JP2004149979A - 炭素繊維ストランド - Google Patents

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Koichi Sakajiri
浩一 坂尻
Hisao Saeki
尚郎 佐伯
Shinichi Muto
進一 武藤
Isao Nishimura
功 西村
Toshitsugu Matsuki
寿嗣 松木
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Abstract

【課題】繊維軸方向の引張り強度に優れた炭素繊維強化樹脂の製造に適した炭素繊維ストランドを提供する。
【解決手段】130℃で2時間熱処理したサイズ剤組成物のα緩和ピークのtanδとβ緩和ピークのtanδとの積αtanδ・βtanδが0.04〜0.07未満である未熱処理サイズ剤を少なくとも70質量%含むサイズ剤組成物を炭素繊維ストランドに付与する。サイズ剤はエポキシ樹脂が好ましい。サイズ剤組成物の付与量は0.3〜5.0質量%が好ましい。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、樹脂の強化材等に好適な炭素繊維ストランドに関し、更に詳述すればマトリックス樹脂に十分密着して引張強度の優れた複合材料を製造することのできる炭素繊維ストランドに関する。
【0002】
【従来の技術】
炭素繊維は他の繊維と比較して強度や弾性率が高く、軽いという特徴を有するため、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂をマトリックス樹脂とする複合材料の強化材として多用されている。この炭素繊維で強化した複合材料は、軽量で高強度であるので、航空宇宙産業を始めとし、各種の産業に広く利用されている。
【0003】
熱硬化性樹脂系の複合材料を製造する方法としては、中間基材であるプリプレグを用いて賦形成型する方法がある。更に、炭素繊維ストランドを用いて引抜成形、レジントランスファーモールディング(RTM)法、フィラメント・ワインディング(FW)法、シート・モールディング・コンパウンド(SMC)法、バルク・モールディング・コンパウンド(BMC)法、ハンドレイアップ法などによって熱硬化性樹脂系の複合材料を製造できる。
【0004】
熱硬化性樹脂系複合材料の製造に用いられる熱硬化性のマトリックス樹脂としては例えばエポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂等が挙げられるが、これらのうちでも特にエポキシ樹脂は耐熱性、物性等バランスの良い複合材料を与えるので好ましい。
【0005】
エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、テトラグリシジルアミン、トリグリシジルアミン等の多官能エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられるが、特にビスフェノールA型エポキシ樹脂が接着性、物性等に優れ万能であるためマトリックス樹脂として広く使用されている。
【0006】
複合材料を製造する際には、上述のように炭素繊維ストランドを用いてこれを加工するものであるが、この加工工程において、炭素繊維ストランドはガイド等で擦れることにより毛羽が生じやすく、取扱い性が悪くなる。この問題を避けるため、通常、炭素繊維ストランドにサイズ剤を付与し、炭素繊維ストランドの表面をサイズ剤でコートすることにより、ストランドの収束性を高め、耐擦過性や取扱い性を向上させる処理がなされている。
【0007】
サイズ剤は一般的にマトリックス樹脂との接着性を考慮し、マトリックス樹脂がエポキシ樹脂の場合はエポキシ樹脂をサイズ剤に使用し(特許文献1、2)、マトリックス樹脂が不飽和マトリックス樹脂の場合はビニルエステル樹脂をサイズ剤に使用する提案がなされている。しかし、これらはサイズ剤と炭素繊維との接着性については考慮されていないため、その効果は不十分である。
