明 細 書
7 _L_PGA生産微生物、該微生物を用いた γ _L_PGA製造方法、 架橋体、及び皮膚外用剤
技術分野
[0001] 本発明は、ポリ γ L グルタミン酸高生産微生物及び該変異株、該微生物もし くは変異株を用いたポリ γ L グルタミン酸の製造方法及び高分子量ポリ γ L グルタミン酸に関する。
[0002] また、本発明は、ポリ γ—L—グルタミン酸架橋体、その製造方法、及び、それを 含んでなるノ、イド口ゲルに関する。さらに詳しくは、吸水性及び生分解性に優れ、力 つ所望の品質を安定的に供給することができるポリ γ L グルタミン酸架橋体、 その製造方法、及び、それを含んでなるノ、イド口ゲルに関する。
[0003] さらに、本発明は、皮膚外用剤に関する。より詳しくは、高い保湿効果を有するポリ
γ—L—グルタミン酸及びポリ γ—L—グルタミン酸架橋体のうち少なくとも一方 を含み、保湿剤、化粧料として好適な皮膚外用剤に関する。
背景技術
[0004] 近年、地球環境の劣悪化が問題視され、環境修復'保全技術の開発が急がれてい る。環境汚染の原因としては、例えば、工場廃水など、人類の産業活動の拡大による と広く認識されている。ところが、我々の生活に深く浸透し、現代の「生活必需品」とな つたプラスチック製品力 それと同等かそれ以上の環境負荷を与えていることが分か つてきた。汎用プラスチックや合成ポリマーの多くが石油化学的に製造される。これら の化成品はきわめて安定で、軽量、強靭かつ安価と、その利便性は目に見張るもの 力 Sある。一方で、無分別な利用と廃棄が繰り返されてきたのも事実である。今日、これ らの廃棄物の多くは自然環境中では分解されないため、生態系の破壊につながると 指摘されて!、る。廃棄処理法によってダイォキシンなどの環境ホルモン(内分泌撹乱 化学物質)の発生源となるため、その脅威はは力りしれない。
[0005] 環境問題への関心の高まりは、生分解という機能性を見直させるきっかけとなった。
生分解性プラスチックと言う概念が生まれ、その早急な実用化が求められている。生
分解性を供えたプラスチックやハイド口ゲルの素材として、微生物が生産するバイオ ポリマ一が有望視されている。とくに、アミノ酸が特殊な結合様式で連なったポリアミノ 酸と呼ばれる一群のバイオポリマ に見出された潜在能力に注目が集まって!/、る。 ポリ γ グルタミン酸 (以下、 PGAと記載することもある)、ポリ ε リジンおよび シァノフアイシンの 3種類のポリアミノ酸が同定されて 、る。
[0006] 最近、ポリアミノ酸の構造的特徴 (構成アミノ酸の光学活性や種類、分子サイズ、結 合様式など)がその機能性に強く反映されていることが分力つてきた。 PGAは、ダル タミン酸の aーァミノ基と γ カルボキシル基がアミド結合で結ばれたポリアミノ酸で ある。 PGAは納豆の糸引きの主体物質として知られるようになった力 これはその魅 力的な機能性によるところが大きい。よく知られているところでは、生分解性と高吸水 性を兼ね備えている点が挙げられる。それらの機能を利用し、食品、化粧品、医療品 などの多くの分野で、種々の用途があるものと期待されている。しかし、現在、製品化 されている PGAは納豆菌やその類縁菌から生産されており、グルタミン酸の両光学 異性体がランダムに結合した化学的にヘテロなポリマーとして生産される。そのため、 プラスチックの代替素材として PGAの実用化を考える場合には大きな障害になる。
[0007] ホモポリ γ グルタミン酸を生産する菌も報告されて 、る。例えば、炭疽菌 Badllu santhracisは D グルタミン酸のみからなるポリ一 γ—D グルタミン酸(以下、 D— Ρ GAと記載することもある)を生産する事が報告されている (非特許文献 1)。しかし、本 菌は強 、病原性を有する細菌であるため、工業的な PGA生産菌としては不適切で あり、生産される D— PGAの分子量も小さい。また、好アルカリ性細菌 Bacillus halodu ransは、 L グルタミン酸のみからなるポリ一 γ—L グルタミン酸(以下、 L— PGAと 記載することもある)を生産する事も報告されている (非特許文献 2)。しかし、本菌の 生産する L PGAも分子量が極めて小さ!/、。
[0008] 一方、比較的高分子量のホモポリ γ グルタミン酸の生産菌として、好塩性古細 菌 Natrialba aegyptiacaが分子量 10万〜 100万程度のポリ— γ—L グルタミン酸の みを生産することが報告されている。しかし、本菌は液体培養条件下では分子量が 1 0万程度と小さい、かつ殆どポリ γ—L—グルタミン酸を生産しないため、工業的な 生産菌として問題があった (非特許文献 3、特許文献 1)。
[0009] 上記以外に、ポリ γ L グルタミン酸を生産する生物としては、ヒドラ等が挙げ られる力 ヒドラの場合も同様に分子量が極めて小さいという問題がある (非特許文献 4)。
[0010] PGAの一つの利用分野として化粧品分野がある。化粧品分野において、 PGAを 応用する場合、 PGAのような水溶性高分子化合物にもとめられる性質は、光学純度 が均一、かつ、高い保湿性能と増粘性である。しかしこの二つの要件を同時に満足 するためには、均一な光学純度の高分子量の PGAであることが望まれる。
[0011] また、吸水性榭脂は、紙ォムッや生理用品、医療、建設、土木工学、建築分野、感 触改善剤、食品のための鮮度保持剤、さらには園芸等の農学分野における緑ィ匕ェ 学のための重要な基材等として、多くの分野で用いられている。
[0012] 吸水性榭脂の中でも、アクリル酸系の吸水性榭脂は、優れた吸水性を有し、かつ安 価であるため、幅広い分野で用いられている。しかし、アクリル酸系の吸水性榭脂は 、ほとんど生分解性を有していない。そのため、微生物等による分解によって、アタリ ル酸系の給水性榭脂を処理することは困難である。例えば、コンポスト処理のような バイオ処理には適しておらず、また、埋立て処分場等においても、分解されずに残存 すること〖こなる。
[0013] この問題を解決する吸水性榭脂として、例えば特許文献 1では、ポリ γ—ダルタミ ン酸架橋体からなる生分解性吸水樹脂が開示されている。 PGAは、様々な生物によ り合成される高分子化合物であり、生分解性に優れている。そのため、特許文献 1〖こ 係る生分解性吸水性榭脂は、廃棄処分を安全かつ簡便に行なうことができるとされ ている。
[0014] なお、従来より知られている PGAをまとめると、特許文献 2で用いられている PGA のように、 L グルタミン酸及び D グルタミン酸の両光学異性体が不規則に結合し てなる PGAが一般的である力 D—グルタミン酸のみが結合してなる PGA (非特許 文献 1)や、 L グルタミン酸のみが結合してなる PGA (特許文献 1、非特許文献 2〜 4)も報告されている。
[0015] なお、本明細書では、説明の便宜のため、 D—グルタミン酸及び L—グルタミン酸が 結合してなる PGAを「DL— PGA」と表記する。また、 D—グルタミン酸のみ力もなる P
GAを「D— PGA」と表記し、 L グルタミン酸のみからなる PGAを「ポリ一 γ L グ ルタミン酸」又は「L PGA」と表記する。
[0016] しかしながら、特許文献 2に係る生分解性吸水性榭脂では、所望の品質を有する 生分解性吸水性榭脂を、安定して製造することが困難であるという問題や、そもそも 当該生分解性吸水性榭脂を構成する DL— PGAの架橋体を製造すること自体が困 難であるという問題を生じる。
[0017] 具体的には、特許文献 2に開示されている DL— PGA架橋体の原料である DL— P GAは、バチルス'ズブチルス等の納豆菌やその類縁菌によって合成されている。し かし、納豆菌やその類縁菌から得られる DL— PGAでは、 D グルタミン酸及び L— グルタミン酸が不規則に結合し、 D -グルタミン酸及び L -グルタミン酸の含有比率 や配列は生産菌を培養する毎に変動する。そのため、 DL— PGA架橋体は、分子毎 に構造が異なり、その性質も分子毎に異なることとなる。これでは、架橋体を作製した 際に、使用する DL— PGAのロット間により、品質の差が生じ易ぐ所望の品質を有 する PGA架橋体を安定して製造することが困難である。
[0018] さらに、上述のように、原料となる DL— PGAの品質が一定していないと、安定して 架橋体を得ることが困難であると 、われて 、る。本発明者らの検討にぉ 、ても DL— PGAの架橋体は得られな力つた。これは、上述のように DL— PGAは、分子毎にそ の構造が異なるためであると考えられる。つまり、 PGAの架橋体を作製する際の架橋 効率は分子の構造に依存しており、分子毎の構造が不規則に異なる場合は、架橋 効率が著しく低下する。よって、分子毎に構造が異なる DL— PGAを架橋させること は困難であり、架橋体の収率も極めて低いものとなる。
[0019] ところで、従来、 L PGAの架橋体を得たという報告はない。これには次の理由が 考えられる。即ち、従来、液体培養では、平均分子量が大きい L— PGAは得られて いない。一方で、低分子量の有機化合物の架橋体を得ることが極めて困難であること は技術常識である。これでは、当業者は、低分子量の L PGAの架橋体を得ること を着想することすら困難である。そのため、 L— PGAの架橋体を得ることを試みたと いう報告すら無い。なお、工業的な用途の PGAは、液体培養によって製造可能であ ることが要求される。平板培養では一度に大量の微生物を培養することが難しぐま
た、平板培地上力も L— PGAを回収すると効率が悪いからである。
