JP2000119806A - 冷間加工性に優れた鋼線材およびその製造方法 - Google Patents

冷間加工性に優れた鋼線材およびその製造方法

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JP2000119806A JP28702398A JP28702398A JP2000119806A JP 2000119806 A JP2000119806 A JP 2000119806A JP 28702398 A JP28702398 A JP 28702398A JP 28702398 A JP28702398 A JP 28702398A JP 2000119806 A JP2000119806 A JP 2000119806A
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Hideo Hatake
英雄 畠
Hiroshi Kako
浩 家口
Mamoru Nagao
護 長尾
Koichi Makii
浩一 槙井
Hiroshi Momozaki
寛 百▲崎▼
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Kobe Steel Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 熱間圧延ままであっても優れた冷間加工性を
有する鋼線材、およびその様な鋼線材を製造する為の有
用な方法を提供する。 【解決手段】 C:0.03〜0.8%を含むと共に、
線材中の結晶粒径が表面側で小さく、中心側で大きい鋼
線材において、表面からの深さが線径の5〜30%まで
の領域を表面層としたとき、該表面層の平均粒径が5μ
m以下であると共に、前記表面層のうち最表面から0.
3〜0.4mm深さ位置を最表面層としたとき、該最表
面層の平均粒径が2μm以上であり、且つ前記表面層よ
り内部の平均粒径が10μm以下である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、冷間鍛造、冷間圧
延、冷間転造等の冷間塑性加工によって、機械構造物を
製造する際に使用する鋼線材、およびその様な鋼線材を
製造する為の方法に関するものであり、殊に冷間加工前
の熱処理を省略しても良好な冷間加工性を発揮し、或い
は熱処理を行なった場合には熱処理後の冷間加工性を更
に向上させることのできる鋼線材、およびこの様な鋼線
材を製造することのできる有用な方法に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】低中炭素鋼線材や低中炭素合金鋼線材等
は、機械構造用鋼として軸類、ボルト、ナット等の製造
に広く用いられている。これらの鋼線材は、冷間鍛造、
冷間圧延、冷間転造等の冷間塑性加工によって製造され
ているが、その際にまず変形抵抗が低いことが要求され
る。これは変形抵抗が低い程加工治具の長寿命化が図れ
るからである。
【0003】その一方で、鋼線材には高い延性が求めら
れている。そして高い加工率で部品を製造する際には、
延性が低いと表面からクラックが生じて割れが発生する
ことになる。こうした不都合を避ける為に、従来では焼
鈍熱処理や球状化熱処理によって、変形抵抗を下げると
同時に延性を高める方法が採用されてきた。しかしなが
ら、こうした熱処理を行なうことは、それだけ時間がか
かり、エネルギーを大きく消費するという問題があっ
た。
【0004】鋼線材の熱間圧延工程で変形抵抗を下げる
ことは可能であり、こうした技術として例えば特公昭6
1−15129号には、圧延後の冷却速度を遅くするこ
とによって、圧延ままの変形抵抗を下げる技術が提案さ
れている。しかしながら、冷却速度を遅くすると結晶粒
の粗大化が発生して、却って延性が低下すると言う問題
が生じる。
【0005】ところで延性と変形抵抗は、結晶粒径と相
関関係があることが知られている。そして延性を評価す
