JP2004236788A - 白血球除去血球浮遊液の製造方法、及び白血球除去フィルター装置 - Google Patents

白血球除去血球浮遊液の製造方法、及び白血球除去フィルター装置 Download PDF

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Abstract

【課題】高い白血球除去能を維持したまま濾材容積の大幅な低減を実現することで、濾過操作後における血球浮遊液のロス量を著しく低減し得る、血球浮遊液から白血球を選択的に除去して白血球除去血球浮遊液を製造する方法、及び該製造方法に用いられる白血球除去フィルター装置を提供する。
【解決手段】処理血球浮遊液から白血球を除去する白血球除去血球浮遊液の製造方法であって、該処理血球浮遊液を、白血球除去能が処理血球浮遊液450cmあたり1.0〜3.5Logである第1フィルターを通過させた後、第1フィルターより流出した全血球浮遊液を引き続いて、平均孔面積S(μm)が1≦S≦320、孔面積の標準偏差σ(μm)が0≦σ≦0.5S、開孔率が10〜90%である貫通孔型多孔膜の1枚もしくは2枚以上からなる第2フィルターを通過させることを特徴とする白血球除去血球浮遊液の製造方法および該製造方法に用いる白血球除去フィルター装置。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、白血球除去血球浮遊液の製造方法、および該製造方法に用いる白血球除去フィルター装置に関する。さらに詳しくは、全血もしくは輸血用血液製剤に代表される血球浮遊液から白血球を除去するに際し、血球浮遊液ロス量の少ない白血球除去浮遊液の製造方法、および白血球除去フィルター装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年の輸血分野においては、輸血療法が適用された患者の身体的な負担を軽減するために、全血や輸血用血液製剤(赤血球製剤、血小板製剤、血漿製剤等)に代表される血球浮遊液から白血球を高度に除去することの重要性がますます高まってきている。この背景には、輸血後の頭痛や非溶血性発熱反応等の副作用の発現、さらには移植片対宿主疾患(GVHD)、アロ抗原感作、ウィルス感染等の重篤な輸血副作用の発現が挙げられるが、これらの副作用は主として血球浮遊液に混入している白血球に由来すると考えられている。従って、こうした輸血に際しての副作用を防ぐためには、上記のような輸血副作用が発現しないと考えられる水準にまで、血球浮遊液から白血球を除去することが求められている。
【0003】
このような医療現場からの要請に答えるため、これまで白血球を除去するための様々な技術検討が行われてきている。それらのうち、代表的な方法として、1)血液成分の比重差を利用する遠心分離法、および2)不織布のような繊維状基材に代表される3次元網目状多孔質体を濾材として血球浮遊液を濾過するフィルター法が挙げられるが、特に2)のフィルター法は、白血球除去能の高いこと、操作が簡便であること、コストパフォーマンスに優れること、などの利点を有するため、現在医療現場において広く実施されており、この用途に使用されるフィルターは「白血球除去フィルター」として知られている。
【0004】
代表的な白血球除去フィルターとしては、特許文献1または特許文献2に開示されているようなポリエステル等の極細繊維よりなる不織布をフィルター基材とするもの、および特許文献3に開示されているようなポリウレタン等よりなる連続開放気孔を有する3次元網目状多孔質体をフィルター基材とするものが挙げられ、それらを用いることによる白血球除去能は99.99%以上に達することが開示されている。
【0005】
ところで白血球除去フィルターを用いて血球浮遊液の濾過を行う場合、濾過終了後のフィルター濾材に血球浮遊液がどうしても残存してしまうため、これが貴重な血球浮遊液(特に高価な血液製剤)のロスとなってしまう。従って、多量の血液製剤を扱うユーザー側のコストパフォーマンス向上のためには、該白血球除去フィルターの白血球除去能を保ちつつも(99.99%以上)、その上でフィルター濾材容積を削減して血球浮遊液ロスを低減できるような製品開発のニーズが最近非常に高くなっているのが現状である。
【0006】
既述の特許文献1には、濾材である不織布表面に非イオン性親水基と塩基性含窒素官能基を含有するコーティング材(例えば2−ヒドロキエチルメタクリレートと2−(N,N−ジエチルアミノ)エチルメタクリレートの共重合体)をコーティングした後、このコーティング不織布を複数枚重ね合わせて構成された白血球除去フィルターが開示されている。この場合、白血球除去(捕捉)は吸着メカニズムによってなされるとされており、塩基性含窒素官能基は白血球の選択的吸着効果を担い、一方、非イオン性親水基は各種血球成分の非選択的吸着の抑制効果を担うとされている。
【0007】
そうであれば、このような白血球除去フィルターにおいて白血球除去能をアップするには、白血球選択親和性官能基である塩基性含窒素官能基の含有量を高めれば良いと考えられるが、実際には塩基性含窒素官能基の増量によって白血球だけでなく他の血球成分(赤血球や血小板)の吸着能もアップするため(非選択的吸着)、逆に白血球の選択捕捉性は低下する上、ひどい場合には多量の血球成分の吸着によるフィルター閉塞も起こってしまうため効果的な方法にはなり得ない。
【0008】
最近、非特許文献1および非特許文献2に、高分子溶液からの溶媒揮発過程における高分子(例えばポリ(ε−カプロラクトン))の自己組織化法によってサイズ均一性および孔形状均一性の高い高分子多孔質薄膜を作成し、これをフィルターとして人血液の濾過を行ったところ優れた白血球除去能が得られたことが報告されている。これは、均一な孔径を有する新規な多孔薄膜材料を用いることで、人血液中の白血球(直径約15μm)、赤血球(直径約7μm)、および血小板(約3μm)から白血球のみをサイズ効果によって選択的に捕捉しうることを示した興味深い結果であり、新規な白血球除去材料およびメカニズムとして注目されている。
【0009】
但し、このような均一径多孔薄膜を白血球除去フィルターの濾材として用いる場合、多孔薄膜表面における表面的な白血球捕捉にとどまるため、例えば450cmの人全血に含まれる白血球をフィルターが閉塞することなく全て捕捉するには極めて大面積の多孔薄膜が必要となる。その結果、フィルターサイズが従来品よりも著しく大きくならざるを得ないため、(1)医療現場における作業性が著しく低下する、(2)フィルターホルダー(またはフィルターハウジング)が著しく大きくなるため生産コストが大幅にアップする、(3)大面積の多孔薄膜の成膜は力学強度的にも製品管理(主にピンホールや孔径均一性管理)においても非常に困難であり、このままでは実用的な技術であるとは言い難い。
【0010】
以上、説明したように、白血球除去フィルター使用時において、白血球除去能は維持しながら、一方でフィルター濾材中に残存する血球浮遊液量を大幅に減らすためには、根本的に濾材容積の大幅な削減が必要であり、それを実現するためには、少ない濾材で高い白血球除去能を発揮させるための白血球除去技術の開発が必須であるが、上記したように従来より検討されてきた各血球成分とフィルター基材表面との微妙な化学的相互作用のバランス設計や官能基最適化だけでそれを達成することは困難であった。
【0011】
【特許文献1】
国際公開第87/05812号パンフレット
【特許文献2】
米国特許第5,298,165号
【特許文献3】
特開平5−34337号公報
【非特許文献1】
Polymer Preprints,Japan Vol.50,
No.12804(2001).
【非特許文献2】
Polymer Preprints,Japan Vol.51,
No.5961(2002).
