JP2004090507A - 化粧シートおよび水系塗工液 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】基材2、着色層11、接着層5、透明樹脂層6、保護層9をこの順で積層した化粧シート1であって、着色層11、接着層5、保護層9のうち、少なくとも1以上の層を、水溶性または水分散性の紫外線吸収剤、および/または、水溶性または水分散性の光安定剤を含有する水系塗工液で形成し、かつ、着色層11、接着層5、保護層9のいずれの層も、非親水性の紫外線吸収剤、および/または、非親水性の光安定剤を含有する水系塗工液で形成しないことにより、上記課題を解決する。着色層11、接着層5および保護層9を水系塗工液で形成することがより好ましい。本発明の化粧シート1の具体的な構成としては、透明樹脂層6の表面側(保護層9との間)に凹凸模様7を形成したり、その凹凸模様7の凹陥部17に部分着色層8を形成したり、基材の裏面にプライマー層10を形成したりすることができる。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、建築物の内装、建具の表面化粧、車両の内装等に用いられる化粧シートおよび水系塗工液に関し、更に詳しくは、接着特性および耐候性を向上させた化粧シートおよびそうした化粧シート等に好適に使用できる水系塗工液に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
建築物の内装、建具の表面化粧、車両の内装等に用いられる化粧シートとしては、基材、ベタ着色層および/または絵柄着色層からなる着色層、接着層および透明樹脂層を順次積層させたものが一般に知られている。
【0003】
こうした従来の化粧シートにおいては、特許文献1に記載のように、着色層(インキ層ともいわれる。)および接着層が、トルエン、キシレン等の芳香族溶剤や、メチルエチルケトンや酢酸エチル等の脂肪族溶剤を含む溶剤系塗工液により形成されていた。従来、こうした化粧シートの着色層、接着層等を形成する溶剤系塗工液には、耐候性の向上等の目的で、紫外線吸収剤や光安定剤(ラジカル捕集剤)が添加されていた。
【0004】
ところで、そうしたトルエン、キシレン等の芳香族溶剤や、メチルエチルケトンや酢酸エチル等の脂肪族溶剤は、有機性揮発物質(以下、VOCという。)であり、近年その使用の低減が要請されている。特に、トルエン、キシレン等の芳香族溶剤は、PRTR法の指定化学物質、および、室内空気中化学物質の指針値策定物質として挙げられており、「芳香族溶剤は使用しない、その他の溶剤も使用を減少しよう。」という強い要請がある。
【0005】
特に、化粧シートの製造においては、溶剤系塗工液に含まれるVOCが揮発することによる作業環境の問題、化粧シート中に残存したVOCが一般の生活空間に供給されることによる環境安全性の問題等がある。こうした問題に対して、VOCの使用を減少させるべく種々の手段が提案されている。例えば、特許文献2には、VOC含有量を極力減少させた水系塗工液で着色層や接着層を形成した化粧シートが開示されている。こうした化粧シートは、VOCの揮発量や残存量をより減少させることができるので、上述した環境問題を解決するのに有効である。
【特許文献1】
特開平11−198309号公報
【特許文献2】
特開2001−62970号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従来、溶剤系塗工液に添加されていた紫外線吸収剤や光安定剤(ラジカル捕集剤)を水系塗工液に配合し、得られた水系塗工液で形成した着色層や接着層は、従来の溶剤系塗工液を用いて形成した場合に比較して、耐候性を向上させることができなかった。
【0007】
本発明者は、他の種類の紫外線吸収剤等を添加した水系塗工液を用いて着色層や接着層を形成することを試みた。しかしながら、化粧シートの耐候性を向上させることはできず、しかも、基材と透明樹脂層との間または基材/着色層と透明樹脂層との間の接着性が悪くなるという問題が生じた。こうした問題は、添加した紫外線吸収剤等が水系塗工液中に偏在してしまうことに大きく起因するものと考えられた。
【0008】
このような状況において、水系塗工液で形成された着色層や接着層の耐候性の向上と、接着特性の改善が要請されていた。
【0009】
本発明は、上述の問題を解決すべくなされたものであって、その目的は、耐候性および接着特性を向上させた化粧シートおよびそうした化粧シート等に好適に使用できる水系塗工液を提供するものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決する本発明の化粧シートは、基材、着色層、接着層、透明樹脂層、保護層をこの順で積層した化粧シートであって、前記の着色層、接着層、保護層のうち少なくとも1以上の層が、水溶性または水分散性の紫外線吸収剤、および/または、水溶性または水分散性の光安定剤を含有する水系塗工液で形成され、かつ、前記の着色層、接着層、保護層のいずれの層も、非親水性の紫外線吸収剤、および/または、非親水性の光安定剤を含有する水系塗工液では形成されないことに特徴を有する。
【0011】
この発明によれば、水溶性または水分散性の紫外線吸収剤、および/または、水溶性または水分散性の光安定剤は、水系塗工液中に偏在することなく均一に溶解し分散してるので、そうした水系塗工液で形成された着色層、接着層ないし保護層は、耐候性に優れると共に接着特性に優れたものとなる。さらに、この水系塗工液は、作業環境中のVOCの揮発量および化粧シート中のVOC残存量を極力減少させることができ、その結果、環境安全性をより向上させることができる。また、着色層、接着層、保護層のいずれも層も、従来の溶剤系塗工液に含有されていたような非親水性の紫外線吸収剤および非親水性の光安定剤を含有した水系塗工液で形成されないので、化粧シートの耐候性や接着特性が悪くなるという問題が生じない。
【0012】
なお、上述した本発明の化粧シートの具体的な構成としては、透明樹脂層の表面側(保護層との間)に凹凸模様を形成したり、その凹凸模様の凹陥部に部分着色層を形成したり、基材の裏面にプライマー層を形成したりすることができる。
【0013】
上記課題を解決する本発明の水系塗工液は、水溶性または水分散性の紫外線吸収剤、および/または、水溶性または水分散性の光安定剤を含有することに特徴を有する。
【0014】
この発明によれば、耐候性に優れ、接着特性を有する層を形成することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の化粧シートについて、図面を参照しつつ説明する。
【0016】
図1は、本発明の化粧シート1の層構成の一例を示す断面図である。図1に示す本発明の化粧シート1は、基材2、ベタ着色層3、絵柄着色層4、接着層5、透明樹脂層6、凹凸模様7、部分着色層8、保護層9が順次積層された形態である。また、基材2の裏面にはプライマー層10が形成されている。
【0017】
(基材)
基材2は、化粧シート1における必須の構成であり、下記に示す各種のオレフィン系樹脂を好ましく適用できる。例えば、(イ)ハードセグメントとしての高密度ポリエチレンまたはポリプロピレンと、ソフトセグメントとしてのエラストマーまたは無機充填剤とを有する混合物、(ロ)特開平9−111055号公報、特開平5−77371号公報、特開平7−316358号公報等に記載されているエチレン−プロピレン−ブテン共重合体、(ハ)特公平6−23278号公報に記載されているハードセグメントとしてのアイソタクチックポリプロピレンとソフトセグメントとしてのアタクチックポリプロピレンとの混合物、等を用いることができる。
【0018】
前記(イ)のハードセグメントとしての高密度ポリエチレンとしては、好ましくは、比重が0.94〜0.96のポリエチレンであって、低圧法で得られる結晶化度が高く、分子に枝分かれ構造の少ない高分子である高密度ポリエチレンが用いられる。また、ハードセグメントとしてのポリプロピレンとしては、好ましくは、アイソタクチックポリプロピレンが用いられる。
