WO2018142553A1

WO2018142553A1 - スライドファスナー及びその製造方法

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Publication number: WO2018142553A1
Application number: PCT/JP2017/003865
Authority: WO
Inventors: 泰史三輪
Original assignee: Ykk株式会社
Priority date: 2017-02-02
Filing date: 2017-02-02
Publication date: 2018-08-09
Also published as: TWI631918B; TW201828856A; DE112017006985B4; US20190365059A1; CN110167383A; US11071357B2; CN110167383B; DE112017006985T5

Abstract

スライドファスナー（１００）は、ファスナーテープ（１０）の屈曲側縁部（３０）にファスナーエレメント（４０）が設けられた一対のファスナーストリンガー（５０）と、一対のファスナーストリンガー（５０）を開閉するべく移動するスライダー（６０）と、ファスナーテープ（１０）の長手方向におけるファスナーテープ（１０）の末端部（１８）においてファスナーエレメント（４０）に隣接してファスナーテープ（１０）に固着した樹脂製の一対の末端部材（７０）にして、蝶棒部（７８）と、前記蝶棒部（７８）を受け入れるように構成された箱部（７９）から構成される一対の末端部材（７０）を備える。少なくとも一方のファスナーテープ（１０）の各テープ面（１１，１２）には末端部（１８）において補強フィルム（８１，８２）が貼り付けられ、各補強フィルム（８１，８２）は、末端部材（７０）に埋め込まれた埋め込み部（８８）を有する。

Description

スライドファスナー及びその製造方法

　本開示は、スライドファスナー及びその製造方法に関する。

　特許文献１は、補強部３４，３５が一体的に成形された蝶棒部と箱部を開示する。

　特許文献２は、補強テープが貼り付けられたファスナーテープに対して金属製の蝶棒部や箱部を加締めによって取り付けることを開示する。

国際公開第２０１４／１９２１０６号特許第３７３３３３２号公報

　特許文献１では蝶棒又は箱部の樹脂部である補強部３４，３５によりファスナーテープを保護している。かかる場合、補強部３４，３５自体の部分的な破壊、ファスナーテープの柔軟性の顕著な低下、及びスライドファスナーを衣類等の対象物に縫い付けることが多かれ少なかれ妨害され得る。

　上述の非限定の一例の課題から理解されるように、蝶棒又は箱部の補強部の採用に伴う１以上の不利益を回避又は低減することが望まれる。

　本開示の一態様に係るスライドファスナーは、ファスナーテープ（１０）の屈曲側縁部（３０）にファスナーエレメント（４０）が設けられた一対のファスナーストリンガー（５０）と、
　前記一対のファスナーストリンガー（５０）を開閉するべく移動するスライダー（６０）と、
　前記ファスナーテープ（１０）の長手方向における前記ファスナーテープ（１０）の末端部（１８）において前記ファスナーエレメント（４０）に隣接して前記ファスナーテープ（１０）に固着した樹脂製の一対の末端部材（７０）にして、蝶棒部（７８）と、前記蝶棒部（７８）を受け入れるように構成された箱部（７９）から構成される一対の末端部材（７０）を備え、
　少なくとも一方の前記ファスナーテープ（１０）の各テープ面（１１，１２）には前記末端部（１８）において補強フィルム（８１，８２）が貼り付けられ、各補強フィルム（８１，８２）は、前記末端部材（７０）に埋め込まれた埋め込み部（８８）を有する。

　幾つかの実施形態においては、前記末端部材（７０）は、棒部（７４，７６）及びフランジ部（７５，７７）を含み、
　前記棒部（７４，７６）と前記フランジ部（７５，７７）の間に溝部（Ｇ７）が設けられる。

　幾つかの実施形態においては、前記補強フィルム（８１，８２）の少なくとも一方は、前記フランジ部（７５，７７）に埋め込まれた端部を有する。

　幾つかの実施形態においては、前記末端部材（７０）の少なくとも一方は、
　前記ファスナーテープのテープ主体部（２０）に設けられた貫通孔（９０）に充填された充填部（７３）と、前記充填部（７３）を介して結合した第１部分（７１）と第２部分（７２）を含む。

　幾つかの実施形態においては、前記貫通孔（９０）は、前記補強フィルム（８１，８２）の少なくとも一方を貫通する。

　幾つかの実施形態においては、前記貫通孔（９０）は、前記補強フィルム（８１，８２）の両方を貫通する。

　幾つかの実施形態においては、前記一対のファスナーストリンガー（５０）が左右方向において隣接して設けられ、
　前記スライダー（６０）の前進により前記一対のファスナーストリンガー（５０）が閉じられ、
　前記埋め込み部（８８）は、左側のファスナーストリンガー（５０）上の前記補強フィルム（８１，８２）の右側部分を含み、又は、右側のファスナーストリンガー（５０）上の前記補強フィルム（８１，８２）の左側部分を含む。

　幾つかの実施形態においては、前記一対のファスナーストリンガー（５０）が左右方向において隣接して設けられ、
　前記スライダー（６０）の前進により前記一対のファスナーストリンガー（５０）が閉じられ、
　前記末端部材（７０）の少なくとも一方は、前記補強フィルム（８１，８２）の前側輪郭線（８３）よりも前方に延びるように構成される。

