JP3961387B2 - セラミックヒータの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車用の空燃比検知センサ加熱用ヒータや気化器用ヒータ、半田ごて用ヒータなどに使用するセラミックヒータの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、特許文献1に示されているように、アルミナを主成分とするセラミックス中に、W、Re、Mo等の高融点金属からなる発熱抵抗体を埋設してなるアルミナセラミックヒータが、一般的に用いられている。
【0003】
例えば、円柱状のセラミックヒータを製造する場合は、図1に示すようにセラミック芯材2とセラミックシート3を用意し、セラミックシート3の一方面にW、Re、Mo等の高融点金属のペーストを印刷して発熱抵抗体4と電極引出部5を形成した後、これらを形成した面が内側となるようにセラミックシート3を上記セラミック芯材2の周囲に巻付け、全体を焼成一体化することによりセラミックヒータ1としていた。
【0004】
セラミックシート3上には、発熱抵抗体4に電極引出部5が接続され、電極引出部5の末端にスルーホールが形成され裏面の電極パッド8と該電極引出部5がスルーホールで接続されている。スルーホールには、必要に応じて導体ペーストが注入される。
【0005】
そして、セラミックヒータ1は、側面に露出した電極パッド8にリード部材7をロウ材によりロウ付けして接合し、このリード部材7から通電することにより発熱抵抗体4が発熱するようになっていた。
【0006】
しかしながら、セラミックシート3をセラミック芯材2の周囲に周回密着する際に、セラミックシート3がセラミック芯材2から剥がれて両者の界面に隙間が発生し、絶縁不良が発生するものがあった。特に、セラミックシート3の硬さが硬い場合に、セラミック芯材2とセラミックシート3の間に隙間が発生しやすいという問題があった。
【0007】
セラミック芯材2にセラミックシート3を密着させる場合、これらの間に密着液を塗布し、セラミックシート2の上から圧力を加えることにより、セラミックシート3をセラミック芯材2に倣って密着させる。例えば、特許文献2には、セラミック芯材2の周囲にセラミックシート3を密着させるための手法が示されており、これらを密着させるための密着液として、セラミック材料37重量%に、ポリビニルブチラール25%、DBP8%、ブチルカルビトール30%を混合したものを使用することが示されている。バインダとして用いるポリビニルブチラールは、ガラス転移点が50〜80℃であり、常温では固形のバインダである。
【0008】
【特許文献1】
特開昭63−58479号公報
【特許文献2】
特開2000−123959号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、ポリビニルブチラールをバインダとして用いた場合は、バインダのガラス転移点が50〜80℃と高いので、これを溶解し作業性の良い密着液とするため、密着液中のセラミック材料の含有量を40重量%以下と少なくしなければならない。そこで、セラミック芯材2とセラミックシート3との界面に流動性のある層が残りやすくなり、密着時にセラミックシート3の端面に発生する剥離応力に負けてセラミックシート3がセラミック芯材2から剥離するという問題があった。
【0010】
このような問題は通常は発生しないが、突発的に発生する。例えばこのような問題が酸素センサ加熱用のセラミックヒータにおいて発生すると、セラミックヒータが劣化して作動しなくなるため、センサ始動時の立ち上がり特性に悪影響を及ぼすことになる。
【0011】
通常、セラミック芯材2に密着したセラミックシート3に、発熱抵抗体4の端部から0.5mm以上の密着しろを確保して発熱抵抗体4が酸化することを防止するようにしているが、上記のような剥離が発生すると前記密着しろが確保できず、酸素の拡散により酸化しやすくなる。このような剥離は、初期はあまり目立たなくとも、セラミックシート3の端部に発生した剥離により生成した隙間を介した酸素の拡散により使用中に発熱抵抗体4が酸化し、セラミックヒータ1の耐久性が低下するという問題があった。
【0012】