【0008】
一方、サイズ剤と炭素繊維との接着性を改善させることを目的として、炭素繊維の表面官能基と反応する可能性がある極性基を有するサイズ剤が提案されている(特許文献3、4、5、6)。これらのサイズ剤を使用した複合材料は、炭素繊維―マトリックス樹脂間の接着性指標の一つである層間剪断強度(ILSS)の測定値において優れた値を示している。しかし、これらサイズ剤を用いて製造した複合材料は、繊維軸方向に張力がかかると、炭素繊維全体に張力が分散すること無く比較的少数の炭素繊維に応力が集中してその少数の炭素繊維が破断することを順次繰返し、結果的に複合材料の全部を破壊することになる。このため、繊維軸方向の強度は期待するほど大きくならないのが現状である。
【0009】
【特許文献1】
特公昭62−56266号公報(第1欄27行〜第2欄第2行))
【特許文献2】
特開平7−197381号公報(段落番号(0038)
【特許文献3】
特開昭56−167715号公報(第2頁右上欄第5〜12行)
【特許文献4】
特開昭63−50573号公報(第3頁第9〜19行)
【特許文献5】
特開平11−93078号公報(第3頁、段落番号(0020))
【特許文献6】
特開2001−20181号公報(請求項1)
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者は上記問題を解決するために炭素繊維に付与するサイズ剤につき種々検討しているうちに、熱処理をしたサイズ剤(硬化物)の動的粘弾性測定により得られるα緩和ピークのtanδ(αtanδ)と、β緩和ピークのtanδ(βtanδ)との積(αtanδ・βtanδ)の値がサイズ剤を付与した炭素繊維とマトリックス樹脂とからなる複合材の繊維軸方向の強度に大きな影響を与えることを発見した。更に詳細に検討した結果、αtanδ及びβtanδ単独では、複合材の繊維軸方向の強度との間に相関がないことも確認した。
【0011】
本発明は、上記発見に基づき完成するに至ったもので、その目的とするところは、繊維軸方向の強度の優れた炭素繊維強化樹脂複合材料を製造することのできる炭素繊維ストランドを提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成する本発明は、以下に記載するものである。
〔1〕 130℃で2時間熱処理したサイズ剤組成物のα緩和ピークのtanδとβ緩和ピークのtanδとの積αtanδ・βtanδが0.04〜0.07未満である未熱処理サイズ剤を少なくとも70質量%含むサイズ剤組成物を付与してなる炭素繊維ストランド。
〔2〕 サイズ剤がエポキシ樹脂である〔1〕に記載の炭素繊維ストランド。
〔3〕 サイズ剤組成物中に30質量%未満のPO/EOブロック共重合体を含む〔1〕又は〔2〕に記載の炭素繊維ストランド。
〔4〕 サイズ剤組成物の付与量が0.3〜5.0質量%である〔1〕〜〔3〕の何れかに記載の炭素繊維ストランド。
〔5〕 炭素繊維ストランドを構成する単繊維数が1000〜50000本である〔1〕〜〔4〕の何れかに記載の炭素繊維ストランド。
〔6〕 炭素繊維ストランドを構成する炭素繊維の、X線光電子分光法により測定される表面酸素濃度比O/Cが0.05〜0.3である〔1〕〜〔5〕の何れかに記載の炭素繊維ストランド。
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明の炭素繊維ストランドは、炭素繊維ストランドにサイズ剤組成物を付与してなる。
【0015】
炭素繊維ストランドは、炭素繊維(フィラメント)を束ねたものである。炭素繊維ストランドは1000〜50000本の炭素繊維からなるものが好ましい。
【0016】
前記炭素繊維ストランドを構成する炭素繊維は、ポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、レーヨン系炭素繊維等が例示できる。これらの炭素繊維のうち、取り扱い性能、製造工程通過性能に適したPAN系炭素繊維が特に好ましい。ここで、PAN系炭素繊維は、アクリロニトリル構造単位を主成分とし、イタコン酸、アクリル酸、アクリルエステル等のビニル単量体単位10モル%以内を含有する共重合体を炭素繊維化したものが一般的である。
