JP2004034604A - 農業用フイルム - Google Patents
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Abstract
【解決手段】熱可塑性樹脂に、Si、Li、K及びAlから選ばれる少なくとも2種以上の金属を有し、水素イオン指数が6〜8、平均粒子径が0.1〜2.0μmである複合無機化合物(A)を0.1〜20重量%、光安定剤及び/又は紫外線吸収剤(B)を0.01〜5重量%及び防曇剤(C)を0.1〜5重量%の割合で配合した熱可塑性樹脂組成物からなるフイルム層を含む農業用フイルム。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、保温性、防曇性、耐光性、防霧性等のバランスに優れた農業用フイルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
農業用ハウスやトンネルハウスなどを使用する温室栽培においては、保温及び風防などのために透明な熱可塑性樹脂製農業用フイルムが被覆材として使用されている。これら熱可塑性樹脂として塩化ビニル樹脂やポリエチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン系樹脂が主として使用されている。この内、塩化ビニル樹脂は、強靭で保温性、透明性等が優れているが、可塑剤のブリードにより表面が汚れ易く経時的に光線透過率が低下することや低温耐衝撃性に劣るため寒冷地では使用できないという問題点を有している。加えて使用後の廃棄処理において、焼却すると腐食性ガスを発生するという問題点も抱えている。このため、これらの問題点を有せず、防汚性、透明持続性、低温耐衝撃性等に優れたポリオレフィン系樹脂が多用されるようになってきた。
【0003】
ポリオレフィン系樹脂を使用する場合には、農業用フイルムとして充分な保温性と防曇性を付与するために添加剤を配合することが必要であり、従来種々の添加剤処方が提案されてきた。従来提案されている保温剤の中では、保温性が優れ、また防曇持続性に効果的なものもあったが、その程度が必ずしも満足すべきものではなかった。また保温剤の種類によっては、フイルム展張直後のみの現象ではあるが初期防曇時に白化したり、防霧剤を配合しても初期防霧性が充分でなかったりするものがあった。
【0004】
さらにポリオレフィン系樹脂や塩化ビニル樹脂は紫外線により劣化しそのままでは長期使用に耐えないため、紫外線吸収剤やヒンダードアミン系光安定剤を配合することにより、その欠点を補ってきた。しかしながら従来の添加剤処方によれば、酸性雨あるいは農薬散布や硫黄燻蒸などにより大きく影響を受けて性能が低下するため、このような環境下においても有効な光安定化処方が求められていた。農業用フイルムにおいては、この外、使用箇所によっては種々の物性改良のために、酸化防止剤、防霧剤、融着防止剤その他諸々の添加剤を配合することがあった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らはかかる現状に鑑み、鋭意検討を重ねた結果、特定の保温剤、光安定剤及び/又は紫外線吸収剤並びに防曇剤を併用配合することにより、初期防曇性及び防曇持続性に優れ、かつ保温性にも優れる農業用フイルムが得られることを見出すに至った。この処方によればまた、防霧剤を配合する場合において、初期防霧性にも優れることを見出すに至った。
【0006】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明によれば、熱可塑性樹脂に、Si、Li、K及びAlから選ばれる少なくとも2種以上の金属を有し、水素イオン指数が6〜8、平均粒子径が0.1〜2.0μmである複合無機化合物(A)を0.1〜20重量%、光安定剤及び/又は紫外線吸収剤(B)を0.01〜5重量%及び防曇剤(C)を0.1〜5重量%の割合で配合した熱可塑性樹脂組成物からなるフイルム層を含む農業用フイルムが提供される。このような農業用フイルムは、前記熱可塑性樹脂組成物からなるフイルム層の単層のフイルムであってもよく、またこのようなフイルム層を1層以上有する多層フイルムであってもよい。多層フイルムの場合には、複数の前記熱可塑性樹脂組成物からなるフイルム層のみから構成されていてもよく、前記熱可塑性樹脂組成物からなるフイルム層の1層又は複数の層とその他の熱可塑性樹脂フイルム層を1層又は複数層が含まれるものであってもよい。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明の農業用フイルムに使用される熱可塑性樹脂基材としては、オレフィンの単独重合体、オレフィン同士の共重合体、オレフィンと極性モノマーの共重合体などのポリオレフィン系樹脂がとくに好適であり、とりわけ好適なものは、エチレンの単独重合体、エチレンと炭素数3以上のαーオレフィンとの共重合体、エチレンと極性モノマーの共重合体などのエチレン(共)重合体である。より具体的には高・中密度ポリエチレン、高圧法低密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレンとして知られているエチレンとα−オレフィンの共重合体、エチレンと酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸又はその塩、(メタ)アクリル酸エステルなどの極性モノマーとの共重合体などを挙げることができる。
【0008】
高圧法低密度ポリエチレン及び直鎖低密度ポリエチレンにおいては、透明性、フイルム強度、加工性などを考慮すると、密度が900〜935kg/m3、好ましくは910〜930kg/m3、190℃、2160g荷重におけるメルトフローレート(MFR)が0.1〜20g/10分、好ましくは0.5〜5.0g/10分のものを使用するのが望ましい。ここに直鎖低密度ポリエチレンにおいてエチレンと共重合させるαーオレフィンとしては、透明性やフイルム強度などを考慮すると、炭素数4〜10のもの、例えば1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、4−メチル−1−ペンテンなどから選ばれるものが好ましい。直鎖低密度ポリエチレンにおいてはまた、いかなる触媒系を使用して製造されたものであってもよく、例えば高活性チタン触媒成分と有機アルミニウム化合物触媒成分からなる触媒を代表例とするマルチサイト触媒やメタロセン触媒成分とアルミノオキサン触媒成分からなる触媒を代表例とするシングルサイト触媒を用いて製造されたものなどを使用することができる。
【0009】