本発明は、上記の問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的は、セラミック芯材に対してセラミックシートを密着させる密着液を改良することにより、簡便な操作で密着が可能で耐久性の優れたセラミックヒータを提供できるようにすることを目的としたものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明のセラミックヒータの製造方法は、発熱抵抗体を一方の主面に形成してなるセラミックシートを、前記発熱抵抗体が内側になるようにセラミック芯材に周回密着して一体的に焼成してなるセラミックヒータにおいて、前記セラミックシートとセラミック芯材とを周回密着する際、ガラス転移点が−60〜0℃であり分子量が1万〜80万のバインダとセラミック粉末を混合した密着液を用いて密着させることを特徴とする。
【0014】
また、本発明のセラミックヒータの製造方法は、前記セラミック芯材にセラミックシートを周回密着する際、前記セラミックシートの両端部の間に形成される溝部に、0.1〜1.0mmの幅で密着液をはみ出させることを特徴とする。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のセラミックヒータの製造方法について図1を用いて実施の形態を説明する。
図1(a)は、セラミックヒータ1の一部分を説明のために切り欠いた斜視図であり、(b)は、そのセラミック体6のセラミックシート3を展開した斜視図である。
【0016】
本発明のセラミックヒータ1の製造方法は、以下の通りである。即ち、セラミックシート3の表面には、発熱抵抗体4と電極引出部5が形成され、さらに、その裏面側に形成される電極パッド8との間をスルーホールで接合した構造となっている。こうして準備されたセラミックシート3をセラミック芯材2の表面に、本発明の密着液を塗布することで発熱抵抗体4が内側になるように密着し、その後焼成してセラミック体6を形成する。そしてさらに、電極パッド8にリード部材7を、ロウ材(不図示)を用いて接合することによりセラミックヒータ1とする。
【0017】
本発明に用いられる密着液として、セラミックスシート2と略同一の組成のセラミックス原料を分散させ、結合材としてガラス転移点が−60〜0℃であり、且つ分子量が1万〜80万のバインダを使用することにより密着液の密着力を向上させることにより、さらに密着液中の原料比率を40重量%以上とすることが可能となり、セラミック芯材2に密着したセラミックシート3が剥離することのない信頼性の高い密着をすることが可能となる。
【0018】
前記バインダのガラス転移点が−60℃よりも小さい場合、もしくはバインダの分子量が8000より小さい場合、バインダの粘着力が不足して良好な密着ができなくなるので好ましくない。また、前記バインダのガラス転移点が0℃を越えたり、その分子量が80万を越えたりするとバインダの粘度が上昇し、粘度を低下させるために密着液中のセラミックス原料の比率を下げなければならないので、密着時にセラミック芯材2とセラミックシート3の界面に密着液が残留しやすくなり、密着液の密着力が低下し剥離が発生しやすくなるので好ましくない。
【0019】
また、特に、バインダのガラス転移点を−60〜−20℃とし、且つ分子量を10万〜60万とすることにより、セラミックシート3への密着液塗布時の密着液の糸引き等の発生を抑え、密着作業中のバインダ自体の密着力をさらに向上させることができる。この糸引きは余分な部分に密着液を付着させ、それがさらにセラミックシート3の密着面以外の電極パッド8等に付着し、外観不良等の原因となる場合があるので、好ましくない。
【0020】
このような密着液に使用するバインダの改良により、バインダに添加する可塑材に頼らず、バインダ自身の粘性や分子量により粘着性を向上させるので、1回の密着操作で確実な密着操作が可能となり、密着作業時のセラミック芯材2とセラミックシート3の剥離を防止することができる。
【0021】
バインダのガラス転移点の調整は、バインダを構成するモノマーの比率を変更することにより可能である。例えば、アクリル系のバインダを用いる場合、モノマーとして2−エチルヘキシルアクリレート、ブチルアクリレート、エチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルエタクリレート、ブチルエタクリレート、イソブチルメタクリレート等の比率をそれぞれ変化させて重合することにより、任意のガラス転移点を有するバインダを作製することができる。バインダの種類としては、アクリル系のものを使用することが好ましい。
