JP2000279092A - レシチンを含む食用油およびその利用 - Google Patents

レシチンを含む食用油およびその利用

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JP2000279092A
JP2000279092A JP11092629A JP9262999A JP2000279092A JP 2000279092 A JP2000279092 A JP 2000279092A JP 11092629 A JP11092629 A JP 11092629A JP 9262999 A JP9262999 A JP 9262999A JP 2000279092 A JP2000279092 A JP 2000279092A
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Shinsuke Kozono
伸介 小薗
Rika Tanaka
利佳 田中
Hiroshi Shirasago
尋士 白砂
Hiroshi Nishimura
浩 西村
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Yoshihara Oil Mill Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 良好な流動性と、パーム油と同等以上の改善
された酸化安定性を備え、かつ風味が豊かな食用油を提
供する。 【解決手段】 キャノーラ(Canola)種に属する菜種種
子、特に、Canola 46A40(キャノーラ 46A40)の菜種種
子から得られた菜種油とレシチンを、菜種油:レシチン
=95:5〜99.5:0.5、好ましくは、97:3〜99:1の
重量比率で混合する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、菜種油およびレシ
チンを含む食用油、とりわけ、各種食品、特に、製菓用
のスプレー油(油脂)として好適であり、また、良好な
流動性と改善された酸化安定性を備え、かつ風味が豊か
な新規の食用油とその利用に関する。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】菜種
とは、アブラナ科(Cruciferae)、アブラナ属(Brassica)
に属する植物であって、北欧、シベリア、カスピ海近辺
などが原産地とされており、主なものに、Brassica cam
pestris(在来種、和種)とBrassica napus(西洋種)
の二種がある。
【0003】菜種油の風味は淡白で軽く、酸化安定性が
高い上に、加熱安定性も大豆油よりも優れているなど、
健康に対する良好なイメージが消費者に定着しているこ
ともあって、わが国における菜種油の需要は着実な伸び
を見せている。
【0004】ところで、わが国で現在使用されている食
用菜種油の原料菜種種子は、そのほぼ全量を海外からの
輸入品、特に、総輸入量の約96%がカナダからの輸入品
で占められている。 これらカナダから輸入される菜種
種子の中でも、品種改良によって作り出された、エルカ
酸およびグルコシノレート双方の含量が低い、いわゆる
ダブル・ロー・タイプ(Doube Low Type)のキャノーラ(C
anola)種の菜種種子が、菜種油の原料種子の主流となっ
ている。 この「キャノーラ種」とは、油脂中のエルカ
酸含量が2%以下で、かつ乾燥粕中のグルコシノレート
含量が30μg/ml以下のBrassica campestris系またはBra
ssica napus系品種の菜種である、とする旨が定義され
ている(カナダ・キャノーラ協会)。
【0005】菜種油の一般的な脂肪酸組成は、オレイン
酸が最も多くて約60重量%、次いで、リノール酸が約20
重量%、そして、リノレン酸は9〜13重量%程度であ
る。そして、キャノーラ種子由来の菜種油(「キャノー
ラ油」とも称する)には、その脂肪酸組成が、これら一
般的な脂肪酸組成とほぼ同様であるか、あるいはオレイ
ン酸含量がさらに多いものや、リノレン酸含量がさらに
少ないものなど、様々な脂肪酸組成のものがある。 ま
た、菜種種子の脂肪酸組成の改変についても活発に研究
が行われており、これまでに、例えば、リノレン酸含量
を3%程度にまで低減させた菜種油(R. Scarth et al.,
Can. J. Plant Sci., 68. p.509 (1988))や、ラウリン
酸含量が高く、ヤシ油に匹敵する性状を備えた菜種油
(Inform.5. p.716 (1994))なども開発されている。
【0006】さらに、従来の菜種油にあっては、菜種油
を高温に加熱し、そこに揚げ種(食材)を投入して加熱
調理(フライ調理)する場合、熱や水分、揚げ種の構成
成分等の影響によって、菜種油に様々な劣化現象が引き
起こされる。 これにより、トリグリセリドから脂肪酸
が遊離する加水分解反応のみならず、酸化反応の二次生
成物である様々なケトンやアルデヒド等の化合物が、異
臭(加熱臭)の原因物質となって空気中に揮散し、喫食
者の食欲減退などを招くのである。
【0007】また、これまで当該業界にあっては、例え
ば、菜種油の安定性を高めるために水素添加を行った場
合に、LDLコレステロールの増加や、心臓疾患の発症
との関連が指摘されている飽和酸やトランス酸含量の増
大などの弊害が報告されるなど(食品と開発、Vol. 34.
No. 1, p.64 (1999))、菜種油(油脂)の安定性の改善
とヒトの健康増進は両立し得ないとする認識があった。
【0008】一方、レシチン、とりわけ、リン脂質を主
成分とするレシチンは、動物、植物、微生物などの生体
中に広く分布し、特に、動物の脳や肝臓、それに卵黄、
大豆、酵母などに多く含まれている物質である。 これ
らレシチンの中でも、植物由来のレシチンは、通常、リ
ン脂質、糖脂質、トリグリセリドなどの単純脂質の混合
物であり、微量成分として、遊離した糖や色素などを含
んでいる。 例えば、大豆レシチンの場合、リン脂質と
して、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノー
ルアミン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジ
ン酸やリゾホスファチジルコリンなどが、また、糖脂質
として、スクロースの他に、ラフィノースやスタキオー
スのα−ガラクトオリゴ糖などをも含んでいる。
【0009】これら植物由来のレシチンは、安価で入手
容易な天然の乳化剤でもあり、また、米菓、スナック菓
子のスプレー油の酸化安定性と分散性の向上のために、
植物油に添加溶解するなどして使用されている。 しか
しながら、菜種油、米油またはコーン油にレシチンを添
加して調製した従来のスプレー油では、酸化安定性が乏
しい場合が多く、特に、パーム油またはパーム分別油を
利用した場合には、スプレー油が固化するなど、特に低
温域ではその流動性が喪失するなどの不都合な現象を招
く欠点があった。 このように、当該技術分野にあって
は、植物油とレシチンの組み合わせにおいて、植物油と
レシチンの双方の固有の性質を損なわずに、両者が呈す
る作用効果を相乗的に引き出し、食用油脂、特に、製菓
用のスプレー油として有用な食用油脂を模索しているの
が実情である。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、従来の菜
種油とレシチンのそれぞれにおいて認識されていた上掲
の問題点に鑑みて鋭意研究を行った。 とりわけ、本発
明者らは、酸化安定性が高い食用油脂として知られてい
るパーム油と同等またはそれ以上の酸化安定性を備え、
かつ製菓用のスプレー油(油脂)の用途に好適に利用で
きる油脂を実現すべく研究を重ねた。 その結果、ある
特定の菜種油とレシチンの所定の組み合わせにおいて、
各種食品、特に、製菓用のスプレー油として好適な性能
