JP2004341407A - スクリーン及びその製造方法 - Google Patents
スクリーン及びその製造方法 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2004341407A JP2004341407A JP2003140292A JP2003140292A JP2004341407A JP 2004341407 A JP2004341407 A JP 2004341407A JP 2003140292 A JP2003140292 A JP 2003140292A JP 2003140292 A JP2003140292 A JP 2003140292A JP 2004341407 A JP2004341407 A JP 2004341407A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- light
- optical
- linear fresnel
- screen
- multilayer film
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Images
Landscapes
- Overhead Projectors And Projection Screens (AREA)
- Optical Filters (AREA)
Abstract
【課題】均一な表面輝度分布とともに高コントラスト、高ゲイン、高反射率が得られるスクリーン、及び表面に凹凸のある支持体上にも均一な膜厚で光学膜が形成できるスクリーンの製造方法を提供する。
【解決手段】リニアフレネルレンズ11の少なくともリニアフレネル構造面に、特定の波長領域の光に対して高反射特性を有し、前記特定の波長領域以外の少なくとも可視波長領域に対して高透過特性を有する2n+1(nは1以上の整数である。)層からなる光学多層膜12を塗布により形成する。
【選択図】 図1
【解決手段】リニアフレネルレンズ11の少なくともリニアフレネル構造面に、特定の波長領域の光に対して高反射特性を有し、前記特定の波長領域以外の少なくとも可視波長領域に対して高透過特性を有する2n+1(nは1以上の整数である。)層からなる光学多層膜12を塗布により形成する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、リニアフレネルレンズを支持体としたスクリーン及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、会議等において発言者が資料を提示する方法としてオーバヘッドプロジェクターやスライドプロジェクターが広く用いられている。また、一般家庭においても液晶を用いたビデオプロジェクターや動画フィルムプロジェクターが普及しつつある。これらのプロジェクターの映写方法は光源から出力された光を、例えば透過形の液晶パネル等によって光変調して画像光を形成し、この画像光をレンズ等の光学系を通して出射してスクリーン上に映写するものである。
【0003】
例えば、スクリーン上にカラー画像を形成することができるプロジェクター装置は、光源から出射された光線を赤(R)、緑(G)、青(B)の各色に分離して所定の光路に収束させる照明光学系と、この照明光学系によって分離されたRGB各色の光束をそれぞれ光変調する液晶パネル(ライトバルブ)と、液晶パネルにより光変調されたRGB各色の光束を合成する光合成部とを備え、光合成部により合成したカラー画像を投射レンズによりスクリーンに拡大投影するようになっている。
【0004】
また、最近では光源として狭帯域三原色光源を使用し、液晶パネルの代わりにグレーティング・ライト・バルブ(GLV:Grating Light Valve)を用いてRGB各色の光束を空間変調するタイプのプロジェクター装置も開発されている。
【0005】
上述したプロジェクター装置に対応して用いられる反射型スクリーンには、視認性の良好な広視野角のスクリーンであることが要求されるため、一般にスクリーン表面に光を散乱させる拡散層が設けられている。しかし、スクリーンゲインを上げると、図5に示すようにスクリーン90の中央部90bと周辺部90a、90cとの輝度の差が大きくなり、スクリーン中央部90bは明るく見えるが、周辺部90a、90cは暗い映像あるいは映像が見えない状態となっていた。
【0006】
上記スクリーンの輝度差の問題に関して種々検討されており、例えば、おもて面側に光拡散層、裏面側にリニアフレネル構造面が設けられた透明シートのリニアフレネル構造面に光反射層を設けることにより、適切な拡散角度で拡散させて均一な表面輝度が得られるスクリーンが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0007】
【特許文献1】
特許第3341225号明細書(段落0024,0040、図1,2)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記スクリーンではアルミニウム蒸着膜である光反射層が画像光の反射とともに外光も反射するため、コントラスト性能の改善は必ずしも十分ではなかった。
【0009】
本発明は、以上の従来技術における問題に鑑みてなされたものであり、均一な表面輝度分布とともに高コントラスト、高ゲインが得られるスクリーン及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記問題に対して、本出願人と同一の出願人により、波長領域に応じて選択的に光を反射する選択反射層を用いて、プロジェクターから投影される画像光を主に反射し、プロジェクター以外の例えば蛍光灯や太陽等からの光、すなわち外光は反射しないようにしたスクリーン(特願2002−070799号等)が提案されている。このスクリーンは、支持体に選択反射層が形成され、選択反射層の前面に反射光を散乱させる拡散層が、さらに選択反射層の背後に透過光を吸収する吸収層が設けられている。また、選択反射層は高屈折率の光学膜と低屈折率の光学膜とが交互に積層された光学多層膜であり、プロジェクター光の波長領域、例えば、赤(R)、緑(G)、青(B)の三原色波長領域の光を反射し、三原色波長領域以外の波長領域の光を透過する特性を有する。このスクリーンにおいては、外光の影響を大幅に低減することができるため、部屋が明るい状態でもスクリーンゲインを下げることなく黒レベルを下げることができ、コントラストの高い鮮明な映像を表示することが可能となっている。
【0011】
しかしながら、このスクリーンにおいてもスクリーン中央部は明るく見えるが、周辺部は暗い映像あるいは映像が見えない状態となり、スクリーン表面輝度の不均一の問題は依然として残っていた。また、上記光学膜はスパッタリング法などドライプロセスにより形成されることを前提としていたため、表面に凹凸のあるフレネルレンズなどの支持体上には光学膜を均一な膜厚で形成することが困難であった。
【0012】
発明者らは、上記問題がドライプロセスに起因している点に着目し、鋭意検討を行った結果、均一な表面輝度分布とともに高コントラスト、高ゲイン、高反射率が得られるスクリーン、及び表面に凹凸のある支持体上にも均一な膜厚で光学膜が形成できるスクリーンの製造方法を発明するに至った。
【0013】
すなわち、前記課題を解決するために提供する請求項1の発明に係るスクリーンは、リニアフレネルレンズの少なくともリニアフレネル構造面に、特定の波長領域の光に対して高反射特性を有し、前記特定の波長領域以外の少なくとも可視波長領域に対して高透過特性を有する2n+1(nは1以上の整数である。)層からなる光学多層膜を備え、該光学多層膜が塗布により形成されていることを特徴とする。
【0014】
請求項1の発明により、リニアフレネルレンズの溝のパターン形状に応じてプロジェクター光が反射されるため、スクリーン上の各点におけるプロジェクターからの光に対する反射光の光束を目的の観察地点に向けることが可能となり、視聴者はスクリーンの中央部、周辺部ともに明るく、高コントラストの映像を見ることができるようになる。
【0015】
前記課題を解決するために提供する請求項2の発明に係るスクリーンは、請求項1の発明において、前記光学多層膜は、高屈折率の第1の光学膜とこれより低い屈折率をもつ第2の光学膜とが交互に形成され、最外層が第1の光学膜で形成された積層構造を有することを特徴とする。
【0016】
請求項2の発明により、プロジェクター光入射側及びその反対側の最外層が高屈折率の第1の光学膜となる奇数層の構成となり、選択反射層としての機能が優れたものとなる。また、第1の光学膜、第2の光学膜それぞれの光学膜厚を任意に設定できるため、所望の波長領域の光を反射し、その波長領域以外の波長領域の光を透過する特性を有する光学多層膜とすることが可能となり、プロジェクター光源に対応させた高コントラスト、高ゲイン、高反射率のスクリーンが実現可能となる。
【0017】
前記課題を解決するために提供する請求項3の発明に係るスクリーンは、請求項1または請求項2の発明において、前記特定の波長領域が、赤、緑、青の各波長領域を含むことを特徴とする。
【0018】
請求項3の発明により、RGB光源に対してコントラストが高い良好な映像が鑑賞可能なスクリーンを得ることが可能となる。
具体的には、請求項2の発明において、第1の光学膜の屈折率を1.70〜2.10とし、第2の光学膜の屈折率を1.30〜1.69とし、第1の光学膜、第2の光学膜の膜厚を、それぞれ80nm〜15μmの範囲内で設定して、RGB三原色波長領域のプロジェクター光を反射し、三原色波長領域以外の波長領域の光を透過する特性を有する光学多層膜とすればよい。
【0019】
前記課題を解決するために提供する請求項4の発明に係るスクリーンは、請求項1〜3の発明において、前記リニアフレネルレンズのリニアフレネル構造面とは反対面に、前記光学多層膜の透過光を吸収する光吸収層を備えたことを特徴とする。
【0020】
請求項4の発明により、光学多層膜を透過した光が吸収されるため、よりコントラストが高い良好な映像が鑑賞可能となる。
なお、光吸収層を黒色フィルムとして所定の位置に貼り付けてもよい。
【0021】
前記課題を解決するために提供する請求項5の発明に係るスクリーンは、請求項1〜4の発明において、前記リニアフレネルレンズのリニアフレネル構造面に形成された光学多層膜の最外層上に該光学多層膜が反射した光を拡散させる光拡散層を備えたことを特徴とする。
【0022】
請求項5の発明により、光学多層膜で選択的に反射された光は光拡散層を透過して射出される際に拡散するため、視聴者はこの拡散した反射光を観察することで自然な画像を視認することができるようになる。
【0023】
前記課題を解決するために提供する請求項6の発明に係るスクリーンの製造方法は、リニアフレネルレンズの両面に、特定の波長領域の光に対して高反射特性を有し、前記特定の波長領域以外の少なくとも可視波長領域に対して高透過特性を有する2n+1(nは1以上の整数である。)層からなる光学多層膜を備えたスクリーンの製造方法であって、前記光学多層膜の製造工程が、高屈折率の第1の光学膜をディッピングにより被塗布体の両面に形成する第1塗布工程と、前記第1の光学膜よりも低い屈折率の第2の光学膜をディッピングにより被塗布体の両面に形成する第2塗布工程とを有し、前記第1塗布工程と第2塗布工程とを交互に行うことからなることを特徴とする。
【0024】
請求項6の発明により、リニアフレネルレンズの凹凸のあるリニアフレネル構造面にも光学膜の形成が可能であるため、視聴者がスクリーンの中央部、周辺部ともに明るく、高コントラストの映像を見ることができる大画面スクリーンの大量生産が可能となる。
