JP2003196823A - 薄膜磁気記録媒体 - Google Patents

薄膜磁気記録媒体

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JP2003196823A
JP2003196823A JP2002298454A JP2002298454A JP2003196823A JP 2003196823 A JP2003196823 A JP 2003196823A JP 2002298454 A JP2002298454 A JP 2002298454A JP 2002298454 A JP2002298454 A JP 2002298454A JP 2003196823 A JP2003196823 A JP 2003196823A
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正彦 杉山
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 抗磁力が大きくドロップアウトが少ない薄膜
磁気記録媒体を得る。 【解決手段】 非磁性基板(31)上に形成した非磁性
金属酸化膜よりなる下地膜(32)と、この下地膜(3
2)の上に斜方蒸着法により形成したCo系磁性膜(3
3)とを順次積層してなる薄膜磁気記録媒体(30)で
あって、前記非磁性金属酸化膜よりなる下地膜(32)
は、非磁性金属酸化膜の微粒子が等方的に成長し、前記
微粒子の集合体を分離する明瞭な粒界を有しない構造と
した。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、非磁性基板上に、
スパッタリング法により非磁性金属よりなる下地膜を形
成し、この下地膜の上に、斜方蒸着法により磁性膜をそ
れぞれ形成した薄膜磁気記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、磁気記録媒体の記録密度は急速に
高密度化が図られている。この高密度化の過程で、磁気
記録媒体は高抗磁力、高磁束密度を有する酸化鉄テープ
からメタルテープ及び薄膜磁気記録媒体(薄膜テープ)
へと高性能なものに移行してきていることは周知の事実
である。この磁気記録媒体の応用として、例えば、VT
R分野では、今後、デジタル化、高精細化を達成するた
めに、特に、薄膜テープが注目されてきてから久しいも
のである。
【0003】ところで、薄膜テープとしては、磁性膜が
斜方蒸着法により形成された、いわゆる蒸着テープが実
用化されている。これは、具体的には後述するピアス型
電子銃を用いて、真空中で電子ビームをルツボ内のC
o、CoNiなどの磁性材料に照射して、これらの材料
を溶融、蒸発させ、酸素を導入しながら、後述するPE
T、PEN、PI(ポリイミド)、PA(ポリアミド)
などのベースフィルム上にCoO、CoNiOよりなる
薄膜を形成することにより製造されるものである。
【0004】図15は、この斜方蒸着法を使用した、一
般的な成膜装置の構成を示した構成図である。この図1
5に示す如く、斜方蒸着法を適用した薄膜磁気記録媒体
(薄膜テープ)成膜装置20は、真空槽1内が図示しな
い真空ポンプにより真空状態に保たれている。この真空
槽1内には、一対のフィルム巻回用ロール2、3と、一
対のテープガイドロール4、5と、冷却キャンロール7
とが配置されている。
【0005】そして、ベースフィルム6への通常の成膜
時には、前記した一対のフィルム巻回用ロール2、3の
うち、一方(供給側)のフィルム巻回用ロール2に巻回
したベースフィルム6を、テープガイドロール4、冷却
キャンロール7、テープガイドロール5に沿って他方
(巻取り側)のフィルム巻回用ロール3に向かって図中
矢印方向に走行させている。
【0006】この際、薄膜テープの媒体素材となるベー
スフィルム6は、例えば、所定厚さのPET(ポリエチ
レンテレフタレート)フィルムを用いている。また、冷
却キャンロール7の内部には、図示しない冷却装置が設
けられ、前記ベースフィルム6への蒸着時に、温度上昇
によるベースフィルム6の変形などを抑制している。
【0007】また、真空槽1内で冷却キャンロール7の
斜め右下方には、例えば、Coなどの磁性金属材料11
を収容した箱状のルツボ8が配置されている。更に、前
記した真空槽1の右側壁1aには、前記した磁性材料1
1を溶融、蒸発させるための加熱装置として、例えば、
ピアス型電子銃12が斜め左下方のルツボ8に向かって
取付けられている。このピアス型電子銃12は、ルツボ
8内の磁性金属材料11に向かって電子ビーム13が出
射されるように構成されており、電子ビーム13の照射
により磁性金属材料11を、例えば溶融させることによ
り、冷却キャンロール7に沿って走行しているベースフ
ィルム6に蒸着させている。
【0008】また、ベースフィルム6の走行時に、前記
したルツボ8から蒸発した磁性金属材蒸気11aが冷却
キャンロール7に付着しないように、ベースフィルム6
のエッヂ部分を覆う必要がある。更に、薄膜テープを作
製する場合には、電磁変換特性向上の要求から、ベース
フィルム6の面に対して蒸発したCoなどの磁性金属材
蒸気11aの付着入射角度を制限する必要があり、不適
切な部分での蒸着を防ぐために、入射角規制マスク9、
10を冷却キャンロール7とルツボ8との間に配設して
いる。
【0009】ここで、一方のマスク9は、前記した冷却
キャンロール7の所定位置に配置されることにより、磁
性金属材料11の磁性金属材蒸気11aのベースフィル
ム6に対する最大入射角θmaxが規制され、また、他
方のマスク10は、前記した冷却キャンロール7の所定
位置に配置されることにより、同じく最小入射角θmi
nが規制されるものである。
【0010】そして、前記したベースフィルム6が冷却
