JP6051561B2 - 溶鋼の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、高炉から出銑された溶銑を転炉に装入してこの溶銑に予備処理として脱燐処理を施し、次いで、この溶銑を転炉から出湯した後に別の転炉に装入し、この転炉で溶銑に脱炭精錬を施すことによって、溶銑から溶鋼を製造する方法に関し、詳しくは、転炉を用いて溶銑から溶鋼を製造する際に、脱燐処理及び脱炭精錬でそれぞれ精錬剤として使用する媒溶剤を加熱または溶融した状態で炉内に添加することで、鉄スクラップなどの冷鉄源の配合比率を高めることのできる溶鋼の製造方法に関する。
溶銑から溶鋼を製造する際に、転炉での溶銑の脱炭精錬の前に、溶銑に対して溶銑中の不純物(燐や硫黄)を除去する予備処理(脱燐処理、脱硫処理)を施し、転炉での脱炭精錬におけるスラグ発生量を削減する溶銑予備処理技術が開発され、不純物の少ない高品質の鉄鋼製品の製造、或いは、鉄鋼製品成分の安価なマンガン源としてマンガン鉱石の利用などが実現化されている。
一方、近年、環境保護の観点から、製鉄プロセスにおいてはCO2排出量の削減が重要課題となっており、製鋼工程においては、使用する鉄源として鉄スクラップなどの冷鉄源の配合比率を高め、溶銑の配合比率を低減することが試みられている。これは、鉄鋼製品の製造にあたり、高炉での溶銑の製造では、鉄鉱石を還元し且つ溶融するための多大なエネルギーを要するのに対し、冷鉄源は溶解熱のみを必要としており、製鋼工程で冷鉄源を利用した場合には、鉄鉱石の還元熱分のエネルギー使用量を少なくすることができ、CO2発生量を大幅に削減することができるからである。
しかしながら、高炉−転炉の組み合わせによる溶鋼製造プロセスにおいては、冷鉄源の溶解熱源は、溶銑の有する顕熱、及び、溶銑中の炭素及び珪素の酸化による燃焼熱であり、冷鉄源の溶解量には自ずと限界がある。しかも、予備処理として行われる脱燐処理によって溶銑中の珪素濃度及び炭素濃度が低下し、更に、処理工程が増えることによって溶銑温度の低下も起こり、溶銑予備処理技術のなかで特に脱燐処理は、冷鉄源の配合比率の向上に大きな障害となっている。
このため、冷鉄源の配合比率を高めるべく、予備処理としての脱燐処理を放棄して転炉で脱燐精錬と脱炭精錬とを同時に行うという、従来の転炉吹錬に戻したり、脱燐処理の施された溶銑を転炉で脱炭精錬する場合には、転炉内に加炭材やフェロシリコンなどの発熱材を添加して熱エネルギーを補ったりする方法が行われている。しかし、脱燐処理を施すことで、コスト低減及び鋼材の品質向上を達成できることのみならず、スラグ発生量を低減できることから、このような操業形態の変更を行わず、前述のように、溶銑の脱燐処理を行い、その上で、転炉では脱炭精錬のみを行うと同時に鉄スクラップなどの冷鉄源の配合比率を増加させることが望ましい。加炭材の使用は、加炭材に含まれる硫黄によって溶鋼の硫黄濃度が上昇するという問題があり、フェロシリコンなどの発熱材は高価であり、発熱材の使用は却って製造コストの上昇を招く。
また、脱炭精錬時に脱炭反応によって転炉内に発生したCOガスを転炉内で二次燃焼(2CO+O2→2CO2)させてCO2ガスとし、この二次燃焼による発熱を溶鋼に着熱させて溶銑を熱補償する方法もよく知られている。しかし、過度の二次燃焼率の向上は排ガス温度の上昇を招き、結果として転炉耐火物の寿命を低下させるという問題がある。
そこで、溶銑の脱燐処理や脱炭精錬において、溶銑の熱的余裕を高めて冷鉄源の配合比率を拡大するべく、多数の手段が提案されている。例えば、特許文献1には、溶銑の予備処理として脱燐処理を行うにあたり、脱燐処理中の生成スラグ中に炭素源を添加するとともに、スラグ中に酸素源を吹き込んで前記炭素源を燃焼させ、この燃焼熱を溶銑に着熱させる方法が提案されている。
特許文献2には、精錬容器内の溶銑に上吹きランスから酸素ガスとともに鉄スクラップ粉、合金鉄粉、生石灰粉などの伝熱媒体を供給して、溶銑の脱炭精錬や鉄またはクロムの溶融還元などを実施する際に、精錬容器内の二次燃焼率を10〜55%の範囲に制御し、二次燃焼熱を前記伝熱媒体に着熱させ、二次燃焼熱を着熱した伝熱媒体によって溶銑を加熱する方法が提案されている。
また、特許文献3には、溶銑を転炉で酸化精錬するにあたり、酸素ガス噴出用主孔と、該主孔から噴出する酸素ガスの供給流路と独立し、且つ、燃料ガス、酸素ガス及び精錬用フラックスを同時に噴出できるフラックス供給用副孔と、を有する5重管構造の上吹きランスを用い、前記主孔から噴出した酸素ガスの噴流を互いに分離した状態に保つとともに、該酸素ガス噴流と独立して副孔先端で火炎を形成させ、該火炎中に精錬用フラックスを通過させて該精錬用フラックスの滓化を促進させる転炉精錬方法が提案されている。
特開平9−20913号公報 特開2001−323312号公報 特開平11−80825号公報
しかしながら、上記従来技術には、以下の問題点がある。