【0017】
炭素繊維ストランドを構成する炭素繊維は、マトリックス樹脂との接着性を高めるために、X線光電子分光法により測定される表面酸素濃度比O/Cが0.05〜0.3であることが好ましい。表面酸素濃度比O/Cが0.05未満の場合は炭素繊維とマトリックス樹脂との接着性が劣り、これを用いて得られる複合材料の物性低下の原因となるので好ましくない。一方、表面酸素濃度比O/Cが0.3を超える場合は炭素繊維自体の強度が低下するので好ましくない。
【0018】
炭素繊維の表面酸素濃度比O/Cを上記範囲にするためには、炭素繊維の製造工程において原料繊維を炭素化して炭素繊維を製造した後、得られた炭素繊維の表面処理を施すことにより行うことができる。
【0019】
表面処理としては、液相処理、気相処理などがある。生産性、処理の均一性、安定性等の観点から、液相電解表面処理が好ましい。これら表面処理自体は公知のものである。
【0020】
炭素繊維の表面処理の程度を管理するための指標としては、X線光電子分光法(XPS)により測定される炭素繊維の表面酸素濃度比O/Cが好ましい。
【0021】
本発明においては、O/Cは日本電子(株)製X線光電子分光器ESCA JPS−9000MXを用いて、次の記載に従って求めるものである。即ち、予めサイジング剤を除去した炭素繊維を10〜6Paに減圧した前記ESCAの測定室中に入れる。次いで、Mgを対極として電子線加速電圧10kV、10mAの条件で発生させたX線を炭素繊維に照射し、炭素原子、酸素原子から発生する光電子のスペクトルを測定する。O/Cは、それらの面積比から算出する。
【0022】
発生する光電子の割合は各元素により異なる。日本電子(株)製X線光電子分光器ESCA JPS−9000MXを用いる場合は、装置特性に起因して定める換算係数は2.69である。
【0023】
上記のようにして、必要により表面処理を施した炭素繊維は、充分に洗浄し、表面処理中に付着した電解質を除去することが好ましい。
【0024】
本発明において、炭素繊維ストランドに付与するサイズ剤組成物は、エポキシ系サイズ剤を主成分とする。炭素繊維強化樹脂のマトリックス樹脂としてエポキシ樹脂が広く用いられている点から、サイズ剤組成物中50質量%以上、さらに好ましくは60質量%以上がエポキシ樹脂であることが好ましい。
【0025】
エポキシ系サイズ剤としては、特に制限が無く、公知のエポキシ系サイズ剤が使用でき、具体的にはビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ダイマー酸型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、アミノエポキシやノボラック型等の多官能エポキシ樹脂、スチレン・ブタジエン共重合体等のエラストマー変性エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂等の変性エポキシ樹脂を例示できる。好ましくは、上記エポキシ樹脂は室温で液状であるものがよい。
【0026】
市販品エポキシ系サイズ剤の化学構造式を以下に例示する。
【0027】
【化1】
Figure 2004149979
【0028】
【化2】
Figure 2004149979
【0029】
【化3】
Figure 2004149979
【0030】
エポキシ系サイズ剤以外に各種の添加剤を配合しても良い。添加剤としては、特に限定されるものではないが、エポキシ系サイズ剤以外の公知のサイズ剤、分散剤、乳化剤、安定剤等を添加しても良い。
【0031】
エポキシ系サイズ剤以外のサイズ剤としては、不飽和ポリエステル、ビニルエステル、アクリル樹脂等の公知のサイズ剤が使用できる。
【0032】