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、高い白血球除去能を維持したまま濾材容積の大幅な低減を実現することで、濾過操作後における血球浮遊液のロス量を著しく低減し得る、血球浮遊液から白血球を選択的に除去する白血球除去血球浮遊液の製造方法、及び該製造方法に用いられる白血球除去フィルター装置を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者は従来の技術で述べた不織布を用いる白血球除去フィルターに関して、不織布の枚数と白血球除去能の関係を検討した結果、不織布が少ない範囲内では白血球除去能は不織布の枚数増加に伴って上昇するが、そのような不織布枚数増加に伴う白血球除去能の上昇率は不織布が多くなってくると次第に小さくなってしまうことが分かった。そこで、本発明者はそのような結果を鑑みながら鋭意検討を進めた結果、不織布等の3次元網目状多孔質材を第1フィルターとし、さらに白血球を選択的に捕捉しうるサイズの孔群を高いサイズ均一性にて有する貫通孔型多孔膜を第2フィルターとして、両者を特定の条件で組み合わせて使用すると、高い白血球除去能を維持したまま大幅な濾材容積の低減化を実現できることを見出し本発明に至った。
【0014】
すなわち、本発明は、
[1]処理血球浮遊液から白血球を除去する白血球除去血球浮遊液の製造方法であって、該処理血球浮遊液を、白血球除去能が処理血球浮遊液450cmあたり1.0〜3.5Logである第1フィルターを通過させた後、第1フィルターより流出した全血球浮遊液を引き続いて、平均孔面積S(μm)が1≦S≦320、孔面積の標準偏差σ(μm)が0≦σ≦0.5S、開孔率が10〜90%である貫通孔型多孔膜の1枚もしくは2枚以上からなる第2フィルターを通過させることを特徴とする白血球除去血球浮遊液の製造方法、
[2]処理血球浮遊液の入口側にある第1フィルターと血球浮遊液の出口側にある第2フィルターを有するフィルター装置であって、第1フィルターの白血球除去能が処理血球浮遊液450cmあたり1.0〜3.5Logであり、第2フィルターは貫通孔型多孔膜の1枚もしくは2枚以上よりなり、該貫通孔型多孔膜の平均孔面積S(μm)が1≦S≦320、孔面積の標準偏差σ(μm)が0≦σ≦0.5S、開孔率が10〜90%である貫通孔型多孔膜の1枚もしくは2枚以上からなることを特徴とする白血球除去フィルター装置、
[3]第2フィルターの有効面積が4〜300cmであることを特徴とする[2]に記載の白血球除去フィルター装置、
[4]白血球除去フィルター装置の濾材容積が、2〜18cmであることを特徴とする[2]または[3]に記載の白血球除去フィルター装置、
[5]処理血球浮遊液450cmあたりの白血球除去能が4.0Log以上であることを特徴とする[2]〜[4]のいずれかに記載の白血球除去フィルター装置、
である。
【0015】
本発明によれば、高い白血球除去能を維持したまま、濾材容積に起因する血球浮遊液のロス量を大幅に低減し得る白血球除去血球浮遊液の製造方法、および小容積白血球除去フィルター装置を提供することができる。その結果、医療現場における血液製剤等にかかるコストパフォーマンスの向上だけでなく、総医療廃棄物量の低下、フィルター濾材の削減によるフィルター装置生産側のコスト低下、および現場における製品収納スペースの効率化と作業性の向上、といった種々の効果が期待できる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明の第1フィルターは、白血球除去能が処理血球浮遊液450cmあたり1.0〜3.5Logであることが必要であり、さらに1.3〜3.3Logであることが好ましく、1.5〜3.0Logであることがより好ましい。本発明において処理血球浮遊液とはフィルターで濾過する前の血球浮遊液を言う。
本発明において白血球除去能は、第1フィルターに450cmの処理血球浮遊液を通過させた時に得られる濾過前後の血球浮遊液中の白血球濃度から下記式(1)により求められる。
白血球除去能(Log)=−Log(濾過後の血球浮遊液の白血球濃度/濾過前の血球浮遊液の白血球濃度)・・・(1)
【0017】
第1フィルターの白血球除去能が1.0Log未満であると、貫通孔型多孔膜よりなる第2フィルターが多量の白血球によって閉塞してしまう可能性が高くなるため好ましくない。または第2フィルターでの閉塞を避けようとすれば極めて大面積の第2フィルターが必要であるため、白血球除去フィルターの製品サイズが従来のレベルよりも著しく大きいものとなってしまい、医療現場においては扱いづらくなる上、貫通孔型多孔膜の生産歩留まりも低下するため(ピンホール管理等が非常に大変になる)、実用上好ましくない。一方、白血球除去能が3.5Logを超える場合は、その分第1フィルターの濾材容積がどうしても大きくなってしまい、本発明の効果である「濾材容積削減による血球浮遊液ロス量の低減効果」が小さくなるので好ましくない。
【0018】
本発明で用いる処理血球浮遊液の量は、一定の処理血球浮遊液量に対する濾過後のフィルター内残存血球浮遊液量(すなわち血球浮遊液ロス率)が多くなると濾過効率が悪いので、15cm以上が好ましい。一方、処理血球浮遊液が多すぎることで、貫通孔型多孔膜よりなる第2フィルターが多量の白血球によって閉塞してしまう可能性、さらには多量の血球成分の存在ゆえ第1フィルターの濾過速度の著しい低下や閉塞を考慮すれば、処理血球浮遊液量は2000cm以下であることが好ましい。さらに処理血球浮遊液は50〜1500cmがより好ましく、100〜1000cmがさらに好ましく、200〜600cmが特に好ましい。
本発明の第1フィルターは、既述の通り白血球除去能が1.0〜3.5Logであればどのようなものであっても構わないが、フィルターのミクロ構造としては、フィルター基材として一般的に広く使用されている連通した細孔を有する3次元網目状多孔質構造型のフィルター基材を好ましく使用することができる。
【0019】
3次元網目状多孔質構造型のフィルター基材に用いられる素材としては、所望のフィルター構造(形状)に成型(成膜)できるのであれば特に限定されず、各種素材を使用することができ、例えば、有機高分子素材、無機高分子素材、有機無機複合素材、有機無機ハイブリッド素材、金属素材等が挙げられる。中でも有機高分子素材は、軽量かつ切断、成膜等の加工性に優れるため好ましい素材である。有機高分子素材としては、例えば、ポリウレタン、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリエステル、ポリアミド、ポリスチレン、ポリスルホン、セルロースおよびセルロース誘導体、ポリフェニレンエーテル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニリデン等、およびこれらを構成するモノマーの共重合体、さらには上記高分子のアロイ、ブレンド等が挙げられるが、本発明のフィルター基材の素材は上記例に限定されるものではない。
【0020】
また該フィルター基材の3次元網目状多孔質構造は、血球浮遊液を濾過し得る連通した細孔を3次元的に有するものであれば特に限定されるものではないが、具体的な代表例としてはまず、天然繊維、合成高分子繊維、再生高分子繊維、ガラス繊維に代表される無機繊維、有機/無機複合繊維などより得られる繊維状媒体(編布、不織布、織布等)が挙げられる。その他、フィルター基材を形成し得る上記素材、なかでも代表的な素材として有機高分子素材が挙げられるが、これを熱溶融した状態や、溶媒によって溶解した溶液状態や、可塑剤を用いて可塑化した状態から、発泡法、相分離法(熱誘起相分離法や湿式相分離法)、延伸法、焼結法等によって得られる3次元網目状連続孔を有する多孔質体(多孔質膜)も代表的具体例として挙げられる。
これらの中で有機高分子繊維より得られる不織布や、比較的均一な3次元連続孔が形成しやすい相分離法によって得られる多孔質体は好ましい例として挙げられる。
【0021】
本発明において、フィルター基材として好ましい基材である不織布の繊維自体を形成する有機高分子素材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、セルロース誘導体、ポリアミド、ポリアクリロニトリル等が挙げられ、そのうちポリエチレンテレフタレートは特に好ましい例として挙げられる。
また、不織布を構成する繊維は極細繊維が好ましく、その平均繊維径は、フィルターを構成する個々の繊維における強度、及び白血球捕捉性の点から0.3〜3μmが好ましく、より好ましくは0.5〜2μm、特に好ましくは0.5〜1.5μmである。
【0022】
また不織布の平均気孔径は、血球の目詰まりや圧力損失の増大などの点から2μm以上が好ましく、また白血球捕捉性の点から30μm以下が好ましい。より好ましくは2〜20μm、特に好ましくは2〜10μmである。なお不織布をフィルター基材として用いる場合には、白血球除去能アップや目詰まり防止のために平均繊維径や平均気孔径、目付け量等が異なる2種類以上の不織布を組み合わせて使用しても構わないし、不織布以外の3次元網目状多孔質材と不織布をそれぞれ1種以上組み合わせても構わない。
【0023】
ここで平均気孔径とは、ASTM−F316−86に記載されているバブルポイント法に準じてPROFIL液(COULTER ELECTRONICS社製)中にて測定した値である。
白血球除去フィルター装置用のフィルターホルダー内に該フィルター基材を充填するときの充填密度は、白血球除去能の点から0.1g/cm以上が好ましく、血球の目詰まりや圧力損失の増大等の点から0.5g/cm以下が好ましい。より好ましくは0.1〜0.3g/cm、特に好ましくは0.15〜0.25g/cmである。
【0024】
該フィルター基材の形態、もしくはそれらの1個(1枚)あるいは複数個(複数枚)を組み合わせて構成される第1フィルターの形態は、血液が濾過できるのであれば平膜状(平板状)、円筒形状(中空糸状)、袋状等どのような形態でも構わないが、特にフィルター基材としては平膜状の形態が扱いやすく、その場合それらを1枚もしくは複数枚重ね合わせて本発明の第1フィルターを構成することが好ましい。また、そのようにフィルター基材を複数個(複数枚)重ね合わせて第1フィルターを構成する場合には、それぞれのフィルター基材は素材、ミクロ構造、平均気孔径、気孔径分布、膜厚等が互いに全く同じであっても構わないし、上記要素の幾つか、または全てが異なっていても構わない。またフィルター基材の1個(1枚)においても、そのミクロ構造、平均気孔径、気孔径分布等が均質であっても良いし、傾斜構造のような不均質構造であっても良い。