【0019】
前記(イ)のソフトセグメントとしてのエラストマーとしては、ジエン系ゴム、水素添加ジエン系ゴム、オレフィンエラストマー等が用いられる。水素添加ジエン系ゴムは、ジエン系ゴム分子の二重結合の少なくとも一部分に水素原子を付加させてなるものであり、ポリオレフィン系樹脂の結晶化を抑えて、その柔軟性を向上させたものである。ジエン系ゴムとしては、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、ブチルゴム、プロピレン・ブタジエンゴム、アクリロニトリル・ブタジエンゴム、アクリロニトリル・イソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム等が挙げられる。オレフィンエラストマーとしては、2種類または3種類以上のオレフィンと共重合しうるポリエンを少なくとも1種類加えた弾性共重合体であり、オレフィンとしてはエチレン、プロピレン、α−オレフィン等が使用され、ポリエンとしては、1,4ヘキサジエン、環状ジエン、ノルボルネン等が使用される。好ましいオレフィンエラストマーとしては、例えばエチレン−プロピレン共重合体ゴム、エチレン−プロピレン−非共役ジエンゴム、エチレン−ブタジエン共重合体ゴム等のオレフィンを主成分とする弾性共重合体が挙げられる。なお、これらのエラストマーは、必要に応じて有機過酸化物、硫黄等の架橋剤を用いて、過重架橋させてもよい。
【0020】
これらエラストマーの添加量としては、10〜60重量%、好ましくは30重量%程度である。エラストマーの添加量が10重量%未満では、一定荷重伸度の変化が急峻になり過ぎ、また、破断時伸度、耐衝撃性、易接着性の低下が生じる。エラストマーの添加量が60重量%より高いと、透明性、耐候性および耐クリープ性の低下が生ずる。
【0021】
前記(イ)の無機充填剤としては、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、クレー、タルク等の平均粒径0.1〜10μm程度の粉末が用いられる。添加量としては、1〜60重量%、好ましくは5〜30重量%である。無機充填剤の添加量が1重量%未満では、耐クリープ変形性および易接着性の低下が生じる。また、無機充填剤の添加量が60重量%を超えると、破断時伸度および耐衝撃性の低下が生じる。
【0022】
前記(ロ)のオレフィン系樹脂としては、エチレン・プロピレン・ブテン共重合体樹脂からなる熱可塑性エラストマーが用いられる。ここで、ブテンとしては、1ブテン、2ブテン、イソブチレンの3種の構造異性体のいずれも用いることができる。共重合体としては、ランダム共重合体であって、非晶質の部分を一部含む。
【0023】
上記エチレン・プロピレン・ブテン共重合体樹脂の好ましい具体例としては、次の(a)〜(c)が挙げられる。
【0024】
(a)特開平9−111055号公報に記載されるエチレン、プロピレンおよびブテンの3元共重合体によるランダム共重合体。このランダム共重合体においては、プロピレン成分の重量比率が90重量%以上であることが好ましく、メルトフローレートが、230°C、2.16kgの条件下で1〜50g/10分であることが好ましい。このようなランダム共重合体は、ランダム共重合体100重量部に対し、燐酸アリールエステル化合物を主成分とする透明造核剤を0.01〜50重量部、炭素数12〜22の脂肪酸アミドを0.003〜0.3重量部、を溶融混練してなるものである。
【0025】
(b)特開平5−77371号公報に記載されるエチレン、プロピレンおよびブテンの3元共重合体。この共重合体は、プロピレン成分の重量比率が50重量%以上の非晶質重合体20〜100重量%に、結晶質ポリプロピレンを80〜0重量%添加してなるものである。
【0026】
(c)特開平7−316358号公報に記載されるエチレン、プロピレン、1ブテンの3元共重合体。この共重合体は、プロピレンおよび/または1ブテンの含有率が50重量%以上の低結晶質重合体20〜100重量%に、アイソタクチックポリプロピレン等の結晶性ポリオレフィン80〜0重量%を混合した組成物に対して、Nアシルアミノ酸アミン塩、Nアシルアミノ酸エステル等の油ゲル化剤を0.5重量%添加したものである。
【0027】
上記(a)〜(c)のエチレン・プロピレン・ブテン共重合体樹脂は、単独で用いてもよいし、必要に応じてさらに他のポリオレフィン樹脂を混合して用いてもよい。
【0028】
前記(ハ)のオレフィン系樹脂としては、特公平6−23278号公報に記載のように、(A)ソフトセグメントとして、数平均分子量Mnが25000以上で、且つ重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比Mw/Mn≦7の沸騰ヘプタンに可溶なアタクチックポリプロピレン10〜90重量%と、(B)ハードセグメントとして、メルトインデックスが0.1〜4g/10分の沸騰ヘプタン不溶性のアイソタクチックポリプロピレン90〜10重量%との混合物からなる軟質ポリプロピレンが挙げられる。
【0029】
上記(ハ)のオレフィン系熱可塑性エラストマーの中でも、アイソタクチックポリプロピレンとアタクチックポリプロピレンの混合物からなり、且つアタクチックポリプロピレンの重量比率が5〜50重量%のものが好ましく用いられ、アタクチックポリプロピレンの重量比率が20〜40重量%のものが特に好ましく用いられる。アタクチックポリプロピレンの重量比率が5重量%未満では、エンボス加工をする際や3次元形状や凹凸形状の物品に成形加工する際に、ネッキングによる不均一なシート状基材の変形が生じたり、その結果としての皺、絵柄の歪み等が生ずる。一方、アタクチックポリプロピレンの重量比率が50重量%を超えると、シート状の基材自体が変形し易くなり、基材を印刷機に通した時に基材が変形し、着色層11の絵柄が歪んだり、多色刷の場合に見当が合わなくなる等の不良が発生しやすくなると共に、成形時においてはシートが破れ易くなる。
【0030】
基材2を形成する上述のオレフィン系樹脂中には、必要に応じて、着色剤、熱安定剤、難燃剤、紫外線吸収剤、ラジカル捕捉剤等が添加される。
【0031】
着色剤としては、チタン白、亜鉛華、べんがら、朱、群青、コバルトブルー、チタン黄、黄鉛、カーボンブラック等の無機顔料、イソインドリノン、ハンザイエローA、キナクリドン、パーマネントレッド4R、フタロシアニンブルー等の有機顔料または染料、アルミニウム、真鍮等の箔粉からなる金属顔料、二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸亜鉛等の箔粉からなる真珠光沢顔料等が用いられる。また、必要に応じて、無機充填剤を5〜60重量%の割合で添加してもよい。無機充填剤としては、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、クレー、タルク、シリカ(二酸化ケイ素)、アルミナ(酸化アルミニウム)等の粉末等が挙げられる。着色剤は、基材2に化粧シート1として必要な色彩を持たせるために添加され、透明着色と不透明(隠蔽)着色のいずれでも構わないが、一般的には被着体15を隠蔽するために不透明着色が好ましい。
【0032】
