JP2004091610A - 液体噴射記録用インク - Google Patents
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Abstract
【解決手段】開口の大きさがФ25μm以下であるような微細な開口から記録液体を吐出させ、該記録液体が被記録体に付着してから100ms以内で前記記録液体の接触角変化がほぼなくなる紙に前記記録液体の液滴を付着させて記録を行う液体噴射記録ヘッドに使用する記録液体である。該記録液体は、溶媒中に微粒子を分散剤とともに分散させた、もしくは微粒子の表面を処理して前記記録液体の溶媒中に分散させた記録液体であり、前記微粒子の大きさをDp、微細な開口の大きさをDoとするとき、0.0005≦Dp/Do≦0.02とするとともに、前記微粒子を、前記紙の繊維の太さより小さくするとともに、該繊維が重なりあって形成される間隙以下の大きさにする。
【選択図】
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、液体噴射記録装置に使用する微粒子を分散させた記録液体に関する。
【0002】
【従来の技術】
ノンインパクト記録法は、記録時における騒音の発生が無視し得る程度に極めて小さいという点において、最近関心を集めている。その中で、高速記録が可能であり、しかも所謂普通紙に特別の定着処理を必要とせずに記録の行える所謂インクジェット記録法は、極めて有力な記録法であって、これまでにも様々な方式が提案され改良が加えられて商品化されたものもあれば、現在もなお実用化への努力が続けられているものもある。
【0003】
このようなインクジェット記録法は、所謂インクと称される記録液体の小滴(droplet)を飛翔させて記録部材に付着させて記録を行うものであって、この記録液体の小滴の発生法及び発生された記録液体小滴の飛翔方向を制御するための方法によって、以下のように種々の方式がある。
【0004】
例えば、米国特許第3060429号明細書に開示されているTele type方式のものであって、記録液体の小滴の発生を静電吸引的に行い、発生した記録液体小滴を記録信号に応じて電界制御し、記録部材上に記録液体小滴を選択的に付着させて記録を行う静電吸引型のものがある。
【0005】
また、米国特許第3596275号、米国特許第3298030号等に開示されているSweet方式のものであって、連続振動発生法によって帯電量の制御された記録液体の小滴を発生させ、この発生された帯電量の制御された小滴を一様の電界が掛けられている偏向電極間を飛翔させることで、記録部材上に記録を行う連続流型、荷電制御型のものがある。
【0006】
また、他の方式として、例えば、米国特許第3416153号明細書に開示されているHertz方式のものであって、吐出口とリング状の帯電電極間に電界を掛け、連続振動発生法によって記録液体の小滴を発生霧化させて記録する方式のものがある。即ち、この方式では、吐出口と帯電電極間に掛ける電界強度を記録信号に応じて変調することによって小滴の霧化状態を制御し、記録画像の階調性を出して記録する。
【0007】
さらに、他の方式として、例えば、米国特許第3747120号明細書に開示されているStemme方式がある.この方式は、前記3つの方式とは根本的に原理が異なるものである。即ち、前記3つの方式は、何れも吐出口より吐出された記録液体の小滴を飛翔している途中で電気的に制御し、記録信号を担った小滴を選択的に記録部材上に付着させて記録を行うのに対して、このStemme方式は、記録信号に応じて吐出口より記録液体の小滴を吐出飛翔させて記録するものである。つまり、Stemme方式は、記録液体を吐出する吐出口を有する記録ヘッドに付設されているピエゾ振動素子に電気的な記録信号を印加し、この電気的記録信号をピエゾ振動素子の機械的振動に変え、該機械的振動に従って前記吐出口より記録液体の小滴を吐出飛翔させて記録部材に付着させることで記録を行うもので、いわゆる、ドロップオンデマンド型と呼ばれているものである。
【0008】
さらに、他の方式として、先に本出願人が特公昭56−9429号公報において提案した方式がある。この方式も記録信号に応じて吐出口より記録液体の小滴を吐出飛翔させて記録するいわゆるドロップオンデマンド型であるが、液室内のインクを加熱してインクの中で気泡を発生せしめ、その気泡の作用力により吐出口よりインク滴を吐出させる、いわゆる、バブルインクジェット型と呼ばれているものである。
【0009】
上述のように、インクジェット記録法は、その原理によって様々な方式があるが、共通していえることは所謂インクと称される記録液体の小滴(droplet)を飛翔させて記録部材に付着させて記録を行う点である。そして、このインクと称される記録液体であるが、水溶性の染料を溶解した記録液体を使用するのが一般的である.ところが、近年、耐水性や耐光性が重視されるようになり、記録液体の着色剤として堅牢性の強い顔料がインクジェット記録用として使用されることが期待されている。
【0010】
例えば、印字品位、吐出特性、保存安定性、定着性等の基本的な課題を満たすインクジェット用の水性顔料インクとしては、特開平2−255875号公報、特開平4−334870号公報、特開平4−57859号公報及び特開平4−57860号公報に記載のインクが開示されている。
しかしながら、この顔料は、染料のように液媒体中に溶解するのではなく、分散しているため、液媒体中での安定性が悪く、インク中の顔料の凝集、沈降、分離の発生やノズル部の目詰まりを生じさせるという問題がいまだ解決されていない。
【0011】
一方で、近年、インクジェット記録の高画質化、高精度化がすすみ、使用されるヘッドの吐出口(ノズル)も、従来はΦ33μm〜Φ34μm(面積でいうと900μm2程度)から、Φ50μm〜Φ51μm(面積でいうと2000μm2程度)のものが一般的であったが、より微細な吐出口が要求されてきている.その際、従来のようにインクとして水溶性の染料を溶解した記録液体を使用するのであれば、染料は液媒体中に溶解しているので、対目詰まり性という問題は対処できていた.しかしながら、顔料ベースのインクについては、より微細な吐出口(例えば、Φ25μm以下)となった場合に目詰まりは深刻な問題である。
【0012】
また、従来のようにインクとして水溶性の染料を溶解した記録液体を使用するのであれば、染料は液媒体中に溶解しているので、液滴が被記録体である紙に着弾、付着した場合に、紙の繊維の間に浸透して、良好な画素形成/画像形成が行える.しかしながら、上記の顔料を分散させた記録液体は、顔料粒子が染料のように液媒体中に溶解するのではなく、単に分散しているだけなので、液滴が紙に着弾、付着した場合に、液媒体は紙の繊維の間に浸透していくが、液媒体中の顔料粒子ならびに固形分は、紙の繊維の中のほうまで浸透していくことはなく、表面に留まって着色画素の形成が行われ。
【0013】
したがって、顔料粒子の大きさを最適化しないと良好な画素形状が得られないという問題がある。一例を挙げると、紙面上に形成される画素とオーダー的に同等な顔料粒子が、画素形成に使用された場合、良好な丸い画素を得ることは困難となり、高画質印写は望めない。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述のごとき実情に鑑みてなされたもので、その第1の目的は、液体に微粒子を分散させて記録液体とし、該記録液体を微細な開口から吐出させ、被記録体に付着させて記録を行う液体噴射記録ヘッドに使用する記録液体において、ノズル目詰まりが生じないようにするとともに被記録体上で色材が良好に付着し、かつ良好な画素形状が得られ、高画質記録が得られるようにすることにある。
【0015】
また、第2の目的も第1の目的と同じであるが、それを実現する他の構成を提案することにある。
さらに、第3の目的も第1の目的と同じであるが、それを実現するさらに他の構成を提案することにある。
また、第4の目的は、このような記録液体において、ノズル目詰まりが生じないようなより詳細な条件を提案することにある。
【0016】
また、第5の目的は、このような記録液体を用いる液体噴射記録装置のランニングコストを低減することにある。
さらに、第6の目的は、このような記録液体を用いる液体噴射記録装置をカラー記録に適用した場合のランニングコストの低減を行うことにある。
また、第7の目的は、このような記録液体を用いる液体噴射記録装置のよりコンパクト化、製造コストの低減を行うことにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前記目的を達成するために、第1に、開口の大きさがФ25μm以下であるような微細な開口から記録液体を吐出させ、該記録液体が被記録体に付着してから100ms以内で前記記録液体の接触角変化がほぼなくなる紙に前記記録液体の液滴を付着させて記録を行う液体噴射記録ヘッドに使用する記録液体において、該記録液体は、溶媒中に微粒子を分散剤とともに分散させた、もしくは微粒子の表面を処理して前記記録液体の溶媒中に分散させた記録液体であり、前記微粒子の大きさをDp、微細な開口の大きさをDoとするとき、0.0005≦Dp/Do≦0.02とするとともに、前記微粒子を、前記紙の繊維の太さより小さくするとともに、該繊維が重なりあって形成される間隙以下の大きさにするようにした。
【0018】
また、第2に、開口の大きさがФ25μm以下であるような微細な開口から記録液体を吐出させ、該記録液体が被記録体に付着してから100ms以内で前記記録液体の接触角変化がほぼなくなる紙に前記記録液体の液滴を付着させて記録を行う液体噴射記録ヘッドに使用する記録液体において、該記録液体は、溶媒中に微粒子を分散剤とともに分散させた、もしくは微粒子の表面を処理して前記記録液体の溶媒中に分散させた記録液体であり、前記微粒子の大きさをDp、微細な開口の大きさをDoとするとき、0.0005≦Dp/Do≦0.02とするとともに、前記微粒子を、前記紙の表面に塗工した粒子状物質の平均粒子径以下にするとともに、前記紙の表面の平滑度より小さいようにした。
【0019】
さらに、第3に、開口の大きさがФ25μm以下であるような微細な開口から記録液体を吐出させ、該記録液体が被記録体に付着してから100ms以内で前記記録液体の接触角変化がほぼなくなる樹脂部材に前記記録液体の液滴を付着させて記録を行う液体噴射記録ヘッドに使用する記録液体において、該記録液体は、溶媒中に微粒子を分散剤とともに分散させた、もしくは微粒子の表面を処理して前記記録液体の溶媒中に分散させた記録液体であり、前記微粒子の大きさをDp、微細な開口の大きさをDoとするとき、0.0005≦Dp/Do≦0.02とするとともに、前記微粒子を、前記樹脂部材の表面に塗工した粒子状物質の平均粒子径以下にするとともに、前記樹脂部材の表面の平滑度より小さいようにした。
【0020】
また、第4に、上記第1乃至3のいずれか1に記載の記録液体において、前記記録液体中の微粒子の含有率を2〜10重量%とするとともに、前記記録液体中の前記微粒子を含む固形分の量を15重量%以下とし、前記記録液体の溶媒が前記被記録体の内部深さ方向に浸透するとともに、前記固形分が前記被記録体の表面に付着、保持されるようにした。
【0021】
さらに、第5に、上記第1乃至4のいずれか1に記載の記録液体において、前記記録液体は、記録液体吐出部であるヘッド部と記録液体貯留部とが分離可能であるヘッドユニットに使用するようにした。
【0022】
また、第6に、上記第5に記載の記録液体において、前記記録液体は、記録液体の種類に応じて分離可能である記録液体貯留部に充填されているようにした。
