JP2004117852A - 反射防止部品 - Google Patents
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Abstract
【課題】優れた反射防止効果を発揮するとともに、耐擦過性の向上を図った反射防止部品を作製する。
【解決手段】基材1上に無機顔料を添加したフッ素系樹脂からなる反射防止膜2が形成され、この反射防止膜2上にアミノ変性シリコーンオイルよりなる保護層3が形成された構成の反射防止部品を提供する。
【選択図】 図1
【解決手段】基材1上に無機顔料を添加したフッ素系樹脂からなる反射防止膜2が形成され、この反射防止膜2上にアミノ変性シリコーンオイルよりなる保護層3が形成された構成の反射防止部品を提供する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ディスプレイ機器等の前面板、光学レンズ、自動車窓ガラス、各種計器類の前面板等に用いられる反射防止部品に係る。
【0002】
【従来の技術】
ガラスやプラスチックの表面に発生する反射は、物体に対する目の焦点を合せ難くし、視覚者の負担を増大させるものであり、このような物体からの反射は、VDT(Visual Display Terminal)症候群を誘引するものともされており(「次世代表示メディア(財)科学技術戦略推進機構ロードマップ」)、従来からその防止方法が研究されており、その理論的な構成は、光学薄膜(日刊工業新聞社、H.A.Macleod)に詳細に記載されている。
【0003】
このような反射を防止するものとして、被膜形成面の材料よりも低屈折率の材料を位相特性から計算される適切な膜厚に成膜することにより、膜の上下に発生する反射光を干渉させ、全体として反射を低減させる技術が知られている。
【0004】
このような膜形成用の低屈折率の材料としては種々の材料があるが、塗布法によって反射防止膜を形成する場合には、フッ素樹脂が一般的に知られている(特開平4−355401号公報)。フッ素樹脂の屈折率は、一般的に1.35程度であり、例えば反射率が1.49のアクリル樹脂基板上に成膜した場合、アクリル基板そのものが片面4%程度の反射率であるのに対し、概ね2%程度の反射率に抑えることができる。
【0005】
しかしながら、このようなフッ素樹脂膜は、膜の硬度が弱いという欠点があり、例えば布で擦るような場合が想定される陰極線管(CRT)やリアプロジェクションテレビのような、一般家庭向けの機器には不向きである。
【0006】
フッ素樹脂膜の硬度の実験として、例えばコロナ処理によって易接着処理を施したアクリル樹脂基板上にディップコーターによってフッ素樹脂を塗布して反射防止膜を形成したものに対して布擦過試験を行うと、荷重500g/cm2の条件で20往復の布擦過を実施すると、フッ素樹脂の剥離が観察された。
【0007】
このようなフッ素樹脂によって形成した反射防止膜に関して、耐擦過性を向上させることを目的とした発明として、反射防止膜の表面にシリコーンオイルを塗布するものが提案されている(例えば特開平7−294706号公報)。
これは、フッ素樹脂膜上に、表面の微小な凹凸を埋める程度の数nm〜数十nm程度の膜厚にシリコーンオイルを塗布することによって、耐擦過性の向上を図るというものである。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、さらなる反射防止効果を高めるために反射防止膜を構成するフッ素樹脂中に所定の顔料等を添加した場合、フッ素樹脂のみによって形成した場合に比較して必然的に表面の粗度が大きくなる。
さらに、反射防止膜の下層にその他の材料層を設ける場合には、反射防止膜を樹脂のみによって形成すると所望の屈折率にすることが困難であるので、反射防止膜中にアンチモンドープ錫酸化粉末や、チタンブラック等の粉末を添加するものについても提案されており(例えば特許2859783号)、この場合も下層の表面の粗さが上層の反射防止膜の表面性に影響を与えるため最表面粗度が大きくなる。
【0009】
よって上述したような場合には、表層にシリコーンオイルを数nm〜数十nm程度の膜厚に塗布するのみでは表面の凹凸を完全に埋めることができず、耐擦過性が著しく劣化する。一方において表面の凹凸を完全に埋めるほどの膜厚にシリコーンオイルを塗布すると、反射特性が著しく劣化するという問題を生じる。
【0010】
そこで、本発明者らは上述した問題点に関して鋭意研究を行った結果、優れた反射防止効果を発揮するとともに、耐擦過性の向上を図った反射防止部品を提供することとした。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の反射防止部品は、基材上に無機顔料を添加したフッ素系樹脂からなる反射防止膜が形成され、この反射防止膜上にアミノ変性シリコーンオイルよりなる保護層が形成された構成を有するものとする。
【0012】
本発明によれば、反射防止効果および耐擦過性に優れ、特に実用的に表面の強度が要求されるCRTやリアプロジェクションテレビ等、ディスプレイ機器の前面板、光学レンズ、自動車窓ガラス、各種計器類の前面板等に好適な反射防止部品が得られる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の反射防止部品の具体的な実施形態について説明するが、本発明は以下に示す例に限定されるものではない。
〔第1の実施の形態〕
本発明の反射防止部品の一例の概略図を図1に示す。
この反射防止部品10は、基材1上に反射防止膜2および保護層3が順次形成された構成を有している。以下各層について詳細に説明する。
【0014】
基材1は透光性の材料よりなるものとし、ガラス、各種プラスチックを適用できる。プラスチック材料としては主成分が、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、アクリル、メタクリルスチレン、フェノール、エポキシ、メラニン、ナイロン、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリブチレン、エポキシフェノール、塩化ビニル、ポリエステル、セルロースエステル、ポリオレフィン等であるものが挙げられる。また基材1の形状は特に限定されるものではなく、板状、フィルム状、カード状等、目的とする反射防止部品に適する形状に選定する。
【0015】
反射防止膜2は、無機顔料を添加したフッ素系樹脂からなるものとする。
フッ素系樹脂としては、例えばパーフルオロ系の非晶質樹脂やポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化エチレン等を適用できる。これらの樹脂の分子構造は、架橋が可能なように官能基を有するものとしてもよい。また架橋反応を起こすようにするため、各種硬化剤を併用してもよい。例えば、ウレタン結合による架橋反応を起こすためには、分子構造としてイソシアネート基を有するものを適用するものとする。
【0016】
反射防止膜2中の無機顔料としては、透明性、透光性を有し、かつ可視光反射防止機能を発揮し得る超微粒子を適用するものとし、例えば二酸化ケイ素(SiO2)、好ましくは中空シリカ(空隙を有するSiO2超微粒子)、MgF2より選定する少なくとも一種を適用する。
中空のシリカ(空隙を有するSiO2超微粒子)は市販されており、屈折率は1.3付近のものが知られている。
【0017】
フッ素系樹脂の具体例として、ヘキスト社の低屈折率フッ素樹脂、旭硝子社製の商品名「CYTOP」、三菱レイヨン社製の商品名「17FM」(特開平4−355401号公報)等が挙げられる。これらは、いずれも屈折率が概ね1.34程度であるため、上記中空シリカを添加することによって反射防止膜2の屈折率を1.3以下程度に下げることができる。
