JP2004093110A - バーナ・ランスおよび精錬方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】酸素を含む支燃性流体を供給する支燃性流体供給管2の外周側に、燃料流体を供給する燃料流体供給管3が設けられた二重管構造を有し、これら供給管2、3の隙間が燃料流体流路8とされ、支燃性流体供給管2に、燃料流体流路8内の燃料流体の一部をこの供給管2の内部に導く一次燃料流体導入部16が形成され、燃料流体流路8内の燃料流体の他部を、二次燃料流体として、供給管2、3の先端側から二次燃料流体噴出部17を通して外部に噴出させることができるように構成されている。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、酸素を含む支燃性流体を噴出させつつ、燃料を燃焼させて被加熱物を加熱するバーナ・ランスおよび精錬方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
酸素を含む支燃性流体(酸素、空気、酸素富化空気等)を噴出させつつ、燃料を燃焼させて被加熱物を加熱するバーナは、様々な生産プロセスで用いられている。
例えば、電気炉製鋼プロセスにおいては、鉄屑等の原料を電気炉内で加熱し、溶融させる際に、原料にコールドスポットといわれる低温部位が生じ、この部分において原料が溶融しにくくなることがあるが、バーナの使用によって、原料の加熱効率を高め、原料溶融のための電力使用量を低減し、溶融コストを削減することができる。
また、支燃性流体によって原料の一部を酸化、溶融させ、切断を促し、原料に対する加熱効率をさらに高めることができる。さらには、支燃性流体の供給によって、未燃焼流体(一酸化炭素等)の燃焼を促進することができる。
バーナは、支燃性流体の流速を高めるほど、被加熱物の切断速度を高め、加熱効率を高めることができるため、支燃性流体の高速化が要望されている。
【0003】
しかしながら、支燃性流体を高速化する(例えば音速を越える速度とする)と、この流体によって燃料の燃焼炎が不安定になり、かえって加熱効率が低下することがあった。
特許文献1、2には、酸素ガス供給管の外周側に、燃料ガス供給管が設けられ、さらにその外周側に、二次酸素を供給する二次酸素供給管が設けられた三重管構造を有するバーナが開示されている。
特許文献3には、酸素を供給する中央導管の外側に、燃料供給用の管と、二次酸素供給用の管が設けられ、燃料および二次酸素をバーナ先端の噴出孔から噴出させることができる三重管構造のバーナ・ランスが開示されている。
これらのバーナでは、酸素ガス供給管から高速の酸素ガス流を噴出させるとともに、二次酸素を用いて燃料ガスを燃焼させることができるようになっており、この二次酸素によって燃焼炎を安定化させることができる。
このため、燃焼炎の不安定化による加熱効率の低下を引き起こすことなく、酸素ガス流を高速化することができる。
【0004】
特許文献2には、溶融金属に対する支燃性ガスの吹込みについて記載されている。
従来、溶融金属に対する支燃性ガスの吹込みは、電気炉の作業口からの消耗型ランスパイプあるいは水冷ランスにより行われている。
これらの装置は、高温の溶融金属やスラグ中にランスを浸漬させて、直接溶融金属に音速以上の速度で酸素ガスを吹込むことができる。
【0005】
しかし、非水冷型ランスの場合には、ランス自体が溶損するため、これを頻繁に交換する必要がある。一方、水冷型ランスの場合は、ノズル閉塞・溶損防止のため頻繁にメンテナンスを行う必要があるため、作業性に問題があった。
このため、離れた位置の被加熱物を効率的に加熱することができるバーナ・ランスが要望されていた。
また、上記従来のバーナは、三重管構造とされていることから、構造が複雑である上、全体のサイズも大きくなってしまう。このため、メンテナンスが難しく、しかも取り扱いにくい問題があった。
また、溶融金属(被加熱物)に対して酸素ガスを吹込む際には、ノズルから離れた溶融金属に対して高速(例えば音速以上)の噴流を衝突させる必要があるため、酸素ガスの速度低下を防ぐ必要がある。また、この際、燃料の使用量を低く抑えることが要望されている。
【0006】
また、鉄鋼精錬プロセスにおいては、高炉などで製造した溶鉄(例えば溶銑や、溶銑を脱炭して得られた溶鋼)を効率的に精錬するため、酸素などの支燃性流体の供給は重要である。
支燃性流体は、溶鉄中の珪素、燐、炭素などの除去や、別途添加される炭素、珪素、アルミニウムなどが酸化する際の発生熱を溶鉄に着熱させる(熱付加)ために用いられる。
支燃性流体を溶鉄に作用させる際には、上記除去反応や熱付加の効率を高めるために、溶鉄を攪拌し混合することが好ましい。
このため、支燃性流体を供給するには、支燃性流体供給管に、内径が先端方向に向けて徐々に大きくなるテーパ部が形成されたラバールノズルを有するバーナ・ランスが用いられている。
このタイプのランスを用いると、支燃性流体の初速が超音速となり、効率よく溶鉄を攪拌することができる。
支燃性流体に与えられたエネルギーを効率よく攪拌力に変換するためには、浴面(溶鉄表面)に対し、バーナ・ランスをできるだけ低く配置することが有効であるが、ランスを低く配置すると、輻射熱などによりランスが劣化しやすくなる問題がある。
そのため、ランスを高く配置せざるを得ず、高い精錬効率を得るのは難しい。
また、支燃性流体の流量などに応じて、ノズル形状や供給圧力の適正化などが行われているが(例えば特許文献4を参照)、支燃性流体を十分に高速化するのは難しく、高速化を実現できる精錬方法が要望されている。
【0007】
【特許文献1】
特開平8−75364号公報
