JP2004006216A - セラミックヒータおよびその試験方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】セラミックシートをセラミック芯材の周囲に周回密着する際に、セラミックシートがセラミック芯材から剥がれて両者の界面に隙間が発生し、絶縁不良が発生するという問題があった。
【解決手段】前記セラミックシートの密着部に、幅が0.2〜2.0mmの溝部を形成するとともに、前記溝部の両側面のなす角度を40°以上とする。
【選択図】図2
【解決手段】前記セラミックシートの密着部に、幅が0.2〜2.0mmの溝部を形成するとともに、前記溝部の両側面のなす角度を40°以上とする。
【選択図】図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車用の空燃比検知センサ加熱用ヒータや気化器用ヒータ、半田ごて用ヒータなどに使用するセラミックヒータに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、アルミナを主成分とするセラミックス中に、W、Re、Mo等の高融点金属からなる発熱抵抗体を埋設してなるアルミナセラミックヒータが、一般的に用いられている。
【0003】
例えば、円柱状のセラミックヒータを製造する場合は、特許文献1や特許文献2に示されているように、図1のセラミック芯材2とセラミックシート3を用意し、セラミックシート3の一方面にW、Re、Mo等の高融点金属のペーストを印刷して発熱抵抗体4と電極引出部5を形成した後、これらを形成した面が内側となるようにセラミックシート3を上記セラミック芯材2の周囲に巻付け、全体を焼成一体化することによりセラミックヒータ1としていた。
【0004】
セラミックシート3上には、発熱抵抗体4に電極引出部5が接続され、該電極引出部5の末端にスルーホールが形成され裏面の電極パッド8と該電極引出部5がスルーホールで接続されている。スルーホールには、必要に応じて導体ペーストが注入される。
【0005】
そして、セラミックヒータ1は、側面に露出した電極パッド8にリード部材7をロウ材によりロウ付けして接合し、このリード部材7から通電することにより発熱抵抗体4が発熱するようになっていた。
【特許文献1】
特開2000−123959号公報
【特許文献2】
特開2000−113965号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、セラミックシート3をセラミック芯材2の周囲に周回密着する際に、セラミックシート3がセラミック芯材2から剥がれて両者の界面に隙間が発生し、絶縁不良が発生するものがあった。特に、セラミックシート3の硬さが硬い場合に、セラミック芯材2とセラミックシート3の間に隙間が発生しやすいという問題があった。このような不良は通常は発生しないが、セラミックシート3をセラミック芯材に密着する密着力が不充分な場合に突発的に発生する。例えばこのような不良が酸素センサ加熱用のセラミックヒータにおいて発生すると、センサ始動時の立ち上がり特性に悪影響を及ぼすことになる。
【0007】
このような密着不良は、初期はあまり目立たなくとも、前記隙間を介した酸素の拡散により使用中に発熱抵抗体が酸化し、セラミックヒータの耐久性が低下するという問題があった。
【0008】
また、このような密着不良の発生は、セラミックシート3をセラミック芯材2に密着した溝部に発生するので、非破壊の外観検査で確実に識別することは難しいという課題があった。
【0009】
本発明の目的は、未着不良をセラミックシートとセラミック芯材との密着不良を完全に防止するとともに、耐久性を向上させることができるセラミックヒータを提供することにある。
【0010】
また、本発明の他の目的は、セラミックシートをセラミック芯材に密着した際、溝部を形成しても、不良品を簡単に見いだすことができ、上述のような耐久性が上がった良品を大量に製造することができるセラミックヒータの試験方法を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明のセラミックヒータは、上述の課題に鑑み、発熱抵抗体を一方の主面に形成してなるセラミックシートを、前記発熱抵抗体が内側になるようにセラミック芯材に周回密着して一体的に焼成してなるセラミックヒータにおいて、前記セラミックシートの両端部の間に、幅が0.2〜2.0mmの溝部を形成するとともに、前記溝部の両側面のなす角度が40°以上であることを特徴とする。
また、本発明のセラミックヒータは、前記セラミックシートとセラミック芯材との間に、セラミックス粉末を分散させた密着液を塗布して密着させたことを特徴とする。
そして、前記密着液が、前記溝部に0.1〜1.0mmの幅ではみ出していることを特徴とする。
さらに、前記溝部の角部に面取りを備えたこと特徴とする。
また、本発明のセラミックヒータは、発熱抵抗体およびこれに接続される電極引出部をセラミック体中に内蔵し、該セラミック体の表面に前記電極引出部と接続された電極パッドを有するセラミックヒータにおいて、上記電極パッド以外のセラミック体を電解質溶液中に浸漬した時に、該電解質溶液中に形成した電極と前記セラミックヒータの電極パッド間の耐電圧が1000V以上であることを特徴とする。
【0012】
一方、セラミックヒータの試験方法は、発熱抵抗体およびこれに接続される電極引出部をセラミック体中に内蔵し、該セラミック体の表面に前記電極引出部と接続された電極パッドを有するセラミックヒータにおいて、セラミックヒータの電極パッド以外のセラミック体を電解質溶液中に浸漬し、該電解質溶液中に形成した電極と、セラミックヒータの電極パッド間に100〜3500Vの電圧を印加して電気絶縁性を確認することを特徴とする。
【0013】
このような改良を実施することにより、セラミック芯材とセラミックシートの間に隙間が生成することを防止し、耐久性良好なセラミックヒータを得ることが出来るようになった。
【0014】
また、本発明の試験方法を利用することにより、セラミック芯材2とセラミックシート3の間の密着不良を容易に検知することができるようになった。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のセラミックヒータの実施の形態を、図1を用いて説明する。図1(a)は、セラミックヒータ1の部分切り欠き斜視図であり、(b)は、そのセラミック体6部分の展開図である。
【0016】
セラミックシート3の表面には、発熱抵抗体4と電極引出部5が形成され、さらに、その裏面側に形成される電極パッド8との間をスルーホール7で接合した構造となっている。こうして準備されたセラミックシート3をセラミック芯材2の表面に、前記発熱抵抗体4が内側になるように密着焼成することによりセラミック体6を形成する。そしてさらに、電極パッド8にリード部材7をロウ材を用いて接合することにより、セラミックヒータ1とする。
【0017】
また、図2は前記セラミック体6の径方向の断面を示す図である。セラミック芯材2の周囲に周回密着したセラミックシート3の端部の間に形成される溝部15の両側面のなす角dは、40°以上となるように形成している。この角度が40°より小さいと、密着後にセラミックシート3の弾性によりセラミックシート3の端部が剥がれてしまう。この剥がれが大きくなると、発熱抵抗体4に達するようになり、セラミックヒータ1の耐久性が劣化するので好ましくない。さらに好ましくは、角度dを60°以上とすることが良い。
【0018】
また、前記溝部15の幅wは、0.2〜2mmとする。幅wは、図2(a)に示すようにセラミック芯材2との接合部におけるセラミックシート3端部の距離を意味する。この幅wが0.2mmより小さくなると、セラミックシート3は弾性を有するのでセラミックシート3を密着する時に、その端部がぶつかり、セラミックシート3の端部に剥がれが発生しやすくなるので好ましくない。また、隙間が2.0mmを越えると、セラミックシート3とセラミック芯材2の焼成収縮差によりセラミックヒータ1の反りの原因となるので好ましくない。
【0019】
