JP2004156159A - 極細ポリエステル仮撚加工糸の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】繊度が小さくかつフィラメント数が多いにもかかわらず、毛羽、未解撚スポット斑、染斑が少なく、しかも、高速解舒しても風綿が発生しにくく製織および製編工程での工程通過性に優れた極細ポリエステル仮撚加工糸を安定して製造する方法を提供する。
【解決手段】延伸同時仮撚加工法により、単糸繊度が0.5dtex以下、フィラメント数が100〜400本であるポリエステル仮撚加工糸を製造するに際し、延伸同時仮撚加工の前と後で空気交絡処理を施し、後の空気交絡処理前後の交絡数をそれぞれ30〜60個/m、70〜100個/mとする。
【選択図】 なし
【解決手段】延伸同時仮撚加工法により、単糸繊度が0.5dtex以下、フィラメント数が100〜400本であるポリエステル仮撚加工糸を製造するに際し、延伸同時仮撚加工の前と後で空気交絡処理を施し、後の空気交絡処理前後の交絡数をそれぞれ30〜60個/m、70〜100個/mとする。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、製織工程および製編工程において優れた工程通過性を有する極細ポリエステル仮撚加工糸を安定して製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
単糸繊度が1dtex以下の極細ポリエステル仮撚加工糸は、布帛にした時、柔らかな風合が得られ、保温性、吸水、吸湿性などの性能も向上するため、衣料用途で幅広く使われている。
【0003】
さらに、上記のような極細ポリエステル仮撚加工糸を製造する方法としては、例えば、特許文献1や特許文献2などが提案されている。しかしながら、こうした従来提案されている製造方法では、単糸数が増え、繊度が細くなるに従い、得られた仮撚加工糸には毛羽や未解撚スポット斑が多発し、染斑などの品質斑も多いといった問題がある。
【0004】
これに対して、本発明者等は、特願2002−181138号により、紡糸口金下加熱を特定の条件として得られた複屈折率が0.03〜0.06の未延伸糸を用い、これに仮撚加工糸で測定した交絡度が50〜90個/mとなるように空気交絡を施した後、延伸同時仮撚加工し、油剤を付与して巻き取り、その際、仮撚加工条件、油剤付着量、巻取張力、巻取速度などを特定の範囲に限定することによって、従来に比べ安定した仮撚加工を行うことができ、毛羽や未解撚スポット斑、染斑など品質斑の少ない極細ポリエステル仮撚加工糸が製造できることを提案した。
【0005】
一方、かかる極細ポリエステル繊維の分野でも、生産性を向上させるため製織および製編の高速化が進み、これに対応できる仮撚加工糸の市場要求が高くなっている。
【0006】
しかしながら、上記のような毛羽や未解撚スポット斑が少なく品質が良好な仮撚加工糸においても、これを1200m/分以上の高速で解舒した際には、風綿が多く発生し、織機の停台回数が急増するといった問題があり、さらなる改善が望まれている。
【0007】
【特許文献1】
特開平4−194036号公報
【0008】
【特許文献2】
特開2002−383415号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来技術を背景になされたもので、その目的は、繊度が小さくかつフィラメント数が多いにもかかわらず、毛羽、未解撚スポット斑、染斑が少なく、しかも、高速解舒しても風綿が発生しにくく製織および製編工程での工程通過性に優れた極細ポリエステル仮撚加工糸を安定して製造する方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記課題を解決するため検討を重ねた結果、延伸同時仮撚加工の前後で空気交絡処理を施し、その際、両方で適正な交絡をバランスよく付与した場合、毛羽、未解撚スポット斑、染斑が少ないだけでなく、高速解舒性にも優れた仮撚加工糸が得られることを見出した。
【0011】
かくして、本発明によれば、延伸同時仮撚加工法により、単糸繊度が0.5dtex以下、フィラメント数が100〜400本であるポリエステル仮撚加工糸を製造するに際し、延伸同時仮撚加工の前と後で空気交絡処理を施し、後の空気交絡処理前後の交絡数をそれぞれ30〜60個/m、70〜100個/mとすることを特徴とする極細ポリエステル仮撚加工糸の製造方法が提案される。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下本発明の実施形態について詳細に説明する。
本発明は、単糸繊度が0.5dtex以下、フィラメント数が100〜400本であるポリエステル仮撚加工糸を製造する方法である。
【0013】
