JP2004038858A - 車線逸脱防止装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】制駆動力制御コントローラ100は、車両の走行状態を検出する走行状態検出部101と、走行状態検出部101により検出された走行状態から走行路からの自車両の逸脱傾向を判断する逸脱判断部102と、逸脱判断部102により自車両が走行路から逸脱している又は逸脱しそうであることを判断した場合に、その制御内容に応じて逸脱を回避する方向に車両を制御する逸脱防止制御部103と、走行車線脇の物体を検出する道路環境検出部104とを備える。逸脱防止制御部103と閾値設定部105とで、道路環境検出部104による走行車線脇の物体の検出に基づいて逸脱防止制御の制御開始タイミングを設定し、前記設定した前記制御開始タイミングにより逸脱防止制御を行う。
【選択図】 図2
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車が走行車線から逸脱している又は逸脱しそうになると、その逸脱を防止する車線逸脱防止装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
このような技術としては、例えば特開2000−33860号公報に開示された技術(以下、先行技術という。)がある。この先行技術では、自車両の走行位置の横ずれ量に応じて制動力アクチュエータを制御して、左右輪のうち逸脱方向と反対側の車輪に制動力を付加することで車線から車両の逸脱を防止している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、走行車線脇に側壁やデリニエータ等が存在する場合、或いは隣車線に対向車や併走車が存在する場合等では、自車両の車両脇のスペースが狭く、種々の問題がある。例えば、走行車線からのオーバーシュート等が許容されにくく、早期作動による煩わしさとのトレードオフの関係がある、という問題がある。
【0004】
そこで、本発明は、前記問題に鑑みてなされたものであり、煩わしさがなくかつ安全な逸脱防止制御が可能な車線逸脱防止装置の提供を目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
前記問題を解決するために、本発明では、車両挙動制御手段により、自車両の側方又は自車両走行路の側方に位置する又は位置すると予期される物体と自車両との関係に基づいて制御内容を設定し、走行路からの車両の逸脱傾向に応じ、車両挙動を制御内容に基づいて制御し、物体との間隔が狭いときと広いときとで制御内容を変更している。
【0006】
ここで、車線逸脱防止装置は、例えば、車両の走行状態を検出する走行状態検出手段と、走行状態検出手段により検出された走行状態から走行路からの自車両の逸脱傾向を判断する逸脱判断手段と、前方の道路環境を検出する道路環境検出手段とを備えている。この場合に、道路環境検出手段が前記物体と自車両との関係を検出して、車両挙動制御手段は、その道路環境検出手段が検出した前記物体と自車両との関係に基づいて制御内容を設定するとともに、逸脱判断手段により自車両が走行路から逸脱している又は逸脱しそうであることを判断した場合に、その制御内容に応じて逸脱を回避する方向に車両を制御している。
【0007】
【発明の効果】
本発明によれば、自車両の側方又は自車両走行路の側方に位置する又は位置すると予期される物体と自車両との関係に基づいて逸脱防止の制御内容を設定することで、物体の存在に適応させて最適な逸脱防止制御をすることができ、物体との間隔が狭いときと広いときとで前記制御内容を変更することで、安全かつ煩わしさのない逸脱防止制御を実現することができる。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の第1の実施の形態の構成を示す。本発明の実施の形態では、後輪駆動車(AT車、コンベデフ装着車)であり、制動装置は前後輪とも左右の制動力(制動液圧)を独立に制御できる制動装置を想定している。
【0009】
図中1はブレーキペダル、2はブースター、3はマスターシリンダー、4はリザーバーである。また、10,20は左右前輪、30,40は左右後輪をそれぞれ示す。各車輪は、各々ブレーキディスク11,21,31,41と、液圧の供給によりブレーキディスク11,21,31,41を摩擦挟持して各輪毎にブレーキ力(制動力)を与えるホイールシリンダ12,22,32,42とを備え、これらブレーキユニットの各ホイールシリンダ12,22,32,42に圧力制御ユニット5から液圧を供給されるとき、各車輪は個々に制動される。
【0010】
圧力制御ユニット5は、前後左右の各液圧供給系(各チャンネル)個々にアクチュエータを含んで構成される。アクチュエータとしては、各ホイールシリンダ液圧を任意の制動液圧に制御可能なように比例ソレノイド弁を使用している。
圧力制御ユニット5は、制駆動力制御コントローラ100からの入力信号によりマスターシリンダー3からの油圧を調整し、各輪のホイールシリンダ12,22,32,42へ供給する制動液圧を制御する。また、制駆動力制御コントローラ100は、エンジン6の燃料噴射量を制御するエンジン制御と、スロットル制御装置7によりスロットル開度を制御するスロットル制御と、変速機8を制御する変速機制御を行うことにより、駆動輪の駆動トルクを制御する駆動トルク制御コントローラ60を介して、駆動トルクを制御する。
【0011】
制駆動制御コントローラ100には、車両の前後加速度Xg、横加速度Ygを検出する加速度センサ53からの信号、車両に発生するヨーレイトφを検出するヨーレイトセンサ54からの信号、各車輪10,20,30,40に設置され車輪速Vwを検知する車輪速センサ(図示せず)13,23,33,34からの信号、自車両の周辺の物体の有無、その物体との間の車間距離、その物体との相対速度を検出するレーダセンサ58からの信号などがそれぞれ入力される。ここで、レーダセンサ58としてレーザレーダが挙げられる。
【0012】
また、制駆動制御コントローラ100には、ブレーキペダルの操作量を検知するため、マスターシリンダー液圧Pmを検知するマスターシリンダー液圧センサ55からの信号やアクセルペダルの操作量を検出するため、アクセル開度Accを検知するアクセル開度センサ56からの信号も入力される。さらに、駆動トルク制御コントローラ60からは車輪軸上での駆動トルクTwも入力される。