　幾つかの実施形態においては、前記ファスナーテープ（１０）の前記末端部（１８）には前記末端部材（７０）に隣接して切り欠き（１３）が設けられる。

　幾つかの実施形態においては、前記蝶棒部（７８）は、前記ファスナーテープ（１０）の長手方向沿いに延びる棒状部分である。

　本開示の一態様に係るスライドファスナーの製造方法は、ファスナーテープ（１０）の屈曲側縁部（３０）にファスナーエレメント（４０）が設けられた一対のファスナーストリンガー（５０）を含み、前記ファスナーエレメント（４０）が部分的に除去されたスペース部（Ｒ１）が設けられたファスナーチェーン（９００）の前記スペース部（Ｒ１）において少なくとも一方の前記ファスナーテープ（１０）の各テープ面に補強フィルム（８１，８２）を貼り付ける工程と、
　前記スペース部（Ｒ１）において前記ファスナーエレメント（４０）に隣接して前記ファスナーテープ（１０）に固着する樹脂製の末端部材（７０）を形成する工程にして、前記末端部材（７０）が蝶棒部（７８）又は箱部（７９）である工程を含み、
　各補強フィルム（８１，８２）が前記末端部材（７０）に埋め込まれた埋め込み部（８８）を有するように前記末端部材（７０）が形成される。

　幾つかの実施形態においては、前記スペース部（Ｒ１）において少なくとも前記ファスナーテープ（１０）を貫通する貫通孔（９０）を形成する工程を更に含む。

　幾つかの実施形態においては、前記スペース部（Ｒ１）において少なくとも前記ファスナーテープ（１０）を貫通する貫通孔（９０）を形成する工程は、前記スペース部（Ｒ１）において前記補強フィルム（８１，８２）と前記ファスナーテープ（１０）を貫通する貫通孔（９０）を形成する工程を含む。

　幾つかの実施形態においては、前記スペース部（Ｒ１）において切り欠き（１３）を形成する工程を更に含む。

　幾つかの実施形態においては、前記スペース部（Ｒ１）において前記ファスナーエレメント（４０）に隣接して前記ファスナーテープ（１０）に固着する樹脂製の末端部材（７０）を形成する工程は、少なくとも前記切り欠き（１３）において第１及び第２型を接触させる工程を含む。

　本開示の一態様によれば、蝶棒又は箱部の補強部の採用に伴う１以上の不利益を回避又は低減することができる。

本開示の一態様に係るスライドファスナーの概略的な上面模式図であり、スライダーにより左右のファスナーエレメントの噛合が部分的に解除されている。各ファスナーストリンガーの末端には末端部材が設けられる。末端部材は、蝶棒部又は箱部である。本開示の一態様に係るスライドファスナーの概略的な下面模式図であり、ファスナーテープの屈曲側縁部に設けられた左右のファスナーエレメントの噛合状態を示す。本開示の一態様に係るスライドファスナーの概略的な部分断面模式図であり、ファスナーテープの屈曲側縁部に設けられた左右のファスナーエレメントの噛合状態を示す。本開示の一態様に係るスライドファスナーの概略的な部分上面模式図であり、左右のファスナーストリンガーが分離している状態を示す。左側ファスナーストリンガーの蝶棒部と右側ファスナーストリンガーの箱部が分離している。図４のＶ－Ｖに沿う概略的な断面模式図である。図５のＶＩ－ＶＩに沿う概略的な断面模式図である。図４のＶＩＩ－ＶＩＩに沿う概略的な断面模式図である。図７のＶＩＩＩ－ＶＩＩＩに沿う概略的な断面模式図である。本開示の一態様に係るスライドファスナーの概略的な製造工程図であり、各ファスナーストリンガーのファスナーエレメントが除去されて存在しないファスナーチェーンのスペース部を示す。本開示の一態様に係るスライドファスナーの概略的な製造工程図であり、ファスナーテープの各テープ面に補強フィルムが貼り付けられる。本開示の一態様に係るスライドファスナーの概略的な製造工程図であり、貫通孔と切り欠きが形成される。本開示の一態様に係るスライドファスナーの概略的な製造工程図であり、左右のファスナーストリンガーが分離される。本開示の一態様に係るスライドファスナーの概略的な製造工程図であり、ファスナーエレメントに隣接してファスナーテープに固着する樹脂製の末端部材が射出成形により形成される。ファスナーテープを挟む各補強フィルムが末端部材に埋め込まれた埋め込み部を有するように末端部材が射出成形により形成される。貫通孔が第１補強フィルムとテープ主体部を貫通する例を示す模式図である。貫通孔が第１補強フィルムとテープ主体部を貫通する例を示す模式図である。貫通孔がテープ主体部のみを貫通する例を示す模式図である。貫通孔がテープ主体部のみを貫通する例を示す模式図である。