[0020] 例えば、 L— PGAを合成する生物として、非特許文献 1では好アルカリ性細菌 Badl lus haloduransが開示され、及び非特許文献 2ではヒドラが開示されている。し力し、こ れらの生物により合成される L— PGAの分子量は 10万程度であり、極めて小さい。
[0021] また、特許文献 2及び非特許文献 3では、好塩性古細菌である Natrialba aegyptiaca は、平板培地で培養すれば、分子量 10万〜 100万程度の L— PGAを生産すること が報告されている。しかし、当該 Natrialba aegyptiacaが液体培養条件下で合成する L — PGAは、分子量 10万程度であり、かつ、その合成効率は極めて低い。
[0022] D— PGAの架橋体は、仮に得ることができたとしても、産業上の利用に適していな い。
[0023] 何故なら、非特許文献 4で開示されて ヽる D— PGAを合成する菌は、強 ヽ病原性 を有する炭疽菌 Bacillus anthracisである。産業上利用する PGAの製造に、炭疽菌を 使用することは極めて不適切である。
[0024] ところで、荒れ肌には、角質細胞の剥離によるものと、乾燥により皮膚の健康状態 が悪化して、表皮の硬化や損傷に至るものとがある。中でも角質細胞の剥離による荒 れ肌は、コレステロール、セラミド、脂肪酸等の角質細胞間脂質の溶出、紫外線、洗 剤等による角質細胞の変性、表皮細胞の増殖バランス及び Z又は角化バランスの崩 壊による角層透過バリアの形成不全等によって発生する。
[0025] 従来、荒れ肌を予防、又は治癒する目的で、角質細胞間脂質成分、又はそれに類 似する角質細胞間脂質を合成して、肌に供給する等の検討が行われている。角層細 胞間脂質とは、有棘層及び顆粒層の細胞で生合成された層板顆粒が、角層直下で 細胞間に放出され、伸展し、層板 (ラメラ)構造を形成することにより、細胞間に広がつ た物質をいう。
[0026] 層板顆粒は、ダルコシルセラミド、コレステロール、セラミド、リン脂質等から構成され る力 角層細胞間脂質にはダルコシルセラミドは殆ど含まれていない。すなわち、層 板顆粒中のダルコシルセラミドは、 β—ダルコセレブロシダーゼによって加水分解を 受け、セラミドに変換されると考えられている。そして、セラミドがラメラ構造を形成する ことで、角層細胞間脂質として角層透過バリアの形成を改善し、荒れ肌を防ぐバリア
として機能すると考えられている。特に、洗剤等による肌荒れには、セラミドの補充が 有効であり、肌荒れの改善に高い効果を示すことが報告されている(非特許文献 5)。
[0027] 一方、表皮が硬化や損傷することによる荒れ肌を防ぐため、従来、保湿効果を有す る、化粧料等の皮膚外用剤が用いられている。保湿効果を有する皮膚外用剤を用い ることで、皮膚力 の水分揮散が防止され、表皮及び角質層に水分を保持させる。こ れにより、皮膚の恒常性が維持され、保湿性、柔軟性を保つことができ、みずみずし い肌を保つことができる。
[0028] 従来報告されている、皮膚に対して保湿効果を有する親油性の物質として、オリー ブ油等の植物油、ラノリン等の動物由来の脂質等が挙げられる。また、皮膚に対して 保湿効果を有する親水性の物質として、グリセリン、 1, 3—ブチレングリコール、プロ ピレンダリコール、ソルビトール等の水溶性多価アルコール、ヒアルロン酸及びキサン タンガム等の多糖類、ポリエチレングリコール等の水溶性高分子、ピロリドンカルボン 酸塩、アミノ酸に代表される低分子量の天然保湿因子、植物抽出エキス等が挙げら れる。
[0029] このように皮膚に対する保湿効果を有する物質として、様々な物質が存在するが、 近年、安全性を重要視する風潮等から、動物由来の物質や、化学合成品は避けられ る傾向にある。そして、天然物由来の物質や、微生物による発酵生産物が好ましいと されている。さらには、生体のみならず環境にも負荷の少ない生分解性素材が、期待 され注目を浴びている。
[0030] 生分解性素材の中でも、微生物が生産するバイオポリマーが有望視されている。バ ィォポリマーの中でも、アミノ酸が縮重合して構成されるポリアミノ酸と呼ばれる一群 のバイオポリマーには、様々な機能が見出されており、その潜在能力に注目が集まつ ている。特に、上述したポリアミノ酸である PGAが注目されている。
[0031] PGAは、上述したように、グルタミン酸の aーァミノ基と γ —カルボキシル基とがアミ ド結合したポリアミノ酸である。 PGAは、古くから日本人に親しまれている納豆の糸引 きの主体物質として知られる、吸水性のポリアミノ酸である力 このように親しまれてき た背景として、その魅力的な機能性によるところが大きい。 PGAの魅力的な機能とし ては、生分解性及び高吸水性を兼ね備えている点が知られている。これらの機能を
利用して、上述した化粧料をはじめ、医療品、食品等、種々の分野、用途で用いられ ることが期待されている。
[0032] し力しながら、上記従来の PGAを含有する皮膚外用剤では、所望の品質を有する 皮膚外用剤を安定して製造することが困難であるという問題や、保湿性が不十分で あるという問題点を有する。
[0033] 上述のように、現在、製品化されている DL— PGAは、化学的にヘテロなポリマー である。具体的には、 PGAは、納豆菌やその類縁菌から生産されている力 D—グ ルタミン酸及び L グルタミン酸が不規則に結合しており、その含有比率や、配列は 生産菌の培養毎に変動する。一般に、ポリアミノ酸の構造的特徴 (構成するアミノ酸 の光学活性や種類、分子サイズ、結合様式など)は、その機能に強く影響を与える。 上記 DL— PGAは、分子毎に構造が異なるため、その性質も分子毎に異なる。これ では、所望の品質を有する DL—PGAを安定して製造することが困難である。
[0034] また、 DL— PGAの保湿性は不十分であるため、化粧品等の皮膚外用剤としての 実用化には大きな課題が残る。
[0035] ところで、従来、 L— PGAを含む皮膚外用剤を製造したという報告はない。これに は、次の理由が考えられる。
[0036] 一般に、 PGAを用いて皮膚外用剤を製造する場合、保湿性が要求されるため、高 分子量の PGAが不可欠である。一方で、従来、液体培養では、平均分子量が大き い L PGAは得られて!/、な!/、。これでは、 L PGAを含有する保湿剤を製造するこ とを着想することすら困難である。
[0037] また、上述したように、工業的な用途の PGAは、液体培養によって製造可能である ことが要求されるが、平板培養では一度に大量の微生物を培養することが難しぐ平 板培地上力 L PGAを回収すると効率が悪い。また、 D—PGAは、上述のように 産業上の利用に適して!/、な!/、。
[0038] ところで、特許文献 2には DL—PGAの架橋体が吸水性榭脂として用いられている 力 DL— PGAの架橋体を皮膚外用剤として用いることは困難である。
[0039] 特許文献 2に開示されている DL— PGA架橋体の原料である DL— PGAは、バチ ルス'ズブチルス等の納豆菌やその類縁菌によって合成されている。これでは原料と
なる DL— PGAの品質が一定しないため、安定して架橋体を得ることが困難である。 本発明者らの検討においても DL— PGAの架橋体は得られなかった。これは、上述 のように DL— PGAは、分子毎にその構造が異なるためであると考えられる。つまり、 PGAの架橋体を作製する際の架橋効率は分子の構造に依存しており、分子毎の構 造が不規則に異なる場合は、架橋効率が著しく低下する。よって、分子毎に構造が 異なる DL— PGAを架橋させることは困難であり、架橋体の収率も極めて低いものと なる。
[0040] 従って、 DL— PGAの架橋体を用いても、所望の品質の皮膚外用剤を安定して製 造することは困難である。
[0041] 一方で、従来、 L PGAの架橋体を得たという報告はない。
[0042] これは、上述のように、液体培養では、平均分子量が大きい L PGAは得られてい な!、ためである。低分子量の有機化合物の架橋体を得ることが極めて困難であること は技術常識であるため、当業者は、低分子量の L PGAの架橋体を得ることを着想 することすら困難である。そのため、 L— PGAの架橋体を得ることを試みたという報告 すら無い。
[0043] また、 D— PGAの架橋体は、仮に得ることができたとしても、上述のように D— PGA の生産菌は、現在炭疽菌のみであるため、産業上の利用に適していない。
特許文献 1:特表 2002— 517204号公報(2002年 6月 18日公表)
特許文献 2:特開平 10— 251402号公報(1998年 9月 22日公開)
特干文献 1 : Makino, I. Ucnida, N. Terakaao, し. Sasakawa, and M. Yoshikawa, Molecular characterization and protein analysis of the cap region, which is essential for encapsulation in Bacillus anthracis, Journal of Bacteriology, 1989, 171, 722—730. 非特許文献 2 :Aono, R., M. Ito, and T. Machida, Contribution of the Cell Wall Com ponent Teichuronopeptide to pH Homeostasis and Alkaliphily in the Alkaliphile Bacil lus lentus C- 125, Journal of Bacteriology, 1999, Vol. 181, 6600—6606.