本発明でいうポリエステルとは、主たる繰り返し単位がエチレンテレフタレートからなるポリエステルであり、本発明の目的を阻害しない範囲でテレフタル酸成分および/またはエチレングリコール成分以外の成分を少量、具体的にはテレフタル酸成分に対して好ましくは15モル%以下、より好ましくは5モル%以下共重合したものであってもよい。これらのポリエステルには、公知の添加剤、例えば、顔料、染料、艶消し剤、防汚剤、蛍光増白剤、難燃剤、安定剤、紫外線吸収剤、滑剤等が含まれていてもよい。
【0014】
本発明に用いるポリエステルの固有粘度(35℃のオルソ−クロロフェノール溶液を溶媒として測定)は0.45〜0.70の範囲が好ましく、より好ましくは0.55〜0.67の範囲である。
【0015】
本発明で用いる未延伸ポリエステルマルチフィラメント糸は、複屈折率が0.03〜0.06であることが望ましい。例えば、かかる未延伸ポリエステルマルチフィラメント糸は、口金面から溶融吐出されたポリエステル重合体のポリマー流を2500〜4000m/分で引き取ることにより得られる。
【0016】
本発明においては、例えば図1に示すような工程にて、延伸同時仮撚加工の前と後で空気交絡処理を施し、後の空気交絡処理前後の交絡数をそれぞれ30〜60個/m、70〜100個/mとすることが必要である。
【0017】
後の空気交絡処理前の交絡数が30個/m未満となるような交絡を前の空気交絡処理で付与した場合、延伸同時仮撚加工で均一な撚りが付与されず、また均一な延伸を施すことも困難となり、最終的に得られる仮撚加工糸に毛虫状の大きな毛羽や染斑が発生する。また、延伸同時仮撚加工時の断糸も多くなる。上記交絡度が60個/mを越す場合は、延伸同時仮撚加工した糸に、再度、空気交絡を施すことが困難となる。つまり、一度、空気交絡を施した糸に、延伸同時仮撚加工した後、再度空気交絡を施すと、該空気交絡処理で、最初の空気交絡で交絡が形成されていなかった部分、いわゆる非交絡部分に交絡が形成されるが、その際、上記交絡度が60個/mを越す場合は、その糸に、再度どれだけ強く空気交絡処理を施したとしても、巻き取られた仮撚加工糸に十分な交絡を付与することが困難となる。
【0018】
また、後の空気交絡処理後の交絡数が70個/m未満の場合は、製織および製編工程の仮撚加工糸の高速解舒で、風綿の発生が多くなり、織機および編機の機台停止回数が多くなるばかりか、織物および編物の製品品位が著しく損なわれる。一方、上記交絡度が100個/mを超える場合は、仮撚加工糸に毛羽が多くなる。また、仮撚加工糸の破断強度、破断伸度が低下する。
【0019】
本発明においては、上記のように延伸同時仮撚加工の前と後で空気交絡処理を施し、しかも、その際、適度なバランスでそれぞれの交絡を付与することによって、1200m/分以上という高速解舒でも風綿の発生を抑制でき、製織または製編工程での工程通過性が著しく向上し、しかも、毛羽や未解撚スポット、染色斑が極めて少ない仮撚加工糸を得ることができる。我々の研究によれば、上記のような優れた高速解舒性を有する仮撚加工糸は、延伸同時仮撚加工の前または後のどちらか一方で空気交絡処理を行う製造方法では得られなかった。
【0020】
なお、上記の延伸同時仮撚加工前後のそれぞれの空気交絡処理は、例えば図1に示すようにインターレースノズル(図1の4及び9)を用いて行うことができる。
【0021】
本発明において、延伸同時仮撚加工は、延伸仮撚ヒーター内の滞留時間を0.05〜0.30sec、好ましくは0.06〜0.15sec、該ヒーター出口での糸(走行糸条)の温度を該ポリエステル重合体のガラス転移温度(Tg)より90〜140℃、好ましくは110〜130℃高い温度となるようにして行うことが望ましい。また、その際、延伸倍率は1.4〜1.7倍が好ましく、より好ましくは1.5〜1.6倍である。
【0022】
本発明に用いる延伸仮撚ヒーターとしては、接触式、非接触式のいずれであっても良いが、ヒーター長が1.0〜2.5mのものが好ましい。また、延伸同時仮撚加工に用いる仮撚具は、硬度75〜95度、厚さ5〜12mmのウレタンディスクを3軸に配列した摩擦仮撚型ディスクユニットを好ましく用いることができる。該ディスクの回転軸に対し、糸の走行角度が30〜45度となるようにして延伸仮撚を施すのが好ましい。また、仮撚数(回/m)を(25000〜35000)/(仮撚加工糸の繊度(dtex))1/2となるように仮撚条件を設定すると、毛羽の発生をより低減することができ、好ましい。
【0023】
さらに、本発明においては、上記の延伸同時仮撚加工をした糸に前述の空気交絡を施した後、該糸の重量を基準として好ましくは1.3〜3.0重量%、より好ましくは1.5〜2.3重量%の油剤を付与し、好ましくは速度500〜1200m/分、より好ましくは600〜1000m/分で巻き取る(図1の15)ことによって本発明の仮撚加工糸が得ることができる。また、この際、巻取張力(測定位置:図1の13)は0.05〜0.30cN/dtexが好ましく、より好ましくは0.12〜0.23cN/dtexである。なお、油剤は図1の11に示すような、ローラー式あるいは計量ノズル式油剤アプリケーターで付与すれば良い。