さらに第7に、上記第1乃至6のいずれか1に記載の記録液体において、前記記録液体はサーマルインクジェットに使用することようにした。
【0023】
【発明の実施の形態】
最初に、本発明が適用されるインクジェットの構成および原理について説明するが、前述のように、インクジェット記録法は各種の方式がある。ここでは、代表例として、バブルインクジェット型の例で説明するが、いうまでもなく、本発明は、この方式に限定されるものではなく、全てのインクジェット記録法に適用されるものである。ただし、各種のインクジェット記録法の中でも、インクを加熱して気泡を発生させるいわゆるバブルインクジェット記録法は、インクが過酷な条件にさらされる(ヒートサイクルがある)ため、それにともなう劣化、化学反応の促進、顔料の分散不安定等の面から他のインクジェット記録法よりも、よりいっそう目詰まり等のインクジェットにとって好ましくない技術課題がある。
本発明は、このような過酷な条件にさらされるバブルインクジェット記録法にとって、特に好適に適用されるものである。
【0024】
図1は、バブルインクジェット型記録ヘッドの一例を説明するための図で、図1(A)はヘッド斜視図、図1(B)はヘッドを構成する蓋基板の斜視図、図1(C)は該蓋基板を裏側から見た斜視図、図1(D)は発熱体基板の斜視図であり、図中、1は蓋基板、2は発熱体基板、3は記録液体流入口、4は吐出口、5は流路、6は液室を形成するための領域、7は個別(独立)の制御電極、8は共通電極、9は発熱体である。
【0025】
ここで蓋基板1は、ガラス基板や金属基板にエッチング等の手法によって、流路5や液室6を形成して製作できるが、最も好適な製作方法は、プラスチックの成形によって形成する手法である。これは最初の金型製作にややコストがかかるものの、その後は大量に生産できるため、1個あたりの製作費を非常に低くできる。
【0026】
図2は、バブルインクジェット方式のインクジェットのインク滴吐出の原理を説明するための図である。図2(A)は、定常状態であり、吐出口面でインク10と表面張力と外圧とが平衡状態にある。図2(B)は、発熱体9が加熱されて、発熱体9の表面温度が急上昇し隣接インク層に沸騰現象が起きるまで加熱され、微小気泡11が点在している状態にある。
【0027】
図2(C)は、発熱体9の全面で急激に加熱された隣接インク層が瞬時に気化し、沸騰膜を作り、気泡11が成長した状態である。この時、吐出口内の圧力は、気泡の成長した分だけ上昇し、吐出口面での外圧とのバランスがくずれ、吐出口よりインク柱10′が成長し始める。
【0028】
図2(D)は、気泡11が最大に成長した状態であり、吐出口面より気泡の体積に相当する分のインクが押し出される。この時、発熱体9には電流が流れていない状態にあり、発熱体9の表面温度は降下しつつある。気泡11の体積の最大値は電気パルス印加のタイミングからやや遅れる。
【0029】
図2(E)は、気泡11がインクなどにより冷却されて収縮を開始し始めた状態を示す。インク柱10′の先端部では押し出された速度を保ちつつ前進し、後端部では気泡の収縮に伴って吐出口内圧の減少により吐出口面から吐出口内へインクが逆流してインク柱10′にくびれ10″が生じている。
【0030】
図2(F)は、さらに気泡11が収縮し、発熱体9の面にインク10が接し、発熱体面がさらに急激に冷却される状態にある。吐出口面では、外圧が吐出口内圧より高い状態になるためメニスカスが大きく吐出口内に入り込んできている。
インク柱の先端部は液滴12になり、記録紙の方向へ8〜15m/sの速度で飛翔している。
図2(G)は、吐出口にインクが毛細管現象により再び供給(リフィル)されて図2(A)の状態にもどる過程で、気泡は完全に消滅している。
【0031】
図3は、図1に示したヘッドとは違い、流路の先端部分に別途ノズル板20を設けたもので、図3(A)は、ノズル板20を取り付ける前の状態、図3(B)は、取り付けた後の状態を示している。この場合も、このノズル板は、樹脂(プラスチック)フィルムに、例えば、エキシマレーザーによってノズル21を穿孔したり、あるいは金属のエッチング、エレクトロフォーミング、打ち抜き加工等の手法で形成される。
【0032】
以上が熱を利用したバブルインクジェット型記録ヘッドの一般的な構成、原理であるが、必ずしもこの原理に限定される必要はない。たとえば、発生した気泡が収縮しないで液滴を飛翔させるような原理のバブルインクジェット方式を始めとして、バブルインクジェット方式に限らず、ピエゾ方式も含めて全てのインクジェット記録法に適用されるものである。
【0033】
本発明は、耐水性や耐光性が優れた顔料を上述のごときインクジェット記録法に使用する記録液体(インク)の着色剤として使用するものである。しかしながら、この顔料を記録液体の着色剤として使用した場合、顔料は、染料のように液媒体中に溶解するのではなく、分散しているため、液媒体中での安定性が悪く、インク中の顔料の凝集、沈降、分離の発生やノズル部の目詰まりを生じさせるという問題がある。とりわけノズル部の目詰まりは、インクが噴射しなくなるため、インクジェットにとっては致命的問題である。
【0034】
本発明は、これを解決するために、インクを構成する材料ならびにノズル部の構成および使用する顔料粒径ならびにインク中の顔料含有量などを鋭意検討したものである。本発明では顔料インクを前提に考えている。すなわち、記録液体中の着色剤は、水などの溶媒に溶解している染料ではなく、顔料である微粒子が分散しているものである。
【0035】
また、本発明は、耐水性や耐光性が優れた顔料を、上述のように、インクジェット記録法に使用する記録液体(インク)の着色剤として使用するものであるが、しかしながら、この顔料を記録液体の着色剤として使用した場合、水溶性の染料を溶解した記録液体を使用する場合と違って、液滴が紙に着弾、付着した場合に、液媒体は紙の繊維の間に浸透していくが、液媒体中の顔料粒子ならびに固形分は、紙の繊維の中のほうまで浸透していくことはない。したがって、顔料粒子が紙面の表面に留まって着色画素の形成が行われるので、顔料粒子の大きさを最適化しないと良好な画素形状が得られない。本発明は、これを解決するために、紙の表面性状と顔料粒径などの関係を鋭意検討したものである。
【0036】
本発明に好適に適用される黒色顔料インクとしては、例えば、中性あるいは塩基性のpHを有する黒色顔料を、第3級アミンの塩あるいは第4級アンモニウム基を有するアクリル酸エステルモノマーあるいはアクリルアミドモノマーを少なくとも構成成分とする水溶性高分子を用いて分散処理してなるものであり、他の色相のインク、例えば、イエロー、マゼンタ及びシアン等のインクについても、これらの色相の顔料を、カルボキシル基あるいはスルホン基を水溶性基として有するアニオン系高分子分散剤を用いて分散処理してなるものである。
【0037】
なお、ここでいう黒色顔料のpHとは、一般に、カーボンブラックの物性測定法に用いられているのと同様に、純水中に顔料を分散させた場合の溶液のpH値をいう。また、記録に用いる被記録材が普通紙である場合においては、該普通紙に対するインクの界面張力において、黒色顔料インクの界面張力が、カラーインクの界面張力よりも高いこと、更には、普通紙に対するインクの浸透速度において、黒色顔料インクの浸透速度が、カラーインクの浸透速度よりも遅いことが好ましい。
【0038】
以上のようなインクにおいて顔料粒子径を最適化し、また、使用する紙とインクの濡れを最適化してカラー記録を行うと、定着性よく、濃度も高く、境界滲みの少ない画像を得ることができる。また、透明性を有する被記録材に記録を行った場合でも鮮明な投影画像が得られる。そして、いうまでもないが、顔料インクであるため、従来の染料インクを用いる場合に較べて、光や水に対する抵抗性は非常に優れたものとなる。
【0039】
本発明で用いられる高分子分散剤は、主としてビニルモノマーの重合によって得られるものであって、得られる重合体の少なくとも一部を構成するカチオン性モノマーとしては、下記のような第3級アミンモノマーの塩及びこれらの第4級化された化合物が挙げられる。
【0040】
すなわち、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート[CH2=C(CH3)−COO−C2H4N(CH3)2]、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート[CH2=CH−COO−C2H4N(CH3)2]、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリレート[CH2=C(CH3)−COO−C3H6N(CH3)2]、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリレート[CH2=CH−COO−C3H6N(CH3)2]、N,N−ジメチルアクリルアミド[CH2=CH−CON(CH3)2]、N,N−ジメチルメタクリルアミド[CH2=C(CH3)−CON(CH3)2]、N,N−ジメチルアミノエチルアクリルアミド[CH2=CH−CONHC2H4N(CH3)2]、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリルアミド[CH2=C(CH3)−CONHC2H4N(CH3)2]、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド[CH2=CH−CONH−C3H6N(CH3)2]、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド[CH2=C(CH3)−CONH−C3H6N(CH3)2]等である。
【0041】
第3級アミンの場合において、塩を形成する化合物としては、塩酸,硫酸,酢酸等が挙げられ、4級化に用いられる化合物としては、塩化メチル,ジメチル硫酸,ベンジルクロライド,エピクロロヒドリン等が挙げられる。この中で、塩化メチル,ジメチル硫酸等が分散剤を調製するうえで好ましい。以上のような第3級アミンの塩、あるいは第4級アンモニウム化合物は水中ではカチオンとして振る舞い、中和された条件では酸性が安定溶解領域である。これらモノマーの共重合体中での含有率は20〜60重量%の範囲が好ましい。
【0042】
上記高分子分散剤の構成に用いられるその他のモノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチルメタクリレート,長鎖のエチレンオキシド鎖を側鎖に有するアクリル酸エステル等のヒドロキシ基を有するアクリル酸エステル,スチレン系モノマー等の疎水性モノマー類,及び、pH7近傍の水に溶解可能な水溶性モノマーとして,アクリルアミド類,ビニルエーテル類,ビニルピロリドン類,ビニルピリジン類,ビニルオキサゾリン類が挙げられる。疎水性モノマーとしては、スチレン,スチレン誘導体,ビニルナフタレン,ビニルナフタレン誘導体,(メタ)アクリル酸のアルキルエステル,アクリロニトリル等の疎水性モノマーが用いられる。共重合によって得られる高分子分散剤中において水溶性モノマーは、共重合体を水溶液中で安定に存在させるために15〜35重量%の範囲で用い、かつ、疎水性モノマーは、共重合体の顔料に対する分散効果を高めるために20〜40重量%の範囲で用いることが好ましい。
【0043】