熱安定剤としては、フェノール系、サルファイト系、フェニルアルカン系、フィスファイト系、アミン系等の公知のものが使用でき、熱加工時の熱変色等の劣化の防止の向上が図られる。難燃剤は、難燃性を付与する場合に添加され、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどの粉末が用いられる。紫外線吸収剤は、樹脂により良好な耐候性(耐光性)を付与するためのものであり、ベンゾトリアソール、ベンゾフェノン、サリチル酸エステル等の有機物、または、0.2μm径以下の微粒子状の酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化チタン等の無機物が用いられる。その他に、ベンゾトリアゾール骨格にアクリロイル基またはメタクリロイル基を導入した反応型紫外線吸収剤も用いられる。なお、これらの紫外線吸収剤の添加量は、通常0.5〜10重量%程度である。ラジカル捕捉剤は、紫外線による劣化を更に防止し、耐候性を向上させるためのものであり、ビス−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ビペリジニル)セバケート、ビス−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ビペリジニル)セバケート、その他、例えば特公平4−82625号公報に開示されている化合物等のヒンダード系ラジカル捕捉剤、ビペリジニル系ラジカル捕捉剤等が使用される。
【0033】
基材2は、上述した材料を任意に選択してブレンドしたものをカレンダー加工等の常用の方法により製膜して得ることができる。基材2の厚みは50〜200μm、好ましくは100μm程度である。
【0034】
化粧シート1の表面側(透明樹脂層6側)における基材2の表面には、易接着層の塗布、コロナ放電処理、プラズマ処理、オゾン処理等の易接着処理を施すことが好ましい。易接着層(プライマー層またはアンカー層ともいう。)を構成する樹脂としては、(メタ)アクリル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、塩素化ポリプロピレン、塩化ポリエチレンが挙げられる。
【0035】
なお、上述したポリオレフィン系樹脂からなる基材2の他に、ポリエステルやビニロン等の有機樹脂等を用いた織布または不織布、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体等のビニル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル等の(メタ)アクリル樹脂、ポリスチレン、アクリロニトリル・ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)、三酢酸セルロース、セロハン、ポリカーボネート等の樹脂からなるシートまたはフィルムを基材2として用いることも可能である。また、薄葉紙、クラフト紙、チタン紙、リンター紙、板紙、石膏ボード紙、上質紙、コート紙、アート紙、硫酸紙、グラシン紙、パーチメント紙、パラフィン紙等の紙、あるいは、そうした紙にポリ塩化ビニルをゾル塗工またはドライラミネートしたいわゆるビニル壁紙原反を用いることもできる。また、硝子繊維、石綿、チタン酸カリウム繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、炭素繊維等の無機質繊維からなるシートまたはフィルムを基材2として用いることも可能である。また、アルミニウム、鉄、ステンレス鋼、銅等の金属箔等を用いることもできる。さらに、こうした各基材材料を複数積層させたものを、基材2として用いることも可能である。
【0036】
(着色層)
着色層11は、化粧シート1における必須の層であり、ベタ着色層3および/または絵柄着色層4から構成される。
【0037】
ベタ着色層3は、図1に示すように、基材2の地肌の隠蔽等の目的で設けられ、通常は模様のない全ベタ状の着色層として形成される。一方、絵柄着色層4は、図形、文字、記号、色彩、それらの組み合わせ等により、木目模様、石目模様、布目模様、皮絞模様、幾何学図形等からなる模様ないし色彩を有し、ベタ着色層3上に、平面状、凹凸状、凸状(図1を参照。)の層として形成される。なお、絵柄着色層4がベタ着色層3の作用を兼ねる場合もあり、この場合には絵柄着色層4がベタ着色層3となる。こうして形成されたベタ着色層3および/または絵柄着色層4は、基材2表面の全面に設けても部分的に設けても何れでもよい。また、着色層11は、図1に示すように、基材2の表面全面に設けたベタ着色層3と、そのベタ着色層3の表面に部分的に設けた絵柄着色層4とから構成することもできる。
【0038】
本発明の化粧シート1は、着色層11、接着層5、保護層9のうち少なくとも1以上の層が、水溶性または水分散性の紫外線吸収剤、および/または、水溶性または水分散性の光安定剤を含有する水系塗工液(以下、特に断らない限り、「この塗工液を「水系塗工液」という。)で形成される。そのため、着色層を形成するための着色層用塗工液も、そうした水系塗工液であることが好ましい。なお、水系塗工液については、接着層5の説明の箇所で詳述する。
【0039】
着色層用水系塗工液で形成された着色層11を備えた化粧シート1は、接着特性、耐候性および環境安全性の向上をより一層図ることができる。なお、接着層5または保護層9を本発明に係る水系塗工液で形成した場合には、紫外線吸収剤や光安定剤が含有されていない水系塗工液や溶剤系塗工液で着色層11を形成することもできるが、着色層11、接着層5、保護層9の全ての層を水系塗工液で形成することが最も好ましい。
【0040】
着色層用水系塗工液は、紫外線吸収剤および/または光安定剤、主剤、架橋剤および溶媒を基本構成とする。紫外線吸収剤および/または光安定剤は、主剤、架橋剤および溶媒(水系)からなる塗工液を100としたときに、0.001〜10の割合で配合される。紫外線吸収剤と光安定剤とを両方配合させた場合には、紫外線吸収剤:光安定剤の配合割合は、特に限定されるものではない。主剤:架橋剤の配合割合は、100:0.5〜100:100、好ましくは100:5〜100:20である。また、溶媒の配合割合は、主剤と架橋剤との和を100とした場合に、50〜400の割合で配合させる。
【0041】
紫外線吸収剤や光安定剤が含有されていない着色層用水系塗工液としては、例えば、水性ウレタン樹脂系の着色塗工液、水性ポリエステル樹脂系の着色塗工液、水性アクリル樹脂系の着色塗工液、水性エポキシ樹脂系の着色塗工液、水性ウレタンアクリル樹脂系の着色塗工液、水性カゼイン樹脂系の着色塗工液およびこれらの樹脂の混合物からなる着色塗工液等が用いられる。
【0042】
着色層用溶剤系塗工液としては、溶剤系塗工液に含有される樹脂成分として、相互に混合可能な油性(メタ)アクリル樹脂と油性ウレタン樹脂との混合物等を含有する着色塗工液が用いられる。例えば、(メタ)アクリル樹脂としては、メタクリル酸メチル(MMA)、メタクリル酸ヒドロキシエチル(HEMA)、ジメチルアミノエチルメタクリレートの混合物が挙げられる。また、ウレタン樹脂としては、多価アルコールとしてのブタンジオール、イソシアネートとしてのイソホロンジイソシアネート(IPDI)、アジピン酸を原料として製造したものが挙げられる。油性ウレタン樹脂と油性(メタ)アクリル樹脂との混合樹脂で着色層11を形成する場合においては、その溶剤系塗工液を塗布・乾燥して得られた層中のウレタン樹脂がバインダー成分中の10〜100重量%含有するように、(メタ)アクリル樹脂とウレタン樹脂とを混合しておくことが好ましく、20〜80重量%であることがより好ましい。層中のウレタン樹脂の含有量が10重量%未満では、基材2と透明樹脂層6との密着性を改善することができない場合がある。なお、溶剤としては、通常は、酢酸メチル、酢酸ブチル等のエステル系の有機溶剤や、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン等のケトン系の有機溶剤等が用いられる。こうした溶剤系塗工液には、従来より用いられている紫外線吸収剤や光安定剤を含有させることができる。
【0043】
なお、本発明においては、着色層11、接着層5、保護層9のいずれの層も、非親水性の紫外線吸収剤、および/または、非親水性の光安定剤を含有する水系塗工液では形成されない。そのため、この着色層11においてもそうした水系塗工液では形成されない。その結果、形成された化粧シートの耐候性、接着特性が低下することがない。
【0044】
