JP2004291434A - 化粧シートおよびその製造方法 - Google Patents

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正義 田中
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Abstract

【課題】環境安全性に優れると共に、特に層間密着性が向上した化粧シートおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】少なくとも、裏面プライマー層10、基材シート2、ベタインキ層3及び/又は絵柄インキ層4を有するインキ層11、接着剤層5、透明樹脂層6および表面保護層9がその順で積層され、そのインキ層11および接着剤層6が少なくとも1分子中に2個以上のイソシアネート基を持つ水性化合物を架橋剤として含有し、その水性化合物が遊離イソシアネート基に化合物を結合させた化学構造を有する水性塗工剤で形成される化粧シートの製造方法であって、化合物が遊離イソシアネート基から解離し難い−5〜45℃で処理される水性塗工剤の配合工程及び/又は塗工工程、および、前記化合物の種類に応じ、その化合物が遊離イソシアネート基から解離し易い65〜200℃で処理される透明樹脂層の溶融押出形成工程、もしくは、その化合物が遊離イソシアネート基から解離し易い65〜120℃で処理される透明樹脂層のドライラミネート工程、を有することにより、上記課題を解決した。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、建築物の内装、建具の表面化粧、車両の内装等に用いられる化粧シートに関し、更に詳しくは、環境安全性が著しく向上すると共に、層間密着性、耐スクラッチ性および意匠性に優れた化粧シートおよびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
建築物の内装、建具の表面化粧、車両の内装等に用いられる化粧シートとして、基材シート、ベタインキ層及び/又は絵柄インキ層を有するインキ層、接着剤層、透明樹脂層および表面保護層を順次積層させた化粧シートが一般に知られている。
【0003】
こうした化粧シートは、基材シートと透明樹脂層との間における養生処理(架橋反応を十分に行わせることを目的とした処理であって、所定温度で所定時間保持する処理をいう。)後の層間密着性、養生処理後に耐候試験した後の層間密着性、および、養生処理後に耐水試験した後の層間密着性、並びに、表面保護層の耐摩耗性等に優れることが要求されている。そうした要求を満たすため、従来より、2液性の溶剤系塗工剤が使用され、架橋反応により各層が形成されている。従来より使用されている2液性の溶剤系塗工剤の代表例としては、樹脂成分としてウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂等、及び/又はそれらの混合物が挙げられ、架橋剤としてイソシアネート基含有化合物が挙げられる。
【0004】
溶剤系塗工剤で形成される化粧シートにおいては、インキ層や接着剤層を、有機性揮発物質(以下、VOCという。)であるトルエン、キシレン等の芳香族溶剤およびメチルエチルケトンや酢酸エチル等の脂肪族溶剤を含む溶剤系塗工剤により形成することが一般に行われている(例えば、特許文献1を参照)。
【0005】
ところで、近年、建材等から放散される揮発性有機物質が原因とされるシックハウス症候群の発症件数が増えており、厚生労働省により特に危険性が高いとされる物質を指定物質として放散量の指針値化および総揮発性有機物質の放散量の指針値化が実施されている。
【0006】
上述したトルエン、キシレン等の芳香族溶剤およびメチルエチルケトンや酢酸エチル等の脂肪族溶剤は有機性揮発物質(以下、VOCという。)であり、特にトルエン、キシレン等の芳香族溶剤はPRTR法の指定化学物質や室内空気中化学物質の指針値策定物質として挙げられていることから、そうした芳香族溶剤やその他の溶剤の使用を減少させようという動きがある。
【0007】
化粧シートの製造においても、溶剤系塗工剤に含まれるVOCの揮発による化粧シート製造時の作業環境の問題や、化粧シートに残存したVOCが一般の生活空間に供給される環境安全性の問題があり、VOCの使用を減少させて前記の問題を解決しようとする手段が種々提案されている。例えば、下記特許文献2には、インキ層や接着剤層を、VOCの含有を極力減少した水性塗工剤で形成することにより、上記の環境問題を解決することが記載されている。
【0008】
【特許文献1】
特開平11−198309号公報
【特許文献2】
特開2000−62970号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、ベタインキ層、接着剤層、表面保護層等を水性塗工剤で形成した化粧シートは、VOCの揮発量や残存量を少なくすることができるので、上述した環境問題を解決するのに有効であるものの、化粧シートを構成する基材シートと透明樹脂層との層間密着性に劣るものが多く、必ずしも十分な層間密着性を有しているとは言い得ないものであった。
【0010】
特に、ウレタン樹脂、アクリル樹脂またはそれらの混合物を樹脂成分とし、エポキシ基を持つ水性化合物を架橋剤として含有する従来のベタインキ層用水性塗工剤または接着剤層用水性塗工剤を使用してベタインキ層または接着剤層を形成した場合には、形成されたベタインキ層または接着剤層の強度が乏しく、基材シートと透明樹脂層の間における養生処理後の層間密着性、養生処理および耐候試験した後の層間密着性、または、養生処理および耐水試験した後の層間密着性に劣るという問題があった。
【0011】
なお、前記の水性塗工剤で各層を形成した後の化粧シートにおいては、約80℃で養生処理することにより、各層を十分に架橋させて上記層間密着性を向上させることができるが、約80℃という高い温度が長時間化粧シートに加わると、化粧シートが部分的に膨張したり収縮したりして意匠再現性が低下するという問題が生じる。優れた意匠再現性を保持するためには養生温度60℃が限界であるが、その温度では、前記の水性塗工剤で各層を形成した後の化粧シートの層間密着性に対しては未だ不十分であった。
【0012】
本発明は、上述の問題を解決すべくなされたものであって、その目的は、環境安全性に優れると共に、特に層間密着性が向上した化粧シートおよびその製造方法を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するための本発明の第1形態に係る化粧シートの製造方法は、少なくとも、裏面プライマー層、基材シート、ベタインキ層及び/又は絵柄インキ層を有するインキ層、接着剤層、透明樹脂層および表面保護層がその順で積層され、当該インキ層及び/又は接着剤層が、少なくとも1分子中に2個以上のイソシアネート基を持つ水性化合物を架橋剤として含有し、当該水性化合物が遊離イソシアネート基に化合物を結合させた化学構造を有する水性塗工剤で形成される化粧シートの製造方法であって、前記化合物が遊離イソシアネート基から解離し難い−5〜45℃で処理される水性塗工剤の配合工程及び/又は塗工工程、および、前記化合物が遊離イソシアネート基から解離し易い65〜200℃で処理される透明樹脂層の溶融押出形成工程、を有することを特徴とする。
【0014】
また、本発明の第2形態に係る化粧シートの製造方法は、少なくとも、裏面プライマー層、基材シート、ベタインキ層及び/又は絵柄インキ層を有するインキ層、接着剤層、透明樹脂層および表面保護層とがその順で積層され、当該インキ層及び/又は接着剤層が少なくとも1分子中に2個以上のイソシアネート基を持つ水性化合物を架橋剤として含有し、当該水性化合物が遊離イソシアネート基に化合物を結合させた化学構造を有する水性塗工剤で形成され、当該表面保護層が活性エネルギー線硬化性の無溶剤型塗工剤で形成される化粧シートの製造方法であって、前記化合物が遊離イソシアネート基から解離し難い−5〜45℃で処理される水性塗工剤の配合工程及び/又は塗工工程、および、前記化合物が遊離イソシアネート基から解離し易い65〜120℃で処理される透明樹脂層のドライラミネート工程、を有することを特徴とする。
【0015】
これらの発明によれば、水性塗工剤の配合工程や塗工工程での処理温度は、化合物が遊離イソシアネート基から解離し難い−5〜45℃であるので、遊離イソシアネート基に結合する化合物が水と反応するのを抑制することができ、耐熱性を低下させるウレア結合の生成を抑制することができる。その結果、成膜前の塗工剤のポットライフが長くなり安定した状態での塗工が実現できる。また、透明樹脂層の形成工程での処理温度は、化合物が遊離イソシアネート基から解離し易い温度(第1形態においては65〜200℃、第2形態においては65〜120℃)であるので、その処理により反応性の高い遊離イソシアネート基が現れて架橋反応を促進させることができる。その結果、架橋反応が促進したより強固な層が形成され、水性塗工剤で形成される層間の密着性、および透明樹脂層と水性塗工剤で形成される層との間の密着性がより一層向上する。
【0016】
また、本発明において、前記化合物が遊離イソシアネート基から解離し易い65〜200℃で処理される透明樹脂層のエンボス形成工程をさらに備えることを特徴とする。
【0017】
この発明によれば、化合物が遊離イソシアネート基から解離し易いエンボス形成工程温度で処理されるので、化合物から解離した反応性の高い遊離イソシアネート基の作用により、より強固な層が形成される。
【0018】
また、本発明においては、少なくともベタインキ層が前記水性塗工剤で形成されることが好ましい。
【0019】
本発明においては、前記イソシアネート基を持つ水性化合物が、自己乳化性を有し、下記化学式に示すイソシアヌレート骨格を有する水性化合物であることが好ましい。下記化学式において、nは1以上の整数であり、R1 、R2 、Rn+2 はジイソシアネート残基であり、少なくとも2個以上のイソシアネート基を有する。また、必要に応じて、親水性基及び/又は疎水基を導入してもよい。なお、このような水性化合物は、一般に「ブロックイソシアネート化合物」と呼ばれている。
【0020】
【化1】
Figure 2004291434
【0021】
この発明によれば、架橋剤がイソシアヌレート骨格を有する水性化合物であるので、イソシアヌレート骨格が3次元的に架橋して立体的な分子構造を形成し、その結果、より強固な層が形成される。
【0022】
また、本発明において、遊離イソシアネート基に結合した前記化合物が、フェノール系、アルコール系、活性メチレン系、メルカプタン系、酸アミド系、酸イミド系、ラクタム系、イミダゾール系、尿素系、オキシム系、アミン系、ピラゾール系およびイミド系の化合物の群から、処理される工程温度により選択される1の化合物であることが好ましい。
【0023】
この発明によれば、上記化合物が処理される工程温度により選択されるので、その工程温度で化合物の解離が起こり、反応性の高い遊離イソシアネート基の作用により強固な層が形成される。
【0024】
また、本発明においては、前記水性塗工剤が、水性ウレタン樹脂成分を少なくとも含有する2液硬化型の塗工剤であることが好ましい。
【0025】
この発明によれば、形成されたウレタン樹脂層は柔軟性と追従性を併せもち且つ層中の内部凝集力が高いことから、水性塗工剤で形成される層間の密着性、および透明樹脂層と性塗工剤で形成される層との間の密着性がより向上する。
【0026】
上記課題を解決するための本発明の化粧シートは、少なくとも、裏面プライマー層、基材シート、ベタインキ層及び/又は絵柄インキ層を有するインキ層、接着剤層、透明樹脂層および表面保護層がその順で積層され、当該インキ層及び/又は接着剤層が、少なくとも1分子中に2個以上のイソシアネート基を持つ水性化合物を架橋剤として含有し、当該水性化合物が遊離イソシアネート基に化合物を結合させた化学構造を有する水性塗工剤で形成されてなる化粧シートであって、前記水性塗工液は、遊離イソシアネート基に結合した化合物の解離温度が65〜200℃の範囲の水性化合物を含有することが好ましい。本発明においては、表面保護層を上記水性塗工剤で形成する場合に代えて活性エネルギー線硬化性の無溶剤型塗工剤で形成する場合においても、遊離イソシアネート基に結合した化合物の解離温度が65〜200℃の範囲の水性化合物を含有する水性塗工剤であることが好ましい。なお、透明樹脂層を溶融押し出し塗工法で形成する場合には、65〜200℃の範囲内の解離温度の化合物を有する水性化合物を含有することが特に好ましく、透明樹脂層をドライラミ法で形成する場合には、65〜120℃の範囲内の解離温度の化合物を有する水性化合物を含有することが特に好ましい。
【0027】
この発明によれば、透明樹脂層の溶融押出形成工程での通常の処理温度に相当する65〜200℃は、化合物が遊離イソシアネート基から解離し易い温度であるので、その処度により反応性の高い遊離イソシアネート基が現れて架橋反応が促進する。その結果、形成された各層は、架橋反応が促進されてより強固になり、水性塗工剤で形成される層間の密着性、および透明樹脂層と水性塗工剤で形成される層との間の密着性がより一層向上する。
【0028】
また、透明樹脂層のドライラミネート工程での通常の処理温度に相当する65〜120℃は、化合物が遊離イソシアネート基から解離し易い温度であるので、その処度により反応性の高い遊離イソシアネート基が現れて架橋反応が促進する。その結果、形成された各層は、架橋反応が促進されてより強固になり、水性塗工剤で形成される層間の密着性、および透明樹脂層と水性塗工剤で形成される層との間の密着性がより一層向上する。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図面に基づき詳細に説明する。
【0030】
図1は、本発明の化粧シート1の層構成の一例を示す断面図である。図1に示す本発明の化粧シート1は、基材シート2、ベタインキ層3、絵柄インキ層4、接着剤層5、透明樹脂層6、凹凸模様7、着色層8、表面保護層9が順次積層された形態であり、基材シート2の裏面には裏面プライマー層10を更に備えている。
【0031】
(基材シート)
基材シート2は、化粧シート1における必須の構成であり、オレフィン系樹脂を好ましく適用できるがその種類は限定されない。例えば、(イ)主原料がハードセグメントとしての高密度ポリエチレンまたはポリプロピレンのいずれかからなり、これにソフトセグメントとしてのエラストマーおよび無機充填剤を添加してなる混合物を基材シート2に用いることができる。また、(ロ)特開平9−111055号公報、特開平5−77371号公報、特開平7−316358号公報等に記載されるエチレン−プロピレン−ブテン共重合体を基材シート2に用いることもできる。また、(ハ)特公平6−23278号公報記載のハードセグメントであるアイソタクチックポリプロピレンとソフトセグメントとしてのアタクチックポリプロピレンとの混合物を基材シート2に用いることもできる。
