JP2002122226A - シンクロメッシュ式トランスミッションのための変速装置 - Google Patents

シンクロメッシュ式トランスミッションのための変速装置

Info

Publication number
JP2002122226A
JP2002122226A JP2000313374A JP2000313374A JP2002122226A JP 2002122226 A JP2002122226 A JP 2002122226A JP 2000313374 A JP2000313374 A JP 2000313374A JP 2000313374 A JP2000313374 A JP 2000313374A JP 2002122226 A JP2002122226 A JP 2002122226A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
shift
drive signal
transmission
gear
speed
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2000313374A
Other languages
English (en)
Inventor
Ryuji Choshi
竜二 調子
Yoshiyuki Aoyama
義幸 青山
Yoshie Miyazaki
剛枝 宮崎
Mitsutoshi Kamiya
充俊 神谷
Yoshihiro Ichikawa
義裕 市川
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Aisin AI Co Ltd
Original Assignee
Aisin AI Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Aisin AI Co Ltd filed Critical Aisin AI Co Ltd
Priority to JP2000313374A priority Critical patent/JP2002122226A/ja
Publication of JP2002122226A publication Critical patent/JP2002122226A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Control Of Transmission Device (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】電気的に制御されるアクチュエータによりシン
クロメッシュ式のトランスミッションの変速比を変化さ
せる変速装置において、一回の同期に費やされる同期時
間を変速の種類との関係において適正化する。 【解決手段】トランスミッションの変速段を現在変速段
に隣接しない変速段に切り換える飛び越し変速時には、
現在変速段に隣接した変速段に切り換える通常変速時に
おいて同期のためにアクチュエータに供給すべき駆動信
号Sの値に、1より小さな値を有する補正化係数Kを掛
け算する。これにより、飛び越し変速時には、通常変速
時におけるより小さい値を有する駆動信号Sがアクチュ
エータに供給され、その結果、同期時間が通常変速時に
おけるより長くなる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電気的に制御され
るアクチュエータによりシンクロメッシュ式のトランス
ミッションの変速比を変化させる技術に関するものであ
り、特に、そのアクチュエータの制御に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】車両において動力源の回転を駆動車輪に
伝達するトランスミッションの形式としてシンクロメッ
シュ式が既に存在する。この形式のトランスミッション
においては、動力源から駆動車輪までの力伝達系に滑り
要素が存在しない。そのため、この形式のトランスミッ
ションには、オートマチック式のトランスミッションと
は異なり、運転者のアクセル操作に対して駆動車輪が敏
感に応答し、応答性の高い運転フィーリングが得られる
という利点や、燃料消費量が減少し、省エネに貢献する
という利点がある。
【0003】それらの利点を享受するとともに、運転者
による変速操作を従来のマニュアル式トランスミッショ
ンにおけるより簡単なものにするために、電気的に制御
されるアクチュエータによりシンクロメッシュ式のトラ
ンスミッションの変速比を変化させる技術が既に提案さ
れている。その一例を採用した変速装置が本出願人の特
開2000−46176号公報に開示されている。
【0004】この種の変速装置と共に使用されるトラン
スミッションは、各ギヤ対が常時噛み合わされるととも
にギヤ比が互いに異なる複数のギヤ対のいずれかを有効
ギヤ対として選択するために同期装置を備えている。
【0005】その同期装置は、ギヤ対の一方が遊動ギヤ
として相対回転可能に装着されたシャフトに対して相対
回転不能かつ軸方向に相対移動可能なスリーブと、遊動
ギヤに対して相対回転可能かつ軸方向に相対移動可能な
シンクロナイザリングとを備えている。
【0006】この同期装置は、作動状態では、スリーブ
を軸方向に移動させてそのスリーブをシンクロナイザリ
ングに当接させ、それにより、そのシンクロナイザリン
グを、遊動ギヤに対して相対回転不能な摩擦面に押し付
けてその遊動ギヤとスリーブとの同期を行うとともに、
その同期が完了するまで、スリーブに対して相対回転不
能なクラッチが遊動ギヤに対して相対回転不能なクラッ
チに噛み合うことを邪魔するボークを行う。
【0007】そして、上述の変速装置は、外部からの信
号に応じて電気的に制御されることにより、スリーブを
軸方向に移動させるために荷重を発生させるアクチュエ
ータと、車両の運転者の意思とその車両の状態とトラン
スミッションの状態との少なくとも一つに基づいてその
トランスミッションの変速比を変化させるためにアクチ
ュエータに駆動信号を供給して制御する制御装置とを備
えている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】トランスミッションの
変速時には、例えば、第1速と第2速との一方から他方
への変速、第2速と第3速との一方から他方への変速、
第3速と第4速との一方から他方への変速というよう
に、変速段が現在変速段からそれに隣接した隣接変速段
に切り換えられる場合と、例えば、第4速から第2速へ
の変速というように、現在変速段に隣接しない非隣接変
速段に切り換えられる場合とがある。
【0009】このような事情にもかかわらず、変速装置
は、目標変速段が隣接変速段であるか否かを問わず、一
回の同期に費やされる同期時間が同じになるように設計
することが可能である。
【0010】しかし、本発明者らの研究によれば、同期
時間の長さが、目標変速段が隣接変速段である通常変速
時と、非隣接変速段である飛び越し変速時との間におい
て互いに異なるように変速装置を設計することが要望さ
れる場合があることに気が付いた。
【0011】例えば、トランスミッションの同期装置の
耐久性を向上させるためには、同期時間を無駄に短くす
ることは適当でない。一方、通常変速と飛び越し変速と
を使用頻度の観点から対比すれば、飛び越し変速のほう
が通常変速より使用頻度が低い。したがって、飛び越し
変速時に同期時間を通常変速時におけるより長くすれ
ば、変速装置の実用性を犠牲にすることなく、同期装置
の耐久性を向上させることができる。
【0012】
【課題を解決するための手段および発明の効果】このよ
うな知見に基づき、本発明は、変速の種類との関係にお
いて同期時間の長さを適正化することを課題としてなさ
れたものであり、本発明によって下記各態様が得られ
る。各態様は、請求項と同様に、項に区分し、各項に番
号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で
記載する。これは、本明細書に記載の技術的特徴のいく
つかおよびそれらの組合せのいくつかの理解を容易にす
るためであり、本明細書に記載の技術的特徴やそれらの
組合せが以下の態様に限定されると解釈されるべきでは
ない。
【0013】(1) 車両において動力源の回転を駆動
車輪に伝達するシンクロメッシュ式トランスミッション
であって、各ギヤ対が常時噛み合わされるとともにギヤ
比が互いに異なる複数のギヤ対のいずれかを有効ギヤ対
として選択するために同期装置を備えており、かつ、そ
の同期装置が、(a)前記ギヤ対の一方が遊動ギヤとし
て相対回転可能に装着されたシャフトに対して相対回転
不能かつ軸方向に相対移動可能なスリーブと、前記遊動
ギヤに対して相対回転可能かつ軸方向に相対移動可能な
シンクロナイザリングとを備え、かつ、(b)作動状態
では、前記スリーブを軸方向に移動させてそのスリーブ
を前記シンクロナイザリングに当接させ、それにより、
そのシンクロナイザリングを、前記遊動ギヤに対して相
対回転不能な摩擦面に押し付けてその遊動ギヤと前記ス
リーブとの同期を行うものであるトランスミッションと
共に使用され、そのトランスミッションの変速比を変化
させる変速装置であって、外部からの信号に応じて電気
的に制御されることにより、前記スリーブを前記軸方向
に移動させるために荷重を発生させるアクチュエータ
と、前記車両の運転者の意思とその車両の状態と前記ト
ランスミッションの状態との少なくとも一つに基づいて
そのトランスミッションの変速段を現在変速段から目標
変速段に切り換えるために前記アクチュエータに駆動信
号を供給して制御する制御装置であって、前記同期の開
始時期から完了時期までの経過時間である同期時間の長
さが、前記トランスミッションの変速段を現在変速段に
隣接した隣接変速段に切り換える通常変速時と、隣接し
ない非隣接変速段に切り換える飛び越し変速時との間に
おいて互いに異なるように前記アクチュエータを制御す
るアクチュエータ制御手段を有するものとを含むシンク
ロメッシュ式トランスミッションのための変速装置[請
求項1]。この変速装置においては、同期の開始時期か
ら完了時期までの経過時間である同期時間の長さが、ト
ランスミッションの変速段を現在変速段に隣接した隣接
変速段に切り換える通常変速時と、隣接しない非隣接変
速段に切り換える飛び越し変速時との間において互いに
異なるように、アクチュエータが制御される。したがっ
て、この変速装置によれば、変速の種類との関係におい
て同期時間の長さを適正化し得る。本項において「動力
源」は、エンジン(内燃機関)としたり、電動モータと
したり、エンジンと電動モータとの双方とすることがで
きる。本項において「制御装置」は、運転者の意思を検
出するセンサのうち運転者の変速に関する意思を検出す
るセンサ、例えば、シフトレバー等の変速操作部材の操
作を検出するセンサからの出力信号を主体にアクチュエ
ータを制御する形式とすることができる。さらに、「制
御装置」は、運転者の意思を検出するセンサのうち運転
者の車両加減速に関する意思を検出するセンサ、例え
ば、アクセルペダル等の加速操作部材の操作を検出する
センサと、車両の状態、例えば、車両速度、動力源の回
転数を検出するセンサとからの出力信号を主体にアクチ
ュエータを制御する形式とすることができる。シンクロ
メッシュ式トランスミッションを備えた車両において
は、一般に、それの動力源とそのトランスミッションと
の間にそれらの断続を行うクラッチが搭載される。この
クラッチには、運転者により直接に作動させられる手動
式と、電気的に制御されるアクチュエータにより作動さ
せられる自動式とがある。自動式のクラッチを採用する
場合には、例えば、本項の「制御装置」を、スリーブを
制御するアクチュエータと連動してそのクラッチのアク
チュエータをも制御する形式とすることができる。本項
において「同期装置」は、同じトランスミッションにお
いて少なくとも一つ使用される。また、同じ「同期装
置」は、一般に、2つのギヤ対のいずれかを有効ギヤ対
として選択するように構成される。さらに、本項におい
て「アクチュエータ」は、モータ等、電気的な駆動源か
らの力を、その駆動源またはそれに接続された制御機器
を電気的に制御することによって制御する電気的駆動源
利用式としたり、ポンプ、アキュムレータ等、圧力を発
生させる圧力源からの圧力を、その圧力源またはそれに
接続された電磁バルブ等の制御機器を電気的に制御する
ことによって制御する圧力源利用式とすることができ
る。さらにまた、本項に係る変速装置は、前記シャフト
が前記駆動車輪に、前記ギヤ対のうち前記遊動ギヤでな
い非遊動ギヤが前記動力源にそれぞれ連結されるトラン
スミッションと共に使用可能であり、また、シャフトが
動力源に、非遊動ギヤが駆動車輪にそれぞれ連結される
トランスミッションと共に使用可能である。 (2) 前記アクチュエータ制御手段が、前記同期時間
の長さが前記飛び越し変速時において前記通常変速時に
おけるより長くなるように前記アクチュエータを制御す
るものである(1)項に記載のシンクロメッシュ式トラ
ンスミッションのための変速装置[請求項2]。この変
速装置においては、同期時間の長さが飛び越し変速時に
おいて通常変速時におけるより長くなるようにアクチュ
エータが制御される。したがって、この変速装置によれ
ば、飛び越し変速時において同期時間が無駄に短くされ
ずに済み、その結果、変速装置の実用性を犠牲にするこ
となく、同期装置の耐久性を向上させ得る。 (3) 前記アクチュエータ制御手段が、前記スリーブ
に作用するスリーブ荷重の大きさが前記飛び越し変速時
において前記通常変速時におけるより小さくなるように
前記アクチュエータを制御するものである(2)項に記
載のシンクロメッシュ式トランスミッションのための変
速装置[請求項3]。この変速装置においては、スリー
ブ荷重の大きさが飛び越し変速時において通常変速時に
おけるより小さくなるようにアクチュエータが制御され
る。スリーブ荷重の大きさと同期時間の長さとの間に
は、一般に、スリーブ荷重が小さいほど同期時間が長く
なるという関係が成立する。したがって、この変速装置
によれば、結局、同期時間の長さが飛び越し変速時にお
いて通常変速時におけるより長くなり、その結果、変速
装置の実用性を犠牲にすることなく、同期装置の耐久性
を向上させ得る。 (4) 前記アクチュエータ制御手段が、(a)前記通
常変速と前記飛び越し変速との一方である第1変速に関