・性状を発現する食用油、つまり、パーム油と同等以上
の酸化安定性を備え、またパーム油(パーム分別脂)を
配合してもなお良好な流動性を維持し、かつ豊かな風味
を呈する新規の食用油が得られることを知見して、本発
明を完成するに至ったのである。
【0011】すなわち、本発明の要旨とするところは、
菜種油およびレシチンを含む食用油であって、特に、キ
ャノーラ(Canola)種に属する菜種種子から得られた菜種
油、すなわち、その全脂肪酸組成が、約70重量%以上、
好ましくは約70重量%〜約85重量%のオレイン酸と、約
5重量%以下、好ましくは0.5重量%〜約5重量%、さ
らに好ましくは0.5重量%〜約3重量%のリノレン酸を
含む菜種油を利用した食用油にある。 なお、この脂肪
酸組成での重量%表示は、該菜種油を構成する全脂肪酸
の重量に基づいて得た数値である。 また、本発明の好
ましい実施態様によれば、該菜種油の全脂肪酸組成は、
約5重量%以下、好ましくは、約1重量%〜約5重量%
のパルミチン酸をさらに含む。
【0012】前述した本発明の構成によって、液油であ
っても、良好な流動性と、パーム油と同等以上の改善さ
れた酸化安定性を備え、かつ風味が豊かな食用油が得ら
れるのである。 つまり、本発明によれば、パーム油ま
たはパーム調合固型スプレー油と同等もしくは同等以上
の酸化安定性を備えたスプレー油が提供され、そしてこ
の食用油を食材に塗布することで風味豊かな食品が得ら
れる。
【0013】また、本発明の他の態様に従って、本発明
の食用油と食用塩を食材に塗布することで、風味良好な
食品を提供することができる。 通常、焼き米菓やスナ
ック菓子などには風味・食味を良くするために食用塩が
塗布される。 しかしながら、これら食用塩に含まれる
ミネラル分が油脂の酸化を促す性質がある関係から、そ
の使用にあっては量的な制約が課されているのが現状で
ある。 この点に関して、本発明によれば、食用塩、特
に、昨今の、ミネラル分を多く含む(ミネラル分に富ん
だ)自然塩に対する関心が高まる中にあって、本発明の
食用油と食用塩、特に、ミネラル分を多く含む自然塩と
の組み合わせを、焼き米菓やスナック菓子などに応用す
ることで、油脂の酸化進行が抑制され、酸化安定性が大
きく、ミネラル分に富んだ焼き米菓やスナック菓子など
が提供される。
【0014】
【発明の実施の形態】以下に、本発明を詳細に説明す
る。
【0015】本発明で使用する菜種油をもたらす菜種種
子とは、リノレン酸含量が低く、かつオレイン酸含量が
高い菜種種子、具体的には、70重量%以上のオレイン酸
と5重量%以下のリノレン酸を含む脂肪酸組成を有する
菜種油をもたらす菜種種子であればいずれも使用可能で
あるが、好ましくは、キャノーラ種に属し、かつ同脂肪
酸組成を有する菜種油をもたらす菜種種子が好適に利用
できる。 また、前述の脂肪酸組成を有する菜種油をも
たらすキャノーラ種の菜種種子である限りは、その産出
国(産地)は、特に限定されない。
【0016】ところで、キャノーラ種の菜種種子は、カ
ナダで初めて品種改良された後に、カナダの他に、米
国、欧州、豪州などでも生産されている。 また、その
種子から得られる菜種油の飽和脂肪酸含量(約6%)が
他の植物油と比較しても非常に小さいものであり、ま
た、各種脂肪酸の配合バランスが理想的である等の理由
から、食用油市場での流通量を着実に拡大し続けてい
る。
【0017】また、キャノーラ種由来の菜種油の栄養価
や酸化安定性を改善すべく、構成脂肪酸の組成改変に着
眼した種子の品種改良も続けられている。 例えば、パ
イオニア・ハイブレッド社(Pioneer Hi-Bred Producti
ons Ltd、米国)では、交配、突然変異、遺伝子組み換
え等の技術を利用して、すでに様々な脂肪酸組成の油脂
をもたらすキャノーラ種の菜種種子を開発している。
特に、同社が保有している Canola 46A40(キャノーラ
46A40)の菜種種子は、本発明において特に有用であ
り、この種子は、カナダ食品検査庁植物衛生生産部品種
課品種登録局(VarietyRegistration Office, Variety S
ection, Plant Health and Production Division, Cana
dian Food Inspection Agency)に登録済の菜種種子であ
る。
【0018】これら菜種種子を出発原料として、本発明
の菜種油は、通常の菜種油と実質的に同様の圧搾および
精製の工程を含んだ製油工程を経て製造される。
【0019】菜種種子から菜種油の粗油を取得すべく、
菜種種子を圧搾工程または抽出工程に適用する。 好ま
しくは、本願発明にあっては、これら圧搾工程または抽
出工程は、菜種種子の精選、粗砕、水分調整、圧扁およ
び圧搾の一連の工程を含む。
【0020】まず、菜種種子の精選(選別)を行う。
つまり、製油工程に導入された菜種種子に混在する異種
植物の種子、茎および葉、それに、傷の付いた種子や未
熟種子などを除去する。 この種子の精選は、フルイ
(篩)分け、種子の比重差を利用する風別、磁石による
鉄片の除去などを適宜組み合わせて実施する。 また、
傾斜した振動篩板上に均一な空気層を形成することで、
種子のわずかな比重差に基づいて正確に優良な菜種種子
だけを選抜する方法(キップケリー方式)や、グレンセ
パレーターなども利用できる。
【0021】次に、精選された菜種種子を粗砕する。
この粗砕工程とは、種子内部に包含された油脂部分を取
り出すために、油脂部分を取り囲む細胞膜を物理的に圧
壊または裂開するための工程であって、好ましくは、荒
割りロール(クラッキンロール:Cracking Roll)と呼
ばれるスジロール(一段式のペアロール)で、菜種種子
を4〜8分割程度に砕く。
【0022】粗砕したこれら菜種種子に関して、次に、
その水分の調整を行う。 粗油(圧搾油)の性状は、菜
種種子の水分含量と加熱温度に大きく影響されることか
ら、この水分調整は、粗油の収率・収量と品質を高める
作業工程でもある。 ところで、通常、菜種種子にはミ
ロシナーゼが多く含まれており、これは種子中の水分が
13%以上の場合、40〜70℃の温度条件下で酵素活性が最
も高く、また、水分が6〜10%になると、70〜80℃の温
度条件下で酵素活性が高くなる。 この酵素は、グルコ
シノレートを加水分解して、グルコース、硫酸塩、イソ
チオシアネートおよびl-5-ビニル-2-オキサゾリジンチ
オンを生成する作用を呈するものであって、その失活に
は、80℃以上の温度が必要であるため、クッカーなどの
加熱手段によって可及的速やかに種子片を80〜90℃に加
熱し、ミロシナーゼの失活を図ることも肝要である。
これら加熱手段としては、掃き寄せ・かき混ぜ式(Sweep
Type)の撹拌機を備えたスチームジャケット釜を数段に
積み上げてなるタイプ、あるいはロータリーキルンのよ
うなスチームチューブ式ドライヤーなどが使用できる。
【0023】水分調整を行って得られたこれら原料種子
片は、次に、圧扁ロール(フレーキングロール:Flakin
g Roll)と呼ばれる滑面ロール(一段式ペアロール)に
通されて、さらに粉砕される。 なお、菜種種子の種子
片の場合、水分量が高い時などは、菜種種子が本質的に
保有しているミロシナーゼが粉砕時に作用して、グルコ
シノレートの加水分解が始まってしまうので、粉砕前の
種子片の水分を9%以下に調整しておくことが望まし
い。
【0024】次に、圧扁した種子片を、圧搾工程(搾油
処理工程)に適用して粗油を得る。この工程で用いられ
る圧搾(採油)方法には、物理的な圧搾方法(バッチ式
または連続式圧搾方法)と、ヘキサン(ノルマルヘキサ
ン)等の有機溶剤を用いた化学抽出法とがあり、これら
いずれの方法も本発明にあっては利用できる。 これら
物理的圧搾方法の内でも、連続式圧搾方法が粗油の工業
的な大量取得に適しており、本発明にあっても、この連
続式圧搾法が好適に利用できる。 この連続式圧搾法と
は、通常、種子片を連続的にエキスペラーに供給し、ス
