JP2005001969A - 低内部抵抗炭素微粉の製造方法及び電気二重層キャパシタ - Google Patents
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Abstract
【課題】ディレードコーカーで製造した生コークスを原料として、低内部抵抗且つ高静電容量を発現する電気二重層キャパシタの分極性電極用炭素材料を製造する。
【解決手段】石油系又は石炭系の重質油を原料としてディレードコーカーで製造した生コークス製造する際に、原料油中に黒鉛粉末を分散させてコーキングさせる。この生コークスを粉砕した後に、アルカリ賦活処理又は酸化性ガス賦活処理するか、生コークスをアルカリ賦活処理又は酸化性ガス賦活処理した後に球状粉砕して、球状炭素微粉を製造する。この多孔質炭素微粉からは、電気二重層キャパシタに使用したとき静電容量が20F/ml以上の分極性電極が得られる。
【選択図】 なし
【解決手段】石油系又は石炭系の重質油を原料としてディレードコーカーで製造した生コークス製造する際に、原料油中に黒鉛粉末を分散させてコーキングさせる。この生コークスを粉砕した後に、アルカリ賦活処理又は酸化性ガス賦活処理するか、生コークスをアルカリ賦活処理又は酸化性ガス賦活処理した後に球状粉砕して、球状炭素微粉を製造する。この多孔質炭素微粉からは、電気二重層キャパシタに使用したとき静電容量が20F/ml以上の分極性電極が得られる。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電気二重層キャパシタに用いたときの内部抵抗が低く、体積あたりの容量が高い球状炭素微粉と、これを使用した電気二重層キャパシタに関する。
【0002】
【従来の技術】
電気二重層とは、固体と液体など二つの異なる層が接触すると、その境界面にプラスとマイナスの電荷が存在する状態をいう。この原理を利用し電気を貯蔵したものが、電気二重層キャパシタである。通常使われる電池に比べ、急速充電が可能なこと、化学反応を伴わないので繰り返し充放電による劣化が少ないこと、メンテナンスフリー等非常に優れた特性を示す素子である。
【0003】
電気二重層キャパシタの用途はコンピュータ用のメモリーバックアップに利用されつつあるし、自動車などのパワー用途分野でもハイブリッドカーへの応用展開が活発化している。また、電気二重層キャパシタに活性炭等の多孔質炭素材料を使用することは知られている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
電気二重層キャパシタは、通常使われる電池に比べ、急速充電が可能であるが、充放電特性に影響を及ぼす因子として、電極内の内部抵抗がある。内部抵抗が高いとエネルギー効率が顕著に低下するため、電極内部抵抗を改善するためにいろいろな検討がなされてきた。電極に使用される炭素多孔質に関しては、例えば炭素を黒鉛化し、黒鉛化度を上げる方法(例えば特許文献2参照)や、バインダに導電性材料を混合する方法(例えば特許文献3参照)が提案されてきた。
【0005】
【特許文献1】
特開2001−319837号公報
【特許文献2】
特開1999−139712号公報
【特許文献3】
特開平10−4037号公報
【0006】
内部抵抗低減を目的に、黒鉛化した炭素原料を使用すると、材料の結晶化が進んでいるため、硬くなり、賦活が有効にできなくなる。賦活後に黒鉛化すると、炭素構造の収縮/変形が起こり、賦活過程で生じた細孔構造が消失してしまうという問題がある。バインダの伝導性を上げることは有効ではあるが、多孔質との密着性で改善の余地がある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、比較的安価に、且つ工業的に大量に製造することが可能な生コークスを原料として、内部抵抗が低く、且つ静電容量の高い電気二重層キャパシタを与える球状炭素微粉の製造方法を提供することである。また、他の目的は体積あたりの静電容量の高い電気二重層キャパシタを提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記の課題を解決するため鋭意研究を行った結果、ディレードコーカーにより、石炭あるいは石油系重油等の重質油に導電性物質を添加して得られる生コークスを、原料とすることにより、低内部抵抗且つ高静電容量の電気二重層キャパシタが製造可能であることを見出し、本発明に到った。
【0009】
