WO2012060088A1

WO2012060088A1 - 装飾品の製造方法

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Publication number: WO2012060088A1
Application number: PCT/JP2011/006097
Authority: WO
Inventors: 古家　英治; 啓小松; 和孝小野
Original assignee: フジゲン株式会社
Priority date: 2010-11-05
Filing date: 2011-10-31
Publication date: 2012-05-10
Also published as: US20130228277A1; JP2012096518A; CN103282170B; HK1188182A1; US9199413B2; EP2636497B1; TWI480163B; JP5371929B2; EP2636497A4; TW201235218A; EP2636497A1; CN103282170A

Abstract

　凸状表面（２１）と凹状裏面（２２）を備えた基材（２）における凸状表面（２１）に装飾シート（３）が真空プレス接着方法により接着固定されている装飾品（１）の製造方法では、真空プレス接着装置（１００）の吸引チャンバー（１２０）の上面に形成されたワーク載置面（１２１ａ）にワーク支持台（６）を載せ、ワーク支持台（６）の上面に形成したワーク支持面（６１）の係合穴（６８）に、装飾シート（３）を被せた基材（２）の裏面に形成した係合突起（２８）を嵌めて、基材（２）を位置決めする。真空プレス接着装置（１００）によって装飾シート（３）を基材（２）に接着固定する際には、係合穴（６８）と係合突起（２８）の係合によって基材（２）の位置ずれが防止される。

Description

装飾品の製造方法

　本発明は、凸状表面と凹状裏面を備えた基材における凸状表面に装飾シートを接着固定して装飾品を製造する装飾品の製造方法に関する。さらに詳しくは、基材の凸状表面に対して位置ずれすることなく装飾シートを接着固定可能な装飾品の製造方法に関する。

　自動車の内装パネル、音響機器のパネル、オルゴールのボックス部分、家具のパネル部分等に高級感を付与する方法として、これらの部分を木目模様の表面に仕上げる方法が知られている。このための方法として、真空プレス接着方法を用いて基材の表面に装飾シートを接着固定する方法がある。特許文献１～４には、真空プレス接着方法を用いて基材の表面に装飾シートを接着固定する方法が提案されている。

　特許文献１に開示の真空プレス接着方法では、吸引チャンバーの上面に形成したワーク載置面に、基材の表面に接着剤を介して装飾シートが載っている状態のワークを載せ、上側から加圧チャンバーを降下させて、当該加圧チャンバーの下面を規定している可撓性の加圧シートによって装飾シートを基材表面に押し付ける。この状態で、加圧チャンバーを加圧して加圧シートを装飾シートおよびワーク載置面に加圧密着させると共に、吸引チャンバーを減圧してワーク載置面に形成されている吸引穴を介して加圧シートとワーク載置面の間の空間を真空引きする。これにより、加圧シートが装飾シートに密着した状態で当該装飾シートを基材表面に押圧した状態になり、装飾シートが接着剤によって基材表面に接着固定される。

　特許文献２～４に開示の真空プレス接着方法では、吸引チャンバーにおける吸引穴が形成されている上面に基材載置用の台を載せ、この台の上に基材および装飾シートを載せるようにしている。このようにすれば、加圧チャンバーの加圧シートをワークの外周側部分から裏面側部分に亘って密着させることができるので、装飾シートの外周縁部分を基材の外周縁部分から裏面側部分に亘って確実に接着固定できる。

特許第３１４５８８２号公報特許第３３９４０５８号公報特許第３２１７１１７号公報特許第３２５３６５４号公報

　特許文献１～４に開示の真空プレス接着方法は、平坦な底面を備えた基材の表面に装飾シートを接着固定するためのものである。基材の底面が平坦面であるので、基材を平坦なワーク載置面、あるいは、ワーク載置用の台に、安定した状態で載せることができる。したがって、加圧チャンバーを降下させて加圧シートによって装飾シートおよび基材を押し付けた際に、基材が位置ずれすることがない。また、基材の底面が平坦面であるので、吸引チャンバーを減圧してワーク載置面に形成されている吸引穴を介して真空引きすると、基材をワーク載置面に確実に吸着できる。このため、加圧チャンバーを加圧して加圧シートを基材上の装飾シートに押圧した際に基材が位置ずれすることがない。それ故、基材と装飾シートの間に位置ずれが発生しないので、装飾シートを基材表面の所定位置に正確に接着固定することができる。

　しかしながら、表面が凸面になっていて裏面が凹面になっているような板状の基材の場合には、基材の凹状の裏面と平坦なワーク載置面との間の接触面積が狭く、加圧チャンバーの加圧シートを装飾シートの上から基材表面に押し付けた際に、基材に横方向の力が加わりやすい。このため、加圧チャンバーを降下させて加圧シートを基材上の装飾シートに押し付けた際に、ワーク載置面上の基材に横方向の力が作用して基材が位置ずれしやすい。特に、加圧シートの加圧方向から見た場合の基材の平面形状が左右非対称な場合、加圧シートの加圧方向に沿って切断した場合の基材の断面形状が左右非対称の場合等においては、加圧シートを装飾シートの上から基材表面に押し付けた際に基材に横方向の力が作用しやすい。