【0032】
前記(イ)のオレフィン系樹脂におけるハードセグメントとしての高密度ポリエチレンとしては、好ましくは、比重が0.94〜0.96のポリエチレンであって、低圧法で得られる結晶化度が高く、分子に枝分かれ構造の少ない高分子である高密度ポリエチレンが用いられる。また、ハードセグメントとしてのポリプロピレンとしては、好ましくは、アイソタクチックポリプロピレンが用いられる。
【0033】
前記(イ)のソフトセグメントとしてのエラストマーとしては、ジエン系ゴム、水素添加ジエン系ゴム、オレフィンエラストマー等が用いられる。水素添加ジエン系ゴムは、ジエン系ゴム分子の二重結合の少なくとも一部分に水素原子を付加させてなるもので、ポリオレフィン系樹脂の結晶化を抑えて、その柔軟性を向上させる。ジエン系ゴムとしては、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、ブチルゴム、プロピレン・ブタジエンゴム、アクリロニトリル・ブタジエンゴム、アクリロニトリル・イソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム等がある。オレフィンエラストマーとしては、2種類または3種類以上のオレフィンと共重合しうるポリエンを少なくとも1種類加えた弾性共重合体であり、オレフィンとしてはエチレン、プロピレン、α−オレフィン等が使用され、ポリエンとしては、1,4ヘキサジエン、環状ジエン、ノルボルネン等が使用される。好ましいオレフィンエラストマーとしては、例えばエチレン−プロピレン共重合体ゴム、エチレン−プロピレン−非共役ジエンゴム、エチレン−ブタジエン共重合体ゴム等のオレフィンを主成分とする弾性共重合体が挙げられる。なお、これらのエラストマーは、必要に応じて有機過酸化物、硫黄等の架橋剤を用いて、過重架橋させてもよい。
【0034】
これらエラストマーの添加量としては、10〜60重量%、好ましくは30重量%程度である。10重量%より低いと一定荷重伸度の変化が急峻になり過ぎ、また、破断時伸度、耐衝撃性、易接着性の低下が生じ、60重量%より高いと透明性、耐候性および耐クリープ性の低下が生ずる。
【0035】
前記(イ)の無機充填剤としては、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、クレー、タルク等の平均粒径0.1〜10ミクロン程度の粉末が用いられる。添加量としては、1〜60重量%程度、好ましくは5〜30重量%程度である。1重量%未満では耐クリープ変形性および易接着性の低下が生じ、60重量%を超えると破断時伸度および耐衝撃性の低下が生じる。
【0036】
前記(ロ)のオレフィン系樹脂としては、エチレン・プロピレン・ブテン共重合体樹脂からなる熱可塑性エラストマーが用いられる。ここで、ブテンとしては、1ブテン、2ブテン、イソブチレンの3種の構造異性体のいずれも用いることができる。共重合体としては、ランダム共重合体であって、非晶質の部分を一部含む。
【0037】
上記エチレン・プロピレン・ブテン共重合体樹脂の好ましい具体例としては、次の(a)〜(c)が挙げられる。
【0038】
(a)特開平9−111055号公報に記載されるエチレン、プロピレンおよびブテンの3元共重合体によるランダム共重合体。単量体成分の重量比率はプロピレンが90重量%以上であり、メルトフローレートは、230°C、2.16kgの条件下で1〜50g/10分であることが好ましい。このような3元ランダム共重合体100重量部に対して、上記ランダム共重合体は、燐酸アリールエステル化合物を主成分とする透明造核剤を0.01〜50重量部、炭素数を12〜22の脂肪酸アミド0.003〜0.3重量部を溶融混練してなるものである。(b)特開平5−77371号公報に記載されるエチレン、プロピレンおよびブテンの3元共重合体であって、プロピレン重量比率が50重量%以上の非晶質重合体20〜100重量%に、結晶質ポリプロピレンを80〜0重量%添加してなるエチレン・プロピレン・ブテン共重合体。(c)特開平7−316358号公報に記載されるエチレン、プロピレン、1ブテンの3元共重合体であって、プロピレン及び/又は1ブテン含有率が50重量%以上の低結晶質重合体20〜100重量%に、アイソタクチックポリプロピレン等の結晶性ポリオレフィン80〜0重量%を混合した組成物に対して、Nアシルアミノ酸アミン塩、Nアシルアミノ酸エステル等の油ゲル化剤を0.5重量%添加したエチレン・プロピレン・ブテン共重合体。
【0039】
上記(a)〜(c)のエチレン・プロピレン・ブテン共重合体樹脂は、単独で用いてもよいし、該エチレン・プロピレン・ブテン共重合体樹脂に必要に応じてさらに他のポリオレフィン樹脂を混合して用いてもよい。
【0040】
前記(ハ)のオレフィン系樹脂としては、特公平6−23278号公報記載の(A)ソフトセグメントとして数平均分子量Mnが25000以上、且つ重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比Mw/Mn≦7の沸騰ヘプタンに可溶なアタクチックポリプロピレン10〜90重量%と、(B)ハードセグメントとしてのメルトインデックスが0.1〜4g/10分の沸騰ヘプタン不溶性のアイソタクチックポリプロピレン90〜10重量%との混合物からなる軟質ポリプロピレンが挙げられる。
【0041】
上記(ハ)のオレフィン系熱可塑性エラストマーの中でも、アイソタクチックポリプロピレンとアタクチックポリプロピレンの混合物からなり、且つアタクチックポリプロピレンの重量比率が5〜50重量%のものが好ましく、アタクチックポリプロピレンの重量比率が20〜40重量%のものが特に好ましい。アタクチックポリプロピレンの重量比率が5重量%未満ではエンボス加工をしたり、3次元形状や凹凸形状の物品に成形加工する際にネッキングによる不均一なシートの変形や、その結果としての皺、絵柄の歪み等が生ずる。一方、アタクチックポリプロピレンの重量比率が50重量%を超えると、シート自体が変形し易くなり、シートを印刷機に通した時にシートが変形し、インキ層11の絵柄の歪み、多色刷の場合に見当が合わなくなる等の不良が発生しやすくなり、成形時においてはシートが破れ易くなる。
【0042】
基材シート2を形成する上述のオレフィン系樹脂中には、必要に応じて、着色剤、熱安定剤、難燃剤、紫外線吸収剤、ラジカル捕捉剤等が添加される。
【0043】
着色剤としては、チタン白、亜鉛華、べんがら、朱、群青、コバルトブルー、チタン黄、黄鉛、カーボンブラック等の無機顔料、イソインドリノン、ハンザイエローA、キナクリドン、パーマネントレッド4R、フタロシアニンブルー等の有機顔料あるいは染料、アルミニウム、真鍮等の箔粉からなる金属顔料、二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸亜鉛等の箔粉からなる真珠光沢顔料等が用いられる。また、必要に応じて、無機充填剤を添加してもよく、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、クレー、タルク、シリカ(二酸化ケイ素)、アルミナ(酸化アルミニウム)等の粉末等が挙げられ、その添加量は、通常、5〜60重量%である。着色剤は、基材シート2に化粧シート1として必要な色彩を持たせるために添加され、透明着色と不透明(隠蔽)着色のいずれでも構わないが、一般的には被着体15を隠蔽するために不透明着色が好ましい。
【0044】
熱安定剤としては、フェノール系、サルファイト系、フェニルアルカン系、フィスファイト系、アミン系等公知のものが使用でき、熱加工時の熱変色等の劣化の防止の向上を図る場合に用いられる。難燃剤は、難燃性を付与する場合に添加され、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどの粉末が用いられる。紫外線吸収剤は、樹脂により良好な耐候性(耐光性)を付与するためのものであり、ベンゾトリアソール、ベンゾフェノン、サリチル酸エステル等の有機物、または、0.2μm径以下の微粒子状の酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化チタン等の無機物が用いられる。その他に、ベンゾトリアゾール骨格にアクリロイル基またはメタクリロイル基を導入した反応型紫外線吸収剤も用いられる。尚、これらの紫外線吸収剤の添加量は、通常0.5〜10重量%程度である。ラジカル捕捉剤は、紫外線による劣化を更に防止し、耐候性を向上させるためのものであり、ビス−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ビペリジニル)セバケート、ビス−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ビペリジニル)セバケート、その他、例えば特公平4−82625号公報に開示されている化合物等のヒンダード系ラジカル捕捉剤、ビペリジニル系ラジカル捕捉剤等が使用される。
【0045】
基材シート2は、上述した材料を任意に選択してブレンドしたものをカレンダー加工等の常用の方法により製膜して得ることができる。基材シート2の厚みは50〜200μm、好ましくは100μm程度である。
【0046】
化粧シート1の表面側(透明樹脂層6側)における基材シート2の表面には、易接着層の塗布、コロナ放電処理、プラズマ処理、オゾン処理等の易接着処理を施すことが好ましい。易接着層(プライマー層またはアンカー層ともいう。)としては、アクリル樹脂、塩化ビニルー酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、塩素化ポリプロピレン、塩化ポリエチレンを使用することができる。
【0047】
なお、上述したポリオレフィン系樹脂からなる基材シート2の他に、ポリエステルやビニロン等の有機樹脂等を用いた織布または不織布、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体等のビニル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル等のアクリル樹脂、ポリスチレン、アクリロニトリル・ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)、三酢酸セルロース、セロハン、ポリカーボネート等の樹脂からなるシートまたはフィルムを用いることも可能である。また、薄葉紙、クラフト紙、チタン紙、リンター紙、板紙、石膏ボード紙、上質紙、コート紙、アート紙、硫酸紙、グラシン紙、パーチメント紙、パラフィン紙等の紙、あるいは、そうした紙にポリ塩化ビニルをゾル塗工またはドライラミネートしたいわゆるビニル壁紙原反を用いることができる。また、硝子繊維、石綿、チタン酸カリウム繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、炭素繊維等の無機質繊維からなるシートまたはフィルムを用いることも可能である。また、アルミニウム、鉄、ステンレス鋼、銅等の金属箔等を用いることもできる。さらに、こうした各基材材料を複数積層させたものを、基材シート2として用いることも可能である。
【0048】
(インキ層)
インキ層11は、化粧シート1における必須の層であり、ベタインキ層3及び/又は絵柄インキ層4から構成される。
【0049】
ベタインキ層3は、図1に示すように、基材シート2の地肌の隠蔽等の目的で設けられ、通常は模様のない全ベタ状の着色層として形成される。絵柄インキ層4は、一般に、図形、文字、記号、色彩、それらの組み合わせ等により、木目模様、石目模様、布目模様、皮絞模様、幾何学図形等からなる模様ないし色彩を有し、ベタインキ層3上に、平面状、凹凸状、凸状(図1を参照。)の層として形成される。なお、絵柄インキ層4がベタインキ層3の作用を兼ねる場合もあり、この場合には、絵柄インキ層4がベタインキ層3となる。
【0050】
ベタインキ層3及び/又は絵柄インキ層4からなるインキ層11は、基材シート2表面の全面に設けても部分的に設けても何れでもよい。また、インキ層11は、図1に示すように、基材シート2の表面全面に設けたべタインキ層3と、そのベタインキ層3の表面に部分的に設けた絵柄インキ層4とから構成することもできる。
【0051】
本発明においては、ベタインキ層3及び/又は絵柄インキ層4からなるインキ層11の全てが、1分子中に少なくとも2個以上のイソシアネート基を持つ水性化合物を架橋剤として含有し、その水性化合物が遊離イソシアネート基に化合物を結合させた化学構造を有する水性塗工剤で形成される。水性塗工剤は、VOCの使用を減少させるので、作業環境中または生活空間中へのVOCの発生を抑制することができ、作業環境の安全性や生活空間の安全性をより向上させることができる。
【0052】
水性化合物中の遊離イソシアネート基に結合した化合物は、水性塗工剤の配合作業及び/又は塗工工程での処理温度では遊離イソシアネート基から解離し難いという特徴がある。また、透明樹脂層の形成工程での処理温度、さらに必要に応じて加えられるエンボス形成工程での処理温度では遊離イソシアネート基から解離し易いという特徴がある。
【0053】
そうした化合物としては、例えば、フェノール系、アルコール系、活性メチレン系、メルカプタン系、酸アミド系、酸イミド系、ラクタム系、イミダゾール系、尿素系、オキシム系、アミン系、ピラゾール系およびイミド系の化合物の群から選択される1の化合物が挙げられる。具体例としては、フェノール、クレゾール、エチルフェノール、ブチルフェノール、2−ヒドロキシピリジン、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコール、ベンジルアルコール、メタノール、エタノール、2−エチルヘキサノール、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセチルアセトン、ブチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、アセトアニリド、酢酸アミド、コハク酸イミド、マレイン酸イミド、ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタム、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、尿素、チオ尿素、エチレン尿素、ホルムアルドオキシム、アセトアルドオキシム、アセトンオキシム、メチルエチルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシム、ジフェニルアミン、ジイソプロピルアミン、アニリン、カルバゾール、エチレンイミン、ポリエチレンイミン、3、5−ジメチルピラゾール、1、2、4−トリアゾール、1、2−ピラゾール等が挙げられる。
