JP2004322576A - 最適湿し水調製方法及びその湿し水を用いた印刷方法 - Google Patents

最適湿し水調製方法及びその湿し水を用いた印刷方法 Download PDF

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祐子 鈴木
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Abstract

【課題】試し印刷を行うことなく、最適な湿し水添加剤量を簡便に設定できる方法を提供する。
【解決手段】支持体上に親油性ポリマー粒子を分散保持する親水性感光層を有する印刷版原版に対し、光照射により照射部の感光層が親水性から親油性に変化し画線部が形成された印刷版を用いた印刷に使用される湿し水の調製方法であって、湿し水に添加される添加剤の最適量を、印刷版の非画線部になる親水性感光層と湿し水との接触角が安定化する領域であって、最小の添加剤量+0.5容量%とすることを特徴とする最適湿し水調製方法。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、オフセット印刷において最適な印刷結果を得るための湿し水の調製方法及びそのように調製された湿し水を用いた印刷方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
オフセット印刷などの平版印刷版を使用する印刷方法では、画線部に対応する印刷版表面を親インキ性とし、非画線部に対応する印刷版表面を親水性にして、非画線部に対応する印刷版表面には湿し水を付着させ、撥インキ性とし、画線部のみにインキを盛るようにしている。
【0003】
湿し水の役割としては、(1)非画線部を保護すると共に、非画線部にインキ反発性を付与する、(2)非画線部の水上がりを最小にしても非画線部に汚れが発生しないようにする、(3)インキ中にある程度湿し水が混入することでインキのタック値を下げ、印刷を最適にする、(4)インキローラ等の発熱を緩和する、(5)水の表面張力を小さくして水ローラ上の水が均一で薄く広がる、などが挙げられる。
【0004】
湿し水に必要な性質としては、(1)表面張力が小さく、版面をよく濡らすこと、(2)インキと乳化しない、(3)pHが所定の範囲内にあること(一般的にはpH5.5〜6.5)、(4)版面を不感脂化するなどが挙げられる。
【0005】
従来、このような湿し水は、通常、水道水に各種添加剤を添加して調製されている。湿し水の添加剤としては、pHを調整するための緩衝剤混合物、不感脂化効果を与える水溶性高分子、キレート化剤、有機溶剤、防腐剤、界面活性剤、消泡剤などが知られている。これらはエッチ液と称される濃縮液の形で市販されており、実際にはこのエッチ液を所定濃度に水で希釈して使用される。さらに、高速印刷に対応するため、湿し水とインキとのバランスを保つ添加剤が加えられる。従来はイソプロパノール(IPA)が専ら利用されていたが、IPAは危険物第4類アルコールであり、又、有機溶剤中毒予防規則(有機則)における第二種有機溶剤であり、湿し水への添加濃度が5〜20質量%程度であることから、湿し水自体が有機則の規制を受けることとなる。従って、このような湿し水を用いる作業環境では、環境浄化措置が義務づけられている。
【0006】
このような不都合を有するIPAの代替材料も提案されている。代表的な代替有機溶剤は、エチレングリコールモノブチルエーテルである。エチレングリコールモノブチルエーテル自体も有機則第二種有機溶剤ではあるが、湿し水添加量が3質量%以下であり、湿し水自体は有機則の適用を受けない。しかし、5%を超える場合には有機則の適用対象となるため、さらに安全な代替溶剤が提案されている。
【0007】
ところで、コンピュータの普及につれ、版材構成とともに種々の平版の製版方法が提案されている。PS版は、版下からポジ若しくはネガフィルムを作成して平版印刷原版に焼き付ける方法により製版されるが、該フィルムを介することなく版下から直接製版する電子写真版や銀塩写真版、あるいは、電子組版、DTPで編集・作成された印刷画像情報を可視画像化することなく直接版材にレーザー若しくはサーマルヘッドで印字し製版する所謂コンピュータ・ツー・プレート(CTP)タイプの印刷版が登場するに至っている。特にCTPタイプは製版工程の合理化と短縮化、材料費節減が可能となることから、DTP化が完了した新聞製作等の分野で大いに期待されている。
【0008】
かかるCTP版材としては、感光性、感熱性あるいは電気エネルギーで製版する版材が知られている。感光性タイプの版材は、有機半導体、銀塩+感光性樹脂系、高感度感光性樹脂等の材料を塗布しArレーザー、半導体レーザー等で光照射による印字を行い、引き続き現像して製版される。感熱性タイプの版材は、感熱層に分散させた熱溶融樹脂および熱可塑性樹脂を熱印字により溶融し、加熱部を親水性から親油性に変化させるものや、支持体上に設けられた親水性ポリマーをレーザー照射し親水性基を無くし親油性に転換させるものなどが知られている。
【0009】