なお、幅wは、セラミック芯材2の外周長さと密着するセラミックシート3の幅の差によって決まる。このため、前記隙間が2mmを越えないように、セラミックシート3の幅を管理する。
【0020】
また、溝部15を成すテープの角部に面取り17を施すことも密着性向上に有効である。角部に面取り17を施すことにより、ローラ密着した際のローラの引っ掛かりを防止することができるので、これにより発生する密着不良を防止し、セラミックシート3端部の密着不良を防止することができる。溝部15の両端面全面を面取り17により形成しても構わないし、図2(b)に示すように、角部が二段になっても構わない。
【0021】
セラミックシート3の密着には、セラミックス粉末を分散させた密着液を塗布して密着することが好ましい。セラミック芯材2にセラミックシート3を密着する際は、セラミックシート3もしくはセラミック芯材2の表面を可塑化し融着させる必要があるが、上記のようにセラミックシート3もしくはセラミック芯材2の接着面にセラミックス粉末を分散させた密着液を塗布してこれらを密着することにより、接着面に隙間ができることを防止し、密着の信頼性を向上させることができる。
【0022】
また、密着液の塗布に際し、発熱抵抗体4の表面に直接密着材を塗布すると、密着時に発熱抵抗体4パターンが可塑化し、発熱抵抗体4パターンが短絡したり断線したりする場合があるので、発熱抵抗体4パターンの上には、別のセラミックシート3を密着させるかもしくはコート層を形成して、発熱抵抗体4を保護することが好ましい。
【0023】
また、図2(b)に示すように、密着液のはみ出し16が、溝部15に0.1〜1.0mmの幅hで生成していることが好ましい。セラミックシート3の端面には、セラミック芯材2からセラミックシート3を剥離しようとする応力が集中するので、セラミックシート3の端面に密着液が食み出すようにすることにより端面の密着力を向上させ、セラミックシート3端面の剥離を防止することが可能となる。
【0024】
なお、この場合、外径が2.5〜15mmの円筒状または円柱状のセラミック芯材2にセラミックシート3が形成される。
【0025】
以上のような効果は、セラミックシート3のS−S(応力−伸び)カーブの傾きが大きい、つまり応力に対し変形し難いセラミックシート3を使用した場合に有効である。この場合、0.3mm程度の厚みのセラミックシート3を評価部の幅が13mm、長さが30mmのダンベル型に加工して、破断までのS−Sカーブを室温(20℃±1℃)で測定した場合、その傾きは1〜8N/cm程度となる応力に対して変形し難いものが用いられる。なお、S−Sカーブの傾きは破断時の引張応力を破断時の伸びで除した値である。
【0026】
また、セラミックシート3として、上記のようなセラミックシート3を使用すると、セラミックシート3の取扱時の応力により、発熱抵抗体4が断線したり、セラミックシート3が伸びて発熱抵抗体4の抵抗値がばらつくことも防止する。
【0027】
次に、これまでセラミックシート3の引張試験によるS−Sカーブの傾きが1〜8N/cmと大きい場合に、溝部15の幅w及び溝部15の両側面のなす角度d等を規定して密着性を向上させようとしたが、この幅w及び角度dの規定を行わない場合でも、セラミックシート3の端面の密着力を向上させることができる。即ち、S−Sカーブの傾きが1N/cm未満の場合、即ち、柔らかいセラミックシート3が外部応力により容易に変形するのでセラミック芯材2の周囲に巻き付けるセラミックシート3の内周面がセラミック芯材2に密着すできるとともに、セラミックシート3の外周面がその弾性により伸びた状態で密着することでき、セラミックシート3の端面を剥がそうとする応力が小さくなるので、密着不良が発生し難くなるのである。
【0028】
なお、S−Sカーブの傾きは、破断時の引張応力を破断時の伸びで除した値である。さらに好ましくは、0.6N/cm以下とすることが好ましい。
【0029】
この場合、セラミックシート3の表面に形成する電極パッド8が一緒に伸びるようにすることが好ましい。このためには、ガラス転移点が−20℃以下の室温で変形しやすいバインダを使用すれば良い。これにより、焼成前の電極パッド8が変形してもクラックが発生することなしに、セラミックシート3をセラミック芯材2の周囲に密着することができるようになる。
【0030】
電極パッド8は、発熱抵抗体4のように抵抗値を管理する必要はないので、上記のようにクラックの発生による断線を防止することを優先して考えれば良い。
【0031】
上記のような電極パッド8に用いるガラス転移点の低いバインダとしては、例えば、アクリル系のバインダを用いる場合、モノマーとして2−エチルヘキシルアクリレート、ブチルアクリレート、エチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルエタクリレート、ブチルエタクリレート、イソブチルメタクリレート等の比率をそれぞれ変化させて重合することにより、任意のガラス転移点を有するバインダを作製することができる。バインダの種類としては、アクリル系のものを使用することが好ましい。
【0032】
ちなみに、各モノポリマーのガラス転移点は概ね、2−エチルヘキシルアクリレート(−75℃)、ブチルアクリレート(−56℃)、エチルアクリレート(−27℃)、ブチルメタクリレート(20℃)、イソブチルメタクリレート(48℃)、エチルメタクリレート(42℃)、メチルメタクリレート(103℃)であり、これらの組成比を種々選択することにより、色々なガラス転移点のバインダを作製することができる。
【0033】
また、バインダの分子量は、上記重合の温度と時間を調整することにより調整することが可能である。
【0034】
また、ポリビニルブチラールやエチルセルロースのようにガラス転移点が高いバインダを用いる場合は、ペーストの粘度調整のために添加する溶剤としてDBPやDOPのような可塑剤を多めに添加することにより、生の電極パッド8が変形しやすくすることができる。
【0035】
セラミックヒータ1の耐久性を判断する試験方法として、図3に示すように電解質溶液12中にセラミックヒータ1の電極パッド8以外のセラミック体を浸漬し、この電解質溶液12中に形成した電極14とセラミックヒータ1の電極パッド8の間に100〜3500Vの電圧を印加して、電気絶縁性を評価することができる。30V以上の電気器具については電気用品取締法があり、耐電圧についての規定があるが、30V未満の電圧を印加するヒータについては規定がない。
【0036】
上記のようなセラミックヒータ1において、電解質溶液中で電極パッド8と電解質溶液中の電極間の電気絶縁性が1000V以上となるようにセラミック芯材2に確実に密着させることで、耐久性良好なセラミックヒータ1とすることができる。
【0037】
セラミックヒータ1のセラミック芯材2とセラミックシート3の密着信頼性の評価方法として、上記のような試験方法を採用するのは、非常に有用である。さらに密着界面への浸透性を向上させるために、アルコール等の表面張力の小さい溶剤を添加すれば、さらに信頼性を向上させることができる。この試験方法については、円筒型や円柱型にこだわることなく、板状積層型のセラミックヒータについても応用できる。
【0038】
また、耐久性を判断する電解質溶液の種類としては、色々なものを使用できるが、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム等の強酸と強塩基の塩を用いた溶液を用いることが好ましい。また、その濃度としては、電気を流せる程度であれば問題ないが使い易さの観点からは0.5〜10%程度とすることが好ましい。また、アルコールのように水に分散して浸透性の高い溶媒を少量添加すると、小さな欠陥にも溶液が浸透するのでさらに好ましい。
【0039】
そして、本発明のセラミックヒータ1は、上記試験方法において、電解質溶液中に形成した電極14とセラミックヒータ1の電極パッド8間の耐電圧が1000V以上、好ましくは、耐電圧を1500V、理想的には2000V以上とすることが好ましい。セラミックシート3の密着性がないと耐電圧が1000Vより小さくなり、最高発熱部の温度が1100℃となる加速条件で耐久テストが1000時間程度で抵抗値が初期値より10%以上増加したり、断線したりするものが発生するので好ましくない。