なお、第1塗布工程と第2塗布工程とを交互に所定回数行った後、第1塗布工程で終了することが好ましい。これにより、プロジェクター光入射側及びその反対側の最外層が高屈折率の光学膜となる2n+1層の構成となり、選択反射層としての機能が優れたものとなる。
【0025】
前記課題を解決するために提供する請求項7の発明に係るスクリーンの製造方法は、請求項6の発明において、前記ディッピングの際に、前記被塗布体をリニアフレネル構造面のリニア方向に引き上げることを特徴とする。
【0026】
請求項7の発明により、リニアフレネル構造面の凹凸部分にもつきまわり良く光学膜用材料が塗布されるため、リニアフレネル構造面にも均一な膜厚で光学膜の形成が可能となる。
【0027】
前記課題を解決するために提供する請求項8の発明に係るスクリーンの製造方法は、請求項6または請求項7の発明において、前記前記リニアフレネルレンズのリニアフレネル構造面とは反対面に形成された光学多層膜の最外層上に、前記光学多層膜を透過した光を吸収する光吸収層を形成する工程を含むことを特徴とする。
【0028】
請求項8の発明により、光学多層膜を透過した光を吸収する光吸収層が設けられるため、よりコントラストが高い良好な映像が鑑賞できるスクリーンとすることが可能となる。
【0029】
前記課題を解決するために提供する請求項9の発明に係るスクリーンの製造方法は、請求項6〜8の発明において、前記前記リニアフレネルレンズのリニアフレネル構造面に形成された光学多層膜の最外層上に、該光学多層膜で反射された光を拡散する光拡散層を形成する工程を含むことを特徴とする。
【0030】
請求項9の発明により、光学多層膜で選択的に反射された光を拡散して射出する光拡散層が設けられるため、視聴者はこの拡散した反射光を観察することで自然な画像を視認できるスクリーンとすることが可能となる。
【0031】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明に係るスクリーンの実施の形態について説明する。なお、以下に示す実施の形態は例示であり、本発明はこれに限定されるものではない。
本発明に係るスクリーンの構成例を図1に示す。スクリーン10は、リニアフレネルレンズ11上に、光学多層膜12と、光吸収層13と、光拡散層14とが設けられた構成である。
【0032】
リニアフレネルレンズ11は、スクリーン10の支持体ともなるシート状のレンズであり、片面は所定形状の直線状の溝が形成されたリニアフレネル構造面とし、もう一方の面は平坦面としたものである。
【0033】
リニアフレネル構造面は、複数の直線状の溝が削り出しや金型プレスなどの加工により形成された面であり、その溝はスクリーンとした場合にスクリーン横方向に延びたリニア凹型の形となる。すなわち、その溝のパターン形状は一様ではなく、反射型のスクリーンとした場合に特定位置の光源からの入射光を特定方向に反射し、ある領域に光束が集まるようなパターン形状となる。この溝のパターン形状は、予め想定したスクリーン10のサイズ、光源の位置、視聴者の位置などの条件からシミュレーション演算により決定するとよい。また、ここで視聴者の位置とは観察最低距離であるため、リニアフレネルレンズ11の焦点距離とみることができ、例えば1m以上とするとよい。
【0034】
なお、溝のピッチは画素よりも小さいことが好ましく、画素の1/3以下がより好ましい。例えば、対角80インチ、横軸1280ドットのスクリーン10への画像光の投射とした場合、1画素は1.27mmとなり、リニアフレネルレンズ11の溝のピッチは1mm以下が好ましく、0.1〜0.3mmがより好ましい。
【0035】
リニアフレネルレンズ11に用いられる材料は、透明の有機樹脂、ガラス等の所望の光学特性を満足する材料であればよい。光学特性として、リニアフレネルレンズ11を構成する材料の屈折率は1.3〜1.7、ヘイズは8%以下、透過率は80%以上が好ましい。また、リニアフレネルレンズ11にアンチグレア機能をもたせてもよい。
【0036】
リニアフレネルレンズ11に用いられる有機樹脂としては、例えばセルロース誘導体(例、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース(TAC)、プロピオニルセルロース、ブチリルセルロース、アセチルプロピオニルセルロース及びニトロセルロース)、ポリメチルメタアクリレート、メチルメタクリレートと他のアルキル(メタ)アクリレート、スチレンなどといったビニルモノマーとの共重合体などの(メタ)アクリル系樹脂;ポリカーボネート、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート(CR−39)などのポリカーボネート系樹脂;(臭素化)ビスフェノールA 型のジ(メタ)アクリレートの単独重合体ないし共重合体、(臭素化)ビスフェノールA のモノ(メタ)アクリレートのウレタン変性モノマーの重合体および共重合体などといった熱硬化性(メタ)アクリル系樹脂;ポリエステル、特にポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートおよび不飽和ポリエステル;アクリロニトリル−スチレン共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、エポキシ樹脂などが好ましい。また、耐熱性を考慮したアラミド系樹脂の使用も可能である。この場合には加熱温度の上限が200℃以上となり、その温度範囲が幅広くなることが予想される。
厚さは剛性の面からは厚いほうがよいが、ヘイズの面からは薄いほうが好ましく、通常25〜500μm程度である。
【0037】
光学多層膜12は、図2に示すように第1の光学膜として後述する光学膜用材料Aを基体上に塗布・硬化して得られる高屈折率の光学膜12Hと、第2の光学膜として後述する光学膜用材料Bを塗布・硬化して得られる低屈折率の光学膜12Lとが交互に積層された構成である。詳しくは、リニアフレネルレンズ上から、まず高屈折率の光学膜12Hが設けられ、ついで低屈折率の光学膜12Lが設けられ、以降光学膜12Hと光学膜12Lとが交互に設けられ、最後に光学膜12Hが設けられた構成であり、2n+1層(nは1以上の整数である。)からなる積層膜となっている。
【0038】
光学膜12Hは、リニアフレネルレンズ11、または光学膜12Lの上に光学膜用材料Aを塗布した後に硬化反応により形成される光学膜である。この光学膜12Hは屈折率を調整するために微粒子が含まれている
光学膜12Hの膜厚は、80nm〜15μm、より好ましくは600〜1000nmとする。15μmより厚くすると、分散し切れなかった微粒子によるヘイズ成分が増大して光学膜としての機能が得られないからである。
また、光学膜12Hの屈折率は、1.70〜2.10とすることが好ましい。屈折率を2.10よりも高くすると、微粒子の分散性が不充分となって光学膜としての機能が損なわれる。また、屈折率を1.70よりも低くすると、光学膜12Lを積層した場合の反射特性が十分ではなくなり、スクリーンとしての特性が不充分となる。
【0039】
光学膜12Lは、光学膜12Hの上に上記光学膜用材料Bを塗布した後に硬化反応により形成される屈折率1.30〜1.69の光学膜である。光学膜12Lの屈折率は光学膜用材料Bに含まれる樹脂の種類、場合によっては微粒子の種類及び添加量などにより決まる。なお、屈折率が1.69よりも高くなると光学膜12Hとの屈折率の差が確保できず、光学膜12Hに積層した場合の反射特性が十分ではなくなり、スクリーンとしての特性が不充分となる。また、1.3よりも低い屈折率をもった膜を形成することが困難であり、屈折率1.3が製造上の下限となる。
【0040】
光学膜12Lの膜厚は、80nm〜15μm、より好ましくは600〜1000nmとする。
【0041】
以上の構成により、光学多層膜12は、赤色、緑色、青色の三波長帯の光に対して高反射特性を有し、少なくともこれらの波長領域以外の可視波長域の光に対しては高透過特性を有するようになる。なお、光学膜12H,13Lそれぞれの屈折率や厚みを調整することにより、光学多層膜12として反射する三波長帯の波長位置をシフトさせて調整することが可能であり、これによりプロジェクターから投射される光の波長に対応させた光学多層膜12とすることができる。
【0042】
なお、光学多層膜12を構成する光学膜12H,13Lの層数は特に限定されるものではなく、所望の層数とすることができる。また、光学多層膜12はプロジェクター光の入射側及びその反対側の最外層が光学膜12Hとなる奇数層により構成されることが好ましい。光学多層膜12を奇数層の構成とすることにより、偶数層とした構成の場合よりも三原色波長帯域フィルターとして機能が優れたものとなる。
【0043】
光学多層膜12の具体的な層数は3〜7層の奇数層とすることが好ましい。層数が2以下の場合には反射層としての機能が十分ではないためである。一方、層数が多いほど反射率は増加するが、層数8以上では反射率の増加率が小さくなり、光学多層膜12の形成所要時間をかけるほど反射率の改善効果が得られなくなるためである。
【0044】
光吸収層13は、光学多層膜12を透過した光を吸収させるためのもので、例えば、図1ではリニアフレネルレンズ11の裏面側の光学多層膜12の最外層表面に黒色の樹脂フィルムを貼り付けた態様を示している。あるいは、黒色塗料を塗布して形成してもよい。
【0045】
光拡散層14は、片面の表面が凹凸形状となっており、その構成材料はプロジェクターで使用する波長域の光を透過する性質のものであれば特に制約はなく、拡散層として通常使用されるガラスやプラスチックなどでよい。また、光拡散層14は、すでにそのような形状となったフィルム状の光拡散層14を接着層15によりリニアフレネル構造面の光学多層膜12の表面と貼り合わせるとよい。あるいは、光学多層膜12の上に透明エポキシ樹脂を塗布し、エンボス加工などにより表面に凹凸を設けてもよい。
【0046】
光学多層膜12で選択的に反射された光は光拡散層14を透過して射出される際に拡散し、視聴者はこの拡散した反射光を観察することで自然な画像を視認することができるようになる。光拡散層14における拡散角はその視認性を決める重要な要因であり、拡散板を構成する材料の屈折率や表面の凹凸形状などを調整することによってその拡散角を増大させる。
また、プロジェクターの光源がレーザである場合にはスクリーン上のぎらつきであるスペックルパターンの発生を防止するために光拡散層14の表面形状パターンをランダムにするとよい。
【0047】
上記スクリーン10によって、リニアフレネルレンズ11の溝のパターン形状に応じてプロジェクター光が反射されるため、スクリーン10上の各点におけるプロジェクターからの光に対する反射光の光束を目的の観察地点に向けることが可能となり、視聴者はスクリーン10の中央部、周辺部ともに明るい映像を見ることができるようになる。また、プロジェクターからの特定波長の光を反射し、外光などのそれ以外の波長領域の入射光を透過・吸収する選択反射が可能となり、スクリーン10上の映像の黒レベルを下げて高コントラストを達成するものであり、部屋が明るい状態でもコントラストの高い映像を表示することが可能となる。例えば、グレーティング・ライト・バルブ(GLV)を用いた回折格子型プロジェクターのようなRGB光源からの光を投射した場合にスクリーン10上で広視野角で、かつコントラストが高く、外光の映り込みのない良好な映像が鑑賞できるようになる。
【0048】