本発明は、ディレードコーカーで製造する生コークス原料油中に、黒鉛微紛を添加し、導電材含有生コークスを得、次いでこの生コークスを粉砕した後に、アルカリ賦活及び酸化性ガス賦活から選択される1種又は2種の賦活処理をすることを特徴とする炭素微粉の製造方法である。賦活に先立ち、熱処理を行い、炭化度を調整しても良い。ここで、生コークスが石炭系重質油及び石油系重質油から選択される少なくとも1種を原料としてディレードコーカーで製造したものであること、粉砕した平均粒径が1mm以下であること、又は賦活処理温度が生コークスの製造温度を超える温度であることは、本発明の好ましい態様の一つである。
【0010】
また、本発明は、前記の製造方法によって得られた球状炭素微粉からなる多孔質炭素材料であって、電気二重層キャパシタ用の電極材料に使用したとき、体積あたりの静電容量が20F/ml以上であることを特徴とする多孔質炭素材料である。更に、本発明は、前記の球状炭素材料を電極とする電気二重層キャパシタである。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明で使用する原料油は、ピッチ、瀝青物、重油等と称される石炭系又は石油系の重質油が使用可能である。原料の重質油にはキノリン不溶分(QI)が含まれるが、1wt%程度以下に脱QIすると異方性の生コークスが得られ、数%以上であると等方性の生コークスが得られるが、異方性の生コークスが電極用炭素材料として優れる傾向が認められる。しかし、等方性の生コークスであっても電極用炭素材料として優れるものが得られるので、30wt%程度までのQIの存在は差し支えない。また、この生コークスはピッチコークス(特に、ニードルコークス)を製造する際の中間体として多量に得られるので、これを使用することが可能である。
【0012】
本発明で使用する黒鉛粉末は、黒鉛層間距離(d002)が0.340nm以下のものが好ましい。
キッシュ黒鉛や、2000℃以上で熱処理したニードルコークスを公知の方法で粉砕したものが使用できる。黒鉛の粉砕粒度は、平均粒径が、50μ以下、好ましくは30μ以下、更に望ましくは20μ以下にするのが良い。黒鉛粉末は、予め原料油中に、公知の方法で分散して、ディレードコーカーに導入すればよい。添加量は原料油に対し、1−30wt%が良い。10wt%を超えると、得られる生コークス中の黒鉛の割合が過大になり、賦活が十分でなくなる。
【0013】
ディレードコーカーの運転条件は公知の範囲で差し支えなく、通常、400〜600℃程度、5〜50時間程度の条件でディレードコーキングが行われる。ディレードコーキング条件は、好ましくは450〜550℃程度、15〜25時間程度であり、揮発分を5〜15%程度含有する。生コークスは、揮発分を持つことから賦活処理が可能となる。
【0014】
生コークスはディレードコーキング温度が低い場合は、揮発分が高くなり、高温で行う賦活処理時に融着現象が起こり、粉体のまま取出すことができなくなる。このような場合には、表面を酸化して融着現象を抑えることが可能である。酸化は酸化性のガスや液体であれば特に限定するものではなく、コストの面から見れば気体であれば空気、液体であれば硫酸が望ましい。
【0015】
粉砕した生コークスの賦活処理では、アルカリ賦活又は酸化性ガス賦活又は両者の処理を行う。賦活処理温度は、特に限定するものではないが通常400℃以上の高温が必要である。アルカリ賦活の場合は、ディレードコーカーでのコーキング温度を超える温度が好ましく、より好ましくは600〜1000℃である。1000℃を超える温度では、コスト的に増大する。賦活処理時間は、賦活処理温度によって変化するが、通常0.1〜10hr、好ましくは0.5〜5hr程度である。酸化性ガス賦活の場合は、賦活処理温度は400〜700℃程度であり、賦活処理時間は賦活処理温度や酸化性ガスの種類によって変化するが、通常0.05〜5hr、好ましくは0.1〜1hr程度である。
【0016】
アルカリ賦活は、KOH、NaOH、K2CO3等のアルカリを生コークス粉に混合して行う。生コークス粉とアルカリの混合は、固体混合であっても、アルカリ水溶液を含浸させる方法であってもよい。生コークス粉とアルカリの混合割合(重量比)は、0.5〜10程度、好ましくは1〜5程度である。雰囲気は不活性ガス雰囲気が通常であるが、水蒸気等が存在してもよい。酸化性ガス賦活は、空気、酸素、二酸化炭素などの酸化性ガスの存在下で加熱を行う公知の方法を採用できる。また、水蒸気等が存在してもよい。また、上記2つの賦活処理を組合せてもよいし、水蒸気賦活処理を組合せてもよいし、処理条件が合致すれば同時に行ってもよいし、順次行ってもよい。これらの賦活処理の組合せは、生コークスの構造や性状及び目的とされる比表面積や細孔分布とから、考慮し決定すればよい。