　ここで、基材に位置ずれが発生した際に、基材と共に装飾シートも一緒に移動すれば問題がない。しかし、加圧シートを基材上の装飾シートに押し付ける時点では、接着剤は接着能力を発揮しておらず、加圧シートが密着している装飾シートは移動せず、基材のみが位置ずれすることが多い。

　また、裏面が凹面になっているような板状の基材の場合には、吸引チャンバーを減圧してワーク載置面と加圧シートの間を真空引きした際に、凹面状の基材裏面を平坦なワーク載置面に確実に吸着することができない。このため、吸引チャンバーを減圧して真空引きしながら加圧チャンバーの加圧シートを装飾シートの上から基材に押圧した際に、ワーク載置面上において基材が位置ずれしやすいという問題点がある。

　このような基材の位置ずれは、特許文献２～４に開示されているように、吸引チャンバーの上面にワーク載置用の台を載せ、この上に基材を載せる場合にも発生する。特に、ワーク載置用の台の上に基材を載せると、基材が吸引チャンバーの上面に対して一段高い位置に配置されることになる。この結果、加圧チャンバーを降下させて、加圧シートを基材上の装飾シートおよび吸引チャンバーの上面に押し付けた際に、当該上面に基材が載っている場合に比べて、強い力で基材が押し付けられる。よって、基材が大きく位置ずれしやすい。

　また、ワーク載置用の台は吸引チャンバーの上面に吸着されるが、ワーク載置用の台の上に載っている基材は台に吸着されない。このため、吸引チャンバーを減圧して真空引きしながら加圧チャンバーの加圧シートを装飾シートの上から基材に押圧した際に、台上において基材に位置ずれが発生し、基材表面上の所定位置に装飾シートを接着固定できないおそれがある。

　一方、裏面が凹面になっているような板状の基材の場合には、吸引チャンバーを減圧して真空引きしながら加圧チャンバーの加圧シートを装飾シートの上から基材に押圧した際に、基材に変形が発生しやすいという問題点もある。

　本発明の課題は、凸状表面および凹状裏面を備えた基材における凸状表面に装飾シートを真空プレス接着方法により接着固定して装飾品を製造する装飾品の製造方法であって、装飾シートを基材の凸状表面に対して位置ずれすることなく接着固定できる方法を提案することにある。

　上記の課題を解決するために、本発明は、凸状表面と凹状裏面を備えた基材における前記凸状表面に装飾シートが積層接着されている装飾品の製造方法において、
　前記基材の凸状表面に、接着剤を介して、装飾シートを位置合わせして被せた状態のワークを用意する装飾シート重ね合わせ工程と、
　真空プレス接着装置における吸引チャンバーの上面に形成されているワーク載置面にワーク支持台を載せ、このワーク支持台の上面に形成されているワーク支持面に前記ワークを載せるワーク載置工程と、
　前記真空プレス接着装置における前記吸引チャンバーの真上に配置されている加圧チャンバーを、前記吸引チャンバーに対して相対的に降下させて、当該加圧チャンバーの下面を規定している可撓性の加圧シートを上側から前記ワークの前記装飾シートおよび前記ワーク載置面に押し付ける加圧シート押し付け工程と、
　前記加圧チャンバー内を加圧して前記加圧シートによって前記装飾シートを上側から前記基材の前記凸状表面に押圧すると共に、前記吸引チャンバー内を減圧して、前記ワーク載置面に形成されている吸気穴を介して、当該ワーク載置面と前記加圧シートの間の空間を真空引きして、前記装飾シートを前記接着剤によって前記基材の前記凸状表面に接着固定する装飾シート接着工程とを含み、
　前記ワーク支持台として、前記ワーク載置面に密着可能な平坦な底面部分と、前記基材の凹状裏面と相補的な形状をした凸状の前記ワーク支持面と、当該ワーク支持面に形成した支持台側係合部とを備えたものを使用し、
　前記基材として、当該基材の凹状裏面に、前記支持台側係合部に機械的に係合可能な基材側係合部が形成されたものを使用し、
　前記ワーク載置工程では、前記支持台側係合部に前記基材側係合部を機械的に係合させることで、前記ワークを前記ワーク支持面に対して位置決めし、
　前記加圧シート押し付け工程では、前記支持台側係合部と前記基材側係合部の機械的係合によって、前記基材の前記ワーク支持面に対する位置ずれを防止することを特徴としている。