すなわち、スクリーン10に入射する光は、光拡散層14を透過し、光学多層膜12に到達し、当該光学多層膜12にて入射光に含まれる外光成分は透過されて光吸収層13で吸収され、映像に関わる特定波長領域の光のみ選択的に反射され、その反射光は光拡散層14の表面にて拡散され視野角の広い画像光として視聴者に供される。したがって、均一な表面輝度分布とともに、上記反射光である画像光への外光の影響を高いレベルで排除することができ、従来にない高コントラスト化が可能となる。
【0049】
なお、本発明に係るスクリーンとして、図2に示すように、リニアフレネルレンズのリニアフレネル構造面に上記と同じ構成の光学多層膜が形成され、その光学多層膜の最外層表面に光拡散層が形成され、リニアフレネルレンズの裏面に光吸収層が形成された構成としてもよい。このスクリーンでも、プロジェクターからの特定波長の光を反射し、外光などのそれ以外の波長領域の入射光を透過・吸収することによりスクリーン上の黒レベルを下げて高コントラストを達成することが可能である。
【0050】
ここで、上記第1の光学膜及び第2の光学膜を形成するための塗料である光学膜用材料A及びBについて説明する。
【0051】
(1)光学膜用材料A
光学膜用材料Aは、微粒子と、有機溶媒と、エネルギーを吸収して硬化反応を起こす結合剤と、親油基および親水基からなる分散剤とを含有する。
【0052】
微粒子は、成膜された後の光学膜の屈折率を調整するために添加される高屈折率材料の微粒子であり、Ti、Zr、Al、Ce、Sn、La、In、Y、Sb、等の酸化物、または、In− Sn等の合金酸化物が挙げられる。なお、光触媒を抑える目的でTi酸化物にAl、Zr等の酸化物が適当量含有されたとしても、本発明の効果を妨げるものではない。
【0053】
また、微粒子の比表面積は55〜85 m2/gが好ましく、75〜85 m2/gであることがより好ましい。比表面積がこの範囲にあると、微粒子の分散処理により、光学膜用材料中における微粒子の粒度で100nm以下に抑えることが可能となり、ヘイズの非常に小さな光学膜を得ることが可能である。
【0054】
有機溶媒は、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソブチルアルコール等のアルコール系溶媒、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル、乳酸エチル、エチレングリコールアセテート等のエステル系溶媒等が用いられる。これら有機溶媒は必ずしも100%純粋である必要はなく、異性体、未反応物、分解物、酸化物、水分等の不純成分が20%以下であれば含まれていてもかまわない。また、低い表面エネルギーをもつリニアフレネルレンズや光学膜上に塗布するためには、より低い表面張力をもつ溶媒を選択することが望ましく、例えばメチルイソブチルケトン、メタノール、エタノール等が挙げられる。
【0055】
結合剤は、熱硬化性樹脂、紫外線(UV)硬化型樹脂、電子線(EB)硬化型樹脂等があげられる。熱硬化性樹脂、UV硬化型樹脂、EB硬化型樹脂の例としてはポリスチレン樹脂、スチレン共重合体、ポリカーボネート、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、ポリアミン樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂等が挙げられる。その他の環状(芳香族、複素環式、脂環式等)基を有するポリマーでもよい。また、炭素鎖中にフッ素、シラノール基の入った樹脂でも構わない。
【0056】
上記樹脂を硬化反応させる方法は放射線または熱いずれでもよいが、紫外線照射により樹脂の硬化反応を行う場合には、重合開始剤の存在下で行うことが好ましい。ラジカル重合開始剤としては、例えば、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系開始剤;ベンゾイルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド、t−ブチルパーオクトエート等のパーオキシド系開始剤が挙げられる。これらの開始剤の使用量は、重合性単量体合計100重量部あたり0.2〜10重量部、より好ましくは0.5〜5重量部とする。
【0057】
分散剤は、親油基と親水基とからなり、微粒子の分散性を向上させる。分散剤の親油基の重量平均分子量は110〜3000である。分子量が110よりも低いと、有機溶媒に対して十分に溶解しないなどの弊害が生じ、分子量が3000を超えると光学膜中の微粒子の十分な分散性を得ることができない。なお、分散剤には、結合材と硬化反応を起こすための官能基を有していてもよい。
【0058】
分散剤に含まれる親水基の極性官能基の量は、10−3〜10− 1mol/gである。官能基がこれより少ない、あるいは多い場合には、微粒子の分散に対する効果が発現せず、分散性低下などにつながる。極性官能基として以下に示すような官能基は凝集状態にならないため、有用である。−SO3M、−OSO3M、−COOM、P=O(OM)2。(ここで、式中Mは、水素原子あるいは、リチウム、カリウム、ナトリウム等のアルカリ金属である。)、3級アミン、4級アンモニウム塩が挙げられる。R1(R2)(R3)NHX(ここで、式中R1、R2、R3は、水素原子あるいは炭化水素基であり、X−は塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン元素イオンあるいは無機・有機イオンである。)。また、−OH、−SH、−CN、エポキシ基等の極性官能基もある。これら分散剤は、1種単独で用いられることが可能であるが、2種以上を併用することも可能である。塗膜における本発明の分散剤は、総量で上記微粒子100重量部に対して、20〜60重量部、好ましくは、38から55重量部である。
【0059】
光学膜用材料Aは塗布により塗膜とされた後、放射線または熱によって硬化反応が促進され高屈折率タイプの第1の光学膜となる。
【0060】
(2)光学膜用材料B
光学膜用材料Bは、有機溶媒と、結合剤とを含有するものである。結合剤は有機溶媒に溶解されており、必要に応じてその中に微粒子が添加され分散されていてもよい。
【0061】
結合剤は、紫外線などの放射線、熱からのエネルギーにより硬化反応を起こす官能基を分子内に有する樹脂であり、フッ素系樹脂などが好適である。
【0062】
微粒子は、成膜された後の光学膜の屈折率を調整するために必要に応じて添加される低屈折率材料の微粒子であり、SiO2、MgF2、あるいは中空微粒子、フッ素系樹脂からなる微粒子が挙げられる。また、Ti、Zr、Al、Ce、Sn、La、In、Y、Sb、等の酸化物、または、In− Sn等の合金酸化物が添加されていてもよい。なお、光触媒を抑える目的でTi酸化物にAl、Zr等の酸化物が適当量含有されたとしても、本発明の効果を妨げるものではない。
【0063】
有機溶媒は、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソブチルアルコール等のアルコール系溶媒、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル、乳酸エチル、エチレングリコールアセテート等のエステル系溶媒、含フッ素溶媒としては、パーフルオロベンゼン、ペンタフルオロベンゼン、1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、1,4−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンなどの含フッ素芳香族炭化水素類、パーフルオロトリブチルアミン、パーフルオロトリプロピルアミンなどの含フッ素アルキルアミン類、パーフルオロヘキサン、パーフルオロオクタン、パーフルオロデカン、パーフルオロドデカン、パーフルオロ−2,7−ジメチルオクタン、1,3−ジクロロ−1,1,2,2,3−ペンタフルオロプロパン、1H−1,1−ジクロロパーフルオロプロパン、1H−1,3−ジクロロパーフルオロプロパン、1H−パーフルオロブタン、2H,3H−パーフルオロペンタン、3H,4H−パーフルオロ−2−メチルペンタン、2H,3H−パーフルオロ−2−メチルペンタン、パーフルオロ−1,2−ジメチルヘキサン、パーフルオロ−1,3−ジメチルヘキサン、1H−パーフルオロヘキサン、1H,1H,1H,2H,2H−パーフルオロヘキサン、1H,1H,1H,2H,2H−パーフルオロオクタン、1H−パーフルオロオクタン、1H−パーフルオロデカン、1H,1H,1H,2H,2H−パーフルオロデカンなどの含フッ素脂肪族炭化水素類、パーフルオロデカリン、パーフルオロシクロヘキサン、パーフルオロ−1,3,5−トリメチルシクロヘキサンなどの含フッ素脂環族炭化水素類、パーフルオロ−2−ブチルテトラヒドロフラン、フッ素含有低分子量ポリエーテルなどの含フッ素エーテル類を単独または混合して用いることが可能である。例えば、光学膜用材料Aに用いられる有機溶媒をメチルイソブチルケトンとし、光学膜用材料Bに用いられる有機溶媒を含フッ素アルコール(C6F13C2H4OH)とパーフルオロブチルアミンとの混合溶媒(95:5)とする。また、これら有機溶媒は必ずしも100%純粋である必要はなく、異性体、未反応物、分解物、酸化物、水分等の不純成分が20%以下であれば含まれていてもかまわない。
【0064】
また、光学膜用材料Bは塗布により塗膜とされた後、硬化反応により第1の光学膜よりも低屈折率の第2の光学膜となる。
【0065】
つぎに、本発明に係る反射スクリーン10の製造方法について以下に説明する。
(s1)おもて面をリニアフレネル構造面とし、裏面を平坦面としたアクリル製リニアフレネルレンズ11を用意し、当該リニアフレネルレンズ11を光学膜用材料Aで満たされた槽に浸漬し、引き上げるディッピング方式によりリニアフレネルレンズ11の両面に所定量の光学膜用材料Aを塗布する。詳しくは、リニアフレネルレンズ11を光学膜用材料Aの液面に対して略垂直となるようにして、リニアフレネル構造面の直線状の溝に沿う方向(リニア方向)に槽へ浸漬し、保持した後、リニアフレネル構造面の直線状の溝に沿う方向(リニア方向)にリニアフレネルレンズ11を引き上げるとよい。これにより、凹凸のあるリニアフレネル構造面にもつきまわり良く光学膜用材料Aを均一に塗布することが可能であり、ひいては均一な膜厚の光学膜12Hを形成することが可能である。
なお、光学膜用材料Aの塗布量は、光学膜用材料Aの条件に応じたリニアフレネルレンズ11の浸漬速度、保持時間、引き上げ速度などのディッピング条件により調整可能である。
(s2)光学膜用材料Aの塗膜を乾燥後、紫外線を照射して光学膜用材料Aを硬化させ、所定膜厚の光学膜12Hを形成する。
【0066】
(s3)ついで、光学膜12Hが形成されたリニアフレネルレンズ11(被塗布体)を光学膜用材料Bで満たされた槽に浸漬し、引き上げるディッピング方式によりリニアフレネルレンズ11の両面にある光学膜12H上に所定量の光学膜用材料Bを塗布する。ディッピング方式はステップs1と同様の要領で行う。
(s4)光学膜用材料Bの塗膜を乾燥後、光学膜用材料Bを熱硬化させ、所定膜厚の光学膜12Lを形成する。これにより、光学膜12Hと光学膜12Lとの積層構成となる。
(s5)ついで、光学膜12Hと12Lとが積層されたリニアフレネルレンズ11(被塗布体)を光学膜用材料Aで満たされた槽に浸漬し、引き上げることによりリニアフレネルレンズ11の両面最外層にある光学膜12L上に所定量の光学膜用材料Aを塗布する。
(s6)光学膜用材料Aの塗膜を乾燥後、紫外線を照射して光学膜用材料Aを硬化させ、所定膜厚の光学膜12Hを形成する。以降、ステップs3〜s6までの処理を所定回数行い、リニアフレネルレンズ11の両面に光学多層膜12を形成する。