【0025】
また第1フィルターのサイズは、既述の通り白血球除去能が処理血球浮遊液450cmあたり1.0〜3.5Logであれば、どのような値でも構わないが、あまり大きすぎると医療現場における作業性が著しく低下するし、フィルターホルダーサイズが大きくなると生産者側の大幅なコストアップにつながるので、実用的な値としてその有効面積は4〜300cmであることが好ましく、10〜250cmであることがより好ましく、10〜200cmであることが特に好ましい。
【0026】
なお、ここで言う第1フィルターの有効面積とは、フィルター把持部(フィルターホルダーへの固定部)を除き実際に血球浮遊液が通過するフィルター部の平面的な面積を言うのであって、膜内部の内部孔表面まで含んだものを意味するものではない。
本発明で用いられるフィルター基材は、後述のコーティング法等によるフィルター基材への新たな官能基の導入やその固定化(使用時におけるコーティング材の溶出を極力抑えたい)を十分なものにするためなどの目的で、フィルター基材の表面を酸、アルカリなどの適当な薬品で処理したり、プラズマや電子線などによる処理を予め行っても構わない。
【0027】
本発明の第1フィルターとして既述の有機高分子繊維より得られる不織布や、相分離法によって得られる3次元網目状多孔質材等を用いる場合、不織布や該多孔質材そのままでは、本発明の第1フィルターの白血球除去能に達しない場合には、フィルター基材の血球浮遊液に接触しうる表面部分を化学修飾等によって改質するのが好ましく、特に親水性官能基および塩基性含窒素官能基をバランス良く付与する公知の方法は効果的である。
なお本発明にいう、フィルター基材の血球浮遊液に接触しうる表面部分とは、例えば平膜の場合では、その表裏のみを意味するのではなく、平膜内部に存在する微細孔内部の表面をも含むものである。例えばフィルター基材が不織布であるならば、それを構成する繊維の全表面(繊維交絡部は除く)がフィルター基材の表面部分である。なお、この表現は後に述べる「貫通孔型多孔膜の表面部分」においても当てはまる。
【0028】
親水性官能基とは、その名の通り「水分子との親和性を有する官能基」を意味し、血球成分の非選択的な吸着を抑制するために導入されるものであって公知の種々の親水性官能基が当てはまるが、具体的には、アルコール性水酸基、フェノール性水酸基、カルボキシル基、スルホン基、カルボニル基、エステル基、エーテル基、アミド基、N−1置換アミド基、N,N−2置換アミド基といった比較的親水性が高いことで知られる官能基群が挙げられ、それらの1種もしくは2種以上を組み合わせて導入することが好ましい。特にアルコール性水酸基、カルボニル基、エステル基、エーテル基、アミド基、N−1置換アミド基、N,N−2置換アミド基といった非イオン性親水性官能基の1種もしくは2種以上を組み合わせて用いることが好ましい。
【0029】
一方、塩基性含窒素官能基とは、白血球への選択的な親和性を発現させる目的で導入されるのであって、例えば、脂肪族1級アミノ基、脂肪族2級アミノ基、脂肪族3級アミノ基、さらにピリジル基、ビピリジル基、イミダゾール基等の含窒素芳香族基が挙げられ、それらの1種もしくは2種以上を組み合わせて導入することが好ましい。なお、脂肪族1級アミノ基(−NH)、脂肪族2級アミノ基、脂肪族3級アミノ基は芳香族アミノ基と比べて疎水性が低いため白血球の選択的親和性を実現するには特に好ましい。具体的に脂肪族2級アミノ基とは−NHRの構造を有し、Rは特に限定されずどのような構造であっても構わないが、例えばメチル基、エチル基、プロピル基といった直鎖状アルキル基、イソプロピル基のような分枝状アルキル基が挙げられるが、それらアルキル基の炭素数や構造は特に限定されない。さらにそのアルキル基が有する水素の1個もしくは2個以上が水酸基、エステル基、カルボニル基、エーテル基を有するような任意の官能基によって置換されていても構わない。また脂肪族3級アミノ基とは−NRの構造を有するが、RとRも、上記のRと同様の種々の構造をとり得るし、RとRは互いに同一構造でも異なっていてもよい。
【0030】
中でも脂肪族3級アミノ基が好ましい構造であり、脂肪族3級アミノ基を有する官能基が白血球選択親和性官能基として有効である。そのような官能基としては具体的に、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、エチルメチルアミノ基、ジエタノールアミノ基、2−ジメチルアミノエチル基、3−ジメチルアミノプロピル基、2−ジエチルアミノエチル基、3−ジエチルアミノプロピル基等が挙げられる。
フィルター基材の少なくとも表面部分に親水性官能基もしくは塩基性含窒素官能基を導入する方法は特に限定されるものではなく、フィルター基材の細孔を著しく閉塞させたりすることのない方法、また本来のフィルター基材表面が血球成分の非選択的吸着性を発現するため好ましくない場合には、その表面が露出することなく必要な官能基を均一に導入することができる方法であれば特に制限されない。
【0031】
例えば代表的な方法として、(a)フィルター基材表面に元来存在する官能基に高分子反応によって親水性官能基もしくは塩基性含窒素官能基を導入する方法、(b)フィルター基材の表面に電子線やγ線を照射してラジカルを発生させ、これに親水性官能基もしくは塩基性含窒素官能基を有するモノマーを作用させてグラフト重合する方法、(c)フィルター基材の表面に必要な開始剤基を導入した後、これに触媒等の存在下で種々のリビングラジカル重合法にて親水性官能基もしくは塩基性含窒素官能基を有するモノマーをグラフト重合する方法、(d)予め親水性官能基と塩基性含窒素官能基をバランスよく有するポリマーを合成しておき、これをフィルター基材表面に含侵法やスプレー法を用いてコーティングする方法、等が挙げられるが、このうち(d)のコーティング法は、コーティング用ポリマーの合成反応において、導入したい親水性官能基および塩基性含窒素官能基の種類や量、重合連鎖分布等を容易に設計できるし、さらにコーティングプロセス自体も簡便で生産性も高いものであるので特に好ましい方法である。
【0032】
コーティング用ポリマーの合成において用いられる親水性官能基を有するモノマー種は特に制限されるものではないが、特に非イオン性親水性官能基を有するものが好ましく、例えば、2−ヒドロキシエチルメタクリレートや2−ヒドロキシプロピルメタクリレートのようなアルコール性水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリルアミド、N−1置換(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミドなどのN,N−2置換(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド類、−CHCHO−の繰り返し単位数1〜100のポリオキシエチレン基を有するアルコキシポリエチレングリコールの(メタ)アクリル酸エステル類などが挙げられる。
【0033】
また塩基性含窒素官能基を有するモノマーも、本発明の性能を満たすのであれば特に制限されないが、好ましい塩基性含窒素官能基である脂肪族3級アミノ基を有するモノマーとしては、例えば、2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、2−(ジエチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、2−(エチルメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、2−(ジエタノールアミノ)エチル(メタ)アクリレート、2−(ジメチルアミノ)プロピル(メタ)アクリレート、3−(ジメチルアミノ)プロピル(メタ)アクリレート、3−(ジエチルアミノ)プロピル(メタ)アクリレート、2−(ジエタノールアミノ)プロピル(メタ)アクリレート、3−(ジエタノールアミノ)プロピル(メタ)アクリレート、等が挙げられる。
【0034】
フィルター基材の少なくとも表面部分に親水性官能基もしくは塩基性含窒素官能基を導入する方法としてコーティング法を用いる場合には、予めコーティング用ポリマーを合成しておき、これを適当な溶媒に溶解してコーティング溶液を調製し、該溶液にフィルター基材を浸漬する方法や、フィルター基材に該溶液をスプレー法にて吹き付ける方法などが挙げられるが、均一性の高いコーティングを行うためには前者の浸漬法が好ましい。
【0035】
コーティング用ポリマーは、適当な溶媒に溶解後、コーティング法によって最終的にフィルター基材の少なくとも表面部分に目的の親水性官能基と塩基性含窒素官能基をバランス良く導入できるのであれば特に限定されず、親水性官能基含有モノマーの1種もしくは2種以上を重合して得られるポリマーと塩基性含窒素官能基含有モノマーの1種もしくは2種以上を重合して得られるポリマーのブレンド物でも良いし、また親水性官能基含有モノマーの1種もしくは2種以上と塩基性含窒素官能基含有モノマーの1種もしくは2種以上を共重合して得られるランダムコポリマーであっても、またブロックコポリマーであっても構わない。
【0036】
コーティング用ポリマーの分子量は、重量平均分子量(Mw)において1.0×10〜2.0×10であることが好ましい。さらに5.0×10〜1.5×10であることが好ましく、1.0×10〜1.0×10であることが特に好ましい。Mwが1.0×10未満であると、分子鎖の絡み合い効果が小さくなるためフィルター表面部分への固定化が不十分となり使用時のコーティング用ポリマーの溶出が懸念されるため好ましくない。一方、Mwが2.0×10を越えると、溶媒への溶解性が低下して溶液の均一性が低下したり、溶液粘度が高くなりすぎてフィルター基材表面への均一なコーティングができなくなるため好ましくない。Mwとは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC;標準ポリスチレン換算)にて得られる値である。
コーティング法においてコーティング用ポリマーを溶解する溶媒としては、フィルター基材を著しく膨潤させたり溶解させるものでなく、しかもコーティング用ポリマーを十分に溶解するもの、さらにその溶媒を最終的にフィルター基材より除去できるものであれば特に限定されず様々な溶媒を使用することができる。
【0037】