上述した各種の着色層用塗工液に含有させる着色顔料としては、有機または無機系の顔料を使用することができる。例えば、黄色顔料としては、モノアゾ、ジスアゾ、ポリアゾ等のアゾ系顔料、イソインドリノン等の有機顔料、黄鉛、黄色酸化鉄、カドミウムイエロー、チタンイエロー、アンチモン黄等の無機顔料を使用することができる。また、赤色顔料としては、モノアゾ、ジスアゾ、ポリアゾ等のアゾ系顔料、キナクリドン等の有機顔料、弁柄、朱、カドミウムレッド、クロムバーミリオン等の無機顔料を使用することができる。また、青色顔料としては、フタロシアニンブルー、インダスレンブルー等の有機顔料、紺青、群青、コバルトブルー等の無機顔料を使用することができる。また、黒色顔料としては、アニリンブラック等の有機顔料、カーボンブラック等の無機顔料を使用することができる。また、白色顔料としては、二酸化チタン、亜鉛華、三酸化アンチモン等の無機顔料を使用することができる。また、シリカ等のフィラー、有機ビーズ等の体積顔料、中和剤、界面活性剤等を任意に含有させることができる。
【0045】
ベタ着色層3や絵柄着色層4に使用され着色層用塗工液は、その塗工液の種類に応じて、上記の紫外線吸収剤と光安定剤の他、ワックス類、分散剤、消泡剤、レベリング剤、安定剤、充填剤、潤滑剤、滑剤、その他の添加剤を任意に添加し、ミキサー等で十分に混合することにより調製される。
【0046】
ベタ着色層3や絵柄着色層4は、上述した各種の着色層用塗工液を塗工または印刷等によって設けた後、乾燥して形成される。更に詳しく説明すれば、通常、ベタ着色層3は、ベタ着色層用塗工液を塗工または印刷した後、乾燥硬化させて形成される。また、絵柄着色層4も、絵柄着色層用塗工液を塗工または印刷した後、乾燥硬化させて形成される。塗工方法としては、公知の各種方法、例えばロールコート、カーテンフローコート、ワイヤーバーコート、リバースコート、グラビアコート、グラビアリバースコート、エアーナイフコート、キスコート、ブレードコート、スムーズコート、コンマコート、スプレーコート、かけ流しコート、刷毛塗り等の方法を用いることがでる。また、印刷方法としては、グラビア、活版、フレキソ等の凸版印刷、平版オフセット、ダイリソ印刷等の平版印刷、シルクスクリーン等の孔版印刷、静電印刷、インキジェットプリント等の公知の各種方法を用いることができる。ベタ着色層3は、乾燥後の膜厚が0.5〜10μm程度になるように塗工または印刷され、絵柄着色層4は、乾燥後の膜厚が0.1〜10μm程度になるように塗工または印刷される。
【0047】
(接着層)
接着層5は、図1に示すように、着色層11と透明樹脂層6との間に設けられて、基材2または基材2/着色層11と、透明樹脂層6との密着性を向上させるプライマー層ないしアンカー層としての役割を有するものであり、耐久性や長期にわたる外観維持性を向上させる作用がある。こうした作用は、形成された絵柄を長期間保持することができ、極めて有効である。
【0048】
接着層5は、水溶性または水分散性の紫外線吸収剤、および/または、水溶性または水分散性の光安定剤を含有する接着層用水系塗工液で形成されることが好ましい。この接着層用水系塗工液は、含有する紫外線吸収剤および光安定剤が水溶性または水分散性であるので、これらの紫外線吸収剤や光安定剤は、塗工液中に均一に溶解または分散する。こうした塗工液により形成された接着層においては、紫外線吸収剤や光安定剤が均一に分散した状態で存在するので、従来の水系塗工液で接着層を形成して得られた化粧シートに比べて、耐候性を向上させることができる。
【0049】
接着層用水系塗工液で形成された接着層5は、基材2と透明樹脂層6との間または基材2/着色層11と透明樹脂層6との間に設けられることにより、優れた接着特性を示す。さらに、この接着層用水系塗工液は、水系の塗工液であるので、作業環境中のVOCの揮発量および化粧シート中のVOC残存量を極力減少させることができ、環境安全性をより向上させることができる。
【0050】
接着層用水系塗工液は、▲1▼水溶性または水分散性の紫外線吸収剤、および/または、水溶性または水分散性の光安定剤、▲2▼主剤および架橋剤、▲3▼水または水とアルコール等とからなる混合溶媒、を含有する。
【0051】
▲1▼水溶性または水分散性の紫外線吸収剤・水溶性または水分散性の光安定剤;
水分散性の紫外線吸収剤としては、例えば、下記の化学式1の化合物(分子量:315、融点:139℃、CAS−No.3896−11−5)を乳化剤等により親水性処理したもの(比重1.094、粘度:225mPa・s(cps))を挙げることができる。
【0052】
【化1】
【0053】
上記以外の水溶性または水分散性の紫外線吸収剤として、水溶性および/または水分散性の樹脂の分子内に紫外線吸収剤成分を導入したものを用いることもできる。例えば、下記化学式2の化合物(モノマー分子量:323、CAS−No.96478−09−0)からなる紫外線吸収剤成分と、親水性成分と、メタクリル酸メチル、スチレン等とをラジカル重合により共重合体にした水性樹脂を挙げることができる。
【化2】
ここで、こうした水性樹脂が、水分散性となるか、または水溶性となるかは、個々の樹脂に対しての親水性成分の水和力及び親水性成分(親水性基)の含有量で決まる。水性樹脂における親水性基の量が増加することにより、紫外線吸収剤は水分散性から水溶性となる。親水性成分としては、中和により親水性となりうるものと、成分そのもので親水性を有するものがある。中和により親水性となりうるものとしては、例えば、カルボキシル基、スルホン酸基、りん酸基、第三級アミノ基、第四級アミノ基等が挙げられる。また、その場合の中和剤としては、中和あるいはイオン化できるものであれば特に制限はないが、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の不揮発性塩基;トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等の第三級アミン類;アンモニア等の揮発性塩基;塩酸、硝酸等の無機酸;蟻酸、酢酸、乳酸、クエン酸、酒石酸等の有機酸等が挙げられる。成分そのもので親水性を有するものとしては、水酸基、エーテル結合が挙げられる。このうち、耐候性を向上させる観点から、水酸基を導入した化合物が好ましく用いられる。なお、紫外線吸収剤成分である化合物の含有割合は、共重合化合物100重量%に対し、0.01〜50重量%の範囲で調整される。
【0054】
水溶性および/または水分散性の樹脂の分子内に紫外線吸収剤成分を導入した紫外線吸収剤の他の例としては、例えば、上記水溶性及び水分散性の紫外線吸収剤共重合物をプレポリマーとしたポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ビニル樹脂等が挙げられる。なお、紫外線吸収剤を分子内に導入した水性樹脂は、後述する主剤としての役割を果たすこともできる。
【0055】
水分散性の光安定剤(ラジカル捕集剤)としては、例えば、下記化学式3の化合物(分子量:約900、比重:0.98、粘度:7000mPa・s(cps)、CAS−No.101544−98−3,84696−72−0,107119−91−5)を乳化剤等により水分散性処理したもの(比重0.999、粘度:45mPa・s(cps))を挙げることができる。
【0056】
【化3】
水溶性または水分散性である紫外線吸収剤および/または光安定剤は、主剤、架橋剤および溶媒(水系)からなる塗工液を100としたときに、0.001〜10の割合で配合される。紫外線吸収剤と光安定剤とを両方配合させる場合には、紫外線吸収剤:光安定剤の配合割合は特に限定されない。
【0057】
▲2▼主剤および架橋剤;
主剤としては、例えば、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ビニル樹脂、エポキシ樹脂等及びこれらの共重合物、これらの混合物等が挙げられる。こうした主剤は、架橋剤成分と反応する官能基を有することが必要とされる。
【0058】
架橋剤としては、例えば、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物、カルボジイミド化合物、シラノール基含有化合物等が挙げられる。このうち、イソシアネート化合物を用いることが好ましい。
