JP2004150533A - 電動ブレーキ装置用ボールねじ - Google Patents
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Abstract
【解決手段】電動ブレーキ装置用ボールねじは、外周面に螺旋状のねじ溝2を有するねじ軸3と、該ねじ溝2に対応する螺旋状のねじ溝4を内周面に有してねじ軸3に嵌合されたナット6と、両ねじ溝2,4間に転動可能に装填された多数のボール5とを備え、電動モータ19により駆動されてその駆動力によってブレーキパッド13をブレーキディスク12に押し付けることにより制動力を発生させる。ナット6の後端部とねじ軸3との間に潤滑剤含有ポリマ部材からなるラビリンスシール30をナット6の後端部内周面に嵌め込んで取り付ける。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば自動車等の電動ブレーキ装置に用いられる電動ブレーキ装置用ボールねじに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、ボールねじは、外周面に螺旋状のねじ溝を有して軸方向に延びるねじ軸に、内周面に前記ねじ軸のねじ溝に対応する螺旋状のねじ溝を有するナットが嵌合されており、ナットのねじ溝とねじ軸のねじ溝とは互いに対向して両者の間に螺旋状の負荷軌道を形成している。該負荷軌道には転動体としての多数のボールが転動可能に装填されており、ねじ軸(又はナット)の回転により、ナット(又はねじ軸)がボールの転動を介して軸方向に移動するようになっている。
【0003】
ところで、近年、自動車等のブレーキ装置の駆動機構として、油圧シリンダに代えて、電動モータによって駆動されるボールねじを用いる場合がある(例えば、特許文献1参照)。
このボールねじは、電動モータにより例えばねじ軸を回転駆動してナットを軸方向に移動させ、このナットの駆動力によってブレーキパッドをブレーキディスク又はブレーキシューに押し付けることにより制動力を発生させるようにしたものである。
【0004】
又、ナットのねじ溝とボールとの間、及びねじ軸のねじ溝とボールとの間には、通常グリース等の潤滑剤が塗布されており、両ねじ溝とボールの摩耗や摩擦による加熱等を防止するようにしているが、グリース等は、異物等の影響により、比較的短期間で潤滑剤としての機能が低下するため、従来においては、ナットの端部にリップ型のシール部材を取り付けることで、ナット内に異物等が浸入しないようにすると共に、ナット内のグリース等が外部に漏れないようにして良好な潤滑性能を確保しようとしている。
【0005】
【特許文献1】
特表2002−530597号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記特許文献1に記載の如き電動ブレーキ装置用ボールねじにおいては、ねじ溝が螺旋状で閉回路とならないため、ねじ溝をリップ型のシール部材では完全にシールすることが困難で、ナット内への異物等の浸入防止や、ナット内のグリース等の外部への漏れ防止を完全に期待することができず、良好な潤滑性能を長期わたって確保することが難しいという問題があった。
従って、本発明の目的は上記課題を解消することに係り、必要なシール性能を維持しつつ良好な潤滑性能を長期にわたって確保することができる電動ブレーキ装置用ボールねじを提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、外周面に螺旋状のねじ溝を有するねじ軸と、該ねじ軸のねじ溝に対応する螺旋状のねじ溝を内周面に有して前記ねじ軸に嵌合されたナットと、前記両ねじ溝間に転動可能に装填された多数のボールとを備え、電動モータにより駆動されてその駆動力によってブレーキパッドをブレーキディスク又はブレーキシューに押し付けることにより制動力を発生させる電動ブレーキ装置用ボールねじにおいて、
前記ナットの軸方向の少なくとも一方の端部に潤滑剤含有ポリマ部材からなるラビリンスシールを設けたことを特徴とする電動ブレーキ装置用ボールねじにより達成される。
【0008】
上記構成によれば、ナットの軸方向の端部に潤滑剤含有ポリマ部材からなるラビリンスシールを設けているので、短期に潤滑に悪影響を及ぼす大きなダスト等の異物のナット内への浸入を防止することができると共に、潤滑剤含有ポリマ部材からの潤滑剤の滲み出しにより良好な潤滑性能を長期にわたって確保することができ、転がり抵抗を低くしてエネルギロスの少ない高効率な電動ブレーキ装置を実現することができる。
【0009】