【0013】
また、本車両は、車両の逸脱防止判断用に走行車線(以下、走行路ともいう。)内の自車両の位置を検出するための外界認識センサとして、単眼カメラ51とカメラコントローラ70を搭載しており、カメラ画像から判断した自車レーン内の自車両の位置に関する信号として自車両のヨー角θ、車線中心からの横変位X、及び走行車線の曲率βを制駆動力制御コントローラ100に出力する。
【0014】
さらに、ハンドル9には、操舵角センサ52が設置され、これで検出される操舵角δの信号も制駆動力制御コントローラ100に出力する。また、運転者が走行車線を移動しようとしているか否かの判断に使用する方向指示スイッチ57からの信号も制駆動力制御コントローラ100に出力する。
制駆力制御コントローラ100は、マイクロコンピュータを含んで構成され、前記の各種情報のための入力検出部と、演算処理部(CPU)と、当該演算処理部により実行する各種制御のための制御プログラム及び演算結果等を格納する記憶部とを備えて構成される。
【0015】
この制駆動力制御コントローラ100は、本発明を実現する構成として、図2に示すように、車両の走行状態を検出する走行状態検出部101と、走行状態検出部101により検出された走行状態から走行路からの自車両の逸脱傾向を判断する逸脱判断部102と、逸脱判断部102により自車両が走行路から逸脱している又は逸脱しそうであることを判断した場合に、その制御内容に応じて逸脱を回避する方向に車両を制御する逸脱防止制御部103と、前方の道路環境を検出する道路環境検出部104とを備える。ここで、逸脱防止制御部103は、閾値設定部105と協働で、自車両の側方又は自車両走行路の側方に位置する又は位置すると予期される物体と自車両との関係に基づいて制御内容を設定し、走行路からの車両の逸脱傾向に応じ、車両挙動を前記制御内容に基づいて制御する車両挙動制御手段を構成する。
【0016】
このような構成により、制駆動力制御コントローラ100は、図3に示すような処理を行っている。制駆動力制御コントローラ100は、この処理を制御プログラムとして所定周期毎に繰り返し実行する。
先ず、ステップS1では、各センサ及びコントローラからの各種データを読み込む。各センサから前後加速度Xg、横加速度Yg、ヨーレイトφ、各車輪速Vw、アクセル開度Acc、マスターシリンダー液圧Pm及び舵角δ、また、方向指示器スイッチの信号、さらに、駆動トルク制御コントローラ60から駆動トルクTw、カメラコントローラ70から自車両の走行車線に対する車両のヨー角θ、走行車線までの横変位X、及び走行車線の曲率βをそれぞれ読み込む。
【0017】
続いて、ステップS2にて、逸脱推定値Xsを算出する。すなわち、車速V、自車両の走行車線に対する車両のヨー角θ、走行車線までの横変位X、及び走行車線の曲率βより、下記(1)式に従って逸脱推定値Xsを算出する。
Xs=Tt×V× (θ+ Tt×V×β)+X ・・・(1)
ここで、Ttは前方注視距離算出用の車頭時間である。また、左方向への逸脱時には逸脱推定値Xsは正となる。また、車速Vは前記車輪速Vwにより得た値である。
【0018】
続いて、ステップS3では、走行車線脇の物体の有無を判断する。ここで、走行車線脇の物体の有無の検出は、レーダセンサ58により行い、このレーダセンサ58により物体を検出した場合であって、その物体が自車両の走行車線の左側にあるときには、左側物体有無フラグFobj_left=ONにし、その物体が自車両の走行車線の右側にあるときには、右側物体有無フラグFobj_right=ONにする。また、このレーダセンサ58の検出がない場合には、左側物体有無フラグFobj_left=OFF及び右側物体有無フラグFobj_right=OFFにする。
【0019】
なお、ここで、被検出物体、すなわち自車両の側方又は自車両走行路の側方に位置する又は位置すると予期される物体としては、走行車線脇の側壁或いはデリニエータが挙げられるが、これに限定されるものではない。また、前述したように、走行車線脇の物体の有無に応じて物体有無フラグを設定しているが、走行車線脇に存在する物体と自車両との間の間隔に基づいて、物体有無フラグを設定してもよい。すなわち例えば、左側の走行車線脇に存在する物体と自車両との間の間隔が所定の間隔以下であるとき(間隔が所定間隔より狭いとき)、左側物体有無フラグFobj_left=ONにするといったようにである。
【0020】
続いて、ステップS4では、前記ステップS3による走行車線脇の物体の有無の検出結果に基づいて逸脱判断閾値を設定する。
すなわち、左側物体有無フラグFobj_left=ONでかつ右側物体有無フラグFobj_right=OFFの場合、左側への逸脱判断閾値(以下、左側逸脱判断閾値という。)Xc_leftを第1の逸脱制御閾値Xc1に設定し(Xc_left=Xc1)、右側への逸脱判断閾値(以下、右側逸脱判断閾値という。)Xc_rightを第2の逸脱判断閾値Xc2に設定する(Xc_right=Xc2)。
【0021】
また、左側物体有無フラグFobj_left=OFFでかつ右側物体有無フラグFobj_right=ONの場合、左側逸脱判断閾値Xc_leftを第2の逸脱判断閾値Xc2に設定し(Xc_left=Xc2)、右側逸脱判断閾値Xc_rightを第1の逸脱判断閾値Xc1に設定する(Xc_right=Xc1)。
【0022】
また、左側物体有無フラグFobj_left=ONでかつ右側物体有無フラグFobj_right=ONの場合、左側逸脱判断閾値Xc_leftを第1の逸脱制御閾値Xc1に設定し(Xc_left=Xc1)、右側逸脱判断閾値Xc_rightを第1の逸脱判断閾値Xc1に設定する(Xc_right=Xc2)。
【0023】
また、左側物体有無フラグFobj_left=OFFでかつ右側物体有無フラグFobj_right=OFFの場合、左側逸脱判断閾値Xc_leftを第2の逸脱判断閾値Xc2に設定し(Xc_left=Xc2)、右側逸脱判断閾値Xc_rightを第2の逸脱判断閾値Xc2に設定する(Xc_right=Xc2)。
【0024】