【0059】
主剤:架橋剤の配合割合は、100:0.5〜100:100、好ましくは100:5〜100:20である。
【0060】
▲3▼溶媒である水は、従来より水系塗工液に使用されているグレードの工業用水が使用される。また、水とアルコール等とからなる混合溶媒を、水系塗工液の溶媒として使用することもできる。そうした混合溶媒を構成するアルコール等としては、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール等の低級アルコール、グリコール類およびそのエステル類等を挙げることができる。なお、これら低級アルコール、グリコール類およびそのエステル類等の溶媒は、水系塗工液の流動性改良、被塗工体である着色層への濡れの向上、乾燥性の調整等の目的で使用されるものであり、その目的に応じてその種類、使用量等が決定される。本発明で使用される水系塗工液は、ベンゼン、トルエン、キシレン等の危険性の高い芳香族炭化水素系の有機性揮発物質が用いられておらず、また、その他の有機溶剤の使用も抑えているので、VOCの発生を減少させることができる。
【0061】
水とアルコール等とからなる混合溶媒においては、それらの配合割合を、水:アルコール等(例えば、イソプロピルアルコール、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール等が挙げられる。)=20:80〜100:0の範囲で調整できる。また、水系塗工液中の溶媒の配合割合は、主剤と架橋剤を100とした場合に、50〜400の割合で配合させることが好ましい。
【0062】
水系塗工液には、上記紫外線吸収剤と光安定剤の他に、着色剤、分散剤、消泡剤、レベリング剤、安定剤、充填剤、潤滑剤、滑剤等の添加剤を任意に添加してもよい。
【0063】
接着層用の水系塗工液は、▲1▼紫外線吸収剤および/または光安定剤、▲2▼主剤および架橋剤、▲3▼水系の溶媒を、上記の割合で配合し、ミキサー等で十分に混合することにより調製される。
【0064】
着色層11および/または保護層9が、本発明の水系塗工液により形成された場合においては、接着層5を、紫外線吸収剤や光安定剤が含有されていない水系塗工液や、溶剤系塗工液、無溶剤系塗工剤により形成することもできるが、本発明の水系塗工液を用いて形成することが最も好ましい。
【0065】
なお、溶剤系塗工液としては、2液性の油性ウレタン樹脂、油性アクリル樹脂と油性ウレタン樹脂との混合物等を挙げることができる。2液性の油性ウレタン樹脂は、油性ウレタン樹脂と架橋剤であるイソシアネートとを、樹脂成分:架橋剤成分=10:1〜10:60の範囲で含有する。また、油性アクリル樹脂と油性ウレタン樹脂との混合物は、例えば、油性ウレタン樹脂と、メタクリル酸メチル(MMA)、メタクリル酸ヒドロキシエチル(HEMA)、ジメチルアミノエチルメタクリレート等との混合物が挙げられる。この場合において、溶剤系の塗工剤を塗布・乾燥して得られた接着剤層中のウレタン樹脂が10〜100重量%含有するように、油性アクリル樹脂と油性ウレタン樹脂とを混合しておくことが好ましい。
【0066】
また、無溶剤系(ノンソル系)の塗工剤としては、ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物からなるものが挙げられる。ポリオール化合物としては、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール等が挙げられる。ポリイソシアネート化合物としては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート等のポリイソシアネート単量体から誘導されたイソシアヌレート、ビューレット、アロファネート等の多官能ポリイソシアネート化合物、あるいはトリメチロールプロパン、グリセリン等の3官能以上のポリオール化合物との反応により得られる末端イソシアネート基含有の多官能ポリイソシアネート化合物等を挙げられる。
【0067】
溶剤系塗工液や無溶剤系塗工剤に添加する紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール、ベンゾフェノン、トリアジン、サリチル酸エステル等の有機物、または、酸化亜鉛、酸化セシウム、酸化チタン等の無機物を0.2μm径以下の微粒子状としたものを用いることができる。同様の光安定剤としては、ビス−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ビペリジニル)セバケート、ビス−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ビペリジニル)セバケートや、その他特公平4−82625号公報に開示されている化合物等のヒンダード系ラジカル捕集剤、ビペリジニル系ラジカル補足剤等を用いることができる。
【0068】
なお、本発明においては、着色層11、接着層5、保護層9のいずれの層も、非親水性の紫外線吸収剤、および/または、非親水性の光安定剤を含有する水系塗工液では形成されない。そのため、この接着層5においてもそうした水系塗工液では形成されない。ここで、非親水性の紫外線吸収剤、非親水性の光安定剤とは、その化合物自身が水に溶解せず、かつ、安定して水に分散しない物質をいい、乳化剤等を用いて強制的に水に分散しても水中で安定化しない物質を含む。従って、上記した溶剤系塗工液や無溶剤系塗工液に添加する紫外線吸収剤および光安定剤のうち、非親水性の性質を有するものは、上述した接着層用の水系塗工液には添加されない。水系塗工液に非親水性の紫外線吸収剤および/または光安定剤を添加した場合には、その水系塗工液で形成した接着層を有する化粧シートの層間密着性や耐候性、耐擦傷性、接着特性等が悪くなる場合がある。
【0069】
接着層5は、上述した接着層用塗工液を、着色層11上に塗工または印刷等によって設けた後、乾燥させて形成される。塗工方法としては、公知の各種方法、例えばロールコート、カーテンフローコート、ワイヤーバーコート、リバースコート、グラビアコート、グラビアリバースコート、エアーナイフコート、キスコート、ブレードコート、スムーズコート、コンマコート、スプレーコート、かけ流しコート、刷毛塗り等の方法を用いることができ、乾燥後の膜厚が1〜10μm程度になるように塗工される。
【0070】
(透明樹脂層)
透明樹脂層6は、トップ樹脂層ともいわれ、着色層11を擦り傷等から保護したり、化粧シート1の表面強度を向上させたり、塗装感を付与すること等を目的として、接着層5を介して着色層11上に積層される。
【0071】
透明樹脂層6を構成する樹脂としては、上述した接着層5を介して着色層11上に密着よく形成される透明な樹脂であれば特に限定されるものではないが、例えば、透明ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂が好ましく挙げられる。透明樹脂層用の樹脂として使用できるオレフィン樹脂以外の樹脂としては、上述の基材2に使用される樹脂材料と同じものを使用することができる。こうした透明樹脂層6を形成する樹脂には、必要に応じて、着色剤、充填剤、紫外線吸収剤、光安定剤、マット剤等の公知の添加剤が添加される。
【0072】
透明樹脂層6は、接着層5上に、別個に形成された透明樹脂シートを積層して形成されたり、溶融押出し塗工法により成膜されたり、その他公知の方法で積層される。
【0073】
また、図2に示すように、透明樹脂層6を2層以上の複層構造にしてもよい。2層以上積層させてなる透明樹脂層16は、基材2側の透明樹脂層6’と保護層側の透明樹脂層6”とに異なる作用効果を持たせることができる点で有利である。一の具体例として、保護層側の透明樹脂層6”については、フッ化ビニリデン等のフッ素系樹脂を主成分とした樹脂で形成して優れた耐汚染性等の表面機能を付与し、基材側の透明樹脂層6’については、熱可塑性(メタ)アクリル樹脂等で形成し、接着層5との間の密着性等を向上させることができる。また、他の具体例として、保護層側の透明樹脂層6”については、耐候剤を添加したポリプロピレン系樹脂で形成して優れた耐候性を付与し、基材側の透明樹脂層6’については、エラストマーを含有したポリプロピレン系樹脂で形成して耐候性と密着性を向上させることができる。