【0024】
仮撚加工糸の物性としては、破断強度が3.0cN/dtex以上、破断伸度が15〜45%であることが、高速解舒性や、製織性および製編性の点から好ましい。また、仮撚加工糸の全捲縮率が2〜5%、熱水収縮率が2.5〜4.5%であることが、本発明にかかる仮撚加工糸の性能を十分に発揮し嵩高性に優れた織編物が得られる点で好ましい。かかる物性の仮撚加工糸は、本発明の製造方法により容易に得ることができる。
【0025】
【実施例】
以下、実施例により、本発明を更に具体的に説明する。なお、実施例における各項目は次の方法で測定した。
(1)固有粘度
オルソクロロフェノールを溶媒として使用し35℃で測定した。
(2)ポリエステル重合体のガラス転移温度(Tg)
規定量のポリエステル重合体をアルミサンプルパンに封入し、DSC測定装置にて、窒素気流下に室温〜10℃/分の昇温速度で280℃まで昇温し、2分間保持した後、直ちに取りだして、窒素雰囲気中で急冷し、ポリマーがアモルファス状態で固まったサンプルパンを作成した。それを再度、上記の条件で昇温し、昇温曲線からガラス転移温度を測定した。
(3)複屈折率
オリンパスBH−2偏光顕微鏡を使用し、コンペンセーター法により単糸のレターデーションと糸径を測定し、複屈折率を計算した。
(4)走行フィラメント糸の温度
帝人エンジニアリング(株)製の非接触走行物温度計(H−7508)を用いて延伸仮撚ヒーター出口の走行フィラメント糸の温度を測定した。
(5)交絡度
ロッシェルド式インターレース測定器を使用して1m当りの交絡数を測定した。この測定を10回実施し、その平均値で表した。
(6)仮撚加工断糸回数(回数/Ton)
実施例の条件で、延伸仮撚加工機を1週間連続運転し(10kg巻未延伸ポリエステル糸パッケージを延伸仮撚加工し、5kg巻仮撚加工糸パッケージを2個作成する)、人為的あるいは機械的要因に起因する断糸を除き、その間に発生した断糸回数を記録し、(断糸)回数/Tonで仮撚加工断糸とした。
(7)破断強度、破断伸度
(株)島津製作所製テンシロン引張試験機を用いて試料長20cm、伸長伸度20%/分の条件で引張試験を行い荷重・伸張曲線をから求めた。
(8)全捲縮率TC(%)
極細仮撚加工糸に0.044cN/dtex(50mg/デニール)の張力を掛けてカセ枠に巻き取り、約3300dtexのカセを作る。カセ作成後、カセの一端に0.00177cN/dtex+0.177cN/dtex(2mg/デニール+200mg/デニール)の荷重を負荷し、1分間経過後の長さL0(cm)を測定する。次いで、0.177cN/dtex(200mg/デニール)の荷重を除去した状態で、100℃の沸水中にて20分間処理する。沸水処理後0.00177cN/dtex(2mg/デニール)の荷重を除去し、24時間自由な状態で自然乾燥する。自然乾燥した試料に、再び0.00177cN/dtex+0.177cN/dtex(2mg/デニール+200mg/デニール)の荷重を負荷し、1分間経過後の長さL1(cm)を測定する。次いで、0.177cN/dtex(200mg/デニール)の荷重を除去し、1分間経過後の長さL2を測定し、次の算式で捲縮率を算出した。この測定を10回実施し、その平均値で表した。
捲縮率TC(%)=[(L1−L2)/L0]×100
(9)熱水収縮率FS(%)
極細仮撚加工糸に0.044cN/dtex(50mg/デニール)の張力を掛けてカセ枠に巻き取り、約3300dtexのカセを作る。カセ作成後、カセの一端に0.00177cN/dtex+0.177cN/dtex(2mg/デニール+200mg/デニール)の荷重を負荷し、1分間経過後の長さL0(cm)を測定する。次いで、0.177cN/dtex(200mg/デニール)の荷重を除去した状態で、100℃の沸水中にて20分間処理する。沸水処理後0.00177cN/dtex(2mg/デニール)の荷重を除去し、24時間自由な状態で自然乾燥する。自然乾燥した試料に、再び0.00177cN/dtex+0.177cN/dtex(2mg/デニール+200mg/デニール)の荷重を負荷し、1分間経過後の長さL1(cm)を測定し、次の算式で熱水収縮率を算出した。この測定を10回実施し、その平均値で表した。
熱水収縮率FS(%)=[(L0−L1)/L0]×100
(10)毛羽
東レエンジニアリング(株)製DT−104型毛羽カウンター装置を用いて、仮撚加工糸を500m/分の速度で20分間連続測定して発生毛羽数をカウントし、104mあたりの個数で表記した。
(11)未解撚スポット
延伸仮撚加工機付属の張力モニターで解撚張力変動を検出し、限界値以上を未解撚スポット発生とし、106m当たりの未解撚スポット個数で表記した。
(12)織機停台回数
