JP2004285129A - 感光性ポリイミド前駆体、感光性ポリイミド樹脂組成物、及び該樹脂組成物を用いた半導体素子の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】熱膨張率と残留応力が小さく、基板との密着性に優れ、破断強度と破断伸びが大きいポリイミド膜を形成することができ、しかもシリコンウエハ上に膜を形成したとき、シリコンウエハに生じる反りが小さい感光性ポリイミド前駆体、及び感光性ポリイミド樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】主鎖中にテトラカルボン酸またはその酸無水物とジアミンとの重縮合生成物から形成された繰り返し単位を有し、その両末端に化学線官能基を有する感光性ポリイミド前駆体である。テトラカルボン酸またはその酸無水物が、剛直構造の芳香族テトラカルボン酸またはその酸無水物を70〜100モル%の割合で含有するものであり、かつ、ジアミンが、剛直構造の芳香族ジアミンを70〜100モル%の割合で含有する。
【選択図】 なし
【解決手段】主鎖中にテトラカルボン酸またはその酸無水物とジアミンとの重縮合生成物から形成された繰り返し単位を有し、その両末端に化学線官能基を有する感光性ポリイミド前駆体である。テトラカルボン酸またはその酸無水物が、剛直構造の芳香族テトラカルボン酸またはその酸無水物を70〜100モル%の割合で含有するものであり、かつ、ジアミンが、剛直構造の芳香族ジアミンを70〜100モル%の割合で含有する。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明は、感光性ポリイミド前駆体及び感光性ポリイミド樹脂組成物に関し、さらに詳しくは、熱膨張率と残留応力が小さく、銅基板や銅配線などとの密着性に優れ、破断強度と破断伸びが大きいポリイミド膜を形成することができ、しかもシリコンウエハ上に膜を形成したとき、シリコンウエハに生じる反りが小さい感光性ポリイミド前駆体、及び該ポリイミド前駆体を含有する感光性ポリイミド樹脂組成物に関する。また、本発明は、このような優れた諸特性を有する感光性ポリイミド樹脂組成物を用いて、多層回路基板や多層回路内臓フィルム基板などの半導体素子を製造する方法に関する。本発明において、半導体素子(半導体デバイスともいう)とは、半導体装置及び半導体塔載用基板などを広く含むものである。
【0002】
【従来の技術】
半導体素子の製造過程において、感光性樹脂組成物は、一般に、フォトレジストとして用いられ、エッチングなどの工程でその役割が終わると剥離除去されている。しかし、感光性樹脂組成物膜が、半導体素子の表面保護膜や層間絶縁膜として使用される場合には、永久膜として残されるために、電気的及び機械的に高度の特性が要求される。さらに、このような膜には、半導体製造工程で加わる高温に耐えることも必要となる。
【0003】
ポリイミド樹脂は、電気的特性、機械的特性、及び耐熱性に優れており、半導体素子の表面保護膜や層間絶縁膜などに使用されているが、微細な部分に選択的にポリイミド樹脂の膜を塗設するためには、感光性を付与するのが便利である。そこで、近年、このような用途に、感光性ポリイミド樹脂または感光性ポリイミド樹脂組成物の膜が使用されている。
【0004】
ところが、ポリイミド樹脂膜の熱膨張率は、一般に、20ppm/℃を超え、30ppm/℃以上となることも稀ではない。これに対して、金属基板の熱膨張率は、通常、20ppm/℃以下である。また、シリコンウエハの熱膨張率は、約3〜4ppm/℃である。このように、金属配線や各種基板の熱膨張率は、一般にポリイミド樹脂膜のそれよりも小さい。基板上にポリイミド樹脂膜を形成したとき、基板とポリイミド樹脂膜との間の熱膨張率の差が大きいと、半導体素子の製造工程や使用時における加熱や発熱により、クラックの発生、配線の断絶、基板の反りなどの問題が生じる。ポリイミド樹脂膜の残留応力が大きいと、同様の問題が生じやすい。
【0005】
特に、最近ではシリコンウエハの大型化(例えば、直径300mmの基板)に伴ない、ポリイミド樹脂から形成されたパッシベーション膜に起因する応力によって、基板へ反りが発生することが大きな問題となっている。ポリイミド樹脂膜を絶縁膜とする多層回路基板の製造も検討されている現在、極めて薄いシリコンウエハ(例えば、厚み50μm以下の基板)を用いた半導体素子において、基板の反りの低減は、極めて重要な課題の一つである。
【0006】
より具体的に説明すると、デジタルネットワーク情報社会の進化に対応して、マルチメディア機器を始めとするデジタル家電や携帯情報端末を中心とした電子機器の技術分野が著しく発展してきている。それに伴って、半導体素子(半導体装置や半導体回路基板等を含む)に対する多機能化や高性能化に対する要求が高まり、例えば、1チップに高度なシステム機能を詰め込んだシステム・オン・チップ(SOC)が注目を集めている。SOCは、従来ボード上で実現してきたシステムを1つのシリコン・チップ上で実現するもので、低消費電力、高性能、実装面積削減というメリットも大きい。
【0007】
最近、SOCと同等の機能を実現する手段として注目されているのが、システム・イン・パッケージ(SIP)である。SIPとは、複数のLSIを単一のパッケージに封止してシステム化を実現したものであり、最終的にはSOCと同等の機能を低コストで供給することを目指すものである。
【0008】
このような考え方は以前からあり、例えば、複数のLSIや受動部品を単一のパッケージに封止するハイブリッドIC、あるいは、汎用大型コンピュータの高速化を実現する手段として開発されたMCMなどは、SIPの一種である。しかし、これらは、非常に高価であって、SOCに対する優位性がなく、これまで主流技術としては認知されていなかった。しかし、最近SOC開発の長期化や、様々なシステム機能を1つのチップに統合するための開発リスクが問題となりはじめ、SOCと同等の機能を、短期間かつ低コストで実現できる可能性が大きいSIPが注目されている。
【0009】
SIPの実現に求められる実装基板の形態は、上下接続のためのスルーホールと薄膜配線層を有することが求められている。しかし、スルーホール形成技術には、シリコンウエハの薄化、ビアホールの形成、絶縁層の形成、導体回路層の形成など技術課題が多く、コストも掛かる。そのため、回路基板を安価かつ簡便に形成するために、薄膜配線層のみをインターポーザとして使用することが考えられる。
【0010】
従来のスルーホールのない薄膜多層配線基板としては、例えば、1枚の樹脂膜に導電性ペーストを充填したビアホールと配線を形成したものを、最後に一括積層したものが知られている。この薄膜多層配線基板は、比較的低コストで実現可能であるが、ビア径が120〜200μmで、L/Sが100μm/100μm〜200μm/200μmであり、微細化が困難である。
【0011】
ビア径30μm以下で、L/S=10μm/10μm以下を達成するには、シリコンウエハや銅基板上に薄膜多層配線層を形成するか、基板上に形成した薄膜多層配線層を分離して薄膜多層回路内臓フィルム基板とする方法が有効であると考えられる。
【0012】
セラミックなどの支持基板上に形成される薄膜多層の配線基板は、絶縁膜にポリイミド樹脂などの絶縁性樹脂を用いて多層化されているが、絶縁膜と支持基板との熱膨張率の差から発生する基板の反り量が大きくなり、多層にするのは困難である。
【0013】
半導体デバイスの回路が形成されたシリコンウエハ上に、パッシベーション膜としてポリイミド樹脂膜を設けることが知られている。ところが、近年の半導体デバイスは、大口径(例えば、200mmまたは300mm)のシリコンウエハ上に形成されるため、シリコンウエハの反りを抑制しつつ、その上にパッシベーション膜を形成することが非常に困難になっている。シリコンウエハの反りを低減するために、例えば、パッシベーション膜の膜厚を非常に薄くする方法や、様々な膜構成の中でシリコンウエハ上での応力を制御する方法などを工夫して、1層のパッシベーション膜を形成している。
【0014】
また、半導体デバイスの高密度化と微細化に伴い、従来の半導体プロセスをスケールアップしたL/S=10μm/10μmを実現する配線技術が必要となってきている。このような微細な配線層を大口径シリコンウエハ上に形成するためには、配線層の絶縁膜として使用する樹脂材料の低熱膨張率化が必須となってくる。具体的には、絶縁膜の熱膨張率とシリコンウエハの熱膨張率(約3ppm/℃)との間の差を小さくすることが課題となる。一般的なポリイミド樹脂膜の熱膨張率は、20ppm/℃を超えている。熱膨張率の大きなポリイミド樹脂膜を大口径シリコンウエハ上に一層形成した場合、100μm程度の反りが発生するため、ポリイミド樹脂膜を用いて多層回路基板を作製することは困難である。
【0015】
半導体デバイスを3次元的に積み上げた構造のものとして、高密度実装を実現するためには、半導体デバイスの厚さを薄くする必要がある。その方法として、厚いシリコンウエハ上に多層回路を形成しておいてから、シリコンウエハを研磨して薄化するプロセスが用いられている。シリコンウエハを薄くしていくと、シリコンウエハ上に形成されている絶縁膜の応力によって、反りやうねりが大きくなる。
【0016】
この反りを小さくするために、熱膨張率が小さくなるように制御したポリイミド樹脂材料が求められている。しかし、従来の感光性ポリイミド樹脂組成物を用いた製膜技術において、露光後の樹脂膜の熱膨張率を20ppm/℃以下、さらには10ppm/℃以下に制御することは困難であった。特にネガ型の感光性ポリイミド樹脂組成物は、パターン形成後、加熱してイミド化すると、線膨張率が急に高くなる。
【0017】
本発明者らは、主鎖中にテトラカルボン酸またはその酸無水物とジアミンとの重縮合生成物から形成された繰り返し単位を有し、その両末端に、光重合可能な炭素−炭素二重結合を有する置換基を分子内に有するアミノベンゼン類またはトリメリット酸誘導体により末端変性された構造の化学線官能基を有する感光性ポリイミド前駆体(すなわち、感光性ポリアミック酸)について、該繰り返し単位を単位分子量とした場合、カルボキシル基一個当りの単位分子量の値(単位分子量/COOH)が200〜300の範囲内となるように、テトラカルボン酸またはその酸無水物とジアミンとの組み合わせを工夫することにより、基板上に、残留応力が40MPa以下で、熱膨張率が30ppm/℃以下のポリイミド膜を形成することを提案した(例えば、特許文献1参照。)。
【0018】
【特許文献1】
特開平11−282157号公報 (第1−3頁)
【0019】
【発明が解決しようとする課題】
特許文献1に開示されている感光性ポリイミド樹脂組成物は、熱膨張率及び残留応力が小さなポリイミド樹脂膜を形成することができ、しかもアルカリ現像液またはアルカリ水溶液を用いて現像することができる。ところが、本発明者らが更に検討した結果、特許文献1に具体的に開示されている感光性ポリイミド前駆体を用いた場合、銅基板などに対する密着性が低く、特にプレッシャークッカーテスト(PCT)後の密着性が低いことが判明した。また、特許文献1に具体的に開示されている感光性ポリイミド前駆体は、熱膨張率と残留応力を低減させた場合、破断強度や破断伸びが小さくなる傾向がある。
【0020】
そこで、本発明の目的は、熱膨張率と残留応力が小さく、銅基板や銅配線などとの密着性に優れ、破断強度と破断伸びが大きいポリイミド膜を形成することができ、しかもシリコンウエハ上に膜を形成したとき、シリコンウエハに生じる反りが小さい感光性ポリイミド前駆体、及び該ポリイミド前駆体を含有する感光性ポリイミド樹脂組成物を提供することにある。
【0021】
本発明の他の目的は、このような優れた諸特性を有する感光性ポリイミド樹脂組成物を用いて、多層回路基板や多層回路内臓フィルム基板などの半導体素子を製造する方法を提供することにある。
【0022】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究した結果、主鎖中にテトラカルボン酸またはその酸無水物とジアミンとの重縮合生成物から形成された繰り返し単位を有し、その両末端に、光重合可能な炭素−炭素二重結合を有する置換基を分子内に有するアミノベンゼン類またはトリメリット酸誘導体により末端変性された構造の化学線官能基を有する感光性ポリイミド前駆体(すなわち、感光性ポリアミック酸)において、テトラカルボン酸またはその酸無水物として、剛直構造の芳香族テトラカルボン酸またはその酸無水物を70〜100モル%の割合で含有するものを使用し、かつ、ジアミンとして、剛直構造の芳香族ジアミンを70〜100モル%の割合で含有するものを使用することにより、熱膨張率と残留応力が小さく、密着性に優れ、破断強度と破断伸びが大きいポリイミド膜を形成することができ、しかもシリコンウエハ上に膜を形成したとき、反りの発生を顕著に抑制することができる感光性ポリミド前駆体の得られることを見出した。
【0023】
本発明の感光性ポリイミド前駆体を含有する感光性ポリイミド樹脂組成物を絶縁材料として使用し、シリコンウエハ上に多層回路基板を作成すると、シリコンウエハを研磨して薄化しても、シリコンウエハにほとんど反りを生じさせることがない。本発明の感光性ポリイミド樹脂組成物を用いると、薄膜の多層回路基板や多層回路内臓フィルム基板を製造することができる。本発明は、これらの知見に基づいて完成するに至ったものである。
【0024】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、主鎖中に、テトラカルボン酸またはその酸無水物とジアミンとの重縮合生成物から形成された式(1)
【0025】
【化6】
【0026】
(式中、R1は、4価の有機基であり、R2は、2価の有機基である。)
で表される繰り返し単位を有し、その両末端に、光重合可能な炭素−炭素二重結合を有する置換基を分子内に有するアミノベンゼン類またはトリメリット酸誘導体により末端変性された構造の化学線官能基を有する感光性ポリイミド前駆体であって、テトラカルボン酸またはその酸無水物が、剛直構造の芳香族テトラカルボン酸またはその酸無水物を70〜100モル%の割合で含有するものであり、かつ、ジアミンが、剛直構造の芳香族ジアミンを70〜100モル%の割合で含有するものであることを特徴とする感光性ポリイミド前駆体が提供される。
【0027】
また、本発明によれば、(A)前記の感光性ポリイミド前駆体、(B)光重合性官能基を有する感光助剤、(C)光重合開始剤、及び(D)溶剤を含有する感光性ポリイミド樹脂組成物が提供される。
【0028】
さらに、本発明によれば、(i)シリコンウエハ上に金属からなる導体層を形成する工程、(ii)導体層の上に前記の感光性ポリイミド樹脂組成物を塗布し、プリベークして塗膜を形成する工程、(iii)塗膜の上からパターン状に露光し、ビアを形成する工程、(iv)塗膜を加熱して感光性ポリイミド樹脂組成物を硬化させる工程、(v)金属メッキにより、ビアを金属で充填するとともに、硬化塗膜上に配線パターンを形成する工程、及び(vi)前記工程(ii)乃至(v)と同様の工程を必要回数繰り返して多層化することを特徴とする多層回路基板の製造方法が提供される。
【0029】
さらに、本発明によれば、上記の製造方法により得られた多層回路基板からシリコンウエハを除去する工程を含む多層回路内臓フィルム基板の製造方法が提供される。
【0030】
さらに、本発明によれば、(I)銅基板上に前記の感光性ポリイミド樹脂組成物を塗布し、プリベークして塗膜を形成する工程、(II)塗膜の上からパターン状に露光し、ビアを形成する工程、(III)塗膜を加熱して感光性ポリイミド樹脂組成物を硬化させる工程、(IV)金属メッキにより、ビアを金属で充填するとともに、硬化塗膜上に配線パターンを形成する工程、(V)前記工程(I)乃至(IV)と同様の工程を繰り返して多層回路を形成する工程、及び(VI)銅基板を除去する工程からなる多層回路内臓フィルム基板の製造方法が提供される。
【0031】
さらにまた、本発明によれば、シリコンウエハに形成された回路上に、前記の感光性ポリイミド樹脂組成物を塗布し、プリベークした後、露光することを特徴とするポリイミド樹脂からなるパッシベ−ション膜が形成された半導体素子の製造方法が提供される。
【0032】
【発明の実施の形態】
1.感光性ポリイミド前駆体:
本発明の感光性ポリイミド前駆体は、主鎖中に、テトラカルボン酸またはその酸無水物とジアミンとの重縮合生成物から形成された式(1)
【0033】
【化7】
【0034】
(式中、R1は、4価の有機基であり、R2は、2価の有機基である。)
で表される繰り返し単位を有し、かつ、両末端に化学線官能基が導入されたポリアミック酸である。
【0035】
テトラカルボン酸またはその酸無水物とジアミンとしては、以下に示すような多種多様の化合物を使用することができるが、本発明では、テトラカルボン酸またはその酸無水物として、剛直構造の芳香族テトラカルボン酸またはその酸無水物を70〜100モル%の割合で含有するものを用い、かつ、ジアミンとして、剛直構造の芳香族ジアミンを70〜100モル%の割合で含有するものを用いることが必要である。芳香族テトラカルボン酸またはその酸無水物、及びジアミンは、剛直構造のものが70モル%以上含まれておれば、柔軟構造のものと併用することができる。先ず、芳香族テトラカルボン酸またはその酸無水物、及びジアミンの具体例を示す。
【0036】
<テトラカルボン酸またはその酸無水物>
テトラカルボン酸またはその酸無水物としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3′,4,4′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ベンゼン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、2,2′,3,3′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3′,4′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ナフタレン−2,3,6,7−テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン−1,2,5,6−テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン−1,2,4,5−テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン−1,2,5,8−テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン−1,2,6,7−テトラカルボン酸二無水物、4,8−ジメチル−1,2,3,5,6,7−ヘキサヒドロナフタレン−1,2,5,6−テトラカルボン酸二無水物、4,8−ジメチル−1,2,3,5,6,7−ヘキサヒドロナフタレン−2,3,6,7−テトラカルボン酸二無水物、2,6−ジクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、2,7−ジクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−テトラクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−テトラクロロナフタレン−2,3,6,7−テトラカルボン酸二無水物、3,3′,4,4′−ジフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2′,3,3′−ジフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3′,4′−ジフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3″,4,4″−p−テルフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2″,3,3″−p−テルフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3″,4″−p−テルフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)−プロパン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−プロパン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ペリレン−2,3,8,9−テトラカルボン酸二無水物、ペリレン−3,4,9,10−テトラカルボン酸二無水物、ペリレン−4,5,10,11−テトラカルボン酸二無水物、ペリレン−5,6,11,12−テトラカルボン酸二無水物、フェナンスレン−1,2,7,8−テトラカルボン酸二無水物、フェナンスレン−1,2,6,7−テトラカルボン酸二無水物、フェナンスレン−1,2,9,10−テトラカルボン酸二無水物などの芳香族テトラカルボン酸二無水物及びその水添加物;シクロペンタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2,2,2]オクタ−7−エン−2−エキソ,3−エキソ,5−エキソ,6−エキソテトラカルボン酸2,3:5,6−二無水物、ビシクロ[2,2,1]ヘプタン−2−エキソ,3−エキソ,5−エキソ,6−エキソテトラカルボン酸2,3:5,6−二無水物などの脂環式酸二無水物;ピラジン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、ピロリジン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物、チオフェン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物などの複素環誘導体酸二無水物;これらに対応するテトラカルボン酸などが挙げられる。