【特許文献2】
特開平10−9524号公報
【特許文献3】
特開平10−259413号公報
【特許文献4】
特開平10−30110号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は以下の通りである。
(1)加熱効率を高めることができ、かつコンパクトで取り扱い性およびメンテナンス性に優れたバーナ・ランスを提供する。
(2)支燃性流体の速度低下を防ぐことができるバーナ・ランスを提供する。
(3)精錬効率を向上させることができる精錬方法を提供する。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明のバーナ・ランスは、酸素を含む支燃性流体を供給する支燃性流体供給管の外周側に、燃料流体を供給する燃料流体供給管が設けられた二重管構造を有し、これら供給管の隙間が燃料流体流路とされ、支燃性流体供給管に、燃料流体流路内の燃料流体の一部をこの供給管の内部に導く一次燃料流体導入部が形成され、燃料流体流路内の燃料流体の他部を、二次燃料流体として、供給管の先端側から外部に噴出させることができるように構成されていることを特徴とする。
本発明のバーナ・ランスは、支燃性流体供給管の先端部の外周側に、外方に延出し燃料流体供給管に達する延出部が形成され、この延出部に、前記燃料流体の他部を外部に噴出させる二次燃料流体噴出部が形成されている構成とすることができる。
二次燃料流体噴出部は、燃料流体の他部を、支燃性流体をほぼ囲むように噴出させることができるように構成することができる。
二次燃料流体噴出部は、基端側から先端側に向けて内方に傾斜して形成され、支燃性流体供給管の中心軸に対する傾斜角が、20°以下であることが好ましい。
二次燃料流体噴出部は、二次燃料流体の流量を、全燃料流体流量の50〜90%の範囲とすることができるように構成するのが好ましい。
本発明のバーナ・ランスでは、支燃性流体供給管の中心軸を中心とし、二次燃料流体噴出部の出口を通る円の直径である距離D3が、支燃性流体供給管の出口径D2に対し、次式で表される範囲内であることが好ましい。
1.3≦D3/D2≦3.5
本発明のバーナ・ランスでは、一次燃料流体導入部よりも先端側に相当する支燃性流体供給管内面に溝が形成され、この溝の深さL1が次式で表される範囲内であることが好ましい。
【0010】
【数2】
【0011】
本発明のバーナ・ランスでは、支燃性流体供給管の中心軸に対する一次燃料流体導入部の傾斜角を、5〜90°とするのが好ましい。
【0012】
本発明の冷鉄源の溶解・精錬炉の操業方法は、バーナ・ランスを用いて、酸素を含む支燃性流体と一次燃料流体との混合流体を燃焼させつつ冷鉄源に向けて噴出させるとともに、二次燃料流体を前記混合流体と合流させて燃焼させつつ冷鉄源に向けて噴出させることによって、この冷鉄源を溶解し、精錬する炉の操業方法であって、冷鉄源が溶解する溶解工程と、冷鉄源が溶落ちした後の精錬工程とにおいて、それぞれ独立に燃料流体供給量を設定することを特徴とする。
溶解工程においては、支燃性流体と燃料流体の比率を、1≦酸素比<3となるようにし、溶落ちした後の工程においては、支燃性流体と燃料流体の比率を、酸素比≧3となるようにすることができる。
本発明の操業方法では、上記バーナ・ランスを用いることができる。
本発明の操業方法は、脱珪、脱燐、脱硫、脱炭、昇温、熱付加、スクラップ溶解、合金溶解、還元処理のうち1種以上を対象とすることができる。
支燃性流体としては、純酸素ガス、工業用酸素ガス、空気のうち1種または2種以上を用いることができる。
【0013】
本発明の精錬方法は、バーナ・ランスを用いて、酸素を含む支燃性流体と一次燃料流体との混合流体を燃焼させつつ溶鉄に向けて噴出させるとともに、二次燃料流体を前記混合流体と合流させて燃焼させつつ溶鉄に向けて噴出させることによって、この溶鉄を精錬することを特徴とする。
支燃性流体と燃料流体との比率は、酸素比>5となるようにするのが好ましい。
本発明の精錬方法では、上記バーナ・ランスを用いることができる。
本発明の精錬方法では、脱珪、脱燐、脱硫、脱炭、昇温、熱付加、スクラップ溶解、合金溶解、還元処理のうち1種以上を対象とすることができる。
精錬にあたっては、固体炭素源、炭化水素源、石灰源、マグネシウム源、アルミニウム源、鉄鉱石、マンガン鉱石、合金のうち1種以上を溶鉄に添加することができる。
本発明の精錬方法は、炭素濃度が0.6mass%以下である低炭素域において、溶鉄の精錬を行うことができる。
支燃性流体としては、純酸素ガス、工業用酸素ガス、空気のうち1種または2種以上を用いることができる。
本発明の精錬方法では、精錬の際に発生する排ガスから顕熱または潜熱を回収することができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明のバーナ・ランスの一実施形態を示すものである。
図1に示したバーナ・ランス1は、酸素を含む支燃性流体を供給する支燃性流体供給管2の外周に、燃料流体を供給する燃料流体供給管3が設けられ、さらにその外周に還流式水冷ジャケット4が設けられたノズル5を備えている。
すなわち、ノズル5は、支燃性流体供給管2と燃料流体供給管3とからなる二重管構造物の外周に、水冷ジャケット4が設けられた構成となっている。
支燃性流体供給管2の先端部2aの外周側には、径方向外方に延出し、燃料流体供給管3の先端部3aに達する延出部6が形成されている。
以下、支燃性流体供給管2の内部を支燃性流体流路7といい、支燃性流体供給管2と燃料流体供給管3との隙間を燃料流体流路8という。
【0015】