連し、前記駆動信号を決定するために従うべき規則を基
準規則として記憶する第1記憶部と、(b)前記通常変
速と前記飛び越し変速との他方である第2変速に関連
し、前記駆動信号を決定するために従うべき規則を前記
基準規則を用いて取得するための数値を記憶する第2記
憶部と、(c)前記第1変速の場合には、前記基準規則
に従って前記駆動信号を決定する一方、前記第2変速の
場合には、前記基準規則と前記数値とに基づいて前記駆
動信号を決定する駆動信号決定部とを含む(1)ないし
(3)項のいずれかに記載のシンクロメッシュ式トラン
スミッションのための変速装置[請求項4]。前記
(1)ないし(3)項のいずれかに係る変速装置は、そ
れのアクチュエータ制御手段が、(a)通常変速と飛び
越し変速とに関連して、駆動信号を決定するために従う
べき規則をそれぞれ記憶する記憶部と、(b)各変速時
に、それに関連する規則に従って駆動信号を決定する駆
動信号決定部とを含む態様で実施可能である。これに対
して、本項に係る変速装置においては、アクチュエータ
制御手段が、(a)通常変速と飛び越し変速との一方で
ある第1変速に関連し、駆動信号を決定するために従う
べき規則を基準規則として記憶する第1記憶部と、
(b)通常変速と飛び越し変速との他方である第2変速
に関連し、駆動信号を決定するために従うべき規則を基
準規則を用いて取得するための数値を記憶する第2記憶
部と、(c)第1変速の場合には、基準規則に従って駆
動信号を決定する一方、第2変速の場合には、基準規則
と数値とに基づいて駆動信号を決定する駆動信号決定部
とを含んでいる。したがって、この変速装置によれば、
駆動信号を決定するための規則を通常変速と飛び越し変
速とに関連してそれぞれ記憶することが不要となり、そ
の規則を記憶するために必要な記憶容量を容易に節減し
得る。 (5) 前記基準規則が、前記第1変速に関連し、前記
同期のための同期制御における前記遊動ギヤと前記スリ
ーブとの相対回転数と前記駆動信号との間に設定された
基準関係であり、前記駆動信号決定部が、前記第1変速
の場合には、実際の前記相対回転数に対応する駆動信号
を前記基準関係に従って決定する一方、前記第2変速の
場合には、実際の前記相対回転数に対応する駆動信号を
前記基準関係に従って基準駆動信号として決定するとと
もに、その決定された基準駆動信号と前記数値とに基づ
いて最終駆動信号を決定するものである(4)項に記載
のシンクロメッシュ式トランスミッションのための変速
装置[請求項5]。 (6) 前記数値が、前記最終駆動信号を決定するため
に前記基準駆動信号の値に掛け算されるものである
(5)項に記載のシンクロメッシュ式トランスミッショ
ンのための変速装置。 (7) 前記数値が、前記最終駆動信号を決定するため
に前記基準駆動信号の値に対して加算または減算される
ものである(5)項に記載のシンクロメッシュ式トラン
スミッションのための変速装置。 (8) 前記基準関係が、前記同期制御の開始時期にお
ける相対回転数である初期相対回転数と前記駆動信号と
の間に設定された関係であり、前記駆動信号決定部が、
前記第1変速の場合には、実際の前記初期相対回転数に
対応する駆動信号を前記基準関係に従って決定する一
方、前記第2変速の場合には、実際の前記初期相対回転
数に対応する駆動信号を前記基準関係に従って基準駆動
信号として決定するとともに、その決定された基準駆動
信号と前記数値とに基づいて最終駆動信号を決定するも
のである(5)ないし(7)項のいずれかに記載のシン
クロメッシュ式トランスミッションのための変速装置。
一般のシンクロメッシュ式トランスミッションにおいて
は、理論的に、同期の開始時期における遊動ギヤとスリ
ーブとの相対回転数である初期相対回転数と、その同期
が開始してから完了するまでの経過時間である同期時間
と、アクチュエータからスリーブに付与される荷重であ
るスリーブ荷重との間に一定の関係が成立する。このこ
とは[発明の実施の形態]の欄において詳述する。した
がって、例えば、ある長さの同期時間を目標同期時間に
選定すれば、その条件のもとに、初期相対回転数に対応
するスリーブ荷重が決定され、ひいては、その決定され
たスリーブ荷重を実現するためにアクチュエータに供給
することが適当な駆動信号も決定される。このような知
見に基づき、本項に係る変速装置においては、前記
(5)ないし(7)項のいずれかにおける基準関係が、
初期相対回転数と駆動信号との間に設定された関係とさ
れるとともに、第1変速の場合には、実際の初期相対回
転数に対応する駆動信号がその基準関係に従って決定さ
れる一方、第2変速の場合には、実際の初期相対回転数
に対応する駆動信号が基準関係に従って基準駆動信号と
して決定されるとともに、その決定された基準駆動信号
と前記数値とに基づいて最終駆動信号が決定される。し
たがって、この変速装置によれば、各回の同期制御にお
ける初期相対回転数を考慮することにより、通常変速時
と飛び越し変速時とにおいてそれぞれ適当な長さの同期
時間を精度よく実現し得る。
【0014】
【発明の実施の形態】以下、本発明のさらに具体的な実
施の形態のいくつかを図面に基づいて詳細に説明する。
【0015】図1には、本発明の第1実施形態である変
速装置のハードウエア構成が概念的に示されている。こ
の変速装置は、動力源がエンジン(内燃機関)10であ
る車両に搭載されている。この車両においては、エンジ
ン10のアウトプットシャフト(図示しない)がクラッ
チ12およびシンクロメッシュ式のトランスミッション
14を経て図示しない複数の駆動車輪に連結されてい
る。この車両においては、そのトランスミッション14
の変速段数が前進5段、後退(リバース)1段とされて
いる。
【0016】この車両は、それを加速させるために運転
者により操作されるアクセル操作部材としてのアクセル
ペダル20を備えている。この車両は、さらに、トラン
スミッション14を変速するために運転者により操作さ
れる変速操作部材としてのシフトレバー22を備えてい
る。
【0017】シフトレバー22は、トランスミッション
の変速が完全に手動により行われる車両においてその変
速のために運転者により操作されるシフトレバーと同じ
H字状パターンで操作されるように設計されている。し
たがって、シフトレバー22の変速操作は、車両前後方
向におけるシフト操作と、車両左右方向におけるセレク
ト操作とにより構成される。ただし、変速操作部材をそ
のようなシフトレバー22として構成することは本発明
を実施する際に不可欠なことではなく、例えば、運転者
により操作されるステアリングホイールに装着されたイ
ンクリメンタル式のスイッチとして構成することが可能
である。
【0018】トランスミッション14は、よく知られて
いるように、クラッチ12に接続されるインプットシャ
フト(図示しない)と、それと同軸のアウトプットシャ
フト26(図2参照)と、それらに平行に延びるカウン
タシャフト(図示しない)とを備えている。インプット
シャフトとカウンタシャフトとの間においては1つのギ
ヤ対により常時回転が伝達され、アウトプットシャフト
26とカウンタシャフトとの間においてはギヤ比が互い
に異なる複数のギヤ対のいずれかが有効ギヤ対として選
択されて回転が伝達される。その選択は複数の同期装置
により行われる。
【0019】図2には、1つの同期装置30が代表的に
示されている。この同期装置30は、イナーシャロック
型(ボーキング型ともいわれる)の一種であるボルグワ
ーナ式である。
【0020】同期装置30は、アウトプットシャフト2
6において、それと常時相対回転不能に装着されたクラ
ッチハブ32を備えている。そのクラッチハブ32の外
周部にはスリーブ34が、常時相対回転不能かつ軸方向
に移動可能に嵌合されている。スリーブ34の外周部に
は環状の溝36が形成されている。この溝36には図示
しない二股状のシフトフォークがスリーブ34を両側か
ら挟む姿勢で嵌合させられる。スリーブ34は、そのシ
フトフォークに対する相対回転が許容される状態でその
シフトフォークと共に軸方向に移動させられる。スリー
ブ34の内周部には複数の歯が周方向に並んで形成され
ている。それら複数の歯により、そのスリーブ34にお
いてクラッチ38が構成されている。
【0021】アウトプットシャフト26には、スリーブ
34を挟む2つの定位置においてそれぞれギヤAとギヤ
Bとが相対回転可能に装着されている。それらギヤAと
ギヤBとは共に、遊動ギヤとして機能するとともに、前
記カウンタシャフトに固定された各ギヤ(図示しない)
に常時噛み合わされている。
【0022】ギヤAの軸部のうちスリーブ34に近い部
分の外周部には、そのスリーブ34に近づくにつれて小
径となる円錐面を有するコーン42が形成されている。
すなわち、本実施形態においては、そのコーン42の円
錐面が請求項1における「摩擦面」の一例を構成してい
るのである。
【0023】そのコーン42には、それの円錐面を補完
する円錐面を有するシンクロナイザリング46が装着さ
れている。このシンクロナイザリング46の外周部には
複数の歯が周方向に並んで形成されている。それら複数
の歯は、スリーブ34のクラッチ38と選択的に噛み合
わされる。
【0024】ギヤAの軸部のうちコーン42に近い部分
の外周部にも複数の歯が形成されている。それら複数の
歯により、ギヤAにおいてクラッチ48が構成されてい
る。このクラッチ48は、スリーブ34のクラッチ38
と選択的に噛み合わされる。
【0025】クラッチハブ32とスリーブ34との間に
は複数のシフティングキー50が装着されている。それ
ら複数のシフティングキー50はクラッチハブ32の周
方向において互いに隔たった複数の定位置に保持されて
いる。シフティングキー50は、一定の幅を有してスリ
ーブ34の軸方向に延びている。シフティングキー50
は、それとクラッチハブ32との間に配置されたキース
プリング52により常時、スリーブ34の内周面に押し
付けられている。シフティングキー50はそれの外面に
形成された凸部において、スリーブ34の内面に形成さ
れた凹部に嵌合可能とされている。このような構造によ
り、スリーブ34が軸方向にスライドさせられる際、そ
のスリーブ34とシフティングキー50との間に作用す
る力が設定値を超えないために凹部が凸部の斜面を乗り
越えない状態では、それらスリーブ34とシフティング
キー50とが一体的に移動し、一方、上記力が設定値を
超えたために凹部が凸部の斜面を乗り越えた後には、シ
フティングキー50が置き去りにされてスリーブ34の
みが単独で移動させられる。
【0026】それら複数のシフティングキー50は常
時、シンクロナイザリング46にそれぞれ形成された複
数の凹部56に部分的に嵌り込んでいる。凹部56は、
一定の幅を有してシンクロナイザリング46の軸方向に
延びている。凹部56の幅寸法は、対応するシフティン
グキー50の幅寸法より少し長くされている。この寸法
設定により、スリーブ34とシンクロナイザリング46
との相対回転が一定範囲内で許容される。さらに、凹部
56の底面の位置は、スリーブ34もシンクロナイザリ
ング46も初期位置にある状態では、対応するシフティ
ングキー50の先端面との間にクリアランスが存在する
ように設定されている。このクリアランスは、シフティ
ングキー50がシンクロナイザリング46に接近するに
つれて減少し、やがて消滅する。この消滅状態では、シ
フティングキー50の軸力がシンクロナイザリング46
に伝達され、その結果、シンクロナイザリング46がコ
ーン42に押し付けられる。この押し付けにより、スリ
ーブ34とギヤAとの相対回転数が減少させられる。
【0027】シフティングキー50がシンクロナイザリ
ング46に当接した後にスリーブ34がさらに同じ向き
に移動させられれば、前述のように、スリーブ34のみ
が単独で移動させられ、それの歯の先端面においてシン
クロナイザリング46の歯の先端面に当接する。スリー
ブ34とギヤAとの相対回転数が実質的に0ではない状
態では、シフティングキー50と凹部56との幅方向ク
リアランスが消滅することにより、シンクロナイザリン
グ46がスリーブ34に対して自由に相対回転すること
が阻止される。そのため、スリーブ34のシンクロナイ
ザリング46へ向かう移動がそのシンクロナイザリング
46により邪魔される。スリーブ34がボーク状態にあ
るのである。しかし、それと同時に、スリーブ34がシ
ンクロナイザリング46をコーン42にさらに強く押し
付ける結果、やがてスリーブ34とギヤAとの相対回転
数が実質的に0に減少させられる。
【0028】その相対回転数が実質的に0である状態、
すなわち、同期完了状態においては、シンクロナイザリ
ング46とコーン42との間に摩擦力がほとんど発生せ
ず、そのため、シンクロナイザリング46がスリーブ3
4に対して自由に相対回転可能となる。したがって、そ
の後、スリーブ34の歯がシンクロナイザリング46の
歯を周方向に押し分けながら前進させられ、その結果、
スリーブ34の歯とシンクロナイザリング46の歯との
噛み合いが行われる。引き続いて、スリーブ34のクラ
ッチ38の歯がギヤAのクラッチ48の歯を周方向に押
し分けながら前進させられ、やがて、スリーブ34のク
ラッチ38がギヤAのクラッチ48に噛み合わされる。
【0029】ギヤAと同様に、ギヤBにも、コーン42
とクラッチ48とが形成されるとともに、そのコーン4
2にシンクロナイザリング46が装着されている。
【0030】そして、スリーブ34のクラッチ38の歯
がギヤA側のシンクロナイザリング46の歯とギヤAの
クラッチ48の歯とに噛み合わされている状態では、ギ
ヤAの回転がアウトプットシャフト26に伝達される。
この状態においては、ギヤAと、それと常時噛み合わさ
れた状態で前記カウンタシャフトと共に回転するギヤと
が「有効ギヤ対」を構成している。これに対して、スリ
ーブ34のクラッチ38の歯がギヤB側のシンクロナイ
ザリング46の歯とギヤBのクラッチ48の歯とに噛み
合わされている状態では、ギヤBの回転がアウトプット
シャフト26に伝達される。この状態においては、ギヤ
Bと、それと常時噛み合わされた状態で前記カウンタシ
ャフトと共に回転するギヤとが「有効ギヤ対」を構成し
ている。このように、ギヤAとギヤBとのうち回転がア
ウトプットシャフト26に伝達されるものがスリーブ3
4の移動に応じて変化させられ、その結果、トランスミ
ッション14の変速比も変化させられる。
【0031】この変速装置においては、トランスミッシ