【0022】
ちなみに、各モノポリマーのガラス転移点は概ね、2−エチルヘキシルアクリレート(−75℃)、ブチルアクリレート(−56℃)、エチルアクリレート(−27℃)、ブチルメタクリレート(20℃)、イソブチルメタクリレート(48℃)、エチルメタクリレート(42℃)、メチルメタクリレート(103℃)であり、これらの組成比を種々選択することにより、色々なガラス転移点のバインダを作製することができる。
【0023】
また、バインダの分子量は、上記重合の温度と時間を調整することにより調整することが可能である。
【0024】
また、密着液に用いる上記バインダの好ましい添加量は、10〜25重量%となるようにすることが好ましい。バインダの添加量が10重量%未満では、密着液の密着力が足りずにセラミック芯材2からセラミックシート3が剥離しやすくなる。また、バインダの添加量が25重量%を越えると、密着液中に分散するセラミックスの量が少なくなるので、密着時にセラミック芯材2とセラミックシート3の間に残る密着液の流動性が残り易くなり、これにより密着液の密着力が低下するので好ましくない。
【0025】
また、この溝部15の幅wは、0.2〜2mmとすることが好ましい。該幅は、図2に示すようにセラミック芯材2との接合部におけるセラミックシート3端部の距離を意味する。この幅wが0.2mmより小さくなると、セラミックシート3は弾性を有するのでセラミックシート3を密着する時に、その端部がぶつかり、セラミックシート3の端部に剥がれが発生しやすくなるので好ましくない。また、隙間が2.0mmを越えると、セラミックシート3とセラミック芯材2の焼成収縮差によりセラミックヒータ1の反りの原因となるので、好ましくない。また、セラミック芯材2の径が2〜4mmと細いものについては、セラミックヒータ1の周方向の温度分布を小さくするために、溝部15の幅wのなす角度θがセラミク芯材2の周方向45°を越えないようにすることが好ましい。
【0026】
また、本発明の密着液の塗布に際し、発熱抵抗体4の表面に直接密着材を塗布すると、密着時に発熱抵抗体4パターンが可塑化し、発熱抵抗体4パターンが短絡したり断線したりする場合があるので、発熱抵抗体4パターンの上には、別のセラミックシート3を密着させるかもしくはコート層を形成して、発熱抵抗体4を保護することが好ましい。
【0027】
また、図2に示すように、前記セラミック芯材2にセラミックシート3を周回密着した際、前記セラミックシート3の両端部の間に形成される溝部15に、0.1〜1.0mmの幅で密着液をはみ出させることが好ましい。セラミックシート3の端面には、セラミック芯材2からセラミックシート3を剥離しようとする応力が集中するので、セラミックシート3の端面に密着液が食み出すようにすることにより端面の密着力を向上させ、セラミックシート3端面の剥離を防止することが可能となる。
【0028】
この剥離が生じるかどうかの耐久性を判断する試験方法としては、図3に示すように電解質溶液12中にセラミックヒータ1の電極パッド8以外のセラミック体を浸漬し、該電解質溶液12中に形成した電極14とセラミックヒータ1の電極パッド8の間に100〜3500Vの電圧を印加して、電気絶縁性を評価することができる。
【0029】
セラミックヒータ1のセラミック芯材2とセラミックシート3の密着の信頼性の評価方法として、上記のような試験方法を採用するのは、非常に有用である。さらに密着界面への浸透性を向上させるために、アルコール等の表面張力の小さい溶剤を添加すれば、さらに信頼性を向上させることができる。この試験方法については、円筒型や円柱型にこだわることなく、板状積層型のセラミックヒータについても応用できる。
【0030】
この試験に用いる電解質溶液の種類としては、色々なものを使用できるが、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム等の強酸と強塩基の塩を用いた溶液を用いることが好ましい。また、その濃度としては、電気を流せる程度であれば問題ないが使い易さの観点からは0.5〜10%程度とすることが好ましい。また、アルコールのように水に分散して浸透性の高い溶媒を少量添加すると、小さな欠陥にも溶液が浸透するのでさらに好ましい。