エチレン・極性モノマー共重合体としては、透明性、柔軟性、フイルム強度、防曇剤のような各種添加剤との親和性、加工性などを考慮すると、酢酸ビニル含量が3〜33重量%、好ましくは3〜20重量%、190℃、2160g荷重のMFRが0.1〜20g/10分、好ましくは0.5〜10g/10分のエチレン・酢酸ビニル共重合体を使用するのが最も好ましい。
【0010】
エチレン・極性モノマー共重合体の他の好ましい例として、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−ブチル、メタクリル酸メチルなどの(メタ)アクリル酸エステル含量が3〜33重量%、好ましくは3〜20重量%、190℃、2160g荷重のMFRが0.1〜20g/10分、好ましくは0.5〜10g/10分のエチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体を挙げることができる。
【0011】
上記熱可塑性樹脂の他の例としてはまた、ポリアミド、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、スチレン系重合体などを例示することができる。
【0012】
本発明の農業用フイルムにおいて使用される複合無機化合物(A)は、Si、Li、Al及びKから選ばれる金属を少なくとも2種以上含有し、水素イオン指数が6〜8、平均粒子径が0.1〜2.0μmのものである。このような複合無機化合物を適量使用することにより、充分な透明性、保温性を維持するとともに、初期防曇時の白化を防止し、防霧剤を配合した場合に初期防霧性が優れ、かつ防曇剤、防霧剤の効果を長期にわたって発揮させることができる。
【0013】
複合無機化合物(A)として具体的には、Li、Na、Kなどのアルカリ金属、Mg及びAlから選ばれる2種以上の金属と珪酸根、縮合珪酸根、炭酸根、硫酸根及び水酸基から選ばれる2種以上のアニオン成分とから構成される複合化合物、Li、Na、Kなどのアルカリ金属及びMgから選ばれる2種以上の金属とアルミノ珪酸根とからなる複合化合物などを挙げることができる。より具体的には、珪酸リチウム・水酸化アルミニウム・珪酸マグネシウム複合化合物(例えばLiSiO3として15〜20重量%、Al(OH)3として57〜67重量%、SiO2として11〜26重量%、MgOとして0.5〜2.5重量%の複合化合物)、炭酸リチウム・硫酸リチウム・炭酸マグネシウム・水酸化マグネシウム・水酸化アルミニウム複合化合物、ナトリウム・カリウムアルミノ珪酸塩などを例示することができる。
【0014】
このような複合無機化合物(A)は、高級脂肪酸、高級脂肪酸塩、高級アルコール、高級脂肪酸アミド、チタンカップリング剤、シランカップリング剤などで表面処理されたものであってもよい。
【0015】
このような複合無機化合物(A)の配合量は、フイルム層を構成する熱可塑性樹脂中、0.1〜20重量%、好ましくは0.2〜10重量%の範囲である。
【0016】
本発明の(B)成分として使用可能な光安定剤としては、例えば4−アセトキシー2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ステアロイルオキシー2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−アクリロイルオキシー2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ベンジルオキシー2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−シクロヘキサノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(フェニルアセトキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(o−クロロベンゾイルオキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(フェノキシアセトキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(フェニルカルバモイルオキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(p−トルエンスルホニルオキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ニコチノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(2−フロイルオキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(β−ナフトイルオキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1,3,8−トリアザ−7,7,9,9−テトラメチル−2,4−ジオキソ−3−nオクチル−スピロ[4,5]デカン、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アジペート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ヘキサヒドロテレフタレート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)テレフタレート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ベンゼン−1,3,5−トリカルボキシレート、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−2−アセトキシプロパン−1,2,3−トリカルボキシレート、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−2−ヒドロキシプロパン−1,2,3−トリカルボキシレート、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)トリアジン−2,4,6−トリカルボキシレート、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジン)ホスファイト、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブタン−1,2,3−トリカルボキシレート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)プロパン−1,1,2,3−テトラカルボキシレート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブタン−1,2,3,4−テトラカルボキシレート、(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジン)−4−スピロ−2’−(6’,6’−ジメチルピペリジン)−4’−スピロ−5’’−ヒンダントインなどを挙げることができる。