また、製造する複合材料中で外部応力が一定の領域に集中せず、均一に分散されるように、前記サイズ剤組成物中には、有機微粒子として、プロピレンオキシド(PO)/エチレンオキシド(EO)ブロック共重合体を30質量%未満含むことが好ましく、より好ましくは5質量%以上、30質量%未満である。
【0033】
PO/EOブロック共重合体は乳化剤として公知のものが利用できる。具体的には、プロピレンオキシドとエチレンオキシドとのモル比が2〜8:8〜2で、25℃での粘度が5000〜30000mPa・sのものが使用できる。
【0034】
サイズ剤組成物中には炭素繊維の取扱い性や、耐擦過性、耐毛羽性、含浸性を向上させるため、平滑剤、界面活性剤等の補助成分を添加しても良い。
【0035】
平滑剤としては、室温で液状である高級脂肪族系エーテル型ポリオキシエチレン付加物、高級脂肪族ポリオキシエチレン付加物、多価アルコールの高級脂肪酸エステル類、多価アルコールの高級脂肪酸エステル類ポリオキシエチレン付加物等が使用できる。
【0036】
界面活性剤としては、ノニオン系、カチオン系、アニオン系の何れのものであっても良い。
【0037】
本発明において使用するサイズ剤組成物は、上記サイズ剤及び必要により添加した添加剤を含み、且つ以下に述べる様に、その硬化物が所定の動的粘弾性特性を示すものである。即ち、本発明で用いるサイズ剤組成物を熱処理して硬化させたサイズ剤組成物は、図1に示す動的粘弾性測定曲線から得られるα緩和ピークのtanδ(αtanδ)とβ緩和ピークのtanδ(βtanδ)との積(αtanδ・βtanδ)が0.04〜0.07未満を示すもので、0.045〜0.066がより好ましい。
【0038】
熱処理条件は、130℃で2時間である。
【0039】
本発明者は、以下のように考えた。即ち、動的粘弾性測定から得られるtanδは外部応力に対する熱エネルギーの散逸性を評価する指標であり、材料の靭性を推定することができる。具体的には、高tanδの材料であれば、高靭性であることが期待できる。サイズ剤がエポキシ樹脂の場合は、主に、高分子主鎖の分子運動に帰するα緩和と、局所運動に帰するβ緩和が存在し、両者が材料の靭性を支配する主要因と考えられる。従って、本発明者は両者を考慮したαtanδとβtanδとの積αtanδ・βtanδの値を高くすることにより、炭素繊維強化樹脂の物性を向上させることができると考えた。
【0040】
ここで、αtanδ・βtanδが0.04未満の場合は、サイズ剤の靭性が低くなり、炭素繊維強化樹脂の物性が劣化するので好ましくない。一方、αtanδ・βtanδが0.07を超える場合は、炭素繊維束の集束性が劣るようになり、炭素繊維ストランドに対するマトリックス樹脂の含浸性が不均一になるので好ましくない。
【0041】
炭素繊維ストランド中の上記サイズ剤組成物の含有量は0.3〜5.0質量%が好ましい。
【0042】
サイズ剤組成物の付与量が0.3質量%未満の場合は、炭素繊維とマトリックス樹脂との接着性が不十分になり、炭素繊維ストランドの集束性も劣る。一方、サイズ剤組成物の付与量が5.0質量%を超える場合は、炭素繊維ストランドの開繊性が悪くなり、その結果複合材料製造の際の炭素繊維ストランドに対するマトリックス樹脂の含浸性が低下するので好ましくない。
【0043】
サイズ剤組成物の炭素繊維ストランドに対する付与方法は、スプレー法、液浸法、転写法等、当業者に周知の方法を採択し得る。液浸法が、汎用性、効率性、付与の均一性に優れる点で好ましい。液浸法において炭素繊維ストランドをサイズ剤組成物液に浸漬する際、サイズ剤組成物液中に設けられた液没ローラー又は液浸ローラーを用いて開繊と絞りを繰り返し、サイズ剤組成物をストランドの内部まで十分浸透させることが好ましい。
【0044】
サイズ剤組成物の付与方法としては、アセトン等の溶剤にエポキシ樹脂等を含むサイズ剤組成物を溶解させた溶液中に炭素繊維を浸漬する溶剤法と、乳化剤等を用いてサイズ剤組成物を水に乳化させた水系エマルジョン中に炭素繊維を浸漬するエマルジョン法とがある。人体への安全性及び自然環境の汚染を防止する観点からエマルジョン法が好ましい。
【0045】