そのような溶媒は、コーティング用ポリマーの種類に対応して選択する必要があるため特に限定はされないが、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、酢酸エチルなどのエステル類、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、デカリンなどの脂肪族炭化水素類、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素類、ジメチルスルホキシドなどの含硫黄系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどのアミド類などの1種もしくは2種以上を混合したものが挙げられる。なかでもアルコール類は適度な乾燥速度、取り扱いの容易さ、親水性官能基との親和性が高いといった点から好ましく、特に人体への毒性も少ないエタノールは実用上特に好ましい。また必要であれば、これら溶媒に親疎水性の微調整を行う目的で水を予め混合していても構わない。
【0038】
上記のコーティング溶液のポリマー濃度は、0.01〜80wt%であり、好ましくは0.1〜50wt%であり、特に0.5〜30wt%が好ましい。溶液濃度が0.01wt%未満であるとコーティングが不十分となりフィルター基材表面が露出しやすくなるため好ましくない。また80wt%を越えると溶液粘度が高くなるため、均一なコーティングが困難になったりフィルター基材の孔が閉塞しやすくなるので好ましくない。なおフィルター基材の1g当たりに対してコーティング用ポリマーが1〜300mg(すなわちコーティング量は1〜300mg/gと表現する)の範囲内でコーティングされるように溶液濃度を調製することが好ましい。
【0039】
なおコーティングプロセスとしては、予め適切な濃度に調製したコーティング用ポリマー溶液に、フィルター基材を一定時間浸漬した後取り出し、ニップロール等で絞ったりエアーや窒素ガス等を吹き付けたりして余分なコーティングポリマー溶液を除去するが、そのプロセスは連続プロセスであってもバッチプロセスであっても構わない。なおフィルター基材のコーティング溶液への浸漬時間は、0.5〜60秒であり、好ましくは1〜30秒であり、さらに好ましくは2〜10秒以内である。浸漬時間が0.5秒未満であるとコーティングが不均一かつ不十分になるため好ましくない。また60秒を越えてそれ以上の時間をかけてもコーティング量に差はなくなるためプロセス上意味がなく、またフィルター基材によっては基材の膨潤等が起こるケースも現れてくるので好ましくない。
【0040】
本発明においては、血球浮遊液に接触し得るフィルターの表面部分が、血球に対して悪影響を与えない素材からなることが好ましい。ここで血球に対して悪影響を与えない素材とは、濾過時における血球成分と素材との接触によって、濾過後に回収された血球成分(主に赤血球や血小板、その他少量の白血球)が本来有する機能を著しく損なうようなダメージを与えることのない素材、血球そのものの形態を破壊してしまう(いわゆる溶血)ことのないような素材、もしくは血球成分を必要以上に活性化してしまうことのないような素材を意味する。このような素材としては、親水性官能基を有する高分子素材が適当であり、親水性官能基としては既述の親水性官能基群から選ばれる1種もしくは2種以上を挙げることができる。
【0041】
従って、そのような親水性官能基を、第1フィルターに用いるフィルター基材を構成する素材が本来有していればよいが、フィルター基材が親水性官能基を全く含有しない場合や含有していても非常に少量であって血球に対して悪影響を与える可能性のある場合には、少なくとも血球浮遊液に接触し得る表面部分に対し、既に親水性官能基および塩基性含窒素官能基のフィルター基材表面部分への導入に関して説明した幾つかの方法から適切なものを選択して、必要に応じて親水性官能基を導入することが好ましい。この場合も、既述と同様な理由でコーティング法は好ましい方法例である。
【0042】
次に本発明の第2フィルターを構成する貫通孔型多孔膜について説明する。
本発明の貫通孔型多孔膜とは、血球浮遊液中の白血球をサイズ効果に基づき高い確率にて選択的に捕捉し得るような貫通孔を、特定の孔サイズおよびサイズ均一性にて有する多孔膜であり、具体的には平均孔面積S(μm)が1≦S≦320、孔面積の標準偏差σ(μm)が0≦σ≦0.5S、および開孔率が10〜90%を満足する多孔膜である。逆にS、σ、開孔率が実験的に規定できないものは、本発明の貫通孔型多孔膜の範囲外であり、例えば第1フィルターに好ましく使用される不織布や、主に相分離法にて得られる3次元網目状多孔質材は、実施例に記載した方法ではS値、σ値、開孔率を規定することが困難であるので本発明に言う貫通孔型多孔膜とは明らかに異なる。
【0043】
本発明では、貫通孔型多孔膜が表裏に有する個々の孔の平面的孔形状は特に限定されないが、細径繊維を織って得られる小孔径メッシュ型フィルターにおいて通常形成される長方形型(または正方形型)や、また後述する高分子溶液の相分離過程において得られるような円形型は好ましい平面的孔形状である。但し、捕捉対象である白血球が球状細胞であること、また通過させたい(回収したい)赤血球や血小板への刺激等を最小限に抑えるためには、平面的孔形状は円形状であることが特に好ましい。
ここでいう平面的孔形状とは、貫通孔型多孔膜の膜平面に対する垂直方向からの光学顕微鏡写真や電子顕微鏡写真等で得られる平面像にて観測される孔形状を意味し(例えば図4〜6参照)、貫通孔型多孔膜内部の立体的貫通孔形状を意味するものではない。
【0044】
貫通孔型多孔膜の膜厚は、本発明の濾材容積削減効果を損なわない範囲であれば特に制限されるものではないが、好ましくは0.5〜100μm、より好ましくは1〜50μm、特に好ましくは3〜30μmである。貫通孔型多孔膜の膜厚が0.5μm未満であると膜強度が著しく低下するため濾過時における膜破れの原因となるし、また低強度に由来する膜破れは白血球除去フィルター装置の組み立て工程における作業性にも悪影響を与えるため好ましくない。また膜厚が100μmを越えると、貫通孔型多孔膜素材の血球親和性(化学的相互作用)も無視できなくなるうえ、濾材容量を低減する効果が損なわれてしまうため好ましくない。
該記貫通孔型多孔膜の膜厚とは、貫通孔型多孔膜を任意の試料台に固定し(例えば走査型電子顕微鏡用試料台に両面テープ等を用いて貫通孔型多孔膜の片面を接着固定する)、これを非圧縮状態にて電子顕微鏡等で膜の真横方向(膜平面方向)から膜断面を観測し、その膜厚を測定して得られる値である。
【0045】
一方、貫通孔型多孔膜内部の立体的貫通孔形状は、本発明に示す平均孔面積S、孔面積の標準偏差σ、および開孔率を実験的に規定できる形状であれば特に制限されないが、例えば図1のようなシリンダー状構造や、図2のような内部球状構造(内部にて膨らんだ構造)は好ましい形状である。このうち図2のように内部流路のサイズが膜表裏の孔サイズ(つまり入口もしくは出口の孔サイズ)よりも大きくなったような立体的貫通孔形状は、血球浮遊液の濾過速度の向上が期待されるためさらに好ましい例であり、また図2のような構造において、さらに内部球状孔が互いに接した構造、すなわち膜内部にて内部孔が膜平面方向にも貫通した構造は血球浮遊液の濾過速度の向上効果において特に好ましい。
【0046】
本発明の第2フィルターとして用いられる貫通孔型多孔膜は、平均孔面積S(μm)が1≦S≦320、孔面積の標準偏差σ(μm)が0≦σ≦0.5S、開孔率が10〜90%であることが必要である。
本発明の貫通孔型多孔膜は、血球浮遊液から白血球を高い確率で捕捉し、一方で平均的に小さい赤血球は高い確率ですり抜けてしまうようなサイズの孔群を少なくとも膜の片面が有することが必要であり、その孔サイズは平均孔面積S(μm)として規定され、1≦S≦320であり、3≦S≦250であることが好ましく、10≦S≦100がより好ましい。Sが1μm未満であると全血球成分が多孔薄膜において捕捉される傾向が高くフィルターが閉塞を起こしやすくなるため好ましくない。またSが320μmを超えると白血球も通過してしまう確率が高くなるため捕捉機能が発現されにくくなり好ましくない。
【0047】
ここで平均孔面積Sとは、貫通孔型多孔膜の立体的貫通孔形状が、膜断面写真より膜内部にてくびれていない(すなわち孔の流路が内部にて入口もしくは出口よりも狭くなっていない)ことを確認した上であれば、光学顕微鏡や走査型電子顕微鏡等で得られる膜の表面または裏面の写真から、各孔の面積を測定し、それらを平均化することで得ることができる。なお立体的貫通孔形状が膜内部にてくびれている場合、上記の方法ではSを測定することはできないが、内部にてくびれている場合であっても貫通孔が膜平面に対してほぼ垂直に形成されている場合であれば、透過法による光学顕微鏡や電子顕微鏡観察法を用いれば、写真上の光透過領域から貫通孔内部における最小孔サイズが測定可能であるし、垂直に孔が形成されていなくても立体的貫通孔の内部膨らみ形状が単純であり規則性も高ければ、貫通孔型多孔膜の様々な角度からの断面写真からSを算出することも可能である。なお、具体的なS値の算出方法は本発明においては実施例に記載の方法で行った。
【0048】
また本発明では、貫通孔型多孔膜における平均孔面積S、および後に規定する孔面積の標準偏差σと開孔率(%)の値としては、膜の表裏面両方の平均孔面積を測定して、その値が小さい方の膜面の平均孔面積をSとして採用し、さらにσと開孔率もその膜面の値を採用するものとする。
第2フィルターを構成する貫通孔型多孔膜の少なくとも片面に有する孔は、サイズ均一性が高いことが必要である。本発明では貫通孔型多孔膜のサイズ均一性は、それぞれの貫通孔型多孔膜が有する各孔の孔面積の標準偏差σ(μm)によって規定され、σは0≦σ≦0.5Sであり、さらに0≦σ≦0.4Sが好ましく、0≦σ≦0.3Sが特に好ましい。標準偏差σが0.5S(μm)を超えて孔サイズ分布が大きくなると、白血球を選択的に捕捉する確率が低下してしまうため好ましくない。
【0049】
本発明の第2フィルターを構成する貫通孔型多孔膜の開孔率は、10〜90%であることが必要であり、15〜90%が好ましく、20〜80%がより好ましい。開孔率が10%未満であるとフィルターの濾過速度が著しく低下するため好ましくないし、開孔率が90%を超えると、貫通孔型多孔膜の強度が低下するため膜破れ等の原因となり好ましくない。本発明における具体的なσ値および開孔率の算出方法は実施例に記載する。