　本発明の装飾品の製造方法において使用しているワーク支持台のワーク支持面は、基材の凹状裏面と相補的な凸状の面である。よって、ワーク支持面にワークの基材を安定した状態で載せることができる。また、装飾シート接着工程において加圧シートから作用する加圧力によって基材が変形してしまうこともない。

　さらに、ワーク支持面にワークを載せる際に、ワークの基材の凹状裏面に形成されている基材側係合部を支持台側係合部に対して機械的に係合させることにより、基材がワーク支持面に対して位置決めされる。したがって、ワークをワーク支持面に載せる際に、ワークの位置決めを簡単に行うことができる。また、基材側係合部と支持台側係合部の機械的係合によって、ワークに外力が作用してもワークがワーク支持面に対して位置ずれすることがない。したがって、加圧シート押し付け工程および装飾シート接着工程において、加圧シートからワークに作用する加圧力によって基材に横方向の力が作用しても、基材に位置ずれが発生することが無い。

　したがって、本発明の装飾品の製造方法によれば、真空プレス接着方法を用いて、装飾シートを基材の凸状表面に対して位置ずれすることなく接着固定することができる。

　ここで、前記基材側係合部として、前記基材の前記凹状裏面から突出している係合突起を形成しておき、前記支持台側係合部として、前記ワーク支持面に開口している前記係合突起を嵌め込み可能な係合穴を形成しておくことができる。

　また、ワークの位置決め、基材の位置ずれ防止のためには、前記係合突起を複数形成しておき、前記係合突起のそれぞれを嵌め込み可能な複数の前記係合穴を形成しておくことが望ましい。ワークの位置決め、および基材の位置ずれ防止を確実に行うことができるようにするために、前記係合突起および前記係合穴の断面形状をそれぞれ多角形としておいてもよい。

　次に、前記ワーク載置面に、当該ワーク載置面に載せる前記ワーク支持台を取り囲む状態で、枠状スペーサを配置しておき、前記加圧シート押し付け工程では、前記加圧チャンバーを降下させて前記加圧シートを上側から前記ワークの前記装飾シートおよび前記ワーク載置面に配置した前記枠状スペーサに押し付けることが望ましい。

　このようにすれば、加圧シート押し付け工程において、加圧シートによるワーク押し付け力を低減できる。この結果、基材の位置ずれを抑制でき、また、ワーク支持台がワーク載置面上において位置ずれしてしまうことを防止できる。

　次に、前記装飾シートが接着される前記基材の凸状表面には、前記ワーク支持面上に載せた状態において、前記ワーク載置面に垂直な真上方向または斜め上方を向く第１外周縁部分と、前記ワーク載置面に平行な真横方向または斜め下方を向く第２外周縁部分とが備わっている場合がある。この場合には、前記ワーク支持台の前記ワーク支持面として、前記ワークを載せた状態において、前記基材の前記第１外周縁部分の外周縁よりも外側に張り出している張出面部分と、前記基材の前記第２外周縁部分の外周縁よりも内側に後退している後退面部分とが備わっているものを用いることが望ましい。

　加圧シート押し付け工程において、基材の第１外周縁部分の側では、当該第１外周縁部分を覆っている装飾シートの外周縁部分からワーク支持面の張出面部分に亘って、加圧シートが装飾シートおよび基材の端面に密着した状態で押し付けられる。したがって、装飾シート接着工程において、装飾シートの縁端部分を基材の第１外周縁部分の縁端に対して確実に接着固定することができる。

　同様に、加圧シート押し付け工程において、基材の第２外周縁部分の側では、当該第２外周縁部分を覆っている装飾シートの外周縁部分からワーク支持面の後退面部分に亘って、加圧シートが装飾シートおよび基材の端面に密着した状態で押し付けられる。したがって、装飾シート接着工程において、装飾シートの縁端部分を基材の第２外周縁部分の縁端に対して確実に接着固定することができる。

本発明の製造方法によって製造された装飾品の一例を示す表面側斜視図、裏面側斜視図、および断面図である。本発明の製造方法に用いるワーク支持台の一例を示す斜視図およびワークを載せた状態の断面図である。本発明を適用した装飾品の製造方法の一例、および、真空プレス接着装置の一例を示す説明図である。図３に示す製造方法における装飾シート接着工程を示す説明図である。本発明の製造方法に用いるのに適した真空プレス接着装置の一例を示す説明図である。

　以下に、図面を参照して、本発明の装飾品の製造方法の実施の形態を説明する。

（装飾品の構成）
　まず、図１を参照して、本発明の製造方法によって製造された装飾品の一例を説明する。図１に示す装飾品１は、自動車内の内装パネル、音響機器のパネル、あるいはオルゴールのボックス部分、家具のパネル部分等を構成する部材であり、装飾品１の形状を規定する基材２と、基材２に接着剤４により接着固定された装飾シート３とを有している。

