JP2004315853A - 銅粉末及びその製造方法並びにその銅粉末を用いた銅ペースト、銅塗料、電極 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】銅微粒子の表面に、メルカプトプロピオン酸、ドデカンチオール、ヘキサンチオール、チオグリコール酸メチル、チオグリコール酸エチル、システイン等の硫黄化合物を0.1〜20重量%修飾する。このような銅粉末は、例えば、媒液中で銅化合物と還元剤とを反応させて銅微粒子を得、次いで、得られた銅微粒子と硫黄化合物とを接触させ銅微粒子の表面に硫黄化合物を修飾させて製造される。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐酸化性に優れた銅粉末及びその製造方法、並びにその銅粉末を用いた銅ペースト、銅塗料、更には電極に関する。
【0002】
【従来の技術】
銅粉末は良好な電気伝導性を有する廉価な材料であり、コンデンサー等の外部電極、プリント配線板の回路等の電極部材や、各種電気的接点部材などの電気的導通を確保するための材料として幅広く用いられている。また、近年、積層セラミックスコンデンサーの内部電極にも用いられ始めている。積層セラミックスコンデンサーは、電解コンデンサー、フィルムコンデンサー等他の形式のコンデンサーと比較して、大容量が得られ易く、実装性に優れ、安全性・安定性が高いので、急速に普及している。最近の電子機器の小型化に伴い、積層セラミックスコンデンサーも小型化する方向にあるが、大容量を維持するには、セラミックスシートの積層数を減らさずに小型化する必要があり、強度等の点でシートの薄層化には限界があるため、パラジウム、ニッケルや銅などの微細な金属粒子を用い内部電極を薄層化することで、積層セラミックスコンデンサーの小型化を実現している。
【0003】
このような銅粉末の製造方法としては、アラビアゴム等の高分子化合物を保護コロイドとして用い、ヒドラジン系還元剤により酸化銅を還元する方法(例えば特許文献1参照)や、メルカプトプロピオン酸等の硫黄化合物及び高分子化合物等の保護コロイドの存在下で、銅酸化物とヒドラジン系還元剤等の還元剤とを反応させる方法(例えば特許文献2参照)が知られている。
【0004】
【特許文献1】
特公昭61−55562号公報
【特許文献2】
特願2003−47382号明細書
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
前記の方法などで得られた銅粉末は、エポキシ樹脂、フェノール樹脂などのバインダーと混合してペースト化あるいは塗料化し、この銅ペースト・塗料を、例えば、プリント配線板であれば、基板板にスクリーン印刷した後、積層セラミックスコンデンサーであれば、薄層のセラミックスシート上に塗布し、シートを積層した後、それぞれ加熱焼成して電気回路、電極等を形成している。電気的導通を確保するには、用いる銅粉末に酸化銅ができる限り含まれないものが良いが、銅粉末は非常に酸化され易く、保存の状態によっても、あるいは、ペースト化・塗料化の段階でも徐々に酸化が進むという問題がある。更には、銅ペースト、銅塗料を塗布した積層シート等を窒素ガス等の不活性ガスを用いて非酸化性雰囲気下で加熱焼成を行っても、銅微粒子表面の酸化を十分に防げず、所望の性能の電極が得られないという問題がある。そこで、本発明は、以上に述べた従来技術の問題点を克服し、耐酸化性に優れた銅粉末、及びその製造方法を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、これらの問題点を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、銅微粒子の表面を硫黄化合物で修飾させることにより、銅微粒子の耐酸化性が改善されることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