貫通孔型多孔膜の1枚、あるいはその複数枚を組み合わせて構成される第2フィルターの形態は、血液が濾過できるのであれば平膜状や円筒形状等どのような形態でも構わないが、平膜状の形態が扱いやすく好ましい。また貫通孔型多孔膜を複数枚重ね合わせて第2フィルターを構成する場合、それぞれの貫通孔型多孔膜は素材、孔形状、S、σ、開孔率、膜厚等が互いに全く同じであっても構わないし、これらの幾つか、または全てが互いに異なっていても構わない。
【0050】
貫通孔型多孔膜を形成する素材としては、S、σ、開孔率の条件を満足するような貫通孔型多孔膜が成膜できるのであれば特に制限されない。具体的には有機高分子素材、無機高分子素材、有機無機複合素材、有機無機ハイブリッド素材、金属素材等が挙げられるが、中でも有機高分子素材は、軽量かつ切断、成膜性に極めて優れ、しかも軽量かつ高加工性であるので特に好ましい素材である。
有機高分子素材としては、例えば、ポリウレタン類、ポリカプロラクトン類、ポリ乳酸、ポリ(メタ)アクリロニトリル、ポリビニルアルコール類、ポリビニルアセタール類、ポリエステル類、ポリアミド類、ポリスチレン類、ポリスルホン類、セルロースおよびセルロース誘導体類、ポリフェニレンエーテル類、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニリデン等の単独素材、またはこれらのアロイやブレンド物、上記ポリマーを形成しうるモノマーの共重合体等が挙げられるが、本発明の貫通孔型多孔膜の素材は上記の例に限定されるものではない。
【0051】
なお血球浮遊液に接触し得る第2フィルターの表面部分、すなわち貫通孔型多孔膜の表面部分も、血球成分に対して悪影響を与えない素材、もしくは血球成分との親和性が低く血球成分の非選択的な粘着(血球粘着により貫通孔型多孔膜が閉塞する可能性がある)が起こりにくい素材からなることが好ましい。このような素材としては、第1フィルターの説明において示したように、親水性の高い高分子素材が適当であることが知られているので、既述の親水性官能基群から選ばれる1種もしくは2種以上を貫通孔型多孔膜の少なくとも表面部分に有していることが好ましい。
【0052】
そのような親水性官能基を、第2フィルターに用いる貫通孔型多孔膜を形成する素材が本来有していれば問題ないが、貫通孔型多孔膜が少なくともその表面部分に親水性官能基を全く含有していない場合や含有していても非常に少量であって血球に対して悪影響を与える可能性のある場合には、少なくとも血球浮遊液に接触し得る表面部分に対し、既に親水性官能基および塩基性含窒素官能基の第1フィルター基材表面部分への導入において説明した幾つかの方法から適切な方法を選択して親水性官能基を導入すればよい。この場合も、既述と同様な理由でコーティング法は好ましい例である。
【0053】
コーティング法にて貫通孔型多孔膜の少なくとも表面部分に導入されるコーティング用ポリマーは、第1フィルターの説明において示した親水性官能基を有するモノマー種から選ばれる1種もしくは2種以上を重合(共重合)して得られるものが好ましい。なお、第1フィルターの説明にて述べた塩基性含窒素官能基も、血球成分の非選択的吸着を起こさない範囲、または血球成分に悪影響を与えない範囲であれば貫通孔型多孔膜のコーティング用ポリマーに含まれていても構わず、その導入は既述の塩基性含窒素官能基を有するモノマー種の1種もしくは2種以上を用いることが好ましい。特に第1フィルターに用いるコーティング用ポリマーをそのまま貫通孔型多孔膜のコーティング用ポリマーとして用いる方法は、フィルター装置生産者側の生産性向上、およびコスト低下において有利であり、好ましいといえる。
【0054】
貫通孔型多孔膜用のコーティング溶液のポリマー濃度は、0.001〜10wt%が好ましく、0.005〜5wt%がより好ましく、0.01〜3wt%が特に好ましい。溶液濃度が0.001wt%未満であるとコーティングが不十分となりフィルター基材表面が露出しやすくなるため好ましくないが、逆に10wt%を越えると溶液粘度が高くなるため、貫通孔型多孔膜の孔がコーティングによって閉塞してしまう恐れがあるので好ましくない。
【0055】
貫通孔型多孔膜に用いるコーティング用ポリマーの分子量は、第1フィルターの場合と同じでよく、重量平均分子量(Mw)において1.0×10〜2.0×10であることが好ましい。さらに5.0×10〜1.5×10であることが好ましく、1.0×10〜1.0×10であることが特に好ましい。
Mwが1.0×10未満であると、分子鎖の絡み合い効果が小さくなるためフィルター表面部分への固定化が不十分となり使用時のコーティング用ポリマーの溶出が懸念されるため好ましくない。一方、Mwが2.0×10を越えると、溶媒への溶解性が低下して溶液の均一性が低下する恐れがあり、貫通孔型多孔膜表面への均一なコーティングができなくなる可能性が高くなるため好ましくない。
上記のコーティング用ポリマーを溶解する溶媒としては、貫通孔型多孔膜を溶解させるものであってはならず、しかもコーティング用ポリマーを十分に溶解するもの、さらにその溶媒を最終的にフィルター基材より除去できるものであれば特に限定されないが、既に第1フィルターのコーティング用ポリマーの溶剤として記載したものの1種もしくは2種以上から選択して使用することが好ましい。
【0056】
貫通孔型多孔膜へのコーティングプロセスは、予め適切な濃度に調製したコーティング用ポリマー溶液に、貫通孔型多孔膜を一定時間浸漬した後取り出し、エアーや窒素ガス等を緩やかに吹き付けるか、真空乾燥機を用いるなどして乾燥する。そのプロセスは連続プロセスであってもバッチプロセスであっても構わない。なお貫通孔型多孔膜のコーティング溶液への浸漬時間は、0.5〜60秒であり、好ましくは1〜30秒であり、さらに好ましくは2〜10秒以内である。浸漬時間が0.5秒未満であるとコーティングが不均一かつ不十分になるため好ましくない。また60秒を越えてそれ以上の時間をかけてもコーティング量に差はなくなるためプロセス上意味がなく、また貫通孔型多孔膜の素材によっては溶解による膜破れ等が発生するケースも現れてくるので好ましくない。
【0057】
本発明の貫通孔型多孔膜の製造方法は、特に制限されるものではないが、代表的な例として極細繊維を織って製造する方法(この場合、貫通孔型多孔膜はいわゆるメッシュであり、孔形状は長方形)、無孔薄膜からリソグラフィー法によって均一開孔する方法(孔形状は任意)、有機高分子を融液状態もしくは溶液状態にして、これを流延(キャスト)した後、熱誘起もしくは湿式相分離過程にて孔を形成させる方法(孔形状は円形状)、または高分子溶液からの溶媒揮発過程における高分子の自己組織化能を利用する方法(孔形状は円形状)等が挙げられるが、生産コストを考慮すれば極細繊維を織って製造する方法、湿式相分離過程にて孔を形成させる方法、高分子の自己組織化能を利用する方法が好ましく、中でも以下に記載するような高分子の自己組織化能を利用する方法は、サイズ均一性の極めて優れた多孔膜を成膜することが可能であるので、特に好ましい成膜方法である。
【0058】
高分子の自己組織化能を利用する成膜方法としては、例えばポリスチレン/ポリパラフェニレン系ブロック共重合体溶液から湿気雰囲気下にて溶媒蒸発させることでハニカム状多孔膜を形成する方法(Nature、369巻、387頁(1994年)を参照)、ポリスチレン/ポリフェニルキノリン系ブロック共重合体溶液からの溶媒蒸発過程における自己組織化を利用したハニカム状多孔膜の形成方法(Science、283巻、372頁(1999年)を参照)、さらに種々の汎用的な高分子材料にて調整した非水溶性溶媒系溶液に両親媒性高分子を加え、湿気雰囲気下にて溶媒蒸発させて同様のハニカム状多孔膜を形成させる方法(Mater.Sci.Eng.,C8−9巻,495頁(1999年)を参照)が知られている。上記のハニカム状多孔膜の製造方法は、白血球選択捕捉性に対して適当な範囲の孔サイズを球状形状にて形成することが可能であり、しかも極めて優れた孔サイズ均一性を実現しうるため本発明の貫通孔型多孔膜の製造方法として適当である。
【0059】
特に上記のMater.Sci.Eng.,C8−9巻,495ページ(1999年)に記載された成膜方法は、ビスヘキサデシルアンモニウムブロミドをはじめとするいくつかの両親媒性化合物や、それらの中でも好ましい例として挙げられる、下記構造式(2)の繰り返し単位を有するポリアクリルアミド系両親媒性ポリマーを溶液に加えれば、様々な汎用高分子素材からハニカム状多孔膜を成膜することができるので、特殊な高分子素材を必要としないため工業的観点からも非常に好ましい。
【化1】
Figure 2004236788
【0060】
第2フィルターの有効面積は、第2フィルターにおける孔数、白血球による目詰まり、及び血球浮遊液を処理量の点から4cm以上であることが好ましく、フィルター装置サイズ、及び医療現場における操作性の点から300cm以下であることが好ましい。さらに10〜200cmが好ましく、10〜150cmがより好ましく、10〜100cmが特に好ましい。
なお本発明に言う第2フィルターの有効面積とは、フィルター把持部(フィルターホルダーへの固定部)を除き実際に血球浮遊液が通過するフィルター部の平面的な面積を言うのであって、膜内部の内部孔表面まで含んだものを意味するものではない。
【0061】
本発明の白血球除去フィルター装置は、血球浮遊液の入口側にある第1フィルターと血球浮遊液の出口側にある第2フィルターを有するフィルター装置であって、基本的に第1フィルターを通過して流出した全血球浮遊液が引き続いて第2フィルターにて濾過されるように構成されていればどのような構成でも構わない。なお第2フィルターを血球浮遊液入口側に設置してしまうと、多量の白血球によって貫通孔型多孔膜が閉塞を起こしてしまう。
例えば、第1フィルターと第2フィルターをそれぞれ異なるフィルターホルダーに充填し、両ホルダーをチューブ等で連結して使用することも可能である(分割型)。この場合、本発明の範囲内で両者のフィルターをそれぞれ独立した任意の形態やサイズに設定することができるという特徴を有する。例えば、第2フィルターの有効面積を第1フィルターのそれの2倍に設定すれば、第2フィルターの目詰まりが起こり難くなるため、第1フィルターの濾材容量をより小さくすることが可能となる。
【0062】
一方、第1フィルターと第2フィルターを1つのフィルターホルダーに充填して使用することも可能である(一体型)。この一体型の場合は、フィルターホルダーが1つで良いため生産コスト的にも好ましいし、フィルターホルダーの形状を種々工夫することで上記の分割型と同様な効果を持たせることも可能である。