る尺度として、引張り試験時の破断歪みをεT 、変抵抗
の評価尺度としての降伏応力をσy としたとき、結晶粒
とこれらの関係は下記(1)式および(2)式の様に表
せることが知られている(F.B.Pickering "Towards imp
roved toughness and ductility ",Climax Molybdenium
Co.Symp.,Kyoto,1971,9)。 εT=1.4-2.9 %C+0.20%Mn+0.61%Si-2.2%S-3.9%P-0.25%Sn+0.017d-1/2 …(1) σy[MPa]=15.4(3.5+2.1%Mn+5.4%Si+23√%N+1.13d-1/2 …(2) 但し、%は各成分の質量%、dはフェライト粒径を示
す。
【0006】上記式から分かる様に、粒径dを小さくす
ると破断歪みεT が大きくなり延性が向上するが、降伏
応力σy も大きくなってしまう為、変形抵抗も大きくな
ってしまう。また粒径をd大きくすると、逆の関係が成
立する。上記(1),(2)式は、低炭素鋼にするもの
であるが、粒径dと破断歪みεT ,降伏応力σy との関
係の傾向は中炭素鋼でも同様である。この様に、圧延ま
まで変形抵抗を低下させることと、延性を向上させるこ
とは互いに相反する課題であり、両特性を両立させるこ
とは困難な技術であった。
【0007】こうしたことから、例えば特開平05−3
39676号、同05−339677号等では、表面付
近のみ10μm以下の微細なフェライト+パーライト組
織とする技術が紹介されている。しかしながら、この様
な鋼線材では表層微細層の平均粒径が10μmに近いと
十分な延性が得られず、また表層微細層以外の領域での
粒径が10μm以上であるので、中心に穴開け加工する
様な冷関加工で割れが発生するという問題があった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明はこうした状況
の下になされたものであって、その目的は、熱間圧延ま
まであっても優れた冷間加工性を有する鋼線材、および
その様な鋼線材を製造する為の有用な方法を提供するこ
とにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成し得た
本発明とは、C:0.03〜0.8%を含むと共に、線
材中の結晶粒径が表面側で小さく、中心側で大きい鋼線
材において、表面からの深さが線径の5〜30%までの
領域を表面層としたとき、該表面層の平均粒径が5μm
以下であると共に、前記表面層のうち最表面から0.3
〜0.4mm深さ位置を最表面層としたとき、該最表面
層の平均粒径が2μm以上であり、且つ前記表面層より
内部の平均粒径が10μm以下である点に要旨を有する
鋼線材である。尚本発明の鋼線材は基本的にフェライト
とパーライトとの組織からなるものであり、上記「結晶
粒径」とはこの組織の結晶粒径を意味する。また本発明
の鋼線材は、その後冷間加工されることを前提とするも
のであり、従ってその線径は3mm以上のものを想定し
たものである。
【0010】上記した本発明の鋼線材における具体的な
化学成分組成としては、Si:0.01〜0.5%、M
n:0.05〜2%、Al:0.01〜0.08%を夫
々含むと共に、P:0.03%以下(0%を含む)、
S: 0.03%以下(0%を含む)およびN :0.07
%以下(0%を含む)に夫々抑制したものが挙げられ
る。
【0011】また本発明の鋼線材においては、必要によ
って、(1)Cr:1%以下(0%を含まない)、M
o:1%以下(0%を含まない)およびB:0.002
5%以下(0%を含まない)よりなる群から選択される
1種以上、(2)Ti:0.2%以下(0%を含まな
い)、V:0.2以下(0%を含まない)、Nb:0.
2%以下(0%を含まない)およびZr:0.2%以下
(0%を含まない)よりなる群から選択される1種以
上、等を含有させることも有効であり、これによって鋼
線材の特性を更に向上させることができる。