また、フッ素系樹脂として架橋が可能な構造を有する4フッ化エチレン共重合体(例えばダイキン工業社製商品名GK500)を用いると膜の屈折率は1.42程度となるが、これに中空シリカを添加することにより膜全体として屈折率を1.3以下に下げることができる。
【0018】
このような屈折率の低下は、塗布面の凹凸による粒子構造傾斜膜によるものであることが知られており(遠藤ら 電気通信情報学会 93 No428、13−16(1994))、反射防止膜塗布面の表面の凹凸を維持することも反射防止機能を発揮させるためには重要であることがわかる。
【0019】
無機顔料の超微粒子は、平均粒径が40〜200nm、さらに好ましくは40〜100nmであるものとする。平均粒径が40nmよりも小さいと反射防止膜2の表面が平坦になりすぎて充分な反射防止効果が得られなくなるためであり、一方平均粒径が100nmよりも大きいと、反射防止効果については充分に得られるが、拡散反射が大きくなり、層が白濁しパネルを適用する画面の解像度が低下するおそれがあるためである。上述したことから中空シリカの平均粒径は40〜100nmであることが望ましく、また、微粒子間で形成される谷部の深さが20〜100nmであることが好ましい。
【0020】
反射防止膜2は、上記フッ素系樹脂と上記無機顔料微粒子とを所定の有機溶媒を用いて混合した塗液を基材1上に塗布することによって形成される。
有機溶媒としては、フッ素系樹脂を溶解させ、基材1に対して不溶なものを適用するものとし、例えば脂肪族炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類、アルコール類、ケトン類、エーテル類、エステル類、アルコールエステル類、ケトンエーテル類、エステルエーテル類の少なくともいずれか一種あるいはこれらの二種以上の混合物を適用することができる。また水に可溶なフッ素樹脂を用いた場合には、溶媒として水を適用することもできる。
【0021】
反射防止膜2のコーティング方法としては、ディップコートの他、スピンコート、ロールコート、メニスカスを利用したヒラノテクシード製のCAPコート等が挙げられる。
ディップコートの場合には、適用するフッ素系樹脂の濃度と被塗布体の引き上げ速度を調整することによって、所望の膜厚に制御することができ、膜厚は単層の場合には、屈折率と物理的な膜厚の掛け算によって得られる光学的膜厚を、所望の波長の4分の1になるようにする。このとき、波長は最も視感感度の高い550nmに選定することが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0022】
上述した反射防止膜2上には、保護層3が形成されている。
この保護層3は、下記〔化2〕に示す反応性シリコーンオイルを用いて形成する。反応性シリコーンオイルとしては、主に側鎖変性型と両末端変性型のものがある。またこれら以外にも片末端変性型やポリマー型カップリング剤もある。
なお、本発明においては、下層の反射防止膜2への吸着性が良好なものとして、特にアミノ変性シリコーンオイルを選定する。
【0023】
【化2】
(式中、X1、X2、X3は、同一もしくは異なり、メチル基またはアミノ基を表し、mは1〜10、nは1〜10である。ただし、X1、X2、X3のうちの少なくとも一つはアミノ基である。)
【0024】
上述したアミノ変性シリコーンオイルを用いて保護層3を形成する場合、下層の反射防止膜2の屈折率によって全体の反射率の劣化率が変化する。
図2に、反射防止膜2の屈折率と、その上層に形成された保護層(アミノ変性シリコーンオイル膜)3の屈折率との差をパラメータとしたときの、保護層3の膜厚と、それによる反射率の劣化率との関係を示す。
なお実用的な特性を考慮して、波長550nmの光の反射率が最低値となるように反射防止膜2の膜厚を選定した。
【0025】
計算は下記〔数1〕に示す光学薄膜の特性行列式を用いて行った。下記〔数1〕中δ=(2π/λ)ndとする(λ=波長、n=屈折率、d=膜厚)。
【0026】
【数1】
【0027】
反射防止膜2と保護層3の特性行列式を掛け合わせ、総合的な膜の特性行列式を計算し、その後、下記〔数2〕に示すエネルギー反射率の式に代入して計算した(参考文献 反射防止膜の特性と最適設計、膜作製技術 技術情報協会)。
なお、〔数2〕中nsは、基材1の屈折率である。
【0028】
【数2】
【0029】
図2に示すように、保護層(アミノ変性シリコーンオイル膜)3の屈折率が、下層の反射防止膜2の屈折率とほぼ等しく、屈折率差が0.02である場合には、保護層3の膜厚が60nm以上であっても反射率の劣化率は極めて小さく、膜厚による変極点もないことがわかる。
【0030】
しかしながら、反射防止膜2の屈折率と保護層3の屈折率との差が大きくなるに従い、反射率の劣化率が大きくなる。
図2に示すように、特に反射率の劣化率が0.5%を越えるところから、いずれの屈折率差のグラフにおいても急激な立ち上がりが見られる。このことから、反射率の劣化率が0.5%を越えると、保護層3の膜厚を調整することによって反射率を制御することが極めて困難になるということがわかる。
【0031】
また、反射防止部品の耐擦過性を確保するためには、保護層3の膜厚は20nm以上とすることが必要であるが、図2に示すように、反射防止膜2の屈折率と保護層3の屈折率との差が0.17にもなると、反射率の劣化率を考慮すると膜厚を適宜選定することができなくなる。よって図2から、反射防止膜2の屈折率と保護層3の屈折率との差は0.12以内であることが望ましい。
【0032】
〔第2の実施の形態〕
本発明の反射防止部品の他の一例の概略図を図3に示す。
この例における反射防止部品20は、基材1と反射防止膜2との間に、反射防止膜2よりも屈折率の大きい顔料添加樹脂層4が形成されている構成を有している。
【0033】
図3の反射防止パネル20の基材1、反射防止膜2、および保護層3については、図1に示した反射防止部品10と同様のものを適用することができるため、これらの説明を省略する。
【0034】
顔料添加樹脂層4は、所定の無機顔料微粒子と樹脂(バインダー)とにより形成されるものとし、無機顔料微粒子は、反射防止機能、帯電防止機能、赤外線反射機能、および電磁遮断機能を有するものとする。
反射防止機能を有する微粒子としては、例えば二酸化ケイ素(SiO2)、好ましくは空隙を有するSiO2、MgF2等が挙げられる。帯電防止機能を有する微粒子としては、例えばSnO2、SnO2+酸化アンチモン(Sb2O3)、In2O3、In2O3+SnO2等が挙げられる。また、赤外線反射機能を有する微粒子としては、In2O3、In2O3+SnO2、酸化チタン(TiO2)、酸化ジルコニウム(ZrO2)等が挙げられる。
【0035】
上記帯電防止機能を有する微粒子および赤外線反射機能を有する微粒子は、屈折率が1.5以上であるため、これらの微粒子を用いて顔料添加樹脂層4を形成することによって全体として極めて低い反射特性が得られる。
【0036】
帯電防止機能、赤外線反射機能、あるいは電磁遮断機能を有する微粒子としては、上記のように、SnO2、In2O3、酸化チタン(TiO2)、酸化ジルコニウム(ZrO2)等の金属酸化物やこれらの混合物を適用できるが、特にSnO2+10重量%Sb2O3、In2O3+5重量%SnO2等が帯電防止特性および赤外線反射特性に優れているので望ましい。
【0037】
顔料添加樹脂層4は、膜厚を0.1〜0.5μm、無機顔料微粒子の粒径は5〜50nmとすることが望ましい。
特に上記帯電防止機能を有する微粒子は、平均粒径10nm以下とすることが望ましい。平均粒径10nm以下の超微粒子を塗布液に混合した場合には、塗布面の表面状態の粗度が大きくても均一な膜を形成できる。また、塗液を厚く塗布しても透過率の低下や白濁を生じるおそれが比較的少ない。
【0038】