クリュープレスの原理を利用して効率良く粗油を取得す
るものである。 この方法にあっては、プレスケーク
(圧搾粕)中の残油分が4〜7%程度になるように圧搾
することが一応の目安とされている。 なお、連続式圧
搾法に引き続いて溶剤抽出を実施して採油する場合、残
油分を12〜20%程度にとどめる。 このように、連続式
圧搾法と溶剤抽出を組み合わせることで、比較的低圧の
押圧負荷による圧搾の場合でも、大容量の採油が可能と
なる。 圧搾粕の残油分が12〜14%以下の時は、圧搾粕
は砕けやすく、改めて圧扁を行わなくとも、直ちに溶剤
抽出の工程に導入することが可能となる。
【0025】前述の物理的圧搾法に加えて、溶剤による
粗油の化学的溶出を併用することができる。 溶剤抽出
の態様には、バッチ式抽出法と連続式抽出法とがあり、
これらいずれの方法も本発明にあっては利用できる。
これらの内でも、連続式抽出方法が、工業的な大量製油
ラインへの組み込みが容易で、また、粗油の大量処理に
適していることから、本発明にあっても、この方式が好
適に利用できる。 この連続式抽出方法には、溶剤と圧
搾粕との接触のさせ方の違いによって、貫流式(Percola
tion System)と浸漬式(Immersion System)に大別され
る。 貫流式の抽出装置では、種子片自体がミセラ中に
浮遊する微粉の濾過剤として機能しており、ミセラの清
澄は保たれるが、浸漬式の抽出装置では、抽出装置上部
にミセラ中の微粉の沈降に配慮した構造となっている。
この溶剤抽出に用いる溶剤としては、菜種粗油の溶剤
抽出にて通常用いられているものであれば、いずれも使
用可能であるが、粗油収量、精製の容易さ、コスト面な
どの点からして、本発明にあっては、ヘキサン、特に、
ノルマルヘキサンが好ましい。
【0026】圧搾および抽出の工程を経て得られた(圧
搾および抽出直後の)粗油は、圧搾および抽出時に混入
した脱脂粕の微粉や水分、さらに水和して析出しはじめ
た水和性ガム質など、非油溶性の夾雑物が懸濁するのみ
ならず、遊離脂肪酸や、モノグリセリド、ジグリセリ
ド、そして、各種の着色物質や有臭成分に、脂質の酸化
生成物など、菜種油の色調や風味、それに菜種油の保存
性を損ねる油溶性の不純物質が混在している。 また、
原料種子に付着した農薬や、汚染物質が粗油に溶解して
いる場合もある。 これら菜種油の品質に悪影響を与え
うる物質を可能な限り除去するために、圧搾および抽出
の工程を経て得られた粗油の精製を行う。
【0027】粗油の精製は、その方法および条件は特に
限定されるものではないが、JAS(日本農林規格)に
定める精製油あるいはサラダ油の規格に適合する程度の
食用油を得るに充分な精製条件であることが望ましい。
好ましくは、本願発明の菜種油の精製工程は、粗油の
脱ガム、脱酸、脱色および脱臭の一連の工程を含む。
【0028】まず、粗油に含まれるガム質を除去するた
めの脱ガム工程を行う。 この工程は、圧搾して得られ
た粗油に関しては必須工程ではなく、溶剤抽出して得た
粗油に対しては効果的に利用できる。 すなわち、溶剤
抽出して得た粗油からガム質が除去されていないと、清
澄な菜種油の取得が難しくなり、菜種油の品質を低下さ
せる原因となる。 この脱ガム工程は、ガム質やリン脂
質を水和するのに必要な量の水、本発明にあっては、約
0.5〜約5%、好ましくは、約1〜約3%の水分に調整
されるように粗油に対して水を加え、撹拌しながら、約
50〜約90℃にまで加熱し、ガム質を水和膨潤させる。
その後、温度を少し下げてガム質成分を集合(凝集)さ
せて後、ガム質と油脂分との比重差を利用して、遠心分
離機などを用いて両者を分離する。 なお、油溶性のガ
ム質は、金属塩の形態になりやすいので、リン酸、酢
酸、シュウ酸またはクエン酸などを、例えば、約0.01〜
約1.0%の濃度で添加することで、水和性ガム質に変化
せしめてから分離することも可能である。
【0029】脱ガム処理した粗油または圧搾油を、次
に、脱酸工程に適用する。 粗油中の遊離脂肪酸(Free
Fatty Acid)の量は、通常、酸価として表現され、この
酸価は、原料の良否、保存状態の適否、採油方法の適否
など、粗油の性状・由来を指し示す指標でもある。 色
調と風味が良好で、劣化の少ない菜種油を得る上で、こ
の脱酸工程(遊離脂肪酸の除去工程)は必須であり、油
脂の精製工程の中で最も重要な工程である。 菜種種子
を対象とする場合、脱ガム処理した粗油または圧搾油
を、まず、約40〜約110℃、好ましくは、約70〜約90℃
に加熱し、次いで、リン酸、酢酸、シュウ酸、クエン酸
などを、例えば、約0.01〜約2.0%の濃度で添加して、
よく撹拌する。 そして、中和量〜100%過剰量のアル
カリをこれに添加し、水層(石けん水層)と油層の分離
ならびに水層(石けん水層)の除去を行う。この作業を
繰り返して油中の遊離脂肪酸の除去を進める。 本発明
で使用可能なアルカリとして、水酸化ナトリウム、水酸
化カリウム、炭酸ナトリウムなどが使用できる。 な
お、前述した脱酸方法の他にも、ゼニスプロセスによる
脱酸や、ミセラ脱酸法なども、本発明にて利用すること
ができる。
【0030】そして、脱酸した粗油(脱酸油)は、吸着
剤を用いた吸着脱色法で処理される。すなわち、この吸
着脱色法とは、粗油に固体微粒子の吸着剤などを添加
し、そして、真空下で加熱攪拌して、粗油中の色素類な
どの不純物を吸着分離するための方法である。
【0031】活性炭や活性白土などを吸着剤として利用
する場合には、約40〜約100℃、好ましくは、約70〜約9
0℃の温度下、大気圧下または減圧下で、約10〜約90分
間、好ましくは、約30〜約60分間、粗油と吸着剤を接触
せしめる。 この吸着処理に用いる吸着剤としては、濾
過助剤的な機能を備えたものであれば特に限定されるも
のではなく、酸性白土、活性白土、活性炭などが使用で
きるが、油の付着損失を最小ならしめる上で、活性白土
が好ましい。 また、吸着剤の添加量は、粗油中の不溶
性物質などの不純物を吸着・回収するに十分な量であっ
て、吸着剤の種類によっても所要量は変化するが、活性
白土の場合には、粗油重量の約0.5重量%以上、好まし
くは、約1〜約5重量%の量の活性白土が使用される。
吸着脱色処理を終えた後、粗油中に混在している吸着
剤、吸着物質、不溶性物質および夾雑物を除去すべく、
例えば、フィルタープレス、密閉型濾過機、完全自動型
濾過機、フンダフィルターなどの加圧濾過、あるいは減
圧濾過や吸引濾過をはじめとする真空濾過などの濾過手
段に粗油を通す。 この濾過処理工程によって、粗油は
脱色され、清澄な油になる。 なお、前述してきた吸着
脱色法に代えて、工業用原料としての動物脂やパーム脂
の脱色に利用されている酸化剤を用いて、着色物質を化
学的に酸化破壊して脱色する化学脱色法を利用すること
もできる。
【0032】なお、必要に応じて、脱色した粗油(脱色
油)の清澄度を高めるために、ウィンタリング処理(脱
ロウ処理)を適用することもできる。
【0033】次に、脱色された粗油(脱色油)を脱臭工
程に適用する。 本発明に好適な脱臭方法として、減圧
水蒸気蒸留法、すなわち、粗油中に含まれているグリセ
リドより揮発性が大きな有臭物質を、減圧下、高温条件
下で揮発性を高めて蒸留除去する方法がある。 この方
法によると、脱色済みの粗油に連続的に反応容器内に水
蒸気が吹き込まれ、そこから発生する水蒸気と共に遊離
脂肪酸をはじめとする臭気成分(臭気物質)が除去され
る。 この減圧水蒸気蒸留法の場合、良好な脱臭効果を
得る観点から、反応容器内の圧力は、約0.5〜約6mmH
g、好ましくは、約2〜約4mmHgとし、また、粗油の油
温を約180〜約280℃、好ましくは、約230〜約270℃に設
定して、約30〜約120分、好ましくは、約60〜約90分間
反応せしめる。粗油に対して吹き込まれる水蒸気の量
は、(真空度または吹き込み水蒸気量に比例する)粗油
と水蒸気との接触効率に依存している。 脱臭効率を上
げるために必要な吹き込み蒸気量は、粗油の流量、油中
