JP2004268277A - 液体吐出ヘッド及び液体吐出装置並びに液体吐出ヘッドの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】発熱抵抗素子を駆動して所定の液体を液体吐出ノズルから対象物に対して吐出する液体吐出ヘッド及び液体吐出装置並びに液体吐出ヘッドの製造方法において、発熱抵抗素子と駆動回路素子とを接続する配線部位の導通の信頼性を向上する。
【解決手段】吐出すべき所定の液体を収容する液室4内に配置されると共に上記液体に気泡を発生させるための発熱抵抗素子7に駆動電気信号を印加して熱エネルギを液体に付与し、液体吐出ノズル5から液体を吐出させる液体吐出ヘッド1であって、基板部材3に形成された発熱抵抗素子7と駆動回路素子13とを多層配線構造で接続する部位にて、発熱抵抗素子7に接続する配線層15と駆動回路素子13に接続する配線層14との間に接続孔16を形成して該接続孔16内に金属を埋め込み、この金属埋込み層17で上記二つの配線層14,15を接続したものである。
【選択図】 図2
【解決手段】吐出すべき所定の液体を収容する液室4内に配置されると共に上記液体に気泡を発生させるための発熱抵抗素子7に駆動電気信号を印加して熱エネルギを液体に付与し、液体吐出ノズル5から液体を吐出させる液体吐出ヘッド1であって、基板部材3に形成された発熱抵抗素子7と駆動回路素子13とを多層配線構造で接続する部位にて、発熱抵抗素子7に接続する配線層15と駆動回路素子13に接続する配線層14との間に接続孔16を形成して該接続孔16内に金属を埋め込み、この金属埋込み層17で上記二つの配線層14,15を接続したものである。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、発熱抵抗素子を駆動して所定の液体を液体吐出ノズルから対象物に対して吐出する液体吐出ヘッド及び液体吐出装置並びに液体吐出ヘッドの製造方法に関し、詳しくは、発熱抵抗素子と駆動回路素子とを接続する配線部位の導通の信頼性を向上することができる液体吐出ヘッド及び液体吐出装置並びに液体吐出ヘッドの製造方法に係るものである。
【0002】
【従来の技術】
従来のこの種の液体吐出ヘッド、例えばインクジェット方式のプリントヘッドは、静電引力方式、連続振動発生方式(電気機械変換方式)又はサーマル方式(電気熱変換方式)等の方式でインク液の小滴をノズル部材に形成されたインク吐出ノズルから吐出させ、記録媒体に付着せしめて、文字や画像を印画するものである。特に、サーマル方式のプリントヘッドが簡易にカラー画像を形成できることから、普及が拡大している。このサーマル方式は、熱エネルギをインク液に作用させて液滴を吐出させるようにしたものであり、熱エネルギの作用を受けたインク液が急激な体積の増加を伴う状態に変化し、この状態変化に基づく作用力によって、プリントヘッドのインク吐出ノズルからインク液が吐出されるようになっている。
【0003】
このようなインク液を吐出させるプリントヘッドでは、熱エネルギを発生させる発熱抵抗素子としてTa,TaNx,TaAl等の材料が用いられている。この発熱抵抗素子にはMOS或いはバイポーラ型の駆動トランジスタにて駆動電力が供給される。この駆動トランジスタも、MOS或いはバイポーラ型のトランジスタからなるロジック集積回路にて制御されている。そして、印画の高画質化のため、上記発熱抵抗素子は高密度で配置されることが望まれている。例えば、印画密度が600DPI相当のプリントヘッドでは、発熱抵抗素子を例えば42.333μm間隔で配置する必要がある。このため、上記発熱抵抗素子及び駆動トランジスタ並びにロジック集積回路が同一半導体基板上に形成されるのが主流となっている。
【0004】
上記サーマル方式のプリントヘッドでは、発熱抵抗素子にインク滴を吐出させるための所要の駆動電気パルスを印加するものであり、インク滴を吐出させる発熱部には発熱抵抗素子上にSi3N4層と正方晶構造のβ−Ta層の2層からなる保護膜が形成されている。この発熱抵抗素子上に形成されるSi3N4層は、該発熱抵抗素子に接続されるAlの配線層との層間絶縁膜として機能し、β−Ta層は、インク滴の消泡時の機械的衝撃(キャビテーション)を吸収緩和すると共に、インク成分による化学反応に対する防止層として機能している。
【0005】
上記のSi3N4層及びβ−Ta層共に厚さが大きい方が信頼性の点から有利であるが、この場合はインク吐出に必要な熱エネルギ効率が落ちる。そのため、SiN層は例えば0.15〜0.6μmの厚さ、Ta層は例えば0.2μm程度の厚さに設定されているのが一般的である。特に、SiN層については絶縁膜であるため、金属層であるTa層に比べて熱伝導性が悪い。熱効率改善のためにはSiN層を薄くすることが望まれるが、信頼性とのトレード・オフとなる。そこで、上記発熱抵抗素子に接続されるAl配線層の厚さを薄くすることで、SiN層を薄くすることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。例えば、Al配線層の厚さを0.18〜0.24μmに規定することで、SiN層を0.26〜0.34μmの厚さとするものである。
【0006】
【特許文献1】
特開2001−130003号公報(第14〜15頁、図13)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記特許文献1に記載されたように、発熱抵抗素子に接続されるAl配線層を薄くすると、その配線抵抗の増加により寄生抵抗が増加し、発熱抵抗素子で消費されるべき熱エネルギ効率が劣化する。それに加えて、上記発熱抵抗素子に接続されるAl配線層には、インク吐出のための熱エネルギ発生のために、例えば70〜160mAの電流を流す必要がある。これは通常の半導体集積回路に比べ非常に大きい電流値であり、上述の0.18〜0.24μmの厚さのAl配線層においては負荷が大きい電流値であって、Al配線層が断線する虞がある。したがって、接続孔部での導通の信頼性が低下する。
【0008】
これに対して、Al配線層の寿命を補強するために、Al中にSiやCuを添加して、Al配線層の断線の起点となるAlの結晶粒界をSiやCuで補強する手法がある。しかしながら、Alを溶解させる薬液を用いて発熱抵抗素子上のみAl配線層を除去し、インク吐出の発熱部を形成するプリントヘッド作製プロセスでは、Al中に添加したSiやCuが残渣として発熱抵抗素子上に残るという問題がある。
【0009】
仮に、上記残渣が残るという問題を解決した状態で、SiやCuを添加したAl配線層を採用したとしても、発熱抵抗素子に接続されるAl配線層と、駆動トランジスタに接続されるAl配線層とは、接続孔(ビアホール)を介して接続されることとなり、この接続孔においては発熱抵抗素子に接続されるAl配線層に必然的に段差が形成され、この段差部において電流集中が起こり、上記発熱抵抗素子に接続されるAl配線層が断線する虞がある。
【0010】
これに対処して、上記特許文献1には、接続孔の側壁にテーパー形状をつけて上記の段差を緩和することが記載されているが、接続孔の側壁をテーパー形状にしたとしても段差部が無くなる訳ではなく、根本的に上記段差部において発熱抵抗素子に接続されるAl配線層の断線を回避することはできない。また、上記接続孔(ビアホール)は、直径10〜15μmの大きな径を有するものであるが、この径を大きくしても段差部におけるAl配線層の断線を回避できるものでもない。したがって、接続孔部での導通の信頼性は改善できない。
【0011】
そこで、本発明は、このような問題点に対処し、発熱抵抗素子と駆動回路素子とを接続する配線部位の導通の信頼性を向上することができる液体吐出ヘッド及び液体吐出装置並びに液体吐出ヘッドの製造方法を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明による液体吐出ヘッドは、吐出すべき所定の液体を収容する液室と、上記液室内に配置されると共に上記液体に気泡を発生させるための発熱抵抗素子と、上記発熱抵抗素子による上記液体の気泡の生成に伴って上記液室内の液体を吐出させるための液体吐出ノズルと、上記発熱抵抗素子が形成される共に該発熱抵抗素子に駆動電気信号を印加する駆動回路素子が形成された基板部材と、を備え、上記発熱抵抗素子に駆動電気信号を印加して熱エネルギを液体に付与し上記液体吐出ノズルから液体を吐出させる液体吐出ヘッドであって、上記基板部材の発熱抵抗素子と駆動回路素子とを多層配線構造で接続する部位にて、発熱抵抗素子に接続する配線層と駆動回路素子に接続する配線層との間に接続孔を形成して該接続孔内に金属を埋め込み、この金属埋込み層で上記二つの配線層を接続したものである。
【0013】
このような構成により、発熱抵抗素子に接続する配線層と駆動回路素子に接続する配線層との間に接続孔を形成して該接続孔内に金属を埋め込み、この金属埋込み層で上記二つの配線層を接続したことにより、上記発熱抵抗素子に接続する配線層と駆動回路素子に接続する配線層とが直接接触することをなくし、発熱抵抗素子に接続する配線層に段差が形成されるのを回避する。これにより、配線層の断線を抑制して、発熱抵抗素子と駆動回路素子とを接続する配線部位の導通の信頼性を向上する。
【0014】
また、本発明による液体吐出装置は、装置本体部に液体吐出ヘッドを着脱可能な状態に保持し、該液体吐出ヘッドに形成された各液体吐出ノズルから所定の液体を吐出してドット列又はドットを形成する液体吐出装置であって、上記液体吐出ヘッドは、吐出すべき所定の液体を収容する液室と、上記液室内に配置されると共に上記液体に気泡を発生させるための発熱抵抗素子と、上記発熱抵抗素子による上記液体の気泡の生成に伴って上記液室内の液体を吐出させるための液体吐出ノズルと、上記発熱抵抗素子が形成される共に該発熱抵抗素子に駆動電気信号を印加する駆動回路素子が形成された基板部材とを備え、該基板部材の発熱抵抗素子と駆動回路素子とを多層配線構造で接続する部位にて、発熱抵抗素子に接続する配線層と駆動回路素子に接続する配線層との間に接続孔を形成して該接続孔内に金属を埋め込み、この金属埋込み層で上記二つの配線層を接続したものである。
【0015】
このような構成により、装置本体部に着脱可能に保持される液体吐出ヘッドを、前述の手段による液体吐出ヘッドと同じ構成とすることにより、発熱抵抗素子に接続する配線層と駆動回路素子に接続する配線層とが直接接触することをなくし、発熱抵抗素子に接続する配線層に段差が形成されるのを回避する。これにより、液体吐出ヘッドの配線層の断線を抑制して、発熱抵抗素子と駆動回路素子とを接続する配線部位の導通の信頼性を向上する。
