JP2004345993A - N−ビニル−2−ピロリドンの精製方法、および精製されたn−ビニル−2−ピロリドン - Google Patents
N−ビニル−2−ピロリドンの精製方法、および精製されたn−ビニル−2−ピロリドン Download PDFInfo
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Abstract
【課題】結晶析出工程の段階数を減らして消費されるエネルギーの利用効率を高めつつ、極めて高純度のN−ビニル−2−ピロリドンを得ることのできる精製方法と、該精製方法により精製されたN−ビニル−2−ピロリドンを提供する。
【解決手段】N−ビニル−2−ピロリドンを晶析により精製する方法であって、 N−ビニル−2−ピロリドンの融液からなる母液から結晶を析出させる結晶析出工程と、前記結晶析出工程において得られた結晶を、塔型の精製装置に供給して連続的に精製する連続精製工程を有することを特徴とするN−ビニル−2−ピロリドンの精製方法である。
【解決手段】N−ビニル−2−ピロリドンを晶析により精製する方法であって、 N−ビニル−2−ピロリドンの融液からなる母液から結晶を析出させる結晶析出工程と、前記結晶析出工程において得られた結晶を、塔型の精製装置に供給して連続的に精製する連続精製工程を有することを特徴とするN−ビニル−2−ピロリドンの精製方法である。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、N−ビニル−2−ピロリドンを晶析によって精製する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
N−ビニル−2−ピロリドン(以下「NVP」と略す場合がある)は、ラジカル重合性の化合物としてよく知られており、紫外線硬化型の反応性希釈材などの用途が知られている他、このNVPを重合して得られるポリマーは人体適合性が高く安全性に優れることから、工業品、化粧品、医薬品、食品の各産業分野で広く用いられている。
【0003】
ところで、NVPを合成した後には、精製を施すことが通常行われているが、例えば、一般的な精製方法である蒸留法を実施した場合には、次のような問題が生じることが指摘されている。
【0004】
NVPを蒸留法により精製しても、除去しきれない不純物が精製後のNVP中に残存する。これらの不純物は、NVPを重合して得られるポリマーを、上述の化粧品、医薬品、食品(飲料処理剤など)に適用した場合に、好ましくない臭い、色、味などの原因物質となる。よって、蒸留法による精製NVPでは、上述の用途には不適な場合がある。
【0005】
このような問題を解決すべく、NVPを晶析法により精製して、ポリマーとした場合に上述の問題を引き起こす原因物質となる不純物を、極めて高レベルに除去する技術が提案されている(特許文献1)。この特許文献1には、例えば純度99.4%のNVPから、純度99.99%の高純度NVPを得ることができる旨記載されている。しかしながら、上記特許文献1に開示の技術では、高純度のNVPを得るためには、多段階の晶析工程(結晶析出工程)を経る必要があり、特に熱効率(エネルギー効率)の面で必ずしも好ましい方法とはいえない。
【0006】
また、特許文献2には、特許文献1のこうした問題を考慮して、不純物濃度が高い段階での結晶析出工程の段階数を減らすべく、晶析を実施するための晶出器の表面を、晶出処理開始前にNVPの種晶層で被覆して用いる方法が開示されている。しかし、かかる特許文献2の技術においても、結晶析出工程の低減には限りがあった。
【0007】
【特許文献1】
特表平8−506580号公報
【特許文献2】
特開平9−169724号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記事情の下でなされたものであり、その目的は、結晶析出工程の段階数を減らして消費されるエネルギーの利用効率を高めつつ、極めて高純度のN−ビニル−2−ピロリドンを得ることのできる精製方法と、該精製方法により精製されたN−ビニル−2−ピロリドンを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成し得た本発明の精製方法は、N−ビニル−2−ピロリドンを晶析により精製する方法であって、N−ビニル−2−ピロリドンの融液からなる母液から結晶を析出させる結晶析出工程と、前記結晶析出工程において得られた結晶を塔型の精製装置に供給して連続的に精製する連続精製工程を有するところに要旨が存在する。
【0010】
上記連続精製工程で使用される上記塔型の精製装置としては、N−ビニル−2−ピロリドンの結晶を塔下部に供給するための供給手段と、前記供給手段により供給された結晶を塔頂へ向けて移動させるための移動手段と、塔頂部で結晶の一部を融液とするための加熱手段と、前記加熱手段によって得られた融液を流下させ、塔頂へ向けて移動してくる結晶を該融液で洗浄するための洗浄手段と、前記加熱手段より上方に設けられた洗浄後の結晶回収手段と、前記洗浄後の洗浄液を回収するために塔下部に設けられた洗浄液回収手段を有するものが好適である。
【0011】
なお、上記精製方法は、上記結晶回収手段により回収されたN−ビニル−2−ピロリドンの結晶を融解させ、液体のN−ビニル−2−ピロリドンを得る工程を更に有することが好ましい。また、上記洗浄液回収手段により回収された洗浄液を、母液として上記結晶析出工程に供することも、本発明の好ましい実施形態である。
【0012】
さらに、上記の精製方法によって精製されたN−ビニル−2−ピロリドンも本発明に包含される。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明者等はNVPの精製に当たり、粗NVP融液(母液)から析出させた粗NVP結晶を、特定の精製装置を用いて連続的に精製することで、従来の晶析法よりも必要とするエネルギーを低減しつつ、不純物(例えばNVPから得られるポリマーなどで特に臭気成分となり得る不純物)を除去して、極めて高純度のNVPを得ることが可能であることを見出し、本発明を完成させた。
【0014】
本発明法で用いる原料NVPは、如何なる合成法により得られたものであるかは限定されない。例えば、N−ヒドロキシエチル−2−ピロリドンを気相脱水反応することで得られるものなどが挙げられる。また、かかる合成後に蒸留精製を施したものを用いることも好ましい(後述する)。以下、本発明の精製方法を工程ごとに詳細に説明する。