【0067】
(s7)リニアフレネル構造面側の光学多層膜12の表面に低屈折率の透明接着剤(EPOXY TECHNOLOGY社製EPOTEK396)を塗布し、その上に板形状の光拡散層層14の凹凸の有る面とは反対面を接触面として搭載した後に当該接着剤を硬化させて光学多層膜12と光拡散層14とを貼り合わせる接着層15とする。この接着層15により、光学多層膜12表面上に浮き出ているリニアフレネル構造面の凹凸が吸収され、光拡散層14は平坦面の上に形成された状態となる。
【0068】
(s8)リニアフレネルレンズ11の裏面側の光学多層膜12の表面に黒色の光吸収剤を含有した樹脂を塗布し、光吸収層13を形成し、本発明に係る反射スクリーン10とする。
【0069】
また、本発明に係るスクリーンの他の実施の形態における構成として、図2に示すように、リニアフレネルレンズ11の両面それぞれに上記と同じ構成の光学多層膜12が形成され、そのうち一方の光学多層膜12の最外層表面に光拡散層14が形成され、他方の光学多層膜12の最外層表面に光吸収層13が形成された構成としてもよい。このスクリーン20でも、プロジェクターからの特定波長の光を反射し、外光などのそれ以外の波長領域の入射光を透過・吸収することによりスクリーン上の黒レベルを下げて高コントラストを達成することが可能である。
【0070】
【実施例】
上記本発明を実際に実施した例を以下に説明する。この実施例は例示であり、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0071】
実施例におけるリニアフレネルレンズ、光学膜用材料Aである塗料(I),光学膜用材料Bである塗料(II)の組成と製造方法及びスクリーン製造方法を以下に示す。
(1)リニアフレネルレンズ
・材質:アクリル
・サイズ:対角80インチ、縦横比率4:3
・おもて:リニアフレネル構造面
リニア凹型
溝ピッチ0.3mm
焦点距離3000mm(基準より高さ1200mm)
・裏面:平面
【0072】
(2)塗料(I)
・微粒子:TiO2微粒子
(石原産業社製、平均粒径約20nm、屈折率2.48) 100重量部
・分散剤:ドデシルベンゼンスルホン酸Na 20重量部
・結合剤(1):SO3Na基含有ウレタンアクリレート
(数平均分子量:1400、SO3Na濃度:1×10−1 mol/g) 38重量部
・結合剤(2):ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとジペンタエリスリトールペンタアクリレートとの混合物
(日本化薬社製UV硬化性樹脂、商品名DPHA) 19重量部
・有機溶媒:メチルイソブチルケトン(MIBK) 4800重量部
上記微粒子と分散剤と結合剤(1)と有機溶媒とを混合し、ペイントシェーカーで分散処理を行い微粒子分散液を得た。この微粒子分散液に結合剤(2)を添加し、攪拌機にて攪拌処理を行い、塗料(I)とした。
【0073】
(3)塗料(II)
・結合剤:末端カルボキシル基をもつパーフルオロブテニルビニルエーテルの重合体 100重量部
・有機溶媒:含フッ素アルコール(C6F13C2H4OH)とパーフルオロブチルアミンとの混合溶媒(混合比95:5)1666重量部
上記結合剤と有機溶媒とを混合し、十分攪拌して塗料(II)とした。
【0074】
(4)スクリーン製造方法
(s11)リニアフレネルレンズの両面に塗料(I)を前述したディッピング方式で塗布する。ディッピング条件は、次の通りとした。
・引下げ速度:600mm/min
・保持時間: 2min
・引上げ速度:200mm/min
(s12)塗料(I)の塗膜を室温で乾燥後、紫外線(UV)硬化(500mJ/cm2)させ、片面当たり膜厚780nmの高屈折率の光学膜を形成する。
(s13)ついで、その高屈折率の光学膜上に塗料(II)を前述したディッピング方式で塗布する。ディッピング条件は、次の通りとした。
・引下げ速度:600mm/min
・保持時間: 2min
・引上げ速度:300mm/min
(s14)塗料(II)の塗膜を室温で乾燥後、90℃で熱硬化させ、膜厚1120nmの低屈折率の光学膜を形成する。
(s15)光学膜(II)上にステップs11と同一条件で塗料(I)を塗布する。
(s16)塗料(I)の塗膜を室温で乾燥後、紫外線(UV)硬化(500mJ/cm2)させ、片面当たり膜厚780nmの高屈折率の光学膜を形成する。これによりPETフィルム上に光学膜(I)/光学膜(II)/光学膜(I)の3層の光学多層膜とする。
【0075】
(s17)リニアフレネル構造面側の光学多層膜の最外層表面に粘着層を介して拡散板(POC社製、商品名LSD60x10(水平方向60°、垂直方向10°拡散))を貼合し、リニアフレネルレンズの裏面側の光学多層膜の最外層表面には粘着層を介して黒色PETフィルムを貼合して、スクリーンを作製した。
【0076】
(比較例)
実施例におけるリニアフレネルレンズを同一材料の両面ともに平面の支持体とし、それ以外の条件は実施例1の条件と同じとしてスクリーンを得た。
【0077】
スクリーンの評価に当っては、図3(a)に示すようにプロジェクター、スクリーン、観察点を配置して、図3(b)に示すスクリーンA−A断面の輝度分布を分光放射輝度計(ミノルタ社製、CS−1000)で測定した。なお、諸条件は次の通りである。
【0078】
スクリーンの輝度分布の測定結果を図4に示す。
実施例のスクリーンでは、スクリーンの高さ方向の広い角度に渡り、高輝度で輝度差の少ない映像を見ることができることが確認された。
これに対して、比較例では、スクリーンの中央部付近は高輝度で、そこからスクリーンの端方向に行くにしたがって徐々に輝度が下がり、輝度差の大きな映像となっていた。
【0079】
【発明の効果】
上述したように、請求項1の発明によれば、スクリーン上の各点におけるプロジェクターからの光に対する反射光の光束を目的の観察地点に向けることができ、視聴者はスクリーンの中央部、周辺部ともに明るく、高コントラストの映像を見ることができる。
請求項2の発明によれば、光学多層膜は選択反射層としての機能が優れたものとなる。また、所望の波長領域の光を反射し、その波長領域以外の波長領域の光を透過する特性を有する光学多層膜とすることができ、プロジェクター光源に対応させた高コントラスト、高ゲイン、高反射率のスクリーンが実現できる。
請求項3の発明によれば、RGB光源に対してコントラストが高い良好な映像が鑑賞可能なスクリーンを得ることができる。
請求項4の発明によれば、よりコントラストが高い良好な映像が鑑賞できる。
請求項5の発明によれば、視聴者は拡散した反射光を観察することで自然な画像を視認することができる。
請求項6の発明によれば、視聴者がスクリーンの中央部、周辺部ともに明るく、高コントラストの映像を見ることができる大画面スクリーンの大量生産が可能となる。
請求項7の発明によれば、リニアフレネル構造面にも均一な膜厚で光学膜を形成できる。
請求項8の発明によれば、よりコントラストが高い良好な映像が鑑賞できるスクリーンとすることができる。
請求項9の発明によれば、視聴者は拡散した反射光を観察することで自然な画像を視認できるスクリーンとすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るスクリーンの一実施の形態の構成を示す断面図である。
【図2】本発明に係るスクリーンの一実施の形態における構成を示す拡大した断面図である。
【図3】本発明に係るスクリーンの実施例の配置状態図である。
【図4】スクリーンのA−A断面における輝度分布を示す図である。
【図5】従来のスクリーンにおける光の拡散状態を示す図である。
【符号の説明】
10,90…スクリーン、11…支持体、12…光学多層膜、12H,12L…光学膜、13…光吸収層、14…光拡散層、15…接着層、90a,90c…周辺部、90b…中央部、M…視聴者、P…プロジェクター
【発明の属する技術分野】
本発明は、リニアフレネルレンズを支持体としたスクリーン及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、会議等において発言者が資料を提示する方法としてオーバヘッドプロジェクターやスライドプロジェクターが広く用いられている。また、一般家庭においても液晶を用いたビデオプロジェクターや動画フィルムプロジェクターが普及しつつある。これらのプロジェクターの映写方法は光源から出力された光を、例えば透過形の液晶パネル等によって光変調して画像光を形成し、この画像光をレンズ等の光学系を通して出射してスクリーン上に映写するものである。
【0003】
例えば、スクリーン上にカラー画像を形成することができるプロジェクター装置は、光源から出射された光線を赤(R)、緑(G)、青(B)の各色に分離して所定の光路に収束させる照明光学系と、この照明光学系によって分離されたRGB各色の光束をそれぞれ光変調する液晶パネル(ライトバルブ)と、液晶パネルにより光変調されたRGB各色の光束を合成する光合成部とを備え、光合成部により合成したカラー画像を投射レンズによりスクリーンに拡大投影するようになっている。
【0004】
また、最近では光源として狭帯域三原色光源を使用し、液晶パネルの代わりにグレーティング・ライト・バルブ(GLV:Grating Light Valve)を用いてRGB各色の光束を空間変調するタイプのプロジェクター装置も開発されている。
【0005】
上述したプロジェクター装置に対応して用いられる反射型スクリーンには、視認性の良好な広視野角のスクリーンであることが要求されるため、一般にスクリーン表面に光を散乱させる拡散層が設けられている。しかし、スクリーンゲインを上げると、図5に示すようにスクリーン90の中央部90bと周辺部90a、90cとの輝度の差が大きくなり、スクリーン中央部90bは明るく見えるが、周辺部90a、90cは暗い映像あるいは映像が見えない状態となっていた。
【0006】
上記スクリーンの輝度差の問題に関して種々検討されており、例えば、おもて面側に光拡散層、裏面側にリニアフレネル構造面が設けられた透明シートのリニアフレネル構造面に光反射層を設けることにより、適切な拡散角度で拡散させて均一な表面輝度が得られるスクリーンが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0007】
【特許文献1】
特許第3341225号明細書(段落0024,0040、図1,2)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記スクリーンではアルミニウム蒸着膜である光反射層が画像光の反射とともに外光も反射するため、コントラスト性能の改善は必ずしも十分ではなかった。
【0009】
本発明は、以上の従来技術における問題に鑑みてなされたものであり、均一な表面輝度分布とともに高コントラスト、高ゲインが得られるスクリーン及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記問題に対して、本出願人と同一の出願人により、波長領域に応じて選択的に光を反射する選択反射層を用いて、プロジェクターから投影される画像光を主に反射し、プロジェクター以外の例えば蛍光灯や太陽等からの光、すなわち外光は反射しないようにしたスクリーン(特願2002−070799号等)が提案されている。このスクリーンは、支持体に選択反射層が形成され、選択反射層の前面に反射光を散乱させる拡散層が、さらに選択反射層の背後に透過光を吸収する吸収層が設けられている。また、選択反射層は高屈折率の光学膜と低屈折率の光学膜とが交互に積層された光学多層膜であり、プロジェクター光の波長領域、例えば、赤(R)、緑(G)、青(B)の三原色波長領域の光を反射し、三原色波長領域以外の波長領域の光を透過する特性を有する。このスクリーンにおいては、外光の影響を大幅に低減することができるため、部屋が明るい状態でもスクリーンゲインを下げることなく黒レベルを下げることができ、コントラストの高い鮮明な映像を表示することが可能となっている。