【0037】
剛直構造の芳香族テトラカルボン酸またはその酸無水物は、単環または縮合環からなる芳香族環を持つ化合物(例えば、ピロメリット酸二無水物)、2つ以上の芳香族環が単結合で結合した構造の化合物(例えば、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物)などのように、棒状の剛直鎖を形成することができる化合物である。
【0038】
これに対して、2つ以上の芳香族環が>C=O結合や−O−結合により結合した構造の芳香族テトラカルボン酸またはその酸無水物は、屈曲性があり、柔軟構造の芳香族テトラカルボン酸またはその酸無水物である。
【0039】
本発明では、剛直構造の芳香族テトラカルボン酸またはその酸無水物として、ピロメリット酸、下記式(10)
【0040】
【化8】
【0041】
で表わされるピロメリット酸二無水物(PMDA)、ビフェニルテトラカルボン酸、及び下記式(11)
【0042】
【化9】
【0043】
で表わされるビフェニルテトラカルボン酸二無水物(s−BPDA)からなる群より選ばれる少なくとも1種の芳香族テトラカルボン酸またはその酸無水物を使用することが好ましい。
【0044】
テトラカルボン酸またはその酸無水物成分の合計基準として、剛直構造の芳香族テトラカルボン酸またはその酸無水物の含有割合は、好ましくは80〜100モル%、より好ましくは85〜100モル%である。この割合が小さすぎると、銅基板などに対するポリイミド樹脂膜の密着性が低下し、破断強度や破断伸びも低下傾向を示す。また、この割合が小さすぎると、ポリイミド樹脂膜の熱膨張率や残留応力が増大する傾向があり、シリコンウエハの反りを抑制することが困難になり易い。
【0045】
剛直構造の芳香族テトラカルボン酸またはその酸無水物とともに、柔軟構造のテトラカルボン酸またはその酸無水物を少量併用してもよい。柔軟構造の芳香族テトラカルボン酸またはその無水物の具体例としては、下記式(12)
【0046】
【化10】
【0047】
で表わされる3,3′,4,4′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)が挙げられる。
【0048】
<ジアミン>
ジアミン化合物としては、例えば、4,4′−ジアミノベンズアニリド、4,4′−ジアミノ−2,2′−ジトリフルオロメチルビフェニル、2,2′−ジ(p−アミノフェニル)−6,6′−ビベンゾオキサゾール、2,2′−ジ(p−アミノフェニル)−5,5′−ビベンゾオキサゾール、m−フェニレンジアミン、1−イソプロピル−2,4−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、4,4′−ジアミノジフェニルプロパン、3,3′−ジアミノジフェニルプロパン、4,4′−ジアミノジフェニルエタン、3,3′−ジアミノジフェニルエタン、4,4′−ジアミノジフェニルメタン、3,3′−ジアミノジフェニルメタン、4,4′−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3′−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4′−ジアミノジフェニルスルホン、3,3′−ジアミノジフェニルスルホン、4,4′−ジアミノジフェニルエーテル、3,3′−ジアミノジフェニルエーテル、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、ベンジジン、4,4″−ジアミノ−p−テルフェニル、3,3″−ジアミノ−p−テルフェニル、ビス(p−アミノシクロヘキシル)メテン、ビス(p−β−アミノ−t−ブチルフェニル)エーテル、ビス(p−β−メチル−δ−アミノペンチル)ベンゼン、p−ビス(2−メチル−4−アミノペンチル)ベンゼン、p−ビス(1,1−ジメチル−5−アミノペンチル)ベンゼン、1,5−ジアミノナフタレン、2,6−ジアミノナフタレン、2,4−ビス(β−アミノ−t−ブチル)トルエン、2,4−ジアミノトルエン、m−キシレン−2,5−ジアミン、p−キシレン−2,5−ジアミン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミンなどの芳香族ジアミン類;2,6−ジアミノピリジン、2,5−ジアミノピリジン、2,5−ジアミノ−1,3,4−オキサジアゾールなどの複素環ジアミン類;1,4−ジアミノシクロヘキサンなどの脂環式ジアミン類;ピペラジン、メチレンジアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、2,2−ジメチルプロピレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、2,5−ジメチルヘキサメチレンジアミン、3−メトキシヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、2,5−ジメチルヘプタメチレンジアミン、3−メチルヘプタメチレンジアミン、4,4−ジメチルヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、5−メチルノナメチレンジアミン、2,5−ジメチルノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、1,10−ジアミノ−1,10−ジメチルデカン、2,11−ジアミノドデカン、1,12−ジアミノオクタデカン、2,12−ジアミノオクタデカン、2,17−ジアミノアイコサンなどの脂肪族ジアミン類;ジアミノシロキサン、2,6−ジアミノ−4−カルボキシリックベンゼン、3,3′−ジアミノ−4,4′−ジカルボキシリックベンジジンなどが挙げられる。
【0049】
剛直構造のジアミンは、単環または縮合環からなる芳香族環を持つ化合物(例えば、p−フェニレンジアミン)、2つ以上の芳香族環が単結合で結合した構造の化合物などのように、棒状の剛直鎖を形成することができる化合物である。このような剛直構造の芳香族ジアミンは、主鎖にエステル構造及びアミド構造などの屈曲性を持つ構造を含有しない芳香族ジアミンである。
【0050】
剛直構造のジアミン、特に主鎖にエステル構造及びアミド構造を含有しない芳香族ジアミンとしては、下記式(13)
【0051】
【化11】
【0052】
で表わされる2,2′−ジ(p−アミノフェニル)−5,5′−ビスベンゾオキサゾール、下記式(14)
【0053】
【化12】
【0054】
で表わされる2,2′−ジ(p−アミノフェニル)−6,6′−ビスベンゾオキサゾール(NPN)、下記式(15)
【0055】
【化13】
【0056】
で表わされる2,2′−ジ(p−アミノフェニル)−5,5′−ビスベンズイミダゾール、下記式(16)
【0057】
【化14】
【0058】
で表わされるp−フェニレンジアミン(PPDA)、及び下記式(17)
【0059】
【化15】
【0060】
で表わされる4,4′−ジアミノビフェニルからなる群より選ばれる少なくとも1種の芳香族ジアミンが好ましい。
【0061】
ジアミン成分の合計基準として、剛直構造のジアミンの含有割合は、好ましくは80〜100モル%、より好ましくは85〜100モル%、特に好ましくは90〜100モル%である。この割合が小さすぎると、銅基板などに対するポリイミド樹脂膜の密着性が低下し、破断強度や破断伸びも低下傾向を示す。また、この割合が小さすぎると、ポリイミド樹脂膜の熱膨張率や残留応力が増大する傾向があり、シリコンウエハの反りを抑制することが困難になり易い。
【0062】
その他のジアミン成分として、柔軟構造のジアミンを少量成分として併用することができる。このような柔軟構造のジアミンとしては、下記式(18)
【0063】
【化16】
【0064】
(式中、R8は、二価の炭化水素基であり、R9は、一価の炭化水素基であり、複数存在するR8及びR9は、同一であっても、異なっていてもよい。mは、1以上の整数である。)
で表わされるジアミノシロキサンが好ましい。ジアミン成分として、剛直構造の芳香族ジアミンとともに、少量のジアミノシロキサンを併用すると、ポリイミド樹脂膜の熱膨張率を低減することができるだけではなく、銅基板などへの密着性を更に向上させることができる。ジアミノシロキサンの具体例としては、下記式(19)
【0065】
【化17】
【0066】
で表わされる1,3−アミノプロピル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンを挙げることができる。
【0067】
柔軟構造の芳香族ジアミンとしては、例えば、下記式(20)
【0068】
【化18】
【0069】
で表わされる4,4′−ジアミノベンズアニリド、下記式(21)
【0070】
【化19】
【0071】
で表わされる4,4′−ジアミノジフェニルエーテルなどが挙げられる。
【0072】
<繰り返し単位>
本発明の感光性ポリイミド前駆体は、前記式(1)で表される繰り返し単位を有するものである。その好ましい具体例としては、ピロメリット酸二無水物(PMDA)と2,2′−ジ(p−アミノフェニル)−6,6′−ビスベンゾオキサゾール(NPN)との重縮合反応により生成する下記式(22)
【0073】
【化20】
【0074】
で表わされる繰り返し単位、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(s−BPDA)と2,2′−ジ(p−アミノフェニル)−6,6′−ビスベンゾオキサゾール(NPN)との重縮合反応により生成する下記式(23)
【0075】
【化21】
【0076】
で表わされる繰り返し単位、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(s−BPDA)とp−フェニレンジアミン(PPDA)との重縮合反応により生成する下記式(24)
【0077】
【化22】
【0078】
で表わされる繰り返し単位等が挙げられる。ジアミンとして、ジアミノシロキサンなどを併用すると、それらとテトラカルボン酸またはその無水物との反応により誘導される繰り返し単位が導入されることになる。
【0079】
<化学線官能基>
化学線官能基としては、化学線官能基自体の安定性、露光感度、合成の容易さ、膜物性等の総合的な観点から、好ましくは、式(2)
【0080】
【化23】
【0081】
(式中、Xは、単結合、−O−、−CO−、−COO−、−OCO−、−OCOO−、−COCH2O−、−S−、−SO−、−SO2−、または−SO2O−であり、R3、R4、R5、R6、及びR7は、光重合可能な炭素−炭素二重結合を有する置換基であり、mは、0または1であり、nは、1〜3の範囲内の整数である。)
で表される基Z1であり、その場合、感光性ポリイミド前駆体は、式(3)
【0082】
【化24】
【0083】
〔式中、R1は、4価の有機基であり、R2は、2価の有機基であり、kは、5〜10000の範囲内の整数であり、Z1は、式(2)で表される化学線官能基である。〕
で表されるポリアミック酸(A1)となる。
【0084】
また、化学線官能基としては、前記と同様の観点から、式(4)
【0085】
【化25】
【0086】
(式中、R3、R4、R5、R6、及びR7は、光重合可能な炭素−炭素二重結合を有する置換基であり、mは、0または1である。)
で表される基Z2であることが好ましく、その場合、感光性ポリイミド前駆体は、式(5)
【0087】
【化26】
【0088】
〔式中、R1は、4価の有機基であり、R2は、2価の有機基であり、kは、5〜10000の範囲内の整数であり、Z2は、式(4)で表される化学線官能基である。〕
で表されるポリアミック酸(A2)となる。
【0089】
感光性ポリイミド前駆体(ポリアミック酸)は、テトラカルボン酸またはその酸無水物とジアミン化合物とを常法により極性有機溶媒中で重縮合させることにより合成することができる。各モノマーは、式(1)で表されるポリアミック酸の繰り返し単位から明らかなように、ほぼ等モルの割合で使用する。ただし、両末端に化学線官能基を導入するには、通常、これらモノマー成分の重縮合時に、光重合可能な炭素−炭素二重結合を有し、かつ、テトラカルボン酸またはその酸無水物と、あるいはジアミン化合物と反応性を有する化合物を存在させる。
【0090】
両末端に化学線官能基Z1を有するポリアミック酸(A1)は、通常、ジアミン化合物とp−アミノ安息香酸〔トリス(メタクロイル)ペンタエリスリトール〕エステルなどのアミノベンゼン類との混合物に、テトラカルボン酸またはその酸無水物を加え、常法により重縮合反応させることにより得られる。この方法によると、安定して高分子量のポリマーが得られる。
【0091】
ポリアミック酸(A2)は、ジアミン化合物に、トリメリット酸アンハイドライド〔トリス(メタクロイル)ペンタエリスリトール〕エステルなどのトリメリット酸誘導体とテトラカルボン酸またはその無水物を加え、常法により縮合反応させることにより得られる。ポリアミック酸(A1)は、ジアミン化合物とテトラカルボン酸またはその無水物を常法により縮合反応させて得られたポリマーに、アミノベンゼンスルホン酸のような末端変性剤を後から加えて反応させることによっても得ることができる。これらの方法によれば、安定して高分子量のポリマーが得られる。
【0092】
<アミノベンゼン類>
本発明では、テトラカルボン酸またはその酸無水物のカルボキシル基と反応して、前記式(2)で表される置換基Z1を与える化合物として、アミノベンゼン類を使用する。
【0093】
このようなアミノベンゼン類としては、下記の式(6)で表される化合物を挙げることができる。
【0094】
【化27】
【0095】
〔式中、Xは、単結合、−O−、−CO−、−COO−、−OCO−、−OCOO−、−COCH2O−、−S−、−SO−、−SO2−、または−SO2O−であり、R3、R4、R5、R6、及びR7は、光重合可能な炭素−炭素二重結合を有する置換基であり、mは、0または1であり、nは、1〜3の範囲内の整数である。〕
光重合可能な炭素−炭素二重結合を有する置換基としては、アクリロイルオキシメチレン基及びメタクリロイルオキシメチレン基が代表的なものであるが、そのほかに、ビニル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ペンチニル基、ヘキシニル基、2−エチルブテニル基などの炭素数2〜6のアルケニル基やその置換体が挙げられる。炭素数2〜6のアルケニル基に結合可能な置換基の具体例としては、ハロゲン原子、フェニル基、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基などである。
【0096】
式(6)において、Xが−COO−である場合、アミノベンゼン類は、下記の式(7)で表されるアミノベンゼンカルボン酸エステルとなる。
【0097】
【化28】
【0098】
〔式中、R3〜R7、m及びnは、前記と同じである。〕
このようなアミノベンゼンカルボン酸エステルなどのアミノベンゼン類は、特開平8−82931号公報に記載された方法に従って製造することができる。そこで、該公報の記載内容を本願明細書において採用する。
【0099】
アミノベンゼンカルボン酸エステルは、前記の式(7)で表される構造を有しており、ベンゼン環には、アミノ基と1〜3個のカルボン酸エステル残基が結合しているが、アミノ基に対するカルボン酸エステル残基の結合部位は、o−、m−、p−の何れでも構わない。
【0100】
アミノベンゼンカルボン酸エステルの具体例としては、o−アミノ安息香酸[トリス(メタクリロイル)ペンタエリスリトール]エステル、o−アミノ安息香酸[トリス(アクリロイル)ペンタエリスリトール]エステル、m−アミノ安息香酸[トリス(メタクリロイル)ペンタエリスリトール]エステル、m−アミノ安息香酸[トリス(アクリロイル)ペンタエリスリトール]エステル、p−アミノ安息香酸[トリス(メタクリロイル)ペンタエリスリトール]エステル、p−アミノ安息香酸[トリス(アクリロイル)ペンタエリスリトール]エステル、5−アミノ−イソフタル酸[トリス(メタクリロイル)ペンタエリスリトール]ジエステル、5−アミノ−イソフタル酸[トリス(アクリロイル)ペンタエリスリトール]ジエステル、o−アミノ安息香酸[ペンタキス(メタクリロイル)ジペンタエリスリトール]エステル、o−アミノ安息香酸[ペンタキス(アクリロイル)ジペンタエリスリトール]エステル、m−アミノ安息香酸[ペンタキス(メタクリロイル)ジペンタエリスリトール]エステル、m−アミノ安息香酸[ペンタキス(アクリロイル)ジペンタエリスリトール]エステル、p−アミノ安息香酸[ペンタキス(メタクリロイル)ジペンタエリスリトール]エステル、p−アミノ安息香酸[ペンタキス(アクリロイル)ジペンタエリスリトール]エステルなどを挙げることができる。
【0101】
これらの中でも、p−アミノ安息香酸〔トリス(メタクリロイル)ペンタエリスリトール〕エステルが、合成コスト、操作性、高感度、高解像度などの点で優れており、特に好ましい。
【0102】
両末端に式(2)で表される化学線官能基Z1を導入したポリアミック酸(A1)を合成するには、ジアミン化合物とアミノベンゼン類との混合物に、テトラカルボン酸またはその無水物を加え、常法により重縮合反応させる。具体的に両末端に化学線官能基を導入したポリアミック酸を合成するには、▲1▼テトラカルボン酸またはその無水物1モルに対して、ジアミン化合物を通常0.850〜0.990モル、好ましくは0.900〜0.970モルの割合で使用し、▲2▼ジアミン化合物1モルに対して、アミノベンゼン類を通常0.400〜0.020モル、好ましくは0.110〜0.040モル、より好ましくは0.100〜0.050モルの割合で使用し、さらに、▲3▼テトラカルボン酸またはその無水物1モルに対して、ジアミン化合物とアミノベンゼン類とを合計量で、通常1.100〜0.900モル、好ましくは1.100〜0.950モル、より好ましくは1.060〜0.990モルの割合で使用する。重縮合反応は、ポリアミック酸を合成する常法に従って、各成分をジメチルアセトアミドなどの極性有機溶媒中で反応させればよい。反応は、通常、反応温度が−20℃〜+80℃の範囲で、反応時間が0.5〜80時間の範囲で行われる。モノマーの反応系への溶解性が低い場合は、モノマーが溶解できる温度まで昇温し、反応系内で溶解可能なオリゴマーとなるまで予備的な反応をさせるといった処理をすることもできる。ただし、本発明のポリアミック酸(A1)は、特定の合成法に限定されるものではない。
【0103】
<トリメリット酸誘導体>
本発明では、ポリアミック酸の両末端に式(4)で表される置換基Z2を与える化合物として、特定の構造を有するトリメリット酸誘導体を使用する。即ち、下記式(8)のトリメリット酸誘導体である。
【0104】
【化29】
【0105】
〔式中、R3、R4、R5、R6、及びR7は、光重合可能な炭素−炭素二重結合を有する置換基であり、mは、0または1である。〕
光重合可能な炭素−炭素二重結合を有する置換基としては、アクリロイルオキシメチレン基及びメタクリロイルオキシメチレン基が代表的なものであるが、そのほかに、ビニル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ペンチニル基、ヘキシニル基、2−エチルブテニル基などの炭素数2〜6のアルケニル基やその置換体が挙げられる。炭素数2〜6のアルケニル基に結合可能な置換基の具体例としては、ハロゲン原子、フェニル基、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基などである。
【0106】
このようなトリメリット酸誘導体は、特開平8−95247号公報に記載された方法に従って合成することができる。そこで、該公報に記載された合成法を本願明細書において援用する。
【0107】
本発明で使用するトリメリット酸誘導体の代表的なものは、式(9)で表される化合物である。
【0108】
【化30】
【0109】
〔式中、Rは、水素原子または炭素数1〜5の低級アルキル基である。〕
トリメリット酸誘導体としては、例えば、トリメリット酸アンハイドライド[トリス(アクリロイル)ペンタエリスリトール]エステル〔式(9)中、R=Hの場合〕、トリメリット酸アンハイドライド[トリス(メタクリロイル)ペンタエリスリトール]エステル〔式(9)中、R=メチル基の場合〕などが、合成経費、操作性、高感度、高解像度などの点で優れており、特に好ましい。
【0110】
