JP2004264778A - プラスチックレンズ - Google Patents
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Abstract
【解決手段】プラスチックレンズ生地に、プライマー被膜、ハードコート被膜、さらには、湿式法により、ハ−ドコ−ト被覆より屈折率が0.10以上低い低屈折層を、50nm〜150nmの膜厚で設けることにより、上記課題を解決する。
【選択図】なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐熱性に優れ、かつ十分な反射防止機能を持つプラスチックレンズに関する。また、本発明のプラスチックレンズは、簡便に作製することができる。
【0002】
【従来の技術】
プラスチックレンズは、従来のガラスレンズに比べ軽量で割れにくく、また染色が容易であることから、近年視力矯正用レンズおよびサングラス等の眼鏡レンズとして広く用いられている。光学材料、特に眼鏡レンズに要求される性能は、低比重に加えて、光学性能としては高屈折率と高アッベ数であり、物理的性質としては高耐熱性、高強度、高耐摩耗性である。高屈折率はレンズの薄肉化を可能とし、高アッベ数はレンズの色収差を低減し、高耐熱性および高強度は二次加工を容易にするとともに安全性等の観点から重要である。また高耐摩耗性は、使用中の傷つき具合に影響する。
【0003】
初期のプラスチックレンズについて、ガラスレンズと比較した場合の欠点として、屈折率が低いこと、耐摩耗性が低いことがあげられていた。このプラスチックレンズの欠点を改善するため、数多くの技術が提案されてきている。
【0004】
屈折率が低い点を改善するために、数多くの新規材料によるプラスチックレンズが提案されている。例えば、従来技術における高屈折率を有する材料として、ポリチオール化合物とポリイソシアネート化合物との反応により得られるチオウレタン構造を有する熱硬化性光学材料が、特許文献1等に提案されている。また、チオエポキシ系樹脂からなるプラスチックレンズの例として、特許文献2で、高屈折率と高アッベ数のバランスに優れる光学材料として、エピスルフィド基を1分子中に少なくとも1個以上有する化合物が提案されている。
【0005】
耐摩耗性が低い点を向上させる為には、プラスチックレンズの表面にハードコート層を付け、耐摩耗性を向上させる技術が、数多く提案されている。具体的には、シリコーン系、アクリル系等の厚さが0.5μm〜4μm程度のハードコート皮膜をプラスチックレンズ表面に設け、レンズの耐摩耗性を向上させる方法が多く提案されている。例えは、特許文献3、特許文献4、特許文献5などでは、シラン化合物と各種無機酸化物微粒子のゾルを用いて、ハードコート層を形成する方法が提案されている。
【0006】
さらに、レンズの表面反射によるゴーストや、ちらつきを低減するために、レンズに反射防止膜を設けることも広く行われている。一般的には、プラスチックレンズにハードコート皮膜を付けた上に、蒸着、あるいはスパッタ方式により、複数の無機酸化物からなる多層膜を設けることによって、反射防止膜とする製法が行われている。例えは、特許文献6、特許文献7などに、提案されている。
【0007】
しかしながら、このような反射防止膜を付けたプラスチックレンズは、反射防止膜を付けない物に比べ、耐熱性が大きく低下するという欠点があった。一般に、蒸着や、スパッタ法などの湿式法以外による製法で反射防止膜をつけたプラスチックレンズは、高温の環境下にさらされた場合、レンズ表面にクラックと呼ばれる筋状の模様が発生し、レンズ外観が悪化する。このクラックが非常に濃い場合には、レンズとして使用できないという問題点を持っていた。また、蒸着法などでは、真空プロセスを必要とするため、製造装置も大型化、複雑化してしまうという課題もあった。
【0008】
【特許文献1】
特公平4−58489号公報
【特許文献2】
特開平10−298287公報
【特許文献3】
特開昭61−26637号公報
【特許文献4】
特開昭61−54331号公報
【特許文献5】
特開昭63−37142号公報
【特許文献6】
特開昭62−234101号公報
【特許文献7】
特開昭62−178901号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明では、従来の反射防止膜付きプラスチックレンズよりも耐熱性に優れ、十分な反射防止機能をあわせ持ち、かつ、簡便に作製することのできるプラスチックレンズを提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するべく本発明者らは鋭意研究を続けた結果、プラスチックレンズ最上層に、湿式法により、ハ−ドコ−ト被覆より屈折率が0.10以上低い低屈折層を、50nm〜150nmの膜厚で設けることにより、上記課題を解決できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0011】
この本発明で使用される低屈折率層は、ハ−ドコ−ト被覆との屈折率差が0.10以上であり、かつ膜厚が50nm〜150nmであれば特に制限はされないが、湿式法により作製することが要求され、それ以外の蒸着法あるいはスパッタ法などで製膜した物は除かれる。蒸着法あるいはスパッタ法などの湿式法以外で低屈折率層を製膜した場合、緻密な膜になりすぎてしまい、高温の環境下にさらされた場合、プラスチックレンズ生地と低屈折率層の間で、熱膨張など耐熱試験時の挙動の違いが大きくなり、クラックが発生し易くなる欠点があるためである。
【0012】
また、湿式法を用いて作製するため、真空装置や大型の設備は不要となり、簡便に作製することが可能となる。