　基材２は全体としてほぼ一定の厚さの板材からなる角錐台形状をしており、凸状表面２１と凹状裏面２２を備えている。基材２は樹脂製あるいは金属製の成形品であり、金属製の場合には、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム合金製の金属素材を用いることができる。

　基材２は、上板部２６と、上板部２６の外周縁から凹状裏面２２側に向けて突出した４枚の側板部２７（側板部２７ａ、２７ｂ、２７ｃ、２７ｄ）とを備えている。４枚の側板部２７のうち、側板部２７ａは、上板部２６の外周縁から裏面側に斜めに延びている。この側板部２７ａの先端部は、その表面が斜め上方を向いた第１外周縁部分２ａとなっている。また、側板部２７ｂは、上板部２６の外周縁から裏面側に斜めに延び、その先端部は下方に屈曲している。当該先端部は、その表面が真横を向いた第２外周縁部分２ｂとなっている。

　装飾シート３は、突板シート等からなり、基材２の凸状表面２１の側において、上板部２６全体および側板部２７を覆うように接着剤４により接着されている。すなわち、図１（ａ）、（ｂ）において一点鎖線３Ａで示すように、装飾シート３は、基材２の凸状表面２１において、第１外周縁部分２ａおよび第２外周縁部分２ｂの縁端まで接着されており、側板部２７全体を覆うように接着剤４により接着されている。

　基材２には、その凹状裏面２２の側に係合突起２８（基材側係合部）が形成されている。係合突起２８は、基材２を成形する際に上板部２６の凹状裏面２２側に基材２の本体部分と同時成形されたものである。係合突起２８は、凹状裏面２２からの突出高さが側板部２７と比較するとかなり小さいので、装飾品１が完成した状態で残っていても邪魔になることはない。係合突起２８を１個あるいは複数個形成することができ、本例では、所定の距離だけ離れた位置に２個の円柱状の係合突起２８が形成されている。

（ワーク支持台）
　次に、図２を参照して、装飾品１の製造に用いるのに適したワーク支持台の一例を説明する。図２に示すワーク支持台６は、中実の樹脂製、木製あるいは金属製の台であり、後述する真空プレス接着法によって、基材２の凸状表面２１に装飾シート３を接着固定する際に、装飾シート３を被せた基材２を載せるために用いられる。ワーク支持台６は、平坦面からなる底面６９と、基材２の凹状裏面２２と相補的な凸形状（角錐台形状）をしている凸状のワーク支持面６１とを備えている。

　ワーク支持面６１は、基材２の上板部２６に重なって上板部２６の凹状裏面２２側を受ける上面部６６を備えており、かかる上面部６６には、基材２の凹状裏面２２に形成した係合突起２８のそれぞれを嵌め込み可能な２個の係合穴６８（支持台側係合部）が形成されている。本例ではワーク支持台６の底面６９の全体が平坦面であるが、平坦な底面６９の一部に凹部が形成されていてもよい。あるいは、底面６９の中心部分が平坦面とされ、底面６９の外周側の部分が上方に傾斜した傾斜面となっていてもよい。

　また、ワーク支持台６は、上面側に基材２の側板部２７ａに重なって側板部２７ａの凹状裏面２２側を受ける側面部６７ａを備えており、側面部６７ａは、上面部６６の外周縁から斜め下方に延びている。側面部６７ａの長さ寸法は、基材２の側板部２７ａの長さ寸法より大である。このため、ワーク支持台６のワーク支持面６１には、基材２の凸状表面２１における第１外周縁部分２ａが位置する側において、この第１外周縁部分２ａの縁端よりも外側に寸法ｄ１分だけ張り出ている張出面部分６ａが備わっている。

　また、ワーク支持台６は、基材２の側板部２７ｂに重なって側板部２７ｂの凹状裏面２２側を受ける側面部６７ｂを備えている。側面部６７ｂは、側板部２７ｂの形状に対応して、上面部６６の外周縁から斜め下方に延びている部分の下端部分が下方に屈曲しており、この下端部分は真横を向いた側面部分６ｂ（後退面部分）となっている。側面部分６ｂは、基材２をワーク支持台６のワーク支持面６１に載せた際に、基材２の凸状表面２１における第２外周縁部分２ｂより内側に寸法ｄ２分だけ後退した位置にある。

（真空プレス接着装置）
　図３を参照して、本発明の装飾品の製造方法に用いるのに適した真空プレス接着装置の一例を説明する。図３（ａ）は、基材２の凸状表面２１に接着剤４を介して装飾シート３を被せたワークを、真空プレス接着装置のワーク支持台に載せた状態を示す説明図であり、図３（ｂ）は、加圧シートを備えた加圧チャンバーを降下させた後に、加圧チャンバーを加圧して加圧シートを装飾シートに押し付けた状態を示す説明図であり、図３（ｃ）は、吸引チャンバーを減圧してワーク載置面と加圧シートとの間の空間を真空引きした状態を示す説明図である。