　以下、図１乃至図１７を参照しつつ、本発明の非限定の実施形態例について説明する。開示の１以上の実施形態例及び実施形態例に包含される各特徴は、個々に独立したものではない。当業者は、過剰説明を要せず、各実施形態例及び／又は各特徴を組み合わせることができる。また、当業者は、この組み合わせによる相乗効果も理解可能である。実施形態例間の重複説明は、原則的に省略する。参照図面は、発明の記述を主たる目的とするものであり、作図の便宜のために簡略化されている場合がある。

　図１乃至図１３を参照して本発明の非限定の実施形態例を記述する際、読者の理解の促進のため、方向を示す用語が参酌される。方向を示す用語は、請求の範囲において明示的に特定される場合を除いて、請求の範囲により特定される発明を限定するために参照されるべきではない。本明細書においては、左右方向及び前後方向は、次の記述に照らして理解される。すなわち、本明細書においては、一対のファスナーストリンガーが左右方向において隣接して設けられるものとし、スライダーの前進によりこの一対のファスナーストリンガーが閉じられるものとする。左右方向及び前後方向は、この記述に照らして明確に理解される。前後方向は、スライダーの移動方向に一致する。スライダーの後進により左右一対のファスナーストリンガーが閉じられる。左右方向は、前後方向に直交し、後述のファスナーテープのテープ主体部のテープ面に平行である。上下方向は、前後方向及び左右方向に直交する。以下の記述に照らして、前後方向、左右方向、及び上下方向が再定義可能である。

　図１乃至図４に示すように、スライドファスナー１００は、ファスナーテープ１０の屈曲側縁部３０にファスナーエレメント４０が設けられた一対のファスナーストリンガー５０と、一対のファスナーストリンガー５０を開閉するべく移動するスライダー６０と、ファスナーテープ１０の長手方向におけるファスナーテープ１０の末端部１８においてファスナーエレメント４０に隣接してファスナーテープ１０に固着した樹脂製の一対の末端部材７０を有する。一対の末端部材７０は、蝶棒部７８と、蝶棒部７８を受け入れるように構成された箱部７９から構成される。蝶棒部７８は、ファスナーテープ１０の長手方向沿いに延びる棒状部分である。

　一対のファスナーストリンガー５０は、以下、左右一対のファスナーストリンガー５０と呼ばれ得る。従って、各ファスナーストリンガー５０は、左側ファスナーストリンガー又は右側ファスナーストリンガーと呼ばれ得る。同様、各ファスナーストリンガー５０に含まれるファスナーエレメント４０は、左側ファスナーエレメント又は右側ファスナーエレメントと呼ばれ得る。同様、一対の末端部材７０は、左右一対の末端部材７０と呼ばれ得る。各末端部材７０は、単に蝶棒部７８又は箱部７９と呼ばれ得る。左右方向は、上述のようにスライダー６０により開閉される一対のファスナーストリンガー５０に照らして理解される方向である。従って、本願明細書で述べる左右方向は、現実世界のスライドファスナーの看者を基準として把握される方向とは相違し得る。

　図１の図示例に照らして理解できることは、本実施形態例に係るスライドファスナー１００は、スライドファスナー１００の上面側からスライドファスナー１００の下面側に存在する噛合状態の左右のファスナーエレメント４０の視認が左右のファスナーテープ１０、より正確には後述のテープ主体部２０によって妨げられることである。このようなスライドファスナー１００は、スライドファスナー１００の上面側からスライドファスナー１００の下面側のファスナーエレメント４０がファスナーテープ１０、より正確には後述のテープ主体部２０により隠されるという点に照らして「隠しスライドファスナー」と呼ばれる。なお、スライドファスナー１００が完全に閉じられる時、スライダー６０の引手６９は視認できる。従って、スライドファスナー１００を開けることも簡単である。

　各ファスナーストリンガー５０は、ファスナーテープ１０と、ファスナーテープ１０の屈曲側縁部３０に設けられたファスナーエレメント４０を有する。ファスナーテープ１０は、屈曲側縁部３０を維持しつつ一方向、つまりは前後方向に延びる可撓性の長尺部材である。ファスナーテープ１０は、左右方向沿いの一定の断面形状を維持しつつ前後方向沿いに延びる。ファスナーテープ１０は、素材として、織物又は編物又はこれらの混合物を含み得る。ファスナーテープ１０が糸の織り部又は編み部を含む場合、異種材料、例えば、ファスナーエレメント４０のような樹脂との接触面積が確保しやすい。なお、糸は、天然繊維、植物繊維、化学繊維、又はこれら以外の多様な繊維が撚られて成る。

　ファスナーテープ１０は、屈曲側縁部３０に加えて、屈曲側縁部３０以外の部分であるテープ主体部２０を有する。屈曲側縁部３０とテープ主体部２０の境界は、必ずしもこの限りではないが、例えば、図３の点線Ｌ１に示す位置であり得る。屈曲側縁部３０及びテープ主体部２０は、ファスナーテープ１０の長手方向、つまり前後方向に沿って延びる。図３から良く分かるように、屈曲側縁部３０は、屈曲部３１と、ファスナーエレメント４０が取り付けられる取り付け部３２を有する。取り付け部３２は、屈曲部３１を介してテープ主体部２０に対して結合する。換言すれば、ファスナーテープ１０の側縁部を折り返すことの結果として、ファスナーテープ１０は、屈曲側縁部３０とテープ主体部２０を有する。

