JP2004027122A - オーバーコート材およびオーバーコート層を有するカード - Google Patents
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Abstract
【解決手段】カード面へオーバーコート層を形成するオーバーコート材を水性エマルジョン系塗料、特に、紫外線硬化型ウレタンアクリレートを主成分とし、さらに水性熱可塑性ウレタン樹脂を必須成分として含む水性エマルジョン系塗料とした。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、主に、磁気カード、ICカード、リライトカードなどのカード面へのオーバーコート層を形成するオーバーコート材に関し、さらに詳しくは、水性エマルジョン系塗料からなるオーバーコート材に関する。また、オーバーコート材から形成されたオーバーコート層を有するカードに関する。
【0002】
【従来の技術】
最近、磁気カード、ICカード、リライトカードなどのカード類は、その利便性により、身分証明や出納処理など幅広い分野で利用されている。そして、これらのカード類は一般的に、センターコア材と呼ばれる不透明塩化ビニル樹脂やポリエチレンテレフタレート樹脂などからなる熱可塑性樹脂に透明塩化ビニル樹脂などからなるオーバーシート材を積層してなる定型サイズのカード基材から構成されており、通常、その外表面には所望の印刷などを被覆保護するためのオーバーコート層が設けられている。
【0003】
例えば、図1に例示した磁気カード1の断面構造は、センターコア材とオーバーシート材を積層(図示せず)してなるカード基材2面に磁気記録層3が定着され、さらに、このカード基材2面には接着剤成分からなるアンカー層4を介してアルミ粉含有の銀色インクからなる隠蔽層5が設けられている。そして、この隠蔽層5面には所望の印刷層6が施されると共に、その外表面には当該印刷層6を被覆保護するためのオーバーコート層7が積層されてなる。
【0004】
このように、オーバーコート層はカード面に施された印刷層などを被覆保護するために不可欠であると共に、最近では、このオーバーコート層に熱転写剤により、印刷や顔写真やサインパネルなどを施す傾向がある。したがって、オーバーコート層には熱転写剤の受容性のあるものが適当とされ、このような機能を有するオーバーコート層を形成するオーバーコート材として、従来ではウレタン樹脂や酢酸ビニル塩化ビニル共重合体などの樹脂成分をトルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどの有機溶剤に溶かしてなる溶剤系塗料が主に用いられてきた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、樹脂成分を有機溶剤に溶かしてなる溶剤系塗料を用いた場合には、カード面への塗料の塗布工程において、有機溶剤の高い揮発性によって塗料の重量が急速に変化するため、塗布量を調整するのが難しく塗布適性に不都合が生じる。また、揮発した有機溶剤が人体に悪影響を及ぼしたり、あるいは引火し易いために、塗布工程や、特に乾燥工程において吸引設備や防曝設備などが必要とされる。
【0006】
そこで、本発明者等は、先に紫外線硬化型ウレタンアクリレートを主成分とする水性エマルジョン系塗料からなるオーバーコート材を提案した(特願2002−053878)。このオーバーコート材は、塗布適性に優れ、揮発した有機溶剤により人体が悪影響を受けたり、引火を防ぐための吸引設備や防曝設備などを必要としない利点があるが、このオーバーコート材を用いて形成されたオーバーコート層は印刷や顔写真やサインパネルやホログラムなどを施す場合に、熱転写剤やホットスタンプなどに対する受容性に未だ改良の余地があった。
本発明の第1の目的は、オーバーコート層の熱転写剤やホットスタンプなどに対する受容性を改善して、印刷や顔写真やサインパネルやホログラムなどを強固に接着できるオーバーコート層を形成できる水性エマルジョン系塗料からなるオーバーコート材を提供することであり、
本発明の第2の目的は、このオーバーコート材から形成されたオーバーコート層を有する磁気カード、ICカード、リライトカードなどのカードを提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