非特許文献 3 : Hezayen, F. F" B. H. A. Rehm, B. J. Tindall and A. Steinbuchel, Tra nsfer of Natrialba asiatica BIT to Natrialba taiwanensis sp. nov. and description of N atrialba aegyptiaca sp. nov., a novel extremely halophilic, aerobic, non— pigmented m
ember of the Archaea from Egypt that produces extracellular poly(glutamic acid), Int ernational Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology, 2001, 51, 1133—114 2.
特許文献 4 : Weber, J., Poly(gamma— glutamic acid)s are the major constituents of nematocysts in Hydra (Hydrozoa, Cnidaria), Journal of Biological Chemistry, 1990, Vol. 265, 9664-9669.
非特許文献 5 :皮膚と美容、 36, 210 (2004)
発明の開示
[0044] 本発明は、上述の課題を背景になされたものである。すなわち、本発明の目的は、 光学純度が均一なポリ γ L グルタミン酸を高生産する微生物又はその変異株 と、その微生物を用いた高分子量のポリ γ L グルタミン酸の生産する方法及 び高分子量で光学純度が均一なポリ 0 —グルタミン酸を提供することにある。
[0045] また、本発明の目的は、所望の品質を有する L— PGA架橋体を安定に提供するこ とにある。
[0046] また、本発明の目的は、所望の品質を有する皮膚外用剤を、安定に提供することに ある。
[0047] 本発明者らは鋭意検討した結果、以下に示す手段により、上記課題を解決できるこ とを見出し、本発明に到達した。すなわち、本発明は、以下の構成力もなる。
1.液体培養条件下で分子量が 130万以上のポリ γ L グルタミン酸を生産する 微生物。
2.ポリ γ L グルタミン酸の分子量が 200万以上である 1の微生物。
3.ポリ γ—L—グルタミン酸の分子量が 350万以上である 1の微生物。
4.ポリ γ L グルタミン酸の生産能を有する微生物を変異処理して得られる 1〜 3のいずれかの微生物。
5. NaCl濃度が 10% (w/v)以下の固体培養条件下でムコイド状を呈する 4の微生 物。
6.微生物が好塩菌である 4または 5の微生物。
7.好塩菌が高度好塩菌である 4〜6の 、ずれかの微生物。
8.高度好塩菌が古細菌である 4〜7の 、ずれかの微生物。
9.高度好塩性古細菌がナトリアルバ ェジプチアキア(Natrialba aegyptiaca)である 3 〜8のいずれかの微生物。
10.微生物が、ナトリアルバ ェジプチアキア(Natrialba aegyptiaca) 0830— 82株( 受託番号: FERM BP— 10747)、ナトリアノレノ ェジプチアキア(Natrialba aegypti aca) 0830— 243株(受託番号: FERM BP— 10748)、またはナトリアルバ ェジプ チアキア(Natrialba aegyptiaca) 0831— 264株(受託番号: FERM BP— 10749) である 1〜9のいずれかの微生物。
11. 1〜10のいずれかの微生物を培養し、その培養液より高分子量のポリ— γ L グルタミン酸を回収する高分子量ポリ γ L グルタミン酸の製造方法。
12.培養液中の塩濃度が 5〜30WZV%である 11の高分子量ポリ— γ L—ダル タミン酸の製造方法。
13. 11または 12の製造方法より得られる高分子量のポリ— γ—L グルタミン酸。
14.平均分子量が 130万以上のポリ y L グルタミン酸。
15.平均分子量が 200万以上のポリ y L グルタミン酸。
16.平均分子量が 350万以上のポリ γ L グルタミン酸。
17.ナトリアルバ ェジプチアキア(Natrialba aegyptiaca) 0830— 82株(受託番号:F ERM BP— 10747)、ナトリアノレノ ェジプチアキア(Natrialba aegyptiaca) 0830— 243株(受託番号: FERM BP— 10748)、またはナトリアルバ ェジプチアキア(Na trialba aegyptiaca) 0831— 264株(受託番号: FERM BP— 10749)。
18.少なくとも下記の(a)〜(c)の各工程を含むポリ— γ—L グルタミン酸生産変 異株の選抜方法。
(a)ポリ γ L グルタミン酸の生産能を有する微生物を変異処理する工程。
(b)変異処理した該微生物を、親株がムコイド状のコロニーを形成しない条件の固体 培養条件下で培養し、ムコイド状を呈する変異株を選抜する工程。
(c) (b)で選抜した変異株を液体培養条件下で培養し、親株と比較しポリ— γ -L- グルタミン酸を顕著に生産する変異株をさらに選抜する工程。
19.少なくとも下記の(a)〜(c)の各工程を含むポリ— γ—L グルタミン酸生産変
異株の選抜方法。
(a)ポリ γ L グルタミン酸の生産能を有する微生物を変異処理する工程。
(b)変異処理した該微生物を、 NaCl濃度が 15% (w/v)以下の固体培養条件下で 培養し、ムコイド状を呈する変異株を選抜する工程。
(c) (b)で選抜した変異株を液体培養条件下で培養し、親株と比較しポリ— γ -L- グルタミン酸を顕著に生産する変異株をさらに選抜する工程。
20.ポリ γ—L—グルタミン酸分子同士の架橋構造を有するポリ γ L グルタ ミン酸架橋体。
21.上記ポリ y—L—グルタミン酸の平均分子量が 100万以上である 20に記載の ポリ γ L グルタミン酸架橋体。
22.上記ポリ y L グルタミン酸の平均分子量が 200万以上である 20に記載の ポリ γ L グルタミン酸架橋体。
23.上記ポリ y—L—グルタミン酸の平均分子量が 350万以上である 20に記載の ポリ γ L グルタミン酸架橋体。
24.吸水倍率が 10倍以上 5000倍以下である 20〜23のいずれかに記載のポリ— γ -L-グルタミン酸架橋体。
25. 20〜24のいずれかに記載のポリ γ—L—グルタミン酸架橋体を含んでなるハ イドロゲノレ。
26.ポリ γ—L—グルタミン酸の分子同士を架橋させる架橋工程を含むポリ γ -L-グルタミン酸架橋体の製造方法。
27.上記架橋工程では、放射線を照射することで、ポリ γ L グルタミン酸の分 子同士を架橋させる 26に記載のポリ γ—L—グルタミン酸架橋体の製造方法。
28.上記放射線が γ線である 27に記載のポリ γ—L—グルタミン酸架橋体の製造 方法。
29.上記架橋工程におけるゲルィ匕率が 50%以上 100%以下である 26に記載のポリ γ L グルタミン酸架橋体の製造方法。
30. Natrialba aegyptiaca (ナトリアルバ ェジプチアキア)を用いて、上記ポリ— γ L —グルタミン酸を合成するポリ一 γ—L グルタミン酸合成工程を、さらに含む 26に
記載のポリ y L グルタミン酸架橋体の製造方法。
31.上記 Natrialba aegyptiaca (ナトリアノレノ ェジプチアキア)が、 Natrialba aegyptiac a (ナトリアルバ ェジプチアキア) 0830— 82株(受託番号: FERM BP— 10747)、 Natrialba aegyptiaca (ナトリアルバ ェジプチアキア) 0830— 243株(受託番号: FER M BP— 10748)、及び、 Natrialba aegyptiaca (ナトリアルバ ェジプチアキア) 0831 — 264株(受託番号: FERM BP— 10749)力もなる群力も選択される少なくとも一 つの菌株である 30に記載のポリ γ—L—グルタミン酸架橋体の製造方法。