ョン14の変速比の変化すなわち変速が自動的に行われ
る。この変速装置においては、複数の同期装置30の複
数のスリーブ34にそれぞれ係合させられる複数のシフ
トフォークが伝達機構を経てアクチュエータ装置に連結
されている。
【0032】アクチュエータ装置は、図1に示すよう
に、シフトレバー22のシフト操作に連動するシフトア
クチュエータ60と、セレクト操作に連動するセレクト
アクチュエータ62とを備えている。それらシフトアク
チュエータ60およびセレクトアクチュエータ62は、
前述の電気的駆動源利用式または圧力源利用式とするこ
とができる。
【0033】図3に示すように、伝達機構66は、複数
のスリーブ34の軸方向に平行に複数のシフトフォーク
から延びる複数のシフティングロッド68を備えてい
る。伝達機構66は、さらに、シフトアクチュエータ6
0の発生荷重をそれら複数のシフティングロッド68の
いずれかに伝達する伝達ロッド70を備えている。それ
ら複数のシフティングロッド68には複数の係合部72
がそれぞれ形成されており、それら複数の係合部72の
うち選択されたものに伝達ロッド70の係合部74が係
合させられる。係合部72の選択は、伝達ロッド70の
係合部74と複数のシフティングロッド68の複数の係
合部72との相対移動により行われ、その相対移動はセ
レクトアクチュエータ62により行われる。
【0034】クラッチ12は、よく知られた基本的な構
造により、エンジン10のアウトプットシャフトとトラ
ンスミッション14のインプットシャフトとを、それら
が互いに接続される接続状態と、互いに切断される切断
状態とに切り換える。この変速装置においては、そのク
ラッチ12の切換えも自動的に行われる。この自動切換
えは図1に示すクラッチアクチュエータ80により行わ
れる。クラッチアクチュエータ80も、シフトアクチュ
エータ60およびセレクトアクチュエータ62と同様
に、電気的駆動源利用式または圧力源利用式とすること
ができる。
【0035】それらクラッチアクチュエータ80、シフ
トアクチュエータ60およびセレクトアクチュエータ6
2は、図1に示す変速ECU(Electronic Control Uni
t)により制御される。その変速ECU82は、図4に
示すように、1つないしは複数のプロセッサから構成さ
れるプロセッシングユニット(以下、「PU」と略称す
る)84と、リードオンリメモリ(以下、「ROM」と
略称する)86と、ランダムアクセスメモリ(以下、
「RAM」と略称する)88とがバス90により互いに
接続されたコンピュータ92を主体として構成されてい
る。
【0036】図1に示すように、その変速ECU82の
入力部には、車両に対する運転者の意思を検出するため
の複数のセンサが接続されている。それら複数のセンサ
は、トランスミッション14の各変速段に対応するシフ
トレバー22のシフト位置を検出するシフト位置センサ
94と、アクセルペダル20の操作位置を検出するペダ
ル位置センサ96とを含んでいる。
【0037】変速ECU82の入力部には、さらに、ト
ランスミッション14の作動状態を検出するための複数
のセンサが接続されている。それら複数のセンサは、ス
リーブ34の移動位置を直接にまたは間接に検出する位
置センサ98(例えば、シフティングロッド68、伝達
ロッド70または前記シフトフォークの移動位置をスリ
ーブ34の位置として検出するセンサ)と、スリーブ3
4に作用するスリーブ荷重を直接にまたは間接に検出す
る荷重センサ100と、トランスミッション14のイン
プットシャフトの回転数である入力回転数Ninを検出
する入力回転数センサ102と、アウトプットシャフト
26の回転数である出力回転数Noutを検出する出力
回転数センサ104とを含んでいる。
【0038】一方、変速ECU82の出力部には、シフ
トアクチュエータ60とセレクトアクチュエータ62と
クラッチアクチュエータ80とが接続されている。変速
ECU82は、上述の複数のセンサからの信号に基づ
き、それらアクチュエータ60,62,80に供給する
電気エネルギーの関連値(例えば、瞬間電流、瞬間電
圧、積分電流、積分電圧等)を制御する。
【0039】ここで、変速ECU82とアクチュエータ
60,62,80との接続を詳細に説明すれば、変速E
CU82は、よく知られている手法により、電源(図示
しない)に接続されたドライバ(図示しない)を介して
それらアクチュエータ60,62,80に接続されてい
る。変速ECU82は、そのドライバへの指令信号を制
御することにより、そのドライバを経て電源からアクチ
ュエータ60,62,80に供給される電気エネルギー
の関連値を制御する。ただし、本実施形態においては、
ドライバへの指令信号に関する説明を省略するととも
に、変速ECU82の指令信号に応じてドライバがアク
チュエータ60,62,80に電気エネルギーを供給す
ることを、変速ECU82がアクチュエータ60,6
2,80に駆動信号を出力する(または供給する)こと
として説明する。
【0040】変速ECU82は、同じ車両を制御する他
のECUとの通信を行う。他のECUの一例は、エンジ
ン10を制御するエンジンECU106である。変速E
CU82は、それにとって必要な信号を他のECUから
受信したり、他のECUにとって必要な信号をそれに送
信する。
【0041】図4に示すように、ROM86には、図5
ないし図7、図9および図10にそれぞれフローチャー
トで概念的に表されているメインプログラム、セレクト
アクチュエータ制御プログラム、シフトアクチュエータ
制御プログラム、クラッチアクチュエータ制御プログラ
ムおよび補正プログラムを始めとする複数のプログラム
が記憶されている。それら複数のプログラムは、PU8
4を構成する1つのプロセッサにより実行したり、PU
84を構成する複数のプロセッサによりそれぞれ実行す
ることが可能である。
【0042】それら複数のプログラムの実行において
は、必要に応じてRAM88が利用される。このRAM
88には、図4に示すように、変速段関連データ記憶領
域、フラグ領域、駆動信号決定マップ記憶領域、適正化
係数記憶領域および補正関連データ記憶領域を始めとす
る複数の領域が設けられている。以下、それら複数の領
域のうち必要なものを利用して実行される前記各プログ
ラムの内容を順に説明する。
【0043】まず、図5のメインプログラムの内容を説
明する。このメインプログラムは、コンピュータ92の
電源投入後、繰返し実行される。各回の実行時には、ま
ず、ステップS101(以下、単に「S101」で表
す。他のステップについても同じとする。)において、
シフト位置センサ94により今回検出されたシフト位置
が前回検出されたシフト位置と異なるか否かが判定され
る。異ならない場合には、判定がNOとなり、直ちにこ
のプログラムの一回の実行が終了する。
【0044】これに対して、異なる場合には、S101
の判定がYESとなり、S102に移行する。このステ
ップにおいては、シフト位置センサ94により前回検出
されたシフト位置に基づき、トランスミッション14に
おける現在変速段が取得される。このステップにおいて
は、さらに、シフト位置センサ94により今回検出され
たシフト位置に基づき、トランスミッション14におい
て今回選択されるべき目標変速段が決定される。トラン
スミッション14の変速段(変速比)を第1速に対応す
る1段に変更するのか、第2速に対応する2段に変更す
るのか等が決定されるのである。
【0045】続いて、S103において、その取得され
た現在変速段を表すデータと、決定された目標変速段を
表すデータとがRAM88の変速段関連データ記憶領域
に記憶される。その後、S104において、その現在変
速段から目標変速段への切り換えのための今回の変速が
飛び越し変速であるか否かが判定される。具体的には、
現在変速段と目標変速段とが共に前進5段のうちのいず
れかであり、かつ、それら現在変速段と目標変速段との
段数差の絶対値(以下、この値を「変速段数差」とい
う)が2以上であるか否かが判定される。例えば、現在
変速段が4段であり、目標変速段が2段である場合に
は、変速段数差が2であると判定され、その結果、今回
の変速が飛び越し変速であると判定されるのである。
【0046】今回の変速が飛び越し変速である場合に
は、S104の判定がYESとなり、S105におい
て、前記変速段数差を表すデータがRAM88の変速段
関連データ記憶領域に記憶される。続いて、S106に
おいて、セット状態では今回の変速が飛び越し変速であ
ることを示す一方、リセット状態では飛び越し変速では
ないこと示す飛び越し変速フラグがセットされる。この
飛び越し変速フラグは、RAM88のフラグ領域に設け
られていて、コンピュータ92の電源投入に伴ってリセ
ットされるように設計されている。
【0047】このようにS104の判定がYESとなっ
た場合にはS105およびS106の実行後にS107
に移行するが、今回の変速が飛び越し変速ではないため
にS104の判定がNOとなった場合には直ちにS10
7に移行する。このS107においては、セット状態で
は変速要求が出されたことを示す一方、リセット状態で
は出されていないこと示す変速要求フラグがセットされ
る。この変速要求フラグは、RAM88のフラグ領域に
設けられていて、コンピュータ92の電源投入に伴って
リセットされるように設計されている。以上で、このメ
インプログラムの一回の実行が終了する。
【0048】次に、図6のセレクトアクチュエータ制御
プログラムの内容を説明する。このプログラムも上記メ
インプログラムと同様に、繰返し実行される。各回の実
行時には、まず、S201において、RAM88におい
て変速要求フラグがセットされているか否かが判定され
る。セットされていない場合には、判定がNOとなり、
直ちにこのプログラムの一回の実行が終了する。これに
対して、セットされている場合には、判定がYESとな
り、S202において、RAM88から目標変速段が読
み込まれ、続いて、S203において、その目標変速段
を選択するのに必要な駆動信号がセレクトアクチュエー
タ62に出力される。その結果、伝達ロッド70の係合
部74が、複数のシフティングロッド68のうち目標変
速段に対応するものの係合部72に係合させられる。以
上で、このプログラムの一回の実行が終了する。
【0049】次に、図7のシフトアクチュエータ制御プ
ログラムの内容を説明する。このプログラムも上記メイ
ンプログラムおよびセレクトアクチュエータ制御プログ
ラムと同様に、繰返し実行される。各回の実行時には、
まず、S301において、RAM88において変速要求
フラグがセットされているか否かが判定される。セット
されていない場合には、判定がNOとなり、直ちにこの
プログラムの一回の実行が終了する。
【0050】これに対して、変速要求フラグがセットさ
れている場合には、S301の判定がYESとなり、S
302において、RAM88に記憶されている目標変速
段が読み出され、続いて、S303において、その目標
変速段を選択するためにシフトアクチュエータ60を作
動させることが必要である方向が決定される。複数の同
期装置30のうちセレクトアクチュエータ62により選
択されたもののスリーブ34のクラッチ38を、目標変
速段を実現する遊動ギヤ(以下、「目標遊動ギヤ」とい
う)のクラッチ48に噛み合せるためにスリーブ34を
移動させる方向が決定されるのである。
【0051】その後、S304において、スリーブ34
の前進がシンクロナイザリング46により邪魔されるボ
ークの前段階であるか否かが判定される。この判定にお
いては例えば、前記公報に記載されているように、一回
の変速制御において、入力回転数センサ102により検
出された入力回転数Ninと出力回転数センサ104に
より検出された出力回転数Noutとの差の時間的変化
量の絶対値が未だしきい値を超えていないか、または超
えたことがあるかが判定される。未だ超えていないと判
定された場合には、スリーブ34がボーク前の状態にあ
ると判定される。
【0052】スリーブ34がボーク前の状態にあると判
定された場合には、S304の判定がYESとなり、S
305に移行する。このステップにおいては、スリーブ
34が、トランスミッション14において、現在変速段
実現のための位置から抜かれて目標変速段実現のための
位置に入れられるシフト抜き入れ状態にあると判断され
る。スリーブ34の抜き作動と入れ作動とは、同じ同期
装置30において行われる場合と、2つの同期装置30
においてそれぞれ行われる場合とがある。その後、S3
06において、スリーブ34に作用させることが要求さ
れる要求荷重F が、そのシフト抜き入れに適した大き
さを有するように決定される。続いて、S307におい
て、S303において決定された作動方向にスリーブ3
4を移動させるとともに、S306において決定された
要求荷重Fを実現するのに必要な駆動信号がシフトア
クチュエータ60に出力される。その後、S304に戻
る。
【0053】それらS304ないしS307の実行が繰
り返された結果、スリーブ34がシンクロナイザリング
46に当接し、それにより、スリーブ34がボークの状
態にあると判定されるに至ると、S304の判定がNO
となり、S308に移行する。このステップにおいて
は、同期制御が行われる。
【0054】このS308の詳細が図8に同期制御ルー
チンとしてフローチャートで概念的に表されている。
【0055】まず、この同期制御ルーチンの内容を概念
的に説明する。
【0056】1.この同期制御ルーチンは、スリーブ3
4がシンクロナイザリング46に当接し始めるボーク開
始時期から同期が実質的に完了する同期完了時期までの
間において、一回の同期制御を行う。
【0057】2.この同期制御ルーチンは、初期入力回
転数Nin0と初期出力回転数N ut0との差である
初期相対回転数Nr0に基づき、シフトアクチュエータ
60に実際に供給すべき駆動信号Sを決定する。ここ
に、「初期入力回転数Nin0」と「初期出力回転数N
out0」とはそれぞれ、一回の同期の開始時期におけ
る入力回転数Ninと出力回転数Noutとである。ま
た、「入力回転数Nin」とは、目標遊動ギヤの回転数
を意味し、その回転数は、前記インプットシャフトの回
転数(狭義の入力回転数Nin)と、そのインプットシ
ャフトからその目標遊動ギヤまでのギヤ列の全ギヤ比と
の積により求められる。ただし、説明の便宜上、特に断
らない限り、その目標遊動ギヤの回転数を入力回転数N
inで表すこととする。
【0058】さらに詳しく説明すれば、この同期制御ル
