WO2013099015A1

WO2013099015A1 - スライドファスナー用引手

Info

Publication number: WO2013099015A1
Application number: PCT/JP2011/080500
Authority: WO
Inventors: 槻　慶一; 秀哉武; 貴敬小澤
Original assignee: Ykk株式会社
Priority date: 2011-12-28
Filing date: 2011-12-28
Publication date: 2013-07-04
Also published as: TW201332477A; TWI466644B; CN104023582B; CN104023582A

Abstract

　スライダー胴体上に設けられた引手係脱部へ係着するための一対の片持係止片が形成されている開口窓部を備えたスライドファスナー用引手において、開口窓部に別のスライダーの引手が入り込むことを防止する。本発明によれば、少なくとも一方の片持係止片５５上に、対向する他方の片持係止片に向かって突設された連結防止凸部５７（凸部５７）を有するスライドファスナー用引手が提供される。

Description

スライドファスナー用引手

　本発明は、スライドファスナー用引手に関する。また、本発明は当該引手を備えたスライドファスナー用スライダー、とりわけ停止爪体による自動停止機構を備えたスライドファスナー用スライダーに関する。

　従来から、スライドファスナーに用いられるスライダーとして、スライドファスナーを開閉した後に、引手の操作を解除するとスライダー内部に装着された停止爪体がばね力によってスライダーの停止位置を保持し、引手を操作しないかぎりスライダーの摺動停止状態を保持することが可能な自動停止機構付きのスライダーが知られている。このようなスライダーの例が国際公開第２０１０／０７０７４４号（特許文献１）に開示されている。

　図８及び図９に示すように、特許文献１に記載されているスライダー１Ｃは、上下翼板２１，２２の前端部が連結柱２３により連結され、前記上下翼板２１，２２間にＹ字状のエレメント案内路が配されたスライダー胴体２と、前記上翼板２１に一端部が回動可能に保持された引手５と、引手５を後口２７側に倒伏させたときに同引手５を抜脱可能に係着させる引手係脱部３６と、前記上翼板２１に配され、一端に爪部６１を備えた停止爪体６とを有している。また、前記上翼板２１は、前記停止爪体６が挿入される挿入溝３２と、前記停止爪体６の他端部を加締め固定する加締め部３４と、前記爪部６１を挿通可能に穿設した爪孔３７とを備え、前記停止爪体６は、前記引手５の倒伏・起立操作により、前記爪部６１が前記爪孔３７を介して前記エレメント案内路に挿入・抜出可能なように配されてなる。

　引手５は、引手本体部５１と、引手本体部５１の一端から平行に延設された左右のアーム部５２と、左右のアーム部５２の先端部を連結する連結杆５３とを有している。また、引手本体部５１における表裏面の中央部分には、表裏方向に貫通する矩形状の開口窓部５４が設けられており、この開口窓部５４を取り囲む側壁部のうち引手５の他端部側に配された側壁部５４ａからは、左右の片持係止片５５が連結杆５３側に向けて延設されている。そして、左右の片持係止片５５は、互いの間隔が基端側から先端側に向けて傾斜して延設された第１係止片部５５ａと、第１係止片部５５ａの先端から互いに平行に延設された第２係止片部５５ｂとを有している。この場合、左右の第２係止片部５５ｂの間隔は、スライダー胴体２に配した引手係脱部３６の首部３６ａの幅寸法よりも大きく、且つ、同引手係脱部３６の係脱頭部３６ｂの幅寸法よりも小さく設定されている。

国際公開第２０１０／０７０７４４号

　特許文献１に記載されたスライダーによれば、引手の片持係止片をスライダー胴体上の引手係脱部に係着させることによって、引手を倒伏した状態で保持することができるので、引手の動作を制御可能である。特に、引手の倒伏・起立状態によって停止爪体のエレメント案内路への挿入・抜出を制御し、これによりスライダーの摺動を制御する自動停止機構を備えたスライダーにおいては、停止爪体の爪部がエレメント案内路内に突出してエレメント列に係着した状態を安定して維持し、スライダーをその停止位置で確実に保持することができるので、意図せずスライダーが摺動し、スライドファスナーが開閉動作を行ってしまうことを防止可能である。

　しかしながら、スライダーを工業的に生産する際には、着色工程、研磨工程に代表される多くの液体処理をスライダーあるいは、スライダーを構成する各部品に対して一括して実施する工程がある。この場合、特に先行技術に記載されているような一対の片持係止片を有する複数個の引手を一つの処理槽の中でまとめて液体処理を行う場合、引手に形成されている片持係止片の間に別の引手の先端が入り込むことにより両引手が連結してしまうこと（以下、本明細書では当該連結を「アベック」と称することがある。）がある。特にこのような一対の片持係止片を有する引手の場合、その片持係止片弾性変形するが故に、一旦なにか異物がはまり込んでしまうと、なかなかはずすことができない。またこのような連結状態となった引手は、各引手同士の接触面が着色等されず不良となってしまっていた。

