JP2001281176A - 鉄鋼中炭素の高精度分析方法 - Google Patents

鉄鋼中炭素の高精度分析方法

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JP2001281176A
JP2001281176A JP2000093039A JP2000093039A JP2001281176A JP 2001281176 A JP2001281176 A JP 2001281176A JP 2000093039 A JP2000093039 A JP 2000093039A JP 2000093039 A JP2000093039 A JP 2000093039A JP 2001281176 A JP2001281176 A JP 2001281176A
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Yukio Usui
幸夫 臼井
Noriko Makiishi
規子 槙石
Akira Yamamoto
山本  公
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 分析面に酸化膜を有する鉄鋼試料について、
鉄鋼中の炭素濃度を迅速かつ精度よく定量することが可
能な鉄鋼中炭素の高精度分析方法の提供。 【解決手段】 鉄鋼試料にX線を照射し、鉄鋼試料から
発生する炭素の蛍光X線強度に基づき鉄鋼中炭素濃度を
定量する鉄鋼中炭素の分析方法において、鉄鋼試料表面
に存在する酸化膜から発生する酸素の蛍光X線強度又は
前記酸化膜の膜厚を用いて炭素の蛍光X線強度の前記酸
化膜による減衰を補正し、補正後の炭素の蛍光X線強度
に基づき鉄鋼中炭素濃度を定量する鉄鋼中炭素の高精度
分析方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、蛍光X線分析法を
用いた鉄鋼中炭素の高精度分析方法に関する。
【0002】
【従来の技術】蛍光X線分析法は、試料にX線を照射
し、試料から発生する二次X線を分光し、試料中の各原
子から発生する特性X線を検出することにより試料に含
まれる元素の種類を、また、各原子の特性X線強度から
試料の組成を分析する分析法である。
【0003】上記した蛍光X線分析法によれば、多元素
を同時に測定可能であり、目的とする全元素を1分から
2分程度の短時間で分析することが可能である。このよ
うに、蛍光X線分析法は、多元素を同時かつ迅速に分析
できることから、銑鉄、鋼などの鉄鋼の精錬工程、熱処
理工程、めっき工程などにおける成分管理に利用されて
いる。
【0004】一方、炭素の蛍光X線(Kα線)の波長は
4.46nmと長いため、試料の極表層(鉄鋼試料の場合、0.
2 μm 程度)で発生した特性X線のみが試料から放出さ
れる。このため、炭素の蛍光X線は試料の表面状態の影
響を受け易く、鉄鋼中の炭素を蛍光X線分析法により分
析する場合、試料表面をグラインダーなどにより研磨
し、分析面の汚染除去および表面粗度の調整を行ってか
ら分析を行う。
【0005】上記した研磨においては、研磨機と試料間
の摩擦熱により、試料表面に酸化膜が生成することがあ
り、このため、一般に、再研磨による酸化膜の除去が行
われているが、酸化膜の有無の確認は目視で行ってお
り、薄い酸化膜が不可避的に生成した試料についてはそ
のまま分析に供される。本発明者らは、蛍光X線分析法
を用いて鉄鋼中の炭素分析を行う過程で、分析面に生成
した上記した極めて薄い酸化膜が炭素の分析精度に大き
く影響することを見出した。
【0006】すなわち、薄い酸化膜が生成している鉄鋼
試料中の炭素を蛍光X線分析法によって分析する場合、
試料から発生した蛍光X線は酸化膜を透過して試料から
放出される。この時、炭素の蛍光X線は酸化膜中で一部
吸収され、炭素濃度が実際よりも低く見積もられる問題
があった。
【0007】従来、蛍光X線分析法による鉄鋼中の炭素
分析においては、試料の表面汚染や金属組織が分析精度
に影響を与えることが知られており、その対策として、
特開平5−288695号公報に示されるような表面汚染除去
方法や、実公平1−19088 号公報による試料組織の均一
化などが提案されている。しかし、炭素の分析精度に与