ーチンは、初期相対回転数Nr0と駆動信号Sとの間に
設定された関係に従って暫定の駆動信号Sである暫定駆
動信号Sを決定し、さらに、その決定された暫定駆動
信号Sに基づいて最終駆動信号Sを決定する。
【0059】ここで、初期相対回転数Nr0と駆動信号
Sとの間に設定された関係について詳しく説明する。
【0060】一般のシンクロメッシュ式トランスミッシ
ョンにおいては、理論的に、ある回の同期における初期
相対回転数Nr0と、その同期が開始してから完了する
までの経過時間である同期時間Tsynと、シフトアク
チュエータ60からスリーブ34に付与される荷重であ
るスリーブ荷重Fとの間に一定の関係が成立する。この
ことを図13および図14を参照しつつ具体的に説明す
る。
【0061】目標遊動ギヤの一例であるギヤAおよびそ
れと一体的に回転する回転体の総合的な慣性モーメント
を「J」、シンクロナイザリング46との摩擦によって
ギヤAにそれの回転軸線まわりに作用するトルクを
「Q」、時間を「t」でそれぞれ表すこととすれば、ト
ルクQについては、 Q=J(dNin/dt) なる式が成立する。この式は、次式に変形できる。 Qdt=JdNin
【0062】ここで、図14に示すように、同期中には
入力回転数Ninがほぼ直線的に増加し、最終的には、
定速回転状態にあると仮定されるアウトプットシャフト
26の回転数(出力回転数)Noutに到達すると仮定
することが可能である。一次近似が可能なのであり、こ
の仮定によれば、上記式は、 Nr0=Qdt/J なる式に変形できる。
【0063】一方、コーン42の円錐面の、ギヤAの回
転軸線に対する傾斜角を「θ」、ギヤAとコーン42と
の摩擦面の、ギヤAの回転軸線からの代表半径を「r」
でそれぞれ表すこととすれば、トルクQは、 Q=(F/sinθ)r なる式で表すことができる。この式を利用すれば、前記
式は、 Nr0=(Fr/sinθ)dt/J なる式に変形できる。
【0064】また、上記仮定(すなわち一次近似)によ
れば、その式において「dt」を同期時間Tsynで置
き換えることが可能である。よって、いずれの変数にも
依存しない定数αを導入することにより、 Nr0=αFTsyn なる式が誘導できる。
【0065】よって、初期相対回転数Nr0とスリーブ
荷重Fと同期時間Tsynとの間には、初期相対回転数
r0がスリーブ荷重Fと同期時間Tsynとの積に比
例するという関係が成立することが分かる。したがっ
て、同期時間Tsynを目標値に固定すれば、初期相対
回転数Nr0とスリーブ荷重Fとが1対1に対応する。
さらに、スリーブ荷重Fとシフトアクチュエータ60の
駆動信号Sとが、その駆動信号Sの値が小さくなるとス
リーブ荷重Fも小さくなる関係において、1対1に対応
する。
【0066】それらの知見に基づき、この同期制御ルー
チンにおいては、今回の変速が飛び越し変速ではない通
常変速であると仮定して、初期相対回転数Nr0と駆動
信号Sとの間に設定された関係に従って暫定駆動信号S
が決定される。本実施形態においては、その初期相対
回転数Nr0と駆動信号Sとの関係が、実験値、設計値
または経験値として予め標準的に定められた目標同期時
間Tsyn である標準目標同期時間Tsyn に基づ
いて設定されており、その関係は、図15にグラフで表
される駆動信号決定マップとして設定されている。図4
に示すように、上記標準目標同期時間Tsyn はRO
M86に記憶されている。
【0067】ここに「駆動信号決定マップ」は、ROM
86に記憶されている標準駆動信号決定マップがRAM
88の駆動信号決定マップ記憶領域に転送された後に前
記補正プログラムの実行により適宜更新されたものであ
る。その「標準駆動信号決定マップ」は、実験、設計ま
たは経験に基づいて予め標準的に設定されたものであ
る。
【0068】本実施形態においては、各回の車両走行の
開始(例えば、車両の電源スイッチがオンに操作される
こと)に伴って、ROM86からRAM88に標準駆動
信号決定マップが転送されるが、このようにすることは
本発明を実施する上において不可欠なことではない。例
えば、コンピュータ92を、書換え可能な不揮発メモリ
の一例としての電気的書換え可能ROM(すなわち、E
EPROM)を備えたものとするとともに、車両製造後
における各回の車両走行の終了(例えば、車両の電源ス
イッチがオフに操作されること)に応答して、その時点
においてRAM88に記憶されている駆動信号決定マッ
プをそのEEPROMに格納し、かつ、車両製造後にお
ける2回目以後の各回の車両走行の開始時期において
は、そのEEPROMから前回の駆動信号決定マップを
読み出して使用するようにして本発明を実施することが
可能である。このようにすれば、前回の車両走行中に駆
動信号決定マップに関してなされた学習結果を次回の車
両走行中に有効に利用することができ、その結果、各回
の車両走行の当初から駆動信号決定マップを十分に高い
精度で使用し得る。
【0069】ところで、一般のシンクロメッシュ式トラ
ンスミッションにおいては、それの同期装置の耐久性を
向上させるためには、同期時間Tsynを無駄に短くす
ることは適当ではない。一方、変速装置の実用性を考え
ると、同期時間Tsynを無駄に長くすることは望まし
くない。ここで、変速の種類に着目して、飛び越し変速
と通常変速とを比較するに、その使用頻度の観点におい
て後者は前者より勝る。したがって、飛び越し変速時に
おいて、同期時間Tsynの長さを通常変速時における
より長くすれば、変速装置の実用性を犠牲にすることな
く、同期装置の耐久性を向上させることができる。
【0070】このような知見に基づき、この同期制御ル
ーチンにおいては、今回の変速が通常変速である場合に
は、暫定駆動信号Sがそのまま最終駆動信号Sとし
て決定される。これに対して、今回の変速が飛び越し変
速である場合には、同期時間Tsynの目標値である目
標同期時間Tsyn の長さが通常変速の場合における
長さ、すなわち、前記標準目標同期時間Tsyn の長
さより長くなるように暫定駆動信号Sが適正化され、
それが最終駆動信号Sとして決定される。
【0071】ここで、今回の変速が飛び越し変速である
場合における暫定駆動信号Sの適正化について詳しく
説明すれば、この同期制御ルーチンにおいては、その暫
定駆動信号Sの適正化が、スリーブ荷重Fの大きさが
通常変速の場合におけるより小さくなるように行われ
る。なぜなら、一般にスリーブ荷重Fが小さいほど同期
時間Tsynが長くなるという関係が成立するからであ
る。そして、本実施形態においては、そのような暫定駆
動信号Sの適正化が、暫定駆動信号Sの値に1より
小さい値を有する適正化係数Kを掛け算することにより
行われる。なぜなら、上述のように、駆動信号Sの値が
小さくなるとスリーブ荷重Fも小さくなるからである。
【0072】その「適正化係数K」は、図16に示すよ
うに、変速段数差ごとに設定されている。この適正化係
数Kは、ROM86に記憶されている標準適正化係数が
図4に示すRAM88の適正化係数記憶領域に転送され
た後に前記補正プログラムの実行により適宜更新された
ものである。その「標準適正化係数」は、実験、設計ま
たは経験に基づき、変速段数差が大きくなるにつれて小
さくなるように予め設定されている。具体的には、変速
段数差が2、3および4である場合の標準適正化係数K
、KおよびKの間に、KがKより小さく、か
つ、KがKより小さい関係が成立するように設定さ
れている。図17には、ある初期相対回転数Nr0に対
応する暫定駆動信号Sの値が、そのような適正化係数
K(K,K,K)を用いて適正化される様子がグ
ラフで概念的に表されている。
【0073】本実施形態においては、前記駆動信号決定
マップの場合と同様に、各回の車両走行の開始に伴っ
て、ROM86からRAM88に標準適正化係数が転送
されるが、このようにすることは、駆動信号決定マップ
の場合と同様に、本発明を実施する上において不可欠な
ことではない。例えば、駆動信号決定マップの場合と同
様に、コンピュータ92を、EEPROMを備えたもの
とするとともに、車両製造後における各回の車両走行の
終了に応答して、その時点においてRAM88に記憶さ
れている適正化係数KをそのEEPROMに格納し、か
つ、車両製造後における2回目以後の各回の車両走行の
開始時期においては、そのEEPROMから前回の適正
化係数Kを読み出して使用するようにして本発明を実施
することが可能である。このようにすれば、前回の車両
走行中に適正化係数Kに関してなされた学習結果を次回
の車両走行中に有効に利用することができ、その結果、
各回の車両走行の当初から適正化係数Kを十分に高い精
度で使用し得る。
【0074】次に、この同期制御ルーチンの内容を具体
的に説明する。
【0075】この同期制御ルーチンの各回の実行時に
は、まず、図8のS350において、セット状態では今
回の同期制御が開始されたことを示す一方、リセット状
態では開始されていないこと示す同期制御開始フラグが
セットされる。この同期制御開始フラグは、RAM88
のフラグ領域に設けられていて、コンピュータ92の電
源投入に伴ってリセットされるように設計されている。
【0076】次に、S351において、初期入力回転数
in0と初期出力回転数Nout とが取得されると
ともに、それら取得値がRAM88の補正関連データ記
憶領域に記憶される。具体的には、まず、現時点、すな
わち今回の同期制御の開始時期に、入力回転数センサ1
02と出力回転数センサ104とにより、入力回転数N
in(狭義)と出力回転数Noutとがそれぞれ検出さ
れる。次に、入力回転数Nin(狭義)の検出値の換算
値(その検出値と、トランスミッション14の目標遊動
ギヤまでの全ギヤ比との積)と出力回転数Noutの検
出値とがそれぞれ、初期入力回転数Nin0と初期出力
回転数Nout0として取得され、さらにRAM88に
記憶される。次に、S352において、取得された初期
入力回転数Nin0と初期出力回転数Nout0とに基
づいて初期相対回転数Nr0が算出されるとともに、そ
の算出値がRAM88の補正関連データ記憶領域に記憶
される。
【0077】ところで、初期相対回転数Nr0は、他の
手法によっても取得可能である。例えば、クラッチ12
の接続状態においては、エンジン10の回転数と入力回
転数Nin(狭義)とが互いに一致することに着目し、
エンジン10の回転数を検出するエンジン回転数センサ
の検出値で入力回転数センサ102の検出値を代替する
ことにより、初期相対回転数Nr0を取得可能である。
【0078】さらに、クラッチ12の接続状態において
は、エンジン10の回転数から入力回転数Nin(狭
義)のみならず出力回転数Noutをも導出可能である
ことに着目し、エンジン回転数センサの検出値で入力回
転数センサ102の検出値のみならず出力回転数センサ
104の検出値をも代替することにより、初期相対回転
数Nr0を取得可能である。
【0079】以上のようにして初期相対回転数Nr0
算出されたならば、S353において、RAM88に記
憶されている駆動信号決定マップ(図15参照)を用い
ることにより、初期相対回転数Nr0の算出値に対応す
る駆動信号Sが暫定駆動信号Sとして決定される。
【0080】駆動信号決定マップは、正確には、初期相
対回転数Nr0についての複数の代表値(離散値)と、
複数の駆動信号Sの値(離散値)との関係を定義してい
る。そして、今回の初期相対回転数Nr0が、それら複
数の代表値のいずれかに一致した場合には、今回の初期
相対回転数Nr0と一致する代表値に対応する駆動信号
Sが暫定駆動信号Sとして決定される。これに対し
て、今回の初期相対回転数Nr0が、それら複数の代表
値のいずれにも一致しない場合には、今回の初期相対回
転数Nr0に近い2つの代表値により規定される区間に
おいて駆動信号Sが線形補間されることにより、暫定駆
動信号Sが決定される。
【0081】その後、S354において、RAM88に
おいて飛び越し変速フラグがセットされているか否かが
判定される。セットされていない場合には、判定がNO
となり、S355において、S353において決定され
た暫定駆動信号Sが最終駆動信号Sとして決定され
る。
【0082】これに対して、飛び越し変速フラグがセッ
トされている場合には、S354の判定がYESとな
り、S356において、RAM88に記憶されている変
速段数差が読み出される。続いて、S357において、
RAM88に記憶されている現在の複数の適正化係数K
のうち、その読み出された変速段数差に対応するものが
読み出される。その後、S358において、S353に
おいて決定された暫定駆動信号Sの値にその読み出さ
れた適正化係数Kを掛け算することにより、最終駆動信
号Sが決定される。
【0083】以上のようにS354の判定がNOとなっ
た場合にはS355の実行後にS359に移行するが、
そのS354の判定がYESとなった場合にはS356
ないしS358の実行後にS359に移行する。このS
359においては、決定された最終駆動信号Sがシフ
トアクチュエータ60に出力される。
【0084】続いて、S360において、現時点におけ
る実際入力回転数Nin と実際出力回転数Nout
とが共に取得される。それら実際入力回転数Nin
実際出力回転数Nout とはぞれぞれ、前述の初期入
力回転数Nin0と初期出力回転数Nout0と同様に
して、入力回転数センサ102の出力信号と出力回転数
センサ104の出力信号とのそれぞれに基づいて取得さ
れる。
【0085】その後、S361において、S360にお
ける実際入力回転数Nin の取得値と実際出力回転数
out の取得値との差が今回の相対回転数Nとし
て算出されるとともに、その算出された相対回転数N
の絶対値がしきい値Nrthより小さいか否かが判定さ
れる。すなわち、今回の同期が実質的に完了したか否か
が判定されるのである。上記しきい値Nrthは、0に
近い値を有するものであって、ROM86に記憶されて
いる。
【0086】相対回転数Nの絶対値がしきい値N
rthより小さくはない場合には、S361の判定がN
Oとなり、S359に戻る。それらS359ないしS3
61の実行が繰り返された結果、相対回転数Nの絶対
値がしきい値Nrthより小さくなったと判定されるに
至ると、今回の同期制御を終了させるべきであるとし
て、S361の判定がYESとなり、以上で、この同期
制御ルーチンの今回の実行が終了する。
【0087】その後、図7のS309において、スリー