ここで、第1の逸脱判断閾値Xc1は第2の逸脱判断閾値Xc2よりも小なる関係にある(Xc1<Xc2)。
続いて、ステップS5では、車線逸脱判断を行う。車線逸脱判断では、先ず、前記ステップS4で算出した逸脱推定値Xsと左側逸脱判断閾値Xc_left及び右側逸脱判断閾値Xc_rightとを比較して車線逸脱を判断する。
【0025】
すなわち、逸脱推定値Xsが左側逸脱判断閾値Xc_left以上の場合(Xs≧Xc_left)、左に逸脱している或いは逸脱しそうであると判断し、逸脱判断フラグFld=LEFT(以下、この場合の逸脱判断フラグを左側逸脱フラグという。)にする。また、逸脱推定値Xsが右側逸脱判断閾値Xc_rightの負値−Xc_right以下である場合(Xs≦−Xc_right)、右に逸脱している或いは逸脱しそうであると判断し、逸脱判断フラグFld=RIGHT(以下、この場合の逸脱判断フラグを右側逸脱フラグという。)にする。また、それ以外は逸脱していない或いはしそうもないと判断し、逸脱判断フラグFld=OFF(以下、この場合の逸脱判断フラグを非逸脱フラグという。)にする。
【0026】
続いて、ステップS6では、車両に発生させる目標ヨーモーメントMsを算出する。すなわち、逸脱推定値Xsと左側逸脱判断閾値Xc_left及び右側逸脱判断閾値Xc_rightとにより下記(2)式〜(4)式に従って、前記逸脱判断フラグに応じて場合分けして、目標ヨーモーメントMsを算出する。
具体的には、逸脱判断フラグが左側逸脱フラグを示す場合(Fld=LEFT)、下記(2)式により目標ヨーモーメントMsを算出する。
【0027】
Ms=−K1×K2×(Xs−Xc_left) ・・・(2)
また、逸脱判断フラグが右側逸脱フラグを示す場合(Fld=RIGHT)、下記(3)式により目標ヨーモーメントMsを算出する。
Ms=−K1×K2×(Xs+Xc_right) ・・・(3)
また、逸脱判断フラグが非逸脱フラグを示す場合(Fld=OFF)、下記(4)式として目標ヨーモーメントMsを与える。
【0028】
Ms=0 ・・・(4)
ここで、K1は車両諸元によって定まる定数であり、K2は車速に応じて変動するゲインである。
続いて、ステップS7では、各輪の目標制動液圧(目標制動力)Psを算出する。ここでは、各輪の目標制動液圧Psを、前記ステップS6で算出した前記目標ヨーモーメントMsに基づいて算出しており、以下のように算出する。
【0029】
先ず、目標ヨーモーメントMsから前輪及び後輪それぞれの目標制動液圧差ΔPs_f,ΔP_rを算出する。
すなわち、逸脱判断フラグが左側逸脱フラグ或いは右側逸脱フラグ(Fld=LEFT或いはFld=RIGHT)の場合において、絶対値の目標ヨーモーメント|Ms|が設定値Ms0より小さいとき(|Ms|<Ms0)、次のように前輪後輪の目標制動液圧差ΔPs_f,ΔP_rを決定する。
【0030】
ΔPs_f=0
ΔPs_r=2×Kb_r×|Ms|/ T
また、前記絶対値の目標ヨーモーメント|Ms|が設定値Ms0以上の場合(|Ms|≧Ms0)、次のように前輪後輪の目標制動液圧差ΔPs_f,ΔP_rを決定する。
【0031】
ΔPs_f=2×Kb_f×(|Ms|−Ms0)/T
ΔPs_r=2×Kb_r× Ms0 / T
ここで、Tはトレッドである。また、Kb_f,Kb_rは前輪、後輪それぞれの制動力を制動液圧に換算する場合の換算係数であり、ブレーキ諸元により定まる。
【0032】
これにより、目標ヨーモーメントMsの大きさに応じて、目標ヨーモーメントMs(絶対値の目標ヨーモーメントMs)が設定値Ms0未満の場合、後輪左右輪の制動力に差を発生させ、目標ヨーモーメントMs(絶対値の目標ヨーモーメントMs)が設定値Ms0以上の場合は前後左右輪で制動力差を発生させる。
次に、逸脱方向より、各輪の目標制動液圧Ps(Ps_fl,Ps_fr,Ps_rl,Ps_rr)を算出する。ここで、Ps_flは左前輪の目標制動液圧であり、Ps_frは右前輪の目標制動液圧であり、Ps_rlは左後輪の目標制動液圧であり、Ps_rrは右後輪の目標制動液圧であり、このとき、左方向に逸脱している或いは逸脱しそうな場合(目標ヨーモーメントMsが負の場合)、各輪の目標制動液圧Ps_fl,Ps_fr,Ps_rl,Ps_rrを次のように決定する。
【0033】
Ps_fl=0
Ps_fr=ΔPs_f
Ps_rl=0
Ps_rr=ΔPs_r
また、右方向に逸脱している或いは逸脱しそうな場合(目標ヨーモーメントMsが正の場合)、各輪の目標制動液圧Ps_fl,Ps_fr,Ps_rl,Ps_rrを次のように決定する。
【0034】
Ps_fl=ΔPs_f
Ps_fr=0
Ps_rl=ΔPs_r
Ps_rr=0
また、逸脱がない場合(逸脱判断フラグが非逸脱フラグである場合(Fld=OFF))、各輪の目標制動液圧Ps_fl,Ps_fr,Ps_rl,Ps_rrを次のように決定する。
【0035】
Ps_fl=Ps_fr=0
Ps_rl=Ps_rr=0
そして、ステップS7では、各輪の制動力制御として、前記ステップS6で算出した各輪の目標制動液圧Ps_fl,Ps_fr,Ps_rl,Ps_rrに応じて圧力制御ユニット5にて制動液圧を発生させる。
【0036】
以上が制駆動力制御コントローラ100の処理手順である。
すなわち、制駆動力制御コントローラ100は、各センサ等からのデータを読み込み、読み込んだデータに基づいて逸脱推定値Xsを算出する(前記ステップS1、ステップS2)。
そして、制駆動力制御コントローラ100は、走行車線脇の物体の有無を検出するとともにその検出結果に応じて逸脱判断閾値を設定し、その設定した逸脱判断閾値を用いて逸脱推定値Xsによる車線逸脱判断を行う(前記ステップS3、ステップS4、ステップS5)。ここで、車線逸脱閾値は、走行車線脇の物体の有無に応じて設定されている。
【0037】
つまり、左側物体有無フラグFobj_left=ONでかつ右側物体有無フラグFobj_right=OFFの場合、すなわち、走行車線の左側にのみ物体がある場合、左側逸脱判断閾値Xc_leftを第1の逸脱制御閾値Xc1に設定し且つ、右側逸脱判断閾値Xc_rightを第1の逸脱判断閾値Xc1よりも大なる閾値である第2の逸脱判断閾値Xc2に設定している。
