JP2004214156A - 荷電粒子線用多極子レンズ、荷電粒子線用多極子レンズの使用方法及び荷電粒子線装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】(a)に示すような回転対称レンズを省略し、その代わりに(c)に示すように4極子レンズ2の電極2a、2b、2c、2dに、(b)に示すような4極子レンズとしての働きを行わせるための電圧に加え、回転対称レンズとしての働きをさせるのに必要な電圧+V1を重畳させて印加する。
すなわち、電極2a、2cには、(V1+V2)を、電極2b、2dには(V1−V2)を印加する。これにより、(a)に示す回転対称レンズ1を省略し、4極子レンズ2に、回転対称レンズと4極子レンズの両方の働きをさせることができる。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子ビームやイオンビーム等の荷電粒子線を試料面に面照射させて観察、検査を行う荷電粒子線観察・検査装置、半導体デバイス製造工程におけるリソグラフィ工程において、レチクルに形成されたパターンをウエハ上に露光転写する荷電粒子線露光装置等の荷電粒子線装置に使用される荷電粒子線用多極子レンズ、このような荷電粒子線用多極子レンズの使用方法及びこの荷電粒子線用多極子レンズを使用した荷電粒子線装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
前述のような荷電粒子線装置に用いられているレンズには、電界型レンズ、磁界型レンズの2種類あるが、どちらの場合も極数2n(n=0,1,2,…)の多極子レンズが用途に合わせて用いられている。例えばn=0の場合には回転対称レンズ、n=1の場合には偏向器として利用される双極子レンズ、n=2の場合には4極子レンズに相当する。さらに、収差補正レンズとしてn=3の6極子レンズ、n=4の8極子レンズなどがよく用いられている。
【0003】
【非特許文献1】「電子・イオンビーム光学」(共立出版株式会社発行)
【発明が解決しようとする課題】
これら荷電粒子線装置においては、結像を行うためのレンズの他に、各種収差補正や、ビーム形成、偏向等様々な用途を行うための種々のレンズが用いられ、その結果、用いられるレンズの数が多くなるという問題点がある。特に収差補正用に複数の多極子レンズを組み合わせて用いる例もあり、またビームスキャンやビーム形状の変更等の機能を複数持たせると、その分レンズ個数が多くなり、構成も複雑になる。その結果、このようなレンズ系で形成される荷電粒子光学系を搭載する荷電粒子線装置そのものも大きくなってしまうという問題点がある。
【0004】
本発明はこのような問題点を解決するためになされたもので、荷電粒子線に用いられる多極子レンズで多機能を有するものを提供すること、及び、このような荷電粒子線装置用多極子レンズを使用して、搭載されるレンズ枚数を少なくした荷電粒子線装置を提供することを課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するための第1の手段は、荷電粒子線に対してレンズ作用を有する荷電粒子線用多極子レンズであって、2n(nは自然数)個の極数を有し、nがm1、m2、…、mk(m1、m2、…、mkはそれぞれ異なる自然数)の倍数のとき、各極子に、2n/m1極子、2n/m2極子、…、2n/mk極子、0極子レンズ(回転対称レンズ)のうち少なくとも2つの極子レンズを形成するパワーを重畳して与える電圧又は電流制御装置を有することを特徴とする荷電粒子線用多極子レンズ(請求項1)である。
【0006】
例えば4極子レンズの場合、4極子レンズを形成するためのパワーを各極子に与えると共に、隣り合う2極子ずつをペアにしたものを1つの極子とする2極子とみなし、これらに双極子レンズを形成するためのパワーを重畳して与えることにより、1つのレンズで2つのレンズの機能を兼ねさせることができる。さらに、全部の極子を1つの極子とみなしてこれに0極子レンズ(回転対称レンズ)を形成するためのパワーを重畳して与えれば、1つのレンズで3つのレンズの機能を兼ねさせることができる。このように、本手段によれば、1つのレンズにより複数個のレンズの機能を実現することができる。なお、本手段(請求項1)を初め、本明細書でレンズに与えるパワーとは、例えば静電型レンズの場合には電極に与える電圧、電磁型レンズの場合にはコイルに流す電流をいう。
【0007】