ブ34が現在、押し分け状態にあると判定される。スリ
ーブ34と目標遊動ギヤとの同期が完了した状態におい
て、スリーブ34のクラッチ38の歯が、シンクロナイ
ザリング46の歯と、目標遊動ギヤのクラッチ48の歯
とを押し分けながら前進する状態にあると判定されるの
である。続いて、S310において、スリーブ34に作
用させることが要求される要求荷重Fが、スリーブ3
4の押し分けに適した大きさを有するように決定され
る。
【0088】その後、S311において、S303にお
いて決定された作動方向にスリーブ34を移動させると
ともに、S310において決定された要求荷重Fを実
現するのに必要な駆動信号がシフトアクチュエータ60
に出力される。続いて、S312において、セット状態
では今回の変速制御が完了したことを示す一方、リセッ
ト状態では完了していないことを示す変速完了フラグが
セットされる。この変速完了フラグもRAM88のフラ
グ領域に設けられていて、コンピュータ92の電源投入
に伴ってリセットされるように設計されている。以上
で、このシフトアクチュエータ制御プログラムの一回の
実行が終了する。
【0089】図9のクラッチアクチュエータ制御プログ
ラムも、以上説明したプログラムと同様に、繰返し実行
される。各回の実行時には、まず、S401において、
RAM88において変速要求フラグがセットされている
か否かが判定される。セットされていない場合には、判
定がNOとなり、直ちにこのプログラムの一回の実行が
終了する。
【0090】これに対して、変速要求フラグがセットさ
れている場合には、S401の判定がYESとなり、S
402に移行する。このステップにおいては、クラッチ
12が接続状態から切断状態に移行するために必要な駆
動信号がクラッチアクチュエータ80に出力される。そ
の後、S403において、RAM88において変速完了
フラグがセットされるのが待たれる。セットされたなら
ば、S404において、クラッチ12が切断状態から接
続状態に移行するために必要な駆動信号がクラッチアク
チュエータ80に出力される。続いて、S405におい
て、RAM88において変速要求フラグと変速完了フラ
グとがリセットされる。以上で、このクラッチアクチュ
エータ制御プログラムの一回の実行が終了する。
【0091】次に、図10の補正プログラムの内容を説
明する。
【0092】まず、この補正プログラムの内容を概念的
に説明する。
【0093】この補正プログラムは、前回の変速が通常
変速であった場合には、その直後に、前回の同期制御中
の各時期における実際入力回転数Nin の、それと同
時期における目標入力回転数Nin からの偏差である
入力回転数偏差ΔNinに基づいて前記駆動信号決定マ
ップの補正を行う。一方、この補正プログラムは、前回
の変速が飛び越し変速であった場合には、その直後に、
前回の同期制御中における入力回転数偏差ΔNinに基
づいて前記適正化係数Kの補正を行う。
【0094】本実施形態においては、図18にグラフで
示すように、各回の同期制御中において、入力回転数N
inがそれの初期値である初期入力回転数Nin0から
直線的に増加して、同期完了時期、すなわち同期開始時
期から目標同期時間Tsyn が経過した時期に、定速
回転状態にあると仮定されるアウトプットシャフト26
の回転数、すなわち初期出力回転数Nout0に到達す
ると仮定されている。そして、この補正プログラムにお
いては、その仮定を前提として、一回の同期制御中の各
時期における目標入力回転数Nin が、初期入力回転
数Nin0と初期出力回転数Nout0と目標同期時間
syn とに基づいて決定される。
【0095】さらに、この補正プログラムは、前述の駆
動信号決定マップおよび適正化係数Kの補正を、前回の
同期制御における入力回転数偏差ΔNinに関連する複
数の変数を表す複数のデータ(以下、「入力回転数偏差
関連データ」と総称する)に基づいて行う。具体的に
は、この補正プログラムは、上記補正を、その補正後の
駆動信号決定マップおよび適正化係数Kに基づく最終駆
動信号Sにより、次回の同期制御における実際同期時
間Tsyn が目標同期時間Tsyn に近づくように
行う。
【0096】ここで、「入力回転数偏差関連データ」に
ついて詳しく説明すれば、この補正プログラムにおいて
は、その入力回転数偏差関連データとして、以下に詳述
する4つの変数、すなわち、(i)入力回転数偏差合計
値ΣΔNin,(ii)同期時間偏差ΔTsyn,(ii
i)経過時入力回転数偏差ΔNin および(iv)変化
勾配偏差ΔdNinを表すデータが用いられる。図19
には、それら4つの変数がグラフを用いて説明されてい
る。
【0097】(i)入力回転数偏差合計値ΣΔNin これは、前回の同期制御における入力回転数偏差ΔN
inの合計値である。この入力回転数偏差合計値ΣΔN
inは、図19のグラフにおいて、斜線のハッチで示さ
れる領域の面積に相当する。
【0098】(ii)同期時間偏差ΔTsyn これは、前回の同期制御における実際同期時間Tsyn
の、目標同期時間T syn からの偏差である。この
同期時間偏差ΔTsynを用いるのは、実際同期時間T
syn が目標同期時間Tsyn より短いか長いか
が、入力回転数偏差ΔNinが0になる時期が予定より
早いか遅いかを表しているからである。
【0099】(iii)経過時入力回転数偏差ΔNin これは、前回の同期制御において目標同期時間Tsyn
が経過した時期と実質的に同じ時期の入力回転数偏差
ΔNinである。
【0100】(iv)変化勾配偏差ΔdNin これは、前回の同期制御における実際入力回転数Nin
の変化勾配(実際変化勾配)dNin の平均値であ
る実際変化勾配平均値MEAN(dNin )の、目標
入力回転数Nin の変化勾配(目標変化勾配)dN
in からの偏差である。
【0101】これら4つの変数が0に近づくということ
は、同期制御において実際同期時間Tsyn が目標同
期時間Tsyn に近づくことを意味する。
【0102】したがって、この補正プログラムは、前回
の同期制御においてそれら4つの変数を取得するととも
に、それら取得値に基づき、次回の同期制御において取
得されるべきそれら4つの変数がいずれも0に近づくよ
うに、駆動信号決定マップおよび適正化係数Kを補正す
る。
【0103】ここで、駆動信号決定マップおよび適正化
係数Kの補正について、さらに詳しく説明する。
【0104】この補正プログラムにおいては、まず、駆
動信号決定マップおよび適正化係数Kを補正するための
4種類の暫定補正係数Cが、前回の同期制御において
取得された4つの変数に基づいてそれぞれ決定され、さ
らに、それら暫定補正係数C に基づいて1つの最終補
正係数Cが決定される。さらに、この補正プログラム
においては、前回の変速が通常変速であった場合には、
その決定された最終補正係数Cに基づいて駆動信号決
定マップが補正される一方、前回の変速が飛び越し変速
であった場合には、その決定された最終補正係数C
基づいて適正化係数Kが補正される。
【0105】次に、この補正プログラムの内容を図10
を参照しつつ具体的に説明する。
【0106】この補正プログラムも、上述した他のプロ
グラムと同様に、繰返し実行される。各回の実行時に
は、まず、S501において、RAM88において同期
制御開始フラグがセットされているか否かが判定され
る。すなわち、前述の同期制御ルーチンによる同期制御
が開始されたか否かが判定されるのである。同期制御開
始フラグがセットされていない場合には、判定がNOと
なり、直ちにこの補正プログラムの一回の実行が終了す
る。これに対して、同期制御開始フラグがセットされて
いる場合には、S501の判定がYESとなり、S50
2に移行する。このステップにおいては、入力回転数偏
差関連データの取得が行われる。
【0107】このS502の詳細が図11に入力回転数
偏差関連データ取得ルーチンとしてフローチャートで概
念的に表されている。
【0108】この入力回転数偏差関連データ取得ルーチ
ンにおいては、まず、S551において、経過時間tが
0にリセットされる。次に、S552において、RAM
88において飛び越し変速フラグがセットされているか
否かが判定される。セットされていない場合には、判定
がNOとなり、S553において、ROM86から標準
目標同期時間Tsyn が読み出されるとともに、その
読み出された標準目標同期時間Tsyn が目標同期時
間Tsyn として決定される。このステップにおいて
は、さらに、その決定された目標同期時間Tsyn
RAM88の補正関連データ記憶領域に記憶される。
【0109】これに対して、飛び越し変速フラグがセッ
トされている場合には、S552の判定がYESとな
り、S554において、RAM88に記憶されている変
速段数差が読み出される。続いて、S555において、
ROM86に記憶されている複数の飛び越し変速時目標
同期時間Tsyn のうち、その読み出された変速段数
差に対応するものが読み出される。その「飛び越し変速
時目標同期時間Tsyn 」は、飛び越し変速時におけ
る目標同期時間Tsyn として、実験、設計または経
験に基づいて変速段数差ごとに予め設定されている。そ
の飛び越し変速時目標同期時間Tsyn の長さは、変
速段数差が大きくなるにつれて長くなるように設定され
ている。
【0110】その後、S556において、その読み出さ
れた飛び越し変速時目標同期時間T syn が目標同期
時間Tsyn として決定されるとともに、その決定さ
れた目標同期時間Tsyn がRAM88の補正関連デ
ータ記憶領域に記憶される。
【0111】S552の判定がNOとなった場合にはS
553の実行後にS557に移行するが、そのS552
の判定がYESとなった場合にはS554ないしS55
6の実行後にS557に移行する。このS557におい
ては、RAM88に記憶されている初期入力回転数N
in0と初期出力回転数Nout0と目標同期時間T
yn とに基づいて目標入力回転数取得関数式が決定さ
れるとともに、その決定された目標入力回転数取得関数
式がRAM88の補正関連データ記憶領域に記憶され
る。
【0112】ここで、目標入力回転数取得関数式につい
て詳しく説明すれば、経過時間tが目標同期時間T
syn に至るまでの時間領域に関しては、図18に破
線のグラフで示すように、初期入力回転数Nin0と、
同期開始時期から目標同期時間T syn が経過した同
期完了予定時期において入力回転数Ninが到達すべき
値(本実施形態においては、前述のように、初期出力回
転数Nout0と一致すると仮定されている)とをつな
ぐ直線を定義する一次関数式が目標入力回転数取得関数
式として決定される。一方、経過時間tが目標同期時間
syn を超えた後においては、経過時間tの変化に
関係なく、初期出力回転数Nout0を出力する関数式
が目標入力回転数取得関数式として決定される。上記の
目標入力回転数取得関数式に経過時間tの実際値を代入
すれば、その実際の経過時間tにおいて実現すべき目標
入力回転数Nin が出力される。
【0113】その後、S558において、RAM88に
記憶されている初期入力回転数N n0が読み出され
て、それが実際入力回転数Nin の前回値とされる。
続いて、S559において、設定時間Δtの間、遅延が
行われる。その後、S560において、経過時間tの現
在値にその設定時間Δtが加算されて経過時間tが更新
される。
【0114】続いて、S561において、現時点におけ
る実際入力回転数Nin と実際出力回転数Nout
とが、図8のS360と同様にして取得される。その
後、S562において、RAM88に記憶されている目
標入力回転数取得関数式に現在の経過時間tを代入する
ことにより、現時点において実現されるべき目標入力回
転数Nin が取得される。
【0115】続いて、S563において、S561にお
いて取得された実際入力回転数N と、S562に
おいて取得された目標入力回転数Nin との差が今回
の入力回転数偏差ΔNinとして算出される。さらに、
その算出された入力回転数偏差ΔNinが現在の経過時
間tと関連付けてRAM88の補正関連データ記憶領域
に記憶される。
【0116】続いて、S564において、S561にお
ける実際入力回転数Nin の取得値が今回値とされた
後、S565に移行する。このステップにおいては、そ
の実際入力回転数Nin の今回値と前記前回値との差
が今回の実際変化勾配(すなわち、実際入力回転数N
in の設定時間Δtあたりの変化量)dNin とし
て算出される。さらに、その算出された実際変化勾配d
in が現在の経過時間tと関連付けてRAM88の
補正関連データ記憶領域に記憶される。
【0117】その後、S566において、S561にお
ける実際入力回転数Nin の取得値と実際出力回転数
out の取得値との差が今回の相対回転数Nとし
て算出されるとともに、その算出された相対回転数N
の絶対値がしきい値Nrthより小さいか否かが判定さ
れる。すなわち、同期が実質的に完了したか否かが判定
されるのである。上記しきい値Nrthは、同期制御ル
ーチンにおいて利用されるしきい値Nrthと同じであ
る。
【0118】相対回転数Nの絶対値がしきい値N
rthより小さくはない場合には、S566の判定がN
Oとなり、S567に移行する。このステップにおいて
は、S565の次回の実行に備えて前記実際入力回転数
in の今回値が前回値とされる。その後、S559
に戻る。
【0119】それらS559ないしS567の実行が繰
り返された結果、相対回転数Nの絶対値がしきい値N
rthより小さくなったと判定されるに至ると、S56
6の判定がYESとなり、S568に移行する。このス
テップにおいては、現在の経過時間tが取得されるとと
もに、その取得された経過時間tが実際同期時間T
yn として決定される。さらに、その決定された実際
同期時間Tsyn がRAM88における補正関連デー
タ記憶領域に記憶される。以上で、この入力回転数偏差
関連データ取得ルーチンの今回の実行が終了する。
【0120】その後、S503において、RAM88に
おいて変速完了フラグがセットされるのが待たれる。こ
れにより、以下に続くステップが、シフトアクチュエー
タ制御プログラムの一回の実行が完了した後に実行され
る。セットされたならば、S504において、RAM8
8に記憶されている現在の駆動信号決定マップおよび適
正化係数Kの補正処理が行われる。
【0121】このS504の詳細が図12に補正処理ル