即ち、特許文献1では、生成スラグ中に炭素源を添加することで、溶銑温度は上昇するが、炭素源に含有される硫黄の溶銑中への混入を招き、溶銑中の硫黄濃度が高くなる。また、炭素源の燃焼時間を確保する必要があることから精錬時間が長くなり、生産性が低下して製造コストが上昇するという問題がある。また更に、炭素源を燃焼させることから、CO2発生量が自ずと増加するという問題もある。
特許文献2では、伝熱媒体の供給速度に応じて二次燃焼率を制御する必要があり、これを実現する手段として、排ガス組成の分析結果に基づいて二次燃焼率を求めつつ上吹きランスのランス高さを調整する方法が示されている。一般に、ランス高さを大きくすると、上吹きランスからの酸素ガスジェットに随伴される炉内雰囲気ガス(主にCOガス)の量が増加し、二次燃焼率は高くなり、逆に、ランス高さを小さくすると、二次燃焼率は低くなる。即ち、特許文献2のように二次燃焼率を高くすると、上吹きランスからの酸素ガスジェットが減衰して脱炭速度が低下し、脱炭精錬時間が長くなり、生産性が低下して製造コストが上昇するという問題がある。尚、ランス高さとは、上吹きランスの先端と静止状態の炉内溶銑浴面との距離である。
特許文献3では、副孔酸素ガス及び精錬剤の流路、燃料ガスの流路、主孔酸素ガスの流路、冷却水の給水流路、冷却水の排水流路で構成される5重管構造の上吹きランスを用いており、前記副孔酸素ガス及び精錬剤の流路と、前記燃料ガスの流路とを、ランス先端部で合流させ、燃焼火炎を形成させている。また、副孔酸素ガスと精錬剤とをランスの上部で合流させるが、合流するまでは精錬剤の搬送用ガスとしてArガスなどの不活性ガスを使用している。
つまり、特許文献3では、副孔酸素ガス及び精錬剤の供給流路を通過する物質は、酸素ガス、不活性ガス及び精錬剤となる。ここでの問題は、1つの流路を、金属や炭素分を含有する精錬剤(酸化鉄、鉄鉱石、製鉄所発生ダストなど)と酸素ガスとが同時に通過することである。即ち、特許文献3は、溶銑温度を高める上で有効な手法であるが、ランス内の供給流路を通過する際に、精錬剤と流路壁(通常は鋼製)との摩擦によって火花が発生したり、酸素ガスと精錬剤の一部とが反応したりして、流路内で発熱・燃焼する虞があり、設備の安全管理上に問題がある。
また、特許文献3は、転炉における溶銑の脱炭精錬について記載するだけで、予備処理として行う溶銑の脱燐処理をどのようにして行うかは、何ら記載していない。つまり、脱炭精錬で溶銑の熱容量を高めれば、冷鉄源の配合比率はそれなりに高くなるが、脱燐処理においても溶銑の熱容量を高める操業を行うことで、冷鉄源の配合比率は更に高くなる。引用文献3はこの点について記載していない。
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、高炉から出銑された溶銑を転炉に装入してこの溶銑に予備処理として脱燐処理を施し、次いで、この溶銑を転炉から出湯した後に別の転炉に装入し、この転炉で溶銑に脱炭精錬を施すことによって、溶銑から溶鋼を製造するにあたり、上吹きランスの流路内での発熱・燃焼を危惧することなく、脱燐処理及び脱炭精錬で精錬剤として使用する粉状の媒溶剤を加熱または溶融した状態で炉内に添加することで、着熱効率及び生産性に優れ、鉄スクラップなどの冷鉄源の配合比率を高めることのできる溶鋼の製造方法を提供することである。
上記課題を解決するための本発明の要旨は以下のとおりである。
[1]脱燐精錬用の酸化性ガスを供給し且つ該酸化性ガスを搬送用ガスとして粉状の石灰系媒溶剤を供給する精錬用酸化性ガス供給流路と、燃料を供給する燃料供給流路とを、それぞれ別々に有する第1の上吹きランスを用い、前記燃料供給流路から燃料を供給すると同時に、前記精錬用酸化性ガス供給流路から酸化性ガスを転炉内の溶銑浴面に向けて供給し、該酸化性ガスの一部で前記燃料を燃焼させて第1の上吹きランスの先端下方に火炎を形成させながら、前記酸化性ガスを搬送用ガスとして前記精錬用酸化性ガス供給流路から粉状の石灰系媒溶剤を転炉内の溶銑浴面に供給して、転炉内の溶銑を脱燐処理し、次いで、得られた脱燐処理後の溶銑を前記転炉から溶銑保持容器に出湯し、この溶銑を別の転炉に装入し、脱炭精錬用の酸化性ガスを供給し且つ該酸化性ガスを搬送用ガスとして粉状の媒溶剤を供給する精錬用酸化性ガス供給流路と、燃料を供給する燃料供給流路とを、それぞれ別々に有する第2の上吹きランスを用い、前記燃料供給流路から燃料を供給すると同時に、前記精錬用酸化性ガス供給流路から酸化性ガスを転炉内の溶銑浴面に向けて供給し、該酸化性ガスの一部で前記燃料を燃焼させて第2の上吹きランスの先端下方に火炎を形成させながら、前記酸化性ガスを搬送用ガスとして前記精錬用酸化性ガス供給流路から粉状の媒溶剤を転炉内の溶銑浴面に供給して、転炉内の溶銑を脱炭精錬し、かくして溶銑から溶鋼を製造することを特徴とする、溶鋼の製造方法。
[2]前記第1の上吹きランス及び前記第2の上吹きランスは、横断面構造において中心側から、精錬用酸化性ガス供給流路、冷却水排水流路、燃料供給流路、冷却水給水流路を有する4重管構造であることを特徴とする、上記[1]に記載の溶鋼の製造方法。