【0017】
生コークス粉末を賦活処理して得た球状炭素微粉は、冷却、アルカリを混合した場合はアルカリ除去のための水洗、粉砕等がされた後、キャパシタ用炭素材料として使用することができる。この炭素微粉は、比表面積が100〜2200m2/g程度で、中心細孔径が1〜20μm程度で、平均粒径が1〜40μm程度であることが好ましい。また、この多孔質炭素微粉は、後記する実施例に記載する方法により静電容量を測定したとき、静電容量が20F/ml以上、好ましくは25F/ml以上であることがよい。
【0018】
キャパシタとしては、多孔質炭素材料を使用した電極、電解液及びセパレータを構成要素として含む公知の電気二重層キャパシタがある。このようなキャパシタは、前記公報の他、特開2001−118753号公報等に詳細に記載されているのでこれが参照される。多孔質炭素材料を使用した電極は例えば、前記多孔質炭素材料に、導電材としてのアセチレンブラック、結合材としてのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)及び溶媒を混合してペースト状にし、これを圧縮成形し、加熱乾燥して所定の電極形状にすることにより得ることができる。分極性電極は、例えば、前記電極の片面にアルミニウム等の金属を溶射又は圧接して導電性集電材層を設けたり、前記ペースト状物をアルミニウム等の金属箔に塗布し、加熱乾燥することにより得ることができる。
【0019】
【実施例】
以下の実施例によって本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこの実施例によって何ら限定されるものではない。また、%はwt%である。
【0020】
実施例1
キノリン不溶分(QI)を0.1%以下にした軟ピッチからなる原料精製した石炭系重質油に対し、平均粒子径5μに粉砕した黒鉛微紛を原料油に対し2.5wt%の割合になるよう添加したものを原料とし、ディレードコーカーにて、500℃24時間コーキングをして異方性生コークスを得た。黒鉛微紛は、新日鐵化学株式会社製ニードルコークスLPC−Uを2400℃に加熱したもの(d002=0.338)を用いた。この生コークスを、平均粒径30μmに球状粉砕した。この異方性生コークス1重量部に対し、ペレット状の水酸化カリウムを4重量倍配合し、均一に混合した後、アルゴン気流下で800℃、2hr賦活処理を行った。その後、これを冷却、水洗、乾燥して球状炭素微粉からなる炭素材料を得た。得られた炭素材料の比表面積、静電容量及び内部抵抗の測定結果を表1に示す。
【0021】
比較例
黒鉛粉末を分散させないこと以外は、実施例1と同様に調整し、賦活した炭素材料を得た。得られた炭素材料の比表面積、静電容量及び内部抵抗の測定結果を表1に示す。
【0022】
表面積の測定は、ユアサ アイオニクス製のAUTOSORB1−C装置によりBET表面積を求めた。
【0023】
静電容量の測定は、賦活処理して得られた炭素材とカーボンブラック(ケッチェンブラック)、PTFEを8:1:1になるようにして電極を調製した。電気容量はこれら二枚を重ね合わせキャパシタを作成した。作成したキャパシタの放電電流2.4mA、24mAから静電容量を求めた。電解液はEt4NBF4を用い、放電容量Cは、TOYO SYSTEM製TOSCAT−3000K装置を用い、次の式の放電勾配より求めた。
C=I×(T2−T1)/(V1−V2)
V1:充電電圧の80%となる値
V2:充電電圧の40%となる値
T1:V1における時間
T2:V2における時間
I:放電電量
【0024】
内部抵抗が小さいほど、大電流放電時の静電容量が大きくなると考えられることから、内部抵抗の大きさは、充放電試験に於ける放電初期のIRドロップ量(電流2.4mA)で評価した。
【0025】
【表1】
【0026】
【発明の効果】
本発明の方法によれば、ディレードコーカーで製造した生コークスを原料として、低内部抵抗且つ体積あたりの高静電容量を発現する電気二重層キャパシタ用分極性電極材料を安価に製造が可能となる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、電気二重層キャパシタに用いたときの内部抵抗が低く、体積あたりの容量が高い球状炭素微粉と、これを使用した電気二重層キャパシタに関する。