【0012】一方、本発明の鋼線材を製造するには、熱
間仕上げ圧延において、表面温度が900℃以上の温度
から、線材中心温度を850℃以上に保ったままで、線
材表面を50℃/秒の冷却速度で(Ar1 −150℃)
〜(Ar1 −50℃)の温度範囲まで一旦冷却し、更に
表面温度を(Ac1 +50℃)〜(Ac1 +150℃)
にした後、25%以上の減面率で仕上がり温度を表面温
度で950℃以下で1回以上圧延する様にすれば良い。
【0013】尚本発明における平均粒径は、線材断面を
研磨・エッチングして光学顕微鏡または走査型電子顕微
鏡(SEM)によって観察される組織において、フェラ
イトおよびパーライトのノジュールサイズの大きさを切
断法を用いて測定して得られたものである。この平均粒
径とは、(深さ方向に100μm×この深さ方向に垂直
な方向に250μm)の領域を、5視野以上観察して測
定した平均の粒径を指す。また最表面の平均粒径は、線
材表面から0.3mmの深さを中心とした(深さ方向に
100μm×この深さ方向に垂直な方向に250μm)
の領域で、上記方法によって測定した値である。ここで
線材表面から0.3mmの深さを最表面としたのは、こ
れよりも浅い部分では脱炭により正常な組織になってい
ない場合があるからである。更に、平均粒径が5μmと
なる深さは、上記方法によって測定した平均の粒径が5
μmとなるときにおける、(100μm×250μm)
の領域の中心深さを示す。またAr1 とは、オーステナ
イトからなる組織を冷却する際に、パーライトが析出し
始める温度(℃)、Ac1 とはパーライトを含む組織を
加熱する際に、パーライト中からオーステナイトが析出
し始める温度(℃)を夫々意味する。
【0014】
【発明の実施の形態】本発明の各要件についての限定理
由は、以下の通りである。本発明においては、まず表面
からの深さが線径の5〜30%までの領域(フェライト
および/またはパーライトからなる領域)を表面層とし
たとき、この表面層の平均粒径が5μm以下である必要
がある(但し、後述する趣旨から明らかな様に、この平
均粒径の下限は2μmである)。これは、次の様な理由
による。
【0015】本発明者らが、冷間加工の際におけるクラ
ックの発生場所について詳細に調査したところ、殆どの
場合に部品、即ち圧延線材の表面近傍であることを見出
した。より詳しくは、線材表面から直径の約30%の深
さまでの領域でクラックが発生して割れに至ることが判
明した。これは、部品としての冷間加工中で最も変形が
大きい領域に相当する。
【0016】またクラック発生の起点は、5μm以上の
大きさのフェライトとパーライトの界面またはパーライ
ト内部、或は表面の微細傷であることが判明した。尚こ
れらの領域以外でもクラックが発生することもあるが、
こうしたクラックは粗大介在物等が原因するものであ
り、結晶粒径を制御するだけでは解決できない課題であ
る(即ち、本発明の範囲外の課題である)。従って、粗
大介在物がない場合には、表面近傍のこの領域での組織
を微細化することにより、クラックが効果的に防止でき
るのである。そして組織が微細な領域が、表面から線径
の5%以下の浅い領域だけでは、微細表面傷からのクラ
ック発生は抑制できるが、それよりも深い領域に発生す
るクラックは防止できない。
【0017】一方、線径の30%よりも深い領域まで微
細化すると、クラック発生は防止できるが、線材全体の
変形抵抗が上昇してしまい、工具寿命短縮などの弊害が
生じてしまうことになる。また上記と同様に、前記表面
層のうち最表面から0.3〜0.4mm深さ位置(最表
面層)の平均粒径が2μm以下となると、変形抵抗が極
度に上昇収縮する為に好ましくない。
【0018】本発明の鋼線材においては、前記表面層よ
りも内部の平均粒径を10μm以下とする必要がある
が、これは下記の理由によるものである。割れ発生を抑
制するためには、なるべく粒径を小さくする必要があ反
面、変形抵抗を小さくするには粒径を大きくしたいとい
う要求がある。そして表面近傍は、割れ抑制という観点