【0017】
ヒンダードアミン系光安定剤の例としてはまた、下記式で示されるような高分子型ヒンダードアミンを挙げることができる。
【0018】
【化1】
【0019】
【化2】
【0020】
【化3】
【0021】
【化4】
【0022】
【化5】
【0023】
【化6】
【0024】
【化7】
【0025】
【化8】
【0026】
光安定剤としては、NOR型ヒンダードアミン系光安定剤、好ましくは下記一般式(1)
【化9】
で示される基(式中、Rは置換又は非置換の炭化水素基又はアシル基)を少なくとも1個以上有する化合物を使用すると、耐酸性、耐農薬性に優れた農業用フイルムが得られるので好ましい。。式(1)におけるRは、置換又は非置換のアルキル基又はアシル基であり、例えばアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、ビシクロアルキル基、フェニル基、ナフチル基、フェニルアルキル基、アルキル基置換フェニル基、水酸基置換アルキル基、アシル基、アルコキシ置換アルキル基、チオアルコキシ基置換アルキル基などである。
【0027】
より具体的には、下記(a)〜(e)で表される化合物を代表例として挙げることができる。
【0028】
(a)下記一般式(2)
【化10】
(式中、Rは式(1)のものと同じ(以下同じ)、R1は、n=1のときは、水素、1個又は2個以上の酸素原子で中断されていてもよいアルキル基、シアノアルキル基、ベンジル基、アシル基などであり、n=2のときはアルキレン基、キシリレン基、ジアシル基などであり、n=3のときはトリアシル基、n=4のときはテトラアシル基などである)
【0029】
(b)下記一般式(3)
【化11】
(式中、R2は、水素、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、シクロアルキル基、アルアルキル基、アシル基又は式(1)の基などであり、R3は、n=1のときは、水素、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、シクロアルキル基、アルアルキル基、アシル基などであり、あるいはR2と環を形成してジアシル基を示し、n=2のときは、アルキレン基、アリーレン基、キシリレン基、1−オキソアルキレン基、ジアシル基などである。
【0030】
(c)下記一般式(4)
【化12】
(式中、R4は、アルキル基、アリール基、ベンジル基、アルコキシアルキル基などであり、R5は、n=1のときは、水素、アルキル基、アルケニル基、アルアルキル基、シクロアルキル基、ヒドロキシアルキル基、アルコキシアルキル基、アリール基、カルボン酸エステル基置換アルキル基などであり、n=2のときはアルキレン基、アリーレン基、ヒドロキシ置換アルキレン基、酸素で遮断されているアルキレン基などである。)
【0031】
(d)下記一般式(5)
【化13】
(式中、R6、R7はそれぞれ水素、アルキル基、アリール基、アルアルキル基、ハロゲン置換アルキル基等であり、また両者が結合してシクロアルカン環を形成していてもよい)
【0032】
(e)下記一般式(6)
【化14】
(式中、R8、R9はそれぞれ水素、アルキル基、アリール基、アルアルキル基、ハロゲン置換アルキル基等であり、また両者が結合してシクロアルカン環を形成していてもよい。R10は、n=1のときは、水素、アルキル基、アルケニル基、アルアルキル基、シクロアルキル基、ヒドロキシアルキル基、アルコキシアルキル基、アリール基、カルボン酸エステル基置換アルキル基などであり、n=2のときはアルキレン基、アリーレン基、ヒドロキシ置換アルキレン基、酸素で遮断されているアルキレン基などである。)
【0033】
(f)下記一般式(7)
【化15】
(式中、nは1又は2であり、R11は下記式(8)
【化16】
又は下記式(9)
【化17】
(式中、Rは式(1)のものと同じで、好ましくはアルキル基又はシクロアルキル基であり、R14は、−O−又は−NR15−を表し、Aはアルキレン基又は−C3H6−O−を表し、mは0又は1であり、R15は、水素、アルキル基、ヒドロキシアルキル基又はシクロアルキル基を表す。またR12は、R11として例示したものであるか、−NR16R17、−OR18、−NHCH2R18又は−N(CH2OR18)である。R16及びR17は、アルキル基、シクロアルキル基、ベンジル基、ヒドロキシアルキル基又は式(1)の基を表し、あるいは両者が結合してアルキレン基、−C2H4−O−C2H4−又は−C2H4−NR18−C2H4−を表す。R18はアルキル基、シクロアルキル基、ベンジル基又はヒドロキシアルキル基である。
【0034】
R16はまた、式(10)
【化18】
(式中、R19はアルキル基)で示される基でもよい。
R13は、n=1のときは、R11又はR12として例示したものであり、n=2のときは、−R14−B−R14−(Bは、アルキレン基又は1個又は2個のNR16で中断されているアルキレン基)を表す。)
【0035】
(g)繰り返し構造単位が、式(1)のN−置換−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン基を含有しているオリゴマー又はポリマー化合物、好ましくはこれら基を有するポリエステル、ポリエーテル、ポリアミド、ポリアミン、ポリウレタン、ポリ尿素、ポリアミノトリアジン、ポリ(メタ)アクリレート、ポリ(メタ)アクリルアミドなどである。
【0036】
これらの中でとくに好ましいのは、(a)、(f)又は(g)で示される化合物である。
【0037】
より具体的には、(a)で示される化合物としてとくに好適なものは、式(2)において、n=1で、Rが炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数1〜4のアルキル基で置換されていてもよい炭素数5〜12のシクロアルキル基であり、R1が炭素数1〜24の脂肪族アシル基である化合物、n=2で、Rが炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数1〜4のアルキル基で置換されていてもよい炭素数5〜12のシクロアルキル基であり、R1が炭素数2〜16の脂肪族ジアシル基の化合物である。