【0002】
【従来の技術】
電気二重層とは、固体と液体など二つの異なる層が接触すると、その境界面にプラスとマイナスの電荷が存在する状態をいう。この原理を利用し電気を貯蔵したものが、電気二重層キャパシタである。通常使われる電池に比べ、急速充電が可能なこと、化学反応を伴わないので繰り返し充放電による劣化が少ないこと、メンテナンスフリー等非常に優れた特性を示す素子である。
【0003】
電気二重層キャパシタの用途はコンピュータ用のメモリーバックアップに利用されつつあるし、自動車などのパワー用途分野でもハイブリッドカーへの応用展開が活発化している。また、電気二重層キャパシタに活性炭等の多孔質炭素材料を使用することは知られている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
電気二重層キャパシタは、通常使われる電池に比べ、急速充電が可能であるが、充放電特性に影響を及ぼす因子として、電極内の内部抵抗がある。内部抵抗が高いとエネルギー効率が顕著に低下するため、電極内部抵抗を改善するためにいろいろな検討がなされてきた。電極に使用される炭素多孔質に関しては、例えば炭素を黒鉛化し、黒鉛化度を上げる方法(例えば特許文献2参照)や、バインダに導電性材料を混合する方法(例えば特許文献3参照)が提案されてきた。
【0005】
【特許文献1】
特開2001−319837号公報
【特許文献2】
特開1999−139712号公報
【特許文献3】
特開平10−4037号公報
【0006】
内部抵抗低減を目的に、黒鉛化した炭素原料を使用すると、材料の結晶化が進んでいるため、硬くなり、賦活が有効にできなくなる。賦活後に黒鉛化すると、炭素構造の収縮/変形が起こり、賦活過程で生じた細孔構造が消失してしまうという問題がある。バインダの伝導性を上げることは有効ではあるが、多孔質との密着性で改善の余地がある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、比較的安価に、且つ工業的に大量に製造することが可能な生コークスを原料として、内部抵抗が低く、且つ静電容量の高い電気二重層キャパシタを与える球状炭素微粉の製造方法を提供することである。また、他の目的は体積あたりの静電容量の高い電気二重層キャパシタを提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記の課題を解決するため鋭意研究を行った結果、ディレードコーカーにより、石炭あるいは石油系重油等の重質油に導電性物質を添加して得られる生コークスを、原料とすることにより、低内部抵抗且つ高静電容量の電気二重層キャパシタが製造可能であることを見出し、本発明に到った。
【0009】
本発明は、ディレードコーカーで製造する生コークス原料油中に、黒鉛微紛を添加し、導電材含有生コークスを得、次いでこの生コークスを粉砕した後に、アルカリ賦活及び酸化性ガス賦活から選択される1種又は2種の賦活処理をすることを特徴とする炭素微粉の製造方法である。賦活に先立ち、熱処理を行い、炭化度を調整しても良い。ここで、生コークスが石炭系重質油及び石油系重質油から選択される少なくとも1種を原料としてディレードコーカーで製造したものであること、粉砕した平均粒径が1mm以下であること、又は賦活処理温度が生コークスの製造温度を超える温度であることは、本発明の好ましい態様の一つである。
【0010】
また、本発明は、前記の製造方法によって得られた球状炭素微粉からなる多孔質炭素材料であって、電気二重層キャパシタ用の電極材料に使用したとき、体積あたりの静電容量が20F/ml以上であることを特徴とする多孔質炭素材料である。更に、本発明は、前記の球状炭素材料を電極とする電気二重層キャパシタである。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明で使用する原料油は、ピッチ、瀝青物、重油等と称される石炭系又は石油系の重質油が使用可能である。原料の重質油にはキノリン不溶分(QI)が含まれるが、1wt%程度以下に脱QIすると異方性の生コークスが得られ、数%以上であると等方性の生コークスが得られるが、異方性の生コークスが電極用炭素材料として優れる傾向が認められる。しかし、等方性の生コークスであっても電極用炭素材料として優れるものが得られるので、30wt%程度までのQIの存在は差し支えない。また、この生コークスはピッチコークス(特に、ニードルコークス)を製造する際の中間体として多量に得られるので、これを使用することが可能である。