【0016】
さらに、本発明による液体吐出ヘッドの製造方法は、半導体基板の一面に駆動回路素子を形成する工程と、上記半導体基板上に第一の層間絶縁膜を形成する工程と、第一の層間絶縁膜上に上記駆動回路素子に接続する第一の配線層を形成する工程と、第一の配線層上に第二の層間絶縁膜を形成した後、この第二の層間絶縁膜の厚み内に上記第一の配線層に接続するための接続孔を形成する工程と、この接続孔内に金属を埋め込み金属埋込み層を形成する工程と、上記第二の層間絶縁膜上に発熱抵抗素子を形成する工程と、この発熱抵抗素子と上記金属埋込み層とを接続する第二の配線層を形成する工程と、上記第一及び第二の配線層が形成された半導体基板に対し熱処理を施す工程と、この熱処理された基板部材に対して、液体吐出ノズルを一壁面に有する液室を構成する工程と、を行うものである。
【0017】
このような方法により、液体吐出ヘッドの基板部材を薄膜プロセス及びフォトリソグラフィ工程並びにエッチング処理などの半導体製造プロセスにより形成することで、発熱抵抗素子に接続する配線層と駆動回路素子に接続する配線層とが直接接触することをなくし、発熱抵抗素子に接続する配線層に段差が形成されるのを回避する。これにより、配線層の断線を抑制して、発熱抵抗素子と駆動回路素子とを接続する配線部位の導通の信頼性を向上する。また、同一半導体基板上に高密度の発熱抵抗素子及び駆動回路素子を形成することができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明による液体吐出ヘッドの実施の形態を示す要部拡大断面図である。この液体吐出ヘッドは、発熱抵抗素子を駆動して所定の液体を液体吐出ノズルから対象物に対して吐出するもので、一例としては、サーマル方式(電気熱変換方式)でインク液の小滴をノズル部材に形成されたインク吐出ノズルから吐出させ、記録媒体に付着せしめて、文字や画像を印画するインクジェット方式のプリントヘッドである。
【0019】
図1において、このインクジェット方式のプリントヘッド1は、ノズル部材2と、基板部材3とを備えて成る。ノズル部材2は、吐出すべき所定の液体(インク液)を収容する液室としてのインク室4の一側面を構成すると共に、イエローY、マゼンタM、シアンC、ブラックKの各色のインク用に多数の液体吐出ノズル、即ちインク吐出ノズル5が形成されている。このノズル部材2は、例えば厚さ15〜20μm程度のシート部材から成り、その所定位置に直径約20μm程度のインク吐出ノズル5が数百個、整列された状態で形成されている。
【0020】
上記ノズル部材2の一面には、後述の液室形成部材6を介して基板部材3が接着されている。この基板部材3は、上記インク室4の一側面とは異なる側面を構成し、該インク室4内のインク液を上記インク吐出ノズル5から吐出させるためにインク液に気泡を発生させる発熱抵抗素子7が形成されると共に、該発熱抵抗素子7に駆動電気信号(駆動電気パルス)を印加する駆動回路素子(図2の符号13参照)が形成され、いわゆるヘッドチップと呼ばれるものである。
【0021】
上記発熱抵抗素子7は、駆動電気パルスの印加により発熱してインク室4内に収容されたインク液に熱エネルギを付与し、インク吐出ノズル5からインク液滴8を吐出させるもので、シリコン(Si)から成る半導体基板9の一方の面に析出形成されている。なお、発熱抵抗素子7は、Ta,TaNx又はTaAl等の物質から成り、例えば一辺が約18μm程度の正方形状をなし、或いは、約20μm長で9.6μm幅の分割抵抗素子から成る2分割形状をなしている。
【0022】
上記ノズル部材2と半導体基板9との間に積層された液室形成部材6は、その一端面が発熱抵抗素子7に接近して配置されており、ノズル部材2の面と半導体基板9の面と液室形成部材6の一端面とで囲まれた空間がインク室4とされている。上記液室形成部材6は、例えば露光硬化型のドライフィルムレジストから成り、上記半導体基板9の発熱抵抗素子7が形成された面の全体に積層された後、フォトリソプロセスによって不要な部分が取り除かれることによって形成されている。なお、液室形成部材6の厚みは、約12μm程度とされている。また、インク室4の幅は、約25μm程度とされている。
【0023】
そして、上記ノズル部材2には、流路板10が貼り合わされている。この流路板10の板厚の内部には、インク室4へインク液を供給するためのインク流路11が形成されている。なお、流路板10には、インク流路11に連通するインク供給管12が接続されている。上記流路板10は、1色のインクごとに1個設けられ、Y,M,C,Kの4色では4個並列に設けられている。
【0024】
このような状態で、上記基板部材3に形成された発熱抵抗素子7及び駆動回路素子13と外部の図示外の制御部とがフレキシブル基板(図示せず)により電気的に接続されて駆動制御される。そして、上記発熱抵抗素子7に駆動電気パルスを印加して駆動し、熱エネルギをインク液に付与しインク吐出ノズル5からインク液滴8を吐出させるようになっている。
【0025】
ここで、本発明においては、図2に示すように(図2は図1と天地を逆にして示している)、上記基板部材3の発熱抵抗素子7と駆動回路素子13とを多層配線構造で接続する部位にて、発熱抵抗素子7に接続する配線層と駆動回路素子13に接続する配線層との間に接続孔を形成して該接続孔内に金属を埋め込み、この金属埋込み層で上記二つの配線層が接続されている。すなわち、上記基板部材3内にて、駆動回路素子13に接続するAlの第一の配線層14と、発熱抵抗素子7に接続するAlの第二の配線層15との層間に接続孔16,16が形成され、該接続孔16,16内に金属が埋め込まれている。そして、この金属埋込み層17,17で第一及び第二の配線層14,15が接続されている。なお、上記金属埋込み層17は、タングステン(W)、銅(Cu)、チタン(Ti)、窒化チタン(TiN)、タンタル(Ta)又は窒化タンタル(TaN)のいずれか一つの金属或いは複数の金属から成る。その他、化学気相成長法(CVD法)或いは電界メッキ法により成膜できるものならば、他の金属を用いてもよい。
【0026】
また、上記発熱抵抗素子7を保護する被覆層として、タンタル(Ta)或いはタンタルアルミニウム(TaAl)から成るキャビテーション層18が形成されている。この発熱抵抗素子7を保護する被覆層としてTaAlを形成するのは、正方晶構造のβ−Taの結晶粒界にAlが存在するTaAlがインク液滴の消泡時の機械的衝撃(キャビテーション)を吸収緩和すると共に、インク液成分による化学反応に対する保護層として機能するからである。
【0027】
さらに、上記発熱抵抗素子7は、基板部材3に対しスパッタリング法により成膜されている。或いは、化学気相成長法(CVD法)により成膜されたものであってもよい。
【0028】
このような構成により、二つの配線層14,15間に形成された接続孔16内に金属を埋め込み、この金属埋込み層17で第一及び第二の配線層14,15を接続することにより、従来のようにビアホール内で発熱抵抗素子7に接続する配線層と駆動回路素子13に接続する配線層とが直接接触することをなくし、発熱抵抗素子7に接続する配線層に段差が形成されるのを回避することができる。これにより、配線層14,15の断線を抑制して、発熱抵抗素子7と駆動回路素子13とを接続する配線部位の導通の信頼性を向上することができる。
【0029】
次に、上記のように構成される液体吐出ヘッド、例えばプリントヘッド1の製造方法について、図3〜図10を参照して説明する。まず、図3において、半導体基板9(Si基板)に洗浄工程を施し、該半導体基板9上にシリコン窒化膜を堆積し、リソグラフィー工程を経てリアクティブイオンエッチング工程を施し、トランジスタを形成する領域上にSi3N4膜が残るようにする。そして、熱酸化工程を施し、Si3N4膜が除去された領域にトランジスタを分離するための素子分離領域(LOCOS:Local oxidation of silicon)となる熱シリコン酸化膜19を例えば500nm形成する。その後、この熱シリコン酸化膜19はエッチングされ、最終膜厚は例えば260nmとなる。
【0030】
次に、再び洗浄工程を施し、トランジスタ形成領域にタングステンシリサイド/ポリシリコン/熱酸化膜構造のゲートを形成し、ソース・ドレイン領域を形成するためのイオン注入工程、熱処理工程を施し、MOS(metal−oxide−semiconductor)型のトランジスタを形成する。これらの工程により25V程度の耐圧を有するMOS型の駆動トランジスタから成る駆動回路素子13と、5V動作のMOSトランジスタから成るロジック集積回路20とを形成する。上記25V程度の耐圧を有するMOS型の駆動トランジスタの形成は、ゲート/ドレイン間に低濃度の拡散層を形成し、その部分で加速される電子の電界を緩和することで耐圧を確保する。或いは、熱シリコン酸化膜をゲート/ドレイン間に形成することで、加速される電子の電界を緩和することも可能である。
【0031】
次に、CVD法にてリンが添加されたシリコン酸化膜であるPSG膜を例えば100nm堆積し、引き続きボロンとリンが添加されたシリコン酸化膜であるBPSG膜を例えば500nm堆積する。これにより600nm膜厚の1層目の第一の層間絶縁膜21aを形成する。その後、上記1層目の層間絶縁膜21aにフォトリソグラフィー工程を施し、C4F8/CO/O2/Ar系ガスを用いたリアクティブイオンエッチング法を用いて、シリコン半導体拡散層(ソース・ドレイン)上にコンタクトホール22を開口する。
【0032】
次に、図3において希フッ酸洗浄を施した後、図4において、スパッタリング法にて、ソース/ドレイン拡散層とのコンタクト抵抗低減のためのTiコンタクトメタルを例えば30nm、TiONバリアメタルを70nm、さらにTiを30nm順次堆積し、その上層にSiが1atom%添加されたAl(或いはCuが0.5atom%添加されたAl)を500nm堆積する。その上にTiを10nm堆積し、更にその上層にAl層の反射防止膜としてTiONを例えば25nm堆積する。その後、フォトリソグラフィー工程、塩素系ガスを主体に用いたドライエッチング工程を施し、1層目の第一の配線層14(上層より、TiON反射防止膜/Ti/Al−1%Si/Ti/TiONバリアメタル/Tiコンタクトメタルの構造)を形成する。