両末端に式(4)で表される化学線官能基Z2を導入したポリアミック酸(A2)を合成するには、ジアミン化合物に、トリメリット酸誘導体とテトラカルボン酸またはその無水物を加え、常法により縮合反応させる。あるいは、ジアミン化合物とトリメリット酸誘導体との混合物に、テトラカルボン酸またはその無水物を加え、常法により縮合反応させてもよい。より具体的に、両末端に化学線官能基を導入したポリアミック酸を合成するには、▲1▼ジアミン化合物1モルに対して、テトラカルボン酸またはその無水物を通常0.850〜0.990モル、好ましくは0.900〜0.970モルの割合で使用し、▲2▼テトラカルボン酸またはその無水物1モルに対して、トリメリット酸誘導体を通常0.400〜0.020モル、好ましくは0.110〜0.040モル、より好ましくは0.100〜0.050モルの割合で使用し、さらに、▲3▼ジアミン化合物1モルに対して、テトラカルボン酸またはその無水物とトリメリット酸誘導体とを合計量で、通常1.100〜0.900モル、好ましくは1.100〜0.990モル、より好ましくは1.060〜1.020モルの割合で使用する。縮合反応は、ポリアミック酸を合成する常法に従って、各成分をジメチルアセトアミドなどの極性有機溶媒中で反応させればよい。反応は、通常、反応温度が−20℃〜+80℃の範囲で、反応時間が0.5〜80時間の範囲で行われる。モノマーの反応系への溶解性が低い場合は、モノマーが溶解できる温度まで昇温し、反応系内で溶解可能なオリゴマーとなるまで予備的な反応をさせるといった処理をすることもできる。ただし、本発明で使用するポリアミック酸(A2)は、特定の合成法に限定されるものではない。
【0111】
<感光性ポリイミド前駆体>
本発明の感光性ポリイミド前駆体は、主鎖中に式(1)で表される繰り返し単位を有し、かつ、両末端に化学線官能基が導入されたものである。
【0112】
本発明では、感光性ポリイミド前駆体を含有する感光性ポリイミド樹脂組成物がアルカリ現像液またはアルカリ水溶液で現像可能なように、モノマーの種類とその組み合わせを選択することができる。また、本発明では、ポリイミド樹脂膜の熱膨張率及び残留応力を低くするために、モノマーの種類とその組み合わせを選択する。すなわち、テトラカルボン酸またはその酸無水物として、剛直構造の芳香族テトラカルボン酸またはその酸無水物を70〜100モル%の割合で含有するものを使用し、かつ、ジアミンとして、剛直構造の芳香族ジアミンを70〜100モル%の割合で含有するものを使用する。その好ましい組み合わせの具体例は、前記したとおりである。
【0113】
ポリイミド系感光性樹脂組成物をアルカリ現像液またはアルカリ水溶液で現像可能とするために、式(1)で表される繰り返し単位を単位分子量と定義した場合、カルボキシル基一個当りの単位分子量の値、即ち、単位分子量/COOHの比が200〜300の範囲内となるように、モノマーの種類とその組み合わせを選択することが望ましい。
【0114】
他方、有機溶媒を現像液として用いる場合は、式(1)で表される繰り返し単位を単位分子量と定義した場合、カルボキシル基一個当りの単位分子量の値(単位分子量/COOH)が300超過400以下の範囲内に調整するように、モノマーの種類とその組み合わせを選択することが望ましい。
【0115】
また、本発明においては、感光性ポリイミド前駆体を用いて形成したポリイミド樹脂膜の熱膨張率が、好ましくは20ppm/℃以下、より好ましくは10ppm/℃以下となるように、各モノマーの種類と組み合わせを選択することが望ましい。
【0116】
好ましいモノマーの組み合わせは、残留応力、破断強度、破断伸び、密着性、反りなどの観点からも行うことが望ましい。ポリイミド樹脂膜の残留応力は、好ましくは35MPa以下、より好ましくは30MPa以下、特に好ましくは20MPa以下である。ポリイミド樹脂膜の破断強度は、好ましくは100MPa以上、より好ましくは120MPa以上、特に好ましくは150MPa以上である。ポリイミド樹脂膜の破断伸びは、好ましくは3%以上、より好ましくは5%以上、特に好ましくは7%以上である。
【0117】
2.光重合性官能基を有する感光助剤:
本発明において使用可能な感光助剤は、一般に光硬化モノマーとして公知のものであれば特に制限されない。
【0118】
感光助剤としては、ペンタエリスリトールトリアクリレートなどの(メタ)アクリル酸系化合物が代表的なものである。
【0119】
アクリル酸系化合物としては、例えば、アクリル酸、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ベンジルアクリレート、カルビトールアクリレート、メトキシエチルアクリレート、エトキシエチルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ブチレングリコールモノアクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルアクリレート、グリシジルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ペンタエリスリトールモノアクリレート、トリメチロールプロパンモノアクリレート、アリルアクリレート、1,3−プロピレングリコールジアクリレート、1,4−ブチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、2,2−ビス−(4−アクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス−(4−アクリロキシプロピルキシフェニル)プロパン、トリメチロールプロパンジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリアクリルホルマール、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸のアクリル酸エステル、式(25)
【0120】
【化31】
【0121】
(式中、bは、1〜30の整数を表す。)
で表される化合物、式(26)
【0122】
【化32】
【0123】
(式中、c及びdは、c+d=2〜30となる整数を表す。)
で表される化合物、式(27)
【0124】
【化33】
【0125】
で表される化合物、式(28)
【0126】
【化34】
【0127】
で表される化合物等を挙げることができる。
【0128】
メタクリル酸系化合物としては、例えば、メタクリル酸、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、オクチルメタクリレート、エチルヘキシルメタクリレート、メトキシエチルメタクリレート、エトキシエチルメタクリレート、ブトキシエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレート、ヒドロキシペンチルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、アリルメタクリレート、トリメチロールプロパンモノメタクリレート、ペンタエリスリトールモノメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、2,2−ビス−(4−メタクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、トリメチロールプロパンジメタクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、テトラメチロールメタンテトラメタクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸のメタクリル酸エステル、式(29)
【0129】
【化35】
【0130】
(式中、eは、1〜30の整数を表す。)で表される化合物、式(30)
【0131】
【化36】
【0132】
(式中、f及びgは、f+g=1〜30となる整数を表す。)
で表される化合物、式(31)
【0133】
【化37】
【0134】
で表される化合物、式(32)
【0135】
【化38】
【0136】
で表される化合物等を挙げることができる。
【0137】
これらの化合物は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。これらの中でも、特に、ペンタエリスリトールトリアクリレート、及び式(25)で表される化合物(b=3)が好ましい。
【0138】
感光助剤の使用量は、本発明のポリアミック酸と相溶する限り特に限定されないが、その使用量が極めて多量である場合には、ポリアミック酸の熱処理によるポリイミド化の際に分解・除去し難く、しかも膜の残留応力が高くなり、半導体素子基板にそり等の変形を生じやすくなるという問題がある。そこで、感光助剤は、感光性ポリイミド前駆体100重量部に対して、通常10〜50重量部、好ましくは15〜40重量部、より好ましくは20〜35重量部の割合で使用することが望ましい。
【0139】
3.光重合開始剤:
本発明において使用する光重合開始剤としては、例えば、ミヒラーズケトン、ベンゾイン、2−メチルベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、2−t−ブチルアントラキノン、1,2−ベンゾ−9,10−アントラキノン、アントラキノン、メチルアントラキノン、4,4′−ビス−(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、アセトフェノン、ベンゾフェノン、チオキサントン、1,5−アセナフテン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−1−プロパノン、ジアセチルベンジル、ベンジルジメチルケタール、ベンジルジエチルケタール、ジフェニルジスルフィド、アントラセン、フェナンスレンキノン、リボフラビンテトラブチレート、アクリルオレンジ、エリスロシン、フェナンスレンキノン、2−イソプロピルチオキサントン、2,6−ビス(p−ジエチルアミノベンジリデン)−4−メチル−4−アザシクロヘキサノン、6−ビス(p−ジメチルアミノベンジリデン)−シクロペンタノン、2,6−ビス(p−ジエチルアミノベンジリデン)−4−フェニルシクロヘキサノン、式(33)
【0140】
【化39】
【0141】
で表されるアミノスチリルケトン、式(34)
【0142】
【化40】
【0143】
(式中、R14は、5〜20個の環原子を有する芳香族炭素環または複素環であり、R11、R12、及びR13は、それぞれ独立に、水素原子、ヒドロキシル基、炭素数1〜5個のアルキル基、ジアルキルアミノ基、アルコキシ基、またはアシロキシ基である。)
で表される3−ケトクマリン化合物、式(35)
【0144】
【化41】
【0145】
(式中、R20及びR21は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜5個のアルキル基、ジアルキルアミノ基、アルコキシ基、またはアシロキシ基である。)
で表されるビスクマリン化合物、N−フェニルグリシン、N−フェニルジエタノールアミン、3,3′,4,4′テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノンなどを挙げることができる。
【0146】
光重合開始剤の使用量は、特に限定されないが、感光性ポリイミド前駆体100重量部に対して、通常0.01〜10重量部、好ましくは0.1〜5重量部、より好ましくは1〜5重量部である。
【0147】
4.溶剤:
本発明において使用する溶剤としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、ヘキサメチルリン酸トリアミド、γ−ブチロラクロンなどの極性溶剤が挙げられる。
【0148】
これらの極性溶剤のほかに、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、シュウ酸ジエチル、マロン酸ジエチル等のエステル類;ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類;ジクロロメタン、1,2−ジクロルエタン、1,4−ジクロルブタン、トリクロルエタン、クロルベンゼン、o−ジクロルベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素類なども使用することができる。
【0149】
これらの溶剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。これらの中でも、N,N−ジメチルアセトアミドやN−メチル−2−ピロリドンなどが特に好ましい。
【0150】
溶剤の使用量は、各成分を均一に溶解するのに充分な量とする。特に、(A)ポリアミック酸を溶解するに足る量比で使用する。溶剤の使用割合は、溶剤の種類やポリアミック酸によって異なるが、感光性ポリイミド前駆体に対して、通常3〜25倍量(重量比)、好ましくは5〜20倍量、より好ましくは6〜10倍量の範囲内である。
【0151】
5.その他の添加剤:
本発明の組成物には、さらに必要に応じて接着助剤、レベリング剤、重合禁止剤等の各種添加剤を使用することができる。各種添加剤の中でも、1H−テトラゾール、5,5′−ビス−1H−テトラゾール、これらの誘導体などの1H−テトラゾール類を添加することにより、銅及び銅合金に対する腐食性を防止し、ひいては、ポリイミド樹脂膜の基板に対する密着性の向上、感光性被膜の残膜防止などを図ることができる。
【0152】
1H−テトラゾール、及びその誘導体としては、未置換の1H−テトラゾール;5−メチル−1H−テトラゾール、5−フェニル−1H−テトラゾール、5−アミノ−1H−テトラゾールなどの5置換−1H−テトラゾール;1−メチル−1H−テトラゾールなどの1置換−1H−テトラゾール;1−フェニル−5−メルカプト−1H−テトラゾールなどの1置換−5置換−1H−テトラゾール;などを挙げることができる。これらの中でも1H−テトラゾール、及び5置換−1H−テトラゾールが特に好ましい。
【0153】
1H−テトラゾール類は、感光性ポリイミド前駆体100重量部(固形分基準)に対して、通常0.05〜20重量部、好ましくは0.1〜5重量部、より好ましくは0.3〜3.0重量部の配合割合で使用する。この配合割合が過小であると添加効果が小さく、逆に、過大であると効果が飽和する。1H−テトラゾール類は、通常、感光性ポリイミド前駆体の溶液に添加して、感光性ポリイミド樹脂組成物(溶液)とする。得られた感光性ポリイミド樹脂組成物は、基板等に塗布して絶縁膜を形成する用途に使用される。
【0154】
5.パターン形成方法:
本発明の感光性ポリイミド樹脂組成物の使用方法は、先ず、該樹脂組成物を適当な支持体、例えば、シリコンウエハやセラミック、アルミニウム、銅基板などの上に塗布する。塗布方法としては、スピンナーを用いた回転塗布、スプレーコーターを用いた噴霧塗布、浸漬、印刷、ロールコーティングなどの方法がある。次に、50〜100℃の低温でプリベークして塗膜を乾燥後、所望のパターン形状に化学線を照射する。化学線としては、X線、電子線、紫外線、可視光線などが使用できるが、200〜500nmの範囲内の波長のものが好ましい。次に、未照射部を現像液で溶解除去することにより、レリーフパターンを得る。
【0155】
本発明では、現像液として、アルカリ現像液またはアルカリ性水溶液を使用することができる。アルカリ現像液とは、塩基性化合物を有機溶媒が50%以上の溶媒に溶解して得た現像液である。有機溶媒としては、例えば、N−メチルピロリドン、N−アセチルピロリドン、N,N′−ジメチルホルムアミド、N,N′−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトンなどの極性溶媒が挙げられる。また、これらに、メタノール、エタノール等のアルコール類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素化合物;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;テトラヒドロフラン、ジオキサジン等のエーテル類;等の一般的有機溶媒または水を混合して用いることができる。
【0156】
アルカリ水溶液とは、塩基性化合物を水が51%以上の溶媒に溶解して得た現像液である。水以外の溶媒成分としては、例えば、N−メチルピロリドン、N,N′−ジメチルホルムアミド、N,N′−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトンなどの非プロトン性極性溶媒;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素化合物;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタンノン等のケトン類;酢酸メチル、乳酸メチル等のエステル類;テトラヒドロフラン、ジオキサジン等のエーテル類;エチレングリコール、ジエチレングリコール等のジオール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のセロソルブ類;などが挙げられる。
【0157】
塩基性化合物とは、例えば、アルカリ金属や4級アンモニウムの水酸化物、炭酸塩、重炭酸塩、ケイ酸塩、リン酸塩、ピロリン酸塩、酢酸塩、アミン塩等が用いられる。これらの具体例としては、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、コリン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0158】
塩基性化合物の使用量は、溶媒100重量部に対して、通常0.001〜50重量部、好ましくは0.05〜30重量部である。この使用量が少なすぎると現像性が低下する傾向があり、多すぎると塩基性化合物が完全に溶解せず不均一な溶液となったり、アルカリ濃度が高すぎて、ポリイミド前駆体に対する溶解性が強すぎるため、未露光部の表面荒れを起こしたりする。また、塩基性化合物は、現像液のpHが通常10.0以上、好ましくは11.0〜13.5の範囲内になるような割合で使用することが望ましい。現像液のpHが10.0未満であると、現像速度が低下する傾向にあり、13.5を越えると、ポリイミド前駆体に対する溶解性が強すぎるため、未露光部の膨潤、表面荒れを起こしたり、露光部と未露光部の溶解度差が少なく、良好な形状のパターン形成が困難になる。
【0159】
現像液は、アルカリ現像液及びアルカリ水溶液をそれぞれ単独で用いてもよいし、混合して用いてもよい。アルカリ現像液とアルカリ水溶液を混合して用いる場合は、有機溶媒の使用量が水100重量部に対して、通常0.1〜100重量部、好ましくは1.0〜50重量部である。現像液としては、人体に対してより安全であって、安価なアルカリ水溶液を用いることが好ましい。現像液としてアルカリ水溶液を使用する場合、感光性ポリイミド前駆体としては、カルボキシル基一個当りの単位分子量の値が205〜280の範囲内に入るものが好ましい。
【0160】
現像液としては、有機溶媒を用いることもできる。有機溶媒として前記の如きものを使用することができるが、水を少量加えてもよい。式(1)で表される繰り返し単位を単位分子量と定義した場合、カルボキシル基一個当りの単位分子量の値(単位分子量/COOH)が300超過400以下の範囲内にある感光性ポリイミド前駆体の場合、アルカリ現像液か有機溶媒を現像液とすることが好ましい。
【0161】
現像方法としては、スプレー、パドル、浸漬、超音波浸漬などの各種方式を採用することができる。カルボキシル基一個当りの単位分子量の値(単位分子量/−COOH)が200に近い場合には、パドル現像が適することが多く、300に近い場合には、超音波浸漬現像が適することが多い。現像速度は、現像液の液温によっても影響される。したがって、現像液のpHや液温、あるいは現像法などの諸条件を予め点検して、最適の条件を設定することが望ましい。
【0162】
現像により形成されたレリーフパターンは、リンス液により洗浄し、現像液を除去する。リンス液としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、水などを挙げることができ、これらを単独または混合して使用する。リンス液としては、水単独または水とアルコール類との混合液が特に好ましい。リンス後、加熱処理を行って、イミド環を形成し、ポリイミド前駆体をポリイミド化して、耐熱性に富むパターンを得る。
【0163】
6.半導体素子の製造方法:
本発明の感光性ポリイミド前駆体を含有する感光性ポリイミド樹脂組成物は、各種半導体素子の製造方法に使用することができる。その具体例は、次のとおりである。
【0164】
<多層回路基板の製造方法>
図1〜図5に示す方法により、シリコンウエハ上に多層回路基板を製造することができる。すなわち、(i)シリコンウエハ1上に金属(例えば、銅)からなる導体層2を形成する工程、(ii)導体層2の上に感光性ポリイミド樹脂組成物を塗布し、プリベークして塗膜3を形成する工程、(iii)塗膜の上からパターン状に露光4し、ビア5を形成する工程(この工程では、前記パターン形成方法を採用することができる)、(iv)塗膜を加熱して感光性ポリイミド樹脂組成物を硬化させる工程、(v)金属メッキにより、ビアを金属で充填するとともに、硬化塗膜上に配線パターン6を形成する工程、及び(vi)前記工程(ii)乃至(v)と同様の工程を必要回数繰り返して多層化(図4〜5)する。この方法によって、多層回路基板を製造することができる。
【0165】