支燃性流体供給管2は、基端側から先端側にかけて、一定の内径を有する太径部11と、太径部11よりも内径が小さいスロート部12と、スロート部12から先端側に向けて内径が徐々に大きくなる広がり部13と、ほぼ一定の内径を有する直胴部14とを有する。
【0016】
一般に、ラバールノズルの支燃性流体供給管に形成されたスロート部の断面積AL1、および出口断面積(支燃性流体流路の出口断面積)AL2は、以下に示す式(1)および(2)に基づいて設定される。
【0017】
【数3】
【0018】
【数4】
【0019】
図1に示すバーナ・ランス1におけるスロート部12の断面積をA1とし、供給管2の先端における支燃性流体流路7の断面積(直胴部14における流路7の断面積)をA2とすると、これら断面積A1、A2の比率(A2/A1)は、式(2)に示すラバールノズルの断面積比(AL2/AL1)以上となるように設定することが好ましい。
この断面積比A2/A1を、ラバールノズルの断面積比(AL2/AL1)以上に設定することによって、支燃性流体を、若干、過膨張状態とし、ノズル5内の圧力を低くし、支燃性流体が燃料流体流路8に流入することによる逆火を未然に防ぐことができる。
【0020】
広がり部13の内壁の傾斜角θ1(供給管2の中心軸に対する傾斜角)は、3〜10°とすることが好ましい。
傾斜角θ1を、この範囲にすることによって、支燃性ガスを高速化することができる。傾斜角θ1が上記範囲を外れる場合には、支燃性流体の流速が低下する。
広がり部13は、最小内径が、スロート部12の内径D1にほぼ等しくなるように形成されている。
【0021】
直胴部14の基端付近の供給管2には、燃料流体流路8内の燃料流体を供給管2の内部に導入する一次燃料流体導入孔16(一次燃料流体導入部)が形成されている。一次燃料流体導入孔16は、供給管2の周方向に間隔をおいて複数形成するのが好ましい。
一次燃料流体導入孔16は、供給管2の外側から内側に向けて先端方向に傾斜して形成するのが好ましい。
供給管2の中心軸に対する噴出孔16の傾斜角θ2(噴出孔16の中心軸の傾斜角)は、5〜90°とするのが好ましい。
この傾斜角θ2をこの範囲とすることによって、火炎を長くすることができる。
傾斜角θ2が上記範囲未満であると、供給管2内において一次燃料流体と支燃性流体の混合が不十分になりやすくなる。傾斜角θ2が上記範囲を越えると、一次燃料流体の流量が低下しやすくなる。
【0022】
延出部6には、燃料流体流路8内の燃料流体を外部に噴出させる二次燃料流体噴出孔17(二次燃料流体噴出部)が形成されている。
二次燃料流体噴出孔17は、供給管2の周方向に間隔をおいて複数形成するのが好ましい。二次燃料流体噴出孔17は、供給管2からの混合流体(一次燃料流体および支燃性流体)をほぼ囲むように、燃料流体を噴出させることができるように形成するのが好ましい。
図示例では、6つの二次燃料流体噴出孔17が形成されている。これら噴出孔17は、相隣接する2つの噴出孔17の間隔がほぼ等しくなるように形成されている。これら噴出孔17は、供給管2の中心軸からの距離が互いにほぼ等しくなるように形成されている。
【0023】
二次燃料流体噴出孔17は、基端側から先端側に向けて内方に傾斜して形成するのが好ましい。供給管2の中心軸に対する噴出孔17の傾斜角θ3(噴出孔17の中心軸の傾斜角)は、20°以下(好ましくは10°以下)とするのが好適である。
この傾斜角θ3をこの範囲とすることによって、火炎を長くすることができる。
この傾斜角θ3がこの範囲を越えると、二次燃料流体と支燃性流体とが直ちに混合し、燃焼反応が短時間で終了するため火炎長が短くなる。
傾斜角θ3は3°以上(好ましくは5°以上)とするのが好ましい。この傾斜角θ3がこの範囲未満であると、噴出孔17から噴出する二次燃料流体が、支燃性流体流路7からの火炎(一次燃料流体と支燃性流体が形成する火炎)に達しにくくなり、二次燃料流体の燃焼率が低下して火炎長が短くなる。
【0024】
二次燃料流体噴出孔17の大きさは、全燃料流体(一次燃料流体および二次燃料流体)の流量に対する二次燃料流体流量の比率が、50〜90%の範囲とすることができるように設定すると、火炎を長くすることができる。この比率が上記範囲を外れると、火炎長が短くなる。
【0025】
二次燃料流体噴出孔17の半径方向位置は、次のように定めるのが好ましい。支燃性流体供給管2の中心軸を中心とし、二次燃料流体噴出孔17出口の中心軸位置を通る円の直径である距離D3は、支燃性流体供給管2の出口径D2(先端部2aにおける内径)に対し式(3)に示す関係にあることが好ましい。
1.3≦D3/D2≦3.5 ・・・・・(3)
【0026】
D3/D2がこの範囲未満である場合には、二次燃料流体と支燃性流体とが直ちに混合し、燃焼反応が短時間で終了するため火炎長が短くなる。
また、D3/D2がこの範囲を越える場合には、噴出孔17から噴出する二次燃料流体と、支燃性流体流路7からの火炎(一次燃料流体と支燃性流体が形成する火炎)との距離が大きくなるため、二次燃料流体の燃焼率が低下して火炎長が短くなる。
なお、距離D3は、噴出孔17の出口(先端側)の中心軸位置と、供給管2の中心軸位置との距離の2倍に相当する。
【0027】
直胴部14の内径は、広がり部13の最大内径とほぼ等しくなるようにされている。
直胴部14の内面には、周方向に沿って溝18が形成されている。溝18は、燃焼炎を安定化するためのもので、一次燃料流体導入孔16より先端側の位置に全周にわたって形成されている。
溝18の深さL1は、次に示す式(4)で表される範囲にあることが好ましい。
【0028】
【数5】
【0029】
溝18の深さL1がこの範囲外になると、火炎が不安定となる。