本発明によれば、溶銑に予備処理として行う転炉での脱燐処理、及び、この脱燐処理の施された溶銑の転炉での脱炭精錬において、精錬剤として使用する粉状の媒溶剤を上吹きランスの先端下方に形成される火炎によって加熱し、火炎の熱を粉状媒溶剤を介して溶銑に着熱させるので、溶銑の温度が上昇し、溶銑の脱燐処理及び脱炭精錬における鉄スクラップなどの冷鉄源の配合比率を高めることが実現され、それにより、CO2排出量を従来に比較して大幅に低減することが可能となる。
粉状媒溶剤の上吹きランスからの供給にあたり、搬送用ガスとして、脱燐精錬用の酸化性ガス或いは脱炭精錬用の酸化性ガスを使用するが、媒溶剤は、酸化物、炭酸化物、水酸化物、フッ化物などを主成分とし、金属分や炭素などの可燃性物質を含有しておらず、上吹きランスの流路における発熱や燃焼を未然に防止することができる。
また、本発明では、粉状媒溶剤の搬送用ガスとして、脱燐処理及び脱炭精錬で必要不可欠な脱燐精錬用の酸化性ガス或いは脱炭精錬用の酸化性ガスを使用するので、従来は搬送用ガスとして使用していた窒素ガスやArガスなどの不活性ガスの使用は不用であり、その分、経済的に有利となる。
本発明に係る溶銑の脱燐処理及び脱炭精錬を実施する際に用いる4重管構造の上吹きランスを備えた転炉設備の1例を示す概略断面図である。 図1に示す上吹きランスの概略拡大縦断面図である。 比較例で使用した上吹きランスの概略拡大縦断面図である。
以下、本発明を具体的に説明する。
本発明は、高炉で製造された溶銑に予備処理として脱燐処理を施し、脱燐処理された溶銑を転炉で脱炭精錬して溶鋼を製造する際に、CO2排出量を削減するべく、鉄スクラップなどの冷鉄源の配合比率を高めることを目的としている。転炉はフリーボードが大きく、溶銑を強攪拌することが可能であり、これにより、冷鉄源の溶解能力が高いのみならず、少ない石灰系媒溶剤の使用量で迅速に脱燐処理を行うことができることから、本発明においては、予備処理として行う脱燐処理も、脱炭精錬と同様に転炉を用いて実施する。
本発明において使用する溶銑は、高炉で製造された溶銑であり、この溶銑を、溶銑鍋、トピードカーなどの溶銑搬送容器で受銑して、脱燐処理及び脱炭精錬を実施する転炉に搬送する。脱燐処理を行う場合に、少ない石灰系媒溶剤の使用量で効率的に脱燐処理するために、脱燐処理前に溶銑中の珪素を予め除去(「溶銑の脱珪処理」という)し、溶銑の珪素含有量を0.20質量%以下、望ましくは0.10質量%以下まで低減させることが好ましい。脱珪処理を実施した場合には、脱珪処理時に生成したスラグを脱燐処理の前までに排出する。
以下、図面を用いて本発明を説明する。図1は、本発明に係る溶銑の脱燐処理及び脱炭精錬を実施する際に用いる、4重管構造の上吹きランスを備えた転炉設備の1例を示す概略断面図、図2は、図1に示す上吹きランス3の概略拡大縦断面図である。尚、本発明においては、脱燐処理が施された溶銑の脱炭精錬も図1に示す構成と同一の転炉設備(但し同じ転炉設備ではない)を用いて実施する。従って、ここでは、脱燐処理を行う転炉設備を転炉設備1と表示し、脱燐処理が施された溶銑の脱炭精錬を行う転炉設備を転炉設備1Aと表示する。また、本発明では、構成が同一である4重管構造の上吹きランス3を用いて脱燐処理並びに脱炭精錬を実施するが、脱燐処理で使用する上吹きランス3を第1の上吹きランスと称し、一方、脱炭処理で使用する上吹きランス3を第2の上吹きランスと称する。
本発明において溶銑の脱燐処理に用いる転炉設備1及び脱炭精錬に用いる転炉設備1Aは、その外殻を鉄皮4で構成され、鉄皮4の内側に耐火物5が施行された炉本体2と、この炉本体2の内部に挿入され、上下方向に移動可能な上吹きランス3(第1の上吹きランス)とを備えている。炉本体2の上部には、脱燐処理終了後の溶銑14或いは脱炭精錬終了後の溶鋼(図示せず)を出湯するための出湯口6が設けられ、また、炉本体2の炉底部には、攪拌用ガス16を吹き込むための複数の底吹き羽口7が設けられている。この底吹き羽口7はガス導入管8と接続されている。
上吹きランス3には、脱燐精錬用の酸化性ガスまたは脱炭精錬用の酸化性ガスを供給するための精錬用酸化性ガス供給管9と、プロパンガス、液化天然ガス、コークス炉ガス、石油、重油などの燃料を供給するための燃料供給管11と、上吹きランス3を冷却するための冷却水を供給・排出するための冷却水の給水管及び排水管(図示せず)とが、接続されている。脱燐精錬用の酸化性ガスとしては、酸素ガス、空気、酸素富化空気、酸素ガスと希ガス(Arガスなど)との混合ガスが使用され、一般的には酸素ガスが使用される。脱炭精錬用の酸化性ガスとしては、酸素ガス、酸素ガスと希ガスとの混合ガスが使用され、一般的には酸素ガスが使用される。尚、酸素ガスとは、工業用純酸素ガスである。図1では、脱燐精錬用及び脱炭精錬用の酸化性ガスとして、一般的に使用される酸素ガスの例を示している。