【0074】
2層以上の透明樹脂層16は、複数の樹脂組成物を溶融共押出しして形成されたり、ドライラミネーションや熱ラミネーション等の各種のラミネート法で形成される。このとき、図3に示すように、プライマー層またはアンカー層として作用する接着層12を介して2以上の層からなる透明樹脂層16を形成することもできる。なお、この場合における接着層12は、透明樹脂層6’、6”と共に溶融共押出しして形成されたり、水性ウレタン樹脂を含有する水系塗工液で塗布されて形成される。その場合には、VOCの発生をより一層抑制することができる。
【0075】
透明樹脂層6の厚さは、20〜300μm程度であり、塗工液で形成される場合には、15〜400g/m2 程度の塗布量で塗工する。
【0076】
(凹凸模様)
凹凸模様7は、エンボス模様ともいわれ、図1に示すように、必要に応じて上述の透明樹脂層6の表面に形成される。また、図2および図3に示すように2層以上の透明樹脂層16を形成した場合には、凹凸模様7を最表面の透明樹脂層に形成したり、最表面以外の透明樹脂層に形成したりすることができる。
【0077】
凹凸模様7は、特に限定されず、化粧シート1の用途に応じた模様であればよい。例えば、木目導管溝、木目年輪凹凸、浮造年輪凹凸、木肌凹凸、砂目、梨地、ヘアライン、万線状溝、花崗岩の劈開面等の石材表面凹凸、布目の表面テクスチュア、皮絞、文字、幾何学模様等の模様が挙げられる。
【0078】
凹凸模様7を形成する手段としては、例えば、加熱加圧によるエンボス加工法やTダイ溶融押出し法が挙げられる。加熱加圧によるエンボス加工法は、透明樹脂層6の表面を加熱軟化させ、その表面をエンボス版で加圧してエンボス版の凹凸模様7を賦形し、冷却して固定化する方法であり、公知の枚葉式または輪転式のエンボス機が用いられる。エンボス加工法で凹凸模様を形成する場合には、ラミネート加工により積層する前の透明樹脂層用シートに予めエンボス加工したり、透明樹脂層用シートを積層すると同時に(いわゆるダブリングエンボス法)エンボス加工をする。また、Tダイ溶融押出し法で透明樹脂層6を積層する場合には、賦形ローラを兼用させた冷却ローラを使用し、透明樹脂層6の成膜・積層と同時に凹凸模様7を形成する。また、ヘアライン加工、サンドブラスト加工等によってもエンボス模様を形成することができる。
【0079】
(部分着色層)
部分着色層8は、凹凸模様7の凹陥部17にワイピング法により形成される。ワイピング法は、ドクターブレードコート法またはナイフコート法で凹陥部17を含む表面全面に部分着色層用の塗工液を塗布した後、凹陥部17以外の表面から部分着色層用の塗工液を除去することにより、凹陥部17のみに部分着色層8を形成する方法である。部分着色層用の塗工液としては、有機顔料、無機顔料、光輝性顔料等の着色顔料と、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電離性放射線硬化型樹脂等のバインダー樹脂とからなる塗工液や、エマルジョン型の水系塗工液等を使用できる。
【0080】
また、上述のベタ着色層3および/または絵柄着色層4を形成する水系塗工液を好ましく用いることもでき、そうした場合には、環境安全性の点でより好ましい。
【0081】
(保護層)
保護層9は、トップコート層またはオーバープリント層(OP層)ともいわれ、凹凸模様7を形成する凹陥部17やその凹陥部17に形成された部分着色層8の表面を被って、化粧シート1を保護することを目的として設けられるものである。具体的には、耐擦傷性や耐汚染性、耐候性等の表面物性を向上させることにより、化粧シート1を保護する。
【0082】
保護層9は、上述の接着層の段落にて詳述した本発明の水系塗工液を適用して形成することが好ましく、特に耐候性および耐光性に優れた保護層を有する化粧シート1を提供することができると共に、VOCの発生を抑制して環境安全性を向上した化粧シート1を提供することができる。
【0083】
保護層用の水系塗工液は、紫外線吸収剤および/または光安定剤、主剤、架橋剤および溶媒を基本構成とするものであり、紫外線吸収剤、光安定剤、溶媒は、接着層のところで説明したものと同じものを用いることができる。なお、主剤としては、例えば、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ビニル樹脂、エポキシ樹脂等及びこれらの共重合物、及び混合物等が挙げられる。こうした主剤は、架橋剤成分と反応する官能基を有することが必要とされる。架橋剤としては、例えば、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物、カルボジイミド化合物、シラノール基含有化合物等が挙げられる。このうち、イソシアネート化合物を用いることが好ましい。なお、この水系塗工液には、電離性放射線硬化型樹脂を用いてもよい。主剤:架橋剤の配合割合は、100:0.5〜100:100、好ましくは100:5〜100:20である。
【0084】
紫外線吸収剤および/または光安定剤は、主剤、架橋剤および溶媒(水系)からなる塗工液を100としたときに、0.001〜10の割合で配合される。紫外線吸収剤と光安定剤とを両方配合させる場合には、紫外線吸収剤:光安定剤の配合割合は特に限定されない。主剤:架橋剤の配合割合は、100:0.5〜100:100、好ましくは100:5〜100:20である。また、溶媒の配合割合は、主剤と架橋剤との和を100とした場合に、50〜400の割合で配合させる。
【0085】
なお、着色層11および/または接着層5が、本発明の水系塗工液により形成された場合においては、保護層9を、紫外線吸収剤や光安定剤が含有されていない水系塗工液や、溶剤系塗工液、無溶剤系塗工液により形成することもできるが、本発明の水系塗工液を用いて形成することが最も好ましい。特に、着色層11、接着層5、保護層9の全てを本発明の水系塗工液により形成することが最も好ましい。
【0086】
溶剤系塗工液としては、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂等、これらの共重合物、またはこれらの混合物を主剤とし、イソシアネート化合物、エポキシ化合物等の架橋剤成分を用いたもの、または、電離性放射線硬化型樹脂を塗工した後、電離性放射線を照射して硬化させるもの等を用いることができる。無溶剤系塗工液としては、電離性放射線硬化型樹脂を用いた塗工液が好ましい。こうした溶剤系塗工液や無溶剤系塗工液には、保護層9により良好な耐候性や耐光性を付与するために、紫外線吸収剤および/または光安定剤を添加することが好ましい。
【0087】
なお、本発明においては、着色層11、接着層5、保護層9のいずれの層も、非親水性の紫外線吸収剤、および/または、非親水性の光安定剤を含有する水系塗工液では形成されない。そのため、この保護層9においてもそうした水系塗工液では形成されない。その結果、形成された化粧シートの耐候性、接着特性が低下することがない。
【0088】
保護層9は、シリカ等の公知の艶消し剤を塗工液に添加することにより艶調整したものとしたり、塗装感等の意匠性を付与させたものとすることができる。その他の添加剤としては、着色剤、分散剤、消泡剤、レベリング剤、安定剤、充填剤、潤滑剤、滑剤、帯電防止剤、難燃剤等が用いられる。
【0089】
保護層9は、上述した各種の塗工液を、グラビアコート法、リバースロールコート法、ナイフコート法、キスコート法、その他塗工法等の公知の塗工法で塗工形成して形成される。また、グラビア印刷、シルクスクリーン印刷等の公知の印刷法で形成される。形成された保護層9の厚みは3〜40μm程度が好ましく、10〜30μmがより好ましい。