(株)トヨタ製LW550織機を用いて、5kg巻き仮撚加工糸パッケージを解舒速度1,224m/分の速度で解舒しつつ、緯糸へ使用することで、1週間連続して製織した。この時、糸導ガイドおよびその周辺に堆積したフィブリル化した繊維屑(風綿)により織機が停台した回数を回数/kgで織機停台回数とした。
(13)風綿発生
上記織機停台回数試験において、糸導ガイドおよびその周辺に堆積したフィブリル化した繊維屑(風綿)の状態を目視で3段階に格付けした。
レベル1:ほとんど風綿が認められない。
レベル2:散乱した風綿がやや認められる。
レベル3:糸導ガイド上およびその周辺が風綿で白くなっている。
(14)均染性
仮撚加工糸試料を12ゲージ丸編機で30cm長の筒編みとし、染料(テラシールブルーGFL)を用い、100℃、40min染色し、均染性を検査員が目視にて下記基準で格付けした。
レベル1:均一に染色されており、染斑がほとんど認められない。
レベル2:縞状の染斑が少し認められる。
レベル3:縞状の斑が一面に認められる。
【0026】
[実施例1〜3、比較例1〜5]
ガラス転移温度(Tg)73℃、固有粘度0.64で酸化チタンを0.3重量%含有したポリエチレンテレフタレートペレットを140℃で5時間乾燥した後、スクリュー式押出機を装備した溶融紡糸設備にて315℃に溶融し、紡糸パックで濾過し、直径0.15mmの円形吐出孔が288個穿設された紡糸口金から、吐出量39g/分で吐出した。次いで、吐出されたポリマー流を、紡糸口金面から30mmの間の雰囲気が230℃に保たれたホットゾーンを通過せしめ、クロスフロー式紡糸筒からの25℃の冷却風で冷却し、紡糸口金面から420mmの位置(集束長)に設置されたメタリングノズル式給油ガイドで油剤を付与しつつ、フィラメント束として集束し、表面速度3000m/分で回転している1対(2個)のゴデットローラーで引き取り、ワインダーにて巻き取り、複屈折率0.045の未延伸ポリエステルマルチフィラメント(130dtex/288filament)を得た。
【0027】
この未延伸ポリエステルマルチフィラメントに、インターレースノズルを用いて空気交絡処理を施し、帝人製機(株)製HTS−15V延伸仮撚加工機(1.04mの非接触スリットヒーター装備)により、硬度90度、厚み9mm、直径58mmのウレタンディスクを3軸に配列した摩擦仮撚ディスクユニットで、該ディスクの回転軸に対し、糸条の走行角度が40度となるように糸を走行させ、撚数×仮撚加工糸繊度1/2(dtex)=30000、走行フィラメント糸条温度206℃(Tgより133℃高い)、ヒーター内滞留時間0.089secおよび延伸倍率1.58の条件で延伸同時仮撚加工を施し、後の空気交絡処理を行わないで巻き取り、この巻き取った糸の交絡数を後の空気交絡処理前の交絡数とした。この交絡数がそれぞれ表1に示した値となるように、延伸同時仮撚加工前のインターレースノズルで吹き付ける圧空量を調整した。さらに、延伸同時仮撚加工後の糸を、図1に示すように連続して、インターレースノズルにより空気交絡処理し、仮撚加工糸仕上げ油剤(主成分:鉱物油90%)を該糸重量基準で1.8重量%付与し、0.18cN/dtexの巻取張力をかけ、700m/分の速度で巻き取って、極細ポリエステル仮撚加工糸(83.5dtex/288filament、単糸繊度0.29dtex)パッケージを得た。この際、巻き取られた仮撚加工糸の交絡度を、後の空気交絡処理後の交絡数とし、該交絡数がそれぞれ表1に示す値となるようにインターレースノズルで吹き付ける圧空量を調整した。また、このときの仮撚加工断糸回数は各々表1の如くであった。さらに、得られた極細ポリエステル仮撚加工糸の品質を表1にあわせて示す。
【0028】
【表1】
【0029】
【発明の効果】
本発明によれば、単糸繊度が0.5dtex以下、フィラメント数が100〜400本といった、繊度が小さくかつフィラメント数が多いにもかかわらず、毛羽、未解撚スポット斑、染斑が少ない極細ポリエステル仮撚加工糸を得ることができる。しかも、本発明の方法で得られた仮撚加工糸は、1200m/分以上の高速で解舒しても風綿が発生しにくく、優れた製織および製編工程通過性を有している。このため、本発明は、極細ポリエステル仮撚加工糸という高付加価値商品を効率よく、しかも安価に生産する方法を提案するものであり、その工業的価値が極めて高いものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明で用いる延伸同時仮撚加工機の一実施態様を示した模式図。
【符号の説明】
1 :未延伸糸パッケージ
2 :糸ガイド
3、3’:フィードローラー
4 :インターレースノズル
5 :延伸仮撚ヒーター
6 :冷却プレート
7 :摩擦仮撚型ディスクユニット
8 :第1デリベリーローラー
9 :インターレースノズル
10 :第2デリベリーローラー
11 :油剤アプリケーター
12 :糸導ガイド
13 :巻取張力測定位置