【0040】
さらに、本発明のセラミックヒータ1の詳細について説明する。
【0041】
本発明のセラミックヒータ1の電極パッド8には、焼成後メッキ層を形成する。このメッキ層は、リード部材7を電極パッド8の表面にロウ付けする際に、ロウ材の流れを良くし、ロウ付け強度を増すためである。通常1〜5μm厚みのメッキ層を形成する。メッキ層の材質としては、Ni、Cr、もしくはこれらを主成分とする複合材料を使用することができる。
【0042】
リード部7を固定するロウ材層としては、Au、Cu、Au−Cu、Au−Ni、Ag、Ag−Cu系のロウ材が使用される。好ましくは、Au−Cuロウとしては、Au含有量が25〜95重量%としAu−NiロウとしてはAu含有量が50〜95重量%とすると、ロウ付け温度を1000℃程度に設定でき、ロウ付け後の残留応力を低減できるので良い。また、湿度が高い雰囲気中で使用する場合、Au系、Cu系のロウ材を用いた方がマイグレーションの発生が抑えられるので好ましい。
【0043】
また、ロウ材層の表面には、メッキ層を形成することが腐食からロウ材層を保護するために好ましい。
【0044】
また、電極パッド8に形成されるスルーホールの位置とロウ材層の端部との距離を少なくとも0.2mm以上にすると、良好なロウ付け強度を維持することができる。これにより、メッキ層の表面に形成したロウ材層が固化する際に大きく収縮し、電極パッド8を剥がしてしまうというような不具合を防止できるからである。
【0045】
次にリード部材7の材質としては、耐熱性良好なNi系やFe−Ni系合金等を使用することが好ましい。発熱抵抗体4からの熱伝達により、使用中にリード部材7の温度が上昇し、劣化する可能性があるからである。
【0046】
中でも、リード部材7の材質としてNiやFe−Ni合金を使用する場合、その平均結晶粒径を400μm以下とすることが好ましい。前記平均粒径が400μmを越えると、使用時の振動および熱サイクルにより、ロウ付け部近傍のリード部材7が疲労し、クラックが発生するので好ましくない。他の材質についても、例えばリード部材7の粒径がリード部材7の厚みより大きくなると、ロウ材層とリード部材7の境界付近の粒界に応力が集中してクラックが発生するので好ましくない。
【0047】
なお、ロウ付けの際の熱処理は、試料間のバラツキを小さくするためには、ロウ材の融点より十分余裕をとった高めの温度で熱処理する必要があるが、リード部材7の平均結晶粒径を400μm以下と小さくするためには、ロウ付けの際の温度をできるだけ下げ処理時間を短くすればよい。
【0048】
また、セラミック体中にW、Mo、Re等の高融点金属を主成分とする発熱抵抗体4を埋設したセラミックヒータ1において、発熱抵抗体4のパターン欠陥の幅がパターン幅の1/2以下とすることが好ましい。これは、前記欠陥の幅がパターン幅の1/2を越えると、この部分で局部発熱し、発熱抵抗体4の抵抗値が大きくなり、耐久性が劣化するので、好ましくない。
【0049】
このような欠陥が発生する原因は、発熱抵抗体4をプリント形成する時に、プリント製版にゴミが付着したためパターンが欠けてしまったり、異物が混入し焼成時に焼失したりすることにより発生するものと思われる。プリントや密着工程で、生のセラミックグリーンシート3を取り扱う工程があるが、この工程の清浄度を向上させるとともに、万一の欠陥の発生に関して、上記寸法以上の欠陥を取り除くための検査工程の整備が重要である。
【0050】
また、セラミック体6の材質としては、Al2O388〜95重量%、SiO22〜7重量%、CaO0.5〜3重量%、MgO0.5〜3重量%、ZrO21〜3重量%からなるアルミナを使用することが好ましい。Al2O3含有量をこれより少なくすると、ガラス質が多くなるため通電時のマイグレーションが大きくなるので好ましくない。また、逆にAl2O3含有量をこれより増やすと、内蔵する発熱抵抗体4の金属層内に拡散するガラス量が減少し、セラミックヒータ1の耐久性が劣化するので好ましくない。ここで、セラミックスとしてアルミナの例を示したが、本発明で示したことは、アルミナ質セラミックスに限定されることではなく、窒化珪素質セラミックス、窒化アルミニウム質セラミックス、炭化珪素質セラミックス等、また、セラミックヒータのみならず、Au系のロウ付けを実施する全てのものに当てはまる現象である。
【0051】
また、セラミックヒータ1の寸法については、例えば外径が2〜20mm、長さが40〜200mm程度にすることが可能である。自動車の空燃比センサ加熱用のセラミックヒータ1としては、外径が2〜4mm、長さが40〜65mmとすることが好ましい。
【0052】
さらに、自動車用の用途では、発熱抵抗体4の発熱長さが3〜15mmとなるようにすることが好ましい。発熱長さが3mmより短くなると、通電時の昇温を早くすることができるが、セラミックヒータ1の耐久性を低下させる。また、発熱長さを15mmより長くすると昇温速度が遅くなり、昇温速度を早くしようとするとセラミックヒータ1の消費電力が大きくなるので好ましくない。ここで、発熱長さというのは、図1(b)で示す発熱抵抗体4の往復パターンの部分である。この発熱長さは、その目的とする用途により、選択されるものである。
【0053】
【実施例】
実施例 1
Al2O3を主成分とし、SiO2、CaO、MgO、ZrO2を合計10重量%以内になるように調整したセラミックシート3を準備し、この表面に、W−Reからなる発熱抵抗体4とWからなる電極引出部5をプリントした。また、裏面には電極パッド8をプリントした。発熱抵抗体4は、発熱長さ5mmで4往復のパターンとなるように作製した。
【0054】
そして、Wからなる電極引出部5の末端には、スルーホールを形成し、ここにペーストを注入する事により電極パッド8と電極引出部5間の導通をとった。スルーホールの位置は、ロウ付けを実施した場合にロウ付け部の内側に入るように形成した。そして、発熱抵抗体の表面にセラミックシート3と略同一の成分からなるコート層を形成して充分乾燥した後、さらに前記セラミックシート3と略同一の組成のセラミックスを分散させた密着液を塗布して、こうして準備したセラミックシート3(S−Sカーブを室温(20℃±1℃)で測定した場合の傾きが5N/cm)をセラミック芯材2の周囲に密着し、1500〜1600℃で焼成することにより、セラミックヒータ1とした。
【0055】
この時、セラミックヒータ1に形成される溝部15の幅wが0.1mm以下、0.2mm、0.3mm、0.5mm、1.0mm、1.5mm、2.0mmとし、さらにセラミックシート3の端面を斜めに削ることにより溝部15の端面のなす角度dを30°、40°、40〜60°、100°と変えて、密着性への影響を耐電圧特性により評価した。各条件、試料を1000本作製し、焼成後耐電圧の評価を実施し、絶縁破壊するものの本数を確認した。尚、溝部15の幅wは、図2に示すようにセラミックシート3の両端面の幅wを意味する。電解質溶液としては、塩化ナトリウムの1%溶液を用いて、溶液中に設置された電極とセラミックヒータの間に、1000Vの電圧を10秒間印加して絶縁破壊しないことを確認した。
【0056】
また、絶縁破壊した試料については、図2に示すような発熱抵抗体4埋設部の周方向断面を観察して、セラミックシート3とセラミック芯材2の密着状況を40倍の双眼顕微鏡で調査した。
【0057】
これらの結果を、表1に示した。
【0058】
【表1】
【0059】
表1から判るように、セラミックヒータ1のセラミックシート3両端部に形成される溝部15の幅wを0.1mm以下にしたNo.1は、1000本中4本に絶縁不良が発生した。また、前記幅wを0.2mmとし、前記溝15両側面のなす角度dを30°にしたNo.2、幅wを0.5mmとし、角度dを30°にしたNo.7にはそれぞれ1000本中3本の不良が発生した。これに対して、前記溝部15の幅wを0.2mm以上とし前記角度dを40°以上としたNo.3〜11は、絶縁不良の発生は1本もなく良好な耐絶縁性能を示した。
【0060】