【0090】
(プライマー層)
プライマー層10は、本発明の化粧シート1を各種の被着体15に接着させ易くすることを目的として、基材2の裏面側に形成される。プライマー層10の形成には、(メタ)アクリル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル、ポリウレタン、塩素化ポリプロピレン、塩素化ポリエチレン等が使用されるが、上述した着色層11や接着層5を形成するのに好ましく採用される水系塗工液を用いることが環境安全性の観点から好ましい。
【0091】
(化粧シート)
以上説明したように、本発明に係る水系塗工液を用いて各々の層(着色層、接着層、保護層)を形成して得られた化粧シート1は、従来の水系塗工液で各々の層を形成して得られた化粧シートに比べて、耐候性を向上させることができる。
【0092】
上述の構成を有する本発明の化粧シート1は、他の被着体15(裏打材)に積層して用いられる。
【0093】
被着体15としては、図4に示すような立体形状物品41や、図5に示すような平板状、曲面状等の板材51、シート(或いはフィルム)等の各種形状の物品が対象となる。こうした被着体15としては、木材単板、木材合板、パーティクルボード、中密度繊維板(MDF)等の木材板、木質繊維板等の木質板、鉄、アルミニウム等の金属、(メタ)アクリル、ポリエステル、ポリスチレン、ポリオレフィン、ABS樹脂、フェノール樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、セルロース系樹脂、ゴム等の樹脂、硝子、陶磁器等のセラミックス、石膏等の非セメント窯業系材料、上質紙、和紙等の紙、炭素、石綿、チタン酸カリウム、硝子、合成樹脂等の繊維からなる不織布または織布、等々が挙げられる。
【0094】
化粧シート1と被着体15との関係において、化粧シート1の基材2またはプライマー層10の種類により、被着体15にそのまま熱融着等で接着できる場合には、化粧シート1と被着体15とを接着剤を用いずに積層させることができるが、化粧シート1の基材2またはプライマー層10の種類により、被着体15にそのまま熱融着等で接着できない場合には、適当な接着剤を用いて積層させる。なお、接着剤としては、酢ビ系、尿素系等の接着剤が挙げられる。
【0095】
また、一般的な積層方法としては、例えば、(a)接着剤を介して被着体15に加圧ローラーで加圧して積層する方法、(b)特公昭50−19132号公報、特公昭43−27488号公報等に記載のように、化粧シート1を射出成形の雌雄両金型間に挿入して、両金型を閉じ、雄型のゲートから溶融樹脂を射出充填した後、冷却して樹脂成型品の成形と同時にその表面に化粧シート1を接着積層する射出成形同時ラミネート方法、(c)特公昭56−45768号公報、特公昭60−58014号公報等に記載のように、接着剤を介して成形品の表面に化粧シート1を対向させ、成形品側からの真空吸引による圧力差により化粧シート1を成形品表面に積層する真空プレス積層方法、(d)特公昭61−5895号公報、特公平3−2666号公報等に記載のように、円柱、多角柱等の柱状被着体の長軸方向に、接着剤を介して化粧シート1を供給しつつ、複数の向きの異なるローラーにより、柱状被着体を構成する複数の側面に順次化粧シート1を加圧接着して積層してゆくラッピング加工方法等が挙げられる。
【0096】
本発明の化粧シート1を積層した各種の被着体15は、所定の成形加工等を施して、各種装飾用素材等として用いられる。例えば、壁、天井、床等建築物の内装、窓枠、扉、手摺等の建具の表面化粧、家具または弱電・OA機器のキャビネットの表面化粧、自動車、電車等の車輌内装、航空機内装、窓硝子の化粧用等の用途が挙げられる。
【0097】
【実施例】
以下に、実施例と比較例を挙げて、本発明を更に詳しく説明する。なお、以下において、部とは重量部のことである。
【0098】
(実施例1)
基材2として三菱化学MKV株式会社製のポリプロピレン系エラストマー着色シートPB013(厚さ60μm)を用い、その上にコロナ放電処理を施した後、線数54線/インチ、版深40μmのグラビア版を用いて下記配合のベタ着色層用水系塗工液A、絵柄着色層用水系塗工液Bを順次グラビア印刷法で塗布・乾燥し、約3μmのベタ着色層3および約1μmの絵柄着色層4を順次形成した。さらにその上に、線数54線/インチ、版深40μmのグラビア版を用いて下記配合の接着層用水系塗工液aをグラビア印刷法で、約3g/m2 となるように塗布・乾燥し、乾燥後厚さ3μmの接着層5を形成した。
さらにその接着層5上に、三菱化学MKV株式会社製の透明ポリプロピレンフィルム「PE002C」(厚さ80μm)をドライラミネート方式で積層して透明樹脂層6を形成した。次に、その積層シートの表面に、エンボス加工により凹凸模様7を形成し、さらにその上に、線数54線/インチ、版深40μmのグラビア版を用いて、下記配合の保護層用水系塗工液Cをグラビア印刷法にて塗布・乾燥し、約3μmの保護層9を形成した。その後、温度25℃で7日間養生することにより、実施例1の化粧シートを得た。
【0099】
ベタ着色層用水系塗工液A;
水性ウレタン系白色インキ(紫外線吸収剤等未添加;ザ・インクテック製、オーデWKE白ベタ):100部、水分散性イソシアネート架橋剤(日華化学株式会社製、X9003):5部、水分散性紫外線吸収剤(旭電化工業株式会社製、LX−301):1部、水分散性光安定剤(旭電化工業株式会社製、LX−332):1部、水:20部、イソプロピルアルコール:20部
絵柄着色層用水系塗工液B;
水性ウレタン系黄色インキ(紫外線吸収剤等未添加;ザ・インクテック製、オーデWKE黄):100部、水分散性紫外線吸収剤(旭電化工業株式会社製、LX−301):1部、水分散性光安定剤(旭電化工業株式会社製、LX−332):1部、水:20部、イソプロピルアルコール:20部
接着層用水系塗工液a;
水性ウレタン樹脂(紫外線吸収剤等未添加;日華化学株式会社製、HO14):100部、水分散性イソシアネート架橋剤(日華化学株式会社製、X9003):5部、水分散性紫外線吸収剤(旭電化工業株式会社製、LX−301):1部、水分散性光安定剤(旭電化工業株式会社製、LX−332):1部、水:20部、イソプロピルアルコール:20部
保護層用水系塗工液b;
水性ウレタン樹脂(紫外線吸収剤等未添加;株式会社昭和インク工業所製、135):100部、水分散性イソシアネート架橋剤(日華化学株式会社製、X9003):5部、水分散性紫外線吸収剤(旭電化工業株式会社製、LX−301):1部、水分散性光安定剤(旭電化工業株式会社製、LX−332):1部、水:20部、イソプロピルアルコール:20部
【0100】
(実施例2)
実施例1の接着層用溶剤系塗工液aに代えて、下記配合の接着層用溶剤系塗工液cを用いた。その他は実施例1と同様にして実施例2の化粧シートを得た。
接着層用溶剤系塗工液c;
ポリエステル樹脂系接着剤(紫外線吸収剤、光安定剤含有;大日精化工業株式会社製、E295L−NT)100部、イソシアネート架橋剤(大日精化工業株式会社製、C55):10部、酢酸エチル:80部
【0101】
(実施例3)
実施例1の接着層用水系塗工液aに代えて、下記配合の接着層用水系塗工液dを用いた。その他は実施例1と同様にして実施例3の化粧シートを得た。
接着層用水系塗工液d;
水性ウレタン樹脂(紫外線吸収剤等未添加;日華化学株式会社製、HO14):100部、水分散性イソシアネート架橋剤(日華化学株式会社製、X9003):5部、紫外線吸収剤を分子内に含有する水性樹脂(大塚化学株式会社製、PUVA−30W):1部、水分散性光安定剤(旭電化工業株式会社製、LX332):1部、水:20部、イソプロピルアルコール:20部
【0102】
(実施例4)
実施例1の保護層用水系塗工液bに代えて、下記配合の保護層用水系塗工液eを用いた。その他は実施例1と同様にして実施例4の化粧シートを得た。
保護層用水系塗工液e;
