JP2004005937A - 磁気記録媒体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】支持体上にCuAu型あるいはCu3Au型硬磁性規則合金相からなる磁性層を有する磁気記録媒体であって、前記磁性層の表面の中心線平均粗さが、カットオフ値0.25mmにおいて、0.1〜5nmであることを特徴とする磁気記録媒体である。
また、非磁性の金属酸化物マトリックス中にCuAu型あるいはCu3Au型硬磁性規則合金相を有する金属ナノ粒子を含有する磁性層が支持体上に形成されていることを特徴とする磁気記録媒体である。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、磁気記録媒体に関し、特に、硬磁性を有する金属ナノ粒子を磁性層に含有する磁気記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】
磁性層に含有される磁性体の粒子サイズを小さくすることは、磁気記録密度を高くする上で必要である。たとえば、ビデオテープ、コンピュータテープ、ディスクなどとして広く用いられている磁気記録媒体では、強磁性体の質量が同じ場合、粒子サイズを小さくしていった方がノイズは下がる。
CuAu型あるいはCu3Au型硬磁性規則合金は、規則化時に発生する歪みのために、結晶磁気異方性が大きく、粒子サイズを小さくし、いわゆる金属ナノ粒子といわれる状態としても硬磁性を示すことから、磁気記録密度向上に有望な素材である。
【0003】
CuAu型またはCu3Au型合金を形成しうる金属ナノ粒子の合成法としては、沈殿法で分類すると、▲1▼1級アルコールを用いるアルコール還元法、▲2▼2級、3級、2価または3価のアルコールを用いるポリオール還元法、▲3▼熱分解法、▲4▼超音波分解法、▲5▼強力還元剤還元法、などがある(例えば、特許文献1参照)。
また、反応系で分類すると、▲6▼高分子存在法、▲7▼高沸点溶媒法、▲8▼正常ミセル法、▲9▼逆ミセル法、などがある。
【0004】
上記方法で合成された金属ナノ粒子の構造は、面心立方晶となる。面心立方晶は通常、軟磁性あるいは常磁性を示す。軟磁性あるいは常磁性では記録媒体用には適していない。磁気記録媒体に必要な95.5kA/m(1200Oe)以上の保磁力を有する硬磁性規則合金を得るには、不規則相から規則相へ変態する変態温度以上でアニール処理を施す必要がある。
【0005】
液相法で調製された金属ナノ粒子は、通常、有機分散剤やポリマーなどにより分散した状態で存在する。このような状態の金属ナノ粒子を支持体上に塗布し、不活性ガス中で変態温度以上で熱処理を施して磁性層を形成すると、金属ナノ粒子が硬磁性となる一方で、有機分散剤やポリマーは炭化される。金属ナノ粒子間の磁化を独立させるためには、この炭化は好ましいが、支持体と磁性層との密着性および磁性層の膜強度を高く保つには適さない。すなわち、磁性層が剥がれやすくなったり、その表面に傷がつきやすくなったりする欠点を有している。
【0006】
【特許文献1】
特開2003−73705号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
以上から、本発明は、硬磁性を示し、膜強度および支持体との密着性が高い磁性層を有する磁気記録媒体を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決すべく鋭意検討の結果、本発明者は、以下に示す本発明により上記課題を解決できることを見出した。
すなわち、本発明(第1の発明)は、支持体上にCuAu型あるいはCu3Au型硬磁性規則合金相からなる磁性層を有する磁気記録媒体であって、前記磁性層の表面の中心線平均粗さが、カットオフ値0.25mmにおいて、0.1〜5nmであることを特徴とする磁気記録媒体である。
【0009】
また、本発明(第2の発明)は、非磁性の金属酸化物マトリックス中にCuAu型あるいはCu3Au型硬磁性規則合金相を有する金属ナノ粒子を含有する磁性層が支持体上に形成されていることを特徴とする磁気記録媒体である。
ここで、前記磁性層の中心線平均粗さは、カットオフ値0.25mmにおいて、0.1〜5nmであることが好ましい。
金属酸化物マトリックスが非磁性であることで、単磁区構造を持つ金属ナノ粒子間の接触がなくなり、磁気記録したときの遷移ノイズが減少するといった効果が得られる。
非磁性の金属酸化物マトリックスは、シリカ、チタニアおよびポリシロキサンから選ばれる少なくとも1種のマトリックス剤からなることが好ましく、オルガノシリカゾル、オルガノチタニアゾルおよびシリコーン樹脂から選ばれる少なくとも1種のマトリックス剤からなることがより好ましい。
なお、上記マトリックス剤が主成分となっていれば、これらのほかに種々の公知の添加剤を併用添加してもよい。
【0010】
第1の発明および第2の発明は、ともに、前記磁性層表面が、バーニッシュ処理されていることが好ましい。また、前記磁性層表面に形成された高さ12nm以上の突起の数は、5個以下であることが好ましい。
【0011】
【発明の実施の形態】
〔第1の磁気記録媒体〕
本発明の第1の磁気記録媒体は、支持体上にCuAu型あるいはCu3Au型硬磁性規則合金相からなる磁性層を有する磁気記録媒体であって、前記磁性層の中心線平均粗さが、カットオフ値0.25mmにおいて、0.1〜5nmとなっている。中心線平均粗さが、0.1nm未満では、ヘッドと磁気記録媒体との摩擦係数が高くなって貼りついてしまい、実用に供することができない。また、5nmを超えると、スペーシングロスが大きくなり出力が低下してしまう。
【0012】
本発明の磁気記録媒体は、表面の中心線平均粗さ(Ra)が、カットオフ値0.25mmにおいて、0.1〜5nmとなっている。極めて優れた平滑性を有する表面であることが高密度記録用の磁気記録媒体として好ましいため、上記Raは0.1〜4nmの範囲であることがより好ましい。
【0013】