溝18は、先端部2aよりも基端側に形成すると、火炎を安定化させることができるため好ましい。
溝18の幅L2は、深さL1以上にすることが好ましい。
この幅L2が上記範囲未満である場合には、火炎が不安定になりやすい。
【0030】
水冷ジャケット4は、その内部に冷却水を流通させることができるようになっており、この冷却水によって、供給管2、3の内部温度を調節することができるようになっている。
【0031】
次に、バーナ・ランス1の使用方法について説明する。
支燃性流体を支燃性流体供給管2に供給し、先端側から噴出させる。
支燃性流体としては、ガス状または液状の酸素含有流体(空気、酸素、酸素富化空気など)を用いることができる。
支燃性流体供給管2では、流路が先端方向に向けて徐々に広くなっている広がり部13において、支燃性流体を適度に膨張させ、支燃性流体を高速化することができる。
【0032】
同時に、LNG(液化天然ガス)等の燃料流体を、燃料流体流路8(供給管2、3の隙間)に供給する。
なお、燃料流体としては、LNGのほか、LPG(液化石油ガス)、CO、H2、CO/H2混合ガスが使用できる。また、重油、灯油などの液体燃料を用いることもできる。
【0033】
燃料流体の一部は、一次燃料流体として、一次燃料流体導入孔16を通して供給管2内に流入し、支燃性流体に合流する。
一次燃料流体と支燃性流体との混合流体は、燃焼しつつ直胴部14内を先端方向に流れる。
直胴部14内面には、溝18が形成されているため、燃焼しつつ流れる混合流体の一部は、いったん溝18内に流入した後、溝18から流出し、直胴部14内面に沿って先端方向に流れる。
直胴部14を経た混合流体は、火炎を形成しつつ先端部2aから先端方向に噴出する。
【0034】
燃料流体流路8内の燃料流体の他部は、二次燃料流体として、二次燃料流体噴出孔17を通して外部に噴出する。
二次燃料流体は、供給管2からの混合流体(一次燃料流体および支燃性流体)をほぼ囲むように噴出する。
二次燃料流体の噴出速度は、20〜220m/sの範囲に設定することが好ましい。噴出速度がこの範囲未満であると、火炎長が短くなる。また噴出速度がこの範囲を越えると、火炎が不安定になりやすい。
全燃料流体の流量に対する二次燃料流体流量の比率は、50〜90%の範囲に設定すると、火炎を長くすることができる。この比率が上記範囲を外れると、火炎長が短くなる。
噴出した二次燃料流体は、先端部2aから先端方向に離れた位置において上記混合流体に合流し、混合流体中の支燃性流体によって燃焼し、火炎を形成する。
【0035】
本実施形態のバーナ・ランス1では、以下に示す効果を得ることができる。
(1)バーナ・ランス1は、支燃性流体供給管2に、燃料流体の一部を供給管2内部に導く一次燃料流体導入孔16が形成され、燃料流体の他部を、二次燃料流体噴出孔17を通して供給管2の先端側から噴出させることができるようにされている。
このため、一次燃料流体と支燃性流体との混合流体を供給管2から噴出させつつ燃焼させた後、先端部2aから先端方向に離れた位置において二次燃料流体を上記混合流体に合流させ、燃焼させることができる。
燃料流体を2段階に分けて燃焼させることができるため、火炎を安定化し、かつ火炎を長く形成することができる。従って、離れた位置の被加熱物を効率的に加熱することができる。
(2)燃料流体を2段階に分けて燃焼させ、安定な火炎を形成することができるため、火炎を不安定にすることなく支燃性流体を高流速化する(例えば音速を越える速度とする)ことができ、加熱効率を高めることができる。また燃料流体使用量を最小限に抑えることができる。
(3)支燃性流体供給管2の外周側に燃料流体供給管3を設けた二重管構造を有するので、構造を簡略化し、全体を小型化することができる。従って、メンテナンス性を向上させるとともに、取り扱いを容易にすることができる。
(4)二次燃料流体噴出孔17が、二次燃料流体が混合流体(一次燃料流体および支燃性流体)をほぼ囲むように噴出するように形成されているので、支燃性流体の拡散を防ぎ、支燃性流体の流れ方向の乱れを抑え、支燃性流体の流速減衰を防ぐことができる。
従って、燃料流体使用量を低く抑え、かつ支燃性ガスを溶融金属内に高速で吹き込むことができる。
(5)直胴部14内面に溝18を形成することによって、燃焼しつつ流れる混合流体の一部が、いったん溝18内に流入するようになるため、支燃性流体の流量が高い場合でも、溝18内において安定な火炎が形成される。
従って、支燃性流体の流速にかかわらず、燃料流体を安定に燃焼させることができる。
【0036】
なお、上記実施形態のバーナ・ランスは、燃料流体流路8からの燃料流体の一部を導入孔16を通して供給管2内部に導き、燃料流体の他部を噴出孔17を通して先端側から噴出させることができるように構成されている。
すなわち、このバーナ・ランスは、共通の燃料流体流路8からの燃料流体を一次燃料流体および二次燃料流体として使用できるように構成されているが、本発明のバーナ・ランスは、互いに隔てられた一次燃料流体流路と二次燃料流体流路とを設け、一次燃料流体と二次燃料流体とを独立的に供給できるように構成することも可能である。
この構成によれば、一次燃料流体と二次燃料流体の流量をそれぞれ独立的に設定することができるため、これら一次燃料流体と二次燃料流体の流量比の調整が容易となる。
従って、支燃性ガスの速度減衰の程度および火炎長を自在に調節することができ、被加熱物に対する距離に応じた効率的な加熱が可能となる。
【0037】
次に、本発明の冷鉄源の冷鉄源の溶解・精錬炉の操業方法について説明する。固体原料(冷鉄源)を溶解させるには、電気炉を用いて、固体原料を炉内へ装入し、アーク加熱により溶解させる。