14 :巻取ローラー
15 :延伸仮撚加工糸パッケージ
【発明の属する技術分野】
本発明は、製織工程および製編工程において優れた工程通過性を有する極細ポリエステル仮撚加工糸を安定して製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
単糸繊度が1dtex以下の極細ポリエステル仮撚加工糸は、布帛にした時、柔らかな風合が得られ、保温性、吸水、吸湿性などの性能も向上するため、衣料用途で幅広く使われている。
【0003】
さらに、上記のような極細ポリエステル仮撚加工糸を製造する方法としては、例えば、特許文献1や特許文献2などが提案されている。しかしながら、こうした従来提案されている製造方法では、単糸数が増え、繊度が細くなるに従い、得られた仮撚加工糸には毛羽や未解撚スポット斑が多発し、染斑などの品質斑も多いといった問題がある。
【0004】
これに対して、本発明者等は、特願2002−181138号により、紡糸口金下加熱を特定の条件として得られた複屈折率が0.03〜0.06の未延伸糸を用い、これに仮撚加工糸で測定した交絡度が50〜90個/mとなるように空気交絡を施した後、延伸同時仮撚加工し、油剤を付与して巻き取り、その際、仮撚加工条件、油剤付着量、巻取張力、巻取速度などを特定の範囲に限定することによって、従来に比べ安定した仮撚加工を行うことができ、毛羽や未解撚スポット斑、染斑など品質斑の少ない極細ポリエステル仮撚加工糸が製造できることを提案した。
【0005】
一方、かかる極細ポリエステル繊維の分野でも、生産性を向上させるため製織および製編の高速化が進み、これに対応できる仮撚加工糸の市場要求が高くなっている。
【0006】
しかしながら、上記のような毛羽や未解撚スポット斑が少なく品質が良好な仮撚加工糸においても、これを1200m/分以上の高速で解舒した際には、風綿が多く発生し、織機の停台回数が急増するといった問題があり、さらなる改善が望まれている。
【0007】
【特許文献1】
特開平4−194036号公報
【0008】
【特許文献2】
特開2002−383415号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来技術を背景になされたもので、その目的は、繊度が小さくかつフィラメント数が多いにもかかわらず、毛羽、未解撚スポット斑、染斑が少なく、しかも、高速解舒しても風綿が発生しにくく製織および製編工程での工程通過性に優れた極細ポリエステル仮撚加工糸を安定して製造する方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記課題を解決するため検討を重ねた結果、延伸同時仮撚加工の前後で空気交絡処理を施し、その際、両方で適正な交絡をバランスよく付与した場合、毛羽、未解撚スポット斑、染斑が少ないだけでなく、高速解舒性にも優れた仮撚加工糸が得られることを見出した。
【0011】
かくして、本発明によれば、延伸同時仮撚加工法により、単糸繊度が0.5dtex以下、フィラメント数が100〜400本であるポリエステル仮撚加工糸を製造するに際し、延伸同時仮撚加工の前と後で空気交絡処理を施し、後の空気交絡処理前後の交絡数をそれぞれ30〜60個/m、70〜100個/mとすることを特徴とする極細ポリエステル仮撚加工糸の製造方法が提案される。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下本発明の実施形態について詳細に説明する。
本発明は、単糸繊度が0.5dtex以下、フィラメント数が100〜400本であるポリエステル仮撚加工糸を製造する方法である。
【0013】
本発明でいうポリエステルとは、主たる繰り返し単位がエチレンテレフタレートからなるポリエステルであり、本発明の目的を阻害しない範囲でテレフタル酸成分および/またはエチレングリコール成分以外の成分を少量、具体的にはテレフタル酸成分に対して好ましくは15モル%以下、より好ましくは5モル%以下共重合したものであってもよい。これらのポリエステルには、公知の添加剤、例えば、顔料、染料、艶消し剤、防汚剤、蛍光増白剤、難燃剤、安定剤、紫外線吸収剤、滑剤等が含まれていてもよい。
【0014】
本発明に用いるポリエステルの固有粘度(35℃のオルソ−クロロフェノール溶液を溶媒として測定)は0.45〜0.70の範囲が好ましく、より好ましくは0.55〜0.67の範囲である。
【0015】
本発明で用いる未延伸ポリエステルマルチフィラメント糸は、複屈折率が0.03〜0.06であることが望ましい。例えば、かかる未延伸ポリエステルマルチフィラメント糸は、口金面から溶融吐出されたポリエステル重合体のポリマー流を2500〜4000m/分で引き取ることにより得られる。
【0016】
本発明においては、例えば図1に示すような工程にて、延伸同時仮撚加工の前と後で空気交絡処理を施し、後の空気交絡処理前後の交絡数をそれぞれ30〜60個/m、70〜100個/mとすることが必要である。