多層化後、シリコンウエハの多層回路が形成されていない面を研磨して、シリコンウエハを薄化させる工程を付加することができる(図6)。本発明の感光性ポリイミド樹脂組成物を用いると、シリコンウエハの薄化工程で、シリコンウエハにほとんど反りを生じることがない。
【0166】
上記の製造方法により得られた多層回路基板からシリコンウエハを除去することにより、シリコンウエハのない多層回路内臓フィルム基板を製造することができる。この場合、銅層も除去することができる。
【0167】
<多層回路内臓フィルム基板の製造方法>
銅基板を用いて前記と同様の工程で多層化し、その後 銅層を除去することにより、多層回路内臓フィルム基板を製造することができる。すなわち、(I)銅基板上に感光性ポリイミド樹脂組成物を塗布し、プリベークして塗膜を形成する工程、(II)塗膜の上からパターン状に露光し、ビアを形成する工程(パターン形成方法を利用)、(III)塗膜を加熱して感光性ポリイミド樹脂組成物を硬化させる工程、(IV)金属メッキにより、ビアを金属で充填するとともに、硬化塗膜上に配線パターンを形成する工程、(V)前記工程(I)乃至(IV)と同様の工程を繰り返して多層回路を形成する工程、及び(VI)銅基板を除去する工程により、多層回路内臓フィルム基板を製造することができる。
【0168】
<パッシベ−ション膜の形成>
シリコンウエハに形成された回路上に感光性ポリイミド樹脂組成物を塗布し、プリベークした後、露光することにより、ポリイミド樹脂からなるパッシベ−ション膜が形成された半導体素子を製造することができる。この際、紫外線露光を行うことにより、デバイスの表面電極を露出させる。その後、硬化(キュア)させる。
【0169】
7.ポリイミド樹脂膜:
本発明の感光性ポリイミド樹脂組成物は、例えば、半導体素子関連、LSIバッファーコート膜、パッシベーション膜などの用途のみならず、多層回路の層間絶縁膜やフレキシブル銅張板のカバーコート膜、各種メタルコア基板やセラミック基板のカバー膜、ソルダーレジスト膜、液晶配向膜などとしても使用することができる。
【0170】
【実施例】
以下に実施例及び比較例を挙げて、本発明についてより具体的に説明する。
【0171】
[実施例1]
反応器に2,2′−ジ(p−アミノフェニル)−6,6′−ビスベンゾオキサゾール28.11g(0.0672モル)、溶剤200g〔ジメチルアセトアミド(DMAc)100g及びN−メチル−2−ピロリドン(NMP)100g〕を投入し、混合溶液を調製した。この溶液に、氷冷攪拌下、ピロメリット酸二無水物15.26g(0.07モル)を粉体のまま添加し、溶剤20g(DMAc10g及びNMP10g)で洗浄添加した。
【0172】
次いで、氷冷下で2時間攪拌した後、反応温度を30℃に昇温し、2時間反応させた。反応液がほぼ均一になった時点で、反応液を10℃に冷却し、次いで、p−アミノ安息香酸〔トリス(メタクリロイル)ペンタエリスリトール〕エステル2.57g(0.0056モル)を添加し、溶剤20g(DMAc10g及びNMP10g)を洗浄添加した。10℃で2時間、次いで、25℃で12時間反応させ、感光性ポリイミド前駆体(ポリアミック酸)を樹脂濃度16重量%で合成した。この感光性ポリイミド前駆体(B−1)の末端変性率は、8%になる。
【0173】
[実施例2]
反応器に2,2′−ジ(p−アミノフェニル)−6,6′−ビスベンゾオキサゾール27.53g(0.0658モル)、溶剤200g(DMAc100g及びNMP100g)を投入し、混合溶液を調製した。この溶液に、氷冷攪拌下、ピロメリット酸二無水物15.26g(0.07モル)を粉体のまま添加し、溶剤20g(DMAc10g及びNMP10g)で洗浄添加した。
【0174】
次いで、氷冷下で2時間攪拌した後、反応温度を30℃に昇温し、2時間反応させた。反応液がほぼ均一になった時点で、反応液を10℃まで冷却し、p−アミノ安息香酸〔トリス(メタクリロイル)ペンタエリスリトール〕エステル3.86g(0.0084モル)を添加し、次いで、溶剤25g(DMAc12g及びNMP13g)を洗浄添加した。10℃で2時間、次いで、25℃で12時間反応させ、感光性ポリイミド前駆体を樹脂濃度16重量%で合成した。この感光性ポリイミド前駆体(B−2)の末端変性率は、12%になる。
【0175】
[実施例3]
実施例1において、2,2′−ジ(p−アミノフェニル)−6,6′−ビスベンゾオキサゾールを28.41g(0.0679モル)、p−アミノ安息香酸〔トリス(メタクリロイル)ペンタエリスリトール〕エステルを1.93g(0.0042モル)、溶剤全量を240gに変更した以外は、同様の操作で感光性ポリイミド前駆体を樹脂濃度16重量%で合成した。この感光性ポリイミド前駆体(B−3)の末端変性率は、6%になる。
【0176】
[実施例4]
反応器に2,2′−ジ(p−アミノフェニル)−6,6′−ビスベンゾオキサゾール27.27g(0.0652モル)、1,3−ジアミノプロピル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン0.523g(0.002モル)、溶剤200g(DMAc100g及びNMP100g)を投入し、混合溶液を調製した。この溶液に、氷冷攪拌下、ピロメリット酸二無水物15.26g(0.07モル)を粉体のまま添加し、溶剤20g(DMAc10g及びNMP10g)で洗浄添加した。
【0177】
次いで、氷冷下で2時間攪拌した後、反応温度を30℃に昇温し、2時間反応させた。反応液がほぼ均一になった時点で、反応液を10℃まで冷却、次いで、p−アミノ安息香酸〔トリス(メタクリロイル)ペンタエリスリトール〕エステル2.57g(0.0056モル)を添加し、溶剤20g(DMAc10g及びNMP10g)を洗浄添加した。10℃で2時間、次いで、25℃で12時間反応させ、感光性ポリイミド前駆体(B−4)を樹脂濃度16重量%で合成した。
【0178】
[実施例5]
実施例4において、2,2′−ジ(p−アミノフェニル)−6,6′−ビスベンゾオキサゾールを26.71g(0.0064モル)、1,3−ジアミノプロピル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンを0.835g(0.00336モル)、溶剤全量を238.5gに変更した以外は、同様の操作で感光性ポリイミド前駆体(B−5)を樹脂濃度16重量%で合成した。
【0179】
[実施例6]
実施例1において、酸無水物としてピロメリット酸二無水物13.73g(0.063モル)とベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物2.26g(0.007モル)を使用し、かつ、溶剤全量を245gに変更した以外は、同様の操作で感光性ポリイミド前駆体(B−6)を樹脂濃度16重量%で合成した。
【0180】
[実施例7]
実施例1において、酸無水物としてビフェニルテトラカルボン酸二無水物20.59g(0.07モル)を使用し、かつ、溶剤全量を270gに変更した以外は同様の操作で感光性ポリイミド前駆体(B−7)を樹脂濃度16重量%で合成した。
【0181】
[実施例8]
実施例1において、ジアミンとしてp−フェニレンジアミン7.26g(0.0672モル)、酸無水物としてビフェニルテトラカルボン酸二無水物20.59gをそれぞれ使用し、かつ、溶剤全量を160gに変更した以外は、同様の操作で感光性ポリイミド前駆体(B−8)を樹脂濃度16重量%で合成した。
【0182】
[比較例1]
反応器に4,4′−ジアミノベンズアニリド65.5g(0.288mol)と、ジメチルアセトアミド693gを仕込み、50℃で攪拌して溶解した。10℃以下に冷却後、この溶液にピロメリット酸二無水物65.4g(0.300mol)、末端変性アミンとしてp−アミノ安息香酸〔トリス(メタクリロイル)ペンタエリスリトール〕エステル11.02g(0.024mol)を粉体で加え、氷冷攪拌3時間、室温攪拌24時間を行い、感光性ポリイミド前駆体(B−9)を合成した。
【0183】
[比較例2]
比較例1において、酸無水物をピロメリット酸二無水物52.3g(0.240モル)と3,3′4,4′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物19.33g(0.06モル)に変更した以外は、同一の条件で感光性ポリイミド前駆体(B−10)を合成した。
【0184】
[比較例3]
実施例1において、酸無水物としてピロメリット酸二無水物7.64g(0.035モル)と3,3′4,4′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物11.284g(0.035モル)を用い、かつ、溶剤全量を260.4g(DMAC130.2g及びNPM130.2g)に変更したこと以外は、同様に操作して感光性ポリイミド前駆体(B−11)を合成した。
【0185】
[比較例4]
反応器に4,4′−ジアミノベンズアニリド26.14g(0.115モル)及びジメチルアセトアミド757.1gを仕込み、50℃で攪拌して溶解した。ピロメリット酸二無水物22.02g(0.101モル)と3,3′,4,4′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物32.52g(0.101モル)を加えて、反応温度50℃で3時間反応させた。次いで、10℃以下に冷却した後、4,4′−ジアミノジフェニルエーテル34.44g(0.172モル)、ピロメリット酸二無水物10.68g(0.049mol)、3,3′,4,4′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物15.78g(0.049モル)、末端変性アミンとしてp−アミノ安息香酸〔トリス(メタクリロイル)ペンタエリスリトール〕エステル11.02g(0.024モル)を粉体で加え、氷冷攪拌3時間、室温攪拌24時間して、感光性ポリイミド前駆体(B−12)を合成した。
【0186】
実施例1〜8及び比較例1〜4で合成した感光性ポリイミド前駆体について、モノマー組成、化学線官能基による末端変性率、及び単位分子量/COOHを表1にまとめて示す。
【0187】
【表1】
【0188】
(脚注)
(1)PMDA:ピロメリット酸二無水物、
(2)BTDA:ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、
(3)s−BPDA:ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、
(4)NPN:2,2′−ジ(p−アミノフェニル)−6,6′−ビスベンゾオキサゾール、
(5)Siジアミン:1,3−ジアミノプロピル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、
(6)PPDA:p−フェニレンジアミン、
(7)DABA:4,4′−ジアミノベンズアニリド、
(8)ODA:4,4′−ジアミノジフェニルエーテル。
【0189】
[実施例9〜16及び比較例5〜8]
実施例1〜8及び比較例1〜4で合成した感光性ポリイミド前駆体を含有するワニスのそれぞれに、感光性ポリイミド前駆体の固形分100重量部に対して、光架橋助剤(トリエチレングリコールジアクリレート:「3EG−A」)28重量部、光重合開始剤(N−フェニルグリシン:「NPG」)2重量部、光重合開始剤〔3,3′,4,4′−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン:「BTTB」、日本油脂製)2重量部、及び銅腐蝕防止剤(1H−テトラゾール)0.5重量部を加え、さらに、溶剤を加えて樹脂濃度15重量%に調整し、均一溶液(感光性ポリイミド樹脂組成物)とした。これらの感光性ポリイミド樹脂組成物の組成を表2に示す。
【0190】
【表2】
【0191】
実施例9〜16及び比較例5〜8で調製した各感光性ポリイミド樹脂組成物を用いて、物性の測定を行った。結果を表3に示す。
【0192】
(1)シリコンウエハ基板に対する反りと残留応力の測定:
各感光性ポリイミド樹脂組成物(ワニス)を6インチのシリコンウエハ(厚み625μm)上にスピナーで塗布し、60℃で30分間オーブンで乾燥した。このようにして膜を形成したシリコンウエハに、PL−A501Fにより露光エネルギー300mj/cm2で全面露光した。次いで、現像液(CPN:NMP:H2O=63:30:7重量比)に2分間浸漬し、次いで、イソプロピルアルコールに60秒間浸漬してリンスした後、窒素ガスでブローして表面を乾燥した。次に、窒素雰囲気下、400℃で2時間加熱してイミド化した。得られた膜の厚みは、約5μmであった。イミド化後、シリコンウエハ(130mm間)に生じた反りを触針式表面形状測定機(P−10:テンコール社製)で測定した。その測定値とイミド化後の膜厚に基づいて、P−10内臓の残留応力計算プログラムより計算で応力を測定した。なお、「反り」(μm)がマイナス(−)の値は、ポリミド膜側に反ったことを示す。
【0193】
(2) 熱膨張率の測定:
応力測定と同一のプロセスでポリイミド膜を作製した。この膜を50%フッ酸を用い、シリコンウエハから剥離し、蒸留水で十分洗浄後、窒素ガス雰囲気下、130℃2時間乾燥した。この膜をセイコー電子工業社製TMA120c型を用いて、以下の条件で測定した。
測定条件:試験片形状=幅4mm、長さ25mm、測定長10mm、
測定様式:引張り荷重=2g、
測定温度:1サイクル=室温→300℃→20℃
2サイクル=20℃→200℃
昇温2サイクル目の20〜200℃での平均膨張率の変化を記載した。
昇温速度:5℃/分、
測定雰囲気:窒素ガス中。
【0194】
(3)銅との密着性評価:
シリコンウエハ上に銅膜をスパッタプロセスで製膜して得た銅基板上に感光性ポリイミド樹脂組成物(ワニス)を塗布し、応力測定と同様のプロセスでイミド化膜を作製した。プレッシャークッカーテスト(121℃、2.1気圧、90℃、100時間)後、基板とイミド化膜との密着性をセバスチャン法で評価した。また、プレッシャークッカーテスト(121℃、2.1気圧、90℃、100時間)後、碁盤目テストにより、クロスカット剥離試験を行い密着性を評価した。
【0195】
(4)破断強度と破断伸びの測定:
シリコンウエハ上に感光性ポリイミド樹脂組成物(ワニス)をスピンコートした後、60℃で30分間プリベークして塗膜を得た。次いで、基板の塗膜面全体を露光(PLA−501A、全波長露光、G線換算300mj/cm2)した。その後、塗膜面に所定の現像液とリンス液とを接触させた後、400℃で2時間硬化して、シリコンウエハ上にポリイミド樹脂膜(厚み約5μm)を形成した。正確な膜厚は、テンコール社製の膜厚測定機P−10を用いて測定した。このようにして得られたポリイミド樹脂膜を有するシリコンウエハを50%フッ酸水溶液で処理し、シリコンウエハからポリイミド樹脂膜を取り出し、純水で十分に洗浄した。120℃で2時間乾燥した後、膜の破断強度と破断伸びを測定した。
<測定条件>
測定機:島津製作所製 引張試験機(AUTOGRAPHAGS−5KNG)、フィルム幅:10mm、
引張速度:20mm/min.
膜厚は、膜厚測定機P−10で測定した値を入力した。10回の試験結果から、上下試験結果を除いた8回の測定値の平均値を算出した。
【0196】
【表3】
【0197】
表3の測定結果から明らかなように、本発明の感光性ポリイミド前駆体を含有する感光性ポリイミド樹脂組成物(ワニス)を用いると、熱膨張率と残留応力が小さく、銅基板や銅配線などとの密着性に優れ、破断強度と破断伸びが大きいポリイミド膜を形成することができる。しかも、シリコンウエハ上に膜を形成したとき、シリコンウエハに生じる反りが小さい。
【0198】
より具体的に、本発明の感光性ポリイミド前駆体を含有する感光性ポリイミド樹脂組成物を用いて形成したポリイミド樹脂膜の熱膨張率は、好ましくは20ppm/℃以下、より好ましくは10ppm/℃以下となる。ポリイミド樹脂膜の残留応力は、好ましくは35MPa以下、より好ましくは30MPa以下、特に好ましくは20MPa以下となる。
【0199】
ポリイミド樹脂膜の破断強度は、好ましくは100MPa以上、より好ましくは120MPa以上、特に好ましくは150MPa以上となる。ポリイミド樹脂膜の破断伸びは、好ましくは3%以上、より好ましくは5%以上、特に好ましくは7%以上となる。
【0200】
プレッシャークッカーテスト(PCT)後の銅基板に対する密着性は、クロスカット試験で0/25の水準を確保し、セバスチャン法では、20Mpa以上の水準を確保することができる。反りは、絶対値で15μm以下の水準を確保することができ、モノマー組成を選択することにより、5μm以下、さらには3μm以下にすることができる。
【0201】
[実施例17](薄膜多層回路基板)
6インチのシリコンウエハ上に銅の導体層を形成した後、実施例12で調製した感光性ポリイミド樹脂組成物(ワニス)を塗布し、プリベークを行った。ガラスマスクを用いて、紫外線を照射して露光し、主としてビアのパターンを形成した。その後、400℃に加熱して硬化(イミド化)した。この時のポリイミド樹脂膜の膜厚は、10μmであり、硬化後のシリコンウエハの反りは、10μm以下と小さかった。次いで、形成したビアを銅メッキで充填するのと同時に配線も銅メッキで形成した。その後、さらに同様の工程でポリイミド樹脂膜と配線(回路)を形成した。上記の工程を繰り返して、ポリイミド樹脂膜が5層の薄膜多層配線基板を作製した。この時の基板の反りは、50μm以下であった。
【0202】
[実施例18](薄膜多層回路内臓フィルム基板)
シリコンウエハ上に実施例17の手法で、薄膜多層回路を形成した後、シリコンウエハをグラインダー加工で50μm以下に薄膜化し、次いで、ウエットエンチング(ふっ酸、硝酸)により、シリコンウエハを全て除去した。この時に熱膨張の小さい絶縁材料を使ったことで、フィルム状態での反りやうねりはなく、フラットな状態となった。
【0203】
[実施例19]
銅基板上に、実施例14で調製した感光性ポリイミド樹脂組成物(ワニス)を用いて、実施例17の手法により薄膜多層回路を形成した後、銅基板をウエットエンチングにより全て除去した。この時に作製したフィルムは、反りやうねりはなく、フラットな状態となった。
【0204】
[実施例20](デバイス上のパッシベーション膜)
シリコンウエハ上に形成した回路上にパッシベーション膜として、反りの少ないポリイミド樹脂膜を形成することができる感光性ポリイミド樹脂組成物(実施例9)を塗布・プリベークした後、紫外線露光を行い、デバイスの表面電極を露出させた。その後、400℃で硬化して、膜厚約2μmのパッシベーション膜を形成した。
【0205】
【発明の効果】
本発明によれば、熱膨張率と残留応力が小さく、銅基板や銅配線などとの密着性に優れ、破断強度と破断伸びが大きいポリイミド膜を形成することができ、しかもシリコンウエハ上に膜を形成したとき、シリコンウエハに生じる反りが小さい感光性ポリイミド前駆体、及び該ポリイミド前駆体を含有する感光性ポリイミド樹脂組成物が提供される。また、本発明によれば、このような優れた諸特性を有する感光性ポリイミド樹脂組成物を用いて、多層回路基板や多層回路内臓フィルム基板などの半導体素子を製造する方法が提される。
【図面の簡単な説明】
【図1】多層回路基板の製造工程(膜形成と露光工程)を示す断面図である。
【図2】多層回路基板の製造工程(ビア形成工程)を示す断面図である。
【図3】多層回路基板の製造工程(金属メッキ工程)を示す断面図である。
【図4】多層回路基板の製造工程(多層化工程)を示す断面図である。
【図5】多層回路基板の製造工程(多層回路基板の製造工程)を示す断面図である。
【図6】多層回路基板の製造工程(シリコンウエハの薄化工程)を示す断面図である。
【符号の説明】
1:シリコンウエハ、
2:導体層、
3:感光性ポリイミド樹脂組成物膜、
4:露光、
5:ビア、
6:金属メッキ(ビアの充填と配線)、
7:感光性ポリイミド樹脂組成物膜。
【発明が属する技術分野】
本発明は、感光性ポリイミド前駆体及び感光性ポリイミド樹脂組成物に関し、さらに詳しくは、熱膨張率と残留応力が小さく、銅基板や銅配線などとの密着性に優れ、破断強度と破断伸びが大きいポリイミド膜を形成することができ、しかもシリコンウエハ上に膜を形成したとき、シリコンウエハに生じる反りが小さい感光性ポリイミド前駆体、及び該ポリイミド前駆体を含有する感光性ポリイミド樹脂組成物に関する。また、本発明は、このような優れた諸特性を有する感光性ポリイミド樹脂組成物を用いて、多層回路基板や多層回路内臓フィルム基板などの半導体素子を製造する方法に関する。本発明において、半導体素子(半導体デバイスともいう)とは、半導体装置及び半導体塔載用基板などを広く含むものである。
【0002】
【従来の技術】
半導体素子の製造過程において、感光性樹脂組成物は、一般に、フォトレジストとして用いられ、エッチングなどの工程でその役割が終わると剥離除去されている。しかし、感光性樹脂組成物膜が、半導体素子の表面保護膜や層間絶縁膜として使用される場合には、永久膜として残されるために、電気的及び機械的に高度の特性が要求される。さらに、このような膜には、半導体製造工程で加わる高温に耐えることも必要となる。
【0003】
ポリイミド樹脂は、電気的特性、機械的特性、及び耐熱性に優れており、半導体素子の表面保護膜や層間絶縁膜などに使用されているが、微細な部分に選択的にポリイミド樹脂の膜を塗設するためには、感光性を付与するのが便利である。そこで、近年、このような用途に、感光性ポリイミド樹脂または感光性ポリイミド樹脂組成物の膜が使用されている。