【0033】
次に、上記第一の配線層14上にCVD法でTEOS(テトラエトキシシラン:Si(OC2H5)4)を原料ガスとしてシリコン酸化膜を堆積する。その上層にSOG(Spin on Glass)と呼ぶ有機溶媒を含む塗布型シリコン酸化膜を塗布する。この積層膜を、フッ素系ガスを用いて全面エッチバックすることにより平坦化する。この工程を2回繰り返すことにより、例えば440nm膜厚のシリコン酸化膜(SiO2)からなる2層目の第二の層間絶縁膜21bを形成する。
【0034】
その後、上記第二の層間絶縁膜21bにフォトレジスト工程を施し、図2に示す発熱抵抗素子7及び第二の配線層15と接続するための接続孔(ビアホール)16領域となる部分を規定し、CHF3/CF4/Ar系ガスを用いたドライエッチング法により第二の層間絶縁膜21bをエッチングする。この工程にて、例えば0.5〜1.0μmの直径を有する接続孔16が10〜15個程度開口される。
【0035】
次に、図4において、レジスト除去のアッシング工程及び洗浄工程を経て、図5に示すように、スパッタリング法にて、Alとの接触抵抗低減のためのTiコンタクトメタルを20nm堆積し、その後、Wとの接着性が良いTiNバリアメタルを50nm堆積させて、接着層23(上層より、TiN/Tiの構造)を形成する。
【0036】
次に、図6において、半導体基板9の全体をCVD装置に搭載し、該半導体基板9の加熱温度を約400〜450℃に設定し、反応ガスとしてWF6,SiH4,H2を用いて、金属膜としてタングステン(W)膜24をCVD法により成膜する。このときまず、WF6ガスをSiH4ガスで還元し、TiNバリアメタル上にWを成長させるための核となるW膜を成膜する。次に、WF6ガスをH2ガスで還元し、上記0.5〜1.0μmの直径の接続孔16内が完全にWで埋め込まれるように、0.5〜1.0μmの厚さまでW膜24を成膜する。これにより、上記接続孔16内にWが埋め込まれる。
【0037】
次に、図6において、上記接続孔16内に埋め込まれた以外の第二の層間絶縁膜21b上に成膜されたW,TiN,Tiをエッチバック法又はCMP(ケミカルメカニカルポリッシュ)法にて除去する。このとき、エッチバック法は、SF6等のフッ素系ガスでWをエッチング除去し、Cl2等の塩素系ガスでTiN,Tiをエッチング除去するものである。また、CMP法は、WやTiN,Tiを酸化溶解させる作用を有する研磨剤を用いて、上記接続孔16内に埋め込まれた以外のW,TiN,Tiを除去するものである。この工程を経ることで、図7に示すように、接続孔16内のみにWが残され、該接続孔16内に金属埋込み層17が形成される。
【0038】
次に、図7において洗浄工程を経た後に、図8において、半導体基板9の全体をスパッタリング装置に搭載し、スパッタリング法にて発熱抵抗素子7としてTa,TaNx又はTaAl等を成膜する。次に、感光性樹脂であるフォトレジストを半導体基板9上に全面塗布する。そして、所望の形状が描画されたマスクを用いて、露光装置でフォトレジストに所望の配線パターンを描く。この露光工程において紫外線を浴びた部分が現像液で溶けるようになる。その後、上記半導体基板9をドライエッチング装置に搭載し、BCl3/Cl2系ガスのプラズマを用いたドライエッチング法により、Ta,TaNx又はTaAl等の素子材料が所望形状に加工されて、発熱抵抗素子7が形成される。
【0039】
次に、図8において、半導体基板9の全体をスパッタリング装置内のスパッタ成膜チェンバーに搬送し、Alターゲットを用いてAl層を例えば0.3〜0.6μm堆積する。そして、感光性樹脂であるフォトレジストを半導体基板9上に全面塗布し、所望の形状が描画されたマスクを用いて、露光装置でフォトレジストに所望の配線パターンを描く。その後、再び半導体基板9をドライエッチング装置に搭載し、BCl3/Cl2系ガスのプラズマを用いたドライエッチング法により、Al層を所望の配線パターン形状に加工する。これらの工程により、2層目の第二の配線層15が形成される。
【0040】
次に、図8において、上記のように形成された第二の配線層15に対してマスクを用いたフォトリソグラフィ工程を施し、インク液を吐出させるための熱エネルギ付与部を規定する。その後、図9に示すように、半導体基板9の全体を燐酸−硝酸−酢酸から成る混合液中に浸漬させ、上記熱エネルギ付与部の上に形成された第二の配線層15をウェットエッチングにより除去し、上記熱エネルギ付与部と規定された部位のみの発熱抵抗素子7を露出させる。このウェットエッチングにより第二の配線層15を除去した部分が、インク室4内に位置する部分となる。
ここでは、上記熱エネルギ付与部の上に形成された第二の配線層15をウェットエッチングにて除去するプロセスを用いた例を説明したが、本発明者等が特開2002−307693号公報で提案しているように、ドライエッチング法を用いて上記熱エネルギ付与部上に形成された第二の配線層15を除去してもよい。
【0041】
次に、図9において流水洗浄をし、乾燥を施した後に、図10において、上記第二の配線層15の上層に、オーバーコート層としてSi3N4層から成る絶縁保護層25をCVD法で例えば300〜400nm堆積する。なお、この絶縁保護層25は、例えばインク液に対するバリア層となる。
【0042】
次に、この状態の半導体基板9を図示外の熱処理炉に搬送し、4%の水素を添加した窒素ガス(フォーミングガス)雰囲気あるいは100%の窒素ガス雰囲気中で、例えば400℃、60分間の熱処理を施す。この熱処理により、MOSトランジスタの動作が安定化され、さらに第一の配線層14と第二の配線層15との金属埋込み層17における接触も安定化し、そのコンタクト抵抗が低減する。
【0043】
次に、上記熱処理された半導体基板9を、図10において、直流マグネトロン・スパッタリング装置内のスパッタ成膜チェンバーに搭載し、キャビテーション層18としてのTa膜(正方晶構造のβ−Ta)を例えば200nm堆積する。その後、フォトレジスト工程により所望の保護層パターンを規定し、BCl3/Cl2ガスを用いたドライエッチングにより、所望形状のキャビテーション層18に加工される。このキャビテーション層18は、インク液滴の消泡時の機械的衝撃(キャビテーション)を吸収緩和すると共に、インク液成分による化学反応に対する保護層として機能し、発熱抵抗素子7を保護する被覆層となる。この状態で、図1に示す基板部材3が製造され、いわゆるヘッドチップと呼ばれるものとなる。
【0044】
その後、図2に示すように、上記基板部材3の発熱抵抗素子7が形成された部位の側面に、有機材料からなる液室形成部材6を貼り付けてインク室4を形成し、この液室形成部材6を介してノズル部材2が接着される。このノズル部材2には、多数のインク吐出ノズル5が形成されており、上記インク室4の位置に合致されている。これにより、液体吐出ヘッドとしてのプリントヘッド1が製造される。
【0045】
なお、上記金属埋込み層17は、Wに限られず、Cu、Ti、TiN、Ta又はTaNのいずれか一つの金属或いは複数の金属で成膜してもよい。その他、CVD法或いは電界メッキ法により成膜できるものならば、他の金属を用いてもよい。また、上記発熱抵抗素子7を保護する被覆層として、TaAlから成るキャビテーション層18を形成してもよい。また、上記発熱抵抗素子7の基板部材3への成膜は、スパッタリング法に限られず、CVD法により成膜してもよい。
【0046】
そして、このような製造方法により、プリントヘッド1の基板部材3を薄膜プロセス及びフォトリソグラフィ工程並びにエッチング処理などの半導体製造プロセスにより形成することで、発熱抵抗素子7に接続する第二の配線層15と駆動回路素子13に接続する第一の配線層14とが直接接触することをなくし、発熱抵抗素子7に接続する第二の配線層15に段差が形成されるのを回避することができる。これにより、第二の配線層15の断線を抑制して、発熱抵抗素子7と駆動回路素子13とを接続する配線部位の導通の信頼性を向上する。また、同一半導体基板9上に高密度の発熱抵抗素子7及び駆動回路素子13を形成することができる。
【0047】
次に、本発明による液体吐出装置の一例としてのインクジェットプリンタの実施形態を、図11及び図12を参照して説明する。このインクジェットプリンタ30は、図1及び図2に示すプリントヘッド1にて記録媒体の所定位置にインク滴を吐出して画像を形成するものであり、プリンタ本体部31と、プリントヘッド1と、記録紙トレイ32とを備えている。
【0048】
上記プリンタ本体部31は、装置本体部として記録媒体である記録紙に対して適正に印画を行わせるための記録紙搬送機構部や電気回路部を内部に納めたものであり、上面にはプリントヘッド1を収納する収納部33が開口されており、その上端部には該収納部33を開閉する上蓋34が設けられている。また、プリンタ本体部31の前面下部には、後述の記録紙トレイ32を装着するためのトレイ挿入口35が設けられている。なお、このトレイ挿入口35は記録紙の排紙口も兼ねている。
【0049】
上記プリンタ本体部31の収納部33には、前述のように構成されたプリントヘッド1が矢印Zのように収納されて、着脱可能な状態に保持されている。ここでは、一例として記録紙(例えばA4判)の一辺の幅にわたってノズル部材2が長尺に形成されたフルラインタイプのプリントヘッドを示している。また、上記プリンタ本体部31のトレイ挿入口35には、記録紙トレイ32が着脱可能状態に装着されている。この記録紙トレイ32は、記録紙を重ねて収納するものであり、その上面部にはプリンタ本体部31から排紙される記録紙の排紙受け部32aが設けられている。
【0050】
図12は、上記プリンタ本体部31の内部構造の具体的な一例を示す断面図で、(a)は印画停止状態を示し、(b)は印画動作状態を示している。このプリンタ本体部31は、図12(a)に示すように、プリンタ本体部31の下方部で、記録紙トレイ32の挿入方向にてその側端部に対応する上方部位には、ローラーから成る給紙手段36が設けられており、記録紙トレイ32から記録紙37が随時供給できるようになっている。また、記録紙37の供給方向には、分離手段38が設けられており、重ねて収納された記録紙37を1枚ずつ分離して給紙できるようになっている。さらに、この分離手段38で分離された記録紙37の搬送方向でプリンタ本体部31の上方部位には、記録紙37の搬送方向を反転する反転ローラー39が設けられている。