【0031】
そして、本発明の製造方法を用いたセラミックヒータ1は、上記試験方法において、電解質溶液中に形成した電極と前記セラミックヒータの電極パッド間の耐電圧が1000V以上でにすることができる。
【0032】
さらに、本発明に用いられるセラミックヒータ1の詳細について説明する。
【0033】
本発明のセラミックヒータ1の電極パッド8には、焼成後メッキ層を形成することが好ましい。このメッキ層は、リード部材7を電極パッド8の表面にロウ付けする際に、ロウ材の流れを良くし、ロウ付け強度を増すためである。通常1〜5μm厚みのメッキ層を形成する。メッキ層の材質としては、Ni、Cr、もしくはこれらを主成分とする複合材料を使用することができる。
【0034】
リード部7を固定するロウ材層としては、Au、Cu、Au−Cu、Au−Ni、Ag、Ag−Cu系のロウ材が使用される。好ましくは、Au−Cuロウとしては、Au含有量が25〜95重量%としAu−NiロウとしてはAu含有量が50〜95重量%とすると、ロウ付け温度を1000℃程度に設定でき、ロウ付け後の残留応力を低減できるので良い。また、湿度が高い雰囲気中で使用する場合、Au系、Cu系のロウ材を用いた方が、マイグレーションが発生しにくくなるので好ましい。
【0035】
また、ロウ材層の表面には、メッキ層を形成することが腐食からロウ材層を保護するために好ましい。
【0036】
また、電極パッド8の端部からロウ材層の端部までの距離が少なくとも0.2mm以上あるようにすることが好ましい。前記距離が0.2mm未満であると、電極パッド8の端部がロウ材の収縮時に引っ張られて剥離しやすくなり、ロウ付け強度が低下するので、好ましくない。
【0037】
また、電極パッド8に形成されるスルーホールの位置とロウ材層の端部との距離を少なくとも0.2mm以上にすると、良好なロウ付け強度を維持することができる。これにより、メッキ層の表面に形成したロウ材層が固化する際に大きく収縮し、電極パッド8を剥がしてしまうというような不具合を防止できるからである。
【0038】
次にリード部材7の材質としては、耐熱性良好なNi系やFe−Ni系合金等を使用することが好ましい。発熱抵抗体4からの熱伝達により、使用中にリード部材7の温度が上昇し、劣化する可能性があるからである。
【0039】
中でも、リード部材7の材質としてNiやFe−Ni合金を使用する場合、その平均結晶粒径を400μm以下とすることが好ましい。前記平均粒径が400μmを越えると、使用時の振動および熱サイクルにより、ロウ付け部近傍のリード部材7が疲労し、クラックが発生するので好ましくない。他の材質についても、例えばリード部材7の粒径がリード部材7の厚みより大きくなると、ロウ材層とリード部材7の境界付近の粒界に応力が集中して、クラックが発生するので好ましくない。
【0040】
なお、ロウ付けの際の熱処理は、試料間のバラツキを小さくするためには、ロウ材の融点より十分余裕をとった高めの温度で熱処理する必要があるが、リード部材7の平均結晶粒径を400μm以下と小さくするためには、ロウ付けの際の温度をできるだけ下げ、処理時間を短くすればよい。
【0041】
また、セラミック体中にW、Mo、Re等の高融点金属を主成分とする発熱抵抗体4を埋設したセラミックヒータ1において、発熱抵抗体4のパターン欠陥の幅がパターン幅の1/2以下とすることが好ましい。これは、前記欠陥の幅がパターン幅の1/2を越えると、この部分で局部発熱し、発熱抵抗体4の抵抗値が大きくなり、耐久性が劣化するので、好ましくない。
【0042】
このような欠陥が発生する原因は、発熱抵抗体4をプリント形成する時に、プリント製版にゴミが付着したためパターンが欠けてしまったり、異物が混入し焼成時に焼失したりすることにより発生するものと思われる。プリントや密着工程で、生のセラミックグリーンシート3を取り扱う工程があるが、この工程の清浄度を向上させるとともに、万一の欠陥の発生に関して、上記寸法以上の欠陥を取り除くための検査工程の整備が重要である。
【0043】