精錬用酸化性ガス供給管9は、途中で粉状媒溶剤供給管10に枝分かれしており、枝分かれした粉状媒溶剤供給管10は、粉状媒溶剤供給管10の途中に設けられたディスペンサー12を経由して精錬用酸化性ガス供給管9に再度合流し、精錬用酸化性ガス供給管9は、合流後の下流側で上吹きランス3に接続されている。ディスペンサー12には、精錬剤として使用する粉状の媒溶剤13が収容されており、粉状媒溶剤供給管10に導入された脱燐精錬用酸化性ガス或いは脱炭精錬用酸化性ガスが、ディスペンサー12に収容された媒溶剤13の搬送用ガスとして機能し、ディスペンサー12に収容された粉状の媒溶剤13は、粉状媒溶剤供給管10及び精錬用酸化性ガス供給管9を順に通って上吹きランス3に供給され、上吹きランス3の先端から溶銑14に向けて吹き付けられるようになっている。媒溶剤13としては、脱燐処理の場合は石灰系媒溶剤を使用し、脱炭精錬の場合は石灰系媒溶剤またはマンガン鉱石若しくはこれらの混合物を使用する。
精錬用酸化性ガス供給管9には流量調節弁25が設けられ、また、粉状媒溶剤供給管10には流量調節弁26が設けられており、精錬用酸化性ガス供給管9及び粉状媒溶剤供給管10を通過する脱燐精錬用酸化性ガス或いは脱炭精錬用酸化性ガスの流量は、流量調節弁25及び流量調節弁26によって任意に調整可能となっている。つまり、所定量の媒溶剤13を溶銑14に添加した後は、精錬用酸化性ガスのみを溶銑14に向けて供給できるように構成されている。
上吹きランス3は、図2に示すように、円筒状のランス本体17と、このランス本体17の下端に溶接などにより接続された銅鋳物製のランスチップ18とで構成されており、ランス本体17は、最内管21、内管22、中管23、外管24の同心円形状の4種の鋼管、即ち4重管で構成されている。精錬用酸化性ガス供給管9は最内管21に連通し、冷却水の排水管は内管22に連通し、燃料供給管11は中管23に連通し、冷却水の給水管は外管24に連通している。つまり、脱燐精錬用酸化性ガス、脱炭精錬用酸化性ガス、或いは、これらの酸化性ガスを搬送用ガスとする媒溶剤13が最内管21の内部を通り、プロパンガスなどの燃料が内管22と中管23との間隙を通り、最内管21と内管22との間隙は、冷却水の排水流路、中管23と外管24との間隙は、冷却水の給水流路となっている。冷却水は、ランスチップ18の位置で反転するように構成されている。
最内管21の内部は、ランスチップ18の先端に配置された主孔ノズル19と連通し、内管22と中管23との間隙は、燃料噴射孔20と連通している。この燃料噴射孔20は主孔ノズル19に開口している。主孔ノズル19は、脱燐精錬用酸化性ガス、脱炭精錬用酸化性ガス、或いは、これらの酸化性ガスを搬送用ガスとする媒溶剤13を吹き付けるためのノズル、燃料噴射孔20は、燃料を噴射するためのノズルである。つまり、最内管21の内部が、脱燐精錬用酸化性ガスまたは脱炭精錬用酸化性ガスを供給するための精錬用酸化性ガス供給流路となり、内管22と中管23との間隙が燃料供給流路となっている。最内管21と内管22との間隙は冷却水の排水流路、中管23と外管24との間隙は冷却水の給水流路となっている。主孔ノズル19は、上吹きランス3の軸心を中心とする同一円周線上にほぼ等間隔で複数個配置されている。尚、図2では冷却水の排水流路が燃料供給流路の内側に設置されているが、冷却水の排水流路を燃料供給流路の外側に配置してもよく、また、冷却水の排水流路と冷却水の給水流路とを入れ替えても構わない。
図2に示すように、主孔ノズル19は、その断面が縮小する部分(「絞り部」という)と拡大する部分(「スカート部」という)の2つの円錐体で構成されるラバールノズルの形状を採っており、精錬用酸化性ガスが超音速または亜音速で主孔ノズル19から噴射されるように構成されている。燃料噴射孔20は、主孔ノズル19のスカート部に開口するように配置されている。燃料噴射孔20は、図2では1つの主孔ノズル19に対して1個のみ開口しているが、1つの主孔ノズル19に対して複数個開口するようにしてもよい。尚、ラバールノズルにおいて、絞り部とスカート部の2つの円錐体の境界である最も断面積の小さい部位をスロートと称している。
この上吹きランス3においては、燃料噴射孔20から燃料を噴射させ、且つ、主孔ノズル19から、脱燐精錬用酸化性ガスまたは脱炭精錬用酸化性ガスを噴射させる、或いは、これらの酸化性ガスとともに媒溶剤13を噴射させることで、上吹きランス3の先端下方に火炎を形成させることができる。
この構成の転炉設備1及び転炉設備1Aを用い、冷鉄源の配合比率を高めるべく、先ず、転炉設備1で溶銑14に対して脱燐処理を施し、次いで、この脱燐処理された溶銑14に転炉設備1Aで脱炭精錬を施し、溶銑14から溶鋼を製造する。以下、脱燐処理から順に説明する。
転炉設備1を用いて溶銑14に脱燐処理を施すにあたり、先ず、炉本体2の内部へ冷鉄源を装入する。使用する冷鉄源としては、製鉄所で発生する鋳片及び鋼板のクロップ屑や市中屑などの鉄スクラップ、磁力選別によってスラグから回収した地金、更には、冷銑、還元鉄などを使用することができる。冷鉄源の装入完了に前後して、底吹き羽口7から攪拌用ガス16の吹き込みを開始する。