前記課題を解決するための第2の手段は、荷電粒子線に対してレンズ作用を有する荷電粒子線用多極子レンズであって、2n(nは自然数)個の極数を有し、nがm1、m2、…、mk(m1、m2、…、mkはそれぞれ異なる自然数)の倍数のとき、各極子に、2n/m1極子、2n/m2極子、…、2n/mk極子、0極子レンズ(回転対称レンズ)のうち少なくとも2つの極子レンズを形成するパワーより、それぞれ所定量多いパワーを重畳して与える電圧又は電流制御装置を有することを特徴とする荷電粒子線用多極子レンズ(請求項2)である。
【0008】
本手段の構成は前記第1の手段とほとんど同じであるが、一つのレンズに持たせようとする複数のレンズ機能のそれぞれを実現するために必要なパワーよりも、それぞれ所定量多いパワーを与えるところが異なっている。
【0009】
前記第1の手段においても、各極子の間隔が狭く、又は光軸中心から各極子までの距離が十分離れていれば、各極子間の隙間の影響は、光軸付近においては小さい。しかし、これが無視できなくなったときは、本手段により、余分のパワーを加え、各極子間の隙間の影響を補償するようにする。これにより、レンズの精度が向上する。
【0010】
また、発明者のシミュレーション結果によれば、このように複数種類のレンズを形成するために電圧や電流を重畳して与えた場合には、この重畳による影響のために、単独のレンズよりも、形成されるそれぞれのレンズパワーが弱められるということが分かっている。よって、本手段は、このレンズパワーが弱められることを補償する効果も有している。
【0011】
前記課題を解決するための第3の手段は、前記第1の手段又は第2の手段である荷電粒子線用多極子レンズを少なくとも1個有することを特徴とする荷電粒子線装置(請求項3)である。
【0012】
本手段においては、前記第1の手段又は第2の手段である荷電粒子線用多極子レンズを少なくとも1個有しているので、レンズの総個数を減らすことができ、その結果、装置の小型化を図ることができる。
【0013】
前記課題を解決するための第4の手段は、荷電粒子線に対してレンズ作用を有する荷電粒子線用多極子レンズであって、2n(nは自然数)個の極数を有し、nがm1、m2、…、mk(m1、m2、…、mkはそれぞれ異なる自然数)の倍数のものの使用方法であって、各極子に、2n/m1極子、2n/m2極子、…、2n/mk極子、0極子レンズ(回転対称レンズ)のうち少なくとも2つの極子レンズを形成するパワーを重畳して与えることを特徴とする荷電粒子線用多極子レンズの使用方法(請求項4)である。
前記課題を解決するための第5の手段は、荷電粒子線に対してレンズ作用を有する荷電粒子線用多極子レンズであって、2n(nは自然数)個の極数を有し、nがm1、m2、…、mk(m1、m2、…、mkはそれぞれ異なる自然数)の倍数のものの使用方法であって、各極子に、2n/m1極子、2n/m2極子、…、2n/mk極子、0極子レンズ(回転対称レンズ)のうち少なくとも2つの極子レンズを形成するパワーより、それぞれ所定量多いパワーを重畳して与えることを特徴とする荷電粒子線用多極子レンズの使用方法(請求項5)である。
【0014】
これら、第4の手段、第5の手段の作用効果は、それぞれ、前記第1の手段、第2の手段の説明で述べたものと同一である。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態の例を、図を用いて説明する。以下の説明では電界型レンズを例に用いて説明するが、磁界型レンズにおいても同様の考え方が成り立つことは説明を要しないであろう。
【0016】
図1は、本発明の実施の形態の第1の例を説明するための図である。図1において、(a)は0極子レンズ(回転対称レンズ)、(b)、(c)は4極子レンズを示し、平面図である。これらのレンズはいずれも中空円筒型、あるいは同一形状の扇形柱体を組み合わせたものである。
【0017】
(a)において1は回転対称レンズの電極であり、これに電圧を与えることにより回転対称レンズとしての働きをする。図においては、この電極1に+V1の電圧を与えた状態を示している。
【0018】
(b)において、4極子レンズ2は、4つの扇型柱体電極2a、2b、2c、2dから構成されており、相対する電極2aと2c、2bと2dに、それぞれ+V2、−V2の電圧を与えることによって4極子レンズとしての働きをする。
【0019】
従来においては、回転対称レンズと4極子レンズが必要な場合は、(a)に示すようなレンズと(b)に示すようなレンズを別々に作り、これらを荷電粒子線光学系に組み込んでいた。
【0020】
本実施の形態においては、このような場合、(a)に示すような回転対称レンズを省略し、その代わりに(c)に示すように、4極子レンズ2の電極2a、2b、2c、2dに、(b)に示すような4極子レンズとしての働きを行わせるための電圧に加え、回転対称レンズとしての働きをさせるのに必要な電圧+V1を重畳させて印加する。