キャンロール7の外周面を走行している間に、所定の角
度に設定された最大及び最小入射角の範囲(この範囲
を、蒸着開口部という)で磁性金属材蒸気11aがベー
スフィルム6の表面に付着し、磁性膜が形成される。こ
のとき得られる磁性膜の磁気特性は、磁性金属材料11
の磁性金属材蒸気11aの最大入射角θmax及び最小
入射角θminにより決定される。一般には、最大入射
角θmax=90°、最小入射角θmin=40°に設
定されている。
【0011】なお、前記した冷却キャンロール7と入射
角規制マスク10との間で最小入射角θmin側の内側
には、図示しない酸素ガス導入パイプが取付けられてお
り、この図示しない酸素ガス導入パイプに設けられた、
これまた図示しない複数の孔から酸素ガスO2が、ルツ
ボ8内から蒸発した磁性金属材蒸気11aに向かって射
出されるものである。
【0012】また、ピアス型電子銃12から出射される
電子ビーム13は、軌道に偏向磁界を印加する偏向マグ
ネット15と、ルツボ8に近接して配置された偏向マグ
ネット14とにより制御されている。従って、ルツボ8
の長手方向に電子ビーム13を走査することにより、蒸
発したCoなどの磁性金属材蒸気11aがベースフィル
ム6の幅方向に、例えば、Co−CoOなどの部分酸化
磁性膜として極薄く膜付けされ、この部分酸化磁性膜を
ベースフィルム6の長手方向に成膜することにより、長
尺な薄膜テープが他方(巻取り側)のフィルム巻回用ロ
ール3に巻取られるものである。
【0013】なお、ルツボ8に近接して偏向マグネット
14を設置せずに、ピアス型電子銃12から出射された
直進する電子ビーム13を、ピアス型電子銃12内の偏
向マグネット15のみを用いてルツボ8内で走査させる
方法もあり、そのような方法によっても勿論よいもので
ある。
【0014】図16は、前記した斜方蒸着法を適用した
薄膜磁気記録媒体(薄膜テープ)成膜装置20により形
成された薄膜磁気記録媒体の一部を構成する非磁性下地
膜及びこの非磁性下地膜の上に形成された磁性膜の状態
を模式的に示した模式図である。すなわち、この図16
は、ベースフィルム走行方向に磁性膜を切断した際の断
面を、加速電圧200kVで透過型電子顕微鏡((株)
日立製作所製 H−800)により観察して得られた、
50〜250万倍の断面写真より構造を模式化したもの
である。
【0015】この図16において16は、図示しないベ
ースフィルムとなる非磁性基板の上に、斜方蒸着法によ
り導入酸素量の制御により磁性金属材蒸気を非磁性化し
て形成された柱状構造を有する非磁性金属酸化膜(Co
O)よりなる下地膜であり、この非磁性下地膜16に
は、微小Co結晶粒子(以後Co粒子と呼ぶ)が多い柱
状領域16Aと、微小CoO結晶粒子(以後CoO粒子
と呼ぶ)が多い領域17Aとが長手方向に形成されてい
る。そして、この柱状領域16Aは、膜面に垂直又は垂
直方向からやや傾いた形状として形成されている。18
は、この非磁性下地膜16の上に斜方蒸着法により導入
酸素量を最適化して形成された磁性膜である。
【0016】すなわち、従来の薄膜磁気記録媒体(薄膜
テープ)成膜装置20で、斜方蒸着法により形成された
薄膜磁気記録媒体は、前記した如く非磁性下地膜16
は、Co粒子とCoO粒子とより形成されている。そし
て、非磁性下地膜16を構成する各部のCo粒子とCo
O粒子の相対的な数は、柱状領域16Aと柱状領域16
との間の領域17AにはCoO粒子が多く、柱状領域1
6Aの内部にはCo粒子が多い。
【0017】すなわち、Co粒子が多い柱状領域16A
は、それが長手方向に複数個(16a〜16n)形成さ
れており、また、CoO粒子が多い領域17Aは、前記
したCo粒子が多い複数個(16a〜16n)の柱状領
域の間に、これまたそれが長手方向に複数個(17a〜
17n)形成されているものである。
【0018】このため、前記した長手方向に複数個形成
されたCo粒子が多い柱状領域16AとCoO粒子が多
い領域17Aとの境界を形成する粒界は明瞭になる。
【0019】また、前記した磁性膜18は、Co粒子が
多い柱状領域(18a〜18n)と、このCo粒子が多
い柱状領域(18a〜18n)の間にCoO粒子が多い
領域(19a〜19n)とで形成されている。
【0020】複数個の柱状領域(18a〜18n)は、
膜面に斜め方向に傾いた形状をしている。前記した柱状
領域16Aを有する非磁性下地膜16の上から斜方蒸着
法で酸素を導入してCoO磁性膜18を形成して薄膜テ
ープを完成する場合は、非磁性CoO膜を作成する場合
より酸素濃度が低い。従って、Co蒸発粒子は、導入し
た酸素との衝突確率が非磁性下地膜(CoO膜)16を
作成する場合より低くなるため直進する割合が多く、前
記した図15に示すように初期の入射角はθmaxに設
定しているため、ベースフィルム6面に斜めに入射する
ことになる。このため、粒子の集合体は入射方向に近い
斜め方向に成長して柱状構造をとることになると思われ
る。
【0021】ところで、従来の記録再生用のヘッドとし
ては、磁束誘導型ヘッドが用いられていたが、ヘッドイ
ンピーダンスが高いため、このヘッドの熱雑音によりC
N比が制限されていた。また、記録機器の小型化により
ヘッドとテープの相対速度が低くなると、再生出力が小
さくなり、高ビットレートで信号を記録再生することが
難しくなってきている。一方、記録媒体の高密度化に
は、抗磁力を高めるとともに磁性膜の膜厚を薄くする必
要がある。
【0022】前記した磁束誘導型ヘッドを用いてこの高
抗磁力化に対応した場合において、磁性膜の膜厚を大幅
に薄くした場合には、再生出力が低下しSN比が低下す
るという問題が生じる。この問題を解決するヘッドとし
ては、磁気抵抗効果を用いたMRヘッドが注目されてい
る。このMRヘッドは、記録媒体との相対速度に関係な
く高出力が得られる。また、このMRヘッドは、全帯域