える酸化膜の影響については検討されていなかった。
【0008】さらに、特開平5−288695号公報に示され
るような表面汚染除去方法では、分析操作とは別個に汚
染除去処理を行わなければならず、工程管理分析のよう
に迅速性が要求される分析には適応できなかった。ま
た、蛍光X線分析法による定量分析においては、特開平
4−168352号公報、特開平11−94774 号公報に示される
ような蛍光X線強度補正による定量方法が提案されてい
る。
【0009】しかし、これらの方法では酸化膜による炭
素蛍光X線強度の減衰を補正することはできなかった。
すなわち、特開平4−168352号公報に示される蛍光X線
強度補正方法は、試料組織の違いによる目的元素の蛍光
X線強度の変化を、他の元素の蛍光X線強度と化学分析
値の比により補正する方法である。
【0010】このため、例えば、組成および組織が同じ
試料であっても酸化膜の有無により炭素の蛍光X線強度
は変化し、組織が同じ場合、上記した方法は適用できな
い。また、酸化膜は表層に極く薄く生成しているため、
酸素量を化学分析により定量することはできない。一
方、特開平11−94774 号公報に示されている蛍光X線強
度補正方法は、目的元素の2種類の蛍光X線を用いて、
目的元素の単体と化合物の比率を求める方法であるが、
例えば、鉄鋼中の炭素においては、試料中に析出した黒
鉛とセメンタイト(Fe3C)の比率を求めることは可能で
あるが、試料表面に生成した酸化膜による蛍光X線強度
の減衰を補正することはできない。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、前記した従
来技術の問題点を解決し、分析面に酸化膜が生成してい
る鉄鋼試料について、鉄鋼中の炭素濃度を迅速かつ精度
よく定量することが可能な鉄鋼中炭素の高精度分析方法
を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】第1の発明は、鉄鋼試料
にX線を照射し、前記鉄鋼試料から発生する炭素の蛍光
X線強度に基づき鉄鋼中炭素濃度を定量する鉄鋼中炭素
の分析方法において、鉄鋼試料表面に存在する酸化膜か
ら発生する酸素の蛍光X線強度又は前記酸化膜の膜厚を
用いて炭素の蛍光X線強度の前記酸化膜による減衰を補
正し、補正後の炭素の蛍光X線強度に基づき鉄鋼中炭素
濃度を定量することを特徴とする鉄鋼中炭素の高精度分
析方法である。
【0013】第2の発明は、鉄鋼試料にX線を照射し、
前記鉄鋼試料から発生する炭素の蛍光X線強度に基づき
鉄鋼中炭素濃度を定量する鉄鋼中炭素の分析方法におい
て、炭素濃度が既知で表面に酸化膜が存在する標準試料
を用いて酸素の蛍光X線強度と炭素の蛍光X線強度減衰
率との相関関係を予め求め、炭素濃度が未知で分析面に
酸化膜が存在する鉄鋼試料について、炭素および酸素の
蛍光X線強度を測定し、得られた酸素の蛍光X線強度と
前記相関関係とから酸化膜による鉄鋼試料の炭素の蛍光
X線強度の減衰を補正し、補正後の炭素の蛍光X線強度
に基づき鉄鋼中炭素濃度を定量することを特徴とする鉄
鋼中炭素の高精度分析方法である。
【0014】第3の発明は、鉄鋼試料にX線を照射し、
前記鉄鋼試料から発生する炭素の蛍光X線強度に基づき
鉄鋼中炭素濃度を定量する鉄鋼中炭素の分析方法におい
て、炭素濃度が既知で表面に酸化膜が存在する標準試料
を用いて酸化膜膜厚と炭素の蛍光X線強度減衰率との相
関関係を予め求め、炭素濃度が未知で分析面に酸化膜が
存在する鉄鋼試料について、炭素の蛍光X線強度および
酸化膜膜厚を測定し、得られた酸化膜膜厚と前記相関関
係とから酸化膜による鉄鋼試料の炭素の蛍光X線強度の
減衰を補正し、補正後の炭素の蛍光X線強度に基づき鉄
鋼中炭素濃度を定量することを特徴とする鉄鋼中炭素の
高精度分析方法である。
【0015】前記した第1の発明〜第3の発明において
は、前記した補正後の炭素の蛍光X線強度に基づき鉄鋼
中炭素濃度を定量するに当たって、予め、酸化膜のない
標準試料について求めた炭素濃度と炭素の蛍光X線強度
との関係式である検量線を求め、該検量線と前記した補
正後の炭素の蛍光X線強度とから鉄鋼中炭素濃度を定量
することができる。
【0016】
