JP4329894B2 - 化粧シートおよび水系塗工液 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、建築物の内装、建具の表面化粧、車両の内装等に用いられる化粧シートおよび水系塗工液に関し、更に詳しくは、化粧シートに含まれる有機性揮発物質(以下、VOCという。)をより一層低減した化粧シートに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
建築物の内装、建具の表面化粧、車両の内装等に用いられる化粧シートとしては、基材、ベタ着色層および/または絵柄着色層からなる着色層、接着層および透明樹脂層を順次積層させた化粧シートが一般に知られている。
【0003】
こうした従来の化粧シートにおいては、特許文献1に記載のように、着色層(インキ層ともいわれる。)および接着層が、トルエン、キシレン等の芳香族溶剤や、メチルエチルケトンや酢酸エチル等の脂肪族溶剤を含む溶剤系塗工液により形成されている。
【0004】
ところで、そうしたトルエン、キシレン等の芳香族溶剤や、メチルエチルケトンや酢酸エチル等の脂肪族溶剤は、有機性揮発物質(以下、VOCという。)であり、近年その使用の低減が要請されている。特に、トルエン、キシレン等の芳香族溶剤は、PRTR法の指定化学物質、および、室内空気中化学物質の指針値策定物質として挙げられており、「芳香族溶剤は使用しない、その他の溶剤も使用を減少しよう。」という強い要請がある。
【0005】
特に、化粧シートの製造においては、溶剤系塗工液に含まれるVOCが揮発することによる作業環境の問題、化粧シート中に残存したVOCが一般の生活空間に供給されることによる環境安全性の問題等がある。こうした問題に対して、VOCの使用を減少させるべく種々の手段が提案されている。例えば、特許文献2には、VOC含有量を極力減少させた水系塗工液で着色層や接着層を形成した化粧シートが開示されている。
【0006】
こうした水系塗工液で着色層や接着層を形成してなる従来の化粧シートは、VOCの揮発量や残存量をより減少させることができるので、上述した環境問題を解決するのに有効である。
【特許文献1】
特開平11−198309号公報
【特許文献2】
特開2000−62970号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、現在使用されている水系塗工液の多くは、中和剤としてのアミンを含有するアニオン系水性化合物をバインダー成分としているので、そのアミンが、化粧シート中にVOCとして残留し、VOCのより一層の低減を図ることができないという問題があった。
【0008】
本発明は、上述の問題を解決すべくなされたものであって、その目的は、VOCの残存量を極力減少させて環境安全性をより向上させた化粧シートおよび水系塗工液を提供するものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決する本発明の化粧シートは、少なくとも、基材、着色層、接着層、透明樹脂層をこの順で積層した化粧シートであって、着色層および接着層が、ノニオン系水性化合物または金属塩で中和されたアニオン系水性化合物をバインダー成分として含有する水系塗工液で形成されることに特徴を有する。
【0010】
この発明によれば、ノニオン系水性化合物または金属塩で中和されたアニオン系水性化合物をバインダー成分として含有する水系塗工液を使用するので、従来のようなアミンに起因するVOCの発生がなく、化粧シートの環境安全性をより向上させることができる。
【0011】
本発明の化粧シートにおいて、基材の裏面に設けられたプライマー層と、透明樹脂層の表面に設けられた保護層とをさらに有し、プライマー層および保護層が、ノニオン系水性化合物または金属塩で中和されたアニオン系水性化合物をバインダー成分として含有する水系塗工液で形成されることに特徴を有する。
【0012】
この発明によれば、プライマー層と保護層がさらに設けられた場合であっても、それらの層を上記の水系塗工液で形成するので、アミンに起因するVOCの発生がなく、化粧シートの環境安全性をより一層向上させることができる。
【0013】
本発明の化粧シートにおいて、前記透明樹脂層の表面に設けられた保護層をさらに有し、該保護層は、無溶剤系活性エネルギー線硬化性樹脂からなることに特徴を有する。具体的には、前記保護層は、活性エネルギー線硬化性樹脂の無溶剤系塗工液を塗布し、活性エネルギー線を照射することにより活性エネルギー線硬化性樹脂が硬化されて形成される。
【0014】
上記本発明の化粧シートにおいて、前記活性エネルギー線は、電子線、または、紫外線であることが好ましい。また、上記本発明の化粧シートにおいて、前記透明樹脂層と前記保護層との間に表面プライマー層を有し、該表面プライマー層は、ノニオン系水性化合物または金属塩で中和されたアニオン系水性化合物をバインダー成分として含有する水系塗工液で形成されることが好ましい。さらに、上記本発明の化粧シートにおいて、基材の裏面に設けられたプライマー層をさらに有し、該プライマー層が、ノニオン系水性化合物または金属塩で中和されたアニオン系水性化合物をバインダー成分として含有する水系塗工液で形成されることが好ましい。
【0015】
上述した本発明の化粧シートの具体的な構成として、(1)前記透明樹脂層が溶融押出し塗工法で形成されること、(2)前記基材がポリオレフィン系エラストマーからなり、前記透明樹脂層がポリオレフィン系樹脂からなること、(3)前記透明樹脂層の表面側に凹凸模様が形成されていること、(4)前記凹凸模様の凹陥部に着色層が形成されていること、が好ましい。
【0016】
上記課題を解決する本発明の化粧シートの補修用水系塗工液は、ノニオン系水性化合物または金属塩で中和されたアニオン系水性化合物をバインダー成分として含有することに特徴を有する。
【0017】
この発明によれば、水系塗工液を化粧シートの表面等の補修に用いた場合に、従来のような溶剤に起因するVOC、および、中和剤に含有される三級アミン(トリエチルアミン等)、揮発性塩基(アンモニア等)等に起因するVOCの発生がない。そのため、化粧シートの補修作業時および補修後の化粧シートの使用時における、環境安全性をより向上させることができる。特に、建築業者等に用いられる場合のみならず、日曜大工等が盛んに行われている昨今では一般家庭で用いる場合においても、補修作業時および補修後の室内環境の悪化を防止でき、室内の安全性を向上できる。また、本発明の水系塗工液を従来の化粧シートの最表面のみに用いた場合にも、作業時および使用時における環境安全性をより向上させることができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の第1実施形態および第2実施形態の化粧シートおよび水系塗工液について、図面を参照しつつ説明する。
【0019】
(1)第1実施形態の化粧シート
図1は、本発明の第1実施形態の化粧シート1の層構成の一例を示す断面図である。図1に示す本発明の化粧シート1は、基材2、ベタ着色層3、絵柄着色層4、接着層5、透明樹脂層6、凹凸模様7、部分着色層8、保護層9が順次積層された形態である。また、基材2の裏面にはプライマー層10が形成されている。
【0020】
(基材)
基材2は、化粧シート1における必須の構成であり、下記に示す各種のオレフィン系樹脂を好ましく適用できる。例えば、(イ)ハードセグメントとしての高密度ポリエチレンまたはポリプロピレンと、ソフトセグメントとしてのエラストマーまたは無機充填剤とを有する混合物、(ロ)特開平9−111055号公報、特開平5−77371号公報、特開平7−316358号公報等に記載されているエチレン−プロピレン−ブテン共重合体、(ハ)特公平6−23278号公報に記載されているハードセグメントとしてのアイソタクチックポリプロピレンとソフトセグメントとしてのアタクチックポリプロピレンとの混合物、等を用いることができる。
【0021】
前記(イ)のハードセグメントとしての高密度ポリエチレンとしては、好ましくは、比重が0.94〜0.96のポリエチレンであって、低圧法で得られる結晶化度が高く、分子に枝分かれ構造の少ない高分子である高密度ポリエチレンが用いられる。また、ハードセグメントとしてのポリプロピレンとしては、好ましくは、アイソタクチックポリプロピレンが用いられる。
【0022】
前記(イ)のソフトセグメントとしてのエラストマーとしては、ジエン系ゴム、水素添加ジエン系ゴム、オレフィンエラストマー等が用いられる。水素添加ジエン系ゴムは、ジエン系ゴム分子の二重結合の少なくとも一部分に水素原子を付加させてなるものであり、ポリオレフィン系樹脂の結晶化を抑えて、その柔軟性を向上させたものである。ジエン系ゴムとしては、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、ブチルゴム、プロピレン・ブタジエンゴム、アクリロニトリル・ブタジエンゴム、アクリロニトリル・イソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム等が挙げられる。オレフィンエラストマーとしては、2種類または3種類以上のオレフィンと共重合しうるポリエンを少なくとも1種類加えた弾性共重合体であり、オレフィンとしてはエチレン、プロピレン、α−オレフィン等が使用され、ポリエンとしては、1,4ヘキサジエン、環状ジエン、ノルボルネン等が使用される。好ましいオレフィンエラストマーとしては、例えばエチレン−プロピレン共重合体ゴム、エチレン−プロピレン−非共役ジエンゴム、エチレン−ブタジエン共重合体ゴム等のオレフィンを主成分とする弾性共重合体が挙げられる。なお、これらのエラストマーは、必要に応じて有機過酸化物、硫黄等の架橋剤を用いて、過重架橋させてもよい。
【0023】
これらエラストマーの添加量としては、10〜60重量%、好ましくは30重量%程度である。エラストマーの添加量が10重量%未満では、一定荷重伸度の変化が急峻になり過ぎ、また、破断時伸度、耐衝撃性、易接着性の低下が生じる。エラストマーの添加量が60重量%より高いと、透明性、耐候性および耐クリープ性の低下が生ずる。
【0024】
前記(イ)の無機充填剤としては、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、クレー、タルク等の平均粒径0.1〜10μm程度の粉末が用いられる。添加量としては、1〜60重量%、好ましくは5〜30重量%である。無機充填剤の添加量が1重量%未満では、耐クリープ変形性および易接着性の低下が生じる。また、無機充填剤の添加量が60重量%を超えると、破断時伸度および耐衝撃性の低下が生じる。
【0025】