【0051】
そして、この反転ローラー39で反転された記録紙37の搬送方向の先にはベルト搬送手段40が設けられており、図12(a)に示すように、印画停止状態においては、排紙方向の端部40aが矢印A方向に下がって、プリントヘッド1の下面との間に大きなギャップを形成している。一方、図12(b)に示す印画動作状態においては、上記端部40aが矢印B方向に上昇して水平状態にされ、プリントヘッド1の下面との間に所定の小さなギャップの記録紙通路を形成するようにされている。
【0052】
また、印画停止状態において、図12(a)に示すように、プリントヘッド1の下面はヘッドキャップ41で閉じられており、インク吐出ノズル10のインクが乾燥して目詰まりするのを防いでいる。また、ヘッドキャップ41には、クリーニング手段42が設けられており、印画動作開始前に、ヘッドキャップ41が所定の位置に退避する(図12(b)参照)動作に伴って、インク吐出ノズル5をクリーニングするようになっている。
【0053】
次に、このように構成されたインクジェットプリンタ30の動作について説明する。まず、図11に示すプリンタ本体部31の上面の上蓋34を開いて、プリントヘッド1を収納部33に矢印Zのように収納する。また、プリンタ本体部31の前面下部に設けられたトレイ挿入口35に記録紙トレイ32を挿入する。このとき、図12(a)に示すように、プリンタ本体部31の内部は、ベルト搬送手段40の端部40aが矢印A方向に下がっており、プリントヘッド1の下面がヘッドキャップ41で閉じられて印画停止状態となっている。
【0054】
次に、印画開始の制御信号が入力されると、ヘッドキャップ41が図12(a)において矢印Cのように移動して所定の位置に退避する。このとき、ヘッドキャップ41の退避動作に伴って、クリーニング手段42がプリントヘッド1のノズル部材2の表面を摺動してインク吐出ノズル5(図1参照)をクリーニングする。
【0055】
また、このヘッドキャップ41が所定位置に退避すると、ベルト搬送手段40の端部40aが図12(a)において矢印B方向に上昇し、該ベルト搬送手段40は、水平状態にてその搬送用ベルトと上記プリントヘッド1との間に所定の小さなギャップの記録紙通路を形成して停止する(図12(b)参照)。
【0056】
そして、図12(b)に示す印画動作状態において、給紙手段36が駆動し、記録紙トレイ32内に重ねて収納された記録紙37が矢印D方向に供給される。この際、分離手段38によって記録紙37は1枚ずつに分離されて矢印E方向に随時給紙される。
【0057】
この給紙された記録紙37は、反転ローラー39により搬送方向が反転されて、ベルト搬送手段40まで送られる。そして、該記録紙37は、ベルト搬送手段40によってプリントヘッド1の下方部まで運ばれて行く。
【0058】
さらに、記録紙37が、プリントヘッド1の下方部に達すると、印画信号が入力され、該印画信号に応じてプリントヘッド1の発熱抵抗素子7(図2参照)が駆動される。そして、一定速度で送られる記録紙37に対して、4色のインクに対応するインク吐出ノズル5の列からインク液滴8が吐出され、記録紙37上にカラーのプリント画像が形成される。
【0059】
このようにして記録紙37上への印画が総て終了すると、図12(b)に示すように、記録紙37はプリントヘッド1の下方部から矢印F方向に搬送され、排紙口を兼ねたトレイ挿入口35(図11参照)から記録紙トレイ32の排紙受け部32aに排紙される。そして、図12(a)に示すように、ベルト搬送手段40の端部40aが矢印A方向に下がり、ヘッドキャップ41がプリントヘッド1の下面を閉じて印画停止状態に復帰し、インクジェットプリンタ30の動作が停止する。
【0060】
なお、以上の説明においては、インクジェットプリンタに適用された例について述べたが、本発明はこれに限らず、液室(4)に収容された液体を液体吐出ノズル(5)から液滴として吐出するものであればどのようなものでもよい。例えば、記録方式がインクジェット方式のファクシミリ装置や複写機等の画像形成装置についても適用可能である。
【0061】
また、液体吐出ノズル(5)から吐出される液体はインクに限られず、発熱抵抗素子7を駆動して所定の液体を吐出しドット列又はドットを形成するものであるならば、他の液体の吐出装置にも適用することができる。例えば、DNA鑑定などにおいてDNA含有溶液をパレット上に吐出するための液体吐出装置にも適用することができる。
【0062】
【発明の効果】
本発明は以上のように構成されたので、請求項1〜5に係る液体吐出ヘッドによれば、発熱抵抗素子に接続する配線層と駆動回路素子に接続する配線層との間に接続孔を形成して該接続孔内に金属を埋め込み、この金属埋込み層で上記二つの配線層を接続したことにより、上記発熱抵抗素子に接続する配線層と駆動回路素子に接続する配線層とが直接接触することをなくし、発熱抵抗素子に接続する配線層に段差が形成されるのを回避することができる。これにより、配線層の断線を抑制して、発熱抵抗素子と駆動回路素子とを接続する配線部位の導通の信頼性を向上することができる。
【0063】
また、請求項6〜10に係る液体吐出装置によれば、装置本体部に着脱可能に保持される液体吐出ヘッドを、請求項1〜5に係る液体吐出ヘッドと同じ構成とすることにより、発熱抵抗素子に接続する配線層と駆動回路素子に接続する配線層とが直接接触することをなくし、発熱抵抗素子に接続する配線層に段差が形成されるのを回避することができる。これにより、液体吐出ヘッドの配線層の断線を抑制して、発熱抵抗素子と駆動回路素子とを接続する配線部位の導通の信頼性を向上することができる。
【0064】
また、請求項11〜15に係る液体吐出ヘッドの製造方法によれば、液体吐出ヘッドの基板部材を薄膜プロセス及びフォトリソグラフィ工程並びにエッチング処理などの半導体製造プロセスにより形成することで、発熱抵抗素子に接続する配線層と駆動回路素子に接続する配線層とが直接接触することをなくし、発熱抵抗素子に接続する配線層に段差が形成されるのを回避することができる。これにより、配線層の断線を抑制して、発熱抵抗素子と駆動回路素子とを接続する配線部位の導通の信頼性を向上することができる。また、同一半導体基板上に高密度の発熱抵抗素子及び駆動回路素子を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による液体吐出ヘッドの一例としてのインクジェット方式のプリントヘッドの実施の形態を示す要部拡大断面図である。
【図2】上記プリントヘッドの基板部材内の層構造を示す断面説明図である。
【図3】本発明による液体吐出ヘッドの製造方法を説明する工程図であり、一例としてのインクジェット方式のプリントヘッドを半導体製造プロセスにより製造する工程を示す説明図である。
【図4】同じく、インクジェット方式のプリントヘッドを半導体製造プロセスにより製造する工程を示す説明図である。
【図5】同じく、インクジェット方式のプリントヘッドを半導体製造プロセスにより製造する工程を示す説明図である。
【図6】同じく、インクジェット方式のプリントヘッドを半導体製造プロセスにより製造する工程を示す説明図である。
【図7】同じく、インクジェット方式のプリントヘッドを半導体製造プロセスにより製造する工程を示す説明図である。
【図8】同じく、インクジェット方式のプリントヘッドを半導体製造プロセスにより製造する工程を示す説明図である。
【図9】同じく、インクジェット方式のプリントヘッドを半導体製造プロセスにより製造する工程を示す説明図である。
【図10】同じく、インクジェット方式のプリントヘッドを半導体製造プロセスにより製造する工程を示す説明図である。
【図11】本発明による液体吐出装置の一例としてのインクジェットプリンタの実施形態を示す斜視図である。
【図12】図11に示すインジェットプリンタの内部構成を示した断面図であり、(a)は印画停止状態を示し、(b)は印画動作状態を示している。
【符号の説明】
1…プリントヘッド(液体吐出ヘッド)
2…ノズル部材
3…基板部材
4…インク室(液室)
5…インク吐出ノズル(液体吐出ノズル)
6…液室形成部材
7…発熱抵抗素子
8…インク液滴
9…半導体基板
10…流路板
11…インク流路
12…インク供給管
13…駆動回路素子
14…第一の配線層
15…第二の配線層
16…接続孔
17…金属埋込み層
18…キャビテーション層
20…ロジック集積回路
21a…第一の層間絶縁膜
21b…第二の層間絶縁膜
30…インクジェットプリンタ(液体吐出装置)
31…プリンタ本体部
32…記録紙トレイ
【発明の属する技術分野】
本発明は、発熱抵抗素子を駆動して所定の液体を液体吐出ノズルから対象物に対して吐出する液体吐出ヘッド及び液体吐出装置並びに液体吐出ヘッドの製造方法に関し、詳しくは、発熱抵抗素子と駆動回路素子とを接続する配線部位の導通の信頼性を向上することができる液体吐出ヘッド及び液体吐出装置並びに液体吐出ヘッドの製造方法に係るものである。
【0002】
【従来の技術】
従来のこの種の液体吐出ヘッド、例えばインクジェット方式のプリントヘッドは、静電引力方式、連続振動発生方式(電気機械変換方式)又はサーマル方式(電気熱変換方式)等の方式でインク液の小滴をノズル部材に形成されたインク吐出ノズルから吐出させ、記録媒体に付着せしめて、文字や画像を印画するものである。特に、サーマル方式のプリントヘッドが簡易にカラー画像を形成できることから、普及が拡大している。このサーマル方式は、熱エネルギをインク液に作用させて液滴を吐出させるようにしたものであり、熱エネルギの作用を受けたインク液が急激な体積の増加を伴う状態に変化し、この状態変化に基づく作用力によって、プリントヘッドのインク吐出ノズルからインク液が吐出されるようになっている。
【0003】
このようなインク液を吐出させるプリントヘッドでは、熱エネルギを発生させる発熱抵抗素子としてTa,TaNx,TaAl等の材料が用いられている。この発熱抵抗素子にはMOS或いはバイポーラ型の駆動トランジスタにて駆動電力が供給される。この駆動トランジスタも、MOS或いはバイポーラ型のトランジスタからなるロジック集積回路にて制御されている。そして、印画の高画質化のため、上記発熱抵抗素子は高密度で配置されることが望まれている。例えば、印画密度が600DPI相当のプリントヘッドでは、発熱抵抗素子を例えば42.333μm間隔で配置する必要がある。このため、上記発熱抵抗素子及び駆動トランジスタ並びにロジック集積回路が同一半導体基板上に形成されるのが主流となっている。