【発明の実施の形態】以下、本発明をさらに詳細に説明
する。前記した課題を解決するために、本発明において
は、鉄鋼試料表面に存在する酸化膜から発生する酸素の
蛍光X線強度又は前記酸化膜の膜厚を用いて炭素の蛍光
X線強度の酸化膜による減衰を補正し、補正後の炭素の
蛍光X線強度に基づき鉄鋼中炭素濃度を定量する。
【0017】上記した鉄鋼中炭素濃度の定量に当たって
は、上記した補正後の炭素の蛍光X線強度と、酸化膜の
無い標準試料を用いて予め求めた検量線とから鉄鋼中炭
素濃度を定量することができる。先ず、本発明の基礎と
なった原理について述べる。 〔I.酸素の蛍光X線強度による炭素の蛍光X線強度の
補正:〕酸素の蛍光X線強度による炭素の蛍光X線強度
の補正は、下記手順[1] 〜[4]によって行うことができ
る。
【0018】[1] 酸化膜を有する試料の炭素Kα線強度
C と酸化膜がない試料の炭素Kα線強度IC0との比:
C /IC0の導入;上記で定義されるIC /IC0は、下
記式(1) で示されるように光学系、X線源、X線照射条
件が定まれば酸化膜の厚み(以下、酸化膜膜厚とも記
す)tのみの関数となる。
【0019】IC /IC0=f(t)…………(1) 上記式(1) において、 IC :酸化膜を有する試料の炭素Kα線強度 IC0:酸化膜がない試料の炭素Kα線強度 t :酸化膜の厚み(酸化膜膜厚) を示す。
【0020】[2] 厚み(膜厚)tの酸化膜から発生する
酸素Kα線強度IO と十分厚い酸化膜から発生する酸素
Kα線強度IOXとの比:IO /IOXの導入;上記で定義
されるIO /IOXは、前記式(1) と同様、下記式(2) で
示されるように酸化膜膜厚tの関数となる。 IO /IOX=g(t)…………(2) [3] IC /IC0とIO との関係式の導入;前記したIC
/IC0は、下記(3) 式で示されるように厚み(膜厚)t
の酸化膜から発生する酸素Kα線強度IO の関数とな
る。
【0021】IC /IC0=h(IO )………(3) 上記した式(3) から炭素の蛍光X線減衰率:ΔIC は下
記式(4) で与えられる。 炭素の蛍光X線減衰率:ΔIC =1−(IC /IC0)=J(IO )……(4) 上記した式(4) は、後記するように、質量吸収係数およ
び標準試料の測定結果から定めることができる。
【0022】[4] 補正後の炭素の蛍光X線強度IC0と検
量線に基づく鉄鋼中炭素濃度の定量;次に、前記で得ら
れた補正後の炭素の蛍光X線強度IC0と、酸化膜のない
標準試料について予め求めた炭素濃度と炭素の蛍光X線
強度との関係式である検量線とから鉄鋼中炭素濃度を定
量する。
【0023】なお、炭素の蛍光X線減衰率:ΔIC の限
定された範囲内においては、前記した式(4) すなわち炭
素の蛍光X線減衰率:ΔIC と酸素の蛍光X線強度IO
との関係式は、直線で近似できる。すなわち、後記する
図1、図2に示すように、例えば、炭素の蛍光X線減衰
率:ΔIC が0.2 以下の場合、炭素の蛍光X線減衰率:
ΔIC と酸素の蛍光X線強度:IO には直線関係があ
り、この比例係数をkとおくと、炭素の蛍光X線減衰
率:ΔIC と酸素の蛍光X線強度IO との関係は、下記
式(5) のように表すことができる。
【0024】 ΔIC =1−(IC /ICO)=k×IO ………(5) 上記した式(5) における比例係数kは測定系により定ま
る定数であり、実試料について、酸化膜のない試料およ
び薄い酸化膜を有する試料それぞれの炭素の蛍光X線強
度並びに薄い酸化膜を有する試料の酸素の蛍光X線強度
を測定することによって容易に得ることができる。
【0025】このようにして得た比例係数kと実試料
(被測定試料)の炭素および酸素の蛍光線強度IC 、I
O から、減衰前の炭素の蛍光X線強度すなわち酸化膜に
よる減衰を補正した炭素の蛍光X線強度ICOが下記式
(6) より得られ、このICOと前記した検量線に基づき、
酸化膜が生成した試料に対しても精度良く炭素濃度を求
めることができる。
【0026】 ICO=IC /(1−k×IO )…………………(6) 〔II.酸化膜の厚みによる炭素の蛍光X線強度の補
正:〕 前記〔I〕項の[1] で述べたように、酸化膜を有する試
料の炭素Kα線強度I C と酸化膜がない試料の炭素Kα