32.ポリ γ—L—グルタミン酸及びポリ γ—L—グルタミン酸架橋体のうち少なく とも一方を含む皮膚外用剤。
33.上記皮膚外用剤が、化粧料である 32に記載の皮膚外用剤。
34.上記皮膚外用剤が、保湿剤である 32に記載の皮膚外用剤。
[0048] 本発明のさらに他の目的、特徴、および優れた点は、以下に示す記載によって十 分わ力るであろう。また、本発明の利益は、添付図面を参照した次の説明で明白にな るであろう。
図面の簡単な説明
[0049] [図 1]変異株ポリ— γ—L グルタミン酸生産性を示す図である。
[図 2]ポリ— γ—L グルタミン酸 'Na塩の IR分析の結果を示す図である。
[図 3]ポリ— γ—L グルタミン酸のフリー体の IR分析の結果を示す図である。
[図 4]ポリ y—L—グルタミン酸の H— NMRのスペクトル(500MHz)を示す図であ る。
[図 5]本発明の実施例において得た L PGAの、 H— NMRのスペクトルを示す図で ある。
[図 6]本発明の実施例にお 、て、 2重量%L— PGA · Na塩水溶液を用 、て得た L PGA架橋体の吸水倍率と、 L PGA架橋体の作製において照射した γ線の照射線 量との関係を検討した結果を示す図である。
[図 7]本発明の実施例にお 、て、 5重量%L— PGA · Na塩水溶液を用 、て得た L PGA架橋体の吸水倍率と、 L PGA架橋体の作製において照射した γ線の照射線 量との関係を検討した結果を示す図である。
[図 8]本発明の実施例において、保湿性評価の結果を示す図である。
[図 9]本発明の実施例において、ヒト肌荒れ試験の結果を示す図である。
発明を実施するための最良の形態
[0050] 本発明の実施の一形態について説明すれば、以下のとおりである。なお、本発明 の範囲はこれらの説明に拘束されることはなぐ以下の例示以外についても、本発明 の趣旨を損なわない範囲で適宜変更して実施することができる。
[0051] < 1;ポリ γ L グルタミン酸高生産微生物又はその変異株、該微生物を用い たポリ γ—L—グルタミン酸の製造法及び高分子量ポリ γ—L—グルタミン酸 > 本発明の「ポリ— γ—L グルタミン酸」とは、 L グルタミン酸のみ力 なるホモポリ マーである。その構造は式(1)にて示される構造である。式(1)において、 ηはポリ y L グルタミン酸の重合数を示す。
[0052] [化 1]
[0053] 本発明の「分子量」とはプルラン標準物質の分子量換算にて算出した数平均分子 量 (Mn)のことを指す。好ましくは 130万以上、より好ましくは 200万以上、さらに好ま しくは 350万以上である。
[0054] 本発明の「微生物」は高分子量のポリ γ L グルタミン酸を生産する微生物で あれば特に限定されな 、。野生型の微生物やこれらの変異株及び遺伝子組換え技 術により造成された微生物を用いることができる。好ましくは好塩菌又はその変異処 理株である。好塩菌としての性質を有しておれば、好熱菌、高度好熱菌、好冷菌、好 酸菌、好圧菌および低温生育菌などであっても良い。本発明の好塩菌は至適増殖 に 0. 2Μ以上の NaCl濃度を要求する原核生物である。好塩菌は、低度好塩菌(0. 2-0. 5Mの NaCl濃度で生育)、中度好塩菌(0. 5- 2. 5Mの NaCl濃度で生育)、 高度好塩菌(2. 5- 5. 2Mの NaCl濃度で生育)であればよい。好ましくは、高度好 塩菌がよい。
[0055] 本発明の「好塩菌」は、「古細菌」であってもよい。「古細菌」には、高度好塩古細菌 (好塩古細菌と称することもある)、好熱古細菌、メタン菌 (メタン生成古細菌)などがあ る力 ポリ γ L グルタミン酸を生産できる古細菌であれば特に限定はされない 。好ましくは、高度好塩古細菌がよい。なお高度好塩菌の大半が高度好塩性古細菌 によって占められている。高度好塩古細菌は、例えば、 Halobacterium属、 Haloarcula 晨、 Haloferax属、 Halococcus晨、 Haloruorum 、 HalobaculumJ禹、 Natna a為、 Natro nomonas腐、 NatronobactenumJ¾、 NatronococcusJ¾等か举げられる力、 Natria aJ¾ が好ましぐさらに好ましくはナトリアルバ ェジプチアキア(Natrialba aegyptiaca)がよ い。
[0056] 「ムコイド状」とは、コロニーが粘性状態のことを指し、ポリペプチド鎖の主柱に共有 結合した単糖や多糖鎖側鎖を含む高分子のことを指す。本願発明の「ムコイド状」と はポリ γ—L—グルタミン酸と多糖が結合した粘性状態のコロニーのことを指す。
[0057] 本発明の最も重要な開示の一つは、ポリ γ L グルタミン酸を顕著に生産する 微生物の取得方法にある。また、ポリ γ—L—グルタミン酸を顕著に生産する微生 物のスクリーニング方法でもある。微生物は、変異処理してもしなくても良い。より好ま しくは、変異処理するのがよい。
[0058] 本発明のポリ γ L グルタミン酸を顕著に生産する微生物の取得方法または スクリーニング方法において、重要な開示は、塩感受性の高まったポリ γ Lーグ ルタミン酸生産微生物を選抜することにある。その選抜方法は、通常、ポリ— γ -L- グルタミン酸生産微生物がポリ— γ—L グルタミン酸を生産しにくい塩濃度下で培 養し、ムコイド状を示すコロニーを目安に選抜を実施すればよい。なお、この選抜ェ 程の前や選抜工程において、変異処理を施しても良い。
[0059] ここでいう「塩感受性」とは、微生物がポリ γ—L—グルタミン酸の生産を開始する 塩濃度に対する感受性のことを指す。塩感受性が高まった微生物又はその変異株と は、例えば、 5%〜20%(WZV) NaClにおいてもポリ— γ—L グルタミン酸を生産 する変異株のことを指し、好ましくは 7%〜15%(WZV) NaCl濃度においてもポリ— γ L グルタミン酸を生産する変異株のことを言う。
[0060] 塩とは、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、マンガン、カルシウム、亜鉛及び鉄等一
般的なものあれば限定する必要はな 、。そのなかでも好ましくはナトリウムである。
[0061] また、変異処理方法としては公知の方法、例えば遺伝子組換えによる方法、細胞ま たは胞子に変異原性のある薬剤を接触させる方法、また X線や γ線のような放射線、 紫外線などを照射する方法などを挙げることができる。前記の薬剤を接触させる方法 に用いられる薬剤としては、例えば Ν—メチル N'—-トロ一 Ν -トロソグァ二ジン (NTG)、ェチルメタンスルホン酸(EMS)等のアルキル化剤を挙げることができる。こ れら変異処理を施す場合には、変異処理後の微生物の生存率が 1%以下となる程 度の強度であることが好まし 、が、特に限定はされな 、。
[0062] 選抜し得られた微生物又はその変異株は、っ 、で液体培養でポリ γ L ダル タミン酸を生産できる株をさらに選抜しても良い。
[0063] 本発明のさらに有利な点は、液体培養において、ポリ一 γ—L グルタミン酸を生 産できる微生物又はその変異株の取得を容易にしたことにある。上記選抜方法を実 施せずに、液体培養による選抜を実施し、ポリ— γ—L グルタミン酸を液体培養で 生産できる微生物又はその変異株を入手することは当業者にとって容易でない。な ぜならば、固体培養で得られるコロニー毎に液体培養し、そのポリ一 y— L グルタ ミン酸の生産量を確認しなければならな 、からである。この作業は天文学的数字にな るため、事実上不可能であることは当業者であれば容易に理解できる。本願発明者 らは鋭意努力し、ポリ γ—L—グルタミン酸を液体培養で生産できる微生物又はそ の変異株を容易に入手せしめる上記選抜方法を見出した。本発明により、液体培養 でポリ γ— L—グルタミン酸を生産できるようになるため、ポリ γ—L—グルタミン 酸の工業化が容易となるため、産業の発展に大ぃに貢献できる。