また、帯電防止機能を有する金属酸化物の微粒子や、これらの混合物は、エネルギーバンドギャップが3eV以上あるために可視光域で高い透過性を示すと同時に、化学量論組成からのずれ、および不純物添加による高い自由電子濃度を有するため高導電性を示す。また、直接超微粒子同士が接触状態になくても、すなわち、微粒子間にバインダー等が介在していても、顔料添加樹脂層4の膜厚が充分に薄ければ、トンネル効果によって導電性を示す。帯電防止機能を有するためには、106〜109Ω/cm2程度の導電性が確保されればよいので、この条件を満たす範囲で微粒子とバインダーの混合比率を適宜設定することができる。
【0039】
バインダー用の樹脂としては、フッ素系樹脂の他、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、シリコーン系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、シロキサン系樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、スチレン樹脂、ABS樹脂、ポリビニルアルコール等が挙げられるが、このうち高屈折性を有するものとしては、ポリスチレン樹脂やスチレン樹脂、塩化ビニル樹脂が好適である。
【0040】
上記超微粒子、バインダー樹脂および必要に応じてカップリング剤やその他の各種添加剤を用いて顔料添加樹脂層4形成用の塗液を作製する。添加剤としては、例えば基材1がプラスチックの場合には、この高分子体と反応しやすい官能基とSi(OR)x(X=2〜4、好ましくは3)とを有するシランカップリング剤を溶解した有機溶媒中に上記超微粒子を分散させる。
このようにして作製した塗液を基材1上に塗布し、硬化処理を行い、顔料添加樹脂層4を形成する。コーティング方法としては、ディップコートの他、スピンコート、ロールコート、メニスカスを利用したヒラノテクシード製のCAPコート等が挙げられる。また硬化方法としては、材料により電子線照射、加熱処理、紫外線照射等を適宜選択する。
【0041】
【実施例】
〔実験例1〕
反射防止膜2形成用塗液として、フッ化エチレン共重合物樹脂(ダイキン工業社製)1.83g、硬化剤としてD140N(三井武田ケミカル)0.24gをメチルイソブチルケトン45g中に溶解したものを作製した。この塗液をディップコーターでアクリル基材上に塗布し、90℃で24時間硬化処理を行い、反射防止膜2を形成した。
その後アミノ変性シリコーンオイル(日本ユニカ−FZ3707)0.25wt%のヘキサン溶液を調整し、上記反射防止膜2上にディップコーターで塗布し、24時間放置して保護層3を形成した。
反射防止膜2の膜厚は75nm、屈折率は1.44である。保護層3の膜厚は20nm、屈折率は1.41である。
【0042】
〔実施例1〕
反射防止膜2形成用塗液として、中空シリカ系ゾル液(触媒化成社製)5g、フッ化エチレン共重合物樹脂(ダイキン工業社製)1.83g、硬化剤としてD140N(三井武田ケミカル)0.24gをメチルイソブチルケトン45g中に溶解したものを作製した。この塗液をディップコーターでアクリル基材上に塗布し、90℃で24時間硬化処理を行い、反射防止膜2を形成した。
その後アミノ変性シリコーンオイル(日本ユニカ−FZ3707)0.25wt%のヘキサン溶液を調整し、上記反射防止膜2上にディップコーターで塗布し、24時間放置して保護層3を形成した。
反射防止膜2の膜厚は75nm、屈折率は1.41である。保護層3の膜厚は20nm、屈折率は1.41である。
【0043】
〔実施例2〕
反射防止膜2形成用塗液として、中空シリカ系ゾル液(触媒化成社製)5g、フッ化エチレン共重合物樹脂(ダイキン工業社製)0.92g、硬化剤としてD140N(三井武田ケミカル)0.24gをメチルイソブチルケトン45g中に溶解したものを作製した。この塗液をディップコーターでアクリル基材上に塗布し、90℃で24時間硬化処理を行い、反射防止膜2を形成した。
その後アミノ変性シリコーンオイル(日本ユニカ−FZ3707)0.25wt%のヘキサン溶液を調整し、上記反射防止膜2上にディップコーターで塗布し、24時間放置して保護層3を形成した。
反射防止膜2の膜厚は75nm、屈折率は1.33である。保護層3の膜厚は20nm、屈折率は1.41である。
【0044】
〔実施例3〕
顔料添加樹脂層4として、以下の方法により調整した樹脂をアクリル基材1上に塗布した。
TiO2微粒子:100重量部
(石原産業社製、平均粒径約20nm 、屈折率2.48)
オリゴマー :18重量部
(SO3Na基含有ウレタンアクリレート、数平均分子量:1000、
SO3Na濃度:1×10−1mol/g)
分散剤:20重量部
メチルイソブチルケトン:4800重量部
メチルエチルケトン:17重量部
シクロヘキサノン:11重量部
先ず、顔料、結合剤、有機溶媒を所定量混合し、アジターで分散処理を行い塗料を作製した。その後、この分散液に結合剤としてUV硬化性樹脂であるDPHA(日本化薬社製)をTiO2 100重量部に対して、19重量部添加し、攪拌機にて攪拌処理を行い、透明基材であるアクリル樹脂基材上に、ディッピング方式によって塗布した。これを80℃で乾燥、UV硬化(1000mJ/cm2)を行い、膜厚120nmの顔料添加樹脂層4を成膜した。この屈折率は1.83である。
その後、この顔料添加樹脂層4の上に低屈折率膜として、上記実施例1で示した反射防止膜2形成用塗液をディッピング方式によって塗布し、90℃で24時間硬化処理を行い、反射防止膜2を形成した。低屈折率膜の膜厚は80nmである。
その後、アミノ変性シリコーンオイル(日本ユニカ−FZ3707)0.25wt%のヘキサン溶液を調整し、反射防止膜2上にディップコーターで塗布し、24時間放置し、上述した実施例1と同様の保護層3を形成した。
【0045】
〔比較例1〕
反射防止膜2形成用塗液として、フッ化エチレン共重合物樹脂(ダイキン工業社製)1.8g、硬化剤としてD140N(三井武田ケミカル)0.2gをメチルイソブチルケトン45g中に溶解したものを作製した。
顔料添加樹脂層4形成用塗液として、熱硬化性導電塗料P3059(触媒化成工業社製)を用いた。
これらの塗布液をディップコーターでアクリル基材上に塗布し、90℃で24時間硬化処理を行い、顔料添加樹脂層4、および反射防止膜2を順次形成した。
その後ジメチルシリコーンオイル(日本ユニカ−L45(100))0.25wt%のヘキサン溶液を調整し、上記反射防止膜2上にディップコーターで塗布し、24時間放置して保護層3を形成した。
反射防止膜2の膜厚は75nm、屈折率は1.44である。保護層3の膜厚は20nm、屈折率は1.40である。
【0046】
〔比較例2〕
反射防止膜2形成用塗液として、中空シリカ系ゾル液(触媒化成社製)5g、フッ化エチレン共重合物樹脂(ダイキン工業社製)1.83g、硬化剤としてD140N(三井武田ケミカル)0.24gをメチルイソブチルケトン45g中に溶解したものを作製した。この塗液をディップコーターでアクリル基材上に塗布し、90℃で24時間硬化処理を行い、反射防止膜2を形成した。
その後ジメチルシリコーンオイル(日本ユニカ−L45(100))0.25wt%のヘキサン溶液を調整し、上記反射防止膜2上にディップコーターで塗布し、24時間放置して保護層3を形成した。
反射防止膜2の膜厚は75nm、屈折率は1.41である。保護層3の膜厚は20nm、屈折率は1.40である。
【0047】
〔比較例3〕
反射防止膜2形成用塗液として、中空シリカ系ゾル液(触媒化成社製)5g、フッ化エチレン共重合物樹脂(ダイキン工業社製)0.92g、硬化剤としてD140N(三井武田ケミカル)0.12gをメチルイソブチルケトン45g中に溶解したものを作製した。この塗液をディップコーターでアクリル基材上に塗布し、90℃で24時間硬化処理を行い、反射防止膜2を形成した。