　図３（ａ）を参照して説明すると、真空プレス接着装置１００は、シリンダ装置等からなる昇降装置１１２のロッド１１３の先端に連結された加圧チャンバー１１０と、加圧チャンバー１１０に対向するように固定された吸引チャンバー１２０とを有している。加圧チャンバー１１０は、下方開口を塞ぐように張られた可撓性の加圧シート１１１を備えている。加圧シート１１１は、シリコンラバー等のゴム状弾性膜であり、耐熱性および伸縮性を有している。

　加圧チャンバー１１０の天井面には１個乃至複数個のヒーター１１５が設けられている。また、加圧チャンバー１１０の側面部には、加圧チャンバー１１０に対して空気の供給・排出を行うための給排管１１６が設けられている。給排管１１６にはコンプレッサー等の空気供給装置（図示せず）が三方弁等を介して接続されている。空気供給装置は、コンプレッサー等に加えて、供給する空気を加熱する加熱装置を備えており、給排管１１６を介して、加圧チャンバー１１０への加熱空気の供給を行う。空気供給装置の加熱装置やヒーター１１５は、給電量や給電時間等が制御され、その発熱量が制御される。

　吸引チャンバー１２０は上方が開口する箱形状をしており、上方開口部は、多数の吸気穴１２３が形成された板状のワーク載置台１２１によって封鎖されている。ワーク載置台１２１の上面が平坦なワーク載置面１２１ａとなっている。吸引チャンバー１２０の側面部には、吸引チャンバー１２０に対して真空引きおよび空気の供給を行うための給排管１２６が形成されている。給排管１２６には真空ポンプ等の空気吸引装置（図示せず）が三方弁等を介して接続されている。給排管１２６を介して、吸引チャンバー１２０の減圧や吸引チャンバー１２０に対する給気を行うことが可能である。

（装飾品１の製造方法）
　図３および図４を参照して、真空プレス接着装置１００を用いて装飾品１を製造する製造方法の一例を説明する。図４は図３（ｃ）における一部を拡大して示す拡大部分断面図である。

　まず、図２（ｂ）に示すように、基材２の凸状表面２１に、接着剤４を介して、装飾シート３を位置合わせして被せた状態のワーク１０を用意する（装飾シート重ね合わせ工程）。より詳しく説明すると、基材２の凸状表面２１側にスプレーガン等を用いて液状の接着剤４を塗布した後、装飾シート３を被せ、この状態で装飾シート３の表面を基材２の凸状表面２１に沿って軽くなぞって位置合わせを行う。装飾シート３は、例えば天然木を、例えば０．２５ｍｍの厚さに薄くスライスして得られる突板に対して、不織布あるいは紙等からなる裏面シートを貼着した突板シートであり、基材２の大きさに合わせて所定のサイズに切断されている。接着剤４は、熱硬化性あるいは熱可塑性の接着剤であり、ウレタン系接着剤、エポキシ系接着剤、ゴム系接着剤、メラミン系接着剤、フェノール系接着剤、アクリル系接着剤、シアノ系接着剤等を用いることができる。

　次に、図３（ａ）に示すように、真空プレス接着装置１００における吸引チャンバー１２０の上面に形成されているワーク載置面１２１ａに、ワーク支持台６を載せ、当該ワーク支持台６の上面に形成されているワーク支持面６１にワーク１０を載せる（ワーク載置工程）。

　すなわち、真空プレス接着装置１００のワーク載置面１２１ａにワーク支持台６を載せる。ワーク支持台６のワーク支持面６１に、基材２の表面２１に装飾シート３を被せたワーク１０を載せる。ワーク支持台６の底面６９は平坦な面であるため、ワーク支持台６はワーク載置面１２１ａに安定した状態で載置される。この状態では、ワーク支持台６の底面６９は、１個乃至複数の吸気穴１２３と重なる。また、基材２の係合突起２８は、ワーク支持面６１の係合穴６８に嵌った状態とされる。このような機械的な係合によって、ワーク１０がワーク支持面６１に対して位置決めされる。

　さらに、ワーク支持面６１の張出面部分６ａは、基材２の凸状表面２１の第１外周縁部分２ａが位置する側において、第１外周縁部分２ａより外側に張り出している。これに対して、ワーク支持面６１の側面部分６ｂは、基材２の凸状表面２１の第２外周縁部分２ｂより内側に後退した位置にある。

　この後は、図３（ｂ）に示すように、真空プレス接着装置１００における吸引チャンバー１２０の真上に配置されている加圧チャンバー１１０を、吸引チャンバー１２０に対して相対的に降下させて、当該加圧チャンバー１１０の下面を規定している可撓性の加圧シート１１１を上側からワーク１０の装飾シート３および、これを取り囲んでいるワーク載置面１２１ａの部分に押し付ける（加圧シート押し付け工程）。その間、加圧チャンバー１１０の内部は常圧に保持されている。