セラミックシート3密着時にセラミック芯材2の周囲に周回密着させたセラミックシート3の端面が接するようになると、セラミックシート3にたるみが発生し、密着不良が発生するものがあった。溝部15の幅wとして、0.2mm程度の隙間を形成することがセラミックヒータ1の耐電圧性を向上させるために好ましいことが判った。また、セラミックシート2の端面を加工することにより、セラミックシート3の密着面に形成される溝部15の両端面のなす角度dを40°以上に大きくすることにより、セラミックシート3の端部への剥離応力を低減し、セラミックヒータ1の耐電圧を向上させることができた。
【0061】
不良の発生数はさほど多くはないが、この程度の発生件数でも、自動車部品としては問題となる。上記の改善により、セラミックヒータ1の耐久性とその信頼性を改善できる事がわかった。
【0062】
なお、表には記載しないが、セラミックシート3のS−Sカーブの傾きが10N/cmとなるものを用い、溝部15の両端面のなす角度dを40°で溝幅wが1.0mmとなるようなセラミックヒータ1を作製したものについて上述と同様の実験をおこなうと100本中、18本の不良が発生した。しかし、S−Sカーブの傾きが0.5N/cmとなるものを用い、溝部15の両端面のなす角度d、溝幅wを同様にしたセラミックヒータ1を作製しても不良の発生は無かった。これは溝部の形状に関係なくS−Sカーブの傾きによって密着性が変わることが理解できる。
【0063】
実施例 2
ここでは、セラミックヒータ1のセラミックシート3密着部に形成される溝部15の端面のなす角度dと密着性の関係を調査した。セラミックシート3の端面を斜めに加工して角度を形成し、セラミックシート3をセラミック芯材2の周囲に密着した際の溝部15の端面のなす角度dを40〜60°とし、密着液の塗布量を調整して、密着面からの密着液の食み出しhを調整した。なお、密着については、一旦セラミック芯材2の表面にセラミックシート3を密着させた後、さらに3本のロールを同一方向に回転させるロールの間にセラミックシート3を密着したセラミック体6を装着して回転させることにより密着した。この時、上から抑えるロールの半径をセラミックヒータ1の外径の3倍程度と小さくし、さらに弾性のある材質とすることにより、セラミックシート3への加圧を均等にするようにした。また、セラミック芯材2の外径は4mmとし、溝部15の幅wは1.0mmとした。
【0064】
評価方法としては、焼成後、まず実施例1と同様な方法で耐電圧を確認し、その後、セラミックヒータ1を輪切り状に切断し、その溝部15を観察してセラミックシート3端部の密着状況を各条件50本づつ確認した。
【0065】
結果を表2に示した。
【0066】
【表2】
【0067】
表2から判るように、密着液のはみ出しhがないNo.1は、耐電圧に異常はなかったが、溝部1にあるセラミック芯材2とセラミックシートの密着面の端部に、小さな剥離がみられるものがあった。これに対し前記はみ出しhを0.1〜0.3mmとしたNo.2〜4については、密着面の端部に隙間が発生するものはなく、密着性が良好であることを確認できた。従来は、前記はみ出し量を管理していなかったが、前記はみ出し量を管理することにより、セラミクヒータ1の耐久性とその信頼性を向上できる事がわかった。
【0068】
実施例 3
ここでは、セラミックヒータ1の耐電圧特性と耐久性の関係について調査した。セラミックシート2に実施例1と同様にして発熱抵抗体4および電極引出部5、スルーホール、電極パッド8を形成し、前記溝部15のなす角度dが30°以内となるように調整してセラミック芯材2の周囲に密着したセラミック体6を1600℃で焼成し、500本の試料を準備した。この試料を、まず、実施例1と同様にして1000Vで10秒間の耐電圧を確認したのち、セラミックヒータ1の最高発熱部の温度が1100℃となるような電圧をON−OFFして、2分間通電−2分間強制冷却のサイクル試験を5000サイクル掛けて、テスト後のセラミックヒータ1の抵抗変化率が初期抵抗の10%を越えたものの耐電圧をさらに測定した。評価は、500Vで10秒間耐電圧を評価し、OKであれば250V置きに電圧を上げて10秒間保持して絶縁破壊しないことを確認した。また、耐久テスト後の良品については、各ロット10本づつ耐電圧を評価した。
【0069】
また、同時に、実施例1のNo.6のサンプルを比較用に同様に評価した。
【0070】
結果を表3に示した。
【0071】
【表3】
【0072】
表3から判るように、まず、初期の試料は、両者とも1000Vの耐電圧試験でOKであった。しかしながら、上記サイクル試験後は、本実施例で使用した従来仕様のセラミクヒータ1は、セラミックヒータ1の抵抗値が初期に較べて10%以上増加するものが3本あった。これらのサンプルを、500Vから250V置きに電圧を上げながら耐電圧試験を実施したところ、サイクル試験の抵抗変化が10%と13%であった試料は、1000Vで絶縁破壊し、前記抵抗変化が18%であった試料は500Vで絶縁破壊した。
【0073】
これに対して、実施例1で作製したNo.6に示す本発明のセラミックヒータ1は、初期の耐電圧は、1000VでOKであり、耐久試験後は3000VまでOKであった。
【0074】
【発明の効果】
本発明によれば、発熱抵抗体を一方の主面に形成してなるセラミックシートを、前記発熱抵抗体が内側になるようにセラミック芯材の周回密着してなるセラミックヒータにおいて、前記セラミックシートの両端部の間に、0.2〜2.0mmの溝部を形成するとともに、前記溝部の両側面のなす角度を40°以上とすることにより、セラミックシートをセラミック芯材に周回密着する際のセラミックシート端面の剥離やセラミックシートのたわみを防止し、耐久性良好なセラミックヒータを得ることができるようになった。
【0075】
また、前記セラミックシートとセラミック芯材との間に、セラミックス粉末を分散させた密着液を塗布して密着させることで、さらに密着性を向上させることが可能となる。
【0076】
さらに、前記密着液が、前記溝部に0.1〜1.0mmの幅ではみ出しているために、セラミックシートの端面には、セラミック芯材からセラミックシートを剥離しようとする応力が集中するので、セラミックシート3端面に密着液がはみ出すようにすることにより端面の密着力を向上させ、セラミックシート端面の剥離を防止することが可能となる。
【0077】
また、前記溝部の角部に面取りを備えたことによっても密着性を向上させることができる。
【0078】
さらに、セラミックシートの密着して作製したセラミックヒータにおいて、その密着の信頼性を判断する手法として、電解質溶液中にセラミックヒータの発熱抵抗体形成部を浸漬し、該電解質溶液中に形成した電極と、セラミックヒータの電極パッド間に100〜3500Vの電圧を印加してセラミックヒータの電気絶縁性を試験することにより、非破壊の外観検査で確実に密着不良を識別することが可能となった。
【0079】
これらの改善により、セラミックヒータの電気絶縁性を向上させ、耐久性良好なセラミクヒータを提供できるようになった。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は、本発明のセラミックヒータの斜視図であり、(b)はその展開斜視図である。
【図2】(a)は、本発明のセラミックヒータの断面図であり、(b)はその溝部の拡大図である。
【図3】本発明の電気絶縁性を確認する試験装置の概略図である。
【符号の説明】
1:セラミックヒータ
2:セラミック芯材
3:セラミックシート
4:発熱抵抗体
5:電極引出部
7:リード部材
8:電極パッド
12:電解質溶液
13:電源
14:電極
15:溝部
16:食み出し
17:面取り
d:角度
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車用の空燃比検知センサ加熱用ヒータや気化器用ヒータ、半田ごて用ヒータなどに使用するセラミックヒータに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、アルミナを主成分とするセラミックス中に、W、Re、Mo等の高融点金属からなる発熱抵抗体を埋設してなるアルミナセラミックヒータが、一般的に用いられている。