その後ジメチルシリコーンオイル(日本ユニカ−L45(100))0.25wt%のヘキサン溶液を調整し、上記反射防止膜2上にディップコーターで塗布し、24時間放置して保護層3を形成した。
反射防止膜2の膜厚は75nm、屈折率は1.33である。保護層3の膜厚は20nm、屈折率は1.40である。
【0048】
上述のようにして作製した〔実験例1〕、〔実施例1〜3〕および〔比較例1〜3〕の各サンプルについて擦過性試験を行った。具体的には、布を用いて500g/cm2の荷重をかけて表面を200回摺動した後の表面剥離状態を評価した。評価結果を下記〔表1〕に示す。
なお、表1においては200回摺動した後に表面に剥離状態が確認されなかったものを○として評価した。
【0049】
【表1】
【0050】
上記〔表1〕中の実験例1および比較例1に示すように、反射防止膜2の表面が極めて平滑で、具体的には平均表面粗さが2nm未満の場合には、保護層3をアミノ変性シリコーンオイルによって形成した場合とジメチルシリコーンオイルによって形成した場合のいずれの場合においても表面に剥離の発生が確認されなかった。
【0051】
しかしながら、実施例1と比較例2、および実施例2と比較例3の結果から明らかなように、反射防止膜2の平均表面粗さが2nm以上となると、保護層3をアミノ変性シリコーンオイルによって形成した実施例1、2のサンプルは表面に剥離が確認されなかったが、ジメチルシリコーンオイルによって形成した比較例2、3のサンプルは表面に剥離の発生が確認された。
【0052】
上述したことから、反射防止膜2の平均表面粗さが2nm〜6nmであれば、保護層3をアミノ変性シリコーンオイルによって形成することにより、表面の剥離の発生を効果的に回避できることが確認された。
【0053】
また、実施例3においては、基材1と反射防止膜2との間に高屈折率の顔料添加樹脂層4を形成した構成としたことにより、さらに良好な反射率が得られ、また保護層3をアミノ変性シリコーンオイルによって形成したことにより、擦過性についても良好な評価が得られた。
【0054】
次に、保護層であるアミノ変性シリコーンオイル層の膜厚と擦過性との関係についての試験を行なった。
【0055】
〔実験例2〕
反射防止膜2形成用塗液として、中空シリカ系ゾル液(触媒化成社製)5g、フッ化エチレン共重合物樹脂(ダイキン工業社製)0.92g、硬化剤としてD140N(三井武田ケミカル)0.12gをメチルイソブチルケトン45g中に溶解したものを作製した。この塗液をディップコーターでアクリル基材上に塗布し、90℃で24時間硬化処理を行い、反射防止膜2を形成した。
その後アミノ変性シリコーンオイル(日本ユニカ−FZ3707)0.1wt%のヘキサン溶液を調整し、上記反射防止膜2上にディップコーターで塗布し、24時間放置して保護層3を形成した。
反射防止膜2の膜厚は95nm、屈折率は1.33である。保護層3の屈折率は1.41で膜厚は5nmである。
【0056】
〔実施例4〕
反射防止膜2形成用塗液として、中空シリカ系ゾル液(触媒化成社製)5g、フッ化エチレン共重合物樹脂(ダイキン工業社製)0.92g、硬化剤としてD140N(三井武田ケミカル)0.12gをメチルイソブチルケトン45g中に溶解したものを作製した。この塗液をディップコーターでアクリル基材上に塗布し、90℃で24時間硬化処理を行い、反射防止膜2を形成した。
その後アミノ変性シリコーンオイル(日本ユニカ−FZ3707)0.25wt%のヘキサン溶液を調整し、上記反射防止膜2上にディップコーターで塗布し、24時間放置して保護層3を形成した。
反射防止膜2の膜厚は75nm、屈折率は1.33である。保護層3の屈折率は1.41で膜厚は20nmである。
【0057】
〔実験例3〕
反射防止膜2形成用塗液として、中空シリカ系ゾル液(触媒化成社製)5g、フッ化エチレン共重合物樹脂(ダイキン工業社製)0.92g、硬化剤としてD140N(三井武田ケミカル)0.12gをメチルイソブチルケトン45g中に溶解したものを作製した。この塗液をディップコーターでアクリル基材上に塗布し、90℃で24時間硬化処理を行い、反射防止膜2を形成した。
その後アミノ変性シリコーンオイル(日本ユニカ−FZ3707)0.5wt%のヘキサン溶液を調整し、上記反射防止膜2上にディップコーターで塗布し、24時間放置して保護層3を形成した。
反射防止膜2の膜厚は50nm、屈折率は1.33である。保護層3の屈折率は1.41で膜厚は40nmである。
【0058】
上述のようにして作製した〔実験例2、3〕および〔実施例4〕のサンプルのアミノ変性シリコーンオイルによる保護層の膜厚、反射率の劣化率、反射防止膜の平均表面粗さを測定し、さらに上記方法による擦過性の試験を行った結果の表面剥離状態を評価した。
膜厚および反射率測定については、FILMETRICS社製のF20を用いた。また反射率の劣化率については、最低反射率が波長550nmの光で得られるように反射防止膜2の膜厚を調整した。劣化の比較については、アミノ変性シリコーンオイルによる保護層が形成されていないものの最低反射率を基準として行った。評価結果を下記表2に示す。なお表2においては、表面に剥離状態が確認されなかったものを○、実用的に問題がある程度に剥離が確認されたものを×として評価した。
【0059】
【表2】
【0060】
表2に示すように、アミノ変性シリコーンオイルによって保護層3を膜厚20nm程度に形成した実施例4においては、反射率の劣化率も極めて低く、優れた反射率特性が得られた。また、反射防止膜2の平均表面粗さが6nm以下であれば、擦過性試験においても表面に剥離が確認されず耐久性に優れていることがわかった。
【0061】
また、アミノ変性シリコーンオイルによって保護層3を膜厚5nm程度に形成した実験例2においては、反射率の劣化は確認されなかったが、擦過性試験において表面に剥離が確認され、耐久性の点で劣っていることがわかった。
【0062】
また、アミノ変性シリコーンオイルによって保護層3を膜厚40nm程度に形成した実験例3においては、耐久性の点では優れた結果が得られたが、反射率の劣化率が高く、反射率特性の点で劣っていることがわかった。
【0063】
【発明の効果】
本発明によれば、反射防止効果および耐擦過性に優れ、特に実用的に表面の強度が要求されるCRTやリアプロジェクションテレビ等、ディスプレイ機器の前面板、光学レンズ、自動車窓ガラス、各種計器類の前面板等に好適な反射防止部品が得られた。
【0064】
また、本発明の反射防止部品によれば、アミノ変性シリコーンオイルによって保護層を形成したことにより、下層の反射防止層の平均表面粗さが6nm以下程度であれば、実用上充分な耐擦過性を実現できた。
【0065】
本発明によれば、保護層の屈折率と下層の反射防止膜の屈折率との差を0.12以内に選定したことにより、保護層を形成したことによる反射率特性の劣化率が0.5%以内という、極めて低い範囲において保護層の膜厚を広く選定することが可能となり作製上の寸法自由度が広がり、かつ反射防止効果と耐擦過性の双方の特性について良好な反射防止部品が得られた。
【0066】
また、本発明によれば、基材と反射防止膜との間に、反射防止膜よりも屈折率の大きい顔料添加樹脂層を形成したことにより、さらに反射率特性の向上が図られた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の反射防止部品の一例の概略構成図を示す。
【図2】保護層の膜厚と反射率特性の劣化率との関係を示す。
【図3】本発明の反射防止部品の他の一例の概略構成図を示す。
【符号の説明】
1……基材、2……反射防止膜、3……保護層、4……顔料添加樹脂層、10,20……反射防止部品
【発明の属する技術分野】
本発明は、ディスプレイ機器等の前面板、光学レンズ、自動車窓ガラス、各種計器類の前面板等に用いられる反射防止部品に係る。