前記(ロ)のオレフィン系樹脂としては、エチレン・プロピレン・ブテン共重合体樹脂からなる熱可塑性エラストマーが用いられる。ここで、ブテンとしては、1ブテン、2ブテン、イソブチレンの3種の構造異性体のいずれも用いることができる。共重合体としては、ランダム共重合体であって、非晶質の部分を一部含む。
【0026】
上記エチレン・プロピレン・ブテン共重合体樹脂の好ましい具体例としては、次の(a)〜(c)が挙げられる。
【0027】
(a)特開平9−111055号公報に記載されるエチレン、プロピレンおよびブテンの3元共重合体によるランダム共重合体。このランダム共重合体においては、プロピレン成分の重量比率が90重量%以上であることが好ましく、メルトフローレートが、230°C、2.16kgの条件下で1〜50g/10分であることが好ましい。このようなランダム共重合体は、ランダム共重合体100重量部に対し、燐酸アリールエステル化合物を主成分とする透明造核剤を0.01〜50重量部、炭素数12〜22の脂肪酸アミドを0.003〜0.3重量部、を溶融混練してなるものである。
【0028】
(b)特開平5−77371号公報に記載されるエチレン、プロピレンおよびブテンの3元共重合体。この共重合体は、プロピレン成分の重量比率が50重量%以上の非晶質重合体20〜100重量%に、結晶質ポリプロピレンを80〜0重量%添加してなるものである。
【0029】
(c)特開平7−316358号公報に記載されるエチレン、プロピレン、1ブテンの3元共重合体。この共重合体は、プロピレンおよび/または1ブテンの含有率が50重量%以上の低結晶質重合体20〜100重量%に、アイソタクチックポリプロピレン等の結晶性ポリオレフィン80〜0重量%を混合した組成物に対して、Nアシルアミノ酸アミン塩、Nアシルアミノ酸エステル等の油ゲル化剤を0.5重量%添加したものである。
【0030】
上記(a)〜(c)のエチレン・プロピレン・ブテン共重合体樹脂は、単独で用いてもよいし、必要に応じてさらに他のポリオレフィン樹脂を混合して用いてもよい。
【0031】
前記(ハ)のオレフィン系樹脂としては、特公平6−23278号公報に記載のように、(A)ソフトセグメントとして、数平均分子量Mnが25000以上で、且つ重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比Mw/Mn≦7の沸騰ヘプタンに可溶なアタクチックポリプロピレン10〜90重量%と、(B)ハードセグメントとして、メルトインデックスが0.1〜4g/10分の沸騰ヘプタン不溶性のアイソタクチックポリプロピレン90〜10重量%との混合物からなる軟質ポリプロピレンが挙げられる。
【0032】
上記(ハ)のオレフィン系熱可塑性エラストマーの中でも、アイソタクチックポリプロピレンとアタクチックポリプロピレンの混合物からなり、且つアタクチックポリプロピレンの重量比率が5〜50重量%のものが好ましく用いられ、アタクチックポリプロピレンの重量比率が20〜40重量%のものが特に好ましく用いられる。アタクチックポリプロピレンの重量比率が5重量%未満では、エンボス加工をする際や3次元形状や凹凸形状の物品に成形加工する際に、ネッキングによる不均一なシート状基材の変形が生じたり、その結果としての皺、絵柄の歪み等が生ずる。一方、アタクチックポリプロピレンの重量比率が50重量%を超えると、シート状の基材自体が変形し易くなり、基材を印刷機に通した時に基材が変形し、着色層11の絵柄が歪んだり、多色刷の場合に見当が合わなくなる等の不良が発生しやすくなると共に、成形時においてはシートが破れ易くなる。
【0033】
基材2を形成する上述のオレフィン系樹脂中には、必要に応じて、着色剤、熱安定剤、難燃剤、紫外線吸収剤、ラジカル捕捉剤等が添加される。
【0034】
着色剤としては、チタン白、亜鉛華、べんがら、朱、群青、コバルトブルー、チタン黄、黄鉛、カーボンブラック等の無機顔料、イソインドリノン、ハンザイエローA、キナクリドン、パーマネントレッド4R、フタロシアニンブルー等の有機顔料または染料、アルミニウム、真鍮等の箔粉からなる金属顔料、二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸亜鉛等の箔粉からなる真珠光沢顔料等が用いられる。また、必要に応じて、無機充填剤を5〜60重量%の割合で添加してもよい。無機充填剤としては、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、クレー、タルク、シリカ(二酸化ケイ素)、アルミナ(酸化アルミニウム)等の粉末等が挙げられる。着色剤は、基材2に化粧シート1として必要な色彩を持たせるために添加され、透明着色と不透明(隠蔽)着色のいずれでも構わないが、一般的には被着体15を隠蔽するために不透明着色が好ましい。
【0035】
熱安定剤としては、フェノール系、サルファイト系、フェニルアルカン系、フィスファイト系、アミン系等の公知のものが使用でき、熱加工時の熱変色等の劣化の防止の向上が図られる。難燃剤は、難燃性を付与する場合に添加され、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどの粉末が用いられる。紫外線吸収剤は、樹脂により良好な耐候性(耐光性)を付与するためのものであり、ベンゾトリアソール、ベンゾフェノン、サリチル酸エステル等の有機物、または、0.2μm径以下の微粒子状の酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化チタン等の無機物が用いられる。その他に、ベンゾトリアゾール骨格にアクリロイル基またはメタクリロイル基を導入した反応型紫外線吸収剤も用いられる。なお、これらの紫外線吸収剤の添加量は、通常0.5〜10重量%程度である。ラジカル捕捉剤は、紫外線による劣化を更に防止し、耐候性を向上させるためのものであり、ビス−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ビペリジニル)セバケート、ビス−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ビペリジニル)セバケート、その他、例えば特公平4−82625号公報に開示されている化合物等のヒンダード系ラジカル捕捉剤、ビペリジニル系ラジカル捕捉剤等が使用される。
【0036】
基材2は、上述した材料を任意に選択してブレンドしたものをカレンダー加工等の常用の方法により製膜して得ることができる。基材2の厚みは50〜200μm、好ましくは100μm程度である。
【0037】
化粧シート1の表面側(透明樹脂層6側)における基材2の表面には、易接着層の塗布、コロナ放電処理、プラズマ処理、オゾン処理等の易接着処理を施すことが好ましい。易接着層(プライマー層またはアンカー層ともいう。)を構成する樹脂としては、アクリル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、塩素化ポリプロピレン、塩素化ポリエチレンが挙げられる。
【0038】
なお、上述したポリオレフィン系樹脂からなる基材2の他に、ポリエステルやビニロン等の有機樹脂等を用いた織布または不織布、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体等のビニル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル等のアクリル樹脂、ポリスチレン、アクリロニトリル・ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)、三酢酸セルロース、セロハン、ポリカーボネート等の樹脂からなるシートまたはフィルムを基材2として用いることも可能である。また、薄葉紙、クラフト紙、チタン紙、リンター紙、板紙、石膏ボード紙、上質紙、コート紙、アート紙、硫酸紙、グラシン紙、パーチメント紙、パラフィン紙等の紙、あるいは、そうした紙にポリ塩化ビニルをゾル塗工またはドライラミネートしたいわゆるビニル壁紙原反を用いることもできる。また、硝子繊維、石綿、チタン酸カリウム繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、炭素繊維等の無機質繊維からなるシートまたはフィルムを基材2として用いることも可能である。また、アルミニウム、鉄、ステンレス鋼、銅等の金属箔等を用いることもできる。さらに、こうした各基材材料を複数積層させたものを、基材2として用いることも可能である。
【0039】
(着色層)
着色層11は、化粧シート1における必須の層であり、ベタ着色層3および/または絵柄着色層4から構成される。
【0040】
ベタ着色層3は、図1に示すように、基材2の地肌の隠蔽等の目的で設けられ、通常は模様のない全ベタ状の着色層として形成される。一方、絵柄着色層4は、図形、文字、記号、色彩、それらの組み合わせ等により、木目模様、石目模様、布目模様、皮絞模様、幾何学図形等からなる模様ないし色彩を有し、ベタ着色層3上に、平面状、凹凸状、凸状(図1を参照。)の層として形成される。なお、絵柄着色層4がベタ着色層3の作用を兼ねる場合もあり、この場合には絵柄着色層4がベタ着色層3となる。こうして形成されたベタ着色層3および/または絵柄着色層4は、基材2表面の全面に設けても部分的に設けても何れでもよい。また、着色層11は、図1に示すように、基材2の表面全面に設けたベタ着色層3と、そのベタ着色層3の表面に部分的に設けた絵柄着色層4とから構成することもできる。
【0041】
着色層11は、ノニオン系水性化合物または金属塩で中和されたアニオン系水性化合物をバインダー成分として含有する水系塗工液で形成される。すなわち、ノニオン系水性化合物または金属塩で中和されたアニオン系水性化合物をバインダー成分として含有する水系塗工液を用い、基材2上に塗布し、乾燥させることによって、ベタ着色層3および/または絵柄着色層4からなる着色層11が形成される。こうした形成された着色層11は、従来のようなアミンに起因するVOCの発生がなく、化粧シートの環境安全性をより向上させることに寄与できる。
【0042】
上記の水系塗工液の基本的な構成としては、ノニオン系水性化合物または金属塩で中和されたアニオン系水性化合物をバインダー成分とし、ノニオン系水分散性イソシアネートを架橋剤とし、さらに水または水とアルコール等との混合物を溶媒として含有する。特に、ノニオン系水性化合物およびノニオン系水分散性イソシアネートを含有する水系塗工液で着色層11を形成することにより、配合後の塗工液のポットライフが長くなり、製造時の安定性が向上するという当初想定できなかった効果もあった。
【0043】