本発明の磁気記録媒体をハードディスク用記録媒体として用いるには、Raは0.1〜1nmであることが好ましく、0.3〜0.8nmであることがより好ましい。1nmを超えるとフライングヘッドが浮上しなくなり、ヘッドが媒体表面にクラッシュしてしまうことがある。0.1nm未満だとトラブルによりヘッドが媒体表面に接触した状態で媒体の回転が止まった場合、当該ヘッドが媒体表面に貼り付いてしまい動かなくなってしまうことがある。
【0014】
本発明の磁気記録媒体をフロッピー(R)ディスクまたはテープなどのフレキシブル媒体に用いる場合は、ヘッドが媒体に接触した状態で走行する記録方式なので、媒体表面が平滑になりすぎると摩擦係数が高くなりヘッドが媒体に貼り付いてしまうことがある。そこで好ましいRaは1〜4nmであり、さらに好ましくは2〜3nmである。Raが大きすぎるとヘッドと媒体の実効の距離が離れ、良好な電磁変換特性を得る事ができなくなることがある。
【0015】
磁性層の表面を平滑にする方法として、後述する第2の磁気記録媒体のように、マトリックス剤を磁性層に含有させることが有効である。さらに、磁性層を塗布した後にカレンダー処理を施すことが好ましい。また、微小突起あるいは塵埃を除去するために、バーニッシュ処理を施してもよい。
【0016】
本発明の磁気記録媒体をハードディスクとして使用し、その媒体をヘッドバーニッシュによりバーニッシュ処理を施す場合、処理前の表面がある程度平滑であることが好ましい。平滑でないと、バーニッシュヘッドが浮上できなくなり、媒体表面にクラッシュしてしまうことがある。
【0017】
バーニッシュ処理後、ヘッドに歪ゲージがついたグライドヘッドで表面突起の有無を調べることができる。
ヘッドの浮上量は、バーニッシュヘッド、グライドヘッド、電磁変換特性ヘッドの順に高くなる。当該バーニッシュヘッドの浮上量は、5〜15nmとすることが好ましく、10〜12nmとすることが好ましい。なお、通常、グライドヘッドの浮上量は約12nmである。
また、バーニッシュ処理を行う際の荷重は、3〜12gとすることが好ましく、3〜6gとすることより好ましい。
【0018】
本発明の磁気記録媒体の表面の突起は、グライドヘッドを用いて評価する事ができる。磁性層表面に突起が存在すると電磁変換特性ヘッドと突起がぶつかり、突起が削られる結果、削りカスがヘッドに付着し、ヘッドギャップをうめ、電磁変換特性が評価できなくなるため、存在しないことが好ましいが、グライドヘッドでの評価時に当該表面突起を除去することができる。従って、12nm以上の表面突起は好ましくは5個以下、さらに好ましくは3個以下であり、理想的には0個である。これは、個数が多くなるとグライドヘッドの汚れが多く、グライドヘッドを掃除する回数が増え、あるいは交換回数が増えることから工業的に好ましくない。
【0019】
本発明の第2の磁気記録媒体は、非磁性の金属酸化物マトリックス中にCuAu型あるいはCu3Au型硬磁性規則合金相を有する金属ナノ粒子を含有する磁性層が支持体上に形成されている。
【0020】
非磁性の金属酸化物マトリックス中に上記金属ナノ粒子を含有する層を磁性層とすることで、当該磁性層の耐傷性を高め、支持体との密着性を高めることができる。
すなわち、金属ナノ粒子を規則化するためのアニール処理を施しても、金属酸化物マトリックスがバインダーとしての役割を果たすため、支持体との密着性を高い状態に維持することが可能となる。また、アニール処理を行っても、金属酸化物マトリックスの構成が変化せずに、強固な磁性層が形成されるため、有機分散剤やポリマーの炭化による膜強度の低下が抑制され、耐傷性を向上させることができる。
さらに、金属酸化物マトリックスに含有された上記金属ナノ粒子は、互いに凝集することがなく、高分散な状態を維持することができるので、金属ナノ粒子の有する硬磁性を効率よく発揮させることができる。
【0021】
非磁性の金属酸化物マトリックスは、シリカ、チタニアおよびポリシロキサンから選ばれる少なくとも1種のマトリックス剤からなることが好ましく、具体的には、オルガノシリカゾル(例えば、日産化学製シリカゾル、シーアイ化成製ナノテックSiO2)、オルガノチタニアゾル(例えば、シーアイ化成製ナノテックTiO2)およびシリコーン樹脂(例えば、東レ製トレフィルR910)から選ばれる少なくとも1種のマトリックス剤からなることが好ましい。
上記材料は、磁性層の耐傷性および密着性を高めるのに特に有効である。
マトリックス剤の添加量は、金属ナノ粒子の全体積対して、1〜50体積%であり、好ましくは2〜30体積%、より好ましくは3〜20体積%である。さらに好ましくは5〜20体積%である。これはマトリックス剤の添加量が少ないと表面の平滑化効果が少なく、多すぎると磁性体の充填度が低くなり、良好な電磁変換特性を得ることができなくなるためである。
【0022】
なお、第2の磁気記録媒体も、第1の磁気記録媒体と同様に、その磁性層の中心線平均粗さがカットオフ値0.25mmにおいて、0.1〜5nmであることが好ましい。また、磁性層表面は、バーニッシュ処理されていることが好ましい。さらに、磁性層表面に形成された高さ12nm以上の突起の数が、5個以下であることが好ましい。より好ましいRaや突起の数等の範囲、および、バーニッシュ処理等の条件は、第1の磁気記録媒体と同様である。
【0023】
本発明の磁気記録媒体(第1の磁気記録媒体および第2の磁気記録媒体をいう。以下同様。)の具体例としては、ビデオテープ、コンピュータテープ、フロッピー(R)ディスク、ハードディスク等の磁気記録媒体や、MRAM等の磁気記録媒体が挙げられる。
【0024】
本発明の磁気記録媒体の磁性層に含有される金属ナノ粒子は、CuAu型あるいはCu3Au型硬磁性規則合金相を有している。かかる合金相は、硬磁性を示すため、磁気記録媒体に好適に使用することができる。
【0025】
当該CuAu型強磁性規則合金としては、FeNi、FePd、FePt、CoPt、CoAuなどが挙げられ、なかでもFePd、FePt、CoPtであることが好ましい。