【0002】
【従来の技術】
ガラスやプラスチックの表面に発生する反射は、物体に対する目の焦点を合せ難くし、視覚者の負担を増大させるものであり、このような物体からの反射は、VDT(Visual Display Terminal)症候群を誘引するものともされており(「次世代表示メディア(財)科学技術戦略推進機構ロードマップ」)、従来からその防止方法が研究されており、その理論的な構成は、光学薄膜(日刊工業新聞社、H.A.Macleod)に詳細に記載されている。
【0003】
このような反射を防止するものとして、被膜形成面の材料よりも低屈折率の材料を位相特性から計算される適切な膜厚に成膜することにより、膜の上下に発生する反射光を干渉させ、全体として反射を低減させる技術が知られている。
【0004】
このような膜形成用の低屈折率の材料としては種々の材料があるが、塗布法によって反射防止膜を形成する場合には、フッ素樹脂が一般的に知られている(特開平4−355401号公報)。フッ素樹脂の屈折率は、一般的に1.35程度であり、例えば反射率が1.49のアクリル樹脂基板上に成膜した場合、アクリル基板そのものが片面4%程度の反射率であるのに対し、概ね2%程度の反射率に抑えることができる。
【0005】
しかしながら、このようなフッ素樹脂膜は、膜の硬度が弱いという欠点があり、例えば布で擦るような場合が想定される陰極線管(CRT)やリアプロジェクションテレビのような、一般家庭向けの機器には不向きである。
【0006】
フッ素樹脂膜の硬度の実験として、例えばコロナ処理によって易接着処理を施したアクリル樹脂基板上にディップコーターによってフッ素樹脂を塗布して反射防止膜を形成したものに対して布擦過試験を行うと、荷重500g/cm2の条件で20往復の布擦過を実施すると、フッ素樹脂の剥離が観察された。
【0007】
このようなフッ素樹脂によって形成した反射防止膜に関して、耐擦過性を向上させることを目的とした発明として、反射防止膜の表面にシリコーンオイルを塗布するものが提案されている(例えば特開平7−294706号公報)。
これは、フッ素樹脂膜上に、表面の微小な凹凸を埋める程度の数nm〜数十nm程度の膜厚にシリコーンオイルを塗布することによって、耐擦過性の向上を図るというものである。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、さらなる反射防止効果を高めるために反射防止膜を構成するフッ素樹脂中に所定の顔料等を添加した場合、フッ素樹脂のみによって形成した場合に比較して必然的に表面の粗度が大きくなる。
さらに、反射防止膜の下層にその他の材料層を設ける場合には、反射防止膜を樹脂のみによって形成すると所望の屈折率にすることが困難であるので、反射防止膜中にアンチモンドープ錫酸化粉末や、チタンブラック等の粉末を添加するものについても提案されており(例えば特許2859783号)、この場合も下層の表面の粗さが上層の反射防止膜の表面性に影響を与えるため最表面粗度が大きくなる。
【0009】
よって上述したような場合には、表層にシリコーンオイルを数nm〜数十nm程度の膜厚に塗布するのみでは表面の凹凸を完全に埋めることができず、耐擦過性が著しく劣化する。一方において表面の凹凸を完全に埋めるほどの膜厚にシリコーンオイルを塗布すると、反射特性が著しく劣化するという問題を生じる。
【0010】
そこで、本発明者らは上述した問題点に関して鋭意研究を行った結果、優れた反射防止効果を発揮するとともに、耐擦過性の向上を図った反射防止部品を提供することとした。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の反射防止部品は、基材上に無機顔料を添加したフッ素系樹脂からなる反射防止膜が形成され、この反射防止膜上にアミノ変性シリコーンオイルよりなる保護層が形成された構成を有するものとする。
【0012】
本発明によれば、反射防止効果および耐擦過性に優れ、特に実用的に表面の強度が要求されるCRTやリアプロジェクションテレビ等、ディスプレイ機器の前面板、光学レンズ、自動車窓ガラス、各種計器類の前面板等に好適な反射防止部品が得られる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の反射防止部品の具体的な実施形態について説明するが、本発明は以下に示す例に限定されるものではない。
〔第1の実施の形態〕
本発明の反射防止部品の一例の概略図を図1に示す。
この反射防止部品10は、基材1上に反射防止膜2および保護層3が順次形成された構成を有している。以下各層について詳細に説明する。
【0014】
基材1は透光性の材料よりなるものとし、ガラス、各種プラスチックを適用できる。プラスチック材料としては主成分が、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、アクリル、メタクリルスチレン、フェノール、エポキシ、メラニン、ナイロン、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリブチレン、エポキシフェノール、塩化ビニル、ポリエステル、セルロースエステル、ポリオレフィン等であるものが挙げられる。また基材1の形状は特に限定されるものではなく、板状、フィルム状、カード状等、目的とする反射防止部品に適する形状に選定する。
【0015】
反射防止膜2は、無機顔料を添加したフッ素系樹脂からなるものとする。
フッ素系樹脂としては、例えばパーフルオロ系の非晶質樹脂やポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化エチレン等を適用できる。これらの樹脂の分子構造は、架橋が可能なように官能基を有するものとしてもよい。また架橋反応を起こすようにするため、各種硬化剤を併用してもよい。例えば、ウレタン結合による架橋反応を起こすためには、分子構造としてイソシアネート基を有するものを適用するものとする。
【0016】
反射防止膜2中の無機顔料としては、透明性、透光性を有し、かつ可視光反射防止機能を発揮し得る超微粒子を適用するものとし、例えば二酸化ケイ素(SiO2)、好ましくは中空シリカ(空隙を有するSiO2超微粒子)、MgF2より選定する少なくとも一種を適用する。
中空のシリカ(空隙を有するSiO2超微粒子)は市販されており、屈折率は1.3付近のものが知られている。
【0017】
フッ素系樹脂の具体例として、ヘキスト社の低屈折率フッ素樹脂、旭硝子社製の商品名「CYTOP」、三菱レイヨン社製の商品名「17FM」(特開平4−355401号公報)等が挙げられる。これらは、いずれも屈折率が概ね1.34程度であるため、上記中空シリカを添加することによって反射防止膜2の屈折率を1.3以下程度に下げることができる。
また、フッ素系樹脂として架橋が可能な構造を有する4フッ化エチレン共重合体(例えばダイキン工業社製商品名GK500)を用いると膜の屈折率は1.42程度となるが、これに中空シリカを添加することにより膜全体として屈折率を1.3以下に下げることができる。
【0018】
このような屈折率の低下は、塗布面の凹凸による粒子構造傾斜膜によるものであることが知られており(遠藤ら 電気通信情報学会 93 No428、13−16(1994))、反射防止膜塗布面の表面の凹凸を維持することも反射防止機能を発揮させるためには重要であることがわかる。
【0019】
無機顔料の超微粒子は、平均粒径が40〜200nm、さらに好ましくは40〜100nmであるものとする。平均粒径が40nmよりも小さいと反射防止膜2の表面が平坦になりすぎて充分な反射防止効果が得られなくなるためであり、一方平均粒径が100nmよりも大きいと、反射防止効果については充分に得られるが、拡散反射が大きくなり、層が白濁しパネルを適用する画面の解像度が低下するおそれがあるためである。上述したことから中空シリカの平均粒径は40〜100nmであることが望ましく、また、微粒子間で形成される谷部の深さが20〜100nmであることが好ましい。