炭素繊維ストランドをサイズ剤組成物付与処理した後、通常乾燥工程に送り、サイズ剤組成物付与時に付着した分散媒の水あるいは溶剤を乾燥させる。乾燥工程で採用し得る乾燥方法としては、乾燥炉を通過させる方法、過熱したローラーに接触させる方法等、既知の方法が採択し得る。乾燥温度は特に制限されないが、汎用的な水系エマルジョンを使用する場合は通常80℃〜200℃に設定される。また、乾燥工程の後、200℃以上の熱処理工程を更に設け、サイズ剤組成物の粘度を調整しても良い。
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明する。
【0046】
【実施例】
各炭素繊維ストランドの諸物性値は、以下の方法により測定した。
【0047】
<動的粘弾性測定>
サイズ剤100質量部、硬化剤(日立化成(株)製 カヤハード)30質量部の割合で混合した樹脂組成物を130℃で2時間、金型を用いて成形・硬化させ、サイズ剤硬化物を得た。このサイズ剤硬化物を長さ30mm、幅6mm、厚み3mmとなるように調製し、動的粘弾性測定用試験片とした。
【0048】
動的粘弾性は(株)UBM製 動的粘弾性測定装置 型式:Rhogel E−4000を用いて、昇温速度4℃/分、周波数10Hzの条件で−100℃から200℃の間で測定した。
【0049】
図1に例示する動的粘弾性測定曲線から、α緩和ピークのtanδ(αtanδ)とβ緩和ピークのtanδ(βtanδ)とを求め、それらの積αtanδ・βtanδを算出した。
【0050】
<層間剪断強度(ILSS)>
チバガイギー社製EPN1138(商品名:フェノールノボラック型エポキシ樹脂)70質量部、ジャパンエポキシレジン社製エピコート834(商品名:ビスフェノールA型エポキシ樹脂)12質量部、同社製エピコート1002(商品名:ビスフェノールA型エポキシ樹脂)18質量部の割合で混合した樹脂組成物に、更に同社製硬化剤DICY(ジシアンジアミド)5質量部、保土ケ谷化学製硬化促進剤DCMU(3−[3,4−ジクロロフェニル]−1,1−ジメチルウレア)10質量部を加え、プリプレグ用樹脂組成物を作製した。フィルムコーターを用いて、この樹脂組成物を離型紙の上に塗布し、樹脂フィルムを得た。この樹脂フィルム上にサイズ組成物処理された炭素繊維ストランドを等間隔に引き揃えて並べた後、加熱して樹脂を該炭素繊維ストランドに含浸させることにより、目付150g/m、樹脂含浸率37質量%の一方向(UD)プリプレグを作製した。
【0051】
上記にて作製したUDプリプレグを成形後の厚みが3mmとなるように積層し、金型に入れ、130℃で2時間、686kPa(7kg/cm)の圧力で成形し一方向の炭素繊維強化成形板(CFRP板)を作製した。このCFRP板のILSSをASTM−D−2344に準拠して測定した。測定温度は室温であった。
【0052】
<0°引張試験>
チバガイギー社製EPN1138(商品名:フェノールノボラック型エポキシ樹脂)70質量部、ジャパンエポキシレジン社製エピコート834(商品名:ビスフェノールA型エポキシ樹脂)12質量部、同社製エピコート1002(商品名:ビスフェノールA型エポキシ樹脂)18質量部の割合で混合した樹脂組成物に、更に同社製硬化剤DICY(ジシアンジアミド)5質量部、保土ケ谷化学製硬化促進剤DCMU(3−[3,4−ジクロロフェニル]−1,1−ジメチルウレア)10質量部を加え、プリプレグ用樹脂組成物を作製した。この樹脂組成物をフィルムコーターを用いて離型紙上に塗布し、樹脂フィルムを得た。この樹脂フィルム上にサイズ剤組成物処理された炭素繊維ストランドを等間隔に引き揃えて並べた後、加熱して樹脂を該炭素繊維ストランドに含浸させることにより、目付150g/m、樹脂含浸率37質量%のUDプリプレグを作製した。
【0053】
作製したUDプリプレグを成形後の厚みが1mmとなるように積層し、金型に入れ、180℃で2時間、686kPa(7kg/cm)の圧力で成形し一方向の炭素繊維強化成形板(CFRP板)を作製した。このCFRP板の0°引張試験をASTM−D−3039に準拠し、室温で行った。
【0054】
実施例1〜6、比較例1〜3