【0004】
上記サーマル方式のプリントヘッドでは、発熱抵抗素子にインク滴を吐出させるための所要の駆動電気パルスを印加するものであり、インク滴を吐出させる発熱部には発熱抵抗素子上にSi3N4層と正方晶構造のβ−Ta層の2層からなる保護膜が形成されている。この発熱抵抗素子上に形成されるSi3N4層は、該発熱抵抗素子に接続されるAlの配線層との層間絶縁膜として機能し、β−Ta層は、インク滴の消泡時の機械的衝撃(キャビテーション)を吸収緩和すると共に、インク成分による化学反応に対する防止層として機能している。
【0005】
上記のSi3N4層及びβ−Ta層共に厚さが大きい方が信頼性の点から有利であるが、この場合はインク吐出に必要な熱エネルギ効率が落ちる。そのため、SiN層は例えば0.15〜0.6μmの厚さ、Ta層は例えば0.2μm程度の厚さに設定されているのが一般的である。特に、SiN層については絶縁膜であるため、金属層であるTa層に比べて熱伝導性が悪い。熱効率改善のためにはSiN層を薄くすることが望まれるが、信頼性とのトレード・オフとなる。そこで、上記発熱抵抗素子に接続されるAl配線層の厚さを薄くすることで、SiN層を薄くすることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。例えば、Al配線層の厚さを0.18〜0.24μmに規定することで、SiN層を0.26〜0.34μmの厚さとするものである。
【0006】
【特許文献1】
特開2001−130003号公報(第14〜15頁、図13)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記特許文献1に記載されたように、発熱抵抗素子に接続されるAl配線層を薄くすると、その配線抵抗の増加により寄生抵抗が増加し、発熱抵抗素子で消費されるべき熱エネルギ効率が劣化する。それに加えて、上記発熱抵抗素子に接続されるAl配線層には、インク吐出のための熱エネルギ発生のために、例えば70〜160mAの電流を流す必要がある。これは通常の半導体集積回路に比べ非常に大きい電流値であり、上述の0.18〜0.24μmの厚さのAl配線層においては負荷が大きい電流値であって、Al配線層が断線する虞がある。したがって、接続孔部での導通の信頼性が低下する。
【0008】
これに対して、Al配線層の寿命を補強するために、Al中にSiやCuを添加して、Al配線層の断線の起点となるAlの結晶粒界をSiやCuで補強する手法がある。しかしながら、Alを溶解させる薬液を用いて発熱抵抗素子上のみAl配線層を除去し、インク吐出の発熱部を形成するプリントヘッド作製プロセスでは、Al中に添加したSiやCuが残渣として発熱抵抗素子上に残るという問題がある。
【0009】
仮に、上記残渣が残るという問題を解決した状態で、SiやCuを添加したAl配線層を採用したとしても、発熱抵抗素子に接続されるAl配線層と、駆動トランジスタに接続されるAl配線層とは、接続孔(ビアホール)を介して接続されることとなり、この接続孔においては発熱抵抗素子に接続されるAl配線層に必然的に段差が形成され、この段差部において電流集中が起こり、上記発熱抵抗素子に接続されるAl配線層が断線する虞がある。
【0010】
これに対処して、上記特許文献1には、接続孔の側壁にテーパー形状をつけて上記の段差を緩和することが記載されているが、接続孔の側壁をテーパー形状にしたとしても段差部が無くなる訳ではなく、根本的に上記段差部において発熱抵抗素子に接続されるAl配線層の断線を回避することはできない。また、上記接続孔(ビアホール)は、直径10〜15μmの大きな径を有するものであるが、この径を大きくしても段差部におけるAl配線層の断線を回避できるものでもない。したがって、接続孔部での導通の信頼性は改善できない。
【0011】
そこで、本発明は、このような問題点に対処し、発熱抵抗素子と駆動回路素子とを接続する配線部位の導通の信頼性を向上することができる液体吐出ヘッド及び液体吐出装置並びに液体吐出ヘッドの製造方法を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明による液体吐出ヘッドは、吐出すべき所定の液体を収容する液室と、上記液室内に配置されると共に上記液体に気泡を発生させるための発熱抵抗素子と、上記発熱抵抗素子による上記液体の気泡の生成に伴って上記液室内の液体を吐出させるための液体吐出ノズルと、上記発熱抵抗素子が形成される共に該発熱抵抗素子に駆動電気信号を印加する駆動回路素子が形成された基板部材と、を備え、上記発熱抵抗素子に駆動電気信号を印加して熱エネルギを液体に付与し上記液体吐出ノズルから液体を吐出させる液体吐出ヘッドであって、上記基板部材の発熱抵抗素子と駆動回路素子とを多層配線構造で接続する部位にて、発熱抵抗素子に接続する配線層と駆動回路素子に接続する配線層との間に接続孔を形成して該接続孔内に金属を埋め込み、この金属埋込み層で上記二つの配線層を接続したものである。
【0013】
このような構成により、発熱抵抗素子に接続する配線層と駆動回路素子に接続する配線層との間に接続孔を形成して該接続孔内に金属を埋め込み、この金属埋込み層で上記二つの配線層を接続したことにより、上記発熱抵抗素子に接続する配線層と駆動回路素子に接続する配線層とが直接接触することをなくし、発熱抵抗素子に接続する配線層に段差が形成されるのを回避する。これにより、配線層の断線を抑制して、発熱抵抗素子と駆動回路素子とを接続する配線部位の導通の信頼性を向上する。
【0014】
また、本発明による液体吐出装置は、装置本体部に液体吐出ヘッドを着脱可能な状態に保持し、該液体吐出ヘッドに形成された各液体吐出ノズルから所定の液体を吐出してドット列又はドットを形成する液体吐出装置であって、上記液体吐出ヘッドは、吐出すべき所定の液体を収容する液室と、上記液室内に配置されると共に上記液体に気泡を発生させるための発熱抵抗素子と、上記発熱抵抗素子による上記液体の気泡の生成に伴って上記液室内の液体を吐出させるための液体吐出ノズルと、上記発熱抵抗素子が形成される共に該発熱抵抗素子に駆動電気信号を印加する駆動回路素子が形成された基板部材とを備え、該基板部材の発熱抵抗素子と駆動回路素子とを多層配線構造で接続する部位にて、発熱抵抗素子に接続する配線層と駆動回路素子に接続する配線層との間に接続孔を形成して該接続孔内に金属を埋め込み、この金属埋込み層で上記二つの配線層を接続したものである。
【0015】
このような構成により、装置本体部に着脱可能に保持される液体吐出ヘッドを、前述の手段による液体吐出ヘッドと同じ構成とすることにより、発熱抵抗素子に接続する配線層と駆動回路素子に接続する配線層とが直接接触することをなくし、発熱抵抗素子に接続する配線層に段差が形成されるのを回避する。これにより、液体吐出ヘッドの配線層の断線を抑制して、発熱抵抗素子と駆動回路素子とを接続する配線部位の導通の信頼性を向上する。
【0016】
さらに、本発明による液体吐出ヘッドの製造方法は、半導体基板の一面に駆動回路素子を形成する工程と、上記半導体基板上に第一の層間絶縁膜を形成する工程と、第一の層間絶縁膜上に上記駆動回路素子に接続する第一の配線層を形成する工程と、第一の配線層上に第二の層間絶縁膜を形成した後、この第二の層間絶縁膜の厚み内に上記第一の配線層に接続するための接続孔を形成する工程と、この接続孔内に金属を埋め込み金属埋込み層を形成する工程と、上記第二の層間絶縁膜上に発熱抵抗素子を形成する工程と、この発熱抵抗素子と上記金属埋込み層とを接続する第二の配線層を形成する工程と、上記第一及び第二の配線層が形成された半導体基板に対し熱処理を施す工程と、この熱処理された基板部材に対して、液体吐出ノズルを一壁面に有する液室を構成する工程と、を行うものである。
【0017】
このような方法により、液体吐出ヘッドの基板部材を薄膜プロセス及びフォトリソグラフィ工程並びにエッチング処理などの半導体製造プロセスにより形成することで、発熱抵抗素子に接続する配線層と駆動回路素子に接続する配線層とが直接接触することをなくし、発熱抵抗素子に接続する配線層に段差が形成されるのを回避する。これにより、配線層の断線を抑制して、発熱抵抗素子と駆動回路素子とを接続する配線部位の導通の信頼性を向上する。また、同一半導体基板上に高密度の発熱抵抗素子及び駆動回路素子を形成することができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明による液体吐出ヘッドの実施の形態を示す要部拡大断面図である。この液体吐出ヘッドは、発熱抵抗素子を駆動して所定の液体を液体吐出ノズルから対象物に対して吐出するもので、一例としては、サーマル方式(電気熱変換方式)でインク液の小滴をノズル部材に形成されたインク吐出ノズルから吐出させ、記録媒体に付着せしめて、文字や画像を印画するインクジェット方式のプリントヘッドである。
【0019】
図1において、このインクジェット方式のプリントヘッド1は、ノズル部材2と、基板部材3とを備えて成る。ノズル部材2は、吐出すべき所定の液体(インク液)を収容する液室としてのインク室4の一側面を構成すると共に、イエローY、マゼンタM、シアンC、ブラックKの各色のインク用に多数の液体吐出ノズル、即ちインク吐出ノズル5が形成されている。このノズル部材2は、例えば厚さ15〜20μm程度のシート部材から成り、その所定位置に直径約20μm程度のインク吐出ノズル5が数百個、整列された状態で形成されている。
【0020】
上記ノズル部材2の一面には、後述の液室形成部材6を介して基板部材3が接着されている。この基板部材3は、上記インク室4の一側面とは異なる側面を構成し、該インク室4内のインク液を上記インク吐出ノズル5から吐出させるためにインク液に気泡を発生させる発熱抵抗素子7が形成されると共に、該発熱抵抗素子7に駆動電気信号(駆動電気パルス)を印加する駆動回路素子(図2の符号13参照)が形成され、いわゆるヘッドチップと呼ばれるものである。
【0021】
上記発熱抵抗素子7は、駆動電気パルスの印加により発熱してインク室4内に収容されたインク液に熱エネルギを付与し、インク吐出ノズル5からインク液滴8を吐出させるもので、シリコン(Si)から成る半導体基板9の一方の面に析出形成されている。なお、発熱抵抗素子7は、Ta,TaNx又はTaAl等の物質から成り、例えば一辺が約18μm程度の正方形状をなし、或いは、約20μm長で9.6μm幅の分割抵抗素子から成る2分割形状をなしている。