　次に、図３（ｂ）において矢印で示すように、加圧チャンバー１１０内を加圧して加圧シート１１１によって装飾シート３を上側から基材２の凸状表面２１に押圧する。すなわち、空気供給装置により、給排管１１６を介して、加圧チャンバー１１０に加熱空気を供給して加圧シート１１１をワーク１０に押し付ける。これと同時に、図３（ｃ）に示すように、吸引チャンバー１２０を減圧して、ワーク載置面１２１ａに形成されている吸気穴１２３を介して、ワーク載置面１２１ａと加圧シート１１１の間の空間を真空引きして、装飾シート３を接着剤４によって基材２の凸状表面２１に接着固定する（装飾シート接着工程）。

　詳細に説明すると、空気吸引装置は、給排管１２６を介して吸引チャンバー１２０を減圧する。その結果、図３（ｃ）に示すように、ワーク載置面１２１ａと加圧シート１１１との間が吸気穴１２３を介して真空引きされるので、ワーク１０と加圧シート１１１との間が減圧される。従って、加圧シート１１１は、ワーク１０およびワーク支持台６の形状に沿って変形する。それ故、加圧シート１１１は、例えば数ｋｇ／ｃｍ²～数十ｋｇ／ｃｍ²の圧力で装飾シート３の表面に密着して装飾シート３を基材２に向けて均一に加圧するので、装飾シート３は、基材２の凸状表面２１に均一に押し付けられる。また、ワーク支持台６はワーク載置面１２１ａに確実に吸着された状態となる。

　その間、加圧チャンバー１１０の内部は、ヒーター１１５による加熱や、空気供給装置の加熱装置による空気への加熱により加熱され、ワーク１０は、加圧シート１１１を介して加熱される。従って、接着剤４は、例えば１００℃以上の温度にまで加熱される。それ故、接着剤４の流動性が高まるので、装飾シート３は、基材２の表面に均等に押し付けられる。それ故、装飾シート３と基材２とは、数分程度の加圧時間で接着剤４を介して均等に接着される。

　ここで、図４から分かるように、装飾シート接着工程においても、ワーク支持台６の側の係合穴６８にワーク１０の基材２の係合突起２８が嵌った状態にある。これらの間の機械的係合によって、基材２に対して横方向の力が作用したとしても、基材２がワーク支持面６１から位置ずれしてしまうことがない。

　また、ワーク支持台６では、ワーク支持面６１の張出面部分６ａが、斜め上向きの基材２の側の第１外周縁部分２ａが位置する側において当該第１外周縁部分２ａより外側に張り出している。このため、加圧シート１１１は、第１外周縁部分２ａおよび張出面部分６ａに跨るように上方から密着した状態に被さる。従って、装飾シート３は、第１外周縁部分２ａまで確実に密着した状態に貼付される。また、第１外周縁部分２ａの側では、第１外周縁部分２ａと張出面部分６ａの間の小さな段部に追従して加圧シート１１１が変形すればよいので、加圧シート１１１と第１外周縁部分２ａとの間に空気が残りにくい。それ故、装飾シート３は、第１外周縁部分２ａに密着した状態で被さり、装飾シート３にシワ等が発生しにくい。

　また、ワーク支持面６１の側面部分６ｂは、真横方向に向いた基材側の第２外周縁部分２ｂより内側に後退している。このため、加圧シート１１１は、第２外周縁部分２ｂの下側まで回り込んだ状態で、この第２外周縁部分２ｂに対して真横方向から被さる。従って、装飾シート３は、確実に第２外周縁部分２ｂに密着した状態で貼付される。

　この後は、吸引チャンバー１２０からの真空引きを停止し、加圧チャンバー１１０への空気の供給を停止し、しかる後に、加圧チャンバー１１０を上昇させる。この後、ワーク１０を取り出す。

　この後においては、装飾シート３の表面に、必要に応じて、天然木の木目を活かすような着色処理を施した後、たとえばウレタン系あるいはポリエステル系の透明なコーティング剤を塗布し、その後、コーティング剤を固化させる。これにより、ワーク１０は、基材２の表面に木目模様の装飾シート３が接着された装飾品となる。また、必要に応じて、コーティング剤の表面を研磨、バフ磨きを行なえば、ワーク１０は、表面に鏡面磨きが施された装飾品となる。

　このようにして装飾シート３を基材２の凸状表面２１に接着固定した構成のワーク１０は、表面からは装飾シート３しか見えないので、基材２がプラスチック成形品あるいは金属成形品であるかにかかわりなく、見栄えのよい木目を付した装飾品１として利用できる。