から平均粒径を上記のように規定する必要がる。そこ
で、表面近傍の微細粒域から中心よりの部分では、割れ
発生と変形抵抗低減を兼備させる為の適正粒径とする必
要があり、本発明者らはこうした観点から適正粒径につ
いて検討した。
【0019】冷間加工では、中心近傍からのクラックが
発生することもあり、特に穴開け加工する様な場合には
顕著である。その発生の起点は、表面近傍同様に粒径の
大きなフェライトとパーライトの界面またはパーライト
内部であるが、特に中心近傍固有の現象として、添加元
素の中心偏析出に起因したバンド組織などの組織の不均
一な部分でのクラック発生が顕著であることを見出し
た。そして中心部の加工は、加工率が表面近傍ほど高く
なることが少ないため、クラック発生を抑制しつつ変形
抵抗を低くする為には、10μm以下とすれば良いこと
が分かった。
【0020】本発明の鋼線材は、基本的にCを0.03
〜0.8%含むものであり、また具体的な化学成分組成
としては、Si:0.01〜0.5%、Mn:0.05
〜2%、Al:0.01〜0.08%を夫々含むと共
に、P:0.03%以下(0%を含む)、S: 0.03
%以下(0%を含む)およびN :0.07%以下(0%
を含む)に夫々抑制したものが挙げられるが、これらの
元素の範囲限定理由は下記の通りである。
【0021】C:0.03〜0.8% Cは線材に所定の強度を与えるのに必要な元素であり、
その為には少なくとも0.03%以上含有させる必要が
ある。しかしながら、Cの含有量が過剰になると、変形
抵抗を著しく上昇させるのでその上限を0.8%とする
必要がある。尚C含有量の好ましい下限は0.3%であ
り、好ましい上限は0.5%である。
【0022】Si:0.01〜0.5% Siは製鋼段階で脱酸剤として添加されるが、その為に
は0.01%以上含有させる必要がある。しかしなが
ら、含有量が過剰になると、変形抵抗を著しく高めるの
で、その上限は0.5%とする必要がある。尚Si含有
量の好ましい上限は0.25%である。
【0023】Mn:0.05〜2% Mnは不純物であるSを固定して無害化するのに必要な
元素であり、鋼の強度や靭性の向上の為に添加される。
これらの効果を発揮させる為には、少なくとも0.05
%以上含有させる必要があるが、過剰に含有させると焼
入れ性が向上して熱間圧延ままでベイナイトなどが生成
することにより変形抵抗の上昇を招くので、2.0%以
下とする必要がある。尚Mn含有量の好ましい下限は、
0.3%であり、好ましい上限は1.0%である。
【0024】Al:0.01〜0.08% Alは製鋼工程における脱酸剤として作用し、またAl
NとしてNを固定して固溶Nを減少させて変形抵抗を低
減させる。こうした効果を発揮させるためには、0.0
1%以上含有させる必要がある。しかしながら、Alを
過剰に含有させると粗大AlNとして冷間加工性を悪化
させるので、0.1%を上限とする。尚Al含有量の好
ましい下限は0.02%であり、好ましい上限は0.0
4%である。
【0025】P:0.03%以下(0%を含む),S:
0.03%以下(0%を含む) PやSは、粒界に偏析し或は化合物として存在して冷間
加工性を阻害するので、いずれも0.03%以下に抑制
する必要がある。尚これらの元素は、好ましくはいずれ
も0.01%以下とするのが良い。
【0026】N:0.07%以下(0%を含む) Nは変形抵抗を顕著に上昇させるので、良好な冷間加工
性を得る為には、0.07%以下に抑制する必要があ
る。
【0027】本発明の鋼線材における基本的な化学成分
組成は上記の通りであり、残部はFeおよび不可避不純
物からなるものであるが、本発明の鋼線材においては必
要によって、(1)Cr:1%以下(0%を含まな
い)、Mo:1%以下(0%を含まない)およびB:
0.0025%以下(0%を含まない)よりなる群から
選択される1種以上、(2)Ti:0.2%以下(0%
を含まない)、V:0.2以下(0%を含まない)、N
b:0.2%以下(0%を含まない)およびZr:0.