ただし実用的には、平膜型の第1フィルター(例えば不織布を複数枚重ね合わせたもの)と、それと同サイズの貫通孔型多孔膜を1枚もしくは2枚以上重ね合わせて構成した第2フィルターとの両者を重ね合わせ、簡単な形状のフィルターホルダー内に充填する一体型構成が医療現場の操作性においても生産コスト的にも好適である。
【0063】
図3は、一体型の白血球除去フィルター装置の基本構成を示す概念図である。この白血球除去フィルター装置は、基本的に第1フィルター(3)、第2フィルター(4)およびフィルターホルダー(5)より成る。なお、この概念図では第1フィルターと第2フィルターは図面上分かりやすくするため便宜的に距離をおいて配置されているが、実際は重ねて(接して)フィルターホルダー内に充填されていると考えてよい。また、図3のフィルターホルダー内には、図による表現のために、便宜上濾材の存在しない多くの空間が存在するが、このような空間は血球浮遊液ロスにつながるのであって実際は存在しない。
【0064】
貫通孔型多孔膜、もしくはそれよりなる第2フィルターは、その薄さゆえ力学的強度が低いので、上記分割型フィルターの場合、単独でフィルターホルダーに充填すると流体圧力によって膜破れを起こす可能性がある。従って本発明に言う血球浮遊液ロス量の低減化効果を損なわない範囲であれば、第2フィルターの両面(血球浮遊液入口面と出口面)や片面、また第2フィルターが複数の貫通孔型多孔膜で構成される場合には、各貫通孔型多孔膜同士の間(全ての貫通孔型多孔膜間でも一部の貫通孔型多孔膜間でも良い)に任意の支持膜を1枚もしくは2枚以上を配置しても構わず、例えば支持膜としては第1フィルターに好ましく使用可能であるコーティング不織布が挙げられる。
【0065】
また、図3に示したような一体型フィルターの場合でも、貫通孔型多孔膜1枚もしくはその複数枚よりなる第2フィルターを、第1フィルターの血球浮遊液出口側に単独で配置しておくと同じく流体圧力によって膜破れを起こす可能性がある。従って一体型の場合でも、本発明の効果を損なわない範囲であれば、第2フィルターの血球浮遊液出口側面や、第2フィルターが複数の貫通孔型多孔膜で構成される場合には、各貫通孔型多孔膜同士の間(全ての貫通孔型多孔膜間でも一部の貫通孔型多孔膜間でも良い)に任意の支持膜を1枚もしくは2枚以上を配置しても構わず、例えば支持膜としては第1フィルター好ましく使用可能であるコーティング不織布が挙げられる。
【0066】
本発明の白血球除去フィルター装置の白血球除去能は、処理血球浮遊液450cmあたり4.0Log以上が好ましく、4.5Log以上がより好ましく、5.0Log以上が特に好ましい。白血球除去能が4.0Log未満であると、輸血時における残存白血球による副作用が起こる確率が高くなるので好ましくない。一方、白血球除去フィルター装置の濾材容積削減効果を顕著なものにするためには、該白血球除去能は8.0Log以下であることが好ましい。
また白血球除去フィルター装置の濾材容積V(第1フィルターと第2フィルターを合わせた濾材容積)は、2〜18cmであり、2〜15cmが好ましく、3〜12cmがさらに好ましく、3〜10cmが特に好ましい。濾材容積が2cm未満だと第1フィルターの白血球除去能が不十分になるため好ましくないし、濾材容積が18cmを超えると濾材削減効果が小さくなり、その結果血球浮遊液ロス量の削減効果も小さくなるので好ましくない。
【0067】
濾材容積V(cm)とは、濾材が有する空隙容積を言う。その値は血球浮遊液もしくはそれに代わる液体(例えば生理食塩水など)の十分な量を実際に濾過し、濾過後の濾材に残存した液体容積(cm)を実測して得ることができる。但し本発明の白血球除去フィルター装置で、第2フィルターの使用量が第1フィルターと比較すれば実質的に無視できる量であれば、通常Vは下記式(3)にて計算した値を用いることができる
V=Wf[(1/d)−(1/ρ)] ・・・(3)
ここでd(g/cm)はフィルターホルダー内へ充填する第1フィルターの充填密度を、Wf(g)は充填する第1フィルターの重量を、またρ(g/cm)は第1フィルターを形成する素材の密度を意味する(例えば第1フィルターがポリエチレンテレフタレート製不織布であればρは約1.3である)。
【0068】
ただし、既述のように貫通孔型多孔膜を支持するため、第2フィルターに任意の支持膜を組み合わせて用いる場合には、支持膜に起因する濾材容量が全体において無視できないこともあり得る。この場合には、濾材容積の計算には支持膜の寄与も考慮しなくてはならず、支持膜として第1フィルターに用いたコーティング不織布を使用する場合には、式(3)のWf(g)に支持膜の重量も加えて計算すればよい。
【0069】
【実施例】
以下に本発明を、図3に示したような一体型フィルター構成にて実施例及び比較例に基づき詳細に説明する。ただし、本発明はこれらによってなんら限定されるものではない。
(白血球除去能の評価)
本実施例の第1フィルターおよび白血球除去フィルター装置(第1フィルター+第2フィルター)の白血球除去能の測定方法は以下のように行った。なお、全実施例および全比較例で第1フィルターに用いたコーティング不織布は、実施例1にて作成したコーティング不織布反から切り出して使用したので、第1フィルターの構成が実施例1と同じである実施例2および比較例3〜5の、第1フィルターの処理血球浮遊液450cmあたりの白血球除去能は、実施例1の第1フィルターの白血球除去能の値(2.8Log)をそのまま表1に記載した。
【0070】
白血球除去能の測定は、後述する方法で調製したヒト新鮮全血450cmを、フィルター装置へシリンジポンプを用いて一定の流速25cm/分で流し、濾過前および濾過後に回収された全ての全血から一定量の血液を採取し、白血球濃度を残存白血球測定用試薬システム、LeucoCOUNTTMkit、フローサイトメーターFACS Calibur、および解析ソフトCELL Quest(以上、BD Bioscience社製、米国)を用いて行った。
【0071】
白血球除去能の値は、上記の血液濾過実験を2回行った結果、次式(1)より算出したそれぞれの値の平均値とした。
白血球除去能(Log)=−Log(濾過後の血球浮遊液の白血球濃度/濾過前の血球浮遊液の白血球濃度)・・・(1)
なおヒト新鮮全血は、採血した血液100cmあたり、抗凝固剤として濾過済みCPD溶液(クエン酸三ナトリウム二水和物26.3g、クエン酸一水和物3.27g、グルコース23.2g、およびリン酸二水素ナトリウム二水和物2.51gを注射用蒸留水1リットルに溶解し、孔径0.2μmのフィルターで濾過した溶液)を14cm加えて混和し、20℃で3時間保存することにより調製したものを使用した。
【0072】
(貫通孔型多孔膜の平均膜厚の測定)
貫通孔型多孔膜を、走査型電子顕微鏡(SEM)用の円盤状試料台に両面テープ等を用いて緩やかに接着固定して白金蒸着した(蒸着膜厚は約12nmになるように設定)。これを非圧縮状態にて走査型電子顕微鏡(日立製作所製;S−3000N)で観察し、膜の真横方向(膜平面方向)から膜断面が写った写真を撮影し、この写真の膜断面から、写真に記載されたスケールをもとに膜厚を測定した。
【0073】
(貫通孔型多孔膜の平均孔面積S、孔面積の標準偏差σ及び開孔率の測定)
貫通孔型多孔膜の平均孔面積S、孔面積の標準偏差σ、及び開孔率の測定は、画像解析ソフトImage−Pro Plus(Media Cybernetics社製、Version 4.0 for Windows:登録商標)を用いて行った。
平均孔面積Sの具体的な測定手順は以下の通りである。
実施例1〜3および比較例2〜4で用いる貫通孔型多孔膜は、膜断面および幾つかの角度からの走査型電子顕微鏡観察から、図2のように内部流路サイズが膜表裏の孔サイズ(つまり入口もしくは出口の孔サイズ)よりも大きくなったような立体的貫通孔形状(内部球状孔)であり、しかも該内部球状孔が互いに接した構造、すなわち膜内部にて内部孔が膜平面方向にも貫通した構造であることが確認できた。一方、比較例5で用いたエッチング膜は図1のようなシリンダー状の貫通孔(膜面に対して垂直の孔もあれば斜めに貫通している孔も存在する)を有することが知られている。
【0074】
そこで貫通孔型多孔膜の表裏において、6.7cm×6.7cmの正方形型有効濾過面積領域の中心領域(2本の対角線の交点領域)、4つの四隅近傍領域、およびそれぞれの四隅近傍領域と中心領域との中間領域(合計9つの領域)にて、デジタル顕微鏡写真(KEYENCE社製デジタルHDマイクロスコープ;VH−7000)を膜面の垂直方向から撮影した(500〜3000倍)。こうして得られた表裏18枚の写真を画像解析ソフトに取り込み、各写真において200個程度の孔を含んだ画像範囲を無作為に選択し、画像のコントラストを調製して暗部領域(孔部分が主体となるように)を「面積測定モード」にて自動抽出した。次に抽出された各暗部領域の中から孔部分とは明らかに異なるものを手動削除した後、選択した18の画像範囲に含まれる孔の平均孔面積をそれぞれ計算し、得られた18の平均孔面積の値を更に表面と裏面にて平均化し、その値の小さいほうの膜面の値を「平均孔面積S」とした。
同様に孔面積の標準偏差σとは、上記の「平均孔面積S」を規定した膜面で得られた9つの画像範囲におけるそれぞれの孔面積の標準偏差を平均化した値である。また開孔率も、S値を規定した膜面にて得られた9つの画像範囲における開孔率を平均化した値である。
【0075】
(濾材容積(V)の算出)
実施例1〜3および比較例2〜5の一体型白血球除去フィルター装置では、使用した貫通孔型多孔膜の重量は第1フィルターに対して無視できる量であるので、濾材容積V(cm)は、得られた一体型白血球除去フィルター装置の濾材充填密度を第1フィルターの充填密度とみなして、下記式(3)にて計算した値を用いた。ただし、本実施例および比較例にて、貫通孔型多孔膜の支持膜としてコーティング不織布を1枚用いている場合は、これを濾材容量の計算において無視することはできないので、下記式(3)のWfに支持膜の重量も加えてVを計算した。
V=Wf[(1/d)−(1/ρ)] ・・・(3)
ここでd(g/cm)はフィルターホルダー内へ充填された全濾材の充填密度を、Wf(g)は充填した第1フィルターの重量を、またρ(g/cm)は第1フィルターを形成する主用素材の密度である(ここでは、第1フィルターはポリエチレンテレフタレート製不織布であったのでρ=1.3とした)。
【0076】
【実施例1】
1.第1フィルターの製造と評価
1−1.コーティング用ポリマーの合成