　取り付け部３２は、テープ主体部２０の下方に設けられる。テープ主体部２０と取り付け部３２の間には後述のスライダー６０の上部平板６２の通過が可能な隙間ＳＰ５が存在する。左右のファスナーストリンガー５０が閉じられる時、左右の屈曲部３１が互いに接触し、又は僅かな左右間隔を空けて隣接する。なお、屈曲部３１は、ファスナーテープ１０の左右方向において最も内側の部分である。左右方向における内側とは、左右方向においてファスナーテープを跨いでスライダーの移動軌跡に沿うスライドファスナーの中心線に向かう方向を意味する。

　ファスナーテープ１０は、第１テープ面１１と第２テープ面１２を有する。第１テープ面１１と第２テープ面１２によってファスナーテープ１０の厚みが規定される。第１テープ面１１をテープ上面と呼び、第２テープ面１２をテープ下面と呼ぶこともできる。第１テープ面１１及び第２テープ面１２は、テープ主体部２０上、屈曲部３１上、取り付け部３２上に存在する。テープ主体部２０の第２テープ面１２と、取り付け部３２の第２テープ面１２は、上下方向において隙間ＳＰ５を空けて対面する。テープ主体部２０の第１テープ面１１と、取り付け部３２の第１テープ面１１は、上下方向において反対側を向く。

　ファスナーテープ１０は、側縁部が折り返された形状、つまり、屈曲側縁部３０を保持する。通常の衣服において皺が残るように、ファスナーテープ１０は、その折り返された形状を保持する。幾つかの場合、側縁部が折り返されたファスナーテープ１０が加圧処理され、代替的又は追加的に熱処理され得る。このようにして側縁部が折り返されたファスナーテープ１０の形状がしっかりと保持される。側縁部が折り返されたファスナーテープ１０を樹脂液に浸し、続いて樹脂液を硬化させることによりファスナーテープ１０の形状をしっかりと固定することも想定される。任意の様々な手法が用いられ、ファスナーテープ１０は、側縁部が折り返された形状、つまり屈曲側縁部３０をしっかりと保持するように構成され得る。

　ファスナーエレメント４０は、ファスナーテープ１０の屈曲側縁部３０の取り付け部３２に設けられる。図示例を含む幾つかの実施形態においては、ファスナーエレメント４０は、モノフィラメントが螺旋状に巻かれたコイル状エレメントである。縫い糸を用いた二重環縫いによってファスナーエレメント４０が取り付け部３２の第１テープ面１１上に取り付けられる。別の形態においては、ファスナーエレメント４０は、樹脂又は金属エレメントが前後方向に一定間隔で配置されたエレメント配列であり得る。

　スライダー６０は、当業者により適切に構成される。本出願時において隠しスライドファスナー用の様々な種類のスライダーが公知である。図１の図示例に係るスライダー６０を一例として、スライダーの構成例を概略的に記述する。図示例を含む幾つかの実施形態においては、スライダー６０は、ベース平板６１と、ベース平板６１の側縁部に壁部を介して結合した一対の上部平板６２を有する。ベース平板６１の左右中央には柱部６５が設けられる。柱部６５によって左右のファスナーエレメント４０の噛合が解除される。ベース平板６１と上部平板６２の間でファスナーエレメント４０及び取り付け部３２が挟まれる。各上部平板６２は、テープ主体部２０と取り付け部３２の間の隙間ＳＰ５に挿入される。

　スライダー６０は、柱部６５を間に挟む左右一対の前口６６を有する。スライダー６０は、一つの後口６７を有する。左右一対の前口６６と後口６７との間にＹ字状のファスナーエレメント４０の通路が形成される。左右一対の前口６６と後口６７との間にＶ字状の屈曲部３１の通路が形成される。スライダー６０は、金属製スライダー又は樹脂製スライダーであり得る。

　各末端部材７０は、ファスナーテープ１０の長手方向におけるファスナーテープ１０の末端部１８においてファスナーエレメント４０に隣接してファスナーテープ１０に固着する。図示例を含む幾つかの実施形態においては、左側の末端部材７０が蝶棒部７８であり、右側の末端部材７０が箱部７９である。別例においては、右側の末端部材７０が蝶棒部７８であり、左側の末端部材７０が箱部７９であり得る。

　図示例を含む幾つかの実施形態においては、図５乃至図８から分かるように、蝶棒部７８及び箱部７９は、隙間ＳＰ５に空間的に連通した溝部Ｇ７を有する。スライダー６０の上部平板６２は、隙間ＳＰ５と同様の溝部Ｇ７内を移動可能である。蝶棒部７８の溝部Ｇ７は、蝶棒部７８を前後方向に貫通する。箱部７９の溝部Ｇ７は、箱部７９を前後方向に貫通しない。