【0003】
例えば、円柱状のセラミックヒータを製造する場合は、特許文献1や特許文献2に示されているように、図1のセラミック芯材2とセラミックシート3を用意し、セラミックシート3の一方面にW、Re、Mo等の高融点金属のペーストを印刷して発熱抵抗体4と電極引出部5を形成した後、これらを形成した面が内側となるようにセラミックシート3を上記セラミック芯材2の周囲に巻付け、全体を焼成一体化することによりセラミックヒータ1としていた。
【0004】
セラミックシート3上には、発熱抵抗体4に電極引出部5が接続され、該電極引出部5の末端にスルーホールが形成され裏面の電極パッド8と該電極引出部5がスルーホールで接続されている。スルーホールには、必要に応じて導体ペーストが注入される。
【0005】
そして、セラミックヒータ1は、側面に露出した電極パッド8にリード部材7をロウ材によりロウ付けして接合し、このリード部材7から通電することにより発熱抵抗体4が発熱するようになっていた。
【特許文献1】
特開2000−123959号公報
【特許文献2】
特開2000−113965号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、セラミックシート3をセラミック芯材2の周囲に周回密着する際に、セラミックシート3がセラミック芯材2から剥がれて両者の界面に隙間が発生し、絶縁不良が発生するものがあった。特に、セラミックシート3の硬さが硬い場合に、セラミック芯材2とセラミックシート3の間に隙間が発生しやすいという問題があった。このような不良は通常は発生しないが、セラミックシート3をセラミック芯材に密着する密着力が不充分な場合に突発的に発生する。例えばこのような不良が酸素センサ加熱用のセラミックヒータにおいて発生すると、センサ始動時の立ち上がり特性に悪影響を及ぼすことになる。
【0007】
このような密着不良は、初期はあまり目立たなくとも、前記隙間を介した酸素の拡散により使用中に発熱抵抗体が酸化し、セラミックヒータの耐久性が低下するという問題があった。
【0008】
また、このような密着不良の発生は、セラミックシート3をセラミック芯材2に密着した溝部に発生するので、非破壊の外観検査で確実に識別することは難しいという課題があった。
【0009】
本発明の目的は、未着不良をセラミックシートとセラミック芯材との密着不良を完全に防止するとともに、耐久性を向上させることができるセラミックヒータを提供することにある。
【0010】
また、本発明の他の目的は、セラミックシートをセラミック芯材に密着した際、溝部を形成しても、不良品を簡単に見いだすことができ、上述のような耐久性が上がった良品を大量に製造することができるセラミックヒータの試験方法を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明のセラミックヒータは、上述の課題に鑑み、発熱抵抗体を一方の主面に形成してなるセラミックシートを、前記発熱抵抗体が内側になるようにセラミック芯材に周回密着して一体的に焼成してなるセラミックヒータにおいて、前記セラミックシートの両端部の間に、幅が0.2〜2.0mmの溝部を形成するとともに、前記溝部の両側面のなす角度が40°以上であることを特徴とする。
また、本発明のセラミックヒータは、前記セラミックシートとセラミック芯材との間に、セラミックス粉末を分散させた密着液を塗布して密着させたことを特徴とする。
そして、前記密着液が、前記溝部に0.1〜1.0mmの幅ではみ出していることを特徴とする。
さらに、前記溝部の角部に面取りを備えたこと特徴とする。
また、本発明のセラミックヒータは、発熱抵抗体およびこれに接続される電極引出部をセラミック体中に内蔵し、該セラミック体の表面に前記電極引出部と接続された電極パッドを有するセラミックヒータにおいて、上記電極パッド以外のセラミック体を電解質溶液中に浸漬した時に、該電解質溶液中に形成した電極と前記セラミックヒータの電極パッド間の耐電圧が1000V以上であることを特徴とする。
【0012】
一方、セラミックヒータの試験方法は、発熱抵抗体およびこれに接続される電極引出部をセラミック体中に内蔵し、該セラミック体の表面に前記電極引出部と接続された電極パッドを有するセラミックヒータにおいて、セラミックヒータの電極パッド以外のセラミック体を電解質溶液中に浸漬し、該電解質溶液中に形成した電極と、セラミックヒータの電極パッド間に100〜3500Vの電圧を印加して電気絶縁性を確認することを特徴とする。
【0013】
このような改良を実施することにより、セラミック芯材とセラミックシートの間に隙間が生成することを防止し、耐久性良好なセラミックヒータを得ることが出来るようになった。
【0014】
また、本発明の試験方法を利用することにより、セラミック芯材2とセラミックシート3の間の密着不良を容易に検知することができるようになった。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のセラミックヒータの実施の形態を、図1を用いて説明する。図1(a)は、セラミックヒータ1の部分切り欠き斜視図であり、(b)は、そのセラミック体6部分の展開図である。
【0016】
セラミックシート3の表面には、発熱抵抗体4と電極引出部5が形成され、さらに、その裏面側に形成される電極パッド8との間をスルーホール7で接合した構造となっている。こうして準備されたセラミックシート3をセラミック芯材2の表面に、前記発熱抵抗体4が内側になるように密着焼成することによりセラミック体6を形成する。そしてさらに、電極パッド8にリード部材7をロウ材を用いて接合することにより、セラミックヒータ1とする。
【0017】
また、図2は前記セラミック体6の径方向の断面を示す図である。セラミック芯材2の周囲に周回密着したセラミックシート3の端部の間に形成される溝部15の両側面のなす角dは、40°以上となるように形成している。この角度が40°より小さいと、密着後にセラミックシート3の弾性によりセラミックシート3の端部が剥がれてしまう。この剥がれが大きくなると、発熱抵抗体4に達するようになり、セラミックヒータ1の耐久性が劣化するので好ましくない。さらに好ましくは、角度dを60°以上とすることが良い。
【0018】
また、前記溝部15の幅wは、0.2〜2mmとする。幅wは、図2(a)に示すようにセラミック芯材2との接合部におけるセラミックシート3端部の距離を意味する。この幅wが0.2mmより小さくなると、セラミックシート3は弾性を有するのでセラミックシート3を密着する時に、その端部がぶつかり、セラミックシート3の端部に剥がれが発生しやすくなるので好ましくない。また、隙間が2.0mmを越えると、セラミックシート3とセラミック芯材2の焼成収縮差によりセラミックヒータ1の反りの原因となるので好ましくない。
【0019】
なお、幅wは、セラミック芯材2の外周長さと密着するセラミックシート3の幅の差によって決まる。このため、前記隙間が2mmを越えないように、セラミックシート3の幅を管理する。
【0020】
また、溝部15を成すテープの角部に面取り17を施すことも密着性向上に有効である。角部に面取り17を施すことにより、ローラ密着した際のローラの引っ掛かりを防止することができるので、これにより発生する密着不良を防止し、セラミックシート3端部の密着不良を防止することができる。溝部15の両端面全面を面取り17により形成しても構わないし、図2(b)に示すように、角部が二段になっても構わない。
【0021】
セラミックシート3の密着には、セラミックス粉末を分散させた密着液を塗布して密着することが好ましい。セラミック芯材2にセラミックシート3を密着する際は、セラミックシート3もしくはセラミック芯材2の表面を可塑化し融着させる必要があるが、上記のようにセラミックシート3もしくはセラミック芯材2の接着面にセラミックス粉末を分散させた密着液を塗布してこれらを密着することにより、接着面に隙間ができることを防止し、密着の信頼性を向上させることができる。
【0022】