【0038】
また、左側物体有無フラグFobj_left=OFFでかつ右側物体有無フラグFobj_right=ONの場合、すなわち、走行車線の右側にのみ物体がある場合、左側逸脱判断閾値Xc_leftを第2の逸脱制御閾値Xc2に設定し且つ、右側逸脱判断閾値Xc_rightを第1の逸脱判断閾値Xc1に設定している。
【0039】
また、左側物体有無フラグFobj_left=ONでかつ右側物体有無フラグFobj_right=ONの場合、すなわち、走行車線の両側に物体がある場合、左側逸脱判断閾値Xc_left及び右側逸脱判断閾値Xc_rightともに第1の逸脱判断閾値Xc1に設定している。
また、左側物体有無フラグFobj_left=OFFでかつ右側物体有無フラグFobj_right=OFFの場合、すなわち、走行車線の両側に物体がない場合、左側逸脱判断閾値Xc_left及び右側逸脱判断閾値Xc_rightともに第2の逸脱判断閾値Xc2に設定している。
【0040】
このように、物体がある側への逸脱傾向に対する逸脱防止制御で用いる逸脱判断閾値の方を小として設定している。すなわち、左右それぞれについての逸脱傾向を判断するための逸脱判断閾値を別個に設定可能にして、走行車線脇の物体の有無に応じてその設定を異ならせている。
よって、車線逸脱判断では、同一方向への逸脱傾向であっても走行車線脇の物体の有無で異なる逸脱判断結果を示すものとなる。
【0041】
続いて、制駆動力制御コントローラ100は、逸脱判断結果に応じて車両に発生させる目標ヨーモーメントMsを算出し、算出した目標ヨーモーメントMsの車両への付与を実現する各輪の目標制動液圧Ps_fl,Ps_fr,Ps_rl,Ps_rrを算出する(前記ステップS6、ステップS7)。
そして、制駆動力制御コントローラ100は、算出した各輪の目標制動液圧Ps_fl,Ps_fr,Ps_rl,Ps_rrにより各輪の制動力を制御している(前記ステップS8)。すなわち、制駆動力制御コントローラ100は、各輪の目標制動液圧Ps_fl,Ps_fr,Ps_rl,Ps_rrに応じて圧力制御ユニット5に制御信号を出力して、圧力制御ユニット5では、その制御信号によりマスターシリンダー3からの油圧を調整し、各輪のホイールシリンダ12,22,32,42へ供給する制動液圧を制御して、これにより、各車輪10,20,30,40に発生する制動力を制御している。そして、この各車輪の制動力により、前述した目標ヨーモーメントが車両に付与されて、車両は逸脱防止のための車両挙動を示すようになる。
【0042】
このように、制駆動力制御コントローラ100は、逸脱防止制御で逸脱判断に用いる逸脱判断閾値を走行車線脇の物体の有無に応じて設定するととにも、その設定した逸脱判断閾値に基づいて自車両の逸脱傾向を判断し、逸脱傾向にある場合にはその逸脱方向に応じて制動力を発生させて車両挙動を制御して、これにより車両の逸脱を防止している。
【0043】
なお、前述の図2に示す処理において、前記ステップS1及びステップS2の処理は、走行状態検出部101による処理であり、前記ステップS3の処理は、道路環境検出部104による処理であり、前記ステップS4の処理は、閾値設定部105による処理であり、前記ステップS5の処理は、逸脱判断部102による処理であり、前記ステップS6、ステップS7及びステップS8の処理は、逸脱防止制御部103による処理である。また、ステップS4、ステップS6、ステップS7及びステップS8の処理は、閾値設定部105及び逸脱防止制御部103で構成される車両挙動制御手段による処理になる。
【0044】
以上のような逸脱防止制御により、側壁或いはデリニエータ等の物体が走行車線脇に存在する場合、その物体が存在する側への逸脱傾向に対するその制御開始タイミングが早くなる。
すなわち、逸脱判断閾値は逸脱防止制御の制御開始タイミングを決定するものとなるが、本発明を適用することで、走行車線脇に物体が存在する場合、その物体が存在する側の逸脱判断閾値を小さな値に設定しているので、これにより、その物体が存在する側への逸脱傾向において早い時期(逸脱偏位が小さい時期)に逸脱が検出されるようになり、この結果、その物体が存在する側への逸脱傾向に対する逸脱防止制御の制御開始タイミングが早くなる。
【0045】
さらに、このような逸脱防止制御は、走行車線脇に物体が存在する場合にのみ行う逸脱防止制御である。すなわち、走行車線脇に物体を検出した場合にその逸脱判断閾値を小さな値に変更しているので、走行車線脇に物体が存在しない場合の通常の逸脱防止制御では、走行車線脇に物体が存在する場合よりも大きな逸脱判断閾値を基準とし、その結果として、物体が存在する場合よりも遅い制御開始タイミングによる逸脱防止の制御になる。つまり、走行車線脇の物体の有無で逸脱判断閾値を切り替えて、その逸脱判断閾値に基づいて逸脱防止制御を行うことで、物体の存在に適応させて最適な逸脱防止制御を実現している。
【0046】
このように本発明によれば、物体の存在に適応させて最適な逸脱防止制御を行うことで、安全かつ煩わしさのない逸脱防止制御を実現することができる。
次に第2の実施の形態について説明する。
第2の実施の形態では、逸脱防止用の制御ゲインを運転者の位置に応じて設定している。この第2の実施の形態では、前述の図1に示した第1の実施の形態の構成及びその構成による動作が同一になっており、第1の実施の形態とで、制駆動力制御コントローラ100の処理内容が異なっている。以下の説明では、この制駆動力制御コントローラ100について説明する。
【0047】
第2の実施の形態では、制駆動力制御コントローラ100は、本発明を実現する構成として、図4に示すように、車両の走行状態を検出する走行状態検出部101と、走行状態検出部101により検出された走行状態から走行路からの自車両の逸脱傾向を判断する逸脱判断部102と、逸脱判断部102により自車両が走行路から逸脱している又は逸脱しそうであることを判断した場合に、その制御内容に応じて逸脱を回避する方向に車両を制御する逸脱防止制御部103と、前方の道路環境を検出する道路環境検出部104とを備える。ここで、逸脱防止制御部103は、制御ゲイン設定部106と協働で、自車両の側方又は自車両走行路の側方に位置する又は位置すると予期される物体と自車両との関係に基づいて制御内容を設定し、走行路からの車両の逸脱傾向に応じ、車両挙動を前記制御内容に基づいて制御する車両挙動制御手段を構成する。第2の実施の形態では、ここでの制御内容が車両挙動制御の制御ゲインとなっている。