【0054】
また、イソシアネート基の構造、水性塗工液のpH、触媒の添加により解離温度や解離反応速度を調整できる。例えば、1,2級イソシアネートと比べて、3級イソシアネートを使用すると、解離温度を低下させたり、解離反応速度を上昇させたりすることができること、また、pHを高くすると、解離温度を低下させたり、解離反応速度を上昇させたりすることができることが出願時点において考えられている。
【0055】
こうした化合物は、水性塗工剤の配合工程及び/又は塗工工程での処理温度である−5〜45℃では遊離イソシアネート基から解離し難いので、水との反応を抑制することができ、その結果、塗工以前における水性塗工液の安定性をより一層向上させることができると共に耐熱性を低下させるウレア結合の生成を抑制できる。
【0056】
一方、こうした化合物は、透明樹脂層の形成工程時の処理温度、さらに必要に応じて加えられるエンボス形成工程時の処理温度では遊離イソシアネート基から解離し易いので、反応性の高い遊離イソシアネート基が現れ、架橋反応が促進してウレタン結合化が効率的に進行する。
【0057】
化合物の解離が起こり易くなる温度は、遊離イソシアネートに結合した化合物の種類によって任意に調節される。このとき、化合物の解離が起こり易くなる温度が高すぎると、透明樹脂層の形成工程時及び/又は形成後に加わるエンボス形成工程時の熱によっても十分に解離が起こらないので、反応性の高いイソシアネート基が現れず、架橋反応の進行が妨げられる。その結果、形成されたインキ層11、接着剤層5および表面保護層9の少なくとも1以上の層に十分な密着強度を付与することができないことがある。一方、化合物の解離が起こり易くなる温度が低すぎると、その水性塗工剤の配合作業や塗工工程等のような水性塗工液を通常取り扱う温度(工程温度という。)でも容易に解離することとなるので、遊離イソシアネート基が現れ、水性塗工剤中の水成分と反応して耐熱性の低下をもたらすウレア結合を生成しやすくなる。その結果、耐熱性に乏しいベタインキ層や接着剤層が形成されることがある。
【0058】
化合物の解離が起こり易くなる好ましい温度は、水性塗工剤の工程温度よりも高い温度であればよい。そして、水性塗工剤の工程温度に対応して、所定の温度で解離が起こり易くなる化合物(ブロックイソシアネート化合物)が選定され、その所定の温度に対応して、透明樹脂層の形成時及び/又は形成後に加える熱およびその熱量が選択され所定の温度が印加される。
【0059】
例えば、水性塗工剤の工程温度の上限が45℃である場合には、選定された化合物の解離が起こり易くなる温度は、最低でも45℃を超える温度、より好ましくは、工程温度よりも約20℃以上高い温度である。したがって、透明樹脂層の形成時及び/又は形成後のエンボス形成工程時に加わる処理温度(加わる熱)およびその熱量は、そうした温度に到達するように印加される。
【0060】
上記の化合物が結合した水性化合物を有する水性塗工剤は、インキ層11、接着剤層5および表面保護層9の少なくとも1以上の層に使用されることが好ましい。これにより、耐熱性に優れたインキ層11および接着剤層5、さらに必要に応じて裏面プライマー層10と表面保護層9を形成でき、安定性に優れた水性塗工剤でそれらの各層を効率的に形成することができ、化粧シートの耐熱性の向上と製造の効率化を達成することができる。
【0061】
化合物の解離は、透明樹脂層を溶融押出しで形成する工程時の熱、透明樹脂層をドライラミネートで形成する工程時の熱、および透明樹脂の表面へエンボスを形成する工程時の熱等で起こる。
【0062】
透明樹脂層の溶融押出成形工程においては、65℃以上、通常は120℃を超える温度で樹脂が溶融押出しされ、張り合わせの際には120〜200℃程度に加熱された状態となる。そのため、透明樹脂層の溶融押出し時の熱が加わる場合には、例えば、化合物の解離が起こり易くなる温度は、65〜200℃に設定することができ、それに対応して反応させる化合物が選定される。
【0063】
透明樹脂層の溶融押出成形工程での通常の処理温度の65〜200℃で、遊離イソシアネート基から解離し易い化合物としては、上記化合物の中で、アセトンオキシム、メチルエチルケトオキシム、1,2−ピラゾール、3,5−ジメチルピラゾール、1,2,4−トリアゾール、マロン酸ジエチル、ジイソプロピルアミン、ε−カプロラクタム等の化合物を挙げることができる。
【0064】
一方、透明樹脂層のドライラミネート工程においては、通常65〜120℃程度に加熱された状態となる。そのため、透明樹脂層のドライラミネート時の熱が加わる場合には、例えば、化合物の解離が起こり易くなる温度は、65〜120℃に設定することができ、それに対応して反応させる化合物が選定される。
【0065】
透明樹脂層のドライラミネート工程での通常の処理温度の65〜120℃で、遊離イソシアネート基から解離し易い化合物としては、上記化合物の中で、アセトンオキシム、メチルエチルケトオキシム、1,2−ピラゾール、3,5−ジメチルピラゾール、1,2,4−トリアゾール、マロン酸ジエチル、ジイソプロピルアミン等の化合物を挙げることができるが、高pH下での使用が好ましい。
【0066】
また、透明樹脂層の表面への凹凸模様形成時、すなわちエンボス形成工程においては、通常、65〜200℃程度に加熱された状態となる。そのため、透明樹脂層の表面へのエンボス形成時の熱が加わる場合には、例えば、化合物の解離が起こり易くなる温度は、65〜200℃に設定することができ、それに対応して反応させる化合物が選定される。
【0067】
透明樹脂層の表面へのエンボス形成工程での通常の処理温度の65〜200℃で、遊離イソシアネート基から解離し易い化合物としては、上記化合物の中で、アセトンオキシム、メチルエチルケトオキシム、1,2−ピラゾール、3,5−ジメチルピラゾール、1,2,4−トリアゾール、マロン酸ジエチル、ジイソプロピルアミン、ε−カプロラクタム等の化合物を挙げることができる。
【0068】
なお、透明樹脂層の溶融押出形成時の熱を単独で用いてもよく、透明樹脂層の表面にエンボスを形成する場合にはその際の熱と併用して用いてもよい。また、透明樹脂層のドライラミネート時の熱を用いる場合には、熱量がやや不足する傾向にあるので、透明樹脂層の表面にエンボスを形成する際の熱と併用することが望ましい。
【0069】
なお、遊離イソシアネート基に結合した化合物の解離温度は、昇温過程におけるFTIRスペクトルをリアルタイムに測定し、イソシアネート基に帰属される吸収ピークの発現が開始された温度で規定される。
【0070】
各処理温度で解離が起こり易いか起こり難いかの判断基準は相対評価で行われ、起こり易い場合とは、各処理温度におけるFTIRスペクトルの経時測定により、イソシアネート基に帰属される吸収ピークの吸収ピーク面積または吸収ピーク強度を、その面積または強度を縦軸とし、時間を横軸としたときの立ち上がり曲線の傾きが大きいことをいう。また、起こり難い場合とは、その立ち上がり曲線の傾きが小さいことをいう。
【0071】
この場合、解離反応と生成したイソシアネートの架橋反応が同時に起こることが多く、また骨格構造により吸収ピークの大きさが異なるので、解離の起こりやすさがわかり難いことがある。しかし、本発明においては、水性塗工剤全体ではなく、ブロックイソシアネート化合物単体の解離温度で評価した。本発明の水性塗工剤では、ブロックイソシアネート化合物よりも解離温度が低く、解離も起こりやすくなるといった当初考えられなかった効果も得られた。
【0072】
以上のように、本発明で使用される水性塗工剤は、上述した特徴を有する化合物が遊離イソシアネート基に結合した水性化合物を有するものである。そしてこの水性化合物は、1分子中に少なくとも2個以上のイソシアネート基を有する架橋剤成分である。
【0073】
1分子中に少なくとも2個以上のイソシアネート基を持つ水性化合物としては、上記の特徴を有する範囲内であれば、水または水とアルコール等とからなる混合溶媒に溶解または均一に分散する水分散性のものであれば特に限定されない。
【0074】
上記の特徴を有する範囲内で実用上効果的な水性化合物としては、多価イソシアネートを親水性処理したものが好ましく用いられる。親水性処理される多価イソシアネートとしては、例えば、ジイソシアネート化合物と活性水素基含有化合物との反応による末端イソシアネート基含有化合物、あるいはジイソシアネート化合物の反応による末端イソシアネート基含有化合物等にさらに親水性基を導入した化合物を挙げることができる。ジイソシアネート化合物と活性水素基含有化合物との反応による末端イソシアネート基含有化合物、あるいはジイソシアネート化合物の反応による末端イソシアネート基含有化合物等の例としては、ウレタン構造をもつ末端イソシアネート基含有化合物、ウレア構造をもつ末端イソシアネート基含有化合物、ウレトジオン構造をもつ末端イソシアネート基含有化合物、イソシアヌレート構造をもつ末端イソシアネート基含有化合物、カルボジイミド構造をもつ末端イソシアネート基含有化合物、ウレトンイミン構造をもつ末端イソシアネート基含有化合物、ビウレット構造をもつ末端イソシアネート基含有化合物、アロファネート構造をもつ末端イソシアネート基含有化合物およびこれらの混合物等が挙げることができる。特に、イソシアヌレート構造をもつ末端イソシアネート基含有化合物が好ましい。
【0075】
上記ジイソシアネート化合物の例としては、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート等およびこれらの異性体からなる芳香族ジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、1,12−ドデカンジイソシアネート等の脂肪族イソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、シクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添キシレンジイソシアネート、1,4−ジイソシアネートシクロヘキサン等の脂環式ジイソシアネートおよびこれらの混合物等が挙げることができ、特に脂肪族、脂環式およびこれらの混合物が好ましい。
【0076】
本発明においては、上述した本発明の特徴を有する範囲内で、自己乳化性を有するイソシアネート基を持つ化合物であることが好ましく、特に好ましい水性化合物として、以下の化学式に示されるイソシアヌレート骨格を有する水性化合物を挙げることができる。下記化学式において、nは1以上の整数であり、R1 、R2 、Rn+2 はジイソシアネート残基であり、少なくとも2個以上のイソシアネート基を有する。また、必要に応じて、親水性基及び/又は疎水基を導入してもよい。
【0077】
【化2】
Figure 2004291434
【0078】
親水性処理は、上述した本発明の特徴を有する範囲内で、上述した末端イソシアネート基含有化合物に、活性水素基を1個以上有する親水性極性基含有化合物を反応させればよい。活性水素基を有する親水性極性基含有化合物における親水性極性基には、ノニオン性極性基、アニオン性極性基、カチオン性極性基が挙げられる。本発明においては、それぞれ単独で用いてもよいし、異なる種類の親水性極性基を用いてもよい。得られるイソシアネート基を持つ水性化合物の安定性を考慮すると、本発明における末端イソシアネート基含有化合物に導入する親水性極性基は、ノニオン性極性基が好ましい。
【0079】
活性水素基を有するノニオン性親水基含有化合物としては、上述した本発明の特徴を有する範囲内で、エチレンオキサイドユニットが50モル%以上、繰り返し数は3〜90、特に好ましくは繰り返し数が5〜50であるポリ(オキシアルキレン)エーテルモノオール、ポリ(オキシアルキレン)エーテルポリオール、ポリ(オキシアルキレン)脂肪酸エステルモノオール等が挙げられる。本発明で好ましいものは、ポリ(オキシアルキレン)エーテルモノオール、ポリ(オキシアルキレン)エーテルポリオールであり、より好ましくはポリ(オキシアルキレン)エーテルモノオールである。
【0080】
上記のポリ(オキシアルキレン)エーテルモノオールの製造における開始剤としては、上述した本発明の特徴を有する範囲内で、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、t−ブタノール、シクロヘキサノール、フェノールが挙げられる。ポリ(オキシアルキレン)エーテルポリオールの製造における開始剤としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、アニリン、トリメチロールプロパン、グリセリン等が挙げられる。
【0081】
また、上記のポリ(オキシアルキレン)脂肪酸エステルモノオールの製造に用いられる脂肪酸としては、上述した本発明の特徴を有する範囲内で、酢酸、プロピオン酸、n−酪酸、i−酪酸、n−吉草酸、i−吉草酸、カプロン酸、グリコール酸、乳酸、メトキシ酢酸等が挙げられる。
【0082】
活性水素基を有するアニオン性親水基含有化合物は、上述した本発明の特徴を有する範囲内で、活性水素基を1個以上有する有機酸と中和剤とからなる。
【0083】
有機酸としては、カルボン酸塩、スルホン酸塩、リン酸塩、ホスホン酸塩、ホスフィン酸塩、チオスルホン酸塩等が挙げられ、これらの基は、独立で導入されてもよいし、キレートのように関連付けられてもよい。
【0084】