又、大きなスラスト力を発生させ、電動ブレーキ装置の中で最も厳しい環境に曝されるボールねじが略メンテナンスフリーとなるので、これまでの油圧式ブレーキ装置と同様に、ブレーキパッドの交換のみのメンテナンスで済ませることができる。
【0010】
又、本発明の上記目的は、外周面に螺旋状のねじ溝を有するねじ軸と、該ねじ軸のねじ溝に対応する螺旋状のねじ溝を内周面に有して前記ねじ軸に嵌合されたナットと、前記両ねじ溝間に転動可能に装填された多数のボールとを備え、電動モータにより駆動されてその駆動力によってブレーキパッドをブレーキディスク又はブレーキシューに押し付けることにより制動力を発生させる電動ブレーキ装置用ボールねじにおいて、
前記ナットの軸方向の少なくとも一方の端部にラビリンスシールを設けると共に、前記ねじ軸の外周面及び前記ナットの内周面の内の少なくとも一方の周面に摺接する潤滑剤含有ポリマ部材からなる摺接部材を設けたことを特徴とする電動ブレーキ装置用ボールねじにより達成される。
【0011】
上記構成によれば、ナットの軸方向の端部にラビリンスシールを設けているので、短期に潤滑に悪影響を及ぼす大きなダスト等の異物のナット内への浸入を防止することができ、しかも、前記ねじ軸の外周面及び前記ナットの内周面の内の少なくとも一方の周面に摺接する潤滑剤含有ポリマ部材からなる摺接部材を設けているので、摺接部材からの潤滑剤の滲み出しにより良好な潤滑性能を長期にわたって確保することができ、転がり抵抗を低くしてエネルギロスの少ない高効率な電動ブレーキ装置を実現することができる。
【0012】
又、大きなスラスト力を発生させ、電動ブレーキ装置の中で最も厳しい環境に曝されるボールねじが略メンテナンスフリーとなるので、これまでの油圧式ブレーキ装置と同様に、ブレーキパッドの交換のみのメンテナンスで済ませることができる。
この場合、前記ラビリンスシールを潤滑剤含有ポリマ部材で形成することで、潤滑性能をより向上させることができる。
【0013】
なお、電動ブレーキ装置は、使用時に高温に曝されるので、潤滑剤含有ポリマ部材から潤滑剤は容易に滲み出し、潤滑が効果的に行われるが、高温に耐え得るポリマ部材、滲み出しすぎない基油の選定及びその組み合わせが重要である。
ここで、本発明に適用される潤滑剤含有ポリマ部材は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリメチルペンテン等の基本的に同じ化学構造を有するポリオレフィン系樹脂の群から選定された合成樹脂に、潤滑剤としてポリα−オレフィン油のようなパラフィン系炭化水素油、ナフテン系炭化水素油、鉱油、ジアルキルジフェニルエーテル油のようなエーテル油、フタル酸エステルのようなエステル油等の何れか単独若しくは混合油の形で混ぜて調製した原料を、樹脂の融点以上で加熱して可塑化し、その後冷却することで固形伏にしたものであり、潤滑剤の中に予め酸化防止剤、錆止め剤、摩耗防止剤、あわ消し剤、極圧剤等の各種添加剤を加えたものでもよい。
【0014】
上記潤滑剤含有ポリマ部材の組成比は、全重量に対してポリオレフィン系樹脂10〜50重量%、潤滑剤90〜50重量%である。ポリオレフィン系樹脂が10重量%未満の場合は、あるレベル以上の硬さ・強度が得られず、負荷がかかった時に初期の形状を維持するのが難しくなる。また、ポリオレフィン系樹脂が50重量%を超える場合(つまり、潤滑剤が50重量%未満の場合)は、潤滑剤の供給が少なくなり、ボールねじの寿命が短くなる。
【0015】
上記合成樹脂の群は、基本構造は同じでその平均分子量が異なっており、700〜5×106の範囲に及んでいる。平均分子量700〜1×104というワックス(例えばポリエチレンワックス)に分類されるものと、平均分子量1×104〜1×106という比較的低分子量のものと、平均分子量1×106〜5×106という超高分子量のものとを、単独若しくは必要に応じて混合して用いる。
【0016】
比較的低分子量のものと潤滑剤との組合わせによって、ある程度の機械的強度、潤滑剤供給能力、保油性を持つ潤滑剤含有ポリマが得られる。この中の比較的低分子量のものの一部を、ワックスに分類されるものに置き換えると、ワックスに分類されるものと潤滑油との分子量の差が小さいために潤滑油との親和性が高くなり、結果として潤滑剤含有ポリマ部材の保油性が向上し、長期間にわたっての潤滑剤の供給が可能になる。但し、その反面で機械的強度は低下する。尚、ワックスとしては、ポリエチレンワックスのようなポリオレフィン系樹脂の他、融点が100〜130℃以上の範囲にある炭化水素系のもの(例えばパラフィン系合成ワックス)であれば使用できる。
【0017】