【0038】
(f)で示される化合物においてとくに好適なものは、式(7)において、n=1で、R11、R12、R13が共に式(8)で示されるものであって、式(8)におけるm=0、R14が−NR15−で示されるものであり、式(8)のRが炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数1〜4のアルキル基で置換されていてもよい炭素数5〜12のシクロアルキル基であり、R15が、水素、炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数5〜8のシクロアルキル基である化合物である。
【0039】
さらに(g)で示される化合物の好適例として、一般式(11)
【化19】
【0040】
一般式(12)
【化20】
【0041】
(式中、R20はアルキル基)
一般式(13)
【化21】
(式中、R21はエチレン重合単位又はスチレン重合単位)などを挙げることができる。
【0042】
より具体的には、
(1)1−シクロヘキシルオキシ−4−ステアロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン
(2)コハク酸ビス(1−シクロヘキシルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)
(3)アジピン酸ビス(1−シクロヘキシルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)
(4)セバシン酸ビス(1−シクロヘキシルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)
(5)1−ベンゾイルオキシ−4−(N−n−ブチル−N−ベンゾイルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン
(6)1,4−ジ−(4−ヒドロキシー3,5−ジ−t−ブチルベンゾイルオキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン
(7)n−ブチル−(1−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)カーボネート
(8)α、α’−(ジ−1−エトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イルオキシ)−p−キシレン
(9)1−エトキシ−4−ベンジルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン
(10)1,4−ジベンジルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン
(11)1−(α−メチルベンジルオキシ)−4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン
(12)セバシン酸ビス(1−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)
(13)フタル酸ビス(1−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)
【0043】
(14)セバシン酸ビス(1−ベンジルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)
(15)セバシン酸ビス(1−メトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)
(16)コハク酸ビス(1−メトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)
(17)(1−シクロヘキシルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート
(18)イソフタル酸ビス(1−シクロヘキシルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)
(19)フタル酸ビス(1−シクロヘキシルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)
(20)セバシン酸ビス(1−ヘプチルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)
(21)テレフタル酸ビス(1−(α−メチルベンジルオキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)
(22)イソフタル酸ビス(1−(α−メチルベンジルオキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)
(23)セバシン酸ビス(1−エトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)
(24)セバシン酸ビス(1−クミルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)
(25)セバシン酸ビス(1−オクタデシルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)
(26)セバシン酸ビス[1−(ビシクロ−[4,4,0]−デシル−1−オキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル]
【0044】
(27)セバシン酸ビス(1−オクチルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)
(28)コハク酸ビス(1−オクチルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)
(29)2,2−ジメチルマロン酸ビス(1−n−ブチルカルバモイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)
(30)2,4,4−トリメチルヘキサン−1,6−ジカルバミン酸ビス(4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−イル)
(31)フタル酸ビス(1−n−ブチルカルバモイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)
(32)イソフタル酸ビス(1−n−ブチルカルバモイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)