にわたり抵抗値が小さいため、磁束誘導型ヘッドと比較
して熱雑音を大幅に低減できる利点がある。
【0023】しかしながら、このMRヘッドは、記録媒
体からの磁束が一定量以上になるとMR素子が飽和し、
素子の動作範囲が線形領域を越え、波形歪みやパルスの
非対称性が発生する。一方、MR素子に吸収される磁束
量は、記録媒体の残留磁束密度Brと磁性膜厚δの積で
あるBrδに比例する。このため、MRヘッドに最適な
Br、δを設定する必要がある。一般にMRヘッドに最
適な磁性膜厚δは、磁束誘導型ヘッドを用いた場合より
も薄くなる。
【0024】しかしながら、前記した斜方蒸着法を適用
して形成された磁性膜を、MRヘッドに最適な膜厚に設
定するため、膜厚を1000オングストロームより薄く
した場合に、抗磁力Hcが急激に低下する問題が発生し
た。
【0025】これを解決する方法として、斜方蒸着法に
より、非磁性基板上に酸素雰囲気中で磁性金属材料であ
るCoを蒸発させて形成した非磁性CoOの下地膜を設
け、この下地膜の上に斜方蒸着法により、CoO磁性膜
を形成することにより、磁性膜厚が1000オングスト
ローム以下の領域における抗磁力Hcの低下を防ぐ方法
が提案されている(登録2988188、日本応用磁気
学会誌Vol21,NO4−2、1997年「CoO斜
方蒸着膜におけるCoO下地膜効果」)。
【0026】この方法は、孤立化したCoO非磁性下地
膜の成長粒子上に、Co−CoO磁性膜を成膜した時
に、CoO非磁性下地膜の成長粒子にならってCo−C
oO磁性膜の成長粒子も孤立化することにより、Co−
CoO磁性膜の粒子間の磁気的相互作用が少なくなるこ
とによって極薄のCo−CoO磁性膜においても静磁気
特性の劣化を防ぐものである。
【0027】
【特許文献1】特許第2988188号公報(第5−6
頁、第5図)
【0028】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、かかる
方法によれば、以下の如くの問題点があった。すなわ
ち、この方法によれば、非磁性CoO下地膜を300
オングストローム以上形成する必要があり、材料コスト
が上がってしまう。非磁性CoO下地膜、CoO磁性
膜を形成する場合、前記した図15のベースフィルム6
走行系を2回通して蒸着する必要があり、量産性が甚だ
悪い。前記したベースフィルム6の2回走行により、
ベースフィルム6表面と、下地膜表面にゴミが混入した
り、キズが入る確率が高くなり、完成した薄膜テープの
ドロップアウトが多くなる。前記した量産性が悪い問
題点を解決するために、1回のベースフィルムの走行に
より生産を終えるためには、冷却キャンロール7を2台
設置し、ピアス型電子銃12、ルツボ8も2台設置する
必要があり、結果的には設備導入費がかかりすぎるので
実用的でない。
【0029】以上の問題点を考察すると、非磁性下地膜
の材質、膜厚等において問題が発生していることが分か
った。また、非磁性下地膜が良好に成膜されたものであ
っても、この下地膜を構成する微粒子の状態によっては
所望の磁気特性が得られない場合があることも分かっ
た。以上のことより、非磁性下地膜の材質、膜厚等の選
択が正しければ所望の磁気特性が得られるはずであると
いう知見が生まれることになる。
【0030】そこで、本発明者等はかかる課題を解決す
べく鋭意検討した結果、下地膜を構成する微粒子の構
造、下地膜の膜厚、下地膜の材質等が所定のものである
場合には、所望の磁気特性が得られる薄膜磁気記録媒体
を案出したもので、本発明は、かかる薄膜磁気記録媒体
を提供することを目的とするものである。
【0031】
【課題を解決するための手段】本発明は、前記した目的
を達成するためになされたものであり、請求項1に係る
発明は、図1に示すように、非磁性基板(31)上に形
成した非磁性金属酸化膜よりなる下地膜(32)と、こ
の下地膜(32)の上に斜方蒸着法により形成したCo
系磁性膜(33)とを順次積層してなる薄膜磁気記録媒
体(30)であって、前記非磁性金属酸化膜よりなる下
地膜(32)は、非磁性金属酸化膜の微粒子が等方的に
成長し、前記微粒子の集合体を分離する明瞭な粒界を有
しない構造としたことを特徴とする。
【0032】請求項2に係る発明は、請求項1記載の薄
膜磁気記録媒体(30)において、前記下地膜(32)
は、スパッタリング法で形成した膜であることを特徴と
する。
【0033】請求項3に係る発明は、請求項1記載の薄
膜磁気記録媒体(30)において、前記下地膜(32)
の膜厚は、5オングストローム〜300オングストロー
ムであることを特徴とする。
【0034】請求項4に係る発明は、請求項1記載の薄
膜磁気記録媒体(30)において、前記下地膜(32)
は、CoOであることを特徴とする。
【0035】請求項5に係る発明は、図12に示すよう
に非磁性基板(51)上に形成した非磁性金属窒化膜よ
りなる下地膜(52)と、この下地膜(52)の上に斜
方蒸着法により形成したCo系磁性膜(53)とを順次
積層したことを特徴とする。
【0036】請求項6に係る発明は、請求項5記載の薄
膜磁気記録媒体(50)において、前記下地膜(52)
は、スパッタリング法で形成した膜であることを特徴と
する。
【0037】請求項7に係る発明は、請求項5記載の薄
膜磁気記録媒体(50)において、前記下地膜(52)
は、Co窒化膜であることを特徴とする。
【0038】
【発明の実施の形態】以下、本発明の好適な実施の形態
を添付図面に基づいて説明する。なお、以下に述べる実
施の形態は、本発明の好適な具体例であるから技術的に
好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲
は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載