【0013】
本発明で使用される低屈折率層は、十分な反射防止効果を持たせる為、その膜厚は、50nm〜150nmであり、かつ、ハ−ドコ−ト被覆との屈折率差が0.10以上あることが要求される。膜厚、および屈折率差のいずれの項目についても、この条件を満たさない場合には、十分な反射防止機能を持たせることはできない。
【0014】
本発明におけるプラスチックレンズとは、プラスチックレンズ生地にプライマー被覆、ハードコート被覆、低屈折率層を順に付けた物を意味する。プライマ−被覆は表面処理層全体の密着性とプラスチックレンズの耐衝撃性の向上に寄与し、ハードコート被覆は耐擦傷性の向上に寄与する。また、低屈折率層は反射防止効果に寄与する。本発明におけるプラスチックレンズは、このような三層構造であり、レンズの干渉縞をなくすために、プライマ−被膜とハードコート被膜の屈折率を、プラスチックレンズ生地の屈折率に近づけることが一般的である。
【0015】
本発明における低屈折率層の構成成分は、ハ−ドコ−ト層との屈折率差が0.10以上あれば特に制限はされず、公知の物が使用できる。シリコーン系、アクリル系、エポキシ系、ウレタン系、メラミン系などの樹脂またはその原料モノマーを、単独、あるいは他の樹脂、原料モノマーと2種以上併用して成膜した物が好ましい。プラスチックレンズとしての耐熱性、耐薬品性、耐擦傷性、などの諸特性を考慮した場合は、中でも、シリコーン系樹脂を含む低屈折率層とすることが好ましく、この際に、表面硬度の向上や、屈折率の調整のため、微粒子状無機物などを添加することがより好ましい。この微粒子状無機物としては、コロイド状に分散したゾルなどが挙げられ、具体的には、シリカゾル、フッ化マグネシウムゾル、フッ化カルシウムゾルなどが挙げられる。
【0016】
実際には、下記(A)および(B)成分を含有する組成物を用いて、低屈折率層を成膜することが好ましい。
(A)一般式 (1)
R1R2 nSiX1 3−n (1)
で表される有機ケイ素化合物。(式中、R1は重合可能な反応基または加水分解可能な官能基を有する有機基であり、R2は炭素数1〜6の炭化水素基であり、X1は加水分解可能な官能基であり、nは0または1である。)
(B)シリカ系微粒子
ここで、上記(A)成分におけるR1は重合可能な反応基または加水分解可能な官能基をもつ有機基であり、重合可能な反応基の具体例としては、ビニル基、アリル基、アクリル基、メタクリル基、エポキシ基、メルカプト基、シアノ基、アミノ基等が挙げられ、加水分解可能な官能基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、メトキシエトキシ基等のアルコキシ基、クロロ基、ブロモ基等のハロゲン基、アシルオキシ基等が挙げられる。R2の具体例としては、メチル基、エチル基、ブチル基、ビニル基、フェニル基等が挙げられる。また、X1は加水分解可能な官能基であり、その具体例は、メトキシ基、エトキシ基、メトキシエトキシ基等のアルコキシ基、クロロ基、ブロモ基等のハロゲン基、アシルオキシ基等が挙げられる。上記(A)のシラン化合物の具体例としては、ビニルトリアルコキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリ(β−メトキシ−エトシキ)シラン、アリルトリアルコキシシラン、アクリルオキシプロピルトリアルコキシシラン、メタクリルオキシプロピルトリアルコキシシラン、メタクリルオキシプロピルジアルコキシメチルシラン、γ−グリシドオキシプロピルトリアルコキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)−エチルトリアルコキシシラン、メルカプトプロピルトリアルコキシシラン、γ−アミノプロピルトリアルコキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジアルコキシシラン、テトラメトキシシラン等が挙げられる。
【0017】
この成分(A)は2種以上を混合して用いてもかまわない。また、加水分解を行ってから用いた方が、より有効である。
【0018】
上記(B)成分の具体例としては、例えば、粒径10〜1000nmのシリカ系微粒子からなるシリカゾルが挙げられる。シリカゾルは、分散媒たとえば水、アルコール類、セロソルブ類などの有機溶媒にコロイド状に分散させたものが使用されることが多い。
【0019】
ここで、より低屈折率層の屈折率を下げ、反射防止効果をより高めるために、上記(B)成分として、シリカ系微粒子の内部に、空洞が形成されている中空球状のシリカ系微粒子を用いることがより好ましい。これは、中空球状のシリカ系微粒子の場合、内部に空洞が形成され、その空洞内に気体または溶媒が包含されることによって、屈折率の低減が達成されるためである。
【0020】
また、本発明における低屈折率層用のコーティング組成物は、上記(A)、(B)成分の他に、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、エポキシアクリレート樹脂等の各種樹脂や、これらの樹脂原料となるメタアクリレート類、アクリレート類、エポキシ類、ビニル類等の各種モノマーを、添加することが可能である。中でも屈折率を低減する意味で、フッ素含有の各種ポリマー、またはフッ素含有の各種モノマーを添加することが好ましい。このときのフッ素含有ポリマーとしては、フッ素含有ビニルモノマーを重合して得られるポリマーが好ましく、さらに他の成分と共重合可能な官能基を有することが好ましい。
【0021】
このような、低屈折率層用のコーティング組成物は、必要に応じ、溶剤に希釈して用いることができる。溶剤としては、水、アルコール類、エステル類、ケトン類、エーテル類、芳香族類等の溶剤が用いられる。
