JP2001220683A

JP2001220683A - 絶縁被膜付き電磁鋼板

Info

Publication number: JP2001220683A
Application number: JP2000027612A
Authority: JP
Inventors: Kazumichi Sashi; 一道佐志; Yuka Komori; ゆか小森; Masaki Kono; 正樹河野; Atsuto Honda; 厚人本田
Original assignee: Kawasaki Steel Corp
Current assignee: JFE Steel Corp
Priority date: 2000-02-04
Filing date: 2000-02-04
Publication date: 2001-08-14
Anticipated expiration: 2020-02-04
Also published as: JP4474714B2

Abstract

(57)【要約】【課題】外観および絶縁被膜の密着性に優れたクロムを
実質的に含有しない絶縁被膜を有する電磁鋼板とその製
造方法の提供。【解決手段】電磁鋼板の表面に、リン酸酸洗処理および
／またはリン酸塩処理を施し、リン系化合物層を形成
後、クロムを実質的に含有しない、有機樹脂と、必要に
応じて無機コロイドを含有する処理液を塗布焼付けした
絶縁被膜を形成する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は実質的にクロムを含
有しない絶縁被膜を有する電磁鋼板およびその製造方法
に関し、外観および密着性に優れた絶縁被膜付き電磁鋼
板およびその製造方法を提供するものである。

【０００２】

【従来の技術】モータや変圧器などに使用される電磁鋼
板の絶縁被膜は層間抵抗だけでなく、加工成形時および
保管時の利便さの観点から種々の特性が要求される。電
磁鋼板をモータおよびトランスのコア、磁気シールド材
など電磁気を応用した用途に使用する場合、電磁鋼板を
金型で打ち抜き積層するので、絶縁被膜の絶縁性が極め
て重要になる。また、打抜加工後に磁気特性を向上させ
るため、７５０〜８５０℃で歪取り焼鈍を行う場合が多
く、歪取り焼鈍に耐え得ることが要求される場合があ
る。このように、電磁鋼板は幅広く使用されるため、用
途に適応した絶縁被膜が必要になり、種々の被膜が開発
されている。

【０００３】絶縁被膜は、（１）溶接性、耐熱性を重視
し、歪取り焼鈍に耐え得る無機質被膜、（２）打抜性、
溶接性の両立を目指し、歪取り焼鈍に耐え得る樹脂含有
の有機／無機複合被膜、および（３）特殊用途で歪取り
焼鈍不可の有機質被膜、の３種に大別される。汎用品と
して歪取り焼鈍に耐え得るのは、（１）および（２）の
無機質を含む被膜であり、特に、有機樹脂を含有したク
ロム酸塩系絶縁被膜は、いわゆる１コート１ベークが可
能であるため、無機質絶縁被膜に比べて打抜性が格段に
向上し、広く利用されている。

【０００４】例えば、特公昭６０−３６４７６号公報に
は、少なくとも１種の２価金属を含む重クロム酸塩系水
溶液に、該水溶液中のＣｒＯ₃：１００重量部に対し、
有機樹脂エマルジョン（酢酸ビニル／ベオバ比＝９０／
１０〜４０／６０）を樹脂固形分で５〜１２０重量部お
よび有機還元剤を１０〜６０重量部の割合で配合した処
理液を生地鉄板の表面に塗布し、常法による焼き付けを
行なう電磁鋼板の絶縁被膜形成法が開示されている。

【０００５】また、昨今は環境意識が高まる傾向にあ
り、電磁鋼板の製造課程あるいは需要家において、クロ
ムを実質的に含まず、打ち抜き性が良好な絶縁被膜が求
められている。これに対するものとして、先に本願出願
人が提案した、樹脂およびコロイダルシリカを成分とす
る絶縁被膜（特開平１０−３４８１２号公報）などが知
られている。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】クロムを含まない処理
液、例えば、樹脂およびコロイダルシリカを成分とした
処理液を電磁鋼板に塗布焼付けした場合、塗布後、焼付
乾燥前において、鋼板の鉄成分が処理液中に溶出し、焼
付け後の被膜に不透明部分が発生して絶縁被膜の外観お
よび絶縁被膜の鋼板への密着性が劣る場合があった。電
磁鋼板の場合は、一般の表面処理鋼板のようにめっきな
どの防錆用表面処理をしていないため、特に、絶縁被膜
形成用処理液として酸性の水系塗料を塗布した場合、該
塗料中に溶出した鉄成分が錆び、良好な絶縁被膜を得る
ことが難しい場合があった。

【０００７】本発明は前記問題点を解決すべくなされた
ものであって、クロムを実質的に含有しない酸性有機樹
脂、および必要に応じて無機コロイドを含有する絶縁被
膜形成用処理液を電磁鋼板に塗布焼付けした場合におい
ても、鉄の処理液中への溶出を低減し、該被膜の外観お
よび該被膜の鋼板への密着性が良好な絶縁被膜付き電磁
鋼板およびその製造方法を提供するものである。

