、液相中で蛍光体の前駆体を形成する。
【0034】
まず、シリカ分散液について説明する。
本発明において、ケイ素系材料は、後述する液体に実質的に不溶であることが好ましく、ケイ素(単体)又はケイ素を含む化合物をいう。
ケイ素を含む化合物としては、二酸化ケイ素(シリカ)を特に好ましく使用できる。二酸化ケイ素としては、例えば、気相法シリカ、コロイダルシリカ等の高純度のシリカを用いることができる。高純度のコロイダルシリカとして、例えば、扶桑化学工業株式会社製のPLシリーズのものを使用することができる。
【0035】
本発明におけるケイ素系材料のBET比表面積は、50m2/g以上が好ましく、より好ましくは100m2/g以上、更に好ましくは200m2/g以上である。
【0036】
ここで、「BET比表面積」とは、BET法で測定した比表面積をいう。比表面積とは、単位量の粉体に含まれる粒子の表面積の総和で表される量をいい、この場合、単位質量に含まれるケイ素系材料粒子の表面積の総和を示したものである。
【0037】
BET法は、比表面積を測定するために一般に使用されている方法で、気体の吸着を利用するものであり、粉体粒子表面に予め大きさの知られている分子あるいはイオンを吸着させ、BET等温吸着式を適用し、吸着量から表面積を計算する方法である。
【0038】
本発明におけるケイ素系材料の1次粒径または分散粒径は、1μm以下が好ましく、より好ましくは0.5μm以下、更に好ましくは0.1μm以下である。ケイ素系材料の1次粒径または分散粒径が0.1μm以下であるとより微少な蛍光体を得ることができて好ましい。
【0039】
ここで、1次粒径とは、ひとつの結晶子を1次粒子としたときのその粒径を指す。また、分散粒径とは、液体中にケイ素系材料を分散させたときの分散物の粒径をいう。
【0040】
ケイ素系材料を分散させる液体としては、ケイ素系材料を実質的に溶解しなければどのようなものでもよく、水またはアルコール類またはそれらの混合物であることが好ましい。アルコール類としては、ケイ素系材料を分散させるものならばいかなるものであっても良く、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、プロパノール、ブタノール等が挙げられる。これらのうち、比較的ケイ素系材料が分散しやすいエタノールが好ましい。
【0041】
ここで、「ケイ素系材料を実質的に溶解しない」とは、液体に対するケイ素系材料の溶解度が0.1%以下の範囲を指す。
【0042】
本発明においては、シリカ分散液をあらかじめ調整することが好ましい。ここで、「調整」とは、ケイ素系材料の液体中での分散粒径等をあらかじめ調整し、所望の状態とすることを示す。
【0043】
調整方法の一例として、攪拌が挙げられる。攪拌する際には、シリカ分散液に対する撹拌回転数と攪拌する時間を組み合わせることにより、ケイ素系材料の分散粒径を所望の状態にすることができる。より効果的な方法としてシリカ分散液を超音波分散することが挙げられる。
また、調整時には、必要に応じて界面活性剤や分散剤を添加してもよい。さらに、調整を行う場合のシリカ分散液の温度は、50℃以下、好ましくは30℃以下、より好ましくは10℃以下で行うことがケイ素系材料の再凝集による粘度上昇を防ぐ上で好ましい。
【0044】
なお、上記したコロイダルシリカを用いる場合には、液体中での粒径及び分散状態があらかじめ調製されているので、適宜、適切なものを使用すればよい。特に限定はないが、コロイダルシリカはアニオン性のものが好ましい。また、粒径としては、上記と同様に1μm以下、好ましくは0.5μm以下、より好ましくは0.1μm以下である。
【0045】
上記のように、シリカ分散液をあらかじめ調整するか、コロイダルシリカを用いることにより、液体中のケイ素系材料の分散状態を良好にし、分散粒径等も一定になる。これにより、得られる前駆体は、均一な組成のものとなり、よって焼成後に得られる蛍光体も化学的に高純度で、より均一なものとすることができる。