　そこで、本発明は、スライダー胴体上に設けられた引手係脱部へ係着するための一対の片持係止片が形成されている開口窓部を備えたスライドファスナー用引手において、開口窓部に別のスライダーの引手が入り込むことを防止することを課題の一つとする。本発明は、そのような引手を備えたスライドファスナー用スライダーを提供することを別の課題の一つとする。また、本発明は、そのようなスライドファスナー用スライダーを備えたスライドファスナーを提供することを更に別の課題の一つとする。

　本発明者は上記課題を解決するために鋭意検討したところ、開口窓部に形成された一対の片持係止片の少なくとも一方に、別のスライダーの引手の進入を妨害するための突起を設けることが有効であることを見出した。

　本発明は上記着想に基づいて完成したものであり、一側面において、スライダー胴体上に設けられた引手係脱部へ抜脱可能に係着するための、一対の片持係止片が形成されている開口窓部を備えたスライドファスナー用引手であって、少なくとも一方の片持係止片上に、対向する他方の片持係止片に向かって突設された連結防止凸部を有するスライドファスナー用引手である。

　本発明に係るスライドファスナー用引手の一実施形態においては、両方の片持係止片がそれぞれ対向する片持係止片に向かって突設された連結防止凸部を有する。

　本発明に係るスライドファスナー用引手の別の一実施形態においては、各連結防止凸部は、互いに近接する方向に突設されている。

　本発明に係るスライドファスナー用引手の更に別の一実施形態においては、各片持係止片は基端側から先端側に向けて互いの間隔が広くなる方向に傾斜して延設された第１係止片部と、第１係止片部の先端から互いに平行に延設された第２係止片部とを有しており、前記連結防止凸部は第１係止片部と第２係止片部の境界に設けられている。

　本発明に係るスライドファスナー用引手の更に別の一実施形態においては、表裏面の少なくとも一方に表裏面に対して垂直方向に突設された***部を先端に備える。

　本発明に係るスライドファスナー用引手の更に別の一実施形態においては、一対の片持係止片は、開口窓部を取り囲む側壁部のうち引手の先端側に配された側壁部を基端として、引手の回動軸側に向かって延設されている。

　本発明は別の一側面において、スライダー胴体上に設けられた引手係脱部へ抜脱可能に係着するための、一対の片持係止片が形成されている開口窓部を備えたスライドファスナー用引手であって、少なくとも一方の片持係止片上に、対向する他方の片持係止片に向かって突設された凸部を有し、前記片持係止片の先端における間隔よりも前記凸部と前記凸部に対向する片持係止片側の側面との距離が小さくなるように設定されていることを特徴とするスライドファスナー用引手である。

　本発明は更に別の一側面において、スライダー胴体上に設けられた引手係脱部へ抜脱可能に係着するための、一対の片持係止片が形成されている開口窓部を備えたスライドファスナー用引手であって、少なくとも一方の片持係止片上に、対向する他方の片持係止片に向かって突設された凸部を有し、前記凸部と同凸部に対向する他方の片持係止片側の側面との距離よりも引手の先端側における厚みを大きく設定したことを特徴とするスライドファスナー用引手である。

　本発明は更に別の一側面において、スライダー胴体上に突設された引手係脱部と、本発明に係るスライドファスナー用引手を備えたスライドファスナー用スライダーである。

　本発明は更に別の一側面において、上翼板及び下翼板の前端側が連結柱により連結され、前記上翼板及び下翼板の間にＹ字状のエレメント案内路が配されたスライダー胴体と、前記上翼板に一端が回動可能に保持された引手と、前記上翼板に載置され、一端に爪部を備えた停止爪体とを有し、前記上翼板は、前記停止爪体が挿入される前後方向に延設された挿入溝と、前記停止爪体を加締め固定する一対の加締め柱と、前記爪部を挿通可能に穿設した爪孔とを備え、前記停止爪体は、前記引手の倒伏・起立操作により、前記爪部が前記爪孔を介して前記エレメント案内路に挿入・抜出可能なように配されてなるスライドファスナー用スライダーであって、引手は、本発明に係るスライドファスナー用引手であるスライドファスナー用スライダーである。

　本発明は更に別の一側面において、本発明に係るスライドファスナー用スライダーを備えたスライドファスナーである。

本発明の一実施形態に係る引手がスライドファスナー用スライダーの上翼板に一端部が回動可能に保持されている様子を例示的に示す斜視図である。本発明の一実施形態に係る引手の底面図（Ｘ）及び正面図（Ｙ）である。本発明に係る引手を使用することにより、引手の開口窓部に別のスライダーの引手が入り込む現象を防止している様子を示す模式図である。本発明の一実施形態に係るスライダーにおいて、構成部品が分離した状態を示す斜視図である。本発明の一実施形態に係るスライダーが組み立てられた状態を示す斜視図である。本発明の一実施形態に係るスライダーの加締め操作前の半製品について、切断面を前後方向及び上下方向に平行に形成したときの中央断面図であり、停止爪体を載置する前（ａ）及び後（ｂ）の様子を示す。本発明の別の一実施形態に係る引手の底面図（Ｘ’）及び正面図（Ｙ’）である。特許文献１に記載のスライダーにおいて、構成部品が分離した状態を示す斜視図である。特許文献１に記載のスライダーにおいて、加締め部が設けられている部位の断面図である。