【0011】
しかしながら、このスクリーンにおいてもスクリーン中央部は明るく見えるが、周辺部は暗い映像あるいは映像が見えない状態となり、スクリーン表面輝度の不均一の問題は依然として残っていた。また、上記光学膜はスパッタリング法などドライプロセスにより形成されることを前提としていたため、表面に凹凸のあるフレネルレンズなどの支持体上には光学膜を均一な膜厚で形成することが困難であった。
【0012】
発明者らは、上記問題がドライプロセスに起因している点に着目し、鋭意検討を行った結果、均一な表面輝度分布とともに高コントラスト、高ゲイン、高反射率が得られるスクリーン、及び表面に凹凸のある支持体上にも均一な膜厚で光学膜が形成できるスクリーンの製造方法を発明するに至った。
【0013】
すなわち、前記課題を解決するために提供する請求項1の発明に係るスクリーンは、リニアフレネルレンズの少なくともリニアフレネル構造面に、特定の波長領域の光に対して高反射特性を有し、前記特定の波長領域以外の少なくとも可視波長領域に対して高透過特性を有する2n+1(nは1以上の整数である。)層からなる光学多層膜を備え、該光学多層膜が塗布により形成されていることを特徴とする。
【0014】
請求項1の発明により、リニアフレネルレンズの溝のパターン形状に応じてプロジェクター光が反射されるため、スクリーン上の各点におけるプロジェクターからの光に対する反射光の光束を目的の観察地点に向けることが可能となり、視聴者はスクリーンの中央部、周辺部ともに明るく、高コントラストの映像を見ることができるようになる。
【0015】
前記課題を解決するために提供する請求項2の発明に係るスクリーンは、請求項1の発明において、前記光学多層膜は、高屈折率の第1の光学膜とこれより低い屈折率をもつ第2の光学膜とが交互に形成され、最外層が第1の光学膜で形成された積層構造を有することを特徴とする。
【0016】
請求項2の発明により、プロジェクター光入射側及びその反対側の最外層が高屈折率の第1の光学膜となる奇数層の構成となり、選択反射層としての機能が優れたものとなる。また、第1の光学膜、第2の光学膜それぞれの光学膜厚を任意に設定できるため、所望の波長領域の光を反射し、その波長領域以外の波長領域の光を透過する特性を有する光学多層膜とすることが可能となり、プロジェクター光源に対応させた高コントラスト、高ゲイン、高反射率のスクリーンが実現可能となる。
【0017】
前記課題を解決するために提供する請求項3の発明に係るスクリーンは、請求項1または請求項2の発明において、前記特定の波長領域が、赤、緑、青の各波長領域を含むことを特徴とする。
【0018】
請求項3の発明により、RGB光源に対してコントラストが高い良好な映像が鑑賞可能なスクリーンを得ることが可能となる。
具体的には、請求項2の発明において、第1の光学膜の屈折率を1.70〜2.10とし、第2の光学膜の屈折率を1.30〜1.69とし、第1の光学膜、第2の光学膜の膜厚を、それぞれ80nm〜15μmの範囲内で設定して、RGB三原色波長領域のプロジェクター光を反射し、三原色波長領域以外の波長領域の光を透過する特性を有する光学多層膜とすればよい。
【0019】
前記課題を解決するために提供する請求項4の発明に係るスクリーンは、請求項1〜3の発明において、前記リニアフレネルレンズのリニアフレネル構造面とは反対面に、前記光学多層膜の透過光を吸収する光吸収層を備えたことを特徴とする。
【0020】
請求項4の発明により、光学多層膜を透過した光が吸収されるため、よりコントラストが高い良好な映像が鑑賞可能となる。
なお、光吸収層を黒色フィルムとして所定の位置に貼り付けてもよい。
【0021】
前記課題を解決するために提供する請求項5の発明に係るスクリーンは、請求項1〜4の発明において、前記リニアフレネルレンズのリニアフレネル構造面に形成された光学多層膜の最外層上に該光学多層膜が反射した光を拡散させる光拡散層を備えたことを特徴とする。
【0022】
請求項5の発明により、光学多層膜で選択的に反射された光は光拡散層を透過して射出される際に拡散するため、視聴者はこの拡散した反射光を観察することで自然な画像を視認することができるようになる。
【0023】
前記課題を解決するために提供する請求項6の発明に係るスクリーンの製造方法は、リニアフレネルレンズの両面に、特定の波長領域の光に対して高反射特性を有し、前記特定の波長領域以外の少なくとも可視波長領域に対して高透過特性を有する2n+1(nは1以上の整数である。)層からなる光学多層膜を備えたスクリーンの製造方法であって、前記光学多層膜の製造工程が、高屈折率の第1の光学膜をディッピングにより被塗布体の両面に形成する第1塗布工程と、前記第1の光学膜よりも低い屈折率の第2の光学膜をディッピングにより被塗布体の両面に形成する第2塗布工程とを有し、前記第1塗布工程と第2塗布工程とを交互に行うことからなることを特徴とする。
【0024】
請求項6の発明により、リニアフレネルレンズの凹凸のあるリニアフレネル構造面にも光学膜の形成が可能であるため、視聴者がスクリーンの中央部、周辺部ともに明るく、高コントラストの映像を見ることができる大画面スクリーンの大量生産が可能となる。
なお、第1塗布工程と第2塗布工程とを交互に所定回数行った後、第1塗布工程で終了することが好ましい。これにより、プロジェクター光入射側及びその反対側の最外層が高屈折率の光学膜となる2n+1層の構成となり、選択反射層としての機能が優れたものとなる。
【0025】
前記課題を解決するために提供する請求項7の発明に係るスクリーンの製造方法は、請求項6の発明において、前記ディッピングの際に、前記被塗布体をリニアフレネル構造面のリニア方向に引き上げることを特徴とする。
【0026】
請求項7の発明により、リニアフレネル構造面の凹凸部分にもつきまわり良く光学膜用材料が塗布されるため、リニアフレネル構造面にも均一な膜厚で光学膜の形成が可能となる。
【0027】
前記課題を解決するために提供する請求項8の発明に係るスクリーンの製造方法は、請求項6または請求項7の発明において、前記前記リニアフレネルレンズのリニアフレネル構造面とは反対面に形成された光学多層膜の最外層上に、前記光学多層膜を透過した光を吸収する光吸収層を形成する工程を含むことを特徴とする。
【0028】
請求項8の発明により、光学多層膜を透過した光を吸収する光吸収層が設けられるため、よりコントラストが高い良好な映像が鑑賞できるスクリーンとすることが可能となる。
【0029】
前記課題を解決するために提供する請求項9の発明に係るスクリーンの製造方法は、請求項6〜8の発明において、前記前記リニアフレネルレンズのリニアフレネル構造面に形成された光学多層膜の最外層上に、該光学多層膜で反射された光を拡散する光拡散層を形成する工程を含むことを特徴とする。
【0030】
請求項9の発明により、光学多層膜で選択的に反射された光を拡散して射出する光拡散層が設けられるため、視聴者はこの拡散した反射光を観察することで自然な画像を視認できるスクリーンとすることが可能となる。
【0031】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明に係るスクリーンの実施の形態について説明する。なお、以下に示す実施の形態は例示であり、本発明はこれに限定されるものではない。
本発明に係るスクリーンの構成例を図1に示す。スクリーン10は、リニアフレネルレンズ11上に、光学多層膜12と、光吸収層13と、光拡散層14とが設けられた構成である。
【0032】
リニアフレネルレンズ11は、スクリーン10の支持体ともなるシート状のレンズであり、片面は所定形状の直線状の溝が形成されたリニアフレネル構造面とし、もう一方の面は平坦面としたものである。
【0033】
リニアフレネル構造面は、複数の直線状の溝が削り出しや金型プレスなどの加工により形成された面であり、その溝はスクリーンとした場合にスクリーン横方向に延びたリニア凹型の形となる。すなわち、その溝のパターン形状は一様ではなく、反射型のスクリーンとした場合に特定位置の光源からの入射光を特定方向に反射し、ある領域に光束が集まるようなパターン形状となる。この溝のパターン形状は、予め想定したスクリーン10のサイズ、光源の位置、視聴者の位置などの条件からシミュレーション演算により決定するとよい。また、ここで視聴者の位置とは観察最低距離であるため、リニアフレネルレンズ11の焦点距離とみることができ、例えば1m以上とするとよい。
【0034】
なお、溝のピッチは画素よりも小さいことが好ましく、画素の1/3以下がより好ましい。例えば、対角80インチ、横軸1280ドットのスクリーン10への画像光の投射とした場合、1画素は1.27mmとなり、リニアフレネルレンズ11の溝のピッチは1mm以下が好ましく、0.1〜0.3mmがより好ましい。
【0035】
リニアフレネルレンズ11に用いられる材料は、透明の有機樹脂、ガラス等の所望の光学特性を満足する材料であればよい。光学特性として、リニアフレネルレンズ11を構成する材料の屈折率は1.3〜1.7、ヘイズは8%以下、透過率は80%以上が好ましい。また、リニアフレネルレンズ11にアンチグレア機能をもたせてもよい。
【0036】
リニアフレネルレンズ11に用いられる有機樹脂としては、例えばセルロース誘導体(例、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース(TAC)、プロピオニルセルロース、ブチリルセルロース、アセチルプロピオニルセルロース及びニトロセルロース)、ポリメチルメタアクリレート、メチルメタクリレートと他のアルキル(メタ)アクリレート、スチレンなどといったビニルモノマーとの共重合体などの(メタ)アクリル系樹脂;ポリカーボネート、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート(CR−39)などのポリカーボネート系樹脂;(臭素化)ビスフェノールA 型のジ(メタ)アクリレートの単独重合体ないし共重合体、(臭素化)ビスフェノールA のモノ(メタ)アクリレートのウレタン変性モノマーの重合体および共重合体などといった熱硬化性(メタ)アクリル系樹脂;ポリエステル、特にポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートおよび不飽和ポリエステル;アクリロニトリル−スチレン共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、エポキシ樹脂などが好ましい。また、耐熱性を考慮したアラミド系樹脂の使用も可能である。この場合には加熱温度の上限が200℃以上となり、その温度範囲が幅広くなることが予想される。
厚さは剛性の面からは厚いほうがよいが、ヘイズの面からは薄いほうが好ましく、通常25〜500μm程度である。
【0037】
光学多層膜12は、図2に示すように第1の光学膜として後述する光学膜用材料Aを基体上に塗布・硬化して得られる高屈折率の光学膜12Hと、第2の光学膜として後述する光学膜用材料Bを塗布・硬化して得られる低屈折率の光学膜12Lとが交互に積層された構成である。詳しくは、リニアフレネルレンズ上から、まず高屈折率の光学膜12Hが設けられ、ついで低屈折率の光学膜12Lが設けられ、以降光学膜12Hと光学膜12Lとが交互に設けられ、最後に光学膜12Hが設けられた構成であり、2n+1層(nは1以上の整数である。)からなる積層膜となっている。