一方、それに対して超高分子量のものに置き換えた場合、超高分子量のものと潤滑油との分子量の差が大きいために潤滑油との親和性が低くなり、結果として保油性が低下し、潤滑剤含有ポリマ部材からの潤滑剤の滲み出しが速くなる。それによって、潤滑剤含有ポリマ部材から供給可能な潤滑剤量に達する時間が短くなり、ボールねじの寿命が短くなる。ただし、機械的強度は向上する。
【0018】
成形性、機械的強度、保油性、潤滑剤供給量のバランスを考慮すると、潤滑剤含有ポリマ部材の組成比は、ワックスに分類されるもの0〜5重量%、比較的低分子量のもの8〜48重量%、超高分子量のもの2〜10重量%、かつ3つの樹脂分の合計10〜50重量%(残りが潤滑剤90〜50重量%)が好適である。
【0019】
本発明の潤滑剤含有ポリマ部材の機械的強度を向上させるため、上述のポリオレフィン系樹脂には、以下のような熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂を添加することができる。熱可塑性樹脂としては、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミドイミド、ポリスチレン、ABS樹脂等の各樹脂を使用することができる。
【0020】
一方、熱硬化性樹脂としては、不飽和ポリエステル樹脂、尿素樹脂、メラニン樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂等の各樹脂を使用することができる。これらの樹脂は、単独または混合して用いてもよい。
【0021】
更に、ポリオレフィン系樹脂とそれ以外の樹脂とを、より均一な状態で分散させるために、必要に応じて適当な相溶化剤を加えても良い。また、機械的強度を向上させるために、充填材を添加しても良い。例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、チタン酸カリウムウィスカーやホウ酸アルミニウムウィスカー等の無機ウィスカー類、或いはガラス繊維や金属織維等の無機繊維類及びこれらを布状に編組したもの、また有機化合物では、カーボンブラック、黒鉛粉末、カーボン繊維、アラミド繊維やポリエステル繊維等を添加してもよい。
【0022】
更に、ポリオレフィン系樹脂の熱による劣化を防止する目的で、N,N’−ジフェニル−P−フェニルジアミン、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)等の老化防止剤、また光による劣化を防止する目的で、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチル−フェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール等の紫外線吸収剤を添加してもよい。
【0023】
以上の全ての添加剤(ポリオレフィン系樹脂及び潤滑剤以外)の添加量としては、添加剤全体として、成形原料全量の20重量%以下であることが、潤滑剤の供給能力を維持する上で好ましい。
上述した潤滑剤含有ポリマ部材は、グリースや潤滑油と違ってそれ自体固形状のため、中に水や塵埃が混入することがない。そのため、ナット端とねじ軸との空間に潤滑剤含有ポリマを設けると、シール部材に加えてあるいはシール部材の代わりに、ボールねじの寿命低下の原因となる水や塵埃の浸入を大幅に抑制することができる。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面に基づいて本発明の一実施形態に係るを詳細に説明する。図1は本発明の第1実施形態に係る電動ブレーキ装置用ボールねじを説明するための断面図である。
本第1実施形態に係る電動ブレーキ装置用ボールねじは、図1に示したように、外周面に螺旋状のねじ溝2を有して軸方向に延びるねじ軸3に、内周面にねじ溝2に対応する螺旋状のねじ溝4を有するナット6が嵌合されている。
【0025】
ナット6のねじ溝4とねじ軸3のねじ溝2とは互いに対向して両者の間に螺旋状の負荷軌道を形成しており、該負荷軌道には転動体としての多数のボール5が転動可能に装填されている。
又、ナット6の外周面にはボール循環部材の一例としての略S字状のボール循環溝8aを有する循環こま8が嵌め込まれており、該循環こま8は蓋9によりナット6の外周面に固定されている。この循環こま8により、両ねじ溝2,4間の負荷軌道を転動するボール5は循環こま8の掬い上げ部によりねじ軸3のランド部3aを乗り越えて循環こま8内部のボール循環溝8aに案内され、該ボール循環溝8aを介して隣接する両ねじ溝2,4間の負荷軌道に戻されてボール5が循環するようになっている。