X線光電子分光法により測定される炭素繊維の表面酸素濃度比O/Cが0.2である未サイジングの炭素繊維ストランド(東邦テナックス社製ベスファイト、24000フィラメント)をサイズ浴に連続的に浸漬させた。サイズ剤組成物水エマルジョンは、分子量の異なるビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製エピコート828、1001)、ノボラック型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製エピコート157S65)、4官能アミノエポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製エピコート604)、エラストマー変性エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製エピコートYX310)、ウレタン変性エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業株式会社製HYDRAN−N320)、PO/EOブロック共重合体(ライオン株式会社製商品名レオコンED274R)の配合比を表1に示すように変化させたサイズ剤組成物100質量部を硬化ひまし油エーテル10質量部で乳化した水エマルジョンであった。
【0055】
その後、サイズ剤組成物エマルジョンを含浸させた炭素繊維ストランドの水分を乾燥除去(150℃、3分)し、炭素繊維ストランドを得た。その際、浴濃度を調整することにより、表1に挙げる炭素繊維ストランドを得た。これらの炭素繊維ストランドを用いて、上記に挙げた各種評価試験を行った。その結果を表1、2にまとめて示した。
【0056】
一方、上記各サイズ剤組成物を上記<動的粘弾性測定>で述べた方法に従って硬化させ、動的粘弾性測定用試験片を作製した。これらの試験片を用いて測定して得た動的粘弾性曲線からサイズ剤組成物のαtanδ・βtanδを算出した。結果を表1、2に示した。
【0057】
【表1】
Figure 2004149979
【0058】
【表2】
Figure 2004149979
表1の結果に示すように、αtanδ・βtanδが0.04〜0.07の範囲内にある実施例1〜6は何れも0°引張り強度が高い。しかし、αtanδ・βtanδが上記範囲外の比較例1〜3は、0°引張り強度が低く、満足な結果が得られなかった。
【0059】
【発明の効果】
本発明においては、所定条件で硬化させたサイズ剤組成物αtanδ・βtanδが0.04〜0.07未満の範囲内になるサイズ剤組成物を炭素繊維ストランドに付与しているので、0°引張り強度が優れた炭素繊維強化複合材料を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】サイズ剤組成物の硬化物の動的粘弾性曲線の一例を示すチャートである。

Claims (6)

  1. 130℃で2時間熱処理したサイズ剤組成物の動的粘弾性測定から得られるα緩和ピークのtanδとβ緩和ピークのtanδとの積αtanδ・βtanδが0.04〜0.07未満である、未熱処理サイズ剤を少なくとも70質量%含むサイズ剤組成物を付与してなる炭素繊維ストランド。
  2. サイズ剤がエポキシ樹脂である請求項1に記載の炭素繊維ストランド。
  3. サイズ剤組成物中に30質量%未満のPO/EOブロック共重合体を含む請求項1又は2に記載の炭素繊維ストランド。
  4. サイズ剤組成物の付与量が0.3〜5.0質量%である請求項1乃至3の何れかに記載の炭素繊維ストランド。
  5. 炭素繊維ストランドを構成する単繊維数が1000〜50000本である請求項1乃至4の何れかに記載の炭素繊維ストランド。
  6. 炭素繊維ストランドを構成する炭素繊維の、X線光電子分光法により測定される表面酸素濃度比O/Cが0.05〜0.3である請求項1乃至5の何れかに記載の炭素繊維ストランド。
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