一方で、湿し水を必要としない水なし印刷版が提案されている。このような水なし印刷版は、支持体上に感光/感熱層、その上に撥インキ性を有するシリコーンゴム層などの積層構造であり、画像状に露光或いは加熱して感光/感熱層の現像液に対する膨潤性を変化させ、感光/感熱層の一部と共に表面のシリコーンゴム層を除去することで感光/感熱層を露出させるもので、露出した感光/感熱層が親インキ性を有し、非画線部はシリコーンゴム層が撥インキ性であり、又、画線部と非画線部との凹凸により適正量のインキを盛ることができる。このような水なし印刷版では、湿し水を必要とする印刷版と比較してインキの乳化による抜けを考慮する必要はなく、又、画線部と非画線部との境界が明確になり画像が鮮明になるというものである。しかしながら、オフセット用の印刷インキは元々ある程度の水の同伴を前提にして組成が調製されているため、水なし印刷版では印刷インキを従来の組成とは変更する必要があり、湿し水の効果としてのインキタック性の低減もインキ組成の調製によらなければならない。さらに、印刷ローラ等に対する冷却効果も湿し水の重要な機能であるが、水なし印刷版では別途印刷ローラ等の冷却を考慮しなければならない。
【0010】
本発明者らは、湿し水を用いる平版印刷版であって、画線部の形成に現像等の処理が不要な印刷版の提案を行っている。例えば、WO01/83234号(特許文献1)、特開2001−310565号公報(特許文献2)、特開2001−310566号公報(特許文献3)、特開2001−310567号公報(特許文献4)、特開2001−353976号公報(特許文献5)、特開2002−49147号公報(特許文献6)、特開2002−362052号公報(特許文献7)、特開2002−370467号公報(特許文献8)等では、感光層として親水性ポリマーマトリクス中に親油性ポリマーの微粒子を分散させており、感光層中に存在する光吸収剤が光照射することで光を熱に変換し、発生した熱により発泡したり、熱融着したりして、感光層の親水性が失われ、親インキ性に変化することを利用している。
【0011】
このように多様化する印刷版に対して、同一の湿し水を用いると様々な問題が発生する。例えば、画線部の親油性と非画線部の親水性の差が、従来のPS版より小さい版材では、印刷枚数が多くなるに従い、印刷機のローラに汚れが生じるなどして湿し水の供給量が少なくなると印刷中に非画線部にもインキが付着して、所謂「地汚れ」と呼ばれる現象が発生しやすくなる。そこで、親水性不足を補うために、従来より湿し水にコロイダルシリカを添加することが知られている。しかしながら、コロイダルシリカを添加した湿し水はPS版には不向きである。従って、版材によって湿し水組成を変更する必要があり、種々の版を使用する印刷現場においては、煩雑な作業となる。
【0012】
これに対して、種々の版に対応した湿し水が提案されている。例えば、特許文献9:特開平5−286280号公報では、平均粒径100nm以下のコロイダルシリカを添加した湿し水において、脱塩アラビアゴムとグリコール類等を添加している。又、特許文献10:特開2000−141940号公報では、コロイダルシリカとグリセリン類の添加量を少なくすることが、さらに特許文献11:特開2002−144752号公報では、特定のカチオン性セルロース或いはカチオン性でんぷんを使用することで、コロイダルシリカを使用せずに種々の版に対応した湿し水が提供できるとしている。
【0013】
このように多種多様化する湿し水組成、版材に対して、最良の印刷結果を得るための湿し水調製は印刷現場での最終調整が必要である。確かに市販されている添加剤(エッチ液)には、希釈率等が指示されてはいるが、湿し水を希釈するために使用する水は、通常の水道水であり、地域によって硬度成分の種類や量が異なる。従って、実際の印刷を行う前に、指示された希釈率、添加量の範囲から湿し水を調製して試し印刷し、添加量が少なければ添加剤を追加し、多ければ水を追加するという作業を繰り返し、最適の印刷結果が得られる湿し水を調製しなければならなかった。このため、インキの消費、不要な排紙(損紙)、煩雑な水交換が増加するという不都合が生じていた。
【0014】
【特許文献1】
WO01/83234号
【特許文献2】
特開2001−310565号公報
【特許文献3】
特開2001−310566号公報
【特許文献4】
特開2001−310567号公報
【特許文献5】
特開2001−353976号公報
【特許文献6】
特開2002−49147号公報
【特許文献7】
特開2002−362052号公報
【特許文献8】
特開2002−370467号公報
【特許文献9】
特開平5−286280号公報
【特許文献10】
特開2000−141940号公報
【特許文献11】
特開2002−144752号公報