【0017】
後の空気交絡処理前の交絡数が30個/m未満となるような交絡を前の空気交絡処理で付与した場合、延伸同時仮撚加工で均一な撚りが付与されず、また均一な延伸を施すことも困難となり、最終的に得られる仮撚加工糸に毛虫状の大きな毛羽や染斑が発生する。また、延伸同時仮撚加工時の断糸も多くなる。上記交絡度が60個/mを越す場合は、延伸同時仮撚加工した糸に、再度、空気交絡を施すことが困難となる。つまり、一度、空気交絡を施した糸に、延伸同時仮撚加工した後、再度空気交絡を施すと、該空気交絡処理で、最初の空気交絡で交絡が形成されていなかった部分、いわゆる非交絡部分に交絡が形成されるが、その際、上記交絡度が60個/mを越す場合は、その糸に、再度どれだけ強く空気交絡処理を施したとしても、巻き取られた仮撚加工糸に十分な交絡を付与することが困難となる。
【0018】
また、後の空気交絡処理後の交絡数が70個/m未満の場合は、製織および製編工程の仮撚加工糸の高速解舒で、風綿の発生が多くなり、織機および編機の機台停止回数が多くなるばかりか、織物および編物の製品品位が著しく損なわれる。一方、上記交絡度が100個/mを超える場合は、仮撚加工糸に毛羽が多くなる。また、仮撚加工糸の破断強度、破断伸度が低下する。
【0019】
本発明においては、上記のように延伸同時仮撚加工の前と後で空気交絡処理を施し、しかも、その際、適度なバランスでそれぞれの交絡を付与することによって、1200m/分以上という高速解舒でも風綿の発生を抑制でき、製織または製編工程での工程通過性が著しく向上し、しかも、毛羽や未解撚スポット、染色斑が極めて少ない仮撚加工糸を得ることができる。我々の研究によれば、上記のような優れた高速解舒性を有する仮撚加工糸は、延伸同時仮撚加工の前または後のどちらか一方で空気交絡処理を行う製造方法では得られなかった。
【0020】
なお、上記の延伸同時仮撚加工前後のそれぞれの空気交絡処理は、例えば図1に示すようにインターレースノズル(図1の4及び9)を用いて行うことができる。
【0021】
本発明において、延伸同時仮撚加工は、延伸仮撚ヒーター内の滞留時間を0.05〜0.30sec、好ましくは0.06〜0.15sec、該ヒーター出口での糸(走行糸条)の温度を該ポリエステル重合体のガラス転移温度(Tg)より90〜140℃、好ましくは110〜130℃高い温度となるようにして行うことが望ましい。また、その際、延伸倍率は1.4〜1.7倍が好ましく、より好ましくは1.5〜1.6倍である。
【0022】
本発明に用いる延伸仮撚ヒーターとしては、接触式、非接触式のいずれであっても良いが、ヒーター長が1.0〜2.5mのものが好ましい。また、延伸同時仮撚加工に用いる仮撚具は、硬度75〜95度、厚さ5〜12mmのウレタンディスクを3軸に配列した摩擦仮撚型ディスクユニットを好ましく用いることができる。該ディスクの回転軸に対し、糸の走行角度が30〜45度となるようにして延伸仮撚を施すのが好ましい。また、仮撚数(回/m)を(25000〜35000)/(仮撚加工糸の繊度(dtex))1/2となるように仮撚条件を設定すると、毛羽の発生をより低減することができ、好ましい。
【0023】
さらに、本発明においては、上記の延伸同時仮撚加工をした糸に前述の空気交絡を施した後、該糸の重量を基準として好ましくは1.3〜3.0重量%、より好ましくは1.5〜2.3重量%の油剤を付与し、好ましくは速度500〜1200m/分、より好ましくは600〜1000m/分で巻き取る(図1の15)ことによって本発明の仮撚加工糸が得ることができる。また、この際、巻取張力(測定位置:図1の13)は0.05〜0.30cN/dtexが好ましく、より好ましくは0.12〜0.23cN/dtexである。なお、油剤は図1の11に示すような、ローラー式あるいは計量ノズル式油剤アプリケーターで付与すれば良い。
【0024】
仮撚加工糸の物性としては、破断強度が3.0cN/dtex以上、破断伸度が15〜45%であることが、高速解舒性や、製織性および製編性の点から好ましい。また、仮撚加工糸の全捲縮率が2〜5%、熱水収縮率が2.5〜4.5%であることが、本発明にかかる仮撚加工糸の性能を十分に発揮し嵩高性に優れた織編物が得られる点で好ましい。かかる物性の仮撚加工糸は、本発明の製造方法により容易に得ることができる。
【0025】
【実施例】
以下、実施例により、本発明を更に具体的に説明する。なお、実施例における各項目は次の方法で測定した。
(1)固有粘度
オルソクロロフェノールを溶媒として使用し35℃で測定した。
(2)ポリエステル重合体のガラス転移温度(Tg)
規定量のポリエステル重合体をアルミサンプルパンに封入し、DSC測定装置にて、窒素気流下に室温〜10℃/分の昇温速度で280℃まで昇温し、2分間保持した後、直ちに取りだして、窒素雰囲気中で急冷し、ポリマーがアモルファス状態で固まったサンプルパンを作成した。それを再度、上記の条件で昇温し、昇温曲線からガラス転移温度を測定した。