かかる課題を解決するため、本発明者らは、カード面へのオーバーコート層の形成において、オーバーコート材として、従来の樹脂成分を有機溶剤に溶解してなる溶剤系塗料ではなく、水性エマルジョン系塗料、特に、紫外線硬化型ウレタンアクリレートを主成分とし、さらに特定の水性熱可塑性樹脂を必須成分として含む水性エマルジョン系塗料を用いることにより、上記課題を好適に達成できることを見いだし、本発明を想到した。
【0008】
すなわち、本発明の請求項1のオーバーコート材は、カード面を被覆保護するためのオーバーコート層を形成するオーバーコート材であって、紫外線硬化型ウレタンアクリレートを主成分とし、さらに水性熱可塑性ウレタン樹脂を必須成分として含む水性エマルジョン系塗料からなることを特徴とする。
【0009】
本発明の請求項2のオーバーコート材は、請求項1記載のオーバーコート材において、さらに酢酸ビニル塩化ビニル共重合体および高級アルコールのリン酸エステルを含有してなる水性エマルジョン系塗料からなることを特徴とする。
【0010】
本発明の請求項3のオーバーコート材は、請求項1または請求項2記載のオーバーコート材において、オーバーコート材が微細粒子を含有してなることを特徴とする。
【0011】
本発明の請求項4は、カード面に請求項1〜3のいずれかに記載のオーバーコート材から形成されたオーバーコート層を有することを特徴とするカードに関するものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の態様を詳細に説明する。
本発明のオーバーコート材である水性エマルジョンの主成分は紫外線硬化型ウレタンアクリレートであり、さらに水性熱可塑性ウレタン樹脂を必須成分として含む。
本発明において用いる紫外線硬化型ウレタンアクリレートは、芳香族系、脂肪族系、脂環式化合物、およびこれらの2つ以上の混合物から選択されるものである。
ウレタン結合を形成する芳香族系ジイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)およびキシリレンジイソシアネート(XDI)などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。TDI系芳香族ウレタンアクリレートを主成分とする水性エマルジョンなどが市販されている。
【0013】
一方、ウレタン結合を形成する脂肪族および脂環式ジイソシアネート成分として代表的なものは、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)(水添MDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMHMDI)などであるがこれらに限定されるものではない。紫外線硬化型脂肪族ウレタンアクリレートの市販品の具体例としては、例えばダイセルUCB社製のUcecoat DW900やBASF社製のLaromer LR8949などがある。
【0014】
本発明におけるウレタンアクリレートは、オリゴマーないしモノマー状態のウレタンアクリレートが水中に分散されてなるものである。
脂肪族ウレタンアクリレートは芳香族ウレタンアクリレートと比較すると、前者の方が後者より、オーバーコート材のコーティング適性やオーバーコート層の硬化状態の点で好ましいことが見出されている。また、前者の方が後者よりも透明性に優れている。
【0015】
ウレタンアクリレートの紫外線による硬化を行わせるために、光重合開始剤を用いる。光重合開始剤としては通常使用されているものがいずれも好ましく使用できる。代表的なものは分子内結合開放型および分子間水素引抜き型ある。分子内結合開放型は分子開裂によりラジカルを発生するタイプであって、例として、ベンゾイル・アルキル・エーテル、ベンジルジメチルケタール、ジエトキシアセトフェノン、アシロキシムエステル、塩素化アセトフェノン、ヒドロキシアセトフェノンなどが挙げられる。分子間水素引抜き型は分子間の水素引抜きでラジカルを発生するタイプであって、例として、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ジベンゾスベロン、2−エチルアンスラキノン、イソブチルチオキサンソンなどが挙げられる。光重合開始剤をあらかじめ水性エマルジョン塗料に配合しておくことも可能であるが、取扱いに注意しないと、ポットライフが短くなる、作業時の環境によって硬化程度が左右されやすい、その結果品質のばらつきが生じる、などの欠点があるので、カードへ塗布する時期にできるだけ近づけて配合するのが好ましい。