ーチンとしてフローチャートで概念的に表されている。
【0122】この補正処理ルーチンにおいては、まず、
S601において、RAM88に記憶されている複数の
入力回転数偏差ΔNin(前回の同期制御中に取得され
たもの)が読み出されるとともに、それら読み出された
複数の入力回転数偏差ΔN の合計値が入力回転数偏
差合計値ΣΔNinとして算出される。
【0123】次に、S602において、その算出された
入力回転数偏差合計値ΣΔNinに基づいて現在の駆動
信号決定マップおよび適正化係数Kを補正するための第
1暫定補正係数C が決定される。この第1暫定補正
係数C は、次回の同期制御において取得されるべき
入力回転数偏差合計値ΣΔNinがその補正後の駆動信
号決定マップおよび適正化係数Kに基づく最終駆動信号
によって0に近づくようにするためのものである。
入力回転数偏差合計値ΣΔNinと第1暫定補正係数C
との関係が、実験値、設計値または経験値としてR
OM86に記憶されており、その関係を利用して第1暫
定補正係数C が決定される。
【0124】続いて、S603において、RAM88に
記憶されている実際同期時間Tsy と目標同期時間
syn と(いずれも前回の同期制御中に取得された
もの)が読み出されるとともに、それら読み出された実
際同期時間Tsyn と目標同期時間Tsyn との差
が同期時間偏差ΔTsynとして算出される。
【0125】その後、S604において、その算出され
た同期時間偏差ΔTsynに基づいて現在の駆動信号決
定マップおよび適正化係数Kを補正するための第2暫定
補正係数C が決定される。この第2暫定補正係数C
は、上記第1暫定補正係数C に準じて、次回の
同期制御において取得されるべき同期時間偏差ΔT
ynがその補正後の駆動信号決定マップおよび適正化係
数Kに基づく最終駆動信号Sによって0に近づくよう
にするためのものである。同期時間偏差ΔTsy と第
2暫定補正係数C との関係が、上記第1暫定補正係
数C の場合に準じて、実験値、設計値または経験値
としてROM86に記憶されており、その関係を利用し
て第2暫定補正係数C が決定される。
【0126】続いて、S605において、RAM88に
記憶されている複数の入力回転数偏差ΔNinのうち、
RAM88に記憶されている目標同期時間Tsyn
実質的に等しい経過時間tに関連付けられているもの
が、経過時入力回転数偏差ΔN in として取得され
る。
【0127】その後、S606において、その算出され
た経過時入力回転数偏差ΔNin に基づいて現在の駆
動信号決定マップおよび適正化係数Kを補正するための
第3暫定補正係数C が決定される。この第3暫定補
正係数C は、上記第1暫定補正係数C 等に準じ
て、次回の同期制御において取得されるべき経過時入力
回転数偏差ΔNin がその補正後の駆動信号決定マッ
プおよび適正化係数Kに基づく最終駆動信号Sによっ
て0に近づくようにするためのものである。経過時入力
回転数偏差ΔNin と第3暫定補正係数C との関
係が、上記第1暫定補正係数C 等の場合に準じて、
実験値、設計値または経験値としてROM86に記憶さ
れており、その関係を利用して第3暫定補正係数C
が決定される。
【0128】続いて、S607において、RAM88に
記憶されている複数の実際変化勾配dNin (前回の
同期制御中に取得されたもの)が読み出されるととも
に、それらの相加平均値である実際変化勾配平均値ME
AN(dNin )が算出される。このステップにおい
ては、さらに、RAM88に記憶されている前記目標入
力回転数取得関数式を利用することにより、目標入力回
転数Nin の前記設定時間Δtあたりの変化量が目標
変化勾配dNin として取得される。
【0129】本実施形態においては、上述のように、そ
の目標入力回転数取得関数式のうち経過時間tが目標同
期時間Tsyn に達するまでの時間領域に対応する部
分が、その経過時間tと目標入力回転数Nin との一
次関数式として表される(図18参照)。したがって、
その一次関数式の傾きを取得することにより目標変化勾
配dNin を取得することができる。
【0130】さらに、このS607においては、算出さ
れた実際変化勾配平均値MEAN(dNin )と、取
得された目標変化勾配dNin との差が変化勾配偏差
ΔdNinとして算出される。
【0131】その後、S608において、その算出され
た変化勾配偏差ΔdNinに基づいて現在の駆動信号決
定マップおよび適正化係数Kを補正するための第4暫定
補正係数C が決定される。この第4暫定補正係数C
は、上記第1暫定補正係数C 等に準じて、次回
の同期制御において取得されるべき変化勾配偏差ΔdN
inがその補正後の駆動信号決定マップおよび適正化係
数Kに基づく最終駆動信号Sによって0に近づくよう
にするためのものである。変化勾配偏差ΔdN inと第
4暫定補正係数C との関係が、上記第1暫定補正係
数C 等の場合に準じて、実験値、設計値または経験
値としてROM86に記憶されており、その関係を利用
して第4暫定補正係数C が決定される。
【0132】続いて、S609において、S602、S
604、S606およびS608においてそれぞれ決定
された暫定補正係数C ,C ,C ,C
重みつき平均値が暫定補正係数平均値MEAN(C
として算出される。この暫定補正係数平均値MEAN
(C)は、各暫定補正係数C ,C ,C
とそれら各暫定補正係数C ,C
,C に対して予め設定された重みω
ω,ω,ωとのそれぞれの積の和、すなわちΣC
ω(ただし、iは1〜4の整数)である。ここ
で、重みω,ω,ω,ω は、Σω=1(ただ
し、iは1〜4の整数)を充足する値を有するものであ
って、実験値、設計値または経験値としてROM86に
記憶されている。その後、S610において、その決定
された暫定補正係数平均値MEAN(C)が、現在の
駆動信号決定マップおよび適正化係数Kを補正するため
の最終補正係数C として決定される。
【0133】本実施形態においては、上述のように、4
つの暫定補正係数C ないしC のすべてを用いて
現在の駆動信号決定マップおよび適正化係数Kが補正さ
れるが、このようにすることは本発明を実施する上にお
いて不可欠なことではない。すなわち、それら4つの暫
定補正係数C ないしC のいずれか1つ、2つま
たは3つを用いて上記の補正を行うことが可能なのであ
る。
【0134】続いて、S611において、RAM88に
おいて飛び越し変速フラグがセットされているか否かが
判定される。飛び越し変速フラグがセットされていない
場合には、判定がNOとなり、S612において、RA
M88に記憶されている初期相対回転数Nr0が読み出
される。その後、S613において、RAM88に記憶
されている現在の駆動信号決定マップが読み出されると
ともに、その読み出された駆動信号決定マップが、S6
10において決定された最終補正係数Cに基づいて補
正される。
【0135】このS613においては、具体的には、S
612において読み出された初期相対回転数Nr0が、
現在の駆動信号決定マップにおいて初期相対回転数N
r0に割り当てられている複数の代表値のいずれかに一
致する場合には、図20に示すように、その一致する代
表値Nr0(j)に対応する駆動信号S(j)の値が最
終補正係数Cで補正される。例えば、最終補正係数C
を足し算したり、掛け算することが行われるのであ
る。
【0136】これに対して、S612において読み出さ
れた初期相対回転数Nr0が、上記複数の代表値のいず
れにも一致しない場合には、図21に示すように、現在
の駆動信号マップにおいて、それら複数の代表値のう
ち、その読み出された初期相対回転数Nr0に最も近い
代表値Nro(j)と、それに対応する駆動信号S(j
と、それら複数の代表値のうち次に近い代表値N
r0(j−1)と、それに対応する駆動信号S
(j−1)とに着目される。さらに、現在の駆動信号決
定マップにおいて初期相対回転数Nr0に対応する駆動
信号Sの値が最終補正係数C で補正され、それが基
準駆動信号Sとされる。さらに、駆動信号S(j)
補正が、その補正後の駆動信号S(j)と、補正されな
い駆動信号S(j−1)とをつなぐ直線上に基準駆動信
号Sが位置することとなるように行われる。
【0137】さらに、このS613においては、その補
正結果に従ってRAM88における駆動信号決定マップ
が更新される。以上で、この補正処理ルーチンの今回の
実行が終了する。
【0138】以上、飛び越し変速フラグがセットされて
いない場合について説明したが、飛び越し変速フラグが
セットされている場合には、図12のS611の判定が
YESとなり、S614において、RAM88に記憶さ
れている変速段数差が読み出される。
【0139】続いて、S615において、RAM88に
記憶されている現在の適正化係数Kのうち、その読み出
された変速段差に対応するものが読み出される。さら
に、その読み出された適正化係数KがS610において
決定された最終補正係数Cに基づいて補正されるとと
もに、その補正結果に従ってRAM88において対応す
る適正化係数Kが更新される。最終補正係数Cを用い
て適正化係数Kを補正する手法は、駆動信号決定マップ
を補正する場合と同じものとしたり、異なるものとする
ことができる。以上で、この補正処理ルーチンの今回の
実行が終了する。
【0140】その後、S505において、RAM88に
おける変速段関連データ記憶領域と補正関連データ記憶
領域とがクリアされる。続いて、S506において、R
AM88における飛び越し変速フラグと同期制御開始フ
ラグとがリセットされる。以上で、この補正プログラム
の今回の実行が終了し、次回の同期制御においては、次
回の変速が通常変速である場合には、以上のようにして
更新された駆動信号決定マップに基づいて暫定駆動信号
が決定され、さらに、その暫定駆動信号S に基づ
いて最終駆動信号Sが決定される。一方、次回の変速
が飛び越し変速である場合には、次回の同期制御におい
て、その同期制御開始時点における駆動信号決定マップ
に基づいて決定された暫定駆動信号Sと、以上のよう
にして更新された適正化係数Kとに基づいて最終駆動信
号Sが決定される。
【0141】以上の説明から明らかなように、本実施形
態においては、シフトアクチュエータ60が請求項1に
おける「アクチュエータ」の一例を構成し、変速ECU
82が同請求項における「制御装置」の一例を構成し、
その変速ECU82のうち図7のS308(すなわち、
図8のS351ないしS361)を実行する部分が、同
請求項における「アクチュエータ制御手段」の一例と請
求項2における「アクチュエータ制御手段」の一例と請
求項3における「アクチュエータ制御手段」の一例とを
構成しているのである。
【0142】さらに、本実施形態においては、駆動信号
決定マップが請求項4における「基準規則」の一例を構
成し、RAM88における駆動信号決定マップ記憶領域
が同請求項における「第1記憶部」の一例を構成し、適
正化係数Kが同請求項における「数値」の一例を構成
し、RAM88における適正化係数記憶領域が同請求項
における「第2記憶部」の一例を構成し、変速ECU8
2のうち図8のS351ないしS358を実行する部分
が同請求項における「駆動信号決定部」の一例を構成し
ているのである。
【0143】さらにまた、本実施形態においては、駆動
信号決定マップが請求項5における「基準関係」の一例
を構成し、暫定駆動信号Sが同請求項における基準駆
動信号の一例を構成し、最終駆動信号Sが同請求項に
おける「最終駆動信号」の一例を構成し、変速ECU8
2のうち図8のS351ないしS358を実行する部分
が同請求項における「駆動信号決定部」の一例を構成し
ているのである。
【0144】次に、本発明の第2実施形態を説明する。
ただし、本実施形態は、第1実施形態と共通する要素が
多いため、異なる要素のみについて詳細に説明し、共通
する要素については、第1実施形態の説明を代用するこ
とにより、説明を省略する。
【0145】第1実施形態においては、入力回転数偏差
関連データに基づく補正が駆動信号決定マップと適正化
係数Kとの双方に対して行われるが、本実施形態におい
ては、駆動信号決定マップのみに対して行われる。した
がって、本実施形態においては、第1実施形態における
図12の補正処理ルーチンと部分的に異なる補正処理ル
ーチンがROM86に記憶されている。
【0146】本実施形態においては、第1実施形態の補
正処理ルーチンにおけるS601ないしS608と同様
にして、4つの暫定補正係数C ,C ,C
が決定される。その後、本実施形態の補正処理ル
ーチンにおいては、第1実施形態の補正処理ルーチンと
は異なる手法により、駆動信号決定マップの補正が行わ
れる。
【0147】図22には、本実施形態の補正処理ルーチ
ンのうち、第1実施形態の補正処理ルーチンとは異なる
ステップ群、すなわち、図12のS610ないしS61
5が置換されたステップ群がマップ補正ルーチンとして
フローチャートで概念的に表されている。
【0148】まず、このマップ補正ルーチンの内容を、
第1実施形態における図12のS610ないしS615
とは異なる点についてのみ概念的に説明する。
【0149】このマップ補正ルーチンは、前回の変速が
通常変速である場合においても飛び越し変速である場合
においても、各回の同期制御に先立ち、駆動信号決定マ
ップの補正を行う。
【0150】さらに詳しく説明すれば、このマップ補正
ルーチンは、前回の変速が通常変速であった場合には、
前記4つの暫定補正係数Cに基づいて1つの最終補正
係数Cを決定する一方、前回の変速段が飛び越し変速
であった場合には、適正化係数K(具体的には、標準適
正化係数)とそれら4つの暫定補正係数Cとに基づい
て1つの最終補正係数Cを決定する。さらにまた、こ
のマップ補正ルーチンは、その決定された最終補正係数
に基づいて現在の駆動信号決定マップを補正する。
【0151】次に、このマップ補正ルーチンの内容を図
22を参照しつつ具体的に説明する。
【0152】このマップ補正ルーチンの各回の実行時に
は、まず、S701において、RAM88において飛び
越し変速フラグがセットされているか否かが判定され
る。飛び越し変速フラグがセットされていない場合に
は、判定がNOとなり、S702において、前記補正処
理ルーチンのうち図12のS609と同じステップにお
いて決定された暫定補正係数平均値MEAN(C
が、現在の駆動信号決定マップを補正するための最終補
正係数Cとして決定される。
