JP2000087298A - 高速シーム溶接性、密着性、耐食性に優れた表面処理鋼板とその製造方法 - Google Patents
高速シーム溶接性、密着性、耐食性に優れた表面処理鋼板とその製造方法Info
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Abstract
溶接性、塗料およびフィルムの密着性、耐食性に優れた
溶接缶用鋼板およびその製造方法を提供する。 【解決手段】 鋼板表面にNiめっきを施し、その上に
金属クロム換算で1〜15mg/m2 で、かつオキソ化
合物の割合が60〜95%であるオキサイドクロム層を
形成することを特徴とする高速シーム溶接性、密着性、
耐食性に優れた表面処理鋼板。
Description
特に高速シーム溶接性、塗料およびフィルムの密着性、
耐食性に優れた溶接缶用鋼板およびその製造方法に関す
るものである。
溶接缶の製缶技術が急速に進展し、飲料缶分野での実用
化が急速に進展してきた。この種の溶接缶に使用される
缶用鋼板としては、Niめっき表面のクロム酸被膜を改
質した製缶用材料(特公昭36−15252号公報)等
が知られている。さらに特開昭57−35697号公
報、特開昭57−35698号公報において溶接性と塗
装後耐食性を向上しうる製造法が提供されている。確か
にこのような発明による製造方法は、溶接性、耐食性、
塗料密着性を備えた溶接缶用表面処理鋼板を提供するも
のである。しかし、弗素化合物を助剤として含有する無
水クロム酸系処理浴中で陰極電解することにより水和酸
化クロム(以下、Ox−Crという)を形成させるとい
うこれらの方法においては弗化物イオンによるOx−C
rの溶解のため必要なOx−Cr量を安定的に得ること
は難しい。
製缶技術の進歩と製缶コストダウンが相俟って、製缶工
程の大幅な生産性向上のため製缶スピード向上が図られ
ている。ところが、製缶スピードを上げると溶接適用電
流範囲(ACR)が小さくなり溶接不良を生じ易くな
る。これは、密着性および耐食性のためのクロメート被
膜を構成しているオキサイドクロムの電気抵抗が非常に
高く、さらに融点が高くかつ電気抵抗の高い金属クロム
のため、従来の製缶ラインスピードでは問題ない付着量
レベルでも高速化時には悪影響を及ぼすからである。単
にクロメート付着量を低減するだけでは、その他の特性
(密着性、耐食性)の低下が起こる。密着性や耐食性の
特性を低下させず、高速シーム溶接性を向上させるため
には、オキサイドクロムの質、量を厳密に管理すること
が重要であることがわかった。
である。 (1)鋼板表面にNiめっきを施し、その上に金属クロ
ム換算で1〜15mg/m2 でかつオキソ化合物の割合
が60〜95%であるオキサイドクロム層を形成するこ
とを特徴とする高速シーム溶接性、密着性、耐食性に優
れた表面処理鋼板。 (2)鋼板片面当たりのNiめっき量が150〜250
0mg/m2 である前記(1)記載の高速シーム溶接
性、密着性、耐食性に優れた表面処理鋼板。
上に35〜200g/lのCrO3及びCrO3 との重
量比で1/50〜1/200のH2 SO4 を含有し残部
水及び不可避的不純物からなる浴温45℃未満の陰極電
解処理浴中で陰極電解を行い、引き続いて35〜200
g/lのCrO3 を含有し残部水及び不可避的不純物か
らなる浴温45℃以上の浸漬処理浴中で浸漬処理を行
い、Niめっき鋼板表面に金属クロム換算で1〜15m
g/m2 でかつオキソ化合物の割合が60〜95%であ
るオキサイドクロム層を形成することを特徴とする高速
シーム溶接性、密着性、耐食性に優れた表面処理鋼板の
製造方法。
で1/50〜1/200のH2 SO 4 及び不可避的不純
物を含むことを特徴とする前記(2)記載の高速シーム