(3)複屈折率
オリンパスBH−2偏光顕微鏡を使用し、コンペンセーター法により単糸のレターデーションと糸径を測定し、複屈折率を計算した。
(4)走行フィラメント糸の温度
帝人エンジニアリング(株)製の非接触走行物温度計(H−7508)を用いて延伸仮撚ヒーター出口の走行フィラメント糸の温度を測定した。
(5)交絡度
ロッシェルド式インターレース測定器を使用して1m当りの交絡数を測定した。この測定を10回実施し、その平均値で表した。
(6)仮撚加工断糸回数(回数/Ton)
実施例の条件で、延伸仮撚加工機を1週間連続運転し(10kg巻未延伸ポリエステル糸パッケージを延伸仮撚加工し、5kg巻仮撚加工糸パッケージを2個作成する)、人為的あるいは機械的要因に起因する断糸を除き、その間に発生した断糸回数を記録し、(断糸)回数/Tonで仮撚加工断糸とした。
(7)破断強度、破断伸度
(株)島津製作所製テンシロン引張試験機を用いて試料長20cm、伸長伸度20%/分の条件で引張試験を行い荷重・伸張曲線をから求めた。
(8)全捲縮率TC(%)
極細仮撚加工糸に0.044cN/dtex(50mg/デニール)の張力を掛けてカセ枠に巻き取り、約3300dtexのカセを作る。カセ作成後、カセの一端に0.00177cN/dtex+0.177cN/dtex(2mg/デニール+200mg/デニール)の荷重を負荷し、1分間経過後の長さL0(cm)を測定する。次いで、0.177cN/dtex(200mg/デニール)の荷重を除去した状態で、100℃の沸水中にて20分間処理する。沸水処理後0.00177cN/dtex(2mg/デニール)の荷重を除去し、24時間自由な状態で自然乾燥する。自然乾燥した試料に、再び0.00177cN/dtex+0.177cN/dtex(2mg/デニール+200mg/デニール)の荷重を負荷し、1分間経過後の長さL1(cm)を測定する。次いで、0.177cN/dtex(200mg/デニール)の荷重を除去し、1分間経過後の長さL2を測定し、次の算式で捲縮率を算出した。この測定を10回実施し、その平均値で表した。
捲縮率TC(%)=[(L1−L2)/L0]×100
(9)熱水収縮率FS(%)
極細仮撚加工糸に0.044cN/dtex(50mg/デニール)の張力を掛けてカセ枠に巻き取り、約3300dtexのカセを作る。カセ作成後、カセの一端に0.00177cN/dtex+0.177cN/dtex(2mg/デニール+200mg/デニール)の荷重を負荷し、1分間経過後の長さL0(cm)を測定する。次いで、0.177cN/dtex(200mg/デニール)の荷重を除去した状態で、100℃の沸水中にて20分間処理する。沸水処理後0.00177cN/dtex(2mg/デニール)の荷重を除去し、24時間自由な状態で自然乾燥する。自然乾燥した試料に、再び0.00177cN/dtex+0.177cN/dtex(2mg/デニール+200mg/デニール)の荷重を負荷し、1分間経過後の長さL1(cm)を測定し、次の算式で熱水収縮率を算出した。この測定を10回実施し、その平均値で表した。
熱水収縮率FS(%)=[(L0−L1)/L0]×100
(10)毛羽
東レエンジニアリング(株)製DT−104型毛羽カウンター装置を用いて、仮撚加工糸を500m/分の速度で20分間連続測定して発生毛羽数をカウントし、104mあたりの個数で表記した。
(11)未解撚スポット
延伸仮撚加工機付属の張力モニターで解撚張力変動を検出し、限界値以上を未解撚スポット発生とし、106m当たりの未解撚スポット個数で表記した。
(12)織機停台回数
(株)トヨタ製LW550織機を用いて、5kg巻き仮撚加工糸パッケージを解舒速度1,224m/分の速度で解舒しつつ、緯糸へ使用することで、1週間連続して製織した。この時、糸導ガイドおよびその周辺に堆積したフィブリル化した繊維屑(風綿)により織機が停台した回数を回数/kgで織機停台回数とした。
(13)風綿発生
上記織機停台回数試験において、糸導ガイドおよびその周辺に堆積したフィブリル化した繊維屑(風綿)の状態を目視で3段階に格付けした。
レベル1:ほとんど風綿が認められない。
レベル2:散乱した風綿がやや認められる。
レベル3:糸導ガイド上およびその周辺が風綿で白くなっている。
(14)均染性
仮撚加工糸試料を12ゲージ丸編機で30cm長の筒編みとし、染料(テラシールブルーGFL)を用い、100℃、40min染色し、均染性を検査員が目視にて下記基準で格付けした。
レベル1:均一に染色されており、染斑がほとんど認められない。
レベル2:縞状の染斑が少し認められる。
レベル3:縞状の斑が一面に認められる。
【0026】
[実施例1〜3、比較例1〜5]