【0046】
次に、金属溶液について説明する。
金属溶液は、ケイ素以外の蛍光体を構成する金属元素を含む原料を液体に溶解させたものである。
【0047】
これらの金属元素は、製造する蛍光体の組成に応じて、適宜、選定すればよい。例えば、Zn2SiO4:Mnの組成式で示される蛍光体を製造する場合には、Zn及びMnを含む原料を選べばよい。
【0048】
金属元素を溶解させる液体は、ケイ素系材料を実質的に溶解しなければどのようなものでもよく、上記と同様に、水若しくはアルコール類又はそれらの混合物であることが好ましい。アルコール類としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、プロパノール、ブタノール等が挙げられる。特に、エタノールが好ましい。
【0049】
前駆体形成工程において、シリカ分散液と、金属溶液とを混合する際に、金属元素と反応して沈殿物を形成する沈殿剤を含む溶液を混合してもよい。
ここで、沈殿剤を含む溶液とは、以下に示す沈殿剤を水若しくはアルコール類又はそれらの混合物に溶解させたものを指す。アルコール類として、具体的には、メタノール、エタノール、イソプロパノール、プロパノール、ブタノール等が挙げられ、ケイ素系材料を分散させるものならばいかなるものであってもよい。
【0050】
沈殿剤としては、有機酸または水酸化アルカリを好ましく使用できる。有機酸または水酸化アルカリは金属元素と反応し、沈殿物として有機酸塩または水酸化物を形成する。このとき、これらの沈殿物がケイ素系材料の周囲に析出していることが好ましい。使用する沈殿剤の量としては、前記金属元素が有機酸塩または水酸化物等の沈殿物として析出するのに必要な化学量論量の1倍以上が好ましい。
【0051】
有機酸としては、カルボン酸基(−COOH)を有するものが好ましく、具体的には、シュウ酸、蟻酸、酢酸、酒石酸等が挙げられる。また、加水分解等により、シュウ酸、蟻酸、酢酸、酒石酸等を生じるものであってもよい。特に、シュウ酸は、上記で金属元素としてあげたZn、Mn、Mg、Ca、Sr、Ba、Y、Zr、Al、Ga、La、Ce、Eu、Tbの陽イオンと反応しやすく、Zn、Mn、Mg、Ca、Sr、Ba、Y、Zr、Al、Ga、La、Ce、Eu、Tbの陽イオンがシュウ酸塩として析出しやすく、好ましい。また、加水分解等によりシュウ酸を生ずるシュウ酸ジメチル等も好ましく使用できる。
【0052】
水酸化アルカリとしては、水酸基(−OH)を有するもの、あるいは水と反応して水酸基を生じたり、加水分解により水酸基を生じたりするものであればいかなるものでもよく、例えば、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、尿素等が挙げられる。この中で、アンモニアが好ましく使用され、特に好ましくはアルカリ金属を含まないアンモニアである。
【0053】
前駆体形成工程において、シリカ分散液と、金属溶液との混合は、いかなる方法で行ってもよい。例えば、撹拌による混合方法は、混合状態等を制御しやすく、低コストであるので好ましい。また、混合方法としては、バッチ式、連続式、外部循環混合等どのような方法でもよい。
【0054】
具体的には、シリカ分散液と金属溶液を混合器(撹拌式、非撹拌式のどちらでも良い)に連続的に添加する方法、または、シリカ分散液を母液とし、母液を撹拌しながらその中に金属溶液を添加する方法、あるいは母液を外部循環させ、外部循環経路中に設けた混合器に金属溶液を添加する方法、または、ケイ素系材料を含まない溶液を母液とし、母液を攪拌しながらこの中にシリカ分散液と金属溶液とをダブルジェットで同時に添加する方法、あるいは母液を外部循環させ、外部循環経路中に設けた混合器にシリカ分散液と金属溶液とをダブルジェットで同時に添加する方法などが挙げられる。このような方法で混合すると、ケイ素系材料を液体中に良好に分散させた状態で反応を行うことができ好ましい。
【0055】