[0064] 本発明により得られた微生物又はその変異株を液体培養することで、高分子量の ポリ— γ—L グルタミン酸を工業的なスケ—ルで製造することが出来る。
液体培養方法は、選抜した微生物又はその変異株が生育でき、高分子量のポリ y L グルタミン酸を生産できる条件下で培養すればよぐ特に限定はされない。 たとえば、選抜した微生物又はその変異株を培養するには、培地を通常の方法、例 えば、 110〜140°C、 8〜20分で殺菌した後、培地に変異株を添加する。ただし、高 度好塩菌の場合は他の微生物が生育不可能な条件である飽和 NaCl濃度条件にお
いても生育できるために殺菌工程を省略することもできる。
[0065] 液体培養する場合には、振とう培養、通気攪拌培養などで行えばょ ヽ。その際の培 養温度は、 25〜50°C、好ましくは 30〜45°Cが適当である。また、培地の pHは、水 酸ィ匕ナトリウム、水酸ィ匕カリウム、アンモニア、塩酸、硫酸またそれらの水溶液などに よって調整できる力 pH調整できれば限定されない。培養 pHは pH5. 0- 9. 0、好 ましくは pH6. 0- 8. 5で培養すればよい。また、培養期間は、通常 2〜4日間程度 でよいが、ポリ γ L グルタミン酸を生産できればなんら限定されない。また、微 生物又はその変異株の生育特性に応じて培養時に塩を添加しても良 ヽ。培養時の 塩濃度は 10〜 30%、好ましくは 15〜 25 %で培養すればよ 、。
[0066] このようにして培養すると、ポリ γ L グルタミン酸は、主として菌体外に蓄積さ れる。
[0067] この培養物力 ポリ γ—L—グルタミン酸を分離、採取するには、公知の方法、 ( 1)固体培養物から 20%以下の食塩水により抽出分離する方法 (特開平 3— 30648 号公報)、(2)硫酸銅による沈殿法((Throne.B.C., C.C.Gomez.N.E.Noues and R.D. Housevright: J.Bacteriol. , 68卷、 307頁、 1954年)、(3)アルコール沈殿法(R.M.V ard, R.F.Anderson and F.K.Dean:Biotechnology and Bioengineering, 5卷、 41頁、 19 63年、(4)架橋化キトサン成形物を吸着剤とするクロマトグラフィ—法 (特開平 3 - 24 4392号公報など)、(5)分子限外濾過膜を使用する分子限外濾過法、(6)前記(1) 〜(5)を適宜組み合わせた方法などが採用できる。このようにして分離、採取したも のをポリ y—L—グルタミン酸の含有液としてもよい。必要により公知の方法でスプ レードライ、凍結乾燥などの操作を施して粉末としてもょ 、。
[0068] 以下に、微生物、特にナトリアルバ ェジプチアキア(Natrialba aegyptiaca)の例を 挙げて詳細に記述するが、これにより本発明が限定されるものではない。
[0069] 以下に、好塩菌、特にナトリアルバ ェジプチアキア(Natrialba aegyptiaca)を変異 処理し、液体培養条件下で高分子量のポリ γ L グルタミン酸を顕著に生産す る微生物またはその変異株を得る方法と、その微生物またはその変異株を用いたポ リー γ—L—グルタミン酸の製造方法および高分子量のポリ γ—L—グルタミン酸 の取得方法を説明する。
[0070] ナトリアルバ ェジプチアキア(Natrialba aegyptiaca)は分子量 10〜: LOO万程度の ポリ γ—L—グルタミン酸のみを固体培養で生産することが報告されている。一方 、ナトリアルバ ェジプチアキア(Natrialba aegyptiaca)は、液体培養条件下では、少 量のポリ γ—L—グルタミン酸しか生産せず大量生産が容易ではないとともに、得 られるポリ一 γ—L グルタミン酸の分子量も 10万と小さい(特表 2002— 517204号 公報及び F.F.Hezayen, B.H.A.Rehm, B.J.Tindall and A.Steinbuchel, Int. J. Syst. E., 51, 1133(2001) )
液体培養条件下でポリ y L グルタミン酸を生産出来る菌株をスクリーニング するにしても、ナトリアルバ ェジプチアキア(Natrialba aegyptiaca)は、固体培地表面 でムコイド状のコロニーを形成するため、コロニーとコロニーが融合してしまい、シン ダルコ口-一の分離が難しい。たとえ、シングルコロニーの分離をしたとしても、一株 ずつ液体培養し、ポリ Ί—L—グルタミン酸の有無を確認しなくてはならず、膨大 な時間と労力が必要であり、本発明まで不可能であった。
[0071] ナトリアルバ ェジプチアキア(Natrialba aegyptiaca)は、 10% (wZv)以上の塩を 含む培地で生育可能であるが、ポリ— γ—L グルタミン酸を生産するのは 20% (w Ζν) %以上の塩を添加した場合に限られる。また、 NaCl濃度が 10% (wZv)の固体 培養条件下でムコイド状を呈しない。さらに、液体培養よりも固体培養の方が菌体当 たりのポリ— γ—L グルタミン酸生産量は 10倍以上高くなる。つまり、本古細菌は、 高塩環境下で発生する脱水現象力 巧みに身を守るためにポリ γ L ダルタミ ン酸を生産していると考えられている(Appl. Microbiol. Biotechnol., 54,319(2000))
[0072] 本発明者らは、鋭意努力の結果、本発明により改良したナトリアルバ ェジプチアキ ァ(Natrialba aegyptiaca)は親株がポリ γ— L グルタミン酸を殆ど生産しない条件 、すなわち NaCl濃度が 10% (wZv)の固体培養条件下でムコイド状を呈し、液体培 養条件下で親株と比較しポリ γ L グルタミン酸を顕著に生産することを見出し た。
[0073] 更に、該変異株が液体培養条件下においても高分子量のポリ γ L ダルタミ ン酸を著量生産することを見出している。
[0074] 本発明は、ナトリアルバ ェジプチアキア(Natrialba aegyptiaca)に限定されるもので はない。すなわち、本願発明は、ポリ γ L グルタミン酸を生産する好塩菌全般 において上記と同様の選抜方法をとれば、液体培養条件下で親株と比較しポリ y —L—グルタミン酸を顕著に生産する変異株を取得できることを開示している。本発 明により、従来、得られな力つた変異株を入手することができる。また、好塩菌は高塩 条件下において生育が可能であることから、無菌操作無しで培養することができる。 このことは培養工程のコスト削減にもつながることから有望な物質生産系である。本 願発明により、ポリ γ L グルタミン酸を大量に生産できることが可能となるので 、産業の発展に大いに貢献できる。
[0075] これらの微生物を親株として、ポリ γ L グルタミン酸生産量が高まった微生物 とするには、通常に行われる変異処理方法が採用される。その変異処理方法として は公知の方法、例えば遺伝子組換えによる方法、細胞または胞子に変異原性のある 薬剤を接触させる方法、また X線や γ線のような放射線、紫外線などを照射する方法 などを挙げることができる。前記の薬剤を接触させる方法に用いられる薬剤としては、 例えば Ν—メチノレ Ν, 一-トロ一 Ν -トロソグァ-ジン(NTG)、ェチノレメタンスノレ ホン酸 (EMS)等のアルキル化剤を挙げることができる。これら変異処理を施す場合 には、変異処理後の微生物の生存率が 1%以下となる程度の強度であることが好ま しいが、特に限定はされない。
[0076] 例えば、 N.aegyptiaca(jCM11194)のシングルコロニーを白金耳で 1白金耳搔き 取り、 3mlの PGA生産液体培地 1 (22.5% NaCl、 2% MgSO · 7Η 0、 0.2% Κ
4 2