線強度IC0との比:IC /IC0は、下記式(1)で示され
るように光学系、X線源、X線照射条件が定まれば酸化
膜膜厚tのみの関数となる。
【0027】IC /IC0=f(t)…………(1) 上記式(1) において、 IC :酸化膜を有する試料の炭素Kα線強度 IC0:酸化膜がない試料の炭素Kα線強度 t :酸化膜膜厚 を示す。
【0028】この結果、酸化膜膜厚を直接測定すること
によって、前記〔I〕項で述べたと同様の方法で、酸化
膜が生成した試料に対して精度良く炭素濃度を求めるこ
とができる。なお、上記した酸化膜膜厚の測定は、赤外
線吸収分光法またはイオンスパッタリング法などによっ
て行うことができる。
【0029】次に、前記〔I〕項、〔II〕項で示した本
発明の基礎となった原理についてさらに詳細に述べる。
炭素の蛍光X線強度の酸化膜による減衰は、下記のよう
に補正することができる。試料表面に酸化膜がない場合
の炭素Kα線の強度ICOは、下記式(7) で表される。
【0030】
【数1】
【0031】また、分析面に厚さtの酸化膜がある場合
の炭素Kα線の強度IC は、下記式(8) で表される。
【0032】
【数2】
【0033】前記した式(7) 、式(8) より、IC 、ICO
の関係は、下記式(9) で表される。
【0034】
【数3】
【0035】上記式(9) 中、k(t) は下記式(10)で表さ
れる。
【0036】
【数4】
【0037】上記式(10)において、μ、ρは物理定数、
φ、ψC は光学系が決まれば定数である。また、I(λ)
はX線源、X線照射条件により、QCKα(λ)は波長ご
とに試料組成により決まるので、式(10)におけるk(t)
は酸化膜膜厚:tのみの関数とみなせる。
【0038】一方、厚さtの酸化膜から発生する酸素K
α線の強度IO は下記式(11)で表される。
【0039】
【数5】
【0040】また、十分厚い酸化膜からの酸素Kα線の
強度IOXは、下記式(12)で表される。
【0041】
【数6】
【0042】前記した式(11)、式(12)より、IO 、IOX
の関係は下記式(13)のように表される。
【0043】
【数7】
【0044】ここで、k’(t) は下記式(14)のように表
され、k(t) と同様に酸化膜膜厚:tの関数とみなせ
る。
【0045】
【数8】
【0046】前記した式(9) および式(13)より、炭素K
α線に関するIC /ICOは下記式(15)のように表され
る。
【0047】
【数9】
【0048】上記した式(15)において、μOX(CKα)
およびμOX(OKα)については、吸収物質単位質量当
たりの吸収係数である質量吸収係数として既知である。
また、k(t) およびk’(t) は酸化膜膜厚:tが既知で
ある標準試料を用いて前記した式(10)、式(14)により得
ることができる。これらを用いて、下記式(16)で示され
る炭素の蛍光X線減衰率:ΔIC と酸素の蛍光X線強度
O との関係を求めると、図1のようになる。
【0049】ΔIC =1−(IC /ICO)………(16) 図1の曲線は、炭素の蛍光X線減衰率:ΔIC の所定範
囲内において酸素の蛍光X線強度IO に対して直線で近
似できる。図2に、前記した式(15)、式(16)に関して、
炭素の蛍光X線減衰率:ΔIC が0.15以下の場合につい
て示す。
【0050】ここで、実線は式(15)、式(16)により得ら
れる計算値、プロットは実測値である。図2に示すよう
に、炭素の蛍光X線減衰率:ΔIC の所定範囲内では、
酸素の蛍光X線強度と炭素の蛍光X線減衰率:ΔIC
は直線関係があり、この比例係数をkとおくと、炭素の
蛍光X線減衰率:ΔIC と酸素の蛍光X線強度IO との
関係は、下記式(5) のように表すことができる。
【0051】 ΔIC =1−(IC /ICO)=k×IO ………(5) 上記した式(5) における比例係数kは測定系により定ま
る定数であり、実試料について、酸化膜のない試料およ
び薄い酸化膜を有する試料それぞれの炭素の蛍光X線強
度並びに薄い酸化膜を有する試料の酸素の蛍光X線強度
を測定することにより、容易に得ることができる。
【0052】このようにして得た比例係数kと実試料の
炭素および酸素の各蛍光線強度IC、IO から、減衰前