【0015】
[結晶析出工程]
結晶析出工程は、NVP(粗NVP)の融液からなる母液から結晶を析出させる工程である。NVPは融点が13.5℃の物質であり、常温(例えば25℃)では液体(融液)である。よって、NVP融液からなる母液を冷却することでNVPの結晶を析出させることができる。
【0016】
NVP結晶の析出方法やその条件は特に限定されない。例えば、従来からNVPの晶析に用いられている方法や条件を採用することができる。また、本発明法では、後述の連続精製工程において、NVP結晶中に存在する不純物を高度に除去できるため、母液(NVP融液)の全量を冷却(例えば冷却温度:−20〜10℃)して得られる結晶を用いても構わない。母液の全量を冷却する方法は特に限定されないが、例えば表面温度を上記の冷却温度の範囲内としたドラムフレーカーなどを用いる方法が採用できる。
【0017】
この他、横型多段冷却晶析装置(CDC)を用いて、母液から連続的に結晶を析出させる方法も好ましい。このCDCは、連続的に供給される原料NVP(母液)を、内部に設けられた複数の冷却板によって冷却し、連続的に結晶を析出させることができるものである。析出した結晶を含む母液(スラリー)は、CDCから排出させて濾過するなどし、NVP結晶を濾取する。NVP結晶の濾取方法(スラリーの濾過方法)は特に限定されず、従来公知の方法が採用できるが、例えば、濾過機能を有するベルトを備えた濾過器(ベルト状の濾過器)を使用することが好ましく、この場合には、連続的なスラリーの濾過・結晶の濾取が可能であると共に、濾取した結晶を該濾過器によって後述の連続精製工程で使用する塔型の精製装置に連続的に供給することもできる。ちなみに、上記CDC(ガウダ社製)は、呉羽テクノエンジ株式会社から入手可能である。
【0018】
なお、上記スラリーから得られる濾液は、晶析原料として再利用することが好ましい。また、CDC以外の結晶析出手段を用いて、結晶と母液とのスラリーが得られる場合にも、上述の如き濾過方法などによって結晶を濾取して連続精製工程に供すると共に、濾液を晶析原料として再利用することが推奨される。CDCを用いる場合の好ましい実施態様としては、例えば、上記濾液と、後述の連続精製工程で回収される洗浄液を合わせて一旦タンクなどに貯め、これらを晶析原料としてCDCに供給することが挙げられる。また、一度も晶析に供していないバージンの原料NVPについても、上記タンクなどに投入して上記濾液および洗浄液と混合し、これらの混合液をCDCに供給することも推奨される。
【0019】
なお、上述の濾液(および洗浄液)を晶析原料(母液)として再利用する場合には、結晶の析出が進むに従って母液中の不純物が濃縮されるが、かかる不純物濃度が増大しすぎた状態で析出させた結晶から得られる精製NVPでは、品質(不純物濃度)が劣る場合がある。よって、精製NVPの品質に影響を及ぼさない範囲内で母液中の不純物濃度を一定に保つように制御することが好ましい。
【0020】
CDCにおける母液の不純物濃度の制御は、例えば、母液中の不純物が制御すべき濃度となった時点で、CDCから排出されたスラリーを濾過して得られる濾液の一部または全部を、CDCに再供給せずに廃棄しつつ、バージンの原料NVP(および上記洗浄液、並びに上記濾液の一部)をCDCに供給して装置内の液量を一定に保つことで達成される。
【0021】
こうした事情を考慮して、例えばCDCでは、母液の不純物濃度が、10%以下程度(好ましくは6%以下)となるように制御することが好ましい。母液の不純物濃度が上記範囲を超えるときには、上述したように、最終的に得られる精製NVPの品質が劣る場合がある。例えば、バージンの原料NVPの純度が99.9%(不純物濃度が0.1%)の場合、CDCでの不純物の濃縮率で10〜100倍程度(好ましくは20〜80倍)であることが推奨される。母液の不純物の濃縮率が上記範囲を下回るように制御すると、廃棄されるNVP量が多くなるため好ましくない。ちなみに、母液の不純物濃度と、原料NVPのロス率(廃棄されるNVP率)との関係は、下記式(1)により表される。
原料NVPのロス率(%)=100/X (1)
ここで、Xは、原料NVPの不純物濃度に対するCDC内での母液の不純物濃度(倍)である。
【0022】
また、CDC内での結晶析出後の母液(結晶と母液の混合スラリー)では、装置内での良好な流動性を確保する観点から、スラリー濃度(スラリー中の結晶濃度)が5〜60質量%となるように結晶の析出量(析出速度)を調整することが好ましい。より好ましいスラリー濃度は10〜50質量%である。このスラリー濃度は、CDCへの原料供給速度および冷却温度を調整することで制御できる。
【0023】
なお、CDCによれば、NVP結晶の析出速度(NVP結晶の生産速度)を非常に高めることが可能となる。ちなみに、速い析出速度で得られるNVP結晶中には、通常、不純物が比較的多く残留するが、上述の通り、本発明法では、後述の連続精製工程において該不純物を高度に除去できるため、この結晶析出工程で得られるNVP結晶が比較的多くの不純物を含有していても差し支えない。
【0024】
この結晶析出工程がNVPの晶析精製において、最もエネルギーを消費する工程であり、従来法では、99.99%程度の純度のNVPを得るために、2段階以上の結晶析出工程(晶析工程)を必要としていたが、本発明法では結晶析出工程は1段階のみでも、十分に前記と同じレベルかそれ以上の純度のNVPを得ることができる。よって、従来法に比べ、格段に消費エネルギーを低減することができる。
【0025】
ただし、例えば、極めて純度の低いNVPを原料とする場合や、精製後のNVPの純度を更に高める必要がある場合には、この結晶析出工程を2段階以上設けてもよい。こうした場合であっても、従来の晶析法に比べれば、同程度の純度のNVPを得るに当たり、結晶析出工程の段階数を少なくすることが可能である。
【0026】
[連続精製工程]
この工程は、上記結晶析出工程を経て得られたNVP結晶(粗結晶)について、連続的に精製を施して、極めて純度の高いNVP結晶を得るためのものである。
【0027】
本工程においては、塔型の精製装置を使用する。この塔型の精製装置は、具体的には、下記の各手段を有するものである。