水性ウレタン樹脂(紫外線吸収剤等未添加;株式会社昭和インク工業所製、135):100部、水分散性イソシアネート架橋剤(日華化学株式会社製、X9003):5部、紫外線吸収剤を分子内に含有する水性樹脂(大塚化学株式会社製、PUVA−30W):1部、水分散性光安定剤(旭電化工業株式会社製、LX332):1部、水:20部、イソプロピルアルコール:20部
【0103】
(実施例5)
実施例1の透明樹脂層6の形成方法に代えて、溶融押出方式による形成方法を用いた。具体的には、接着層5上に、ランダム重合ポリプロピレンに、フェノール系酸化防止剤0.2重量%、ヒンダードアミン系光安定剤0.3重量%、ブロッキング防止剤0.2重量%をそれぞれ添加した樹脂を、Tダイにより溶融状態で押出し、180℃の熱で厚さ80μmの透明樹脂層6を積層した。その他は実施例1と同様にして実施例5の化粧シートを得た。
【0104】
(比較例1)
実施例1のベタ着色層用水系塗工液A、絵柄着色層用水系塗工液Bに代えて、下記配合のベタ着色層用水系塗工液C、絵柄着色層用水系塗工液Dを用いた。その他は実施例1と同様にして比較例1の化粧シートを得た。
ベタ着色層用水系塗工液C;
水性ウレタン系白色インキ(紫外線吸収剤等未添加;ザ・インクテック製、オーデWKE白ベタ):100部、水分散性イソシアネート架橋剤(日華化学株式会社製、X9003):5部、紫外線吸収剤(旭電化工業株式会社製、LA−36):0.3部、光安定剤(旭電化工業株式会社製、LA−62):0.3部、水:20部、イソプロピルアルコール:20部
絵柄着色層用水系塗工液D;
水性ウレタン系黄色インキ(紫外線吸収剤等未添加;ザ・インクテック製、オーデWKE黄):100部、紫外線吸収剤(旭電化工業株式会社製、LA−36):0.3部、光安定剤(旭電化工業株式会社製、LA−62):0.3部、水:20部、イソプロピルアルコール:20部
【0105】
(比較例2)
実施例1の接着層用水系塗工液aに代えて、接着層用水系塗工液fを用いた。その他は実施例1と同様にして比較例2の化粧シートを得た。
接着層用水系塗工液f;
水性ウレタン樹脂(紫外線吸収剤等未添加;日華化学株式会社製、HO14):100部、水分散性イソシアネート架橋剤(日華化学株式会社製、X9003):5部、紫外線吸収剤(旭電化工業株式会社製、LA−36):0.3部、光安定剤(旭電化工業株式会社製、LA−62):0.3部、水:20部、イソプロピルアルコール:20部
【0106】
(比較例3)
実施例1の保護層用水系塗工液bに代えて、下記配合の保護層用水系塗工液gを用いた。その他は実施例1と同様にして比較例3の化粧シートを得た。
保護層用水系塗工液g;
水性ウレタン樹脂(紫外線吸収剤等未添加;株式会社昭和インク工業所製、135):100部、水分散性イソシアネート架橋剤(日華化学株式会社製、X9003):5部、紫外線吸収剤(旭電化工業株式会社製、LA−36):0.3部、光安定剤(旭電化工業株式会社製、LA−62):0.3部、水:20部、イソプロピルアルコール:20部
【0107】
(各特性の評価方法)
実施例1〜4および比較例1〜3で得られた各化粧シートの層間密着性、耐候性試験後の層間密着性、および耐スクラッチ性の評価を下記の方法により行った。得られた結果を表1に示した。
【0108】
(層間密着性の評価方法)
幅1インチにカットした化粧シート1を試験片とし、この試験片の基材2と透明樹脂層6とをINSTRON5500引張試験機を用い、25℃の雰囲気中において引張速度100mm/分、基材2と透明樹脂層6との間の開き角180°の条件にて引張り、剥離強度で評価した。剥離強度が19.6N以上のものを合格として○で表し、19.6N未満のものを不合格として×で表した。
【0109】
(耐候性試験後の層間密着性の評価方法)
耐候性試験後の層間密着性は、耐候性試験後に上述した層間密着性を評価し、剥離強度が10N以上のものを合格として○で表し、10N未満のものを不合格とした。不合格の中でも10N未満5N以上のものを△で表し、5N未満のものを×で表した。なお、耐候性試験は、化粧シート1の試験片を、スガ試験機製サンシャイン・ウエザ・オ・メーター「WEL−300」にセットし、ブラックパネル温度63℃、120分間中18分間の雨ありサイクルの条件下で、1000時間紫外線を照射して行った。120分間中18分間の雨ありサイクルとは、120分間の内18分間に、試験片に雨を擬した水を噴射することをいう。
【0110】
(耐スクラッチ性の評価方法)
耐スクラッチ性は、得られた化粧シートをウレタン系接着剤(日本NSC製、RL96)を用いて、化粧板用の木質系基材に貼り合わせ、その化粧板について、コインスクラッチ試験を行うことにより評価した。コインスクラッチ試験は、化粧板の化粧シート塗膜面(最表面の保護層9)に対し、10円硬貨の平面が45度の角度となるよう硬貨のエッジをあて、500gの荷重をかけながら押しつけるように10円硬貨の平面と垂直な方向に引っ張り、化粧板表面の外観を観察評価することにより行った。コインスクラッチ性評価基準は、A;傷つきなしかつ絵柄界面剥離なし、B;傷つき軽微かつ絵柄界面剥離なし、C;傷つきありかつ絵柄界面剥離なし、D;絵柄界面剥離あり、とし、A,Bを合格として○で表し、C,Dを不合格として×で表した。
【0111】
【表1】
【0112】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、水溶性または水分散性の紫外線吸収剤、および/または、水溶性または水分散性の光安定剤を含有する水系塗工液を、着色層、接着層、保護層のうち、少なくとも1以上の層に使用するので、耐候性に優れた化粧シートを提供することができる。本発明の化粧シートによれば、接着特性を有する着色層および/または接着層を、基材と透明樹脂層との間に形成したものとすることができる。さらに、その水系塗工液は、水系の塗工液であるので、作業環境中のVOCの揮発量および化粧シート中のVOC残存量を極力減少させることができる。その結果、環境安全性をより向上させることができる。さらに、本発明によれば、着色層、接着層、保護層のいずれも層も、従来の溶剤系塗工液に含有されていたような非親水性の紫外線吸収剤および/または非親水性の光安定剤を含有した水系塗工液では形成されないので、化粧シートの耐候性や接着特性が悪くなるという問題が生じない。
【0113】
また、本発明の水系塗工液によれば、耐候性および接着特性を有する着色層、接着層および保護層を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の化粧シートの層構成の一例を示す断面図である。
【図2】本発明の化粧シートの層構成の他の一例を示す断面図である。
【図3】本発明の化粧シートの層構成の更に他の一例を示す断面図である。
【図4】本発明の化粧シートの実施形態の一例を示す断面図である。
【図5】本発明の化粧シートの実施形態の他の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
1 化粧シート
2 基材
3 ベタ着色層
4 絵柄着色層
5 接着層
6、6’、6” 透明樹脂層
7 凹凸模様
8 部分着色層
9 保護層
10 プライマー層
11 着色層
12 接着層
15 被着体
16 多層からなる透明樹脂層
17 凹陥部
41 立体形状物品
51 板材
Claims (2)
- 基材、着色層、接着層、透明樹脂層、保護層をこの順で積層した化粧シートであって、
前記の着色層、接着層、保護層のうち少なくとも1以上の層が、水溶性または水分散性の紫外線吸収剤、および/または、水溶性または水分散性の光安定剤を含有する水系塗工液で形成され、かつ、
前記の着色層、接着層、保護層のいずれの層も、非親水性の紫外線吸収剤、および/または、非親水性の光安定剤を含有する水系塗工液で形成されないことを特徴とする化粧シート。 - 水溶性または水分散性の紫外線吸収剤、および/または、水溶性または水分散性の光安定剤を含有することを特徴とする水系塗工液。
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