揮発蒸留物の量および真空度に比例する反面、操作温度
における揮発蒸留物の蒸気圧と脱臭装置の蒸留効率に反
比例する。 このような粗油と水蒸気との接触効率を向
上させる上で、上記真空度(圧力条件)にあっては、粗
油の重量に対して約0.5〜約6重量%、好ましくは、約
1〜約3重量%の量の水蒸気を吹き込む。 なお、この
水蒸気吹き込みに代えて、主に成分分留の目的で使用さ
れている、高真空下で粗油を蒸留する分子蒸留法など、
当該技術分野で周知のその他の脱臭手段も利用できる。
そして、この脱臭処理を終えて得られた油が、本発明
の菜種油となる。
【0034】なお、この脱臭処理時に、最終製品である
菜種油の品質に嗜好性・多様性を付与すべく、風味安定
剤、消泡剤、酸化防止剤、固化防止剤、脂肪結晶調整
剤、金属キレート剤、色素、ビタミン、香辛料、香料な
ど、通常のサラダ油、天ぷら油、それにクッキングオイ
ルなどに利用されている加工助剤や添加物を適宜任意に
使用できる。
【0035】風味安定剤とは、油脂中に天然に含まれる
抗酸化物質であるトコフェロールの抗酸化作用の補助、
すなわち、金属の酸化促進物質と金属複塩を生成してそ
の酸化促進作用を抑制し、その相互作用によって抗酸化
性を高めるものであり、クエン酸やリンゴ酸などが本発
明において使用できる。 本発明にあっては、例えば、
クエン酸の場合、菜種油の0〜約50重量ppm、好ましく
は、約10〜約20重量ppmの量が用いられる。
【0036】消泡剤とは、油の劣化に伴う泡立ちに対し
て消泡効果を呈するものであり、例えば、シリコン樹脂
がこれに該当し、それによれば、油の熱重合を本質的に
改善して油の酸価・粘度の上昇を抑え、油の消費量を低
減ならしめる熱安定剤としての機能も果たす。 シリコ
ン樹脂を用いる場合、粗油の0〜約6重量ppm、好まし
くは、約2〜約3重量ppmの量で使用される。
【0037】酸化防止剤としては、食品衛生法で使用許
可されている抗酸化物質が使用でき、例えば、グアヤク
脂、ジエチルヒドロキシトリエン(BHT)、ノルジヒドロ
グアヤレチック酸(NDGA)、ブチルヒドロキシアニソール
(BHA)、没食子酸プロピル・クエン酸プロピル、L−ア
スコルビン酸、L−アスコルビン酸−ステアリン酸エス
テル、L−アスコルビン酸−パルミチン酸エステルや、
例えば、ローズマリー抽出物、茶抽出物、甘草抽出物な
どの天然物の抽出物などが使用できる。 また、他の酸
化防止剤として、トコフェロールなどが使用でき、この
場合、粗油の0〜約400重量ppm、好ましくは、約100〜
約200重量ppmの濃度で添加する。
【0038】ここまで説明してきた菜種粗油の化学精製
に代えて、物理精製を利用することも可能である。 す
なわち、スーパーデガミング法やアルコンプロセスのよ
うに、精製処理の前段階や脱ガム工程にて、油溶性のガ
ム質(非水和性リン脂質)の量を減らすことで、前出の
脱酸工程を省くことが可能となり、これによって、蒸留
脱酸法による物理精製法(Physical Refining)に適用
することもできる。
【0039】本明細書で使用する「レシチン」の語は、
食品または食品添加物の分野で慣用的に用いられている
レシチンを総称するものであって、植物油精製時に発生
する油滓(大豆、菜種、コーン、ヒマワリ、パームなど
の植物油精製滓)、大豆、卵黄などの粗原料から調製し
たペースト状のレシチンや、この粗原料を溶剤で分別し
て得た分画レシチン、それにこの粗原料を酵素処理して
得た酵素分解レシチンなど、リン脂質を主成分とした混
合物からなるレシチンを指す。 なお、このリン脂質と
は、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノール
アミン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジル
セリン、ホスファチジン酸や、これらのリゾ体を含むア
シルグリセロ型リン脂質を指す。
【0040】以下に、本発明の食用油に利用するレシチ
ンの製造方法について、大豆レシチンの取得例に沿って
詳述する。
【0041】レシチンの製造は、当該技術分野にて通常
実施されている製造条件であれば、その製造方法および
製造条件は特に限定されるものではないが、好ましく
は、本願発明のレシチンの製造工程は、原料大豆の脱皮
・蒸煮、圧扁、抽出、脱ガムおよび精製の一連の工程を
含む。
【0042】レシチンの原料として用いる大豆として
は、食用に利用できる大豆であれば、国産品・輸入品の
別を問わずに使用できる。
【0043】そしてまず、原料大豆の脱皮を行う。 こ
の脱皮工程は必須工程ではないが、原料大豆からのレシ
チンの抽出効率と収率を向上せしめる観点からすれば、
この工程を行うのが好ましい。 そして、脱皮した大豆
(または脱皮していない大豆)を蒸煮する。
【0044】蒸煮したこれら原料大豆は、次に、圧扁ロ
ール(フレーキングロール:FlakingRoll)と呼ばれるロ
ールに通されて粉砕される。 そして、圧扁した大豆片
を、有機溶剤を用いた化学抽出法に適用して大豆粗油を
得る。 この溶剤抽出に用いる溶剤としては、大豆粗油
の溶剤抽出にて通常用いられているものであれば、いず
れも使用可能であるが、大豆粗油の収量、精製の容易
さ、コスト面などの点からして、本発明にあっては、ヘ
キサン、特に、ノルマルヘキサンが好ましい。
【0045】そして、抽出工程を経て得られた大豆粗油
に含まれるガム質を除去するための脱ガム工程を行う。
この脱ガム工程は、ガム質や大豆リン脂質を水和する
のに必要な量の水、本発明にあっては、約0.5〜約5
%、好ましくは、約2%の水分に調整されるように大豆
粗油に対して水を加え、撹拌しながら、約70〜約80℃に
まで加熱し、ガム質を水和膨潤させる。 その後、温度
を少し下げてガム質成分を集合(凝集)させて後、ガム
質(ガム状レシチン)と油脂層とに分離する。ガム状レ
シチンを、真空下にて低温で乾燥して、約32〜約38%の
油分を含むペースト状の大豆レシチンとする。
【0046】そして、脱ガムして得たペースト状の大豆
レシチン(脱ガムレシチン)に含まれる色素類を除去す
べく、吸着剤を用いてこれを精製処理する。 すなわ
ち、この精製処理とは、脱ガムレシチンに固体微粒子の
吸着剤などを添加し、そして、真空下で加熱攪拌して、
脱ガムレシチンに含まれる色素類などの不純物を吸着分
離するための工程である。 吸着剤としては、濾過助剤
的な機能を備えたものであれば特に限定されるものでは
なく、珪藻土、酸性白土、活性白土、活性炭などが使用
できるが、吸着剤による大豆レシチンの付着損失を最小
ならしめる上で、珪藻土が好適に使用される。
【0047】精製処理を終えた後、大豆レシチンに付着
した吸着剤、吸着物質、不溶性物質および夾雑物をさら
に除去すべく、例えば、フィルタープレス、密閉型濾過
機、完全自動型濾過機、フンダフィルターなどの加圧濾
過、あるいは減圧濾過や吸引濾過をはじめとする真空濾
過などの濾過手段に大豆レシチンを通すこともできる。
この精製処理を経ることで、95%以上のリン脂質含量を
有する(高純度の)ペースト状または粉末状の大豆レシ
チンが得られる。
【0048】精製レシチンの他の処理方法として、(i)
精製した大豆レシチンを、20〜80重量%のエタノールを
含む含水エタノールで洗浄して分別レシチンを得る方
法;(ii)精製した大豆レシチンを、酵素分解処理し、得
られたレシチン分解物をさらに前出の一連の製造・精製
プロセスに適用して、酵素分解レシチンを得る方法;さ
らに、(iii)精製した大豆レシチンを、無水酢酸で化学
修飾せしめて、ヒドロキシル化レシチン、アセチル化レ
シチンまたはサクシニル化レシチンなどを得る方法、な
ども本発明では利用可能である。
【0049】ところで、これまでは、大豆からのレシチ
ンの取得について例示的に述べてきたが、大豆以外に
も、菜種、コーン、ヒマワリ、パーム、卵黄などからも
ほぼ同様の処理工程によって精製レシチンを得ることも
可能である。
【0050】また、市販のレシチンとしては、SLPペー