(1)NVP粗結晶を塔下部に供給するための供給手段;
(2)上記供給手段により供給されたNVP粗結晶を塔頂へ向けて移動させるための移動手段;
(3)塔頂部でNVP結晶の一部を融液とするための加熱手段;
(4)上記加熱手段によって得られたNVP融液を流下させ、塔頂へ向けて移動してくるNVP粗結晶を洗浄するための洗浄手段;
(5)上記加熱手段より上方に設けられた洗浄後の結晶回収手段;
(6)上記洗浄後の洗浄液を回収するために塔下部に設けられた洗浄液回収手段。
【0028】
以下、上記塔型の精製装置を、図を示して説明する。図1は、本発明法で好適に用いられる塔型の精製装置の一例を示す縦断面模式図である。結晶析出工程を経て得られたNVP粗結晶は、塔下部に設けられた供給手段1(スクリューフィーダーなど)によって塔内に連続供給される。
【0029】
塔内に供給されたNVP粗結晶は、移動手段2によって塔頂へ向けて移動させる。この移動手段2としては、例えば、互いに反対方向に回転する2本の特殊な羽付きの撹拌軸が適用されるが、該撹拌軸を比較的低速で回転させてNVP粗結晶を移動させることで、該粗結晶の精製は十分に達成される。ただし、図1では上記2本の撹拌軸のうち、1本のみを示している。
【0030】
なお、後述するように、NVP粗結晶は、この移動手段2によって塔頂へ到達する間に洗浄されて精製物となる。
【0031】
上記精製装置では、NVP結晶の一部を融解するための加熱手段3が、塔頂部に設けられている。精製装置の洗浄手段では、この加熱手段3によって得られる融液を塔内を流下させ、塔頂へ向けて移動してくるNVP粗結晶を該融液によって洗浄し、精製物とする。よって、加熱手段3によって一部融解されるNVP結晶は、実質的に洗浄後のもの(精製物)である。
【0032】
NVP粗結晶では、不純物が混入している部分において融点降下現象が生じるため、NVP本来の融点(13.5℃)よりも低い温度で融解が始まる。よって、上述の融液によってNVP粗結晶が洗浄されると、不純物の混入部分が他の部分よりも優先的に融解するため、NVP粗結晶から不純物が選択的に排除される。こうした不純物の選択的な排除現象はNVP粗結晶表面のみならず、NVP粗結晶内部に存在する不純物においても生じ得る。すなわち、上記のNVP粗結晶内部に存在する不純物は、恰もNVP粗結晶が発汗するかのように選択的に結晶外部に排除されるのである。こうしたことから、本発明法による精製後のNVP結晶では、従来の晶析法によるNVP結晶とは異なり、この発汗現象に基づいて不純物が結晶外部に排除された痕跡(すなわち孔)が観察される。
【0033】
また、例えば従来の蒸留法による精製では、NVPに含有される不純物の沸点によっては、実質的に除去できない場合があるが、本発明法で利用する上述の「発汗現象」は、NVPの融点降下現象に基づいており、この融点降下現象は、含有される不純物の融点の高低に関わらず生じ得る。よって、本発明法では、含有される不純物の融点の高低に関わらず、上記発汗現象の利用によって、NVP粗結晶から排除することができる。
【0034】
加熱手段3は特に限定されず、例えば、加熱用ジャケットや、コイル状の管を塔内に設置し、該管内に温水などの加熱用媒体を通過させる手段など、公知の加熱手段が適用できる。
【0035】
このようにしてNVP結晶の融液により洗浄されたNVP結晶(精製物)は、加熱手段3より上方に設けられた結晶回収手段4によって塔外に排出・回収される。この結晶回収手段4も特に限定されず、例えば単なる取り出し口を設けておき、移動手段2の動力によって結晶を塔外に排出する機構であってもよい。
【0036】
他方、上記洗浄後の洗浄液(NVP粗結晶から排除された不純物を含む融液)は、塔下部まで到達した時点で洗浄液回収手段5によって塔外に排出・回収される。なお、洗浄液中のNVP融液の一部は塔下部に到達する前に再結晶化するため、塔下部まで到達した洗浄液は、NVP結晶を含むスラリーであることが通常である。よって、洗浄液回収手段5としては、例えば、NVP融液を含む液体部分とNVP結晶を分離するための分離手段5aと、結晶分離後の洗浄液を塔外へ排出・回収するための排出口5bなどを有するものが好ましい。分離手段5aは特に限定されず、公知の濾過装置などが適用可能である。この分離手段5aにより分離されたNVP結晶は、移動手段2によって再度塔頂へ向けて移動し、上記の洗浄が行われる。また、上記洗浄によってNVP粗結晶から排除された不純物の多くは分離手段5aによる分離後の洗浄液に含まれた状態で、排出口5bを通じて塔外に排出される。塔外に排出された洗浄液は、上述した通り、母液として上記結晶析出工程に供することが、精製効率を高める観点から好ましい。
【0037】
上記の如き塔型の精製装置としては、例えば呉羽テクノエンジ株式会社製の「呉羽連続結晶精製装置(KCP)」が挙げられる。このKCPを用いる場合の操業条件としては、塔内へのNVP粗結晶の供給速度に対する、洗浄手段に用いるために融解させるNVP結晶の速度の比率(以下、「還流率」という場合がある)が重要な操作変数となる。例えば、上記還流率を、5〜70質量%とすることが好ましく、10〜50質量%とすることがより好ましい。
【0038】
[その他の工程]
NVPは上記の通り、融点が13.5℃と常温よりも低いため、その製品形態は、通常液体である。よって、本発明法では、上記の各工程に加えて、上記連続精製工程で得られたNVP結晶(精製物)を融解させて液体のNVPとする工程を有することが好ましい。かかる融解工程における融解方法および条件は特に限定されず、従来のNVP晶析法によって得られたNVP結晶を融解させる際に用いられている公知の方法や条件を採用することができる。また、上記連続精製工程で用いる塔型の精製装置において、上記結晶回収手段が、NVP結晶を融解させるための結晶融解手段(結晶融解器など)を兼ね備えていることも好ましく、この場合は、上記連続精製工程を経て得られる精製NVPを、液体として連続的に回収することができる。
【0039】
また、上記結晶析出工程に供する原料NVPとしては、合成後のNVPをそのまま適用してもよいが、上記の通り、例えば従来公知の蒸留法によって一旦精製した後のNVPを適用することも、NVP純度をより高め得ることから好ましい。よって、本発明法では、上記結晶析出工程に先立って、NVPの蒸留工程を有することも推奨される。蒸留工程で用いられる方法や条件も特に限定されず、従来公知の方法・条件を採用すればよい。