(33)(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)n−ブチルマロン酸ビス(1−メトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)
(34)(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)n−ブチルマロン酸ビス(1−シクロヘキシルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)
(35)3,15−ジ−α−メチルベンジルオキシ−2,2,4,4,14,14,16,16−オクタメチルー7,11,18,21−テトラオキサ−3,15−ジアザトリスピロ[5,2,2,5,2,2]ヘンエイコサン
(36)3,15−ジ−ジシクロヘキシルオキシ−2,2,4,4,14,14,16,16−オクタメチルー7,11,18,21−テトラオキサ−3,15−ジアザトリスピロ[5,2,2,5,2,2]ヘンエイコサン
(37)ポリ−[6−{(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−イミノ}−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル][2−(1−アセトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジル)−イミノ)−ヘキサメチレン−[4−(1−アセトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジル)−イミノ]
(38)ポリ−[6−{(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−イミノ}−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル][2−(1−アセトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジル)−イミノ)−ヘキサメチレン−[4−(1−シクロヘキシルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジル)−イミノ]などを代表例として例示することができる。
【0045】
(B)成分として使用可能な紫外線吸収剤としては、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−nドデシルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクタデシルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−5−クロロベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノンのようなベンゾフェノン系紫外線吸収剤、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−メチル−5−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3、5−ジメチルフェニル)−5−メトキシベンゾトリアゾール、2−(2−n−オクタデシルオキシ−3、5−ジメチルフェニル)−5−メチルベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−メトキシフェニル)−5−メチルベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−フェニルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−5,6−ジクロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−5−ブトキシカルボニルベンゾトリアゾール、2−(2−アセトキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2Hベンゾトリアゾールなどのベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、2−[4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル]−5−(オクチルオキシ)フェノール、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−(ヘキシルオキシ)フェノールなどのトリアジン系紫外線吸収剤などを挙げることができる。
【0046】
光安定剤及び/又は紫外線吸収剤(B)は、フイルム層を構成する熱可塑性樹脂中、0.01〜5重量%、好ましくは0.05〜2重量%、さらに好ましくは0.1〜1重量%の割合で配合される。
【0047】
本発明において使用される防曇剤(C)としては、例えば、アルキルジエタノールアミン、アルキルジエタノールアミンモノ脂肪酸エステル、アルキルジエタノールアミド、多価アルコール脂肪酸エステルポリオキシアルキレンエーテル、高級アルコール硫酸エステルアルカリ金属塩、アルキルアリールスルホネート、四級アンモニウム塩などを挙げることができる。これらは2種以上混合して使用することができる。例えばアルキルジエタノールアミンとアルキルジエタノールアミンモノ脂肪酸エステルの重量比で5/95〜50/50、好ましくは10/90〜30/70の混合物、あるいはアルキルジエタノールアミドと多価アルコール脂肪酸エステルの重量比で5/95〜50/50、好ましくは5/95〜25/75の混合物などを挙げることができる。
【0048】
上記アルキルジエタノールアミンのアルキル基(アルケニル基を含む意で用いられる)としては、炭素数が8〜22程度のもの、とくに12〜18程度のものが好ましい。具体的には、ラウリルジエタノールアミン、ミリスチルジエタノールアミン、パルミチルジエタノールアミン、ステアリルジエタノールアミン、オレイルジエタノールアミン、あるいはこれらの混合物などを例示することができる。これらの中ではとくにオレイルジエタノールアミンあるいはオレイルジエタノールアミンを50重量%以上含有するアルキルジエタノールアミン混合物を使用するのが最も好ましい。
【0049】