【0153】これに対して、飛び越し変速フラグがセッ
トされている場合には、S701の判定がYESとな
り、S703において、RAM88に記憶されている変
速段数差が読み出される。続いて、S704において、
ROM86に記憶されている標準適正化係数のうちその
読み出された変速段数差に対応するものが今回の適正化
係数Kとして読み出される。
【0154】その後、S705において、前記決定され
た暫定補正係数平均値MEAN(C )と、S704に
おいて読み出された適正化係数Kとに基づいて、現在の
駆動信号決定マップを補正するための最終補正係数C
が決定される。最終補正係数Cと、暫定補正係数平均
値MEAN(C)および適正化係数Kとの関係が、実
験値、設計値または経験値としてROM86に記憶され
ており、その関係を利用して最終補正係数Cが決定さ
れる。
【0155】以上のようにS701の判定がNOとなっ
た場合にはS702の実行後にS706に移行するが、
そのS701の判定がYESとなった場合にはS703
ないしS705の実行後にS706に移行する。このS
706においては、RAM88に記憶されている初期相
対回転数Nr0が読み出される。
【0156】その後、S707において、RAM88に
記憶されている現在の駆動信号決定マップが読み出され
るとともに、その読み出された駆動信号決定マップが、
第1実施形態における図12のS613と同様にして、
決定された最終補正係数Cに基づいて補正される。さ
らに、その補正結果に従ってRAM88における駆動信
号決定マップが更新される。以上で、このマップ補正ル
ーチンの今回の実行が終了する。
【0157】なお付言すれば、本実施形態においては、
駆動信号決定マップの補正が通常変速時の入力回転数偏
差関連データのみならず飛び越し変速時の入力回転数偏
差関連データにも基づいて行われるようになっている
が、通常変速時の入力回転数偏差関連データのみに基づ
いて行うようにして本発明を実施することが可能であ
る。
【0158】本実施形態においては、第1実施形態にお
ける図8の同期制御ルーチンと基本的に共通する同期制
御ルーチン(図示しない)のうちの、第1実施形態にお
けるS357に対応するステップおいて、ROM86に
記憶されている複数の標準適正化係数のうち第1実施形
態におけるS356に対応するステップにおいて読み出
された変速段数差に対応するものが、適正化係数Kとし
て読み出される。
【0159】以上の説明から明らかなように、本実施形
態においては、適正化係数Kの標準値が請求項4におけ
る「数値」の一例を構成し、ROM86のうち適正化係
数Kの標準値(標準適正化係数)を記憶する部分が同請
求項における「第2記憶部」の一例を構成しているので
ある。
【0160】次に、本発明の第3実施形態を説明する。
ただし、本実施形態は、第1実施形態と共通する要素が
多いため、異なる要素のみについて詳細に説明し、共通
する要素については、第1実施形態の説明を代用するこ
とにより、説明を省略する。
【0161】第1実施形態においては、前述のように、
入力回転数偏差関連データに基づいて駆動信号決定マッ
プと適正化係数Kとが補正されるが、本実施形態におい
ては、その補正が省略されている。さらに、第1実施形
態においては、各回の同期制御中において駆動信号Sが
フィードバック制御されないが、本実施形態において
は、そのフィードバック制御が行われる。
【0162】したがって、本実施形態である変速装置の
コンピュータ92のROM86には、同期制御ルーチン
が第1実施形態とは異なる内容のものとして記憶されて
いる一方、第1実施形態におけるとは異なり、補正プロ
グラムが記憶されていない。さらに、本実施形態におい
ては、コンピュータ92のRAM88において、第1実
施形態における補正関連データ記憶領域(図4参照)の
代わりに、同期制御関連データ記憶領域が設けられてい
る。
【0163】図23には、本実施形態における同期制御
ルーチンがフローチャートで概念的に表されている。
【0164】まず、この同期制御ルーチンの特徴を概念
的に説明する。
【0165】1.この同期制御ルーチンは、各回の同期
制御において単位制御を繰り返し実行する。
【0166】2.この同期制御ルーチンは、初回の単位
制御においては、初期相対回転数N r0に基づき、シフ
トアクチュエータ60に実際に出力される初回の駆動信
号S (0)を決定する。初回の単位制御に限り、駆動信
号Sに対してオープンループ制御を行うのである。
【0167】さらに詳しく説明すれば、この同期制御ル
ーチンにおいては、初期相対回転数Nr0と駆動信号S
との間に設定された関係に従って、暫定的な初回の駆動
信号S(0)である暫定初回駆動信号S (0)が決定
され、さらに、その決定された暫定初回駆動信号S
(0)に基づいて最終初回駆動信号S (0)が決定さ
れる。ただし、初期相対回転数Nr0と駆動信号Sとの
関係を定義する駆動信号決定マップとして、第1実施形
態におけるとは異なり、ROM86に記憶されている前
記標準駆動信号決定マップが適宜補正されて用いられる
のではなく、そのまま用いられる。
【0168】さらに、この同期制御ルーチンにおいて
は、今回の変速が通常変速である場合には、暫定初回駆
動信号S (0)がそのまま最終初回駆動信号S
(0)として決定される。これに対して、今回の変速が
飛び越し変速である場合には、目標同期時間Tsyn
の長さが通常変速の場合における長さ、すなわち、標準
目標同期時間Tsyn の長さより長くなるように暫定
初回駆動信号S (0)が適正化され、それが最終初回
駆動信号S (0)として決定される。その暫定初回駆
動信号S (0)の適正化は、第1実施形態におけると
同様に、スリーブ荷重Fの大きさが通常変速の場合にお
けるより小さくなるように行われる。具体的には、その
暫定駆動信号Sの値に1より小さい値を有する適正化
係数Kを掛け算することにより行われる。本実施形態に
おいては、その適正化係数Kとして、第1実施形態にお
けるとは異なり、ROM86に記憶されている前記標準
適正化係数が適宜補正されて用いられるのではなく、そ
のまま用いられる。
【0169】3.この同期制御ルーチンは、2回目以降
の各回の単位制御においては、前回の単位制御において
シフトアクチュエータ60に供給された駆動信号S
(i−1 を、今回の単位制御の開始時期における入力
回転数偏差ΔNin(i)に基づき、その今回の単位制
御の実行によって入力回転数偏差ΔNin(i)が0に
近づくこととなるように補正することにより、その今回
の単位制御においてシフトアクチュエータ60に供給す
べき駆動信号S(i)を決定する。すなわち、本実施形
態においては、入力回転数偏差ΔNinに基づき、シフ
トアクチュエータ60に対してPID制御を含むフィー
ドバック制御が行われるのである。
【0170】次に、この同期制御ルーチンの内容を図2
3を参照しつつ具体的に説明する。
【0171】この同期制御ルーチンの各回の実行時に
は、まず、S801において、第1実施形態における図
8のS351と同様にして、初期入力回転数Nin0
初期出力回転数Nout0とが取得されるとともに、そ
れら取得値がRAM88の同期制御関連データ記憶領域
に記憶される。次に、S802において、図8のS35
2と同様にして、取得された初期入力回転数Nin0
初期出力回転数Nout とから初期相対回転数Nr0
が算出され、さらに、その算出値がRAM88の同期制
御関連データ記憶領域に記憶される。
【0172】続いて、S803において、ROM86の
駆動信号決定マップを用いることにより、図8のS35
3と同様にして、初期相対回転数Nr0の算出値に対応
する駆動信号Sが暫定初回駆動信号S (0)として決
定される。
【0173】その後、S804において、RAM88に
おいて飛び越し変速フラグがセットされているか否かが
判定される。セットされていない場合には、判定がNO
となり、S805において、S803において決定され
た暫定初回駆動信号S (0 が最終初回駆動信号S
(0)として決定される。その後、S806において、
その決定された最終初回駆動信号S (0)がシフトア
クチュエータ60に出力される。
【0174】続いて、S807において、ROM86か
ら標準目標同期時間Tsyn が読み出されるととも
に、その読み出された標準目標同期時間Tsyn が目
標同期時間Tsyn として決定される。さらに、その
決定された目標同期時間Tsy がRAM88の同期
制御関連データ記憶領域に記憶される。
【0175】これに対して、飛び越し変速フラグがセッ
トされている場合には、S804の判定がYESとな
り、S808において、RAM88に記憶されている変
速段数差が読み出された後、S809において、ROM
86に記憶されている標準適正化係数のうちその読み出
された変速段数差に対応するものが今回の適正化係数K
として読み出される。続いて、S810において、S8
03において決定された暫定初回駆動信号S (0)
値にその読み出された適正化係数Kを掛け算することに
より、最終初回駆動信号S (0)が決定される。その
後、S811において、その決定された最終初回駆動信
号S (0)がシフトアクチュエータ60に出力され
る。
【0176】続いて、S812において、ROM86に
記憶されている複数の飛び越し変速時目標同期時間T
syn のうち、S808において読み出された変速段
数差に対応するものが読み出される。さらに、このステ
ップにおいては、その読み出された飛び越し変速時目標
同期時間Tsyn が目標同期時間Tsyn として決
定されるとともに、その決定された目標同期時間T
syn がRAM88の同期制御関連データ記憶領域に
記憶される。
【0177】以上のようにS804の判定がNOとなっ
た場合にはS805ないしS807の実行後にS813
に移行するが、そのS804の判定がYESとなった場
合にはS808ないしS812の実行後にS813に移
行する。このS813においては、第1実施形態におけ
る図11のS557と同様にして、RAM88に記憶さ
れている初期入力回転数Nin0と初期出力回転数N
out0と目標同期時間Tsyn とに基づいて目標入
力回転数取得関数式が決定される。この目標入力回転数
取得関数式に各回の単位制御の開始時期を代入すれば、
その各回の単位制御において実現すべき目標入力回転数
in (i)(ただし、iは1以上n以下の整数であ
る)を得ることができる。このステップにおいては、さ
らに、その決定された目標入力回転数取得関数式がRA
M88の同期制御関連データ記憶領域に記憶される。
【0178】続いて、S814において、単位制御の回
数を表す整数iが1にセットされる。その後、S815
において、今回の単位制御が、前回の単位制御(すなわ
ち、現時点においては、初回の単位制御)の開始時期か
ら制御周期ΔTだけ経過した時期に開始されることとな
るように、遅延が行われる。
【0179】続いて、S816において、現時点、すな
わち、今回の単位制御の開始時期における実際入力回転
数Nin (i)と実際出力回転数Nout (i)
が、第1実施形態における図8のS360と同様にして
取得される。その後、S817において、それら実際入
力回転数Nin の取得値と実際出力回転数Nout
の取得値との差が今回の相対回転数Nとして算出され
るとともに、その算出された相対回転数Nの絶対値が
前記しきい値Nrthより小さいか否かが判定される。
【0180】相対回転数Nの絶対値がしきい値N
rthより小さくはない場合には、判定がNOとなり、
S818において、RAM88に記憶されている目標入
力回転数取得関数式に今回の単位制御の開始時期を代入
することにより、今回の単位制御において実現すべき目
標入力回転数Nin (i)が取得される。続いて、S
819において、S816において取得された実際入力
回転数Nin (i)とS818において取得された目
標入力回転数Nin (i)との差が今回の入力回転数
偏差ΔNin(i)として算出される。
【0181】その後、S820において、前回の駆動信
号S(i−1)が、その取得された入力回転数偏差ΔN
in(i)が0に近づく向きに、その入力回転数偏差Δ
n(i)の絶対値の大きさに対応する量だけ補正さ
れる。入力回転数偏差ΔN n(i)の絶対値の大きさ
と前回の駆動信号S(i−1)の補正量との関係が、実
験値、設計値または経験値としてROM86に記憶され
ている。さらに、このステップにおいては、その補正結
果に基づいて今回の駆動信号S(i)が決定される。そ
の決定された今回の駆動信号S(i)はRAM88に記
憶される。図24の上側には、実際入力回転数Nin
の時間的推移の一例が実線のグラフで表され、一方、下
側には、それに応答する駆動信号Sの時間的推移の一例
が実線のグラフで表されている。
【0182】続いて、S821において、その決定され
た今回の駆動信号S(i)がシフトアクチュエータ60
に出力される。その後、S822において、整数iが1
だけインクリメントされた後、S815に戻る。
【0183】それらS815ないしS822の実行が繰
り返された結果、相対回転数Nの絶対値がしきい値N
rthより小さくなったと判定されるに至ると、S81
7の判定がYESとなり、S823に移行する。このス
テップにおいては、RAM88における変速段関連デー
タ記憶領域がクリアされる。その後、S824におい
て、RAM88における飛び越し変速フラグがリセット
される。以上で、この同期制御ルーチンの今回の実行が
終了する。
【0184】以上の説明から明らかなように、本実施形
態においては、変速ECU82のうち図23のS801
ないしS822を実行する部分が、請求項1における
「アクチュエータ制御手段」の一例と請求項2における
「アクチュエータ制御手段」の一例と請求項3における
「アクチュエータ制御手段」の一例とを構成しているの
である。
【0185】さらに、本実施形態においては、標準駆動
信号決定マップが請求項4における「基準規則」の一例
を構成し、ROM86のうち標準駆動信号決定マップを
記憶する部分が同請求項における「第1記憶部」の一例
を構成し、適正化係数K(具体的には、標準適正化係
数)が同請求項における「数値」の一例を構成し、RO
M86における標準適正化係数を記憶する部分が同請求
項における「第2記憶部」の一例を構成し、変速ECU
82のうち図23のS801ないしS805およびS8
08ないしS810を実行する部分が同請求項における