【0022】
なお、本発明における低屈折率層用のコーティング組成物は、上記成分の他に、必要に応じて、少量の硬化触媒、界面活性剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、ヒンダートアミン・ヒンダートフェノール等の光安定剤、分散染料・油溶染料・蛍光染料・顔料、等を添加しコーティング液の塗布性の向上や、硬化後の被膜性能を改良することもできる。
【0023】
本発明における、低屈折率層の成膜方法としては、湿式法であれば特に制限はされず、具体的には、ディッピング法、スピンコ−ト法、スプレーコ−ト法、フローコ−ト法などの公知の方法が使用可能である。各種成膜方法の中でプラスチックレンズの様なRの付いた形状に、50nm〜150nmの薄膜をムラなく成膜することを考慮すると、ディッピング法、またはスピンコ−ト法が好ましい。
【0024】
具体的には、以下の様な手順をとり作製することが可能である。まず、上記(A)成分であるシラン化合物を、有機溶剤で希釈し、必要に応じて水または薄い塩酸、酢酸等を添加して加水分解を行う。さらに、上記(B)成分である、シリカ系微粒子が5〜50重量%の分率で有機溶剤中にコロイド状に分散した品を添加する。その後、必要に応じ、界面活性剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤などを添加し、十分に撹拌した後にコーティング液として用いる。このとき、硬化後の固形分に対して、コーティング液の希釈する濃度は、好ましくは固形分濃度として1〜15重量%であり、より好ましくは1〜10重量%である。固形分濃度が15重量%を越えた場合には、ディッピング法で引き上げ速度を遅くしたり、スピンコ−ト法で回転数を早くしたりしても、所定の膜厚を得ることが困難であり、膜厚が必要以上に厚くなってしまう。
【0025】
本発明における低屈折率層は、前記コーティング液をプラスチックレンズに塗布後、熱または紫外線によって硬化させることによって得られるが、加熱処理によって硬化させることが好ましい。この際に、加熱温度はコーティング組成物の組成、プラスチックレンズの基材の耐熱性等を考慮して適宜決定されるが、50℃〜250℃が好ましく、より好ましくは80℃〜150℃である。
【0026】
本発明で使用されるプラスチックレンズは、ハ−ドコ−ト被覆の屈折率が1.60以上であることが好ましい。ハ−ドコ−ト被覆の屈折率が1.60未満では、本発明における低屈折率層との屈折率差を大きくすることが困難であり、十分な反射防止機能を付与することが難しい。
【0027】
更に、干渉縞を低減させるためには、ハ−ドコ−ト被覆とプライマ−被覆及びプラスチックレンズ生地の屈折率を、ほぼ等しくすることが一般的であり、ハ−ドコ−ト被覆とプライマ−被覆及びプラスチックレンズ生地の屈折率も1.60以上であることが好ましい。
【0028】
プラスチックレンズとしては、屈折率1.60以上の素材であれば特に制限はないが、レンズの強度、屈折率、耐熱性等の品質面を考慮すると、チオウレタン系プラスチックレンズや、チオエポキシ系プラスチックレンズ等が、本発明に対しては好ましい。
【0029】
チオウレタン系プラスチックレンズの具体例としては、ポリイソシアネート化合物とポリチオール化合物を重合することにより得られる物が挙げられる。ここで、ポリイソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメリック型ジフェニルメタンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、2,5−ビス(イソシアネートメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,6−ビス(イソシアネートメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、3,8−ビス(イソシアネートメチル)トリシクロ[5.2.1.02.6]−デカン、3,9−ビス(イソシアネートメチル)トリシクロ[5.2.1.02.6]−デカン、4,8−ビス(イソシアネートメチル)トリシクロ[5.2.1.02.6]−デカン、4,9−ビス(イソシアネートメチル)トリシクロ[5.2.1.02.6]−デカン、ダイマー酸ジイソシアネート等のポリイソシアネート化合物及びそれらの化合物のアロファネート変性体、ビュレット変性体、イソシアヌレート変性体が挙げられ、これらの化合物を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0030】
また、ポリチオール化合物としては、例えば、4−メルカプトメチル−3,6−ジチオ−1,8−オクタンジチオール、ペンタエリスリトールテトラ(3−メルカプトプロピオネート)、4,8or4,7or5,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9トリチアウンデカンなどが挙げられる。
【0031】
チオウレタン系プラスチックレンズを重合する際の、ポリイソシアネート化合物とポリチオール化合物の混合割合は、イソシアネート基とチオール基の官能基の割合がNCO/SH(モル比)=0.5〜3.0、特に0.5〜1.5の範囲が好ましい。
【0032】