本発明のブラックインクに使用されるカーボンブラック顔料(C.I.ピグメントブラック7)としては、#2600,#2300,#990,#980,#960,#950,#900,#850,#750,#650,MCF−88,MA−600,#95,#55,#52,#47,#45,#45L,#44,#40,#33,#32,#30,#25,#20,#10,#5(以上、三菱化学製)、Printex95,Printex90,Printex85,Printex80,Printex75,Printex45,Printex40,PrintexP,Printex60,Printex300,Printex30,Printex35,Printex25,Printex200,PrintexA,PrintexG,PrintexL6,PrintexL(以上、デグッサ製)、Raven850,Raven780ULTRA,Raven760ULTRA,Raven790ULTRA,Raven520,Raven500,Raven410,Raven420,Raven430,Raven450,Raven460,Raven890,Raven1020(以上、コロンビア製)、Regal415R,Regal330R,Regal250R,Regal995R,Monarch800,Monarch880,Monarch900,Monarch460,Monarch280,Monarch120(以上、キャボット製)等が挙げられる。
【0044】
イエローインクに使用される顔料としては、C.I.ピグメントイエロー1,C.I.ピグメントイエロー2,C.I.ピグメントイエロー3,C.I.ピグメントイエロー12,C.I.ピグメントイエロー13,C.I.ピグメントイエロー14,C.I.ピグメントイエロー16,C.I.ピグメントイエロー17,C.I.ピグメントイエロー73,C.I.ピグメントイエロー74,C.I.ピグメントイエロー75,C.I.ピグメントイエロー83,C.I.ピグメントイエロー93,C。I。ピグメントイエロー95,C.I.ピグメントイエロー97,C.I.ピグメントイエロー98,C.I.ピグメントイエロー114,C.I.ピグメントイエロー128,C.I.ピグメントイエロー129,C.I.ピグメントイエロー151,C.I.ピグメントイエロー154等が挙げられる。
【0045】
マゼンタインクに使用される顔料としては、C.I.ピグメントレッド5,C.I.ピグメントレッド7,C.I.ピグメントレッド12,C.I.ピグメントレッド48(Ca),C.I.ピグメントレッド48(Mn),C.I.ピグメントレッド57(Ca),C.I.ピグメントレッド57:1,C.I.ピグメントレッド112,C.I.ピグメントレッド123,C.I.ピグメントレッド168,C.I.ピグメントレッド184,C.I.ピグメントレッド202等が挙げられる。
【0046】
シアンインクに使用される顔料としては,C.I.ピグメントブルー1,C.I.ピグメントブルー2,C.I.ピグメントブルー3,C.I.ピグメントブルー15:3,C.I.ピグメントブルー15:34,C.I.ピグメントブルー16,C.I.ピグメントブルー22,C.I.ピグメントブルー60,C.I.バットブルー4,C.I.バットブルー60等が挙げられる。
【0047】
以上の他に,レッド,グリーン,ブルーその他の3原色以外の中間色が必要とされる場合には,以下のような顔料を単独あるいは併用して用いることが好ましい.例えば,C.I.ピグメントレッド209,C.I.ピグメントレッド122,C.I.ピグメントレッド224,C.I.ピグメントレッド177,C.I.ピグメントレッド194,C.I.ピグメントオレンジ43,C.I.バットバイオレット3,C.I.ピグメントバイオレット19,C.I.ピグメントグリーン36,C.I.ピグメントグリーン7,C.I.ピグメントバイオレット23,C.I.ピグメントバイオレット37,C.I.ピグメントブルー15:6,C.I.ピグメントブルー209等が挙げられる。
【0048】
また、カラーインク中には下記に挙げるような染料を共存させてもよい。イエローインクに用いられる染料としては,例えば,C.I.アシッドイエロー11,C.I.アシッドイエロー17,C.I.アシッドイエロー23,C.I.アシッドイエロー25,C.I.アシッドイエロー29,C.I.アシッドイエロー42,C.I.アシッドイエロー49,C.I.アシッドイエロー61,C.I.アシッドイエロー71,C.I.ダイレクトイエロー12,C.I.ダイレクトイエロー24,C.I.ダイレクトイエロー26,C.I.ダイレクトイエロー44,C.I.ダイレクトイエロー86,C.I.ダイレクトイエロー87,C.I.ダイレクトイエロー98,C.I.ダイレクトイエロー100,C.I.ダイレクトイエロー130,C.I.ダイレクトイエロー142等が挙げられる。
【0049】
マゼンタインクに用いられる染料としては,C.I.アシッドレッド1,C.I.アシッドレッド6,C.I.アシッドレッド8,C.I.アシッドレッド32,C.I.アシッドレッド35,C.I.アシッドレッド37,C.I.アシッドレッド51,C.I.アシッドレッド52,C.I.アシッドレッド80,C.I.アシッドレッド85,C.I.アシッドレッド87,C.I.アシッドレッド92,C.I.アシッドレッド94,C.I.アシッドレッド115,C.I.アシッドレッド180,C.I.アシッドレッド254,C.I.アシッドレッド256,C.I.アシッドレッド289,C.I.アシッドレッド315,C.I.アシッドレッド317,C.I.ダイレクトレッド1,C.I.ダイレクトレッド4,C.I.ダイレクトレッド13,C.I.ダイレクトレッド17,C.I.ダイレクトレッド23,C.I.ダイレクトレッド28,C.I.ダイレクトレッド31,C.I.ダイレクトレッド62,C.I.ダイレクトレッド79,C.I.ダイレクトレッド81,C.I.ダイレクトレッド83,C.I.ダイレクトレッド89,C.I.ダイレクトレッド227,C.I.ダイレクトレッド240,C.I.ダイレクトレッド242,C.I.ダイレクトレッド243等が挙げられる。
【0050】
シアンインクに用いられる染料としては、C.I.アシッドブルー9,C.I.アシッドブルー22,C.I.アシッドブルー40,C.I.アシッドブルー59,C.I.アシッドブルー93,C.I.アシッドブルー102,C.I.アシッドブルー104,C.I.アシッドブルー113,C.I.アシッドブルー117,C.I.アシッドブルー120,C.I.アシッドブルー167,C.I.アシッドブルー229,C.I.アシッドブルー234,C.I.アシッドブルー254,C.I.ダイレクトブルー6,C.I.ダイレクトブルー22,C.I.ダイレクトブルー25,C.I.ダイレクトブルー71,C.I.ダイレクトブルー78,C.I.ダイレクトブルー86,C.I.ダイレクトブルー90,C.I.ダイレクトブルー106,C.I.ダイレクトブルー199等が挙げられる。ただし、これらの染料を共存させる場合も、顔料粒径ならびにインク中の顔料含有量などは後述する範囲内に入っている必要がある。
【0051】
本発明において、前記したカチオン系水溶性高分子を分散剤として使用して顔料を分散する際に、物性面から好ましい顔料としては、等電点が6以上に調節された顔料、あるいは、顔料を特徴づける単純水分散体のpHが中性あるいは塩基性のpHを有するもの、例えば、7〜10であるような顔料が分散性の点で好ましい。これは、顔料とカチオン系水溶性高分子とのイオン的な相互作用力が強いためと理解されている。
以上のような材料を用いて顔料の微粒子水性分散体を得るには、以下のような方法を採用することが好ましい。
【0052】
(1)カーボンブラックの場合:カーボンブラックをカチオン分散剤溶液中にてプレミキシング処理を行い、引き続き高ずり速度の分散装置でミリングし、希釈後、粗大粒子を除去するために遠心分離処理を行う。その後、所望のインク処方のための材料を添加し、場合によっては、エイジング処理を施す。しかる後、最終的に所望の平均粒径を有する顔料分散体を得るために遠心分離処理を行う。このようにして作製されるインクのpHは、3〜9の範囲とするのが好ましい。
【0053】
(2)その他の色相の顔料の場合:アニオン系分散剤を用いる以外は、基本的にはカーボンブラックと同様である。但し、小粒径にするのが困難な有機顔料の場合には、顔料合成と同時、あるいは、合成途中段階で界面活性剤処理を行い、顔料粒子の結晶成長を抑制し、濡れ性を高めた加工顔料を使用することが望ましい。
【0054】
このようにして作製したインクのpHは、5〜10の範囲とするのが好ましい。カーボン黒色インク及びカラーインク何れの場合でも、その平均粒径は0.005〜2μmの範囲であることが分散体の安定性上必要である。これは、分散体の安定性という観点からの必須条件であるが、微細な開口からインクを吐出させるといういわゆるインクジェットに必須という観点から、この平均粒径を検討すると微細な開口すなわち吐出口での目詰まりを考慮に入れる必要があるが、これは後述する。また、紙面上でより良好な画素を形成するためには、後述する紙面の性状との関係を考慮する必要がある。なお、良好なインクの表面張力は10〜60dyn/cmの範囲である。
【0055】
次にこれらのインクを用いて被記録体に記録する場合の留意点について、被記録体の代表例である紙の観点から説明する。
オーソドックスな紙の定義では“紙とは植物繊維を水中に懸濁させた後、水を漉して、薄く平らに絡み合わせたもの”であるが、要は草、木、竹等に代表される植物を分解して得られる繊維の集合体である。そして、洋紙・和紙を問わず紙の原料はセルロース繊維という特徴的な性質を有する素材であり、これを製紙技術という独特の手法で処理し薄層化することで紙が得られる。
【0056】
ここで用いるセルロース繊維は、洋紙の場合、長さ1〜3mm、幅20〜40μm、厚さ3〜6μmの木材繊維で、一般の紙では、これが10〜100本程度層状に重なって出来上がっている。このような構成をとることによって紙は極めて多孔性で、セルロース繊維の持つ高い親和性を持った平滑な材料という特質が得られる。和紙は同じセルロース繊維を用いた紙であるが、木材繊維と違って靭皮繊維と称する木材繊維より比較的細長い繊維(幅5〜20μm、長さ3〜7mm)で、分子構造的にもやや違った特徴を持っており、手抄きまたは機械抄き和紙とに区別される。
【0057】
図4に紙の表面のイメージ図を示す。図4において、線はセルロース繊維を示しており、紙はこのようにセルロース繊維が重なり合ってなり、また各繊維が重なり合ってできる間隙が存在する。
【0058】
紙の定義は前述の通りであるが、単にセルロース繊維が重なり合ってなる紙は、いわば原紙であり、実際に使用されるものは、不透明度、白色度、平滑度、透気度などを高めるために、これらの繊維の間に、タルク,クレー,炭酸カルシウム、二酸化チタンなど粒子径0.2〜10μm程度のてん料粒子を繊維間の間隙に充てんしたものである。
【0059】
また紙の用途によっては、さらに紙表面に、カオリン(Al2O3・2SiO2・2H2O),炭酸カルシウム(CaCO3),サチンホワイト(3CaO・Al2O3・3CaSO4・31〜32H2O)などの粒子径が0.5〜1μm程度の粒子をラテックス、デンプンなどのバインダーとともに分散させた塗工液を塗布した塗工紙がある。
【0060】
さらに、OHPシートのように、ポリエチレンフィルム等の樹脂シートに、上記のようなカオリン(Al2O3・2SiO2・2H2O),炭酸カルシウム(CaCO23),サチンホワイト(3CaO・Al2O3・3CaSO4・31〜32H2O)などの粒子径が0.5〜1μm程度の粒子をラテックス、デンプンなどのバインダーとともに分散させた塗工液を塗布したものも必要に応じて使用される。
【0061】