【0048】
このような構成により、制駆動力制御コントローラ100は、図5に示すような処理を行っている。制駆動力制御コントローラ100は、この処理を制御プログラムとして所定周期毎に繰り返し実行する。
先ず、ステップS11では、前述の第1の実施の形態における図3のステップS1の処理と同様な処理として、各センサ及びコントローラからの各種データを読み込む。さらに、ステップS12では、前述の第1の実施の形態における図3のステップS2の処理と同様な処理として、前記ステップS11で読み込んだデータに基づいて逸脱推定値Xsを算出する。
【0049】
続いて、ステップS13では、車線逸脱判断を行う。車線逸脱判断では、先ず、前記ステップS12で算出した逸脱推定値Xsと逸脱判断閾値Xcとを比較して車線逸脱を判断する。
すなわち、逸脱推定値Xsが逸脱判断閾値Xc以上の場合(Xs≧Xc)、左に逸脱している或いは逸脱しそうであると判断し、逸脱判断フラグFld=LEFTにする(逸脱判断フラグを左側逸脱フラグにする)。また、逸脱推定値Xsが逸脱判断閾値Xcの負値−Xc以下である場合(Xs≦−Xc)、右に逸脱している或いは逸脱しそうであると判断し、逸脱判断フラグFld=RIGHTにする(逸脱判断フラグを右側逸脱フラグにする)。また、それ以外は逸脱していないと判断し、逸脱判断フラグFld=OFFにする(逸脱判断フラグを非逸脱フラグにする)。
【0050】
続いて、ステップS14では、前述の第1の実施の形態における図3のステップS3の処理と同様な処理として、走行車線脇の物体の有無を判断する。
すなわち、レーダセンサ58により物体を検出した場合であって、その物体が自車両の走行車線の左側にあるときには、左側物体有無フラグFobj_left=ONにし、その物体が自車両の走行車線の右側にあるときには、右側物体有無フラグFobj_right=ONにする。また、このレーダセンサ58の検出がない場合には、左側物体有無フラグFobj_left=OFF及び右側物体有無フラグFobj_right=OFFにする。
【0051】
続いて、ステップS15では、前記ステップS3による走行車線脇の物体の有無の検出結果に基づいて逸脱防止制御の制御ゲインKobj_left、Kobj_rightを算出する。
すなわち、左側物体有無フラグFobj_left=ONでかつ右側物体有無フラグFobj_right=OFFの場合、左側への逸脱傾向に対する逸脱防止制御に用いる制御ゲイン(以下、左側逸脱制御ゲインという。)Kobj_leftを第1の制御ゲインKobj1に設定し(Kobj_left=Kobj1)、右側への逸脱傾向に対する逸脱防止制御に用いる制御ゲイン(以下、右側逸脱制御ゲインという。)Kobj_rightを第2の制御ゲインKobj2に設定する(Kobj_right=Kobj2)。
【0052】
また、左側物体有無フラグFobj_left=OFFでかつ右側物体有無フラグFobj_right=ONの場合、左側逸脱制御ゲインKobj_leftを第2の制御ゲインKobj2に設定し(Kobj_left=Kobj2)、右側逸脱制御ゲインKobj_rightを第1の逸脱制御閾値Xc1に設定する(Kobj_right=Kobj1)。
【0053】
また、左側物体有無フラグFobj_left=ONでかつ右側物体有無フラグFobj_right=ONの場合、左側逸脱制御ゲインKobj_leftを第1の制御ゲインKobj1に設定し(Kobj_left=Kobj1)、右側逸脱制御ゲインKobj_rightを第1の逸脱制御閾値Xc1に設定する(Kobj_right=Kobj1)。
【0054】
また、左側物体有無フラグFobj_left=OFFでかつ右側物体有無フラグFobj_right=OFFの場合、左側逸脱制御ゲインKobj_leftを第2の制御ゲインKobj2に設定し(Kobj_left=Kobj2)、右側逸脱制御ゲインKobj_rightを第2の逸脱制御閾値Xc2に設定する(Kobj_right=Kobj2)。
【0055】
ここで、第1の制御ゲインKobj1は第2の制御ゲインKobj2よりも大なる関係にある(Kobj1>Kobj2)。
続いて、ステップS16で、車両に発生させる目標ヨーモーメントMsを算出する。
すなわち、前記逸脱判断フラグに応じて場合分けして、逸脱推定値Xs、左側逸脱制御ゲインKobj_left及び右側逸脱制御ゲインKobj_rightにより下記(5)式〜(7)式に従って目標ヨーモーメントMsを算出する。
【0056】
具体的には、逸脱判断フラグが左側逸脱フラグを示す場合(Fld=LEFT)、下記(5)式により目標ヨーモーメントMsを算出する。
Ms=−K1×K2×(Xs−Xc)×Kobj_left ・・・(5)
また、逸脱判断フラグが右側逸脱フラグを示す場合(Fld=RIGHT)、下記(6)式により目標ヨーモーメントMsを算出する。
【0057】
Ms=−K1×K2×(Xs+Xc)×Kobj_right ・・・(6)
また、逸脱判断フラグが非逸脱フラグを示す場合(Fld=OFF)、下記(7)式として目標ヨーモーメントMsを与える。
Ms=0 ・・・(7)
ここで、K1は車両諸元によって定まる定数であり、K2は車速に応じて変動するゲインである。
【0058】
そして、ステップS17及びステップS18では、前述の第1の実施の形態における図3のステップS7及びステップS8の処理と同様な処理として、各輪の目標制動液圧(目標制動力)Ps_fl,Ps_fr,Ps_rl,Ps_rrを算出し、各輪の制動力制御として、その算出した各輪の目標制動液圧Ps_fl,Ps_fr,Ps_rl,Ps_rrに応じて圧力制御ユニット5にて制動液圧を発生させる。
【0059】
以上が制駆動力制御コントローラ100の処理手順である。
すなわち、制駆動力制御コントローラ100は、各センサ等からのデータを読み込み、読み込んだデータに基づいて逸脱推定値Xsを算出する(前記ステップS11、ステップS12)。そして、制駆動力制御コントローラ100は、逸脱判断閾値Xcを用いて逸脱推定値Xsによる車線逸脱判断を行う(前記ステップS13)。