炉内には供給熱の不足によりコールドスポットが生じることがあるため、本発明の操業方法では、バーナ・ランスを、コールドスポットを加熱できるように設置することができる。
電気炉溶解では、主に固体原料を溶解させる工程(溶解工程)と、それが溶落ちし液体状態となった液状物(溶鋼など)を昇温、精錬する工程(精錬工程)とがある。
【0038】
本発明の操業方法では、バーナ・ランスを用いて、酸素を含む支燃性流体と一次燃料流体との混合流体を燃焼させつつ冷鉄源に向けて噴出させるとともに、二次燃料流体を前記混合流体と合流させて燃焼させつつ冷鉄源に向けて噴出させることによって、この冷鉄源を溶解し、精錬する。
バーナ・ランスを用いて固体燃料を溶解するに際しては、固体原料が溶解する工程と、固体原料が溶落ちした後の精錬工程において、それぞれの工程に適した条件となるように、独立的に燃料流体供給量を設定する。
本発明のバーナ・ランスは、支燃性流体と燃料流体の混合流体を、火炎とともに高速で噴出させることができるため、優れた溶断能力を有する。
溶解工程においては、固体原料を溶断しつつ加熱することができるため、加熱効率を高めることができる。このため、燃料への着熱効率を高め、より多くの燃料を燃焼させ、電力源単位を低減することができる。
【0039】
一方、溶落ち以降の精錬工程では、炉内は、底部に溶鋼やスラグなどがあり、その上方は空間部となるため、多量の燃料を供給したとしても、その着熱効率は低くなる。
このため、流体流速が減衰するのを抑止する効果が得られる範囲で最小限の燃料を供給することによって、炉壁から浴に向けて効率よく支燃性流体(酸素)を吹き込み、脱炭反応やスラグフォーミングを促進させる。
【0040】
溶解工程では、支燃性流体と燃料流体との比率を、酸素比Xが1≦X<3を満たすようにするのが好ましい。これによって、固体原料の溶断、溶解を促すとともに、炉内で発生する一酸化炭素などの可燃成分を燃焼させることができる。
なお酸素比とは、燃料流体の完全燃焼に必要な酸素量に対して供給する酸素量の比をいう。
溶落ち以降の精錬工程では、燃料流体供給量を大幅に低く、好ましくは酸素比Xが3以上となるようにし、支燃性流体(酸素)を高速で吹き込むことによって、脱炭反応およびスラグフォーミングを促進しつつ、固体原料を溶解させることができる。
【0041】
このように、固体原料が溶解する溶解工程と、固体原料が溶落ちした後の精錬工程において、独立的に燃料流体供給量を設定する方法によれば、燃料流量のみを調整するという単純な方法によって、各工程の効率化を図ることができる。
【0042】
次に、本発明の精錬方法について説明する。
本発明の精錬方法は、バーナ・ランスを用いて、酸素を含む支燃性流体と一次燃料流体との混合流体を燃焼させつつ溶鉄(溶銑や溶鋼)に向けて噴出させるとともに、二次燃料流体を前記混合流体と合流させて燃焼させつつ溶鉄に向けて噴出させることによって、この溶鉄を精錬する精錬方法である。。
一般に、高炉から出銑された溶銑は、溶銑鍋などの搬送用器に受銑され、脱珪、脱燐、脱硫などの予備処理が施された後に、転炉に装入され、必要に応じて予備処理された後、脱炭される。脱炭された溶鋼は、溶鋼鍋などの搬送容器により搬送され、二次精錬工程に供される。
本発明の精錬方法は、溶鉄(溶銑や溶鋼)を受容する容器、例えば転炉、溶融還元炉、脱炭炉、二次精錬炉などの精錬炉において実施することができる。本発明の精錬方法は、高炉鍋、混銑車(トピードカー)、装入用の鍋などの輸送用容器において実施することもできる。
上記容器は、支燃性流体の排ガスを処理する処理装置を有するものであることが好ましい。
【0043】
以下、本発明の精錬方法を転炉内の溶鉄に対して適用した例を説明する。
一般に、転炉に装入された溶銑は、ランスからの酸素供給(送酸)によって脱炭され、溶鋼として次工程に供される。この際、スラグや溶鋼の成分調整を目的として、精錬材(CaO、ドロマイトなど)、鉱石類(鉄鉱石、マンガン鉱石など)、合金類などが添加される。
また、鉄スクラップの溶解、昇温などを行う際には、十分な熱量が必要となる。またマンガン鉱石などの鉱石類の還元処理を行う際には、十分な還元熱が必要である。このため、溶鉄中の炭素などの量が十分でない場合には、酸素の供給が十分であっても熱補償が必要となり、コークス、土壌黒鉛、石炭などの炭材が添加される。
酸素供給には、通常、深冷法などで製造された純度99%以上の酸素ガスが用いられる。酸素供給流量の上限は、脱炭で生成する、一酸化炭素を主成分とする排ガスを排気する設備の能力に応じて定めることができる。酸素供給流量は、通常、処理される溶鉄1トンあたり100〜300Nm3とされる。
【0044】
転炉内の溶鉄に対し酸素供給を行う際には、例えば、昇降台車に設置された水冷式の酸素供給用ランスが用いられる。
このランスとしては、例えば図1に示すバーナ・ランス1を用いることができる。
バーナ・ランス1を、排ガスフードのランス孔から炉内に導入し、バーナ・ランス1を用いて、支燃性流体と燃料流体との混合流体を、燃料流体を燃焼させつつ溶鉄に向けて噴出させる吹錬を行う。
この際、溶鉄に対し上方から混合流体を噴出させる上吹きを採用してもよいし、側方から噴出させる横吹きを採用してもよい。
【0045】
脱炭反応などの際にはスラグの生成や浴温度の上昇が起こるため、スラグや温度の調整を目的として、ランス高さや酸素供給量が適宜調整される。転炉における吹錬の際には、酸素だけでなく種々の副原料が添加されることがある。副原料は、通常、上方から自然落下させることによって添加される。
【0046】
吹錬の際には、次の反応が起きる。