【0016】
光重合開始剤と併用するものとして光重合開始助剤または増感剤があり、アミン類、スルホン類、ホスフィン類が使用できる。
【0017】
本発明において紫外線硬化型ウレタンアクリレートとともに必須成分として用いる水性熱可塑性ウレタン樹脂は、オーバーコート層の熱転写剤やホットスタンプなどに対する受容性を改善でき、印刷や顔写真やサインパネルやホログラムなどを強固に接着するために使用するものである。
【0018】
本発明で用いる水性熱可塑性ウレタン樹脂は、ポリウレタンエマルジョン、水溶性ポリウレタン、水分散性ポリウレタン、ポリウレタンディスパージョン、ポリウレタンマイクロエマルジョンなどを含むものであり、水媒体中にウレタン樹脂が可溶化ないし分散安定化されて存在するものであって、従来公知の方法で製造することができるものである。
【0019】
本発明で用いる水性熱可塑性ウレタン樹脂は、イソシアネート化合物とヒドロキシル基、アミノ基などの活性水素を有する化合物との反応生成物であるが、通常は、イソシアネート化合物をポリエステル、ポリエーテルなどのポリオール化合物と反応させることによって得られ、さらに必要によりこれをジオール類、ジアミン類などの鎖延長剤と反応させることによって高分子量化することにより製造される。
【0020】
かかるイソシアネート化合物の例としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,3,6 −ヘキサメチレントリイソシアネート、ジアニシジンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、4,4’ −メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、4,4’ −ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’ −ジイソシアネート−3,3 −ジメチルビフェニル、トリフェニルメタントリイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどや、これらの誘導体であるポリイソシアネートプレポリマーなどを挙げることができる。
【0021】
また活性水素を含有する化合物として一般的には、ヒドロキシル基を含有するポリエーテル、ポリエステルなどのいわゆるポリオール化合物が用いられる。
これらのうち、ポリエーテルの例としては、ポリ(オキシエチレン)グリコール、ポリ(オキシプロピレン)グリコール、ポリ(オキシエチレン)・ポリ(オキシプロピレン)グリコール、ポリ(オキシブチレン)グリコール、などやそれらの誘導体があげられる。
【0022】
また、ポリエステルの例としては多価アルコール、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ジエチレングリコール、1,6 ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリット、ソルビタン、N−メチルジエタノールアミン、等と、多価カルボン酸、例えばコハク酸、アジピン酸、フタル酸、テレフタル酸、マレイン酸、グルタル酸、セバチン酸、テトラヒドロフタル酸、二量化リノレイン酸などの縮合反応生成物や、上記ポリエステルにアルキレンオキサイドを付加重合させて得られるポリエステル誘導体などを挙げることができる。
【0023】
その他にもポリエステルアミド類、ポリチオエーテル類、ポリカーボネート類、アクリルポリオール類、ヒドロキシル基含有ポリブタジエンなども活性水素基を有する化合物としてイソシアネート化合物との反応に用いることができる。
また、鎖延長剤としてはエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、1,4 −ブチレングリコール、トリメチロールプロパン、ハドロキノンジヒドロキシエチルエーテル、水、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、イソホロソジアミン、ピペラジン、アミノエチルピペラジン、2,5 −ジメチルピペラジンなどがあげられる。