ノニオン系水性化合物は、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のエーテル基、水酸基、アミド基、メチロール基等のノニオン型の親水性基の少なくとも1種を、水溶性または水分散性を有するのに必要な量(親水性基の種類や分子量により異なるが、例えば、重量比で0.05〜30程度)導入した化合物であり、そうした化合物であればその種類は特に限定されない。例えば、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ビニル樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、セルロース系樹脂、その他の樹脂を使用することができる。また、ノニオン系水性化合物に必要に応じて、他の反応性の基(例えば、活性水素基、イソシアネート基、エポキシ基、アミノ基、カルボン酸基、アジリジン基、メチルアクリルアミドグリコレートメチルエーテル基、カルボジイミド基、ヒドラジド基、シロキ酸基、カルボニル基、ケチミン基、アセトアセテート基等)を導入し、その反応性の基を架橋反応させることにより、着色層の物性(例えば、層間密着性や、環境試験後の層間密着性)を向上させることもできる。ノニオン系水性化合物の架橋反応としては、活性水素基とイソシアネート基との反応、エポキシ基とアミンおよび/またはカルボン酸基との反応、アジリジン基とカルボン酸基との反応、メチルアクリルアミドグリコレイトメチルエーテル基とアミノ基との反応、ヒドラジド基を有する化合物とカルボニル基を有する化合物との反応、シロキ酸の自己架橋反応、ケチミン基とアセトアセテート基との反応、を挙げることができる。これらの反応のうち、活性水素基とイソシアネート基との反応が好ましい。
【0044】
金属塩で中和されたアニオン系水性化合物は、例えば、カルボン酸基、スルホン酸基、硫酸基、リン酸基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基等の酸性基を金属塩で中和したものであって、アニオン型の親水性基の少なくとも1種を、水溶性または水分散性を有するのに必要な量(親水性基の種類や分子量により異なるが、例えば、重量比で0.01〜30程度)導入した化合物であり、そうした化合物であればその種類は特に限定されない。例えば、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ビニル樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、セルロース系樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、ポリエーテル樹脂、その他の樹脂を使用することができる。金属塩としては、Li、Na、K、Mg、Ca、Cu、Fe等の塩が挙げられ、特に好ましい金属塩は、K塩、Na塩である。また、アニオン系水性化合物に必要に応じて他の反応性の基(例えば、活性水素基、イソシアネート基、エポキシ基、アミノ基、カルボン酸基、アジリジン基、メチルアクリルアミドグリコレートメチルエーテル基、カルボジイミド基、ヒドラジド基、シロキ酸基、カルボニル基、ケチミン基、アセトアセテート基等)を導入し、その反応性の基を架橋反応させることにより、着色層の物性(例えば、層間密着性や、環境試験後の層間密着性)を向上させることもできる。アニオン系水性化合物の架橋反応としては、活性水素基とイソシアネート基との反応、エポキシ基とアミンおよび/またはカルボン酸基との反応、アジリジン基とカルボン酸基との反応、メチルアクリルアミドグリコレイトメチルエーテル基とアミノ基との反応、ヒドラジド基を有する化合物とカルボニル基を有する化合物との反応、シロキ酸の自己架橋反応、ケチミン基とアセトアセテート基との反応、を挙げることができる。これらの反応のうち、活性水素基とイソシアネート基との反応が好ましい。
【0045】
ノニオン系水分散性イソシアネートの例としては、特開昭57−183753号公報、特開昭61−291613号公報、特開平5−222150号公報(米国特許第5,252,696号に対応)、特開平7−48429号公報(米国特許第5,373,050号に対応)、特開平7−113005号公報、特開平10−195172号公報、特開2001−294643号公報に記載されているノニオン型親水性基を導入した水分散性のノニオン型ポリイソシアネート化合物等を挙げることができる。こうしたノニオン型ポリイソシアネート化合物の持つ遊離イソシアネート基に、例えば、フェノール系、アルコール系、活性メチレン系、メルカプタン系、酸アミド系、酸イミド系、ラクタム系、イミダゾール系、尿素系、オキシム系、アミン系およびイミド系の化合物の群から選択される1の化合物を結合させて、水系塗工液が含有する水成分との反応を抑制(ブロック)することができる。より具体的な例としては、フェノール、クレゾール、エチルフェノール、ブチルフェノール、2−ヒドロキシピリジン、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコール、ベンジルアルコール、メタノール、エタノール、2−エチルヘキサノール、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセチルアセトン、ブチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、アセトアニリド、酢酸アミド、コハク酸イミド、マレイン酸イミド、ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタム、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、尿素、チオ尿素、エチレン尿素、ホルムアルドオキシム、アセトアルドオキシム、アセトンオキシム、メチルエチルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシム、ジフェニルアミン、アニリン、カルバゾール、エチレンイミン、ポリエチレンイミン等が挙げられる。このような水性化合物は、一般に「ブロックイソシアネート化合物」と呼ばれている。
【0046】
ノニオン系水性化合物または金属塩で中和されたアニオン系水性化合物をバインダー成分:ノニオン系水分散性イソシアネート架橋剤の配合割合は、100:0.5〜100:100、好ましくは100:10〜100:50である。
【0047】
溶媒である水は、従来より水系塗工液に使用されているグレードの工業用水が使用される。また、水とアルコール等とからなる混合溶媒を、水系塗工液の溶媒として使用することもできる。そうした混合溶媒を構成するアルコール等としては、エタノール、イソプロピルアルコール、N−プロピルアルコール等の低級アルコール、グリコール類およびそのエステル類等を挙げることができる。環境安全性の観点からは、水のみからなる溶媒または水とエタノールの混合溶媒が好ましく、水のみからなる溶媒が最も好ましい。水系塗工液の流動性の改良、非塗工剤である着色層への濡れの向上、乾燥性の調整等の目的に対しては、その目的に応じて、上述の低級アルコール、グリコール類およびそのエステル類等から、その種類と使用量が選定され決定される。本発明で使用される水系塗工液は、ベンゼン、トルエン、キシレン等の危険性の高い芳香族炭化水素系の有機性揮発物質が用いられておらず、また、その他の有機溶剤の使用も抑えているので、VOCの発生を減少させることができる。
【0048】
水とアルコール等とからなる混合溶媒においては、それらの配合割合を、水:アルコール等(例えば、イソプロピルアルコール、メタノール、エタノール、nプロピルアルコール等が挙げられる。)=40:60〜100:0の範囲で調整できる。また、水系塗工液中の溶媒の配合割合は、バインダー成分と架橋剤を100とした場合に、100〜1000の割合で配合させることが好ましい。
【0049】
上述した着色層用の水系塗工液に含有させる着色顔料としては、有機または無機系の顔料を使用することができる。例えば、黄色顔料としては、モノアゾ、ジスアゾ、ポリアゾ等のアゾ系顔料、イソインドリノン等の有機顔料、黄鉛、黄色酸化鉄、カドミウムイエロー、チタンイエロー、アンチモン黄等の無機顔料を使用することができる。また、赤色顔料としては、モノアゾ、ジスアゾ、ポリアゾ等のアゾ系顔料、キナクリドン等の有機顔料、べんがら、朱、カドミウムレッド、クロムバーミリオン等の無機顔料を使用することができる。また、青色顔料としては、フタロシアニンブルー、インダスレンブルー等の有機顔料、紺青、群青、コバルトブルー等の無機顔料を使用することができる。また、黒色顔料としては、アニリンブラック等の有機顔料、カーボンブラック等の無機顔料を使用することができる。また、白色顔料としては、二酸化チタン、亜鉛華、三酸化アンチモン等の無機顔料を使用することができる。また、シリカ等のフィラー、有機ビーズ等の体積顔料、中和剤、界面活性剤等を任意に含有させることができる。
【0050】
ベタ着色層3や絵柄着色層4に使用され着色層用塗工液は、ワックス類、分散剤、消泡剤、レベリング剤、安定剤、充填剤、潤滑剤、滑剤、その他の添加剤を任意に添加し、ミキサー等で十分に混合することにより調製される。
【0051】
ベタ着色層3や絵柄着色層4は、上述した着色層用の水系塗工液を塗工または印刷等によって設けた後、乾燥して形成される。更に詳しく説明すれば、通常、ベタ着色層3は、ベタ着色層用の本発明に係る水系塗工液を塗工または印刷した後、乾燥硬化させて形成される。また、絵柄着色層4も、絵柄着色層用の本発明に係る水系塗工液を塗工または印刷した後、乾燥硬化させて形成される。塗工方法としては、公知の各種方法、例えばロールコート、カーテンフローコート、ワイヤーバーコート、リバースコート、グラビアコート、グラビアリバースコート、エアーナイフコート、キスコート、ブレードコート、スムーズコート、コンマコート、スプレーコート、かけ流しコート、刷毛塗り等の方法を用いることがでる。また、印刷方法としては、グラビア、活版、フレキソ等の凸版印刷、平版オフセット、ダイリソ印刷等の平版印刷、シルクスクリーン等の孔版印刷、静電印刷、インキジェットプリント等の公知の各種方法を用いることができる。ベタ着色層3は、乾燥後の膜厚が0.5〜10μm程度になるように塗工または印刷され、絵柄着色層4は、乾燥後の膜厚が0(絵柄着色層を形成しない場合)〜10μm程度になるように塗工または印刷される。
【0052】
(接着層)
接着層5は、図1に示すように、着色層11と透明樹脂層6との間に設けられて、着色層11が形成された基材2と透明樹脂層6との密着性を向上させるプライマー層ないしアンカー層としての役割を有するものであり、耐久性や長期にわたる外観維持性を向上させる作用がある。こうした作用は、形成された絵柄を長期間保持することができ、極めて有効である。