【0038】
光学膜12Hは、リニアフレネルレンズ11、または光学膜12Lの上に光学膜用材料Aを塗布した後に硬化反応により形成される光学膜である。この光学膜12Hは屈折率を調整するために微粒子が含まれている
光学膜12Hの膜厚は、80nm〜15μm、より好ましくは600〜1000nmとする。15μmより厚くすると、分散し切れなかった微粒子によるヘイズ成分が増大して光学膜としての機能が得られないからである。
また、光学膜12Hの屈折率は、1.70〜2.10とすることが好ましい。屈折率を2.10よりも高くすると、微粒子の分散性が不充分となって光学膜としての機能が損なわれる。また、屈折率を1.70よりも低くすると、光学膜12Lを積層した場合の反射特性が十分ではなくなり、スクリーンとしての特性が不充分となる。
【0039】
光学膜12Lは、光学膜12Hの上に上記光学膜用材料Bを塗布した後に硬化反応により形成される屈折率1.30〜1.69の光学膜である。光学膜12Lの屈折率は光学膜用材料Bに含まれる樹脂の種類、場合によっては微粒子の種類及び添加量などにより決まる。なお、屈折率が1.69よりも高くなると光学膜12Hとの屈折率の差が確保できず、光学膜12Hに積層した場合の反射特性が十分ではなくなり、スクリーンとしての特性が不充分となる。また、1.3よりも低い屈折率をもった膜を形成することが困難であり、屈折率1.3が製造上の下限となる。
【0040】
光学膜12Lの膜厚は、80nm〜15μm、より好ましくは600〜1000nmとする。
【0041】
以上の構成により、光学多層膜12は、赤色、緑色、青色の三波長帯の光に対して高反射特性を有し、少なくともこれらの波長領域以外の可視波長域の光に対しては高透過特性を有するようになる。なお、光学膜12H,13Lそれぞれの屈折率や厚みを調整することにより、光学多層膜12として反射する三波長帯の波長位置をシフトさせて調整することが可能であり、これによりプロジェクターから投射される光の波長に対応させた光学多層膜12とすることができる。
【0042】
なお、光学多層膜12を構成する光学膜12H,13Lの層数は特に限定されるものではなく、所望の層数とすることができる。また、光学多層膜12はプロジェクター光の入射側及びその反対側の最外層が光学膜12Hとなる奇数層により構成されることが好ましい。光学多層膜12を奇数層の構成とすることにより、偶数層とした構成の場合よりも三原色波長帯域フィルターとして機能が優れたものとなる。
【0043】
光学多層膜12の具体的な層数は3〜7層の奇数層とすることが好ましい。層数が2以下の場合には反射層としての機能が十分ではないためである。一方、層数が多いほど反射率は増加するが、層数8以上では反射率の増加率が小さくなり、光学多層膜12の形成所要時間をかけるほど反射率の改善効果が得られなくなるためである。
【0044】
光吸収層13は、光学多層膜12を透過した光を吸収させるためのもので、例えば、図1ではリニアフレネルレンズ11の裏面側の光学多層膜12の最外層表面に黒色の樹脂フィルムを貼り付けた態様を示している。あるいは、黒色塗料を塗布して形成してもよい。
【0045】
光拡散層14は、片面の表面が凹凸形状となっており、その構成材料はプロジェクターで使用する波長域の光を透過する性質のものであれば特に制約はなく、拡散層として通常使用されるガラスやプラスチックなどでよい。また、光拡散層14は、すでにそのような形状となったフィルム状の光拡散層14を接着層15によりリニアフレネル構造面の光学多層膜12の表面と貼り合わせるとよい。あるいは、光学多層膜12の上に透明エポキシ樹脂を塗布し、エンボス加工などにより表面に凹凸を設けてもよい。
【0046】
光学多層膜12で選択的に反射された光は光拡散層14を透過して射出される際に拡散し、視聴者はこの拡散した反射光を観察することで自然な画像を視認することができるようになる。光拡散層14における拡散角はその視認性を決める重要な要因であり、拡散板を構成する材料の屈折率や表面の凹凸形状などを調整することによってその拡散角を増大させる。
また、プロジェクターの光源がレーザである場合にはスクリーン上のぎらつきであるスペックルパターンの発生を防止するために光拡散層14の表面形状パターンをランダムにするとよい。
【0047】
上記スクリーン10によって、リニアフレネルレンズ11の溝のパターン形状に応じてプロジェクター光が反射されるため、スクリーン10上の各点におけるプロジェクターからの光に対する反射光の光束を目的の観察地点に向けることが可能となり、視聴者はスクリーン10の中央部、周辺部ともに明るい映像を見ることができるようになる。また、プロジェクターからの特定波長の光を反射し、外光などのそれ以外の波長領域の入射光を透過・吸収する選択反射が可能となり、スクリーン10上の映像の黒レベルを下げて高コントラストを達成するものであり、部屋が明るい状態でもコントラストの高い映像を表示することが可能となる。例えば、グレーティング・ライト・バルブ(GLV)を用いた回折格子型プロジェクターのようなRGB光源からの光を投射した場合にスクリーン10上で広視野角で、かつコントラストが高く、外光の映り込みのない良好な映像が鑑賞できるようになる。
【0048】
すなわち、スクリーン10に入射する光は、光拡散層14を透過し、光学多層膜12に到達し、当該光学多層膜12にて入射光に含まれる外光成分は透過されて光吸収層13で吸収され、映像に関わる特定波長領域の光のみ選択的に反射され、その反射光は光拡散層14の表面にて拡散され視野角の広い画像光として視聴者に供される。したがって、均一な表面輝度分布とともに、上記反射光である画像光への外光の影響を高いレベルで排除することができ、従来にない高コントラスト化が可能となる。
【0049】
なお、本発明に係るスクリーンとして、図2に示すように、リニアフレネルレンズのリニアフレネル構造面に上記と同じ構成の光学多層膜が形成され、その光学多層膜の最外層表面に光拡散層が形成され、リニアフレネルレンズの裏面に光吸収層が形成された構成としてもよい。このスクリーンでも、プロジェクターからの特定波長の光を反射し、外光などのそれ以外の波長領域の入射光を透過・吸収することによりスクリーン上の黒レベルを下げて高コントラストを達成することが可能である。
【0050】
ここで、上記第1の光学膜及び第2の光学膜を形成するための塗料である光学膜用材料A及びBについて説明する。
【0051】
(1)光学膜用材料A
光学膜用材料Aは、微粒子と、有機溶媒と、エネルギーを吸収して硬化反応を起こす結合剤と、親油基および親水基からなる分散剤とを含有する。
【0052】
微粒子は、成膜された後の光学膜の屈折率を調整するために添加される高屈折率材料の微粒子であり、Ti、Zr、Al、Ce、Sn、La、In、Y、Sb、等の酸化物、または、In− Sn等の合金酸化物が挙げられる。なお、光触媒を抑える目的でTi酸化物にAl、Zr等の酸化物が適当量含有されたとしても、本発明の効果を妨げるものではない。
【0053】
また、微粒子の比表面積は55〜85 m2/gが好ましく、75〜85 m2/gであることがより好ましい。比表面積がこの範囲にあると、微粒子の分散処理により、光学膜用材料中における微粒子の粒度で100nm以下に抑えることが可能となり、ヘイズの非常に小さな光学膜を得ることが可能である。
【0054】
有機溶媒は、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソブチルアルコール等のアルコール系溶媒、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル、乳酸エチル、エチレングリコールアセテート等のエステル系溶媒等が用いられる。これら有機溶媒は必ずしも100%純粋である必要はなく、異性体、未反応物、分解物、酸化物、水分等の不純成分が20%以下であれば含まれていてもかまわない。また、低い表面エネルギーをもつリニアフレネルレンズや光学膜上に塗布するためには、より低い表面張力をもつ溶媒を選択することが望ましく、例えばメチルイソブチルケトン、メタノール、エタノール等が挙げられる。
【0055】
結合剤は、熱硬化性樹脂、紫外線(UV)硬化型樹脂、電子線(EB)硬化型樹脂等があげられる。熱硬化性樹脂、UV硬化型樹脂、EB硬化型樹脂の例としてはポリスチレン樹脂、スチレン共重合体、ポリカーボネート、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、ポリアミン樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂等が挙げられる。その他の環状(芳香族、複素環式、脂環式等)基を有するポリマーでもよい。また、炭素鎖中にフッ素、シラノール基の入った樹脂でも構わない。
【0056】
上記樹脂を硬化反応させる方法は放射線または熱いずれでもよいが、紫外線照射により樹脂の硬化反応を行う場合には、重合開始剤の存在下で行うことが好ましい。ラジカル重合開始剤としては、例えば、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系開始剤;ベンゾイルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド、t−ブチルパーオクトエート等のパーオキシド系開始剤が挙げられる。これらの開始剤の使用量は、重合性単量体合計100重量部あたり0.2〜10重量部、より好ましくは0.5〜5重量部とする。
【0057】
分散剤は、親油基と親水基とからなり、微粒子の分散性を向上させる。分散剤の親油基の重量平均分子量は110〜3000である。分子量が110よりも低いと、有機溶媒に対して十分に溶解しないなどの弊害が生じ、分子量が3000を超えると光学膜中の微粒子の十分な分散性を得ることができない。なお、分散剤には、結合材と硬化反応を起こすための官能基を有していてもよい。
【0058】
分散剤に含まれる親水基の極性官能基の量は、10−3〜10− 1mol/gである。官能基がこれより少ない、あるいは多い場合には、微粒子の分散に対する効果が発現せず、分散性低下などにつながる。極性官能基として以下に示すような官能基は凝集状態にならないため、有用である。−SO3M、−OSO3M、−COOM、P=O(OM)2。(ここで、式中Mは、水素原子あるいは、リチウム、カリウム、ナトリウム等のアルカリ金属である。)、3級アミン、4級アンモニウム塩が挙げられる。R1(R2)(R3)NHX(ここで、式中R1、R2、R3は、水素原子あるいは炭化水素基であり、X−は塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン元素イオンあるいは無機・有機イオンである。)。また、−OH、−SH、−CN、エポキシ基等の極性官能基もある。これら分散剤は、1種単独で用いられることが可能であるが、2種以上を併用することも可能である。塗膜における本発明の分散剤は、総量で上記微粒子100重量部に対して、20〜60重量部、好ましくは、38から55重量部である。
【0059】
光学膜用材料Aは塗布により塗膜とされた後、放射線または熱によって硬化反応が促進され高屈折率タイプの第1の光学膜となる。
【0060】
(2)光学膜用材料B
光学膜用材料Bは、有機溶媒と、結合剤とを含有するものである。結合剤は有機溶媒に溶解されており、必要に応じてその中に微粒子が添加され分散されていてもよい。