【0040】
本発明法は、消費されるエネルギーの利用効率を高めつつ、極めて高い純度のNVPを得ることができるものであり、例えば、結晶析出工程における晶析操作を1段階のみとして、純度96質量%程度の粗NVP(上記結晶析出工程における母液)から、99.996質量%程度の高純度NVPを得ることができる。
【0041】
【実施例】
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に述べる。ただし、下記実施例は本発明を制限するものではなく、前・後記の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施をすることは、全て本発明の技術的範囲に包含される。なお、本実施例における「%」、「ppm」は特に断らない限り質量基準である。
【0042】
本実施例では、原料NVPとして、N−ヒドロキシエチル−2−ピロリドンを気相脱水反応した後、公知の蒸留法で精製したものを用いた。かかる原料NVPの組成は、NVP:99.92%、有機不純物:550ppm、軽沸類(臭気成分):50ppm、水:200ppm、である。
【0043】
なお、原料NVPおよび後述の各実施例における精製後のNVPの組成は、有機物についてはガスクロマトグラフィーで、水についてはカールフィッシャー法で分析した。ガスクロマトグラフィーでは、0.5ppmまで定量可能な条件で分析を行った。
【0044】
<実験1(NVPの精製)>
実施例1
原料NVPを、表面温度を約0℃に保ったドラムフレーカーによって全量凍らせ、粗結晶とした。このNVP粗結晶を、塔径:3インチ、高さ:約1mの塔型精製装置(呉羽テクノエンジ株式会社製「KCP」)に、12kg/hrの速度で供給した。
【0045】
塔型精製装置の塔頂部の加熱手段(融解器)によるNVP結晶の融解速度を3.6kg/hrに調整し、融液(還流液)とした。このときの融液の還流率は30%である。塔内で精製されたNVPは、塔頂部の結晶回収手段に備えられた結晶融解器を用いて融解させ、液状のNVPを8.4kg/hrの速度で得た。得られたNVPの純度は99.9991%であった。
【0046】
実施例2
塔型精製装置におけるNVP融液(還流液)の還流率が40%となるように調整した他は、実施例1と同様にして精製を行い、液状のNVPを7.2kg/hrの速度で得た。得られたNVPの純度は99.9993%であった。
【0047】
実施例3
原料NVP(母液)を横型多段冷却晶析装置(CDC、ガウダ社製)に連続的に供給し、NVP粗結晶を含む母液(スラリー)とした。原料NVPの供給速度は75kg/hrとし、スラリー濃度が20%となるように調整してCDCの運転を行った。すわなち、このCDCでのNVP粗結晶の発生速度は15kg/hrである。
【0048】
次いで、上記スラリーをCDCから排出し、ベルト状の濾過器で濾過して、濾取したNVP粗結晶を連続的に塔型精製装置に供給した。使用した塔型精製装置は、実施例1で用いたのと同じものである。塔型精製装置では、NVP融液の還流率が30%となるように調整して精製を行い、液状のNVPを10.5kg/hrの速度で得た。得られたNVPについて組成を分析した結果、含有量が0.5ppm以上の不純物は存在しておらず、分析上の純度は100%であった。
【0049】
実施例4
実施例3において、CDCから排出したスラリーをベルト状の濾過器で濾過して得られた濾液、および塔型精製装置から排出された洗浄液(NVP粗結晶中の不純物を含むNVP融液)、並びに原料NVP(バージン品)を、合計で64.5kg/hrの速度でCDCに供給して母液とした他は、実施例3と同様にしてCDCの連続運転を行ってNVP粗結晶を析出させると共に、母液中の不純物濃度を高めていった。なお、原料NVP(バージン品)の供給速度は、10.5kg/hrとした。CDCから得られたNVP粗結晶は、実施例3と同様にして塔型精製装置で精製を連続的に実施した。
【0050】
CDC内の母液の不純物濃度が原料NVP(バージン品)の40倍になった時点で、CDCに供給される原料NVP(バージン品)に対して2.5%の量、すなわち、0.25kg/hrの速度で、CDCから排出したスラリーを濾過した後の濾液を廃棄しながら運転を継続し、CDC内の母液の不純物濃度を一定に保った。つまり、本実施例において精製に供されるNVPのロス率は2.5%である。
【0051】
CDCでの運転が安定してきた時点で、塔型精製装置から得られた液状のNVPを分析したところ、その純度は99.9964%であった。
【0052】
実施例5
CDC内の母液の不純物濃度が原料NVPの25倍となった時点で、CDCに供給される原料NVPに対して4%の量、すなわち、0.4kg/hrの速度で、CDCから排出したスラリーを濾過した後の濾液を廃棄しながら運転を継続し、CDC内の母液の不純物濃度を一定に保った他は、実施例4と同様にしてNVP粗結晶を得ると共に、塔型精製装置によって精製を行い、液状のNVPを得た。つまり、本実施例において精製に供されるNVPのロス率は4%である。
【0053】
CDCでの運転が安定してきた時点で、塔型精製装置から得られた液状のNVPを分析したところ、その純度は99.9975%であった。
【0054】
<実験2(NVPの重合物の評価)>
実施例1〜5により得られた精製後のNVPを用い、濃度30%の水溶液とし、アゾイソブチロニトリルを開始剤に用いてNVPのポリマーを得たが、これらのポリマーでは、原料NVPを精製せずに重合して得られるポリマーで確認される臭気がなくなっていた。
【0055】
【発明の効果】
本発明は以上のように構成されており、従来の晶析法に比べ、消費エネルギーを格段に低減しつつ、極めて高純度のNVPを精製する方法を提供することができた。本発明法によって精製された本発明のNVPでは、例えばポリマーとした場合に、蒸留法などの精製法で得られたNVPから形成されるポリマーにおいて問題となっていた臭気、味、着色を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明法の実施に用いられる塔型の精製装置の一例を示す横断面模式図である。
【符号の説明】
1 供給手段
2 移動手段
3 加熱手段