　本開示においては、少なくとも一方のファスナーテープ１０の各テープ面１１，１２には末端部１８において補強フィルム８１，８２が貼り付けられる。更には、各補強フィルム８１，８２は、末端部材７０に埋め込まれた埋め込み部８８を有する。補強フィルム８１，８２によってファスナーテープ１０が保護される。また、補強フィルム８１，８２が設けられた場所でファスナーテープ１０の強度が向上し（換言すれば、柔軟性が低下し）、末端部材７０の操作性が向上する。補強フィルム８１，８２が末端部材７０に埋め込まれた埋め込み部８８を有するため、ファスナーテープ１０から補強フィルム８１，８２が容易に剥がれることが抑制される。必ずしもこの限りではないが、幾つかの実施形態においては、ファスナーテープ１０の組織内に各補強フィルム８１，８２が浸透し、ファスナーテープ１０内において各補強フィルム８１，８２が互いに結合する。

　冒頭で述べたように、特許文献２の場合、補強部３４，３５自体の部分的な破壊、ファスナーテープの柔軟性の顕著な低下、及びスライドファスナーを衣類等の対象物に縫い付けることが多かれ少なかれ妨害され得る。本開示によれば、このような不利益の少なくとも一つが回避又は低減され得る。

　図示例を含む幾つかの実施形態においては、図５及び図６から分かるように、各補強フィルム８１，８２は、蝶棒部７８に埋め込まれた埋め込み部８８を有する。図７及び図８から分かるように、各補強フィルム８１，８２は、箱部７９に埋め込まれた埋め込み部８８を有する。

　一対の補強フィルム８１，８２は、第１補強フィルム８１と第２補強フィルム８２として参照され得る。第１補強フィルム８１は、上部補強フィルムとして参照され得る。第２補強フィルム８２は、下部補強フィルムとして参照され得る。

　必ずしもこの限りではないが、図示例を含む幾つかの実施形態においては、第１補強フィルム８１は、テープ主体部２０のみに限らず、屈曲側縁部３０、つまり屈曲部３１及び取り付け部３２上にも貼り付けられる。他方、第２補強フィルム８２は、テープ主体部２０のみに限って貼り付けられる。ファスナーテープ１０に対する第１及び第２補強フィルム８１，８２の貼り付け範囲については様々な変形例が想定され、請求の範囲で明示的に限定される場合を除いて、これらの全ての変形例が請求の範囲内に含まれるものと解釈される。ある変形例においては、第１補強フィルム８１が、第２補強フィルム８２と同様、テープ主体部２０に限って貼り付けられる。別の変形例においては、第２補強フィルム８２は、テープ主体部２０のみに限らず屈曲側縁部３０上、例えば、屈曲部３１及び取り付け部３２の少なくとも一方又は両方にも貼り付けられる。

　各補強フィルム８１，８２は、任意の適切な材料から成る。各補強フィルム８１，８２は、例えば、加熱により軟化する樹脂フィルムであり得る。樹脂フィルムは、ラミネートフィルムとも呼ばれ、商業的に入手可能である。例えば、樹脂フィルムは、ポリエステル、ポリエチレン、ポリアミド、ポリウレタンといった樹脂から成るフィルムである。図示例を含む幾つかの実施形態においては、ファスナーテープ１０と補強フィルムの密着性を高めるため、補強フィルムが加圧され、補強フィルムの表面に格子状の凸部が形成される。

　図示例を含む幾つかの実施形態においては、各末端部材７０は、棒部７４，７６と、フランジ部７５，７７を含み、棒部７４，７６とフランジ部７５，７７の間に溝部Ｇ７が設けられる。棒部７４，７６は、屈曲側縁部３０に対して固着する。フランジ部７５，７７は、屈曲側縁部３０以外の部分であるファスナーテープ１０のテープ主体部２０に対して固着する。フランジ部７５，７７は、末端部材７０自体の機械的な強度を向上させる。また、ファスナーテープ１０に対する末端部材７０の固着力の増加にも寄与する。

　図示例を含む幾つかの実施形態においては、図５及び図６から分かるように、蝶棒部７８は、屈曲側縁部３０に対して固着した棒部７４と、テープ主体部２０に対して固着したフランジ部７５を含む。棒部７４とフランジ部７５の間に溝部Ｇ７が設けられる。図７及び図８から分かるように、箱部７９は、屈曲側縁部３０に対して固着した棒部７６と、テープ主体部２０に対して固着したフランジ部７７を含む。棒部７６とフランジ部７７の間に溝部Ｇ７が設けられる。

　棒部７４，７６とフランジ部７５，７７の間の溝部Ｇ７にはスライダー６０の平板部、図示例を含む幾つかの実施形態では上述の上部平板６２が挿入される。スライダー６０の上部平板６２が補強フィルム８２に接触して補強フィルム８２を傷付けることが回避又は抑制される。溝部Ｇ７を画定するフランジ部７５，７７の壁面７５ｊ，７７ｊは、補強フィルム８２の下面よりも下方に位置する。

　図示例を含む幾つかの実施形態においては、箱部７９は、棒部７６とフランジ部７７に結合した箱部本体７９ｍを有する。箱部本体７９ｍは、蝶棒部７８が嵌合するように構成される。箱部本体７９ｍは、蝶棒部７８の溝部Ｇ７内に挿入される挿入片７９ｉを有する（図４参照）。