【0024】
上記の水性熱可塑性ウレタン樹脂は公知の種々の方法により、水溶性あるいは水分散性とすることができる。
本発明で用いる水性熱可塑性ウレタン樹脂(固形分)の配合量は特に限定されるものではないが、好ましくはオーバーコート材(固形分)全体に対して2〜45質量%、さらに好ましくは15〜30質量%配合することが望ましい。水性熱可塑性ウレタン樹脂の配合量が2質量%未満では、オーバーコート層の熱転写剤やホットスタンプなどに対する受容性を改善できない恐れがあり、45質量%を超えるとオーバーコート層を有するカードの耐熱性、耐摩耗性、エンボス適性、ブロッキング性などが悪化する恐れがあるので好ましくない。
【0025】
そして、本発明のオーバーコート材にさらに酢酸ビニル塩化ビニル共重合体を含有させることが、望ましくは造膜温度(MFT、℃)が低い、望ましくはMFTが約40〜60℃程度の酢酸ビニル塩化ビニル共重合体を含有させることが好ましい。さらに酢酸ビニル塩化ビニル共重合体を含有させることで、オーバーコート層の熱転写剤やホットスタンプなどに対する受容性をさらに改善でき、オーバーコート層における、金色、銀色、特に青色、黒色の熱転写剤の受容性がさらに向上されると共にカード外表面の艶・光沢なども向上する。
この酢酸ビニル塩化ビニル共重合体(固形分)の配合量は、特に限定されるものではないが、好ましくはオーバーコート材(固形分)全体に対して2〜30質量%、さらに好ましくは10〜20質量%配合することが望ましい。2質量%未満ではオーバーコート層の熱転写剤やホットスタンプなどに対する受容性を改善できない恐れがあり、30質量%を超えるとオーバーコート層を有するカードの耐熱性、耐摩耗性、エンボス適性、ブロッキング性などが悪化する恐れがあるので好ましくない。
【0026】
また、本発明のオーバーコート材に高級アルコールのリン酸エステルを含有させることが好ましい。高級アルコールのリン酸エステルを含有させることで、その滑剤としての作用により、オーバーコート層を鏡面仕上げに加工する際、鏡面板とオーバーコート層との剥離を円滑にし、もって表面状態を良好に形成できるなど、オーバーコート層をさらに好適に形成できる。
高級アルコールのリン酸エステル(固形分)の配合量は、特に限定されるものではないが、好ましくはオーバーコート材(固形分)全体に対して0.1〜10質量%、さらに好ましくは0.2〜9質量%配合することが望ましい。0.1質量%未満では効果がでない恐れがあり、10質量%を超えるとオーバーコート層がベト付く恐れがあるので好ましくない。
【0027】
さらに、本発明のオーバーコート材に微細粒子を添加することが好ましい。微細粒子を添加することにより、オーバーコート層の筆記性が改善されるので、オーバーコート層の上にサインパネルを形成する場合などに好適であり、無機質および有機質のいずれも使用できる。
微細粒子としては、具体的には、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、スルホ・アルミン酸カルシウム、球状アルミナ、二酸化チタン、各種デンプン、合成ゼオライト、微球状アクリル樹脂、微球状メタクリル樹脂、微球状ポリエチレン、ガラス粉末、シラスバルーン、活性白土などが挙げられる。
これらの微細粒子は、単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。なお、これらの微細粒子は、その平均粒子径が1〜20μm、好ましくは2〜5μmの範囲にあるものが好適である。なお、微細粒子(固形分)のオーバーコート材への添加量は、オーバーコート材(固形分)100質量部に対して、5〜200質量部含有させるのが好ましい。
【0028】
その他、カード面への塗布適性や形成されたオーバーコート層の物理的・化学的適性などを考慮し、本発明のオーバーコート材に、滑剤、増粘剤、レベリング剤、界面活性剤、填料、架橋剤などを適宜添加することが好ましい。
【0029】
オーバーコート材全体における固形分の割合は20〜50質量%、好ましくは30〜40質量%、さらに好ましくは35質量%程度に調製される。ここで質量%とは乾燥固形分の質量%を表すものである。