【0020】
反射防止膜2は、上記フッ素系樹脂と上記無機顔料微粒子とを所定の有機溶媒を用いて混合した塗液を基材1上に塗布することによって形成される。
有機溶媒としては、フッ素系樹脂を溶解させ、基材1に対して不溶なものを適用するものとし、例えば脂肪族炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類、アルコール類、ケトン類、エーテル類、エステル類、アルコールエステル類、ケトンエーテル類、エステルエーテル類の少なくともいずれか一種あるいはこれらの二種以上の混合物を適用することができる。また水に可溶なフッ素樹脂を用いた場合には、溶媒として水を適用することもできる。
【0021】
反射防止膜2のコーティング方法としては、ディップコートの他、スピンコート、ロールコート、メニスカスを利用したヒラノテクシード製のCAPコート等が挙げられる。
ディップコートの場合には、適用するフッ素系樹脂の濃度と被塗布体の引き上げ速度を調整することによって、所望の膜厚に制御することができ、膜厚は単層の場合には、屈折率と物理的な膜厚の掛け算によって得られる光学的膜厚を、所望の波長の4分の1になるようにする。このとき、波長は最も視感感度の高い550nmに選定することが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0022】
上述した反射防止膜2上には、保護層3が形成されている。
この保護層3は、下記〔化2〕に示す反応性シリコーンオイルを用いて形成する。反応性シリコーンオイルとしては、主に側鎖変性型と両末端変性型のものがある。またこれら以外にも片末端変性型やポリマー型カップリング剤もある。
なお、本発明においては、下層の反射防止膜2への吸着性が良好なものとして、特にアミノ変性シリコーンオイルを選定する。
【0023】
【化2】
(式中、X1、X2、X3は、同一もしくは異なり、メチル基またはアミノ基を表し、mは1〜10、nは1〜10である。ただし、X1、X2、X3のうちの少なくとも一つはアミノ基である。)
【0024】
上述したアミノ変性シリコーンオイルを用いて保護層3を形成する場合、下層の反射防止膜2の屈折率によって全体の反射率の劣化率が変化する。
図2に、反射防止膜2の屈折率と、その上層に形成された保護層(アミノ変性シリコーンオイル膜)3の屈折率との差をパラメータとしたときの、保護層3の膜厚と、それによる反射率の劣化率との関係を示す。
なお実用的な特性を考慮して、波長550nmの光の反射率が最低値となるように反射防止膜2の膜厚を選定した。
【0025】
計算は下記〔数1〕に示す光学薄膜の特性行列式を用いて行った。下記〔数1〕中δ=(2π/λ)ndとする(λ=波長、n=屈折率、d=膜厚)。
【0026】
【数1】
【0027】
反射防止膜2と保護層3の特性行列式を掛け合わせ、総合的な膜の特性行列式を計算し、その後、下記〔数2〕に示すエネルギー反射率の式に代入して計算した(参考文献 反射防止膜の特性と最適設計、膜作製技術 技術情報協会)。
なお、〔数2〕中nsは、基材1の屈折率である。
【0028】
【数2】
【0029】
図2に示すように、保護層(アミノ変性シリコーンオイル膜)3の屈折率が、下層の反射防止膜2の屈折率とほぼ等しく、屈折率差が0.02である場合には、保護層3の膜厚が60nm以上であっても反射率の劣化率は極めて小さく、膜厚による変極点もないことがわかる。
【0030】
しかしながら、反射防止膜2の屈折率と保護層3の屈折率との差が大きくなるに従い、反射率の劣化率が大きくなる。
図2に示すように、特に反射率の劣化率が0.5%を越えるところから、いずれの屈折率差のグラフにおいても急激な立ち上がりが見られる。このことから、反射率の劣化率が0.5%を越えると、保護層3の膜厚を調整することによって反射率を制御することが極めて困難になるということがわかる。
【0031】
また、反射防止部品の耐擦過性を確保するためには、保護層3の膜厚は20nm以上とすることが必要であるが、図2に示すように、反射防止膜2の屈折率と保護層3の屈折率との差が0.17にもなると、反射率の劣化率を考慮すると膜厚を適宜選定することができなくなる。よって図2から、反射防止膜2の屈折率と保護層3の屈折率との差は0.12以内であることが望ましい。
【0032】
〔第2の実施の形態〕
本発明の反射防止部品の他の一例の概略図を図3に示す。
この例における反射防止部品20は、基材1と反射防止膜2との間に、反射防止膜2よりも屈折率の大きい顔料添加樹脂層4が形成されている構成を有している。
【0033】
図3の反射防止パネル20の基材1、反射防止膜2、および保護層3については、図1に示した反射防止部品10と同様のものを適用することができるため、これらの説明を省略する。
【0034】
顔料添加樹脂層4は、所定の無機顔料微粒子と樹脂(バインダー)とにより形成されるものとし、無機顔料微粒子は、反射防止機能、帯電防止機能、赤外線反射機能、および電磁遮断機能を有するものとする。
反射防止機能を有する微粒子としては、例えば二酸化ケイ素(SiO2)、好ましくは空隙を有するSiO2、MgF2等が挙げられる。帯電防止機能を有する微粒子としては、例えばSnO2、SnO2+酸化アンチモン(Sb2O3)、In2O3、In2O3+SnO2等が挙げられる。また、赤外線反射機能を有する微粒子としては、In2O3、In2O3+SnO2、酸化チタン(TiO2)、酸化ジルコニウム(ZrO2)等が挙げられる。
【0035】
上記帯電防止機能を有する微粒子および赤外線反射機能を有する微粒子は、屈折率が1.5以上であるため、これらの微粒子を用いて顔料添加樹脂層4を形成することによって全体として極めて低い反射特性が得られる。
【0036】
帯電防止機能、赤外線反射機能、あるいは電磁遮断機能を有する微粒子としては、上記のように、SnO2、In2O3、酸化チタン(TiO2)、酸化ジルコニウム(ZrO2)等の金属酸化物やこれらの混合物を適用できるが、特にSnO2+10重量%Sb2O3、In2O3+5重量%SnO2等が帯電防止特性および赤外線反射特性に優れているので望ましい。
【0037】
顔料添加樹脂層4は、膜厚を0.1〜0.5μm、無機顔料微粒子の粒径は5〜50nmとすることが望ましい。
特に上記帯電防止機能を有する微粒子は、平均粒径10nm以下とすることが望ましい。平均粒径10nm以下の超微粒子を塗布液に混合した場合には、塗布面の表面状態の粗度が大きくても均一な膜を形成できる。また、塗液を厚く塗布しても透過率の低下や白濁を生じるおそれが比較的少ない。
【0038】
また、帯電防止機能を有する金属酸化物の微粒子や、これらの混合物は、エネルギーバンドギャップが3eV以上あるために可視光域で高い透過性を示すと同時に、化学量論組成からのずれ、および不純物添加による高い自由電子濃度を有するため高導電性を示す。また、直接超微粒子同士が接触状態になくても、すなわち、微粒子間にバインダー等が介在していても、顔料添加樹脂層4の膜厚が充分に薄ければ、トンネル効果によって導電性を示す。帯電防止機能を有するためには、106〜109Ω/cm2程度の導電性が確保されればよいので、この条件を満たす範囲で微粒子とバインダーの混合比率を適宜設定することができる。
【0039】
バインダー用の樹脂としては、フッ素系樹脂の他、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、シリコーン系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、シロキサン系樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、スチレン樹脂、ABS樹脂、ポリビニルアルコール等が挙げられるが、このうち高屈折性を有するものとしては、ポリスチレン樹脂やスチレン樹脂、塩化ビニル樹脂が好適である。