また、沈殿剤を含む溶液を添加する場合においても、いかなる方法、順序に従ってシリカ分散液と、金属溶液と、沈殿剤を含む溶液とを混合してもよい。具体的には、沈殿剤を含むシリカ分散液と金属溶液を混合器(撹拌式、非撹拌式のどちらでも良い)に連続的に添加する方法、または、シリカ分散液と金属溶液と沈殿剤を混合器(撹拌式、非撹拌式のどちらでも良い)に連続的に添加する方法、シリカ分散液を母液とし、母液を撹拌しながらその中に他の液をダブルジェットで同時に添加する方法、あるいは母液を外部循環させ、外部循環経路中にもうけた混合器に他の液をダブルジェットで同時に添加する方法、またはケイ素系材料を含まない液体を母液とし、母液を攪拌しながらこの中にシリカ分散液と、金属溶液と、沈殿剤を含む溶液とをトリプルジェットで同時に添加する方法、あるいは母液を外部循環させ、外部循環経路中に設けた混合器にシリカ分散液と、金属溶液と、沈殿剤を含む溶液とをトリプルジェットで同時に添加する方法などが挙げられる。このような方法で混合すると、ケイ素系材料を液体中に良好に分散させた状態で反応を行うことができ好ましい。
【0056】
バッチ式の場合、沈殿剤を含む溶液の有無に関わらず、これらの液の添加位置は母液表面でも母液中でもどちらでもよく、より均一な混合という観点から母液中が好ましい。更に撹拌レイノルズ数は、1,000以上、好ましくは3,000以上、より好ましくは5,000以上が好ましい。攪拌レイノルズ数を1,000以上にすることにより、各液をより均一に混合することができる。
【0057】
前駆体形成工程において、各液を均一に混合しながら前駆体を形成することにより、反応時の蛍光体を構成する各イオンの分散が極めて良好になる。その結果、化学量論的に高純度で、組成の均一な前駆体を得やすい。また、液相中で原料元素を一旦イオン化し、後述する焼成工程において、蛍光体粒子として再結晶化する過程において不純物を取り除くことができ、組成が均一で、高純度な蛍光体を得ることができる。
【0058】
上記の前駆体形成工程終了後、焼成工程に先だって乾燥工程を行うと好ましい。乾燥温度としては、20〜300℃の範囲が好ましく、さらに好ましくは90〜200℃である。直接乾燥させる方法としては、エバポレーションや、顆粒化しながら乾燥させるスプレードライを挙げることができる。
【0059】
また、乾燥工程において、前駆体を乾燥する前に、必要に応じて不溶な塩類を濾過水洗、膜分離等の既存の方法により除去することが好ましい。更にその後、濾過や遠心分離等の方法により前駆体を液体から分離することが好ましい。
【0060】
次に、焼成工程について説明する。前駆体の焼成は、いかなる方法で行ってもよく、焼成温度や時間は適宜調整すればよい。例えば、前駆体をアルミナボートに充填し、所定のガス雰囲気中で所定の温度で焼成することで所望の蛍光体を得ることができる。また、緑色蛍光体(Zn2SiO4:Mn等)の前駆体を焼成する場合は、不活性雰囲気中で400〜1400℃の温度範囲、0.5〜40時間の範囲で1回以上焼成することが好ましい。更に必要に応じて、大気雰囲気(もしくは酸素雰囲気)、還元雰囲気を組み合わせてもよい。還元雰囲気を組み合わせる場合には、結晶中からの亜鉛等の金属元素の蒸発を防止するために800℃以下の温度で焼成することが好ましい。還元性雰囲気を得る方法として、前駆体の充填されたボート内に黒鉛の塊を入れる方法、窒素−水素の雰囲気中、あるいは希ガス・水素の雰囲気中で焼成する方法等が挙げられる。これらの雰囲気に水蒸気が含まれていてもよい。
【0061】
前駆体を焼成することにより、前駆体が焼成反応して、所望の組成を有する蛍光体が形成される。その際、前駆体の形状が液相中で行われることで、より均一な組成を有する蛍光体が得られる。
【0062】
焼成工程終了後、得られた蛍光体に、分散、水洗、乾燥、篩い分け等の処理を行ってもよい。
【0063】