即ち、本発明は、(1)銅微粒子の表面に0.1〜20重量%の範囲の硫黄化合物が処理され、非酸化性雰囲気下60℃の温度で10時間加熱後の重量(W1)に対し、更に酸化性雰囲気下500℃の温度で20分間加熱後の重量(W2)の増加率((W2−W1)/W1×100)が最大で15%であることを特徴とする銅粉末であり、また、(2)媒液中で銅化合物と還元剤とを反応させて銅微粒子を得る工程、得られた銅微粒子と硫黄化合物とを接触させて銅微粒子の表面に硫黄化合物を処理する工程とからなることを特徴とする銅粉末の製造方法である。また、本発明は、前記(1)の銅粉末を配合してなる銅ペーストまたは銅塗料であり、更には、前記(1)の銅粉末を用いた電極である。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明は、耐酸化性を改善した銅粉末であって、銅微粒子の表面に0.1〜20重量%の範囲の硫黄化合物を表面修飾処理されたものである。硫黄化合物は金属銅と非常に反応し易く、両者を単に接触させるだけでも硫黄原子が金属銅原子と化学結合するので、硫黄化合物は銅微粒子の表面に強固に修飾される。この修飾された硫黄化合物は、電極を形成する際に高温で加熱焼成すると、硫黄化合物に含まれる有機成分が分解され、銅微粒子の表面で銅硫化物の皮膜が形成されるので、表面の酸化を防ぐことができるのではないかと推測される。一方、前記特許文献2に記載のように、銅酸化物を還元して銅微粒子が生成する過程で硫黄化合物を用いても、生成した金属銅原子と硫黄原子の配位的な結合状態が異なるためか、本発明のような優れた耐酸化性は得られていない。本発明では、硫黄化合物を銅微粒子に対して、少なくとも0.1〜20重量%の範囲処理すると、耐酸化性の向上が認められ、この範囲より少ないと所望の耐酸化性が得られず、この範囲より多くしても更なる効果は得られず経済的でない。より好ましい硫黄化合物の処理量は0.5〜10重量%である。
【0009】
本発明では、耐酸化性の指標として加熱焼成後の重量増加率を用いる。金属銅が完全に酸化されるとCuOとなり、理論上約25%の重量増加率となるが、本発明の銅粉末は、最大でも15%の重量増加率(即ち0〜15%)であり、好ましくは13%以下の重量増加率(即ち0〜13%)であり、より好ましくは10%以下の重量増加率(即ち0〜10%)である。重量増加率は、銅粉末を窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガスなどの非酸化性雰囲気下60℃の温度で10時間加熱した後の金属銅重量(W1)に対して、その後更に、空気、酸素ガスなどの酸化性雰囲気下500℃の温度で20分間加熱した後の重量(W2)の増加率((W2−W1)/W1×100)で算出する。
【0010】
銅微粒子表面の処理に用いられる硫黄化合物としては、メルカプト基(−SH)を持つ有機化合物RSH(Rはアルキル基などの炭化水素基)であるチオール化合物及びその誘導体の他に、チオン類、チオ炭酸類、チオ尿素類、硫化水素等の硫黄化合物及びそれらの誘導体等を用いることができ、例えば、メルカプトプロピオン酸、メルカプト酢酸、チオジプロピオン酸、メルカプトコハク酸、チオ酢酸等の酸チオール類、メチルメルカプタン、エチルメルカプタン、プロピルメルカプタン、イソプロピルメルカプタン、n−ブチルメルカプタン、ドデカンチオール、ヘキサンチオール、アリルメルカプタン、ジメチルメルカプタン、メルカプトエタノール、アミノエチルメルカプタン、チオジエチルアミン、システイン等の脂肪族チオール類、シクロヘキシルチオール等の脂環式チオール類、チオフェノール等の芳香族チオール類等のチオール類、チオジエチレングリコール、チオジグリコール酸、チオグリコール酸メチル、チオグリコール酸エチル、エチレンチオグリコール等のチオグリコール類、チオホルムアミド等のチオアミド類、ジチオール類、チオン類、ポリチオール類、チオ炭酸類、チオ尿素類、硫化水素等の硫黄化合物及びそれらの誘導体等が挙げられ、これらを1種または2種以上を用いても良い。中でもメルカプトプロピオン酸、ドデカンチオール、ヘキサンチオール、チオグリコール酸メチル、チオグリコール酸エチル、システインがその効果が高く好ましい。
【0011】
銅微粒子としては種々の形状のもの、あるいは、種々の粒子径のものを用いることができる。例えば、銅微粒子の平均粒子径を1.0μm以下にすると、欠陥がほとんど無い高密度の電極が得られ易く、0.005μm以上にするとペースト、塗料等への分散性に優れているので、0.005〜1.0μmの範囲とするのが好ましい。より好ましい範囲は0.05〜1.0μmの範囲であり、更に好ましい範囲は0.1〜1.0μmであり、最も好ましい範囲は0.2〜1.0μmである。また、粒子形状は充填性に影響を及ぼすので、ほぼ真球の球状粒子とするのが好ましい。平均粒子径は電子顕微鏡法により測定した累積50%径で表され、粒子形状も電子顕微鏡で観察される。