<2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)/2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルメタクリレート(DMAMA)系ランダムコポリマーの合成>
1リットル容量のセパラブルフラスコに126g(0.970mol)の2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA、三菱レーヨン社製)、4.72g(0.030mol)の2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルメタクリレート(DMAMA、和光純薬社製)、および460gのエタノールを入れ、窒素バブリングを行って脱酸素したのち容器内を窒素雰囲気下に保ったまま60℃に昇温した。これに同じく脱酸素した0.822g(5.01mmol)のアゾビスイソブチロニトリル(AIBN、和光純薬社製)を溶解したエタノール溶液(エタノール40.0g)を約1時間かけて滴下した。そのまま60℃で撹拌を継続し、AIBNの滴下開始から225分後にp−メトキシフェノール(和光純薬社製)を加えて重合反応を停止した。得られた反応液にn−ヘキサンを少しずつ加えてポリマーを析出させ、デカンテーションにてポリマーを取り出し、さらにエタノールへの溶解とn−ヘキサンによる再沈操作を数回繰り返してポリマーの精製を行った。
精製後のポリマー収率(対モノマー仕込み量)は72wt%であった。GPC測定(標準ポリスチレン換算)より、得られたポリマーの数平均分子量はMn=1.2×10、重量平均分子量はMw=4.1×10、分子量分布はMw/Mn=3.4であった。また重合終了後の反応液のガスクロマトグラフィー(GC)によるモノマー残存量の測定から算出されるポリマー中の共重合組成比はHEMA/DMAMA=97/3(モル比)であった。
【0077】
1−2.コーティング用ポリマー(HEMA/DMAMA(97/3、モル比)系コポリマー)の不織布へのコーティング
上記1−1.で得られたHEMA/DMAMA(97/3(モル比))系コポリマーの1.0wt%のエタノール溶液を調製し、これをコーティング溶液とした。用いる不織布として平均繊維径が1.2μm、平均気孔径が6.3μm、目付け量40g/m(不織布1mあたりの繊維重量)、厚み0.2mmのポリエチレンテレフタレート製不織布(旭化成(株)製;マイクロウエッブ(登録商標))を選択し、これをコーティング溶液に浸漬時間が5秒になるように連続的に浸漬したのち、ニップロールに挟んで通過させて余分なコーティング溶液を除去し、乾燥してコーティング不織布反を得た。
【0078】
1−3.第1フィルターの白血球除去能の評価
上記1−2.のプロセスにて製造したコーティング不織布反から、フィルターホルダーに充填した時のフィルター有効面積が45cmになるように正方形不織布サンプル(フィルターの有効サイズは6.7cm×6.7cm)を16枚切り抜き、その16枚を充填密度が0.23g/cmになるようにフィルターホルダーに充填した。このフィルターにヒト新鮮全血450cmを流す濾過実験を2回行った結果、第1フィルターの白血球除去能の平均値として2.8Logの値を得た。
【0079】
2.第2フィルターを構成する貫通孔型多孔膜の製造
2−1.ポリスルホン(PSU)貫通孔型多孔膜の成膜
クロロホルムを溶媒として、ポリスルホン(テイジンアコモエンジニアリングプラスチックス製;UDEL P−1700)とポリアクリルアミド系両親媒性ポリマー(既述の構造式(2)繰り返し単位とする)を溶質とする4.0g/リットルの溶液を調整した。ポリスルホン/ポリアクリルアミド系両親媒性ポリマーは重量比で9/1であった。
なお、構造式(2)のポリアクリルアミド系両親媒性ポリマーは、ユニットmとユニットnのモル比がm/n=4/1のランダムコポリマーを意味するのであって、ブロックコポリマーを意味するものではない。
【0080】
上記ポリアクリルアミド系両親媒性ポリマーは、ドデシルアクリロイルアミド(CH=CH−CONH−C1122−CH)(Aモル)と6−アクリルアミドヘキサン酸(CH=CH−CONH−C10−COOH)(Bモル)をA/B=4/1のモル比にてベンゼン中、AIBNを開始剤とするラジカル重合法にて得た(モノマー濃度6wt%、重合温度60℃)。得られた両親媒性ポリマーの重量平均分子量Mwは2.5×10であった(GPC法、標準ポリスチレン換算)。
なお、6−アクリルアミドヘキサン酸は、塩化アクリロイル(アルドリッチ社製)と6−アミノヘキサン酸(アルドリッチ社製)を水溶媒中、0℃での脱塩化水素反応にて合成したもの、またドデシルアクリロイルアミドは、塩化アクリロイルとドデシルアミン(アルドリッチ社製)をクロロホルム溶媒中、0℃での脱塩化水素反応にて合成したものを用いた。
【0081】
上記のPSUとポリアクリルアミド系両親媒性ポリマーを含む溶液を、直径150mmの円形ガラスシャーレに13.8cm入れ、室温25℃、相対湿度35%の恒温恒湿室中にて、このシャーレ中の溶液表面に相対湿度80%のエアーを4リットル/分で吹き付けてクロロホルム除去を行って貫通孔型多孔膜を成膜した。シャーレ上の貫通孔型多孔膜はエタノール中にて剥離し、リング状の支持枠に付着固定し自己支持性貫通孔型多孔膜として得た。得られたPSU貫通孔型多孔膜の代表的な光学顕微鏡写真を図4に示す。この成膜操作を4回行って貫通孔型多孔膜を得た(本実施例にて2枚、比較例2にて2枚使用する)。
【0082】
2−2.PSU貫通孔型多孔膜へのコーティング
1−1.で合成したHEMA/DMAMA(97/3、モル比)系コポリマーの0.1wt%溶液(溶媒はエタノール)を調整し、コーティング溶液とした。これに、2−1.にて成膜した4枚のPSU貫通孔型多孔膜を10秒間浸漬した後、取り出して充分乾燥し、コーティングPSU貫通孔型多孔膜を得た。
得られたそれぞれのコーティング貫通孔型多孔膜の特性は殆ど同じであり、第2フィルターに使用した2枚の貫通孔型多孔膜の各膜厚はいずれも約10μm、またそれぞれの開孔率、S、およびσの値は表1に記載した通りであった。なお各コーティングPSU貫通孔型多孔膜の平均孔面積はいずれも表裏面において若干異なり、表面(成膜時のエアー吹き付け側面)が小さかったため、S、σ、開孔率の値はいずれも表側面のものを採用した。
【0083】
3.一体型白血球除去フィルター装置の製造とその血液濾過性能の評価
1−2.のプロセスにて製造したコーティング不織布から、任意の位置にて有効フィルターサイズが6.7cm×6.7cmになるような正方形サンプル(フィルター有効面積は45cm)を17枚切り抜き、そのうち16枚を重ね合わせて第1フィルターとした。次に2−2.にて得られた2枚のコーティング貫通孔型多孔膜の中心付近にて、第1フィルターと同サイズの正方形サンプルを1枚ずつ切り抜き、2枚を重ね合わせて第2フィルターとした(第2フィルターの有効面積は45cm)。第1フィルターと第2フィルターを重ね、さらに上記コーティング不織布の正方形サンプルの残り1枚を支持膜として第2フィルターの血球浮遊液出口側に重ねた後、フィルターホルダー中に全濾材を充填密度が0.23g/cmになるように充填して一体型白血球除去フィルター装置を構成した。なお、第1フィルターが処理血球浮遊液入口側になるように、また2枚の貫通孔型多孔膜ともS値の小さい面が血球浮遊液入口側になるように配置された。
【0084】
充填密度0.23g/cmの値が第1フィルターと支持膜の充填密度に等しいとみなし、Wfを17枚の正方形不織布サンプルの重量として前記の式(3)にて計算した結果、濾材容積Vは12cmであった。
この一体型白血球除去フィルター装置に、ヒト新鮮全血450cmを流し、白血球除去能を測定した。血液濾過実験は2回行った結果、白血球除去能の平均値は4.5Logを超えていた。
以上の結果を表1にまとめて示す。後述の比較例1と比較すると、白血球除去能は同等の値を維持しているにも関らず、濾材容積が大幅に低下しており、血球浮遊液ロス量を大幅に削減できる白血球除去フィルター装置が得られたことが分かる。
【0085】
【実施例2】
1.第1フィルターの製造
実施例1にて作成したコーティング不織布を第1フィルターとして用いた。
2.第2フィルターの製造
2−1.ポリフェニレンエーテル(PPE)貫通孔型多孔膜の成膜
ポリスルホンの代わりにポリフェニレンエーテル(PPE;旭化成(株)製LL)を用いる以外は、実施例1の2−1.と全く同様にして2枚の自己支持性PPE貫通孔型多孔膜を得た。得られたPPE貫通孔型多孔膜の代表的な光学顕微鏡写真を図5に示す。
【0086】
2−2.PPE貫通孔型多孔膜へのコーティング
実施例1の2−2.と同様にコーティングして、2枚のコーティングPPE貫通孔型多孔膜を得た。得られたそれぞれのコーティング貫通孔型多孔膜の特性は殆ど同じであり、2枚の貫通孔型多孔膜の各膜厚はいずれも約11μm、またそれぞれの開孔率、S、およびσの値は表1に記載した通りであった。なお各コーティングPPE貫通孔型多孔膜の平均孔面積はいずれも表裏面において若干異なり、表面(成膜時のエアー吹き付け側面)が小さかったため、S、σ、開孔率の値はいずれも表側面のものを採用した。
【0087】
3.一体型白血球除去フィルター装置の製造とその血液濾過性能の評価
PSU貫通孔型多孔膜の代わりにPPE貫通孔型多孔膜を用いる以外は、実施例1の3と同様にして一体型白血球除去フィルター装置を製造した。
この場合も全濾材の充填密度は0.23g/cmであったので、濾材容積(第1フィルター+支持膜)は12cmである。
この一体型白血球除去フィルター装置に、ヒト新鮮全血450cmを流し、白血球除去能を測定した。血液濾過実験は2回行った結果、白血球除去能の平均値は4.5Logを超えていた。
以上の結果を表1に示す。後述の比較例1と比較すると、白血球除去能はほぼ同等の値を維持しているにも関らず、濾材容積が大幅に低下しており、血球浮遊液ロス量を大幅に削減できる白血球除去フィルター装置が得られたことが分かる。
【0088】
【実施例3】
1.第1フィルターの製造と評価
実施例1にて作成したコーティング不織布を用い、これより切り出してフィルターホルダーに充填する正方形不織布サンプルの枚数を12枚にするということ以外は(充填密度0.23g/cm)、実施例1と同様にして第1フィルターを評価した。ヒト新鮮全血450cmを流して白血球除去能を測定したところ、平均値は2.2Logであった。
2.第2フィルターの製造
2−1.ポリスチレン(PST)貫通孔型多孔膜の成膜
ポリスルホンの代わりにポリスチレン(A&Mスチレン製;685)を用いる以外は、実施例1の2−1と同様にして2枚のPST貫通孔型多孔膜を得た。得られたPST貫通孔型多孔膜の代表的な光学顕微鏡写真を図6に示す。