ストSP(商品名;ツルーレシチン工業株式会社)など
が、本発明において好適に使用できる。
【0051】このようにして得られた菜種油とレシチン
を混合する。 菜種油とレシチンとの配合比率(重量比
率)は、後出の実施例の結果から明らかなように、良好
な流動性と、パーム油と同等の改善された酸化安定性を
備え、かつ風味が豊かな食用油を得るとの観点からし
て、菜種油:レシチン=95:5〜99.5:0.5、好ましく
は、97:3〜99:1の重量比率で混合する。
【0052】ところで、油脂の酸化を促す因子として、
一般に、光、熱、保存期間、酵素などが知られている。
この内、本発明の食用油については、後述する実施例
の記載から明らかな通り、その高いCDM(Conductomet
ric Determination Method)値、光酸化安定性および保
存安定性において性能の改善が実証されている。 従っ
て、本明細書で使用する「酸化安定性」の語は、少なく
ともこれら光酸化安定性と保存安定性を含めた油脂の安
定性を指し示すものである。
【0053】また、本発明の食用油には、最終製品の風
味や食味をさらに改善する目的で、必要に応じて、ショ
糖脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステ
ル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮
合リシノレインエステル、グリセリン脂肪酸エステル、
およびその誘導体等の食用乳化剤、天然香料、合成香
料、動植物抽出エキス、シーズニングオイルなどの呈味
剤を用いることができる。その他に、一般的に使用され
る食品添加物、例えば、トコフェロール、アスコルビン
酸脂肪酸エステル、およびシリコーン樹脂などを用いる
こともできる。 さらに、同様の目的で、本発明の食用
油には、エンジュ抽出物(ルチン)、γ−オリザノー
ル、カテキン、クローブ抽出物、ケルセチン、ゲンチジ
ン酸、ゴシペチン、米糠油不鹸化物、ゼザモリン、セザ
モール、セージ抽出物、糖−アミノ酸加熱複合体、ピメ
ンタ抽出物、ペッパー抽出物、没食子酸、ユーカリ葉抽
出物、ローズマリー抽出物などの酸化防止剤(天然添加
物)なども用いることができる。
【0054】また、本発明の他の好適な実施態様によれ
ば、菜種油とレシチンの他に、本発明の食用油に多様な
風味と流動性を付与する目的で、植物油をさらに配合す
ることができる。 本発明の食用油に配合可能な植物油
としては、当該技術分野で通常用いられている食用の植
物油であればいずれも使用可能であるが、本発明の食用
油に多様な風味と低温域流動性を付与せしめる観点から
すれば、菜種油、サフラワー油、ハイオレイックサフラ
ワー油、オリーブ油、綿実油、コーン油、米油、大豆
油、胡麻油、ヒマワリ油、ハイオレイックヒマワリ油、
落花生油、パーム油、パーム分別油およびこれらの組み
合わせを用いることができる。 菜種油と植物油との配
合比率(重量比率)は、後出の実施例から明らかなよう
に、良好な流動性と改善された酸化安定性を備え、かつ
風味が豊かな食用油を得るとの観点からして、菜種油:
植物油=50:50〜95:5、好ましくは、50:50〜70:30
の重量比率で混合する。
【0055】なお、植物油としてパーム油を利用する場
合には、パーム油としては、ヨウ素価が約60以上のパー
ム油、例えば、パームスーパーオレイン油が好適に使用
できる。 ところで、パーム油を利用する場合には、パ
ーム油の低温域での流動性(固化性)に鑑みて、菜種
油:パーム油=70:30〜95:5、好ましくは、80:20〜
90:10の重量比率で混合する。
【0056】これら一連の製油プロセスを経て得られる
本発明の食用油は、缶、ガラス瓶、プラスチック、紙な
どの公知の食用油用の収納容器に充填・収容される。
【0057】このようにして得た本発明の食用油は、各
種食品、特に、製菓用のスプレー油(油脂)として好適
に利用できる。 本発明の食用油が塗布(噴霧)可能な
食材として、米菓・スナックなどの菓子用生地(製菓材
料)や、生麺などの麺類がある。 このように、本発明
の食用油は、パーム油またはパーム調合固型スプレー油
と同等もしくは同等以上の酸化安定性を有し、また、焼
き米菓、スナック菓子などの風味を良好ならしめ、さら
に、麺のほぐれ性をも改善できるのである。
【0058】そして、本発明の他の好適な実施態様によ
れば、本発明の食用油と食用塩、好ましくは、塩化ナト
リウム含量が99%以下の食用塩がさらに塗布されてなる
食品、特に、焼き米菓やスナック菓子が提供される。
焼き米菓には、大別して、生地を焼き上げた後に醤油ダ
レを付ける醤油味の米菓と、焼き上げた生地に食用塩を
振りかけたサラダ味の米菓があり、サラダ味の米菓の場
合、油が塗布されることも多い。 ところが、これら焼
き米菓に食用塩を適用する(振りかける)と、食用塩に
含まれる塩化マグネシウム、塩化カリウム、硫酸マグネ
シウムや鉄分などのミネラル分が、米菓に浸透・付着し
て油脂の酸化を促すため、このようなミネラル分を多く
含む食用塩を使用した焼き米菓では、保存安定性が悪
く、また、焼き米菓の賞味期間が短くなるなどの弊害が
知られている。
【0059】ところで、食用塩は、料理の味付け(調
味、風味の強化・改善)のみならず、食品加工や食品貯
蔵など実に様々な場面で利用されている。 わが国にお
いて、食用塩は、食品添加物ではなく、食品として扱わ
れており、塩専売法の対象にもなっている。 同法の適
用対象となる食用塩とは、塩化ナトリウムが40%以上含
まれているものと定義されており、この定義は、食用
塩、工業用塩、輸入塩などの区別なく適用される。 ま
た、わが国においては、合法的に購入した専売塩を原料
にして特殊用塩を製造および販売することを認める制度
もあり(特殊用塩制度)、これまでに多種多様な特殊用
塩が製造・流通している。 食用の特殊用塩には、大別
して、香辛料、にがり、食用添加物、ごま、昆布などが
混入された塩と、真空式製塩法以外の製塩法によって得
られた塩(平釜塩とも称される)とがある。
【0060】本明細書で使用する「食用塩」の語は、前
出の専売塩と特殊用塩とを包括的に総称するものであっ
て、専ら、食用に供することができる、食塩、並塩、原
塩、粉砕塩、平釜塩、天日塩などの食用塩などを指す。
本発明の好適な実施態様によれば、本発明は、塩化マ
グネシウム、塩化カリウム、硫酸マグネシウム、鉄分な
どの天然ミネラルを含む食用塩、好ましくは、塩化ナト
リウム含量が99%以下、好ましくは、60〜99%の食用塩
を利用する。 このような食用塩として、ミネラル分に
富んだ自然塩、例えば、天塩(商品名;赤穂化成株式会
社)や伯方の塩(商品名;伯方塩業株式会社)などが、
本発明において好適に利用することができる。
【0061】このような食用塩の使用量は、本発明の食
用油による風味と相乗的に豊かな風味を醸しだし、また
良好な食味を食品に付与せしめる観点からして、塗布し
ようとする食材の重量の0.1〜2重量%、好ましくは、
0.5〜1重量%の量とする。これら食用塩を、本発明の
食用油を塗布した食材に対してさらに塗布することで、
特に、米菓(せんべいなど)やスナック菓子の風味の改
善を促す。
【0062】
【実施例】以下に、本願発明の実施例を具体的に説明す
るが、本願発明はこれら実施例の開示によって限定的に
解釈されるべきものではない。
【0063】実施例1:レシチン含量の検討 パイオニア・ハイブレッド社(米国)から入手したキャ
ノーラ種子、すなわち、Canola 46A40(キャノーラ 46A
40)を圧搾処理して、1kgの菜種粗油を得た。
【0064】次に、この菜種粗油(1kg)を80℃の温度
にまで加熱し、そして、20gの水を加えた。 加水した
菜種粗油を30分間撹拌して、粗油中のガム質を水和膨潤
させ、次いで、菜種粗油を、遠心分離機にかけて遠心分
離(4000rpm、20分間)を行って、ガム質を分離・除去
した。
【0065】脱ガム処理した菜種粗油を、次に、脱酸処