【0026】
このように構成されたボールねじのナット6は、キャリパ10にブッシュ11を介して軸方向にスライド可能に内嵌される。又、ナット6の前端部(図中、左端部)には、ブレーキディスク12(又はブレーキシュー)を挟持する前後一対のブレーキパッド13の内の後側のブレーキパッド13を押圧してブレーキパッド13をブレーキディスク12(又はブレーキシュー)に押し付けるためのプランジャ15がピン16等により取り付けられている。
【0027】
前記プランジャ15の前端面中央にはブレーキ力の測定手段としてのロッドセル17が取り付けられており、該ロッドセル17にはキャップ18が被せられている。
又、ねじ軸3の後端部(図中、右端部)には、電動モータ19のモータ軸20がキー等を介して略同心に結合されており、該電動モータ19は取付プレート22を介してキャリパ10に固定されている。ねじ軸3の後端部はクロスボール軸受23等の転がり軸受によって回転可能に支持されており、該クロスボール軸受23は予圧ばね24によって予圧が付与されている。
【0028】
そして、電動モータ19を駆動させてねじ軸3を回転させることで、ナット6がボール5の転動を介して軸方向前方に移動して前後一対のブレーキパッド13の内の後側のブレーキパッド13がプランジャ15により押圧され、これにより、ブレーキパッド13がブレーキディスク12(又はブレーキシュー)を押し付けて制動力が発生するようになっている。
【0029】
ここで、本実施形態では、ナット6の後端部とねじ軸3との間に潤滑剤含有ポリマ部材からなるラビリンスシール30をナット6の後端部内周面に嵌め込んで取り付けている。これにより、短期に潤滑に悪影響を及ぼす大きなダスト等の異物のナット6内への浸入を防止することができると共に、潤滑剤含有ポリマ部材からの潤滑剤の滲み出しにより良好な潤滑性能を長期にわたって確保することができ、転がり抵抗を低くしてエネルギロスの少ない高効率な電動ブレーキ装置を実現することができる。
【0030】
又、大きなスラスト力を発生させ、電動ブレーキ装置の中で最も厳しい環境に曝されるボールねじが略メンテナンスフリーとなるので、これまでの油圧式ブレーキ装置と同様に、ブレーキパッド13の交換のみのメンテナンスで済ませることができる。
【0031】
尚、上記第1実施形態では、潤滑剤含有ポリマ部材からなるラビリンスシール30をナット6の後端部とねじ軸3との間のみに配置しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、図2に示したように、潤滑剤含有ポリマ部材からなるラビリンスシール30をナット6の後端部とねじ軸3との間、及びナット6の前端部とねじ軸3との間に配置してシール性能と潤滑性能の更なる向上を図るようにしてもよい。
【0032】
又、上記第1実施形態では、ナット6の前端部にプランジャ15をピン16を介して取り付けているが、これに代えて、図2及び図4に示したように、ナット6の前端部にプランジャ15をセレーション嵌合により取り付けてもよい。
【0033】
次に、本発明の第2実施形態に係る電動ブレーキ装置用ボールねじを図3を参照して説明する。尚、電動ブレーキ装置の基本的構成は図1で説明したものと同一であるため、重複する部分には図中に同符号を付して詳細な説明を省略する。本第2実施形態に係る電動ブレーキ装置用ボールねじは、図3に示したように、ナット6の後端部(図中右端部)とねじ軸3との間に通常のシール部材からなるラビリンスシール40をナット6の後端部内周面に嵌め込んで取り付けると共に、ねじ軸3の外周面(ランド部3a)に摺接する潤滑剤含有ポリマ部材からなる摺接部材50をラビリンスシール40の軸方向内側に隣接した位置でナット6の後端部内周面に嵌め込んで取り付けている。
【0034】
前記摺接部材50は、その外周面に嵌め込まれたガータスプリング51により、一定の圧力でねじ軸3の外周面に向かってラジアル方向に押圧されているので、該摺接部材50の内周面が経時的に摩耗しても、常時ねじ軸3との適切な接触が保たれ良好な潤滑が確保されるようになっている。
【0035】
このように第2実施形態では、ナット6の後端部(図中右端部)とねじ軸3との間に通常のシール部材からなるラビリンスシール40を設けているので、短期に潤滑に悪影響を及ぼす大きなダスト等の異物のナット6内への浸入を防止することができる。
【0036】
更に、ねじ軸3の外周面(ランド部3a)に摺接する潤滑剤含有ポリマ部材からなる摺接部材50をラビリンスシール40の軸方向内側に隣接配置しているので、該摺接部材50からの潤滑剤の滲み出しにより良好な潤滑性能を長期にわたって確保することができ、転がり抵抗を低くしてエネルギロスの少ない高効率な電動ブレーキ装置を実現することができる。