2%以下(0%を含まない)よりなる群から選択される
1種以上、等を含有させることも有効であり、これによ
って鋼線材の特性を更に向上させることができる。これ
らの元素の範囲限定理由は下記の通りである。尚これら
の成分以外にも、本発明の鋼線材には、その特性を阻害
しない程度の微量成分を含み得るものであり、こうした
鋼線材も本発明の範囲に含まれものである。
【0028】Cr:1%以下(0%を含まない)、M
o:1%以下(0%を含まない)およびB:0.002
5%以下(0%を含まない)よりなる群から選択される
1種以上の元素 Cr,MoおよびBは焼入れ調整元素であり、焼入れ焼
戻しによって強度と靭性を調整する為に添加される。し
かしながら、過剰に含有させると変形抵抗の上昇を招く
ので好ましくない。こうした観点から、CrおよびMo
はその上限を1%とし、Bはその上限を0.0025%
とした。尚これらの元素添加による上記効果は、上記範
囲内で含有量を増加させるにつれて大きくなるが、上記
効果を発揮させる為には、Cr、Moで0.01%以
上、Bで0.0003%以上含有させることが好まし
い。
【0029】Ti:0.2%以下(0%を含まない)、
V:0.2以下(0%を含まない)Nb:0.2%以下
(0%を含まない)およびZr:0.2%以下(0%を
含まない)よりなる群から選択される1種以上の元素 Ti,V,NbおよびZrは、いずれも微細な炭窒化物
を形成して表面近傍の組織を微細化させる為に添加され
る。しかしながら、過剰に含有させると変形抵抗の上昇
を招くので好ましくない。こうした観点から、いずれも
その上限を0.2%とした。尚これらの元素添加による
上記効果は、上記範囲内で含有量を増加させるにつれて
大きくなるが、上記効果を発揮させる為には、いずれも
0.001%以上含有させることが好ましい。
【0030】次に、本発明における熱間圧延における仕
上げ圧延条件について説明する。尚以下の温度制御にお
いては、代表的な制御方法として、水冷間の中を線材を
通過させる際の水量で制御する方法が挙げられるが、本
発明で採用する温度制御方法はこうした方法に限らず、
ガス冷却によって制御する方法、水以外の冷却媒体の冷
却によって制御する方法、等いずれの方法も採用するこ
とができる。
【0031】本発明においては、基本的には表面近傍を
一旦急冷してフェライト、パーライトを析出させ、その
後に温度を上げてオーステナイトへの逆変態を起こさせ
ることにより、表面近傍の超微細組織を得るものであ
る。例えば、特公平7−116503号の様な従来技術
では、圧延の際の加工発熱を利用したり、外部からのエ
ネルギーを供給することによって、逆変態を起こさせて
いる。ところが本発明者らが検討したところ、線材内部
の温度を高く保ったまま、表面のみを冷却し、その後に
線材内部の熱量によって表面を複熱されれば逆変態を起
こさせることができることを見出した。また本発明の鋼
線材においては、表面と内部では粒径が段階的に大きく
変化する粒径分布を呈するものであるが、上記従来技術
では粒径が傾斜的に変化するものであり、その粒径分布
においても異なるものである。
【0032】本発明方法においては、まず表面温度が9
00℃以上の温度から、線材中心温度を850℃以上に
保ったままで、線材表面を50℃/秒の冷却速度で冷却
するものである。この様に線材中心温度を所定温度以上
に保ったままで冷却するのは、水冷で一旦冷却された表
面温度を一定の温度に再度回復(後記復熱過程)するの
に有効であるからである。また最初の温度が900℃未
満であると、線材の熱量が小さくなり、一旦冷却された
表面の温度を所定の温度に回復させることができなくな
る。但し、この温度があまり高くなり過ぎると、オース
テナイト粒径があまり大きくな過ぎて、圧延後の組織が
平均粒径10μmを超える様な粗大組織になるので、こ
うした観点からすればその温度の上限は1100℃以下
とするのが好ましい。これと同じ理由で本発明では、仕
上圧延前の冷却過程で、線材中心温度を850℃以上に
保つことが重要である。この後の工程で冷却された表面
の温度を回復させる工程で、外部からエネルギーを与え
る加熱装置を使用する場合には、850℃未満にするこ
とができるが、低過ぎると線材断面全体で平均粒径が5
μm以下になるので、こうした場合でも線材中心温度を
800℃以上とすることが好ましい。
【0033】上記冷却工程では、線材表面の温度を50
℃/秒以上の冷却速度で(Ar1 −150)〜(Ar1