理した。 すなわち、脱ガム処理した菜種粗油を、70℃
の温度にまで加熱し、そして、加熱した菜種粗油に、菜
種粗油の0.1重量%の量の75%リン酸水溶液と、中和相
当量(または50%過剰量)の18度ボーメの水酸化ナトリウ
ムを加えた。 次に、この菜種粗油を30分間撹拌した後
に水洗を行った。 なお、菜種粗油の水洗作業は、水洗
液(水)が中性になるまで継続した。
【0066】脱酸した粗油(脱酸油)に、活性白土30g
(白土量3重量%/脱酸油g)を添加し、真空下、80℃
で、30分間加熱攪拌して、脱酸油と吸着剤を接触せしめ
て、脱酸油中の不純物を吸着分離して脱色した。
【0067】次に、250℃に加熱された脱色済の粗油を
収容した2l容の反応容器(反応容器内の圧力:2Tor
r)に、90分間、水蒸気を吹き込んだ。 そして、最後
に、脱酸油に対して20ppmのクエン酸を添加した。
【0068】このようにして得た本実施例での菜種油の
脂肪酸組成を、基準油脂分析法 (2.4.2.1-脂肪酸組成(F
ID恒温ガスクロマトグラフ法)、基準油脂分析試験法
(I)、日本油化学会制定、1996年版、社団法人日本油化
学会)に従って、水素炎イオン化検出器(FID)を具備し
た恒温ガスクロマトグラフィー(GC-14A、株式会社島津
製作所)を利用して、メチルエステルの形態で脂肪酸を
分離・定量することで測定した。 その結果を、以下の
表1に示した。 表1に示した脂肪酸組成の分析結果か
ら、前出の菜種油は、オレイン酸含量が高く、かつリノ
レン酸含量が低いという特徴のある脂肪酸組成を有して
いたので、これを「H.O.L.L.キャノーラ油 (High Oleic
Acid-Low Linolenic Acid Canola Oil)」と称すること
にし、後続の実施例でも使用することとした。 なお、
比較の目的で、市販の菜種油(ゴールデン菜種白絞油、
吉原製油株式会社;以下、単に「市販菜種油」と称す
る)と、市販の大豆油(ゴールデン大豆白絞油、吉原製
油株式会社)の脂肪酸組成も同様にして決定し、その結
果を表1に並記した。
【0069】
【表1】
【0070】H.O.L.L.キャノーラ油と、レシチン(SLP
ペーストSP(商品名)、ツルーレシチン工業株式会社;
以下、単に「市販レシチン」と称する)とを、以下の表
2に記載の重量比率(H.O.L.L.キャノーラ油の重量に基
づく重量%)で混合して、レシチンを含む6種類の食用
油(食用油1〜6;各2kg)を得た。 なお、対照とし
て、レシチンを含まないH.O.L.L.キャノーラ油(対照食
用油;2kg)を準備した。
【0071】そして、サンプル油(食用油1〜6および
対照食用油)に関して、CDM値も測定した。 このC
DM値は、基準油脂分析法 (2.5.1.2-CDM試験、基準
油脂分析試験法(I)、日本油化学会制定、1996年版、社
団法人日本油化学会)で指示されたCDM値測定システ
ム(その概略を図1に示した)によって測定した。すな
わち、サンプル油(3g)を反応容器3に仕込み、そし
て、空気吹き込み管4を容器3に接続した。 測定容器
5にイオン交換水50mlを入れ、電極を設定して、記録計
7の記録紙のベースラインを合わせた。 そして、恒温
槽2を120℃に調整した。 反応容器3を恒温槽2に入
れ、測定容器5に接続した。 10分間放置した後に、空
気流量計1で流量制御された空気を20 L/hrで吹き込
み、導電率の測定を開始した。 そして、電導度測定セ
ル6で計測された導電率の測定値が300μS/cmに至った
時点で、測定を終了した。 測定データから、測定開始
から導電率が急激に変化する変曲点に至るまでに要した
時間を求め、これをCDM値(hr)とした。 このCDM
値は、数値が大きいほど、サンプル油の酸化安定性が大
きいことを示すものであり、その測定結果も併せて表2
に示した。
【0072】同時に、7名の熟練したパネラーによって
各サンプル油の風味について官能評価を行った。 風味
の評価方法は、各サンプル油についてレシチン臭を評価
してもらい、食用油として許容できる風味であるか否か
について判断してもらい、許容者数を出した。 CDM
値(hr)の測定値と官能評価の結果を、以下の表2に示し
た。
【0073】
【表2】
【0074】表2に記載の結果から、レシチン濃度の増
大に伴いCDM値は改善されるものの、レシチン濃度が
7重量%以上になると、レシチン臭が強くなり、食用油
の風味の低下が明確に認められた。 また、レシチン濃
度が7重量%以上になると、食用油へのレシチンの分散
性(溶解性)の低下も認められた。 これらから、良好
な食用油の風味を維持する上で、H.O.L.L.キャノーラ油
の重量当たり、約0.5〜約5重量%、好ましくは、約0.5
〜約1重量%のレシチン含量が好適であることが明らか
となった。
【0075】実施例2:食用油の性能の検討(酸化安定
性/光酸化安定性) 本発明の食用油の酸化安定性と光酸化安定性について検
討を行った。
【0076】H.O.L.L.キャノーラ油と市販レシチンと
を、99:1の重量比率で混合して本発明の食用油(本発
明油1:2kg)を調製した。 なお、対照として、市販
レシチンに、市販の菜種油(ゴールデン菜種白絞油、吉
原製油株式会社;以下、単に「市販菜種油」と称す
る)、市販の米油(米サラダ油、築野食品工業株式会
社;以下、単に「市販米油」と称する)、市販のコーン
油(ゴールデンサラダ油コーン、吉原製油株式会社)ま
たは市販のパーム油(オパレスコSO、吉原製油株式会
社;以下、単に「市販パーム油」と称する)を、1:99
の重量比率で混合して得た、4種類の食用油(各2kg)
も準備した(対照油1〜4)。
【0077】まず、小麦粉を原料としたスナック生地
(100個;各100g)を準備し、これらを、90℃で、1時
間かけて乾燥した。 これら乾燥スナック生地の各々
に、5種類のサンプル油(本発明油1および対照油1〜
4)のいずれか1つを塗布(スプレー)した。 なお、
油脂の塗布量は、乾燥スナック生地重量の15重量%の量
とした。
【0078】各サンプル油の酸化安定性を決定すべく、
サンプル油のいずれか1つがスプレーされた5つのスナ
ック生地(各100g)を、1000ml容ビーカーに個別に入
れて、55℃に設定された暗所に置いた。 そして、各ス
ナック生地について、その過酸化物価を、経日的に、基
準油脂分析法 (2.5.2-過酸化物価、基準油脂分析試験法
(I)、日本油化学会制定、1996年版、社団法人日本油化
学会)に従って測定した。すなわち、サンプル油にヨウ
化カリウムを加えた際に遊離した、サンプル油1kg当た
りのヨウ素のミリ当量数 (meq/kg)を求めた。 なお、
本明細書の実施例における過酸化物価の測定は、すべて
この方法によったものである。 併せて、熟練したパネ
ラー8名によって各スナック生地の風味について官能評
価を行った。
【0079】風味の評価方法は、4段階(++:良好な風
味、+:風味やや低下、−:風味低下、×:変敗臭発
生)で評価して、その平均的な意見をとりまとめた。
また、過酸化物価(meq/kg)が、30meq/kgになるまでに要
する日数(POV30)も決定した。
【0080】並行して、各サンプル油の光酸化安定性を
決定すべく、いずれか一つのサンプル油がスプレーされ
た5つのスナック生地(各100g)を、透明な袋に個別
に入れて、すべての袋を、25℃に保たれた室内で、蛍光
灯下に置き、1000ルクスの光を照射し続けた。 そし
て、各スナック生地の過酸化物価を、経日的に、測定し
た。また、熟練したパネラー8名によって各スナック生
地の風味について官能評価を行った。 風味の評価方法
は、4段階(++:良好な風味、+:風味やや低下、−:
風味低下、×:変敗臭発生)で評価して、その平均的な
意見をとりまとめた。また、過酸化物価(meq/kg)が、30
meq/kgになるまでに要する日数(POV30)も測定した。
これら過酸化物価の測定値と官能評価の結果を、以下の
表3に示した。
【0081】