【0004】
ところが、ポリイミド樹脂膜の熱膨張率は、一般に、20ppm/℃を超え、30ppm/℃以上となることも稀ではない。これに対して、金属基板の熱膨張率は、通常、20ppm/℃以下である。また、シリコンウエハの熱膨張率は、約3〜4ppm/℃である。このように、金属配線や各種基板の熱膨張率は、一般にポリイミド樹脂膜のそれよりも小さい。基板上にポリイミド樹脂膜を形成したとき、基板とポリイミド樹脂膜との間の熱膨張率の差が大きいと、半導体素子の製造工程や使用時における加熱や発熱により、クラックの発生、配線の断絶、基板の反りなどの問題が生じる。ポリイミド樹脂膜の残留応力が大きいと、同様の問題が生じやすい。
【0005】
特に、最近ではシリコンウエハの大型化(例えば、直径300mmの基板)に伴ない、ポリイミド樹脂から形成されたパッシベーション膜に起因する応力によって、基板へ反りが発生することが大きな問題となっている。ポリイミド樹脂膜を絶縁膜とする多層回路基板の製造も検討されている現在、極めて薄いシリコンウエハ(例えば、厚み50μm以下の基板)を用いた半導体素子において、基板の反りの低減は、極めて重要な課題の一つである。
【0006】
より具体的に説明すると、デジタルネットワーク情報社会の進化に対応して、マルチメディア機器を始めとするデジタル家電や携帯情報端末を中心とした電子機器の技術分野が著しく発展してきている。それに伴って、半導体素子(半導体装置や半導体回路基板等を含む)に対する多機能化や高性能化に対する要求が高まり、例えば、1チップに高度なシステム機能を詰め込んだシステム・オン・チップ(SOC)が注目を集めている。SOCは、従来ボード上で実現してきたシステムを1つのシリコン・チップ上で実現するもので、低消費電力、高性能、実装面積削減というメリットも大きい。
【0007】
最近、SOCと同等の機能を実現する手段として注目されているのが、システム・イン・パッケージ(SIP)である。SIPとは、複数のLSIを単一のパッケージに封止してシステム化を実現したものであり、最終的にはSOCと同等の機能を低コストで供給することを目指すものである。
【0008】
このような考え方は以前からあり、例えば、複数のLSIや受動部品を単一のパッケージに封止するハイブリッドIC、あるいは、汎用大型コンピュータの高速化を実現する手段として開発されたMCMなどは、SIPの一種である。しかし、これらは、非常に高価であって、SOCに対する優位性がなく、これまで主流技術としては認知されていなかった。しかし、最近SOC開発の長期化や、様々なシステム機能を1つのチップに統合するための開発リスクが問題となりはじめ、SOCと同等の機能を、短期間かつ低コストで実現できる可能性が大きいSIPが注目されている。
【0009】
SIPの実現に求められる実装基板の形態は、上下接続のためのスルーホールと薄膜配線層を有することが求められている。しかし、スルーホール形成技術には、シリコンウエハの薄化、ビアホールの形成、絶縁層の形成、導体回路層の形成など技術課題が多く、コストも掛かる。そのため、回路基板を安価かつ簡便に形成するために、薄膜配線層のみをインターポーザとして使用することが考えられる。
【0010】
従来のスルーホールのない薄膜多層配線基板としては、例えば、1枚の樹脂膜に導電性ペーストを充填したビアホールと配線を形成したものを、最後に一括積層したものが知られている。この薄膜多層配線基板は、比較的低コストで実現可能であるが、ビア径が120〜200μmで、L/Sが100μm/100μm〜200μm/200μmであり、微細化が困難である。
【0011】
ビア径30μm以下で、L/S=10μm/10μm以下を達成するには、シリコンウエハや銅基板上に薄膜多層配線層を形成するか、基板上に形成した薄膜多層配線層を分離して薄膜多層回路内臓フィルム基板とする方法が有効であると考えられる。
【0012】
セラミックなどの支持基板上に形成される薄膜多層の配線基板は、絶縁膜にポリイミド樹脂などの絶縁性樹脂を用いて多層化されているが、絶縁膜と支持基板との熱膨張率の差から発生する基板の反り量が大きくなり、多層にするのは困難である。
【0013】
半導体デバイスの回路が形成されたシリコンウエハ上に、パッシベーション膜としてポリイミド樹脂膜を設けることが知られている。ところが、近年の半導体デバイスは、大口径(例えば、200mmまたは300mm)のシリコンウエハ上に形成されるため、シリコンウエハの反りを抑制しつつ、その上にパッシベーション膜を形成することが非常に困難になっている。シリコンウエハの反りを低減するために、例えば、パッシベーション膜の膜厚を非常に薄くする方法や、様々な膜構成の中でシリコンウエハ上での応力を制御する方法などを工夫して、1層のパッシベーション膜を形成している。
【0014】
また、半導体デバイスの高密度化と微細化に伴い、従来の半導体プロセスをスケールアップしたL/S=10μm/10μmを実現する配線技術が必要となってきている。このような微細な配線層を大口径シリコンウエハ上に形成するためには、配線層の絶縁膜として使用する樹脂材料の低熱膨張率化が必須となってくる。具体的には、絶縁膜の熱膨張率とシリコンウエハの熱膨張率(約3ppm/℃)との間の差を小さくすることが課題となる。一般的なポリイミド樹脂膜の熱膨張率は、20ppm/℃を超えている。熱膨張率の大きなポリイミド樹脂膜を大口径シリコンウエハ上に一層形成した場合、100μm程度の反りが発生するため、ポリイミド樹脂膜を用いて多層回路基板を作製することは困難である。
【0015】
半導体デバイスを3次元的に積み上げた構造のものとして、高密度実装を実現するためには、半導体デバイスの厚さを薄くする必要がある。その方法として、厚いシリコンウエハ上に多層回路を形成しておいてから、シリコンウエハを研磨して薄化するプロセスが用いられている。シリコンウエハを薄くしていくと、シリコンウエハ上に形成されている絶縁膜の応力によって、反りやうねりが大きくなる。
【0016】
この反りを小さくするために、熱膨張率が小さくなるように制御したポリイミド樹脂材料が求められている。しかし、従来の感光性ポリイミド樹脂組成物を用いた製膜技術において、露光後の樹脂膜の熱膨張率を20ppm/℃以下、さらには10ppm/℃以下に制御することは困難であった。特にネガ型の感光性ポリイミド樹脂組成物は、パターン形成後、加熱してイミド化すると、線膨張率が急に高くなる。
【0017】
本発明者らは、主鎖中にテトラカルボン酸またはその酸無水物とジアミンとの重縮合生成物から形成された繰り返し単位を有し、その両末端に、光重合可能な炭素−炭素二重結合を有する置換基を分子内に有するアミノベンゼン類またはトリメリット酸誘導体により末端変性された構造の化学線官能基を有する感光性ポリイミド前駆体(すなわち、感光性ポリアミック酸)について、該繰り返し単位を単位分子量とした場合、カルボキシル基一個当りの単位分子量の値(単位分子量/COOH)が200〜300の範囲内となるように、テトラカルボン酸またはその酸無水物とジアミンとの組み合わせを工夫することにより、基板上に、残留応力が40MPa以下で、熱膨張率が30ppm/℃以下のポリイミド膜を形成することを提案した(例えば、特許文献1参照。)。
【0018】
【特許文献1】
特開平11−282157号公報 (第1−3頁)
【0019】
【発明が解決しようとする課題】
特許文献1に開示されている感光性ポリイミド樹脂組成物は、熱膨張率及び残留応力が小さなポリイミド樹脂膜を形成することができ、しかもアルカリ現像液またはアルカリ水溶液を用いて現像することができる。ところが、本発明者らが更に検討した結果、特許文献1に具体的に開示されている感光性ポリイミド前駆体を用いた場合、銅基板などに対する密着性が低く、特にプレッシャークッカーテスト(PCT)後の密着性が低いことが判明した。また、特許文献1に具体的に開示されている感光性ポリイミド前駆体は、熱膨張率と残留応力を低減させた場合、破断強度や破断伸びが小さくなる傾向がある。
【0020】
そこで、本発明の目的は、熱膨張率と残留応力が小さく、銅基板や銅配線などとの密着性に優れ、破断強度と破断伸びが大きいポリイミド膜を形成することができ、しかもシリコンウエハ上に膜を形成したとき、シリコンウエハに生じる反りが小さい感光性ポリイミド前駆体、及び該ポリイミド前駆体を含有する感光性ポリイミド樹脂組成物を提供することにある。
【0021】
本発明の他の目的は、このような優れた諸特性を有する感光性ポリイミド樹脂組成物を用いて、多層回路基板や多層回路内臓フィルム基板などの半導体素子を製造する方法を提供することにある。
【0022】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究した結果、主鎖中にテトラカルボン酸またはその酸無水物とジアミンとの重縮合生成物から形成された繰り返し単位を有し、その両末端に、光重合可能な炭素−炭素二重結合を有する置換基を分子内に有するアミノベンゼン類またはトリメリット酸誘導体により末端変性された構造の化学線官能基を有する感光性ポリイミド前駆体(すなわち、感光性ポリアミック酸)において、テトラカルボン酸またはその酸無水物として、剛直構造の芳香族テトラカルボン酸またはその酸無水物を70〜100モル%の割合で含有するものを使用し、かつ、ジアミンとして、剛直構造の芳香族ジアミンを70〜100モル%の割合で含有するものを使用することにより、熱膨張率と残留応力が小さく、密着性に優れ、破断強度と破断伸びが大きいポリイミド膜を形成することができ、しかもシリコンウエハ上に膜を形成したとき、反りの発生を顕著に抑制することができる感光性ポリミド前駆体の得られることを見出した。
【0023】
本発明の感光性ポリイミド前駆体を含有する感光性ポリイミド樹脂組成物を絶縁材料として使用し、シリコンウエハ上に多層回路基板を作成すると、シリコンウエハを研磨して薄化しても、シリコンウエハにほとんど反りを生じさせることがない。本発明の感光性ポリイミド樹脂組成物を用いると、薄膜の多層回路基板や多層回路内臓フィルム基板を製造することができる。本発明は、これらの知見に基づいて完成するに至ったものである。
【0024】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、主鎖中に、テトラカルボン酸またはその酸無水物とジアミンとの重縮合生成物から形成された式(1)
【0025】
【化6】
【0026】
(式中、R1は、4価の有機基であり、R2は、2価の有機基である。)
で表される繰り返し単位を有し、その両末端に、光重合可能な炭素−炭素二重結合を有する置換基を分子内に有するアミノベンゼン類またはトリメリット酸誘導体により末端変性された構造の化学線官能基を有する感光性ポリイミド前駆体であって、テトラカルボン酸またはその酸無水物が、剛直構造の芳香族テトラカルボン酸またはその酸無水物を70〜100モル%の割合で含有するものであり、かつ、ジアミンが、剛直構造の芳香族ジアミンを70〜100モル%の割合で含有するものであることを特徴とする感光性ポリイミド前駆体が提供される。
【0027】
また、本発明によれば、(A)前記の感光性ポリイミド前駆体、(B)光重合性官能基を有する感光助剤、(C)光重合開始剤、及び(D)溶剤を含有する感光性ポリイミド樹脂組成物が提供される。
【0028】
さらに、本発明によれば、(i)シリコンウエハ上に金属からなる導体層を形成する工程、(ii)導体層の上に前記の感光性ポリイミド樹脂組成物を塗布し、プリベークして塗膜を形成する工程、(iii)塗膜の上からパターン状に露光し、ビアを形成する工程、(iv)塗膜を加熱して感光性ポリイミド樹脂組成物を硬化させる工程、(v)金属メッキにより、ビアを金属で充填するとともに、硬化塗膜上に配線パターンを形成する工程、及び(vi)前記工程(ii)乃至(v)と同様の工程を必要回数繰り返して多層化することを特徴とする多層回路基板の製造方法が提供される。
【0029】
さらに、本発明によれば、上記の製造方法により得られた多層回路基板からシリコンウエハを除去する工程を含む多層回路内臓フィルム基板の製造方法が提供される。
【0030】
さらに、本発明によれば、(I)銅基板上に前記の感光性ポリイミド樹脂組成物を塗布し、プリベークして塗膜を形成する工程、(II)塗膜の上からパターン状に露光し、ビアを形成する工程、(III)塗膜を加熱して感光性ポリイミド樹脂組成物を硬化させる工程、(IV)金属メッキにより、ビアを金属で充填するとともに、硬化塗膜上に配線パターンを形成する工程、(V)前記工程(I)乃至(IV)と同様の工程を繰り返して多層回路を形成する工程、及び(VI)銅基板を除去する工程からなる多層回路内臓フィルム基板の製造方法が提供される。
【0031】
さらにまた、本発明によれば、シリコンウエハに形成された回路上に、前記の感光性ポリイミド樹脂組成物を塗布し、プリベークした後、露光することを特徴とするポリイミド樹脂からなるパッシベ−ション膜が形成された半導体素子の製造方法が提供される。
【0032】
【発明の実施の形態】
1.感光性ポリイミド前駆体:
本発明の感光性ポリイミド前駆体は、主鎖中に、テトラカルボン酸またはその酸無水物とジアミンとの重縮合生成物から形成された式(1)
【0033】
【化7】
【0034】
(式中、R1は、4価の有機基であり、R2は、2価の有機基である。)
で表される繰り返し単位を有し、かつ、両末端に化学線官能基が導入されたポリアミック酸である。
【0035】
テトラカルボン酸またはその酸無水物とジアミンとしては、以下に示すような多種多様の化合物を使用することができるが、本発明では、テトラカルボン酸またはその酸無水物として、剛直構造の芳香族テトラカルボン酸またはその酸無水物を70〜100モル%の割合で含有するものを用い、かつ、ジアミンとして、剛直構造の芳香族ジアミンを70〜100モル%の割合で含有するものを用いることが必要である。芳香族テトラカルボン酸またはその酸無水物、及びジアミンは、剛直構造のものが70モル%以上含まれておれば、柔軟構造のものと併用することができる。先ず、芳香族テトラカルボン酸またはその酸無水物、及びジアミンの具体例を示す。
【0036】
<テトラカルボン酸またはその酸無水物>
テトラカルボン酸またはその酸無水物としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3′,4,4′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ベンゼン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、2,2′,3,3′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3′,4′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ナフタレン−2,3,6,7−テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン−1,2,5,6−テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン−1,2,4,5−テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン−1,2,5,8−テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン−1,2,6,7−テトラカルボン酸二無水物、4,8−ジメチル−1,2,3,5,6,7−ヘキサヒドロナフタレン−1,2,5,6−テトラカルボン酸二無水物、4,8−ジメチル−1,2,3,5,6,7−ヘキサヒドロナフタレン−2,3,6,7−テトラカルボン酸二無水物、2,6−ジクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、2,7−ジクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−テトラクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−テトラクロロナフタレン−2,3,6,7−テトラカルボン酸二無水物、3,3′,4,4′−ジフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2′,3,3′−ジフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3′,4′−ジフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3″,4,4″−p−テルフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2″,3,3″−p−テルフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3″,4″−p−テルフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)−プロパン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−プロパン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ペリレン−2,3,8,9−テトラカルボン酸二無水物、ペリレン−3,4,9,10−テトラカルボン酸二無水物、ペリレン−4,5,10,11−テトラカルボン酸二無水物、ペリレン−5,6,11,12−テトラカルボン酸二無水物、フェナンスレン−1,2,7,8−テトラカルボン酸二無水物、フェナンスレン−1,2,6,7−テトラカルボン酸二無水物、フェナンスレン−1,2,9,10−テトラカルボン酸二無水物などの芳香族テトラカルボン酸二無水物及びその水添加物;シクロペンタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2,2,2]オクタ−7−エン−2−エキソ,3−エキソ,5−エキソ,6−エキソテトラカルボン酸2,3:5,6−二無水物、ビシクロ[2,2,1]ヘプタン−2−エキソ,3−エキソ,5−エキソ,6−エキソテトラカルボン酸2,3:5,6−二無水物などの脂環式酸二無水物;ピラジン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、ピロリジン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物、チオフェン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物などの複素環誘導体酸二無水物;これらに対応するテトラカルボン酸などが挙げられる。
【0037】
剛直構造の芳香族テトラカルボン酸またはその酸無水物は、単環または縮合環からなる芳香族環を持つ化合物(例えば、ピロメリット酸二無水物)、2つ以上の芳香族環が単結合で結合した構造の化合物(例えば、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物)などのように、棒状の剛直鎖を形成することができる化合物である。
【0038】
これに対して、2つ以上の芳香族環が>C=O結合や−O−結合により結合した構造の芳香族テトラカルボン酸またはその酸無水物は、屈曲性があり、柔軟構造の芳香族テトラカルボン酸またはその酸無水物である。
【0039】
本発明では、剛直構造の芳香族テトラカルボン酸またはその酸無水物として、ピロメリット酸、下記式(10)
【0040】
【化8】
【0041】
で表わされるピロメリット酸二無水物(PMDA)、ビフェニルテトラカルボン酸、及び下記式(11)
【0042】
【化9】
【0043】
で表わされるビフェニルテトラカルボン酸二無水物(s−BPDA)からなる群より選ばれる少なくとも1種の芳香族テトラカルボン酸またはその酸無水物を使用することが好ましい。
【0044】
テトラカルボン酸またはその酸無水物成分の合計基準として、剛直構造の芳香族テトラカルボン酸またはその酸無水物の含有割合は、好ましくは80〜100モル%、より好ましくは85〜100モル%である。この割合が小さすぎると、銅基板などに対するポリイミド樹脂膜の密着性が低下し、破断強度や破断伸びも低下傾向を示す。また、この割合が小さすぎると、ポリイミド樹脂膜の熱膨張率や残留応力が増大する傾向があり、シリコンウエハの反りを抑制することが困難になり易い。
【0045】
剛直構造の芳香族テトラカルボン酸またはその酸無水物とともに、柔軟構造のテトラカルボン酸またはその酸無水物を少量併用してもよい。柔軟構造の芳香族テトラカルボン酸またはその無水物の具体例としては、下記式(12)
【0046】
【化10】
【0047】
で表わされる3,3′,4,4′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)が挙げられる。
【0048】
<ジアミン>