このほか、紙の品種として、新聞巻取紙、非塗工印刷用紙(上級,中級,下級,薄葉の各印刷紙),微塗工印刷用紙(微塗工上質紙,微塗工印刷紙),塗工印刷用紙(アート紙,コート紙等),情報用紙(複写原紙,感光用紙,フォーム紙,PPC用紙,感熱紙等),包装用紙(クラフト紙,模造紙等),衛生用紙(ティッシュペーパー,ちり紙,トイレットペーパー,タオル用紙等),雑種紙(建材用原紙,積層板原紙,コンデンサーペーパー,ライスペーパー,グラシンペーパー等),段ボール原紙(ライナー,中しん原紙等)等々色々ある。
【0062】
いずれにしろ、このようなセルロース繊維が重なり合ってなる紙の表面は、セルロース繊維の太さ、それらが重なりあってできる間隙、さらには上記のような塗工紙の場合には、塗工物質の粒子の大きさ等に依存して、微視的に見ると凹凸形状となっている。このような微視的凹凸形状は、インクジェット記録によって高画質記録を行おうとする際、妨げになる因子の1つである。
【0063】
前述のように、本発明は、顔料を分散した記録液体(顔料インク)を用いて記録を行うものである。従来のように染料を溶解させた記録液体(染料インク)を用いて記録を行う場合においては、染料は溶媒中に溶解しているため、その記録液体によるインク滴が紙に付着し、画素を形成する場合、紙の繊維中にインクが浸透するとき、溶解した染料は溶媒とともに浸透するので、インクと紙の関係を最適化することにより、高画質記録を実現できた。しかしながら、本発明が適用される顔料インクの場合は、インクの溶媒は、紙に浸透するので、従来の染料インクと紙の関係を踏襲すればよいが、分散されている顔料に関しては、紙との関係においてどのようにすればよいのかは未検討状態である。
【0064】
本発明は、この点に鑑み、紙の表面性状と、顔料粒子の大きさについて検討したものである。前述のようにセルロース繊維は、紙の種類にもよるが、一般に幅(太さ)が、5〜40μm程度である。紙は通常、そのままこのような大きさの繊維よりなるものではなく、一般的には、紙製造工程において、叩解(こうかい)と呼ばれる繊維に機械的な力を作用させ、柔軟にする工程を経て製作されるため、実際に完成した紙の繊維の大きさはこれよりも小さくなる。通常、叩解を経て製造された紙の繊維の太さ、あるいは、厚さは、3〜6μm程度である。
【0065】
本発明においては、このような繊維が重なり合ってなる紙の表面に顔料粒子が付着し、色材としての役割を果たすわけであるが、紙の表面に良好に顔料粒子が付着し、インクによる良好な丸い画素を形成するにあたって重要なことは、その顔料粒子の大きさである。たとえば、繊維の大きさ(ここでは、叩解後の繊維の太さ、あるいは、厚さ)やあるいは各繊維間の間隙よりも大きな顔料あるいはその顔料の凝集体が付着したとする(図5)と、インクによる良好な丸い画素を形成することはできない。またこのように大きな顔料あるいはその顔料の凝集体は、繊維が重なりあってできる間隙に入らないため、付着安定性が悪いという問題もある。
【0066】
本発明では、この点に鑑み、インク溶媒中に分散させた顔料粒子の大きさを紙の繊維の太さ(ここでは叩解後)よりも小さい値としている。また、顔料粒子の大きさを紙の繊維が重なりあってできる間隙以下としている。そのイメージ図を図6に示す。なお図5、図6は図4より拡大して示した図である。
また、このように紙の繊維によって形成される凹凸の他に、前述のような塗工紙の塗工物質の粒子の大きさによっても、紙の表面性状が異なり、良好な画素形成に影響を及ぼす。
【0067】
これらの点について検討した結果の一例を示す。ここでは、表面性状(繊維の大きさ、塗工材料の有無)の異なる紙を準備し、顔料粒子径の異なるインクによる画素形成を行い、その画素形状の良否を判定したものである。
使用したヘッドは、図1に示したような構成の熱エネルギーを使用するインクジェット記録方式のヘッドである。但し、図1に示したヘッドは、流路の先端がそのまま吐出口になっているものを示したが、実験に使用したものは、図3に示すように、この先端に流路5の配列密度と同じ配列密度で形成したノズル21を有するノズル板20を設けたものである(図3(A)はノズル板20を取り付ける前の斜視図、図3(B)は取り付けた後の斜視図である)。また、その吐出口(ノズル)の数も、図1、図3に示したものは説明を簡単にするため吐出口が4個しかないもの、あるいは部分的に示したものであるが、実際に使用したのは吐出口の数が256個で、その配列密度が600dpiのものである。また吐出口径はΦ20μm(面積でいうならば314μm2)である。
【0068】
発熱体の大きさは20μm×85μmで、その抵抗値は106Ωであり、インク噴射の駆動電圧は23V、駆動パルス巾は6μs、駆動周波数は12kHzとした。また、そのノズル板の厚さは、40μmとした。
使用したインクは、以下のような組成および製法によるものであるが、顔料粒径が0.005〜20μmまで変えた10種類のものを準備した。
インクの製法を以下に示す。スチレン/メタクリル酸/ブチルアクリレートからなる、酸価325、重量平均分子量11,000、ガラス転移温度84℃の共重合体Pをカリウムを用いて溶解した水溶液を用い、以下のカーボンブラック分散体を作製した。
【0069】
・共重合体P水溶液(固形分20重量%)・・・・・・・・・・40部
・カーボンブラック MA−800(三菱化学製)・・・・・25部
・ジエチレングリコール・・・・・・・・・・・・・・・・・・20部
・イソプロピルアルコール・・・・・・・・・・・・・・・・・10部
・水・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・130部
【0070】
これらの材料をバッチ式縦型サンドミル(アイメックス製)に仕込み、1mm径のガラスビーズをメディアとして充填し、水冷しつつ3時間分散処理を行った。分散後の液の粘度は16cP、pH=9.7の粗分散体を得た。この分散液を遠心分離機にかけ粗大粒子を除去し、また、遠心分離の条件を種々変えることによって、顔料の平均粒径を0.005〜20μmまで変えた10種類の分散体を得た。これらの分散体を水にて希釈し、粘度2.4cP、表面張力46dyn/cm、pH=9.5の黒色塩基性インクジェット用インクを10種類得た。最終調製物の固形分は約8重量%であった。なお、これらのインク中の最終的な顔料含有率は5重量%である。なお、平均粒径は、動的光散乱法による粒度分布測定装置ELS−800(大塚電子製)にて測定を行い、平均量は自己相関関数の初期勾配から得られる値で示した。
【0071】
これら10種類の含有する顔料の粒径が異なるインクを上記のヘッドに充填し、表面性状(繊維の大きさ、塗工材料の有無)の異なる3種類の紙(未塗工紙2、塗工紙1)および樹脂部材(ポリエチレンフィルム)に、インク滴を付着させ、画素径約Φ60μm〜Φ65μmのドットを形成し、画素形状の良否を官能評価で判定した。なお、顔料粒径が大きいインクの場合は、すぐに目詰まりが生じてしまい画像としての評価はできないが、完全に目詰まりが生じて液滴噴射ができなくなるまでに噴射された画素をピックアップして評価した。
【0072】
3種類の紙は、紙の繊維の間にてん料粒子として、10μmのクレー粒子を10%充填したものである。なお、繊維太さや繊維が重なりあってできる間隙は、紙表面をSEM観察し、それぞれ20箇所ずつランダムに場所を抽出し、測定して得た平均値である。また、塗工紙およびポリエチレンフィルムの塗工表面平滑度は、触診式表面粗さ計で測定したものである。
結果を表1〜表4に示す。なお、ここで判定の良否(○、×)は、100倍の顕微鏡画像を見ながら官能評価で判断したものである(各々20個ずつピックアップして評価)。
【0073】
【表1】
【0074】
【表2】
【0075】
【表3】
【0076】
【表4】
【0077】
表1、表2の結果より、顔料粒子径は、紙の繊維の太さより小さい場合が、良好な画素が得られることがわかる。また、紙の繊維が重なりあって形成される間隙以下の大きさにすることによって、良好な画素が得られることがわかる。
表3、表4の結果より、顔料粒子径は、紙あるいは樹脂部材表面の塗工物質の平均粒子径以下にすることにより、良好な画素が得られることがわかる。また、塗工表面の平滑度より小さくすることによって、良好な画素が得られることがわかる。
【0078】
次に、本発明に適用されるインクを別の側面から検討した結果について説明する。一般に、着色剤として顔料を分散させたインクジェット用途に限らないインクはその用途、コストならびに作製技術に応じて、顔料粒子径が0.5〜100μmとされる。本発明では、前述のように、紙の繊維が織り成す凹凸面においても良好な画素を形成できるようにするため、また、インクジェット用途ということより、より微小な顔料粒子径とする必要がある。しかしながら、より微小な顔料粒子は凝集しやすく、単純には溶媒中に分散しない。そこで、本発明では、詳細な説明は後述するが、顔料粒子をインクの溶媒中に分散剤とともに分散させる、もしくは顔料粒子の表面を処理してインクの溶媒中に分散させるようにしている。そうすることによって顔料粒子の溶媒中への分散の粒子径下限値を0.005μmにまで拡大することができた。
【0079】
本発明で使用するカラーインクに使用される分散剤は、アルカリ可溶性の水溶性脂樹であり、重量平均分子量は1,000〜30,000であり、好ましくは、3,000〜15,000の範囲である。具体的には、スチレン,スチレン誘導体,ビニルナフタレン,ビニルナフタレン誘導体,アクリル酸のアルキルエステル,メタクリル酸のアルキルエステル等の疎水性モノマーと,α,β−エチレン性不飽和カルボン酸及びその脂肪族アルコールエステル,アクリル酸,メタクリル酸,マレイン酸,イタコン酸,フマール酸及びそれらの誘導体等の親水性モノマーからなる共重合体及びそれらの塩等である。共重合体はランダム,ブロック,グラフト等の何れの構造を有していてもよく、酸価は100〜430、好ましくは、130〜360の範囲である。
【0080】
本発明に使用される分散剤としては、更に、ポリビニルアルコール,カルボキシメチルセルロース等の水溶性ポリマー,ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物,ポリスチレンスルホン酸等の水溶性樹脂も使用することが可能である。しかし、アルカリ可溶性の水溶性脂樹の方が分散液の低粘度化が可能で、分散も容易であるという利点がある。これらの分散剤の使用量は、選択した顔料と分散剤とを用いて実験的に決定されるが、顔料に吸着せず溶解している樹脂の量は、インク中で4重量%以下であることが好ましい。
【0081】
上記分散剤を水系にて用いるには塩基が必要である。そのために好適な塩基としては、エタノールアミン,ジエタノールアミン,トリエタノールアミン,N−メチルエタノールアミン,N−エチルジエタノールアミン,2−アミノ−2−メチルプロパノール,2−エチル−2−アミノ−1,3−プロパンジオール,2−(2−アミノエチル)エタノールアミン,トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン,アンモニア,ピペリジン,モルフォリン,β−ジヒドロキシエチル尿素等の有機塩基,水酸化ナトリウム,水酸化カリウム,水酸化リチウム等の無機塩基が挙げられる。最適な塩基種は選択した顔料及び分散剤の種類によって異なるが不揮発性で安定、かつ保水性の高いものが好ましい。用いる塩基の量は基本的には分散剤の酸価から計算される量から、それを中和するに必要な塩基量として夫々用いられる。場合によっては、酸の当量を上回る量の塩基を用いる場合がある。それは、分散性向上、インクのpH調整、記録性能の調整、保湿性の向上等の目的で行う。