上記の方法で製造した蛍光体は、蛍光ランプ、蛍光表示管等の各種デバイス、PDP、FED等の各種表示装置、あるいは、蛍光塗料、灰皿、文房具、アウトドア用品、案内板、誘導物、安全標識等の蛍光体使用物品に好適に使用することができる。
【0064】
以下、図1を参照して、本発明に係る蛍光体を用いた表示装置の一例としてプラズマディスプレイパネルを説明する。なお、PDPには、電極の構造および動作モードから大別すると、直流電圧を印加するAC型と、交流電圧を印加するDC型のものとがあるが、図1には、AC型PDPの構成概略の一例を示した。
【0065】
図1に示す2枚の基板10、20のうち、一方は表示側に配置される前面板10であり、他方は背面側に配置される背面板20である。前面板10と背面板20は、この基板10、20間に設けられる隔壁30によって所定間隔をあけて対向配置されている。
【0066】
まず、前面板10側の構成について説明する。
前面板10は、例えばソーダライムガラス等の可視光を透過する材料から形成することができる。前面板10の、背面板20に対向する対向面には、図1に示すように、電極11、誘電体層12、保護層等が備えられている。
【0067】
前面板10に設けられた電極11は、1組の走査電極11aと維持電極11bとからなり、それぞれの電極11a、11bは帯状に形成されている。走査電極11aと維持電極11bは所定の放電ギャップをあけて設けられている。蛍光体を発光させるためのプラズマ放電は、これらの走査電極11aと維持電極11bとの間の面放電により行われる。
【0068】
電極11は、図2に示すように、前面板10の端10aから端10bまで連続して横切るように設けられ、互いに所定間隔をあけて規則正しく配置されている。各電極11はそれぞれパネル駆動回路15に接続されており、所望の電極11に電圧を印加することができる。
【0069】
図1に示すように、これらの電極11が配された前面板10の表面全体を覆うように、誘電体層12が設けられている。誘電体層12は誘電物質からなり、一般に、鉛系低融点ガラスから形成されることが多い。この他に、ビスマス系低融点ガラス、あるいは鉛系低融点ガラスとビスマス系低融点ガラスの積層物等で誘電体層12を形成しても良い。
【0070】
誘電体層12の表面は保護層13により全体的に覆われている。保護層13は、酸化マグネシウム(MgO)からなる薄層が好ましい。
【0071】
次に、背面板20側の構成について説明する。
背面板20は前面板10と略同一のサイズに形成されており、前面板10と同様にソーダライムガラス等から形成することができる。背面板20の前面板10と対向する面には、複数のデータ電極21、誘電体層22、隔壁30等が備えられている。
【0072】
データ電極21は、前記電極11と同様に帯状に形成されており、所定間隔毎に設けられている。データ電極21の両側には前記隔壁30が設けられている。データ電極21は、図2に示すように、背面板20の中央部24で、分割されており、それぞれがパネル駆動回路25a、25bに接続されている。このパネル駆動回路25により、所望の電極21に電圧を印加することができる。
【0073】
図1に示すように、背面板20のデータ電極21が配された表面全体は誘電体層22により覆われている。誘電体層22は、誘電体層12と同様に、鉛系低融点ガラスや、ビスマス系低融点ガラス、あるいは鉛系低融点ガラスとビスマス系低融点ガラスの積層物等から構成することができる。さらに、これらの誘電物質にTiO2粒子を混合し、可視光反射層としての働きも兼ねるようにすると好ましい。誘電体層22をこのように可視光反射層としても機能させると、蛍光体層35からの背面板20側に発光しても、これを前面板10側に反射して、前面板10を透過する光を増やし、輝度を向上させることができる。
【0074】
上記の誘電体層22の上面には隔壁30が背面板20側から前面板10側に突出するように設けられている。隔壁30は基板10、20間の空間を所定形状に複数区画して、前述したように放電セル31を形成している。隔壁30は、ガラス材料等の誘電物質から形成される。