ジアミン化合物としては、例えば、4,4′−ジアミノベンズアニリド、4,4′−ジアミノ−2,2′−ジトリフルオロメチルビフェニル、2,2′−ジ(p−アミノフェニル)−6,6′−ビベンゾオキサゾール、2,2′−ジ(p−アミノフェニル)−5,5′−ビベンゾオキサゾール、m−フェニレンジアミン、1−イソプロピル−2,4−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、4,4′−ジアミノジフェニルプロパン、3,3′−ジアミノジフェニルプロパン、4,4′−ジアミノジフェニルエタン、3,3′−ジアミノジフェニルエタン、4,4′−ジアミノジフェニルメタン、3,3′−ジアミノジフェニルメタン、4,4′−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3′−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4′−ジアミノジフェニルスルホン、3,3′−ジアミノジフェニルスルホン、4,4′−ジアミノジフェニルエーテル、3,3′−ジアミノジフェニルエーテル、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、ベンジジン、4,4″−ジアミノ−p−テルフェニル、3,3″−ジアミノ−p−テルフェニル、ビス(p−アミノシクロヘキシル)メテン、ビス(p−β−アミノ−t−ブチルフェニル)エーテル、ビス(p−β−メチル−δ−アミノペンチル)ベンゼン、p−ビス(2−メチル−4−アミノペンチル)ベンゼン、p−ビス(1,1−ジメチル−5−アミノペンチル)ベンゼン、1,5−ジアミノナフタレン、2,6−ジアミノナフタレン、2,4−ビス(β−アミノ−t−ブチル)トルエン、2,4−ジアミノトルエン、m−キシレン−2,5−ジアミン、p−キシレン−2,5−ジアミン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミンなどの芳香族ジアミン類;2,6−ジアミノピリジン、2,5−ジアミノピリジン、2,5−ジアミノ−1,3,4−オキサジアゾールなどの複素環ジアミン類;1,4−ジアミノシクロヘキサンなどの脂環式ジアミン類;ピペラジン、メチレンジアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、2,2−ジメチルプロピレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、2,5−ジメチルヘキサメチレンジアミン、3−メトキシヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、2,5−ジメチルヘプタメチレンジアミン、3−メチルヘプタメチレンジアミン、4,4−ジメチルヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、5−メチルノナメチレンジアミン、2,5−ジメチルノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、1,10−ジアミノ−1,10−ジメチルデカン、2,11−ジアミノドデカン、1,12−ジアミノオクタデカン、2,12−ジアミノオクタデカン、2,17−ジアミノアイコサンなどの脂肪族ジアミン類;ジアミノシロキサン、2,6−ジアミノ−4−カルボキシリックベンゼン、3,3′−ジアミノ−4,4′−ジカルボキシリックベンジジンなどが挙げられる。
【0049】
剛直構造のジアミンは、単環または縮合環からなる芳香族環を持つ化合物(例えば、p−フェニレンジアミン)、2つ以上の芳香族環が単結合で結合した構造の化合物などのように、棒状の剛直鎖を形成することができる化合物である。このような剛直構造の芳香族ジアミンは、主鎖にエステル構造及びアミド構造などの屈曲性を持つ構造を含有しない芳香族ジアミンである。
【0050】
剛直構造のジアミン、特に主鎖にエステル構造及びアミド構造を含有しない芳香族ジアミンとしては、下記式(13)
【0051】
【化11】
【0052】
で表わされる2,2′−ジ(p−アミノフェニル)−5,5′−ビスベンゾオキサゾール、下記式(14)
【0053】
【化12】
【0054】
で表わされる2,2′−ジ(p−アミノフェニル)−6,6′−ビスベンゾオキサゾール(NPN)、下記式(15)
【0055】
【化13】
【0056】
で表わされる2,2′−ジ(p−アミノフェニル)−5,5′−ビスベンズイミダゾール、下記式(16)
【0057】
【化14】
【0058】
で表わされるp−フェニレンジアミン(PPDA)、及び下記式(17)
【0059】
【化15】
【0060】
で表わされる4,4′−ジアミノビフェニルからなる群より選ばれる少なくとも1種の芳香族ジアミンが好ましい。
【0061】
ジアミン成分の合計基準として、剛直構造のジアミンの含有割合は、好ましくは80〜100モル%、より好ましくは85〜100モル%、特に好ましくは90〜100モル%である。この割合が小さすぎると、銅基板などに対するポリイミド樹脂膜の密着性が低下し、破断強度や破断伸びも低下傾向を示す。また、この割合が小さすぎると、ポリイミド樹脂膜の熱膨張率や残留応力が増大する傾向があり、シリコンウエハの反りを抑制することが困難になり易い。
【0062】
その他のジアミン成分として、柔軟構造のジアミンを少量成分として併用することができる。このような柔軟構造のジアミンとしては、下記式(18)
【0063】
【化16】
【0064】
(式中、R8は、二価の炭化水素基であり、R9は、一価の炭化水素基であり、複数存在するR8及びR9は、同一であっても、異なっていてもよい。mは、1以上の整数である。)
で表わされるジアミノシロキサンが好ましい。ジアミン成分として、剛直構造の芳香族ジアミンとともに、少量のジアミノシロキサンを併用すると、ポリイミド樹脂膜の熱膨張率を低減することができるだけではなく、銅基板などへの密着性を更に向上させることができる。ジアミノシロキサンの具体例としては、下記式(19)
【0065】
【化17】
【0066】
で表わされる1,3−アミノプロピル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンを挙げることができる。
【0067】
柔軟構造の芳香族ジアミンとしては、例えば、下記式(20)
【0068】
【化18】
【0069】
で表わされる4,4′−ジアミノベンズアニリド、下記式(21)
【0070】
【化19】
【0071】
で表わされる4,4′−ジアミノジフェニルエーテルなどが挙げられる。
【0072】
<繰り返し単位>
本発明の感光性ポリイミド前駆体は、前記式(1)で表される繰り返し単位を有するものである。その好ましい具体例としては、ピロメリット酸二無水物(PMDA)と2,2′−ジ(p−アミノフェニル)−6,6′−ビスベンゾオキサゾール(NPN)との重縮合反応により生成する下記式(22)
【0073】
【化20】
【0074】
で表わされる繰り返し単位、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(s−BPDA)と2,2′−ジ(p−アミノフェニル)−6,6′−ビスベンゾオキサゾール(NPN)との重縮合反応により生成する下記式(23)
【0075】
【化21】
【0076】
で表わされる繰り返し単位、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(s−BPDA)とp−フェニレンジアミン(PPDA)との重縮合反応により生成する下記式(24)
【0077】
【化22】
【0078】
で表わされる繰り返し単位等が挙げられる。ジアミンとして、ジアミノシロキサンなどを併用すると、それらとテトラカルボン酸またはその無水物との反応により誘導される繰り返し単位が導入されることになる。
【0079】
<化学線官能基>
化学線官能基としては、化学線官能基自体の安定性、露光感度、合成の容易さ、膜物性等の総合的な観点から、好ましくは、式(2)
【0080】
【化23】
【0081】
(式中、Xは、単結合、−O−、−CO−、−COO−、−OCO−、−OCOO−、−COCH2O−、−S−、−SO−、−SO2−、または−SO2O−であり、R3、R4、R5、R6、及びR7は、光重合可能な炭素−炭素二重結合を有する置換基であり、mは、0または1であり、nは、1〜3の範囲内の整数である。)
で表される基Z1であり、その場合、感光性ポリイミド前駆体は、式(3)
【0082】
【化24】
【0083】
〔式中、R1は、4価の有機基であり、R2は、2価の有機基であり、kは、5〜10000の範囲内の整数であり、Z1は、式(2)で表される化学線官能基である。〕
で表されるポリアミック酸(A1)となる。
【0084】
また、化学線官能基としては、前記と同様の観点から、式(4)
【0085】
【化25】
【0086】
(式中、R3、R4、R5、R6、及びR7は、光重合可能な炭素−炭素二重結合を有する置換基であり、mは、0または1である。)
で表される基Z2であることが好ましく、その場合、感光性ポリイミド前駆体は、式(5)
【0087】
【化26】
【0088】
〔式中、R1は、4価の有機基であり、R2は、2価の有機基であり、kは、5〜10000の範囲内の整数であり、Z2は、式(4)で表される化学線官能基である。〕
で表されるポリアミック酸(A2)となる。
【0089】
感光性ポリイミド前駆体(ポリアミック酸)は、テトラカルボン酸またはその酸無水物とジアミン化合物とを常法により極性有機溶媒中で重縮合させることにより合成することができる。各モノマーは、式(1)で表されるポリアミック酸の繰り返し単位から明らかなように、ほぼ等モルの割合で使用する。ただし、両末端に化学線官能基を導入するには、通常、これらモノマー成分の重縮合時に、光重合可能な炭素−炭素二重結合を有し、かつ、テトラカルボン酸またはその酸無水物と、あるいはジアミン化合物と反応性を有する化合物を存在させる。
【0090】
両末端に化学線官能基Z1を有するポリアミック酸(A1)は、通常、ジアミン化合物とp−アミノ安息香酸〔トリス(メタクロイル)ペンタエリスリトール〕エステルなどのアミノベンゼン類との混合物に、テトラカルボン酸またはその酸無水物を加え、常法により重縮合反応させることにより得られる。この方法によると、安定して高分子量のポリマーが得られる。
【0091】
ポリアミック酸(A2)は、ジアミン化合物に、トリメリット酸アンハイドライド〔トリス(メタクロイル)ペンタエリスリトール〕エステルなどのトリメリット酸誘導体とテトラカルボン酸またはその無水物を加え、常法により縮合反応させることにより得られる。ポリアミック酸(A1)は、ジアミン化合物とテトラカルボン酸またはその無水物を常法により縮合反応させて得られたポリマーに、アミノベンゼンスルホン酸のような末端変性剤を後から加えて反応させることによっても得ることができる。これらの方法によれば、安定して高分子量のポリマーが得られる。
【0092】
<アミノベンゼン類>
本発明では、テトラカルボン酸またはその酸無水物のカルボキシル基と反応して、前記式(2)で表される置換基Z1を与える化合物として、アミノベンゼン類を使用する。
【0093】
このようなアミノベンゼン類としては、下記の式(6)で表される化合物を挙げることができる。
【0094】
【化27】
【0095】
〔式中、Xは、単結合、−O−、−CO−、−COO−、−OCO−、−OCOO−、−COCH2O−、−S−、−SO−、−SO2−、または−SO2O−であり、R3、R4、R5、R6、及びR7は、光重合可能な炭素−炭素二重結合を有する置換基であり、mは、0または1であり、nは、1〜3の範囲内の整数である。〕
光重合可能な炭素−炭素二重結合を有する置換基としては、アクリロイルオキシメチレン基及びメタクリロイルオキシメチレン基が代表的なものであるが、そのほかに、ビニル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ペンチニル基、ヘキシニル基、2−エチルブテニル基などの炭素数2〜6のアルケニル基やその置換体が挙げられる。炭素数2〜6のアルケニル基に結合可能な置換基の具体例としては、ハロゲン原子、フェニル基、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基などである。
【0096】
式(6)において、Xが−COO−である場合、アミノベンゼン類は、下記の式(7)で表されるアミノベンゼンカルボン酸エステルとなる。
【0097】
【化28】
【0098】
〔式中、R3〜R7、m及びnは、前記と同じである。〕
このようなアミノベンゼンカルボン酸エステルなどのアミノベンゼン類は、特開平8−82931号公報に記載された方法に従って製造することができる。そこで、該公報の記載内容を本願明細書において採用する。
【0099】
アミノベンゼンカルボン酸エステルは、前記の式(7)で表される構造を有しており、ベンゼン環には、アミノ基と1〜3個のカルボン酸エステル残基が結合しているが、アミノ基に対するカルボン酸エステル残基の結合部位は、o−、m−、p−の何れでも構わない。
【0100】
アミノベンゼンカルボン酸エステルの具体例としては、o−アミノ安息香酸[トリス(メタクリロイル)ペンタエリスリトール]エステル、o−アミノ安息香酸[トリス(アクリロイル)ペンタエリスリトール]エステル、m−アミノ安息香酸[トリス(メタクリロイル)ペンタエリスリトール]エステル、m−アミノ安息香酸[トリス(アクリロイル)ペンタエリスリトール]エステル、p−アミノ安息香酸[トリス(メタクリロイル)ペンタエリスリトール]エステル、p−アミノ安息香酸[トリス(アクリロイル)ペンタエリスリトール]エステル、5−アミノ−イソフタル酸[トリス(メタクリロイル)ペンタエリスリトール]ジエステル、5−アミノ−イソフタル酸[トリス(アクリロイル)ペンタエリスリトール]ジエステル、o−アミノ安息香酸[ペンタキス(メタクリロイル)ジペンタエリスリトール]エステル、o−アミノ安息香酸[ペンタキス(アクリロイル)ジペンタエリスリトール]エステル、m−アミノ安息香酸[ペンタキス(メタクリロイル)ジペンタエリスリトール]エステル、m−アミノ安息香酸[ペンタキス(アクリロイル)ジペンタエリスリトール]エステル、p−アミノ安息香酸[ペンタキス(メタクリロイル)ジペンタエリスリトール]エステル、p−アミノ安息香酸[ペンタキス(アクリロイル)ジペンタエリスリトール]エステルなどを挙げることができる。
【0101】
これらの中でも、p−アミノ安息香酸〔トリス(メタクリロイル)ペンタエリスリトール〕エステルが、合成コスト、操作性、高感度、高解像度などの点で優れており、特に好ましい。
【0102】
両末端に式(2)で表される化学線官能基Z1を導入したポリアミック酸(A1)を合成するには、ジアミン化合物とアミノベンゼン類との混合物に、テトラカルボン酸またはその無水物を加え、常法により重縮合反応させる。具体的に両末端に化学線官能基を導入したポリアミック酸を合成するには、▲1▼テトラカルボン酸またはその無水物1モルに対して、ジアミン化合物を通常0.850〜0.990モル、好ましくは0.900〜0.970モルの割合で使用し、▲2▼ジアミン化合物1モルに対して、アミノベンゼン類を通常0.400〜0.020モル、好ましくは0.110〜0.040モル、より好ましくは0.100〜0.050モルの割合で使用し、さらに、▲3▼テトラカルボン酸またはその無水物1モルに対して、ジアミン化合物とアミノベンゼン類とを合計量で、通常1.100〜0.900モル、好ましくは1.100〜0.950モル、より好ましくは1.060〜0.990モルの割合で使用する。重縮合反応は、ポリアミック酸を合成する常法に従って、各成分をジメチルアセトアミドなどの極性有機溶媒中で反応させればよい。反応は、通常、反応温度が−20℃〜+80℃の範囲で、反応時間が0.5〜80時間の範囲で行われる。モノマーの反応系への溶解性が低い場合は、モノマーが溶解できる温度まで昇温し、反応系内で溶解可能なオリゴマーとなるまで予備的な反応をさせるといった処理をすることもできる。ただし、本発明のポリアミック酸(A1)は、特定の合成法に限定されるものではない。
【0103】
<トリメリット酸誘導体>
本発明では、ポリアミック酸の両末端に式(4)で表される置換基Z2を与える化合物として、特定の構造を有するトリメリット酸誘導体を使用する。即ち、下記式(8)のトリメリット酸誘導体である。
【0104】
【化29】
【0105】
〔式中、R3、R4、R5、R6、及びR7は、光重合可能な炭素−炭素二重結合を有する置換基であり、mは、0または1である。〕
光重合可能な炭素−炭素二重結合を有する置換基としては、アクリロイルオキシメチレン基及びメタクリロイルオキシメチレン基が代表的なものであるが、そのほかに、ビニル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ペンチニル基、ヘキシニル基、2−エチルブテニル基などの炭素数2〜6のアルケニル基やその置換体が挙げられる。炭素数2〜6のアルケニル基に結合可能な置換基の具体例としては、ハロゲン原子、フェニル基、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基などである。
【0106】
このようなトリメリット酸誘導体は、特開平8−95247号公報に記載された方法に従って合成することができる。そこで、該公報に記載された合成法を本願明細書において援用する。
【0107】
本発明で使用するトリメリット酸誘導体の代表的なものは、式(9)で表される化合物である。
【0108】
【化30】
【0109】
〔式中、Rは、水素原子または炭素数1〜5の低級アルキル基である。〕
トリメリット酸誘導体としては、例えば、トリメリット酸アンハイドライド[トリス(アクリロイル)ペンタエリスリトール]エステル〔式(9)中、R=Hの場合〕、トリメリット酸アンハイドライド[トリス(メタクリロイル)ペンタエリスリトール]エステル〔式(9)中、R=メチル基の場合〕などが、合成経費、操作性、高感度、高解像度などの点で優れており、特に好ましい。
【0110】
両末端に式(4)で表される化学線官能基Z2を導入したポリアミック酸(A2)を合成するには、ジアミン化合物に、トリメリット酸誘導体とテトラカルボン酸またはその無水物を加え、常法により縮合反応させる。あるいは、ジアミン化合物とトリメリット酸誘導体との混合物に、テトラカルボン酸またはその無水物を加え、常法により縮合反応させてもよい。より具体的に、両末端に化学線官能基を導入したポリアミック酸を合成するには、▲1▼ジアミン化合物1モルに対して、テトラカルボン酸またはその無水物を通常0.850〜0.990モル、好ましくは0.900〜0.970モルの割合で使用し、▲2▼テトラカルボン酸またはその無水物1モルに対して、トリメリット酸誘導体を通常0.400〜0.020モル、好ましくは0.110〜0.040モル、より好ましくは0.100〜0.050モルの割合で使用し、さらに、▲3▼ジアミン化合物1モルに対して、テトラカルボン酸またはその無水物とトリメリット酸誘導体とを合計量で、通常1.100〜0.900モル、好ましくは1.100〜0.990モル、より好ましくは1.060〜1.020モルの割合で使用する。縮合反応は、ポリアミック酸を合成する常法に従って、各成分をジメチルアセトアミドなどの極性有機溶媒中で反応させればよい。反応は、通常、反応温度が−20℃〜+80℃の範囲で、反応時間が0.5〜80時間の範囲で行われる。モノマーの反応系への溶解性が低い場合は、モノマーが溶解できる温度まで昇温し、反応系内で溶解可能なオリゴマーとなるまで予備的な反応をさせるといった処理をすることもできる。ただし、本発明で使用するポリアミック酸(A2)は、特定の合成法に限定されるものではない。
【0111】
<感光性ポリイミド前駆体>
本発明の感光性ポリイミド前駆体は、主鎖中に式(1)で表される繰り返し単位を有し、かつ、両末端に化学線官能基が導入されたものである。
【0112】
本発明では、感光性ポリイミド前駆体を含有する感光性ポリイミド樹脂組成物がアルカリ現像液またはアルカリ水溶液で現像可能なように、モノマーの種類とその組み合わせを選択することができる。また、本発明では、ポリイミド樹脂膜の熱膨張率及び残留応力を低くするために、モノマーの種類とその組み合わせを選択する。すなわち、テトラカルボン酸またはその酸無水物として、剛直構造の芳香族テトラカルボン酸またはその酸無水物を70〜100モル%の割合で含有するものを使用し、かつ、ジアミンとして、剛直構造の芳香族ジアミンを70〜100モル%の割合で含有するものを使用する。その好ましい組み合わせの具体例は、前記したとおりである。
【0113】
ポリイミド系感光性樹脂組成物をアルカリ現像液またはアルカリ水溶液で現像可能とするために、式(1)で表される繰り返し単位を単位分子量と定義した場合、カルボキシル基一個当りの単位分子量の値、即ち、単位分子量/COOHの比が200〜300の範囲内となるように、モノマーの種類とその組み合わせを選択することが望ましい。
【0114】
他方、有機溶媒を現像液として用いる場合は、式(1)で表される繰り返し単位を単位分子量と定義した場合、カルボキシル基一個当りの単位分子量の値(単位分子量/COOH)が300超過400以下の範囲内に調整するように、モノマーの種類とその組み合わせを選択することが望ましい。
【0115】
また、本発明においては、感光性ポリイミド前駆体を用いて形成したポリイミド樹脂膜の熱膨張率が、好ましくは20ppm/℃以下、より好ましくは10ppm/℃以下となるように、各モノマーの種類と組み合わせを選択することが望ましい。
【0116】