Cl、 3% TrisodiumCitrate、 1% Yeast Extract ^ 0.75% Casaminoacid) /18ml谷 験管に植菌し、 37°C 300rpmで 3日間培養する。得られた培養液 0.5mlを 50mlの PGA生産液体培地— lZ500ml容坂ロフラスコに植菌し、 37°C 180rpmで 5日間 培養する。得られた培養液を 3000rpmで 5分間遠心し、菌体を回収する。回収した 菌体に lOOmMクェン酸緩衝液 (pH6.0)を加え再懸濁する。この操作を 3度繰り返 す。懸濁した溶液の 1/10量の飽和 NTG溶液 (東京化成株式会社)、それを滅菌水 で 70%、 50%、 20%、 10%としたものをそれぞれ加え、 42°C 150rpmで 1時間ィ ンキュペートする。処理後、 PGA生産寒天培地 1 (10% NaCl、 2% MgSO · 7Η
0、 0.2% KC1、 3% TrisodiumCitrate、 1% Yeast Extract 0.75% Casaminoacid、
2
2% Agar)に播種し 37°Cで 5日間培養する。生存率が 1%以下となる条件を設定す ることで得られる。
[0077] ポリ γ L グルタミン酸高生産株取得方法としては、前記変異処理をして得ら れたコロニーを、通常の公知の栄養培地、例えば肉汁、ペプトン、大豆粉、 Yeast Ext ract、 Casamino acid,アミノ酸類またはそれらの混合物などを含有する培地、または 必要な栄養素類を含有する無機合成培地などの寒天平板培地、好ましくは PGA生 産寒天培地 1で 2〜4日間培養する。その後、 PGA生産寒天培地 1に出現する コ口-一を一つ一つ PGA生産寒天培地 1及び PGA生産寒天培地 2 (22.5% N aCl、 2% MgSO · 7Η 0、 0.2% KC1、 3% TrisodiumCitrateゝ 1% Yeast Extract,
4 2
0.75% Casaminoacid, 2% Agar)の両寒天平板培地それぞれにとって 2〜4日間静 置培養する。
[0078] PGA生産寒天培地— 1にお 、てもムコイド状コロニーを形成する変異株を選択し、 さらに PGA生産液体培地 1 (22.5% NaCl、 2% MgSO · 7Η 0、 0.2% KC1、 3
4 2
% TrisodiumCitrate^ 1% Yeast Extract ^ 0. 5% Casaminoacid)【こ植菌し、 37°C 1 180rpm で 4日間培養し、培地中のポリ— y—L グルタミン酸を定量し、野生株と 比較してポリ γ L グルタミン酸の生産性が高まる変異株を取得する方法などが 挙げられる。
[0079] このようにして得られた菌株は、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託 センターに、ナトリアルバ ェジプチアキア(Natrialba aegyptiaca) 0830— 82株(受託 機関名:独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター、 受託日:平成 18年 4月 4日、受託番号: FERM BP— 10747)、ナトリアルバ ェジプチアキア(Na trialba aegyptiaca) 0830— 243株 (受託機関名:独立行政法人産業技術総合研究 所特許生物寄託センター、 受託日:平成 18年 4月 4日、受託番号: FERM BP—1 0748)、またはナトリアルバ ェジプチアキア(Natrialba aegyptiaca) 0831— 264株( 受託機関名:独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター、 受託日: 平成 18年 4月 4日、受託番号: FERM BP— 10749)として寄託されている。
[0080] 前記の培地でポリ γ L グルタミン酸の生産性が高まった変異株を培養するに
は、無菌操作を省略して培地に変異株を添加する。液体培養する場合には、振とう 培養、通気攪拌培養など好気条件などで行うことが望ましい。その際の培養温度は、
30〜50°C、好ましくは 35〜45°Cが適当である。また、培地の pHは、水酸化ナトリウ ム、水酸ィ匕カリウム、アンモニア、塩酸、硫酸またそれらの水溶液などによって調整で きるが、 pH調整できれば限定されない。培養 pH5. 0- 9. 0、好ましくは pH6. 0— 8 . 5で培養するのが望ましい。また、培養期間は、通常 2〜4日間程度でよい。また、 培養時の NaCl濃度は 10〜30%、好ましくは 15〜25%で培養するのが望ましい。ま た、 Yeast Extract濃度は 0. 1〜10%、好ましくは 0. 5〜5. 0%濃度で培養するのが 望ましい。また、固体培養の場合においても前期液体培養の場合と応用に、培養温 度は 30〜50°C、好ましくは 35〜45°C、培養時の pHは 5. 0— 9. 0、好ましくは pH6 . 0- 8. 5、培養時の NaCl濃度は 10— 30%、好ましくは 15〜25%、 Yeast Extract 濃度は 0. 1—10%、好ましくは 0. 5— 5%濃度が採用される。このようにして培養す ると、ポリ γ—L—グルタミン酸は、主として菌体外に蓄積されて前記した培養物中 に含まれる。
[0081] 培養液中のポリ γ—L—グルタミン酸の定量方法としては、ポリ γ L グルタ ミン酸を含む試料から、硫酸銅やエタノールを用いて沈澱させ、その沈殿物の重量 測定および Kijerder法による総窒素の測定を行なうもの(M. Bovarnick, J. Biol. Chem. , 145卷、 415ページ、 1942年)、塩酸カ卩水分解後のグルタミン酸量を測定 する方法(R. D. Housewrigt, C. B. Thorne, J. Bacteriol. , 60卷、 89ぺ—ジ、 1950年)及び、塩基性色素との定量的な結合を利用した比色法(M. Bovarnick et al. , J. Biol. Chem. , 207卷、 593ページ、 1954年)が知られているが好ましくは 、塩基性色素との定量的な結合を利用した比色法である。
[0082] 塩基性色素としてはクリスタルバイオレット、ァニリンブルー、サフラニンォー、メチレ ンブルー、メチルバイオレット、トルイジネブルー、コンゴレッド、ァゾカルマイン、チォ ニン、へマトキシリンなどがあげられるが、サフラニンォ一が好ましい。
[0083] この培養物力 ポリ γ—L—グルタミン酸を分離、採取するには、前記の公知の 方法を用いればよい。一例を挙げると、例えば、培養液を遠心分離し、菌体を取り除 く。続いて、得られた上清液に 3倍量の水を加え希釈した後、 pHを 3. 0に調整する。
pH調整後、 5時間 室温で攪拌した。その後、 3倍量のエタノ―ルを加え、ポリ— γ —L—グルタミン酸を沈殿物として回収した。沈殿物を 0. ImM Tris—HCl緩衝液( PH8. 0)に溶解させ、低分子物質を透析により除去する。透析後、得られた液を核 酸除去のため、 DNase、 RNase処理を行い、次いでタンパク質除去のために、 Prot einase処理を行う。 Proteinase処理後、透析により低分子物質を除去する。透析後 、凍結乾燥等により、乾燥ポリ γ—L—グルタミン酸を得ればよい。また、必要によ り陰イオン交換榭脂を用いた精製を行うことができるが、一般的な条件で精製可能で ある。
[0084] 本発明の最も重要な開示の別の一つは、高分子量のポリ γ L グルタミン酸と 、その取得方法である。本発明のナトリアルバ ェジプチアキア(Natrialbaaegyptiaca) 0830— 82株(受託番号: FERM BP— 10747)、ナトリアルバ ェジプチアキア(Na trialbaaegyptiaca) 0830— 243株(受託番号: FERM BP— 10748)、またはナトリ ァルバ ェジプチアキア(Natrialbaaegyptiaca) 0831— 264株(受託番号: FERM B P— 10749)を用いて、高分子量のポリ— y—L グルタミン酸を取得することが出来 る。
[0085] 上記 3種の菌株を、前記の方法で培養し、ポリ γ—L—グルタミン酸を精製するこ とにより、数平均分子量 = 1, 300, 000以上である高分子量のポリ y L グルタ ミン酸を得ることが出来る。このような高分子量のポリ一 γ—L グルタミン酸は本発 明により初めて生産出来るようになった。さらには 200万以上、特に 350万以上のポリ - y—L グルタミン酸を得ることも出来る。得られるポリ一 γ—L グルタミン酸は、 均一な光学純度でかつ高分子量のポリ γ L グルタミン酸であるため、化粧料 用途などに好ましく使用しても良い。