の炭素の蛍光X線強度:ICO、すなわち補正後の炭素の
蛍光X線強度:ICOが下記式(17)より得られ、このICO
を用いることにより、酸化膜が生成した試料に対しても
精度良く炭素濃度を求めることができる。 ICO=IC /(1−k×IO )…………(17) なお、前記した補正後の炭素の蛍光X線強度:ICOに基
づき鉄鋼中炭素濃度を定量するに当たっては、予め、酸
化膜のない標準試料について求めた炭素濃度と炭素の蛍
光X線強度との関係式である検量線を求め、該検量線と
前記した補正後の炭素の蛍光X線強度:ICOとから鉄鋼
中炭素濃度を定量することができる。
【0053】なお、前記〔II〕項で述べたように、酸化
膜を有する試料の炭素Kα線強度I C と酸化膜がない試
料の炭素Kα線強度IC0との比:IC /IC0は、下記式
(1)で示されるように光学系、X線源、X線照射条件が
定まれば酸化膜膜厚tのみの関数となる。 IC /IC0=f(t)…………(1) 上記式(1) において、 IC :酸化膜を有する試料の炭素Kα線強度 IC0:酸化膜がない試料の炭素Kα線強度 t :酸化膜膜厚 を示す。
【0054】この結果、酸化膜膜厚tを直接測定するこ
とによって、前記したと同様に、下記近似式(18)および
酸化膜のない試料および薄い酸化膜を有する試料それぞ
れの炭素の蛍光X線強度並びに薄い酸化膜を有する試料
の酸化膜膜厚tの測定結果に基づいて、酸化膜が生成し
た試料に対して精度良く炭素濃度を求めることができ
る。
【0055】 ΔIC =1−(IC /ICO)=k" ×t………(18) なお、上記した酸化膜膜厚tの測定は、赤外線吸収分光
法またはイオンスパッタリング法などによって行うこと
ができる。以上述べたように、本発明によれば、試料か
らの酸素の蛍光X線強度または試料の酸化膜膜厚を用い
て試料からの炭素の蛍光X線強度を補正することによっ
て、酸化膜が存在する鉄鋼試料の炭素濃度を精度良く分
析することが可能となった。
【0056】以上、本発明について述べたが、本発明
は、銑鉄、鋼、鋳鉄、合金鋼などの鉄鋼中の炭素濃度の
高精度分析方法として好適に用いることができる。
【0057】
【実施例】以下、本発明を実施例に基づいてさらに具体
的に説明する。 (実施例1)試料として銑鉄を用い、酸化膜の存在する
試料の炭素の蛍光X線強度:IC 、酸素の蛍光X線強
度:IO および酸化膜除去後の試料の炭素の蛍光X線強
度:I COを測定した。
【0058】次に、下記式(16)で示される炭素の蛍光X
線減衰率:ΔIC と酸素の蛍光X線強度:IO との関係
を調べた。 ΔIC =1−(IC /ICO)………(16) 図2に、得られた結果を示す。図2に示されるように、
炭素の蛍光X線減衰率:ΔIC と酸素の蛍光X線強度:
O とは極めて良い相関関係を有し、本実施例の測定系
における下記式(5) における比例係数:kが 0.129(kc
ps-1) であることが分かった。
【0059】 ΔIC =1−(IC /ICO)=k×IO ………(5) (実施例2)試料として表面に酸化膜が存在している銑
鉄を用い、酸化膜の存在は考慮せずに試料の炭素の蛍光
X線強度:IC と予め求めた検量線とから銑鉄中の炭素
濃度を求めた(従来法)。
【0060】一方、上記試料の炭素の蛍光X線強度:I
C 、酸素の蛍光X線強度:IO と下記式(17)および前記
した実施例1で得られた比例係数:k= 0.129(kcp
s-1)を用いて、酸化膜による炭素の蛍光X線強度の減
衰を補正した炭素の蛍光X線強度:ICOを求めた。 ICO=IC /(1−k×IO )………(17) 次に、上記で得られた補正後の炭素の蛍光X線強度:I
COと、予め酸化膜のない銑鉄の標準試料について求めた
銑鉄中炭素濃度と炭素の蛍光X線強度との関係式である
検量線とから銑鉄中の炭素濃度を定量した(本発明
法)。
【0061】次に、上記で得られた従来法による炭素濃
度、本発明法による炭素濃度と燃焼法により求めた炭素
濃度とを比較した。図3に、得られた結果を示す。図3
に示すように、表面に酸化膜が存在している鉄鋼試料に
対して、本発明の方法である酸素の蛍光X線強度による
炭素の蛍光X線強度の補正法を用いることにより、鉄鋼
試料中の炭素濃度を精度良く求められることが分かっ