また、密着液の塗布に際し、発熱抵抗体4の表面に直接密着材を塗布すると、密着時に発熱抵抗体4パターンが可塑化し、発熱抵抗体4パターンが短絡したり断線したりする場合があるので、発熱抵抗体4パターンの上には、別のセラミックシート3を密着させるかもしくはコート層を形成して、発熱抵抗体4を保護することが好ましい。
【0023】
また、図2(b)に示すように、密着液のはみ出し16が、溝部15に0.1〜1.0mmの幅hで生成していることが好ましい。セラミックシート3の端面には、セラミック芯材2からセラミックシート3を剥離しようとする応力が集中するので、セラミックシート3の端面に密着液が食み出すようにすることにより端面の密着力を向上させ、セラミックシート3端面の剥離を防止することが可能となる。
【0024】
なお、この場合、外径が2.5〜15mmの円筒状または円柱状のセラミック芯材2にセラミックシート3が形成される。
【0025】
以上のような効果は、セラミックシート3のS−S(応力−伸び)カーブの傾きが大きい、つまり応力に対し変形し難いセラミックシート3を使用した場合に有効である。この場合、0.3mm程度の厚みのセラミックシート3を評価部の幅が13mm、長さが30mmのダンベル型に加工して、破断までのS−Sカーブを室温(20℃±1℃)で測定した場合、その傾きは1〜8N/cm程度となる応力に対して変形し難いものが用いられる。なお、S−Sカーブの傾きは破断時の引張応力を破断時の伸びで除した値である。
【0026】
また、セラミックシート3として、上記のようなセラミックシート3を使用すると、セラミックシート3の取扱時の応力により、発熱抵抗体4が断線したり、セラミックシート3が伸びて発熱抵抗体4の抵抗値がばらつくことも防止する。
【0027】
次に、これまでセラミックシート3の引張試験によるS−Sカーブの傾きが1〜8N/cmと大きい場合に、溝部15の幅w及び溝部15の両側面のなす角度d等を規定して密着性を向上させようとしたが、この幅w及び角度dの規定を行わない場合でも、セラミックシート3の端面の密着力を向上させることができる。即ち、S−Sカーブの傾きが1N/cm未満の場合、即ち、柔らかいセラミックシート3が外部応力により容易に変形するのでセラミック芯材2の周囲に巻き付けるセラミックシート3の内周面がセラミック芯材2に密着すできるとともに、セラミックシート3の外周面がその弾性により伸びた状態で密着することでき、セラミックシート3の端面を剥がそうとする応力が小さくなるので、密着不良が発生し難くなるのである。
【0028】
なお、S−Sカーブの傾きは、破断時の引張応力を破断時の伸びで除した値である。さらに好ましくは、0.6N/cm以下とすることが好ましい。
【0029】
この場合、セラミックシート3の表面に形成する電極パッド8が一緒に伸びるようにすることが好ましい。このためには、ガラス転移点が−20℃以下の室温で変形しやすいバインダを使用すれば良い。これにより、焼成前の電極パッド8が変形してもクラックが発生することなしに、セラミックシート3をセラミック芯材2の周囲に密着することができるようになる。
【0030】
電極パッド8は、発熱抵抗体4のように抵抗値を管理する必要はないので、上記のようにクラックの発生による断線を防止することを優先して考えれば良い。
【0031】
上記のような電極パッド8に用いるガラス転移点の低いバインダとしては、例えば、アクリル系のバインダを用いる場合、モノマーとして2−エチルヘキシルアクリレート、ブチルアクリレート、エチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルエタクリレート、ブチルエタクリレート、イソブチルメタクリレート等の比率をそれぞれ変化させて重合することにより、任意のガラス転移点を有するバインダを作製することができる。バインダの種類としては、アクリル系のものを使用することが好ましい。
【0032】
ちなみに、各モノポリマーのガラス転移点は概ね、2−エチルヘキシルアクリレート(−75℃)、ブチルアクリレート(−56℃)、エチルアクリレート(−27℃)、ブチルメタクリレート(20℃)、イソブチルメタクリレート(48℃)、エチルメタクリレート(42℃)、メチルメタクリレート(103℃)であり、これらの組成比を種々選択することにより、色々なガラス転移点のバインダを作製することができる。
【0033】
また、バインダの分子量は、上記重合の温度と時間を調整することにより調整することが可能である。
【0034】
また、ポリビニルブチラールやエチルセルロースのようにガラス転移点が高いバインダを用いる場合は、ペーストの粘度調整のために添加する溶剤としてDBPやDOPのような可塑剤を多めに添加することにより、生の電極パッド8が変形しやすくすることができる。
【0035】
セラミックヒータ1の耐久性を判断する試験方法として、図3に示すように電解質溶液12中にセラミックヒータ1の電極パッド8以外のセラミック体を浸漬し、この電解質溶液12中に形成した電極14とセラミックヒータ1の電極パッド8の間に100〜3500Vの電圧を印加して、電気絶縁性を評価することができる。30V以上の電気器具については電気用品取締法があり、耐電圧についての規定があるが、30V未満の電圧を印加するヒータについては規定がない。
【0036】
上記のようなセラミックヒータ1において、電解質溶液中で電極パッド8と電解質溶液中の電極間の電気絶縁性が1000V以上となるようにセラミック芯材2に確実に密着させることで、耐久性良好なセラミックヒータ1とすることができる。
【0037】
セラミックヒータ1のセラミック芯材2とセラミックシート3の密着信頼性の評価方法として、上記のような試験方法を採用するのは、非常に有用である。さらに密着界面への浸透性を向上させるために、アルコール等の表面張力の小さい溶剤を添加すれば、さらに信頼性を向上させることができる。この試験方法については、円筒型や円柱型にこだわることなく、板状積層型のセラミックヒータについても応用できる。
【0038】
また、耐久性を判断する電解質溶液の種類としては、色々なものを使用できるが、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム等の強酸と強塩基の塩を用いた溶液を用いることが好ましい。また、その濃度としては、電気を流せる程度であれば問題ないが使い易さの観点からは0.5〜10%程度とすることが好ましい。また、アルコールのように水に分散して浸透性の高い溶媒を少量添加すると、小さな欠陥にも溶液が浸透するのでさらに好ましい。
【0039】
そして、本発明のセラミックヒータ1は、上記試験方法において、電解質溶液中に形成した電極14とセラミックヒータ1の電極パッド8間の耐電圧が1000V以上、好ましくは、耐電圧を1500V、理想的には2000V以上とすることが好ましい。セラミックシート3の密着性がないと耐電圧が1000Vより小さくなり、最高発熱部の温度が1100℃となる加速条件で耐久テストが1000時間程度で抵抗値が初期値より10%以上増加したり、断線したりするものが発生するので好ましくない。
【0040】
さらに、本発明のセラミックヒータ1の詳細について説明する。
【0041】
本発明のセラミックヒータ1の電極パッド8には、焼成後メッキ層を形成する。このメッキ層は、リード部材7を電極パッド8の表面にロウ付けする際に、ロウ材の流れを良くし、ロウ付け強度を増すためである。通常1〜5μm厚みのメッキ層を形成する。メッキ層の材質としては、Ni、Cr、もしくはこれらを主成分とする複合材料を使用することができる。
【0042】
リード部7を固定するロウ材層としては、Au、Cu、Au−Cu、Au−Ni、Ag、Ag−Cu系のロウ材が使用される。好ましくは、Au−Cuロウとしては、Au含有量が25〜95重量%としAu−NiロウとしてはAu含有量が50〜95重量%とすると、ロウ付け温度を1000℃程度に設定でき、ロウ付け後の残留応力を低減できるので良い。また、湿度が高い雰囲気中で使用する場合、Au系、Cu系のロウ材を用いた方がマイグレーションの発生が抑えられるので好ましい。
【0043】
また、ロウ材層の表面には、メッキ層を形成することが腐食からロウ材層を保護するために好ましい。
【0044】