がない限り、これらの態様に限られるものではない。
【0039】
【実施形態1】以下、本発明になる薄膜磁気記録媒体の
好ましい実施形態1について説明する。図1は、第1の
発明である実施形態1に係わる薄膜磁気記録媒体を模式
的に示した模式図、図2は、実施形態1に係わる薄膜磁
気記録媒体を構成する非磁性下地膜及びこの非磁性下地
膜の上に形成された磁性膜の状態を模式的に示した模式
図、図3は、実施形態1に係わる薄膜磁気記録媒体を製
造するための薄膜磁気記録媒体(薄膜テープ)成膜装置
の構成図、図4は、実施形態1における非磁性下地膜の
厚みと抗磁力との関係を示す説明図、図5は、実施形態
1における磁性膜の厚みと抗磁力との関係を示す説明
図、図6は、実施形態1における非磁性下地膜の成膜時
の条件を変化させた場合の、非磁性下地膜の厚みと抗磁
力との関係を示す説明図、図7は、実施形態1における
非磁性下地膜を得るための酸素分圧と飽和磁化との関係
を示す説明図、図8は、実施形態1における磁性膜の初
期成長角度θとHcの関係を示す説明図、図9は、図
2,図16の要部拡大図、図10は、実施形態1に係わ
る薄膜磁気記録媒体を構成する磁性膜表面の状態を示す
拡大図、図11は、薄膜磁気記録媒体を構成する他の磁
性膜表面の状態を示す拡大図である。
【0040】まず、第1の発明である実施形態1につい
て説明する。なお、図2は、前記した図16と同様にベ
ースフィルム走行方向に磁性膜を切断した際の断面を、
加速電圧200kVで透過型電子顕微鏡((株)日立製
作所製 H−800)により観察して得られた、50〜
250万倍の断面写真より構造を模式化したものであ
る。
【0041】図1、図2において、薄膜磁気記録媒体3
0は、ベースフィルムとなる、例えば、前記したPET
フィルムを用いた非磁性基板31、この非磁性基板31
の上に非磁性金属酸化膜の微粒子が柱状に集合して成長
したものではなく、スパッタリング法により形成され
た、非磁性金属酸化膜の微粒子が等方的に成長し、前記
した微粒子の集合体を分離する明瞭な粒界のない非磁性
等方CoO下地膜32、この非磁性等方CoO下地膜3
2の上に斜方蒸着法により形成されたCoO磁性膜33
より大略構成されている。
【0042】図2の模式図より明らかな如く、実施形態
1に係わる非磁性等方CoO下地膜32は、前記した従
来例と異なり、CoO粒子が多い領域32aのみで構成
されている。すなわち、Co粒子が多い柱状領域が基板
面から成長が終了する表面まで存在せず、このCo粒子
が多い柱状領域はCoO磁性層33のみに存在するため
に非磁性等方CoO下地膜32は、前記した柱状Co粒
子が長手方向に実質的に線状の構造として配列されるも
のではないものである。
【0043】すなわち、実施形態1では、非磁性等方C
oO下地膜32の成膜に際してスパッタリング法を用い
ているので、導入する酸素、アルゴンの量を多く用いる
ことができ、従って、前記した斜方蒸着法で非磁性等方
CoO下地膜32を形成する場合よりも成膜時の圧力を
高くすることができるため、後述するスパッターターゲ
ットよりスパッタされたCo粒子は、前記した斜方蒸着
法による蒸発粒子より更にランダムな方向から基板面に
到達することになる。また、粒子のエネルギーは、斜方
蒸着法より高いため、基板面に到達した粒子の移動量が
大きい。このため、従来例と異なりCoO粒子として等
方的構造が得られたものと思われる。
【0044】(実施例1)以下、前記した実施形態1に
なる構造を有する薄膜磁気記録媒体30を製造する方法
につき、図3〜図11を参照して説明する。なお、実施
形態1になる構造を有する薄膜磁気記録媒体30を製造
するための成膜装置40としては、基本的には前記した
図15の成膜装置20を用いて行うので、その装置の具
体的構成等についての説明は省略し、相違点のみについ
て説明する。
【0045】図3に明示される如く、実施形態1になる
構造を有する薄膜磁気記録媒体30の成膜装置40にお
いて、前記した図15の斜方蒸着法を適用して形成した
薄膜磁気記録媒体(薄膜テープ)の成膜装置20と相違
する点は、成膜に際し供給側のフィルム巻回用ロ―ル2
に巻回されたベースフィルム6が矢印方向に走行された
際、テープガイドロール4と、一方(この実施例では供
給側)の入射角規制マスク9との間にスパッターターゲ
ット41を配置した点にある。
【0046】また、スパッタリング法により成膜を行う
部分と蒸着法により成膜する部分の圧力及び構成ガスは
異なるため、真空槽1の上部1bと下部1cは隔壁42
により分離され、各真空槽1b,1cは図示しない独立
の排気系により排気され、所定の圧力に保たれている。
【0047】ここでは、図3中のベースフィルム6は、
図1における非磁性基板31となるものである。まず、
図3に示す如くバージンのベースフィルム6上に非磁性
等方CoO下地膜32を成膜する成膜工程では、一対の
フィルム巻回用ロール2,3のうちで一方(供給側)の
フィルム巻回用ロール2に巻回させたベースフィルム6
を冷却キャンロール7に沿って入射角規制マスク9の最
大入射角θmax側から最小入射角θmin側に走行さ
せながら他方(巻取側)のフィルム巻回用ロール3に向
かう途中で、スパッターターゲット41、具体的にはC
oターゲットを用いてアルゴン(Ar)ガスと酸素(O
2)ガスを導入してスパッタリング法により成膜を行
い、非磁性等方CoO下地膜32をベースフィルム6上
に形成する。
【0048】次に、非磁性等方CoO下地膜32が形成
されたベースフィルム6が、冷却キャンロール7の外周
面を走行している間に、所定の角度に設定された最大及
び最小入射角の範囲で、斜方蒸着法により図示しない酸
素ガス導入パイプにより導入した所定量の酸素(O2
ガスをルツボ8内の磁性金属材11であるCoから蒸発
した磁性金属材蒸気11aに向けて射出することによ