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明の目的は、このような試し印刷を行うことなく、最適な添加剤量を簡便に設定できる方法を提供することである。特に、本発明者らが提案している新規な印刷版に適した湿し水の調製方法を提供するものである。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明では、印刷版として支持体上に親水性感光層が形成された印刷版、特に親水性感光層が親水性ポリマーマトリクス中に親油性ポリマー粒子と光吸収剤を含有し、画像様の露光により感光層中に存在する光吸収剤が光を熱に変換し、発生した熱により発泡したり、熱融着したりして、感光層の親水性が失われ、親インキ性に変化することで画線部を形成し、未露光の感光層はそのまま親水性を保ち非画線部を形成する平版印刷版に対して、種々の湿し水について最適の印刷結果を得る条件について検討していたところ、添加剤の種類に拘わらず、感光層の親水性表面における湿し水の接触角が、添加剤濃度の上昇に伴って減少するが、ある濃度以上になるとほとんど変化がなくなることを見いだした。そして、その接触角の安定する領域において添加量濃度がもっとも少ない点近傍で、最適な印刷結果が得られることが分かった。
【0017】
即ち本発明は、支持体上に親油性ポリマー粒子を分散保持する親水性感光層を有する印刷版原版に対し、光照射により照射部の感光層が親水性から親油性に変化し画線部が形成された印刷版を用いた印刷において使用される湿し水の調製方法であって、湿し水に添加される添加剤の最適量を、印刷版の非画線部になる親水性感光層と湿し水との接触角が安定化する領域であって最小の添加剤量+0.5容量%とすることを特徴とする最適湿し水調製方法に関する。
【0018】
又、本発明は、前記版材に対してこのように調製された湿し水を用いる印刷方法に関する。
【0019】
[湿し水添加剤]
本発明で使用できる湿し水用の添加剤としては、特に制限されるものではないが、pHを調整するための緩衝剤混合物、キレート化剤、有機溶剤、防腐剤、界面活性剤、消泡剤などの他、高速印刷に対応するための各種アルコール類、エステル類等が挙げられる。本発明で使用する版材は、親水性感光層が非画線部として残るため、従来のPS版におけるゴム引きのためのアラビアゴム等の水溶性高分子の添加は必須ではないが任意に添加してもよい。さらに、親水性を高めるためにコロイダルシリカや各種糖類等の親水性付与剤を添加してもよい。これらの添加剤濃縮液として供給されているエッチ液を用いてもよい。
【0020】
湿し水の望ましいpHは5.5〜6が望ましい。酸性になるとインクの乳化が促進されるため、あまり酸性にならないように注意する必要がある。また、粘度は1から1.4mPa・s程度が望ましい。水単体よりも高いほうが印刷機の水ローラの水送りが安定になる。また、大気中における表面張力は300μN/cm以下が望ましい。
【0021】
[接触角]
図1は、湿し水添加剤濃度と版面上での接触角との関係を示すグラフである。
(接触角測定方法)
接触角の測定方法は以下のようにして行う。印刷版を1cm幅、長さ10cmに切り出す。23℃湿度50%の室内で、接触角測定装置上に固定し、湿し水100μlを滴下し1秒後の接触角を測定した。純水を用いた場合の接触角と湿し水添加剤濃度を変化させた湿し水での接触角を用いてグラフにしたところ印刷品質との相関が得られた。
【0022】
水単独や接触角が高い領域の濃度の湿し水で印刷を行うと非画像部での地汚れが発生しやすく、網点もからみやすい。また、接触角が低くなった濃度よりも1容量%以上濃い場合は、すぐに印刷品質に問題は生じないが、長時間印刷しているとインクの乳化が進み、徐々にベタ部分にスヌケが生じる。
【0023】
印刷版に対し、必要最小限の湿し水添加剤を加えるのが最も望ましいが、湿し水を入れてから長い間使用するため、添加剤に含まれる有機溶剤分が蒸発してしまうことがある。そのため、最小添加剤添加量に0.5容量%増やした量にすることで湿し水の多少の変化にも対応が可能である。
【0024】
次に本発明において使用される印刷版について説明する。
【0025】
[支持体]
本発明の平版印刷版用の原版において、支持体上に直接又は他の層を介して撥インキ性(親水性)を有する架橋樹脂からなる感光層を設けるが、この際用いられる支持体の具体例としては、アルミ板、鋼板、ステンレス板、銅板などの金属板、これら金属の合金板、ポリエステル、ポリアミド(ナイロン)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ABS樹脂、酢酸セルロースなどのプラスチックフィルム、紙、アルミ箔ラミネート紙、金属蒸着紙、プラスチックラミネート紙などのラミネートフィルム等が挙げられる。特に好ましくはアルミ板(取り扱いが容易、さびにくく安価、伸びが小さく長時間印刷に適している)、プラスチックフィルムでは、ポリエステル(物理的性質(特に耐熱性)、機械的性質(特に引張強度)に優れ、安価である)である。これらの支持体の厚さには特に制限はないが、通常100〜500μm程度である。又、これらの支持体は、密着性の改良等を目的として、酸化処理、クロメート処理、リン酸亜鉛処理、サンドブラスト処理、コロナ放電処理などの表面処理を施してもよい。又、支持体上に他の層(下地層)を介して感光層を形成する方法も有効である。
【0026】
[感光層]
本発明の平版印刷版用の原版における感光層は、光未照射の状態ではその表面が撥インキ性(親水性)を有するものであり、光照射することにより撥インキ性から親インキ性に変化する。特に、湿し水を用いるオフセット印刷に適用することにより、非画線部は親水性であることから湿し水に覆われてインキをはじく撥インキ性を有する。又、感光層は湿し水との接触により溶解しないことが必要であり、そのため、親水性ポリマーを架橋させて耐水性を付与している。