【0012】
本発明で使用する黒鉛粉末は、黒鉛層間距離(d002)が0.340nm以下のものが好ましい。
キッシュ黒鉛や、2000℃以上で熱処理したニードルコークスを公知の方法で粉砕したものが使用できる。黒鉛の粉砕粒度は、平均粒径が、50μ以下、好ましくは30μ以下、更に望ましくは20μ以下にするのが良い。黒鉛粉末は、予め原料油中に、公知の方法で分散して、ディレードコーカーに導入すればよい。添加量は原料油に対し、1−30wt%が良い。10wt%を超えると、得られる生コークス中の黒鉛の割合が過大になり、賦活が十分でなくなる。
【0013】
ディレードコーカーの運転条件は公知の範囲で差し支えなく、通常、400〜600℃程度、5〜50時間程度の条件でディレードコーキングが行われる。ディレードコーキング条件は、好ましくは450〜550℃程度、15〜25時間程度であり、揮発分を5〜15%程度含有する。生コークスは、揮発分を持つことから賦活処理が可能となる。
【0014】
生コークスはディレードコーキング温度が低い場合は、揮発分が高くなり、高温で行う賦活処理時に融着現象が起こり、粉体のまま取出すことができなくなる。このような場合には、表面を酸化して融着現象を抑えることが可能である。酸化は酸化性のガスや液体であれば特に限定するものではなく、コストの面から見れば気体であれば空気、液体であれば硫酸が望ましい。
【0015】
粉砕した生コークスの賦活処理では、アルカリ賦活又は酸化性ガス賦活又は両者の処理を行う。賦活処理温度は、特に限定するものではないが通常400℃以上の高温が必要である。アルカリ賦活の場合は、ディレードコーカーでのコーキング温度を超える温度が好ましく、より好ましくは600〜1000℃である。1000℃を超える温度では、コスト的に増大する。賦活処理時間は、賦活処理温度によって変化するが、通常0.1〜10hr、好ましくは0.5〜5hr程度である。酸化性ガス賦活の場合は、賦活処理温度は400〜700℃程度であり、賦活処理時間は賦活処理温度や酸化性ガスの種類によって変化するが、通常0.05〜5hr、好ましくは0.1〜1hr程度である。
【0016】
アルカリ賦活は、KOH、NaOH、K2CO3等のアルカリを生コークス粉に混合して行う。生コークス粉とアルカリの混合は、固体混合であっても、アルカリ水溶液を含浸させる方法であってもよい。生コークス粉とアルカリの混合割合(重量比)は、0.5〜10程度、好ましくは1〜5程度である。雰囲気は不活性ガス雰囲気が通常であるが、水蒸気等が存在してもよい。酸化性ガス賦活は、空気、酸素、二酸化炭素などの酸化性ガスの存在下で加熱を行う公知の方法を採用できる。また、水蒸気等が存在してもよい。また、上記2つの賦活処理を組合せてもよいし、水蒸気賦活処理を組合せてもよいし、処理条件が合致すれば同時に行ってもよいし、順次行ってもよい。これらの賦活処理の組合せは、生コークスの構造や性状及び目的とされる比表面積や細孔分布とから、考慮し決定すればよい。
【0017】
生コークス粉末を賦活処理して得た球状炭素微粉は、冷却、アルカリを混合した場合はアルカリ除去のための水洗、粉砕等がされた後、キャパシタ用炭素材料として使用することができる。この炭素微粉は、比表面積が100〜2200m2/g程度で、中心細孔径が1〜20μm程度で、平均粒径が1〜40μm程度であることが好ましい。また、この多孔質炭素微粉は、後記する実施例に記載する方法により静電容量を測定したとき、静電容量が20F/ml以上、好ましくは25F/ml以上であることがよい。
【0018】
キャパシタとしては、多孔質炭素材料を使用した電極、電解液及びセパレータを構成要素として含む公知の電気二重層キャパシタがある。このようなキャパシタは、前記公報の他、特開2001−118753号公報等に詳細に記載されているのでこれが参照される。多孔質炭素材料を使用した電極は例えば、前記多孔質炭素材料に、導電材としてのアセチレンブラック、結合材としてのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)及び溶媒を混合してペースト状にし、これを圧縮成形し、加熱乾燥して所定の電極形状にすることにより得ることができる。分極性電極は、例えば、前記電極の片面にアルミニウム等の金属を溶射又は圧接して導電性集電材層を設けたり、前記ペースト状物をアルミニウム等の金属箔に塗布し、加熱乾燥することにより得ることができる。