また、Cu3Au型強磁性規則合金としては、Ni3Fe、FePd3、Fe3Pt、FePt3、CoPt3、Ni3Pt、CrPt3、Ni3Mnが挙げられ、なかでもFePd3、FePt3、CoPt3、Fe3Pd、Fe3Pt、Co3Ptが好ましい。
【0026】
アニールした後、すなわち規則化された金属ナノ粒子の保磁力は、95.5〜636.8kA/m(1200〜8000Oe)であることが好ましく、磁気記録媒体への適用を考慮し記録ヘッドが対応できるという観点から、95.5〜398kA/m(1200〜5000Oe)であることがより好ましい。
【0027】
金属ナノ粒子は、気相法や液相法により製造することができる。液相法としては、従来から知られている種々の方法を適用することができるが、これらに改良を加えた逆ミセル法や還元法を適用することが好ましい。
【0028】
(逆ミセル法)
上記逆ミセル法は、少なくとも、(1)2種の逆ミセル溶液を混合して還元反応を行う還元工程と、(2)還元反応後に所定温度で熟成する熟成工程と、を有する。
以下、各工程について説明する。
【0029】
(1)還元工程:
まず、界面活性剤を含有する非水溶性有機溶媒と還元剤水溶液とを混合した逆ミセル溶液(I)を調製する。
【0030】
前記界面活性剤としては、油溶性界面活性剤が用いられる。具体的には、スルホン酸塩型(例えば、エーロゾルOT(和光純薬製))、4級アンモニウム塩型(例えば、セチルトリメチルアンモニウムブロマイド)、エーテル型(例えば、ペンタエチレングリコールドデシルエーテル)などが挙げられる。
非水溶性有機溶媒中の界面活性剤量は、20〜200g/リットルであることが好ましい。
【0031】
前記界面活性剤を溶解する非水溶性有機溶媒として好ましいものは、アルカン、エーテルおよびアルコール等が挙げられる。
アルカンとしては、炭素数7〜12のアルカン類であることが好ましい。具体的には、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン等が好ましい。
エーテルとしては、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル等が好ましい。
アルコールとしては、エトキシエタノール、エトキシプロパノール等が好ましい。
【0032】
還元剤水溶液中の還元剤としては、アルコール類;ポリアルコール類;H2;HCHO、S2O6 2−、H2PO2 −、BH4 −、N2H5 +、H2PO3 −などを含む化合物;を単独で使用、または2種以上を併用することが好ましい。
水溶液中の還元剤量は、金属塩1モルに対して、3〜50モルであることが好ましい。
【0033】
ここで、逆ミセル溶液(I)溶液中の水と界面活性剤との質量比(水/界面活性剤)は、20以下となるようにすることが好ましい。質量比が20を超えると、沈殿が起きやすく、粒子も不揃いとなりやすいといった問題が生じることがある。質量比は、15以下とすることが好ましく、0.5〜10とすることがより好ましい。
【0034】
上記とは別に、界面活性剤を含有する非水溶性有機溶媒と金属塩水溶液とを混合した逆ミセル溶液(II)を調製する。
界面活性剤および非水溶性有機溶媒の条件(使用する物質、濃度等)については、逆ミセル溶液(I)の場合と同様である。
なお、逆ミセル溶液(I)と同種のものまたは異種のものを使用することができる。また、逆ミセル溶液(II)溶液中の水と界面活性剤との質量比も逆ミセル溶液(I)の場合と同様であり、逆ミセル溶液(I)の質量比と同一としてもよく、異なっていてもよい。
【0035】
金属塩水溶液に含有される金属塩としては、作製しようとする金属ナノ粒子がCuAu型あるいはCu3Au型強磁性規則合金を形成し得るように、適宜選択することが好ましい。
具体的には、H2PtCl6、K2PtCl4、Pt(CH3COCHCOCH3)2、Na2PdCl4、Pd(OCOCH3)2、PdCl2、Pd(CH3COCHCOCH3)2、HAuCl4、Fe2(SO4)3、Fe(NO3)3、(NH4)3Fe(C2O4)3、Fe(CH3COCHCOCH3)3、NiSO4、CoCl2、Co(OCOCH3)2などが挙げられる。
【0036】
金属塩水溶液中の濃度(金属塩濃度として)は、0.1〜2000μmol/mlであることが好ましく、0.1〜1000μmol/mlであることがより好ましく、1〜500μmol/mlであることがさらに好ましく、1〜100μmol/mlであることが特に好ましい。
【0037】
前記金属塩を適宜選択することで、卑な金属と貴な金属とが合金を形成したCuAu型もしくはCu3Au型強磁性規則合金を形成し得る金属ナノ粒子が作製される。
【0038】
金属ナノ粒子をアニールすることによって合金相を不規則相から規則相へ変態させる必要があるが、当該変態温度を下げるために、前記2元系合金に、Sb、Pb、Bi、Cu、Ag、Zn、Inなどの第三元素を加えることが好ましい。これらの第三元素は、それぞれの第三元素の前駆体を、前記金属塩溶液に予め添加しておくことが好ましい。添加量としては、2元系合金に対し、1〜30at%であることが好ましく、5〜20at%であることがより好ましい。
【0039】
以上のようにして調製した逆ミセル溶液(I)と(II)とを混合する。混合方法としては、特に限定されるものではないが、還元の均一性を考慮して、逆ミセル溶液(I)を撹拌しながら、逆ミセル溶液(II)を添加していって混合することが好ましい。混合終了後、還元反応を進行させることになるが、その際の温度は、−5〜30℃の範囲で、一定の温度とすることが好ましい。
還元温度が−5℃未満では、水相が凝結して還元反応が不均一になるといった問題が生じ、30℃を超えると、凝集または沈殿が起こりやすく系が不安定となることがある。好ましい還元温度は0〜25℃であり、より好ましくは5〜25℃である。
ここで、前記「一定温度」とは、設定温度をT(℃)とした場合、当該TがT±3℃の範囲にあることをいう。なお、このようにした場合であっても、当該Tの上限および下限は、上記還元温度(−5〜30℃)の範囲にあるものとする。
【0040】