好ましいモノマーの組み合わせは、残留応力、破断強度、破断伸び、密着性、反りなどの観点からも行うことが望ましい。ポリイミド樹脂膜の残留応力は、好ましくは35MPa以下、より好ましくは30MPa以下、特に好ましくは20MPa以下である。ポリイミド樹脂膜の破断強度は、好ましくは100MPa以上、より好ましくは120MPa以上、特に好ましくは150MPa以上である。ポリイミド樹脂膜の破断伸びは、好ましくは3%以上、より好ましくは5%以上、特に好ましくは7%以上である。
【0117】
2.光重合性官能基を有する感光助剤:
本発明において使用可能な感光助剤は、一般に光硬化モノマーとして公知のものであれば特に制限されない。
【0118】
感光助剤としては、ペンタエリスリトールトリアクリレートなどの(メタ)アクリル酸系化合物が代表的なものである。
【0119】
アクリル酸系化合物としては、例えば、アクリル酸、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ベンジルアクリレート、カルビトールアクリレート、メトキシエチルアクリレート、エトキシエチルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ブチレングリコールモノアクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルアクリレート、グリシジルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ペンタエリスリトールモノアクリレート、トリメチロールプロパンモノアクリレート、アリルアクリレート、1,3−プロピレングリコールジアクリレート、1,4−ブチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、2,2−ビス−(4−アクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス−(4−アクリロキシプロピルキシフェニル)プロパン、トリメチロールプロパンジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリアクリルホルマール、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸のアクリル酸エステル、式(25)
【0120】
【化31】
【0121】
(式中、bは、1〜30の整数を表す。)
で表される化合物、式(26)
【0122】
【化32】
【0123】
(式中、c及びdは、c+d=2〜30となる整数を表す。)
で表される化合物、式(27)
【0124】
【化33】
【0125】
で表される化合物、式(28)
【0126】
【化34】
【0127】
で表される化合物等を挙げることができる。
【0128】
メタクリル酸系化合物としては、例えば、メタクリル酸、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、オクチルメタクリレート、エチルヘキシルメタクリレート、メトキシエチルメタクリレート、エトキシエチルメタクリレート、ブトキシエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレート、ヒドロキシペンチルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、アリルメタクリレート、トリメチロールプロパンモノメタクリレート、ペンタエリスリトールモノメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、2,2−ビス−(4−メタクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、トリメチロールプロパンジメタクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、テトラメチロールメタンテトラメタクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸のメタクリル酸エステル、式(29)
【0129】
【化35】
【0130】
(式中、eは、1〜30の整数を表す。)で表される化合物、式(30)
【0131】
【化36】
【0132】
(式中、f及びgは、f+g=1〜30となる整数を表す。)
で表される化合物、式(31)
【0133】
【化37】
【0134】
で表される化合物、式(32)
【0135】
【化38】
【0136】
で表される化合物等を挙げることができる。
【0137】
これらの化合物は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。これらの中でも、特に、ペンタエリスリトールトリアクリレート、及び式(25)で表される化合物(b=3)が好ましい。
【0138】
感光助剤の使用量は、本発明のポリアミック酸と相溶する限り特に限定されないが、その使用量が極めて多量である場合には、ポリアミック酸の熱処理によるポリイミド化の際に分解・除去し難く、しかも膜の残留応力が高くなり、半導体素子基板にそり等の変形を生じやすくなるという問題がある。そこで、感光助剤は、感光性ポリイミド前駆体100重量部に対して、通常10〜50重量部、好ましくは15〜40重量部、より好ましくは20〜35重量部の割合で使用することが望ましい。
【0139】
3.光重合開始剤:
本発明において使用する光重合開始剤としては、例えば、ミヒラーズケトン、ベンゾイン、2−メチルベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、2−t−ブチルアントラキノン、1,2−ベンゾ−9,10−アントラキノン、アントラキノン、メチルアントラキノン、4,4′−ビス−(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、アセトフェノン、ベンゾフェノン、チオキサントン、1,5−アセナフテン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−1−プロパノン、ジアセチルベンジル、ベンジルジメチルケタール、ベンジルジエチルケタール、ジフェニルジスルフィド、アントラセン、フェナンスレンキノン、リボフラビンテトラブチレート、アクリルオレンジ、エリスロシン、フェナンスレンキノン、2−イソプロピルチオキサントン、2,6−ビス(p−ジエチルアミノベンジリデン)−4−メチル−4−アザシクロヘキサノン、6−ビス(p−ジメチルアミノベンジリデン)−シクロペンタノン、2,6−ビス(p−ジエチルアミノベンジリデン)−4−フェニルシクロヘキサノン、式(33)
【0140】
【化39】
【0141】
で表されるアミノスチリルケトン、式(34)
【0142】
【化40】
【0143】
(式中、R14は、5〜20個の環原子を有する芳香族炭素環または複素環であり、R11、R12、及びR13は、それぞれ独立に、水素原子、ヒドロキシル基、炭素数1〜5個のアルキル基、ジアルキルアミノ基、アルコキシ基、またはアシロキシ基である。)
で表される3−ケトクマリン化合物、式(35)
【0144】
【化41】
【0145】
(式中、R20及びR21は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜5個のアルキル基、ジアルキルアミノ基、アルコキシ基、またはアシロキシ基である。)
で表されるビスクマリン化合物、N−フェニルグリシン、N−フェニルジエタノールアミン、3,3′,4,4′テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノンなどを挙げることができる。
【0146】
光重合開始剤の使用量は、特に限定されないが、感光性ポリイミド前駆体100重量部に対して、通常0.01〜10重量部、好ましくは0.1〜5重量部、より好ましくは1〜5重量部である。
【0147】
4.溶剤:
本発明において使用する溶剤としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、ヘキサメチルリン酸トリアミド、γ−ブチロラクロンなどの極性溶剤が挙げられる。
【0148】
これらの極性溶剤のほかに、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、シュウ酸ジエチル、マロン酸ジエチル等のエステル類;ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類;ジクロロメタン、1,2−ジクロルエタン、1,4−ジクロルブタン、トリクロルエタン、クロルベンゼン、o−ジクロルベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素類なども使用することができる。
【0149】
これらの溶剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。これらの中でも、N,N−ジメチルアセトアミドやN−メチル−2−ピロリドンなどが特に好ましい。
【0150】
溶剤の使用量は、各成分を均一に溶解するのに充分な量とする。特に、(A)ポリアミック酸を溶解するに足る量比で使用する。溶剤の使用割合は、溶剤の種類やポリアミック酸によって異なるが、感光性ポリイミド前駆体に対して、通常3〜25倍量(重量比)、好ましくは5〜20倍量、より好ましくは6〜10倍量の範囲内である。
【0151】
5.その他の添加剤:
本発明の組成物には、さらに必要に応じて接着助剤、レベリング剤、重合禁止剤等の各種添加剤を使用することができる。各種添加剤の中でも、1H−テトラゾール、5,5′−ビス−1H−テトラゾール、これらの誘導体などの1H−テトラゾール類を添加することにより、銅及び銅合金に対する腐食性を防止し、ひいては、ポリイミド樹脂膜の基板に対する密着性の向上、感光性被膜の残膜防止などを図ることができる。
【0152】
1H−テトラゾール、及びその誘導体としては、未置換の1H−テトラゾール;5−メチル−1H−テトラゾール、5−フェニル−1H−テトラゾール、5−アミノ−1H−テトラゾールなどの5置換−1H−テトラゾール;1−メチル−1H−テトラゾールなどの1置換−1H−テトラゾール;1−フェニル−5−メルカプト−1H−テトラゾールなどの1置換−5置換−1H−テトラゾール;などを挙げることができる。これらの中でも1H−テトラゾール、及び5置換−1H−テトラゾールが特に好ましい。
【0153】
1H−テトラゾール類は、感光性ポリイミド前駆体100重量部(固形分基準)に対して、通常0.05〜20重量部、好ましくは0.1〜5重量部、より好ましくは0.3〜3.0重量部の配合割合で使用する。この配合割合が過小であると添加効果が小さく、逆に、過大であると効果が飽和する。1H−テトラゾール類は、通常、感光性ポリイミド前駆体の溶液に添加して、感光性ポリイミド樹脂組成物(溶液)とする。得られた感光性ポリイミド樹脂組成物は、基板等に塗布して絶縁膜を形成する用途に使用される。
【0154】
5.パターン形成方法:
本発明の感光性ポリイミド樹脂組成物の使用方法は、先ず、該樹脂組成物を適当な支持体、例えば、シリコンウエハやセラミック、アルミニウム、銅基板などの上に塗布する。塗布方法としては、スピンナーを用いた回転塗布、スプレーコーターを用いた噴霧塗布、浸漬、印刷、ロールコーティングなどの方法がある。次に、50〜100℃の低温でプリベークして塗膜を乾燥後、所望のパターン形状に化学線を照射する。化学線としては、X線、電子線、紫外線、可視光線などが使用できるが、200〜500nmの範囲内の波長のものが好ましい。次に、未照射部を現像液で溶解除去することにより、レリーフパターンを得る。
【0155】
本発明では、現像液として、アルカリ現像液またはアルカリ性水溶液を使用することができる。アルカリ現像液とは、塩基性化合物を有機溶媒が50%以上の溶媒に溶解して得た現像液である。有機溶媒としては、例えば、N−メチルピロリドン、N−アセチルピロリドン、N,N′−ジメチルホルムアミド、N,N′−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトンなどの極性溶媒が挙げられる。また、これらに、メタノール、エタノール等のアルコール類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素化合物;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;テトラヒドロフラン、ジオキサジン等のエーテル類;等の一般的有機溶媒または水を混合して用いることができる。
【0156】
アルカリ水溶液とは、塩基性化合物を水が51%以上の溶媒に溶解して得た現像液である。水以外の溶媒成分としては、例えば、N−メチルピロリドン、N,N′−ジメチルホルムアミド、N,N′−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトンなどの非プロトン性極性溶媒;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素化合物;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタンノン等のケトン類;酢酸メチル、乳酸メチル等のエステル類;テトラヒドロフラン、ジオキサジン等のエーテル類;エチレングリコール、ジエチレングリコール等のジオール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のセロソルブ類;などが挙げられる。
【0157】
塩基性化合物とは、例えば、アルカリ金属や4級アンモニウムの水酸化物、炭酸塩、重炭酸塩、ケイ酸塩、リン酸塩、ピロリン酸塩、酢酸塩、アミン塩等が用いられる。これらの具体例としては、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、コリン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0158】
塩基性化合物の使用量は、溶媒100重量部に対して、通常0.001〜50重量部、好ましくは0.05〜30重量部である。この使用量が少なすぎると現像性が低下する傾向があり、多すぎると塩基性化合物が完全に溶解せず不均一な溶液となったり、アルカリ濃度が高すぎて、ポリイミド前駆体に対する溶解性が強すぎるため、未露光部の表面荒れを起こしたりする。また、塩基性化合物は、現像液のpHが通常10.0以上、好ましくは11.0〜13.5の範囲内になるような割合で使用することが望ましい。現像液のpHが10.0未満であると、現像速度が低下する傾向にあり、13.5を越えると、ポリイミド前駆体に対する溶解性が強すぎるため、未露光部の膨潤、表面荒れを起こしたり、露光部と未露光部の溶解度差が少なく、良好な形状のパターン形成が困難になる。
【0159】
現像液は、アルカリ現像液及びアルカリ水溶液をそれぞれ単独で用いてもよいし、混合して用いてもよい。アルカリ現像液とアルカリ水溶液を混合して用いる場合は、有機溶媒の使用量が水100重量部に対して、通常0.1〜100重量部、好ましくは1.0〜50重量部である。現像液としては、人体に対してより安全であって、安価なアルカリ水溶液を用いることが好ましい。現像液としてアルカリ水溶液を使用する場合、感光性ポリイミド前駆体としては、カルボキシル基一個当りの単位分子量の値が205〜280の範囲内に入るものが好ましい。
【0160】
現像液としては、有機溶媒を用いることもできる。有機溶媒として前記の如きものを使用することができるが、水を少量加えてもよい。式(1)で表される繰り返し単位を単位分子量と定義した場合、カルボキシル基一個当りの単位分子量の値(単位分子量/COOH)が300超過400以下の範囲内にある感光性ポリイミド前駆体の場合、アルカリ現像液か有機溶媒を現像液とすることが好ましい。
【0161】
現像方法としては、スプレー、パドル、浸漬、超音波浸漬などの各種方式を採用することができる。カルボキシル基一個当りの単位分子量の値(単位分子量/−COOH)が200に近い場合には、パドル現像が適することが多く、300に近い場合には、超音波浸漬現像が適することが多い。現像速度は、現像液の液温によっても影響される。したがって、現像液のpHや液温、あるいは現像法などの諸条件を予め点検して、最適の条件を設定することが望ましい。
【0162】
現像により形成されたレリーフパターンは、リンス液により洗浄し、現像液を除去する。リンス液としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、水などを挙げることができ、これらを単独または混合して使用する。リンス液としては、水単独または水とアルコール類との混合液が特に好ましい。リンス後、加熱処理を行って、イミド環を形成し、ポリイミド前駆体をポリイミド化して、耐熱性に富むパターンを得る。
【0163】
6.半導体素子の製造方法:
本発明の感光性ポリイミド前駆体を含有する感光性ポリイミド樹脂組成物は、各種半導体素子の製造方法に使用することができる。その具体例は、次のとおりである。
【0164】
<多層回路基板の製造方法>
図1〜図5に示す方法により、シリコンウエハ上に多層回路基板を製造することができる。すなわち、(i)シリコンウエハ1上に金属(例えば、銅)からなる導体層2を形成する工程、(ii)導体層2の上に感光性ポリイミド樹脂組成物を塗布し、プリベークして塗膜3を形成する工程、(iii)塗膜の上からパターン状に露光4し、ビア5を形成する工程(この工程では、前記パターン形成方法を採用することができる)、(iv)塗膜を加熱して感光性ポリイミド樹脂組成物を硬化させる工程、(v)金属メッキにより、ビアを金属で充填するとともに、硬化塗膜上に配線パターン6を形成する工程、及び(vi)前記工程(ii)乃至(v)と同様の工程を必要回数繰り返して多層化(図4〜5)する。この方法によって、多層回路基板を製造することができる。
【0165】
多層化後、シリコンウエハの多層回路が形成されていない面を研磨して、シリコンウエハを薄化させる工程を付加することができる(図6)。本発明の感光性ポリイミド樹脂組成物を用いると、シリコンウエハの薄化工程で、シリコンウエハにほとんど反りを生じることがない。
【0166】
上記の製造方法により得られた多層回路基板からシリコンウエハを除去することにより、シリコンウエハのない多層回路内臓フィルム基板を製造することができる。この場合、銅層も除去することができる。
【0167】
<多層回路内臓フィルム基板の製造方法>
銅基板を用いて前記と同様の工程で多層化し、その後 銅層を除去することにより、多層回路内臓フィルム基板を製造することができる。すなわち、(I)銅基板上に感光性ポリイミド樹脂組成物を塗布し、プリベークして塗膜を形成する工程、(II)塗膜の上からパターン状に露光し、ビアを形成する工程(パターン形成方法を利用)、(III)塗膜を加熱して感光性ポリイミド樹脂組成物を硬化させる工程、(IV)金属メッキにより、ビアを金属で充填するとともに、硬化塗膜上に配線パターンを形成する工程、(V)前記工程(I)乃至(IV)と同様の工程を繰り返して多層回路を形成する工程、及び(VI)銅基板を除去する工程により、多層回路内臓フィルム基板を製造することができる。
【0168】
<パッシベ−ション膜の形成>
シリコンウエハに形成された回路上に感光性ポリイミド樹脂組成物を塗布し、プリベークした後、露光することにより、ポリイミド樹脂からなるパッシベ−ション膜が形成された半導体素子を製造することができる。この際、紫外線露光を行うことにより、デバイスの表面電極を露出させる。その後、硬化(キュア)させる。
【0169】
7.ポリイミド樹脂膜:
本発明の感光性ポリイミド樹脂組成物は、例えば、半導体素子関連、LSIバッファーコート膜、パッシベーション膜などの用途のみならず、多層回路の層間絶縁膜やフレキシブル銅張板のカバーコート膜、各種メタルコア基板やセラミック基板のカバー膜、ソルダーレジスト膜、液晶配向膜などとしても使用することができる。
【0170】
【実施例】
以下に実施例及び比較例を挙げて、本発明についてより具体的に説明する。
【0171】
[実施例1]
反応器に2,2′−ジ(p−アミノフェニル)−6,6′−ビスベンゾオキサゾール28.11g(0.0672モル)、溶剤200g〔ジメチルアセトアミド(DMAc)100g及びN−メチル−2−ピロリドン(NMP)100g〕を投入し、混合溶液を調製した。この溶液に、氷冷攪拌下、ピロメリット酸二無水物15.26g(0.07モル)を粉体のまま添加し、溶剤20g(DMAc10g及びNMP10g)で洗浄添加した。
【0172】
次いで、氷冷下で2時間攪拌した後、反応温度を30℃に昇温し、2時間反応させた。反応液がほぼ均一になった時点で、反応液を10℃に冷却し、次いで、p−アミノ安息香酸〔トリス(メタクリロイル)ペンタエリスリトール〕エステル2.57g(0.0056モル)を添加し、溶剤20g(DMAc10g及びNMP10g)を洗浄添加した。10℃で2時間、次いで、25℃で12時間反応させ、感光性ポリイミド前駆体(ポリアミック酸)を樹脂濃度16重量%で合成した。この感光性ポリイミド前駆体(B−1)の末端変性率は、8%になる。
【0173】
[実施例2]