り、磁性金属材蒸気11aを非磁性等方CoO下地膜3
2上に形成して、図1に示すように非磁性基板31(ベ
ースフィルム6)上に非磁性等方CoO下地膜32、C
oO磁性膜33が順次成膜されるものである。
【0049】前記した斜方蒸着法によるCoO磁性膜3
3の成膜に際し、このCoO磁性膜33の成長粒子は、
入射角規制マスク9の最大入射角θmax側での粗な付
着状態から最小入射角θmin側での密な付着状態に移
行しながらベースフィルム6上に成膜されるものであ
る。すなわち、非磁性等方CoO下地膜32は、非磁性
微粒子が等方的に成長し、前記微粒子の集合体を分離す
る明瞭な粒界を有しない構造として成膜されるものであ
る。そして、前記した等方構造を有する非磁性等方Co
O下地膜32及びCoO磁性膜33を成膜したベースフ
ィルム6は、他方(巻取側)のフィルム巻回用ロール3
に巻き取られるものである。
【0050】なお、前記した非磁性等方CoO下地膜3
2の膜厚は、5〜600オングストロームの範囲で変化
させるとともにCoO磁性膜33を下記の成膜条件で形
成した。
【0051】非磁性等方CoO下地膜32の成膜条件 Ar分圧(mTorr) 2 O2分圧(mTorr) 1.7 CoO磁性膜33の成膜条件 O2ガス圧 (Torr) 3.8×10-5 膜厚 (オングストローム) 500
【0052】(比較例1)図15の成膜装置20を用い
て、酸素を導入して6×10-4Torrのガス圧にした
状態で、斜方蒸着法により、Coを蒸発させて、ベース
フィルム6上に非磁性下地膜を形成した。この非磁性下
地膜の膜厚は、実施例1と同様5〜600オングストロ
ームの範囲で変化させて形成した。前記した非磁性下地
膜の上に実施例1と同様な条件で、斜方蒸着法によりC
oO磁性膜33を形成した。ここで、比較例1で形成し
た非磁性下地膜は、非磁性微粒子が柱状的に成長し、前
記微粒子の集合体を分離する明瞭な粒界を有する構造と
して成膜された非磁性柱状CoO下地膜である。
【0053】(比較例2)比較例1と同様、図15の成
膜装置20を用い、非磁性下地膜なしの状態で、CoO
磁性膜33のみを実施例1と同様な条件でベースフィル
ム6上に斜方蒸着法により形成した。
【0054】前記した実施例1で形成した非磁性等方C
oO下地膜32及び比較例1で形成した非磁性柱状Co
O下地膜とCoO磁性膜33に関して、各下地膜の状態
及び膜厚違いによる磁性膜のHcの変化を図4に示す。
図4中、○は、非磁性等方CoO下地膜の場合、●は、
非磁性柱状CoO下地膜の場合、△は、下地膜なしの場
合を示し,縦軸は、CoO磁性膜のHc、横軸は、非磁
性等方CoO下地膜の厚さを示している。
【0055】この図4より明らかな如く、実施例1のよ
うに、すなわち、非磁性微粒子が等方的に成長し、前記
微粒子の集合体を分離する明瞭な粒界を有しない構造と
して成膜された非磁性等方CoO下地膜32は、5〜3
00オングストロームの範囲で、比較例1で形成した非
磁性柱状CoO下地膜よりHcが高い。特に、非磁性等
方CoO下地膜32は、50〜200オングストローム
の範囲で同じ膜厚の非磁性柱状CoO下地膜では得られ
ない2100Oe以上のHcが得られるものである。
【0056】また、非磁性柱状CoO下地膜の膜厚が2
5オングストローム以下では、下地膜がない場合とHc
は同じで、Hcを増加する効果はないが、非磁性等方C
oO下地膜32は、膜厚が5オングストロームの薄い範
囲でも、Hcを増加する効果があることが分かる。
【0057】また、図4より明らかな如く、下地膜なし
の状態では、Hcは、たかだか1200Oe程度であ
り、実用に供さないものであることが分かる。
【0058】(実施例2)実施例1と同様な成膜条件で
非磁性等方CoO下地膜32をスパッタリング法で50
オングストローム形成し、この非磁性等方CoO下地膜
32の上にCoO磁性膜33を実施例1と同じ成膜条件
で、膜厚100〜1800オングストロームの範囲で斜
方蒸着法により形成した。
【0059】(比較例3)非磁性等方CoO下地膜32
なしの状態で、CoO磁性膜33のみを実施例2と同様
な条件で、膜厚100〜1800オングストロームの範
囲でベースフィルム6上に斜方蒸着法により形成した。
【0060】実施例2と比較例3の結果を図5に示す。
図5中、○は、厚さ50オングストロームの非磁性等方
CoO下地膜の場合、●は、非磁性等方CoO下地膜無
しの場合を示し、縦軸は、CoO磁性膜のHc、横軸
は、CoO磁性膜の厚さを示している。CoO磁性膜3
3の膜厚が100オングストローム〜1000オングス
トロームの範囲で、非磁性等方CoO下地膜32を形成
することによりHcが増加しており、効果が大きいこと
が分かる。特に、CoO磁性膜33の膜厚が100オン
グストロームでも、非磁性等方CoO下地膜32が無い
場合よりHcが600Oe増加しており、効果が大きい
ことが分かる。
【0061】図6は、CoO磁性膜33の膜厚を500
オングストロームに設定した場合の非磁性等方CoO下
地膜32の最適成膜条件を得るための説明図であり、特
に、非磁性等方CoO下地膜32の膜厚を変化させると
共に、成膜時の酸素分圧とアルゴン分圧を変化させた場
合の、非磁性等方CoO下地膜32の厚みと抗磁力との
関係を示す説明図である。図6中、縦軸は、CoO磁性
膜のHc、横軸は、非磁性等方CoO下地膜の厚さを示
している。
【0062】この図6より明らかな如く、各膜厚におい
てAr分圧が2mTorr、O2分圧が1.7mTor
rの時に、高Hcが得られることがわかる。
【0063】図7は、前記した最適な非磁性等方CoO
下地膜32を得るための酸素分圧と非磁性等方CoO下
地膜32の飽和磁化Msとの関係を示す説明図である。
図7中、縦軸は、非磁性等方CoO下地膜32の飽和磁