　本発明の引手においては、引手の回動軸に平行な方向を左右方向として定義する。また、本発明のスライダーにおいて、同スライダーがエレメント列を噛合させるように摺動する向きを前方とし、エレメント列を分離させるように摺動する向きを後方とする。また、上下翼板に直交する方向を上下方向とし、上下翼板に平行で、スライダー摺動方向に直交する方向を左右方向として定義する。

＜引手の各種実施形態＞
　本発明に係るスライドファスナー用引手の各種の実施形態について図面を参照しながら詳説する。図１には、本発明の一実施形態に係る引手５がスライドファスナー用スライダー１Ａの上翼板２１に一端部が回動可能に保持されている様子が示されている。本発明に係る引手５は、スライダー胴体２上に設けられた引手係脱部３６へ抜脱可能に係着するための、一対の片持係止片５５が形成されている開口窓部５４を備える。

　一対の片持係止片５５の間隔は、引手係脱部３６の係脱頭部３６ｂの左右の幅寸法に比べて若干狭い。そのため、引手５を引手係脱部３６へ係着させようとして引手５を回動させながら倒伏し、引手係脱部３６に押圧を加えると、一対の片持係止片５５は、引手５に加えられる押圧によって、その間隔が弾性変形によって一時的に広がる。その後、引手５に押圧を加え続けると、一対の片持係止片５５は、引手係脱部３６の係脱頭部３６ｂを乗り越えて、左右の幅寸法が一対の片持係止片５５の間隔と同じかそれよりも小さい首部３６ａまで到達する。このとき、一対の片持係止片５５の間隔は元に戻り、係着が完了する。

　本実施形態においては、一対の片持係止片５５は、矩形の開口窓部５４を取り囲む側壁部のうち引手５の先端５８側に配された側壁部を基端として、引手５の回動軸側に向かって延設されている。一対の片持係止片５５の基端は、開口窓部５４を取り囲む側壁部５４ａのうち引手５の先端５８側に配された側壁部に限られるものではなく、回動軸側に配された側壁部とすることもでき、左側又は右側の側壁部とすることもできる。ただし、スライダーの基本的な構造の性能を維持しつつ、簡単に引手胴体の係脱頭部３６ｂと係脱可能な構造とするためには一対の片持係止片５５の基端は、先端５８側に配されていることが好ましい。

　本実施形態においては、各片持係止片５５は基端側から先端側に向けて互いの間隔が広くなる方向に傾斜して延設された第１係止片部５５ａと、第１係止片部５５ａの先端から互いに平行に延設された第２係止片部５５ｂとを有している。これにより、片持係止片５５は斜め方向から側壁部５４ａと連結するので、片持係止片５５と側壁部の境界における断面積を大きくでき、片持係止片５５の根元を強化できる。片持係止片５５は、引手係脱部３６への脱着操作によって、弾性変形を繰り返し受けることになるが、片持係止片５５の根元を強化することで、この繰り返し弾性変形に対する耐久性を向上させることになる。また、引手係脱部３６との接触する部分である第２係止片部５５ｂは、引手係脱部３６の係脱頭部３６ｂの左右の側壁に合わせて平行に形成されているので、第２係止片部５５ｂと引手係脱部３６の接触箇所が多少ずれても係着や抜脱に必要な力が変化することはほとんどなくスムーズな係脱操作を可能とする。

　本実施形態では、第１係止片部５５ａは、基端側から先端側に向けて互いの間隔が広くなる方向に傾斜して延設されているが、逆に基端側から先端側に向けて互いの間隔が狭くなる方向に傾斜して延設されていてもよい。ただし、そのような態様だと、脱着操作時に根元への負担が増加する懸念があり、また、空間的制約もある点に留意すべきである。

　その他、片持係止片５５は途中で屈曲することなく基端から先端まで平行に直線的に延設してもよい。途中で湾曲した形状としてもよい。片持係止片５５の太さに変化を与えること、例えば耐久性を上げるために根元を太くすることもできる。

　また、本発明に係る引手は、一対の片持係止片５５のうち少なくとも一方の片持係止片５５上に、対向する他方の片持係止片５５に向かって突設された連結防止凸部５７を有する。連結防止凸部５７が存在することにより、図３に示すように、別の引手が開口窓部５４に入り込んで連結するというアベックの問題が生じるのを防ぐことが可能となり、生産効率が上昇する。なお、本発明における連結防止凸部とは、単に凸部と言い換えることもできる。