【0082】
本発明においてインクに用いられる溶剤としては、水と混和性がある有機溶剤類である。有機溶剤としては、下記の如く3群に分けることができる。即ち、保湿性が高く、蒸発しにくく、親水性に優れる第1群の溶剤、有機性があり疎水性の表面への濡れ性がよく、蒸発乾燥性もある第2群の溶剤、適度の濡れ性を有し低粘度の第3群の溶剤(一価アルコール類)である。
【0083】
第1群に属する溶媒としては、エチレングリコール,ジエチレングリコール,トリエチレングリコール,トリプロピレングリコール,グリセリン,1,2,4−ブタントリオール,1,2,6−ヘキサントリオール,1,2,5−ペンタントリオール,1,2−ブタンジオール,1,3−ブタンジオール,1,4−ブタンジオール,ジメチルスルホキシド,ダイアセトンアルコール,グリセリンモノアリルエーテル,プロピレングリコール,ブチレングリコール,ポリエチレングリコール300,チオジグリコール,N−メチル−2−ピロリドン,2−ピロリドン,γ−ブチロラクトン,1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン,スルフォラン,トリメチロールプロパン,トリメチロールエタン,ネオペンチルグリコール,エチレングリコールモノメチルエーテル,エチレングリコールモノエチルエーテル,エチレングリコールモノイソプロピルエーテル,エチレングリコールモノアリルエーテル,ジエチレングリコールモノメチルエーテル,ジエチレングリコールモノエチルエーテル,トリエチレングリコールモノメチルエーテル,トリエチレングリコールモノエチルエーテル,プロピレングリコールモノメチルエーテル,ジプロピレングリコールモノメチルエーテル,β−ジヒドロキシエチルウレア,ウレア,アセトニルアセトン,ヘンタエリスリトール,1,4−シクロヘキサンジオール等が挙げられる。
【0084】
第2群に属する溶媒としては、ヘキシレングリコール,エチレングリコールモノプロピルエーテル,エチレングリコールモノブチルエーテル,エチレングリコールモノイソブチルエーテル,エチレングリコールモノフェニルエーテル,ジエチレングリコールジエチルエーテル,ジエチレングリコールモノブチルエーテル,ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル,トリエチレングリコールモノブチルエーテル,トリエチレングリコールジメチルエーテル,トリエチレングリコールジエチルエーテル,テトラエチレングリコールジメチルエーテル,テトラエチレングリコールジエチルエーテル,プロピレングリコールモノブチルエーテル,ジプロピレングリコールモノメチルエーテル,ジプロピレングリコールモノエチルエーテル,ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル,ジプロピレングリコールモノブチルエーテル,トリプロピレングリコールモノメチルエーテル,グリセリンモノアセテート,グリセリンジアセテート,グリセリントリアセテート,エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート,ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート,シクロヘキサノール,1,2−シクロヘキサンジオール,1−ブタノール,3−メチル−1,5−ペンタンジオール,3−ヘキセン−2,5−ジオール,2,3−ブタンジオール,1,5−ペンタンジオール,2,4−ペンタンジオール,2,5−ヘキサンジオール等が挙げられる。
【0085】
第3群に属する溶媒としては,エタノール,n−プロパノール,2−プロパノール,1−メトキシ−2−プロパノール,フルフリルアルコール,テトラヒドロフルフリルアルコール等が挙げられる。以上のような水溶性溶媒の総量は、おおむねインク全体に対して5〜40重量%の範囲で使用することが好ましい。
【0086】
本発明のインクを構成する各水性顔料インクには、界面活性剤,pH調整剤,防腐剤等を添加することが可能である。界面活性剤は浸透性の高いカラーインクの調製、インクジェット方式としてバブルインクジェット方式を使用した場合における発熱ヒーター、吐出ノズル表面への濡れ性の調節等に有益である。材料としては既存の市販品から適宜選択することができる。以上のような材料から構成される各インクの物性をまとめると、黒色インクは、高い表面張力(概略30〜60dyn/cm)を有し、一方、カラーインクは低い表面張力(概略10〜40dyn/cm)を有することが好ましい。
【0087】
このように分散剤を用いて顔料が安定分散するような本発明のインクの具体的製法の1例を以下に示す。この例は、スチレン/アクリル酸/エチルアクリレートからなる、酸価290、重量平均分子量5,000、ガラス転移温度77℃の共重合体Pをモノエタノールアミンを用いて溶解した水溶液を用い、アントラキノン系顔料ピグメントレッド−177分散体を作製し、インクとする例である。
【0088】
・共重合体P水溶液(固形分15重量%)・・・・・・・・・・40部
・ピグメントレッド−177(クロモフタールレッドA2B、チバガイギー製)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・24部
・ジエチレングリコール・・・・・・・・・・・・・・・・・・20部
・イソプロピルアルコール・・・・・・・・・・・・・・・・・10部
・水・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・130部
【0089】
これらの材料をバッチ式縦型サンドミル(アイメックス製)に仕込み、1mm径のガラスビーズをメディアとして充填し、水冷しつつ3時間分散処理を行った。分散後の液の粘度は30cP、pH=9.8の粗分散体を得た。この分散液を遠心分離機にかけ粗大粒子を除去し、また、遠心分離の条件を種々変えることによって顔料の平均粒径を0.005〜4μmまで変えた分散体を得た。この分散体を水、ジエチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル(60:25:15重量比)にて希釈し、粘度3cP、表面張力40dyn/cm、pH=9.5の赤色塩基性インクジェット用インクを得た。最終調製物の固形分は約7.5重量%であった。なお、このインク中の最終的な顔料含有率は5重量%である。
【0090】
以上は、インク製法の1例であるが、このような製法によって製作される本発明における黒色水性顔料インクとカラーインクにおいて顔料粒子径を最適化し、また、使用する紙とインクの濡れを最適化してカラー記録を行うと、黒の文字等が鮮明であり、画像やグラフと黒の文字が隣り合っていても相互滲みがなく夫々明瞭である。
【0091】
次に、顔料の安定分散を得る他の例について説明する。上記例は、分散剤を利用して顔料の分散性を向上させるものであるが、ここでは顔料の表面処理により分散性を向上させる例として、カーボンブラックの表面をグラフト重合処理によって親水化して分散性を高める方法について説明する。たとえば、グラフト重合するには、金属アクリレートやアンモニウムアクリレートといった過酸化物とともにカーボンブラックを撹拌し、グラフト反応位置を生成した後、ラジカル重合開始剤及びアミンラジカル重合促進剤の存在下でモノマーを重合させればよい。
そして、このグラフトカーボンブラックを使用したインクジェット記録用インクはグラフトカーボンブラックを含む重合反応懸濁液を希釈し、湿潤剤のような慣用のインクジェット添加物を添加することによって得られる。
【0092】
他の例としては、カーボンブラックを、(1)常圧下で紫外線処理またはオゾン処理する工程と、(2)ビニル基を有するモノマーを熱重合によってグラフト重合させる工程とからなる製造方法において表面処理したカーボンブラックを、水または/及び水溶性有機溶剤に分散させる方法がある。
後者の場合、インク中に塩やラジカル重合剤といったような不純物を含まずにグラフト重合させることができ、印写のにじみ防止には好都合である。後者の例についてより詳細に説明する。
【0093】
本発明におけるカーボンブラックとしては、コンタクト法,ファーネス法,サーマル法等の通常公知の方法によって製造されたカーボンブラックが使用できるが、その表面にはカルボキシル基,水酸基,カルボニル基等の官能基が存在する。これらの官能基と本発明に使用するビニル基を有するモノマーを重合させると水や水溶性有機溶剤への分散性が優れたカーボンブラックが得られる。
【0094】
本発明に使用するビニル基を有するモノマーとしては具体的に、アクリルアミド,N,N−ジメチルアクリルアミド,アクリル酸,アクリロニトリル,メタクリル酸,メタクリル酸メチル,ビニル酢酸(ビニル酢酸より誘導されるポリビニルアルコール)等が挙げられ、アクリルアミドが最も好ましい。
紫外線処理またはオゾン処理はカーボンブラック表面の活性度を高める。具体的にはカーボンブラック表面に過酸化物を生成し、ビニル基を有するモノマーがカーボンブラックの表面に直接グラフト重合するためのものである。処理時間としては5分から2時間である。より長い処理時間は逆に生成した過酸化物を分解してしまうため好ましくない。
【0095】
重合は、重合禁止剤となる酸素を取り除くために窒素を吹き込んでから熱をかけることによって行う。このとき、カーボンブラック表面の過酸化物から水酸基の結合が切れ、モノマーの重合とグラフト化が同時に起こる。
反応時間は30分から6時間である。より長い反応時間は害はないが不経済である。また、反応させる温度は30℃から80℃である。冷却後に、副生成物として生成したホモポリマーは凍結乾燥や遠心分離といった慣用の方法で除去することが可能である。また未反応モノマーは水への溶解性が高いので熱水を用いて洗浄する。
【0096】
本発明において処理されたカーボンブラックを得るのに際し、カーボンブラックの表面処理を均一に行い、カーボンブラックとビニル基を有するモノマーとを強固に結合させ、得られた処理カーボンブラックの水系インクジェット記録用インク中での分散性を高めるために、カーボンブラック/ビニル基を有するモノマーの比率は重量比で10/1〜10/100とするのが好ましい。
【0097】
このようにして得られた表面処理されたカーボンブラックは水や水溶性有機溶剤に容易に分散する。水溶性有機溶剤として具体的には、グリセリン,エチレングリコール,ジエチレングリコール,トリエチレングリコール,ポリエチレングリコール#200,#300,#400等の多価アルコール類,トリエチレングリコールモノメチルエーテルメタノール等の多価アルコール類のアルキルエーテル誘導体類,グリセリルモノアセテート等の多価アルコールのエステル誘導体類,N−メチル−2−ピロリドン等の含窒素環状化合物,エタノール,n−プロパノール,iso−プロパノール等の炭素数1〜6の低級アルコール等が挙げられる。
【0098】
上記水溶性有機溶剤の使用量は、インクの全重量に対して40重量%以下で、好ましくは3〜30重量%である。
表面処理されたカーボンブラックの水及び水溶性有機溶剤への分散は容易なので、ボールミルやサンドミル、ロールミルといったような分散機での高剪断力を必要とせず、超音波ホモジナイザーのような超音波分散機を使用すれば十分に分散させることができる。
インクに使用する表面処理カーボンブラックの使用量は表面処理による重合度を考慮する必要があるが、インクの色濃度及び、インク吐出ノズルの目詰まり防止を考慮して、2〜10重量%とされる。これについては後述する。