【0021】
すなわち、電極2a、2cには、(V1+V2)を、電極2b、2dには(V1−V2)を印加する。これにより、(a)に示す回転対称レンズ1を省略し、4極子レンズ2に、回転対称レンズと4極子レンズの両方の働きをさせることができる。
【0022】
図2は、本発明の実施の形態の第2の例を説明するための図である。この図は、4極子レンズを示し、この4極子レンズは図1の(b)、(c)に示したものと同じであるので、同じ構成要素には同じ符号を付してその説明を省略する。
【0023】
図1(c)を見ると分かるように、4極子レンズの電極には、互いに隙間があるので、4つの電極にV1の電圧を重畳して加えても、図1に示すような回転対称電極にV1の電圧を加えたのと厳密には一致しない。しかし、4つの電極が光軸から離れており、隙間が狭ければこの不一致は問題にならない。
【0024】
図2に示す実施の形態は、このような不一致等に起因する誤差を解消するためのものである。すなわち、図2においては、図1(c)において加えた電圧V1の代わりに(V1+ΔV1)を、電圧V2の代わりに(V2+ΔV2)を印加するようにしている。すなわち、印加する電圧にそれぞれ所定のバイアス値を加えたものを重畳して印加している。これにより、電極の隙間等に起因する誤差、2つのレンズパワーを重畳することにより、同じ電圧でもレンズパワーが弱くなってしまうことに起因する誤差を補償することができる。補正電圧△V1,△V2は、シミュレーションや簡単な実験で求めることが可能である。
【0025】
ここでは、2種類の多極子レンズとして、回転対称レンズと4極子レンズを用いた例について説明したが、4極子レンズと8極子レンズ等、極子数が多い方のレンズの極子数が、他方の多極子レンズの極子数の倍数になっており、また光学性能上同じ位置に挿入可能なレンズであれば、組み合わせは自由である。また組み合わせる多極子レンズの数は、2種類だけでなく何種類でもよい。また、例えば、12極子レンズを用いて、4極子レンズのパワーと6極子レンズのパワーとを重畳することも可能である。すなわち、適用される多極子レンズの極子数が、組み合わせる複数の多極子レンズ極子数の最小公倍数であり、かつ、光学性能上同じ位置に挿入可能なレンズであればよい。これにより、光学系の長さを短くして小型化することができる。
【0026】
図3は、本発明の実施の形態の1例である写像型電子顕微鏡の概要を示す図である。電子銃11より発せられた照射用電子ビームSは、照明レンズ12、13によって整形された後、イー・クロス・ビー14に入射する。イー・クロス・ビー14によって偏向された照射用電子ビームSは、開口絞り15を通過した後、カソードレンズ16を通過して試料17に照射される。試料17に照射用電子ビームSが照射されると、試料17から2次電子、反射電子、後方散乱電子等が放出される。これらの電子のうち少なくとも1つが、写像用電子ビームKとなる。試料17から放出された写像用電子ビームKは、カソードレンズ16、開口絞り15を通過して、イー・クロス・ビー14に入射する。そして、ウィーン条件を満たすことにより、イー・クロス・ビー14を直進通過した写像用電子ビームKは、第1スティグメータ26、結像レンズ前群18、第2スティグメータ27の順に通過した後、視野絞り19上に中間結像を形成する。視野絞り19を通過した写像用電子ビームKは、更に結像レンズ後群20を通過して、電子ビーム検出器21上に拡大投影像を形成する。
【0027】
ここで、第1スティグメータ26、第2スティグメータ27は、例えば、静電型8極子である。そして、第1スティグメータ26は、イー・クロス・ビー14の近傍に配置されており、非点隔差を効率良く補正する。他方、第2スティグメータ27は、結像レンズ前群18と視野絞り19の中間に配置されており、倍率隔差を効率良く補正する。また、照明レンズ12、13、カソードレンズ16、結像レンズ前群18、結像レンズ後群20は、アインツェルレンズ等の静電レンズである。電子ビーム検出器21に写像用電子ビームKが入射すると、写像用電子ビームKは光に変換される。
【0028】
電子ビーム検出器21から放出された光、すなわち試料7の光学像は、リレーレンズ22を透過して、CCD等の撮像素子23に入射される。撮像素子23に入射した光は、光電信号に変換されて制御部24に伝達される。なお、本実施例においては、電子銃11、照明レンズ12、13、イー・クロス・ビー14、カソードレンズ16が照射手段となっており、カソードレンズ16、イー・クロス・ビー14、結像レンズ前群18、結像レンズ後群20が写像手段となっている。