　連結防止凸部５７は片方の片持係止片５５にのみ設けることができ、両方の片持係止片５５に設けることもできる。但し、一方の片持係止片５５にのみ連結防止凸部５７を設ける場合や、両方の片持係止片５５に設ける場合でも片持係止片５５の基端からの距離が異なる箇所に段違いに連結防止凸部５７を設置する場合には、所望のアベック防止効果を得るために連結防止凸部５７の高さを長くする必要があるので、折れの問題が生じやすくなる。また、左右非対称となることによる美観上の問題もある。そこで、本実施形態に係る引手のように、連結防止凸部５７は両方の片持係止片５５からそれぞれ対向する片持係止片に向かって互いに近接する方向に突設されることが好ましく、各片持係止片５５の基端からの距離が同じ箇所に設けることがより好ましく、左右対称に設けることが更により好ましい。二つの連結防止凸部５７の頂点同士はできるだけ近接している方がアベック防止効果が高いので、最終的には連結することにより両者を架橋することもできるが、片持係止片５５の引手係脱部３６への脱着抵抗が大きくなるので、頂点同士は分離していることが好ましい。

　連結防止凸部５７は、片持係止片５５と引手係脱部３６の係着に干渉しない箇所であれば特に制限無く設けることができる。しかしながら、片持係止片５５の基端側に近づき過ぎるとアベックを防止する効果が低減する。従って、連結防止凸部５７は片持係止片５５と引手係脱部３６の係着に干渉しない範囲でできるだけ片持係止片５５の先端側に設けることが好ましい。例えば、本実施形態のように、第１係止片部５５ａと第２係止片部５５ｂの境界に設けることが好ましい。

　また、引手５の先端５８には、表裏面の少なくとも一方に表裏面に対して垂直方向に突設された***部５９を備えることが好ましい。これにより、引手５の先端５８が一対の片持係止片５５の間の隙間に入り込み難くなるからである。この***部５９は引手５の表裏の何れか一方のみに設けることもでき、表裏の両方に設けることもできるが、引手５の表裏の判別という役割を付与することができるので、一方のみに設けることが好ましい。もちろん、後述するとおり、引手の厚みｄに対して連結防止凸部の頂点間の距離Ｃが小さければ***部５９を設ける必要は無い。

　図２には、本実施形態に係る引手５の底面図（Ｘ）及び正面図（Ｙ）が示されている。引手５の連結防止用凸部５７は、前記片持係止片５５の先端における間隔ｇよりも、前記連結防止用凸部５７と前記連結防止用凸部５７に対向する片持係止片側の側面との距離ｃ（図２においては対向する連結防止凸部の頂点間の距離）が小さくなるように設定されている。このように連結防止用凸部は片持係止片５５の中間位置において突出し、一対の片持係止片５５の間にある空間を小さくするように設定されることが好ましい。換言すれば、引手５の先端５８における左右の幅寸法をａ、開口窓部５４の回動軸側の側壁から連結防止凸部５７の回動軸側の側壁までの距離をｂ、対向する連結防止凸部の頂点間の距離をｃ、引手５の厚み（***部５９が存在する場合はそれも加味する）をｄとすると、アベックを有効に防止する観点からは、ａ＞ｂ、ｄ＞ｃとすることが好ましい。なお、“引手５の先端５８における左右の幅寸法ａ”とは、引手５の最先端から、片持係止片５５の厚み（すなわち、片持係止片５５における引手５の表裏方向の長さ）だけ引手５の回動軸側へ後退した箇所までの範囲における、引手５の左右方向の幅寸法のうち、最も長い寸法を指す。

　更に、片持係止片５５の基端から回動軸側への長さをｅ、開口窓部５４の引手先端側の側壁から連結防止凸部５７の回動軸側の側壁までの距離をｆとすると、片持係止片５５と引手係脱部３６が係着する十分な領域を確保する観点から、１／２ｅ＞ｆとするのが好ましい。

　図７には、本発明の別の一実施形態に係る引手５の底面図（Ｘ’）及び正面図（Ｙ’）が示されている。本実施形態においては、連結防止凸部５７は片方の片持係止片５５のみにしか設けられていない。しかしながら、本実施形態においても、先の実施形態と同様に、引手５の連結防止用凸部５７は、片持係止片５５の先端における間隔ｇよりも、連結防止用凸部５７と連結防止用凸部５７に対向する片持係止片側の側面との距離ｃが小さくなるように設定されている。また、本実施形態においては、***部５９は存在しないが、先の実施形態と同様に、引手５の厚みをｄとすると、ｄ＞ｃを満たしている。

＜本発明に係る引手を備えた自動停止機構付きスライダーの一実施形態＞
　図４は、本発明の一実施形態に係るスライドファスナー用スライダーを構成する部品が分離した状態を示す斜視図である。当該スライダーは本発明に係るスライドファスナー用引手を備えている。図５は、同スライダーが組み立てられた状態を示す斜視図である。図６は、本発明の一実施形態に係るスライダーの加締め操作前の半製品について、切断面を前後方向及び上下方向に平行に形成したときの中央断面図であり、停止爪体を載置する前（ａ）及び後（ｂ）の様子を示す。