(1)1/2O2+Fe=FeO
(2)C+FeO=CO(ガス)+Fe
(3)C+O=CO
(4)1/2O2+CO=CO2
このほか、石灰を添加する場合には、石灰の溶解反応も起きる。
【0047】
この際、バーナ・ランス1による酸素供給速度が高速であるほど、副原料、溶鉄、酸素の攪拌が効率よく行われ、上記反応(2)が遅滞なく起こる優先脱炭の条件となり、低炭素濃度になっても効率よく脱炭でき、鉄の歩留まりを高くすることができる。
特に、酸素吹錬中の転炉内環境は、酸素の反応挙動の違いから、高炭素域(C>0.6mass%)と低炭素域(C≦0.6mass%)とに大別することができる。
高炭素域では、供給される酸素はほぼ全量が脱炭に費やされ、高い酸素供給速度で吹錬が行われる。この際、反応は酸素の供給律速となる。
一方、低炭素域では、反応は炭素の移動律速となり、酸素の一部が鉄の酸化にも費やされるため、鉄の酸化を抑制して脱炭酸素効率を高めるため、通常、酸素供給速度は低く抑えられる。
【0048】
吹錬末期においては、浴中への酸素溶解が増大しスラグの酸化度は高くなり、酸素供給量の抑制による動圧の低下などで、スラグの酸化度は増大する傾向がある。
転炉の吹錬末期に、上記バーナ・ランス1を適用することで、酸素流量を低下させても酸素を浴に高速で添加することができるため、反応効率が改善され、スラグの酸化度が低減し、鉄の歩留まり向上、溶鋼の酸化度の低位安定化、さらにはマンガンの酸化が抑制され、マンガンの歩留まりの向上がもたらされる。
【0049】
支燃性流体が高速となると、浴中への進入深さが大きくなるが、支燃性流体が炉底に達すると、炉が劣化することがあるため、支燃性流体の速度は、これらが炉底に達しない程度に調整するのが好ましい。
【0050】
本発明の精錬方法は、脱珪、脱燐、脱硫、脱炭、昇温、熱付加、スクラップ溶解、合金溶解、還元処理のうち1種以上に適用することができる。
熱付加は、鉄源や合金源添加時の熱補償のために行われる。還元処理は、鉄鉱石、マンガン鉱石などを用いる場合に行われる。
精錬の際に用いる精錬材は、精錬の目的に応じて選択使用すればよい。例えば、脱珪や脱燐では、酸素との反応で生成する珪酸や燐酸をスラグとして安定化する必要があるため、安定化効果のある石灰源などを精錬材として用いるのが好ましい。
石灰源は、CaOとCaCO3のうち少なくとも一方を主成分とするものを用いると、迅速に溶融、スラグ化させることができるため好ましい。
本発明の精錬方法では、石灰源などの精錬材を支燃性流体とともに供給することもできるし、支燃性流体とは別に溶鉄に直接添加してもよい。
精錬材を粉体として使用する場合には、供給の際に飛散などにより失われる精錬材量と、精錬材の粉体化処理(粉砕処理)に要するコストとを経済性の点で考慮する必要がある。
精錬材の添加量は、精錬処理量、要求される精錬度、許容される精錬時間などの条件によって設定することができる。
【0051】
脱珪においては、供給された酸素や、生成した酸化鉄との反応によって、溶銑中の珪素が珪酸になる脱珪反応が重要である。
この反応が遅滞すると、酸化鉄の蓄積が起こったり、溶銑中の炭素との反応によって酸素が消費されるようになり、脱珪効率が低下し、珪素濃度を低くすることが難しくなる。
バーナ・ランス1を使用することによって、支燃性流体を高速で供給することができるため、優先脱珪反応を、珪素濃度が低くなるまで継続させることができる。
【0052】
脱燐においては、反応原理上、燐酸を固定する溶融石灰と、酸素ポテンシャルを高位に保つ酸化鉄が共存するスラグを、溶鉄と強攪拌することが必要である。バーナ・ランス1を使用することによって、支燃性流体を高速で供給することができるため、生成する高温の酸化鉄を石灰と混合でき、石灰の溶解を促進でき、さらに生成するスラグの攪拌も可能となる。また浴面への噴流の衝突圧を高めることができ、生成したスラグの浴中への叩き込みによる分散や溶鉄流動増加でスラグの巻き込みも増大でき、スラグの反応界面積の飛躍的な増大が可能となる。
【0053】
また、鉱石を還元処理する際には、鉄鉱石、マンガン鉱石、その他の鉱石に対し、媒溶剤(石灰など)、コークス、石炭などが還元剤や熱付加用の燃料源として添加されることがある。
バーナ・ランス1を使用することによって、鉱石の還元時やスクラップ溶解時の降温の補償や、単なる浴の昇温のために、燃料源を効率的に燃焼し、発生した熱を効果的に着熱させることが可能である。
【0054】
本発明の精錬方法においては、コークス、石炭などの固体炭素源:プラスチックなどの炭化水素源:CaO、CaCO3等を含む石灰源:MgO、MgCO3等を含むマグネシウム源:Al、Al2O3等を含むアルミニウム源:鉄鉱石:マンガン鉱石:合金のうち1種以上を溶鉄に添加することができる。
固体炭素源、炭化水素源、アルミニウム源は、燃料源として作用する。
本発明の精錬方法では、これらの燃料源や、燃料として作用する溶銑中の炭素や珪素を効率よく燃焼させることができ、スラグを含む浴を効率的に攪拌し、浴への発生熱の着熱を促進することができる。
【0055】
本発明の精錬方法では、支燃性流体を高速化するため、バーナ・ランスの燃料(燃料流体)の燃焼を適切に調整したり、燃料と支燃性流体との比率を適正化することが重要である。
燃料と支燃性流体との比率に関しては、燃料が一部しか燃焼しないように設定することもできるし、燃料がすべて燃焼するようにすることもできる。
この比率については、支燃性流体を溶鉄に効率よく作用させ、かつ高速化を達成するため、酸素比>5となるようにするのが好ましい。
支燃性流体としては、純酸素ガス、工業用酸素ガス、空気、これらの混合ガスなどの気体酸素含有ガスを用いることが可能である。