【0037】
又、大きなスラスト力を発生させ、電動ブレーキ装置の中で最も厳しい環境に曝されるボールねじがほぼメンテナンスフリーとなるので、これまでの油圧式ブレーキ装置と同様に、ブレーキパッド13の交換のみのメンテナンスで済ませることができる。
ここで、前記ラビリンスシール40を潤滑剤含有ポリマ部材で形成することで、シール性能及び潤滑性能の更なる向上を図ることができる。
【0038】
上記第2実施形態では、ラビリンスシール40及び摺接部材50をナット6の後端部側に配置した場合を例に採ったが、これに代えて、図4に示したように、ラビリンスシール40をナット6の後端部とねじ軸3との間、及びナット6の前端部とねじ軸3との間に配置すると共に、ねじ軸3の外周面(ランド部3a)に摺接する潤滑剤含有ポリマ部材からなる摺接部材50を前端側のラビリンスシール40の軸方向内側に隣接配置してもよい。このようにすると、シール性能と潤滑性能の更なる向上を図ることができると共に、後端側の潤滑を効果的に行うことができる。
【0039】
尚、本発明に係る電動ブレーキ装置用ボールねじは、上記各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々の形態を採りうることは言うまでもない。
例えば、上記各実施形態では、ねじ軸3を回転させてナット6を軸方向に移動させる場合を例に採ったが、これに限定されず、ナット6を回転させてねじ軸3を軸方向に移動させるタイプの電動ブレーキ装置用ボールねじに本発明を適用してもよい。
【0040】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の電動ブレーキ装置用ボールねじによれば、必要なシール性能を維持しつつ良好な潤滑性能を長期にわたって確保することができるので、転がり抵抗を低くしてエネルギロスの少ない高効率な電動ブレーキ装置を実現することができる。
又、大きなスラスト力を発生させ、電動ブレーキ装置の中で最も厳しい環境に曝されるボールねじが略メンテナンスフリーとなるので、これまでの油圧式ブレーキ装置と同様に、ブレーキパッドの交換のみのメンテナンスで済ませることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態に係る電動ブレーキ装置用ボールねじを説明するための断面図である。
【図2】図1に示した電動ブレーキ装置用ボールねじの変形例を説明するための断面図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係る電動ブレーキ装置用ボールねじを説明するための断面図である。
【図4】図3に示した電動ブレーキ装置用ボールねじの変形例を説明するための断面図である。
【符号の説明】
2 ねじ溝(ねじ軸側)
3 ねじ軸
4 ねじ溝(ナット側)
5 ボール
6 ナット
12 ブレーキディスク
13 ブレーキパッド
19 電動モータ
30 ラビリンスシール
Claims (3)
- 外周面に螺旋状のねじ溝を有するねじ軸と、該ねじ軸のねじ溝に対応する螺旋状のねじ溝を内周面に有して前記ねじ軸に嵌合されたナットと、前記両ねじ溝間に転動可能に装填された多数のボールとを備え、電動モータにより駆動されてその駆動力によってブレーキパッドをブレーキディスク又はブレーキシューに押し付けることにより制動力を発生させる電動ブレーキ装置用ボールねじにおいて、
前記ナットの軸方向の少なくとも一方の端部に潤滑剤含有ポリマ部材からなるラビリンスシールを設けたことを特徴とする電動ブレーキ装置用ボールねじ。 - 外周面に螺旋状のねじ溝を有するねじ軸と、該ねじ軸のねじ溝に対応する螺旋状のねじ溝を内周面に有して前記ねじ軸に嵌合されたナットと、前記両ねじ溝間に転動可能に装填された多数のボールとを備え、電動モータにより駆動されてその駆動力によってブレーキパッドをブレーキディスク又はブレーキシューに押し付けることにより制動力を発生させる電動ブレーキ装置用ボールねじにおいて、
前記ナットの軸方向の少なくとも一方の端部にラビリンスシールを設けると共に、前記ねじ軸の外周面及び前記ナットの内周面の内の少なくとも一方の周面に摺接する潤滑剤含有ポリマ部材からなる摺接部材を設けたことを特徴とする電動ブレーキ装置用ボールねじ。 - 前記ラビリンスシールが潤滑剤含有ポリマ部材からなることを特徴とする請求項2に記載の電動ブレーキ装置用ボールねじ。
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