還元反応の時間は、逆ミセル溶液の量等により適宜設定する必要があるが、1〜30分とすることが好ましく、5〜20分とすることがより好ましい。
【0041】
還元反応は、粒径分布の単分散性に大きな影響を与えるため、できるだけ高速攪拌しながら行うことが好ましい。
好ましい攪拌装置は高剪断力を有する攪拌装置であり、詳しくは、攪拌羽根が基本的にタービン型あるいはパドル型の構造を有し、さらに、その羽根の端もしくは、羽根と接する位置に鋭い刃を付けた構造であり、羽根をモーターで回転させる攪拌装置である。具体的には、ディゾルバー(特殊機化工業製)、オムニミキサー(ヤマト科学製)、ホモジナイザー(SMT製)などの装置が有用である。これらの装置を用いることにより、単分散な金属ナノ粒子を安定な分散液として合成することができる。
【0042】
前記逆ミセル溶液(I)および(II)の少なくともいずれかに、アミノ基またはカルボキシ基を1〜3個有する少なくとも1種の分散剤を、作製しようとする金属ナノ粒子1モル当たり、0.001〜10モル添加することが好ましい。
【0043】
かかる分散剤を添加することで、より単分散で、凝集の無い金属ナノ粒子を得ることが可能となる。
添加量が、0.001モル未満では、金属ナノ粒子の単分散性をより向上させることできない場合があり、10モルを超えると凝集が起こる場合がある。
【0044】
前記分散剤としては、金属ナノ粒子表面に吸着する基を有する有機化合物が好ましい。具体的には、アミノ基、カルボキシ基、スルホン酸基またはスルフィン酸基を1〜3個有するものであり、これらを単独または併用して用いることができる。
構造式としては、R−NH2、NH2−R−NH2、NH2−R(NH2)−NH2、R−COOH、COOH−R−COOH、COOH−R(COOH)−COOH、R−SO3H、SO3H−R−SO3H、SO3H−R(SO3H)−SO3H、R−SO2H、SO2H−R−SO2H、SO2H−R(SO2H)−SO2Hで表される化合物であり、式中のRは直鎖、分岐または環状の飽和、不飽和の炭化水素である。
【0045】
分散剤として特に好ましい化合物はオレイン酸である。オレイン酸はコロイドの安定化において周知の界面活性剤であり、鉄ナノ粒子を保護するのに用いられてきた。オレイン酸の比較的長い(たとえば、オレイン酸は18炭素鎖を有し長さは〜20オングストローム(〜2nm)である。オレイン酸は脂肪族ではなく二重結合が1つある)鎖は粒子間の強い磁気相互作用を打ち消す重要な立体障害を与える。
エルカ酸やリノール酸など類似の長鎖カルボン酸もオレイン酸同様に(たとえば、8〜22の間の炭素原子を有する長鎖有機酸を単独でまたは組み合わせて用いることができる)用いられる。オレイン酸は(オリーブ油など)容易に入手できる安価な天然資源であるので好ましい。また、オレイン酸から誘導されるオレイルアミンもオレイン酸同様有用な分散剤である。
【0046】
以上のような還元工程では、CuAu型あるいはCu3Au型硬磁性規則合金相中のCo、Fe、Ni、Cr等の酸化還元電位が卑な金属(−0.2V(vs.N.H.E)程度以下の金属)が還元され、極小サイズで単分散な状態で析出するものと考えられる。その後、昇温段階および後述する熟成工程において、析出した卑な金属を核とし、その表面で、Pt、Pd、Rh等の酸化還元電位が貴な金属(−0.2V(vs.N.H.E)程度以上の金属)が卑な金属で還元されて置換、析出する。イオン化した卑な金属は還元剤で再度還元されて析出すると考えられる。このような繰返しによって、CuAu型あるいはCu3Au型硬磁性規則合金を形成し得る金属ナノ粒子が得られる。
【0047】
(2)熟成工程:
還元反応終了後、反応後の溶液を熟成温度まで昇温する。
前記熟成温度は、30〜90℃で一定の温度とすることが好ましく、その温度は、前記還元反応の温度より高くする。また、熟成時間は、5〜180分とすることが好ましい。熟成温度および時間が上記範囲より高温長時間側にずれると、凝集または沈殿が起きやすく、逆に低温短時間側にずれると、反応が完結しなくなり組成が変化することがある。好ましい熟成温度および時間は40〜80℃および10〜150分であり、より好ましい熟成温度および時間は40〜70℃および20〜120分である。
【0048】
ここで、前記「一定温度」とは、還元反応の温度の場合と同義(但し、この場合、「還元温度」は「熟成温度」となる)であるが、特に、上記熟成温度の範囲(30〜90℃)内で、前記還元反応の温度より5℃以上高いことが好ましく、10℃以上高いことがより好ましい。5℃未満では、処方通りの組成が得られないことがある。
【0049】
以上のような熟成工程では、還元工程で還元析出した卑な金属上に貴な金属が析出する。
すなわち、卑な金属上でのみ貴な金属の還元が起こり、卑な金属と貴な金属とが別々に析出することが無いため、効率良くCuAu型あるいはCu3Au型硬磁性規則合金を形成し得る金属ナノ粒子を、高収率で処方組成比どおりに作製することが可能で、所望の組成に制御することができる。また、熟成の際の温度の撹拌速度を適宜調整することで、得られる金属ナノ粒子の粒径を所望なものとすることができる。
【0050】
前記熟成を行った後は、水と1級アルコールとの混合溶液で前記熟成後の溶液を洗浄し、その後、1級アルコールで沈殿化処理を施して沈殿物を生成させ、該沈殿物を有機溶媒で分散させる洗浄・分散工程を設けることが好ましい。
かかる洗浄工程を設けることで、不純物が除去され、磁気記録媒体の磁性層を塗布により形成する際の塗布性をより向上させることができる。
上記洗浄および分散は、少なくともそれぞれ1回、好ましくは、それぞれ2回以上行う。
【0051】
洗浄で用いる前記1級アルコールとしては、特に限定されるものではないが、メタノール、エタノール等が好ましい。体積混合比(水/1級アルコール)は、10/1〜2/1の範囲にあることが好ましく、5/1〜3/1の範囲にあることがより好ましい。
水の比率が高いと、界面活性剤が除去されにくくなることがあり、逆に1級アルコールの比率が高いと、凝集を起こしてしまうことがある。
【0052】