溶接性、密着性、耐食性に優れた表面処理鋼板の製造方
法。 (5)鋼板片面当たりのNiめっき量が150〜250
0mg/m2 である前記(3)記載の高速シーム溶接
性、密着性、耐食性に優れた表面処理鋼板の製造方法に
ある。
性、密着性、耐食性に優れた表面処理鋼板とその製造方
法について詳しく説明する。本発明においてめっき原板
は特に規制されるものではなく、通常、容器材料として
使用されている鋼板を用いる。めっき原板の製造方法、
材質なども特に規制されるものではなく、通常の鋼片製
造工程から熱間圧延、酸洗、冷延工程、焼鈍、調質等の
工程を経て製造される。さらに、このめっき原板は必要
とされる缶体強度および板厚に応じて冷間圧延後、焼鈍
を行ってから再冷間圧延(即ち2CR法)とする工程で
製造しても良い。
表面を正常化するため前処理として脱脂、酸洗が行われ
るが、それらの方法は規制するものではなく、例えば、
10%苛性ソーダ中で脱脂した後、5%硫酸溶液中で酸
洗を行えばよい。脱脂、酸洗に引き続き、Niめっきが
行われる。Niは高耐食性金属のため、Niをめっきす
ることにより、めっき層の耐食性を向上させることがで
きる。Niによるめっき層の耐食性向上効果は、片面当
たりのNiめっき量150mg/m2 以上から発現す
る。従って、Niめっき量は150mg/m2 以上が極
めて望ましい。Niめっき量が多くなるほど、めっき層
の耐食性向上効果は増加するが、Niめっき量が250
0mg/m2 以上になると増量の効果が認められなくな
り、経済的損失が大きくなるNiめっき量は、2500
mg/m2 以下にすることが望ましい。
性、耐食性(アンダーカッティングコロージョン防止)
を目的としてオキサイドクロム皮膜を施す。オキサイド
クロムにはオール型オキサイドクロムとオキソ型オキサ
イドクロムが存在しオキソ型オキサイドクロム割合が高
い皮膜は密着性が高くなる。オキソ型オキサイドクロム
割合=100×オキソ型オキサイドクロム量/総オキサ
イドクロム量このオキソ型オキサイドクロムの割合が
0.60以上でその効果は発現し、0.95以上になる
と逆に密着性は悪くなる。
縁体のために電気抵抗が非常に高いので、両者とも溶接
性を劣化せしめるマイナス要因である。そのため、良好
なフィルムおよび塗料密着性、耐食性と実用的に高速シ
ーム溶接性を劣化せしめない適正なオキサイドクロム量
が非常に重要になってくる。従って、オキサイドクロム
量は、片面当たり金属クロム換算で1〜15mg/m2
である。即ち、クロメート被膜付着量が1mg/m2 未
満(金属クロム換算)ではフィルムもしくは塗料の密着
性の向上に効果が得られず、クロメート被膜付着量が1
5mg/m2 を越えると、接触抵抗が急に増加し始め、
高速シーム溶接時に局部的な発熱によりチリが発生し易
くなり、溶接性が劣化する。
浴にめっき助剤として硫酸を加えたクロメート処理浴で
の陰極電解処理によって行う。単にクロメート処理浴で
の電解のみでは上記に示した構造のオキサイドクロム皮
膜を形成させるのは難しい。そのため、電解時に溶解性
の高いオール型オキサイドクロムを生成させ、その後そ
のオール型オキサイドクロムをクロム酸浴で溶解させる
必要がある。オール型オキサイドクロムの溶解性は、電
解時の浴温により決定され浴温の低下と共に向上する。
特に45℃未満でオール型オキサイドクロムの溶解性は
顕著であり、45℃を電解時の浴温の上限とすることが
望ましい。電解時の浴温の下限は特に規定しないが、あ
まり低温にするのは冷凍機の設置または能力増が必要で
不経済であるため、10℃を下限とするのが望ましい。
クロムを形成させるためには、電解処理浴中に含まれる
CrO3 濃度を35g/l以上にするのが望ましく、あ