4 結晶回収手段
5 洗浄液回収手段
5a 分離手段
5b 排出口
【発明の属する技術分野】
本発明は、N−ビニル−2−ピロリドンを晶析によって精製する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
N−ビニル−2−ピロリドン(以下「NVP」と略す場合がある)は、ラジカル重合性の化合物としてよく知られており、紫外線硬化型の反応性希釈材などの用途が知られている他、このNVPを重合して得られるポリマーは人体適合性が高く安全性に優れることから、工業品、化粧品、医薬品、食品の各産業分野で広く用いられている。
【0003】
ところで、NVPを合成した後には、精製を施すことが通常行われているが、例えば、一般的な精製方法である蒸留法を実施した場合には、次のような問題が生じることが指摘されている。
【0004】
NVPを蒸留法により精製しても、除去しきれない不純物が精製後のNVP中に残存する。これらの不純物は、NVPを重合して得られるポリマーを、上述の化粧品、医薬品、食品(飲料処理剤など)に適用した場合に、好ましくない臭い、色、味などの原因物質となる。よって、蒸留法による精製NVPでは、上述の用途には不適な場合がある。
【0005】
このような問題を解決すべく、NVPを晶析法により精製して、ポリマーとした場合に上述の問題を引き起こす原因物質となる不純物を、極めて高レベルに除去する技術が提案されている(特許文献1)。この特許文献1には、例えば純度99.4%のNVPから、純度99.99%の高純度NVPを得ることができる旨記載されている。しかしながら、上記特許文献1に開示の技術では、高純度のNVPを得るためには、多段階の晶析工程(結晶析出工程)を経る必要があり、特に熱効率(エネルギー効率)の面で必ずしも好ましい方法とはいえない。
【0006】
また、特許文献2には、特許文献1のこうした問題を考慮して、不純物濃度が高い段階での結晶析出工程の段階数を減らすべく、晶析を実施するための晶出器の表面を、晶出処理開始前にNVPの種晶層で被覆して用いる方法が開示されている。しかし、かかる特許文献2の技術においても、結晶析出工程の低減には限りがあった。
【0007】
【特許文献1】
特表平8−506580号公報
【特許文献2】
特開平9−169724号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記事情の下でなされたものであり、その目的は、結晶析出工程の段階数を減らして消費されるエネルギーの利用効率を高めつつ、極めて高純度のN−ビニル−2−ピロリドンを得ることのできる精製方法と、該精製方法により精製されたN−ビニル−2−ピロリドンを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成し得た本発明の精製方法は、N−ビニル−2−ピロリドンを晶析により精製する方法であって、N−ビニル−2−ピロリドンの融液からなる母液から結晶を析出させる結晶析出工程と、前記結晶析出工程において得られた結晶を塔型の精製装置に供給して連続的に精製する連続精製工程を有するところに要旨が存在する。
【0010】
上記連続精製工程で使用される上記塔型の精製装置としては、N−ビニル−2−ピロリドンの結晶を塔下部に供給するための供給手段と、前記供給手段により供給された結晶を塔頂へ向けて移動させるための移動手段と、塔頂部で結晶の一部を融液とするための加熱手段と、前記加熱手段によって得られた融液を流下させ、塔頂へ向けて移動してくる結晶を該融液で洗浄するための洗浄手段と、前記加熱手段より上方に設けられた洗浄後の結晶回収手段と、前記洗浄後の洗浄液を回収するために塔下部に設けられた洗浄液回収手段を有するものが好適である。
【0011】
なお、上記精製方法は、上記結晶回収手段により回収されたN−ビニル−2−ピロリドンの結晶を融解させ、液体のN−ビニル−2−ピロリドンを得る工程を更に有することが好ましい。また、上記洗浄液回収手段により回収された洗浄液を、母液として上記結晶析出工程に供することも、本発明の好ましい実施形態である。
【0012】
さらに、上記の精製方法によって精製されたN−ビニル−2−ピロリドンも本発明に包含される。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明者等はNVPの精製に当たり、粗NVP融液(母液)から析出させた粗NVP結晶を、特定の精製装置を用いて連続的に精製することで、従来の晶析法よりも必要とするエネルギーを低減しつつ、不純物(例えばNVPから得られるポリマーなどで特に臭気成分となり得る不純物)を除去して、極めて高純度のNVPを得ることが可能であることを見出し、本発明を完成させた。
【0014】
本発明法で用いる原料NVPは、如何なる合成法により得られたものであるかは限定されない。例えば、N−ヒドロキシエチル−2−ピロリドンを気相脱水反応することで得られるものなどが挙げられる。また、かかる合成後に蒸留精製を施したものを用いることも好ましい(後述する)。以下、本発明の精製方法を工程ごとに詳細に説明する。
【0015】
[結晶析出工程]
結晶析出工程は、NVP(粗NVP)の融液からなる母液から結晶を析出させる工程である。NVPは融点が13.5℃の物質であり、常温(例えば25℃)では液体(融液)である。よって、NVP融液からなる母液を冷却することでNVPの結晶を析出させることができる。
【0016】
NVP結晶の析出方法やその条件は特に限定されない。例えば、従来からNVPの晶析に用いられている方法や条件を採用することができる。また、本発明法では、後述の連続精製工程において、NVP結晶中に存在する不純物を高度に除去できるため、母液(NVP融液)の全量を冷却(例えば冷却温度:−20〜10℃)して得られる結晶を用いても構わない。母液の全量を冷却する方法は特に限定されないが、例えば表面温度を上記の冷却温度の範囲内としたドラムフレーカーなどを用いる方法が採用できる。
【0017】