以上のようにして、溶液中に分散した金属ナノ粒子(金属ナノ粒子分散液)が得られる。
当該金属ナノ粒子は、単分散であるため、支持体に塗布しても、これらが凝集することなく均一に分散した状態を保つことができる。従って、アニール処理を施しても、それぞの金属ナノ粒子が凝集することがないため、効率良く硬磁性化することが可能で、塗布適性に優れる。
【0053】
アニール前の金属ナノ粒子の粒径は、一般に、1〜20nmであることが好ましく、3〜10nmであることがより好ましい(後述する還元法により得られる金属ナノ粒子も同様)。磁気記録媒体として用いるには金属ナノ粒子を最密充填することが記録容量を高くする上で好ましい。そのためには、本発明の金属ナノ粒子の変動係数は10%未満が好ましく、より好ましくは5%以下である。粒子サイズが小さすぎると、熱ゆらぎのため超常磁性となり好ましくない。構成元素によって最小安定粒径が異なるが、必要な粒径を得るために、H2O/界面活性剤質量比を変化させて合成することが有効である。
【0054】
(還元法)
還元法で金属ナノ粒子を調製するには、Co、Fe、Ni、Cr等の酸化還元電位が卑な金属(以下、単に「卑な金属」ということがある)と、Pt、Pd、Rh等の酸化還元電位が貴な金属(以下、単に「貴な金属」ということがある)と、を液相中で還元剤等を使用して還元し、金属ナノ粒子を析出させる方法を適用することが好ましい。
このとき、卑な金属と貴な金属との還元順序は、特に限定されず、同時に還元してもよい。
【0055】
また、既述の逆ミセル法と同様に、2元系合金に、Sb、Pb、Bi、Cu、Ag、Zn等の第三元素を加えることで硬磁性規則合金への変態温度を下げることができる。添加量としては全体量に対し、1〜20at%が好ましく、5〜15at%がより好ましい。
【0056】
例えば、還元剤を用いて卑な金属と貴な金属をこの順に還元して析出させる場合、−0.2V(vs.N.H.E)より卑な還元電位を持つ還元剤を用いて卑な金属あるいは卑な金属と貴な金属の一部を還元したものを貴な金属源に加え酸化還元電位が−0.2V(vs.N.H.E)より貴な還元剤を用いた後、−0.2V(vs.N.H.E)より卑な還元電位を持つ還元剤を用いる事が好ましい。
酸化還元電位は系のpHに依存するが、酸化還元電位が−0.2V(vs.N.H.E)より貴な還元剤には、1,2−ヘキサデカンジオール等のアルコール類、グリセリン類、H2、HCHOが好ましく用いられる。
−0.2V(vs.N.H.E)より卑な還元剤にはS2O6 2−、H2PO2 −、BH4 −、N2H5 +、H2PO3 −が好ましく用いる事ができる。なお、卑な金属の原料として、Feカルボニル等の0価の金属化合物と用いる場合は、特に卑な金属の還元剤は必要ない。
【0057】
貴な金属を還元析出させる際に吸着剤を存在させる事で金属ナノ粒子を安定に形成させることができる。吸着剤としてはポリマーや界面活性剤を使用することが好ましい。該ポリマーとしては、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリN−ビニル−2ピロリドン(PVP)、ゼラチンである。特に好ましくはPVPである。
分子量は2千〜6万が好ましく、より好ましくは2千〜3万である。ポリマーの量は生成する硬磁性金属ナノ粒子の質量の0.1〜10倍であることが好ましく、0.1〜5倍がより好ましい。
【0058】
吸着剤として好ましく用いられる界面活性剤は、一般式:R−X、で表される長鎖有機化合物である「有機安定剤」を含むことが好ましい。上記一般式中のRは、直鎖または分岐ハイドロカーボンまたはフルオロカーボン鎖である「テール基」であり、通常8〜22の炭素原子を含む。また、上記一般式中のXは、金属ナノ粒子表面に特定の化学結合を提供する部分(X)である「ヘッド基」であり、スルフィネート(−SOOH)、スルホネート(−SO2OH)、ホスフィネート(−POOH)、ホスホネート(−OPO(OH)2)、カルボキシレート、およびチオールのいずれかであることが好ましい。
【0059】
以上のようにして、溶液中に分散した金属ナノ粒子(金属ナノ粒子分散液)が得られる。
【0060】
調製した金属ナノ粒子の粒径評価には透過型電子顕微鏡(TEM)を用いることができる。加熱により硬磁性化した金属ナノ粒子の結晶系を決めるにはTEMによる電子線回折でもよいが、精度高く行うにはX線回折を用いた方が良い。硬磁性化した金属ナノ粒子の内部の組成分析には電子線を細く絞ることができるFE−TEMにEDAXを付け評価することが好ましい。硬磁性化した金属ナノ粒子の磁気的性質の評価はVSMを用いて行うことができる。
【0061】
本発明の磁気記録媒体は、既述の金属ナノ粒子分散液に既述のマトリックス剤や必要に応じて種々の添加剤を添加して、磁性層を形成するための塗布液(磁性層塗布液)を調製し、該塗布液を支持体上に塗布して、アニール処理を施して磁性層を形成して製造される。
ここで、上記塗布液中の金属ナノ粒子の含有量は、5〜50mg/mlとすることが好ましい。
また、マトリックス剤は、既述のものを1種以上添加し、その含有量が、0.007〜1.0μg/mlなるようにすることが好ましく、0.01〜0.7μg/mlとなるようにすることがより好ましい。
【0062】
また、必要に応じて磁性層と支持体との間に非磁性層やバック層等を設けてもよい。例えば、本発明の磁気記録媒体が磁気ディスクの場合、支持体の反対側の面にも同様に磁性層、必要に応じ磁性層と非磁性層を設けることが好ましい。本発明の磁気記録媒体が磁気テープの場合、磁性層の反対側の支持体面上にはバック層を設けることが好ましい。非磁性層やバック層はスパッタ膜でも、また、塗布膜のいずれでもよい。
【0063】
本発明の磁気記録媒体に使用される支持体としては、無機物および有機物のいずれも適用することが可能で、厚さは3〜800μmのものを使用することが好ましい。
【0064】
無機物の支持体としては、Al;Al−Mg合金;Mg−Al−ZnなどのMg合金;ガラス;石英;カーボン;シリコン;セラミックス;などが挙げられる。