【0060】
一方、制駆動力制御コントローラ100は、走行車線脇の物体の有無を検出し、その検出結果に応じて逸脱制御ゲインを設定する(前記ステップS14、ステップS15)。
つまり、逸脱制御ゲインの設定では、左側物体有無フラグFobj_left=ONでかつ右側物体有無フラグFobj_right=OFFの場合、すなわち、走行車線の左側にのみ物体がある場合、左側逸脱制御ゲインKobj_leftを第1の制御ゲインKobj1に設定し且つ、右側逸脱制御ゲインKobj_rightを第1の制御ゲインKobj1よりも小なる第2の制御ゲインKobj2に設定している。
【0061】
また、左側物体有無フラグFobj_left=OFFでかつ右側物体有無フラグFobj_right=ONの場合、すなわち、走行車線の右側にのみ物体がある場合、左側逸脱制御ゲインKobj_leftを第2の制御ゲインKobj2に設定し且つ、右側逸脱制御ゲインKobj_rightを第1の制御ゲインKobj1に設定している。
【0062】
また、左側物体有無フラグFobj_left=ONでかつ右側物体有無フラグFobj_right=ONの場合、すなわち、走行車線の両側に物体がない場合、左側逸脱制御ゲインKobj_left及び右側逸脱制御ゲインKobj_rightともに第1の制御ゲインKobj1に設定している。
また、左側物体有無フラグFobj_left=OFFでかつ右側物体有無フラグFobj_right=OFFの場合、すなわち、走行車線の両側に物体がない場合、左側逸脱制御ゲインKobj_left及び右側逸脱制御ゲインKobj_rightともに第2の制御ゲインKobj2に設定している。
【0063】
このように、走行車線脇に物体を検出した側への逸脱傾向に対する逸脱制御で用いる制御ゲインの方を大として設定している。
続いて、制駆動力制御コントローラ100は、逸脱判断結果に応じて車両に発生させる目標ヨーモーメントMsを算出する(前記ステップS16)。前述したように、制御ゲインが物体の有無に応じて算出されているので、ここで算出した目標ヨーモーメントMsは、物体の有無に応じて異なる値となる。
【0064】
そして、制駆動力制御コントローラ100は、このように算出した目標ヨーモーメントMsの車両への付与を実現する各輪の目標制動液圧Ps_fl,Ps_fr,Ps_rl,Ps_rrを算出し、この各輪の目標制動液圧Ps_fl,Ps_fr,Ps_rl,Ps_rrに応じて圧力制御ユニット5に制御信号を出力して、圧力制御ユニット5では、その制御信号によりマスターシリンダー3からの油圧を調整し、各輪のホイールシリンダ12,22,32,42へ供給する制動液圧を制御して、これにより、各車輪10,20,30,40に発生する制動力が制御されるようになる。そして、この各車輪の制動により、前述した目標ヨーモーメントが車両に付与されて、車両は逸脱防止のための車両挙動を示すようになる。
【0065】
このように、制駆動力制御コントローラ100は、逸脱防止制御の制御ゲインを走行車線脇の物体の有無に応じて設定する一方で、逸脱判断閾値に基づいて自車両の逸脱傾向を判断し、逸脱傾向にある場合には、前記設定した制御ゲインに基づいた制動力を発生させて車両挙動を制御して、これにより車両の逸脱を防止している。
【0066】
なお、図5に示す処理において、前記ステップS11及びステップS12の処理は、走行状態検出部101による処理であり、前記ステップS13の処理は、逸脱判断部102による処理であり、前記ステップS14の処理は、道路環境検出部104による処理であり、前記ステップS15の処理は、制御ゲイン設定部106による処理であり、前記ステップS16、ステップ17及びステップS18の処理は、逸脱防止制御部103による処理である。また、ステップS15、ステップS16、ステップS17及びステップS18の処理は、前記逸脱回避制御量補正部105及び逸脱防止制御部103で構成される車両挙動制御手段による処理になる。
【0067】
以上のような逸脱防止制御により、側壁或いはデリニエータ等の物体が走行車線脇に存在する場合、その物体が存在する側への逸脱傾向に対する制御量の方が多くなる。
すなわち、記制御ゲインは逸脱防止制御の制御量を決定するものとなるが、本発明を適用することで、走行車線脇に物体が存在する場合、その物体が存在する側への逸脱傾向に対する逸脱制御で使用する制御ゲインを大きい値に設定しているので、これにより、物体が存在する側への逸脱傾向に対する逸脱防止制御の制御量が多くなる。
【0068】
さらに、このような逸脱防止制御は、走行車線脇に物体が存在する場合にのみ行う逸脱防止制御である。すなわち、走行車線脇に物体を検出した場合にその制御ゲインを大きな値に変更しているので、走行車線脇に物体が存在しない場合の通常の逸脱防止制御では、走行車線脇に物体が存在する場合よりも小さな制御ゲインとし、その結果として、物体が存在する場合よりも少ない制御量による逸脱防止の制御を行っている。つまり、走行車線脇の物体の有無で制御ゲインの値を切り替えて、その制御ゲインに基づいて逸脱防止制御を行うことで、物体の存在に適応させて最適な逸脱防止制御を実現している。
【0069】
このように本発明によれば、物体の存在に適応させて最適な逸脱防止制御を行うことで、安全かつ煩わしさのない逸脱防止制御を実現することができる。
次に第3の実施の形態及び第4の実施の形態について説明する。
ここで、前述の第1及び第2の実施の形態では、走行車線脇の物体(特に、側壁或いはデリニエータ等の固定物体等)を検出して、その検出結果に基づいて逸脱判断閾値や制御ゲインを設定している。
【0070】
これに対して、第3の実施の形態では、逸脱判断閾値の設定に使用する被検出対象を、対向車や併走車等といった隣車線の車両(以下、隣車線車両という。)にしたものであって、第4の実施の形態では、制御ゲインの設定に使用する被検出対象を、隣車線車にしたものである。
先ず、第3の実施の形態を説明する。この第3の実施の形態では、前述の図1に示した第1の実施の形態の構成及びその構成による動作が同一になっており、第1の実施の形態とで、制駆動力制御コントローラ100の処理内容が異なっている。以下、その制駆動力制御コントローラ100について説明する。