【０００８】本発明者は、前記問題点を解決すべく鋭意
検討した結果、リン酸洗浄などの方法により、予め、鋼
板表面に厚さ１０〜２００ｎｍのリン系化合物の被膜を
形成させることにより、その後塗布焼付けした絶縁被膜
の外観および絶縁被膜の鋼板への密着性が改善されるこ
と、特に、水系の酸性塗料を塗布焼付けした場合に、そ
の改善効果が大きいことを見出し、本発明を完成したも
のである。

【０００９】すなわち、本発明は、乾燥後の絶縁被膜１
００質量％に対するクロム含有量が１質量％以下である
絶縁被膜付き電磁鋼板において、絶縁被膜と鋼板の間に
厚さ１０〜２００ｎｍのリン化合物層を有することを特
徴とする外観および被膜密着性に優れた絶縁被膜付き電
磁鋼板である。

【００１０】また、本発明は、乾燥後の絶縁被膜１００
質量％に対するクロム含有量が１質量％以下である絶縁
被膜付き電磁鋼板を製造するに当たり、該電磁鋼板の表
面にリン酸酸洗処理および／またはリン酸塩処理を行
い、リン系化合物層を形成し、ついで、該表面に、該絶
縁被膜形成用処理液を塗布することを特徴とする外観お
よび被膜密着性に優れた絶縁被膜付き電磁鋼板の製造方
法である。

【００１１】

【発明の実施の形態】本発明の出発素材は電磁鋼板（電
気鉄板）である。鋼板中の成分を調整して、比抵抗を大
きくし、所望の磁気特性を有するようにした鋼板であ
る。例えば、Ａｌの含有量が０．０５〜３質量％、Ｓｉ
の含有量が０．１〜７質量％である鋼板が好ましい。

【００１２】本発明の絶縁被膜付き電磁鋼板の絶縁被膜
は、クロムを実質的に含有しない有機樹脂を主成分とす
る水性塗料を塗布焼付けして得られる被膜である。クロ
ム実質的に含有しないとは、絶縁被膜の乾燥後の重量に
対してクロム量が１質量％以下であることを意味する。
好ましいのはクロムを含有しない場合である。

【００１３】絶縁被膜の付着量は乾燥質量で０．０５〜
４ｇ／ｍ²であるのが好ましい。付着量が０．０５ｇ／
ｍ²未満であると被膜が不均一になり、地鉄が露出する
ことにより、スティキング性、沸騰水蒸気曝露性が不足
する。一方、付着量が４ｇ／ｍ²を超えると低温乾燥時
に被膜の膨れが発生するなど外観が悪化する。より好ま
しいのは０．１〜２ｇ／ｍ²である。

【００１４】絶縁被膜を形成する樹脂成分は特に制限さ
れないが、アクリル樹脂、アルキッド樹脂、ポリオレフ
ィン樹脂、スチレン樹脂、酢酸ビニル樹脂などの熱可塑
性樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹
脂、メラミン樹脂などの熱硬化性樹脂であり、これらの
１種または２種以上を組み合わせた有機樹脂である。特
に好ましいのはアクリル樹脂、エポキシ樹脂、およびこ
れらの樹脂の混合物または共重合体である。中でもガラ
ス転移点が３０〜１５０℃であるものが好ましい。ガラ
ス転移点が３０℃未満であると耐溶剤性（特にアセトン
のように極性の強い溶剤の場合）、耐食性が不足する。
一方、ガラス転移点が１５０℃を超えると低温焼き付け
時の造膜性、被膜密着性が劣る。特に好ましいのはガラ
ス転移点が６０〜１５０℃の樹脂である。

【００１５】絶縁被膜は樹脂成分の他に無機コロイドを
含有することができる。無機コロイドの含有により、被
膜形成後の歪取り焼鈍が可能になる。無機コロイドは特
に制限されないが、Ｓｉ，Ａｌ，Ｚｒ，Ｔｉ，Ｓｎ，Ｓ
ｅ，Ｔｅ，Ａｓ，Ｓｂ，Ｐ，Ｓ，Ｂｉなどの元素の酸化
物、水酸化物およびこれらの水和物などであり、造膜
性、経済性からコロイダルシリカ（シリカゾル）が好ま
しい。酸性でのコロイド安定性を考慮するとアルミナ処
理したシリカまたはアルミナ含有シリカが特に好まし
い。粒径は特に限定されないが、好ましいのは数ｎｍ〜
１００ｎｍ程度のものである。