【0027】
このような感光層を形成するための感光層用組成物としては、親水性ポリマー、架橋剤及び光吸収剤を含有する感光層用組成物あるいは、親水性ポリマー、架橋剤、親油性ポリマー及び光吸収剤を含有する感光層用組成物が挙げられるが、本発明では特に後者の親油性ポリマーを含有する感光層用組成物を支持体上に塗布した後架橋して、感光層を形成する方法に適している。
【0028】
該感光層の膜厚は特に制限はないが、熱処理後の膜厚として、通常0.5〜10μm程度、特に1〜4μmが好ましい。
【0029】
<親水性ポリマー>
本発明の感光層に用いられる親水性ポリマーは、親水基及び架橋剤と反応し得る官能基を側鎖に有している。
【0030】
該親水基としては、例えば、水酸基、カルボキシル基及びそのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アミン塩、スルホン酸基及びそのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アミン塩、リン酸基及びそのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アミン塩、アミド基、アミノ基、スルホンアミド基、オキシメチレン基、オキシエチレン基などが挙げられる。
【0031】
又、架橋剤と反応し得る官能基としては、上記の親水基の他、イソシアナート基、グリシジル基、オキサゾリル基、メチロール基、及びメチロール基とメタノール、ブタノールなどのアルコールとが縮合したメトキシメチル基やブトキシメチル基などが挙げられる。
【0032】
水酸基を側鎖に有するポリマーとしては、ポリビニルアルコール系ポリマー、及び水酸基を有する不飽和モノマーを重合して得られるホモポリマーやコポリマー及びこれらポリマーの種々の変性ポリマーが挙げられる。ポリビニルアルコール系ポリマーを更に詳細に説明すると、酢酸ビニルやプロピオン酸ビニル等の脂肪酸ビニルモノマーのホモポリマーやコポリマーを完全又は部分加水分解して得られるポリマー、及びこのポリマーの部分ホルマール化、アセタール化、ブチラール化ポリマー等が挙げられる。また、水酸基を有する不飽和モノマーとしては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、及び、これらの(メタ)アクリレートにエチレンオキシド、プロピレンオキシド付加したモノマー、メチロール(メタ)アクリルアミドや該メチロール(メタ)アクリルアミドとメチルアルコールやブチルアルコールとの縮合物であるメトキシメチル(メタ)アクリルアミド、ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0033】
カルボキシル基を側鎖に有するポリマーとしては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸及びその無水物等の二塩基不飽和酸やこれら二塩基不飽和酸のモノエステル、モノアミド等のカルボキシル基含有不飽和モノマーを重合して得られるホモポリマーやコポリマー及びこれらポリマーの種々の変性ポリマー等が挙げられる。
【0034】
スルホン酸基を側鎖に有するポリマーとしては、ビニルスルホン酸、スルホエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸、ビニルメチルスルホン酸、イソプロぺニルメチルスルホン酸、(メタ)アクリル酸にエチレンオキシド、又はプロピレンオキシドを付加したアルコールの硫酸エステル(例えば、三洋化成工業(株)の商品名:「エレミノールRS−30」)、(メタ)アクリロイロキシエチルスルホン酸、モノアルキルスルホ琥珀酸エステルとアリル基を有する化合物とのエステル(例えば、三洋化成工業(株)の商品名:「エレミノールJS2」、花王(株)の商品名:「ラテムルS−180」、又は「同S180A」)、モノアルキルスルホ琥珀酸エステルとグリシジル(メタ)アクリレートとの反応生成物、及び日本乳化剤(株)の商品名:「Antox MS60」等を重合して得られるホモポリマーやコポリマー及びこれらポリマーの種々の変性ポリマー等が挙げられる。これらのスルホン酸基を有するポリマーに於いては、該スルホン酸基は水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機塩基やアミン類で中和されていても良い。
【0035】
リン酸基を側鎖に有するポリマーとしては、ビニルリン酸、リン酸モノ(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリレート、リン酸モノアルキルエステルのモノ(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリレート等を重合して得られるホモポリマーやコポリマー及びこれらポリマーの種々の変性ポリマー等が挙げられる。
【0036】
これらのカルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基を有するポリマーは、無機塩基やアミン類で中和されて、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アミン塩を形成していても良い。アルカリ金属としては、ナトリウム、カリウム、リチウムなどが、アルカリ土類金属としては、カルシウム、マグネシウムなどが、アミン類としては、アンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどが挙げられる。
【0037】
アミド基を側鎖に有するポリマーとしては、無置換又は置換のアミド基を有する不飽和モノマーを重合して得られるホモポリマーやコポリマー及びこれらポリマーの種々の変性ポリマー(例えば加水分解ポリマー、種々の化合物を付加したポリマー等)が挙げられる。無置換又は置換のアミド基を有する不飽和モノマーとしては、無置換又は置換の(メタ)アクリルアミド、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸等の二塩基酸のアミド化モノマー、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルピロリドン等が挙げられる。無置換又は置換(メタ)アクリルアミドのより具体例としては、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド、メチロール(メタ)アクリルアミド、メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、スルホン酸プロピル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン等が挙げられる。また、前記イタコン酸等の二塩基酸のアミド化モノマーの場合は一方のカルボキシル基がアミド化されたモノアミド、両方のカルボキシル基がアミド化されたジアミド、更に一方のカルボキシル基がアミド化され、他方のカルボキシル基がエステル化されたアミドエステルであってもよい。尚、本発明に於ける前記“(メタ)アクリル”、(メタ)アクリレート”、(メタ)アクロイル”等の記載はそれぞれアクリルとメタクリル、アクリレートとメタアクリレート、アクリロイルとメタアクリロイルの両者を意味する。
【0038】
更に、本発明の親水性ポリマーに於いては、前記親水性置換基を有する不飽和モノマー、架橋性官能基を有する不飽和モノマー以外に、本発明の効果を更に向上させるために、その他の共重合可能不飽和モノマーを共重合することもできる。共重合可能不飽和モノマーとしては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソポロニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、スチレン、α−メチルスチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、酢酸ビニル等が挙げられる。
【0039】
<架橋剤>
本発明の親水性ポリマーを架橋するのに用いられる架橋剤としては、前記親水性ポリマーと架橋反応して親水性ポリマーを水不溶性にすることにより感光層の耐水性を向上させるものであればよく、例えば、親水性ポリマー中の架橋性官能基であるカルボキシル基、スルホン酸基、水酸基、グリシジル基、場合によってはアミド基と反応する公知の多価アルコール化合物類、多価カルボン酸化合物やその無水物類、多価グリシジル化合物(エポキシ樹脂)類、多価アミン化合物類、ポリアミド樹脂類、多価イソシアナート化合物類(ブロックイソシアナート類を含む)、オキサゾリン樹脂、アミノ樹脂、グリオキザール等が挙げられる。本発明に於いては前記した架橋剤の中でも、硬化速度と感光層用組成物の安定性や感光層の親水性と耐水性のバランス等から公知の種々の多価グリシジル化合物(エポキシ樹脂)、オキサゾリン樹脂、アミノ樹脂、多価アミン化合物やポリアミド樹脂等のエポキシ樹脂用の硬化剤、グリオキザールが好ましい。アミノ樹脂としては、公知のメラミン樹脂、尿素樹脂、ベンゾグアナミン樹脂やグリコールウリル樹脂等やこれら樹脂の変性樹脂、例えばカルボキシ変性メラミン樹脂等が挙げられる。また、架橋反応を促進するために、前記したグリシジル化合物を用いる際には3級アミン類を、アミノ樹脂を用いる場合は、パラトルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、塩化アンモニウム等の酸性化合物を併用しても良い。
【0040】
<光吸収剤>
本発明の感光層用組成物においては、光吸収剤として、光を吸収して熱を生じるものであればよく、吸収する光の波長に関しても特に制限は無く、露光に際しては、光吸収剤が吸収する波長域の光を適宜用いればよい。光吸収剤の具体例としては、シアニン系色素、ポリメチン系色素、フタロシアニン系色素、ナフタロシアニン系色素、アントラシアニン系色素、ポルフィリン系色素、アゾ系色素、ベンゾキノン系色素、ナフトキノン系色素、ジチオール金属錯体類、ジアミンの金属錯体類、ニグロシン、カーボンブラック等が挙げられる。
【0041】