【0075】
放電セル31は、上記のように隔壁30と基板10、20とによって囲まれた放電空間であり、放電セル31の内側に面する隔壁30の側面30aと放電セルの底面31aには、赤(R)、緑(G)、青(B)のいずれかに発光する蛍光体層35がR、G、Bの順に規則正しく設けられる。放電セル31内部には、希ガスを主体とする放電ガスが封入されている。放電ガスとしては、特にNeを主放電ガスとし、これに放電により紫外線を発生するXeを混合した混合ガスを用いると好ましい。なお、混合ガスを封入するときの封入圧力は特に限定されるものではないが、例えば、66.7mPa程度が好ましい。
【0076】
図1に示した放電セル31は、いわゆるストライプ型のものであり、隔壁30が前記したデータ電極21の両側に設けられ、この隔壁30により平行な溝状に形成されたものである。
【0077】
ここで、放電セル31と、電極11、21の配置について説明する。
図2に示すように、電極11とデータ電極21は、平面視において互いに直交し、マトリックス状になっている。一つの放電セル31内には、電極11とデータ電極21との交点が多数設けられている。この電極11とデータ電極21の交点で選択的に放電させることができ、これにより所望の情報が表示可能となっている。以下、一つのセルの体積をセル内の電極の交点の数で分割したセルの空間を最小発光単位という。PDP1では、近接するR、G、Bの3つの最小発光単位で1画素となる。
【0078】
本発明において、R、G、Bの少なくともいずれか一色の蛍光体層は、本発明に係る蛍光体を含有する。蛍光体層の形成に際しては、種々の公知の方法を用いることができる。例えば、隔壁30により区画された放電セル31の底面(アドレス電極21上)と側面とにペースト状に調整した蛍光体を塗布又は充填し、蛍光体ペーストを乾燥又は焼成して、ペースト中の有機成分を除去することにより蛍光体層を形成することができる。
【0079】
なお、蛍光体をペースト状に調整する際には、蛍光体に溶剤、バインダー樹脂、分散剤等を適宜混合すればよい。
【0080】
また、蛍光体ペーストを隔壁間に塗布又は充填する方法としては、スクリーン印刷法、フォトレジストフィルム法、インクジェット法など種々の方法を使用することができる。中でも、高精細なリブ構造では隔壁のピッチも細かくなり、その隔壁間に低コストで容易に精度良く均一に蛍光層を形成する塗布方法として、特にインクジェット法を適用するのが好ましい。
【0081】
本発明に係るPDP1等のディスプレイは、本発明の製造方法により得た蛍光体を用いて蛍光体層を構成することにより、発光効率を向上し、パネル輝度を向上させることができる。特に、緑色発光の蛍光体層を本発明に係る蛍光体で構成することにより、視感度の高い緑色セルの発光効率を向上させることができるので、白色輝度が向上する。
【0082】
【実施例】
次に、本発明を実施例1および2を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれに何等限定されるものではない。
【0083】
〔実施例1〕
1.蛍光体の製造
(1)蛍光体1−1の製造
二酸化ケイ素45gを含むコロイダルシリカ(不純物含有量73ppm)とアンモニア水(28%)219gを純水に混合して液量を1500ccに調整したものをA液とする。同時に、硝酸亜鉛6水和物(関東化学株式会社製、純度99.0%)424gと硝酸マンガン6水和物(関東化学株式会社製、純度98.0%)21.5gを純水に溶解して液量を1500ccに調整したものをB液とする。
【0084】
A液とB液を40℃に保温した後、ローラーポンプを使って1800cc/minの添加速度で図3に示すY字形反応装置に供給した。反応により得られた沈殿物を純水で希釈後、加圧ろ過を行い固液分離した。次いで、100℃、12時間乾燥を行い、乾燥済み前駆体を得た。
次に、得られた前駆体を窒素100%の雰囲気中で1200℃、3時間焼成して蛍光体1−1を得た。