【0089】
2−2.PST貫通孔型多孔膜へのコーティング
実施例1の2−2.と同様にコーティングして、2枚のコーティングPST貫通孔型多孔膜を得た。得られたそれぞれのコーティング貫通孔型多孔膜の特性は殆ど同じであり、2枚の貫通孔型多孔膜の各膜厚はいずれも約10μm、またそれぞれの開孔率、S、およびσの値は表1に記載した通りであった。なお各コーティングPSU貫通孔型多孔膜の平均孔面積はいずれも表裏面において若干異なり、表面(成膜時のエアー吹き付け側面)が小さかったため、S、σ、開孔率の値はいずれも表側面のものを採用した。
【0090】
3.一体型白血球除去フィルター装置の製造とその血液濾過性能の評価
第1フィルターを構成する正方形不織布サンプルを16枚にする代わりに12枚に減らし(切り出す不織布サンプルは13枚)、第2フィルターをPSU貫通孔型多孔膜で構成する代わりに2−2.で得たコーティングPST貫通孔型多孔膜を用いる以外は、実施例1の3と同様にして一体型白血球除去フィルター装置を構成した。
この場合も、全濾材の充填密度は0.23g/cmであったので、濾材容積(第1フィルター+支持膜)は9cmであった。
この一体型白血球除去フィルター装置に、ヒト新鮮全血450cmを流し、白血球除去能を測定した。血液濾過実験は2回行った結果、白血球除去能の平均値は4.5Logを超えていた。
以上の結果を表1に示す。後述の比較例1と比較すると、白血球除去能はほぼ同等の値を維持しているにも関らず、さらに濾材容積が大幅に低下しており、血球浮遊液ロス量を大幅に削減できる白血球除去フィルター装置が得られたことが分かる。
【0091】
【比較例1】
実施例1の1−2.で得られたHEMA/DMAMA(97/3(モル比))系コポリマーをコーティングした不織布より、フィルター有効面積が45cmになるように正方形不織布サンプル(有効フィルターサイズは6.7cm×6.7cm)を32枚切り抜き、その32枚をフィルターホルダーに充填して白血球除去フィルター装置を構成した(充填密度0.23g/cm)。ここでは、貫通孔型多孔膜(すなわち第2フィルター)は使用しない。
本白血球除去フィルター装置の濾材容積は24cmであり、フィルター有効面積は45cmであった。
この貫通孔型多孔膜を用いないフィルター装置に、ヒト新鮮全血450cmを流す血液濾過実験を2回行ったところ、白血球除去能の平均値は4.2Logであった。
結果を表1に示す。白血球除去能は高い値であるが、濾材容積が実施例1と比較すると2倍である。
【0092】
【比較例2】
第1フィルターを構成する正方形不織布サンプルの枚数を3枚にすること、および第2フィルターを構成する貫通孔型多孔膜として実施例1の2−2.で得た4枚のコーティングPSU貫通孔型多孔膜のうち残り2枚を用いる以外は、実施例1と同様に一体型白血球除去フィルター装置を製造した。
使用した2枚のコーティング貫通孔型多孔膜の特性は殆ど同じであり、2枚の貫通孔型多孔膜の各膜厚はいずれも約10μm、またそれぞれの開孔率、S、およびσの値は表1に記載した通りであった。なお、各コーティングPSU貫通孔型多孔膜の平均孔面積はいずれも表裏面において若干異なり、表面(成膜時のエアー吹き付け側面)が小さかったため、S、σ、開孔率の値はいずれも表側面のものを採用した。
【0093】
この場合、第1フィルター(正方形不織布サンプル3枚)の白血球除去能は0.5Logであり、最終的に構成された一体型白血球除去フィルター装置の濾材容積(第1フィルター+支持膜)は2cmであった。
この一体型白血球除去フィルター装置にヒト新鮮全血を流したところ、濾過途中に目詰まりによるフィルターの閉塞が起こったため、450cmの全血を流すことはできす評価不能であった。この結果は第1フィルターの白血球除去能が不十分であるとフィルター装置の目詰まりが発生して好ましくないことを示している。
【0094】
【比較例3】
第2フィルターを構成するPSU貫通孔型多孔膜の成膜において、直径150mmの円形ガラスシャーレに入れるクロロホルム溶液の量を13.8cmの代わりに22cmにして大孔径の自己支持性PSU貫通孔型多孔膜を得る以外は、実施例1と同様にして一体型白血球除去フィルター装置を製造し、血液濾過実験を行った。
ここで得られた2枚のコーティング貫通孔型多孔膜の特性も殆ど同じであり、2枚の貫通孔型多孔膜の各膜厚はいずれも約25μm、またそれぞれの開孔率、S、およびσの値は表1に記載した通りであった。なお、各コーティングPSU貫通孔型多孔膜の平均孔面積はいずれも表裏面において若干異なり、表面(成膜時のエアー吹き付け側面)が小さかったため、S、σ、開孔率の値はいずれも表側面のものを採用した。
得られた一体型白血球除去フィルター装置の濾材容積は12cmであり、これを用いてヒト新鮮全血450cmを流す血液濾過実験を2回行ったところ、白血球除去能の平均値は3.1Logでしかなかった。
結果を表1に示す。貫通孔型多孔膜の平均孔面積Sが本発明の範囲外(すなわち平均孔径が大きい)であると、十分な白血球除去効果は得られない。
【0095】
【比較例4】
第2フィルターを構成するPSU貫通孔型多孔膜の成膜において、恒温恒湿室の相対湿度を35%とする代わりに65%にして自己支持性PSU貫通孔型多孔膜を得た以外は、実施例1と同様にして一体型白血球除去フィルター装置を製造し、血液濾過実験を行った。
なお、得られた2枚のコーティングPSU貫通孔型多孔膜の特性は殆ど同じであり、2枚の貫通孔型多孔膜の各膜厚はいずれも約10μm、またそれぞれの開孔率、S、およびσの値は表1に記載した通りであり、サイズおよび孔形状の規則性は低かった。なお、各コーティングPSU貫通孔型多孔膜の平均孔面積はいずれも表裏面において若干異なり、表面(成膜時のエアー吹き付け側面)が小さかったため、S、σ、開孔率の値はいずれも表側面のものを採用した。
得られた一体型白血球除去フィルター装置の濾材容積(第1フィルター+支持膜)は12cmであり、これを用いてヒト新鮮全血450cmを流す血液濾過実験を2回行ったところ、白血球除去能の平均値は3.0Logでしかなかった。
結果を表1に示す。貫通孔型多孔膜の孔サイズ均一性(孔面積の標準偏差σ)が本発明の範囲外であると、十分な白血球除去効果は得られない。
【0096】
【比較例5】
第2フィルターを構成する貫通孔型多孔膜として、PSU貫通孔型多孔膜の代わりにポリカーボネート(PC)製エッチング膜(ADVANTEC社製;K800A013A)を1枚用いた以外は、実施例1と同様にして一体型白血球除去フィルター装置を製造し、血液濾過実験を2回行った。
なお、上記PC製エッチング膜の膜断面孔形状は図1のようなシリンダー状であることが知られており、膜の平均膜厚は7μm、平均孔面積Sは50μm(平均孔直径8μm)、孔面積の標準偏差σは13μmであるが、開孔率は僅か4%であった。
得られた一体型白血球除去フィルター装置の濾材容積(第1フィルター+支持膜)は12cmであり、これを用いてヒト新鮮全血を流す血液濾過実験を行ったところ、途中でフィルターが閉塞してしまった。
結果を表1に示す。貫通孔型多孔膜の開孔率が本発明の範囲外(低開孔率)であると、フィルターが目詰まりを起こしてしまう。
【0097】
【表1】
Figure 2004236788
【0098】
【発明の効果】
本発明によれば、白血球を除去する際に、高い白血球除去能を維持したまま、濾材容量を大幅に低減し得ることができることから、濾材容積に起因する血球浮遊液(全血、赤血球製剤、血小板製剤、血漿製剤等)の濾過時におけるロス量を大幅に低減することが可能となるため、医療現場における血液製剤等にかかるコストパフォーマンスが大幅に向上する、フィルター構成材料の減量によるフィルター生産側のコスト削減ができる、そして薄型製品となるため医療現場における収納スペースの効率化やユーザーの作業性向上が可能になる、といった種々の効果が発現する。
【図面の簡単な説明】
【図1】シリンダー状貫通孔を有する貫通孔型多孔膜の断面概念図である。
【図2】内部にて膨らんだ球状貫通孔を有する貫通孔型多孔膜の断面概念図である。
【図3】一体型白血球除去フィルター装置の構成概念図である。
【図4】実施例1で得られたポリスルホン貫通孔型多孔膜のエアー吹き付け面の代表的な顕微鏡写真である。
【図5】実施例2で得られたポリフェニレンエーテル貫通孔型多孔膜のエアー吹き付け面の代表的な顕微鏡写真である。
【図6】実施例3で得られたポリスチレン貫通孔型多孔膜のエアー吹き付け面の代表的な顕微鏡写真である。
【符号の説明】
1.シリンダー状貫通孔
2.内部にて膨らんだ球状貫通孔
3.第1フィルター
4.第2フィルター
5.フィルターホルダー
6.血球浮遊液入口
7.血球浮遊液出口

Claims (5)

  1. 処理血球浮遊液から白血球を除去する白血球除去血球浮遊液の製造方法であって、該処理血球浮遊液を、白血球除去能が処理血球浮遊液450cmあたり1.0〜3.5Logである第1フィルターを通過させた後、第1フィルターより流出した全血球浮遊液を引き続いて、平均孔面積S(μm)が1≦S≦320、孔面積の標準偏差σ(μm)が0≦σ≦0.5S、開孔率が10〜90%である貫通孔型多孔膜の1枚もしくは2枚以上からなる第2フィルターを通過させることを特徴とする白血球除去血球浮遊液の製造方法。
  2. 処理血球浮遊液の入口側にある第1フィルターと血球浮遊液の出口側にある第2フィルターを有するフィルター装置であって、第1フィルターの白血球除去能が処理血球浮遊液450cmあたり1.0〜3.5Logであり、第2フィルターは貫通孔型多孔膜の1枚もしくは2枚以上よりなり、該貫通孔型多孔膜の平均孔面積S(μm)が1≦S≦320、孔面積の標準偏差σ(μm)が0≦σ≦0.5S、開孔率が10〜90%である貫通孔型多孔膜の1枚もしくは2枚以上からなることを特徴とする白血球除去フィルター装置。
  3. 第2フィルターの有効面積が4〜300cmであることを特徴とする請求項2に記載の白血球除去フィルター装置。
  4. 白血球除去フィルター装置の濾材容積が、2〜18cmであることを特徴とする請求項2または3に記載の白血球除去フィルター装置。
  5. 処理血球浮遊液450cmあたりの白血球除去能が4.0Log以上であることを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の白血球除去フィルター装置。
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