【0071】
図6は、対向車等の検出結果に基づいて逸脱判断閾値を設定する場合の制駆動力制御コントローラ100の処理を示す。この図6に示すように、ステップS1〜ステップS8の処理は、前述の第1の実施の形態における図3の処理内容と同様であるが、この第2の実施の形態では、前記ステップS3の走行車線脇物体有無判断の処理に換えて、ステップS21の処理として、隣車線車両有無判断の処理を行っている。
【0072】
このステップS21における隣車線車両有無判断では、隣車線車両をレーダセンサ58により検出し、この検出結果により左側車両有無フラグFcar_left及び右側車両有無フラグFcar_rightを設定する。
すなわち、隣車線車両を検出した場合であって、その隣車線車両が自車両に対して左側にあるときには、左側車両有無フラグFcar_left=ONにし、その隣車線車両が自車両の右側にあるときには、右側車両有無フラグFcar_right=ONにする。また、このレーダセンサ58の検出がない場合には、左側車両有無フラグFcar_left=OFF及び右側車両有無フラグFcar_right=0にする。
【0073】
なお、対向車が左にあるということはありえないので、自車両の左側に存在する隣車線車両は主に併走車になり、この併走車により、左側車両有無フラグFcar_leftがONになる。また、前述したように、隣車線車両の有無に応じて車両有無フラグを設定しているが、隣車線車と自車両との間の間隔に基づいて、車両有無フラグを設定してもよい。すなわち例えば、左側の隣車線車と自車両との間の間隔が所定の間隔以下であるとき(間隔が所定間隔より狭いとき)、左側物体有無フラグFobj_left=ONにするといったようにである。
【0074】
そして、ステップS4では、前述の第1の実施の形態と同様に、隣車線車両の検出結果に基づいて逸脱判断閾値を設定する。
すなわち、左側車両有無フラグFcar_left=ONでかつ右側車両有無フラグFcar_right=OFFの場合、左側逸脱判断閾値Xc_leftを第1の逸脱制御閾値Xc1に設定し(Xc_left=Xc1)、右側逸脱判断閾値Xc_rightを第2の逸脱判断閾値Xc2に設定する(Xc_right=Xc2)。
【0075】
また、左側車両有無フラグFcar_left=OFFでかつ右側車両有無フラグFcar_right=ONの場合、左側逸脱判断閾値Xc_leftを第2の逸脱判断閾値Xc2に設定し(Xc_left=Xc2)、右側逸脱判断閾値Xc_rightを第1の逸脱判断閾値Xc1に設定する(Xc_right=Xc1)。
【0076】
また、左側車両有無フラグFcar_left=ONでかつ右側車両有無フラグFcar_right=ONの場合、左側逸脱判断閾値Xc_leftを第1の逸脱制御閾値Xc1に設定し(Xc_left=Xc1)、右側逸脱判断閾値Xc_rightを第1の逸脱判断閾値Xc1に設定する(Xc_right=Xc2)。
【0077】
また、左側車両有無フラグFcar_left=OFFでかつ右側車両有無フラグFcar_right=OFFの場合、左側逸脱判断閾値Xc_leftを第2の逸脱判断閾値Xc2に設定し(Xc_left=Xc2)、右側逸脱判断閾値Xc_rightを第2の逸脱判断閾値Xc2に設定する(Xc_right=Xc2)。
【0078】
ここで、第1の逸脱判断閾値Xc1は第2の逸脱判断閾値Xc2よりも小なる関係にある(Xc1<Xc2)。
このようにステップS4において逸脱判断閾値を設定し、続くステップS5以降において、この設定した逸脱判断閾値に基づいて逸脱推定値Xsによる車線逸脱判断を行う等、前述の第1の実施の形態と同様な処理を行う。
【0079】
以上のような処理により、隣車線車両の存在の有無で逸脱判断閾値を切り替えて、隣車線車両が存在する場合には、その隣車線車両が存在する側への逸脱傾向に対する逸脱防止制御の制御開始タイミングが早くなる。
このように、隣車線車両の有無で逸脱判断閾値を切り替えて、その逸脱判断閾値に基づいて逸脱防止制御を行うことで、隣車線車両の存在に適応させて最適な逸脱防止制御を行うことができ、安全かつ煩わしさのない逸脱防止制御を実現することができる。
【0080】
次に、第4の実施の形態を説明する。この第4の実施の形態では、前述の図1に示した構成及びその構成による動作が同一になっており、第2の実施の形態とで、制駆動力制御コントローラ100の処理内容が異なっている。以下、その制駆動力制御コントローラ100について説明する。
図7は、対向車等の検出結果に基づいて制御ゲインを設定する場合の制駆動力制御コントローラ100の処理を示す。この図7に示すように、ステップS11〜ステップS18の処理は、前述の第2の実施の形態における図5の処理内容と同様であるが、この第4の実施の形態では、前記ステップS14の走行車線脇物体有無判断の処理に換えて、ステップS22の処理として、隣車線車両有無判断の処理を行っている。
【0081】
このステップS22における隣車線車両有無判断では、前述の第3の実施の形態における図6のステップS21の処理と同様な処理として、隣車線車両をレーダセンサ58により検出し、この検出結果により左側車両有無フラグFcar_left及び右側車両有無フラグFcar_rightを設定する。
すなわち、隣車線車両を検出した場合であって、その隣車線車両が自車両に対して左側にあるときには、左側車両有無フラグFcar_left=ONにし、その隣車線車両が自車両の右側にあるときには、右側車両有無フラグFcar_right=ONにする。また、このレーダセンサ58の検出がない場合には、左側車両有無フラグFcar_left=OFF及び右側車両有無フラグFcar_right=OFFにする。
【0082】
そして、ステップS15では、隣車線車両の検出の有無に応じて逸脱防止制御の制御ゲインKcar_left、Kcar_rightを算出する。
すなわち、左側物体有無フラグFcar_left=ONでかつ右側物体有無フラグFcar_right=OFFの場合、左側逸脱制御Kcar_leftを第1の制御ゲインKcar1に設定し(Kcar_left=Kcar1)、右側逸脱制御ゲインKcar_rightを第2の制御ゲインKcar2に設定する(Kcar_right=Kcar2)。