　本実施形態に係るスライドファスナー用スライダー１Ｂは、スライダー胴体２と、スライダー胴体２に一端が回動可能に保持される引手５と、スライダー胴体２に載置される停止爪体６とを有している。本実施形態のスライダー１Ｂにおいて、スライダー胴体２及び引手５は、銅合金、アルミニウム合金、亜鉛合金などの金属材料を使用してダイキャスト成形によって作製されている。また、停止爪体６は、ステンレスや銅合金等の金属材料を使用してプレス成形により作製されている。

　前記スライダー胴体２は、上翼板２１と、下翼板２２と、この上下翼板２１，２２の前端側間を連結する連結柱２３とを有している。上翼板２１の左右側部には、下翼板２２に向けて上フランジ部２４が形成され、下翼板２２の左右側部には、上翼板２１に向けて下フランジ部２５が形成されている。

　また、スライダー胴体２は、スライダー胴体２の前端であって、連結柱２３の左右両側に配された肩口２６と、スライダー胴体２の後端に配された後口２７とを有しており、上下翼板２１，２２の間には、左右の肩口２６と後口２７とを連結するＹ字形のエレメント案内路２８が形成されている。

　同スライダー胴体２の上翼板２１は、停止爪体６が挿入される前後方向に延設された挿入溝３２と、引手５の一端を回動可能に保持する左右の引手保持部３１と、上翼板２１の前端部に挿入溝３２を左右から挟むように、そして上翼板上面よりも低くなるように凹設された凹部３３と、挿入溝３２を左右から挟むようにして凹部３３の底面部から立設された一対の加締め柱３４と、引手保持部３１と凹部３３との間で且つ挿入溝３２の左右両側に配され、上翼板２１の上面から***した***部３５と、引手５を後口２７側に倒伏させたときに同引手５を抜脱可能に係着させる引手係脱部３６とを有している。

　前記引手保持部３１は、挿入溝３２の左右両側に突設された前後一対の引手加締め用突起３１ａ、３１ｂを有しており、引手５の後述する連結杆５３が前後の引手加締め用突起３１ａ、３１ｂ間に挿入された後、この前後一対の引手加締め用突起３１ａ、３１ｂを互いに近づける方向へ屈曲させて加締めることにより、引手５の連結杆５３が回動軸となって引手保持部３１に回動可能に保持することができる。

　前記挿入溝３２は、停止爪体６を安定して挿入できるように停止爪体６の幅寸法（左右方向の寸法）と同等の溝幅、又は同幅寸法よりも少し大きな溝幅を有している。更に、同挿入溝３２の後方には、挿入溝３２内に停止爪体６を挿入したときに同停止爪体６の後述する爪部６１を挿通することが可能な爪孔３７が穿設されている。

　前記凹部３３は、上翼板２１の連結柱２３が連結されている部位（即ち、前端部）の上面側に凹設されている。本実施形態において、凹部３３の左右方向中央部には前記挿入溝３２が前後方向に延設されているため、同凹部３３は、挿入溝３２を挟むように左右に分かれて配されている。更に、この凹部３３の前半部を取り囲む部分には、上翼板２１の上面と凹部３３の底面部との間の高さ位置に段差面を有する段差部３８が形成されている。

　前記停止爪体６は銅合金あるいは、ステンレスや銅合金などの、金属製で弾性を備えており、スライダー胴体２の爪孔３７を介してエレメント案内路２８内に挿入・抜出可能な爪部６１をその一端に有するとともに、挿入溝３２の前端３２ａに嵌入されるフック部６２を他端に有している。フック部６２は他端を挿入溝３２側に屈曲させることで形成されている。挿入溝３２の前端３２ａは下方に傾斜して凹部を形成しており、ここにフック部６２を嵌入できるようになっている。

　停止爪体６の爪部６１とフック部６２との間には、爪部６１に近い方に、引手５の連結杆５３及びカム部５６を上方から覆うように配される断面略Ｕ字状のカバー部６３が設けられており、フック部６２に近い方に、挿入溝３２に沿って載置される平坦部６５が設けられている。

　前記***部３５は、挿入溝３２の左右両側に上翼板２１の上面から盛り上がるように配されている。このような***部３５が配されていれば、例えば停止爪体６が挿入溝３２に配置され、更に引手５の操作によって停止爪体６が挿入溝３２内で上下動したときに、同停止爪体６の一部が上翼板２１の上面よりも上方に移動しても、停止爪体６が挿入溝３２内から飛び出さないように***部３５によって停止爪体６を左右側方から隠して見え難くすることができ、これによって、スライダー１Ｂの見栄えを向上させることができる。

　また、この***部３５は、後述するように引手５をスライダー胴体２に取り付けて連結柱２３側に倒伏させたときに、引手５を当接させることによって引手５の回動限界を定めている。これにより、引手５を連結柱２３側に完全に倒伏させても、倒伏した引手５と上翼板２１の上面との間に間隙を設けて、同引手５が加締め柱３４に衝突することを防止できる。