チオエポキシ系プラスチックレンズの具体例としては、エピスルフィド基を1分子中に少なくとも1個以上有する化合物を含む組成物を重合硬化させて得られるプラスチックレンズが挙げられる。本発明において使用されるエピスルフィド基を1分子中に少なくとも1個以上有する化合物については特に制限はなく、公知のエピスルフィド基を有する化合物が何ら制限なく使用できるが、具体例としては、既存のエポキシ化合物のエポキシ基の一部あるいは全てをエピスルフィド化して得られるエピスルフィド化合物が挙げられる。また、プラスチックレンズの高屈折率化と高アッベ数化のためにはエピスルフィド基以外にも分子中に硫黄原子を含有する化合物が好ましい。具体例としては、ビス−(2,3エピチオプロピル)ジスルフィド、1,2−ビス(β−エピチオプロピルチオ)エタン、ビス−(β−エピチオプロピル)スルフィド、1,3および1,4−ビス(β−エピチオプロピルチオ)シクロヘキサン、1,4−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)ベンゼン、2,5−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)−1,4−ジチアン等が挙げられる。
【0033】
また、本発明でのチオエポキシ系プラスチックレンズに関しては、エピスルフィド基と反応可能な官能基を有する化合物、あるいは1分子中にエピスルフィド基と反応可能な官能基1個以上と他の単独重合可能な官能基1個以上を有する化合物、これらの単独重合可能な官能基を1分子中に1個以上有する化合物、更にはエピスルフィド基と反応可能でかつ単独重合も可能な官能基を1分子中に1個以上有する化合物を添加して重合硬化することにより、得られるレンズの光学性能、物理特性等を向上させることも可能である。具体的には、エポキシ基、多価カルボン酸基、メタクリル基、アクリル基、アリル基、ビニル基、芳香族ビニル基、水酸基、メルカプト基等の官能基を有する化合物である。尚、これらの化合物は単独でも、2種以上を混合して使用してもかまわない。
【0034】
エピスルフィド基を1分子中に少なくとも1個以上有する化合物を主成分として含む重合性組成物の重合硬化に際しては、1種類以上の硬化触媒の存在下で重合硬化を行い、プラスチックレンズを製造することができる。
【0035】
また、本発明でのチオウレタン系プラスチックレンズとチオエポキシ系プラスチックレンズはともに、重合硬化前の重合性組成物中に必要に応じて、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤等を添加して重合硬化を行いプラスチックレンズを製造することによって、得られるプラスチックレンズの耐候性を向上させることが可能である。紫外線吸収剤の具体例としては、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、シアノアクリレート紫外線吸収剤などが挙げられる。酸化防止剤や光安定剤の具体例としては、ヒンダードアミン系光安定剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、ホスファイト系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤等を挙げることができる。さらに、必要に応じて内部離型剤、油溶染料・分散染料・顔料、各種重合触媒等を添加した後、重合硬化を行うことにより、離型性や、レンズの色調、重合速度の調整などが可能である。
【0036】
さらに、チオウレタン系とチオエポキシ系を含む一般のプラスチックレンズの中には、プラスチックレンズ基材の耐熱性が低い素材も存在する。本発明において、プラスチックレンズ全体としての耐熱性を向上させることをねらっているが、プラスチックレンズ基材の耐熱性が極端に低い場合には、本発明の効果が薄れてしまう。そのため、本発明におけるプラスチックレンズ基材の耐熱性は、Tg(ガラス転移点)が75℃以上であることが望ましい。
【0037】
本発明では、表面処理層全体の密着性と耐衝撃性を上げるために、プライマ−層を設けているが、プライマ−層用のコ−ティング組成物としては、ポリウレタン系樹脂、ポリビニルアセタ−ル系樹脂、アクリル酸系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、アミノ系樹脂、シリコ−ン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ビニルアルコ−ル系樹脂、スチレン系樹脂、メラミン系樹脂およびこれらの混合物もしくは共重合体が挙げられる。中でも、表面処理層全体の密着性と耐衝撃性の向上の両立という点から考えると、ポリエステル系樹脂が最も好ましい。ポリエステル系樹脂はジカルボン酸類とグリコ−ル類よりなるが、ここでジカルボン酸類としてはフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、デカメチレンジカルボン酸、オクタデカンジカルボン酸等の直鎖飽和脂肪族ジカルボン酸、ε−オキシカプロン酸等の脂肪族オキソカルボン酸等、及びこれらのエステル形成性誘導体が挙げられる。グリコ−ル類としてはエチレングリコ−ル、トリメチレングリコ−ル、1,5−ペンタンジオ−ル、1,6−ヘキサンジオ−ル、1.4−ブタンジオ−ル、ネオペンチルグリコ−ル等の脂肪族グリコ−ル、1,6−シクロヘキサンジメタノ−ル等の脂肪族グリコ−ル、ポリ(1,2−ブタジエングリコ−ル)、ポリ(1,4−ブタジエングリコ−ル)及びその水素添加物、及びこれらのエステル形成性誘導体が挙げられる。また、ε−カプロラクトン(C6)、エナントラクトン(C7)及びカプロリロラクトン(C8)もポリエステル成分として有用である。
【0038】