また、電極パッド8に形成されるスルーホールの位置とロウ材層の端部との距離を少なくとも0.2mm以上にすると、良好なロウ付け強度を維持することができる。これにより、メッキ層の表面に形成したロウ材層が固化する際に大きく収縮し、電極パッド8を剥がしてしまうというような不具合を防止できるからである。
【0045】
次にリード部材7の材質としては、耐熱性良好なNi系やFe−Ni系合金等を使用することが好ましい。発熱抵抗体4からの熱伝達により、使用中にリード部材7の温度が上昇し、劣化する可能性があるからである。
【0046】
中でも、リード部材7の材質としてNiやFe−Ni合金を使用する場合、その平均結晶粒径を400μm以下とすることが好ましい。前記平均粒径が400μmを越えると、使用時の振動および熱サイクルにより、ロウ付け部近傍のリード部材7が疲労し、クラックが発生するので好ましくない。他の材質についても、例えばリード部材7の粒径がリード部材7の厚みより大きくなると、ロウ材層とリード部材7の境界付近の粒界に応力が集中してクラックが発生するので好ましくない。
【0047】
なお、ロウ付けの際の熱処理は、試料間のバラツキを小さくするためには、ロウ材の融点より十分余裕をとった高めの温度で熱処理する必要があるが、リード部材7の平均結晶粒径を400μm以下と小さくするためには、ロウ付けの際の温度をできるだけ下げ処理時間を短くすればよい。
【0048】
また、セラミック体中にW、Mo、Re等の高融点金属を主成分とする発熱抵抗体4を埋設したセラミックヒータ1において、発熱抵抗体4のパターン欠陥の幅がパターン幅の1/2以下とすることが好ましい。これは、前記欠陥の幅がパターン幅の1/2を越えると、この部分で局部発熱し、発熱抵抗体4の抵抗値が大きくなり、耐久性が劣化するので、好ましくない。
【0049】
このような欠陥が発生する原因は、発熱抵抗体4をプリント形成する時に、プリント製版にゴミが付着したためパターンが欠けてしまったり、異物が混入し焼成時に焼失したりすることにより発生するものと思われる。プリントや密着工程で、生のセラミックグリーンシート3を取り扱う工程があるが、この工程の清浄度を向上させるとともに、万一の欠陥の発生に関して、上記寸法以上の欠陥を取り除くための検査工程の整備が重要である。
【0050】
また、セラミック体6の材質としては、Al2O388〜95重量%、SiO22〜7重量%、CaO0.5〜3重量%、MgO0.5〜3重量%、ZrO21〜3重量%からなるアルミナを使用することが好ましい。Al2O3含有量をこれより少なくすると、ガラス質が多くなるため通電時のマイグレーションが大きくなるので好ましくない。また、逆にAl2O3含有量をこれより増やすと、内蔵する発熱抵抗体4の金属層内に拡散するガラス量が減少し、セラミックヒータ1の耐久性が劣化するので好ましくない。ここで、セラミックスとしてアルミナの例を示したが、本発明で示したことは、アルミナ質セラミックスに限定されることではなく、窒化珪素質セラミックス、窒化アルミニウム質セラミックス、炭化珪素質セラミックス等、また、セラミックヒータのみならず、Au系のロウ付けを実施する全てのものに当てはまる現象である。
【0051】
また、セラミックヒータ1の寸法については、例えば外径が2〜20mm、長さが40〜200mm程度にすることが可能である。自動車の空燃比センサ加熱用のセラミックヒータ1としては、外径が2〜4mm、長さが40〜65mmとすることが好ましい。
【0052】
さらに、自動車用の用途では、発熱抵抗体4の発熱長さが3〜15mmとなるようにすることが好ましい。発熱長さが3mmより短くなると、通電時の昇温を早くすることができるが、セラミックヒータ1の耐久性を低下させる。また、発熱長さを15mmより長くすると昇温速度が遅くなり、昇温速度を早くしようとするとセラミックヒータ1の消費電力が大きくなるので好ましくない。ここで、発熱長さというのは、図1(b)で示す発熱抵抗体4の往復パターンの部分である。この発熱長さは、その目的とする用途により、選択されるものである。
【0053】
【実施例】
実施例 1
Al2O3を主成分とし、SiO2、CaO、MgO、ZrO2を合計10重量%以内になるように調整したセラミックシート3を準備し、この表面に、W−Reからなる発熱抵抗体4とWからなる電極引出部5をプリントした。また、裏面には電極パッド8をプリントした。発熱抵抗体4は、発熱長さ5mmで4往復のパターンとなるように作製した。
【0054】
そして、Wからなる電極引出部5の末端には、スルーホールを形成し、ここにペーストを注入する事により電極パッド8と電極引出部5間の導通をとった。スルーホールの位置は、ロウ付けを実施した場合にロウ付け部の内側に入るように形成した。そして、発熱抵抗体の表面にセラミックシート3と略同一の成分からなるコート層を形成して充分乾燥した後、さらに前記セラミックシート3と略同一の組成のセラミックスを分散させた密着液を塗布して、こうして準備したセラミックシート3(S−Sカーブを室温(20℃±1℃)で測定した場合の傾きが5N/cm)をセラミック芯材2の周囲に密着し、1500〜1600℃で焼成することにより、セラミックヒータ1とした。
【0055】
この時、セラミックヒータ1に形成される溝部15の幅wが0.1mm以下、0.2mm、0.3mm、0.5mm、1.0mm、1.5mm、2.0mmとし、さらにセラミックシート3の端面を斜めに削ることにより溝部15の端面のなす角度dを30°、40°、40〜60°、100°と変えて、密着性への影響を耐電圧特性により評価した。各条件、試料を1000本作製し、焼成後耐電圧の評価を実施し、絶縁破壊するものの本数を確認した。尚、溝部15の幅wは、図2に示すようにセラミックシート3の両端面の幅wを意味する。電解質溶液としては、塩化ナトリウムの1%溶液を用いて、溶液中に設置された電極とセラミックヒータの間に、1000Vの電圧を10秒間印加して絶縁破壊しないことを確認した。
【0056】
また、絶縁破壊した試料については、図2に示すような発熱抵抗体4埋設部の周方向断面を観察して、セラミックシート3とセラミック芯材2の密着状況を40倍の双眼顕微鏡で調査した。
【0057】
これらの結果を、表1に示した。
【0058】
【表1】
【0059】
表1から判るように、セラミックヒータ1のセラミックシート3両端部に形成される溝部15の幅wを0.1mm以下にしたNo.1は、1000本中4本に絶縁不良が発生した。また、前記幅wを0.2mmとし、前記溝15両側面のなす角度dを30°にしたNo.2、幅wを0.5mmとし、角度dを30°にしたNo.7にはそれぞれ1000本中3本の不良が発生した。これに対して、前記溝部15の幅wを0.2mm以上とし前記角度dを40°以上としたNo.3〜11は、絶縁不良の発生は1本もなく良好な耐絶縁性能を示した。
【0060】
セラミックシート3密着時にセラミック芯材2の周囲に周回密着させたセラミックシート3の端面が接するようになると、セラミックシート3にたるみが発生し、密着不良が発生するものがあった。溝部15の幅wとして、0.2mm程度の隙間を形成することがセラミックヒータ1の耐電圧性を向上させるために好ましいことが判った。また、セラミックシート2の端面を加工することにより、セラミックシート3の密着面に形成される溝部15の両端面のなす角度dを40°以上に大きくすることにより、セラミックシート3の端部への剥離応力を低減し、セラミックヒータ1の耐電圧を向上させることができた。
【0061】
不良の発生数はさほど多くはないが、この程度の発生件数でも、自動車部品としては問題となる。上記の改善により、セラミックヒータ1の耐久性とその信頼性を改善できる事がわかった。
【0062】
なお、表には記載しないが、セラミックシート3のS−Sカーブの傾きが10N/cmとなるものを用い、溝部15の両端面のなす角度dを40°で溝幅wが1.0mmとなるようなセラミックヒータ1を作製したものについて上述と同様の実験をおこなうと100本中、18本の不良が発生した。しかし、S−Sカーブの傾きが0.5N/cmとなるものを用い、溝部15の両端面のなす角度d、溝幅wを同様にしたセラミックヒータ1を作製しても不良の発生は無かった。これは溝部の形状に関係なくS−Sカーブの傾きによって密着性が変わることが理解できる。