化Ms、横軸は、酸素分圧を示している。この図7より
明らかなように、アルゴン(Ar)分圧が2mTorr
では、O2分圧が0.74mTorr以上で、アルゴン
(Ar)分圧が10mTorrでは、O2分圧が2mT
orr以上の部分で磁化がなく、この部分で非磁性等方
CoO下地膜32が得られることが分かる。従って、第
1の実施例では、この範囲内において図6のアルゴン
(Ar)分圧及び酸素(O2)分圧を決めたものであ
る。
【0064】図8及び図9は、CoO磁性膜33の初期
成長角度θとHcの関係を示すもので、図8はその説明
図、図9は要部拡大図である。図8中、〇は、非磁性等
方CoO下地膜有りの場合、●は、非磁性等方CoO下
地膜なしの場合を示し、縦軸は、CoO磁性膜のHc、
横軸は、CoO磁性膜の初期成長角を示している。な
お、初期成長角度θは、前記した透過型電子顕微鏡観察
による磁性膜の断面写真より得られた値である。以下、
その点につき具体的に説明する。
【0065】更に、図8について詳細に説明すると、同
図中、●は、非磁性等方CoO下地膜32が無い場合に
おける膜厚が共に350オングストロームで、それぞれ
1400Oeと1100OeのHcを有するCoO磁性
膜33の場合であり、〇は、スパッタリング法により膜
厚100オングストロームの非磁性等方CoO下地膜3
2を形成した上に非磁性等方CoO下地膜32が無い場
合と同じ成膜条件で形成したCoO磁性膜33の場合で
あり、それぞれのCoO磁性膜33のHcと初期成長角
度θの変化を示している。そして、矢印は、非磁性等方
CoO下地膜32が無い状態で形成されたCoO磁性膜
33のHcが非磁性等方CoO下地膜32上に形成され
た場合の初期成長角θのシフトする様子を示している。
非磁性等方CoO下地膜32の付与により初期成長角度
θは、3°〜4°低下していることから、非磁性等方C
oO下地膜32がある場合には、初期成長方向を水平方
向に寝かせる作用が強いことが分かる。このため、自己
陰影効果が高まり高Hcが得られるものと思われる。
【0066】また、従来例の蒸着法により膜厚100オ
ングストロームの非磁性CoO柱状下地膜を形成し、こ
の上にCoO磁性層33を前記と同様な成膜条件で形成
した際の初期成長層の変化は、非磁性柱状CoO下地膜
が無い場合と有る場合では、非磁性柱状CoO下地膜の
付与により初期成長角度θは、1°〜2°低下する。以
上から、非磁性等方CoO下地膜32は、非磁性柱状C
oO下地膜より初期成長方向を水平方向に寝かせる作用
が強く、このため自己陰影効果が高く、Hcの増加効果
が大きくなったものと思われる。
【0067】更に、図10、図11を用いて非磁性等方
CoO下地膜32の有無による効果の相違について説明
する。前記した如く図10は、実施形態1に係わる薄膜
磁気記録媒体を構成する磁性膜表面の状態を示す拡大
図、すなわち、スパッタリング法により非磁性等方Co
O下地膜32を設けた場合の磁性膜表面の高分解能SE
M((株)日立製作所製 H−5000)によるSEM
像、また図11は、非磁性等方下地膜を設けない場合の
磁性膜表面の高分解能SEMによるSEM像である。
【0068】このCoO磁性膜33表面の高分解能SE
M観察から明らかな如く、図11に示す比較例2の下地
膜がないCoO磁性膜33には、粒界に空隙は見られな
いが、図10に示す実施例1、実施例2になる非磁性等
方CoO下地膜32があるCoO磁性膜33の粒界には
明瞭な空隙が発生していることが分かる。これは、非磁
性等方CoO下地膜32によりCoO磁性膜33の粒界
に空隙が発生し、これにより粒子の孤立化が促進され、
Hcが増加したものと考えられる。
【0069】
【実施形態2】図12は、第2の発明である実施形態2
に係わる薄膜磁気記録媒体を模式的に示した模式図、図
13は、実施形態2に係わる薄膜磁気記録媒体を構成す
る非磁性下地膜の条件を変化させた場合の酸素分圧と抗
磁力との関係を示す説明図、図14は、実施形態2に係
わる薄膜磁気記録媒体を構成する非磁性下地膜の厚みと
抗磁力との関係を示す説明図である。
【0070】次に、第2の発明について説明する。図1
2において、第2の発明である実施形態2に係わる薄膜
磁気記録媒体50は、ベースフィルムとなる、例えば、
前記したPETフィルムを用いた非磁性基板51、この
非磁性基板51の上にスパッタリング法により形成され
た非磁性窒化Co下地膜52、この非磁性窒化Co下地
膜52の上に斜方蒸着法により形成されたCoO磁性膜
53より大略構成されている。
【0071】(実施例3)以下、前記した第2の発明で
ある実施形態2に係わる薄膜磁気記録媒体50を製造す
る方法について説明する。なお、第2の発明である実施
形態2に係わる構造を有する薄膜磁気記録媒体50を製
造するための製造装置としては、基本的には前記した図
3の成膜装置40を用いて行うので、その装置の具体的
構成等についての説明は省略し、相違点のみについて説
明する。
【0072】第2の発明である実施形態2に係わる構造
を有する薄膜磁気記録媒体50の成膜装置40におい
て、第1の発明である実施形態1に係わる構造を有する
薄膜磁気記録媒体30と根本的に相違するところは、非
磁性下地膜として窒化膜を用いることにある。従って、
スパッターターゲット41にはCoターゲットを用いて
アルゴン(Ar)ガスと窒素(N2)ガスを導入してス
パッタリング法により成膜を行なうことになる。
【0073】ここでは、図3中のベースフィルム6は、
図12における非磁性基板51となるものである。すな
わち、図3に示す如くバージンのベースフィルム6上に
非磁性窒化Co下地膜52を成膜する成膜工程では、一
対のフィルム巻回用ロール2,3のうちで一方(供給
側)のフィルム巻回用ロール2に巻回させたベースフィ
ルム6を冷却キャンロール7に沿って入射角規制マスク
9の最大入射角θmax側から最小入射角θmin側に