まり高すぎると塗料・フィルム密着性の低下が生じるた
め200g/lを上限とするのが望ましい。処理浴への
硫酸添加は目的とするオキサイドクロムの生成には不可
欠であり、無水クロム酸に対する重量比(以下、硫酸濃
度比という)1/300〜1/50とする必要がある。
硫酸濃度比は、高すぎても低すぎてもその効果が著しく
低下するので、硫酸濃度比の下限は1/200、上限は
1/50とする。
して、硫酸以外にケイフッ化ナトリウム、ホウフッ化ナ
トリウム、フッ化アンモニウムなどのフッ素化合物を含
有してもかまわない。また、処理浴中への三価のクロム
イオンの混入量が0.1〜5g/lではクロメート被膜
の均一化に効果があるので混入してもかまわない。ま
た、生成したオール型オキサイドクロムの溶解能力はク
ロム酸浴温の上昇と共に増加し、特に45℃以上で顕著
である。クロム酸浴温の上限は特に規定しないが、あま
り高温にすると浴のヒューム回収が大がかりとなり不経
済であるため、70℃を上限とするのが望ましい。さら
に、無水クロム酸濃度が35g/l未満ではオール型O
x−Crを溶解する能力が著しく低下するため、これ以
上の濃度が望ましく、200g/l超の高濃度とする
と、エッチング作用が強すぎてオキソ型Ox−Crも溶
解されるため塗料密着性、耐食性の低下につながること
がある。そこで無水クロム酸濃度の上限を200g/l
とするのが望ましい。好ましくは50g/l以下とする
のが望ましい。
て述べ、その結果を各々表1に示す。冷間圧延もしくは
焼鈍後の2回圧延により、所定の板厚に調整しためっき
原板を5%苛性ソーダ中で電解脱脂し、水洗後10%硫
酸中で電解酸洗し、表面活性後表面処理を行った。この
めっき原板に、(1)に示す条件でNiめっきを行った
後、(2)に示す条件でクロメート電解処理を行い、ク
ロメート被膜を生成させた後、(3)に示す条件でオキ
サイドクロムを溶解させたものを作製した。
漬し電解する。電解時間はめっき量に応じて調整する。 クロム酸 20〜300g/l 硫酸イオン(CrO3 との重量比)1/300〜1/3
0 電解条件 10〜60℃ 10A/dm2
溶解処理)条件 以下の浴組成の浴中に(3)で作製した試験片を浸漬す
る。浸漬時間は、任意に調整する。 クロム酸 20〜300g/l 溶解条件 30〜70℃
(D)の各項目について実施し、その性能を評価した。 (A)高速シーム溶接性 試験片は高温短時間での塗装焼き付け条件を想定して3
20℃まで23secでする昇温条件で焼き付けを行
い、以下の溶接条件で高速シーム溶接性を評価した。ラ
ップ代0.5mm、加圧力45kgf、溶接ワイヤース
ピード100m/minの条件で、電流を変更して溶接
を実施し十分な溶接強度が得られる最小電流値とチリな
どの溶接欠陥が目立ち始める最大電流値からなる適正電
流範囲の広さから総合的に判断し、3段階(◎:非常に
広い、〇:実用上問題なし、×:狭い)で評価した。
の塗料を55mg/dm2 塗布し、さらに缶外面に相当
する面にクリヤーラッカーを40mg/dm2塗布し、
290℃まで15secの焼き付け条件で乾燥硬化し
た。引き続き、各々の面に1mm間隔でスクラッチを入
れ、100個の碁盤目を作製し、速やかにテープ剥離
し、その剥離状況を観察し、3段階(◎:剥離無し、
〇:1〜4個剥離、×:5個以上剥離)で塗料密着性を
評価した。
レート)系のフィルムをラミネートした後、地鉄に達す
るまでクロスカットを入れ、速やかに240℃に加熱
し、クロスカット中央部に5kg/cm2 の空気ガスを
垂直に吹き付け、3段階(◎:全く剥離無し、〇:僅か
な剥離、×:大部分で剥離)でフィルムの剥離状況を評
価した。
ージョン)評価テスト 試験片の缶内面に相当する面の耐食性を評価するため、
缶内面側に相当する面に厚さ15μmのPET(ポリエ