　図示例を含む幾つかの実施形態においては、末端部材７０の少なくとも一方は、ファスナーテープのテープ主体部２０に設けられた貫通孔９０に充填された充填部７３と、充填部７３を介して結合した第１部分７１と第２部分７２を含む。これにより、末端部材７０とファスナーテープ１０の一体性が高められる。

　図示例を含む幾つかの実施形態においては、フランジ部７５，７７は、ファスナーテープのテープ主体部２０に設けられた貫通孔９０に充填された充填部７３と、充填部７３を介して結合した第１部分７１と第２部分７２を含む。これにより、末端部材７０とファスナーテープ１０の一体性が高められる。

　図示例を含む幾つかの実施形態においては、図５及び図６から分かるように、蝶棒部７８のフランジ部７５は、ファスナーテープのテープ主体部２０に設けられた貫通孔９０に充填された充填部７３と、充填部７３を介して結合した第１部分７１と第２部分７２を含む。図７及び図８から分かるように、箱部７９のフランジ部７７は、ファスナーテープのテープ主体部２０に設けられた貫通孔９０に充填された充填部７３と、充填部７３を介して結合した第１部分７１と第２部分７２を含む。

　図示例を含む幾つかの実施形態においては、一つの末端部材７０に対して２つの貫通孔９０が設けられる。結果として、一つの末端部材７０は、２つの充填部７３を有する。しかしながら、１つの貫通孔９０が設けられる変形例や、２以上、例えば、３つの貫通孔９０が設けられる変形例も想定される。図示例を含む幾つかの実施形態においては、貫通孔９０が同一直線上に配置されるが、貫通孔９０がジグザグに配置される変形例も想定される。貫通孔９０が、テープ主体部２０ではなく、追加的に屈曲側縁部３０に設けられる変形例も想定される。これらの変形例の様々な組み合わせも想定される。

　図示例を含む幾つかの実施形態においては、補強フィルム８１，８２の少なくとも一方は、フランジ部７５，７７に埋め込まれた端部を有する。図示例を含む幾つかの実施形態においては、図６及び図８から分かるように蝶棒部７８及び箱部７９それぞれにおいて、第２補強フィルム８２が、フランジ部７５，７７に埋め込まれた端部を有する。これにより、第２補強フィルム８２の端部がスライダー６０と直に接触することが回避又は抑制される。

　図示例を含む幾つかの実施形態においては、貫通孔９０は、一対の補強フィルム８１，８２の少なくとも一方を貫通する。図示例を含む幾つかの実施形態においては、貫通孔９０は、一対の補強フィルム８１，８２の両方を貫通する。貫通孔９０がファスナーテープ１０のみを貫通する場合も想定される。これらの変形例については図１４乃至図１７を参照して後述する。

　先に述べたように各補強フィルム８１，８２が末端部材７０に埋め込まれた埋め込み部８８を有し、ファスナーテープ１０からの補強フィルム８１，８２の剥離が回避又は抑制される。この点に関し、図示例を含む幾つかの実施形態においては、埋め込み部８８は、左側のファスナーストリンガー５０上の補強フィルム８１，８２の右側部分を含み、又は、右側のファスナーストリンガー５０上の補強フィルム８１，８２の左側部分を含む。つまり、埋め込み部８８は、各補強フィルム８１，８２の左右方向内側の部分を含む。ファスナーテープ１０からの補強フィルム８１，８２の剥離が効果的に抑制される。

　図示例を含む幾つかの実施形態においては、埋め込み部８８は、左側のファスナーストリンガー５０上の補強フィルム８１，８２の前側部分を含み、又は、右側のファスナーストリンガー５０上の補強フィルム８１，８２の前側部分を含む。つまり、埋め込み部８８は、各補強フィルム８１，８２の前側の部分を含む。ファスナーテープ１０からの補強フィルム８１，８２の剥離が効果的に抑制される。

　図示例を含む幾つかの実施形態においては、末端部材７０の少なくとも一方は、補強フィルム８１，８２の前側輪郭線８３よりも前方に延びるように構成される。ファスナーテープ１０からの補強フィルム８１，８２の剥離が効果的に抑制される。

　図示例を含む幾つかの実施形態においては、ファスナーテープ１０の末端部１８には末端部材７０に隣接して切り欠き１３が設けられる。切り欠き１３は、末端部材７０により部分的に占有される。

　蝶棒部７８と箱部７９が結合される時、箱部７９の前方に隣接して配されたスライダー６０の左側の前口６６からスライダー６０内に蝶棒部７８が挿入される。蝶棒部７８はスライダー６０内を移動し、箱部７９の箱部本体に嵌合する。スライダー６０が前方に引かれ、左右のファスナーエレメント４０の噛合が開始する。

　蝶棒部７８と箱部７９の結合が解除される時、スライダー６０が後進し、その上部平板６２が隙間ＳＰ５から各末端部材７０の溝部Ｇ７に進入する。スライダー６０は箱部７９の箱部本体７９ｍに衝突し、そこで停止する。左右の各ファスナーエレメント４０の噛合が完全に解除される。蝶棒部７８を前方に移動することにより箱部７９及びスライダー６０から蝶棒部７８が外される。