【0099】
そのほかにも、インク物性を調節するための粘度調整剤や表面張力調整剤、pH調整剤等の添加剤や、防カビ剤、防腐剤、また、バインダーとしての樹脂を適宜添加することができる。
以下、この方法によって製作したインクの例を具体的に説明する。
【0100】
例1
成分A
カーボンブラック #25 (三菱化学製)・・・・・・・・・・・・20部
アクリルアミド・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10部
水・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・90部
成分B
表面処理カーボンブラック・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5部
グリセリン・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2部
エタノール・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6部
水・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・87部
【0101】
カーボンブラックを高圧水銀ランプ(800W)下で20分間紫外線処理し、その処理済みのカーボンブラック等の成分Aを混合し、窒素ガスを溶液中に吹き込みながら、70℃で撹拌し、50分重合させた。重合物を遠心分離機で12000回転×70分でホモポリマーを十分に除去し、熱水で150分攪拌しながら洗浄した後乾燥させ、次に、成分Bを混合し、超音波ホモジナイザーで粒径を整え、0.2μmのメンブランフィルターで粗大粒子及びごみを除去してインクジェット記録用インクを得たが、このインクは顔料分散状態が良好であり、保存安定性に優れたものであった。
【0102】
例2
成分A
カーボンブラック MA−7(三菱化学製)・・・・・・・・・・・・10部
アクリル酸・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・90部
水・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・210部
成分B
表面処理カーボンブラック・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3部
グリセリン・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10部
1−プロパノール・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4部
水・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・83部
【0103】
カーボンブラックを高圧水銀ランプ(800W)下で15分間紫外線処理し、その処理済みのカーボンブラック等の成分Aを混合し、窒素ガスを溶液中に吹き込みながら、65℃で撹拌し、100分重合させた。重合物を遠心分離機で13000回転×90分でホモポリマーを十分に除去し、熱水で180分攪拌しながら洗浄した後乾燥させ、次に、成分Bを混合し、超音波ホモジナイザーで粒径を整え、0.2μmのメンブランフィルターで粗大粒子及びごみを除去してインクジェット記録用インクを得たが、このインクは顔料分散状態が良好であり、保存安定性に優れたものであった。
【0104】
例3
成分A
カーボンブラック MA−600 (三菱化学製)・・・・・・・10部
N、N−ジメチルアクリルアミド・・・・・・・・・・・・・・・・・・50部
水・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・200部
成分B
表面処理カーボンブラック・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3部
エチレングリコール・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4部
エタノール・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5部
水・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・88部
【0105】
カーボンブラックを電圧60V、周波数50Hz、酸素流量40ml/minのオゾン発生装置でオゾン処理し、その処理済みのカーボンブラック等の成分Aを混合し、窒素ガスを溶液中に吹き込みながら、50℃で撹拌し、150分重合させた。重合物を遠心分離機で12000回転×80分でホモポリマーを十分に除去し、熱水で180分攪拌しながら洗浄した後乾燥させ、次に、成分Bを混合し、超音波ホモジナイザーで粒径を整え、0.2μmのメンブランフィルターで粗大粒子及びごみを除去してインクジェット記録用インクを得たが、このインクは顔料分散状態が良好であり、保存安定性に優れたものであった。
【0106】
以上、分散剤を利用して顔料の分散性を向上させる場合と顔料の表面処理により分散性を向上させる場合について説明してきたが、本発明ではこのような工夫により、従来にはない非常に微細な粒子径(最小0.005μm)をもつ顔料であっても安定した分散が得られるとともに、保存安定性に優れた良好なインクが得られるようになった。
【0107】
次に、本発明の顔料インクと被記録体との濡れの関係について検討した結果について説明する。被記録体の代表例である紙の場合、濡れは紙へのインクの浸透に先立って起こる現象である。
前述のように“紙とは植物繊維を水中に懸濁させた後、水を漉して、薄く平らに絡み合わせたもの”であるが、近年、製紙/塗工技術の進歩、高画質記録への要求等により、紙を単に“繊維の集合体”という扱いではなく、インクと接触した場合に、インクの挙動がどうなるかを、数10ミリ秒のオーダーでとらえる必要が出てきている。本発明ではこの点に鑑み、被記録体に本発明のインクが付着した場合の濡れと画質の関係を調べたものである。
【0108】
一般に、このような紙とインクの濡れ性の関係は、Wilhelmy法を用いた動的濡れ性試験機(たとえは、製品名称WET−3000レスカ株式会社製)等によって測定されるが、ここでは静的濡れ性測定機として知られるゴニオメーターを用い、紙の上にインクを滴下し、その接触角を測定した。ただし、接触角の時間的挙動を追跡するため、高速度カメラを併用し、数〜数10ミリ秒のオーダーで接触角変化を記録した。また、そのインクと紙を使用した場合の画素形状の良否を、100倍の顕微鏡画像を見ながら官能評価で判断した。
画素形成に使用したヘッド、インクなどの諸条件は、前述の紙の表面性状と画素形状の評価を行った場合と同じである。また使用した顔料インクの顔料粒子径は、0.05μmのものである。
【0109】
図7は、上記のような方法で、接触角の時間的変化を測定した結果である。使用した紙は、A〜Fまでの6種類である(Dは樹脂部材〜ポリエチレンフィルムに粒子径1μmの炭酸カルシウムを塗工したもの)が、各紙の繊維太さは5〜10μm、繊維が重なりあってできる間隙は1〜2μm、紙もしくは樹脂部材の表面平滑度は1〜2sである。
【0110】
なお、A〜Fまでの紙(D除く)の紙の密度は、それぞれ、
A 0.96g/cm3
B 0.41g/cm3
C 0.78g/cm3
E 0.58g/cm3
F 0.62g/cm3
である。ただし、ここでいっている密度とは、製紙業界で一般に適用している密度のことであり、秤量(1m2あたりの重さ(グラム数))を厚さで除して算出したものである(いわゆる物理学でいうところの密度とは厳密には同じではない)。
【0111】
画素形状評価結果は、それぞれの画素径はΦ60μm〜Φ70μmまで変動したが、紙A,Bのドット形状がいびつでもっとも悪く、紙Cは良好、樹脂部材D、紙E、Fは大変良好な丸い形状であった。なお評価は、100倍の顕微鏡画像による官能評価で、各々20個ずつピックアップして評価したものである。
すなわち、紙(もしくは樹脂部材)C,D,E,Fのように、紙もしくは樹脂表面にインクが付着してから、100ms以内に接触角の変動がなくなり、ほぼ一定の値になるような紙(もしくは樹脂部材)とインクの組み合わせにすれば、良好な丸い画素が得られることがわかった。また、紙A,Bのように、接触角の変動がいつまでも続くものは、画素形状が悪く、非実用的であることがわかった。また、それらは、接触角が比較的高い(100度以上)ものであった。
【0112】
なお、この結果は、インク滴が付着してから300msまでの挙動を調べたものであるが、紙A,Bであっても、30〜40秒後には紙の中にインクが浸透、あるいは溶媒成分が乾燥し、接触角という概念はなくなる。紙(もしくは樹脂部材)C,D,E,Fも同様である。また、画素形状の評価は、完全に紙の中にインクが浸透、あるいは溶媒成分が乾燥した後に行っている。
【0113】
以上の説明より明らかなように、上記のように被記録体とインクの組み合わせを最適化すれば、一般の普通紙(例えば、上質紙、中質紙あるいはボンド紙等)、コート紙、OHP用のプラスチックフィルム等の何れでも使用することができる。前述のように、本発明は全てのインクジェット記録方式に適用できるが、中でも、熱エネルギーによるインクの発泡現象によってインクを吐出させるタイプのインクジェット記録方法に使用する場合に特に好適であり、インクの吐出が極めて安定し、サテライトドットの発生等が生じないという特徴がある。但し、この場合に熱的な物性、例えば、比重、熱膨張係数及び熱伝導率等を調整する必要が生ずることもある。
【0114】
次に、本発明のより特徴的な点について説明する。前述のように、本発明は、微細な開口からインクを吐出させるといういわゆるインクジェット記録方式に関するものであり、インクジェット記録方式にとって、吐出口部における目詰まりは致命的なものである。これは染料インクを使用するものより、本発明のように、溶媒中に微粒子を分散させた顔料インクを使用するものでは、顔料が染料のように溶解しているわけではなく分散しているだけなので、より目詰まりが起こりやすい。さらに、本発明では、従来にはない微細な吐出口径、例えば、吐出口径がΦ25μm以下(面積でいうならば500μm2未満)であるようなインクジェット記録ヘッドを想定しているので、この目詰まりは大変深刻な問題である。
【0115】
ところで、目詰まりとは、微細な開口からインクが噴射するというインクジェット記録方式の原理そのものに由来するものである。つまり、開口が微細であるがゆえに生じるものである。よって、その開口の大きさと、いわばインク中の異物とでもいうべき顔料の大きさには密接な関係がある。
【0116】
本発明は、この点に鑑み、吐出口の大きさと顔料粒子の大きさに着目し、目詰まりの生じにくさとそれらの関係を見い出したものである。具体的には、顔料粒子径を変えたインクを調合し、吐出口の大きさがわかっているインクジェット記録ヘッドを使用し、一定時間インク噴射を行った後、一定時間放置し、インク噴射を再開し、吐出口の目詰まりの有無を調べた。その場合、吐出口の完全閉塞だけではなく、部分的な目詰まりおよびそれに至る事前の兆候(わずかな目詰まり)も目詰まりとみなしてテストした。
【0117】