【0029】
この実施の形態においては、照明レンズ12、13、カソードレンズ16、結像レンズ前群18、結像レンズ後群20において、前述のような回転対称レンズと4極子レンズを一つのレンズにより実現しているので、鏡筒全体の大きさを小さくすることができる。なお、この実施の形態においては、荷電粒子線装置として、写像型電子顕微鏡を取り上げているが、本発明の荷電粒子線装置としては、例えば荷電粒子線露光装置等も本発明の荷電粒子線装置に含まれる。
【0030】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、荷電粒子線に用いられる多極子レンズで多機能を有するものを提供すること、及び、このような荷電粒子線装置用多極子レンズを使用して、搭載されるレンズ枚数を少なくした荷電粒子線装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態の第1の例を説明するための図である。
【図2】本発明の実施の形態の第2の例を説明するための図である。
【図3】本発明の実施の形態の1例である写像型電子顕微鏡の光学系の概要図である。
【符号の説明】
1…回転対称レンズの電極、2…4極子レンズ、2a〜2d…扇型柱体電極(4極子レンズの電極)、11…電子銃、12…照明レンズ、13…照明レンズ、14…イー・クロス・ビー、15…開口絞り、16…カソードレンズ、17…試料、18…結像レンズ前群、19…視野絞り、20…結像レンズ後群、21…電子ビーム検出器、22…リレーレンズ、23…撮像素子、24…制御部、26…第1スティグメータ、27…第2スティグメータ
Claims (5)
- 荷電粒子線に対してレンズ作用を有する荷電粒子線用多極子レンズであって、2n(nは自然数)個の極数を有し、nがm1、m2、…、mk(m1、m2、…、mkはそれぞれ異なる自然数)の倍数のとき、各極子に、2n/m1極子、2n/m2極子、…、2n/mk極子、0極子レンズ(回転対称レンズ)のうち少なくとも2つの極子レンズを形成するパワーを重畳して与える電圧又は電流制御装置を有することを特徴とする荷電粒子線用多極子レンズ。
- 荷電粒子線に対してレンズ作用を有する荷電粒子線用多極子レンズであって、2n(nは自然数)個の極数を有し、nがm1、m2、…、mk(m1、m2、…、mkはそれぞれ異なる自然数)の倍数のとき、各極子に、2n/m1極子、2n/m2極子、…、2n/mk極子、0極子レンズ(回転対称レンズ)のうち少なくとも2つの極子レンズを形成するパワーより、それぞれ所定量多いパワーを重畳して与える電圧又は電流制御装置を有することを特徴とする荷電粒子線用多極子レンズ。
- 請求項1又は請求項2に記載の荷電粒子線用多極子レンズを少なくとも1個有することを特徴とする荷電粒子線装置。
- 荷電粒子線に対してレンズ作用を有する荷電粒子線用多極子レンズであって、2n(nは自然数)個の極数を有し、nがm1、m2、…、mk(m1、m2、…、mkはそれぞれ異なる自然数)の倍数のものの使用方法であって、各極子に、2n/m1極子、2n/m2極子、…、2n/mk極子、0極子レンズ(回転対称レンズ)のうち少なくとも2つの極子レンズを形成するパワーを重畳して与えることを特徴とする荷電粒子線用多極子レンズの使用方法。
- 荷電粒子線に対してレンズ作用を有する荷電粒子線用多極子レンズであって、2n(nは自然数)個の極数を有し、nがm1、m2、…、mk(m1、m2、…、mkはそれぞれ異なる自然数)の倍数のものの使用方法であって、各極子に、2n/m1極子、2n/m2極子、…、2n/mk極子、0極子レンズ(回転対称レンズ)のうち少なくとも2つの極子レンズを形成するパワーより、それぞれ所定量多いパワーを重畳して与えることを特徴とする荷電粒子線用多極子レンズの使用方法。
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JP2006244875A (ja) * | 2005-03-03 | 2006-09-14 | Ebara Corp | 写像投影型の電子線装置及び該装置を用いた欠陥検査システム |
JP2007184215A (ja) * | 2005-12-06 | 2007-07-19 | Topcon Corp | 荷電ビーム照射装置、静電偏向器、静電偏向器の製造方法 |
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2003
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