【0019】
【実施例】
以下の実施例によって本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこの実施例によって何ら限定されるものではない。また、%はwt%である。
【0020】
実施例1
キノリン不溶分(QI)を0.1%以下にした軟ピッチからなる原料精製した石炭系重質油に対し、平均粒子径5μに粉砕した黒鉛微紛を原料油に対し2.5wt%の割合になるよう添加したものを原料とし、ディレードコーカーにて、500℃24時間コーキングをして異方性生コークスを得た。黒鉛微紛は、新日鐵化学株式会社製ニードルコークスLPC−Uを2400℃に加熱したもの(d002=0.338)を用いた。この生コークスを、平均粒径30μmに球状粉砕した。この異方性生コークス1重量部に対し、ペレット状の水酸化カリウムを4重量倍配合し、均一に混合した後、アルゴン気流下で800℃、2hr賦活処理を行った。その後、これを冷却、水洗、乾燥して球状炭素微粉からなる炭素材料を得た。得られた炭素材料の比表面積、静電容量及び内部抵抗の測定結果を表1に示す。
【0021】
比較例
黒鉛粉末を分散させないこと以外は、実施例1と同様に調整し、賦活した炭素材料を得た。得られた炭素材料の比表面積、静電容量及び内部抵抗の測定結果を表1に示す。
【0022】
表面積の測定は、ユアサ アイオニクス製のAUTOSORB1−C装置によりBET表面積を求めた。
【0023】
静電容量の測定は、賦活処理して得られた炭素材とカーボンブラック(ケッチェンブラック)、PTFEを8:1:1になるようにして電極を調製した。電気容量はこれら二枚を重ね合わせキャパシタを作成した。作成したキャパシタの放電電流2.4mA、24mAから静電容量を求めた。電解液はEt4NBF4を用い、放電容量Cは、TOYO SYSTEM製TOSCAT−3000K装置を用い、次の式の放電勾配より求めた。
C=I×(T2−T1)/(V1−V2)
V1:充電電圧の80%となる値
V2:充電電圧の40%となる値
T1:V1における時間
T2:V2における時間
I:放電電量
【0024】
内部抵抗が小さいほど、大電流放電時の静電容量が大きくなると考えられることから、内部抵抗の大きさは、充放電試験に於ける放電初期のIRドロップ量(電流2.4mA)で評価した。
【0025】
【表1】
【0026】
【発明の効果】
本発明の方法によれば、ディレードコーカーで製造した生コークスを原料として、低内部抵抗且つ体積あたりの高静電容量を発現する電気二重層キャパシタ用分極性電極材料を安価に製造が可能となる。
Claims (7)
- ディレードコーカーの原料油中に黒鉛粉末を添加して得た、黒鉛粉末が分散した生コークスを原料とすることを特徴とする炭素微粉の製造方法。
- アルカリ賦活及び酸化性ガス賦活から選択される1種又は2種の賦活処理をすることを特徴とする請求項1記載の炭素微粉の製造方法。
- 生コークスが、石炭系重質油及び石油系重質油から選択される少なくとも1種を原料としてディレードコーカーで製造したものである請求項1または2記載の炭素微粉の製造方法。
- 粉砕した生コークスの平均粒径が、1mm以下である請求項1〜3のいずれかに記載の球状炭素微粉の製造方法。
- 賦活処理温度が、生コークスの製造温度を超える温度である請求項1または2記載の多孔質炭素微粉の製造方法。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法によって得られた炭素微粉からなる炭素材料であって、電気二重層キャパシタ用の電極材料に使用したとき、体積あたりの静電容量が20F/ml以上であることを特徴とするキャパシタ用多孔質炭素材料。
- 請求項4記載の球状炭素材料を電極としたことを特徴とする電気二重層キャパシタ。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003169949A JP2005001969A (ja) | 2003-06-13 | 2003-06-13 | 低内部抵抗炭素微粉の製造方法及び電気二重層キャパシタ |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
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