このほか、気体状態に限らず、液体状態、および気体中にミスト状の液体が含まれる状態の気液混合体であってもよい。
また、燃料に関しては、LPG、LNGなどの炭化水素系ガスのほか、製鉄所内で回収される高炉ガス、転炉ガスなども使用できる。
また、本発明では、精錬の際に発生する排ガスから、熱交換器などを用いて顕熱または潜熱を回収することができる。
【0056】
本発明の精錬方法では、支燃性流体を高速化することができるため、従来より浴の深部まで支燃性流体を吹き込むことができ、精錬効率を高めることができる。
【0057】
【実施例】
(実施例1)
図1に示す構成のノズル5を有するバーナ・ランス1を作製した。装置の仕様を表1に示す。
【0058】
(比較例1)
二次燃料流体噴出孔が形成されていないノズルを有するバーナ・ランスを作製した。その他の仕様は実施例に準じた。
【0059】
【表1】
【0060】
これら実施例1および比較例1のバーナ・ランスを用いて、大気中で燃焼試験を行った。
支燃性ガスとしては、純酸素を使用し、燃料としては、LPGを使用した。
試験結果を表2および図2に示す。表2は、火炎長の測定結果を示す。図2は、ノズルの先端から支燃性流体供給管の中心軸方向の距離と、その位置での支燃性流体の流速との関係を示す。
【0061】
【表2】
【0062】
表2より、実施例1のバーナ・ランスでは、火炎を長くすることができたことがわかる。
また、図2より、実施例1のバーナ・ランスでは、支燃性ガスの流速の減衰が起こりにくかったことがわかる。
【0063】
(実施例2)
350kgスケールの誘導溶解炉にて、温度1500℃、炭素濃度[C]が2.5重量%となるように溶鉄200kgを溶製した。
図1に示す構成のバーナ・ランス1を、溶鉄の浴面から高さ350mmの位置に配置し、支燃性流体および燃料流体を溶鉄に向けて5分間にわたって噴出させた。支燃性流体としては酸素を使用し、燃料としてはLPGを使用した。
一次燃料流体と二次燃料流体との割合は、1:2とした。
同時に、粒径10mm以下の粒状コークスを炉内に連続的に添加した。添加速度は15kg/hrとした。また、攪拌のため、炉底のポーラスノズルよりArガスを炉内に供給した。供給速度は3Nm3/hrとした。装置仕様および試験結果を表3に示す。
【0064】
(比較例2)
単孔のラバールノズルを有するバーナ・ランスを用いて、実施例2と同様の精錬試験を行った。装置仕様および試験結果を表3に示す。
【0065】
【表3】
【0066】
表3より、実施例2の精錬方法では、加炭効率を高めることができたことがわかる。
【0067】
(実施例3〜5)
3トンの溶銑を小型転炉に装入した。装入前の溶銑の[C]は4.7〜4.8重量%、[Si]が0.2重量%であった。
実施例1で用いたものと同様のバーナ・ランス1を用いて、上部から純酸素ガスを供給し吹錬を行った。
純酸素ガスの供給速度は450Nm3/hrとした。燃料としてはLPGを使用し、その供給速度は12.8Nm3/hrとした。
また、攪拌のため、炉底のポーラスプラグよりArガスを炉内に供給した。供給速度は40Nm3/hrとした。
処理中に溶銑をサンプリングし、成分を分析するとともに、浴の温度を随時測定し処理後の温度が1650℃となるように、冷材(鉄鉱石)供給量を調製した。
[C]が0.15質量%である場合と、[C]が0.05質量%である場合の脱炭酸素効率を表4に示す。脱炭酸素効率は、低炭素域の[C]の挙動と酸素供給量から求めた。
【0068】
(比較例3〜5)
比較例2で用いたものと同様のバーナ・ランスを用いて、実施例3〜5と同様の試験を行った。試験結果を表4に示す。
【0069】
【表4】
【0070】
表4より、実施例では、低炭素域での脱炭酸素効率の低下を防止でき、効率的に脱炭できることがわかる。さらに、酸素を効率的に添加できるため、吹錬末期に酸素供給量を低くした低炭素域においても、酸素ガスが高速で溶鉄に吹き込まれ、反応効率が高く維持される。よって、脱炭反応を優先的に行い、脱炭酸素効率を高くすることができる。
【0071】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のバーナ・ランスは、以下の効果を得ることができる。
(1)支燃性流体供給管に一次燃料流体導入部が形成され、燃料流体の他部を供給管の先端側から噴出させることができるようにされているので、一次燃料流体と支燃性流体との混合流体を供給管から噴出させつつ燃焼させた後、先端部から先端方向に離れた位置において二次燃料流体を上記混合流体に合流させ、燃焼させることができる。
燃料流体を2段階に分けて燃焼させることができるため、火炎を安定化し、かつ火炎を長く形成することができる。従って、離れた位置の被加熱物を効率的に加熱することができる。
(2)燃料流体を2段階に分けて燃焼させ、安定な火炎を形成することができるため、火炎を不安定にすることなく支燃性流体を高流速化する(例えば音速を越える速度とする)ことができ、加熱効率を高めることができる。また燃料流体使用量を最小限に抑えることができる。
(3)支燃性流体供給管の外周側に燃料流体供給管設けた二重管構造を有するので、構造を簡略化し、全体を小型化することができる。従って、メンテナンス性を向上させるとともに、取り扱いを容易にすることができる。
(4)二次燃料流体噴出部を、二次燃料流体が混合流体(一次燃料流体および支燃性流体)をほぼ囲むように噴出するように形成することによって、支燃性流体の拡散を防ぎ、支燃性流体の流れ方向の乱れを抑え、支燃性流体の流速減衰を防ぐことができる。
従って、燃料流体使用量を低く抑え、かつ支燃性ガスを溶融金属内に高速で吹き込むことができる。