上記アルキルジエタノールアミンモノ脂肪酸エステルのアルキル基(アルケニル基を含む)としては、炭素数が8〜22程度、好ましくは12〜18のものであって、脂肪酸エステルにおける脂肪酸成分としては、炭素数8〜22程度、好ましくは12〜22程度の飽和又は不飽和の脂肪酸が好ましい。具体的にはラウリルジエタノールアミンモノステアリン酸エステル、ミリスチルジエタノールアミンモノオレイン酸エステル、パルミリルジエタノールアミンモノステアリン酸エステル、ステアリルジエタノールアミンモノパルミチン酸エステル、ステアリルジエタノールアミンモノステアリン酸エステル、オレイルジエタノールアミンモノパルミチン酸エステル、オレイルジエタノールアミンモノステアリン酸エステル、あるいはこれらの混合物などを例示することができる。
【0050】
上記アルキルジエタノールアミドのアルキル基としては炭素数8〜22程度、とくに炭素数10〜16程度のものが好ましい。具体的には、ラウリルジエタノールアミド、ミリスチルジエタノ−ルアミド、パルミチルジエタノールアミド、ステアリルジエタノールアミド、オレイルジエタノールアミド、あるいはこれらの混合物などを例示することができる。
【0051】
また多価アルコール脂肪酸エステルにおける多価アルコール成分としては、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、ソルビトール、ソルビタンなどの1種又は2種以上から選ばれる。また脂肪酸エステルにおける脂肪酸成分としては炭素数8〜22程度、好ましくは炭素数12〜18程度の飽和又は不飽和の脂肪酸、例えばミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、あるいはこれらの混合物などが好ましい。これらの中ではとくにソルビタンエステルの使用が好ましい。ソルビタンエステルは、トールタイプ、バイドタイプ、タンタイプの異性体の混合体であって、通常トールタイプの含有率は10〜15重量%であるが、とりわけソルビトール含有量を20〜60重量%、とくに30〜50重量%に高めたソルビタンエステルを使用するのが好ましい。
【0052】
このような防曇剤(C)としては、フイルム層を構成する熱可塑性樹脂中に0.1〜5重量%、好ましくは0.5〜3重量%の割合で配合するのが効果的である。
【0053】
上記(A)、(B)、(C)を配合した熱可塑性樹脂フイルム層には、必要に応じ種々の他の添加剤を配合することができる。このような添加剤として例えば、酸化防止剤、防霧剤、融着防止剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤、分散向上剤、上記以外の保温剤、防黴剤、防藻剤などを例示することができる。
【0054】
防霧剤として具体的には、パーフルオロアルキル基又はパーフルオロアルケニル基を有するフッ素系界面活性剤を好適例として挙げることができる。これらは陰イオン型、陽イオン型、両性型、非イオン型のいずれのものであってもよい。防霧剤の好適な配合量は、熱可塑性樹脂中、0.01〜1重量%、とくに0.02〜0.5重量%の範囲である。
【0055】
酸化防止剤としては具体的には、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、2−t−ブチル−4−メトキシフェノール、3−t−ブチル−4−メトキシフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス[6−(1−メチルシクロヘキシル)−p−クレゾール]、ビス[3,3−ビス(4−ヒドロキシ−3−t−ブチルフェニル)ブチリックアシッド]グリコールエステル、4,4’−ブチリデンビス(6−t−ブチル−m−クレゾール)、2,2’−エチリデンビス(4−sec−ブチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−エチリデンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2,4,6−トリメチルベンゼン、2,6−ジフェニル−4−オクタデシロキシフェノール、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、n−オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、4,4’−チオビス(6−t−ブチル−m−クレゾール)、トコフェロール、3,9−ビス[1,1−ジメチル−2−[β−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルチオ)−1,3,5−トリアジンなどのヒンダードフェノール系酸化防止剤を好適例として挙げることができる。
【0056】
上記複合無機化合物(A)以外の保温剤の例としては、一般式
Mg(1−x)Alx(OH)2Xx/n・mH2O
(但し、式中、Xはn価のアニオンである。また0<x<0.5、 0≦n≦2、 0≦mである)で示されるハイドロタルサイト化合物を挙げることができる。上記式中Xとしては、たとえばCl−、Br−、I−、NO2 −、ClO4 −、SO4 2−、CO3 2−、HPO4 2−、HBO3 2−、PO4 3−、Fe(CN)6 3−、Fe(CN)4 4−、CH3COO−、C6H4(OH)COO−、(OCOCOO)2−、(OCOC6H4COO)2−などの1種又は2種以上を例示することができる。
【0057】
上記酸化防止剤の効果的な配合量は、前記フィルム層を形成する熱可塑性樹脂中、0.01〜5.0重量%程度、好ましくは0.1〜3.0重量%程度である。また上記他の保温剤の効果的な配合量は、0.1〜20重量%、とくに0.2〜10重量%の範囲である。
【0058】
上記本発明の農業用フイルムは、単層でも2層以上の積層体でもよく、その場合、上記(A)、(B)、(C)を所定量含む熱可塑性樹脂フイルム層が少なくとも1層含まれていればよい。すなわち積層農業用フイルムにおいては、(A)、(B)、(C)を所定量含む熱可塑性樹脂フイルム層が複数層形成された積層フイルム、(A)、(B)、(C)を所定量含む熱可塑性樹脂フイルム層が1層又は複数層と他の熱可塑性フイルム層が1層又は複数層とからなる積層フイルムであることができる。(A)、(B)、(C)を所定量含む熱可塑性樹脂フイルム層が複数層有する積層フイルムにおいては、それらは組成や基材熱可塑性樹脂が同一あるいは異なるものであってもよい。また他の熱可塑性樹脂フイルム層の基材熱可塑性樹脂としては(A)、(B)、(C)を所定量含む熱可塑性樹脂フイルム層を形成する熱可塑性樹脂として例示したものを使用することができる。このような他の熱可塑性樹脂フイルム層には、(A)、(B)、(C)から選ばれる添加剤が配合されていてもよく、また他の添加剤として例示したようなものが配合されていてもよい。とくに積層農業用フイルムの場合においては、展張時の初期防曇における白化防止、防曇持続性及び初期防霧性を高めるために、(A)、(B)、(C)を所定量含む熱可塑性樹脂フイルム層を内層とするのが好ましい。