【0061】
結合剤は、紫外線などの放射線、熱からのエネルギーにより硬化反応を起こす官能基を分子内に有する樹脂であり、フッ素系樹脂などが好適である。
【0062】
微粒子は、成膜された後の光学膜の屈折率を調整するために必要に応じて添加される低屈折率材料の微粒子であり、SiO2、MgF2、あるいは中空微粒子、フッ素系樹脂からなる微粒子が挙げられる。また、Ti、Zr、Al、Ce、Sn、La、In、Y、Sb、等の酸化物、または、In− Sn等の合金酸化物が添加されていてもよい。なお、光触媒を抑える目的でTi酸化物にAl、Zr等の酸化物が適当量含有されたとしても、本発明の効果を妨げるものではない。
【0063】
有機溶媒は、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソブチルアルコール等のアルコール系溶媒、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル、乳酸エチル、エチレングリコールアセテート等のエステル系溶媒、含フッ素溶媒としては、パーフルオロベンゼン、ペンタフルオロベンゼン、1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、1,4−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンなどの含フッ素芳香族炭化水素類、パーフルオロトリブチルアミン、パーフルオロトリプロピルアミンなどの含フッ素アルキルアミン類、パーフルオロヘキサン、パーフルオロオクタン、パーフルオロデカン、パーフルオロドデカン、パーフルオロ−2,7−ジメチルオクタン、1,3−ジクロロ−1,1,2,2,3−ペンタフルオロプロパン、1H−1,1−ジクロロパーフルオロプロパン、1H−1,3−ジクロロパーフルオロプロパン、1H−パーフルオロブタン、2H,3H−パーフルオロペンタン、3H,4H−パーフルオロ−2−メチルペンタン、2H,3H−パーフルオロ−2−メチルペンタン、パーフルオロ−1,2−ジメチルヘキサン、パーフルオロ−1,3−ジメチルヘキサン、1H−パーフルオロヘキサン、1H,1H,1H,2H,2H−パーフルオロヘキサン、1H,1H,1H,2H,2H−パーフルオロオクタン、1H−パーフルオロオクタン、1H−パーフルオロデカン、1H,1H,1H,2H,2H−パーフルオロデカンなどの含フッ素脂肪族炭化水素類、パーフルオロデカリン、パーフルオロシクロヘキサン、パーフルオロ−1,3,5−トリメチルシクロヘキサンなどの含フッ素脂環族炭化水素類、パーフルオロ−2−ブチルテトラヒドロフラン、フッ素含有低分子量ポリエーテルなどの含フッ素エーテル類を単独または混合して用いることが可能である。例えば、光学膜用材料Aに用いられる有機溶媒をメチルイソブチルケトンとし、光学膜用材料Bに用いられる有機溶媒を含フッ素アルコール(C6F13C2H4OH)とパーフルオロブチルアミンとの混合溶媒(95:5)とする。また、これら有機溶媒は必ずしも100%純粋である必要はなく、異性体、未反応物、分解物、酸化物、水分等の不純成分が20%以下であれば含まれていてもかまわない。
【0064】
また、光学膜用材料Bは塗布により塗膜とされた後、硬化反応により第1の光学膜よりも低屈折率の第2の光学膜となる。
【0065】
つぎに、本発明に係る反射スクリーン10の製造方法について以下に説明する。
(s1)おもて面をリニアフレネル構造面とし、裏面を平坦面としたアクリル製リニアフレネルレンズ11を用意し、当該リニアフレネルレンズ11を光学膜用材料Aで満たされた槽に浸漬し、引き上げるディッピング方式によりリニアフレネルレンズ11の両面に所定量の光学膜用材料Aを塗布する。詳しくは、リニアフレネルレンズ11を光学膜用材料Aの液面に対して略垂直となるようにして、リニアフレネル構造面の直線状の溝に沿う方向(リニア方向)に槽へ浸漬し、保持した後、リニアフレネル構造面の直線状の溝に沿う方向(リニア方向)にリニアフレネルレンズ11を引き上げるとよい。これにより、凹凸のあるリニアフレネル構造面にもつきまわり良く光学膜用材料Aを均一に塗布することが可能であり、ひいては均一な膜厚の光学膜12Hを形成することが可能である。
なお、光学膜用材料Aの塗布量は、光学膜用材料Aの条件に応じたリニアフレネルレンズ11の浸漬速度、保持時間、引き上げ速度などのディッピング条件により調整可能である。
(s2)光学膜用材料Aの塗膜を乾燥後、紫外線を照射して光学膜用材料Aを硬化させ、所定膜厚の光学膜12Hを形成する。
【0066】
(s3)ついで、光学膜12Hが形成されたリニアフレネルレンズ11(被塗布体)を光学膜用材料Bで満たされた槽に浸漬し、引き上げるディッピング方式によりリニアフレネルレンズ11の両面にある光学膜12H上に所定量の光学膜用材料Bを塗布する。ディッピング方式はステップs1と同様の要領で行う。
(s4)光学膜用材料Bの塗膜を乾燥後、光学膜用材料Bを熱硬化させ、所定膜厚の光学膜12Lを形成する。これにより、光学膜12Hと光学膜12Lとの積層構成となる。
(s5)ついで、光学膜12Hと12Lとが積層されたリニアフレネルレンズ11(被塗布体)を光学膜用材料Aで満たされた槽に浸漬し、引き上げることによりリニアフレネルレンズ11の両面最外層にある光学膜12L上に所定量の光学膜用材料Aを塗布する。
(s6)光学膜用材料Aの塗膜を乾燥後、紫外線を照射して光学膜用材料Aを硬化させ、所定膜厚の光学膜12Hを形成する。以降、ステップs3〜s6までの処理を所定回数行い、リニアフレネルレンズ11の両面に光学多層膜12を形成する。
【0067】
(s7)リニアフレネル構造面側の光学多層膜12の表面に低屈折率の透明接着剤(EPOXY TECHNOLOGY社製EPOTEK396)を塗布し、その上に板形状の光拡散層層14の凹凸の有る面とは反対面を接触面として搭載した後に当該接着剤を硬化させて光学多層膜12と光拡散層14とを貼り合わせる接着層15とする。この接着層15により、光学多層膜12表面上に浮き出ているリニアフレネル構造面の凹凸が吸収され、光拡散層14は平坦面の上に形成された状態となる。
【0068】
(s8)リニアフレネルレンズ11の裏面側の光学多層膜12の表面に黒色の光吸収剤を含有した樹脂を塗布し、光吸収層13を形成し、本発明に係る反射スクリーン10とする。
【0069】
また、本発明に係るスクリーンの他の実施の形態における構成として、図2に示すように、リニアフレネルレンズ11の両面それぞれに上記と同じ構成の光学多層膜12が形成され、そのうち一方の光学多層膜12の最外層表面に光拡散層14が形成され、他方の光学多層膜12の最外層表面に光吸収層13が形成された構成としてもよい。このスクリーン20でも、プロジェクターからの特定波長の光を反射し、外光などのそれ以外の波長領域の入射光を透過・吸収することによりスクリーン上の黒レベルを下げて高コントラストを達成することが可能である。
【0070】
【実施例】
上記本発明を実際に実施した例を以下に説明する。この実施例は例示であり、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0071】
実施例におけるリニアフレネルレンズ、光学膜用材料Aである塗料(I),光学膜用材料Bである塗料(II)の組成と製造方法及びスクリーン製造方法を以下に示す。
(1)リニアフレネルレンズ
・材質:アクリル
・サイズ:対角80インチ、縦横比率4:3
・おもて:リニアフレネル構造面
リニア凹型
溝ピッチ0.3mm
焦点距離3000mm(基準より高さ1200mm)
・裏面:平面
【0072】
(2)塗料(I)
・微粒子:TiO2微粒子
(石原産業社製、平均粒径約20nm、屈折率2.48) 100重量部
・分散剤:ドデシルベンゼンスルホン酸Na 20重量部
・結合剤(1):SO3Na基含有ウレタンアクリレート
(数平均分子量:1400、SO3Na濃度:1×10−1 mol/g) 38重量部
・結合剤(2):ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとジペンタエリスリトールペンタアクリレートとの混合物
(日本化薬社製UV硬化性樹脂、商品名DPHA) 19重量部
・有機溶媒:メチルイソブチルケトン(MIBK) 4800重量部
上記微粒子と分散剤と結合剤(1)と有機溶媒とを混合し、ペイントシェーカーで分散処理を行い微粒子分散液を得た。この微粒子分散液に結合剤(2)を添加し、攪拌機にて攪拌処理を行い、塗料(I)とした。
【0073】
(3)塗料(II)
・結合剤:末端カルボキシル基をもつパーフルオロブテニルビニルエーテルの重合体 100重量部
・有機溶媒:含フッ素アルコール(C6F13C2H4OH)とパーフルオロブチルアミンとの混合溶媒(混合比95:5)1666重量部
上記結合剤と有機溶媒とを混合し、十分攪拌して塗料(II)とした。
【0074】
(4)スクリーン製造方法
(s11)リニアフレネルレンズの両面に塗料(I)を前述したディッピング方式で塗布する。ディッピング条件は、次の通りとした。
・引下げ速度:600mm/min
・保持時間: 2min
・引上げ速度:200mm/min
(s12)塗料(I)の塗膜を室温で乾燥後、紫外線(UV)硬化(500mJ/cm2)させ、片面当たり膜厚780nmの高屈折率の光学膜を形成する。
(s13)ついで、その高屈折率の光学膜上に塗料(II)を前述したディッピング方式で塗布する。ディッピング条件は、次の通りとした。
・引下げ速度:600mm/min
・保持時間: 2min
・引上げ速度:300mm/min
(s14)塗料(II)の塗膜を室温で乾燥後、90℃で熱硬化させ、膜厚1120nmの低屈折率の光学膜を形成する。
(s15)光学膜(II)上にステップs11と同一条件で塗料(I)を塗布する。
(s16)塗料(I)の塗膜を室温で乾燥後、紫外線(UV)硬化(500mJ/cm2)させ、片面当たり膜厚780nmの高屈折率の光学膜を形成する。これによりPETフィルム上に光学膜(I)/光学膜(II)/光学膜(I)の3層の光学多層膜とする。
【0075】
(s17)リニアフレネル構造面側の光学多層膜の最外層表面に粘着層を介して拡散板(POC社製、商品名LSD60x10(水平方向60°、垂直方向10°拡散))を貼合し、リニアフレネルレンズの裏面側の光学多層膜の最外層表面には粘着層を介して黒色PETフィルムを貼合して、スクリーンを作製した。
【0076】
(比較例)
実施例におけるリニアフレネルレンズを同一材料の両面ともに平面の支持体とし、それ以外の条件は実施例1の条件と同じとしてスクリーンを得た。
【0077】
スクリーンの評価に当っては、図3(a)に示すようにプロジェクター、スクリーン、観察点を配置して、図3(b)に示すスクリーンA−A断面の輝度分布を分光放射輝度計(ミノルタ社製、CS−1000)で測定した。なお、諸条件は次の通りである。
【0078】
スクリーンの輝度分布の測定結果を図4に示す。
実施例のスクリーンでは、スクリーンの高さ方向の広い角度に渡り、高輝度で輝度差の少ない映像を見ることができることが確認された。
これに対して、比較例では、スクリーンの中央部付近は高輝度で、そこからスクリーンの端方向に行くにしたがって徐々に輝度が下がり、輝度差の大きな映像となっていた。
【0079】
【発明の効果】
上述したように、請求項1の発明によれば、スクリーン上の各点におけるプロジェクターからの光に対する反射光の光束を目的の観察地点に向けることができ、視聴者はスクリーンの中央部、周辺部ともに明るく、高コントラストの映像を見ることができる。