【0085】
(2)蛍光体1−2の製造
不純物含有量が5ppmのコロイダルシリカを用いる以外は上記(1)の蛍光体1−1と同様にして蛍光体1−2を得た。
【0086】
(3)蛍光体1−3の製造
不純物含有量が0.1ppmのコロイダルシリカを用いる以外は上記(1)の蛍光体1−1と同様にして蛍光体1−3を得た。
【0087】
2.比較例の製造
不純物含有量が400ppmのコロイダルシリカを用いる以外は上記(1)の蛍光体1−1と同様にして比較例の蛍光体を得た。
【0088】
3.評価
(1)発光強度
上記の(1)〜(3)で得られた蛍光体1−1〜1−3及び比較例で得られた蛍光体について、その発光強度を評価した。
【0089】
蛍光体1−1〜1−3及び比較例で得た蛍光体にそれぞれ0.1〜1.5Paの真空槽内でエキシマ146nmランプ(ウシオ電機社製)を用いて紫外線を照射して、蛍光体から緑色光を発光させた。次に、得られた緑色光を検出器(MCPD−3000(大塚電子株式会社製))を用いてその強度を測定した。そして、発光のピーク強度を、比較例で得た蛍光体を100とした相対値で求めた。得た結果を表1に示す。
【表1】
【0090】
上記表1より、本発明に係る製造法により蛍光体を製造することにより、発光強度が向上することが分かる。
【0091】
(2)組成分析
次に、蛍光体1−1〜1−3及び比較例の蛍光体について、組成分析を行った。蛍光体組成中、ケイ素はアルカリ溶融法で溶融した後、ケイ素以外の元素はフッ化水素酸(フッ酸)による溶解の後、誘導結合プラズマ発光分光法にて定量した。
【0092】
(i)ケイ素
ケイ素は次のようにして、アルカリ溶融法により溶融した。まず、白金るつぼに蛍光体を各0.1g秤量した後、2.5gの炭酸ナトリウム(和光純薬製、特級)を添加、電気炉にて1000℃で1時間溶融した後、超純水を添加、加熱溶解した。なお、不溶物がある場合は適宜濾過した後、50mlに定容する。
別途2.5gの炭酸ナトリウムのみを溶解した液を調整し、これに関東化学製ケイ素標準原液(原子吸光光度分析用)を添加した標準濃度溶液を調整した。
【0093】
(ii)ケイ素以外の元素
ケイ素以外の他の元素は、次のようにしてフッ化水素酸に溶解させた。まず、テフロン(登録商標)製ビーカーに蛍光体を各0.1g秤量した後、フッ化水素酸(関東化学製 超高純度)を10ml添加し、加熱乾固した。これを2回繰り返した後、硝酸(関東化学製 超高純度)を10ml添加し溶解、50ml定容とし、これを被検液とした。
【0094】
(iii)定量
セイコー電子工業製誘導結合プラズマ発光分光分析装置SPS4000あるいはVGエレメンタル社製誘導結合プラズマ質量分析装置QP−Ωを用いて、元素の定性、定量を行った。定量の際には別途関東化学製の標準原液及び硝酸(関東化学製 超高純度)を添加した基準濃度液を調整し、検量線法で定量を行った。
各蛍光体に含まれる蛍光体組成以外の不純物含有量を表2に示す。
【表2】
【0095】
表2から本発明に係る蛍光体1−1〜1−3は、蛍光体組成以外の不純物元素含有量が少ないことが分かる。逆に言えば、本発明に係る蛍光体の製造方法により、不純物元素含有量の極めて少ない高純度な蛍光体が得られることが分かる。
【0096】
〔実施例2〕
次に、実施例1で製造した蛍光体1−1〜1−3および比較例1と、下記に示す方法で青色蛍光体Bと、赤色蛍光体Rを製造し、これらの蛍光体を含む蛍光体層を備えたPDPを製造し、白色輝度について評価した。
なお、蛍光体1−1〜1−3および比較例1はそれぞれ組成式Zn2SiO4:Mnで表される緑色蛍光体である。
【0097】
1.蛍光体の製造
(1)青色蛍光体Bの製造
原料として炭酸バリウム(BaCO3)、炭酸マグネシウム(MgCO3)、酸化アルミニウム(α−Al2O3)をモル比で1対1対5に配合する。次に、この混合物に対して、所定量の酸化ユーロピウム(Eu2O3)を添加する。そして、適量のフラックス(AlF2,BaCl2)と共にボールミルで混合し、1,600℃で3時間、窒素95%、水素5%の還元雰囲気中で焼成して蛍光体を得た。得られた蛍光体を分級し、平均粒径1.5μmのものを青色蛍光体Bとした。