【0012】
銅微粒子は、公知の方法で製造することができ、例えば、アトマイズ法等の気相で還元反応させる方法、前記特許文献1に記載のアラビアゴム、ゼラチン等の高分子化合物を保護コロイドとして含む水性媒液中で、ヒドラジン系還元剤により酸化銅を還元する方法等が挙げられる。また、前記特許文献2に記載のメルカプトプロピオン酸等の硫黄化合物及び高分子化合物等の保護コロイドの存在下で、酸化第一銅、酸化第二銅等の銅酸化物とヒドラジン系還元剤等の還元剤とを媒液中で反応させる方法を用いることができる。
【0013】
本発明では、銅微粒子の製法として媒液中で銅化合物と還元剤とを反応させる方法が、生成した銅微粒子を乾燥せずにその媒液中で硫黄化合物の表面処理が行えるため、工業的に有利であるので好ましく、特に、銅酸化物と還元剤との反応を硫黄化合物及び保護コロイドの存在下で行うと、凝集粒子がほとんど無く分散性に優れ、粒子形状の整った銅微粒子が得られるので更に好ましい。これらの方法では、媒液中、例えば水系またはアルコール等の有機溶媒系媒液中で、好ましくは水系媒液中で、後述する銅化合物または銅酸化物と還元剤とを混合して、好ましくは硫黄化合物、保護コロイドの存在下で、還元反応を行う。反応温度は10℃〜用いた媒液の沸点の範囲であれば反応が進み易いので好ましく、40〜95℃の範囲であれば更に好ましい。反応液のpHを酸またはアルカリで3〜12の範囲に予め調整すると、銅酸化物の沈降を防ぎ、均一に反応させることができるので好ましい。銅微粒子が生成した後、必要に応じて通常の方法により、濾過、洗浄を行っても良い。その後、乾燥を行っても差し支えないが、敢えて乾燥を行う必要はなく、濾過、洗浄後の銅微粒子を媒液中に分散するのが良い。
【0014】
原料の銅化合物としては、塩化銅、塩素酸銅、臭化銅、ヨウ化銅、硫酸銅、硝酸銅、炭酸銅、水酸化銅、酸化銅、炭酸水酸化銅、テトラアンミン銅硫酸塩、テトラシアノ銅酸カリウム等やそれらの水和物の無機銅化合物、蟻酸銅、酢酸銅、シュウ酸銅等やそれらの水和物の有機銅化合物を用いることができる。また、銅酸化物としては、通常の銅の酸化物の他に、銅の含水酸化物、銅の水酸化物を包含する意味で用いており、銅の酸化物としては亜酸化銅(または酸化第一銅)、酸化銅(または酸化第二銅)等を用いることができる。還元剤としては公知のものを用いることができ、例えば、ヒドラジンや、塩酸ヒドラジン、硫酸ヒドラジン、抱水ヒドラジン等のヒドラジン化合物等のヒドラジン系還元剤、水素化ホウ素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、亜硝酸ナトリウム、次亜硝酸ナトリウム、亜リン酸及び亜リン酸ナトリウム等のその金属塩、次亜リン酸及び次亜リン酸ナトリウム等のその金属塩、アルデヒド類、アルコール類、アミン類、糖類等が挙げられ、これらを1種または2種以上を用いても良い。特に、ヒドラジン系還元剤は還元力が強く好ましい。還元剤の使用量は、銅化合物から銅微粒子を生成できる量であれば適宜設定することができ、銅化合物中に含まれる銅1モルに対し0.2〜5モルの範囲にあるのが好ましい。
【0015】
また、還元反応時に用いる硫黄化合物としては、前記の表面処理の硫黄化合物を用いることができる。硫黄化合物の使用量は適宜設定することができ、少なくとも、銅酸化物1000重量部に対し0.5〜50重量部の範囲に設定するとその効果が得られ易いので好ましく、1〜20重量部の範囲が更に好ましい。また、保護コロイドとして公知のものを用いることができ、例えば、ゼラチン、アラビアゴム、カゼイン、カゼイン酸ソーダ、カゼイン酸アンモニウム等のタンパク質系、デンプン、デキストリン、寒天、アルギン酸ソーダ等の天然高分子や、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース等のセルロース系、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等のビニル系、ポリアクリル酸ソーダ、ポリアクリル酸アンモニウム等のアクリル酸系、ステアリン酸等の高級脂肪酸、ポリエチレングリコール等の合成高分子、クエン酸等の多価カルボン酸、アニリンまたはそれらの誘導体等が挙げられ、これらを1種または2種以上を用いても良い。保護コロイドは、生成した銅微粒子の分散安定化剤として作用するものであり、その使用量を銅酸化物100重量部に対し1〜100重量部の範囲にすると、生成した銅微粒子が分散安定化し易いので好ましく、2〜50重量部の範囲が更に好ましい。