−50℃)まで冷却する必要があるが、これは次の理由
によるものである。まず冷却速度を50℃/秒以上とす
るのは、冷却中にオーステナイトの粒成長を起こした
り、高い温度でフェライト、パーライトが生成して組織
が粗大化するのを防止する為である。これによって、微
細なフェライトおよびパーライトを生成させ、その後の
昇温によってもう一度オーステナイトに戻る逆変態を起
こさせることで、非常に微細な組織を得ることができ
る。
【0034】上記冷却では、少なくとも(Ar1 −50
℃)以下の温度まで冷却する必要があるが、その温度の
下限は(Ar1 −150℃)とする必要がある。この冷
却温度が(Ar1 −150℃)未満となると、冷却速度
の制御を厳密に行なわないと、Ms点を下回ってマルテ
ンサイト組織が生成してしまいことがある。このマルテ
ンサイトの組織は、その後の復熱過程においてもオース
テナイトへの逆変態をおこさず、圧延材に残留して引張
強さ(TS)を高くしてしまうことがある。従って、安
定した製品を製造するという観点から、冷却温度の下限
は(Ar1 −150℃)とする必要がある。
【0035】一方、この冷却温度の上限は、上記の様に
(Ar1 −50℃)とする必要があるが、この温度より
高い温度まで冷却すると、フェライトやパーライトは一
旦析出するが、その量が少ないので逆変態を起こしても
組織微細化効果が得られない。
【0036】上記冷却の後、表面温度を(Ac1 +5
0)〜(Ac1 +150)にするのは(復熱過程)、析
出したフェライトやパーライトをオーステナイトに逆変
態させる為である。この過程で非常に微細なオーステナ
イトにすることが可能であり、圧延後の微細組織を得る
為に重要な要件である。このときの温度が(Ac1 +5
0)未満になると、下記の様な2つの弊害が生じること
になる。第1に、逆変態が起こらず、オーステナイトを
微細化する効果が得られない。第2に、圧延時にフェラ
イトが加工された状態が製品線材まで残ってしまい、非
常に硬くなって冷間鍛造性が悪くなってしまう。
【0037】一方、この温度が(Ac1 +150)を超
えると、逆変態後にオーステナイトが粒成長してしま
い、微細化効果が得られない。尚本発明は、線材中心部
からの熱による表面温度の復熱を利用することを基本と
するものであるが、外部からのエネルギーの供給によっ
て表面温度の制御や加熱を行なっても、その条件を適切
に制御すれば同様の効果を得ることができる。
【0038】そして本発明では、逆変態によって非常に
微細になったオーステナイトの状態で、25%以上の減
面率で仕上り温度が950℃以下となる様な圧延を行な
うことによって、表面近傍で2〜5μmの平均粒径を持
つ非常に微細な組織を得ることができる。減面率が25
%未満であったり仕上り温度が950℃を超えると、オ
ーステナイト粒径を十分小さくすることができない為に
微細な組織が得られない。尚この仕上げ圧延工程は、複
数回繰り返しても良い。
【0039】以下、本発明を実施例によって更に詳細に
説明するが、下記実施例は本発明を限定する性質のもの
ではなく、前・後記の趣旨に徴して設計変更することは
本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【0040】
【実施例】下記表1に示す化学成分組成の供試鋼を用
い、加熱炉→粗圧延→中間圧延→水冷帯1→仕上げ圧延
→水冷帯2→冷却コンベアからなる圧延ラインで圧延実
験を行なった。このとき下記(1)〜(5)の条件を種
々変えて圧延を実施した。また圧延時の表面温度は、放
射温度計で測定した。そして各段階での中心温度は、表
面温度の測定値と、冷却条件(水冷帯、大気中)、仕上
げ圧延条件を考慮し、差分法による数値解析計算で求め
た。 (1)中間圧延時の終了温度 (2)水冷帯1直後の表面温度と中心温度 (3)水冷帯1の後の復熱後の仕上げ圧延機入り側での
表面温度と中心温度 (4)仕上げ圧延での減面率 (5)仕上げ圧延の仕上り表面温度
【0041】
【表1】
【0042】圧延材は、引張り試験による引張り強度
と、据え込み試験による据え込み限界率を測定して評価
した。引張り強度および据え込み限界率の両者の関係
は、線材の平均粒径が断面内全域で15μm以上になっ
ている従来の圧延材の種々の鋼種で調査したところ、下
記(1)式の関係があることが判明した。 [据え込み限界率(%)]=24010 /(引張り強度/MPa)+16 …(1)
【0043】そして供試材では、引張り強度から上記