【表3】
【0082】表3に記載の結果から、本発明油1は、対
照油1〜3と比較して、酸化安定性、特に、光酸化安定
性に優れ、また良好な風味が長く維持されていることが
認められた。 なお、対照油4は、本発明油1と同等の
酸化安定性を有しているが、本発明油1からして光酸化
安定性に劣り、また、対照油4は固型脂であるため取り
扱いが不便であった。
【0083】実施例3:食用油のさばき油への応用 H.O.L.L.キャノーラ油と市販レシチンとを、99:1の重
量比率で混合して本発明の食用油(本発明油(前出の食
用油2):2kg)を調製した。 また、市販菜種油も準
備した。
【0084】まず、市販の焼きそば用の麺(1玉150
g)を水洗いし、そして水切りした後に、麺に、本発明
油または市販菜種油を塗布した。 なお、油脂の塗布量
は、乾燥麺重量の1重量%の量とした。
【0085】そして、加熱したフライパンに敷油として
5ccのサラダ油をひき、本発明油または市販菜種油が塗
布された麺をフライパン上に置いた。 7名の熟練した
パネラーによって、フライパン上での麺の調理時の麺の
ほぐれ具合、麺のフライパンへの付着具合について官能
評価を行った。 その結果、7名全員のパネラーが、本
発明油を塗布した麺の方が麺のほぐれが良好であると判
定した。 また、市販菜種油が塗布された麺はフライパ
ンへの付着が甚だしく、調理しづらかったのに対して、
本発明油を塗布した麺ではフライパンへの付着が若干認
められたものの、調理自体は円滑に行えた。
【0086】このように、本発明油は、麺のさばき油と
して非常に有用であることが明らかとなったのである。
【0087】実施例4:植物油の利用 H.O.L.L.キャノーラ油、市販米油、それに市販レシチン
とを、表4に記載の重量比率で混合して5種類の本発明
の食用油(食用油7〜11:各2kg)を調製した。各食用
油に関するCDM値を、油脂の加熱温度を100℃に設定
して、前出の基準油脂分析法に従って測定した。
【0088】次に、小麦粉を原料としたスナック生地
(100個;各100g)を準備し、これらを、90℃で、1時
間かけて乾燥した。 これら乾燥スナック生地の各々
に、5種類のサンプル油のいずれか一つを塗布(スプレ
ー)した。 なお、油脂の塗布量は、乾燥スナック生地
重量の15重量%の量とした。 同時に、熟練したパネラ
ー7名によって、得られたスナック菓子の風味について
官能評価を行った。 風味の評価方法は、各スナック菓
子にて、米油の風味を感じなかった人数(判定者数)を
出した。 つまり、判定者数が多いほど、風味がより淡
白であることを意味している。 CDM値(hr)の測定値
と官能評価の結果を、以下の表4に示した。
【0089】
【表4】
【0090】表4に記載の結果から、市販米油を10重量
%以上配合することで、米油独特の風味が現れることが
明らかとなった。 一方で、植物油(米油)の配合比率
が高くなるに伴い食用油全体の酸化安定性が低下する傾
向も認められた。 また、植物油の中でも比較的酸化安
定性が高いパーム油のCDM値(hr)なども考慮すると、
本発明の食用油での植物油の配合比率は50重量%以下、
好ましくは、30〜50重量%とするのが望ましいと考えら
れる。
【0091】さらに、H.O.L.L.キャノーラ油:市販米
油:レシチン=50:49:1の重量比率で配合した食用油
9と、市販米油:レシチン=99:1の重量比率で配合し
た対照の食用油(対照油)とを準備した。 そして、小
麦粉を原料としたスナック生地(100個;各100g)を、
90℃で、1時間かけて乾燥して得た乾燥スナック生地
に、食用油9または対照油のいずれか一方を塗布(スプ
レー)した。 そして、各スナック生地の風味について
12名の熟練したパネラーに官能評価を行ってもらい、良
好な風味を呈するスナック生地を選択してもらった。
その結果、食用油9を塗布したスナック生地を選択した
パネラーが7名、対照油を塗布したスナック生地を選択
したパネラーが5名であった。 このように、本発明の
食用油にH.O.L.L.キャノーラ油を組み込むことによっ
て、食品の風味改善が認められた。
【0092】実施例5:植物油を含む食用油の酸化安定
性の検討 植物油を配合した本発明の食用油の酸化安定性を検討し
た。
【0093】H.O.L.L.キャノーラ油、市販米油および市
販レシチンとを、50:49:1の重量比率で混合して本発
明の食用油(本発明油2:2kg)を調製した。 なお、
対照として、市販パーム油、市販米油、市販菜種油およ
び市販レシチンとを、50:30:19:1の重量比率で混合
して対照の食用油(対照油5:2kg)を調製した。
【0094】まず、小麦粉を原料としたスナック生地
(100個;各100g)を準備し、これらを、90℃で、1時
間かけて乾燥した。 これら乾燥スナック生地に、本発
明油2または対照油5のいずれか一方を塗布(スプレ
ー)した。 なお、油脂の塗布量は、乾燥スナック生地
重量の15重量%の量とした。
【0095】本発明油2または対照油5のいずれか一方
がスプレーされた各スナック生地(各100g)を、1000ml
容ビーカーに個別に入れて、55℃に設定された暗所に置
いた。そして、各スナック生地の過酸化物価を、経日的
に、測定した。 併せて、熟練したパネラー8名によっ
て各スナック生地の風味について官能評価を行った。風
味の評価方法を、4段階(++:良好な風味、+:風味や
や低下、−:風味低下、×:変敗臭発生)で評価して、
その平均的な意見をとりまとめた。 また、過酸化物価
(meq/kg)が、30meq/kgになるまでに要する日数(POV30)
も測定した。
【0096】さらに、H.O.L.L.キャノーラ油、市販コー
ン油および市販レシチンとを、50:49:1の重量比率で
混合して食用油(本発明油3:2kg)を調製した。 ま
た、H.O.L.L.キャノーラ油と市販レシチンとを、99:1
の重量比率で混合して食用油(本発明油4(前出の食用
油2):2kg)も調製した。 これら、本発明油2、本
発明油3、本発明油4および対照油5のCDM値を、油
脂の加熱温度を100℃に設定して、前出の基準油脂分析
法に従って測定した。 過酸化物価(meq/kg)とCDM値
(hr)の測定値、それに官能評価の結果を、以下の表5に
示した。
【0097】
【表5】
【0098】表5に記載の結果から、本発明油2〜4の
いずれも酸化安定性に優れ、また、対照油5との比較に
おいて、本発明油2は良好な風味が長く維持されている
ことが認められた。
【0099】なお、表5に記載の結果において、本発明
油3と対照油5のCDM値はほぼ同値であるが、対照油
5のCDM値は専らそこに配合された(高CDM値の)
パーム油に依るものであって、本発明油3での構成油種
の有機的な配合バランスによって導かれたCDM値とは
その本質を異にするものである。 一般に、パーム油は
高いCDM値を有しているが、先述したように、流動性
(特に、低温域での流動性)の面で難点が指摘されてい
る。 つまり、表5に記載の結果は、本発明油3が液油
でありながらも、固型スプレー油(対照油5)と同等の
CDM値を実現していることを示唆するに他ならない。
【0100】実施例6:パーム油の検討 本発明の食用油に取り込むパーム油について検討を行っ
た。 ヨウ素価の異なる3つのパーム油(パームスーパ
ーオレイン油)を準備した。 すなわち、ヨウ素価が、
61.6、65.0および67.0のパームスーパーオレイン油を準
備した。
【0101】準備した各パーム油について、まず、上昇
融点(℃)を、基準油脂分析法 (3.2.2.2.融点(上昇融
点)、基準油脂分析試験法(I)、日本油化学会制定、199
6年版、社団法人日本油化学会)に従って測定した。
その結果、ヨウ素価 61.6のパーム油(パーム油I)の
上昇融点は15.7℃、ヨウ素価 65.0のパーム油(パーム
油II)の上昇融点は12.5℃、そして、ヨウ素価 67.0の
パーム油(パーム油III)の上昇融点は12.0℃であっ
た。