これらの光吸収剤においては、明室での取り扱いを可能にするため、あるいは露光に用いる光源の出力や使いやすさから、700〜1200nm、特に市場に供されている高出力半導体レーザーの発振波長である800〜860nmに吸収域を有し、且つ感度、分解特性等に優れる光吸収剤を用いることが望ましい。これらの吸収波長域に関しては、置換基やπ電子の共役系の長さなどを変えることにより調整することが可能である。これらの光吸収剤は、感光層用組成物に溶解していても分散していてもよい。
【0042】
<親油性ポリマー>
本発明の感光層用組成物に用いられる親油性ポリマーはポリマー微粒子が水に分散したエマルジョン型が好ましく、自己乳化型でも強制乳化型でもよい。これは乳化重合、懸濁重合、グラフト重合、ポリマーの後乳化等で作られる。親油性ポリマーとしてはウレタン系、(メタ)アクリル樹脂系エマルジョン、スチレン系、酢酸ビニル系、塩化ビニリデン系、共役ジエン系ゴム、ブタジエンゴム系等が挙げられる。これらに用いられる親油性ポリマーは1種類だけでなく2種類以上を用いてもよい。これらを添加した場合、親水性樹脂感光層は架橋した親水性ポリマー相とこれらの親油性ポリマー相との相分離構造をとなる。このとき、非画線部の地汚れ防止の観点から、親油性ポリマー相が架橋した親水性ポリマー相中に分散していることがより好ましい。親油性ポリマーとして用いられるポリマー粒子の平均粒子径は、0.005〜0.5μmであることが好ましく、0.1μm以下であることがより好ましい。
【0043】
本発明の感光層用組成物には親水性添加剤を添加してもよい。親水性添加剤としては、水や有機溶媒に溶解するものが望ましい。この親水性添加剤によって印刷版表面の親水性を高め、印刷開始後すぐに湿し水が表面に付くような作用をするものであればどのような化合物でも使用できるが、特に界面活性剤や表面改質剤と呼ばれているものが特に好ましい。現在さまざまな親水性添加剤が入手できるが、「特殊機能界面活性剤」シーエムシー出版(1986)記載の親水性界面活性剤使用可能である。具体例を以下に示す。
【0044】
非イオン性活性剤としてはポリエチレングリコール型、例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリプロピレングリコールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン等や、多価アルコール型例えばアルキルアルカノールアミド、グリセリン脂肪酸エステル、しょ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、やし油やひまし油を原料とした活性剤、ポリエチレングリコール、アルキルフェニルエーテルやアルキルエーテル、アルキルアリルエーテル、ラウリルエーテル系の活性剤等がある。また陽イオン系活性剤としては第1級アミン塩系、第2級アミン塩系、第3級アミン塩系、第4級アンモニウム塩系、四級ピリジニウム塩系、ラウリルイミダゾリン系、アルキルアミン系等がある。両性活性剤としてはアルキルベタイン系、アミノ酸型、スルホン酸型、硫酸エステル型、リン酸エステル型、アミンオキシド型、ポリオキシエチレンアルキルアミン型、ポリアルキレンポリアミン型、ポリエチレンイミン型、カルボン酸型、硫酸エステル型等の両イオン性のものが使用できる。また陰イオン系活性剤としてはスルホン酸塩系、例えばアルキルフェニルスルホン酸ナトリウム、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム、アルキルアリルスルホン酸ナトリウム、ナフタレンスルホン酸ナトリウム、ナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物のナトリウム塩、ポリオキシエチレンアルキルスルホコハク酸ナトリウム、ジアルキルスルホ琥珀酸エステルナトリウムやジアルキルスルホ琥珀酸エステルナトリウム等がある。また、カルボン酸塩系、例えばジアルキル琥珀酸エステルナトリウム、モノアルキルコハク酸エステルナトリウム、ポリカルボン酸等がある。硫酸エステル塩系、例えばアルキルジフェニル硫酸オキシド、アルキル硫酸エステル、高級アルコール硫酸エステルナトリウム、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エーテルナトリウムまたはアンモニウム等が挙げられる。また、リン酸エステル塩系、例えばアルキルエーテルリン酸エステルナトリウムやアルコールリン酸エステルナトリウム等が使用できる。特にジアルキル琥珀酸エステルナトリウムやモノアルキルスルホ琥珀酸エステルナトリウム系は感光層表面が水に濡れても溶出しにくいため特に好ましい。さらに2種類以上の添加剤を同時に用いてもよい。
【0045】
[感光層の組成比]
本発明の感光層用組成物に於いて、親水性ポリマー、親油性ポリマー、架橋剤、光吸収剤使用割合は刷版の感光層の親水性と耐水性のバランスや、感度、その他種々の印刷特性の点や経済性の観点から、固形分で親水性ポリマー97〜10質量部、親油性ポリマー80〜10質量部、架橋剤3〜50質量部、及び光吸収剤は前記親水性ポリマー、親油性ポリマーと架橋剤の固形分の合計100質量部に対し2〜20質量部が好ましい。更に、親水性ポリマー60〜20質量部、親油性ポリマー70〜20質量部、架橋剤5〜40質量部、及び光吸収剤は前記親水性ポリマー、親油性ポリマーと架橋剤の固形分の合計100質量部に対し3〜15質量部が好ましい。