(1)式で算出される値(従来材の据え込み限界率)
と、据え込み限界率の測定値を比較し、従来材と比べて
優れているものを○、同等以下であれば×とした。
【0044】まず前記表1のNo.2の供試材を用い、
圧延条件を変えて線材断面の粒径とその分布が異なる線
材を作成した。このときの圧延条件を下記表2に、評価
結果を下記表3に夫々示す。
【0045】
【表2】
【0046】
【表3】
【0047】次に、下記表4に示す圧延条件で、前記表
1に示した各組成の鋼材を圧延し、得られた各圧延材に
ついて上記と同様にして評価した。その評価結果を下記
表5に示す。
【0048】
【表4】
【0049】
【表5】
【0050】更に、前記表1のNo.2の供試材につい
て、下記表6に示す種々の条件で圧延した。その評価結
果を、下記表7に示す。
【0051】
【表6】
【0052】
【表7】
【0053】これらの結果から、明らかなように本発明
で規定する要件を満足するものは、熱間圧延のままであ
っても優れた冷間加工性を有していることが分かる。
【0054】
【発明の効果】本発明は以上の様に構成されており、熱
間圧延のままであっても優れた冷間加工性を有する鋼線
材が実現できた。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 長尾 護 神戸市西区高塚台1丁目5番5号 株式会 社神戸製鋼所神戸総合技術研究所内 (72)発明者 槙井 浩一 神戸市西区高塚台1丁目5番5号 株式会 社神戸製鋼所神戸総合技術研究所内 (72)発明者 百▲崎▼ 寛 神戸市灘区灘浜東町2番地 株式会社神戸 製鋼所神戸製鉄所内 Fターム(参考) 4K032 AA01 AA02 AA04 AA05 AA06 AA11 AA16 AA19 AA21 AA22 AA27 AA29 AA31 AA35 AA36 AA39 BA02 CA02 CC04 CD03

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 C:0.03〜0.8%(質量%の意
    味、以下同じ)を含むと共に、線材中の結晶粒径が表面
    側で小さく、中心部側で大きい鋼線材において、表面か
    らの深さが線径の5〜30%までの領域を表面層とした
    とき、該表面層の平均粒径が5μm以下であると共に、
    前記表面層のうち最表面から0.3〜0.4mm深さ位
    置を最表面層としたとき、該最表面層の平均粒径が2μ
    m以上であり、且つ前記表面層より内部の平均粒径が1
    0μm以下であることを特徴とする冷間加工性に優れた
    鋼線材。
  2. 【請求項2】 Si:0.01〜0.5%、Mn:0.
    05〜2%、Al:0.01〜0.08%を夫々含むと
    共に、P:0.03%以下(0%を含む)、S: 0.0
    3%以下(0%を含む)およびN :0.07%以下(0
    %を含む)に夫々抑制したものである請求項1に記載の
    鋼線材。
  3. 【請求項3】 Cr:1%以下(0%を含まない)、M
    o:1%以下(0%を含まない)およびB:0.002
    5%以下(0%を含まない)よりなる群から選択される
    1種以上の元素を含むものである請求項1または2に記
    載の鋼線材。
  4. 【請求項4】 Ti:0.2%以下(0%を含まな
    い)、V:0.2以下(0%を含まない)、Nb:0.
    2%以下(0%を含まない)およびZr:0.2%以下
    (0%を含まない)よりなる群から選択される1種以上
    の元素を含むものである請求項1〜3のいずれかに記載
    の鋼線材。
  5. 【請求項5】 請求項1〜3のいずれかに記載の鋼線材
    を製造するに当たり、熱間仕上げ圧延において、表面温
    度が900℃以上の温度から、線材中心温度を850℃
    以上に保ったままで、線材表面を50℃/秒の冷却速度
    で(Ar1 −150℃)〜(Ar1 −50℃)の温度範
    囲まで一旦冷却し、更に表面温度を(Ac1 +50℃)
    〜(Ac1 +150℃)に加熱した後、25%以上の減
    面率で仕上がり温度を表面温度で950℃以下として1
    回以上圧延することを特徴とする冷間加工性に優れた鋼
    線材の製造方法。
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