尚、プライマ−層の屈折率を上げるために金属酸化物微粒子を添加することが有用である。添加する金属酸化物としては、粒径1〜100ミリミクロンのAl、Sn、Sb、Ta、Ce、La、Fe、Zn、W、Zr、In、Tiから選ばれる1種類以上の無機酸化物微粒子が、分散媒たとえば水、アルコ−ルもしくはその他の有機溶媒にコロイド状に分散させたものおよび/または、Si、Al、Sn、Sb、Ta、Ce、La、Fe、Zn、W、Zr、In、Tiの無機酸化物の2種類以上によって構成される複合粒子が水、アルコ−ル系もしくはその他の有機溶媒にコロイド状に分散したものである。具体例としては、Al2O3,SnO2 ,Sb2O5,Ta2O5、CeO2 ,La2O3,Fe2O3,ZnO,WO3 ,ZrO2 ,In2O3 ,TiO2 の無機酸化物微粒子1種以上が、分散媒たとえば水、アルコール系もしくはその他の有機溶媒にコロイド状に分散させたものおよび/または、SiO2 ,Al2O3,SnO2 ,Sb2O5,Ta2O5、CeO2 ,La2O3,Fe2O3,ZnO,WO3 ,ZrO2 ,In2O3,TiO2 の無機酸化物の2種以上によって構成される複合微粒子が水、アルコール系もしくはその他の有機溶媒にコロイド状に分散したものである。さらにコ−ティング液中での分散安定性を高めるためにこれらの微粒子表面を有機ケイ素化合物またはアミン系化合物で処理したものを使用することも可能である。この際、用いられる有機ケイ素化合物としては、単官能性シラン、あるいは二官能性シラン、三官能性シラン、四官能性シラン等がある。処理に関しては加水分解性基を未処理で行ってもあるいは加水分解して行ってもよい。また処理後は、加水分解性基が微粒子の−OH基と反応した状態が好ましいが、一部残存した状態でも安定性には何ら問題がない。またアミン系化合物としてはアンモニウムまたはエチルアミン、トリエチルアミン、イソプロピルアミン、n−プロピルアミン等のアルキルアミン、ベンジルアミン等のアラルキルアミン、ピペリジン等の脂環式アミン、モノエタノ−ルアミン、トリエタノ−ルアミン等のアルカノ−ルアミンがある。これら有機ケイ素化合物とアミン化合物の添加量は微粒子の重量に対して1〜15%程度の範囲で加える必要がある。いずれも粒子径は約1〜300ミリミクロンが好適であり、本発明のコ−ティング組成物への適応種及び使用量は目的とする被膜性能により決定されるものであるが、使用量は固形分の10〜70重量%であることが望ましい。すなわち、10重量%未満では、所望とする屈折率が得られない上に塗膜の耐擦傷性が不十分となる。また70重量%を越えると、塗膜にクラックが生じる。
【0039】
本発明におけるハ−ドコ−ト層は、下記(C)および(D)成分を含有する組成物を用いて、成膜することが好ましい。
(C)一般式 (1)
R1R2 nSiX1 3−n (1)
で表される有機ケイ素化合物。(式中、R1は重合可能な反応基または加水分解可能な官能基を有する有機基であり、R2は炭素数1〜6の炭化水素基であり、X1は加水分解可能な官能基であり、nは0または1である。)
(D)粒径1〜100ミリミクロンのAl、Sn、Sb、Ta、Ce、La、Fe、Zn、W、Zr、In、Tiから選ばれる1種類以上の無機酸化物微粒子が、分散媒たとえば水、アルコ−ルもしくはその他の有機溶媒にコロイド状に分散させたものおよび/または、Si、Al、Sn、Sb、Ta、Ce、La、Fe、Zn、W、Zr、In、Tiの無機酸化物の2種類以上によって構成される複合粒子が水、アルコ−ル系もしくはその他の有機溶媒にコロイド状に分散したものである。
【0040】
ここで、上記(C)成分におけるR1は重合可能な反応基または加水分解可能な官能基をもつ有機基であり、ここでの重合可能な反応基の具体例としては、ビニル基、アリル基、アクリル基、メタクリル基、エポキシ基、メルカプト基、シアノ基、アミノ基等が挙げられ、加水分解可能な官能基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、メトキシエトキシ基等のアルコキシ基、クロロ基、ブロモ基等のハロゲン基、アシルオキシ基等が挙げられる。R2の具体例としては、メチル基、エチル基、ブチル基、ビニル基、フェニル基等が挙げられる。また、X1は加水分解可能な官能基であり、その具体例は、メトキシ基、エトキシ基、メトキシエトキシ基等のアルコキシ基、クロロ基、ブロモ基等のハロゲン基、アシルオキシ基等が挙げられる。上記(C)のシラン化合物の具体例としては、ビニルトリアルコキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリ(β−メトキシ−エトシキ)シラン、アリルトリアルコキシシラン、アクリルオキシプロピルトリアルコキシシラン、メタクリルオキシプロピルトリアルコキシシラン、メタクリルオキシプロピルジアルコキシメチルシラン、γ−グリシドオキシプロピルトリアルコキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)−エチルトリアルコキシシラン、メルカプトプロピルトリアルコキシシラン、γ−アミノプロピルトリアルコキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジアルコキシシラン、テトラメトキシシラン等が挙げられる。
【0041】
この成分(C)は2種以上を混合して用いてもかまわない。また、加水分解を行ってから用いた方が、より有効である。
【0042】