活性水素基を1個以上有する有機酸としては、α−ヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシコハク酸、ジヒドロキシコハク酸、ε−ヒドロキシプロパン−1,2,3−トリカルボン酸、ヒドロキシ酢酸、α−ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシステアリン酸、リシノール酸、リシノエライジン酸、リシノステアロール酸、サリチル酸、マンデル酸等、オレイン酸、リシノール酸、リノール酸等の不飽和脂肪酸をヒドロキシル化したヒドロキシ脂肪酸、グルタミン、アスパラギン、リジン、ジアミノプロピオン酸、オルニチン、ジアミノ安息香酸、ジアミノベンゼンスルホン酸等のジアミン型アミノ酸、グリシン、アラニン、グルタミン酸、タウリン、アミノカプロン酸、アミノ安息香酸、アミノイソフタル酸、スルファミン酸等のモノアミン型アミノ酸、または、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロール酪酸、2,2−ジメチロール吉草酸等のカルボン酸含有ポリオール、イミノジ酢酸とグリシドールの付加物のようなキレートタイプ、5−ナトリウムスルホイソフタル酸や5−カリウムスルホイソフタル酸を用いたポリエステルポリオール、水やカルボキシル基含有アルコールを開始剤としたポリカプロラクトン、活性水素基含有ポリエステルまたは活性水素基含有ポリカーボネートとカルボキシル基含有アルコールとのエステル交換物が挙げられる。また、長鎖ポリオール類や前述の低分子ポリオールや低分子ポリアミンと、ポリカルボン酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基を含有するハーフエステル混合物やハーフアミド混合物も使用可能である。特に、無水ピロメリット酸等の酸無水物にポリオールを付加させた場合、2個のカルボン酸が生成するため、ポリエステルポリオールの分子鎖内に親水性極性基を導入できる。その他のアニオン性親水基として、リン酸等が挙げられる。なお、ここに挙げた長鎖ポリオールとは、前述のポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオレフィンポリオール等がある。
【0085】
中和剤としては、アンモニア、エチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、トリブチルアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−フェニルジエタノールアミン、モノエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、モルホリン、N−メチルモルホリン、2−アミノ−2−エチル−1−プロパノール等の有機アミン類、リチウム、カリウム、ナトリウム等のアルカリ金属、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムの無機アルカリ類等が挙げられるが、乾燥後の耐候性や耐水性を向上させるためには、熱によって容易に解離する揮発性の高いものが好ましく、アンモニア、トリメチルアミン、トリエチルアミンが好ましい。
【0086】
なお、これら有機酸類および中和剤は、上述した本発明の特徴を有する範囲内で、それぞれ単独または2種以上の混合物でも使用することができる。
【0087】
活性水素基を有するカチオン性親水基含有化合物は、上述した本発明の特徴を有する範囲内で、活性水素基を1個以上有する3級アミンと、無機酸および有機酸の中和剤、4級化剤のいずれから選択されるものとからなる。
【0088】
活性水素基を1個以上有する3級アミンとしては、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N,N−ジプロピルエタノールアミン、N,N−ジフェニルエタノールアミン、N−メチル−N−エチルエタノールアミン、N−メチル−N−フェニルエタノールアミン、N,N−ジメチルプロパノールアミン、N−メチル−N−エチルプロパノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N−メチルジプロパノールアミン、N−フェニルジエタノールアミン、N−フェニルジプロパノールアミン、N−ヒドロキシエチル−N−ヒドロキシプロピル−メチルアミン、N,N′−ジヒドロキシエチルピペラジン、トリエタノールアミン、トリスイソプロパノールアミン、N−メチル−ビス−(3−アミノプロピル)−アミン、N−メチル−ビス−(2−アミノプロピル)−アミン等が挙げられる。また、アンモニア、メチルアミンのような第1アミン、ジメチルアミンのような第2アミンにアルキレンオキサイドを付加させたものも使用できる。
【0089】
無機および有機酸としては、塩酸、酢酸、乳酸、シアノ酢酸、燐酸および硫酸等が挙げられる。4級化剤としては、硫酸ジメチル、塩化ベンジル、ブロモアセトアミド、クロロアセトアミド、または、臭化エチル、臭化プロピル、臭化ブチル等のハロゲン化アルキルが挙げられる。
【0090】
また、その他のカチオン性極性基含有化合物として、第1級アミン塩、第2級アミン塩、第3級アミン塩、ピリジニウム塩等のカチオン性化合物が挙げられる。
【0091】
また、第3級アミン含有ポリオールとスルトンとの反応で生成するスルホベタイン基等の両性極性基も導入できる。
【0092】
アニオン性およびカチオン性極性基における中和剤、4級化剤の添加、反応時期は、有機ポリイソシアネートと、活性水素基を有する有機酸及び/又は3級アミンとの反応後でもよいし、活性水素基を有する有機酸及び/又は3級アミンと中和剤や4級化剤を反応させてから、この反応物と末端イソシアネート基含有化合物を反応させてもよい。スルホン酸は、末端イソシアネート基含有化合物との反応前に中和するほうが好ましい。
【0093】
本発明におけるイソシアネート基を持つ水性化合物は、上述した本発明の特徴を有する範囲内で、活性水素基を有する疎水基含有化合物と反応させてもよい。この活性水素基を有する疎水基含有化合物としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、t−ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、2−エチルヘキサノール、ベンジルアルコール、、シクロヘキサノール、アルキレングリコールモノアルキルエーテル等の低分子モノオール類、エチルアミン、ブチルアミン、アニリン等の低分子第1モノアミン類、ジエチルアミン、ジブチルアミン、メチルアニリン等の低分子第2モノアミン類、活性水素基含有ポリエステル、エチレンオキサイドユニットが50モル%未満の活性水素基含有ポリエーテル、活性水素基含有ポリカート、活性水素基含有ポリオレフィン、炭素数6以上のヒドロキシ高級脂肪酸やそのエステル等が挙げられる。
【0094】
末端イソシアネート基含有化合物と活性水素基含有化合物との反応における反応温度は、10〜120℃、好ましくは30〜100℃である。また、必要に応じて用いられる活性水素基を有する疎水基含有化合物は、親水基導入と同時でもよいし、異なっていてもよい。このとき、必要に応じて、ジブチルチンジラウレート、トリエチレンジアミンのようなウレタン化触媒を添加してもよい。
【0095】
本発明におけるイソシアネート基を持つ水性化合物の平均官能基数は、2.0〜8.0、好ましくは、2.0〜4.0である。その平均官能基数が2.0未満の場合には、架橋密度が小さくなるため、接着強度が不十分となりやすい。また、その平均官能基数が5.0を越える場合は、硬化物の架橋密度が不必要に大きくなるため、塗工膜の柔軟性が不十分となりやすい。
【0096】
本発明において、上記の水性化合物の分子中のイソシアネート基の数としては、2個以上存在することが必要である。一方、分子中のイソシアネート基の数が多すぎる場合には、それによって決定的な弊害が生じるわけではないが、一般に、形成された層の可とう性が劣り、層間密着性が低下することがある。従って、分子中のイソシアネート基の数の範囲については、必ずしも厳密には定義し難いが、通常、2〜10程度、好ましくは2〜8程度である。
【0097】
上述の水性化合物で架橋される樹脂成分としては、各種の樹脂成分が好ましいが、本発明においては、2液性の水性ウレタン樹脂を使用することが好ましい。この水性塗工剤は、架橋剤と樹脂成分とを水または水とアルコールと等とからなる混合溶媒に溶解または均一に分散させて調製した2液性のウレタン樹脂塗工剤であり、その水性塗工剤を塗布・乾燥してベタインキ層3及び/又は絵柄インキ層4からなるインキ層11うち少なくとも1層を形成する。そのうち少なくともベタインキ層を2液性の水性ウレタン樹脂を使用して形成することが好ましい。
【0098】
2液性の水性ウレタン樹脂を樹脂成分とした水性塗工剤を用いることにより、基材シート2との層間密着性を向上させることができる。層間密着性が向上する理由は、形成された層を構成するウレタン樹脂が柔軟性と追従性を併せもち、かつ、層中の内部凝集力が高いことであると推察される。この理由は、本発明に係る水性塗工剤で形成した他の層、すなわち、接着剤層5、表面保護層9、裏面プライマー層10、プライマー層13の場合も同じである。
【0099】
2液性の水性ウレタン樹脂成分は、ポリイソシアネート化合物とイソシアネート基と反応し得る活性水素を分子中に2個以上含有する含有化合物、また、必要に応じて、親水性原子団または中和により親水性となりうる原子団を有する化合物から製造される。ポリイソシアネート化合物としては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フエニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ビフエニレンジイソシアネート、3,3’−ジクロロ−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、1,5−テトラヒドロナフタレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,3−シクロヘキシレンジイソシアネート、1,4−シクロヘキシレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等が挙げられる。イソシアネート基と反応し得る活性水素を分子中に2個以上含有する化合物としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ブテンジオール、メチル−1,5−ペンタンジオール、ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコールなどの低分子量ジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールなどの他官能ポリオール、ポリエチレン−ポリプロピレングリコール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリアセタールポリオール、ポリアクリルポリオール、ポリエステルアミドポリオール、ポリチオエーテルポリオール、ポリエーテルエステルポリオール、ポリオレフィンポリオール、動植物系ポリオール等が挙げられる。親水性原子団または中和により親水性となりうる原子団としては、例えば、カルボキシル基、スルホン酸基、スルホネート基、第3級アミノ基、第4級アミノ基あるいはエチレンオキサイドの繰り返し単位等が挙げられ、各水性ウレタン樹脂成分の製造時に共重合することができる。また、中和剤としては中和あるいはイオン化できるものであれば特に制限はないが、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の不揮発性塩基;トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等の三級アミン類、アンモニア等の揮発性塩基;塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸;蟻酸、酢酸、乳酸、クエン酸、酒石酸等の有機酸;塩化メチル、臭化メチル、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸、塩化ベンジル、p−ニトロベンジルクロライド、臭化ベンジル、エチレンクロルヒドリン、エチレンブロムヒドリン、エピクロルヒドリン、ブロムブタン等の4級化剤が挙げられる。
【0100】
そのうち、ブロックイソシアネート化合物の解離反応温度を低下させたり、各工程温度での解離反応を起こしやすくしたいときには、カルボキシル基、スルホン酸基、スルホネート基等の親水性基を、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の不揮発性塩基;トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等の三級アミン類、アンモニア等の揮発性塩基で中和した水性樹脂を使用するのが好ましい。
【0101】
本発明において、2液性の水性ウレタン樹脂成分を含有する2液性の水性塗工剤を用いた場合における樹脂成分と架橋剤成分との比は、樹脂成分:架橋剤成分=100:2〜100:200であり、特に、100:10〜100:50であることが好ましい。
【0102】
上記の2液性の水性塗工剤は、2液性のウレタン樹脂成分を、溶解、エマルジョン化、マイクロカプセル化またはその他の方法で水性化することにより得ることができる。なお、本発明において「水性の樹脂」というときは、本来的に水溶性の樹脂、水溶性処理された樹脂、本来的に水分散性の樹脂、水分散性処理された樹脂等をいう。
【0103】
また、水性塗工剤として、水性ウレタン樹脂成分と他の水性樹脂成分とを混合したものを用いることもできる。他の水性樹脂成分としては、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリビニルアセテート、ポリブタジエン、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリスチレン−アクリレート共重合体、ロジン誘導体、スチレン−無水マレイン酸共重合体のアルコール付加物、セルロース系樹脂等を好ましく挙げることができる。より具体的には、例えば、ポリアクリルアミド系樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸系樹脂、ポリエチレンオキシド系樹脂、ポリN−ビニルピロリドン系樹脂、水溶性ポリエステル系樹脂、水溶性ポリアミド系樹脂、水溶性アミノ系樹脂、水溶性フェノール系樹脂、その他の水溶性合成樹脂;ポリヌクレオチド、ポリペプチド、多糖類等の水溶性天然高分子;等も使用することができる。また、例えば、天然ゴム、合成ゴム、ポリ酢酸ビニル系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリウレタン−ポリアクリル系樹脂変性ないし混合樹脂、その他の樹脂を使用することもできる。上記のような樹脂は一種または二種以上使用される。また、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート等の(メタ)アクリル系モノマー;アクリロニトリル、メタクリルニトリル等のニトリル系モノマー;アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド系モノマー;それらのアミド系モノマーのN−アルコキシ置換体やN−メチロール置換体;スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼン等のスチレン系モノマー;ジアリルフタレート、アリルグリジジルエーテル、トリアリルイソシアヌレート等のアリル系モノマー;酢酸ビニル、N−ビニルピロリドン等の重合性二重結合を有するモノマー;等の一種または二種以上と、カルボキシル基を有するアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマール酸、イタコン酸、その他等の不飽和カルボン酸の一種ないしそれ以上との共重合体からなるアルカリ溶液可溶性(メタ)アクリル系共重合体を使用することもできる。