　なお、本例では、加圧チャンバー１１０を降下させた後、加圧チャンバー１１０を加圧し、その後、吸引チャンバー１２０を減圧した。この代わりに、加圧チャンバー１１０を降下させた後に、吸引チャンバー１２０からの真空引きを開始し、その後、加圧チャンバー１１０への空気の供給を開始してもよい。また、加圧チャンバー１１０を降下させた後に、吸引チャンバー１２０からの真空引きと加圧チャンバー１１０への空気の供給とを同時に行ってもよい。

（真空プレス接着装置の別の例）
　図５は、本発明の装飾品の製造方法に用いるのに適した真空プレス接着装置の別の例、および当該真空プレス接着装置を用いた装飾品の製造方法を示す説明図である。なお、真空プレス接着装置の基本的な構成は、上記の真空プレス接着装置１００と同様であるため、共通する部分については同一の符号を付してそれらの説明を省略する。

　図５に示す真空プレス接着装置１００Ａは、昇降装置１１２のロッド１１３の先端に連結された加圧チャンバー１１０と、加圧チャンバー１１０に対向するように固定された吸引チャンバー１２０とを有しており、加圧チャンバー１１０は、下方開口を塞ぐように張られた加圧シート１１１を備えている。加圧シート１１１は、シリコンラバー等のゴム状弾性膜であり、耐熱性および伸縮性を有している。加圧チャンバー１１０の天井面には、赤外線もしくは遠赤外線式等の１個乃至複数個のヒーター１１５が設けられている。吸引チャンバー１２０はワーク載置台１２１を備えている。

　このように構成した真空プレス接着装置１００Ａにおいては、基材２の凸状表面２１側に装飾シート３を被せたワーク１０が、ワーク載置面１２１ａに載せたワーク支持台６のワーク支持面６１に載せられる。ワーク載置面１２１ａには、加圧チャンバー１１０に向けて突出して加圧チャンバー１１０の下面の四周枠部分に当接可能な位置に、枠状スペーサ１２８が設けられている。枠状スペーサ１２８は、ワーク載置面１２１ａの外周端に沿って全周に設けられている。枠状スペーサ１２８は、ワーク載置台１２１の一部として構成されていてもよいし、別部材をワーク載置面１２１ａに取り付けてもよい。いずれの場合においても、ワーク載置面１２１ａと枠状スペーサ１２８との間には十分な気密性が確保されている。また、加圧チャンバー１１０が降下して枠状スペーサ１２８に当接すると、加圧チャンバー１１０の加圧シート１１１と枠状スペーサ１２８との間には十分な気密性が確保される。

　図５に示す真空プレス接着装置１００Ａを用いて、装飾品１を製造する場合も、図３、図４を参照して説明した場合と同様に各工程が行われる。ここで、図５（ｂ）に示すように、加圧シート押し付け工程を行った後の状態では、吸引チャンバー１２０に枠状スペーサ１２８が設けられているので、加圧チャンバー１１０は、図３に示す場合に比べて、枠状スペーサ１２８の高さ寸法分だけ高い位置で停止する。従って、ワーク支持台６を用いたことによってワーク１０がワーク載置面１２１ａからみてより高い位置に配置されることになっても、加圧シート１１１がワーク１０に触れる際や、加圧シート１１１をワーク１０に押し付ける際に、加圧シート１１１によってワーク１０に加わる力を軽減することができる。換言すると、ワーク載置面１２１ａに直接、ワーク１０を載せた場合と同程度の加圧力に低減できる。それ故、ワーク支持台６上で基材２に位置ずれが発生することを確実に防止できる。よって、基材２の表面の所定位置に位置ずれなく装飾シート３を接着することができる。

（その他の実施の形態）
　上記の例では、円柱状の係合突起２８を複数個設けるとともに、複数個の係合突起２８が各々嵌る複数の係合穴６８を設けた。この代わりに、１つの係合穴６８に１つ、あるいは複数の係合突起２８が嵌るような構造を採用してもよい。この場合、係合穴６８をスリット状あるいは角穴にし、基材２が係合突起２８を中心として回ってしまうような位置ずれを防止することが好ましい。

　また、円柱状の係合突起２８に代えて、板状あるいは角柱状の係合突起２８を採用し、かかる係合突起２８に合わせて、係合穴６８を係合突起と同一形状のスリットや角穴などにしてもよい。この場合には、係合突起２８および係合穴６８が各々１個であっても、基材２が係合突起２８回りに回転するような位置ずれを防止することができる。

　なお、上記の例では、係合突起２８を基材２に形成し、係合穴６８をワーク支持台６に形成している。逆に、係合突起をワーク支持台６に形成し、係合穴を基材２に形成することも可能である。

　次に、上記の例では、基材２の第１外周縁部分２ａが斜め上方に向いている例を説明したが、第１外周縁部分２ａが真上を向いている場合に、ワーク支持台６に対して、第１外周縁部分２ａより外側に張り出す張出面部分６ａを設けてもよい。また、上記の例では、第２外周縁部分２ｂが真横方向に向いている例を説明したが、第２外周縁部分２ｂが斜め下方を向いている場合に、ワーク支持台６に対して、第２外周縁部分より内側に後退した後退面部分を設けた構成を採用してもよい。