【0040】
上記超微粒子、バインダー樹脂および必要に応じてカップリング剤やその他の各種添加剤を用いて顔料添加樹脂層4形成用の塗液を作製する。添加剤としては、例えば基材1がプラスチックの場合には、この高分子体と反応しやすい官能基とSi(OR)x(X=2〜4、好ましくは3)とを有するシランカップリング剤を溶解した有機溶媒中に上記超微粒子を分散させる。
このようにして作製した塗液を基材1上に塗布し、硬化処理を行い、顔料添加樹脂層4を形成する。コーティング方法としては、ディップコートの他、スピンコート、ロールコート、メニスカスを利用したヒラノテクシード製のCAPコート等が挙げられる。また硬化方法としては、材料により電子線照射、加熱処理、紫外線照射等を適宜選択する。
【0041】
【実施例】
〔実験例1〕
反射防止膜2形成用塗液として、フッ化エチレン共重合物樹脂(ダイキン工業社製)1.83g、硬化剤としてD140N(三井武田ケミカル)0.24gをメチルイソブチルケトン45g中に溶解したものを作製した。この塗液をディップコーターでアクリル基材上に塗布し、90℃で24時間硬化処理を行い、反射防止膜2を形成した。
その後アミノ変性シリコーンオイル(日本ユニカ−FZ3707)0.25wt%のヘキサン溶液を調整し、上記反射防止膜2上にディップコーターで塗布し、24時間放置して保護層3を形成した。
反射防止膜2の膜厚は75nm、屈折率は1.44である。保護層3の膜厚は20nm、屈折率は1.41である。
【0042】
〔実施例1〕
反射防止膜2形成用塗液として、中空シリカ系ゾル液(触媒化成社製)5g、フッ化エチレン共重合物樹脂(ダイキン工業社製)1.83g、硬化剤としてD140N(三井武田ケミカル)0.24gをメチルイソブチルケトン45g中に溶解したものを作製した。この塗液をディップコーターでアクリル基材上に塗布し、90℃で24時間硬化処理を行い、反射防止膜2を形成した。
その後アミノ変性シリコーンオイル(日本ユニカ−FZ3707)0.25wt%のヘキサン溶液を調整し、上記反射防止膜2上にディップコーターで塗布し、24時間放置して保護層3を形成した。
反射防止膜2の膜厚は75nm、屈折率は1.41である。保護層3の膜厚は20nm、屈折率は1.41である。
【0043】
〔実施例2〕
反射防止膜2形成用塗液として、中空シリカ系ゾル液(触媒化成社製)5g、フッ化エチレン共重合物樹脂(ダイキン工業社製)0.92g、硬化剤としてD140N(三井武田ケミカル)0.24gをメチルイソブチルケトン45g中に溶解したものを作製した。この塗液をディップコーターでアクリル基材上に塗布し、90℃で24時間硬化処理を行い、反射防止膜2を形成した。
その後アミノ変性シリコーンオイル(日本ユニカ−FZ3707)0.25wt%のヘキサン溶液を調整し、上記反射防止膜2上にディップコーターで塗布し、24時間放置して保護層3を形成した。
反射防止膜2の膜厚は75nm、屈折率は1.33である。保護層3の膜厚は20nm、屈折率は1.41である。
【0044】
〔実施例3〕
顔料添加樹脂層4として、以下の方法により調整した樹脂をアクリル基材1上に塗布した。
TiO2微粒子:100重量部
(石原産業社製、平均粒径約20nm 、屈折率2.48)
オリゴマー :18重量部
(SO3Na基含有ウレタンアクリレート、数平均分子量:1000、
SO3Na濃度:1×10−1mol/g)
分散剤:20重量部
メチルイソブチルケトン:4800重量部
メチルエチルケトン:17重量部
シクロヘキサノン:11重量部
先ず、顔料、結合剤、有機溶媒を所定量混合し、アジターで分散処理を行い塗料を作製した。その後、この分散液に結合剤としてUV硬化性樹脂であるDPHA(日本化薬社製)をTiO2 100重量部に対して、19重量部添加し、攪拌機にて攪拌処理を行い、透明基材であるアクリル樹脂基材上に、ディッピング方式によって塗布した。これを80℃で乾燥、UV硬化(1000mJ/cm2)を行い、膜厚120nmの顔料添加樹脂層4を成膜した。この屈折率は1.83である。
その後、この顔料添加樹脂層4の上に低屈折率膜として、上記実施例1で示した反射防止膜2形成用塗液をディッピング方式によって塗布し、90℃で24時間硬化処理を行い、反射防止膜2を形成した。低屈折率膜の膜厚は80nmである。
その後、アミノ変性シリコーンオイル(日本ユニカ−FZ3707)0.25wt%のヘキサン溶液を調整し、反射防止膜2上にディップコーターで塗布し、24時間放置し、上述した実施例1と同様の保護層3を形成した。
【0045】
〔比較例1〕
反射防止膜2形成用塗液として、フッ化エチレン共重合物樹脂(ダイキン工業社製)1.8g、硬化剤としてD140N(三井武田ケミカル)0.2gをメチルイソブチルケトン45g中に溶解したものを作製した。
顔料添加樹脂層4形成用塗液として、熱硬化性導電塗料P3059(触媒化成工業社製)を用いた。
これらの塗布液をディップコーターでアクリル基材上に塗布し、90℃で24時間硬化処理を行い、顔料添加樹脂層4、および反射防止膜2を順次形成した。
その後ジメチルシリコーンオイル(日本ユニカ−L45(100))0.25wt%のヘキサン溶液を調整し、上記反射防止膜2上にディップコーターで塗布し、24時間放置して保護層3を形成した。
反射防止膜2の膜厚は75nm、屈折率は1.44である。保護層3の膜厚は20nm、屈折率は1.40である。
【0046】
〔比較例2〕
反射防止膜2形成用塗液として、中空シリカ系ゾル液(触媒化成社製)5g、フッ化エチレン共重合物樹脂(ダイキン工業社製)1.83g、硬化剤としてD140N(三井武田ケミカル)0.24gをメチルイソブチルケトン45g中に溶解したものを作製した。この塗液をディップコーターでアクリル基材上に塗布し、90℃で24時間硬化処理を行い、反射防止膜2を形成した。
その後ジメチルシリコーンオイル(日本ユニカ−L45(100))0.25wt%のヘキサン溶液を調整し、上記反射防止膜2上にディップコーターで塗布し、24時間放置して保護層3を形成した。
反射防止膜2の膜厚は75nm、屈折率は1.41である。保護層3の膜厚は20nm、屈折率は1.40である。
【0047】
〔比較例3〕
反射防止膜2形成用塗液として、中空シリカ系ゾル液(触媒化成社製)5g、フッ化エチレン共重合物樹脂(ダイキン工業社製)0.92g、硬化剤としてD140N(三井武田ケミカル)0.12gをメチルイソブチルケトン45g中に溶解したものを作製した。この塗液をディップコーターでアクリル基材上に塗布し、90℃で24時間硬化処理を行い、反射防止膜2を形成した。
その後ジメチルシリコーンオイル(日本ユニカ−L45(100))0.25wt%のヘキサン溶液を調整し、上記反射防止膜2上にディップコーターで塗布し、24時間放置して保護層3を形成した。
反射防止膜2の膜厚は75nm、屈折率は1.33である。保護層3の膜厚は20nm、屈折率は1.40である。
【0048】
上述のようにして作製した〔実験例1〕、〔実施例1〜3〕および〔比較例1〜3〕の各サンプルについて擦過性試験を行った。具体的には、布を用いて500g/cm2の荷重をかけて表面を200回摺動した後の表面剥離状態を評価した。評価結果を下記〔表1〕に示す。
なお、表1においては200回摺動した後に表面に剥離状態が確認されなかったものを○として評価した。
【0049】
【表1】
【0050】
上記〔表1〕中の実験例1および比較例1に示すように、反射防止膜2の表面が極めて平滑で、具体的には平均表面粗さが2nm未満の場合には、保護層3をアミノ変性シリコーンオイルによって形成した場合とジメチルシリコーンオイルによって形成した場合のいずれの場合においても表面に剥離の発生が確認されなかった。