【0046】
支持体と感光層との間には下地層を設けてもよい。この時に用いる下地層は感光層用組成物に含まれる親油性ポリマーと同じ樹脂系を用いることが望ましい。この樹脂系は特にウレタン系、アクリル系、酢酸ビニル系、合成ゴム系、エチレン系の親油性ポリマーが望ましい。下地層を構成する親油性ポリマーは、感光層用組成物に用いられるものと同種類のものを用いる場合、分子量その他の諸物性は同一である必要はない。下地層を成膜する際に用いられる樹脂は、水溶液又は有機溶媒に溶解した均一溶液でもよいし、エマルジョンでも良い。特に望ましいのはポリマーエマルジョン型である。この親油性ポリマーエマルジョンは強制乳化型でもよいし自己乳化型でもよい。エマルジョンを用いた場合、下地層の表面凹凸を防ぐため、ポリマーの平均粒径は5〜500nm以下が望ましい。
【0047】
エマルジョンの平均粒径は、一般的には水で薄めて粒度測定器(例えば「マイクロトラック」等)により測定される。その他、エマルジョンを凍結後スライスして透過型電子顕微鏡で測定することもでき、特に平均粒径が10nm以下の場合には好ましく用いられる。
【0048】
このエマルジョンは塗布後、分散溶媒が蒸発すると融着して造膜する特性が必要である。製造上問題がなければ造膜温度は何度でもよい。
【0049】
下地層には1種類または2種類以上の前記親油性ポリマー樹脂を混合して使用できる。さらに、架橋剤を加えて強靭な膜を作ることも可能である。この下地層を塗布するときには例えば、バーコーター、ロールコータ、ブレードコータ、グラビアコータ、カーテンフローコータ、ダイコータ、ディップコータやスプレー法等を用いれば良い。この際、塗布溶液の消泡のためや、塗布膜の平滑化の支持体との密着性向上、親水性の感光層との密着性向上のために塗布溶液に消泡剤、レベリング剤、ハジキ防止剤、カップリング剤等の各種添加剤を用いても良い。
【0050】
下地層の膜厚は特に制限はないが、通常0.1〜10μm程度、好ましくは0.2〜5μm、さらに好ましくは1〜4μmである。
【0051】
下地層塗布後そのまま感光層用組成物を塗布してもよいし、加熱または送風乾燥してから使用してもよい。このように設けた下地層によって、支持体/下地層界面、下地層/感光層界面の密着性が上がるため耐刷性がよく、湿し水が供給されても界面での剥離は起きない。さらにレーザー照射部分の熱の拡散を防止でき、感度が向上する効果も有する。
【0052】
[感光層の製造]
前記支持体に感光層を設けるには、本発明の感光層用組成物を含有する溶液を支持体に直接又は下地層表面に塗布し、乾燥、硬化すればよい。
【0053】
この際、塗布溶液の消泡のためや、塗布膜の平滑化のために塗布溶液に消泡剤、レベリング剤、ハジキ防止剤、カップリング剤等の各種添加剤を用いても良い。
【0054】
<塗布液組成>
本発明の感光層を形成するための塗布液組成は、前記感光層用組成物を溶剤に溶解又は分散させて使用する。ここで、使用する溶剤としては、水、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジエチレングリコール等のエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、n−ヘキサン、デカリン等の脂肪族炭化水素類、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリルあるいはこれらの混合溶剤を使用することができる。
【0055】
また、感光層の耐水性等の特性を改良するために有機や無機のフィラーを用いてもよい。
【0056】
[感光層の性質の概要]
次に本発明の感光層に関して詳しく説明する。本発明の平版印刷用の版は湿し水を用いるオフセット印刷用の版であり、従って感光層は親水性と、耐水性(湿し水に溶けないこと)が求められる。そして露光により光を照射した部分の感光層は部分的に溶融、融着、発泡し、親水性から親油(インキ)性に変化する。従って、露光後には現像や拭き取り等の操作を必要としない。
【0057】
本発明の対象となる印刷原版の露光に用いられる光の波長は700〜1200nmであり、この波長域の中で、光吸収剤の吸収波長域に合致する光を用いればよい。露光に用いる光源としては、使用しやすく高出力の光源が適している。この点からはレーザー、特に800〜1100nmの波長域に発振波長を有するレーザーが好ましく、例えば830nmの高出力半導体レーザーや1064nmのYAGレーザーが好ましく、これらのレーザーを搭載した露光機は所謂サーマル用プレートセッター(露光機)として既に市場に供されている。
【0058】
[印刷方法]
次に本発明の方法により調製された湿し水を用いた印刷方法について説明する。