【0053】
接着層5は、上述した着色層11を形成する場合と同様に、ノニオン系水性化合物または金属塩で中和されたアニオン系水性化合物をバインダー成分として含有する水系塗工液で形成される。すなわち、ノニオン系水性化合物または金属塩で中和されたアニオン系水性化合物をバインダー成分として含有する水系塗工液を用い、着色層11上に塗布し、乾燥させることによって、接着層5が形成される。こうした形成された接着層5は、従来のようなアミンに起因するVOCの発生がなく、化粧シートの環境安全性をより向上させることに寄与できる。さらに、この水系塗工液で接着層5を形成することにより、配合後の塗工液のポットライフが長くなり、製造時の安定性が向上するという当初想定できなかった効果もあった。
【0054】
上記の水系塗工液の基本的な構成としては、上述した着色層用の水系塗工液と同様に、ノニオン系水性化合物または金属塩で中和されたアニオン系水性化合物をバインダー成分とし、ノニオン系水分散性イソシアネートを架橋剤とし、さらに水または水とアルコール等との混合物を溶媒として含有する。
【0055】
ノニオン系水性化合物、金属塩で中和されたアニオン系水性化合物、ノニオン系水分散性イソシアネート、水溶媒等の具体例は、上述した着色層用の水系塗工液と同じものを挙げることができ、最終的な接着特性を考慮して選択される。
【0056】
接着層用塗工液におけるノニオン系水性化合物または金属塩で中和されたアニオン系水性化合物をバインダー成分:ノニオン系水分散性イソシアネート架橋剤の配合割合は、100:0.5〜100:100、好ましくは100:5〜100:50である。また、水とアルコール等とからなる混合溶媒におけるそれらの配合割合も、上述した着色層用の水系塗工液と同じであり、水:アルコール等(例えば、イソプロピルアルコール、メタノール、エタノール、nプロピルアルコール等が挙げられる。)=40:60〜100:0の範囲で調整できる。また、水系塗工液中の溶媒の配合割合は、バインダー成分と架橋剤を100とした場合に、100〜900の割合で配合させることが好ましい。
【0057】
接着層用塗工液には、必要に応じて、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、消泡剤、レベリング剤、可塑剤、滑剤、帯電防止剤、難燃剤、充填剤、粘度調整剤等の従来公知の各種添加剤を任意に添加してもよい。
【0058】
接着層5は、上述した接着層用塗工液を、着色層11上に塗工または印刷等によって設けた後、乾燥させて形成される。塗工方法としては、公知の各種方法、例えばロールコート、カーテンフローコート、ワイヤーバーコート、リバースコート、グラビアコート、グラビアリバースコート、エアーナイフコート、キスコート、ブレードコート、スムーズコート、コンマコート、スプレーコート、かけ流しコート、刷毛塗り等の方法を用いることができ、乾燥後の膜厚が0.5〜20μm程度、好ましくは1〜5μm程度になるように塗工される。
【0059】
(透明樹脂層)
透明樹脂層6は、トップ樹脂層ともいわれ、着色層11を擦り傷等から保護したり、化粧シート1の表面強度を向上させたり、塗装感を付与すること等を目的として、接着層5を介して着色層11上に積層される。
【0060】
透明樹脂層6を構成する樹脂としては、上述した接着層5を介して着色層11上に密着よく形成される透明な樹脂であれば特に限定されるものではないが、例えば、透明ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂が好ましく挙げられる。透明樹脂層用の樹脂として使用できるオレフィン樹脂以外の樹脂としては、上述の基材2に使用される樹脂材料と同じものを使用することができる。こうした透明樹脂層6を形成する樹脂には、必要に応じて、着色剤、充填剤、紫外線吸収剤、光安定剤、マット剤等の公知の添加剤が添加される。
【0061】
透明樹脂層6は、接着層5上に、別個に形成された透明樹脂シートを積層して形成されたり、溶融押出し塗工法により成膜されたり、その他公知の方法で積層される。
【0062】
また、図2に示すように、透明樹脂層6を2層以上の複層構造にしてもよい。2層以上積層させてなる透明樹脂層16は、基材2側の透明樹脂層6’と保護層側の透明樹脂層6”とに異なる作用効果を持たせることができる点で有利である。一の具体例として、保護層側の透明樹脂層6”については、フッ化ビニリデン等のフッ素系樹脂を主成分とした樹脂で形成して優れた耐汚染性等の表面機能を付与し、基材側の透明樹脂層6’については、熱可塑性アクリル樹脂等で形成し、接着層5との間の密着性等を向上させることができる。また、他の具体例として、保護層側の透明樹脂層6”については、耐候剤を添加したポリプロピレン系樹脂で形成して優れた耐候性を付与し、基材側の透明樹脂層6’については、エラストマーを含有したポリプロピレン系樹脂で形成して耐候性と密着性を向上させることができる。
【0063】
2層以上の透明樹脂層16は、複数の樹脂組成物を溶融共押出しして形成されたり、ドライラミネーションや熱ラミネーション等の各種のラミネート法で形成される。このとき、図3に示すように、プライマー層またはアンカー層として作用する接着層12を介して2以上の層からなる透明樹脂層16を形成することもできる。なお、この場合における接着層12は、透明樹脂層6’、6”と共に溶融共押出しして形成されたり、水性ウレタン樹脂を含有する水系塗工液で塗布されて形成される。その場合には、VOCの発生をより一層抑制することができる。
【0064】
透明樹脂層6の厚さは、20〜300μm程度であり、塗工液で形成される場合には、15〜400g/m2程度の塗布量で塗工する。
【0065】
(凹凸模様)
凹凸模様7は、エンボス模様ともいわれ、図1に示すように、必要に応じて上述の透明樹脂層6の表面に形成される。また、図2および図3に示すように2層以上の透明樹脂層16を形成した場合には、凹凸模様7を最表面の透明樹脂層に形成したり、最表面以外の透明樹脂層に形成したりすることができる。
【0066】
凹凸模様7は、特に限定されず、化粧シート1の用途に応じた模様であればよい。例えば、木目導管溝、木目年輪凹凸、浮造年輪凹凸、木肌凹凸、砂目、梨地、ヘアライン、万線状溝、花崗岩の劈開面等の石材表面凹凸、布目の表面テクスチュア、皮絞、文字、幾何学模様等の模様が挙げられる。
【0067】
凹凸模様7を形成する手段としては、例えば、加熱加圧によるエンボス加工法やTダイ溶融押出し法が挙げられる。加熱加圧によるエンボス加工法は、透明樹脂層6の表面を加熱軟化させ、その表面をエンボス版で加圧してエンボス版の凹凸模様7を賦形し、冷却して固定化する方法であり、公知の枚葉式または輪転式のエンボス機が用いられる。エンボス加工法で凹凸模様を形成する場合には、ラミネート加工により積層する前の透明樹脂層用シートに予めエンボス加工したり、透明樹脂層用シートを積層すると同時に(いわゆるダブリングエンボス法)エンボス加工をする。また、Tダイ溶融押出し法で透明樹脂層6を積層する場合には、賦形ローラを兼用させた冷却ローラを使用し、透明樹脂層6の成膜・積層と同時に凹凸模様7を形成する。また、ヘアライン加工、サンドブラスト加工等によってもエンボス模様を形成することができる。
【0068】
(部分着色層)
部分着色層8は、凹凸模様7の凹陥部17にワイピング法により形成される。ワイピング法は、ドクターブレードコート法またはナイフコート法で凹陥部17を含む表面全面に部分着色層用の塗工液を塗布した後、凹陥部17以外の表面から部分着色層用の塗工液を除去することにより、凹陥部17のみに部分着色層8を形成する方法である。部分着色層用の塗工液としては、有機顔料、無機顔料、光輝性顔料等の着色顔料と、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化型樹脂等のバインダー樹脂とからなる塗工液や、エマルジョン型の水系塗工液等を使用できる。
【0069】
また、上述のベタ着色層3および/または絵柄着色層4を形成する水系塗工液を好ましく用いることもでき、そうした場合には、環境安全性の点でより好ましい。
【0070】
(保護層)
保護層9は、トップコート層またはオーバープリント層(OP層)ともいわれ、凹凸模様7を形成する凹陥部17やその凹陥部17に形成された部分着色層8の表面を被って、化粧シート1の耐擦傷性や耐汚染性等の物性向上を目的として設けられるものである。
【0071】
保護層9は、一般には熱硬化樹脂や電離放射線硬化型樹脂が使用されるが、本実施形態においては、上述した着色層11を形成する場合と同様に、ノニオン系水性化合物または金属塩で中和されたアニオン系水性化合物をバインダー成分として含有する水系塗工液で形成される。すなわち、ノニオン系水性化合物または金属塩で中和されたアニオン系水性化合物をバインダー成分として含有する水系塗工液を用い、凹凸模様7が形成された透明樹脂層6上に塗布し、乾燥させることによって、保護層9が形成される。こうした形成された保護層9は、従来のようなアミンに起因するVOCの発生がなく、化粧シートの環境安全性をより向上させることに寄与できる。さらに、この水系塗工液で保護層9を形成することにより、配合後の塗工液のポットライフが長くなり、製造時の安定性が向上するという当初想定できなかった効果もあった。
【0072】
上記の水系塗工液の基本的な構成としては、上述した着色層用の水系塗工液と同様に、ノニオン系水性化合物または金属塩で中和されたアニオン系水性化合物をバインダー成分とし、ノニオン系水分散性イソシアネートを架橋剤とし、さらに水または水とアルコール等との混合物を溶媒として含有する。
【0073】
ノニオン系水性化合物、金属塩で中和されたアニオン系水性化合物、ノニオン系水分散性イソシアネート、水溶媒等の具体例は、上述した着色層用の水系塗工液と同じものを挙げることができ、最終的には耐擦傷性や耐汚染性等の物性を考慮して選択される。
【0074】
保護層用塗工液におけるノニオン系水性化合物または金属塩で中和されたアニオン系水性化合物をバインダー成分:ノニオン系水分散性イソシアネート架橋剤の配合割合は、100:5〜100:100、好ましくは100:10〜100:50である。また、水とアルコール等とからなる混合溶媒におけるそれらの配合割合も、上述した着色層用の水系塗工液と同じであり、水:アルコール等(例えば、イソプロピルアルコール、メタノール、エタノール、nプロピルアルコール等が挙げられる。)=40:60〜100:0の範囲で調整できる。また、水系塗工液中の溶媒の配合割合は、バインダー成分と架橋剤を100とした場合に、100〜900の割合で配合させることが好ましい。