上記(D)成分の具体例としては、Al2O3,SnO2 ,Sb2O5,Ta2O5、CeO2 ,La2O3,Fe2O3,ZnO,WO3 ,ZrO2 ,In2O3 ,TiO2 の無機酸化物微粒子1種以上が、分散媒たとえば水、アルコール系もしくはその他の有機溶媒にコロイド状に分散させたものおよび/または、SiO2 ,Al2O3,SnO2 ,Sb2O5,Ta2O5、CeO2 ,La2O3,Fe2O3,ZnO,WO3 ,ZrO2 ,In2O3,TiO2 の無機酸化物の2種以上によって構成される複合微粒子が水、アルコール系もしくはその他の有機溶媒にコロイド状に分散したものである。さらにコ−ティング液中での分散安定性を高めるためにこれらの微粒子表面を有機ケイ素化合物またはアミン系化合物で処理したものを使用することも可能である。この際、用いられる有機ケイ素化合物としては、単官能性シラン、あるいは二官能性シラン、三官能性シラン、四官能性シラン等がある。処理に関しては加水分解性基を未処理で行ってもあるいは加水分解して行ってもよい。また処理後は、加水分解性基が微粒子の−OH基と反応した状態が好ましいが、一部残存した状態でも安定性には何ら問題がない。またアミン系化合物としてはアンモニウムまたはエチルアミン、トリエチルアミン、イソプロピルアミン、n−プロピルアミン等のアルキルアミン、ベンジルアミン等のアラルキルアミン、ピペリジン等の脂環式アミン、モノエタノ−ルアミン、トリエタノ−ルアミン等のアルカノ−ルアミンがある。これら有機ケイ素化合物とアミン化合物の添加量は微粒子の重量に対して1〜15%程度の範囲で加える必要がある。いずれも粒子径は約1〜300ミリミクロンが好適であり、本発明のコ−ティング組成物への適応種及び使用量は目的とする被膜性能により決定されるものであるが、使用量は固形分の10〜70重量%であることが望ましい。すなわち、10重量未満では、所望とする屈折率が得られない上に塗膜の耐擦傷性が不十分となる。また70重量%を越えると、塗膜にクラックが生じる。
【0043】
このような、ハ−ドコ−ト層用のコーティング組成物は、必要に応じ、溶剤に希釈して用いることができる。溶剤としては、水、アルコール類、エステル類、ケトン類、エーテル類、芳香族類等の溶剤が用いられる。
【0044】
なお、本発明におけるハ−ドコ−ト層用のコーティング組成物は、上記成分の他に、必要に応じて、少量の硬化触媒、界面活性剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、ヒンダートアミン・ヒンダートフェノール等の光安定剤、分散染料・油溶染料・蛍光染料・顔料、等を添加しコーティング液の塗布性の向上や、硬化後の被膜性能を改良することもできる。
【0045】
【発明の実施の形態】
以下本発明の詳細について実施例に基づき説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。尚、得られたプラスチックレンズの評価は以下の方法で行った。
【0046】
耐熱性試験(クラック発生温度):
作製したレンズを、所定のメガネフレームに枠入れした後、メガネフレームごと40℃のオーブン中にいれて30分間加熱した。オーブンから取り出した後、室温で30分放置した後、レンズにクラックが発生していないか、暗箱で目視評価を行った。クラックが発生していない場合は、オーブンの温度を10℃づつ上げて再度30分間加熱し、同様の評価を行い、100℃まで試験を行った。濃いクラックが発生した時の温度をクラック発生温度とし、以下の様に評価した。
◎ 非常に耐熱性が高い(クラック発生温度が100℃、または100℃でもクラックが発生しない。)
○ 耐熱性が高い(クラック発生温度が80℃〜90℃)
× 耐熱性が低い(クラック発生温度が70℃以下)
【0047】
反射防止効果試験 :
作製したレンズの表面反射率を、分光光度計(日立 U−3500)で測定した。可視光域(400nm〜800nm)の平均反射率(片面)から以下の様に評価した。
◎ 非常に反射防止効果が大きい(平均反射率が2%以下)
○ 十分な反射防止効果がある(平均反射率が3.5%以下)
× 反射防止効果がほとんどない(平均反射率が3.5%を越える)
【0048】
表面処理層(プライマ−層、ハ−ドコ−ト層および低屈折率層)の密着性 :レンズ生地と表面処理層(プライマ−層、ハ−ドコ−ト層及び低屈折率層)の密着性を、サンシャインウェザ−(キセノンランプによるサンシャインウェザ−メ−タ−120時間)暴露と恒温恒湿(恒温恒湿槽60℃×99%雰囲気に7日間)放置について評価した。JIS K5400(塗料一般試験方法)8.5.2「碁盤目テープ法」に準じて、ナイフを用い基材表面に1mm間隔に切れ目を入れ、1平方mmのマス目を100個形成させる。次に、その上へセロファンテ−プ(ニチバン(株)製、商品名「セロテ−プ(登録商標)」)を強く押し付けた後、表面から90度方向へ急に引っ張り剥離した後、コ−ト被膜の残っているマス目を密着性指標として目視で観察した。
◎ コ−ト膜の残った面積が100%
○ コ−ト膜の残った面積が95%以上〜100%未満
△ コ−ト膜の残った面積が50%以上〜95%未満
× コ−ト膜の残った面積が50%未満
【0049】
干渉縞の評価
パルック蛍光灯(松下電器(株)製)設置暗箱で目視により評価した。
◎ まったく干渉縞が見られない。
○ 若干の干渉縞が見られる。
× 干渉縞が見られる。
【0050】
(1)チオウレタン系プラスチックレンズ(TU−1)の作製
ポリイソシアネート化合物としてm−キシリレンジイソシアネート103gと4,8or4,7or5,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン100g、内部離型剤0.15g、紫外線吸収剤として2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール3.0gを混合し、1時間ほど十分に攪拌した。この後、重合触媒としてジブチルスズジクロライド0.06gを添加し、撹拌して溶解させた後、5mmHgの真空下で60分脱気を行った。