【0104】
水性ウレタン樹脂成分とそれ以外の種類の樹脂成分とを混合した水性塗工剤においては、その水性塗工剤を塗布・乾燥して得られた層中のバインダー成分中のウレタン樹脂成分が25重量%以上含有するように、水性ウレタン樹脂成分とそれ以外の種類の樹脂成分とを混合しておくことが好ましく、50重量%以上であることがより好ましい。層中のバインダー成分中のウレタン樹脂成分の含有量が25重量%未満では、ウレタン樹脂成分による層間密着性の向上作用が不十分となり、基材シート2と透明樹脂層6との間の層間密着性を改善することができない場合がある。一方、層中のバインダー成分中のウレタン樹脂成分の含有量の上限は特に限定されないが、全てウレタン樹脂成分からなる場合を含めて、その上限は100重量%である。
【0105】
特に、水性ウレタン樹脂成分と水性アクリル樹脂との混合樹脂を有する2液性の水性塗工剤でインキ層11を形成する場合においては、その水性塗工剤を塗布・乾燥して得られた層中のバインダー成分中のウレタン樹脂成分が25重量%以上100重量%未満含有するように、ウレタン樹脂成分とアクリル樹脂とを混合しておくことが望ましく、50重量%〜95重量%であることがより好ましい。
【0106】
水性塗工剤の溶媒である水は、従来より水性塗工剤に使用されているグレードの工業用水が使用される。また、水とアルコール等とからなる混合溶媒を、水性塗工剤の溶媒として使用することもできる。そうした混合溶媒を構成するアルコール等としては、エタノール、イソプロピルアルコール、N−プロピルアルコール等の低級アルコール、グリコール類およびそのエステル類等を挙げることができる。なお、これら低級アルコール、グリコール類およびそのエステル類等の溶媒は、水性塗工剤の流動性改良、被塗工体である基材シート2への濡れの向上、乾燥性の調整等の目的で使用されるものであり、その目的に応じてその種類、使用量等が決定される。本発明で使用される水性塗工剤は、ベンゼン、トルエン、キシレン等の危険性の高い芳香族炭化水素系の有機性揮発物質が用いられておらず、また、その他の有機溶剤の使用も抑えているので、VOCの発生を減少させることができる。
【0107】
水とアルコール等とからなる混合溶媒においては、それらの配合割合を、水:アルコール等(例えば、イソプロピルアルコール、メタノール、エタノール、nプロピルアルコール等が挙げられる。)=20:80〜100:0の範囲で調整できる。
【0108】
ベタインキ層3や絵柄インキ層4に使用される水性塗工剤には、着色顔料や染料等の着色剤が配合される。また、ワックス類、分散剤、消泡剤、レベリング剤、安定剤、充填剤、潤滑剤、滑剤、その他等の添加剤を任意に添加し、水または水とアルコール等とからなる水性の混合溶媒を使用し、ミキサー等で十分に混合して、水性塗工剤が調製される。
【0109】
着色顔料としては、通常使用される有機または無機系の顔料を使用することができる。こうした着色顔料のうち、黄色顔料としては、モノアゾ、ジスアゾ、ポリアゾ等のアゾ系顔料、イソインドリノン等の有機顔料、黄鉛、黄色酸化鉄、カドミウムイエロー、チタンイエロー、アンチモン黄等の無機顔料を使用することができる。また、赤色顔料としては、モノアゾ、ジスアゾ、ポリアゾ等のアゾ系顔料、キナクリドン等の有機顔料、弁柄、朱、カドミウムレッド、クロムバーミリオン等の無機顔料を使用することができる。また、青色顔料としては、フタロシアニンブルー、インダスレンブルー等の有機顔料、紺青、群青、コバルトブルー等の無機顔料を使用することができる。また、黒色顔料としては、アニリンブラック等の有機顔料、カーボンブラック等の無機顔料を使用することができる。また、白色顔料としては、二酸化チタン、亜鉛華、三酸化アンチモン等の無機顔料を使用することができる。また、シリカ等のフィラー、有機ビーズ等の体積顔料、中和剤、界面活性剤等を任意に含有させることができる。
【0110】
ベタインキ層3や絵柄インキ層4は、上述した水性塗工剤を塗工または印刷等によって設けた後、乾燥させて形成される。更に詳しく説明すれば、通常、ベタインキ層3は、ベタインキ層用の水性塗工剤を塗工または印刷した後、乾燥硬化させて形成され、絵柄インキ層4は、絵柄インキ層用の水性塗工剤を印刷した後、乾燥硬化させて形成される。塗工方法としては、公知の各種方法、例えばロールコート、カーテンフローコート、ワイヤーバーコート、リバースコート、グラビアコート、グラビアリバースコート、エアーナイフコート、キスコート、ブレードコート、スムーズコート、コンマコート、スプレーコート、かけ流しコート、刷毛塗り等の方法を用いることができ、乾燥後の膜厚が1.0〜10μm程度になるように塗工される。また、印刷方法としては、グラビア、活版、フレキソ等の凸版印刷、平版オフセット、ダイリソ印刷等の平版印刷、シルクスクリーン等の孔版印刷、静電印刷、インキジェットプリント等の公知の各種方法を用いることができる。
【0111】
こうした水性塗工剤でベタインキ層3および絵柄インキ層4からなるインキ層11を形成することにより、本発明の所期の目的である化粧シート1の環境安全性の向上と層間密着性の向上を達成することができる。特に本発明においては、水性塗工剤の配合工程や塗工工程での処理温度は、化合物が遊離イソシアネート基から解離し難い−5〜45℃であるので、遊離イソシアネート基に結合する化合物が水と反応するのを抑制することができ、耐熱性を低下させるウレア結合の生成を抑制することができる。その結果、成膜前の塗工剤のポットライフが長くなり安定した状態での塗工が実現できる。また、透明樹脂層の形成工程での処理温度は、化合物が遊離イソシアネート基から解離し易い65〜200℃であるので、その処理により反応性の高い遊離イソシアネート基が現れて架橋反応を促進させることができる。その結果、架橋反応が促進したより強固な層が形成され、水性塗工剤で形成される層間の密着性、および透明樹脂層と水性塗工剤で形成される層との間の密着性がより一層向上する。
【0112】
さらに、1分子中に少なくとも2個以上のイソシアネート基を持つ水性化合物を架橋剤として含有する水性塗工剤が使用されるので、その架橋剤の作用により強固な層を形成することができ、その結果、基材シート2と透明樹脂層5との間の層間密着性を向上させることができる。また、そうした水性塗工剤で形成した層は、室温〜40℃程度の室温下での養生処理でも十分に架橋されるので、シートの収縮に基づく意匠性を損なわない範囲内で、耐候性試験および耐水性試験後の層間密着性も優れている。
【0113】
(接着剤層)
接着剤層5は、図1に示すように、インキ層11と透明樹脂層6との間に設けられて、インキ層11が形成された基材シート2と透明樹脂層6との層間密着性を向上させるプライマー層ないしアンカー層としての役割を有するものであり、耐久性や長期に亘る外観維持性を向上させる作用がある。こうした作用は、形成された絵柄を長期間保持することができ、極めて有効である。
【0114】
本発明においては、接着剤層5の形成に、上述したインキ層11を形成するための水性塗工剤と同種のもを使用すること好ましい。すなわち、水性塗工剤は、イソシアネート基を持つ水性化合物を有し、その水性化合物は、遊離イソシアネート基に化合物を結合させた化学構造を有し、その遊離イソシアネート基に結合した化合物は、水性塗工剤の配合作業および/または塗工工程の温度では遊離イソシアネート基から解離し難く、後述する透明樹脂層の形成時(例えば、溶融押出工程時またはドライラミネート工程時)および/または透明樹脂層形成後に加わるエンボス形成工程時の温度では遊離イソシアネート基から解離し易い特徴を有するものである。
【0115】
接着剤層用の水性塗工剤に含有させる樹脂成分としては、上記のベタインキ層3の段落において説明した2液性の水性ウレタン樹脂成分が好ましく挙げられ、架橋剤とともに2液硬化型の水性塗工剤を構成する。水性ウレタン樹脂成分は、ウレタン樹脂成分を、溶解、エマルジョン化、マイクロカプセル化またはその他の方法で水性化することにより得ることができる。水性ウレタン樹脂成分を用いた場合における樹脂成分と上記水性化合物からなる架橋剤成分との比は、樹脂成分:架橋剤成分=100:2〜100:200であり、特に、100:10〜100:30であることが好ましい。
【0116】
また、ベタインキ層用の水性塗工剤と同様に、接着剤層用の水性塗工剤として、水性ウレタン樹脂成分と他の水性樹脂成分とを混合したものを用いることもできる。他の水性樹脂成分としては、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリビニルアセテート、ポリブタジエン、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリスチレン−アクリレート共重合体、ロジン誘導体、スチレン−無水マレイン酸共重合体のアルコール付加物、セルロース系樹脂なども併用できる。より具体的な樹脂成分は、上述のベタインキ層用の水性塗工剤において列記したものと同じであるので、この段落においては省略する。水性ウレタン樹脂成分とそれ以外の種類の樹脂成分とを混合した水性塗工剤においても、上述のベタインキ層3の場合と同様に、その水性塗工剤を塗布・乾燥して得られた接着剤層中のウレタン樹脂成分が25重量%以上含有するように、水性ウレタン樹脂成分それ以外の種類の樹脂成分とを混合しておくことが好ましく、50重量%以上であることがより好ましい。接着剤層中のウレタン樹脂成分の含有量が25重量%未満では、基材シート2と透明樹脂層6との層間密着性を改善することができない場合がある。一方、接着剤層中のウレタン樹脂成分の含有量の上限は特に限定されないが、全てウレタン樹脂成分からなる場合を含めて、その上限は100重量%である。
【0117】
水性塗工剤を構成する水および水とアルコール等とからなる混合溶媒の種類、配合割合、作用効果についても、上述したベタインキ層用の水性塗工剤の場合と同じであり、VOCの発生を好ましく抑制することができる。本発明は、ベタインキ層3、接着剤層5、後述の表面保護層9および裏面プライマー層10の全ての層を上述の水性塗工剤を用いて形成するので、環境安全性、層間密着性、耐スクラッチ性および意匠性が顕著に向上する。
【0118】
接着剤層用の水性塗工剤には、着色剤、ワックス類、分散剤、消泡剤、レベリング剤、安定剤、充填剤、潤滑剤、滑剤、その他等の添加剤を任意に添加され、水または水とアルコール等とからなる水性の混合溶媒を使用し、ミキサー等で十分に混合して、水性塗工剤が調製される。
【0119】
接着剤層5は、上述した水性塗工剤を、インキ層11上に塗工または印刷等によって設けた後、乾燥させて形成される。塗工方法としては、公知の各種方法、例えばロールコート、カーテンフローコート、ワイヤーバーコート、リバースコート、グラビアコート、グラビアリバースコート、エアーナイフコート、キスコート、ブレードコート、スムーズコート、コンマコート、スプレーコート、かけ流しコート、刷毛塗り等の方法を用いることができ、乾燥後の膜厚が0.3〜30μm程度になるように塗工される。
【0120】
(透明樹脂層)
透明樹脂層6は、トップ樹脂層ともいわれ、絵柄インキ層4等からなるインキ層11を擦り傷等から保護したり、化粧シート1の表面強度を向上させたり、塗装感を付与すること等を目的として、接着剤層5を介してインキ層11上に積層される。
【0121】
透明樹脂層6を構成する樹脂としては、上述した接着剤層5を介してインキ層11上に密着よく形成される透明な樹脂であれば特に限定されるものではないが、例えば、透明ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂を好ましく挙げることができる。透明樹脂層用の樹脂として使用できるオレフィン樹脂以外の樹脂としては、上述の基材シート2の構成材料と同じものを使用することができ、
こうした透明樹脂層6を形成する樹脂には、必要に応じて、着色剤、充填剤、紫外線吸収剤、光安定剤、マット剤等の公知の添加剤を添加して形成することができ、着色された透明樹脂層としたり、紫外線吸収特性を有する透明樹脂層とすることができる。
【0122】
透明樹脂層6の形成方法としては、接着剤層5上に、溶融押出し塗工法によって溶融押出形成したり、別個に形成された透明樹脂シートをドライラミネートにより積層したり、その他公知の方法で積層することができる。
【0123】
透明樹脂層を溶融押出成形により形成する場合においては、工程の処理温度を65〜200℃、好ましくは120〜200℃とすることが好ましい。こうした温度で処理することにより、成膜されたインキ層11や接着剤層5中の化合物を遊離イソシアネート基から解離させ、架橋反応をより促進させることができる。
【0124】
一方、透明樹脂層をドライラミネートにより形成する場合においては、工程の処理温度を65〜120℃とすることが好ましい。こうした温度で処理することにより、成膜されたインキ層11や接着剤層5中の化合物を遊離イソシアネート基から解離させ、架橋反応をより促進させることができる。
【0125】
本発明においては、遊離イソシアネート基に結合している化合物を、この透明樹脂層の形成工程時に解離させて架橋反応を促進させることとなる。したがって、ポットライフこの透明樹脂層形成工程以前の段階においては、塗料寿命を短くする要因になりやすい遊離イソシアネート基の存在を極力少なくすることができ、そのため、水性塗工剤のポットライフを長くでき、長期間安定定した塗工液を維持することができる。そして、この透明樹脂層形成工程での処理温度で、遊離イソシアネート基に結合した化合物が解離するので、その遊離イソシアネート基に基づく架橋反応が進行し、各層(インキ層11および接着剤層5)の架橋を促進し、その層を、層間密着性に優れたより強固なものにすることができる。
【0126】