反応器に2,2′−ジ(p−アミノフェニル)−6,6′−ビスベンゾオキサゾール27.53g(0.0658モル)、溶剤200g(DMAc100g及びNMP100g)を投入し、混合溶液を調製した。この溶液に、氷冷攪拌下、ピロメリット酸二無水物15.26g(0.07モル)を粉体のまま添加し、溶剤20g(DMAc10g及びNMP10g)で洗浄添加した。
【0174】
次いで、氷冷下で2時間攪拌した後、反応温度を30℃に昇温し、2時間反応させた。反応液がほぼ均一になった時点で、反応液を10℃まで冷却し、p−アミノ安息香酸〔トリス(メタクリロイル)ペンタエリスリトール〕エステル3.86g(0.0084モル)を添加し、次いで、溶剤25g(DMAc12g及びNMP13g)を洗浄添加した。10℃で2時間、次いで、25℃で12時間反応させ、感光性ポリイミド前駆体を樹脂濃度16重量%で合成した。この感光性ポリイミド前駆体(B−2)の末端変性率は、12%になる。
【0175】
[実施例3]
実施例1において、2,2′−ジ(p−アミノフェニル)−6,6′−ビスベンゾオキサゾールを28.41g(0.0679モル)、p−アミノ安息香酸〔トリス(メタクリロイル)ペンタエリスリトール〕エステルを1.93g(0.0042モル)、溶剤全量を240gに変更した以外は、同様の操作で感光性ポリイミド前駆体を樹脂濃度16重量%で合成した。この感光性ポリイミド前駆体(B−3)の末端変性率は、6%になる。
【0176】
[実施例4]
反応器に2,2′−ジ(p−アミノフェニル)−6,6′−ビスベンゾオキサゾール27.27g(0.0652モル)、1,3−ジアミノプロピル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン0.523g(0.002モル)、溶剤200g(DMAc100g及びNMP100g)を投入し、混合溶液を調製した。この溶液に、氷冷攪拌下、ピロメリット酸二無水物15.26g(0.07モル)を粉体のまま添加し、溶剤20g(DMAc10g及びNMP10g)で洗浄添加した。
【0177】
次いで、氷冷下で2時間攪拌した後、反応温度を30℃に昇温し、2時間反応させた。反応液がほぼ均一になった時点で、反応液を10℃まで冷却、次いで、p−アミノ安息香酸〔トリス(メタクリロイル)ペンタエリスリトール〕エステル2.57g(0.0056モル)を添加し、溶剤20g(DMAc10g及びNMP10g)を洗浄添加した。10℃で2時間、次いで、25℃で12時間反応させ、感光性ポリイミド前駆体(B−4)を樹脂濃度16重量%で合成した。
【0178】
[実施例5]
実施例4において、2,2′−ジ(p−アミノフェニル)−6,6′−ビスベンゾオキサゾールを26.71g(0.0064モル)、1,3−ジアミノプロピル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンを0.835g(0.00336モル)、溶剤全量を238.5gに変更した以外は、同様の操作で感光性ポリイミド前駆体(B−5)を樹脂濃度16重量%で合成した。
【0179】
[実施例6]
実施例1において、酸無水物としてピロメリット酸二無水物13.73g(0.063モル)とベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物2.26g(0.007モル)を使用し、かつ、溶剤全量を245gに変更した以外は、同様の操作で感光性ポリイミド前駆体(B−6)を樹脂濃度16重量%で合成した。
【0180】
[実施例7]
実施例1において、酸無水物としてビフェニルテトラカルボン酸二無水物20.59g(0.07モル)を使用し、かつ、溶剤全量を270gに変更した以外は同様の操作で感光性ポリイミド前駆体(B−7)を樹脂濃度16重量%で合成した。
【0181】
[実施例8]
実施例1において、ジアミンとしてp−フェニレンジアミン7.26g(0.0672モル)、酸無水物としてビフェニルテトラカルボン酸二無水物20.59gをそれぞれ使用し、かつ、溶剤全量を160gに変更した以外は、同様の操作で感光性ポリイミド前駆体(B−8)を樹脂濃度16重量%で合成した。
【0182】
[比較例1]
反応器に4,4′−ジアミノベンズアニリド65.5g(0.288mol)と、ジメチルアセトアミド693gを仕込み、50℃で攪拌して溶解した。10℃以下に冷却後、この溶液にピロメリット酸二無水物65.4g(0.300mol)、末端変性アミンとしてp−アミノ安息香酸〔トリス(メタクリロイル)ペンタエリスリトール〕エステル11.02g(0.024mol)を粉体で加え、氷冷攪拌3時間、室温攪拌24時間を行い、感光性ポリイミド前駆体(B−9)を合成した。
【0183】
[比較例2]
比較例1において、酸無水物をピロメリット酸二無水物52.3g(0.240モル)と3,3′4,4′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物19.33g(0.06モル)に変更した以外は、同一の条件で感光性ポリイミド前駆体(B−10)を合成した。
【0184】
[比較例3]
実施例1において、酸無水物としてピロメリット酸二無水物7.64g(0.035モル)と3,3′4,4′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物11.284g(0.035モル)を用い、かつ、溶剤全量を260.4g(DMAC130.2g及びNPM130.2g)に変更したこと以外は、同様に操作して感光性ポリイミド前駆体(B−11)を合成した。
【0185】
[比較例4]
反応器に4,4′−ジアミノベンズアニリド26.14g(0.115モル)及びジメチルアセトアミド757.1gを仕込み、50℃で攪拌して溶解した。ピロメリット酸二無水物22.02g(0.101モル)と3,3′,4,4′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物32.52g(0.101モル)を加えて、反応温度50℃で3時間反応させた。次いで、10℃以下に冷却した後、4,4′−ジアミノジフェニルエーテル34.44g(0.172モル)、ピロメリット酸二無水物10.68g(0.049mol)、3,3′,4,4′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物15.78g(0.049モル)、末端変性アミンとしてp−アミノ安息香酸〔トリス(メタクリロイル)ペンタエリスリトール〕エステル11.02g(0.024モル)を粉体で加え、氷冷攪拌3時間、室温攪拌24時間して、感光性ポリイミド前駆体(B−12)を合成した。
【0186】
実施例1〜8及び比較例1〜4で合成した感光性ポリイミド前駆体について、モノマー組成、化学線官能基による末端変性率、及び単位分子量/COOHを表1にまとめて示す。
【0187】
【表1】
【0188】
(脚注)
(1)PMDA:ピロメリット酸二無水物、
(2)BTDA:ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、
(3)s−BPDA:ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、
(4)NPN:2,2′−ジ(p−アミノフェニル)−6,6′−ビスベンゾオキサゾール、
(5)Siジアミン:1,3−ジアミノプロピル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、
(6)PPDA:p−フェニレンジアミン、
(7)DABA:4,4′−ジアミノベンズアニリド、
(8)ODA:4,4′−ジアミノジフェニルエーテル。
【0189】
[実施例9〜16及び比較例5〜8]
実施例1〜8及び比較例1〜4で合成した感光性ポリイミド前駆体を含有するワニスのそれぞれに、感光性ポリイミド前駆体の固形分100重量部に対して、光架橋助剤(トリエチレングリコールジアクリレート:「3EG−A」)28重量部、光重合開始剤(N−フェニルグリシン:「NPG」)2重量部、光重合開始剤〔3,3′,4,4′−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン:「BTTB」、日本油脂製)2重量部、及び銅腐蝕防止剤(1H−テトラゾール)0.5重量部を加え、さらに、溶剤を加えて樹脂濃度15重量%に調整し、均一溶液(感光性ポリイミド樹脂組成物)とした。これらの感光性ポリイミド樹脂組成物の組成を表2に示す。
【0190】
【表2】
【0191】
実施例9〜16及び比較例5〜8で調製した各感光性ポリイミド樹脂組成物を用いて、物性の測定を行った。結果を表3に示す。
【0192】
(1)シリコンウエハ基板に対する反りと残留応力の測定:
各感光性ポリイミド樹脂組成物(ワニス)を6インチのシリコンウエハ(厚み625μm)上にスピナーで塗布し、60℃で30分間オーブンで乾燥した。このようにして膜を形成したシリコンウエハに、PL−A501Fにより露光エネルギー300mj/cm2で全面露光した。次いで、現像液(CPN:NMP:H2O=63:30:7重量比)に2分間浸漬し、次いで、イソプロピルアルコールに60秒間浸漬してリンスした後、窒素ガスでブローして表面を乾燥した。次に、窒素雰囲気下、400℃で2時間加熱してイミド化した。得られた膜の厚みは、約5μmであった。イミド化後、シリコンウエハ(130mm間)に生じた反りを触針式表面形状測定機(P−10:テンコール社製)で測定した。その測定値とイミド化後の膜厚に基づいて、P−10内臓の残留応力計算プログラムより計算で応力を測定した。なお、「反り」(μm)がマイナス(−)の値は、ポリミド膜側に反ったことを示す。
【0193】
(2) 熱膨張率の測定:
応力測定と同一のプロセスでポリイミド膜を作製した。この膜を50%フッ酸を用い、シリコンウエハから剥離し、蒸留水で十分洗浄後、窒素ガス雰囲気下、130℃2時間乾燥した。この膜をセイコー電子工業社製TMA120c型を用いて、以下の条件で測定した。
測定条件:試験片形状=幅4mm、長さ25mm、測定長10mm、
測定様式:引張り荷重=2g、
測定温度:1サイクル=室温→300℃→20℃
2サイクル=20℃→200℃
昇温2サイクル目の20〜200℃での平均膨張率の変化を記載した。
昇温速度:5℃/分、
測定雰囲気:窒素ガス中。
【0194】
(3)銅との密着性評価:
シリコンウエハ上に銅膜をスパッタプロセスで製膜して得た銅基板上に感光性ポリイミド樹脂組成物(ワニス)を塗布し、応力測定と同様のプロセスでイミド化膜を作製した。プレッシャークッカーテスト(121℃、2.1気圧、90℃、100時間)後、基板とイミド化膜との密着性をセバスチャン法で評価した。また、プレッシャークッカーテスト(121℃、2.1気圧、90℃、100時間)後、碁盤目テストにより、クロスカット剥離試験を行い密着性を評価した。
【0195】
(4)破断強度と破断伸びの測定:
シリコンウエハ上に感光性ポリイミド樹脂組成物(ワニス)をスピンコートした後、60℃で30分間プリベークして塗膜を得た。次いで、基板の塗膜面全体を露光(PLA−501A、全波長露光、G線換算300mj/cm2)した。その後、塗膜面に所定の現像液とリンス液とを接触させた後、400℃で2時間硬化して、シリコンウエハ上にポリイミド樹脂膜(厚み約5μm)を形成した。正確な膜厚は、テンコール社製の膜厚測定機P−10を用いて測定した。このようにして得られたポリイミド樹脂膜を有するシリコンウエハを50%フッ酸水溶液で処理し、シリコンウエハからポリイミド樹脂膜を取り出し、純水で十分に洗浄した。120℃で2時間乾燥した後、膜の破断強度と破断伸びを測定した。
<測定条件>
測定機:島津製作所製 引張試験機(AUTOGRAPHAGS−5KNG)、フィルム幅:10mm、
引張速度:20mm/min.
膜厚は、膜厚測定機P−10で測定した値を入力した。10回の試験結果から、上下試験結果を除いた8回の測定値の平均値を算出した。
【0196】
【表3】
【0197】
表3の測定結果から明らかなように、本発明の感光性ポリイミド前駆体を含有する感光性ポリイミド樹脂組成物(ワニス)を用いると、熱膨張率と残留応力が小さく、銅基板や銅配線などとの密着性に優れ、破断強度と破断伸びが大きいポリイミド膜を形成することができる。しかも、シリコンウエハ上に膜を形成したとき、シリコンウエハに生じる反りが小さい。
【0198】
より具体的に、本発明の感光性ポリイミド前駆体を含有する感光性ポリイミド樹脂組成物を用いて形成したポリイミド樹脂膜の熱膨張率は、好ましくは20ppm/℃以下、より好ましくは10ppm/℃以下となる。ポリイミド樹脂膜の残留応力は、好ましくは35MPa以下、より好ましくは30MPa以下、特に好ましくは20MPa以下となる。
【0199】
ポリイミド樹脂膜の破断強度は、好ましくは100MPa以上、より好ましくは120MPa以上、特に好ましくは150MPa以上となる。ポリイミド樹脂膜の破断伸びは、好ましくは3%以上、より好ましくは5%以上、特に好ましくは7%以上となる。
【0200】
プレッシャークッカーテスト(PCT)後の銅基板に対する密着性は、クロスカット試験で0/25の水準を確保し、セバスチャン法では、20Mpa以上の水準を確保することができる。反りは、絶対値で15μm以下の水準を確保することができ、モノマー組成を選択することにより、5μm以下、さらには3μm以下にすることができる。
【0201】
[実施例17](薄膜多層回路基板)
6インチのシリコンウエハ上に銅の導体層を形成した後、実施例12で調製した感光性ポリイミド樹脂組成物(ワニス)を塗布し、プリベークを行った。ガラスマスクを用いて、紫外線を照射して露光し、主としてビアのパターンを形成した。その後、400℃に加熱して硬化(イミド化)した。この時のポリイミド樹脂膜の膜厚は、10μmであり、硬化後のシリコンウエハの反りは、10μm以下と小さかった。次いで、形成したビアを銅メッキで充填するのと同時に配線も銅メッキで形成した。その後、さらに同様の工程でポリイミド樹脂膜と配線(回路)を形成した。上記の工程を繰り返して、ポリイミド樹脂膜が5層の薄膜多層配線基板を作製した。この時の基板の反りは、50μm以下であった。
【0202】
[実施例18](薄膜多層回路内臓フィルム基板)
シリコンウエハ上に実施例17の手法で、薄膜多層回路を形成した後、シリコンウエハをグラインダー加工で50μm以下に薄膜化し、次いで、ウエットエンチング(ふっ酸、硝酸)により、シリコンウエハを全て除去した。この時に熱膨張の小さい絶縁材料を使ったことで、フィルム状態での反りやうねりはなく、フラットな状態となった。
【0203】
[実施例19]
銅基板上に、実施例14で調製した感光性ポリイミド樹脂組成物(ワニス)を用いて、実施例17の手法により薄膜多層回路を形成した後、銅基板をウエットエンチングにより全て除去した。この時に作製したフィルムは、反りやうねりはなく、フラットな状態となった。
【0204】
[実施例20](デバイス上のパッシベーション膜)
シリコンウエハ上に形成した回路上にパッシベーション膜として、反りの少ないポリイミド樹脂膜を形成することができる感光性ポリイミド樹脂組成物(実施例9)を塗布・プリベークした後、紫外線露光を行い、デバイスの表面電極を露出させた。その後、400℃で硬化して、膜厚約2μmのパッシベーション膜を形成した。
【0205】
【発明の効果】
本発明によれば、熱膨張率と残留応力が小さく、銅基板や銅配線などとの密着性に優れ、破断強度と破断伸びが大きいポリイミド膜を形成することができ、しかもシリコンウエハ上に膜を形成したとき、シリコンウエハに生じる反りが小さい感光性ポリイミド前駆体、及び該ポリイミド前駆体を含有する感光性ポリイミド樹脂組成物が提供される。また、本発明によれば、このような優れた諸特性を有する感光性ポリイミド樹脂組成物を用いて、多層回路基板や多層回路内臓フィルム基板などの半導体素子を製造する方法が提される。
【図面の簡単な説明】
【図1】多層回路基板の製造工程(膜形成と露光工程)を示す断面図である。
【図2】多層回路基板の製造工程(ビア形成工程)を示す断面図である。
【図3】多層回路基板の製造工程(金属メッキ工程)を示す断面図である。
【図4】多層回路基板の製造工程(多層化工程)を示す断面図である。
【図5】多層回路基板の製造工程(多層回路基板の製造工程)を示す断面図である。
【図6】多層回路基板の製造工程(シリコンウエハの薄化工程)を示す断面図である。
【符号の説明】
1:シリコンウエハ、
2:導体層、
3:感光性ポリイミド樹脂組成物膜、
4:露光、
5:ビア、
6:金属メッキ(ビアの充填と配線)、
7:感光性ポリイミド樹脂組成物膜。
Claims (17)
- 主鎖中に、テトラカルボン酸またはその酸無水物とジアミンとの重縮合生成物から形成された式(1)
で表される繰り返し単位を有し、その両末端に、光重合可能な炭素−炭素二重結合を有する置換基を分子内に有するアミノベンゼン類またはトリメリット酸誘導体により末端変性された構造の化学線官能基を有する感光性ポリイミド前駆体であって、テトラカルボン酸またはその酸無水物が、剛直構造の芳香族テトラカルボン酸またはその酸無水物を70〜100モル%の割合で含有するものであり、かつ、ジアミンが、剛直構造の芳香族ジアミンを70〜100モル%の割合で含有するものであることを特徴とする感光性ポリイミド前駆体。 - 剛直構造の芳香族テトラカルボン酸またはその酸無水物が、ピロメリット酸、ピロメリット酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸、及びビフェニルテトラカルボン酸二無水物からなる群より選ばれる少なくとも1種の芳香族テトラカルボン酸またはその酸無水物である請求項1記載の感光性ポリイミド前駆体。
- 剛直構造の芳香族ジアミンが、主鎖にエステル構造及びアミド構造を含有しない芳香族ジアミンである請求項1記載の感光性ポリイミド前駆体。
- 主鎖にエステル構造及びアミド構造を含有しない芳香族ジアミンが、2,2′−ジ(p−アミノフェニル)−5,5′−ビスベンゾオキサゾール、2,2′−ジ(p−アミノフェニル)−6,6′−ビスベンゾオキサゾール、2,2′−ジ(p−アミノフェニル)−5,5′−ビスベンズイミダゾール、p−フェニレンジアミン、及び4,4′−ジアミノビフェニルからなる群より選ばれる少なくとも1種の芳香族ジアミンである請求項3記載の感光性ポリイミド前駆体。
- ジアミンが、剛直構造の芳香族ジアミン70モル%以上と柔軟構造のジアミノシロキサン30モル%以下とを含有するものである請求項1記載の感光性ポリイミド前駆体。
- 熱膨張率が20ppm/℃以下のポリイミド膜を形成することができる請求項1記載の感光性ポリイミド前駆体。
- 化学線官能基が、式(2)
で表される基Z1であり、感光性ポリイミド前駆体が式(3)
で表されるポリアミック酸である請求項1記載の感光性ポリイミド前駆体。 - 式(1)で表される繰り返し単位を単位分子量と定義した場合、カルボキシル基一個当りの単位分子量の値(単位分子量/COOH)が200以上300以下の範囲内にある請求項1記載の感光性ポリイミド前駆体。
- 式(1)で表される繰り返し単位を単位分子量と定義した場合、カルボキシル基一個当りの単位分子量の値(単位分子量/COOH)が300超過400以下の範囲内にある請求項1記載の感光性ポリイミド前駆体。
- (A)請求項1乃至10のいずれか1項に記載の感光性ポリイミド前駆体、(B)光重合性官能基を有する感光助剤、(C)光重合開始剤、及び(D)溶剤を含有する感光性ポリイミド樹脂組成物。
- (E)1H−テトラゾール類を更に含有する請求項11記載の感光性ポリイミド樹脂組成物。
- (i)シリコンウエハ上に金属からなる導体層を形成する工程、(ii)導体層の上に請求項11または12記載の感光性ポリイミド樹脂組成物を塗布し、プリベークして塗膜を形成する工程、(iii)塗膜の上からパターン状に露光し、ビアを形成する工程、(iv)塗膜を加熱して感光性ポリイミド樹脂組成物を硬化させる工程、(v)金属メッキにより、ビアを金属で充填するとともに、硬化塗膜上に配線パターンを形成する工程、及び(vi)前記工程(ii)乃至(v)と同様の工程を必要回数繰り返して多層化することを特徴とする多層回路基板の製造方法。
- 多層化後、シリコンウエハの多層回路が形成されていない面を研磨して、シリコンウエハを薄化させる工程が付加されている請求項13記載の製造方法。
- 請求項13記載の製造方法により得られた多層回路基板からシリコンウエハを除去する工程を含む多層回路内臓フィルム基板の製造方法。
- (I)銅基板上に請求項11または12記載の感光性ポリイミド樹脂組成物を塗布し、プリベークして塗膜を形成する工程、(II)塗膜の上からパターン状に露光し、ビアを形成する工程、(III)塗膜を加熱して感光性ポリイミド樹脂組成物を硬化させる工程、(IV)金属メッキにより、ビアを金属で充填するとともに、硬化塗膜上に配線パターンを形成する工程、(V)前記工程(I)乃至(IV)と同様の工程を繰り返して多層回路を形成する工程、及び(VI)銅基板を除去する工程からなる多層回路内臓フィルム基板の製造方法。
- シリコンウエハに形成された回路上に、請求項11または12記載の感光性ポリイミド樹脂組成物を塗布し、プリベークした後、露光することを特徴とするポリイミド樹脂からなるパッシベ−ション膜が形成された半導体素子の製造方法。
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