[0086] < 2 ;ポリ γ—L—グルタミン酸架橋体、その製造方法、及びそれを含んでなるハ イド口ゲル〉
〔本発明に係る L PGA架橋体〕
本発明に係る L— PGA架橋体は、 L— PGA分子同士の架橋構造を有するもので あればよぐその他の具体的な構成は特に限定されるものではない。
[0087] L—PGAは、 L—グルタミン酸のみ力 なるため、光学活性が均一であり、分子毎の
性質も均一である。そのため、所望の品質を有する L PGA架橋体を安定して得る ことができる。つまり、本発明に係る L— PGA架橋体は、 L グルタミン酸のみ力ゝらな るホモポリマーであり、その構造は上記式(1)にて示される構造を有する。
[0088] 本明細書において「架橋構造」とは、直鎖状の高分子化合物の分子同士が、物理 的あるいは化学的な方法で連結した構造を意図する。また、本明細書において「架 橋体」とは、架橋構造を有することで、物理的、化学的性質が変化した高分子化合物 のことを意図する。
[0089] 本発明に係る L PGA架橋体では、 L—PGAの分子同士が、共有結合によって、 3次元状に連結している。具体的には、 L PGAの分子間で、上記式(1)における H 以外の 、ずれかの元素同士が共有結合することにより、 L PGA分子同士が 3次元 状に連結している。換言すれば、本発明に係る L— PGA架橋体は、 L— PGA分子 同士が 3次元状に繋がったポリマー、即ち、 L—PGAを構成分子とするネットワークポ リマーである。なお、 L— PGAの分子間で、一方の L— PGA分子における、上記式( 1)に示す Nと、他方の L PGA分子における、上記式(1)の最右端に示す Cとが結 合したものは、 L— PGAの分子同士の重合であって、「架橋構造」の意図するところ ではない。
[0090] 本発明に係る L PGA架橋体を構成する L PGAの平均分子量は、その分子同 士が架橋している限り、限定されるものではないが、 100万以上が好ましぐさらに好 ましくは 200万以上であり、さらに好ましくは 350万以上である。分子量が 100万以上 であれば、原料である L— PGAからノ、イド口ゲルを製造したときのゲルィ匕率が向上す るため、ハイド口ゲルの収率を向上させることができる。
[0091] L PGAの平均分子量が高ければ高いほど、得られる L PGA架橋体の吸水倍 率が向上する。そのため、本発明に係る L—PGA架橋体を構成する L— PGAの平 均分子量の上限値は特に限定されるものではない。なお、後述する L PGAの製造 方法によれば、例えば、平均分子量 600万、最大で 1500万の L PGAを得ることが できる。
[0092] なお、本明細書において「平均分子量」とは、プルラン標準物質の分子量換算にて 算出した数平均分子量 (Mn)を意図する。
[0093] 本発明に係る L PGA架橋体の吸水倍率は、特に限定されるものではないが、後 述する本発明に係る L PGA架橋体の製造方法によれば、例えば 10倍以上 5000 倍以下、特に 1900倍以上 4400倍以下のものを好適に得ることができる。特に、 PG Aを材料した吸水性榭脂として、吸水倍率が 3300倍より大きいものは、上記特許文 献 1にお 、て DL - PGAを用いても得ることができなカゝつた、画期的な PGA性の生 分解性吸水性榭脂である。
[0094] なお、本明細書において「吸水倍率」とは、物質が、水等の親水性液体を含んで膨 潤することによる重量の増加率を意図する。本発明に係る L PGA架橋体の吸水倍 率は、例えば次のように算出すればよい。即ち、 L—PGA架橋体の粉末を、当該 L— PGA架橋体が膨潤するために十分な量の水に入れ、 4°Cにて 1週間静置させること で十分に膨潤させた後、 80メッシュの金網で水切りした後の L PGAの湿重量から 、当該 L PGA架橋体の粉末の乾燥重量を引いた値を、当該 L PGA架橋体の粉 末の乾燥重量で割って算出することができる。
[0095] なお、本発明に係る L— PGA架橋体は、 L PGAのみ力 なる架橋体であることが 好ましいが、 DL— PGA分子や D— PGA分子を含んでいてもよい。ただし、製造する L PGA架橋体毎の品質を安定にするため、その含有量は 0重量%以上 20重量% 以下であることが好ましい。
[0096] 〔本発明に係る L PGA架橋体の製造方法〕
本発明に係る L PGA架橋体の製造方法は、 L PGAの分子同士を架橋させる 架橋工程を含んでいればよい。 L—グルタミン酸のみ力もなる、光学活性が均一な L — PGAを原料として、これを架橋させることで、 L PGA架橋体の分子毎の性質が 均一となる。よって、所望の品質を有する L PGA架橋体を安定して製造することが できる。
[0097] L PGAは、溶媒に溶解させて L PGAの溶液を作製した上で、架橋反応に供す ればよい。 L— PGAを溶解させる溶媒としては、 L— PG Aを溶解させることができる 限り限定されるものではないが、例えば、水、アルコール、アセトン、酢酸メチル、酢 酸ェチル等が挙げられ、中でも、水、メチルアルコール、エチルアルコールが好ましく
、水がさらに好ましい。これらの溶媒に溶解させるときの L— PGAの濃度は、特に限
定されるものではないが、好ましくは 1重量%以上 10重量%以下であり、さらに好まし くは 2重量%以上 8重量%以下であり、特に好ましくは 2重量%以上 7重量%以下で ある。また、 ー?0八の溶液の 11は、特に限定されるものではないが、 5. 0以上 9. 0以下が好ましぐさらに好ましくは pH6. 0以上 8. 0以下である。
[0098] L PGAの溶液に架橋反応を施すと、当該溶液中で L PGAの架橋体が形成さ れ、当該 L— PGA架橋体が当該溶媒を含んで膨潤することで、ハイド口ゲルが得ら れる。これは後述する本発明に係るノ、イド口ゲルの態様の一つである。さらに、当該 ノ、イド口ゲルを凍結乾燥等することによって、溶媒成分を除去することによって、当該 溶媒成分を含まない L— PGA架橋体を得ることができる。なお、本発明に係るハイド 口ゲルにっ 、ては後述する。
[0099] 本発明に係る L PGA架橋体の製造方法によれば、上述した架橋反応において、 例えば、 50%以上 100%以下、特に 70%以上 100%以下のゲルィ匕率で L— PGA を得ることができる。
[0100] なお、本明細書において「ゲルイ匕率」とは、原料として用いた L— PGAの重量に対 する、架橋反応によって架橋体を形成した L PGAの重量の百分率を意図する。換 言すれば、「ゲル化率」とは、原料として用いた L PGAに対して、得られる L PGA 架橋体ひいてはハイド口ゲルの収率を表す。具体的には、架橋反応によって得たノ、 イド口ゲルの乾燥重量を、当該架橋反応に供した L PGAの乾燥重量で割って得た 数値に、百を乗じて算出する。
[0101] L PGAの架橋反応の方法は、 L PGAの分子同士を架橋させることができる限 り限定されるものではなぐ従来公知の方法で行なえばよい。例えば、架橋剤を用い てもよく、放射線を用いてもよいが、中でも放射線を用いることが好ましい。放射線を 用いれば、架橋反応後に、架橋剤を除去する操作を必要とせず、高純度の L PG A架橋体を製造することができる。
[0102] 本発明に係る L PGA架橋体の製造方法で使用可能な放射線としては、特に限 定されるものではなぐ α線、 j8線、 γ線、電子線、中性子線、 X線等を用いればよい 。中でも、 γ線が好ましい。 γ線は、例えばコバルト 60を線源とする照射装置等、従 来公知の方法、機器を用いて発生させればよい。