(5)支燃性流体供給管内面に溝を形成することによって、燃焼しつつ流れる混合流体の一部が、いったん溝内に流入するようになるため、支燃性流体の流量が高い場合でも、溝内において安定な火炎が形成される。
従って、支燃性流体の流速にかかわらず、燃料流体を安定に燃焼させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のバーナ・ランスの一実施形態を示すもので、(a)は正面図であり、(b)は断面図である。
【図2】試験結果を示すグラフである。
【符号の説明】
1・・・バーナ・ランス、2・・・支燃性流体供給管、3・・・燃料流体供給管、6・・・延出部、7・・・支燃性流体流路、8・・・燃料流体流路、16・・・一次燃料流体導入孔(一次燃料流体導入部)、17・・・二次燃料流体噴出孔(二次燃料流体噴出部)
Claims (21)
- 酸素を含む支燃性流体を供給する支燃性流体供給管の外周側に、燃料流体を供給する燃料流体供給管が設けられた二重管構造を有し、これら供給管の隙間が燃料流体流路とされ、
支燃性流体供給管に、燃料流体流路内の燃料流体の一部をこの供給管の内部に導く一次燃料流体導入部が形成され、
燃料流体流路内の燃料流体の他部を、二次燃料流体として、供給管の先端側から外部に噴出させることができるように構成されていることを特徴とするバーナ・ランス。 - 支燃性流体供給管の先端部の外周側に、外方に延出し燃料流体供給管に達する延出部が形成され、この延出部に、前記燃料流体の他部を外部に噴出させる二次燃料流体噴出部が形成されていることを特徴とする請求項1記載のバーナ・ランス。
- 二次燃料流体噴出部は、燃料流体の他部を、支燃性流体をほぼ囲むように噴出させることができるように構成されていることを特徴とする請求項2記載のバーナ・ランス。
- 二次燃料流体噴出部は、基端側から先端側に向けて内方に傾斜して形成され、支燃性流体供給管の中心軸に対する傾斜角が、20°以下であることを特徴とする請求項2または3記載のバーナ・ランス。
- 二次燃料流体噴出部は、二次燃料流体の流量を、全燃料流体流量の50〜90%の範囲とすることができるように構成されていることを特徴とする請求項2〜4のうちいずれか1項記載のバーナ・ランス。
- 支燃性流体供給管の中心軸を中心とし、二次燃料流体噴出部の出口を通る円の直径である距離D3が、支燃性流体供給管の出口径D2に対し、次式で表される範囲内であることを特徴とする請求項2〜5のうちいずれか1項記載のバーナ・ランス。
1.3≦D3/D2≦3.5 - 支燃性流体供給管の中心軸に対する一次燃料流体導入部の傾斜角が、5〜90°であることを特徴とする請求項1〜7のうちいずれか1項記載のバーナ・ランス。
- バーナ・ランスを用いて、酸素を含む支燃性流体と一次燃料流体との混合流体を燃焼させつつ冷鉄源に向けて噴出させるとともに、二次燃料流体を前記混合流体と合流させて燃焼させつつ冷鉄源に向けて噴出させることによって、この冷鉄源を溶解し、精錬する炉の操業方法であって、
冷鉄源が溶解する溶解工程と、冷鉄源が溶落ちした後の精錬工程とにおいて、それぞれ独立に燃料流体供給量を設定することを特徴とする冷鉄源の溶解・精錬炉の操業方法。 - 溶解工程においては、支燃性流体と燃料流体の比率を、1≦酸素比<3となるようにし、溶落ちした後の工程においては、支燃性流体と燃料流体の比率を、酸素比≧3となるようにすることを特徴とする請求項9記載の冷鉄源の溶解・精錬炉の操業方法。
- 請求項1〜8のうちいずれか1項記載のバーナ・ランスを用いることを特徴とする請求項9または10記載の冷鉄源の溶解・精錬炉の操業方法。
- 脱珪、脱燐、脱硫、脱炭、昇温、熱付加、スクラップ溶解、合金溶解、還元処理のうち1種以上を対象とすることを特徴とする請求項9〜11のうちいずれか1項記載の冷鉄源の溶解・精錬炉の操業方法。
- 支燃性流体として、純酸素ガス、工業用酸素ガス、空気のうち1種または2種以上を用いることを特徴とする請求項9〜12のうちいずれか1項記載の冷鉄源の溶解・精錬炉の操業方法。
- バーナ・ランスを用いて、酸素を含む支燃性流体と一次燃料流体との混合流体を燃焼させつつ溶鉄に向けて噴出させるとともに、二次燃料流体を前記混合流体と合流させて燃焼させつつ溶鉄に向けて噴出させることによって、この溶鉄を精錬することを特徴とする精錬方法。
- 支燃性流体と燃料流体との比率を、酸素比>5となるようにすることを特徴とする請求項14記載の精錬方法。
- 請求項1〜8のうちいずれか1項記載のバーナ・ランスを用いることを特徴とする請求項14または15記載の精錬方法。
- 脱珪、脱燐、脱硫、脱炭、昇温、熱付加、スクラップ溶解、合金溶解、還元処理のうち1種以上を対象とすることを特徴とする請求項14〜16のうちいずれか1項記載の精錬方法。
- 精錬にあたって、固体炭素源、炭化水素源、石灰源、マグネシウム源、アルミニウム源、鉄鉱石、マンガン鉱石、合金のうち1種以上を溶鉄に添加することを特徴とする請求項14〜17のうちいずれか1項記載の精錬方法。
- 炭素濃度が0.6mass%以下である低炭素域において、溶鉄の精錬を行うことを特徴とする請求項14〜18のうちいずれか1項記載の精錬方法。
- 支燃性流体として、純酸素ガス、工業用酸素ガス、空気のうち1種または2種以上を用いることを特徴とする請求項14〜19のうちいずれか1項記載の精錬方法。
- 精錬の際に発生する排ガスから顕熱または潜熱を回収することを特徴とする請求項14〜20のうちいずれか1項記載の精錬方法。
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