また、セラミック体6の材質としては、Al2O388〜95重量%、SiO22〜7重量%、CaO0.5〜3重量%、MgO0.5〜3重量%、ZrO21〜3重量%からなるアルミナを使用することが好ましい。Al2O3含有量をこれより少なくすると、ガラス質が多くなるため通電時のマイグレーションが大きくなるので好ましくない。また、逆にAl2O3含有量をこれより増やすと、内蔵する発熱抵抗体4の金属層内に拡散するガラス量が減少し、セラミックヒータ1の耐久性が劣化するので好ましくない。ここで、セラミックスとしてアルミナの例を示したが、本発明で示したことは、アルミナ質セラミックスに限定されることではなく、窒化珪素質セラミックス、窒化アルミニウム質セラミックス、炭化珪素質セラミックス等、また、セラミックヒータのみならず、Au系のロウ付けを実施する全てのものに当てはまる現象である。
【0044】
また、セラミックヒータ1の寸法については、例えば外径が2〜20mm、長さが40〜200mm程度にすることが可能である。自動車の空燃比センサ加熱用のセラミックヒータ1としては、外径が2〜4mm、長さが40〜65mmとすることが好ましい。
【0045】
さらに、自動車用の用途では、発熱抵抗体4の発熱長さが3〜15mmとなるようにすることが好ましい。発熱長さが3mmより短くなると、通電時の昇温を早くすることができるが、セラミックヒータ1の耐久性を低下させる。また、発熱長さを15mmより長くすると昇温速度が遅くなり、昇温速度を早くしようとするとセラミックヒータ1の消費電力が大きくなるので好ましくない。ここで、発熱長さというのは、図1(b)で示す発熱抵抗体4の往復パターンの部分の長さである。この発熱長さは、その目的とする用途により、選択される。
【0046】
【実施例】
実施例 1
Al2O3を主成分とし、SiO2、CaO、MgO、ZrO2を合計10重量%以内になるように調整し、アクリル系のバインダ10重量%と可塑材としてDBPを添加したセラミックグリーンシート3を準備し、この表面に、W−Reからなる発熱抵抗体4とWからなる電極引出部5をプリントした。また、裏面には電極パッド8をプリントした。発熱抵抗体4は、発熱長さ5mmで4往復のパターンとなるように作製した。
【0047】
そして、Wからなる電極引出部5の末端には、スルーホールを形成し、ここにペーストを注入する事により電極パッド8と電極引出部5間の導通をとった。スルーホールの位置は、ロウ付けを実施した場合にロウ付け部の内側に入るように形成した。そして、発熱抵抗体の表面にセラミックシート3と略同一の成分からなるコート層を形成して充分乾燥した後、さらに前記セラミックシート3と略同一の組成のセラミックスを分散させ、結合材としてガラス転移点が+20℃、0℃、−10℃、−20℃、−40℃、−60℃であり、分子量が8000、1万、10万、20万、40万、60万、80万、100万と変量したアクリル系のバインダを用いた密着液を作製し、これらを用いてセラミックシート3をセラミック芯材2の周囲に密着し、1500〜1600℃で焼成することにより、セラミックヒータ1とした。各ロット1000個の試料を作製し評価した。
【0048】
この時、セラミックヒータ1に形成される溝部15の幅wを0.5mmとして、密着性への影響を耐電圧特性により評価した。各条件、試料を1000本作製し、焼成後耐電圧の評価を実施し、絶縁破壊するものの本数を確認した。尚、溝部15の幅wは、図2に示すようにセラミックシート3の両端面の幅wを意味する。電解質溶液としては、塩化ナトリウムの1%溶液を用いて、溶液中に設置された電極とセラミックヒータの間に、1000Vの電圧を10秒間印加して絶縁破壊しないことを確認した。
【0049】
また、絶縁破壊した試料については、図2に示すような発熱抵抗体4埋設部の周方向断面を観察して、セラミックシート3とセラミック芯材2の密着状況を40倍の双眼顕微鏡で調査した。
【0050】
これらの結果を、表1に示した。
【0051】
【表1】
【0052】
表1から判るように、密着液に用いるバインダのガラス転移点が20℃であり分子量が20万であるNo.1は、耐電圧不良が4個発生した。また、密着液に用いるバインダのガラス転移点が−70℃であり分子量が20万であるNo.7は、耐電圧不良が2個発生した。また、バインダのガラス転移点が−20℃であり分子量が8000であるNo.8は、耐電圧不良が4個発生した。また、密着液に用いるバインダのガラス転移点が−20℃であり分子量が100万であるNo.14は、耐電圧不良が2個発生した。
【0053】
これに対し、密着液に用いるバインダのガラス転移点が−60〜0℃であり分子量が1〜80万であるNo.2〜6、8〜14は、耐電圧不良は発生せず、良好であった。