た。
【0062】(実施例3)試料として鋳鉄を用い、酸化
膜を有する試料の炭素の蛍光X線強度:IC 、試料表面
の酸化膜膜厚:tおよび酸化膜除去後の試料の炭素の蛍
光X線強度:ICOを測定した。次に、下記式(16)で示さ
れる炭素の蛍光X線減衰率:ΔIC と酸化膜膜厚:tと
の関係を調べた。
【0063】ΔIC =1−(IC /ICO)………(16) 図4に、得られた結果を示す。図4に示されるように、
炭素の蛍光X線減衰率:ΔIC と酸化膜膜厚:tとは極
めて良い相関関係を有し、表面に酸化膜が生成している
鉄鋼試料に対して、本発明の方法である試料表面の酸化
膜膜厚:tによる炭素の蛍光X線強度の補正法を用いる
ことにより、鉄鋼試料中の炭素濃度を精度良く求められ
ることが分かった。
【0064】
【発明の効果】本発明によれば、表面に酸化膜が生成し
ている鉄鋼試料に対して、鉄鋼中の炭素濃度を高精度で
分析することが可能となった。さらに、本発明によれ
ば、従来法における試料の前処理が不要なため上記試料
を迅速に分析することが可能となり、本発明は、工程管
理用の分析方法として好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】炭素の蛍光X線減衰率と酸素の蛍光X線強度と
の関係を示すグラフである。
【図2】炭素の蛍光X線減衰率と酸素の蛍光X線強度と
の関係を示すグラフである。
【図3】銑鉄の試料について本発明法または従来法で定
量した炭素濃度(蛍光X線分析法)と燃焼法で定量した
炭素濃度との関係を示すグラフである。
【図4】炭素の蛍光X線減衰率と酸化膜膜厚との関係を
示すグラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 山本 公 千葉県千葉市中央区川崎町1番地 川崎製 鉄株式会社技術研究所内 Fターム(参考) 2G001 AA01 BA04 CA01 FA02 FA12 FA14 KA01 KA11 NA03

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 鉄鋼試料にX線を照射し、前記鉄鋼試料
    から発生する炭素の蛍光X線強度に基づき鉄鋼中炭素濃
    度を定量する鉄鋼中炭素の分析方法において、鉄鋼試料
    表面に存在する酸化膜から発生する酸素の蛍光X線強度
    又は前記酸化膜の膜厚を用いて炭素の蛍光X線強度の前
    記酸化膜による減衰を補正し、補正後の炭素の蛍光X線
    強度に基づき鉄鋼中炭素濃度を定量することを特徴とす
    る鉄鋼中炭素の高精度分析方法。
  2. 【請求項2】 鉄鋼試料にX線を照射し、前記鉄鋼試料
    から発生する炭素の蛍光X線強度に基づき鉄鋼中炭素濃
    度を定量する鉄鋼中炭素の分析方法において、炭素濃度
    が既知で表面に酸化膜が存在する標準試料を用いて酸素
    の蛍光X線強度と炭素の蛍光X線強度減衰率との相関関
    係を予め求め、炭素濃度が未知で分析面に酸化膜が存在
    する鉄鋼試料について、炭素および酸素の蛍光X線強度
    を測定し、得られた酸素の蛍光X線強度と前記相関関係
    とから酸化膜による炭素の蛍光X線強度の減衰を補正
    し、補正後の炭素の蛍光X線強度に基づき鉄鋼中炭素濃
    度を定量することを特徴とする鉄鋼中炭素の高精度分析
    方法。
  3. 【請求項3】 鉄鋼試料にX線を照射し、前記鉄鋼試料
    から発生する炭素の蛍光X線強度に基づき鉄鋼中炭素濃
    度を定量する鉄鋼中炭素の分析方法において、炭素濃度
    が既知で表面に酸化膜が存在する標準試料を用いて酸化
    膜膜厚と炭素の蛍光X線強度減衰率との相関関係を予め
    求め、炭素濃度が未知で分析面に酸化膜が存在する鉄鋼
    試料について、炭素の蛍光X線強度および酸化膜膜厚を
    測定し、得られた酸化膜膜厚と前記相関関係とから酸化
    膜による炭素の蛍光X線強度の減衰を補正し、補正後の
    炭素の蛍光X線強度に基づき鉄鋼中炭素濃度を定量する
    ことを特徴とする鉄鋼中炭素の高精度分析方法。
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