　引手係脱部３６は、上翼板２１の後口２７側端部の上面中央から上方に向けて突設されている。この引手係脱部３６は、上翼板２１の上面から起立する首部３６ａと、首部３６ａの上端に配され、首部３６ａよりも左右方向に膨らんだ係脱頭部３６ｂとを有している。この場合、係脱頭部３６ｂの前後方向の寸法は、首部３６ａと同一の寸法に設定されている。また、係脱頭部３６ｂの上面は平坦に形成されるとともに、その左右側縁部は、外側に円弧状に膨出して形成されている。

　本実施形態における前記引手５は、引手本体部５１と、引手本体部５１の一端から平行に延設された左右のアーム部５２と、左右のアーム部５２の先端部を連結する連結杆５３とを有している。また、引手５の中央部分には、表裏方向に貫通する矩形状の開口窓部５４が設けられており、この開口窓部５４を取り囲む側壁部のうち引手５の他端側に配された側壁部５４ａからは、左右の片持係止片５５が連結杆５３側に向けて延設されている。

　特に、左右の片持係止片５５は、互いの間隔が基端側から先端側に向けて互いの間隔が広くなる方向に傾斜して延設された第１係止片部５５ａと、第１係止片部５５ａの先端から互いに平行に延設された第２係止片部５５ｂとを有している。この場合、左右の第２係止片部５５ｂの間隔は、スライダー胴体２に配した引手係脱部３６の首部３６ａの幅寸法よりも大きく、且つ、同引手係脱部３６の係脱頭部３６ｂの幅寸法よりも小さく設定されている。

　左右の片持係止片５５の第１係止片部５５ａと第２係止片部５５ｂの境界にはそれぞれ内側面に連結防止凸部５７が互いに接近する方向に突設されている。連結防止凸部５７は第１係止片部５５ａと第２係止片部５５ｂの境界に設けられている。先述したように、連結防止凸部５７が存在することにより、別の引手が開口窓部に入り込んで連結するという問題が生じるのを防ぐことが可能となり、アベックを解除する工程が不要となるため、生産効率が上昇する。

　同引手５の連結杆５３は、長円形断面を有するように長円柱状に形成されており、連結杆５３の中央部には、連結杆５３と、左右のアーム部５２と、引手本体部５１の一端縁とにより形成される開口内に突出するカム部５６が一体的に設けられている。このカム部５６は、引手５の長さ方向に直交するカム部５６の断面がカム部５６の基端側から先端側に向けて漸減するテーパー状となっている。

　停止爪体６のカバー部６３は、スライダー胴体２に配された左右の引手保持部３１間の間隔よりも小さく、且つ、スライダー胴体２に形成した挿入溝３２の溝幅よりも大きい幅寸法を有している。また、停止爪体６のカバー部６３よりも他端側の部位は、スライダー胴体２に形成した挿入溝３２の溝幅と同じかそれよりも小さい幅寸法を有している。

　また、本実施形態のスライダー１Ｂは、例えば図６の（ｂ）に示したように、引手５をスライダー胴体２の後口２７側に倒伏させることによって、引手５の連結杆５３に形成したカム部５６は、上翼板２１の上面に対して略平行な方向に向けられる。このとき、引手５のカム部５６は停止爪体６のカバー部６３と干渉しないため、停止爪体６のカバー部６３がカム部５６によって持ち上げられることはなく、停止爪体６の爪部６１が爪孔３７を介してエレメント案内路２８内に突出した状態となる。

　従って、本実施形態のスライダー１Ｂをファスナーチェーンのエレメント列に挿通させてスライドファスナーを構成したときに、引手５をスライダー胴体２の後口２７側に倒伏させることにより、停止爪体６の爪部６１がエレメント案内路２８内に突出してエレメント列に係着し、エレメント列に対するスライダー１Ｂの停止位置を保持することができる。

　更に、このように引手５をスライダー胴体２の後口２７側に倒伏させる場合、引手５をスライダー胴体２に配した引手係脱部３６に向けて押し込むことによって、引手５に配した左右の片持係止片５５を、外側に弾性変形させながら引手係脱部３６の係脱頭部３６ｂを乗り越えさせて、スライダー胴体２の引手係脱部３６に係着させることができる。

　このように引手５の片持係止片５５をスライダー胴体２の引手係脱部３６に係着させることによって、引手５を倒伏した状態で保持することができる。このため、停止爪体６の爪部６１がエレメント案内路２８内に突出してエレメント列に係着した状態を安定して維持し、スライダーをその停止位置で確実に保持することができる。なお、引手５の片持係止片５５とスライダー胴体２の引手係脱部３６との係着状態は、引手５を上翼板２１から離れる方向に回動させることによって容易に解除することができる。