「駆動信号決定部」の一例を構成しているのである。
【0186】さらにまた、本実施形態においては、標準
駆動信号決定マップが請求項5における「基準関係」の
一例を構成し、暫定初回駆動信号S (0)が同請求項
における基準駆動信号の一例を構成し、最終初回駆動信
号S (0)が同請求項における「最終駆動信号」の一
例を構成し、変速ECU82のうち図23のS801な
いしS805およびS808ないしS810を実行する
部分が同請求項における「駆動信号決定部」の一例を構
成しているのである。
【0187】以上、本発明のいくつかの実施形態を図面
に基づいて詳細に説明したが、これらは例示であり、前
記[課題を解決するための手段および発明の効果]の欄
に記載の態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種
々の変形、改良を施した他の形態で本発明を実施するこ
とが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態であるシンクロメッシュ
式トランスミッション14のための変速装置のハードウ
エア構成を概念的に示す系統図である。
【図2】図1に示す変速装置が使用される同期装置30
を示す正面断面図である。
【図3】図1に示す変速装置における伝達機構66を示
す斜視図である。
【図4】図1における変速ECU82の構成を概念的に
示すブロック図である。
【図5】図4におけるメインプログラムを概念的に表す
フローチャートである。
【図6】図4におけるセレクトアクチュエータ制御プロ
グラムを概念的に表すフローチャートである。
【図7】図4におけるシフトアクチュエータ制御プログ
ラムを概念的に表すフローチャートである。
【図8】図7におけるS308の詳細を同期制御ルーチ
ンとして概念的に表すフローチャートである。
【図9】図4におけるクラッチアクチュエータ制御プロ
グラムを概念的に表すフローチャートである。
【図10】図4における補正プログラムを概念的に表す
フローチャートである。
【図11】図10におけるS502の詳細を入力回転数
偏差関連データ取得ルーチンとして概念的に表すフロー
チャートである。
【図12】図10におけるS504の詳細を補正処理ル
ーチンとして概念的に表すフローチャートである。
【図13】図2の同期装置30の構成を概念的に示す部
分正面断面図である。
【図14】図13の同期装置30において入力回転数N
inおよび相対回転数Nが時間と共に変化する様子を
説明するためのグラフである。
【図15】図4の駆動信号決定マップ記憶領域に記憶さ
れている駆動信号決定マップの内容を概念的に表すグラ
フである。
【図16】図4のRAM88に記憶される適正化係数K
と図4のROM86に記憶されている標準適正化係数を
説明するためのグラフである。
【図17】図16に示す適正化係数Kを用いて暫定駆動
信号Sの値が適正化される様子を概念的に表すグラフ
である。
【図18】図10の補正プログラムの内容を説明するた
めのグラフである。
【図19】図10の補正プログラムの内容を説明するた
めの別のグラフである。
【図20】図12におけるS613の内容を説明するた
めのグラフである。
【図21】図12におけるS613の内容を説明するた
めの別のグラフである。
【図22】本発明の第2実施形態であるシンクロメッシ
ュ式トランスミッション14のための変速装置における
変速ECU82のコンピュータ92により実行されるマ
ップ補正ルーチンを概念的に表すフローチャートであ
る。
【図23】本発明の第3実施形態であるシンクロメッシ
ュ式トランスミッション14のための変速装置における
変速ECU82のコンピュータ92により実行される同
期制御ルーチンを概念的に表すフローチャートである。
【図24】図23の同期制御ルーチンの内容を説明する
ためのグラフである。
【符号の説明】 10 エンジン 14 トランスミッション 26 アウトプットシャフト 30 同期装置 34 スリーブ 46 シンクロナイザリング 60 シフトアクチュエータ 82 変速ECU
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 宮崎 剛枝 愛知県西尾市小島町城山1番地 アイシ ン・エーアイ株式会社内 (72)発明者 神谷 充俊 愛知県西尾市小島町城山1番地 アイシ ン・エーアイ株式会社内 (72)発明者 市川 義裕 岐阜県岐阜市須賀3丁目11番11−202号 Fターム(参考) 3J552 MA04 MA13 NB01 RA02 RA10 RA11 SA30 SB31 SB38 TB12 VA03Z VA32Z VA37Z VA62Z VA74W VA77W VD01Z

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 車両において動力源の回転を駆動車輪に
    伝達するシンクロメッシュ式トランスミッションであっ
    て、各ギヤ対が常時噛み合わされるとともにギヤ比が互
    いに異なる複数のギヤ対のいずれかを有効ギヤ対として
    選択するために同期装置を備えており、かつ、その同期
    装置が、(a)前記ギヤ対の一方が遊動ギヤとして相対
    回転可能に装着されたシャフトに対して相対回転不能か
    つ軸方向に相対移動可能なスリーブと、前記遊動ギヤに
    対して相対回転可能かつ軸方向に相対移動可能なシンク
    ロナイザリングとを備え、かつ、(b)作動状態では、
    前記スリーブを軸方向に移動させてそのスリーブを前記
    シンクロナイザリングに当接させ、それにより、そのシ
    ンクロナイザリングを、前記遊動ギヤに対して相対回転
    不能な摩擦面に押し付けてその遊動ギヤと前記スリーブ
    との同期を行うものであるトランスミッションと共に使
    用され、そのトランスミッションの変速比を変化させる
    変速装置であって、 外部からの信号に応じて電気的に制御されることによ
    り、前記スリーブを前記軸方向に移動させるために荷重
    を発生させるアクチュエータと、 前記車両の運転者の意思とその車両の状態と前記トラン
    スミッションの状態との少なくとも一つに基づいてその
    トランスミッションの変速段を現在変速段から目標変速
    段に切り換えるために前記アクチュエータに駆動信号を
    供給して制御する制御装置であって、前記同期の開始時
    期から完了時期までの経過時間である同期時間の長さ
    が、前記トランスミッションの変速段を現在変速段に隣
    接した隣接変速段に切り換える通常変速時と、隣接しな
    い非隣接変速段に切り換える飛び越し変速時との間にお
    いて互いに異なるように前記アクチュエータを制御する
    アクチュエータ制御手段を有するものとを含むシンクロ
    メッシュ式トランスミッションのための変速装置。
  2. 【請求項2】 前記アクチュエータ制御手段が、前記同
    期時間の長さが前記飛び越し変速時において前記通常変
    速時におけるより長くなるように前記アクチュエータを
    制御するものである請求項1に記載のシンクロメッシュ
    式トランスミッションのための変速装置。
  3. 【請求項3】 前記アクチュエータ制御手段が、前記ス
    リーブに作用するスリーブ荷重の大きさが前記飛び越し
    変速時において前記通常変速時におけるより小さくなる
    ように前記アクチュエータを制御するものである請求項
    2に記載のシンクロメッシュ式トランスミッションのた
    めの変速装置。
  4. 【請求項4】 前記アクチュエータ制御手段が、 (a)前記通常変速と前記飛び越し変速との一方である
    第1変速に関連し、前記駆動信号を決定するために従う
    べき規則を基準規則として記憶する第1記憶部と、 (b)前記通常変速と前記飛び越し変速との他方である
    第2変速に関連し、前記駆動信号を決定するために従う
    べき規則を前記基準規則を用いて取得するための数値を
    記憶する第2記憶部と、 (c)前記第1変速の場合には、前記基準規則に従って
    前記駆動信号を決定する一方、前記第2変速の場合に
    は、前記基準規則と前記数値とに基づいて前記駆動信号
    を決定する駆動信号決定部とを含む請求項1ないし3の
    いずれかに記載のシンクロメッシュ式トランスミッショ
    ンのための変速装置。
  5. 【請求項5】 前記基準規則が、前記第1変速に関連
    し、前記同期のための同期制御における前記遊動ギヤと
    前記スリーブとの相対回転数と前記駆動信号との間に設
    定された基準関係であり、前記駆動信号決定部が、前記
    第1変速の場合には、実際の前記相対回転数に対応する
    駆動信号を前記基準関係に従って決定する一方、前記第
    2変速の場合には、実際の前記相対回転数に対応する駆
    動信号を前記基準関係に従って基準駆動信号として決定
    するとともに、その決定された基準駆動信号と前記数値
    とに基づいて最終駆動信号を決定するものである請求項
    4に記載のシンクロメッシュ式トランスミッションのた
    めの変速装置。
JP2000313374A 2000-10-13 2000-10-13 シンクロメッシュ式トランスミッションのための変速装置 Pending JP2002122226A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2000313374A JP2002122226A (ja) 2000-10-13 2000-10-13 シンクロメッシュ式トランスミッションのための変速装置

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2000313374A JP2002122226A (ja) 2000-10-13 2000-10-13 シンクロメッシュ式トランスミッションのための変速装置

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2002122226A true JP2002122226A (ja) 2002-04-26

Family

ID=18792803

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2000313374A Pending JP2002122226A (ja) 2000-10-13 2000-10-13 シンクロメッシュ式トランスミッションのための変速装置

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2002122226A (ja)

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2011163396A (ja) * 2010-02-05 2011-08-25 Toyota Motor Corp 車両用変速機の変速操作装置
JP2014517236A (ja) * 2011-06-24 2014-07-17 シェフラー テクノロジーズ アクチエンゲゼルシャフト ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト 変速機の自動化されたシフトプロセスの制御方法

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2011163396A (ja) * 2010-02-05 2011-08-25 Toyota Motor Corp 車両用変速機の変速操作装置
JP2014517236A (ja) * 2011-06-24 2014-07-17 シェフラー テクノロジーズ アクチエンゲゼルシャフト ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト 変速機の自動化されたシフトプロセスの制御方法

Similar Documents

Publication Publication Date Title
CN108001608B (zh) 自行车用控制装置以及包括它的自行车用控制***
JP5962780B2 (ja) ハイブリッド車両
EP2650560B1 (en) Transmission and shift control system
JP5456176B2 (ja) 車両の制御装置、及びそれを備える自動二輪車
EP2899422B1 (en) Vehicle control device, vehicle, and engine
EP2105626B1 (en) Clutch control apparatus
JP2011161982A (ja) ツインクラッチ式変速機
JP2002122230A (ja) シンクロメッシュ式トランスミッションのための変速装置
JPH04215531A (ja) 変速制御装置
JP2009222155A (ja) 無段変速機の制御装置
WO2011118479A1 (ja) 自動変速機の変速制御装置
JP2002122226A (ja) シンクロメッシュ式トランスミッションのための変速装置
JP2002048225A (ja) シンクロメッシュ式トランスミッションのための変速装置
JP5930541B2 (ja) 電気自動車の変速制御装置
JP5461740B2 (ja) 車両の制御装置、及び自動二輪車
JP4998099B2 (ja) シフト位置検出装置
JP2002071017A (ja) シンクロメッシュ式トランスミッションのための変速装置
JP2002071016A (ja) シンクロメッシュ式トランスミッションのための変速装置
JP2002071018A (ja) シンクロメッシュ式トランスミッションのための変速装置
JP4735118B2 (ja) シフトレバーの基準位置決定装置
JP2010223351A (ja) 変速機及び変速機のシフト制御方法
US11215247B2 (en) Vehicle automatic transmission device, and vehicle including the same
US20120184406A1 (en) Gear shift control
JP2012197896A (ja) 車両の制御装置、車両及び原動機
JP2007092813A (ja) 複数クラッチ式変速機の制御装置