　上述のスライドファスナー１００は、当業者により様々な製造装置を用いて様々な製造方法により製造される。スライドファスナー１００の製造方法の一例を提示することは、熟練した当業者には冗長であろう。しかしながら、未熟な当業者には有益であろう。本開示においては、このような観点から、以下、スライドファスナー１００の製造方法の非限定の一例を提示する。もちろん、本開示に係るスライドファスナー１００は、様々な製造装置を用いて様々な製造方法により製造されることが予定されている。本開示に係るスライドファスナー１００の製造方法は、以下の特定の製造方法に限定されるべきものではない。当業者は、以下の特定の製造方法の記述に照らして、他の様々な製造方法を想起し得るだろう。

　図示例を含む幾つかの実施形態においては、スライドファスナー１００の製造方法は、図９乃至図１３に示すようにファスナーチェーン９００を処理する工程を含む。図９は、ファスナーエレメント４０が部分的に除去されたスペース部Ｒ１が設けられたファスナーチェーン９００を示す。図１０は、ファスナーチェーン９００のスペース部Ｒ１においてファスナーテープ１０の各テープ面に補強フィルム８１，８２を貼り付ける工程を示す。図１１は、スペース部Ｒ１において少なくともファスナーテープ１０を貫通する貫通孔９０を形成する工程と、スペース部Ｒ１において切り欠き１３を形成する工程を示す。図１２は、ファスナーチェーン９００を開く工程を示す。図１３は、スペース部Ｒ１においてファスナーエレメント４０に隣接してファスナーテープ１０に固着する樹脂製の末端部材７０を形成する工程を示す。末端部材７０は、蝶棒部７８又は箱部７９である。図示例を含む幾つかの実施形態においては、各補強フィルム８１，８２が末端部材７０に埋め込まれた埋め込み部８８を有するように末端部材７０が形成される。

　補強フィルム８１，８２によってファスナーテープ１０が挟まれ、ファスナーテープ１０が保護される。また、補強フィルム８１，８２が設けられた場所でファスナーテープ１０の柔軟性が低下し、末端部材７０の操作性が向上する。補強フィルム８１，８２が末端部材７０に埋め込まれた埋め込み部８８を有するため、ファスナーテープ１０から補強フィルム８１，８２が容易に剥がれることが抑制される。

　図示例を含む幾つかの実施形態においては、スペース部Ｒ１において少なくともファスナーテープ１０を貫通する貫通孔９０を形成する工程は、スペース部Ｒ１において補強フィルム８１，８２とファスナーテープ１０を貫通する貫通孔９０を形成する工程を含む。

　図示例を含む幾つかの実施形態においては、スペース部Ｒ１においてファスナーエレメント４０に隣接してファスナーテープ１０に固着する樹脂製の末端部材７０を形成する工程は、ファスナーテープ１０を挟んだ状態で樹脂を射出成形するための第１及び第２型を用いる。少なくとも切り欠き１３においては、第１及び第２型が接触する。

　図１３に続いてスペース部Ｒ１においてファスナーチェーン９００が切断される。これによりファスナーチェーン９００から多数のスライドファスナー１００が取り出される。必ずしもこの限りではないが、幾つかの場合、スライダー６０は、図９の工程の前に既にファスナーチェーン９００のファスナーエレメント４０に挿通されている。

　図１４及び図１５は、貫通孔９０が第１補強フィルム８１とテープ主体部２０を貫通する例を示す。図１６及び図１７は、貫通孔９０がテープ主体部２０のみを貫通する例を示す。このような変形例においても先に述べた特徴と同一の効果が得られる。「本開示において」又は「図示例を含む幾つかの実施形態においては」又はこれに類する表現で述べられた特徴は、ある一つの形態、例えば、図示例に限られるものではなく、他の様々な形態、例えば、不図示の様々な変形例にも通用する特徴として理解される。

　上述の教示を踏まえると、当業者をすれば、各実施形態に対して様々な変更を加えることができる。請求の範囲に盛り込まれた符号は、参考のためであり、請求の範囲を限定解釈する目的で参照されるべきものではない。

１０　　　　　　ファスナーテープ
１１　　　　　　テープ面
１２　　　　　　テープ面
１８　　　　　　末端部
３０　　　　　　屈曲側縁部
４０　　　　　　ファスナーエレメント
５０　　　　　　ファスナーストリンガー
６０　　　　　　スライダー
７０　　　　　　末端部材
７８　　　　　　蝶棒部
７９　　　　　　箱部
８１　　　　　　補強フィルム
８２　　　　　　補強フィルム
８８　　　　　　埋め込み部
１００　　　　　　スライドファスナー