冷鉄源の配合比率は、脱燐処理での配合比率と脱炭精錬での配合比率との合計値で、5質量%以上とすることが好ましい。冷鉄源の配合比率は下記の(1)式で定義される。
冷鉄源の配合比率(質量%)=冷鉄源配合量×100/(溶銑配合量+冷鉄源配合量)…(1)
脱燐処理から脱炭精錬まででの冷鉄源の合計配合比率が5質量%未満では、生産性向上の効果が少ないのみならず、CO2発生量の削減効果が少ないからである。冷鉄源の配合比率の上限は特に決める必要はなく、脱燐処理後の溶銑温度が目標範囲を維持できる上限まで添加することができる。
冷鉄源の炉本体2への装入後、溶銑14を炉本体2へ装入する。用いる溶銑14としてはどのような組成であっても処理することができ、脱燐処理の前に脱硫処理や脱珪処理が施されていてもよい。因みに、脱燐処理前の溶銑14の主な化学成分は、炭素:3.8〜5.0質量%、珪素:0.3質量%以下、燐:0.08〜0.2質量%、硫黄:0.05質量%以下程度である。但し、脱燐処理時に炉本体内で生成されるスラグ15の量が多くなると脱燐効率が低下するので、前述したように、炉本体内でのスラグ発生量を少なくして脱燐効率を高めるために、脱珪処理により、溶銑中の珪素濃度を0.20質量%以下、望ましくは0.10質量%以下まで予め低減しておくことが好ましい。また、溶銑温度は1200〜1450℃の範囲であれば問題なく脱燐処理することができる。
次いで、ディスペンサー12に脱燐精錬用酸化性ガスを供給し、媒溶剤13である粉状の石灰系媒溶剤を、上吹きランス3の主孔ノズル19から脱燐精錬用酸化性ガスとともに溶銑14の浴面に向けて吹き付ける。この媒溶剤13(以下、脱燐処理の場合は「石灰系媒溶剤13」と記す)の吹き付けに前後して、上吹きランス3の燃料噴射孔20から燃料を噴射させる。燃料噴射孔20から供給される燃料と、主孔ノズル19から噴射される、石灰系媒溶剤13の搬送用ガスであり且つ脱燐精錬用酸化性ガスでもある酸化性ガスとは、主孔ノズル19のスカート部以降で各々混合し合い、雰囲気温度が高いこともあって、点火装置がなくても燃焼限界範囲内に燃料の濃度が達した時点で、主孔ノズル19から噴射される酸化性ガスの一部によって燃焼し、上吹きランス3の下方に火炎が形成される。石灰媒溶剤13は、形成される火炎の中を通り火炎の熱を受けて加熱または加熱・溶融し、加熱または溶融した状態で溶銑14の浴面に吹き付けられる。これにより、溶銑14に火炎の熱が石灰系媒溶剤13を介して着熱し、溶銑14の温度が上昇して、添加した冷鉄源の溶解が促進される。
また、同時に、主孔ノズル19から溶銑14の浴面に向けて、その一部は搬送用ガスとして機能した脱燐精錬用の酸化性ガスが吹き付けられる。
溶銑14の脱燐反応は、溶銑中の燐が、酸化性ガス中の酸素または酸素によって生成した酸化鉄と反応して燐酸化物(P25)を形成し、この燐酸化物が石灰系媒溶剤13の滓化によって形成されるスラグ15に吸収されることで進行する。しかも、石灰系媒溶剤13の滓化が促進されるほど脱燐速度が速くなる。
つまり、本発明においては、加熱または溶融した状態で、溶銑浴面に吹き付けられた石灰系媒溶剤13は直ちに滓化してスラグ15を形成し、また、供給された脱燐精錬用酸化性ガスと溶銑中の燐とが反応して燐酸化物が形成される。攪拌用ガス16によって溶銑14とスラグ15とが強攪拌されることも相まって、形成した燐酸化物が滓化したスラグ15に迅速に吸収されて、溶銑14の脱燐反応が速やかに進行する。
石灰系媒溶剤13としては、生石灰(CaO)、石灰石(CaCO3)、消石灰(Ca(OH)2)、ドロマイト(CaO−MgO)などの石灰系媒溶剤を使用する。生石灰に蛍石(CaF2)またはアルミナ(Al23)を滓化促進剤として混合したものを石灰系媒溶剤13として使用することもできる。また、溶銑14の脱炭精錬工程で生成する転炉スラグ(CaO−SiO2系スラグ)を石灰系媒溶剤13の全部または一部として使用することもできる。尚、添加すべき石灰系媒溶剤13の全量を上吹きランス3から供給する必要はなく、冷鉄源或いは溶銑14の炉本体2への装入後、上吹きランス3から酸化性ガスを供給する前に、石灰系媒溶剤13の一部を予め炉上ホッパーから炉本体2へ別途上置き投入してもよい。
石灰系媒溶剤13によって溶銑14に火炎の熱が伝わるのみならず、溶銑14の上方に存在する火炎の燃焼熱が溶銑14に伝達することから、溶銑14が激しく攪拌されることも相まって、溶銑中の冷鉄源の溶解が促進される。即ち、装入した冷鉄源の溶解が脱燐処理の期間中に終了する。