【0063】
実施例 2
ここでは、セラミックヒータ1のセラミックシート3密着部に形成される溝部15の端面のなす角度dと密着性の関係を調査した。セラミックシート3の端面を斜めに加工して角度を形成し、セラミックシート3をセラミック芯材2の周囲に密着した際の溝部15の端面のなす角度dを40〜60°とし、密着液の塗布量を調整して、密着面からの密着液の食み出しhを調整した。なお、密着については、一旦セラミック芯材2の表面にセラミックシート3を密着させた後、さらに3本のロールを同一方向に回転させるロールの間にセラミックシート3を密着したセラミック体6を装着して回転させることにより密着した。この時、上から抑えるロールの半径をセラミックヒータ1の外径の3倍程度と小さくし、さらに弾性のある材質とすることにより、セラミックシート3への加圧を均等にするようにした。また、セラミック芯材2の外径は4mmとし、溝部15の幅wは1.0mmとした。
【0064】
評価方法としては、焼成後、まず実施例1と同様な方法で耐電圧を確認し、その後、セラミックヒータ1を輪切り状に切断し、その溝部15を観察してセラミックシート3端部の密着状況を各条件50本づつ確認した。
【0065】
結果を表2に示した。
【0066】
【表2】
【0067】
表2から判るように、密着液のはみ出しhがないNo.1は、耐電圧に異常はなかったが、溝部1にあるセラミック芯材2とセラミックシートの密着面の端部に、小さな剥離がみられるものがあった。これに対し前記はみ出しhを0.1〜0.3mmとしたNo.2〜4については、密着面の端部に隙間が発生するものはなく、密着性が良好であることを確認できた。従来は、前記はみ出し量を管理していなかったが、前記はみ出し量を管理することにより、セラミクヒータ1の耐久性とその信頼性を向上できる事がわかった。
【0068】
実施例 3
ここでは、セラミックヒータ1の耐電圧特性と耐久性の関係について調査した。セラミックシート2に実施例1と同様にして発熱抵抗体4および電極引出部5、スルーホール、電極パッド8を形成し、前記溝部15のなす角度dが30°以内となるように調整してセラミック芯材2の周囲に密着したセラミック体6を1600℃で焼成し、500本の試料を準備した。この試料を、まず、実施例1と同様にして1000Vで10秒間の耐電圧を確認したのち、セラミックヒータ1の最高発熱部の温度が1100℃となるような電圧をON−OFFして、2分間通電−2分間強制冷却のサイクル試験を5000サイクル掛けて、テスト後のセラミックヒータ1の抵抗変化率が初期抵抗の10%を越えたものの耐電圧をさらに測定した。評価は、500Vで10秒間耐電圧を評価し、OKであれば250V置きに電圧を上げて10秒間保持して絶縁破壊しないことを確認した。また、耐久テスト後の良品については、各ロット10本づつ耐電圧を評価した。
【0069】
また、同時に、実施例1のNo.6のサンプルを比較用に同様に評価した。
【0070】
結果を表3に示した。
【0071】
【表3】
【0072】
表3から判るように、まず、初期の試料は、両者とも1000Vの耐電圧試験でOKであった。しかしながら、上記サイクル試験後は、本実施例で使用した従来仕様のセラミクヒータ1は、セラミックヒータ1の抵抗値が初期に較べて10%以上増加するものが3本あった。これらのサンプルを、500Vから250V置きに電圧を上げながら耐電圧試験を実施したところ、サイクル試験の抵抗変化が10%と13%であった試料は、1000Vで絶縁破壊し、前記抵抗変化が18%であった試料は500Vで絶縁破壊した。
【0073】
これに対して、実施例1で作製したNo.6に示す本発明のセラミックヒータ1は、初期の耐電圧は、1000VでOKであり、耐久試験後は3000VまでOKであった。
【0074】
【発明の効果】
本発明によれば、発熱抵抗体を一方の主面に形成してなるセラミックシートを、前記発熱抵抗体が内側になるようにセラミック芯材の周回密着してなるセラミックヒータにおいて、前記セラミックシートの両端部の間に、0.2〜2.0mmの溝部を形成するとともに、前記溝部の両側面のなす角度を40°以上とすることにより、セラミックシートをセラミック芯材に周回密着する際のセラミックシート端面の剥離やセラミックシートのたわみを防止し、耐久性良好なセラミックヒータを得ることができるようになった。
【0075】
また、前記セラミックシートとセラミック芯材との間に、セラミックス粉末を分散させた密着液を塗布して密着させることで、さらに密着性を向上させることが可能となる。
【0076】
さらに、前記密着液が、前記溝部に0.1〜1.0mmの幅ではみ出しているために、セラミックシートの端面には、セラミック芯材からセラミックシートを剥離しようとする応力が集中するので、セラミックシート3端面に密着液がはみ出すようにすることにより端面の密着力を向上させ、セラミックシート端面の剥離を防止することが可能となる。
【0077】
また、前記溝部の角部に面取りを備えたことによっても密着性を向上させることができる。
【0078】
さらに、セラミックシートの密着して作製したセラミックヒータにおいて、その密着の信頼性を判断する手法として、電解質溶液中にセラミックヒータの発熱抵抗体形成部を浸漬し、該電解質溶液中に形成した電極と、セラミックヒータの電極パッド間に100〜3500Vの電圧を印加してセラミックヒータの電気絶縁性を試験することにより、非破壊の外観検査で確実に密着不良を識別することが可能となった。
【0079】
これらの改善により、セラミックヒータの電気絶縁性を向上させ、耐久性良好なセラミクヒータを提供できるようになった。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は、本発明のセラミックヒータの斜視図であり、(b)はその展開斜視図である。
【図2】(a)は、本発明のセラミックヒータの断面図であり、(b)はその溝部の拡大図である。
【図3】本発明の電気絶縁性を確認する試験装置の概略図である。
【符号の説明】
1:セラミックヒータ
2:セラミック芯材
3:セラミックシート
4:発熱抵抗体
5:電極引出部
7:リード部材
8:電極パッド
12:電解質溶液
13:電源
14:電極
15:溝部
16:食み出し
17:面取り
d:角度
Claims (6)
- 発熱抵抗体を一方の主面に形成してなるセラミックシートを、前記発熱抵抗体が内側になるようにセラミック芯材に周回密着して一体的に焼成してなるセラミックヒータにおいて、前記セラミックシートの両端部の間に、幅が0.2〜2.0mmの溝部を形成するとともに、前記溝部の両側面のなす角度が40°以上であることを特徴とするセラミックヒータ。
- 前記セラミックシートとセラミック芯材との間に、セラミックス粉末を分散させた密着液を塗布して密着させたことを特徴とする請求項1記載のセラミックヒータ。
- 前記密着液が、前記溝部に0.1〜1.0mmの幅ではみ出していることを特徴とする請求項2記載のセラミックヒータ。
- 前記溝部の角部に面取りを備えたことを特徴とする請求項1記載のセラミックヒータ。
- 発熱抵抗体およびこれに接続される電極引出部をセラミック体中に内蔵し、該セラミック体の表面に前記電極引出部と接続された電極パッドを有するセラミックヒータにおいて、上記電極パッド以外のセラミック体を電解質溶液中に浸漬した時に、該電解質溶液中に形成した電極と前記セラミックヒータの電極パッド間の耐電圧が1000V以上であることを特徴とするセラミックヒータ。
- 発熱抵抗体およびこれに接続される電極引出部をセラミック体中に内蔵し、該セラミック体の表面に前記電極引出部と接続された電極パッドを有するセラミックヒータにおいて、セラミックヒータの電極パッド以外のセラミック体を電解質溶液中に浸漬し、該電解質溶液中に形成した電極と、セラミックヒータの電極パッド間に100〜3500Vの電圧を印加して電気絶縁性を確認することを特徴とするセラミックヒータの試験方法。
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