【0075】
保護層用塗工液には、着色剤、分散剤、消泡剤、レベリング剤、安定剤、充填剤、潤滑剤、滑剤、その他の添加剤を任意に添加してもよい。
【0076】
保護層9は、耐擦傷性等の表面物性の向上させるために設けられるほか、シリカ等の公知の艶消し剤を塗工液に添加することにより艶調整したものとしたり、塗装感等の意匠性を付与させたものとすることができる。また、保護層9に、より良好な耐候性または耐光性を付与するために、必要に応じて紫外線吸収剤、光安定剤を添加した塗工液を用いて、その層を形成することができる。
【0077】
保護層9は、上述した本発明に係る水系塗工液を、グラビアコート法、リバースロールコート法、ナイフコート法、キスコート法、その他塗工法等で塗工形成して形成される。また、グラビア印刷、シルクスクリーン印刷等の公知の印刷法で形成される。形成された保護層9の厚みは3〜40μm程度が好ましく、10〜30μmがより好ましい。
【0078】
(プライマー層)
プライマー層10は、本発明の化粧シート1を各種の被着体15に接着させ易くすることを目的として、基材2の裏面側に形成される。
【0079】
プライマー層10は、一般には、アクリル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル、ポリウレタン、塩素化ポリプロピレン、塩素化ポリエチレン等が使用されるが、本発明においては、上述した着色層11等を形成する場合と同様に、ノニオン系水性化合物または金属塩で中和されたアニオン系水性化合物をバインダー成分として含有する水系塗工液で形成される。すなわち、ノニオン系水性化合物または金属塩で中和されたアニオン系水性化合物をバインダー成分として含有する水系塗工液を用い、基材2の裏面上に塗布し、乾燥させることによって、プライマー層10が形成される。こうした形成されたプライマー層10は、化粧シートの環境安全性をより向上させることに寄与できる。さらに、この水系塗工液でプライマー層10を形成することにより、配合後の塗工液のポットライフが長くなり、製造時の安定性が向上するという当初想定できなかった効果もあった。
【0080】
上記の水系塗工液の基本的な構成としては、上述した着色層用の水系塗工液と同様に、ノニオン系水性化合物または金属塩で中和されたアニオン系水性化合物をバインダー成分とし、ノニオン系水分散性イソシアネートを架橋剤とし、さらに水または水とアルコール等との混合物を溶媒として含有する。
【0081】
ノニオン系水性化合物、金属塩で中和されたアニオン系水性化合物、ノニオン系水分散性イソシアネート、水溶媒等の具体例は、上述した着色層用の水系塗工液と同じものを挙げることができ、最終的には各種の被着体15への易接着特性を考慮して選択される。
【0082】
プライマー層用塗工液におけるノニオン系水性化合物または金属塩で中和されたアニオン系水性化合物をバインダー成分:ノニオン系水分散性イソシアネート架橋剤の配合割合は、100:0.5〜100:100、好ましくは100:5〜100:50である。また、水とアルコール等とからなる混合溶媒におけるそれらの配合割合も、上述した着色層用の水系塗工液と同じであり、水:アルコール等(例えば、イソプロピルアルコール、メタノール、エタノール、nプロピルアルコール等が挙げられる。)=40:60〜100:0の範囲で調整できる。また、水系塗工液中の溶媒の配合割合は、バインダー成分と架橋剤を100とした場合に、100〜900の割合で配合させることが好ましい。
【0083】
(化粧シート)
上述の構成を有する本発明の化粧シート1は、他の被着体15(裏打材)に積層して用いられる。
【0084】
被着体15としては、図4に示すような立体形状物品41や、図5に示すような平板状、曲面状等の板材51、シート(或いはフィルム)等の各種形状の物品が対象となる。こうした被着体15としては、木材単板、木材合板、パーティクルボード、中密度繊維板(MDF)等の木材板、木質繊維板等の木質板、鉄、アルミニウム等の金属、アクリル、ポリエステル、ポリスチレン、ポリオレフィン、ABS樹脂、フェノール樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、セルロース系樹脂、ゴム等の樹脂、硝子、陶磁器等のセラミックス、石膏等の非セメント窯業系材料、上質紙、和紙等の紙、炭素、石綿、チタン酸カリウム、硝子、合成樹脂等の繊維からなる不織布または織布、等々が挙げられる。
【0085】
化粧シート1と被着体15との関係において、化粧シート1の基材2の種類またはプライマー層10の有無により、被着体15にそのまま熱融着等で接着できる場合には、化粧シート1と被着体15とを接着剤を用いずに積層させることができるが、化粧シート1の基材2またはプライマー層10の種類により、被着体15にそのまま熱融着等で接着できない場合には、適当な接着剤を用いて積層させる。なお、接着剤としては、酢ビ系、尿素系等の接着剤が挙げられる。
【0086】
また、一般的な積層方法としては、例えば、(a)接着剤を介して被着体15に加圧ローラで加圧して積層する方法、(b)特公昭50−19132号公報、特公昭43−27488号公報等に記載のように、化粧シート1を射出成形の雌雄両金型間に挿入して、両金型を閉じ、雄型のゲートから溶融樹脂を射出充填した後、冷却して樹脂成型品の成形と同時にその表面に化粧シート1を接着積層する射出成形同時ラミネート方法、(c)特公昭56−45768号公報、特公昭60−58014号公報等に記載のように、接着剤を介して成形品の表面に化粧シート1を対向させ、成形品側からの真空吸引による圧力差により化粧シート1を成形品表面に積層する真空プレス積層方法、(d)特公昭61−5895号公報、特公平3−2666号公報等に記載のように、円柱、多角柱等の柱状被着体の長軸方向に、接着剤を介して化粧シート1を供給しつつ、複数の向きの異なるローラにより、柱状被着体を構成する複数の側面に順次化粧シート1を加圧接着して積層してゆくラッピング加工方法等が挙げられる。
【0087】
本発明の化粧シート1を積層した各種の被着体15は、所定の成形加工等を施して、各種装飾用素材等として用いられる。例えば、壁、天井、床等建築物の内装、窓枠、扉、手摺等の建具の表面化粧、家具または弱電・OA機器のキャビネットの表面化粧、自動車、電車等の車輌内装、航空機内装、窓硝子の化粧用等の用途が挙げられる。
【0088】
(2)第2実施形態の化粧シート
図6は、本発明の第2実施形態の化粧シート1’の層構成の一例を示す断面図である。図6に示す本発明の第2実施態様の化粧シート1’は、基材2、ベタ着色層3、絵柄着色層4、接着層5、透明樹脂層6、凹凸模様7、部分着色層8、表面プライマー層13、保護層9’が順次積層された形態である。また、基材2の裏面にはプライマー層10が形成されている。このうち、基材2、ベタ着色層3、絵柄着色層4、接着層5、透明樹脂層6、凹凸模様7、部分着色層8、プライマー層10は、第1実施形態の化粧シート1におけるものと同様である。また、第2実施形態の化粧シート1’は、第1実施形態の化粧シート1と同様に、他の被着体15(裏打材)に積層して用いられる。
【0089】
こうした第2実施形態の化粧シート1’は、化粧シートから放散されるVOC(溶剤に起因するもの、中和剤に含まれる三級アミン、揮発性塩基等に起因するもの等)を低減させることができる。そのため、化粧シート作製時の作業環境、作製された化粧シートが用いられる室内の環境のVOCによる悪化が防止され、安全性が向上する。
【0090】
(第2実施形態の保護層)
第2実施形態の保護層9’は、第1実施形態における保護層9と同様の役割を果たす。
【0091】
保護層9’は、無溶剤系活性エネルギー線硬化性樹脂からなる。すなわち、保護層9’は、活性エネルギー線硬化性樹脂の無溶剤系塗工液を透明樹脂層6上に塗布し、活性エネルギー線を照射することにより活性エネルギー線硬化性樹脂が硬化されて形成されたものである。保護層9’が、こうした無溶剤系活性エネルギー線硬化性樹脂で形成されることにより、耐擦傷性や耐汚染性等の表面物性を向上させることができる。
【0092】
こうした活性エネルギー線硬化性樹脂を含む保護層9’用の無溶剤系塗工液は、基本的な構成としては、分子中に(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基等のラジカル重合性不飽和基、またはエポキシ基等のカチオン重合性官能基を有する単量体、プレポリマーまたはポリマーからなる活性エネルギー線硬化性樹脂を用いられる。これらの単量体、プレポリマーおよびポリマーは、一種類で、あるいは複数種混合して用いられる。
【0093】
保護層用の無溶剤系塗工液は、必要に応じて、酸化防止剤、ワックス類、分散剤、消泡剤、レベリング剤、安定剤、潤滑剤、充填剤、滑剤、粘度調整剤、マット剤、難燃剤、その他の添加剤を任意に添加することができる。また、より良好な耐候性または、耐光性を付与するために、必要に応じて、紫外線吸収剤、光安定剤を添加することができる。そうした紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール、ベンゾフェノン、サリチル酸エステル等の有機物、または、0.2μm径以下の微粒子状の酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化チタン等の無機物を用いることができる。光安定剤としては、ビス−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート等のヒンダードアミン系ラジカル捕集剤等を用いることができる。これらの紫外線吸収剤、光安定剤とも、通常、0.5〜10重量%程度となるように添加する。一般的には、紫外線吸収剤と光安定剤を併用することが好ましい。
【0094】
上記の活性エネルギー線硬化性樹脂は、電子線を照射すれば十分に硬化する。一方、紫外線を照射して硬化させる場合には、活性エネルギー線硬化性樹脂には、増感剤として光重合開始剤を添加する。光重合開始剤の添加量は一般に、電離放射線硬化性樹脂100重量部に対して、0.1〜10重量部程度である。
【0095】
保護層9用の無溶剤系塗工液は、上述の活性エネルギー線硬化性樹脂に、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、ワックス類、分散剤、消泡剤、レベリング剤、安定剤、潤滑剤、充填剤、滑剤、粘度調整剤、マット剤、難燃剤、その他の添加剤を任意に添加し、分散機を用いて分散し、またはミキサー等で十分に混合することにより調整される。
【0096】