【0016】
次いで、銅微粒子と硫黄化合物とを接触させて、銅微粒子の表面に硫黄化合物を処理する。その方法には特に制限は無く、銅微粒子と硫黄化合物とをヘンシェルミキサー、スーパーミキサー等の高速撹拌機を用いて混合する所謂乾式処理を用いても良い。しかし、銅微粒子を分散させた媒液に硫黄化合物を添加、撹拌する所謂湿式処理は、より均一に接触させることができるので好ましく、また、前記の媒液中で銅化合物と還元剤とを反応させる方法を適用する場合には、連続的に操作が行える。媒液に用いる分散媒は、硫黄化合物との相溶性に応じて、水やアルコール類等の有機溶媒を適宜選択する。硫黄化合物としては、前記の硫黄化合物を用いることができる。硫黄化合物の使用量は、銅微粒子中の銅に対し好ましくは0.1〜20重量%の範囲であり、この範囲より少ないと所望の耐酸化性が得られず、この範囲より多くしても更なる効果は得られず経済的でない。より好ましい範囲は0.5〜10重量%である。
【0017】
湿式処理で硫黄化合物を被覆した後は、必要に応じて通常の方法により、濾過、洗浄、乾燥を行い、乾式処理で硫黄化合物を被覆した後は必要に応じて乾燥を行う。乾燥は銅微粒子が酸化しないように、窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガス等の非酸化性ガス(不活性ガス)の雰囲気下で行うのが好ましい。銅微粒子を非酸化性雰囲気下60℃の温度で10時間加熱乾燥すると、耐酸化性の指標となる重量増加率の算定基準とすることができる。乾燥後は、必要に応じて粉砕を行っても良い。
【0018】
本発明の銅粉末は、必要に応じて溶媒あるいはバインダー樹脂と混合して、銅ペーストあるいは銅塗料(銅インク)にして用いられる。溶媒は用途に応じて適宜選択することができ、例えば、比較的に高沸点な非極性溶剤あるいは低極性溶剤、具体的には、テルピネオール、ミネラルスピリット、キシレン、トルエン、エチルベンゼン、メシチレン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、シクロヘキサン、シクロオクタン等を用いることができる。また、バインダー樹脂も用途に応じて適宜選択することができ、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、オリゴエステルアクリレート樹脂、キシレン樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、フラン樹脂、ユリア樹脂、ポリウレタン樹脂、メラミン樹脂、シリコン樹脂等の熱硬化性樹脂を挙げることができ、フェノール樹脂、エポキシ樹脂は、基板との密着性が良好であるので、樹脂成分としてより好ましいものである。溶媒、バインダー樹脂の配合量は用途に応じて適宜設定することができ、例えば、銅粉末100重量部に対して、溶媒は1〜500重量部程度、バインダー樹脂は1〜50重量部程度とすることができる。このような銅ペーストあるいは銅塗料(銅インク)は、通常の方法により基板に塗布後、加熱焼成して、積層セラミックスコンデンサーの内部電極、プリント配線基板の回路等や、その他の電極を製造するのに用いることができる。本発明の銅粉末は耐酸化性に優れているので、これを用いて製造した前記の電極は電気特性の優れたものとなる。
【0019】
【実施例】
以下に実施例を挙げて、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により制限されるものではない。
【0020】
実施例1
保護コロイドとしてアラビアゴム2gを2900ミリリットルの純水に添加した後、工業用酸化銅(N−120:エヌシーテック社製)125gを添加し撹拌しながら、80%ヒドラジン一水和物を360ミリリットル添加した。ヒドラジン一水和物の添加後から3時間かけ室温から60℃に昇温し、更に2時間かけて酸化銅と反応させ、平均粒子径が0.6μmの銅微粒子を生成させた。次いで、銅微粒子中の銅に対し1重量%に相当する3−メルカプトプロピオン酸を添加し、30分間撹拌した。その後、濾液比抵抗が100μS/cm以下になるまで濾過洗浄し、窒素ガスの雰囲気下で60℃の温度で10時間かけて乾燥し、銅粉末(試料A)を得た。
【0021】
実施例2〜7