【0051】
その後、中心厚1.2mmのレンズ成形用のガラス型とテープよりなるモールド中に注入した。これを大気重合炉中で40℃から120℃まで10時間かけて昇温し、重合硬化させた。その後、モールドより離型し、120℃で2時間加熱してアニール処理を行い、チオウレタン系プラスチックレンズを得た。
【0052】
ここで、得られたプラスチックレンズを以下TU−1と略す。このレンズは、屈折率1.66、アッベ数32であり、TgをTMAペネトレーション法(荷重50g、先端0.5mmφ、昇温10℃/min)で測定したところ、101℃であった。
【0053】
(2)チオエポキシ系プラスチックレンズ(TE−1)の作製
ビス(2,3−エピチオプロピル)ジスルフィド100g、4,8or4,7or5,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン10g、紫外線吸収剤(商品名 SEESORB701:シプロ化成工業株式会社製)1.0g、および触媒としてN,N−ジエチルエタノールアミン0.3gを混合、室温で十分に攪拌し均一液とした。ついでこの組成物を中心厚1.2mmとしたレンズ成形用のガラス型とテープよりなるモールド中に注入し、大気重合炉中で10℃から130℃まで24時間かけて昇温し、重合硬化させた。その後モールドより離型し、130℃で2時間加熱してアニール処理を行い、チオエポキシ系プラスチックレンズを得た。
【0054】
ここで得られたプラスチックレンズを以下TE−1と略す。このレンズは、屈折率1.74、アッベ数32であり、TgをTMAペネトレーション法(荷重50g、先端0.5mmφ、昇温10℃/min)で測定したところ、79℃であった。
【0055】
(3)プライマ−層用コ−ティング液(P−1)の調整
市販のポリエステル樹脂・・・「ペスレジンA−160P」(高松樹脂株式会社、水分散エマリジョン、固形分濃度27%)100部に、酸化チタン系複合微粒子は「オプトレイク1130F−2(A−8)」(触媒化成工業(株)製、Fe2O3/TiO2=0.02、SiO2/TiO2=0.11、粒径:1nm、固形分濃度:30%、分散溶媒:メチルアルコ−ル、表面処理:テトラエトキシシラン)84部、希釈溶剤としてメチルアルコ−ル640部、レベリング剤としてシリコ−ン系界面活性剤(日本ユニカ−(株)製、商品名 「SILWET L−77」)1部を混合し、均一な状態になるまで攪拌した。ここで得られたプライマ−層用のコーティング液をP−1と略す。
【0056】
(4)ハ−ドコ−ト層用コ−ティング液(H−1)の調整
ブチルセロソルブ144部、メタノ−ル分散二酸化チタン−二酸化ジルコニウム−二酸化ケイ素複合微粒子ゾル(触媒化成工業(株)製、固形分濃度20重量%)603部を混合した後、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン170部を混合した。この混合液に0.05N塩酸水溶液60部を攪拌しながら滴下し、さらに4時間攪拌後一昼夜熟成させた後、Fe(III)アセチルアセトネ−ト0.2部、シリコン系界面活性剤(日本ユニカ−(株)製、商品名「L−7001」)0.3部を添加し4時間攪拌後一昼夜熟成した。ここで得られたハ−ドコ−ト層用のコーティング液をH−1と略す。
【0057】
(5)低屈折率層用コーティング液(C−1)の調整
プロピレングリコールモノメチルエーテル(以下PGME)18.8g、γ−グリシドキシトリメトキシシラン8.1gを混合した後、0.1規定塩酸水溶液2.2gを撹拌しながら滴下し、5時間撹拌した。この液にイソプロパノール分散中空シリカゾル(固形分濃度20wt%)20.7gを加えて十分に混合した後、硬化触媒としてAl(C5H7O2)3を0.04g、シリコン系界面活性剤(日本ユニカー製 L7604)を0.015g添加して撹拌、溶解することにより、固形分濃度が20%のコーティング原液を得た。このコーティング液を希釈するために、300ppm濃度のシリコン系界面活性剤(日本ユニカー製 L7604)入りPGME溶液を準備し、コーティング原液を35.3g、希釈用界面活性剤入りPGME溶液114.7gを混合して十分に撹拌し、固形分濃度が約4.7%の低屈折率層用のコーティング液を作製した。ここで得られた低屈折率層用のコーティング液をC−1と略す。
【0058】
(6)低屈折率層用コーティング液(C−2)の調製
上記C−1液の調整中の、イソプロパノール分散中空シリカゾル(固形分濃度20wt%)を使用する替わりに、中空でない通常タイプのシリカ微粒子からなるイソプロパノール分散シリカゾル(固形分濃度20wt%)を用いて、それ以外は上記C−1液の調合と同様に操作を行い、低屈折率層用のコーティング液を得た。この液を以下C−2と略す。
【0059】
(実施例1)
上記P−1液を用いて、TU−1レンズに浸漬法(引き上げ速度20cm/min)にて塗布を行った。塗布後、100℃で15分間加熱硬化処理してレンズ基材上に0.8μmのプライマ−層を成形した。このようにして得られたプライマ−層を形成したプラスチックレンズ基材上に、上記H−1液を用いて、浸積法(引き上げ速度18cm/min)にて塗布を行った。塗布後、80℃で20分間風乾した後、130℃で120分間焼成を行い、プライマ−層上に2.1μmのハ−ドコ−ト層を形成した。更に、このようにして得られたレンズ基材に、上記C−1液を用いて、浸積法(引き上げ速度10cm/min)にて塗布を行った。塗布後、125℃で180分間焼成を行い、低屈折率層付きのレンズを得た。このときの膜厚は90nmであり、低屈折率層の屈折率は1.44であった。
【0060】