なお、本発明の他の形態としては、図2に示すように、透明樹脂層6を2層以上の複層構造にしてもよい。2層以上積層させてなる透明樹脂層16は、基材シート2側の透明樹脂層6’と表面保護層側の透明樹脂層6”とに異なる作用効果を持たせることができる点で有利である。具体的には、表面保護層側の透明樹脂層6”をフッ化ビニリデン等のフッ素系樹脂を主成分とした樹脂で形成することにより、優れた耐汚染性等の表面機能を付与することができ、基材シート側の透明樹脂層6’を熱可塑性アクリル樹脂等で形成することにより、接着剤層5との間の密着性等を向上させることができるように積層可能である。また、表面保護層側の透明樹脂層6”を耐候剤を添加したポリプロピレン系樹脂で形成することにより、優れた耐候性を付与することができ、基材シート側の透明樹脂層6’をエラストマーを含有したポリプロピレン系樹脂で形成することにより、耐候性と密着性の向上を図ることができるように積層可能である。
【0127】
2層以上の透明樹脂層16は、複数の樹脂組成物を溶融共押出しして形成したり、ドライラミネートや熱ラミネーション等の各種のラミネート法で形成することができる。このとき、図3に示すように、プライマー層またはアンカー層として作用する接着剤層12を介して2以上の層からなる透明樹脂層16を形成することもできる。なお、この場合における接着剤層12は、透明樹脂層6’、6”と共に溶融共押出しして形成したり、上述した2液性の水性ウレタン樹脂を含有する水性塗工剤で塗布形成することもでき、その場合には、VOCの発生をより一層抑制することができる。
【0128】
透明樹脂層6の厚さは、20〜300μm程度となるように、15〜400g/m2 程度の塗布量で塗工する。
【0129】
(凹凸模様)
凹凸模様7は、エンボス模様ともいわれ、図1に示すように、必要に応じて上述の透明樹脂層6の表面に形成される。また、図2および図3に示すように2層以上の透明樹脂層16を形成した場合には、凹凸模様7を最表面の透明樹脂層に形成したり、最表面以外の透明樹脂層に形成したりすることができ、それぞれ任意に行うことができる。
【0130】
凹凸模様7は、特に限定されず、化粧シート1の用途に応じた模様であればよい。例えば、木目導管溝、木目年輪凹凸、浮造年輪凹凸、木肌凹凸、砂目、梨地、ヘアライン、万線状溝、花崗岩の劈開面等の石材表面凹凸、布目の表面テクスチュア、皮絞、文字、幾何学模様等の模様を挙げることができる。
【0131】
凹凸模様7を形成する手段としては、例えば、加熱加圧によるエンボス加工法やTダイ溶融押し出し法が挙げられる。加熱加圧によるエンボス加工法は、透明樹脂層6の表面を加熱軟化させ、その表面をエンボス版で加圧してエンボス版の凹凸模様7を賦形し、冷却して固定化する方法であり、公知の枚葉式または輪転式のエンボス機を用いることができる。エンボス加工法で形成する場合には、ラミネート加工により積層する前の透明樹脂層6とする樹脂シートに予めエンボス加工したり、透明樹脂層6とする樹脂シートを積層すると同時に(いわゆるダブリングエンボス法)行ったりすることができる。また、Tダイ溶融押出し法で透明樹脂層6を積層する場合には、賦形ローラを兼用させた冷却ローラを使用して、透明樹脂層6の成膜・積層と同時に凹凸模様7を形成することもできる。また、ヘアライン加工、サンドブラスト加工等によってもエンボス模様を形成することができる。
【0132】
本発明において、透明樹脂層6の表面にエンボス加工(凹凸模様の形成加工)する場合には、その工程の処理温度を65〜200℃とすることが好ましい。こうした温度で処理することにより、成膜されたインキ層11や接着剤層5中の化合物を遊離イソシアネート基から解離させ、架橋反応をより促進させることができる。その作用と効果は、上述した透明樹脂層の段落で説明したのと同じである。
【0133】
(着色層)
着色層8は、凹凸模様7の凹陥部17にワイピング法により形成される。ワイピング法は、ドクターブレードコート法またはナイフコート法で凹陥部17を含む表面全面に着色層用の塗工剤を塗布した後、凹陥部17以外の表面から着色層用の塗工剤を除去することにより、凹陥部17のみに着色層8を形成する方法である。着色層用の塗工剤としては、有機顔料、無機顔料、光輝性顔料等の着色顔料と、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化型樹脂等のバインダー樹脂とからなるインキや、エマルジョン型の水性タイプインキ等を使用できる。また、上述のベタインキ層3及び/又は絵柄インキ層4を形成する水性塗工剤を好ましく用いることもでき、そうした場合には、環境安全性の点でより好ましい。
【0134】
(表面保護層)
表面保護層9は、トップコート層またはオーバープリント層(OP層)ともいわれ、凹凸模様7を形成する凹陥部17やその凹陥部17に形成された着色層8の表面を被って、化粧シート1を保護することを目的として設けられるものである。
【0135】
本発明の化粧シートは、表面保護層9を少なくとも1分子中に2個以上のイソシアネート基を持つ水性化合物を架橋剤として含有する水性塗工剤で形成する場合(第1形態という。)と、表面保護層9を活性エネルギー線硬化性の無溶剤型塗工剤で形成する場合(第2形態という。)とに分けられる。
【0136】
第1形態に係る化粧シートにおいては、表面保護層9が、少なくとも1分子中に2個以上のイソシアネート基を持つ水性化合物を架橋剤として含有する水性塗工剤で形成される。その水性塗工剤については、上述したベタインキ層3や接着剤層5を形成するための水性塗工剤と同じものを使用することが好ましいので、ここではその詳細な説明を省略する。
【0137】
この第1形態に係る化粧シートにおいては、上記水性化合物を架橋剤として含有する水性塗工剤を用い、その水性塗工剤を塗布・乾燥して表面保護層9を形成することにより、化粧シート製造時のVOC発生量および化粧シート中のVOC残存量を減少させることができ、その結果、作業環境の安全性や生活空間の安全性をより向上させることができる。特に、この表面保護層9は、化粧シートの最表面を構成しているので、生活空間への揮発性物質の放散を著しく低減することができる。さらに、少なくとも1分子中に2個以上のイソシアネート基を持つ水性化合物を架橋剤として含有するので、その架橋剤の作用により強固な層を形成することができ、その結果、耐スクラッチ性に優れた化粧シートとすることができる。また、そうして形成された表面保護層9は、室温〜40℃程度の室温での養生処理において十分に架橋されるので、シートの収縮に基づく意匠性を損なわない範囲内で、耐候性試験および耐水性試験後の透明樹脂層6との密着性も優れている。
【0138】
なお、この表面保護層9を形成するための水性塗工剤は、上述したインキ層11および接着剤層5を形成する塗工剤と同じもの、すなわち、遊離イソシアネート基に化合物を結合させた化学構造を有するものである必要は必ずしもないが、ポットライフが長く、品質の安定した表面保護層を形成することができる点で、上述したインキ層11および接着剤層5を形成する塗工剤と同じものを用いることが好ましい。
【0139】
表面保護層用の水性塗工剤には、表面保護層としての機能を考慮して、着色剤、ワックス類、分散剤、消泡剤、レベリング剤、安定剤、充填剤、潤滑剤、滑剤、その他等の添加剤が任意に添加され、水または水とアルコール等とからなる水性の混合溶媒を使用し、ミキサー等で十分に混合して、水性塗工剤が調整される。
【0140】
表面保護層9は、上述した水性塗工剤を、透明樹脂層6上に塗工または印刷等によって設けた後、乾燥させて形成される。塗工方法としては、公知の各種方法、例えばロールコート、カーテンフローコート、ワイヤーバーコート、リバースコート、グラビアコート、グラビアリバースコート、エアーナイフコート、キスコート、ブレードコート、スムーズコート、コンマコート、スプレーコート、かけ流しコート、刷毛塗り等の方法を用いることができ、乾燥後の膜厚が例えば3〜40μm、好ましくは10〜30μm程度になるように塗工される。
【0141】
一方、第2形態に係る化粧シートにおいては、表面保護層9が、活性エネルギー線硬化性樹脂からなる無溶剤型塗工剤で形成される。すなわち、本発明の第2形態に係る化粧シートにおいては、活性エネルギー線硬化性の無溶剤型塗工剤を用い、その無溶剤型塗工剤を塗布した後、活性エネルギー線照射により硬化させて表面保護層9を形成することにより、化粧シート製造時のVOC発生量および化粧シート中のVOC残存量を減少させることができ、その結果、作業環境の安全性や生活空間の安全性をより向上させることができる。特に、この表面保護層9は、化粧シートの最表面を構成しているので、生活空間への揮発性物質の放散を著しく低減することができると共に、耐擦傷性や耐汚染性等の物性向上の点でも好ましい。
【0142】
なお、活性エネルギー線硬化性樹脂とは、活性エネルギー線を照射することにより架橋重合反応を起こし3次元の高分子構造に変化する樹脂である。活性エネルギー線は、電磁波または荷電粒子線のうち分子を重合、架橋し得るエネルギー量子を有するものを意味し、可視光線、紫外線(近紫外線、真空紫外線等を含む。)、X線、電子線、イオン線等がある。通常は紫外線や電子線が用いられる。紫外線源としては、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク灯、ブラックライト蛍光灯、メタルハライドランプ灯の光源が使用できる。紫外線の波長としては、通常1900〜3800Å(10−1nmに同じ。)の波長域が主として用いられ、また、電子線源としては、コックロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、或いは、直線型、ダイナミトロン型、高周波型灯の各種電子線加速器を用い、100〜1000keV、好ましくは100〜300keVのエネルギーをもつ電子を照射するものを使用できる。
【0143】
活性エネルギー線硬化性樹脂としては、分子中に、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基等のラジカル重合性不飽和基、又はエポキシ基等のカチオン重合性官能基を有する単量体、プレポリマー又はポリマー(以下、これらを総称して化合物と呼称する)からなる。これら単量体、プレポリマー、及びポリマーは、単体で用いるか、或いは複数種混合して用いる。
【0144】
上記の活性エネルギー線硬化性樹脂は電子線を照射すれば十分に硬化するが、紫外線を照射して硬化させる場合には、増感剤として光重合開始剤を添加する。光重合開始剤の添加量は一般に、電離放射線硬化型樹脂100重量部に対して、0.1 〜10重量部程度である。
【0145】
第2形態についての表面保護層9は、そのような塗工剤を、グラビアコート法、リバースロールコート法、ナイフコート法、キスコート法、その他塗工法等の公知の塗工法で塗工形成して形成される。また、グラビア印刷、シルクスクリーン印刷等の公知の印刷法で形成される。形成された表面保護層9の厚みは1〜40μm程度が好ましく、2〜10μmがより好ましい。
【0146】
こうして形成される表面保護層9は、耐擦傷性等の表面物性の向上のほか、シリカ等の公知の艶消し剤を添加して艶調整したり、塗装感等の意匠性を付与させたりすることもできる。また、表面保護層9には、より良好な耐候性または耐光性を付与するために、必要に応じて紫外線吸収剤、光安定剤を添加して形成することができる。そうした紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール、ベンゾフェノン、サリチル酸エステル等の有機物、または、0.2μm径以下の微粒子状の酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化チタン等の無機物、を用いることができる。光安定剤としては、ビス−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)セバケート等のヒンダードアミン系ラジカル捕捉剤、ピペリジン系ラジカル捕捉剤等のラジカル捕捉剤等を用いることができる。これらの紫外線吸収剤、光安定剤とも、通常、0.5〜10重量%程度となるように添加するが、一般的には紫外線吸収剤と光安定剤とを併用するのが好ましい。難燃剤としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の粉末が用いられる。難燃剤の添加量は、高密度ポリエチレンと熱可塑性エラストマーとの合計量を100重量部に対し、10〜150重量部程度が好ましい。
【0147】
(プライマー層)
プライマー層13は、図4に示すように、透明樹脂層6と表面保護層9との間に設けられて、透明樹脂層6と表面保護層9との密着性を向上させる役割を有するものである。特に、表面保護層9が活性エネルギー線硬化性の無溶剤型塗工剤で形成される場合に好ましく適用され、表面保護層9が活性エネルギー線で硬化する際の収縮を吸収する効果(追従性)がある。その結果、表面保護層9の硬化時に発生する歪みに基づく層間剥離の問題を解決することができ、透明樹脂層6と表面保護層9との密着性を向上させることができる。
【0148】
本発明においては、プライマー層13を、インキ層11のところで詳細に説明した水性塗工剤と同じ2液性の水性塗工剤で形成してもよいし、水性ウレタン樹脂成分を含有する1液性の水性塗工剤で形成してもよい。すなわち、本発明においては、1液性または2液性の水性塗工剤を用い、その水性塗工剤を塗布・乾燥してプライマー層13を形成することにより、化粧シート製造時のVOC発生量および化粧シート中のVOC残存量を減少させることができ、その結果、作業環境の安全性や生活空間の安全性をより向上させることができる。さらに、層中のウレタン樹脂成分の作用により、透明樹脂層6と表面保護層9との密着性をより向上させることができる。
【0149】
なお、このプライマー層13を形成するための水性塗工剤は、上述したインキ層11および接着剤層5を形成する塗工剤と同じもの、すなわち、遊離イソシアネート基に化合物を結合させた化学構造を有するものである必要は必ずしもないが、ポットライフが長く、品質の安定した表面保護層を形成することができる点で、上述したインキ層11および接着剤層5を形成する塗工剤と同じものを用いることができる。
【0150】
プライマー層用の水性塗工剤に含有させる水性ウレタン樹脂としては、上述のインキ層の段落で説明したように、1液性のものであっても2液性のものであってもよく、特に限定されないが、1液性の水性塗工剤は比較的柔軟で追従性を有する膜が形成されるので、特に表面保護層9を活性エネルギー線硬化性の無溶剤型塗工剤で形成する場合に好ましい。
【0151】
1液性の水性ウレタン樹脂成分を含有する水性塗工剤は、分子末端にイソシアネート基を有したプレポリマーを必須成分とし、水または水とアルコール等とからなる混合溶媒に溶解または均一に分散させて調整した1液型湿気硬化ウレタン樹脂等を好ましく挙げることができる。また、2液性の水性ウレタン樹脂成分を含有する水性塗工剤は、水性ウレタン樹脂の主剤となるポリオールと、1分子中に少なくとも2個以上のイソシアネート基を持つ水性化合物からなる架橋剤とを、水または水とアルコール等とからなる混合溶媒に溶解または均一に分散させて調整した2液性の水性ウレタン樹脂等を挙げることができる。