走行させながら他方(巻取側)のフィルム巻回用ロール
3に向かう途中で、スパッターターゲット41、具体的
にはCoターゲットを用いてアルゴン(Ar)ガスと窒
素(N2)ガスを導入してスパッタリング法により成膜
を行い、非磁性窒化Co下地膜52をベースフィルム6
上に形成する。
【0074】次に、非磁性窒化Co下地膜52が形成さ
れたベースフィルム6が、冷却キャンロール7の外周面
を走行している間に、所定の角度に設定された最大及び
最小入射角の範囲で、斜方蒸着法により図示しない酸素
ガス導入パイプにより導入した所定量の酸素(O2)ガ
スをルツボ8内の磁性金属材11であるCoから蒸発し
た磁性金属材蒸気11aに向けて射出することにより、
磁性金属材蒸気11aを非磁性窒化Co下地膜52上に
形成して、図12に示すように非磁性基板51(ベース
フィルム6)上に非磁性窒化Co下地膜52、CoO磁
性膜53が順次成膜されるものである。
【0075】前記した斜方蒸着法によるCoO磁性膜5
3の成膜に際し、このCoO磁性膜53の成長粒子は、
入射角規制マスク9の最大入射角θmax側での粗な付
着状態から最小入射角θmin側での密な付着状態に移
行しながらベースフィルム6上に成膜されるものであ
る。そして、前記した構造を有する非磁性窒化Co下地
膜52及びCoO磁性膜53を成膜したベースフィルム
6は、他方(巻取側)のフィルム巻回用ロール3に巻き
取られるものである。
【0076】なお、前記した非磁性窒化Co下地膜52
の膜厚は100オングストロームに設定すると共にCo
O磁性膜53の膜厚を下記の成膜条件で形成した。
【0077】非磁性窒化Co下地膜52の成膜条件 Ar分圧(mTorr) 2 N2分圧(mTorr) 1 CoO磁性膜53の成膜条件 O2ガス圧 (Torr) 1.8×10-5〜8.3×
10-5 膜厚 (オングストローム) 500
【0078】(比較例4)非磁性窒化Co下地膜52な
しの状態で、前記したベースフィルム6の上に実施例3
と同様な条件で、CoO磁性膜53を500オングスト
ロームの膜厚で形成した。
【0079】この実施例3と比較例4の結果を図13に
示す。図13中、●は、非磁性窒化Co下地膜有りの場
合、〇は、非磁性窒化Co下地膜無しの場合を示し、縦
軸は、CoO磁性膜のHc、横軸は、酸素圧力を示して
いる。この図13より明らかな様に、磁性膜成膜時の酸
素(O2)圧が1.8×10- 5〜4.0×10-5Tor
rの範囲で、非磁性窒化Co下地膜52を設けた場合に
は、それを設けない場合に比して、CoO磁性膜53の
Hcが最大で400Oe増加している。また、酸素圧が
4.0×10-5〜5.7×10-5Torrの範囲で高い
Hcが得られていることが分かる。
【0080】(実施例4)Coターゲットを用いてAr
ガスとN2ガスを導入して、実施例3と同様のAr分
圧、N2分圧条件で、スパッタリング法により膜厚を1
0〜200オングストロームの範囲で変化させて、非磁
性窒化Co下地膜52をベースフィルム6上に形成し
た。そして、この非磁性窒化Co下地膜52上に図3に
示す成膜装置40によりCoを斜方蒸着法により蒸発さ
せO2ガスを導入して、O2圧力が4.1×10-5Tor
rの条件で膜厚500オングストロームのCoO磁性膜
53を形成した。
【0081】(比較例5)非磁性窒化Co下地膜52よ
りなる下地膜なしの状態で膜厚500オングストローム
のCoO磁性膜53のみを実施例4と同様な条件でベー
スフィルム6上に斜方蒸着法により形成した。
【0082】実施例4と比較例5の結果を図14に示
す。図14中、●は、非磁性CoN下地膜有りの場合、
△は、非磁性CoN下地膜無しの場合を示し、縦軸は、
CoO磁性膜のHc、横軸は、非磁性CoN下地膜の厚
さを示している。図14に示すように、非磁性窒化Co
下地膜52が50〜200オングストロームの範囲で、
非磁性窒化Co下地膜52がない場合よりHcが増加し
ていて効果が大きいことが分かる。
【0083】また、図示していないがCoO磁性膜53
表面の高分解能SEM観察から、比較例4,5の下地膜
がないCoO磁性膜53には粒界に空隙は見られない
が、実施例3、実施例4になる非磁性窒化Co下地膜5
2があるCoO磁性膜53の粒界には明瞭な空隙が発生
しているものである。これは、非磁性窒化Co下地膜5
2よりなる下地膜によりCoO磁性膜53の粒界に空隙
が発生し、これにより粒子の孤立化が促進され、Hcが
増加したものと考えられる。
【0084】本各実施例の説明では、非磁性等方CoO
下地膜32及び非磁性窒化Co下地膜52の成膜方法と
してスパッタリング法を用いて説明したが、これはあく
までも一方法である。また、非磁性CoO下地膜の成膜
結果として等方的なものが得られるのであればスパッタ
リング法に限定されるものではない。
【0085】
【発明の効果】以上詳細に説明したとおり、本請求項1
になる発明によれば、非磁性基板上に形成した非磁性金
属酸化膜よりなる下地膜と、この下地膜の上に斜方蒸着
法により形成したCo系磁性膜とを順次積層してなる薄
膜磁気記録媒体であって、前記非磁性金属酸化膜よりな
る下地膜は、非磁性金属酸化膜の微粒子が等方的に成長
し、前記微粒子の集合体を分離する明瞭な粒界を有しな
い構造としたことにより、ドロップアウトが少ない薄膜
磁気記録媒体を量産性良く生産することができる。
【0086】本請求項2になる発明によれば、請求項1
記載の薄膜磁気記録媒体において、前記下地膜は、スパ
ッタリング法で形成した膜であることにより、抗磁力H
cを高めることが出来る。
【0087】本請求項3になる発明によれば、請求項1
記載の薄膜磁気記録媒体において、前記下地膜の膜厚
は、5オングストローム〜300オングストロームにす
ることにより、抗磁力Hcを高めることが出来る。