使用したヘッドは、図1に示したような構成の熱エネルギーを使用するインクジェット記録方式のヘッドである。但し、図1に示したヘッドは、流路の先端がそのまま吐出口になっているものを示したが、実験に使用したものは、図3に示すように、この先端に流路の配列密度4と同じ配列密度で形成したノズル21を有するノズル板20を設けたものである(図3(A)はノズル板20を取り付ける前の斜視図、図3(B)は取り付けた後の斜視図である)。また、その吐出口(ノズル)の数も、図1、図3に示したものは説明を簡単にするため吐出口が4個しかないもの、あるいは部分的に示したものであるが、実際に使用したのは吐出口の数が256個で、その配列密度が600dpiのものである。また、発熱体の大きさは20μm×85μmで、その抵抗値は105Ωであり、インク噴射の駆動電圧は22V、駆動パルス巾は6μs、駆動周波数は12kHzとした。
なお、記録ヘッドはH1〜H4まで用意した(それぞれの吐出口径をH1=Φ25μm、H2=Φ20μm、H3=Φ15μm、H4=Φ10μmとした)。また、そのノズル板の厚さは、全て40μmとした。
【0118】
使用したインクは、以下のような組成および製法によるものであるが、顔料粒径が0.003〜2μmまで変えたものを準備し、吐出口径の異なるH1〜H4と組み合わせてテストした。また、一定時間インク噴射を行った後の放置の条件は、温度40℃、湿度30%の雰囲気中で10時間放置である。
【0119】
インクの製法を以下に示す。スチレン/メタクリル酸/ブチルアクリレートからなる、酸価325、重量平均分子量11,000、ガラス転移温度84℃の共重合体Pをカリウムを用いて溶解した水溶液を用い、以下のカーボンブラック分散体を作製した。
【0120】
・共重合体P水溶液(固形分20重量%)・・・・・・・・・・40部
・カーボンブラック MA−800(三菱化学製)・・・・・25部
・ジエチレングリコール・・・・・・・・・・・・・・・・・・20部
・イソプロピルアルコール・・・・・・・・・・・・・・・・・10部
・水・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・130部
【0121】
これらの材料をバッチ式縦型サンドミル(アイメックス製)に仕込み、1mm径のガラスビーズをメディアとして充填し、水冷しつつ3時間分散処理を行った。分散後の液の粘度は16cP、pH=9.7の粗分散体を得た。この分散液を遠心分離機にかけ粗大粒子を除去し、また、遠心分離の条件を種々変えることによって顔料の平均粒径を0.005〜1μmまで変えた分散体D1〜D22を得た。これらの分散体を水にて希釈し、粘度2.4cP、表面張力46dyn/cm、pH=9.5の黒色塩基性インクジェット用インクB1〜B22を得た。最終調製物の固形分は約7重量%であった。なお、これらのインク中の最終的な顔料含有率は5重量%である。なお、平均粒径は、動的光散乱法による粒度分布測定装置ELS−800(大塚電子製)にて測定を行い、平均量は自己相関関数の初期勾配から得られる値で示した。
【0122】
これらのインクB1〜B22と上記の吐出口径を変えたヘッドH1〜H4を組み合わせて、目詰まりの発生状況を調べた結果を表5〜表8に記す。
但し、表5はヘッドH1(吐出口径Do=Φ25μm)の場合、表6はヘッドH2(吐出口径Do=Φ20μm)の場合、表7はヘッドH3(吐出口径Do=Φ15μm)の場合、表8はヘッドH4(吐出口径Do=Φ10μm)の場合を示す。判定の○は実用的に良好に使用できる場合、△は使うことは可能であるがあまり好ましくない場合、×は全く実用的ではない場合を示している。
【0123】
【表5】
【0124】
【表6】
【0125】
【表7】
【0126】
【表8】
【0127】
以上の結果より、吐出口径がΦ10μm〜Φ25μmの噴射ヘッドを用いた場合、顔料粒径Dpと吐出口径Doとは、0.0005≦Dp/Do≦0.02の関係を満足するようにすれば目詰まりのない安定したインク噴射が得られることがわかる。なお、実験では、吐出口が丸いもので行っているが、他の形状(多角形等)の場合は、その面積比で換算した範囲内にすればよい。
【0128】
次に本発明の他の特徴について説明する。前述のように本発明は、顔料インクを前提に考えている。すなわち、記録液体中の着色剤は、水などの溶媒に溶解している染料ではなく、顔料である微粒子が分散しているものである。よって、その顔料含有量や固形分を含む顔料の分散剤のインク中の含有量は、目詰まりに対して大きな影響をおよぼす。そこで、ここでは、それらの含有量と吐出口の目詰まりの関係について調べた。
【0129】
使用したヘッドは、前記ヘッドH2(吐出口径Do=Φ20μm)と同じものであり、顔料粒径Dp=0.03μmのインク(B5)において、その顔料含有量と顔料分散剤としてのスチレン/メタクリル酸/ブチルアクリレートからなる共重合体Pの量を変えて、最終的なインク中の固形分の量と目詰まりのしやすさを調べた。目詰まりテストの方法などは、前述の方法と同じである。結果を表9,表10に示す。判定の○は実用的に良好に使用できる場合、×は全く実用的ではない場合を示している。
【0130】
【表9】
【0131】
【表10】
【0132】
以上の結果より、インク中の顔料含有量は1〜10重量%にすればよく、それより多くすると目詰まりが生ずることがわかる。また、顔料含有量だけでなく、顔料も含む最終的な固形分の量も15重量%以下にしなければならないこともわかる。なお、顔料含有量が1重量%の場合は目詰まりの心配はないが、このインクだけで使用する場合は濃度が低くて実用的ではない。ただし、複数の種類のいわゆる濃淡インクを用いる記録装置の淡いインクとして好適に使用できる。また、このインクだけで使用する場合であっても、染料を添加して濃度不足分を補うことは可能である。
【0133】
次に、本発明のさらに他の特徴について説明する。本発明が適用されるインクジェット記録ヘッドは、一般的にはカラー記録に好適に適用されるので、ここでは、本発明が好適に適用されるカラーインクジェット記録ヘッドの構成を説明する。
【0134】
図8は、本発明のインクジェットヘッドの一例を示す図で、本発明では、図示のように、1枚の共通の発熱体基板部30の上に、複数色のインク吐出エレメント31Y,31M,31Cを形成してなる。この例では、複数色のインクとして、イエロー(Y),マゼンタ(M),シアン(C)の3色の例を示している。なお、この例、およびこれ以降の例で、各色のインク吐出エレメント、吐出口は、図を簡単にするため、各色4個あるいは5個で説明するが、実際には、各色64〜1024個が好適に使用される。
【0135】
図9は、図8の記録ヘッド部に、それぞれY,M,Cのインクが供給されるようなインクタンク部40を設けた図を示す。なお、この図は、記録ヘッド部とインクタンク部とで構成される本発明のインクジェット記録ヘッドの概念を示す図であり、実際のもの(後述する)とは異なる。
【0136】
図10は、本発明によるインクジェットヘッドをキャリッジ上に搭載して記録を行う、いわゆるシリアルプリンタの構成を示す図で、図中、50は本発明によるインクジェットヘッド、51は記録紙、52はキャリッジ、53はキャリッジのガイドロッド、54はキャリッジを移動させるためのネジ棒、55は記録紙搬送ローラ、56は記録紙おさえコロで、周知のように、縦方向(記録紙51の移動方向)にY、M、Cと1列に配列された記録ヘッド50(図示例の場合、図9に示したヘッドが搭載されている)を、記録紙51の前をX方向に往復運動しながら記録を行う。本発明では、キャリッジを1回走査するごとに記録紙を図の矢印Y方向に移動していく。従って、1回の走査で記録される領域は、ヘッドの吐出エレメント、つまり、吐出口の列の長さ分だけである。また、Y,M,Cは縦方向に1列に並んでいるので、2回以上の走査によって、Y,M,Cのインクによる印写領域がオーバーラップすることにより、はじめてフルカラー記録を行うことができる。
【0137】
なお、以上の説明は、Y,M,Cの3色の例を示したが、本発明では、これにブラック(B)を加えた4色の吐出口列を持つインクジェットにも適用される。
図11にその例を示すが、この場合、図示のように、図8に示した例に、更にブラック用のインク吐出エレメント31Bを付加したものとなる。
【0138】
図12は、4色の吐出口列を持つ他の例である。図11には、各色のインク流路を独立に製作した例を示しているが、この図は、4色分の流路を一体的にプラスチック60の成形で製作した例である。こうすることにより、そのアセンブリコストは著しく下げることができる。
【0139】
通常、カラーインクジェット記録装置は、図1に示したような1つの記録ヘッドに1色のインクを充填し、これを複数色分、図13のように、キャリッジ70上に並べて構成する。71B,71C,71M,71Yはそれぞれブラック,シアン,マゼンタ,イエローの各カラーインクを吐出するための記録ヘッドである。これは、一つには目詰まり対策等の信頼性確保のためである。例えば、図13のように4色のインクを充填したヘッド71B,71C,71M,71Yを独立にキャリッジ70上に並べて構成した場合、仮にどれか1色のヘッドが目詰まりを起こした場合、その1色のヘッドを交換することにより、もとの状態に回復させることができる。
【0140】
一方、本発明では、図8〜図12に示した、複数色にインクを吐出させるための記録ヘッドを一体的に形成している。前述のように、目詰まりを起こした場合の回復措置を考えると、図13に示したように、複数色のインクを充填したヘッドを独立にキャリッジ上に並べて構成するほうが有利ではあるが、本発明では前述のように、その顔料粒径、含有率あるいはインク中の固形分の量を鋭意検討して最適化したため、目詰まりの不安は解消している。よって、図13に示したような複数色のインクを充填したヘッドを独立にキャリッジ上に並べて構成する必要はなく、アセンブリコストの低減、コンパクト性の実現、複数色のドット位置精度の高精度化のために、図8〜図12に示したように、複数色のインクを吐出させるための記録ヘッドを一体的に形成している。
【0141】
なお、ここでいう一体的形成とは、図8〜図12に示したバブルインクジェットヘッドの例のように発熱体基板を共通の1枚の基板にした例のみならず、図14に示すように複数色のインクを充填したヘッド、例えば、71B,71C,71M,71Yを積層して一体化したものも含む。この例では、流路の先端72B,72C,72M,72Yに共通の1枚のノズル板73を設けた例を示しており(図14(A)はノズル板73を取り付ける前、図14(B)は取り付けた後の斜視図)、この場合は、高精度に穿孔、アセンブリ化、一体化された共通の1枚のノズル板73を設けているため、製造コストの低減のみならず、複数色のドット位置精度も高精度が得られる。
【0142】
図15は、複数色(この例では、Y,M,Cの3色)のインクを噴射できるヘッドユニットをインク容器部と一体的に形成した例であり、図15(A)は全体斜視図、図15(B)は分解斜視図で、図中、100はヘッドユニット、101はヘッドチップ、102はプリントサーキット、103は上蓋、104はインク容器部、105(105Y,105M,105C)はステレスメッシュフィルタ、106(106Y,106M,106C)はインクを含んだフォーム材、107は底蓋、この例では、ヘッド部およびそれに連絡するインク容器部を内部で3つに分けて、Y,M,Cののインクを別々に充填したものである。このように、複数色を一体型にしたヘッドユニットは、非常にコンパクトに形成できるので、キャリッジに搭載する際、軽量小型であるため、小さなキャリッジですみ、また、キャリッジを駆動するモータも小型、省エネルギーが実現できる。
【0143】