【0152】
プライマー層13は、そうした水性塗工剤を、透明樹脂層6上に塗工または印刷等によって設けた後、乾燥させて形成される。塗工方法としては、公知の各種方法、例えばロールコート、カーテンフローコート、ワイヤーバーコート、リバースコート、グラビアコート、グラビアリバースコート、エアーナイフコート、キスコート、ブレードコート、スムーズコート、コンマコート、スプレーコート、かけ流しコート、刷毛塗り等の方法を用いることができ、乾燥後の膜厚が例えば0.01〜10μm程度が好ましく、0.1〜2μm程度がより好ましい。
【0153】
(裏面プライマー層)
裏面プライマー層10は、本発明の化粧シート1を各種の被着体15に接着させ易くすることを目的として、基材シート2の裏面側に任意に形成される。
【0154】
本発明の化粧シートは、裏面プライマー層10についても、少なくとも1分子中に2個以上のイソシアネート基を持つ水性化合物を架橋剤として含有する水性塗工剤で形成する。裏面プライマー層用の水性塗工剤は、上述のインキ層等の段落で説明したように、1液性のものであっても2液性のものであってもよく、特に限定されないが、2液性のものがより好ましく用いられる。その詳細は上述の通りであるので、ここでは省略する。
【0155】
なお、この裏面プライマー層10を形成するための水性塗工剤は、上述したインキ層11および接着剤層5を形成する塗工剤と同じもの、すなわち、遊離イソシアネート基に化合物を結合させた化学構造を有するものである必要は必ずしもないが、ポットライフが長く、品質の安定した表面保護層を形成することができる点で、上述したインキ層11および接着剤層5を形成する塗工剤と同じものを用いることが好ましい。
【0156】
裏面プライマー層10は、そうした水性塗工剤を、基材シート2の裏面側に塗工または印刷等によって設けた後、乾燥させて形成される。塗工方法としては、公知の各種方法、例えばロールコート、カーテンフローコート、ワイヤーバーコート、リバースコート、グラビアコート、グラビアリバースコート、エアーナイフコート、キスコート、ブレードコート、スムーズコート、コンマコート、スプレーコート、かけ流しコート、刷毛塗り等の方法を用いることができ、乾燥後の膜厚が例えば0.1〜30μm程度になるように塗工される。
【0157】
この裏面プライマー層10は、建材等に貼られた後は、生活空間等から最も遠くに配置されるが、化粧シートの製造段階においては、裏面側の最表面を構成する。そのため、この裏面プライマー層10を水性塗工液で形成することにより、製造時のVOC発生量を減少させることができ、その結果、作業環境の安全性をより向上させることができる。
【0158】
裏面プライマー層10を上記水性塗工剤で形成することにより、裏面プライマー層10と基材シート2との間の密着性が向上する。従って、本発明の化粧シートは、裏面プライマー層側が接着剤等を介して被着体に貼着された後に、その裏面プライマー層と基材シートとの密着性が優れているので、化粧シートが被着体から剥がれてしまうという問題が極めて生じにくいという格別の効果がある。
【0159】
(化粧シート)
上述の構成を有する本発明の化粧シート1は、他の被着体15(裏打材)に積層して用いられる。
【0160】
被着体15としては、図5に示すような立体形状物品41や、図6に示すような平板状、曲面状等の板材51、シート(或いはフィルム)等の各種形状の物品が対象となる。こうした被着体15は、木材単板、木材合板、パーティクルボード、中密度繊維板(MDF)等の木材板、木質繊維板等の木質板、鉄、アルミニウム等の金属、アクリル、ポリエステル、ポリスチレン、ポリオレフィン、ABS樹脂、フェノール樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、セルロース系樹脂、ゴム等の樹脂、硝子、陶磁器等のセラミックス、石膏等の非セメント窯業系材料、上質紙、和紙等の紙、炭素、石綿、チタン酸カリウム、硝子、合成樹脂等の繊維からなる不織布又は織布、等々を挙げることができる。
【0161】
化粧シート1と被着体15との関係において、化粧シート1の基材シート2や裏面プライマー層10の種類により、被着体15にそのまま熱融着等で接着できる場合には、化粧シート1と被着体15とを接着剤を用いずに積層させることができるが、化粧シート1の基材シート2や裏面プライマー層10の種類により、被着体15にそのまま熱融着等で接着できない場合には、適当な接着剤を用いて積層させる。なお、接着剤としては、酢ビ系、尿素系等の接着剤を挙げることができる。
【0162】
また、一般的な積層方法としては、例えば、(a)接着剤を介して被着体15に加圧ローラーで加圧して積層する方法、(b)特公昭50−19132号公報、特公昭43−27488号公報等に記載のように、化粧シート1を射出成形の雌雄両金型間に挿入して、両金型を閉じ、雄型のゲートから溶融樹脂を射出充填した後、冷却して樹脂成型品の成形と同時にその表面に化粧シート1を接着積層する射出成形同時ラミネート方法、(c)特公昭56−45768号公報、特公昭60−58014号公報等に記載のように、接着剤を介して成形品の表面に化粧シート1を対向させ、成形品側からの真空吸引による圧力差により化粧シート1を成形品表面に積層する真空プレス積層方法、(d)特公昭61−5895号公報、特公平3−2666号公報等に記載のように、円柱、多角柱等の柱状被着体の長軸方向に、接着剤を介して化粧シート1を供給しつつ、複数の向きの異なるローラーにより、柱状被着体を構成する複数の側面に順次化粧シート1を加圧接着して積層してゆくラッピング加工方法等が挙げられる。
【0163】
本発明の化粧シート1を積層した各種の被着体15は、所定の成形加工等を施して、各種装飾用素材等として用いることができる。例えば、壁、天井、床等建築物の内装、窓枠、扉、手摺等の建具の表面化粧、家具または弱電・OA機器のキャビネットの表面化粧、自動車、電車等の車輌内装、航空機内装、窓硝子の化粧用等の用途が挙げられる。
【0164】
【実施例】
以下に、実施例と比較例を挙げて、本発明について更に詳しく説明する。以下において、部とは重量部のことである。
【0165】
(実施例1)
基材シート2として三菱化学MKV株式会社製のポリエチレン系着色シート(厚み60μm)を用い、その表裏それぞれにコロナ放電処理を施した後、その片面に下記配合の裏面プライマー層用水性塗工液Aを線数54線/インチ、版深40μmのグラビア版を用いてグラビア印刷法にて塗布、乾燥し、約2g/m2の裏面プライマー層10を形成した。
【0166】
さらにその反対の面に、下記配合のベタインキ層用水性塗工液B、絵柄インキ層用水性塗工液C、接着剤層用水性塗工液Dを線数54線/インチ、版深40μmのグラビア版を用いてグラビア印刷法にて塗布、乾燥し、約2g/m2のベタインキ層3、約1.5g/m2の絵柄インキ層4、約3g/m2の接着剤層5を順次形成した。
【0167】
さらにその接着剤層5上に、マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂(10μm)と、ランダム共重合ポリプロピレンに、フェノール系酸化防止剤0.2重量%、ヒンダードアミン系光安定剤0.3重量%、ブロッキング防止剤0.2重量%をそれぞれ添加した樹脂(70μm)を接着剤層側がマレイン酸変性ポリプロピレンになるようにTダイにて180℃の熱で、オゾン照射化で共押し出して約80μmの透明樹脂層6を積層した。この透明樹脂層6の表面に、約160℃で熱エンボスにより凹凸7を施し、さらに、凹凸7が施された表面にコロナ放電処理を行なった後、表面保護層用水性塗工液Eを線数48線/インチ、版深60μmのグラビア版を用いてグラビア印刷法にて塗布、乾燥し、約3g/m2の表面保護層9を形成した。その後、25℃の温度で7日間養生処理(エージング)して実施例1の化粧シートを得た。
【0168】
裏面プライマー層用水性塗工液A;
・水性ウレタン樹脂(第一工業製薬株式会社製、F−8583D):100部
・水分散性イソシアネート架橋剤(日本ポリウレタン株式会社製、アクアネート100):15部
・シリカ粉末(富士シリシア化学株式会社製、サイシリア380):2部
・水:10部
・イソプロピルアルコール:10部
【0169】
ベタインキ層用水性塗工液B;
・水性ウレタン系白色インキ(ザ・インクテック株式会社製、オーデWKE):100部
・水分散性ブロックイソシアネート架橋剤(三井武田ケミカル株式会社製、タケネートWB720):10部
・水:10部
・イソプロピルアルコール:10部
【0170】
絵柄インキ層用水性塗工液C;
・水性ウレタン系赤色インキ(ザ・インクテック株式会社製、オーデWKE):100部
・水:20部
・イソプロピルアルコール:20部
【0171】
接着剤用水性塗工液D;
・水性ウレタン系接着剤(日華化学株式会社製、HO14):100部
・水分散性ブロックイソシアネート架橋剤(三井武田ケミカル株式会社製、タケネートWB720):15部
・水:10部
・イソプロピルアルコール:10部
【0172】
表面保護層用水性塗工液E;
・水性ウレタン樹脂(第一工業製薬株式会社製、F−8582D):100部
・水分散性イソシアネート架橋剤(日本ポリウレタン株式会社製、アクアネート100):15部
・シリカ粉末(富士シリシア化学製、サイシリア380):2部
・シリコーンオイル(信越化学工業株式会社製、KF353):1部
・水:10部
・イソプロピルアルコール:10部
【0173】
(実施例2)
実施例1の化粧シートの製造において、表面保護層9の形成方法に代えて、透明樹脂層6を形成した後、その表面側にコロナ放電処理を行なった後、下記配合の水性プライマー層用水性塗工液Fを線数70線/インチ、版深30μmのグラビア版を用いてグラビア印刷法にて塗布、乾燥し、約0.5g/m2のプライマー層13を形成し、その上に下記配合の電子線硬化性樹脂無溶剤塗工液Gを60℃に加温してバーコート法で塗工したのち、岩崎電気製電子線照射装置エレクトロカーテンEC250にて、窒素パージ下にて、150kVの加速電圧、5Mradの照射線量で電子線照射し約3g/m2の表面保護層9を形成した後に、表面保護層9上に約160℃で熱エンボスにより凹凸7を施した。その他は実施例1と同様にして、実施例2の化粧シートを得た。
【0174】
水性プライマー層用水性塗工液F;
・水性ウレタン樹脂(第一工業製薬株式会社製、F−8583D):100部
・シリカ粉末(富士シリシア化学株式会社製、サイシリア380):1部
・水:10部
・イソプロピルアルコール:10部
【0175】
電子線硬化性樹脂無用剤塗工液G;
・多官能ウレタンアクリレート(新中村化学工業株式会社製、U−15HA):25部
・ペンタエリスリトールトリアクリレート(新中村化学工業株式会社製、A−TMMA):20部
・ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート(サートマー製、SR399):5部
・トリメチロールプロパンアクリレート(日本化薬株式会社製、TMPTA):50部
・シリカ粉末(富士シリシア化学株式会社製、サイシリア380):2部
・シリコーンオイル(信越化学工業株式会社製、KF353):1部
・水:10部
・イソプロピルアルコール:10部
【0176】
(実施例3)
実施例1の化粧シートの製造において、表面保護層9の形成方法に代えて、透明樹脂層6を形成した後、その表面側にコロナ放電処理を行なった後、上述の水性プライマー層用水性塗工液Fを線数70線/インチ、版深30μmのグラビア版を用いてグラビア印刷法にて塗布、乾燥し、約0.5g/m2のプライマー層13を形成し、その上に下記配合の透明樹脂層用無溶剤塗工液Hを60℃に加温してバーコート法で塗工したのち、UV照射装置(フュージョンUVシステムズジャパン製)のHバルブ光源を用いて、窒素パージ下にて、500mJ/cm2の照射量で紫外線照射し、約5.0g/m2の表面保護層9を形成した後に、表面保護層9上に約160℃で熱エンボスにより凹凸7を施した。その他は実施例1と同様にして、実施例3の化粧シートを得た。
【0177】
紫外線硬化性樹脂無用剤塗工液H;
・多官能ウレタンアクリレート(新中村化学工業株式会社製、U−15HA):25部
・ペンタエリスリトールトリアクリレート(新中村化学工業製、A−TMMA):20部
・ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート(サートマー製、SR399):5部
・トリメチロールプロパンアクリレート(日本化薬株式会社製、TMPTA)50部
・シリカ粉末(富士シリシア化学製、サイシリア380):2部
・シリコーンオイル(信越化学工業株式会社製、KF353):1部
・光重合開始剤(チバスペシャリティーケミカルズ株式会社製、イルガキュアー184):1部
・水:10部
・イソプロピルアルコール:10部
【0178】
(実施例4)
実施例1の化粧シートにおいて、透明樹脂層の表面への熱エンボスによる凹凸を施こさなかった。その他は実施例1と同様にして、実施例4の化粧シートを得た。
【0179】
(実施例5)
実施例1の化粧シートにおいて、透明樹脂層の形成方法に変えて、接着剤層上に透明プロピレンフィルム(PE002c;三菱化学MKV株式会社製)を120℃の張り合わせ温度でドライラミネート法により積層して、透明樹脂層を形成した。その他は実施例1と同様にして、実施例5の化粧シートを得た。
【0180】
(実施例6)
実施例5の化粧シートにおいて、透明樹脂層の張り合わせ温度を90℃から50℃に変更して透明保護層を形成した。その他は実施例5と同様にして、実施例6の化粧シートを得た。
【0181】
(実施例7)
実施例5の化粧シートにおいて、ベタインキ層用水性塗工液Bおよび接着剤用水性塗工液Dのそれぞれに用いた水分散性ブロックイソシアネート架橋剤に代えて、以下に記載の水分散性ブロックイソシアネート架橋剤Xを用いた。また、透明樹脂層表面への熱エンボスによる凹凸を施こさなかった。その他は実施例5と同様にして、実施例7の化粧シートを得た。
【0182】
水分散性ブロックイソシアネート架橋剤Xの製造例;
300mlの丸底フラスコ中で40℃に加熱した水分散性イソシアネート化合物(日本ポリウレタン工業製、アクアネート120)100gを攪拌しながら、マロン酸ジエチル25gを徐々に添加した後、2時間攪拌をつづけて、水分散性ブロックイソシアネート架橋剤Xを得た。
【0183】
接着剤層用水性塗工液I;
・水性ウレタン系接着剤(日華化学株式会社製、HO14):100部
・水分散性イソシアネート架橋剤(日本ポリウレタン工業株式会社製、アクアネート100):15部