チレンテレフタレート)系フィルムをラミネートした。
その後地鉄に達するまでクロスカットを入れ、1.5%
クエン酸−1.5%食塩混合液からなる試験液中に大気
開放下55℃×4日間浸漬した。試験終了後、速やかに
スクラッチ部および平面部をテープで剥離して、スクラ
ッチ部近傍の腐食状況、スクラッチ部のピッティング状
況および平面部のフィルム剥離状況を3段階(◎:剥離
が無く腐食も認められない、〇:僅かな剥離があるが腐
食は認められない、×:大部分で剥離し激しい腐食が認
められる)で総合的に評価した。表1に示すように、本
発明により製造された溶接缶用鋼板は、優れた高速シー
ム溶接性、密着性および耐食性を有することが明らかに
なった。
れた溶接缶用鋼板は、優れた高速シーム溶接性、密着性
および耐食性を有する極めて優れた鋼板を提供すること
ができる。
Claims (5)
- 【請求項1】 鋼板表面にNiめっきを施し、その上に
金属クロム換算で1〜15mg/m2 でかつオキソ化合
物の割合が60〜95%であるオキサイドクロム層を形
成することを特徴とする高速シーム溶接性、密着性、耐
食性に優れた表面処理鋼板。 - 【請求項2】 鋼板片面当たりのNiめっき量が150
〜2500mg/m 2 である請求項1記載の高速シーム
溶接性、密着性、耐食性に優れた表面処理鋼板。 - 【請求項3】 鋼板表面にNiめっきを施し、その上に
35〜200g/lのCrO3 及びCrO3 との重量比
で1/50〜1/200のH2 SO4 を含有し残部水及
び不可避的不純物からなる浴温45℃未満の陰極電解処
理浴中で陰極電解を行い、引き続いて35〜200g/
lのCrO3 を含有し残部水及び不可避的不純物からな
る浴温45℃以上の浸漬処理浴中で浸漬処理を行い、N
iめっき鋼板表面に金属クロム換算で1〜15mg/m
2 でかつオキソ化合物の割合が60〜95%であるオキ
サイドクロム層を形成することを特徴とする高速シーム
溶接性、密着性、耐食性に優れた表面処理鋼板の製造方
法。 - 【請求項4】 浸漬処理浴中にCrO3 との重量比で1
/50〜1/200のH2 SO4 及び不可避的不純物を
含むことを特徴とする請求項2記載の高速シーム溶接
性、密着性、耐食性に優れた表面処理鋼板の製造方法。 - 【請求項5】 鋼板片面当たりのNiめっき量が150
〜2500mg/m 2 である請求項3記載の高速シーム
溶接性、密着性、耐食性に優れた表面処理鋼板の製造方
法。
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JP25337298A JP3895873B2 (ja) | 1998-09-08 | 1998-09-08 | 高速シーム溶接性、密着性、耐食性に優れた表面処理鋼板の製造方法 |
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Cited By (2)
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JP2007231394A (ja) * | 2006-03-02 | 2007-09-13 | Nippon Steel Corp | 溶接缶用鋼板 |
WO2013180056A1 (ja) | 2012-05-31 | 2013-12-05 | 新日鐵住金株式会社 | 3ピースリシール缶 |
-
1998
- 1998-09-08 JP JP25337298A patent/JP3895873B2/ja not_active Expired - Fee Related
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