図16は、図15に示した複数色のインク容器一体型ヘッドユニットにおいて、インク容器部のみを分離可能な構成とした場合の例を説明するための図で、図16(A)はヘッドユニット110の全体斜視図、図16(B)は該ヘッドユニット110を記録ヘッド部111とインク容器部112を分離した状態の斜視図を示す。これにより、カラーイメージ印写で大量にインクを消費してもインク容器部112のみを交換すればよいので、コスト低減が実現する。しかも、図15で説明したカラーの一体型ヘッドの利点はそのまま維持される。
【0144】
図17は、上記のような一体型ヘッドユニットで、インクの色ごとにインク容器部を分離できるようにした例を説明するための図で、図17(A)は全体斜視図、図17(B)はヘッドユニット110の記録ヘッド部111と各色のインク容器部112(112Y,112M,112C)を分離した状態の斜視図を示す。このようにすることのメリットは、カラーイメージ印写では、必ずしもY、M、Cのインクが同じスピードで消費されるわけではないので、もし、図15、図16の例において、どれかのインクがなくなった時に他のインクが残っていても、ヘッドユニットあるいは一体型インク容器全体を交換しなければならず、ランニングコストの面で不利であるのに対して、本発明のように各色のインク容器を別々にしておくことにより、なくなったインクの容器のみ交換することで、より一層のランニングコストの低減が実現する。
【0145】
なお、以上の説明は全てバブルインクジェットの例で説明したが、本発明はこれに限定されることなく、微細な吐出口を有し、顔料インクを使用する全てのインクジェットに適用されるものである。また、記録ヘッド例も単色のインクの例をあげて説明しているが、カラーインクジェットにも適用できるのはいうまでもない。
【0146】
【発明の効果】
本発明によれば、着色材として微粒子である顔料を分散させた記録液体(インク)において、微粒子径を吐出口径ならびに紙の繊維の太さあるいはその間隙の関係において最適化、あるいは使用する紙の濡れとの関係において最適化したので、Ф25μm以下であるような従来にはない非常に微細な吐出口(ノズル)を用いる噴射ヘッドに使用しても、ノズル目詰まりが生じず、高い信頼性が得られるとともに、紙上で色材が良好に付着し、かつ良好な画素形状が得られ、高画質記録が実現するとともに、高耐水性、高耐光性も実現できた。
【0147】
また、着色材として微粒子である顔料を分散させた記録液体(インク)において、微粒子径を吐出口径ならびに紙の表面の塗工物質の粒子の大きさ等の関係において最適化、あるいは、使用する紙の濡れとの関係において最適化したので、Ф25μm以下であるような従来にはない非常に微細な吐出口(ノズル)を用いる噴射ヘッドに使用しても、ノズル目詰まりが生じず、高い信頼性が得られるようになった。また紙上で色材が良好に付着し、かつ良好な画素形状が得られ、高画質記録が実現するとともに、高耐水性、高耐光性も実現できた。
【0148】
また、着色材として微粒子である顔料を分散させた記録液体(インク)において、微粒子径を吐出口径ならびに記録される樹脂部材の表面の塗工物質の粒子の大きさ等の関係において最適化、あるいは使用する樹脂部材の表面の濡れとの関係において最適化したので、Ф25μm以下であるような従来にはない非常に微細な吐出口(ノズル)を用いる噴射ヘッドに使用しても、ノズル目詰まりが生じず、高い信頼性が得られるようになった。また樹脂部材の表面で色材が良好に付着し、かつ良好な画素形状が得られ、高画質記録が実現するとともに、高耐水性、高耐光性も実現できた。
【0149】
また、着色材として微粒子である顔料を分散させた記録液体(インク)において、記録液体(インク)中の微粒子の含有率ならびに固形分の量を最適化し、記録液体(インク)の溶媒は被記録体の内部深さ方向に浸透させ、固形分を被記録体の表面に付着、保持してなるようにしたので、実用上十分な濃度が得られ、かつ顔料が安定分散し、高耐水性、高耐光性を実現するとともに、従来にはない非常に微細な吐出口(ノズル)を用いる噴射ヘッドに使用しても、吐出口の目詰まりがなくなり信頼性が向上し、かつ良好な画素形状が得られ、高画質記録が得られるようになった。
【0150】
また、上述のような記録液体(インク)を、記録液体吐出部であるヘッド部と記録液体貯留部(インク容器部)とが分離可能であるヘッドユニットに使用するようにしたので、請求項1乃至4の効果に加え、この記録液体(インク)を使用するインクジェット記録装置のランニングコストを低減することができた。
【0151】
更には、上記のような記録液体(インク)を、記録液体の種類に応じて分離可能である記録液体貯留部に充填されているようにしたので、どれかの記録液体(インク)がなくなったときは、記録液体(インク)の種類に応じて記録液体貯留部(インク容器部)のみを交換すればよいので、前記の効果に加え、カラー記録を行うにあたってさらに一層のランニングコスト低減が実現できた。
【0152】
更には、上記のような記録液体(インク)を、記録液体(インク)中に熱によって気泡を発生させ、その作用力で記録液体(インク)を噴射するサーマルインクジェット方式に適用した場合、使用条件が過酷になるが、本発明の条件を選ぶことによって、本発明のようにФ25μm以下であるような従来にはない非常に微細な吐出口(ノズル)を用いる噴射ヘッドに使用しても、ノズル目詰まりのない安定噴射が行え、信頼性が高く、高画質印写が実現した。
【0153】
さらに、サーマルインクジェット方式の場合、噴射ヘッド部が半導体製造プロセスを利用して製作できるので、本発明のようにФ25μm以下であるような従来にはない非常に微細な吐出口(ノズル)を用い、高精度印写を行うのに必要な噴射ヘッドであって、その発熱体部や吐出口部が非常に微細かつ高密度に配列される場合にも簡単かつコンパクトに、しかも高歩留まり、すなわち低コストで製作できる。よって、本発明の記録液体(インク)を使用するこのような液体噴射記録装置のよりコンパクト化、製造コストの低減が実現した。
【0154】
【図面の簡単な説明】
【図1】バブルインクジェット型記録ヘッドの一例を説明するための図である。
【図2】バブルインクジェット方式のインクジェットのインク滴吐出の原理を説明するための図である。
【図3】ノズル板を有するインクジェットヘッドの例を示す図である。
【図4】紙表面の拡大イメージ図である。
【図5】大粒径顔料が紙表面に付着した場合のイメージ図である。
【図6】繊維より小さい顔料粒子が紙表面に付着した場合のイメージ図である。
【図7】紙表面にインク滴が付着した場合の接触角の時間変化を示す図である。
【図8】本発明のインクジェットヘッドの一例を示す図である。
【図9】図8の記録ヘッド部にインクタンクを設けた例を示す図である。
【図10】インクジェットヘッドを搭載したシリアルプリンタの構成例を示す図である。
【図11】4色の吐出口列を持つ例を示す図である。
【図12】4色のヘッドを一体化した例を示す図である。
【図13】4色のヘッドをキャリッジ上に独立して並べた例を示す図である。
【図14】複数色のヘッドを積層して一体化した例を示す図である。
【図15】ヘッドユニットとインク容器部とを一体的に形成した例を示す図である。
【図16】インク容器部のみを分離可能な構成にした場合の例を示す図である。
【図17】インクの色ごとにインク容器を分離できるようにした例を示す図である。
【符号の説明】
1…蓋基板、2…発熱体基板、3…記録液体流入口、4…吐出口、5…流路、6…共通液室、7…個別制御電極、8…共通電極、9…発熱体、10…インク、10′…インク柱、11…気泡、12…液滴、20…ノズル板、21…ノズル、30…発熱体基板、31Y、31M、31C、31B…インク吐出エレメント、40…インクタンク、50…記録ヘッド、51…記録紙、52…キャリッジ、53…ガイドロッド、54…ネジ棒、55…記録紙送りローラ、56…記録紙おさえコロ、70…キャリッジ、71B、71C、71M、71Y…ヘッド、72B、72C、72M、72Y…吐出口、73…ノズル板、100…ヘッドユニット、101…ヘッドチップ、102…FPC、103…上蓋、104…インク容器部、105…フィルタ、106…インク含浸用フォーム材、107…底蓋、110…ヘッドユニット、111…記録ヘッド部、112…インク容器部。
Claims (7)
- 開口の大きさがФ25μm以下であるような微細な開口から記録液体を吐出させ、該記録液体が被記録体に付着してから100ms以内で前記記録液体の接触角変化がほぼなくなる紙に前記記録液体の液滴を付着させて記録を行う液体噴射記録ヘッドに使用する記録液体において、該記録液体は、溶媒中に微粒子を分散剤とともに分散させた、もしくは微粒子の表面を処理して前記記録液体の溶媒中に分散させた記録液体であり、前記微粒子の大きさをDp、微細な開口の大きさをDoとするとき、0.0005≦Dp/Do≦0.02とするとともに、前記微粒子を、前記紙の繊維の太さより小さくするとともに、該繊維が重なりあって形成される間隙以下の大きさにすることを特徴とする記録液体。
- 開口の大きさがФ25μm以下であるような微細な開口から記録液体を吐出させ、該記録液体が被記録体に付着してから100ms以内で前記記録液体の接触角変化がほぼなくなる紙に前記記録液体の液滴を付着させて記録を行う液体噴射記録ヘッドに使用する記録液体において、該記録液体は、溶媒中に微粒子を分散剤とともに分散させた、もしくは微粒子の表面を処理して前記記録液体の溶媒中に分散させた記録液体であり、前記微粒子の大きさをDp、微細な開口の大きさをDoとするとき、0.0005≦Dp/Do≦0.02とするとともに、前記微粒子を、前記紙の表面に塗工した粒子状物質の平均粒子径以下にするとともに、前記紙の表面の平滑度より小さい大きさにすることを特徴とする記録液体。
- 開口の大きさがФ25μm以下であるような微細な開口から記録液体を吐出させ、該記録液体が被記録体に付着してから100ms以内で前記記録液体の接触角変化がほぼなくなる樹脂部材に前記記録液体の液滴を付着させて記録を行う液体噴射記録ヘッドに使用する記録液体において、該記録液体は、溶媒中に微粒子を分散剤とともに分散させた、もしくは微粒子の表面を処理して前記記録液体の溶媒中に分散させた記録液体であり、前記微粒子の大きさをDp、微細な開口の大きさをDoとするとき、0.0005≦Dp/Do≦0.02とするとともに、前記微粒子を、前記樹脂部材の表面に塗工した粒子状物質の平均粒子径以下にするとともに、前記樹脂部材の表面の平滑度より小さい大きさにすることを特徴とする記録液体。
- 前記記録液体中の微粒子の含有率を2〜10重量%とするとともに、前記記録液体中の前記微粒子を含む固形分の量を15重量%以下とし、前記記録液体の溶媒が前記被記録体の内部深さ方向に浸透するとともに、前記固形分が前記被記録体の表面に付着、保持されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1に記載の記録液体。
- 前記記録液体は、記録液体吐出部であるヘッド部と記録液体貯留部とが分離可能であるヘッドユニットに使用することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1に記載の記録液体。
- 前記記録液体は、記録液体の種類に応じて分離可能である記録液体貯留部に充填されていることを特徴とする請求項5に記載の記録液体。
- 前記記録液体はサーマルインクジェットに使用することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1に記載の記録液体。
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