【0022】
上記ノズル部材2と半導体基板9との間に積層された液室形成部材6は、その一端面が発熱抵抗素子7に接近して配置されており、ノズル部材2の面と半導体基板9の面と液室形成部材6の一端面とで囲まれた空間がインク室4とされている。上記液室形成部材6は、例えば露光硬化型のドライフィルムレジストから成り、上記半導体基板9の発熱抵抗素子7が形成された面の全体に積層された後、フォトリソプロセスによって不要な部分が取り除かれることによって形成されている。なお、液室形成部材6の厚みは、約12μm程度とされている。また、インク室4の幅は、約25μm程度とされている。
【0023】
そして、上記ノズル部材2には、流路板10が貼り合わされている。この流路板10の板厚の内部には、インク室4へインク液を供給するためのインク流路11が形成されている。なお、流路板10には、インク流路11に連通するインク供給管12が接続されている。上記流路板10は、1色のインクごとに1個設けられ、Y,M,C,Kの4色では4個並列に設けられている。
【0024】
このような状態で、上記基板部材3に形成された発熱抵抗素子7及び駆動回路素子13と外部の図示外の制御部とがフレキシブル基板(図示せず)により電気的に接続されて駆動制御される。そして、上記発熱抵抗素子7に駆動電気パルスを印加して駆動し、熱エネルギをインク液に付与しインク吐出ノズル5からインク液滴8を吐出させるようになっている。
【0025】
ここで、本発明においては、図2に示すように(図2は図1と天地を逆にして示している)、上記基板部材3の発熱抵抗素子7と駆動回路素子13とを多層配線構造で接続する部位にて、発熱抵抗素子7に接続する配線層と駆動回路素子13に接続する配線層との間に接続孔を形成して該接続孔内に金属を埋め込み、この金属埋込み層で上記二つの配線層が接続されている。すなわち、上記基板部材3内にて、駆動回路素子13に接続するAlの第一の配線層14と、発熱抵抗素子7に接続するAlの第二の配線層15との層間に接続孔16,16が形成され、該接続孔16,16内に金属が埋め込まれている。そして、この金属埋込み層17,17で第一及び第二の配線層14,15が接続されている。なお、上記金属埋込み層17は、タングステン(W)、銅(Cu)、チタン(Ti)、窒化チタン(TiN)、タンタル(Ta)又は窒化タンタル(TaN)のいずれか一つの金属或いは複数の金属から成る。その他、化学気相成長法(CVD法)或いは電界メッキ法により成膜できるものならば、他の金属を用いてもよい。
【0026】
また、上記発熱抵抗素子7を保護する被覆層として、タンタル(Ta)或いはタンタルアルミニウム(TaAl)から成るキャビテーション層18が形成されている。この発熱抵抗素子7を保護する被覆層としてTaAlを形成するのは、正方晶構造のβ−Taの結晶粒界にAlが存在するTaAlがインク液滴の消泡時の機械的衝撃(キャビテーション)を吸収緩和すると共に、インク液成分による化学反応に対する保護層として機能するからである。
【0027】
さらに、上記発熱抵抗素子7は、基板部材3に対しスパッタリング法により成膜されている。或いは、化学気相成長法(CVD法)により成膜されたものであってもよい。
【0028】
このような構成により、二つの配線層14,15間に形成された接続孔16内に金属を埋め込み、この金属埋込み層17で第一及び第二の配線層14,15を接続することにより、従来のようにビアホール内で発熱抵抗素子7に接続する配線層と駆動回路素子13に接続する配線層とが直接接触することをなくし、発熱抵抗素子7に接続する配線層に段差が形成されるのを回避することができる。これにより、配線層14,15の断線を抑制して、発熱抵抗素子7と駆動回路素子13とを接続する配線部位の導通の信頼性を向上することができる。
【0029】
次に、上記のように構成される液体吐出ヘッド、例えばプリントヘッド1の製造方法について、図3〜図10を参照して説明する。まず、図3において、半導体基板9(Si基板)に洗浄工程を施し、該半導体基板9上にシリコン窒化膜を堆積し、リソグラフィー工程を経てリアクティブイオンエッチング工程を施し、トランジスタを形成する領域上にSi3N4膜が残るようにする。そして、熱酸化工程を施し、Si3N4膜が除去された領域にトランジスタを分離するための素子分離領域(LOCOS:Local oxidation of silicon)となる熱シリコン酸化膜19を例えば500nm形成する。その後、この熱シリコン酸化膜19はエッチングされ、最終膜厚は例えば260nmとなる。
【0030】
次に、再び洗浄工程を施し、トランジスタ形成領域にタングステンシリサイド/ポリシリコン/熱酸化膜構造のゲートを形成し、ソース・ドレイン領域を形成するためのイオン注入工程、熱処理工程を施し、MOS(metal−oxide−semiconductor)型のトランジスタを形成する。これらの工程により25V程度の耐圧を有するMOS型の駆動トランジスタから成る駆動回路素子13と、5V動作のMOSトランジスタから成るロジック集積回路20とを形成する。上記25V程度の耐圧を有するMOS型の駆動トランジスタの形成は、ゲート/ドレイン間に低濃度の拡散層を形成し、その部分で加速される電子の電界を緩和することで耐圧を確保する。或いは、熱シリコン酸化膜をゲート/ドレイン間に形成することで、加速される電子の電界を緩和することも可能である。
【0031】
次に、CVD法にてリンが添加されたシリコン酸化膜であるPSG膜を例えば100nm堆積し、引き続きボロンとリンが添加されたシリコン酸化膜であるBPSG膜を例えば500nm堆積する。これにより600nm膜厚の1層目の第一の層間絶縁膜21aを形成する。その後、上記1層目の層間絶縁膜21aにフォトリソグラフィー工程を施し、C4F8/CO/O2/Ar系ガスを用いたリアクティブイオンエッチング法を用いて、シリコン半導体拡散層(ソース・ドレイン)上にコンタクトホール22を開口する。
【0032】
次に、図3において希フッ酸洗浄を施した後、図4において、スパッタリング法にて、ソース/ドレイン拡散層とのコンタクト抵抗低減のためのTiコンタクトメタルを例えば30nm、TiONバリアメタルを70nm、さらにTiを30nm順次堆積し、その上層にSiが1atom%添加されたAl(或いはCuが0.5atom%添加されたAl)を500nm堆積する。その上にTiを10nm堆積し、更にその上層にAl層の反射防止膜としてTiONを例えば25nm堆積する。その後、フォトリソグラフィー工程、塩素系ガスを主体に用いたドライエッチング工程を施し、1層目の第一の配線層14(上層より、TiON反射防止膜/Ti/Al−1%Si/Ti/TiONバリアメタル/Tiコンタクトメタルの構造)を形成する。
【0033】
次に、上記第一の配線層14上にCVD法でTEOS(テトラエトキシシラン:Si(OC2H5)4)を原料ガスとしてシリコン酸化膜を堆積する。その上層にSOG(Spin on Glass)と呼ぶ有機溶媒を含む塗布型シリコン酸化膜を塗布する。この積層膜を、フッ素系ガスを用いて全面エッチバックすることにより平坦化する。この工程を2回繰り返すことにより、例えば440nm膜厚のシリコン酸化膜(SiO2)からなる2層目の第二の層間絶縁膜21bを形成する。
【0034】
その後、上記第二の層間絶縁膜21bにフォトレジスト工程を施し、図2に示す発熱抵抗素子7及び第二の配線層15と接続するための接続孔(ビアホール)16領域となる部分を規定し、CHF3/CF4/Ar系ガスを用いたドライエッチング法により第二の層間絶縁膜21bをエッチングする。この工程にて、例えば0.5〜1.0μmの直径を有する接続孔16が10〜15個程度開口される。
【0035】
次に、図4において、レジスト除去のアッシング工程及び洗浄工程を経て、図5に示すように、スパッタリング法にて、Alとの接触抵抗低減のためのTiコンタクトメタルを20nm堆積し、その後、Wとの接着性が良いTiNバリアメタルを50nm堆積させて、接着層23(上層より、TiN/Tiの構造)を形成する。
【0036】
次に、図6において、半導体基板9の全体をCVD装置に搭載し、該半導体基板9の加熱温度を約400〜450℃に設定し、反応ガスとしてWF6,SiH4,H2を用いて、金属膜としてタングステン(W)膜24をCVD法により成膜する。このときまず、WF6ガスをSiH4ガスで還元し、TiNバリアメタル上にWを成長させるための核となるW膜を成膜する。次に、WF6ガスをH2ガスで還元し、上記0.5〜1.0μmの直径の接続孔16内が完全にWで埋め込まれるように、0.5〜1.0μmの厚さまでW膜24を成膜する。これにより、上記接続孔16内にWが埋め込まれる。
【0037】
次に、図6において、上記接続孔16内に埋め込まれた以外の第二の層間絶縁膜21b上に成膜されたW,TiN,Tiをエッチバック法又はCMP(ケミカルメカニカルポリッシュ)法にて除去する。このとき、エッチバック法は、SF6等のフッ素系ガスでWをエッチング除去し、Cl2等の塩素系ガスでTiN,Tiをエッチング除去するものである。また、CMP法は、WやTiN,Tiを酸化溶解させる作用を有する研磨剤を用いて、上記接続孔16内に埋め込まれた以外のW,TiN,Tiを除去するものである。この工程を経ることで、図7に示すように、接続孔16内のみにWが残され、該接続孔16内に金属埋込み層17が形成される。
【0038】
次に、図7において洗浄工程を経た後に、図8において、半導体基板9の全体をスパッタリング装置に搭載し、スパッタリング法にて発熱抵抗素子7としてTa,TaNx又はTaAl等を成膜する。次に、感光性樹脂であるフォトレジストを半導体基板9上に全面塗布する。そして、所望の形状が描画されたマスクを用いて、露光装置でフォトレジストに所望の配線パターンを描く。この露光工程において紫外線を浴びた部分が現像液で溶けるようになる。その後、上記半導体基板9をドライエッチング装置に搭載し、BCl3/Cl2系ガスのプラズマを用いたドライエッチング法により、Ta,TaNx又はTaAl等の素子材料が所望形状に加工されて、発熱抵抗素子7が形成される。
【0039】