【0030】
本発明のオーバーコート材を用いてカード面上にオーバーコート層を形成する基本的工程は、水性エマルジョン系塗料を塗布する塗布工程a、水性エマルジョン系塗料から水分を除去する乾燥工程b、塗料層を紫外線照射により硬化させる硬化工程cおよび塗料硬化層を加熱・加圧する成型工程dからなる。
【0031】
【実施例】
以下本発明の内容を実施例および比較例によってさらに具体的に説明するが、本発明は実施例になんら限定されるものではない。
(実施例1)
(本発明のオーバーコート材の調製)
・紫外線硬化型ウレタンアクリレート水性エマルジョン(固形分40質量%)(laromer LR8949/BASF社製)340.3g(水性エマルジョン中の固形分含有量136.1g)
・光重合開始剤6.8g(イルガキュア500/チバスペシャリティー社製)
・酢酸ビニル塩化ビニル共重合体水性エマルジョン(固形分43質量%)(ビニブラン601 (造膜温度50℃)/日信化学工業社製)121.6g(水性エマルジョン中の固形分含有量52.3g)
・水性熱可塑性ウレタン樹脂エマルジョン(固形分45質量%)(ビニブラン950 )/日信化学工業社製)174.4g(水性エマルジョン中の固形分含有量78.5g)[オーバーコート材(固形分)全体に対して25.1質量%]
・高級アルコールのリン酸エステル水溶液(固形分70質量%)(サンスタットNo.6)/三洋化成工業社製)1.6g(水性エマルジョン中の固形分含有量1.1g)
・耐摩耗性改良剤ポリエチレン水性サスペンジョン(固形分35質量%)(パーマリンKUE−5/三洋化成工業社製)73.2g(水性サスペンジョン中の固形分含有量25.6g)
・エポキシ系架橋剤水性エマルジョン(固形分55質量%)(エピレッツ5003W55/ジャパン・エポキシレジン社製)9.8g(水性エマルジョン中の固形分含有量5.4g)
・ウレタン変性ポリエーテル系増粘剤水性エマルジョン(固形分40質量%)(SNシックナー612 /サンノプコ社製)7.1g(水性エマルジョン中の固形分含有量2.8g)
・イソシアネートタイプのビニルラン950の架橋剤(CAT−N、日信化学工業社製)3.9g
・イオン交換水 261.3g
合計 1000g(固形分312.5g)
【0032】
上記の各成分を配合し混合して調製した実施例1のオーバーコート材を用い、以下のようにして図1に示す磁気カード1のオーバーコート層7を形成した。
(オーバーコート材を塗布する塗布工程a)
先ずマイクログラビアコーターをもって、2〜3g/m2 程度の塗布量にて、オーバーコート層の厚みが3mμ程度に形成されるように磁気カード表面上にオーバーコート材を塗布した。
(オーバーコート材から水分を除去する乾燥工程b)
そして、オーバーコート材を塗布された磁気カード1に対して、ランプの管面温度260℃程度の遠赤外線を15秒間照射し、当該塗料から水分を蒸発させて未硬化状態のオーバーコート層を形成した。
(オーバーコート層を紫外線照射により硬化させる硬化工程c)
さらに、上記乾燥工程bにより得たオーバーコート層に対して、紫外線照射装置により350mJ/cm2 の紫外線を照射して、当該オーバーコート層を硬化させた。
(硬化したオーバーコート層を加熱・加圧する成型工程d)
さらに、カード面への多段プレス(ラミプレス)にて140℃下での加圧により、硬化されたオーバーコート層を成型し、カード面に最終的なオーバーコート層7を形成した。なお、上記の塗布工程aおよび乾燥工程bには何らの吸引設備と防曝設備も必要としない。
(オーバーコート層7の上の所定の箇所にサインパネルおよびホログラムを接着する工程)
図2に示すように、このようにして形成されたオーバーコート層7の上の所定の箇所に熱転写箔を用いてサインパネル8を接着し、またオーバーコート層7の上の所定の箇所にホットスタンプによりホログラム9を接着して磁気カード1Aを製造した。サインパネル8およびホログラム9はオーバーコート層7に強固に接着していた。
【0033】
(比較例1)
水性熱可塑性ウレタン樹脂エマルジョンを配合しなかった以外は実施例1と同様にして比較のためのオーバーコート材を調製し、実施例1と同様にして磁気カード1の比較のオーバーコート層7を形成し、図2に示すように、比較のオーバーコート層7の上の所定の箇所に実施例1と同様にしてサインパネル8およびホログラム9を接着した。サインパネル8およびホログラム9は比較のオーバーコート層7に接着していたが、接着強度が実施例1に比較して低かった。