本発明で使用する平版印刷版では、画像形成した後、平版印刷機の版胴に装着し、従来のオフセット印刷同様に、まず、非画線部に本発明の方法により調製された湿し水を供給して水膜を形成する。湿し装置は従来使用されてきた湿し装置が使用できる。このようにして非画線部に水膜が形成された版にインキを供給すると、水とインキの反発により画線部のみに最適量のインキが盛られ、このインキをオフセットブランケット胴を介して、或いは介さず直接に被印刷体表面に供給することで印刷画像が形成される。本発明の方法により調製された湿し水は、接触角が最小であるため、画線の密な部分にも十分に行き渡るため、画像抜けがなく、又地汚れのない鮮明な印刷結果が得られる。
【0059】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0060】
(親水性ポリマーAの合成)
1000mlのフラスコに水400gを入れ、窒素をバブリングして溶存酸素を除去した後、80℃に昇温した。窒素ガスをフラスコに流しながら、アクリルアミド90g、ヒドロキシエチルアクリレート10g、水67gからなるモノマー溶液と過硫酸カリ0.5gを水50gに溶解した開始剤の水溶液を、内温を80℃に維持しながら、別々に3時間に渡り連続滴下した。滴下終了後80℃で2時間重合を続けた後、更に90℃で2時間重合した。最後に水150g加え親水性ポリマーAの水溶液を得た。このポリマーの水溶液は粘度が6000mPa・s、固形分は15質量%であった。
【0061】
(感光性組成物Bの調整)
次に前記親水性ポリマーA(NV=15%)を固形分として40質量部、ウレタン系エマルジョン(NV=40%、第一工業製薬製「スーパーフレックス(登録商標)750」)を固形分として40質量部、架橋剤としてメチル化メラミン樹脂(NV=80%、三井サイテック(株)製「サイメル(登録商標)350」)を固形分として20質量部、水100質量部に溶解したシアニン色素(アクロス製「IR125」)5質量部、親水性添加剤としてアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(NV=60%、第一工業製薬(株)製「ネオゲン(商品名)R」)の不揮発分として3質量部を混合し、均一になるまでディスパーでかき混ぜて感光性樹脂組成物Bを含む溶液を得た。
【0062】
(印刷用原版Aの作成)
厚み188mmのポリエステルフィルムに上記で得られた感光性樹脂組成物Bをそれぞれワイヤーバー#10を用いて均一に塗布した後、120℃で1時間乾燥し、約2μmの膜厚の感光層を成膜した。
【0063】
(印刷用原版Bの作成)
印刷用原版Aを120℃3時間乾燥した。
【0064】
(実施例1〜2,比較例1〜3)
印刷特性を評価するために、印刷用原版A,Bに830nmの半導体レーザー光を集光した光を走査して情報の記録を行った。レーザー光を照射した部分は緑色から灰色に変色した。レーザー照射パワーを5mJ/cm刻みに上げながら照射した。実施例1及び比較例1それぞれの原版は約350mJ/cmで画像部が白く変化した。この露光した版を、湿し水を用いるオフセット印刷機(シナノケンシ(株)製カード印刷機「プレクスター(登録商標)ARX010」、印刷インク:「エコピュア(登録商標)HP墨」(サカタインクス株式会社製)、湿し水添加剤:「アストロマーク3(登録商標)」(日研化学株式会社(株)製)にセットしてコート紙を用いて印刷を行った。このとき、湿し水添加剤量を表1に示すようにそれぞれ変更し、未露光部の感光層上での接触角を測定した。接触角が最小となる添加剤量は、印刷版Aについては1.0vol%であり、印刷版Bについては2.0vol%であった。
【0065】
(実施例3)
印刷版として印刷版Aを用い、湿し水添加剤として「アストロNo.1エッチ液」(登録商標)(日研化学株式会社(株)製)を下記表1に示す添加剤量で用いた以外は上記と同様に印刷を行った。この湿し水添加剤を用いた場合、添加量2.5vol%で接触角が最小となった。
【0066】
【表1】
Figure 2004322576
【0067】
【発明の効果】
本発明によれば、湿し水の添加剤濃度を版に対する接触角から定性的に決定できるため、湿し水の調製が容易となる。又、湿し水調製のために試し印刷が不要となり、不要なインキの消費、損紙の発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】湿し水添加剤濃度と版面上での接触角との関係を示すグラフ

Claims (2)

  1. 支持体上に親油性ポリマー粒子を分散保持する親水性感光層を有する印刷版原版に対し、光照射により照射部の感光層が親水性から親油性に変化し画線部が形成された印刷版を用いた印刷に使用される湿し水の調製方法であって、湿し水に添加される添加剤の最適量を、印刷版の非画線部になる親水性感光層と湿し水との接触角が安定化する領域であって、最小の添加剤量+0.5容量%とすることを特徴とする最適湿し水調製方法。
  2. 支持体上に親油性ポリマー粒子を分散保持する親水性感光層を有する印刷版原版に対し、光照射により照射部の感光層を親水性から親油性に変化させて画線部を形成した印刷版を用いた印刷方法であって、湿し水として請求項1に記載の調製方法により調製された湿し水を使用することを特徴とする印刷方法。
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