保護層9’は、上述した保護層用の無溶剤系塗工液を塗工または印刷等によって設けた後、乾燥し、活性エネルギー線により硬化して形成される。塗工方法としては、公知の各種方法、例えばバーコート、ロールコート、カーテンフローコート、ワイヤーバーコート、リバースコート、グラビアコート、グラビアリバースコート、エアーナイフコート、キスコート、ブレードコート、スムーズコート、コンマコート、スプレーコート、かけ流しコート、刷毛塗り等の方法を用いることがでる。また、印刷方法としては、グラビア、活版、フレキソ等の凸版印刷、平版オフセット、ダイリソ印刷等の平版印刷、シルクスクリーン等の孔版印刷、静電印刷、インキジェットプリント等の公知の各種方法を用いることができる。この塗工・印刷時における温度は、各種方法および無溶剤系塗工液の種類により特定されるが、通常、室温から70℃程度である。
【0097】
保護層9’は、乾燥後の膜厚が0.5〜20μm程度、好ましくは3〜7μmになるように塗工または印刷される。
【0098】
活性エネルギー線は、電磁波または荷電粒子線のうち、分子を重合、架橋しうるエネルギー量子を有するものを意味し、可視光線、紫外線(近紫外線、真空紫外線等を含む。)、X線、電子線、イオン線等がある、通常は紫外線や電子線が用いられる。
【0099】
電子線源としては、コックロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、あるいは、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器を用い、80〜1000keV、好ましくは100〜300keVのエネルギーをもつ電子を照射するものを使用できる。また、電子線の照射線量は、通常0.5〜10Mrad、好ましくは1〜5Mradである。電子線と共に赤外線、遠赤外線、近赤外線、熱風、高周波加熱による熱の併用も可能である。
【0100】
また、紫外線源としては、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク灯、ブラックライト蛍光灯、メタルハライドランプ灯、ガリウム灯、キセノン灯、太陽光等の光源が使用できる。紫外線の波長としては、通常、1900〜3800オングストロームの波長域が主として用いられる。こうした光源を用い、紫外線の照射量を10〜5000mJ/cm2程度、好ましくは100〜2000mJ/cm2程度とする。紫外線と共に、赤外線、遠赤外線、近赤外線、熱風高周波加熱による熱の併用も可能である。
【0101】
(表面プライマー層)
表面プライマー層13は、透明樹脂層6と保護層9’の間に介在し、保護層9’を樹脂層6に密着させ、保護層9’に化粧シート1’への追従性を向上させる役割を果たす。その結果、保護層9’の透明樹脂層6への密着性を向上させることができる。
【0102】
表面プライマー層13は、上述した着色層11等を形成する場合と同様に、ノニオン系水性化合物または金属塩で中和されたアニオン系水性化合物をバインダー成分として含有する水系塗工液で形成される。すなわち、ノニオン系水性化合物または金属塩で中和されたアニオン系水性化合物をバインダー成分として含有する水系塗工液を用い、透明樹脂層6上に塗布し、乾燥させることによって、表面プライマー層13が形成される。なお、透明樹脂層6と表面プライマー層13との間に上述の凹凸模様7、部分着色層8等を有していてもよい。こうして形成された表面プライマー層13は、化粧シートの環境安全性をより向上させることに寄与できる。
【0103】
表面プライマー層13用の水系塗工液の基本的な構成としては、上述した着色層11用の水系塗工液と同様に、ノニオン系水性化合物または金属塩で中和されたアニオン系水性化合物をバインダー成分とし、水または水とアルコール等との混合物を溶媒として含有する。
【0104】
ノニオン系水性化合物、金属塩で中和されたアニオン系水性化合物、水溶媒等の具体例は、上述した着色層11用の水性塗工液と同じものを挙げることができ、最終的には透明樹脂層6と保護層9’との接着特性を考慮して選択される。また、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、ワックス類、分散剤、消泡剤、レベリング剤、安定剤、潤滑剤、充填剤、滑剤、粘度調整剤、マット剤、難燃剤、その他の添加剤を任意に添加してもよい。
【0105】
また、必要に応じてさらに架橋剤を添加した2液タイプの水性塗工液を用いてもよい。架橋剤の具体例としては、着色層11用の水性塗工液と同じものを挙げることができ、最終的には透明樹脂層6と保護層9’との接着特性を考慮して選択される。そのうちノニオン系水分散イソシアネート化合物が好ましく用いられる。
【0106】
表面プライマー層用塗工液における、ノニオン系水性化合物または金属塩で中和されたアニオン系水性化合物(バインダー成分):ノニオン系水分散性イソシアネート(架橋剤)の配合割合は、100:5〜100:100、好ましくは100:15〜100:50である。また、水とアルコール等とからなる混合溶媒におけるそれらの配合割合は、水:アルコール等=40:60〜100:0の範囲で調整できる。また、水系塗工液中の溶媒の配合割合は、バインダー成分と架橋剤を100とした場合に、100〜1000の割合で配合させることが好ましい。
【0107】
こうした表面プライマー層13用の水系塗工液を用い、着色層11等と同様の方法で、透明樹脂層6上に塗布、印刷し、乾燥させることにより、表面プライマー層13が形成される。表面プライマー層13の膜厚は、特に限定されないが、通常、0.05〜3.0μm程度である。
【0108】
(3)水系塗工液
本発明の化粧シートの補修用水系塗工液について説明する。
【0109】
本発明の化粧シートの補修用水系塗工液は、ノニオン系水性化合物または金属塩で中和されたアニオン系水性化合物をバインダー成分として含有する。この水系塗工液は、具体的な構成として、バインダー成分としてノニオン系水性化合物または金属塩で中和されたアニオン系水性化合物、架橋剤としてノニオン系水性架橋剤または金属塩で中和されたアニオン系水性架橋剤、溶媒として水または水とアルコール類の混合物を含有する。また、この水系塗工液には、必要に応じて、他の添加剤を添加することができる。
【0110】
ノニオン系水性化合物は、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のエーテル基、水酸基、アミド基、メチロール基等のノニオン型の親水性基の少なくとも1種を、水溶性または水分散性を有するのに必要な量(親水性基の種類や分子量により異なるが、例えば、重量比で0.05〜30程度)導入した化合物であり、そうした化合物であればその種類は特に限定されない。例えば、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ビニル樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、セルロース系樹脂、その他の樹脂を使用することができる。また、ノニオン系水性化合物に必要に応じて、他の反応性の基(例えば、活性水素基、イソシアネート基、エポキシ基、アミノ基、カルボン酸基、アジリジン基、メチルアクリルアミドグリコレートメチルエーテル基、カルボジイミド基、ヒドラジド基、シロキ酸基、カルボニル基、ケチミン基、アセトアセテート基等)を導入し、その反応性の基を架橋反応させることにより、水系塗工液により形成された表面保護層の物性(例えば、耐汚染性や耐候性)を向上させることもできる。ノニオン系水性化合物の架橋反応としては、活性水素基とイソシアネート基との反応、エポキシ基とアミンおよび/またはカルボン酸基との反応、アジリジン基とカルボン酸基との反応、メチルアクリルアミドグリコレイトメチルエーテル基とアミノ基との反応、ヒドラジド基を有する化合物とカルボニル基を有する化合物との反応、シロキ酸の自己架橋反応、ケチミン基とアセトアセテート基との反応、を挙げることができる。これらの反応のうち、活性水素基とイソシアネート基との反応が好ましい。
【0111】
金属塩で中和されたアニオン系水性化合物は、例えば、カルボン酸基、スルホン酸基、硫酸基、リン酸基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基等の酸性基を金属塩で中和したものであって、アニオン型の親水性基の少なくとも1種を、水溶性または水分散性を有するのに必要な量(親水性基の種類や分子量により異なるが、例えば、重量比で0.01〜30程度)導入した化合物であり、そうした化合物であればその種類は特に限定されない。例えば、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ビニル樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、セルロース系樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、ポリエーテル樹脂、その他の樹脂を使用することができる。金属塩としては、Li、Na、K、Mg、Ca、Cu、Fe等の塩が挙げられ、特に好ましい金属塩は、K塩、Na塩である。また、アニオン系水性化合物に必要に応じて他の反応性の基(例えば、活性水素基、イソシアネート基、エポキシ基、アミノ基、カルボン酸基、アジリジン基、メチルアクリルアミドグリコレートメチルエーテル基、カルボジイミド基、ヒドラジド基、シロキ酸基、カルボニル基、ケチミン基、アセトアセテート基等)を導入し、その反応性の基を架橋反応させることにより、着色層の物性(例えば、層間密着性や、環境試験後の層間密着性)を向上させることもできる。アニオン系水性化合物の架橋反応としては、活性水素基とイソシアネート基との反応、エポキシ基とアミンおよび/またはカルボン酸基との反応、アジリジン基とカルボン酸基との反応、メチルアクリルアミドグリコレイトメチルエーテル基とアミノ基との反応、ヒドラジド基を有する化合物とカルボニル基を有する化合物との反応、シロキ酸の自己架橋反応、ケチミン基とアセトアセテート基との反応、を挙げることができる。これらの反応のうち、活性水素基とイソシアネート基との反応が好ましい。
【0112】
ノニオン系水分散性イソシアネートの例としては、特開昭57−183753号公報、特開昭61−291613号公報、特開平5−222150号公報(米国特許第5,252,696号に対応)、特開平7−48429号公報(米国特許第5,373,050号に対応)、特開平7−113005号公報、特開平10−195172号公報、特開2001−294643号公報に記載されているノニオン型親水性基を導入した水分散性のノニオン型ポリイソシアネート化合物等を挙げることができる。