【0059】
本発明の単層又は多層の農業用フイルムにおいては、総厚みが10〜300μm、とくに30〜200μmとなるようにするのが好ましい。また多層の場合には、2層又は3層とするのが好ましく、各層の厚みが10〜150μm、とくに20〜100μm程度とするのが好ましい。多層フイルムにおいてはまた、基材として外層をポリエチレンとし、中間層及び内層をエチレン・酢酸ビニル共重合体として使用する態様が好ましい。とくに外層のポリエチレンが密度900〜930kg/m3、メルトフローレート0.5〜5.0g/10分の高圧法ポリエチレン又は直鎖低密度ポリエチレンであり、中間層がある場合はそのエチレン・酢酸ビニル共重合体が、酢酸ビニル含量が10〜20重量%、メルトフローレートが0.5〜5.0g/10分の共重合体であり、内層のエチレン・酢酸ビニル共重合体が、酢酸ビニル含量が3〜10重量%、メルトフローレートが0.5〜5.0g/10分の共重合体であることが好ましい。このような構成にすることにより、耐擦れ性、透明性、防曇性、防霧性、保温性等に優れた農業用フイルムを容易に得ることができる。このような好適態様においては、上述のように内層を、(A)、(B)、(C)を所定量配合した本発明の必須フイルム層とするのが好ましく、外層は防曇剤(C)を除いたその他の熱可塑性樹脂層とするのが実用上好ましい。
【0060】
本発明の農業用フイルムは、基材となる熱可塑性樹脂に複合無機化合物(A)、光安定剤及び/又は紫外線吸収剤(B)、防曇剤(C)及び必要に応じ配合されるその他の添加剤を所定量秤量し、リボンブレンダー、バンバリーミキサー、スーパーミキサー、押出機など公知の混合機を用いて樹脂組成物を製造し、これをインフレーション加工、カレンダー加工、Tダイ加工などによりフイルム化することによって製造することができる。添加剤の配合に当たっては、勿論マスターバッチを使用することができる。多層フイルム類の場合は、共押出によるのが最も効率的である。
【0061】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。尚、実施例等用いた熱可塑性樹脂、添加剤及び実施例等で得られた農業用フイルムの物性評価方法は以下の通りである。
【0062】
[熱可塑性樹脂]
(1)EVA−1:エチレン・酢酸ビニル共重合体、商品名:エバフレックスV96117(三井・デュポンポリケミカル社製)、酢酸ビニル含量5重量%、メルトフローレート1.0g/10分
(2)EVA−2:エチレン・酢酸ビニル共重合体、商品名:エバフレックスV5961(三井・デュポンポリケミカル社製)、酢酸ビニル含量9.0重量%、メルトフローレート1.6g/10分
(3)EVA−3:エチレン・酢酸ビニル共重合体、商品名:エバフレックスP1403(三井・デュポンポリケミカル社製)、酢酸ビニル含量14.5重量%、メルトフローレート1.3g/10分
(4)LDPE:高圧法低密度ポリエチレン(商品名:ミラソンNEO23H(三井化学社製)、密度921kg/m3、メルトフローレート3.3g/10分)
【0063】
[添加剤]
(1)複合無機化合物−1:商品名:フジレインD(富士化学工業社製)、炭酸リチウム、硫酸リチウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムの複塩、水素イオン濃度:7、平均粒子径:0.95μm
尚、本発明において水素イオン指数はJIS Z 8802に準じて測定し、平均粒子径はレーザー回折法(コールター社製LS230)によって測定した。
(2)複合無機化合物−2:商品名:MICLAY−ASi(水沢化学社製)、カリウム及びナトリウムアルミノ珪酸塩、水素イオン濃度:7.1、平均粒子径:0.53μm、屈折率:1.49、比表面積:10m2/g)
(3)保温剤−1:ハイドロタルサイト、商品名:DHT−4H、協和化学社製、水素イオン濃度:9、平均粒子径:0.40μm、屈折率:1.51、比表面積:12m2/g)
(4)光安定剤−1:[ポリ[[6−(1,1,3,3−テトラメチル)イミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル][(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン][(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]]](商品名:キマソーブ944LD、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)
(5)紫外線吸収剤:2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン(商品名:セイカライザーE、大阪精化工業社製)
(6)防曇剤−1:アルキルジエタノールアミン(アルキル基がオレイル基とパルミチル基が7/3(モル比)のもの)とアルキルジエタノールアミンモノ脂肪酸エステル(アルキル基がステアリル基で、脂肪酸がステアリン酸とパルミチン酸が7/3(モル比)のもの)の20/80(重量比)の混合物
(7)防曇剤−2:ジグリセリンとソルビタンの縮合物のステアリン酸エステル26重量部、ソルビタンセスキステアレートの3モルエチレンオキサイド付加物26重量部及びソルビタンモノステアリン酸エステル48重量部の混合物
(8)防霧剤:パーフルオロアルキル基含有オリゴマー(商品名:S−393、セイミケミカル社製)
【0064】
[物性評価方法]
(1)低温時の防曇性
25℃の水を容器容量の2/3まで入れた保温容器(直径15cm、高さ17cm)の上部を試料フイルムで密封し、−10℃の冷風循環式低温室に静置し、20時間後室温に戻し4時間静置した。このサイクルを7回繰返した。
完全に透明で曇りの発生のない場合を5とし、結露した水滴によってフイルムが完全に曇った場合を1とし、5段階で評価した。
【0065】
(2)防曇持続性
30℃に保った恒温水槽上に、水平面から5°の傾きをもって試料フイルムを展張し、試料フイルム内面に対する水の凝縮状況を時間の経過とともに観察し、低温時の防曇性と同様に5段階で評価した。
【0066】
(3)初期防霧性
(イ)8cm×7.5cm×16cmの木枠を作成し、前面及び後面にPETシートを貼るとともに、試料フイルムを両側面及び天井面の3面に貼り、下面はオープンにしておく。