Claims

　ファスナーテープ（１０）の屈曲側縁部（３０）にファスナーエレメント（４０）が設けられた一対のファスナーストリンガー（５０）と、
　前記一対のファスナーストリンガー（５０）を開閉するべく移動するスライダー（６０）と、
　前記ファスナーテープ（１０）の長手方向における前記ファスナーテープ（１０）の末端部（１８）において前記ファスナーエレメント（４０）に隣接して前記ファスナーテープ（１０）に固着した樹脂製の一対の末端部材（７０）にして、蝶棒部（７８）と、前記蝶棒部（７８）を受け入れるように構成された箱部（７９）から構成される一対の末端部材（７０）を備え、
　少なくとも一方の前記ファスナーテープ（１０）の各テープ面（１１，１２）には前記末端部（１８）において補強フィルム（８１，８２）が貼り付けられ、各補強フィルム（８１，８２）は、前記末端部材（７０）に埋め込まれた埋め込み部（８８）を有する、スライドファスナー。
　前記末端部材（７０）は、棒部（７４，７６）及びフランジ部（７５，７７）を含み、
　前記棒部（７４，７６）と前記フランジ部（７５，７７）の間に溝部（Ｇ７）が設けられる、請求項１に記載のスライドファスナー。
　前記補強フィルム（８１，８２）の少なくとも一方は、前記フランジ部（７５，７７）に埋め込まれた端部を有する、請求項２に記載のスライドファスナー。
　前記末端部材（７０）の少なくとも一方は、
　前記ファスナーテープのテープ主体部（２０）に設けられた貫通孔（９０）に充填された充填部（７３）と、前記充填部（７３）を介して結合した第１部分（７１）と第２部分（７２）を含む、請求項１乃至３のいずれか一項に記載のスライドファスナー。
　前記貫通孔（９０）は、前記補強フィルム（８１，８２）の少なくとも一方を貫通する、請求項４に記載のスライドファスナー。
　前記貫通孔（９０）は、前記補強フィルム（８１，８２）の両方を貫通する、請求項４又は５に記載のスライドファスナー。
　前記一対のファスナーストリンガー（５０）が左右方向において隣接して設けられ、
　前記スライダー（６０）の前進により前記一対のファスナーストリンガー（５０）が閉じられる、請求項１乃至６のいずれか一項に記載のスライドファスナーであって、
　前記埋め込み部（８８）は、左側のファスナーストリンガー（５０）上の前記補強フィルム（８１，８２）の右側部分を含み、又は、右側のファスナーストリンガー（５０）上の前記補強フィルム（８１，８２）の左側部分を含む、スライドファスナー。
　前記一対のファスナーストリンガー（５０）が左右方向において隣接して設けられ、
　前記スライダー（６０）の前進により前記一対のファスナーストリンガー（５０）が閉じられる、請求項１乃至７のいずれか一項に記載のスライドファスナーであって、
　前記末端部材（７０）の少なくとも一方は、前記補強フィルム（８１，８２）の前側輪郭線（８３）よりも前方に延びるように構成される、スライドファスナー。
　前記ファスナーテープ（１０）の前記末端部（１８）には前記末端部材（７０）に隣接して切り欠き（１３）が設けられる、請求項１乃至８のいずれか一項に記載のスライドファスナー。
　前記蝶棒部（７８）は、前記ファスナーテープ（１０）の長手方向沿いに延びる棒状部分である、請求項１乃至９のいずれか一項に記載のスライドファスナー。
　ファスナーテープ（１０）の屈曲側縁部（３０）にファスナーエレメント（４０）が設けられた一対のファスナーストリンガー（５０）を含み、前記ファスナーエレメント（４０）が部分的に除去されたスペース部（Ｒ１）が設けられたファスナーチェーン（９００）の前記スペース部（Ｒ１）において少なくとも一方の前記ファスナーテープ（１０）の各テープ面に補強フィルム（８１，８２）を貼り付ける工程と、
　前記スペース部（Ｒ１）において前記ファスナーエレメント（４０）に隣接して前記ファスナーテープ（１０）に固着する樹脂製の末端部材（７０）を形成する工程にして、前記末端部材（７０）が蝶棒部（７８）又は箱部（７９）である工程を含み、
　各補強フィルム（８１，８２）が前記末端部材（７０）に埋め込まれた埋め込み部（８８）を有するように前記末端部材（７０）が形成される、スライドファスナーの製造方法。
　前記スペース部（Ｒ１）において少なくとも前記ファスナーテープ（１０）を貫通する貫通孔（９０）を形成する工程を更に含む、請求項１１に記載のスライドファスナーの製造方法。
　前記スペース部（Ｒ１）において少なくとも前記ファスナーテープ（１０）を貫通する貫通孔（９０）を形成する工程は、前記スペース部（Ｒ１）において前記補強フィルム（８１，８２）と前記ファスナーテープ（１０）を貫通する貫通孔（９０）を形成する工程を含む、請求項１２に記載のスライドファスナーの製造方法。
　前記スペース部（Ｒ１）において切り欠き（１３）を形成する工程を更に含む、請求項１１乃至１３のいずれか一項に記載のスライドファスナーの製造方法。
　前記スペース部（Ｒ１）において前記ファスナーエレメント（４０）に隣接して前記ファスナーテープ（１０）に固着する樹脂製の末端部材（７０）を形成する工程は、少なくとも前記切り欠き（１３）において第１及び第２型を接触させる工程を含む、請求項１４に記載のスライドファスナーの製造方法。