【0113】
本発明の化粧シートの補修用水系塗工液とする場合には、特に、バインダー成分として、ポリウレタン樹脂、ポリアクリル樹脂等を用いることが好ましい。また、架橋剤として、ノニオン系水分散イソシアネート化合物を用いることが好ましい。その他の添加剤として、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤等を用いることが好ましい。
【0114】
ノニオン系水性化合物または金属塩で中和されたアニオン系水性化合物(バインダー成分):ノニオン系水分散性イソシアネート架橋剤、の配合割合は、100:2〜100:100、好ましくは100:5〜100:50である。
【0115】
溶媒である水は、従来より水系塗工液に使用されているグレードの工業用水が使用される。また、水とアルコール等とからなる混合溶媒を、水系塗工液の溶媒として使用することもできる。そうした混合溶媒を構成するアルコール等としては、エタノール、イソプロピルアルコール、N−プロピルアルコール等の低級アルコール、グリコール類およびそのエステル類等を挙げることができる。環境安全性の観点からは、水のみからなる溶媒または水とエタノールの混合溶媒が好ましく、水のみからなる溶媒が最も好ましい。水系塗工液の流動性の改良、非塗工材への濡れの向上、乾燥性の調整等の目的に対しては、その目的に応じて、上述の低級アルコール、グリコール類およびそのエステル類等から、その種類と使用量が選定され決定される。本発明の水系塗工液は、ベンゼン、トルエン、キシレン等の危険性の高い芳香族炭化水素系の有機性揮発物質が用いられておらず、また、その他の有機溶剤、従来の水系塗工液に用いられていた三級アミン、揮発性塩基を含む中和剤の使用も抑えているので、塗工時および塗工後のVOCの発生を減少させることができる。
【0116】
水とアルコール等とからなる混合溶媒においては、それらの配合割合を、水:アルコール等=40:60〜100:0の範囲で調整できる。また、水系塗工液中の溶媒の配合割合は、バインダー成分と架橋剤の合計を100とした場合に、100〜1000の割合で配合させることが好ましい。
【0117】
上述の水系塗工液には、必要に応じて、着色剤、ワックス類、分散剤、消泡剤、レベリング剤、安定剤、充填剤、潤滑剤、滑剤、その他の添加剤を任意に添加することができる。この水系塗工液は、バインダー成分、架橋剤、溶媒、任意の添加剤をミキサー等で十分に混合することにより調製される。
【0118】
本発明の水系塗工液は、公知の各種の塗工方法、印刷方法等に使用できるほか、刷毛等に含ませて手作業で壁等のコーティング、塗装をすることにも使用できる。
【0119】
本発明の水系塗工液は、既存の化粧シートの表面の傷等を補修するために用いられる。既存の化粧シートは、上述の本発明の化粧シートのように、水系塗工液で形成されたものや、無溶剤系塗工液により形成されたものだけでなく、溶剤系塗工液により形成されたものであってもよい。
【0120】
本発明の水系塗工液がこのように用いられることにより、室内で化粧シートの補修作業を行っても、従来のようなアミン等に起因するVOCの発生がないため、その室内作業環境の悪化を防止できる。こうした水系塗工液は、日曜大工等が盛んに行われている昨今において特に有用である。また、溶剤系塗工液により形成された従来の化粧シートを、本発明の補修用水系塗工液で補修することにより、化粧シートの最表面からのVOCの放散を低減することができる。
【0121】
また、本発明の水系塗工液は、従来の溶剤系塗工液を用いて作製された化粧シートの最表面の形成にも用いられる。最表面が溶剤系塗工液による層ではないため、VOCの放散を低減させることができ、化粧シート作製の作業環境および、作製された化粧シートを用いた室内の環境の安全性を高めることができる。
【0122】
なお、この水系塗工液は、化粧シートを構成する各層の形成に使用したり、化粧シートの最表面層の形成に使用できる。この水系塗工液は、上述の本発明の化粧シートにおける、ベタ着色層3、絵柄着色層4、接着層5、部分着色層8、表面プライマー層13、保護層9、プライマー層10の形成にも使用できる。
【0123】
このことにより、従来のようなアミンに起因するVOCの発生がなく、化粧シート作製の作業時の環境の安全性をより向上させることができ、また、この化粧シートを使用した室内環境の安全性も向上させることができる。
【0124】
また、ノニオン系水性化合物およびノニオン系水分散性イソシアネートを含有する化粧シートの補修用水系塗工液は、配合後の塗工液のポットライフが長くなり、製造時の安定性が向上したものである。
【0125】
【実施例】
以下に、実施例と比較例を挙げて、本発明について更に詳しく説明する。以下において、部とは重量部のことである。
【0126】
(実施例1)
基材2として三菱化学MKV株式会社製のポリプロピレン系エラストマー着色シートPB013(厚み60μm)を用い、その上にコロナ放電処理を施した後、線数54線/インチ、版深40μmのグラビア版を用いて下記配合のベタ着色層用の水系塗工液A、絵柄着色層用の水系塗工液Bを順次グラビア印刷法にて塗布・乾燥し、約3μmのベタ着色層3および約3μmの絵柄着色層4を順次形成した。
【0127】
さらにその上に、線数54線/インチ、版深40μmのグラビア版を用いて下記配合の接着層用の水系塗工液Cをグラビア印刷法で、約3g/m2 となるように塗布・乾燥し、乾燥後厚さ約3μmの接着層5を形成した。
【0128】
さらにその接着層5上に、三菱化学MKV株式会社製の透明ポリプロピレンフィルム「PE002C」(厚さ100μm)をドライラミネート方式で積層して透明樹脂層6を形成した。次に、その積層シートの表面にエンボス加工により凹凸模様7を形成し、さらにその上に、線数54線/インチ、版深40μmのグラビア版を用いて、下記配合の保護層用の水系塗工液Dをグラビア印刷法にて塗布・乾燥し、約5μmの保護層9を形成した。その後、温度25℃で7日間養生した。また、基材2の裏面に下記配合のプライマー層用の水系塗工液Eを用いて塗布・乾燥し、プライマー層10を形成した。このようにして、実施例1の化粧シートを得た。
【0129】
ベタ着色層用の水系塗工液A
ノニオン系水性ウレタン樹脂(大日本インク化学工業製、VONDIC1230NS):75部、ノニオン系水分散性イソシアネート架橋剤(日本ポリウレタン工業、AQ100):10部、酸化チタン:25部、水:20部
絵柄着色層用の水系塗工液B
ノニオン系水性ウレタン樹脂(大日本インク化学工業製、VONDIC1230NS):75部、カーボンブラック:25部、水:20部
接着層用の水系塗工液C
ノニオン系水性ウレタン樹脂(第一工業製薬製、スーパーフレックスE2500):75部、ノニオン系水分散性イソシアネート架橋剤(日本ポリウレタン工業、AQ210):10部、水:5部
保護層用の水系塗工液D
ノニオン系水性ウレタン水性樹脂(大日本インク化学工業製、VONDIC1230NS):75部、ノニオン系水分散性イソシアネート架橋剤(日本ポリウレタン工業、AQ100):10部、シリカ粉末(富士シリシア製、サイシリア380):2部、シリコーンオイル(信越化学工業製、KF353):10部、水:20部
プライマー層用の水系塗工液E
ノニオン系水性ウレタン水性樹脂(大日本インク化学工業製、FINETEXES801):75部、ノニオン系水分散性イソシアネート架橋剤(日本ポリウレタン工業、AQ100):10部、シリカ粉末(富士シリシア製、サイシリア380):25部、水:20部
【0130】
(実施例2)
実施例1のプライマー層用の水系塗工液Eに代えて、下記配合のプライマー層用の水系塗工液Fを用いた。その他は実施例1と同様にして実施例2の化粧シートを得た。
プライマー層用の水系塗工液F
ジメチルテレフタレート95部、ジメチルイソフタレート95部、エチレングリコール71部、ネオペンチルグリコール110部、酢酸亜鉛0.1部および三酸化アンチモン0.1部を反応容器に仕込み、140℃から徐々に220℃まで昇温し、約3時間かけてエステル交換反応を行った。次いで、5−ナトリウムスルホイソフタル酸6.0部を添加し、220℃から240℃まで約1時間かけてエステル化反応を行った後、240℃から270℃まで昇温しつつ、減圧下で2時間かけて重縮合反応したポリエステル樹脂30部(a)、イソプロピルアルコール20部(b)および水50部(c)を容器中に仕込み、80℃で約3時間加熱し、得られた金属塩中和アニオン型ポリエステル樹脂水分散体:75部、ノニオン系水分散性イソシアネート架橋剤(日本ポリウレタン工業、AQ210):10部、水:5部
【0131】
(実施例3)
実施例1の接着剤層用の水系塗工液Cに代えて、下記配合の接着剤層用の水系塗工液Gを用いた。また、実施例1の透明樹脂層の積層方法であるドライラミネート法に代えて、透明樹脂層を溶融押出し塗工法で積層した。透明樹脂層の溶融押出し塗工法は、透明樹脂として、ランダム重合ポリプロピレンに、フェノール系酸化防止剤0.2重量%、ヒンダードアミン系光安定剤0.3重量%、ブロッキング防止剤0.2重量%をそれぞれ添加した樹脂を、180℃でTダイにより溶融状態で押出し、厚さ80μmの透明樹脂層を積層した。その他は、実施例1と同様にして実施例3の化粧シートを得た。
接着層用の水系塗工液G
ノニオン系水性ウレタン樹脂(第一工業製薬製、スーパーフレックスE2500):75部、ノニオン系水分散ブロックイソシアネート架橋剤(三井武田ケミカル、WB720):10部、水:5部
【0132】
(実施例4)
実施例1の保護層用の水系塗工液Dに代えて、下記配合の保護層用の水系塗工液Hを用いた。その他は実施例1と同様にして実施例2の化粧シートを得た。
保護層用の水系塗工液H
メタクリル酸カリウム−メタクリル酸メチル−メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル共重合アクリル樹脂30部(a’)、イソプロピルアルコール20部(b’)および水50部(c’)を反応容器中に仕込み、80℃で約3時間加熱し、得られた金属塩中和アニオン型アクリル樹脂水分散体:30部、ノニオン系水分散性イソシアネート架橋剤(日本ポリウレタン工業、AQ100):10部、シリカ粉末(富士シリシア製、サイシリア380):2部、シリコーンオイル(信越化学工業製、KF353):1部、水:20部
【0133】
(実施例5)
実施例1の透明樹脂層6の形成方法に代えて、接着層5上にマレイン酸変性ポリプロピレン樹脂(10μm)と、ランダム共重合ポリプロピレンにフェノール系酸化防止剤0.2重量%、ヒンダードアミン系光安定剤0.3重量%、ブロッキング防止剤0.2重量%をそれぞれ添加した樹脂(70μm)を接着層側がマレイン酸変性ポリプロピレン樹脂になるように、Tダイを用い、180℃の温度下、オゾン照射下で共押出し塗工法にて透明樹脂層6を形成した。その他は実施例1と同様にして実施例5の化粧シートを得た。