(ロ)この装置を50℃の水浴上に10分間載せ、内面に水を充分付着させる。
(ハ)別に上記装置が丁度入る大きさの透明プラスチック箱を用意し、約35℃の温水を深さ1cmmになるように入れる。
(ニ)そこに(ロ)で水を付着させた装置を入れ、天井面に氷水の入ったポリ袋を載せる。
(ホ)10分後、装置を水浴から出し、水の入っていない同じ透明プラスチック箱に入れる。
(へ)さらに10分後、PETシート越しに天井面から発生して流下する霧を観察する。
微妙な差については、火の付いた線香を3秒間入れ、5分後の霧を観察する。
霧の程度を次の3段階で評価した。
3……僅かに発生
2……やや濃く発生
1……全体に濃く発生
【0067】
(4)保温性
赤外線(波長5〜25μm領域)吸収率を測定した。
【0068】
[実施例1]
3層インフレダイスを装備した多層インフレーションフイルム成形装置を使用し、ダイスの外層には外層用押出機を通じて、LDPEを99.32重量%、保温剤−1を0.5重量%、光安定剤−1を0.1重量%及び紫外線吸収剤を0.08重量%の割合で予め混練して得たペレットを溶融ゾーン170℃の条件で供給した。
【0069】
中間層には中間層用押出機を通じて、EVA−3を97.25重量%、保温剤−1を1.5重量%、光安定剤−1を0.2重量%、紫外線吸収剤を0.05重量%及び防曇剤−2を1.0重量%の割合で予め混練して得たペレットを溶融ゾーン170℃の条件で供給した。
【0070】
内層には内層用押出機を通じて、EVA−1を95.70重量%、複合無機化合物−1を2.0重量%、光安定剤ー1を0.2重量%、紫外線吸収剤を0.05重量%、防曇剤−1を2.0重量%及び防霧剤を0.05重量%の割合で予め混練して得たペレットを溶融ゾーン170℃の条件で供給した。
【0071】
各層に供給した樹脂組成物は、180℃に予熱された前記ダイスの内部で貼合し、各層の厚みが外層20μm、中間層20μm、内層60μmで構成される3層積層構造の透明なフイルムを得た。このフイルムにつき、物性評価を行った。結果を表1に示す。
【0072】
[実施例2]
実施例1の3層フイルムにおいて、内層のEVA−1をEVA−2に変えた以外は、同様にして3層フイルムを製造した。このフイルムにつき、実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【0073】
[実施例3]
実施例1の3層フイルムにおいて、内層に複合無機化合物−1の代りに複合無機化合物−2を配合した以外は、同様にして3層フイルムを製造した。このフイルムにつき、実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【0074】
[実施例4]
実施例2の3層フイルムにおいて、内層に複合無機化合物−1の代りに複合無機化合物−2を配合した以外は、同様にして3層フイルムを製造した。このフイルムにつき、実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【0075】
[実施例5]
実施例1の3層フイルムにおいて、内層に防曇剤−1の代りに防曇剤−2を配合した以外は、同様にして3層フイルムを製造した。このフイルムにつき、実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【0076】
【表1】
【0077】
[実施例6]
実施例1の3層フイルムにおいて、内層に配合した複合無機化合物−1を1.0重量%にするともに複合無機化合物−2を1.0重量%配合した以外は、同様にして3層フイルムを製造した。このフイルムにつき、実施例1と同様の評価を行った。結果を表2に示す。
【0078】
[実施例7]
実施例1の3層フイルムにおいて、中間層に配合した保温剤−1を0.5重量%とするとともに、複合無機化合物−2を1.0重量%配合した以外は、同様にして3層フイルムを製造した。このフイルムにつき、実施例1と同様の評価を行った。結果を表2に示す。
【0079】
[比較例1]
実施例1の3層フイルムにおいて、内層に配合した複合無機化合物−1を保温剤−1に変えた以外は、同様にして3層フイルムを製造した。このフイルムにつき、実施例1と同様の評価を行った。結果を表2に示す。
【0080】
[比較例2]
比較例1の3層フイルムにおいて、内層に配合した防曇剤−1を防曇剤−2に変えた以外は、同様にして3層フイルムを製造した。このフイルムにつき、実施例1と同様の評価を行った。結果を表2に示す。
【0081】
[比較例3]
比較例1の3層フイルムにおいて、内層に用いたEVA−1をEVA−2に変えた以外は、同様にして3層フイルムを製造した。このフイルムにつき、実施例1と同様の評価を行った。結果を表2に示す。
【0082】
【表2】
【0083】
【発明の効果】
本発明によれば、初期防曇性、防曇持続性に優れ、かつ保温性にも優れた農業用フイルムを提供することができる。
Claims (7)
- 熱可塑性樹脂に、Si、Li、K及びAlから選ばれる少なくとも2種以上の金属を有し、水素イオン指数が6〜8、平均粒子径が0.1〜2.0μmである複合無機化合物(A)を0.1〜20重量%、光安定剤及び/又は紫外線吸収剤(B)を0.01〜5重量%及び防曇剤(C)を0.1〜5重量%の割合で配合した熱可塑性樹脂組成物からなるフイルム層を含む農業用フイルム。
- 熱可塑性樹脂が、ポリオレフィン系樹脂である請求項1記載の農業用フイルム。
- ポリオレフィン系樹脂が、エチレンの重合体又は共重合体である請求項2記載の農業用フイルム。
- エチレンの共重合体が、酢酸ビニル含量が3〜20重量%、190度、2160g荷重におけるメルトフローレートが0.5〜10g/10分のエチレン・酢酸ビニル共重合体である請求項3記載の農業用フイルム。
- 上記フイルム層として、さらに酸化防止剤、防霧剤、融着防止剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤、保温剤及び分散向上剤から選ばれる少なくとも1種の添加剤を配合した熱可塑性樹脂組成物を使用することを特徴とする請求項1〜4記載の農業用フイルム。
- 熱可塑性樹脂を基材とする多層構成からなり、その少なくとも1層として上記フイルム層を使用することを特徴とする請求項1〜5記載の農業用フイルム。
- 内層として、上記フイルム層を使用することを特徴とする請求項6記載の農業用フイルム。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
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