【0083】
また、左側物体有無フラグFcar_left=OFFでかつ右側物体有無フラグFcar_right=ONの場合、左側逸脱制御ゲインKcar_leftを第2の制御ゲインKcar2に設定し(Kcar_left=Kcar2)、右側逸脱制御ゲインKcar_rightを第1の逸脱制御閾値Xc1に設定する(Kcar_right=Kcar1)。
【0084】
また、左側物体有無フラグFcar_left=ONでかつ右側物体有無フラグFcar_right=ONの場合、左側逸脱制御ゲインKcar_leftを第1の制御ゲインKcar1に設定し(Kcar_left=Kcar1)、右側逸脱制御ゲインKcar_rightを第1の逸脱制御閾値Xc1に設定する(Kcar_right=Kcar1)。
【0085】
また、左側物体有無フラグFcar_left=OFFでかつ右側物体有無フラグFcar_right=OFFの場合、左側逸脱制御ゲインKcar_leftを第2の制御ゲインKcar2に設定し(Kcar_left=Kcar2)、右側逸脱制御ゲインKcar_rightを第2の逸脱制御閾値Xc2に設定する(Kcar_right=Kcar2)。
【0086】
ここで、第1の制御ゲインKcar1は第2の制御ゲインKcar2よりも大なる関係にある(Kcar1>Kcar2)。
このようにステップS15において制御ゲインを設定し、続くステップS16以降において、この設定した制御ゲインに基づいて目標モーメントMsを算出する等、前述の第2の実施の形態と同様な処理を行う。
【0087】
以上のような処理により、隣車線車両の存在の有無で制御ゲインを切り替えて、隣車線車両が存在する場合には、その隣車線車両が存在する側への逸脱傾向に対する逸脱防止制御の制御ゲインを大きくすることで、制御量が多くなる。
このように、隣車線車両の有無で逸脱判断閾値を切り替えて、その逸脱判断閾値に基づいて逸脱防止制御を行うことで、隣車線車両の存在に適応させて最適な逸脱防止制御を行うことができ、安全かつ煩わしさのない逸脱防止制御を実現することができる。
【0088】
以上、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明は、前述の実施の形態として実現されることに限定されるものではない。
すなわち、前述の実施の形態では、物体と自車両との関係に基づいて設定する制御内容を制御開始タイミングや制御ゲインにしているがこれに限定されるものではない。すなわち、制御内容が逸脱防止制御の緩急に影響するものであり、物体と自車両との関係に連動させて制御内容を変化させることができる値或いは信号であればよい。
【0089】
また、前述の第1乃至第4の実施の形態の構成の組み合わせで装置を構成してもよい。すなわち、路肩の側壁、デリニエータ、対向車或いは併走車の両方に基づいて、逸脱防止制御の制御内容である制御開始タイミング及び制御ゲインを設定するようにしてもよい。さらに、自車両の側方又は自車両走行路の側方に位置する又は位置すると予期される物体としては、路肩の側壁、デリニエータ、対向車或いは併走車に限定されないことはいうまでもなく、道路に固定され或いは道路を移動する他の物体であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1乃至第4の実施の形態の構成を示す図である。
【図2】第1の実施の形態の構成におけるコントローラの構成を示すブロック図である。
【図3】前記第1の実施の形態の構成におけるコントローラの処理を示すフローチャートである。
【図4】第2の実施の形態の構成におけるコントローラの構成を示すブロック図である。
【図5】前記第2の実施の形態の構成におけるコントローラの処理を示すフローチャートである。
【図6】第3の実施の形態の構成におけるコントローラの処理を示すフローチャートである。
【図7】第4の実施の形態の構成におけるコントローラの処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
10 コントローラ
58 レーダセンサ
101 走行状態検出部
102 逸脱判断部
103 逸脱防止制御部
104 道路環境検出部
105 閾値設定部
106 制御ゲイン設定部
Claims (7)
- 自車両の側方又は自車両走行路の側方に位置する又は位置すると予期される物体と自車両との関係に基づいて制御内容を設定し、走行路からの車両の逸脱傾向に応じ、車両挙動を前記制御内容に基づいて制御する車両挙動制御手段を備え、前記物体との間隔が狭いときと広いときとで前記制御内容を変更することを特徴とする車線逸脱防止装置。
- 前記制御内容が車両挙動制御の緩急であることを特徴とする請求項1に記載の車線逸脱防止装置。
- 前記物体と自車両との間隔が所定間隔よりも狭い場合に、当該間隔が狭い側への逸脱傾向に基づく車両挙動制御の制御開始タイミングが早くなるように前記制御内容を変更することを特徴とする請求項1又は2に記載の車線逸脱防止装置。
- 前記物体と自車両との間隔が所定間隔よりも狭い場合に、当該間隔が狭い側への逸脱傾向に基づく車両挙動制御の制御ゲインを大きくすることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の車線逸脱防止装置。
- 前記物体が路肩側壁又はデニリエータの少なくとも一方であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の車線逸脱防止装置。
- 対向車又は併走車の少なくとも一方が存在する場合に、前記対向車又は併走車側への逸脱傾向に基づく逸脱防止制御の制御開始タイミングが早くなるように前記制御内容を変更することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の車線逸脱防止装置。
- 対向車又は併走車の少なくとも一方が存在する場合に、前記対向車又は併走車側への逸脱傾向に基づく車両挙動制御の制御ゲインを大きくすることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の車線逸脱防止装置。
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