この他、横型多段冷却晶析装置(CDC)を用いて、母液から連続的に結晶を析出させる方法も好ましい。このCDCは、連続的に供給される原料NVP(母液)を、内部に設けられた複数の冷却板によって冷却し、連続的に結晶を析出させることができるものである。析出した結晶を含む母液(スラリー)は、CDCから排出させて濾過するなどし、NVP結晶を濾取する。NVP結晶の濾取方法(スラリーの濾過方法)は特に限定されず、従来公知の方法が採用できるが、例えば、濾過機能を有するベルトを備えた濾過器(ベルト状の濾過器)を使用することが好ましく、この場合には、連続的なスラリーの濾過・結晶の濾取が可能であると共に、濾取した結晶を該濾過器によって後述の連続精製工程で使用する塔型の精製装置に連続的に供給することもできる。ちなみに、上記CDC(ガウダ社製)は、呉羽テクノエンジ株式会社から入手可能である。
【0018】
なお、上記スラリーから得られる濾液は、晶析原料として再利用することが好ましい。また、CDC以外の結晶析出手段を用いて、結晶と母液とのスラリーが得られる場合にも、上述の如き濾過方法などによって結晶を濾取して連続精製工程に供すると共に、濾液を晶析原料として再利用することが推奨される。CDCを用いる場合の好ましい実施態様としては、例えば、上記濾液と、後述の連続精製工程で回収される洗浄液を合わせて一旦タンクなどに貯め、これらを晶析原料としてCDCに供給することが挙げられる。また、一度も晶析に供していないバージンの原料NVPについても、上記タンクなどに投入して上記濾液および洗浄液と混合し、これらの混合液をCDCに供給することも推奨される。
【0019】
なお、上述の濾液(および洗浄液)を晶析原料(母液)として再利用する場合には、結晶の析出が進むに従って母液中の不純物が濃縮されるが、かかる不純物濃度が増大しすぎた状態で析出させた結晶から得られる精製NVPでは、品質(不純物濃度)が劣る場合がある。よって、精製NVPの品質に影響を及ぼさない範囲内で母液中の不純物濃度を一定に保つように制御することが好ましい。
【0020】
CDCにおける母液の不純物濃度の制御は、例えば、母液中の不純物が制御すべき濃度となった時点で、CDCから排出されたスラリーを濾過して得られる濾液の一部または全部を、CDCに再供給せずに廃棄しつつ、バージンの原料NVP(および上記洗浄液、並びに上記濾液の一部)をCDCに供給して装置内の液量を一定に保つことで達成される。
【0021】
こうした事情を考慮して、例えばCDCでは、母液の不純物濃度が、10%以下程度(好ましくは6%以下)となるように制御することが好ましい。母液の不純物濃度が上記範囲を超えるときには、上述したように、最終的に得られる精製NVPの品質が劣る場合がある。例えば、バージンの原料NVPの純度が99.9%(不純物濃度が0.1%)の場合、CDCでの不純物の濃縮率で10〜100倍程度(好ましくは20〜80倍)であることが推奨される。母液の不純物の濃縮率が上記範囲を下回るように制御すると、廃棄されるNVP量が多くなるため好ましくない。ちなみに、母液の不純物濃度と、原料NVPのロス率(廃棄されるNVP率)との関係は、下記式(1)により表される。
原料NVPのロス率(%)=100/X (1)
ここで、Xは、原料NVPの不純物濃度に対するCDC内での母液の不純物濃度(倍)である。
【0022】
また、CDC内での結晶析出後の母液(結晶と母液の混合スラリー)では、装置内での良好な流動性を確保する観点から、スラリー濃度(スラリー中の結晶濃度)が5〜60質量%となるように結晶の析出量(析出速度)を調整することが好ましい。より好ましいスラリー濃度は10〜50質量%である。このスラリー濃度は、CDCへの原料供給速度および冷却温度を調整することで制御できる。
【0023】
なお、CDCによれば、NVP結晶の析出速度(NVP結晶の生産速度)を非常に高めることが可能となる。ちなみに、速い析出速度で得られるNVP結晶中には、通常、不純物が比較的多く残留するが、上述の通り、本発明法では、後述の連続精製工程において該不純物を高度に除去できるため、この結晶析出工程で得られるNVP結晶が比較的多くの不純物を含有していても差し支えない。
【0024】
この結晶析出工程がNVPの晶析精製において、最もエネルギーを消費する工程であり、従来法では、99.99%程度の純度のNVPを得るために、2段階以上の結晶析出工程(晶析工程)を必要としていたが、本発明法では結晶析出工程は1段階のみでも、十分に前記と同じレベルかそれ以上の純度のNVPを得ることができる。よって、従来法に比べ、格段に消費エネルギーを低減することができる。
【0025】
ただし、例えば、極めて純度の低いNVPを原料とする場合や、精製後のNVPの純度を更に高める必要がある場合には、この結晶析出工程を2段階以上設けてもよい。こうした場合であっても、従来の晶析法に比べれば、同程度の純度のNVPを得るに当たり、結晶析出工程の段階数を少なくすることが可能である。
【0026】
[連続精製工程]
この工程は、上記結晶析出工程を経て得られたNVP結晶(粗結晶)について、連続的に精製を施して、極めて純度の高いNVP結晶を得るためのものである。
【0027】
本工程においては、塔型の精製装置を使用する。この塔型の精製装置は、具体的には、下記の各手段を有するものである。
(1)NVP粗結晶を塔下部に供給するための供給手段;
(2)上記供給手段により供給されたNVP粗結晶を塔頂へ向けて移動させるための移動手段;
(3)塔頂部でNVP結晶の一部を融液とするための加熱手段;
(4)上記加熱手段によって得られたNVP融液を流下させ、塔頂へ向けて移動してくるNVP粗結晶を洗浄するための洗浄手段;
(5)上記加熱手段より上方に設けられた洗浄後の結晶回収手段;
(6)上記洗浄後の洗浄液を回収するために塔下部に設けられた洗浄液回収手段。
【0028】
以下、上記塔型の精製装置を、図を示して説明する。図1は、本発明法で好適に用いられる塔型の精製装置の一例を示す縦断面模式図である。結晶析出工程を経て得られたNVP粗結晶は、塔下部に設けられた供給手段1(スクリューフィーダーなど)によって塔内に連続供給される。
【0029】
塔内に供給されたNVP粗結晶は、移動手段2によって塔頂へ向けて移動させる。この移動手段2としては、例えば、互いに反対方向に回転する2本の特殊な羽付きの撹拌軸が適用されるが、該撹拌軸を比較的低速で回転させてNVP粗結晶を移動させることで、該粗結晶の精製は十分に達成される。ただし、図1では上記2本の撹拌軸のうち、1本のみを示している。
【0030】
なお、後述するように、NVP粗結晶は、この移動手段2によって塔頂へ到達する間に洗浄されて精製物となる。
【0031】