【0034】
【発明の効果】
本発明の請求項1のオーバーコート材は、カード面を被覆保護するためのオーバーコート層を形成するオーバーコート材であって、紫外線硬化型ウレタンアクリレートを主成分とし、さらに水性熱可塑性ウレタン樹脂を必須成分として含む水性エマルジョン系塗料からなるので、樹脂成分を有機溶剤に溶かした溶剤系塗料とは異なり、塗料の揮発性が低く、塗布量の調整が容易でカード面への塗布適性に優れると共に、溶媒が水であるため人体に無害であって引火性もなく、塗布工程や乾燥工程に防曝設備などを必要としない利点がる上、紫外線硬化型ウレタンアクリレート構造を主体とするため、紫外線照射によるアクリルの光重合結合によりオーバーコート層の硬度が高くなり、また、耐摩耗性も向上され、しかもオーバーコート層の熱転写剤やホットスタンプなどに対する受容性が改善され、オーバーコート層の所定の箇所に印刷や顔写真やサインパネルやホログラムなどを強固に接着できるという顕著な効果を奏する。
【0035】
本発明の請求項2のオーバーコート材は、請求項1記載のオーバーコート材において、さらに酢酸ビニル塩化ビニル共重合体および高級アルコールのリン酸エステルを含有してなる水性エマルジョン系塗料からなることを特徴とするものであり、酢酸ビニル塩化ビニル共重合体を含有させることで、オーバーコート層における、金色、銀色、特に青色、黒色の熱転写剤の受容性がさらに向上されると共にカード外表面の艶・光沢なども向上し、また、高級アルコールのリン酸エステルを含有させることで、その滑剤としての作用により、オーバーコート層を鏡面仕上げに加工する際、鏡面板とオーバーコート層との剥離を円滑にし、もって表面状態を良好に形成できるなど、オーバーコート層をさらに好適に形成できるというさらなる顕著な効果を奏する。
【0036】
本発明の請求項3のオーバーコート材は、請求項1または請求項2記載のオーバーコート材において、オーバーコート材が微細粒子を含有してなるので、オーバーコート層の筆記性やラベルを付帯させる場合の接着性を改良するのでサインパネルを形成するのに適するというさらなる顕著な効果を奏する。
【0037】
本発明の請求項4カードは、カード面に請求項1〜3のいずれかに記載のオーバーコート材から形成されたオーバーコート層を有するので、塗工適性やラミプレス性などに優れ、公知のカード製造工程により容易に問題なく製造することができ、耐熱性、耐摩耗性、エンボス特性、耐ブロッキング性などに優れるとともに、オーバーコート層の所定の箇所に印刷や顔写真やサインパネルやホログラムなどを強固に接着した磁気カード、ICカード、リライトカードなどのカードとして広く使用できるという顕著な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】オーバーコート層を有した磁気カードの断面説明図である。
【図2】図1に示した磁気カードのオーバーコート層の所定の箇所にサインパネルおよびホログラムを接着した状態を模式的に示す断面説明図である。
【符号の説明】
1、1A 磁気カード
2 カード基材
3 磁気記録層
4 アンカー層
5 隠蔽層
6 印刷層
7 オーバーコート層
8 サインパネル
9 ホログラム
Claims (4)
- カード面を被覆保護するためのオーバーコート層を形成するオーバーコート材であって、紫外線硬化型ウレタンアクリレートを主成分とし、さらに水性熱可塑性ウレタン樹脂を必須成分として含む水性エマルジョン系塗料からなることを特徴とするオーバーコート材。
- さらに酢酸ビニル塩化ビニル共重合体および高級アルコールのリン酸エステルを含有してなる水性エマルジョン系塗料からなることを特徴とする請求項1記載のオーバーコート材。
- オーバーコート材が微細粒子を含有してなることを特徴とする請求項1または請求項2記載のオーバーコート材。
- カード面に請求項1〜3のいずれかに記載のオーバーコート材から形成されたオーバーコート層を有することを特徴とするカード。
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