【0134】
(実施例6)
実施例5の保護層9に代えて、以下の方法により表面プライマー層13と保護層9’とを形成した。凹凸模様7が形成された透明樹脂層6の表面にコロナ放電処理を施した後、線数70線/インチ、版深30μmのグラビア版を用いて下記配合の表面プライマー層用の水系塗工液Iをグラビア印刷法にて塗布・乾燥し、乾燥後約0.5g/m2の表面プライマー層13を形成した。その上に、下記配合の保護層用の無溶剤塗工液Jを60℃に加温してバーコード法で塗工した後、岩崎電気製電子線照射装置エレクトロカーテンEC250にて、窒素パージ下、150kVの加速電圧、5Mradの照射線量で電子線を照射し、約3g/m2の保護層9’を形成した。その他は実施例5と同様にして実施例6の化粧シートを得た。
表面プライマー層用の水系塗工液I
ノニオン系水性ウレタン樹脂(第一工業製薬株式会社製、スーパーフレックスE2500)100部、シリカ粉末(富士シリシア化学株式会社製、サイシリア380):1部、水:20部
保護層用の無溶剤系塗工液J
多官能ウレタンアクリレート(新中村化学工業株式会社製、U−15HA):25部、ペンタエリスリトールトリアクリレート(新中村化学工業株式会社製、A−TMMA):20部、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート(サートマー製、SR399):5部、トリメチロールプロパンアクリレート(日本化薬株式会社製、TMPTA)50部、シリカ粉末(富士シリシア化学株式会社製、サイシリア380):2部、シリコーンオイル(信越化学工業株式会社製、KF353):1部
【0135】
(実施例7)
実施例1の保護層9に代えて、以下の方法により表面プライマー層13と保護層9’を形成した。凹凸模様7が形成された透明樹脂層6の表面にコロナ放電処理を施した後、線数70線/インチ、版深30μmのグラビア版を用いて上述のプライマー層用の水系塗工液Fをグラビア印刷法にて塗布・乾燥し、約0.5g/m2の表面プライマー層13を形成した。その上に、保護層用の無溶剤塗工液Jを60℃に加温してバーコード法で塗工した後、紫外線照射装置(フュージョンUVシステムズジャパン製)のHバルブ光源を用いて、窒素パージ下、500mJ/cm2の照射量の紫外線を照射し、約5g/m2の保護層9’を形成した。その他は実施例1と同様にして実施例7の化粧シートを得た。
保護層用の無溶剤系塗工液K
多官能ウレタンアクリレート(新中村化学工業株式会社製、U−15HA):25部、ペンタエリスリトールトリアクリレート(新中村化学工業製、A−TMMA):20部、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート(サートマー製、SR399):5部、トリメチロールプロパンアクリレート(日本化薬株式会社製、TMPTA):50部、シリカ粉末(富士シリシア化学製、サイシリア380):2部、シリコーンオイル(信越化学工業株式会社製、KF353):1部、光重合開始剤(チバスペシャリティーケミカルズ株式会社製、イルガキュアー184):1部
【0136】
(作製した化粧シート)
実施例1〜5の化粧シート1は、ベタ着色層3、絵柄着色層4、接着層5および表面保護層6が水系塗工液で形成され、さらにその形成された層はアミン類を含有しないので、その化粧シート1からはアミン類のVOCが発生せず、化粧シート製造時における作業環境の安全性や生活空間での環境安全性が向上したものであった。また、実施例6、7の化粧シート1’は、ベタ着色層3、絵柄着色層4、接着層5および表面プライマー層13が水系塗工液で形成され、さらにその形成された層はアミン類を含有しないので、その化粧シート1’からはアミン類のVOCが発生せず、化粧シート製造時における作業環境の安全性や生活空間での環境安全性が向上したものであった。
【0137】
(実施例8)
以下の配合の水系塗工液Lを作製した。
ノニオン系水性ウレタン樹脂(大日本インク化学工業製、VONDIC1230NS):100部、ノニオン系水分散イソシアネート化合物(日本ポリウレタン工業株式会社製、アクアネート200):20部、シリカ粉末(富士シリシア化学製、サイシリア380):2部、水:5部
【0138】
(実施例9)
以下の配合の水系塗工液Mを作製した。
Na塩中和系水性ポリエステル樹脂(東洋紡績株式会社製、MD1480):100部、ノニオン系水分散イソシアネート化合物(日本ポリウレタン工業株式会社製、アクアネート200):20部、シリカ粉末(富士シリシア化学製、サイシリア380):2部、水:5部
【0139】
(作製された水系塗工液)
実施例8、9の水系塗工液を、既存の化粧シートの最表面の傷を有した部位に、ハケ塗りにて塗工した。その結果、化粧シート最表面の傷は、目立たなくなった。
【0140】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の化粧シートによれば、従来のようなアミン等に起因するVOCの発生がなく、化粧シートの環境安全性をより向上させることができる。さらに、プライマー層と保護層が設けられた場合であっても、それらの層を上記の水系塗工液で形成することにより、アミン等に起因するVOCの発生がなく、化粧シートの環境安全性をより一層向上させることができる。
【0141】
本発明の化粧シートの補修用水系塗工液によれば、化粧シートの表面等の補修に用いた場合に、従来のような溶剤に起因するVOC、および、中和剤に含有される三級アミン(トリエチルアミン等)、揮発性塩基(アンモニア等)等に起因するVOCの発生がない。そのため、化粧シートの補修作業時および補修後の化粧シートの使用時における、環境安全性をより向上させることができる。特に、建築業者等に用いられる場合のみならず、日曜大工等が盛んに行われている昨今では一般家庭で用いる場合においても、補修作業時および補修後の室内環境の悪化を防止でき、室内の安全性を向上できる。また、本発明の水系塗工液を従来の化粧シートの最表面のみに用いた場合にも、作業時および使用時における環境安全性をより向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態の化粧シートの層構成の一例を示す断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態の化粧シートの層構成の他の一例を示す断面図である。
【図3】本発明の第1実施形態の化粧シートの層構成の更に他の一例を示す断面図である。
【図4】本発明の化粧シートの実施形態の一例を示す断面図である。
【図5】本発明の化粧シートの実施形態の他の一例を示す断面図である。
【図6】本発明の第2実施形態の化粧シートの層構成の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
1、1’ 化粧シート
2 基材
3 ベタ着色層
4 絵柄着色層
5 接着層
6、6’、6” 透明樹脂層
7 凹凸模様
8 着色層
9、9’ 保護層
10 プライマー層
11 着色層
12 接着層
13 表面プライマー層
15 被着体
16 多層からなる透明樹脂層
17 凹陥部
41 立体形状物品
51 板材

Claims (13)

  1. 少なくとも、基材、着色層、接着層、透明樹脂層をこの順で積層した化粧シートであって、着色層および接着層が、バインダー成分としてノニオン系水性ウレタン樹脂または金属塩で中和されたアニオン系水性化合物、及び架橋剤としてノニオン系水分散性イソシアネートを含有する水系塗工液で形成されることを特徴とする化粧シート。
  2. 基材の裏面に設けられたプライマー層と、透明樹脂層の表面に設けられた保護層とをさらに有し、プライマー層および保護層が、バインダー成分としてノニオン系水性ウレタン樹脂または金属塩で中和されたアニオン系水性化合物、及び架橋剤としてノニオン系水分散性イソシアネートを含有する水系塗工液で形成されることを特徴とする請求項1に記載の化粧シート。
  3. 前記透明樹脂層の表面に設けられた保護層をさらに有し、該保護層は、無溶剤系活性エネルギー線硬化性樹脂からなることを特徴とする請求項1に記載の化粧シート。
  4. 前記保護層は、活性エネルギー線硬化性樹脂の無溶剤系塗工液を塗布し、活性エネルギー線を照射することにより活性エネルギー線硬化性樹脂が硬化されて形成されることを特徴とする請求項3に記載の化粧シート。
  5. 前記活性エネルギー線は、電子線であることを特徴とする請求項4に記載の化粧シート。
  6. 前記活性エネルギー線は、紫外線であることを特徴とする請求項4に記載の化粧シート。
  7. 前記透明樹脂層と前記保護層との間に表面プライマー層を有し、該表面プライマー層は、バインダー成分としてノニオン系水性ウレタン樹脂または金属塩で中和されたアニオン系水性化合物、及び架橋剤としてノニオン系水分散性イソシアネートを含有する水系塗工液で形成されることを特徴とする請求項3乃至請求項6のいずれか1項に記載の化粧シート。
  8. 基材の裏面に設けられたプライマー層をさらに有し、該プライマー層が、バインダー成分としてノニオン系水性ウレタン樹脂または金属塩で中和されたアニオン系水性化合物、及び架橋剤としてノニオン系水分散性イソシアネートを含有する水系塗工液で形成されることを特徴とする請求項3乃至請求項7のいずれか1項に記載の化粧シート。
  9. 前記透明樹脂層が溶融押出し塗工法で形成されることを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の化粧シート。
  10. 前記基材がポリオレフィン系エラストマーからなり、前記透明樹脂層がポリオレフィン樹脂からなることを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載の化粧シート。
  11. 前記透明樹脂層の表面側に凹凸模様が形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項10のいずれか1項に記載の化粧シート。
  12. 前記凹凸模様の凹陥部に着色層が形成されていることを特徴とする請求項11に記載の化粧シート。
  13. バインダー成分としてノニオン系水性ウレタン樹脂または金属塩で中和されたアニオン系水性化合物、及び架橋剤としてノニオン系水分散性イソシアネートを含有することを特徴とする化粧シートの補修用水系塗工液。
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