上記精製装置では、NVP結晶の一部を融解するための加熱手段3が、塔頂部に設けられている。精製装置の洗浄手段では、この加熱手段3によって得られる融液を塔内を流下させ、塔頂へ向けて移動してくるNVP粗結晶を該融液によって洗浄し、精製物とする。よって、加熱手段3によって一部融解されるNVP結晶は、実質的に洗浄後のもの(精製物)である。
【0032】
NVP粗結晶では、不純物が混入している部分において融点降下現象が生じるため、NVP本来の融点(13.5℃)よりも低い温度で融解が始まる。よって、上述の融液によってNVP粗結晶が洗浄されると、不純物の混入部分が他の部分よりも優先的に融解するため、NVP粗結晶から不純物が選択的に排除される。こうした不純物の選択的な排除現象はNVP粗結晶表面のみならず、NVP粗結晶内部に存在する不純物においても生じ得る。すなわち、上記のNVP粗結晶内部に存在する不純物は、恰もNVP粗結晶が発汗するかのように選択的に結晶外部に排除されるのである。こうしたことから、本発明法による精製後のNVP結晶では、従来の晶析法によるNVP結晶とは異なり、この発汗現象に基づいて不純物が結晶外部に排除された痕跡(すなわち孔)が観察される。
【0033】
また、例えば従来の蒸留法による精製では、NVPに含有される不純物の沸点によっては、実質的に除去できない場合があるが、本発明法で利用する上述の「発汗現象」は、NVPの融点降下現象に基づいており、この融点降下現象は、含有される不純物の融点の高低に関わらず生じ得る。よって、本発明法では、含有される不純物の融点の高低に関わらず、上記発汗現象の利用によって、NVP粗結晶から排除することができる。
【0034】
加熱手段3は特に限定されず、例えば、加熱用ジャケットや、コイル状の管を塔内に設置し、該管内に温水などの加熱用媒体を通過させる手段など、公知の加熱手段が適用できる。
【0035】
このようにしてNVP結晶の融液により洗浄されたNVP結晶(精製物)は、加熱手段3より上方に設けられた結晶回収手段4によって塔外に排出・回収される。この結晶回収手段4も特に限定されず、例えば単なる取り出し口を設けておき、移動手段2の動力によって結晶を塔外に排出する機構であってもよい。
【0036】
他方、上記洗浄後の洗浄液(NVP粗結晶から排除された不純物を含む融液)は、塔下部まで到達した時点で洗浄液回収手段5によって塔外に排出・回収される。なお、洗浄液中のNVP融液の一部は塔下部に到達する前に再結晶化するため、塔下部まで到達した洗浄液は、NVP結晶を含むスラリーであることが通常である。よって、洗浄液回収手段5としては、例えば、NVP融液を含む液体部分とNVP結晶を分離するための分離手段5aと、結晶分離後の洗浄液を塔外へ排出・回収するための排出口5bなどを有するものが好ましい。分離手段5aは特に限定されず、公知の濾過装置などが適用可能である。この分離手段5aにより分離されたNVP結晶は、移動手段2によって再度塔頂へ向けて移動し、上記の洗浄が行われる。また、上記洗浄によってNVP粗結晶から排除された不純物の多くは分離手段5aによる分離後の洗浄液に含まれた状態で、排出口5bを通じて塔外に排出される。塔外に排出された洗浄液は、上述した通り、母液として上記結晶析出工程に供することが、精製効率を高める観点から好ましい。
【0037】
上記の如き塔型の精製装置としては、例えば呉羽テクノエンジ株式会社製の「呉羽連続結晶精製装置(KCP)」が挙げられる。このKCPを用いる場合の操業条件としては、塔内へのNVP粗結晶の供給速度に対する、洗浄手段に用いるために融解させるNVP結晶の速度の比率(以下、「還流率」という場合がある)が重要な操作変数となる。例えば、上記還流率を、5〜70質量%とすることが好ましく、10〜50質量%とすることがより好ましい。
【0038】
[その他の工程]
NVPは上記の通り、融点が13.5℃と常温よりも低いため、その製品形態は、通常液体である。よって、本発明法では、上記の各工程に加えて、上記連続精製工程で得られたNVP結晶(精製物)を融解させて液体のNVPとする工程を有することが好ましい。かかる融解工程における融解方法および条件は特に限定されず、従来のNVP晶析法によって得られたNVP結晶を融解させる際に用いられている公知の方法や条件を採用することができる。また、上記連続精製工程で用いる塔型の精製装置において、上記結晶回収手段が、NVP結晶を融解させるための結晶融解手段(結晶融解器など)を兼ね備えていることも好ましく、この場合は、上記連続精製工程を経て得られる精製NVPを、液体として連続的に回収することができる。
【0039】
また、上記結晶析出工程に供する原料NVPとしては、合成後のNVPをそのまま適用してもよいが、上記の通り、例えば従来公知の蒸留法によって一旦精製した後のNVPを適用することも、NVP純度をより高め得ることから好ましい。よって、本発明法では、上記結晶析出工程に先立って、NVPの蒸留工程を有することも推奨される。蒸留工程で用いられる方法や条件も特に限定されず、従来公知の方法・条件を採用すればよい。
【0040】
本発明法は、消費されるエネルギーの利用効率を高めつつ、極めて高い純度のNVPを得ることができるものであり、例えば、結晶析出工程における晶析操作を1段階のみとして、純度96質量%程度の粗NVP(上記結晶析出工程における母液)から、99.996質量%程度の高純度NVPを得ることができる。
【0041】
【実施例】
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に述べる。ただし、下記実施例は本発明を制限するものではなく、前・後記の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施をすることは、全て本発明の技術的範囲に包含される。なお、本実施例における「%」、「ppm」は特に断らない限り質量基準である。
【0042】
本実施例では、原料NVPとして、N−ヒドロキシエチル−2−ピロリドンを気相脱水反応した後、公知の蒸留法で精製したものを用いた。かかる原料NVPの組成は、NVP:99.92%、有機不純物:550ppm、軽沸類(臭気成分):50ppm、水:200ppm、である。
【0043】