実施例1において3−メルカプトプロピオン酸の添加量を3重量%、5重量%としたものを実施例2、7(試料B、C)とし、3−メルカプトプロピオン酸に替えて、3重量%のヘキサンチオール、ドデカンチオール、チオグリコール酸エチル及びL−システインを用いたものをそれぞれ実施例4〜7(試料D〜G)とする。尚、ヘキサンチオール、ドデカンチオール、チオグリコール酸エチルは水に不溶であるため、分散媒を純水からエタノールに変更した。
【0022】
実施例8
工業用亜酸化銅(NC−102:エヌシーテック社製)30g、硫黄化合物として3−メルカプトプロピオン酸0.085g、保護コロイドとしてゼラチン5gを400ミリリットルの純水に添加、混合し、10%の硫酸を用いて混合液のpHを7に調整した後、20分かけて室温から90℃まで昇温した。昇温後、撹拌しながら80%ヒドラジン一水和物を添加し、2時間かけて亜酸化銅と反応させ、平均粒子径が0.45μmの銅微粒子を生成させた。次いで、銅微粒子中の銅に対し3重量%に相当する3−メルカプトプロピオン酸を添加し、30分間撹拌した。その後、濾液比抵抗が100μS/cm以下になるまで濾過洗浄し、窒素ガスの雰囲気下で60℃の温度で10時間かけて乾燥し、銅粉末(試料H)を得た。
【0023】
実施例9
分散媒を純水からエタノールに変更し、3−メルカプトプロピオン酸をドデカンチオールに変更した以外は実施例8と同様にして、銅粉末(試料I)を得た。
【0024】
比較例1、2
実施例1及び8において、3−メルカプトプロピオン酸を添加せずに得た銅粉末を、それぞれ比較例1、2(試料J、K)とする。
【0025】
評価1:耐酸化性の評価
実施例1〜9、比較例1、2で得られた試料A〜K10gを、150℃、200℃、300℃、400℃、500℃の温度で、それぞれ20分間加熱焼成した後の重量を測定した。結果を表1に示す。重量増加が少ない程、耐酸化性が優れており、本発明の銅粉末は、耐酸化性が優れていることが判る。
【0026】
【表1】
【0027】
【発明の効果】
本発明は、銅微粒子の表面に0.1〜20重量%の範囲の、メルカプトプロピオン酸、ドデカンチオール、ヘキサンチオール、チオグリコール酸メチル、チオグリコール酸エチル、システイン等の硫黄化合物が処理された、耐酸化性が改善された銅粉末であり、コンデンサー等の外部電極、内部電極、プリント配線板の回路等の電極部材や、各種電気的接点部材などの電気的導通を確保するための材料として有用である。特に、本発明の銅粉末を銅ペースト、銅塗料(銅インク)等にして、例えば、積層セラミックスコンデンサーの内部電極、プリント配線基板の回路等や、その他の電極に用いると、電気特性の優れたものが得られると期待される。
【0028】
また、本発明は、媒液中で銅化合物と還元剤とを反応させて銅微粒子を得る工程、得られた銅微粒子と硫黄化合物とを接触させて銅微粒子の表面に硫黄化合物を処理する工程とからなることを特徴とする銅粉末の製造方法であり、耐酸化性が改善された銅粉末を簡便に製造することができる。特に、銅微粒子を得る工程において、銅酸化物と還元剤との反応を硫黄化合物及び保護コロイドの存在下で行うと、耐酸化性がより改善され、凝集粒子がほとんど無く分散性に優れ、粒子形状の整った銅粉末を製造することができる。
Claims (6)
- 銅微粒子の表面に0.1〜20重量%の範囲の硫黄化合物が処理され、非酸化性雰囲気下60℃の温度で10時間加熱後の重量(W1)に対し、更に酸化性雰囲気下500℃の温度で20分間加熱後の重量(W2)の増加率((W2−W1)/W1×100)が最大で15%であることを特徴とする銅粉末。
- 硫黄化合物がメルカプトプロピオン酸、ドデカンチオール、ヘキサンチオール、チオグリコール酸メチル、チオグリコール酸エチル、システインから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1記載の銅粉末。
- 媒液中で銅化合物と還元剤とを反応させて銅微粒子を得る工程、得られた銅微粒子と硫黄化合物とを接触させて銅微粒子の表面に硫黄化合物を処理する工程とからなることを特徴とする銅粉末の製造方法。
- 銅微粒子を得る工程において、硫黄化合物及び保護コロイドの存在下で銅酸化物と還元剤とを反応させることを特徴とする請求項3記載の銅粉末の製造方法。
- 請求項1記載の銅粉末を配合してなる銅ペーストまたは銅塗料。
- 請求項1記載の銅粉末を用いた電極。
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