【0098】
(2)赤色蛍光体Rの製造
原料として酸化イットリウム(Y2O3)と酸化ガドリニウム(Gd2O3)と硼酸(H3BO3)とを、Y,Gd,Bの原子比で0.60:0.35:1.0となるように配合する。次に、この混合物に対して、所定量の酸化ユーロピウム(Eu2O3)を添加する。適量のフラックスと共にボールミルで混合し、1400℃で3時間、大気雰囲気中で焼成して蛍光体を得た。得られた蛍光体を分級し、平均粒径1.5μmのものを赤色蛍光体Rとした。
【0099】
2.蛍光体塗布液の作製
上記方法で得られた青色蛍光体B、赤色蛍光体Rと、蛍光体1−1〜1−3および比較例1のそれぞれを用いて、エチルセルロース、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ターピネオールおよびペンタンジオールの1:1混合液から蛍光体塗布液B、R、G−1〜G−3および比較例Gを作製した。
【0100】
3.PDPの製造
(1)PDP1の製造
上記で調整した青色蛍光体塗布液B、赤色蛍光体塗布液R、緑色蛍光体塗布液G−1を用いて、図1に示す42インチのPDPを以下のように製造した。
まず、前面板10となるガラス基板上に、走査電極11aと維持電極11bとを径が50μmのノズルを用いてインクジェット法により形成した。このとき、ノズル先端と前面板との距離を1mmに保った状態で、ノズル先端を前面板10上の所定の位置を走査しながら電極材インキを吐出して、電極幅60μmの走査電極11aと維持電極11bをそれぞれ形成した。
【0101】
次に、前面板10上に、前記電極11を介して低融点ガラスを印刷し、これを500〜600℃で焼成することにより誘電体層12を形成し、さらにこの上に、MgOを電子ビーム蒸着して保護膜13を形成した。
【0102】
一方、背面板20となるガラス基板上に、データ電極21を形成した。データ電極21も、上記と同様に、径が50μmのノズルを用いて、背面板20との距離を1mmに保った上で、所定の位置を走査させながら、60μm幅のものを形成した。次に、このデータ電極の両側方に位置するように、低融点ガラスを用いてストライプ状の隔壁30を形成した。隔壁30同士の間隔(ピッチ)は0.36mmに、隔壁30の高さは0.15mmとした。
【0103】
さらに、前記隔壁30により仕切られたセル31の内側に面する底面31aと前記隔壁30の側面30aとに、上記2.で作製した蛍光体塗布液B、R、G−1を隣り合うセルに一色ずつ規則正しい順序で塗布した。
【0104】
そして、前記電極11、21等が配置された前面板10と上記背面板20とを、それぞれの電極配置面が向き合うように位置合わせし、隔壁30により約1mmのギャップを保った状態で、その周辺をシールガラスにより封止した。そして、前記基板10、20間に、放電により紫外線を発生するキセノン(Xe)と主放電ガスのネオン(Ne)とを混合したガスを封入して気密密閉した。なお、キセノンとネオンの混合体積比は、1:9とし、封入圧力は66.7mPaとした。その後、エージングを行い、PDP1とした。
【0105】
(2)PDP2の製造
緑色蛍光体塗布液として、G−2を用いた以外は、PDP1と同様にしてPDPを製造し、PDP2とした。
【0106】
(3)PDP3の製造
緑色蛍光体塗布液として、G−3を用いた以外は、PDP1と同様にしてPDPを製造し、PDP3とした。
【0107】
(4)比較例2の製造
緑色蛍光体塗布液として、比較例Gを用いた以外は、PDP1と同様にしてPDPを製造し、比較例とした。
【0108】
4.評価
上記において得られたPDP1〜3および比較例のそれぞれについて、パネル全面が点灯している時の放電維持電圧で、周波数30KHzで駆動させた時の輝度を測定し、P−1のパネル輝度を100とした相対値で表した。評価結果を表3に示す。