ガラス転移温度(Tg)73℃、固有粘度0.64で酸化チタンを0.3重量%含有したポリエチレンテレフタレートペレットを140℃で5時間乾燥した後、スクリュー式押出機を装備した溶融紡糸設備にて315℃に溶融し、紡糸パックで濾過し、直径0.15mmの円形吐出孔が288個穿設された紡糸口金から、吐出量39g/分で吐出した。次いで、吐出されたポリマー流を、紡糸口金面から30mmの間の雰囲気が230℃に保たれたホットゾーンを通過せしめ、クロスフロー式紡糸筒からの25℃の冷却風で冷却し、紡糸口金面から420mmの位置(集束長)に設置されたメタリングノズル式給油ガイドで油剤を付与しつつ、フィラメント束として集束し、表面速度3000m/分で回転している1対(2個)のゴデットローラーで引き取り、ワインダーにて巻き取り、複屈折率0.045の未延伸ポリエステルマルチフィラメント(130dtex/288filament)を得た。
【0027】
この未延伸ポリエステルマルチフィラメントに、インターレースノズルを用いて空気交絡処理を施し、帝人製機(株)製HTS−15V延伸仮撚加工機(1.04mの非接触スリットヒーター装備)により、硬度90度、厚み9mm、直径58mmのウレタンディスクを3軸に配列した摩擦仮撚ディスクユニットで、該ディスクの回転軸に対し、糸条の走行角度が40度となるように糸を走行させ、撚数×仮撚加工糸繊度1/2(dtex)=30000、走行フィラメント糸条温度206℃(Tgより133℃高い)、ヒーター内滞留時間0.089secおよび延伸倍率1.58の条件で延伸同時仮撚加工を施し、後の空気交絡処理を行わないで巻き取り、この巻き取った糸の交絡数を後の空気交絡処理前の交絡数とした。この交絡数がそれぞれ表1に示した値となるように、延伸同時仮撚加工前のインターレースノズルで吹き付ける圧空量を調整した。さらに、延伸同時仮撚加工後の糸を、図1に示すように連続して、インターレースノズルにより空気交絡処理し、仮撚加工糸仕上げ油剤(主成分:鉱物油90%)を該糸重量基準で1.8重量%付与し、0.18cN/dtexの巻取張力をかけ、700m/分の速度で巻き取って、極細ポリエステル仮撚加工糸(83.5dtex/288filament、単糸繊度0.29dtex)パッケージを得た。この際、巻き取られた仮撚加工糸の交絡度を、後の空気交絡処理後の交絡数とし、該交絡数がそれぞれ表1に示す値となるようにインターレースノズルで吹き付ける圧空量を調整した。また、このときの仮撚加工断糸回数は各々表1の如くであった。さらに、得られた極細ポリエステル仮撚加工糸の品質を表1にあわせて示す。
【0028】
【表1】
【0029】
【発明の効果】
本発明によれば、単糸繊度が0.5dtex以下、フィラメント数が100〜400本といった、繊度が小さくかつフィラメント数が多いにもかかわらず、毛羽、未解撚スポット斑、染斑が少ない極細ポリエステル仮撚加工糸を得ることができる。しかも、本発明の方法で得られた仮撚加工糸は、1200m/分以上の高速で解舒しても風綿が発生しにくく、優れた製織および製編工程通過性を有している。このため、本発明は、極細ポリエステル仮撚加工糸という高付加価値商品を効率よく、しかも安価に生産する方法を提案するものであり、その工業的価値が極めて高いものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明で用いる延伸同時仮撚加工機の一実施態様を示した模式図。
【符号の説明】
1 :未延伸糸パッケージ
2 :糸ガイド
3、3’:フィードローラー
4 :インターレースノズル
5 :延伸仮撚ヒーター
6 :冷却プレート
7 :摩擦仮撚型ディスクユニット
8 :第1デリベリーローラー
9 :インターレースノズル
10 :第2デリベリーローラー
11 :油剤アプリケーター
12 :糸導ガイド
13 :巻取張力測定位置
14 :巻取ローラー
15 :延伸仮撚加工糸パッケージ
Claims (3)
- 延伸同時仮撚加工法により、単糸繊度が0.5dtex以下、フィラメント数が100〜400本であるポリエステル仮撚加工糸を製造するに際し、延伸同時仮撚加工の前と後で空気交絡処理を施し、後の空気交絡処理前後の交絡数をそれぞれ30〜60個/m、70〜100個/mとすることを特徴とする極細ポリエステル仮撚加工糸の製造方法。
- 延伸同時仮撚加工を、延伸仮撚ヒーターを用いて行い、最初の空気交絡処理を行った糸の該ヒーター内の滞留時間を0.05〜0.30sec、該ヒーター出口での糸の温度を該ポリエステル重合体のガラス転移温度(Tg)より90〜140℃高い温度となるようにし、延伸倍率1.4〜1.7倍で行う請求項1記載の極細ポリエステル仮撚加工糸の製造方法。
- 巻き取られた仮撚加工糸の破断強度が3.0cN/dtex以上、破断伸度が15〜45%である請求項1または2記載の極細ポリエステル仮撚加工糸の製造方法。
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