その後、溶銑14の燐濃度が目的とする値かそれ以下になったなら、上吹きランス3から溶銑14への全ての供給を停止して脱燐処理を終了する。この場合、脱燐処理が終了するまで上吹きランス3から石灰系媒溶剤13を供給し続ける必要はなく、所定量の石灰系媒溶剤13を添加完了したならば、上吹きランス3から脱燐精錬用酸化性ガスのみを供給してもよい。また、この脱燐処理中に、鉄鉱石などの酸化鉄を固体酸素源として炉上ホッパーから炉本体2へ上置き投入してもよい。脱燐処理後、炉本体2を傾動させて、脱燐処理の施された溶銑14を、出湯口6を介して、取鍋、転炉装入鍋などの溶銑保持容器に出湯する。溶銑14の出湯後、炉本体2を傾動させて、炉本体内のスラグ15をスラグ収容容器に排出する。
その後、溶銑保持容器に出湯された溶銑14を、図2に示す4重管構造の上吹きランス3(第2の上吹きランス)を備えた別の転炉設備1Aの炉本体2に装入し、溶銑14に対して脱炭精錬を実施する。脱炭精錬の場合も、上吹きランス3の先端に火炎を形成させ、この火炎で精錬剤として使用する媒溶剤13を加熱・溶融し、火炎の熱を媒溶剤13を介して炉本体内の溶銑14に着熱させる。前述したように、脱炭精錬の場合には、媒溶剤13として、石灰系媒溶剤、マンガン鉱石のうちの1種または2種以上を使用する。
脱炭精錬の場合も、炉本体2には、上記の脱燐処理で使用した冷鉄源と同類の冷鉄源を溶銑14の装入の前に予め装入する。この脱炭精錬工程における冷鉄源の溶解用熱源は、溶銑14の顕熱、溶銑中の炭素濃度及び火炎からの着熱量に依存しており、従って、前工程の脱燐処理工程における冷鉄源の配合比率を高く設定すると、この溶銑14を使用した脱炭精錬工程では冷鉄源の配合比率を低く設定せざるを得ない。従って、脱炭精錬工程における冷鉄源の配合比率は、脱燐処理工程での配合比率と脱炭精錬工程での配合比率との合計値が5質量%以上となるように、脱燐処理工程での配合比率に応じて設定することが好ましい。
炉本体2に溶銑14を装入したなら、上吹きランス3を炉本体2に挿入し、底吹き羽口7からArガスなどを攪拌用ガス16として溶銑14に吹き込みながら、上吹きランス3の主孔ノズル19から、脱炭精錬用酸化性ガスを溶銑浴面に吹き付けると同時に、脱炭精錬用酸化性ガスを搬送用ガスとして粉状の媒溶剤13を噴射し、且つ、燃料噴射孔20から、プロパンガス、天然ガス、コークス炉ガスなどのガス燃料、或いは、重油、灯油などの炭化水素系の液体燃料を供給する。
上吹きランス3の先端部には火炎が形成され、媒溶剤13は、形成される火炎の中を通り火炎の熱を受けて加熱または加熱・溶融し、加熱または溶融した状態で溶銑14の浴面に吹き付けられる。これにより、溶銑14に火炎の熱が媒溶剤13を介して着熱し、溶銑14の温度が上昇して、添加した冷鉄源の溶解が促進される。また、主孔ノズル19から供給される脱炭精錬用酸化性ガスによって脱炭反応(2C+O2→2CO)が進行する。
上吹きランス3の主孔ノズル19から供給する媒溶剤13としては、前述したように石灰系媒溶剤(生石灰やドロマイトなど)やマンガン鉱石を使用する。また、これらの副原料の全てを上吹きランス3から供給することは必要ではなく、これらのうちの一部は、炉上ホッパーから上置き添加しても構わない。また更に、上吹きランス3からの供給と上置き添加とを併用しても構わない。
媒溶剤13として石灰系媒溶剤を使用した場合には、火炎の熱を溶銑14に着熱させるだけでなく、溶銑浴面に吹き付けられた石灰系媒溶剤は直ちに滓化して浴面を覆うスラグ15を形成し、スピッティング(地金の飛散)を防止したり、脱燐反応を促進させたりする。媒溶剤13としてマンガン鉱石を使用した場合には、火炎の熱を溶銑14に着熱させるだけでなく、マンガン鉱石が溶銑中の炭素によって還元され、溶鋼成分調整用のマンガン源として機能する。
上吹きランス3の主孔ノズル19から供給される酸化性ガスと溶銑中の炭素とが反応して脱炭反応が進行し、溶銑14の炭素濃度が低下する。炭素濃度が目的とする値まで低下したなら、上吹きランス3からの鉄浴への全ての供給を停止して脱炭精錬を終了する。この場合、脱炭精錬が終了するまで上吹きランス3から媒溶剤13を供給し続ける必要はなく、所定量の媒溶剤13を添加完了したならば、上吹きランス3から脱炭精錬用酸化性ガスのみを供給してもよい。添加した冷鉄源は脱炭精錬の期間中に溶解する。
このようにして高炉から出銑された溶銑14に脱燐処理及び脱炭精錬が施され、溶銑14から溶鋼が製造される。製造した溶鋼は、取鍋に出湯し、必要に応じてRH真空脱ガス装置などで二次精錬を施した後、連続鋳造機で鋳片に鋳造する。
以上説明したように、本発明によれば、溶銑14に予備処理として行う転炉設備1での脱燐処理、及び、この脱燐処理の施された溶銑の転炉設備1Aでの脱炭精錬において、精錬剤として使用する粉状の媒溶剤13を上吹きランス3の先端下方に形成される火炎によって加熱し、火炎の熱を媒溶剤13を介して溶銑14に着熱させるので、溶銑14の温度が上昇し、脱燐処理及び脱炭精錬における鉄スクラップなどの冷鉄源の配合比率を高めることが実現され、それにより、CO2排出量を従来に比較して大幅に低減することが可能となる。