【0051】
しかしながら、実施例1と比較例2、および実施例2と比較例3の結果から明らかなように、反射防止膜2の平均表面粗さが2nm以上となると、保護層3をアミノ変性シリコーンオイルによって形成した実施例1、2のサンプルは表面に剥離が確認されなかったが、ジメチルシリコーンオイルによって形成した比較例2、3のサンプルは表面に剥離の発生が確認された。
【0052】
上述したことから、反射防止膜2の平均表面粗さが2nm〜6nmであれば、保護層3をアミノ変性シリコーンオイルによって形成することにより、表面の剥離の発生を効果的に回避できることが確認された。
【0053】
また、実施例3においては、基材1と反射防止膜2との間に高屈折率の顔料添加樹脂層4を形成した構成としたことにより、さらに良好な反射率が得られ、また保護層3をアミノ変性シリコーンオイルによって形成したことにより、擦過性についても良好な評価が得られた。
【0054】
次に、保護層であるアミノ変性シリコーンオイル層の膜厚と擦過性との関係についての試験を行なった。
【0055】
〔実験例2〕
反射防止膜2形成用塗液として、中空シリカ系ゾル液(触媒化成社製)5g、フッ化エチレン共重合物樹脂(ダイキン工業社製)0.92g、硬化剤としてD140N(三井武田ケミカル)0.12gをメチルイソブチルケトン45g中に溶解したものを作製した。この塗液をディップコーターでアクリル基材上に塗布し、90℃で24時間硬化処理を行い、反射防止膜2を形成した。
その後アミノ変性シリコーンオイル(日本ユニカ−FZ3707)0.1wt%のヘキサン溶液を調整し、上記反射防止膜2上にディップコーターで塗布し、24時間放置して保護層3を形成した。
反射防止膜2の膜厚は95nm、屈折率は1.33である。保護層3の屈折率は1.41で膜厚は5nmである。
【0056】
〔実施例4〕
反射防止膜2形成用塗液として、中空シリカ系ゾル液(触媒化成社製)5g、フッ化エチレン共重合物樹脂(ダイキン工業社製)0.92g、硬化剤としてD140N(三井武田ケミカル)0.12gをメチルイソブチルケトン45g中に溶解したものを作製した。この塗液をディップコーターでアクリル基材上に塗布し、90℃で24時間硬化処理を行い、反射防止膜2を形成した。
その後アミノ変性シリコーンオイル(日本ユニカ−FZ3707)0.25wt%のヘキサン溶液を調整し、上記反射防止膜2上にディップコーターで塗布し、24時間放置して保護層3を形成した。
反射防止膜2の膜厚は75nm、屈折率は1.33である。保護層3の屈折率は1.41で膜厚は20nmである。
【0057】
〔実験例3〕
反射防止膜2形成用塗液として、中空シリカ系ゾル液(触媒化成社製)5g、フッ化エチレン共重合物樹脂(ダイキン工業社製)0.92g、硬化剤としてD140N(三井武田ケミカル)0.12gをメチルイソブチルケトン45g中に溶解したものを作製した。この塗液をディップコーターでアクリル基材上に塗布し、90℃で24時間硬化処理を行い、反射防止膜2を形成した。
その後アミノ変性シリコーンオイル(日本ユニカ−FZ3707)0.5wt%のヘキサン溶液を調整し、上記反射防止膜2上にディップコーターで塗布し、24時間放置して保護層3を形成した。
反射防止膜2の膜厚は50nm、屈折率は1.33である。保護層3の屈折率は1.41で膜厚は40nmである。
【0058】
上述のようにして作製した〔実験例2、3〕および〔実施例4〕のサンプルのアミノ変性シリコーンオイルによる保護層の膜厚、反射率の劣化率、反射防止膜の平均表面粗さを測定し、さらに上記方法による擦過性の試験を行った結果の表面剥離状態を評価した。
膜厚および反射率測定については、FILMETRICS社製のF20を用いた。また反射率の劣化率については、最低反射率が波長550nmの光で得られるように反射防止膜2の膜厚を調整した。劣化の比較については、アミノ変性シリコーンオイルによる保護層が形成されていないものの最低反射率を基準として行った。評価結果を下記表2に示す。なお表2においては、表面に剥離状態が確認されなかったものを○、実用的に問題がある程度に剥離が確認されたものを×として評価した。
【0059】
【表2】
【0060】
表2に示すように、アミノ変性シリコーンオイルによって保護層3を膜厚20nm程度に形成した実施例4においては、反射率の劣化率も極めて低く、優れた反射率特性が得られた。また、反射防止膜2の平均表面粗さが6nm以下であれば、擦過性試験においても表面に剥離が確認されず耐久性に優れていることがわかった。
【0061】
また、アミノ変性シリコーンオイルによって保護層3を膜厚5nm程度に形成した実験例2においては、反射率の劣化は確認されなかったが、擦過性試験において表面に剥離が確認され、耐久性の点で劣っていることがわかった。
【0062】
また、アミノ変性シリコーンオイルによって保護層3を膜厚40nm程度に形成した実験例3においては、耐久性の点では優れた結果が得られたが、反射率の劣化率が高く、反射率特性の点で劣っていることがわかった。
【0063】
【発明の効果】
本発明によれば、反射防止効果および耐擦過性に優れ、特に実用的に表面の強度が要求されるCRTやリアプロジェクションテレビ等、ディスプレイ機器の前面板、光学レンズ、自動車窓ガラス、各種計器類の前面板等に好適な反射防止部品が得られた。
【0064】
また、本発明の反射防止部品によれば、アミノ変性シリコーンオイルによって保護層を形成したことにより、下層の反射防止層の平均表面粗さが6nm以下程度であれば、実用上充分な耐擦過性を実現できた。
【0065】
本発明によれば、保護層の屈折率と下層の反射防止膜の屈折率との差を0.12以内に選定したことにより、保護層を形成したことによる反射率特性の劣化率が0.5%以内という、極めて低い範囲において保護層の膜厚を広く選定することが可能となり作製上の寸法自由度が広がり、かつ反射防止効果と耐擦過性の双方の特性について良好な反射防止部品が得られた。
【0066】
また、本発明によれば、基材と反射防止膜との間に、反射防止膜よりも屈折率の大きい顔料添加樹脂層を形成したことにより、さらに反射率特性の向上が図られた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の反射防止部品の一例の概略構成図を示す。
【図2】保護層の膜厚と反射率特性の劣化率との関係を示す。
【図3】本発明の反射防止部品の他の一例の概略構成図を示す。
【符号の説明】
1……基材、2……反射防止膜、3……保護層、4……顔料添加樹脂層、10,20……反射防止部品
Claims (7)
- 基材上に無機顔料を添加したフッ素系樹脂からなる反射防止膜が形成され、該反射防止膜上にアミノ変性シリコーンオイルよりなる保護層が形成されてなることを特徴とする反射防止部品。
- 上記無機顔料が中空シリカであることを特徴とする請求項1に記載の反射防止部品。
- 上記反射防止膜の平均表面粗さが2nm以上6nm以下であることを特徴とする請求項1に記載の反射防止部品。
- 上記保護層と上記反射防止膜の屈折率の差が、0.12以内であることを特徴とする請求項1に記載の反射防止部品。
- 上記アミノ変性シリコーンオイルよりなる保護層を形成したことによる、波長が550nmの光の反射率特性の劣化率が、0.5%以内であることを特徴とする請求項1に記載の反射防止部品。
- 上記基材と上記反射防止膜との間に、上記反射防止膜よりも屈折率の大きい顔料添加樹脂層が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の反射防止部品。
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