【表3】
【0109】
表3より、本発明の蛍光体を蛍光体層に含むPDPのパネル輝度は、比較例2に対してパネル輝度が向上することが分かった。
【0110】
【発明の効果】
請求項1に記載の発明によれば、高純度であり、発光効率の高い蛍光体を得ることができる。
【0111】
請求項2に記載の発明によれば、より純度の高い蛍光体を得ることができ、製造された蛍光体の発光強度をさらに向上することができる。
【0112】
請求項3に記載の発明によれば、液相中で蛍光体を組成する元素を含む原料を反応させることにより、原料に混入した不純物を除去し、さらに高純度の蛍光体を製造することができる。
【0113】
請求項4に記載の発明によれば、高純度であり発光強度の高い蛍光体であるので、PDPの蛍光体層に用いた場合、パネル輝度を向上することができる。
【0114】
請求項5に記載の発明によれば、不純物元素の含有量が1ppm以下であるので、発光効率を高めることができる。
【0115】
請求項6に記載の発明によれば、発光効率の低下に繋がり得るこれらの元素の含有量が1ppm以下であるので発光効率の低下を防ぐことができる。
【0116】
請求項7に記載の発明によれば、蛍光体の平均粒径が0.01〜1μmと極めて微粒子であることにより、発光に寄与する面積を増加することができ、発光効率をより高めることができる。
【0117】
請求項8に記載の発明によれば、請求項4〜7のいずれか一項に記載の蛍光体を含有する蛍光体層を有することにより、パネル輝度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るプラズマパネルディスプレイの一例を示した概略構成図である。
【図2】本発明に係るプラズマパネルディスプレイの駆動回路を示した模式図である。
【図3】本発明に係る蛍光体を製造する際に使用する反応装置の一例を示した概略図である。
【符号の説明】
1 PDP
35G 蛍光体層
Claims (8)
- 蛍光体を組成する元素を含む原料のうち、不純物含有量が100ppm以下のものを少なくとも1種類用いて蛍光体を製造することを特徴とする蛍光体の製造方法。
- 請求項1に記載の蛍光体の製造方法において、
前記不純物含有量が10ppm以下であることを特徴とする蛍光体の製造方法。 - 請求項1または2に記載の蛍光体の製造方法において、
前記蛍光体を組成する元素を含む原料を液相中で反応させる工程を含むことを特徴とする蛍光体の製造方法。 - 請求項1〜3のいずれか一項に記載の蛍光体の製造方法により製造されたことを特徴とする蛍光体。
- 蛍光体粒子に含まれる元素のうち、蛍光体を組成する元素以外の不純物元素の含有量が1ppm以下であることを特徴とする蛍光体。
- 請求項5に記載の蛍光体において、
前記不純物元素は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、Ti、Fe、Cu、Ni、Cr及びAlから選ばれる少なくとも1種類の元素であることを特徴とする蛍光体。 - 請求項4〜6のいずれか一項に記載の蛍光体において、
平均粒径が0.01〜1μmであることを特徴とする蛍光体。 - 請求項4〜7のいずれか1項に記載の蛍光体を含有する蛍光層を有することを特徴とするプラズマディスプレイパネル。
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JP2007092066A (ja) * | 2005-09-27 | 2007-04-12 | Samsung Electro Mech Co Ltd | カルボン酸系分散剤およびそれを含む蛍光体ペースト組成物 |
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2003
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