これらの支持体は耐衝撃性に優れ、また薄型化や高速回転に適した剛性を有する。また、有機物支持体に対し熱に強い特徴を有している。
【0065】
有機物の支持体としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル類;ポリオレフィン類;セルロ−ストリアセテート;ポリカ−ボネート;ポリアミド(脂肪族ポリアミドやアラミド等の芳香族ポリアミドを含む);ポリイミド;ポリアミドイミド;ポリスルフォン;ポリベンゾオキサゾール;などが挙げられる。
【0066】
塗布液を支持体上に塗布して下層塗布層あるいは磁性層を形成する際の磁性層の乾燥後の層厚は、5〜200nmの範囲内にあることが好ましく、5〜50nmの範囲内より好ましい。
ここで、複数の磁性層塗布液を逐次あるいは同時に重層塗布してもよく、下層塗布液と磁性層塗布液とを逐次あるいは同時に重層塗布してもよい。
上記磁性塗布液もしくは下層塗布液を塗布する塗布方法としては、エアードクターコート、ブレードコート、ロッドコート、押出しコート、エアナイフコート、スクイズコート、含浸コート、リバースロールコート、トランスファーロールコート、グラビヤコート、キスコート、キャストコート、スプレイコート、スピンコートなどが利用できる。
【0067】
液相法などで調製した直後の金属ナノ粒子(金属ナノ粒子分散液中の金属ナノ粒子)は不規則相である。規則相を得るためにアニールする必要がある。アニールは、粒子の融着を防止するため、支持体に塗布液を塗布した後に行うことが好ましい。
【0068】
アニール温度は示差熱分析(DTA)を用い、金属ナノ粒子を構成する合金の規則不規則変態温度を求め、その温度より上の温度で行うことが必要である。変態温度は元素組成によって、また、第三元素の添加によって変化する。
有機物支持体を用いる場合は、支持体の耐熱温度以下の変態温度を有する金属ナノ粒子を用いるか、パルスレーザによる磁性層のみのアニールが有効である。
【0069】
以上のようにして形成された磁性層は、金属酸化物マトリックスの存在により支持体との密着性だけでなく耐傷性にも優れたものになっているが、上記磁性層上に非常に薄い保護膜を形成することで耐磨耗性を改善し、さらにその上に潤滑剤を塗布して滑り性を高めることによって、十分な信頼性を確保することが可能となる。
【0070】
保護膜としては、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化コバルト、酸化ニッケルなどの酸化物;窒化チタン、窒化ケイ素、窒化ホウ素などの窒化物;炭化ケイ素、炭化クロム、炭化ホウ素等の炭化物;グラファイト、無定型カーボンなどの炭素;からなる保護膜があげられるが、好ましくは、炭素からなるカーボン保護膜である。また、カーボン保護膜でも、一般にダイヤモンドライクカーボンと呼ばれる硬質の非晶質カーボンが特に好ましい。
カーボン保護膜の製造方法として、ハードディスクにおいては、スパッタ法が一般的であるが、ビデオテープ等の連続成膜を行う必要のある製品ではより成膜速度の高いプラズマCVDを用いる方法が多数提案されている。中でもプラズマインジェクションCVD(PI−CVD)法は成膜速度が非常に高く、得られるカーボン保護膜も硬質かつピンホールが少ない良質な保護膜が得られると報告されている(例えば、特開昭61−130487、特開昭63−279426、特開平3−113824等)。
【0071】
カーボン保護膜はビッカース硬度で1000Kg/mm2以上、好ましくは2000Kg/mm2以上の硬質の炭素膜である。また、その結晶構造はアモルファス構造であり、かつ非導電性である。そして、カーボン保護膜として、ダイヤモンド状炭素膜を使用した場合、その構造をラマン光分光分析によって測定した場合には、1520〜1560cm−1にピークが検出されることによって確認することができる。膜の構造がダイヤモンド状構造からずれてくるとラマン光分光分析により検出されるピークが上記範囲からずれるとともに、膜の硬度も低下する。
【0072】
カーボン保護膜を作製するための原料としては、メタン、エタン、プロパン、ブタン等のアルカン;エチレン、プロピレン等のアルケン;アセチレン等のアルキン;をはじめとした炭素含有化合物を用いることができる。また、必要に応じてアルゴンなどのキャリアガスや膜質改善のための水素や窒素などの添加ガスを加えることができる。
【0073】
カーボン保護膜の膜厚が厚いと電磁変換特性の悪化や磁性層に対する密着性の低下が生じ、膜厚が薄いと耐磨耗性が不足するため、膜厚は2.5〜20nmが好ましく、5〜10nmが特に好ましい。
【0074】
磁性層は電磁変換特性を改善するため重層構成としたり、非磁性下地層や中間層を有していてもよい。
【0075】
本発明の磁気記録媒体において、走行耐久性および耐食性を改善するため、上記磁性層もしくは保護膜上に潤滑剤や防錆剤を付与することが好ましい。
添加する潤滑剤としては公知の炭化水素系潤滑剤、フッ素系潤滑剤、極圧添加剤などが使用できる。
【0076】
炭化水素系潤滑剤としては、ステアリン酸、オレイン酸等のカルボン酸類;ステアリン酸ブチル等のエステル類;オクタデシルスルホン酸等のスルホン酸類;リン酸モノオクタデシル等のリン酸エステル類;ステアリルアルコール、オレイルアルコール等のアルコール類;ステアリン酸アミド等のカルボン酸アミド類;ステアリルアミン等のアミン類;などが挙げられる。
【0077】
フッ素系潤滑剤としては、上記炭化水素系潤滑剤のアルキル基の一部または全部をフルオロアルキル基もしくはパーフルオロポリエーテル基で置換した潤滑剤が挙げられる。
パーフルオロポリエーテル基としては、パーフルオロメチレンオキシド重合体、パーフルオロエチレンオキシド重合体、パーフルオロ−n−プロピレンオキシド重合体(CF2CF2CF2O)n、パーフルオロイソプロピレンオキシド重合体(CF(CF3)CF2O)nまたはこれらの共重合体等が挙げられる。また、末端や分子内に水酸基、エステル基、カルボキシル基などの極性官能基を有する化合物が摩擦力を低減する効果が高く好適である。この分子量は500〜5000であることが好ましく、1000〜3000であることがより好ましい。上記範囲未満では揮発性が高くなり、潤滑性が低くなることがある。また、上記範囲を超えると粘度が高くなるため、スライダーとディスクが吸着しやすく、走行停止やヘッドクラッシュなどを発生しやすくなる。