【００１６】絶縁被膜の性能を一層向上させるために、
防錆剤など添加剤を配合してもよい。この場合、歪取り
焼鈍後の性能を確保するために有機物質１００質量部に
対する無機物質の合計量は３〜３００質量部の範囲とす
ることが好ましい。

【００１７】本発明の絶縁被膜付き電磁鋼板において
は、電磁鋼板の表面に厚さ１０〜２００ｎｍのリン系化
合物層が形成されている。絶縁被膜にＣｒが含有されな
い場合には、特に外観を良好にし、同時に打ち抜き密着
性を満足させるために、厚さを１０〜２００ｎｍに維持
する必要がある。厚さが１０ｎｍ未満では、鋼板から処
理液への鉄の溶出を十分に抑制することができない。一
方、厚さが２００ｎｍを超えると打ち抜き加工時の被膜
密着性が低下する傾向が見られる。リン系化合物の被膜
の厚さは、第１図に示すような厚み−ＧＤＳ強度の関係
図を用いて計算される。すなわち、絶縁被膜と鋼板の間
に存在するリンの最大強度Ｐh の半分Ｐａ［（最大強度
Ｐh −バックグラウンドＰb ）×１／２］を与える被膜
の厚さＴａである。リン系化合物はリンと鉄、亜鉛など
の金属との化合物であり、ＦｅＰＯ₄，Ｆｅ₃（Ｐ
Ｏ₄）₂，ＦｅＨＰＯ₄，Ｆｅ（Ｈ₂ＰＯ₄）₂，Ｚｎ
₂Ｆｅ（ＰＯ₄）₂，Ｚｎ₃（ＰＯ₄）₂およびこれら
の水和物を例示することができる。

【００１８】リン系化合物層は、リン酸酸洗処理、リン
酸塩処理およびこれらの併用により形成されるが、リン
酸酸洗処理が特に好ましい。リン酸酸洗処理、リン酸塩
処理およびこれらの併用の処理条件（濃度、温度、時間
など）はそれぞれの薬剤および処理装置に適したもので
あれば特に制限されるものではない。被膜の厚さの制御
は、例えば、リン酸酸洗処理とリン酸塩処理を併用する
場合は、濃度、温度、時間などを適宜調整することによ
り可能である。

【００１９】リン酸酸洗処理は、前記のリン系化合物層
の層厚が得られるならば特に規制されず、一般的な方法
で実施可能である。例えば、濃度０．００１質量％以上
および温度５℃以上のリン酸液中に電磁鋼板を浸漬した
り、該リン酸液を接触させたりする方法などが好ましく
実施される。さらに好ましいのは、濃度０．０１〜２０
質量％および温度３０〜７０℃のリン酸液に浸漬する方
法である。濃度が０．００１質量％未満であるとリン系
化合物層の形成が不十分となり、鉄の溶出を十分抑制す
ることができない。また、温度が５℃未満であるとリン
系化合物層の形成反応が遅く、外観向上が十分期待でき
ない。

【００２０】リン酸塩処理は、前記のリン系化合物層の
層厚が得られるならば特に規制されず、一般的な方法で
実施可能である。例えば、主剤として鉄、亜鉛、マグネ
シウム、カルシウム、アルミニウムなどのリン酸塩の１
種または２種以上を含有する水溶液に電磁鋼板を浸漬し
たり、該水溶液に接触させたりする方法などが好ましく
実施される。

【００２１】リン酸酸洗処理とリン酸塩処理を併用する
場合は、リン酸酸洗処理を行なった後、リン酸塩処理を
行なうのが一般的であるが、これに限定されない。

【００２２】リン系化合物層が形成のための前記処理を
行なった電磁鋼板をリンス処理するのが好ましい。使用
する水に制限はないが、水道水で予備洗浄した後、イオ
ン交換水で仕上げるのが好ましい。リンス処理液とし
て、水を媒体とした塗料を用いることもできる。すなわ
ち、塗料のエマルジョン、ディスパージョン、水溶液も
使用できる。

【００２３】リン系化合物層が形成された電磁鋼板は、
ついで絶縁被膜形成用処理液を塗布し焼付けされる。そ
の結果、前記したようなクロムを実質的に含有しない絶
縁被膜付き電磁鋼板が得られる。クロムを実質的に含有
しない絶縁被膜形成用処理液中では、クロムを含有する
処理液のような鋼板の不動態効果が望めない。よって、
乾燥後の絶縁被膜１００質量部に対してクロム量が１質
量％以下と低い場合には、鋼板の鉄が溶出しやすくな
り、絶縁被膜付き電磁鋼板の外観および被膜密着性など
の被膜性能が劣化する。しかし、本発明においては、鋼
板表面にリン系化合物層が存在するので、該層が鉄の溶
出を抑制するものと推考される。