【0054】
また、No.4〜6、10〜13のように、密着液塗布時に生じる密着液の、製版からの糸引き等による作業性の低下の面からみると、密着液に用いるバインダのガラス転移点は−60〜−20℃とし、分子量は10万〜60万とすることが、さらに好ましいことが判った。
【0055】
実施例 2
ここでは、セラミックヒータ1のセラミックシート3密着部に形成される溝部15の端面からの密着液のはみ出しと密着性の関係を調査した。セラミックシート3をセラミック芯材2の周囲に密着して、密着面からの密着液のはみ出しhを調整した。なお、密着については、一旦セラミック芯材2の表面にセラミックシート3を密着させた後、さらに3本のロールを同一方向に回転させるロールの間にセラミックシート3を密着したセラミック体6を装着して回転させることにより密着した。また、セラミック芯材2の外径は8mmとし、溝部15の幅wは2.3mmとした。
【0056】
評価方法としては、焼成後、まず実施例1と同様な方法で耐電圧を確認し、その後、セラミックヒータ1を輪切り状に切断し、その溝部15を観察してセラミックシート3端部の密着状況を各条件50本づつ確認した。
【0057】
結果を表2に示した。
【0058】
【表2】
【0059】
表2から判るように、密着液のはみ出しhがないNo.1は、耐電圧に異常はなかったが、溝部1にあるセラミック芯材2とセラミックシートの密着面の端部に、小さな剥離がみられるものがあった。これに対し前記はみ出しhを0.1〜1.0mmとしたNo.2〜5については、密着面の端部に隙間が発生するものはなく、密着性が良好であることを確認できた。従来は、前記はみ出し量を管理していなかったが、前記はみ出し量を管理することにより、セラミクヒータ1の耐久性とその信頼性を向上できる事がわかった。密着液は、上記のように若干溝部15にはみ出す程度に調整することが好ましい。
【0060】
【発明の効果】
本発明によれば、発熱抵抗体を一方の主面に形成してなるセラミックシートを、前記発熱抵抗体が内側になるようにセラミック芯材に周回密着して一体的に焼成してなるセラミックヒータにおいて、前記セラミックシートとセラミック芯材とを周回密着する際、ガラス転移点が−60〜0℃であり分子量が1万〜80万のバインダとセラミック粉末を混合した密着液を用いて密着させることにより、セラミックシートをセラミック芯材に押圧密着する際のセラミックシート端面の剥離を防止し、耐久性良好なセラミックヒータを得ることができる。
【0061】
また、前記セラミック芯材にセラミックシートを周回密着した際、前記セラミックシートの両端部の間に形成される溝部に、0.1〜1.0mmの幅で密着液をはみ出させることにより、さらに密着性を向上させることが可能となる。
【0062】
これらの改善により、セラミックヒータの電気絶縁性を向上させ、耐久性良好なセラミクヒータを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は、本発明のセラミックヒータの斜視図であり、(b)はその展開斜視図である。
【図2】本発明のセラミックヒータの断面図である。
【図3】本発明の電気絶縁性を確認する試験装置の概略図である。
【符号の説明】
1:セラミックヒータ
2:セラミック芯材
3:セラミックシート
4:発熱抵抗体
5:電極引出部
7:リード部材
8:電極パッド
12:電解質溶液
13:電源
14:電極
15:溝部
16:はみだし
17:面取り
θ:角度
Claims (2)
- 発熱抵抗体を一方の主面に形成してなるセラミックシートを、前記発熱抵抗体が内側になるようにセラミック芯材に周回密着して一体的に焼成してなるセラミックヒータにおいて、前記セラミックシートとセラミック芯材とを周回密着する際、ガラス転移点が−60〜0℃であり分子量が1万〜80万のバインダとセラミック粉末を混合した密着液を用いて密着させることを特徴とするセラミックヒータの製造方法。
- 前記セラミック芯材にセラミックシートを周回密着する際、前記セラミックシートの両端部の間に形成される溝部に、0.1〜1.0mmの幅で密着液をはみ出させることを特徴とする請求項1記載のセラミックヒータの製造方法。
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