次に、図8において、半導体基板9の全体をスパッタリング装置内のスパッタ成膜チェンバーに搬送し、Alターゲットを用いてAl層を例えば0.3〜0.6μm堆積する。そして、感光性樹脂であるフォトレジストを半導体基板9上に全面塗布し、所望の形状が描画されたマスクを用いて、露光装置でフォトレジストに所望の配線パターンを描く。その後、再び半導体基板9をドライエッチング装置に搭載し、BCl3/Cl2系ガスのプラズマを用いたドライエッチング法により、Al層を所望の配線パターン形状に加工する。これらの工程により、2層目の第二の配線層15が形成される。
【0040】
次に、図8において、上記のように形成された第二の配線層15に対してマスクを用いたフォトリソグラフィ工程を施し、インク液を吐出させるための熱エネルギ付与部を規定する。その後、図9に示すように、半導体基板9の全体を燐酸−硝酸−酢酸から成る混合液中に浸漬させ、上記熱エネルギ付与部の上に形成された第二の配線層15をウェットエッチングにより除去し、上記熱エネルギ付与部と規定された部位のみの発熱抵抗素子7を露出させる。このウェットエッチングにより第二の配線層15を除去した部分が、インク室4内に位置する部分となる。
ここでは、上記熱エネルギ付与部の上に形成された第二の配線層15をウェットエッチングにて除去するプロセスを用いた例を説明したが、本発明者等が特開2002−307693号公報で提案しているように、ドライエッチング法を用いて上記熱エネルギ付与部上に形成された第二の配線層15を除去してもよい。
【0041】
次に、図9において流水洗浄をし、乾燥を施した後に、図10において、上記第二の配線層15の上層に、オーバーコート層としてSi3N4層から成る絶縁保護層25をCVD法で例えば300〜400nm堆積する。なお、この絶縁保護層25は、例えばインク液に対するバリア層となる。
【0042】
次に、この状態の半導体基板9を図示外の熱処理炉に搬送し、4%の水素を添加した窒素ガス(フォーミングガス)雰囲気あるいは100%の窒素ガス雰囲気中で、例えば400℃、60分間の熱処理を施す。この熱処理により、MOSトランジスタの動作が安定化され、さらに第一の配線層14と第二の配線層15との金属埋込み層17における接触も安定化し、そのコンタクト抵抗が低減する。
【0043】
次に、上記熱処理された半導体基板9を、図10において、直流マグネトロン・スパッタリング装置内のスパッタ成膜チェンバーに搭載し、キャビテーション層18としてのTa膜(正方晶構造のβ−Ta)を例えば200nm堆積する。その後、フォトレジスト工程により所望の保護層パターンを規定し、BCl3/Cl2ガスを用いたドライエッチングにより、所望形状のキャビテーション層18に加工される。このキャビテーション層18は、インク液滴の消泡時の機械的衝撃(キャビテーション)を吸収緩和すると共に、インク液成分による化学反応に対する保護層として機能し、発熱抵抗素子7を保護する被覆層となる。この状態で、図1に示す基板部材3が製造され、いわゆるヘッドチップと呼ばれるものとなる。
【0044】
その後、図2に示すように、上記基板部材3の発熱抵抗素子7が形成された部位の側面に、有機材料からなる液室形成部材6を貼り付けてインク室4を形成し、この液室形成部材6を介してノズル部材2が接着される。このノズル部材2には、多数のインク吐出ノズル5が形成されており、上記インク室4の位置に合致されている。これにより、液体吐出ヘッドとしてのプリントヘッド1が製造される。
【0045】
なお、上記金属埋込み層17は、Wに限られず、Cu、Ti、TiN、Ta又はTaNのいずれか一つの金属或いは複数の金属で成膜してもよい。その他、CVD法或いは電界メッキ法により成膜できるものならば、他の金属を用いてもよい。また、上記発熱抵抗素子7を保護する被覆層として、TaAlから成るキャビテーション層18を形成してもよい。また、上記発熱抵抗素子7の基板部材3への成膜は、スパッタリング法に限られず、CVD法により成膜してもよい。
【0046】
そして、このような製造方法により、プリントヘッド1の基板部材3を薄膜プロセス及びフォトリソグラフィ工程並びにエッチング処理などの半導体製造プロセスにより形成することで、発熱抵抗素子7に接続する第二の配線層15と駆動回路素子13に接続する第一の配線層14とが直接接触することをなくし、発熱抵抗素子7に接続する第二の配線層15に段差が形成されるのを回避することができる。これにより、第二の配線層15の断線を抑制して、発熱抵抗素子7と駆動回路素子13とを接続する配線部位の導通の信頼性を向上する。また、同一半導体基板9上に高密度の発熱抵抗素子7及び駆動回路素子13を形成することができる。
【0047】
次に、本発明による液体吐出装置の一例としてのインクジェットプリンタの実施形態を、図11及び図12を参照して説明する。このインクジェットプリンタ30は、図1及び図2に示すプリントヘッド1にて記録媒体の所定位置にインク滴を吐出して画像を形成するものであり、プリンタ本体部31と、プリントヘッド1と、記録紙トレイ32とを備えている。
【0048】
上記プリンタ本体部31は、装置本体部として記録媒体である記録紙に対して適正に印画を行わせるための記録紙搬送機構部や電気回路部を内部に納めたものであり、上面にはプリントヘッド1を収納する収納部33が開口されており、その上端部には該収納部33を開閉する上蓋34が設けられている。また、プリンタ本体部31の前面下部には、後述の記録紙トレイ32を装着するためのトレイ挿入口35が設けられている。なお、このトレイ挿入口35は記録紙の排紙口も兼ねている。
【0049】
上記プリンタ本体部31の収納部33には、前述のように構成されたプリントヘッド1が矢印Zのように収納されて、着脱可能な状態に保持されている。ここでは、一例として記録紙(例えばA4判)の一辺の幅にわたってノズル部材2が長尺に形成されたフルラインタイプのプリントヘッドを示している。また、上記プリンタ本体部31のトレイ挿入口35には、記録紙トレイ32が着脱可能状態に装着されている。この記録紙トレイ32は、記録紙を重ねて収納するものであり、その上面部にはプリンタ本体部31から排紙される記録紙の排紙受け部32aが設けられている。
【0050】
図12は、上記プリンタ本体部31の内部構造の具体的な一例を示す断面図で、(a)は印画停止状態を示し、(b)は印画動作状態を示している。このプリンタ本体部31は、図12(a)に示すように、プリンタ本体部31の下方部で、記録紙トレイ32の挿入方向にてその側端部に対応する上方部位には、ローラーから成る給紙手段36が設けられており、記録紙トレイ32から記録紙37が随時供給できるようになっている。また、記録紙37の供給方向には、分離手段38が設けられており、重ねて収納された記録紙37を1枚ずつ分離して給紙できるようになっている。さらに、この分離手段38で分離された記録紙37の搬送方向でプリンタ本体部31の上方部位には、記録紙37の搬送方向を反転する反転ローラー39が設けられている。
【0051】
そして、この反転ローラー39で反転された記録紙37の搬送方向の先にはベルト搬送手段40が設けられており、図12(a)に示すように、印画停止状態においては、排紙方向の端部40aが矢印A方向に下がって、プリントヘッド1の下面との間に大きなギャップを形成している。一方、図12(b)に示す印画動作状態においては、上記端部40aが矢印B方向に上昇して水平状態にされ、プリントヘッド1の下面との間に所定の小さなギャップの記録紙通路を形成するようにされている。
【0052】
また、印画停止状態において、図12(a)に示すように、プリントヘッド1の下面はヘッドキャップ41で閉じられており、インク吐出ノズル10のインクが乾燥して目詰まりするのを防いでいる。また、ヘッドキャップ41には、クリーニング手段42が設けられており、印画動作開始前に、ヘッドキャップ41が所定の位置に退避する(図12(b)参照)動作に伴って、インク吐出ノズル5をクリーニングするようになっている。
【0053】
次に、このように構成されたインクジェットプリンタ30の動作について説明する。まず、図11に示すプリンタ本体部31の上面の上蓋34を開いて、プリントヘッド1を収納部33に矢印Zのように収納する。また、プリンタ本体部31の前面下部に設けられたトレイ挿入口35に記録紙トレイ32を挿入する。このとき、図12(a)に示すように、プリンタ本体部31の内部は、ベルト搬送手段40の端部40aが矢印A方向に下がっており、プリントヘッド1の下面がヘッドキャップ41で閉じられて印画停止状態となっている。
【0054】
次に、印画開始の制御信号が入力されると、ヘッドキャップ41が図12(a)において矢印Cのように移動して所定の位置に退避する。このとき、ヘッドキャップ41の退避動作に伴って、クリーニング手段42がプリントヘッド1のノズル部材2の表面を摺動してインク吐出ノズル5(図1参照)をクリーニングする。
【0055】
また、このヘッドキャップ41が所定位置に退避すると、ベルト搬送手段40の端部40aが図12(a)において矢印B方向に上昇し、該ベルト搬送手段40は、水平状態にてその搬送用ベルトと上記プリントヘッド1との間に所定の小さなギャップの記録紙通路を形成して停止する(図12(b)参照)。
【0056】
そして、図12(b)に示す印画動作状態において、給紙手段36が駆動し、記録紙トレイ32内に重ねて収納された記録紙37が矢印D方向に供給される。この際、分離手段38によって記録紙37は1枚ずつに分離されて矢印E方向に随時給紙される。
【0057】
この給紙された記録紙37は、反転ローラー39により搬送方向が反転されて、ベルト搬送手段40まで送られる。そして、該記録紙37は、ベルト搬送手段40によってプリントヘッド1の下方部まで運ばれて行く。
【0058】
さらに、記録紙37が、プリントヘッド1の下方部に達すると、印画信号が入力され、該印画信号に応じてプリントヘッド1の発熱抵抗素子7(図2参照)が駆動される。そして、一定速度で送られる記録紙37に対して、4色のインクに対応するインク吐出ノズル5の列からインク液滴8が吐出され、記録紙37上にカラーのプリント画像が形成される。
【0059】
このようにして記録紙37上への印画が総て終了すると、図12(b)に示すように、記録紙37はプリントヘッド1の下方部から矢印F方向に搬送され、排紙口を兼ねたトレイ挿入口35(図11参照)から記録紙トレイ32の排紙受け部32aに排紙される。そして、図12(a)に示すように、ベルト搬送手段40の端部40aが矢印A方向に下がり、ヘッドキャップ41がプリントヘッド1の下面を閉じて印画停止状態に復帰し、インクジェットプリンタ30の動作が停止する。