・水:10部
・イソプロピルアルコール:10部
【0184】
(比較例1)
実施例1の化粧シートにおいて、透明樹脂層の押しだし温度を180℃から50℃に変更したところ、透明樹脂が溶融状態にならずに化粧シートを得ることができなかった。
【0185】
(比較例2)
実施例1の化粧シートにおいて、透明樹脂層の表面への熱エンボス温度を160℃から250℃に変更して凹凸を施したところ、透明樹脂層まで形成した積層体が溶融してしまい化粧シートを得ることができなかった。
【0186】
(比較例3)
実施例5の化粧シートにおいて、透明樹脂層の張り合わせ温度を90℃から50℃に変更して透明保護層を形成した。また、透明樹脂層の表面への熱エンボスによる凹凸を施こさなかった。その他は実施例5と同様にして、比較例3の化粧シートを得た。
【0187】
(比較例4)
実施例1の化粧シートにおいて、ベタインキ層用水性塗工液Bに代えて、下記配合のベタインキ層用水性塗工液Jを用いた。この水性塗工剤は、遊離イソシアネート基に結合する化合物の解離温度が180℃の水性化合物を有している。その他は実施例1と同様にして、比較例4の化粧シートを得た。
【0188】
ベタインキ層用水性塗工液J;
・水性ウレタン系白色インキ(ザ・インクテック株式会社製、オーデWKE):100部
・水分散性ブロックイソシアネート架橋剤(三井武田ケミカル株式会社製、タケネートWB730):10部
・水:10部
・イソプロピルアルコール:10部
【0189】
(密着性試験)
長さ50mmのセロハン粘着テープ(ニチバン株式会社、商品名「セロテープ(登録商標)」、産業用24mm幅)を化粧シート1の表面(表面保護層側)に貼り、室温(25℃)にて布でこすり圧着した。温度上昇したテープ表面を室温(25℃)にまで冷却し、手で一気にセロハン粘着テープを剥離した。塗膜のセロハン粘着テープへの付着の有無を目視で確認した。付着の無いものを合格として○で表し、付着のあるものを不合格として×で表した。
【0190】
(耐候性促進試験)
アイスーパーUVテスター(岩崎電気株式会社製)を用い、ブラックパネル温度63℃にて、照度60mW/cm2、光源からの距離240mm、照射スペクトル帯域295〜450mmからなる紫外線を、化粧シートの表面保護層側に5時間照射し、1時間結露するサイクル条件下で100時間試験した(以下、S−UV試験という)。その後、その化粧シートの表面保護層側の表面を目視で観察し、表面保護層等の各層間の浮き、脱落などの異常の有無を検査した。浮き、脱落のないものを合格として○で表し、浮き、脱落のあるものを不合格として×で表した。
【0191】
また、耐候性試験後の相関密着性を評価し、剥離強度が5N以上のものを合格とし、さらに詳しくは、5N以上7N未満のものを△、7N以上のものを○で表し、5N未満のものを不合格として×で表した。また、層間密着性は、ベタ層及び/又は絵柄層のインキ層用水性塗工液および水性接着剤塗工液の配合直後、3時間後、24時間後に塗工した化粧シートについても評価した。
【0192】
(剥離試験)
化粧シート1の裏面プライマー層10の側を、エチレン・酢酸ビニル共重合体エマルジョンの接着剤を用いて厚さ10mmのラワン合板に接着した。化粧シート1を積層した化粧板を幅1インチにカットして試験片を作製した。INSTRON5500引っ張り試験機を用い、25℃・引張速度100mm/分の条件下で引張試験を行った。剥離強度は、ラワン合板と化粧シートとの間の開き角180°の条件で引張試験したときの強度で評価した。剥離強度が19.6N以上のものを合格とし○で表し、19.6N未満のものを不合格として×で表した。
【0193】
(常態層間密着性試験)
化粧シート1の基材シート2と、透明樹脂層6(または透明樹脂層16)との間の開き角180°の条件で引張試験したときの強度で評価した。剥離強度が19.6N以上のものを合格とし○で表し、19.6N未満のものを不合格として×で表した。また、層間密着性は、ベタインキ層及び/又は絵柄インキ層のインキ層用水性塗工液および水性接着剤塗工液の配合直後、3時間後、24時間後に塗工した化粧シートについても評価した。
【0194】
(爪スクラッチ)
化粧シート1の表面保護層側の表面に対して爪を垂直に立てて10回強く擦り、傷がないものを合格とし○で表し、傷がついたものを不合格として×で表した。
【0195】
(評価結果)
表1には、実施例1〜8および比較例1〜4の化粧シートについて、透明樹脂層を形成する際の処理温度、すなわち、透明樹脂層を溶融押出により形成する際の処理温度またはドライラミネートで形成する際の処理温度を示した。また、その透明樹脂層上にエンボス形成する際の処理温度も示した。さらに、使用した塗工液(B、D、I)中における、遊離イソシアネート基に結合した化合物の解離温度についても示した。なお、遊離イソシアネート基に結合した化合物の解離温度の測定は、遊離イソシアネート基に結合した化合物の昇温過程における赤外スペクトルをリアルタイムに測定し、イソシアネート基に帰属される吸収ピークの発現が開始された温度により評価した。
【0196】
上記評価結果を表1に併せて示した。表1に示したように、実施例1〜8の化粧シートは、層間密着性、および耐候試験後の目視結果および層間密着性に優れていた。
【0197】
【表1】
Figure 2004291434
【0198】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の化粧シートおよびその製造方法によれば、水性塗工剤の配合工程や塗工工程での処理温度が、化合物が遊離イソシアネート基から解離し難い−5〜45℃であるので、遊離イソシアネート基に結合する化合物が水と反応するのを抑制することができ、耐熱性を低下させるウレア結合の生成を抑制することができる。その結果、成膜前の塗工剤のポットライフが長くなり安定した状態での塗工が実現できる。また、透明樹脂層の形成工程での処理温度が、化合物が遊離イソシアネート基から解離し易い65〜200℃であるので、その処理により反応性の高い遊離イソシアネート基が現れて架橋反応を促進させることができる。その結果、架橋反応が促進したより強固な層が形成され、水性塗工剤で形成される層間の密着性、および透明樹脂層と水性塗工剤で形成される層との間の密着性がより一層向上する。
【0199】
また、化粧シートを構成する全ての塗工層が溶媒系塗工剤以外の水性塗工剤もしくは無溶剤型塗工剤で形成され、特に化粧シートの最表面となる表面保護層も水性塗工剤もしくは無溶剤型塗工剤で形成されるので、作業環境におけるVOCの揮発量および化粧シート中のVOC残存量を減少させることができる。その結果、化粧シート製造時における作業環境の安全性や生活空間での環境安全性をより向上させることができる。
【0200】
また、1分子中に少なくとも2個以上のイソシアネート基を持つ水性化合物を架橋剤として含有するので、その架橋剤の作用により強固な層を形成することができ、その結果、化粧シートを構成する各層間の層間密着性を向上させることができる。
【0201】
また、本発明に係る水性塗工剤で形成した層は、室温での養生処理でも十分に架橋されるので、耐候性試験および耐水性試験後の層間密着性も優れている。また、イソシアヌレート骨格を有する水性化合物を架橋剤とすることにより、イソシアヌレート骨格が3次元的に架橋して立体的な分子構造を形成し、その結果、強固な層が形成されて基材シートと透明樹脂層との層間密着性をより一層向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の化粧シートの層構成の一例を示す断面図である。
【図2】本発明の化粧シートの層構成の他の一例を示す断面図である。
【図3】本発明の化粧シートの層構成の他の一例を示す断面図である。
【図4】本発明の化粧シートの層構成の他の一例を示す断面図である。
【図5】本発明の化粧シートの実施形態の一例を示す断面図である。
【図6】本発明の化粧シートの実施形態の他の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
1、41、51 化粧シート
2 基材シート
3 ベタインキ層
4 絵柄インキ層
5 接着剤層
6、6’、6” 透明樹脂層
7 凹凸模様
8 着色層
9 表面保護層
10 裏面プライマー層
11 インキ層
12 接着剤層
13 プライマー層
15 被着体
16 多層からなる透明樹脂層
17 凹陥部

Claims (12)

  1. 少なくとも、裏面プライマー層、基材シート、ベタインキ層及び/又は絵柄インキ層を有するインキ層、接着剤層、透明樹脂層および表面保護層がその順で積層され、
    当該インキ層及び/又は接着剤層が少なくとも1分子中に2個以上のイソシアネート基を持つ水性化合物を架橋剤として含有し、当該水性化合物が遊離イソシアネート基に化合物を結合させた化学構造を有する水性塗工剤で形成される化粧シートの製造方法であって、
    前記化合物が遊離イソシアネート基から解離し難い−5〜45℃で処理される水性塗工剤の配合工程及び/又は塗工工程、および、前記化合物が遊離イソシアネート基から解離し易い65〜200℃で処理される透明樹脂層の溶融押出形成工程、を有することを特徴とする化粧シートの製造方法。
  2. 少なくとも、裏面プライマー層、基材シート、ベタインキ層及び/又は絵柄インキ層を有するインキ層、接着剤層、透明樹脂層および表面保護層とがその順で積層され、
    当該インキ層及び/又は接着剤層が少なくとも1分子中に2個以上のイソシアネート基を持つ水性化合物を架橋剤として含有し、当該水性化合物が遊離イソシアネート基に化合物を結合させた化学構造を有する水性塗工剤で形成され、当該表面保護層が活性エネルギー線硬化性の無溶剤型塗工剤で形成される化粧シートの製造方法であって、
    前記化合物が遊離イソシアネート基から解離し難い−5〜45℃で処理される水性塗工剤の配合工程及び/又は塗工工程、および、前記化合物が遊離イソシアネート基から解離し易い65〜120℃で処理される透明樹脂層のドライラミネート工程、を有することを特徴とする化粧シートの製造方法。
  3. 前記化合物が遊離イソシアネート基から解離し易い65〜200℃で処理される透明樹脂層のエンボス形成工程をさらに備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の化粧シートの製造方法。
  4. 少なくともベタインキ層が前記水性塗工剤で形成されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の化粧シートの製造方法。
  5. 前記イソシアネート基を持つ水性化合物が、自己乳化性であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の化粧シートの製造方法。
  6. 前記イソシアネート基を持つ水性化合物が、イソシアヌレート骨格を有する水性化合物であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の化粧シートの製造方法。
  7. 前記化合物が、フェノール系、アルコール系、活性メチレン系、メルカプタン系、酸アミド系、酸イミド系、ラクタム系、イミダゾール系、尿素系、オキシム系、アミン系、ピラゾール系およびイミド系の化合物の群から、処理される工程温度により選択される1の化合物であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の化粧シートの製造方法。
  8. 前記水性塗工剤が、水性ウレタン樹脂成分を少なくとも含有する2液硬化型の塗工剤であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の化粧シートの製造方法。
  9. 少なくとも、裏面プライマー層、基材シート、ベタインキ層及び/又は絵柄インキ層を有するインキ層、接着剤層、透明樹脂層および表面保護層がその順で積層され、当該インキ層及び/又は接着剤層が少なくとも1分子中に2個以上のイソシアネート基を持つ水性化合物を架橋剤として含有し、当該水性化合物が遊離イソシアネート基に化合物を結合させた化学構造を有する水性塗工剤で形成され、かつ当該透明樹脂層が溶融押出し塗工法で形成されてなる化粧シートであって、
    前記水性塗工液は、遊離イソシアネート基に結合した化合物の解離温度が65〜200℃の範囲の水性化合物を含有することを特徴とする化粧シート。
  10. 少なくとも、裏面プライマー層、基材シート、ベタインキ層及び/又は絵柄インキ層を有するインキ層、接着剤層、透明樹脂層および表面保護層がその順で積層され、当該インキ層及び/又は接着剤層が少なくとも1分子中に2個以上のイソシアネート基を持つ水性化合物を架橋剤として含有し、当該水性化合物が遊離イソシアネート基に化合物を結合させた化学構造を有する水性塗工剤で形成されて、かつ当該透明樹脂層がドライラミネート法で形成されてなる化粧シートであって、
    前記水性塗工液は、遊離イソシアネート基に結合した化合物の解離温度が65〜120℃の範囲の水性化合物を含有することを特徴とする化粧シート。
  11. 少なくとも、裏面プライマー層、基材シート、ベタインキ層及び/又は絵柄インキ層を有するインキ層、接着剤層、透明樹脂層および表面保護層がその順で積層され、当該インキ層及び/又は接着剤層が少なくとも1分子中に2個以上のイソシアネート基を持つ水性化合物を架橋剤として含有し、当該水性化合物が遊離イソシアネート基に化合物を結合させた化学構造を有する水性塗工剤で形成され、当該表面保護層が活性エネルギー線硬化性の無溶剤型塗工剤で形成され、かつ当該透明樹脂層が溶融押出し塗工法で形成されてなる化粧シートであって、
    前記水性塗工液は、遊離イソシアネート基に結合した化合物の解離温度が65〜200℃の範囲の水性化合物を含有することを特徴とする化粧シート。
  12. 少なくとも、裏面プライマー層、基材シート、ベタインキ層及び/又は絵柄インキ層を有するインキ層、接着剤層、透明樹脂層および表面保護層がその順で積層され、当該インキ層及び/又は接着剤層が少なくとも1分子中に2個以上のイソシアネート基を持つ水性化合物を架橋剤として含有し、当該水性化合物が遊離イソシアネート基に化合物を結合させた化学構造を有する水性塗工剤で形成され、当該表面保護層が活性エネルギー線硬化性の無溶剤型塗工剤で形成され、かつ当該透明樹脂層がドライラミネート法で形成されてなる化粧シートであって、
    前記水性塗工液は、遊離イソシアネート基に結合した化合物の解離温度が65〜120℃の範囲の水性化合物を含有することを特徴とする化粧シート。
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