　更に、本実施形態のスライダー１Ｂでは、先述したように、引手５のカム部５６がテーパー状となっている。このため、例えば、図５に示すように、引手５の片持係止片５５をスライダー胴体２の引手係脱部３６に係着させずに、引手５が引手係脱部３６に載置されて上翼板２１の上面に対して傾いた状態に配されても、引手５のカム部５６が停止爪体６のカバー部６３に干渉することはなく、停止爪体６の爪部６１をエレメント案内路２８内に突出させて、エレメント列に係着させることができる。

　またこれにより、例えば引手５が引手係脱部３６に係着している状態を解除するために、引手５を少し持ち上げた場合でも、引手５のカム部５６が停止爪体６のカバー部６３に干渉しない範囲で引手５を回動させれば、停止爪体６の爪部６１がエレメント案内路２８から抜出することなく、スライダー１Ｂを停止位置で保持した状態で引手５の係着状態を解除することが可能となる。

　一方、本実施形態のスライダー１Ｂにおいて、引手５がスライダー胴体２の後口２７側に倒伏している状態から、同引手５を持ち上げて、上翼板２１に対して直交する方向へ起立させる場合、引手５が上翼板２１の上面に対して所定の傾斜角度以上に傾くことにより、引手５のカム部５６が停止爪体６のカバー部６３に干渉して、停止爪体６がカム部５６によって持ち上げられ、停止爪体６の爪部６１がエレメント案内路２８から抜出される。

　更に、本実施形態のスライダー１Ｂでは、引手５が起立している状態から連結柱２３側に倒伏させることにより、引手５のカム部５６が停止爪体６のカバー部６３に干渉しなくなるため、停止爪体６のカバー部６３が下降して爪部６１がエレメント案内路２８内に突出してエレメント列に係着する。これにより、スライダー１Ｂをその停止位置で保持することができる。

　次に、本実施形態のスライダー１Ｂを組み立てる方法について説明する。先ず、スライダー胴体２を準備する。スライダー胴体２は、上翼板２１及び下翼板２２の前端側が連結柱２３により連結され、前記上翼板２１及び下翼板２２の間にＹ字状のエレメント案内路２８が配されおり、前記上翼板２１は、一端に爪部６１を備えた停止爪体６を挿入するための挿入溝３２と、引手５の一端を回動可能に保持する左右の引手保持部３１と、前記停止爪体６を加締め固定するための、挿入溝３２を左右から挟むようにして立設された一対の加締め柱３４と、前記爪部６１を挿通可能に穿設した爪孔３７とを備えている。スライダー胴体２は、前記引手５の倒伏・起立操作により、前記爪部６１が前記爪孔３７を介して前記エレメント案内路２８に挿入・抜出可能なように前記停止爪体６を配することが可能である。

　次いで、スライダー胴体２の左右の引手保持部３１がそれぞれ有する前後の引手加締め用突起３１ａ間に引手５の連結杆５３を挿入し、引手５をスライダー胴体２の後口２７側に倒伏させた状態にて、前後の引手加締め用突起３１ａを互いに近づける方向へ屈曲させて加締め。これにより、引手５がスライダー胴体２に対して連結杆５３を中心に回動可能に保持される。

　続いて、引手５を保持したスライダー胴体２に、停止爪体６を、同停止爪体６の爪部６１がスライダー胴体２の爪孔３７に挿通し、且つ、同停止爪体６のカバー部６３が引手５の連結杆５３及びカム部５６を上方から覆うようにして、スライダー胴体２の挿入溝３２に挿入する。このとき、停止爪体６のフック部６２は、挿入溝３２の前端３２ａに嵌入される。これによって、停止爪体６がスライダー胴体２の所定位置に配置される。その後、停止爪体６をスライダー胴体２に固定するため、前記一対の加締め柱３４をそれぞれ内側へ屈曲させ加締め固定する。

　このような作業を行うことにより、図５に示したような本実施形態のスライダー１Ｂが組み立てられる。なお、引手５を引手保持部３１へ加締め固定する工程は、停止爪体６をスライダー胴体２に加締め固定した後に行うこともできるが、停止爪体６をスライダー胴体２に加締め固定する工程で引手５を別途保持する必要があるので、先に引手５を引手保持部３１に固定しておいた方が作業性の観点から好ましい。

　以上、本発明を実施形態に基づいて説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、種々の改変が可能である。例えば、上記実施形態に係るスライダーでは引手５はスライダー胴体２の上翼板２１から突設された引手保持部３１によって加締め固定されているが、停止爪体６がスライダー胴体２に加締め固定されていることを前提とすれば、例えば、引手５はスライダー胴体２に嵌着されるカバー体（図示せず）によってスライダー胴体２に取り付けられるタイプであっても良い。