このパーフルオロポリエーテルで置換した潤滑剤の具体例としては、アウジモンド社からFOMBLIN、デュポン社からKRYTOXなどの商品名で市販されている。
【0078】
極圧添加剤としては、リン酸トリラウリル等のリン酸エステル類、亜リン酸トリラウリル等の亜リン酸エステル類、トリチオ亜リン酸トリラウリル等のチオ亜リン酸エステルやチオリン酸エステル類、二硫化ジベンジル等の硫黄系極圧剤などが挙げられる。
【0079】
上記潤滑剤は単独もしくは複数を併用して使用される。これらの潤滑剤を磁性層もしくは保護膜上に付与する方法としては、潤滑剤を有機溶剤に溶解し、ワイヤーバー法、グラビア法、スピンコート法、ディップコート法等で塗布するか、真空蒸着法によって付着させればよい。
【0080】
防錆剤としては、ベンゾトリアゾール、ベンズイミダゾール、プリン、ピリミジン等の窒素含有複素環類およびこれらの母核にアルキル側鎖等を導入した誘導体、ベンゾチアゾール、2−メルカプトンベンゾチアゾール、テトラザインデン環化合物、チオウラシル化合物等の窒素および硫黄含有複素環類およびこの誘導体等が挙げられる。
【0081】
本発明で用いる支持体の磁性層が形成されていない面にバックコート層(バッキング層)を設ける場合の当該バックコート層は、支持体の磁性層が形成されていない面に、研磨材、帯電防止剤などの粒状成分と結合剤とを有機溶剤に分散したバックコート層形成塗料を塗布して設けることができる。
粒状成分としては、各種の無機顔料やカーボンブラックを使用することができ、また結合剤としてはニトロセルロース、フェノキシ樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリウレタン等の樹脂を単独またはこれらを混合して使用することができる。
なお、支持体のナノ粒子の分散液およびバックコート層形成塗料の塗布面に接着剤層が設けられていてもよい。
【0082】
以上のようにして得られた磁気記録媒体は、打ち抜き機で打ち抜くあるいは裁断機などを使用して所望の大きさに裁断して使用することができる。
【0083】
【実施例】
以下、実施例をもとに本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0084】
〔実施例1〕
(FePt金属ナノ粒子の合成)
高純度N2ガス中で下記の操作を行った。
NaBH4(和光純薬製)0.76gを水(脱酸素:0.1mg/リットル以下)24mlに溶解した還元剤水溶液に、エーロゾルOT(和光純薬製)10.8gとデカン(和光純薬製)80mlとオレイルアミン(東京化成製)2mlとを混合したアルカン溶液を添加、混合して逆ミセル溶液(I)を調製した。
【0085】
三シュウ酸三アンモニウム鉄(Fe(NH4)3(C2O4)3)(和光純薬製)0.46gと塩化白金酸カリウム(K2PtCl4)(和光純薬製)0.38gとを水(脱酸素)12mlに溶解した金属塩水溶液に、エーロゾルOT5.4gとデカン40mlとを混合したアルカン溶液を添加、混合して逆ミセル溶液(II)を調製した。
【0086】
逆ミセル溶液(I)を22℃でオムニミキサー(ヤマト科学製)で高速攪拌しながら、逆ミセル溶液(II)を瞬時に添加した。10分後、マグネチックスターラーで攪拌しながら、50℃に昇温して60分間熟成した。
オレイン酸(和光純薬製)2mlを添加して、室温まで冷却した。冷却後大気中に取出した。逆ミセルを破壊するために、水100mlとメタノール100mlとの混合溶液を添加して水相と油相とに分離した。油相側に金属ナノ粒子が分散した状態が得られた。油相側を水600mlとメタノール200mlとの混合溶液で5回洗浄した。
【0087】
その後、メタノールを1100ml添加して金属ナノ粒子にフロキュレーションを起こさせて沈降させた。上澄み液を除去して、ヘプタン(和光純薬製)20mlを添加して再分散した。
さらに、メタノール100ml添加による沈降とヘプタン20ml分散との沈降分散を2回繰り返して、最後にヘプタン5mlを添加して、FePt金属ナノ粒子分散液を調製した。
【0088】
得られた金属ナノ粒子について、収率、組成、数平均粒径および分布(変動係数)、保磁力の測定を行ったところ、下記のような結果が得られた。
なお、組成および収率は、ICP分光分析(誘導結合高周波プラズマ分光分析)で測定した。
数平均粒径および分布はTEM撮影した粒子を計測して統計処理して求めた。
保磁力の測定は、東英工業製の高感度磁化ベクトル測定機と同社製DATA処理装置を使用し、印加磁場790kA/m(10kOe)の条件で行った。測定用金属ナノ粒子は、調製した金属ナノ粒子分散液から金属ナノ粒子を捕集し、十分乾燥させ、電気炉で加熱した後のものを使用した。
【0089】
組成:Pt45.2at%のFePt合金、収率:80%、
平均粒径:4.8nm、変動係数:5%、
保磁力(Arガス雰囲気下、電気炉550℃、30分加熱後):521.4kA/m(6600Oe)
【0090】
(磁性層の形成)
Si支持体の表面を焼成して、表面から約300nmの深さだけSiO2にした支持体(600μm)上に、前記FePt金属ナノ粒子分散液(塗布液)にシリコーン樹脂(東レ製トレフィルR910)を5体積%添加した塗布液をスピンコートした。塗布量は0.4g/m2であった。
さらに、電気炉中でArガス雰囲気下、550℃30分間加熱して、金属ナノ粒子からなる磁性層(膜厚:50nm)を形成した。
【0091】
(保護膜の形成)
ASTeX社製のプラズマインジェクションCVD装置において、反応管の先端と支持体との間の距離が22mmになるように、磁性層を形成したSi支持体を設置した。