媒溶剤13の上吹きランス3からの供給にあたり、搬送用ガスとして、脱燐精錬用の酸化性ガス或いは脱炭精錬用の酸化性ガスを使用するが、媒溶剤13は、酸化物、炭酸化物、水酸化物、フッ化物などを主成分とし、金属分や炭素などの可燃性物質を含有しておらず、上吹きランス3の流路における発熱や燃焼を未然に防止することができる。また、媒溶剤13の搬送用ガスとして、脱燐処理及び脱炭精錬で必要不可欠な脱燐精錬用の酸化性ガス或いは脱炭精錬用の酸化性ガスを使用するので、従来は搬送用ガスとして使用していた窒素ガスやArガスなどの不活性ガスの使用は不用であり、その分、経済的に有利となる。
図1に示す転炉設備と同一構造である、炉容量が2.5トンの小型転炉設備の炉本体に溶銑及び鉄スクラップを装入し、この小型転炉設備を用いて溶銑の脱燐処理を行った。脱燐処理後、溶銑を溶銑保持容器に出湯し、この脱燐処理後の溶銑及び鉄スクラップを、図1に示す転炉設備と同一構造である、炉容量が2.5トンの別の小型転炉設備の炉本体に装入して脱炭精錬を行った(本発明例)。
この脱燐処理及び脱炭精錬で使用した上吹きランスは、図2に示す上吹きランスと同様に4重管構造のものであり、その横断面において中心側から、脱燐精錬用または脱炭精錬用の酸化性ガスの流路である精錬用酸化性ガス供給流路、冷却水排水流路、燃料供給流路、冷却水給水流路で構成されている。
主孔ノズルは、スロート径が7mmの3孔ラバールノズルであり、ランス中心軸に対して15°の角度を有しているものである。燃料噴射孔は、主孔ノズルの出口から20mmの位置に開口し、ノズル径は2mmである。脱燐精錬用酸化性ガス及び脱炭精錬用酸化性ガスとして酸素ガスを使用した。
脱燐処理工程では、炉本体に鉄スクラップを装入した後、温度が1350℃の溶銑を装入し、次いで、底吹き羽口からArガスを攪拌用ガスとして溶銑中に吹き込みながら、上吹きランスの主孔ノズルから、脱燐精錬用の酸素ガスを溶銑浴面に吹き付けると同時に、この酸素ガスを搬送用ガスとして生石灰(=石灰系媒溶剤)を溶銑浴面に向けて吹き付け、且つ、上吹きランスの燃料噴射孔からプロパンガスを噴出させて、脱燐処理を行った。また、この脱燐処理において、鉄鉱石を炉上のホッパーから上置き添加した。鉄スクラップの装入量は、脱燐処理終了時の溶銑温度が1400℃となるように調整し、また、生石灰は、脱燐処理終了時の炉内スラグの塩基度(質量%CaO/質量%SiO2)が2.5となるようにその添加量を調整した。
脱炭精錬工程では、炉本体に鉄スクラップを装入した後、脱燐処理を施した、温度が1350℃の溶銑を装入し、次いで、底吹き羽口からArガスを攪拌用ガスとして溶銑中に吹き込みながら、上吹きランスの主孔ノズルから、脱炭精錬用の酸素ガスを溶銑浴面に吹き付けると同時に、この酸素ガスを搬送用ガスとして生石灰(=媒溶剤)を溶銑浴面に向けて吹き付け、且つ、上吹きランスの燃料噴射孔からプロパンガスを噴出させて、脱炭精錬を行った。この場合、鉄スクラップの装入量は、脱炭精錬終了時の溶鋼温度が1680℃且つ溶鋼中炭素濃度が0.05質量%となるように調整した。生石灰は、脱炭精錬終了時の炉内スラグの塩基度が3.5となるようにその添加量を調整した。
比較例として、炉容量が2.5トンの小型転炉設備において、特許文献3に開示される5重管構造の上吹きランスに類似した5重管構造の上吹きランスを使用し、特許文献3に開示される精錬方法を用いて脱燐処理及び脱炭精錬を上記本発明例に沿って行った。比較例で使用した上吹きランスの概略拡大縦断面図を図3に示す。図3において、符号3Aは、上吹きランス、17Aはランス本体、18Aはランスチップ、27は燃料燃焼用酸化性ガス及び精錬用粉体の噴射ノズル、28は燃料噴射孔、29は主孔ノズル、30は最内管、31は内管、32は中管、33は外管、34は最外管であり、この上吹きランス3Aは、その横断面において中心側から、燃料燃焼用酸化性ガス及び精錬用粉体の供給流路(最内管30の内部)、燃料供給流路(最内管30と内管31との間隙)、精錬用酸化性ガス供給流路(内管31と中管32との間隙)、冷却水排水流路(中管32と外管33との間隙)、冷却水給水流路(外管33と最外管34との間隙)で構成されている。
つまり、この上吹きランス3Aにおいては、精錬用粉体はArガスなどの不活性ガスを搬送用ガスとして最内管30の内部に供給されるが、最内管30には燃料燃焼用の酸化性ガスも供給されており、最内管30が連通する噴射ノズル27からは、精錬用粉体、Arガスなどの不活性ガス(搬送用ガス)、及び、燃料燃焼用の酸化性ガスが噴射されるように構成されている。噴射ノズル27は、内径が11.5mmのストレート型ノズル、燃料噴射孔28は、その間隙が1.0mmの円環状に開口するスリット状のノズル、精錬用酸素ガスを噴射する主孔ノズル29は、スロート径が7mmの3孔ラバールノズルであり、ランス中心軸に対して15°の角度を有しているものである。
この上吹きランス3Aから、精錬用粉体として粉状の生石灰及び粉状の鉄鉱石を供給し、これら精錬用粉体の搬送用ガスとしてはArガスを使用し、燃料燃焼用酸化性ガス及び精錬用酸化性ガスとしては酸素ガスを使用した。つまり、本発明例と比較例とで異なる点は、比較例では精錬用粉体の搬送用ガスとしてArガスを使用している点、及び、本発明例の脱燐処理では上置き添加した鉄鉱石を比較例では上吹きランス3Aから供給している点である。