なお、原料NVPおよび後述の各実施例における精製後のNVPの組成は、有機物についてはガスクロマトグラフィーで、水についてはカールフィッシャー法で分析した。ガスクロマトグラフィーでは、0.5ppmまで定量可能な条件で分析を行った。
【0044】
<実験1(NVPの精製)>
実施例1
原料NVPを、表面温度を約0℃に保ったドラムフレーカーによって全量凍らせ、粗結晶とした。このNVP粗結晶を、塔径:3インチ、高さ:約1mの塔型精製装置(呉羽テクノエンジ株式会社製「KCP」)に、12kg/hrの速度で供給した。
【0045】
塔型精製装置の塔頂部の加熱手段(融解器)によるNVP結晶の融解速度を3.6kg/hrに調整し、融液(還流液)とした。このときの融液の還流率は30%である。塔内で精製されたNVPは、塔頂部の結晶回収手段に備えられた結晶融解器を用いて融解させ、液状のNVPを8.4kg/hrの速度で得た。得られたNVPの純度は99.9991%であった。
【0046】
実施例2
塔型精製装置におけるNVP融液(還流液)の還流率が40%となるように調整した他は、実施例1と同様にして精製を行い、液状のNVPを7.2kg/hrの速度で得た。得られたNVPの純度は99.9993%であった。
【0047】
実施例3
原料NVP(母液)を横型多段冷却晶析装置(CDC、ガウダ社製)に連続的に供給し、NVP粗結晶を含む母液(スラリー)とした。原料NVPの供給速度は75kg/hrとし、スラリー濃度が20%となるように調整してCDCの運転を行った。すわなち、このCDCでのNVP粗結晶の発生速度は15kg/hrである。
【0048】
次いで、上記スラリーをCDCから排出し、ベルト状の濾過器で濾過して、濾取したNVP粗結晶を連続的に塔型精製装置に供給した。使用した塔型精製装置は、実施例1で用いたのと同じものである。塔型精製装置では、NVP融液の還流率が30%となるように調整して精製を行い、液状のNVPを10.5kg/hrの速度で得た。得られたNVPについて組成を分析した結果、含有量が0.5ppm以上の不純物は存在しておらず、分析上の純度は100%であった。
【0049】
実施例4
実施例3において、CDCから排出したスラリーをベルト状の濾過器で濾過して得られた濾液、および塔型精製装置から排出された洗浄液(NVP粗結晶中の不純物を含むNVP融液)、並びに原料NVP(バージン品)を、合計で64.5kg/hrの速度でCDCに供給して母液とした他は、実施例3と同様にしてCDCの連続運転を行ってNVP粗結晶を析出させると共に、母液中の不純物濃度を高めていった。なお、原料NVP(バージン品)の供給速度は、10.5kg/hrとした。CDCから得られたNVP粗結晶は、実施例3と同様にして塔型精製装置で精製を連続的に実施した。
【0050】
CDC内の母液の不純物濃度が原料NVP(バージン品)の40倍になった時点で、CDCに供給される原料NVP(バージン品)に対して2.5%の量、すなわち、0.25kg/hrの速度で、CDCから排出したスラリーを濾過した後の濾液を廃棄しながら運転を継続し、CDC内の母液の不純物濃度を一定に保った。つまり、本実施例において精製に供されるNVPのロス率は2.5%である。
【0051】
CDCでの運転が安定してきた時点で、塔型精製装置から得られた液状のNVPを分析したところ、その純度は99.9964%であった。
【0052】
実施例5
CDC内の母液の不純物濃度が原料NVPの25倍となった時点で、CDCに供給される原料NVPに対して4%の量、すなわち、0.4kg/hrの速度で、CDCから排出したスラリーを濾過した後の濾液を廃棄しながら運転を継続し、CDC内の母液の不純物濃度を一定に保った他は、実施例4と同様にしてNVP粗結晶を得ると共に、塔型精製装置によって精製を行い、液状のNVPを得た。つまり、本実施例において精製に供されるNVPのロス率は4%である。
【0053】
CDCでの運転が安定してきた時点で、塔型精製装置から得られた液状のNVPを分析したところ、その純度は99.9975%であった。
【0054】
<実験2(NVPの重合物の評価)>
実施例1〜5により得られた精製後のNVPを用い、濃度30%の水溶液とし、アゾイソブチロニトリルを開始剤に用いてNVPのポリマーを得たが、これらのポリマーでは、原料NVPを精製せずに重合して得られるポリマーで確認される臭気がなくなっていた。
【0055】
【発明の効果】
本発明は以上のように構成されており、従来の晶析法に比べ、消費エネルギーを格段に低減しつつ、極めて高純度のNVPを精製する方法を提供することができた。本発明法によって精製された本発明のNVPでは、例えばポリマーとした場合に、蒸留法などの精製法で得られたNVPから形成されるポリマーにおいて問題となっていた臭気、味、着色を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明法の実施に用いられる塔型の精製装置の一例を示す横断面模式図である。
【符号の説明】
1 供給手段
2 移動手段
3 加熱手段
4 結晶回収手段
5 洗浄液回収手段
5a 分離手段
5b 排出口
Claims (3)
- N−ビニル−2−ピロリドンを晶析により精製する方法であって、
N−ビニル−2−ピロリドンの融液からなる母液から結晶を析出させる結晶析出工程と、
前記結晶析出工程において得られた結晶を、塔型の精製装置に供給して連続的に精製する連続精製工程
を有することを特徴とするN−ビニル−2−ピロリドンの精製方法。 - 上記連続精製工程で使用される上記塔型の精製装置は、
N−ビニル−2−ピロリドンの結晶を塔下部に供給するための供給手段と、
前記供給手段により供給された結晶を塔頂へ向けて移動させるための移動手段と、
塔頂部で結晶の一部を融液とするための加熱手段と、
前記加熱手段によって得られた融液を流下させ、塔頂へ向けて移動してくる結晶を該融液で洗浄するための洗浄手段と、
前記加熱手段より上方に設けられた洗浄後の結晶回収手段と、
前記洗浄後の洗浄液を回収するために塔下部に設けられた洗浄液回収手段
を有するものである請求項1に記載の精製方法。 - 請求項1または2に記載の精製方法によって精製されたN−ビニル−2−ピロリドン。
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2003
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