こうして得られたレンズに、前記の耐熱性試験、反射防止効果試験、表面処理層の密着性試験、干渉縞の評価を行った。その結果を表1に示す。この実施例1で得られたレンズは、耐熱性、反射防止効果、表面処理層の密着性、干渉縞、いずれも満足できる水準であった。
【0061】
(実施例2)
TE−1レンズを用いた以外は、実施例1と同様の操作を行い、プライマ−層、ハ−ドコ−ト層、低屈折率層付きのレンズを得た。こうして得られたレンズに、前記の耐熱性試験、反射防止効果試験、表面処理層の密着性試験、干渉縞の評価を行った。その結果を表1に示す。この実施例2で得られたレンズも、耐熱性、反射防止効果、表面処理層の密着性、干渉縞、いずれも満足できる水準であった。
【0062】
(実施例3)
低屈折率層用コーティング液としてC−2液を用いる以外は、実施例1と同様の操作を行い、レンズを得た。こうして得られたレンズに、前記の耐熱性試験、反射防止効果試験、表面処理層の密着性試験、干渉縞の評価を行った。その結果を表1に示す。この実施例3で得られたレンズも、耐熱性、反射防止効果、表面処理層の密着性、干渉縞、いずれも満足できる水準であった。
【0063】
(比較例1)
プライマ−層を除いた以外は、実施例1と同様の操作を行い、ハ−ドコ−ト層及び低屈折率層付きのレンズを得た。こうして得られたレンズに、前記の耐熱性試験、反射防止効果試験、表面処理層の密着性試験、干渉縞の評価を行った。その結果を表1に示す。耐熱性、反射防止効果、干渉縞は十分であったが、表面処理の密着性が劣っていた。
【0064】
(比較例2)
レンズ生地に屈折率1.50のプラスチックレンズ(セイコーエプソン(株)製、セイコースーパープラックス用レンズ生地 以下SPXと略す)を使用した以外は、実施例1と同様に操作を行い、プライマ−層、ハ−ドコ−ト層、低屈折率層付きのレンズを得た。こうして得られたレンズに、前記の耐熱性試験、反射防止効果試験、表面処理層の密着性試験、干渉縞の評価を行った。その結果を表1に示す。耐熱性、反射防止効果、表面処理層の密着性いずれも満足できる水準であったが、干渉縞がひどく、商品価値を著しく損なっていた。
【0065】
(比較例3)
低屈折率層を除いた以外は、実施例1と同様の操作を行い、市販の反射防止加工(セイコーエプソン(株)製、蒸着法による反射防止加工、透過率99%タイプ)を施し、プライマ−層、ハ−ドコ−ト層、反射防止加工付きのレンズを得た。こうして得られたレンズに、前記の耐熱性試験、反射防止効果試験、表面処理層の密着性試験、干渉縞の評価を行った。その結果を表1に示す。反射防止効果、表面処理層の密着性、干渉縞は十分であるが、耐熱性に関しては劣っていた。
【0066】
【表1】
【0067】
【発明の効果】
本発明によって、耐熱性、表面処理層の密着性に優れ、かつ、十分な反射防止効果と干渉縞の少ないプラスチックレンズを得ることができる。
また、本発明における湿式法による反射防止プラスチックレンズの製造方法は、今までの蒸着法、スパッタ法などの製造方法に比べ、より簡便に作製することが可能である。
Claims (7)
- プラスチックレンズ生地に、プライマー被膜、ハードコート被膜、低屈折率層の順で付けたことを特徴とする、プラスチックレンズ。
- 低屈折率層の屈折率がハ−ドコ−ト被覆よりも、0.10以上低く、50nm〜150nmの膜厚で設けたことを特徴とする請求項1に記載のプラスチックレンズ。
- 低屈折率層が、下記の(A)および(B)成分を含有することを特徴とする、請求項1または2に記載のプラスチックレンズ。
(A)一般式 (1)
R1R2 nSiX1 3−n (1)
で表される有機ケイ素化合物。(式中、R1は重合可能な反応基または加水分解可能な官能基を有する有機基であり、R2は炭素数1〜6の炭化水素基であり、X1は加水分解可能な官能基であり、nは0または1である。)
(B)シリカ系微粒子 - 上記(B)成分が、内部空洞を有するシリカ系微粒子であることを特徴とする、請求項3に記載のプラスチックレンズ。
- プラスチックレンズ生地の屈折率が1.60以上であることを特徴とする、請求項1に記載のプラスチックレンズ
- プラスチックレンズ生地に、チオウレタン系プラスチックレンズまたは、チオエポキシ系プラスチックレンズを用いることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載のプラスチックレンズ。
- プラスチックレンズ生地のガラス転移点が、75℃以上であることを特徴とする、請求項1ないし6のいずれかに記載のプラスチックレンズ。
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JP2008046282A (ja) * | 2006-08-12 | 2008-02-28 | Washi Kosan Co Ltd | 高屈折率眼鏡用累進多焦点プラスチックレンズ |
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US7981506B2 (en) | 2005-04-28 | 2011-07-19 | Seiko Epson Corporation | Plastic lens and method of manufacturing a plastic lens |
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2003
- 2003-03-04 JP JP2003057511A patent/JP2004264778A/ja active Pending
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