本発明例及び比較例において、脱燐処理及び脱炭精錬に供した溶銑の温度及び組成を表1に示す。
Figure 0006051561
また、本発明例及び比較例での脱燐処理及び脱炭精錬における粉状媒溶剤などの粉体の吹き込み速度、プロパンガス吹き込み流量、精錬用酸素ガス吹き込み流量、粉体搬送用Arガス流量、底吹き攪拌ガス吹き込み流量、ランス高さなどの操業条件を表2に示す。
Figure 0006051561
本発明例及び比較例における操業結果(精錬時間、鉄スクラップ配合量、不活性ガス原単位、排ガス中のCOガス濃度)を表3に示す。尚、不活性ガス原単位は、底吹き羽口から吹き込む攪拌用Arガスと精錬用粉体の搬送用ガスとして使用するArガスとの合計値である。
Figure 0006051561
表3からも明らかなように、本発明例と比較例とで不活性ガス原単位を比較すると、搬送用ガスとして不活性ガスを使用しない本発明例の方が低位であり、高価なArガスの使用量を1/4程度に低減できることから、本発明を適用することで精錬コストの大幅な削減が実現されることが確認できた。
また、搬送用ガスとして不活性ガスを使用しないことから、本発明においては排ガスのCOガス濃度を比較例に比べて高くすることができ、つまり、排ガスの発熱量を高めることができ、排ガスを燃料ガスとしてより有効に活用できることがわかった。
1 転炉設備
2 炉本体
3 上吹きランス
4 鉄皮
5 耐火物
6 出湯口
7 底吹き羽口
8 ガス導入管
9 精錬用酸化性ガス供給管
10 粉状媒溶剤供給管
11 燃料供給管
12 ディスペンサー
13 媒溶剤
14 溶銑
15 スラグ
16 攪拌用ガス
17 ランス本体
18 ランスチップ
19 主孔ノズル
20 燃料噴射孔
21 最内管
22 内管
23 中管
24 外管
25 流量調節弁
26 流量調節弁

Claims (2)

  1. 脱燐精錬用の酸化性ガスを供給し且つ該酸化性ガスを搬送用ガスとして粉状の石灰系媒溶剤を供給する精錬用酸化性ガス供給流路と、燃料を供給する燃料供給流路とを、それぞれ別々に有し、且つ、前記燃料供給流路と連通し、前記燃料を転炉内に噴射するための燃料噴射孔の全てが、前記精錬用酸化性ガス供給流路と連通し、前記酸化性ガスを転炉内に噴射するためのラバールノズル形状の主孔ノズルのスカート部に開口している第1の上吹きランスを用い、
    前記燃料供給流路から燃料を供給すると同時に、前記精錬用酸化性ガス供給流路から酸化性ガスを搬送用ガスとして粉状の石灰系媒溶剤を、冷鉄源の装入された転炉内の溶銑浴面に向けて噴射し、前記主孔ノズルの内部で、前記酸化性ガスと前記石灰系媒溶剤と前記燃料とを混合し、前記酸化性ガスの一部で前記燃料を燃焼させて第1の上吹きランスの先端下方に火炎を形成させ、該火炎の熱で前記燃料と混合された前記石灰系媒溶剤を加熱し、加熱した石灰系媒溶剤を溶銑に供給して、前記冷鉄源の全てを溶解して転炉内の溶銑を脱燐処理し、
    次いで、得られた脱燐処理後の溶銑を前記転炉から溶銑保持容器に出湯し、この溶銑を別の転炉に装入し、
    脱炭精錬用の酸化性ガスを供給し且つ該酸化性ガスを搬送用ガスとして粉状の媒溶剤を供給する精錬用酸化性ガス供給流路と、燃料を供給する燃料供給流路とを、それぞれ別々に有し、且つ、前記燃料供給流路と連通し、前記燃料を転炉内に噴射するための燃料噴射孔の全てが、前記精錬用酸化性ガス供給流路と連通し、前記酸化性ガスを転炉内に噴射するためのラバールノズル形状の主孔ノズルのスカート部に開口している第2の上吹きランスを用い、
    前記燃料供給流路から燃料を供給すると同時に、前記精錬用酸化性ガス供給流路から酸化性ガスを搬送用ガスとして粉状の媒溶剤を、冷鉄源の装入された転炉内の溶銑浴面に向けて噴射し、前記主孔ノズルの内部で、前記酸化性ガスと前記媒溶剤と前記燃料とを混合し、前記酸化性ガスの一部で前記燃料を燃焼させて第2の上吹きランスの先端下方に火炎を形成させ、該火炎の熱で前記燃料と混合された前記媒溶剤を加熱し、加熱した媒溶剤を溶銑に供給して、前記冷鉄源の全てを溶解して転炉内の溶銑を脱炭精錬し、
    前記脱燐処理での冷鉄源の配合比率と前記脱炭精錬での冷鉄源の配合比率との合計値を5質量%以上とし、かくしてCO 2 排出量を削減して溶銑から溶鋼を製造することを特徴とする、溶鋼の製造方法。
  2. 前記第1の上吹きランス及び前記第2の上吹きランスは、横断面構造において中心側から、粉状の石灰系媒溶剤または粉状の媒溶剤を供給するための精錬用酸化性ガス供給流路、冷却水排水流路、燃料供給流路、冷却水給水流路を有する4重管構造であることを特徴とする、請求項1に記載の溶鋼の製造方法。
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