次に、真空槽を排気し、系内を399×10−6Paとした後、ガス導入管よりエチレンガス150sccm、アルゴンガス50sccmを導入して、反応管内を1.33Paとした。この状態で、反応管の励起コイルに13.56MHzの高周波を450Wの電力で印加し、原料ガス(エチレンガス)をプラズマ化した。
Si支持体には−400V、アノード電極には+500Vのバイアスを印加した。中心部の膜厚が10nmとなるようにカーボン保護膜を形成した。
【0092】
(潤滑剤塗布)
形成したカーボン保護膜上に、リン酸モノラウリルエステルおよびパーフルオロオクタン酸ステアリルエステルの混合物を、それぞれ3mg/m2となるようにスピンコートし、磁気記録媒体を作製した。
保護膜と合わせた膜厚は約15nmであった。
【0093】
〔実施例2〕
磁性層を形成するための塗布液中のシリコーン樹脂を、オルガノシリカゾル(シーアイ化成製ナノテックSiO2)5体積%とした以外は実施例1と同様にして、磁気記録媒体を作製した。
【0094】
〔実施例3〕
磁性層を形成するための塗布液中のシリコーン樹脂を、オルガノチタニアゾル(シーアイ化成製ナノテックTiO2)5体積%とした以外は実施例1と同様にして、磁気記録媒体を作製した。
【0095】
〔比較例1〕
磁性層を形成するための塗布液中にシリコーン樹脂を添加しなかった以外は実施例1と同様にして、磁気記録媒体を作製した。
【0096】
(膜強度の評価)
実施例1〜3および比較例1で作製した磁気記録媒体を、ハードディスク電磁変換特性評価用のスピンスタンド(協同電子製SS−60,Guzik RWA−1601)に設置し、傷の付き易さで膜強度を評価した。結果を下記表1に示す。
なお、傷の数は、光学顕微鏡(100倍)により、中心から半径40〜60mmの位置を連続的に3ヶ所観察して、それらの平均により求めた。
【0097】
(密着性の評価)
支持体と磁性層との密着性を調べるため、50mm角の範囲(S1とする)で表面に約5mmマスの傷をカッターで付け、その後ポリエステルテープを気泡が入り込まないように表面に貼り付け、テープの端部を持って急激に引き剥がした後、剥がれた膜の面積(S2とする)を測定し、剥がれた膜の割合(S2/S1)を求めて評価した。結果を下記表1に示す。
【0098】
【表1】
【0099】
表1から明らかなように、非磁性の金属酸化物マトリックス中に金属ナノ粒子を含有する磁性層を形成することで、膜強度および支持体との密着性を向上させることができた。
【0100】
〔実施例4〕
シリコーン樹脂を20体積%とした以外は、実施例1と同様にして磁気記録媒体を作製した。
【0101】
〔実施例5〕
シリコーン樹脂を30体積%とした以外は、実施例1と同様にして磁気記録媒体を作製した。
【0102】
実施例1,4,5および比較例1で作製した磁気記録媒体について、磁性層の表面の中心線平均粗さ(カットオフ値0.25mm)を測定した。また、バーニッシュ処理時のクラッシュの有無を調べた。結果を表2に示す。なお、磁性層の表面性(Ra)は、WYCO社製の3Dミローで測定した。
【0103】
【表2】
【0104】
比較例1の磁気記録媒体では、Raが大きかったため、ヘッドクラッシュが起こった。これに対し、実施例1,4,5の磁気記録媒体では、いずれも、、ヘッドクラッシュが起こることがなかった。
【0105】
〔実施例6〜8〕
実施例1,4,5で作製した磁気記録媒体のそれぞれの磁性層の表面に、バーニッシュ処理を施して、それぞれ、実施例6,7,8に係る磁気記録媒体を作製した。
実施例1,4,5および実施例6〜8並びに、比較例1の磁気記録媒体の磁性層の表面の突起の数、グライドヘッドの汚れ、電特評価ヘッドの汚れの評価を、実体顕微鏡で観察することで行った。結果を表3に示す。なお、表中の汚れの程度は、「わずかにあり」より「少しあり」の方が汚れていることが示す。
【0106】
【表3】
【0107】
なお、バーニッシュ処理はGLIDE/WRITE社製の下記の仕様のバーニッシュヘッドを用いた。
・スライダー:24pads、
・荷重:5g、
・サスペンション:Type 2030、
・Z−height:0.7366mm(29mil)
【0108】
また、グライド処理(表面の突起の数)はGLIDE/WRITE社製の下記の仕様のバーニッシュヘッドを用いた。
・センサー:PZT、
・荷重:3.5g、
・サスペンション:Type T2、
・Z−height:0.2032mm(8mil)、
・Flyheight:12nm
【0109】
表3の結果より、本実施例により、電磁変換特性評価時に問題なく評価できる媒体を得ることができることがわかる。また、予めバーニッシュ処理を施すことにより、グライドヘッドの汚れが少なく、工業適性上優れた媒体を供給することができることが確認された。
【0110】
【発明の効果】
以上本発明によれば、硬磁性を示し、膜強度および支持体との密着性が高い磁性層を有する磁気記録媒体を提供することができる。
Claims (5)
- 支持体上にCuAu型あるいはCu3Au型硬磁性規則合金相からなる磁性層を有する磁気記録媒体であって、前記磁性層の表面の中心線平均粗さが、カットオフ値0.25mmにおいて、0.1〜5nmであることを特徴とする磁気記録媒体。
- 非磁性の金属酸化物マトリックス中にCuAu型あるいはCu3Au型硬磁性規則合金相を有する金属ナノ粒子を含有する磁性層が支持体上に形成されていることを特徴とする磁気記録媒体。
- 前記磁性層の中心線平均粗さが、カットオフ値0.25mmにおいて、0.1〜5nmであることを特徴とする請求項2に記載の磁気記録媒体。
- 前記磁性層表面が、バーニッシュ処理されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の磁気記録媒体。
- 前記磁性層表面に形成された高さ12nm以上の突起の数が、5個以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の磁気記録媒体。
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