【0060】
なお、以上の説明においては、インクジェットプリンタに適用された例について述べたが、本発明はこれに限らず、液室(4)に収容された液体を液体吐出ノズル(5)から液滴として吐出するものであればどのようなものでもよい。例えば、記録方式がインクジェット方式のファクシミリ装置や複写機等の画像形成装置についても適用可能である。
【0061】
また、液体吐出ノズル(5)から吐出される液体はインクに限られず、発熱抵抗素子7を駆動して所定の液体を吐出しドット列又はドットを形成するものであるならば、他の液体の吐出装置にも適用することができる。例えば、DNA鑑定などにおいてDNA含有溶液をパレット上に吐出するための液体吐出装置にも適用することができる。
【0062】
【発明の効果】
本発明は以上のように構成されたので、請求項1〜5に係る液体吐出ヘッドによれば、発熱抵抗素子に接続する配線層と駆動回路素子に接続する配線層との間に接続孔を形成して該接続孔内に金属を埋め込み、この金属埋込み層で上記二つの配線層を接続したことにより、上記発熱抵抗素子に接続する配線層と駆動回路素子に接続する配線層とが直接接触することをなくし、発熱抵抗素子に接続する配線層に段差が形成されるのを回避することができる。これにより、配線層の断線を抑制して、発熱抵抗素子と駆動回路素子とを接続する配線部位の導通の信頼性を向上することができる。
【0063】
また、請求項6〜10に係る液体吐出装置によれば、装置本体部に着脱可能に保持される液体吐出ヘッドを、請求項1〜5に係る液体吐出ヘッドと同じ構成とすることにより、発熱抵抗素子に接続する配線層と駆動回路素子に接続する配線層とが直接接触することをなくし、発熱抵抗素子に接続する配線層に段差が形成されるのを回避することができる。これにより、液体吐出ヘッドの配線層の断線を抑制して、発熱抵抗素子と駆動回路素子とを接続する配線部位の導通の信頼性を向上することができる。
【0064】
また、請求項11〜15に係る液体吐出ヘッドの製造方法によれば、液体吐出ヘッドの基板部材を薄膜プロセス及びフォトリソグラフィ工程並びにエッチング処理などの半導体製造プロセスにより形成することで、発熱抵抗素子に接続する配線層と駆動回路素子に接続する配線層とが直接接触することをなくし、発熱抵抗素子に接続する配線層に段差が形成されるのを回避することができる。これにより、配線層の断線を抑制して、発熱抵抗素子と駆動回路素子とを接続する配線部位の導通の信頼性を向上することができる。また、同一半導体基板上に高密度の発熱抵抗素子及び駆動回路素子を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による液体吐出ヘッドの一例としてのインクジェット方式のプリントヘッドの実施の形態を示す要部拡大断面図である。
【図2】上記プリントヘッドの基板部材内の層構造を示す断面説明図である。
【図3】本発明による液体吐出ヘッドの製造方法を説明する工程図であり、一例としてのインクジェット方式のプリントヘッドを半導体製造プロセスにより製造する工程を示す説明図である。
【図4】同じく、インクジェット方式のプリントヘッドを半導体製造プロセスにより製造する工程を示す説明図である。
【図5】同じく、インクジェット方式のプリントヘッドを半導体製造プロセスにより製造する工程を示す説明図である。
【図6】同じく、インクジェット方式のプリントヘッドを半導体製造プロセスにより製造する工程を示す説明図である。
【図7】同じく、インクジェット方式のプリントヘッドを半導体製造プロセスにより製造する工程を示す説明図である。
【図8】同じく、インクジェット方式のプリントヘッドを半導体製造プロセスにより製造する工程を示す説明図である。
【図9】同じく、インクジェット方式のプリントヘッドを半導体製造プロセスにより製造する工程を示す説明図である。
【図10】同じく、インクジェット方式のプリントヘッドを半導体製造プロセスにより製造する工程を示す説明図である。
【図11】本発明による液体吐出装置の一例としてのインクジェットプリンタの実施形態を示す斜視図である。
【図12】図11に示すインジェットプリンタの内部構成を示した断面図であり、(a)は印画停止状態を示し、(b)は印画動作状態を示している。
【符号の説明】
1…プリントヘッド(液体吐出ヘッド)
2…ノズル部材
3…基板部材
4…インク室(液室)
5…インク吐出ノズル(液体吐出ノズル)
6…液室形成部材
7…発熱抵抗素子
8…インク液滴
9…半導体基板
10…流路板
11…インク流路
12…インク供給管
13…駆動回路素子
14…第一の配線層
15…第二の配線層
16…接続孔
17…金属埋込み層
18…キャビテーション層
20…ロジック集積回路
21a…第一の層間絶縁膜
21b…第二の層間絶縁膜
30…インクジェットプリンタ(液体吐出装置)
31…プリンタ本体部
32…記録紙トレイ
Claims (15)
- 吐出すべき所定の液体を収容する液室と、
上記液室内に配置されると共に上記液体に気泡を発生させるための発熱抵抗素子と、
上記発熱抵抗素子による上記液体の気泡の生成に伴って上記液室内の液体を吐出させるための液体吐出ノズルと、
上記発熱抵抗素子が形成される共に該発熱抵抗素子に駆動電気信号を印加する駆動回路素子が形成された基板部材と、
を備え、上記発熱抵抗素子に駆動電気信号を印加して熱エネルギを液体に付与し上記液体吐出ノズルから液体を吐出させる液体吐出ヘッドであって、
上記基板部材の発熱抵抗素子と駆動回路素子とを多層配線構造で接続する部位にて、発熱抵抗素子に接続する配線層と駆動回路素子に接続する配線層との間に接続孔を形成して該接続孔内に金属を埋め込み、この金属埋込み層で上記二つの配線層を接続したことを特徴とする液体吐出ヘッド。 - 上記金属埋込み層は、タングステン(W)、銅(Cu)、チタン(Ti)、窒化チタン(TiN)、タンタル(Ta)又は窒化タンタル(TaN)のいずれか一つの金属或いは複数の金属から成ることを特徴とする請求項1記載の液体吐出ヘッド。
- 上記発熱抵抗素子は、基板部材に対しスパッタリング法により成膜されたものであることを特徴とする請求項1記載の液体吐出ヘッド。
- 上記発熱抵抗素子は、基板部材に対し化学気相成長法により成膜されたものであることを特徴とする請求項1記載の液体吐出ヘッド。
- 上記発熱抵抗素子を保護する被覆層として、タンタル(Ta)或いはタンタルアルミニウム(TaAl)から成るキャビテーション層を形成したことを特徴とする請求項1記載の液体吐出ヘッド。
- 装置本体部に液体吐出ヘッドを着脱可能な状態に保持し、該液体吐出ヘッドに形成された各液体吐出ノズルから所定の液体を吐出してドット列又はドットを形成する液体吐出装置であって、
上記液体吐出ヘッドは、吐出すべき所定の液体を収容する液室と、上記液室内に配置されると共に上記液体に気泡を発生させるための発熱抵抗素子と、上記発熱抵抗素子による上記液体の気泡の生成に伴って上記液室内の液体を吐出させるための液体吐出ノズルと、上記発熱抵抗素子が形成される共に該発熱抵抗素子に駆動電気信号を印加する駆動回路素子が形成された基板部材とを備え、該基板部材の発熱抵抗素子と駆動回路素子とを多層配線構造で接続する部位にて、発熱抵抗素子に接続する配線層と駆動回路素子に接続する配線層との間に接続孔を形成して該接続孔内に金属を埋め込み、この金属埋込み層で上記二つの配線層を接続したものであることを特徴とする液体吐出装置。 - 上記金属埋込み層は、タングステン(W)、銅(Cu)、チタン(Ti)、窒化チタン(TiN)、タンタル(Ta)又は窒化タンタル(TaN)のいずれか一つの金属或いは複数の金属から成ることを特徴とする請求項6記載の液体吐出装置。
- 上記発熱抵抗素子は、基板部材に対しスパッタリング法により成膜されたものであることを特徴とする請求項6記載の液体吐出装置。
- 上記発熱抵抗素子は、基板部材に対し化学気相成長法により成膜されたものであることを特徴とする請求項6記載の液体吐出装置。
- 上記発熱抵抗素子を保護する被覆層として、タンタル(Ta)或いはタンタルアルミニウム(TaAl)から成るキャビテーション層を形成したことを特徴とする請求項6記載の液体吐出装置。
- 半導体基板の一面に駆動回路素子を形成する工程と、
上記半導体基板上に第一の層間絶縁膜を形成する工程と、
第一の層間絶縁膜上に上記駆動回路素子に接続する第一の配線層を形成する工程と、
第一の配線層上に第二の層間絶縁膜を形成した後、この第二の層間絶縁膜の厚み内に上記第一の配線層に接続するための接続孔を形成する工程と、
この接続孔内に金属を埋め込み金属埋込み層を形成する工程と、
上記第二の層間絶縁膜上に発熱抵抗素子を形成する工程と、
この発熱抵抗素子と上記金属埋込み層とを接続する第二の配線層を形成する工程と、
上記第一及び第二の配線層が形成された半導体基板に対し熱処理を施す工程と、
この熱処理された基板部材に対して、液体吐出ノズルを一壁面に有する液室を構成する工程と、
を行うことを特徴とする液体吐出ヘッドの製造方法。 - 上記金属埋込み層は、タングステン(W)、銅(Cu)、チタン(Ti)、窒化チタン(TiN)、タンタル(Ta)又は窒化タンタル(TaN)のいずれか一つの金属或いは複数の金属から成ることを特徴とする請求項11記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
- 上記発熱抵抗素子は、スパッタリング法により成膜することを特徴とする請求項11記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
- 上記発熱抵抗素子は、化学気相成長法により成膜することを特徴とする請求項11記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
- 上記発熱抵抗素子を保護する被覆層として、タンタル(Ta)或いはタンタルアルミニウム(TaAl)から成るキャビテーション層を形成することを特徴とする請求項11記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
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