【0088】本請求項4になる発明によれば、請求項1
記載の薄膜磁気記録媒体において、前記下地膜は、Co
Oとしたことにより、Hcが高くドロップアウトが少な
い薄膜磁気記録媒体を量産性良く生産することができ
る。
【0089】本請求項5になる発明によれば、非磁性基
板上に形成した非磁性金属窒化膜よりなる下地膜と、こ
の下地膜の上に斜方蒸着法により形成したCo系磁性膜
とを順次積層したことにより、Hcが高くドロップアウ
トが少ない薄膜磁気記録媒体を量産性良く生産すること
ができる。
【0090】本請求項6になる発明によれば、請求項5
記載の薄膜磁気記録媒体において、前記下地膜は、スパ
ッタリング法で形成した膜であることにより、抗磁力H
cを高めることが出来る。
【0091】本請求項7になる発明によれば、請求項5
記載の薄膜磁気記録媒体において、前記下地膜は、Co
Oとしたことにより、Hcが高くドロップアウトが少な
い薄膜磁気記録媒体を量産性良く生産することができ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の発明である実施形態1に係わる薄膜磁気
記録媒体を模式的に示した模式図である。
【図2】実施形態1に係わる薄膜磁気記録媒体を構成す
る非磁性下地膜及びこの非磁性下地膜の上に形成された
磁性膜の状態を模式的に示した模式図である。
【図3】実施形態1に係わる薄膜磁気記録媒体を製造す
るための薄膜磁気記録媒体(薄膜テープ)成膜装置の構
成図である。
【図4】実施形態1における非磁性下地膜の厚みと抗磁
力との関係を示す説明図である。
【図5】実施形態1における磁性膜の厚みと抗磁力との
関係を示す説明図である。
【図6】実施形態1における非磁性下地膜の成膜時の条
件を変化させた場合の、非磁性下地膜の厚みと抗磁力と
の関係を示す説明図である。
【図7】実施形態1における非磁性下地膜を得るための
酸素分圧と飽和磁化との関係を示す説明図である。
【図8】実施形態1における磁性膜の初期成長角度θと
Hcの関係を示す説明図である。
【図9】図2、16の要部拡大図である。
【図10】実施形態1に係わる薄膜磁気記録媒体を構成
する磁性膜表面の状態を示す拡大図である。
【図11】薄膜磁気記録媒体を構成する他の磁性膜表面
の状態を示す拡大図である。
【図12】第2の発明である実施形態2に係わる薄膜磁
気記録媒体を模式的に示した模式図である。
【図13】実施形態2に係わる薄膜磁気記録媒体を構成
する非磁性下地膜の条件を変化させた場合の酸素分圧と
抗磁力との関係を示す説明図である。
【図14】実施形態2に係わる薄膜磁気記録媒体を構成
する非磁性下地膜の厚みと抗磁力との関係を示す説明図
である。
【図15】従来例に係わる薄膜磁気記録媒体を製造する
ための薄膜磁気記録媒体(薄膜テープ)成膜装置の構成
図である。
【図16】従来の薄膜磁気記録媒体成膜装置により形成
された薄膜磁気記録媒体の一部を構成する非磁性下地膜
及びこの非磁性下地膜の上に形成された磁性膜の状態を
模式的に示した模式図である。
【符号の説明】
1 真空槽 1a 右側壁 1b 上部真空槽 1c 下部真空槽 2 フィルム巻回ロール 3 フィルム巻回ロール 4 テープガイドロール 5 テープガイドロール 6 ベースフィルム 7 冷却キャンロール 8 ルツボ 9 入射角規制マスク 10 入射角規制マスク 11 磁性金属材料 11a 磁性金属材蒸気 12 ピアス型電子銃 13 電子ビーム 14 偏向マグネット 15 偏向マグネット 16 下地膜 17 蒸着磁性膜 20 薄膜磁気記録媒体の成膜装置 30 薄膜磁気記録媒体 31 非磁性基板 32 非磁性等方CoO下地膜 33 CoO磁性膜 40 薄膜磁気記録媒体の成膜装置 41 スパッターゲート 42 隔壁 50 薄膜磁気記録媒体 51 非磁性基板 52 非磁性窒化Co下地膜 53 CoO磁性膜
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 5D006 BB01 BB07 BB09 CA01 CA05 EA03 FA00 FA09 5E049 AA04 AC05 CB02 DB12 GC01 HC01

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】非磁性基板上に形成した非磁性金属酸化膜
    よりなる下地膜と、この下地膜の上に斜方蒸着法により
    形成したCo系磁性膜とを順次積層してなる薄膜磁気記
    録媒体であって、 前記非磁性金属酸化膜よりなる下地膜は、非磁性金属酸
    化膜の微粒子が等方的に成長し、前記微粒子の集合体を
    分離する明瞭な粒界を有しない構造としたことを特徴と
    する薄膜磁気記録媒体。
  2. 【請求項2】前記下地膜は、スパッタリング法で形成し
    た膜であることを特徴とする請求項1記載の薄膜磁気記
    録媒体。
  3. 【請求項3】前記下地膜の膜厚は、5オングストローム
    〜300オングストロームであることを特徴とする請求
    項1記載の薄膜磁気記録媒体。
  4. 【請求項4】前記下地膜は、CoOであることを特徴と
    する請求項1記載の薄膜磁気記録媒体。
  5. 【請求項5】非磁性基板上に形成した非磁性金属窒化膜
    よりなる下地膜と、この下地膜の上に斜方蒸着法により
    形成したCo系磁性膜とを順次積層したことを特徴とす
    る薄膜磁気記録媒体。
  6. 【請求項6】前記下地膜は、スパッタリング法で形成し
    た膜であることを特徴とする請求項5記載の薄膜磁気記
    録媒体。
  7. 【請求項7】前記下地膜は、Co窒化膜であることを特
    徴とする請求項5記載の薄膜磁気記録媒体。
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