　　１Ａ、１Ｂ、１Ｃ　　　　スライダー
　　２　　　　　　　　スライダー胴体
　　５　　　　　　　　引手
　　６　　　　　　　　停止爪体
　２１　　　　　　　　上翼板
　２２　　　　　　　　下翼板
　２３　　　　　　　　連結柱
　２４　　　　　　　　上フランジ部
　２５　　　　　　　　下フランジ部
　２６　　　　　　　　肩口
　２７　　　　　　　　後口
　２８　　　　　　　　エレメント案内路
　３１　　　　　　　　引手保持部
　３１ａ、３１ｂ　　　引手加締め用突起
　３２　　　　　　　　挿入溝
　３２ａ　　　　　　　挿入溝の前端
　３３　　　　　　　　凹部
　３４　　　　　　　　加締め柱
　３５　　　　　　　　***部
　３６　　　　　　　　引手係脱部
　３６ａ　　　　　　　首部
　３６ｂ　　　　　　　係脱頭部
　３７　　　　　　　　爪孔
　３８　　　　　　　　段差部
　５１　　　　　　　　引手本体部
　５２　　　　　　　　アーム部
　５３　　　　　　　　連結杆
　５４　　　　　　　　開口窓部
　５４ａ　　　　　　　側壁部
　５５　　　　　　　　片持係止片
　５５ａ　　　　　　　第１係止片部
　５５ｂ　　　　　　　第２係止片部
　５６　　　　　　　　カム部
　５７　　　　　　　　連結防止凸部（凸部）
　５８　　　　　　　　引手の先端
　５９　　　　　　　　***部
　６１　　　　　　　　爪部
　６２　　　　　　　　フック部
　６３　　　　　　　　カバー部
　６５　　　　　　　　平坦部
　６６　　　　　　　　屈曲部

Claims

　スライダー胴体２上に設けられた引手係脱部３６へ抜脱可能に係着するための、一対の片持係止片５５が形成されている開口窓部５４を備えたスライドファスナー用引手５であって、少なくとも一方の片持係止片５５上に、対向する他方の片持係止片に向かって突設された連結防止凸部５７を有するスライドファスナー用引手。
　両方の片持係止片５５がそれぞれ対向する片持係止片に向かって突設された連結防止凸部５７を有する請求項１に記載のスライドファスナー用引手。
　各連結防止凸部５７は、互いに近接する方向に突設されている請求項２に記載のスライドファスナー用引手。
　各片持係止片５５は基端側から先端側に向けて互いの間隔が広くなる方向に傾斜して延設された第１係止片部５５ａと、第１係止片部５５ａの先端から互いに平行に延設された第２係止片部５５ｂとを有しており、前記連結防止凸部５７は第１係止片部５５ａと第２係止片部５５ｂの境界に設けられている請求項１～３の何れか一項に記載のスライドファスナー用引手。
　表裏面の少なくとも一方に表裏面に対して垂直方向に突設された***部５９を先端５８に備える請求項１～４の何れか一項に記載のスライドファスナー用引手。
　一対の片持係止片５５は、開口窓部５４を取り囲む側壁部５４ａのうち引手５の先端５８側に配された側壁部を基端として、引手５の回動軸側に向かって延設されている請求項１～５の何れか一項に記載のスライドファスナー用引手。
　スライダー胴体２上に設けられた引手係脱部３６へ抜脱可能に係着するための、一対の片持係止片５５が形成されている開口窓部５４を備えたスライドファスナー用引手５であって、少なくとも一方の片持係止片５５上に、対向する他方の片持係止片に向かって突設された凸部を有し、前記片持係止片５５の先端における間隔ｇよりも前記凸部と前記凸部に対向する片持係止片側の側面との距離ｃが小さくなるように設定されていることを特徴とするスライドファスナー用引手。
　スライダー胴体２上に設けられた引手係脱部３６へ抜脱可能に係着するための、一対の片持係止片５５が形成されている開口窓部５４を備えたスライドファスナー用引手５であって、少なくとも一方の片持係止片５５上に、対向する他方の片持係止片に向かって突設された凸部５７を有し、前記凸部５７と同凸部５７に対向する他方の片持係止片側の側面との距離ｃよりも引手の先端側における厚みｄを大きく設定したことを特徴とするスライドファスナー用引手。
　スライダー胴体２上に突設された引手係脱部３６と、請求項１～８の何れか一項に記載のスライドファスナー用引手を備えたスライドファスナー用スライダー。
　上翼板２１及び下翼板２２の前端側が連結柱２３により連結され、前記上翼板２１及び下翼板２２の間にＹ字状のエレメント案内路２８が配されたスライダー胴体２と、前記上翼板２１に一端が回動可能に保持された引手５と、前記上翼板２１に載置され、一端に爪部６１を備えた停止爪体６とを有し、前記上翼板２１は、前記停止爪体６が挿入される前後方向に延設された挿入溝３２と、前記停止爪体６を加締め固定する一対の加締め柱３４と、前記爪部６１を挿通可能に穿設した爪孔３７とを備え、前記停止爪体６は、前記引手５の倒伏・起立操作により、前記爪部６１が前記爪孔３７を介して前記エレメント案内路２８に挿入・抜出可能なように配されてなるスライドファスナー用スライダーであって、引手５は、請求項１～８の何れか一項に記載のスライドファスナー用引手であるスライドファスナー用スライダー。
　請求項９又は１０に記載のスライドファスナー用スライダーを備えたスライドファスナー。