請求項2の発明によれば、光学多層膜は選択反射層としての機能が優れたものとなる。また、所望の波長領域の光を反射し、その波長領域以外の波長領域の光を透過する特性を有する光学多層膜とすることができ、プロジェクター光源に対応させた高コントラスト、高ゲイン、高反射率のスクリーンが実現できる。
請求項3の発明によれば、RGB光源に対してコントラストが高い良好な映像が鑑賞可能なスクリーンを得ることができる。
請求項4の発明によれば、よりコントラストが高い良好な映像が鑑賞できる。
請求項5の発明によれば、視聴者は拡散した反射光を観察することで自然な画像を視認することができる。
請求項6の発明によれば、視聴者がスクリーンの中央部、周辺部ともに明るく、高コントラストの映像を見ることができる大画面スクリーンの大量生産が可能となる。
請求項7の発明によれば、リニアフレネル構造面にも均一な膜厚で光学膜を形成できる。
請求項8の発明によれば、よりコントラストが高い良好な映像が鑑賞できるスクリーンとすることができる。
請求項9の発明によれば、視聴者は拡散した反射光を観察することで自然な画像を視認できるスクリーンとすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るスクリーンの一実施の形態の構成を示す断面図である。
【図2】本発明に係るスクリーンの一実施の形態における構成を示す拡大した断面図である。
【図3】本発明に係るスクリーンの実施例の配置状態図である。
【図4】スクリーンのA−A断面における輝度分布を示す図である。
【図5】従来のスクリーンにおける光の拡散状態を示す図である。
【符号の説明】
10,90…スクリーン、11…支持体、12…光学多層膜、12H,12L…光学膜、13…光吸収層、14…光拡散層、15…接着層、90a,90c…周辺部、90b…中央部、M…視聴者、P…プロジェクター
Claims (9)
- リニアフレネルレンズの少なくともリニアフレネル構造面に、特定の波長領域の光に対して高反射特性を有し、前記特定の波長領域以外の少なくとも可視波長領域に対して高透過特性を有する2n+1(nは1以上の整数である。)層からなる光学多層膜を備え、該光学多層膜が塗布により形成されていることを特徴とするスクリーン。
- 前記光学多層膜は、高屈折率の第1の光学膜とこれより低い屈折率をもつ第2の光学膜とが交互に形成され、最外層が第1の光学膜で形成された積層構造を有することを特徴とする請求項1に記載のスクリーン。
- 前記特定の波長領域が、赤、緑、青の各波長領域を含むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のスクリーン。
- 前記リニアフレネルレンズのリニアフレネル構造面とは反対面に、前記光学多層膜の透過光を吸収する光吸収層を備えたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一に記載のスクリーン。
- 前記リニアフレネルレンズのリニアフレネル構造面に形成された光学多層膜の最外層上に該光学多層膜が反射した光を拡散させる光拡散層を備えたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一に記載のスクリーン。
- リニアフレネルレンズの両面に、特定の波長領域の光に対して高反射特性を有し、前記特定の波長領域以外の少なくとも可視波長領域に対して高透過特性を有する2n+1(nは1以上の整数である。)層からなる光学多層膜を備えたスクリーンの製造方法であって、
前記光学多層膜の製造工程が、
高屈折率の第1の光学膜をディッピングにより被塗布体の両面に形成する第1塗布工程と、
前記第1の光学膜よりも低い屈折率の第2の光学膜をディッピングにより被塗布体の両面に形成する第2塗布工程とを有し、
前記第1塗布工程と第2塗布工程とを交互に行うことからなることを特徴とするスクリーンの製造方法。 - 前記ディッピングの際に、前記被塗布体をリニアフレネル構造面のリニア方向に引き上げることを特徴とする請求項6に記載のスクリーンの製造方法。
- 前記前記リニアフレネルレンズのリニアフレネル構造面とは反対面に形成された光学多層膜の最外層上に、前記光学多層膜を透過した光を吸収する光吸収層を形成する工程を含むことを特徴とする請求項6または請求項7に記載のスクリーンの製造方法。
- 前記前記リニアフレネルレンズのリニアフレネル構造面に形成された光学多層膜の最外層上に、該光学多層膜で反射された光を拡散する光拡散層を形成する工程を含むことを特徴とする請求項6〜8のいずれか一に記載のスクリーンの製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003140292A JP2004341407A (ja) | 2003-05-19 | 2003-05-19 | スクリーン及びその製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003140292A JP2004341407A (ja) | 2003-05-19 | 2003-05-19 | スクリーン及びその製造方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004341407A true JP2004341407A (ja) | 2004-12-02 |
Family
ID=33529050
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2003140292A Pending JP2004341407A (ja) | 2003-05-19 | 2003-05-19 | スクリーン及びその製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2004341407A (ja) |
Cited By (5)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2009157074A (ja) * | 2007-12-26 | 2009-07-16 | Asahi Kasei Corp | 光線制御ユニット |
CN102262343A (zh) * | 2011-03-08 | 2011-11-30 | 浙江铭品光电新材料有限公司 | 光学投影荧幕 |
WO2021169597A1 (zh) * | 2020-02-28 | 2021-09-02 | 深圳光峰科技股份有限公司 | 透明投影屏幕及其制造方法 |
CN113495420A (zh) * | 2020-04-08 | 2021-10-12 | 台达电子工业股份有限公司 | 波长转换装置 |
WO2024082686A1 (zh) * | 2022-10-17 | 2024-04-25 | 青岛海信激光显示股份有限公司 | 投影屏幕、其制作方法及投影*** |
-
2003
- 2003-05-19 JP JP2003140292A patent/JP2004341407A/ja active Pending
Cited By (7)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2009157074A (ja) * | 2007-12-26 | 2009-07-16 | Asahi Kasei Corp | 光線制御ユニット |
CN102262343A (zh) * | 2011-03-08 | 2011-11-30 | 浙江铭品光电新材料有限公司 | 光学投影荧幕 |
WO2021169597A1 (zh) * | 2020-02-28 | 2021-09-02 | 深圳光峰科技股份有限公司 | 透明投影屏幕及其制造方法 |
US20220390823A1 (en) * | 2020-02-28 | 2022-12-08 | Appotronics Corporation Limited | Transparent projection screen, and manufacturing method for same |
CN113495420A (zh) * | 2020-04-08 | 2021-10-12 | 台达电子工业股份有限公司 | 波长转换装置 |
CN113495420B (zh) * | 2020-04-08 | 2022-10-04 | 台达电子工业股份有限公司 | 波长转换装置 |
WO2024082686A1 (zh) * | 2022-10-17 | 2024-04-25 | 青岛海信激光显示股份有限公司 | 投影屏幕、其制作方法及投影*** |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
TWI274227B (en) | Method for producing mold for use in duplicating light diffusion sheet, light diffusion sheet and method for producing the same, and screen | |
JP4238792B2 (ja) | 光拡散シート及びその製造方法、並びにスクリーン | |
JP4274147B2 (ja) | 光学多層膜及び反射型スクリーン | |
JP2006221070A (ja) | 反射型スクリーン | |
JP2004361923A (ja) | スクリーン及びその製造方法 | |
JP2005283749A (ja) | 光拡散フィルム及びその製造方法並びにスクリーン | |
JP2005099675A (ja) | 塗布型光学積層膜、光学多層膜及び反射スクリーン | |
JP2004341407A (ja) | スクリーン及びその製造方法 | |
JP2005025142A (ja) | 光拡散シート、その製造方法及びスクリーン | |
JP4442143B2 (ja) | 投射型画像表示システム | |
JP2006337906A (ja) | 光拡散フィルム及びスクリーン | |
JP2006058453A (ja) | 低屈折率光学膜用塗料、光学多層膜及び反射型スクリーン | |
JP2005165252A (ja) | 光機能性拡散板、反射型スクリーン及びその製造方法 | |
JP2009157250A (ja) | 光制御膜積層体及びそれを用いたプロジェクション用スクリーン | |
JP2005115243A (ja) | 反射型スクリーン及びその製造方法 | |
JP4547948B2 (ja) | 塗布型光学膜用材料、およびそれを用いた光学多層膜と反射スクリーン | |
JP2007003790A (ja) | 塗布型光学膜およびその作製方法、光学多層膜、反射型スクリーン、並びに浸漬塗布装置 | |
JP2004361922A (ja) | 塗布型光学膜用材料、およびそれを用いた光学多層膜と反射スクリーン | |
JP2005266264A (ja) | スクリーン | |
JP2006301311A (ja) | 光機能性拡散板、反射型スクリーン及びその製造方法 | |
JP2005234088A (ja) | 光拡散フィルム及びその製造方法並びにスクリーン | |
JP2006126474A (ja) | 塗布型光学膜およびその作製方法、光学多層膜、反射型スクリーン、並びに浸漬塗布装置 | |
JP2005202029A (ja) | 反射型スクリーン | |
JP2005321432A (ja) | 反射型スクリーン | |
JP2005241788A (ja) | 光学多層膜及びその製造方法、ならびにスクリーン及びその製造方法 |