　また、上記の例では、ワーク載置面１２１ａに一台のワーク支持台６を載せ、ここに一つのワーク１０を載せている。この代わりに、ワーク載置面１２１ａに複数台のワーク支持台６を載せ、各ワーク支持台６にワーク１０を載せてもよい。また、ワーク支持台６のワーク支持面として、複数のワーク１０を載せることのできるワーク支持面を用いることも可能である。

　なお、基材２のサイズや形状に合わせた装飾シート３を準備する際、基材２の角部分に重なる部分にスリットを設け、シワ等が発生することを防止してもよい。

Claims

　凸状表面と凹状裏面を備えた基材における前記凸状表面に装飾シートが積層接着されている装飾品の製造方法であって、
　前記基材の凸状表面に、接着剤を介して、装飾シートを位置合わせして被せた状態のワークを用意する装飾シート重ね合わせ工程と、
　真空プレス接着装置における吸引チャンバーの上面に形成されているワーク載置面に、ワーク支持台を載せ、当該ワーク支持台の上面に形成されているワーク支持面に前記ワークを載せるワーク載置工程と、
　前記真空プレス接着装置における前記吸引チャンバーの真上に配置されている加圧チャンバーを、前記吸引チャンバーに対して相対的に降下させて、当該加圧チャンバーの下面を規定している可撓性の加圧シートを上側から前記ワークの前記装飾シートおよび前記ワーク載置面に押し付ける加圧シート押し付け工程と、
　前記加圧チャンバー内を加圧して前記加圧シートによって前記装飾シートを上側から前記基材の前記凸状表面に押圧すると共に、前記吸引チャンバー内を減圧して、前記ワーク載置面に形成されている吸気穴を介して、当該ワーク載置面と前記加圧シートの間の空間を真空引きして、前記装飾シートを前記接着剤によって前記基材の前記凸状表面に接着固定する装飾シート接着工程とを含み、
　前記ワーク支持台として、前記ワーク載置面に密着可能な平坦な底面部分と、前記基材の凹状裏面と相補的な形状をした凸状の前記ワーク支持面と、当該ワーク支持面に形成した支持台側係合部とを備えたものを使用し、
　前記基材として、当該基材の凹状裏面に、前記支持台側係合部に機械的に係合可能な基材側係合部が形成されたものを使用し、
　前記ワーク載置工程では、前記支持台側係合部に前記基材側係合部を機械的に係合させることで、前記ワークを前記ワーク支持面に対して位置決めし、
　前記加圧シート押し付け工程では、前記支持台側係合部と前記基材側係合部の機械的係合によって、前記基材の前記ワーク支持面に対する位置ずれを防止することを特徴とする装飾品の製造方法。
　請求項１において、
　前記基材側係合部として、前記基材の前記凹状裏面から突出している係合突起を形成しておき、
　前記支持台側係合部として、前記ワーク支持面に開口している前記係合突起を嵌め込み可能な係合穴を形成しておくことを特徴とする装飾品の製造方法。
　請求項２において、
　前記係合突起を複数形成しておき、
　前記係合突起のそれぞれを嵌め込み可能な複数の前記係合穴を形成しておくことを特徴とする装飾品の製造方法。
　請求項２において、
　前記係合突起および前記係合穴の断面形状をそれぞれ多角形としておくことを特徴とする装飾品の製造方法。
　請求項１において、
　前記ワーク載置面に、当該ワーク載置面に載せる前記ワーク支持台を取り囲む状態で、枠状スペーサを配置しておき、
　前記加圧シート押し付け工程では、前記加圧チャンバーを降下させて前記加圧シートを上側から前記ワークの前記装飾シートおよび前記ワーク載置面に配置した前記枠状スペーサに押し付けることを特徴とする装飾品の製造方法。
　請求項１において、
　前記装飾シートが接着される前記基材の凸状表面には、前記ワーク支持面上に載せた状態において、前記ワーク載置面に垂直な真上方向または斜め上方を向く第１外周縁部分が備わっており、
　前記ワーク支持台の前記ワーク支持面には、前記ワークを載せた状態において、前記基材の前記第１外周縁部分の外周縁よりも外側に張り出している張出面部分が備わっていることを特徴とする装飾品の製造方法。
　請求項６において、
　前記装飾シートが接着される前記基材の凸状表面には、前記ワーク支持面上に載せた状態において、前記ワーク載置面に平行な真横方向または斜め下方を向く第２外周縁部分とが備わっており、
　前記ワーク支持台の前記ワーク支持面には、前記ワークを載せた状態において、前記基材の前記第２外周縁部分の外周縁よりも内側に後退している後退面部分が備わっていることを特徴とする装飾品の製造方法。