【００２４】絶縁被膜形成用処理液の塗布は工業的に一
般に用いられるロールコーター法、フローコーター、ス
プレー塗装、ナイフコーターなど種々の方法で実施され
る。焼き付け方法も通常工業的に実施される熱風式、赤
外式、誘導加熱式などが実施可能である。焼付けは、特
に規制するものではなく、例えば、絶縁被膜中の水分が
蒸発する程度の低温加熱で十分である。例えば、５０〜
２５０℃程度の低い到達板温で１分以内の短時間焼き付
けすれば十分である。

【００２５】

【実施例】以下、本発明の効果を実施例に基づいて具体
的に説明する。（例１〜１９）板厚０．５ｍｍの電磁鋼板の表面に第１
表に記載のリン酸処理剤またはリン酸塩処理剤（濃度１
質量％）を用いて表面処理し、第１表に示す層厚のリン
系化合物層を形成した。ついで、第１表に示す樹脂およ
びコロイダルシリカ（粒径２０ｎｍ）を含有する酸性
（ｐＨ４〜５）水性液（樹脂固形分濃度２質量％、シリ
カ含有量２質量％）をロールコーターで塗布し、第１表
に示す所定時間放置後、到達板温２００℃で焼き付け放
冷し、絶縁被膜付き電磁鋼板を得た。絶縁被膜中のクロ
ム含有量、絶縁被膜の外観および絶縁被膜の電磁鋼板と
の密着性を第１表に合わせて示した。例１〜１１は発明
例、例１２〜１９は比較例である。

【００２６】第１表から明らかなように本発明例はいず
れも外観および密着性に優れている。なお、各性能評価
法の詳細は以下の通りである。

【００２７】（リン系化合物層の厚さ）ＧＤＳで表面か
らのリン強度を測定し、絶縁被膜と鋼板の間に存在する
リンの最大強度Ｐh の半分Ｐa ［（最大強度Ｐh −バッ
クグラウンドＰb ）×１／２］に当たるピーク幅をもっ
てリン系化合物層の厚さＴa とした。

【００２８】（外観判定）目視により鉄溶出状況を観察
し、以下のように判定した。 ○：良好（無色透明な被膜が得られた） △：若干悪い（不透明な部分や、変色が若干見られ
た） ×：悪い（斑点状の不透明部分が多く見受けられ、醜
い） ××：非常に悪い（全面を不透明な被膜で覆われ、明
らかに不良である）

【００２９】（密着性）絶縁被膜付き電磁鋼板の鋼板表
面に“セロファン”テープを貼付した後、剥がし、その
部分の被膜の剥離状態を観察して、以下のように判定し
た。 ◎：剥離なし △：やや剥離する（目視で３０％以下の剥離が認めら
れる） ×：剥離する（目視で３０％超の剥離が認められる）

【００３０】

【表１】

【００３１】

【発明の効果】本発明により、クロム含有量が少ない、
またはクロムを含有しない絶縁被膜形成用処理剤を電磁
鋼板に塗布焼き付けしても絶縁被膜の外観および絶縁被
膜の密着性の良好な電磁鋼板を得ることができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】リン系化合物層の厚さの評価法を示す説明図
である。

【符号の説明】

Ｐh ：ＧＤＳ強度の最大強度Ｐb ：ＧＤＳ強度のバックグラウンドＰa ：［（最大強度Ｐh −バックグラウンドＰb ）×
１／２］で示されるＧＤＳ強度Ｔa ：Ｐａの時のリン系化合物層の厚さ

フロントページの続き (72)発明者河野正樹岡山県倉敷市水島川崎通１丁目（番地なし）川崎製鉄株式会社水島製鉄所内 (72)発明者本田厚人岡山県倉敷市水島川崎通１丁目（番地なし）川崎製鉄株式会社水島製鉄所内Ｆターム(参考） 4K026 AA03 AA22 BA01 BA03 BA04 BA12 BB01 BB05 BB10 CA13 CA26 CA39 CA41 DA16 EB08 EB11 4K033 TA03

Claims

【特許請求の範囲】

【請求項１】乾燥後の絶縁被膜１００質量％に対するク
ロム含有量が１質量％以下である絶縁被膜付き電磁鋼板
において、絶縁被膜と鋼板の間に厚さ１０〜２００ｎｍ
のリン化合物層を有することを特徴とする外観および密
着性に優れた絶縁被膜付き電磁鋼板。
【請求項２】乾燥後の絶縁被膜１００質量％に対するク
ロム含有量が１質量％以下である絶縁被膜付き電磁鋼板
を製造するに当たり、該電磁鋼板の表面にリン酸酸洗処
理および／またはリン酸塩処理を行い、リン系化合物層
を形成し、ついで、該表面に、該絶縁被膜形成用処理液
を塗布することを特徴とする外観および密着性に優れた
絶縁被膜付き電磁鋼板の製造方法。