【0102】次に、各パーム油とH.O.L.L.キャノーラ油
とを、表6に記載の重量比率で配合した食用油(食用油
12〜17)を調製した。 そして、これら各食用油の曇点
(℃)を、基準油脂分析法 (2.2.7.曇り点、基準油脂分
析試験法(I)、日本油化学会制定、1996年版、社団法人
日本油化学会)に従って測定した。 その結果を、以下
の表6に示した。
【0103】
【表6】
【0104】表6に記載の結果から、パーム油I〜III
のいずれのパーム油を用いても曇点が氷点下になる配合
(食用油14〜17)を選択し、これらについて低温域流動
性(耐寒性)の試験を行った。 すなわち、各食用油
(200g)を300ml容ビーカーに入れ、5℃に設定された
恒温恒湿機(PLATINOUS Eシリーズ;株式会社田葉井製
作所)内に置いた。 そして、試験開始後、1、2、
3、4および7日目に、各食用油の流動性を、5段階
(5:完全固化、4:ほぼ固化しているが、若干の流動
性有り、3:白濁が認められる、2:若干の白濁が認め
られる、1:完全に透明)にて評価を行った。 これら
流動性の評価結果を、以下の表7に示した。
【0105】
【表7】
【0106】表7に記載の結果から、本発明の食用油に
パーム油を利用する場合、良好な流動性を維持する観点
からすれば、パーム油の使用比率(重量比率)を30重量
%以下に止め、また、なるべくヨウ素価の高いパーム油
を選択するのが望ましいことが明らかとなった。
【0107】実施例7:食用塩添加食品 本発明の食用油と食用塩を利用してスナック菓子を調製
した。
【0108】まず、H.O.L.L.キャノーラ油と市販レシチ
ンとを、99:1の重量比率で混合して、実施例2に記載
の本発明油1(2kg)を調製した。 なお、対照とし
て、市販パーム油、市販コーン油および市販レシチンと
を、60:39:1の重量比率で混合してなる食用油(対照
油6:2kg)を調製した。
【0109】まず、小麦粉を原料としてなるスナック生
地(100個;各100g)を準備し、これらを、90℃で、1
時間かけて乾燥した。 これら乾燥スナック生地に、本
発明油1または対照油6のいずれか一方を塗布(スプレ
ー)した。 なお、油脂の塗布量は、乾燥スナック生地
重量の15重量%の量とした。 次いで、油脂が塗布され
た乾燥スナック生地に、乾燥スナック生地重量の0.5重
量%または1重量%の量の天塩(商品名;赤穂化成株式
会社)をさらに振りかけた。
【0110】次いで、油脂と天塩が塗布された各スナッ
ク生地(各100g)を、1000ml容ビーカーにそれぞれ入
れて、55℃に設定された暗所に置いた。 そして、各ス
ナック生地についての過酸化物価を、経日的に測定し
た。 併せて、熟練したパネラー8名によって各スナッ
ク生地の風味について官能評価を行った。 風味の評価
方法は、4段階(++:良好な風味、+:風味やや低下、
−:風味低下、×:変敗臭発生)で評価して、その平均
的な意見をとりまとめた。 また、過酸化物価(meq/kg)
が、30meq/kgになるまでに要する日数(POV30)も測定し
た。
【0111】これら過酸化物価の測定値と官能評価の結
果を、以下の表8に示した。
【0112】
【表8】
【0113】表8に記載の結果から、本発明油1によれ
ば、油脂の酸化を促すミネラル分に富んだ風味良好な食
用塩を食材(スナック生地)に添加しても、油脂の酸化
安定性が高く、また良好な風味が長く維持されているこ
とが認められた。 このように、本発明の食用油とミネ
ラル分に富んだ自然塩(天塩)をスナック生地に塗布す
ることで、風味良好で、ミネラル分に富んだスナック菓
子が得られたのである。
【0114】
【発明の効果】これまで実証してきた通り、本発明の食
用油によると、所期の目的であった、良好な流動性と、
パーム油と同等以上の改善された酸化安定性を備え、か
つ風味が豊かな食用油が実現される。 すなわち、本発
明によると、各種食品用の塗布油脂(スプレー油脂)、
特に、製菓用スプレー油として好適な食用油が液油とし
ても提供できるのである。
【0115】油脂は三大栄養素の一つであり、栄養源と
しても、また、エネルギー源としても重要な位置を占め
ていることからして、本発明の食用油が、人類の豊かな
食生活の構築に役立つものと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 CDM値測定システムの概略図である。
【符号の説明】
1 …… 空気流量計 2 …… 恒温槽 3 …… 反応容器 4 …… 空気吹き込み管 5 …… 測定容器 6 …… 電導度測定セル 7 …… 記録計
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 白砂 尋士 兵庫県西宮市今津巽町8番8号 吉原製油 株式会社研究開発室内 (72)発明者 西村 浩 兵庫県西宮市今津巽町8番8号 吉原製油 株式会社研究開発室内 Fターム(参考) 4B014 GE02 GG03 GG14 GL01 GP20 4B026 DC01 DC04 DG04 DG20 DH05 DX01

Claims (12)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 菜種油およびレシチンを含む食用油であ
    って、前記菜種油が、キャノーラ(Canola)種に属する菜
    種種子から得られた菜種油であって、該菜種油の全脂肪
    酸組成が、70重量%〜85重量%のオレイン酸および0.5
    重量%〜5重量%のリノレン酸を含む、ことを特徴とす
    る菜種油およびレシチンを含む食用油。
  2. 【請求項2】 前記全脂肪酸組成が、1重量%〜5重量
    %のパルミチン酸をさらに含む請求項1に記載の食用
    油。
  3. 【請求項3】 前記菜種種子が、Canola 46A40(キャノ
    ーラ 46A40)の菜種種子である請求項1または2に記載
    の食用油。
  4. 【請求項4】 前記レシチンが、植物油精製油滓、大豆
    または卵黄に由来し、かつペースト状レシチン、酵素分
    解レシチン、分画レシチンおよびこれらの組み合わせか
    らなるグループから選択されたレシチンである請求項1
    乃至3のいずれかに記載の食用油。
  5. 【請求項5】 前記菜種油とレシチンの配合比率が、菜
    種油:レシチン=95:5〜99.5:0.5の重量比率である
    請求項1乃至4のいずれかに記載の食用油。
  6. 【請求項6】 前記食用油が、植物油、すなわち、菜種
    油、サフラワー油、ハイオレイックサフラワー油、オリ
    ーブ油、綿実油、コーン油、米油、大豆油、胡麻油、ヒ
    マワリ油、ハイオレイックヒマワリ油、落花生油、パー
    ム油、パーム分別油およびこれらの組み合わせからなる
    グループから選択される植物油をさらに含む請求項1乃
    至5のいずれかに記載の食用油。
  7. 【請求項7】 前記菜種油と植物油の配合比率が、菜種
    油:植物油=50:50〜95:5の重量比率である請求項6
    に記載の食用油。
  8. 【請求項8】 前記菜種油とパーム分別油の配合比率
    が、菜種油:パーム油=70:30〜95:5の重量比率であ
    る請求項6に記載の食用油。
  9. 【請求項9】 請求項1乃至8のいずれかに記載の食用
    油を食材に塗布して得られたことを特徴とする食品。
  10. 【請求項10】 前記食品が、塩化ナトリウム含量が99
    %以下の食用塩がさらに塗布されてなる食品である請求
    項9に記載の食品。
  11. 【請求項11】 前記食品が、焼き米菓またはスナック
    菓子である請求項10に記載の食品。
  12. 【請求項12】 前記食用塩の量が、前記食材の0.1〜
    2重量%の量である請求項10または11に記載の食品。
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