[0103] また、 L PGAに照射する放射線の照射線量は、 0. 5kGy以上 20kGy以下が好 ましぐさらに好ましくは 2kGy以上 lOkGy以下であり、特に好ましくは 3kGy以上 7k Gy以下であるが、製造する L PGA架橋体の用途等に応じて適宜設定すればよ!ヽ 。一般に照射線量が多ければ硬質のハイド口ゲルを得ることができ、照射線量が少な ければ軟質のハイド口ゲルを得ることができる。例えば、照射線量を lkGy、 3kGyとし た場合、平板上に置いても自然に水平方向に広がる、流動性の高いハイド口ゲルが 得られ、照射線量が 5kGy、 7kGyでは、平板上に置いても水平方向に広がることなく 静置可能な、流動性の低 ヽノヽイド口ゲルが得られる。
[0104] また、 L— PGAの架橋に放射線を用いる場合、 L— PGAの溶液を放射線透過性容 器に入れて用いればよい。放射線透過性容器としては、特に限定されるものではなく 、例えばガラス製バイアル瓶等、ガラス製容器等を用いることができる。
[0105] L—PGAの溶液を放射線透過性容器に入れた後は、そのまま放射線を照射しても よいが、予め、当該溶液に対して窒素を用いてパブリングしておくことが好ましい。当 該溶液中に含有される酸素を除去することで、架橋反応の阻害を防ぐことができる。
[0106] なお、 L— PGAの架橋に架橋剤を用いる場合は、エポキシィ匕合物、カルボン酸基 及び Z又はカルボキシレート基を含有する多糖、アミノ酸等、従来公知の架橋剤を用 いればよぐ特に限定されるものではない。例えば、エポキシ化合物としては、グリセリ ントリグリシジノレエーテノレ、ジーグリセリンポリグリシジノレエーテノレ、ポリ グリセリンポリ グリシジルエーテル、ポリオキシエチレンソルビトールポリグリシジルエーテル、多糖 類としては、グルコースとフルクトースとガラタトースとグルクロン酸とからなる混合物、 ラムノースとグルコースとガラクトースとグルクロン酸とからなる混合物、及びヒアルロン 酸を主成分とするポリカルボン酸、アミノ酸としては、ポリアスパラギン酸、ポリリシン、 ァスパラギン酸、リシン、アルギニン、及びこれらの混合物が挙げられる。これらは単 独で用いてもよく、適宜 2種類以上を混合して用いてもょ ヽ。
[0107] 本発明に係る L— PGA架橋体の製造方法で用いる L— PGAとしては、 L— PGAの 分子同士が架橋することができる限り、限定されるものではないが、上述の通り、平均 分子量が大き 、L PGAであることが好まし 、。
[0108] また、本発明に係る L— PGA架橋体の製造方法に用いる L— PGAは、塩の状態で
あってもよぐ例えばナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩等を用い ることができる。中でも、ナトリウム塩が好ましい。
[0109] 本発明に係る L— PGA架橋体の製造方法で用いる L— PGAとしては、従来公知の 種々の方法で得た L PGAを用いればよぐ例えば、 L PGAを生産する微生物を 用 、て得た L PGAを用 V、ればよ 、。
[0110] L PGAを生産する微生物としては、 L PGAを合成する微生物である限り限定さ れるものではなぐ L PGAを生産する微生物の野生型、その変異株、又は、遺伝 子組換え技術により、 L PGAの生産能力を付与、又は強化された微生物を用いれ ばよい。中でも、好塩菌、好ましくは好塩古細菌、さらに好ましくは高度好塩古細菌の 内、 L PGAの生産能を有する微生物を用いるとよい。
[0111] また、高度好塩古細菌としては、例えば、 Halobacterium (ノ、ロバクテリゥム)属、 Halo arcula (ノヽロアノレクラ)属、 Haloferax (ノヽ口フエラックス)属、 Halococcus (ノヽロコッカス) 属、 Halorubrum (ノヽロノレブノレム )属、 Halobaculum (ノヽロノくキュラム)属、 Natrialba (ナト リアルバ)属、 Natronomonas (ナトロノモナス)属、 Natronobacterium (ナトロノノクテリウ ム)属、 Natronococcus (ナトロノコッカス)属等が挙げられるが、 Natrialba属が好ましく 、 Natrialba aegyptiaca (ナトリアルノ ェジプチアキア)がさらに好ましく、 Natrialba aeg yptiaca (ナトリアルバ ェジプチアキア) 0830— 82株(受託番号: FERM BP— 107 47)、 Natrialba aegyptiaca (ナトリアルバ ェジプチアキア) 0830— 243株(受託番号 : FERM BP— 10748)、及び、 Natrialba aegyptiaca (ナトリアルバ ェジプチアキア ) 0831 - 264株(受託番号: FERM BP— 10749)力 なる群から選択される少なく とも一つの菌株を用いることがさらに好ましい。 N. aegyptiacaを用いれば、より分子量 の大きい L— PGAを得ることができる。特に、 N. aegyptiaca FERM BP— 10747、 N. aegyptiaca FERM BP— 10748、 N. aegyptiaca FERM BP— 10749は、いず れもの菌株も平均分子量 100万以上の L— PGAを、液体培養条件下で合成すること ができる。よって、 L— PGAの架橋体の収率がよぐまた、 L— PGAの製造効率もよ い。
[0112] なお、 N. aegyptiaca FERM BP— 10747、 N. aegyptiaca FERM BP— 10748 、及び、 N. aegyptiaca FERM BP— 10749は、後述する実施例 2に記載のスクリー
ユング方法及び変異処理方法に基づいて、本発明者らが独自に見出した N. aegypti acaの変異株である。このように、本発明に係る L PGA架橋体の製造方法では、上 記スクリーニング方法及び Z又は変異処理方法に基づ 、て、平均分子量の大き 、L — PGAを生産する N. aegyptiacaを選抜して用いてもよい。なお、本明細書において 、単に「N. aegyptiacajと表記したときは、 N. aegyptiacaの変異株をもその意味に含む
[0113] 以下に、 L PGAの製造方法の一実施形態として、 N. aegyptiacaを用いた場合に ついて説明するが、これに限定されるものではない。
[0114] N. aegyptiacaを培養する培地は、当該 N. aegyptiacaが生育可能で、かつ、 L— PG Aを合成可能である培地である限り、特に限定されるものではないが、液体培地であ ることが好ましい。液体培地を用いれば、一度に大量に N. aegyptiacaを培養できるた め、 L— PGAの製造効率が極めて向上する。
[0115] N. aegyptiacaの培養に用いる培地の成分は、 N. aegyptiacaが摂取可能な炭素源及 び無機塩類を含めばよぐ必要に応じて Yeast Extract等、その他の栄養物を添加す ればよい。例えば、本発明者らは、後述する実施例において、 22. 5%NaCl、 2% MgSO · 7Η 0、 0.2% KC1、 3% Trisodium Citrateゝ 1% Yeast Extractゝ 0. 75%
4 2
Casamino acidの培地を用いて N. aegyptiaca FERM BP— 10749を培養している。 なお、 Yeast Extractを培地に添加する場合、その濃度は 0. 1重量%以上 10重量% 以下であることが好ましぐ 0. 5重量%以上 5. 0重量%以下がさらに好ましい。
[0116] N. aegyptiacaは高度好塩菌であるので、 L— PGAの製造に用いる N. aegyptiacaの 生育特性に応じて、培地に塩を添加してもよい。培養時の塩濃度は 10重量%以上 3 0重量%以下、好ましくは 15重量%以上 25重量%以下で培養すればよい。
[0117] N. aegyptiacaの培養に用いる培地の pHは、特に限定されるものではないが、 5. 0 以上 10以下が好ましぐさらに好ましくは 6. 0以上 8. 5以下である。なお、 pHの調整 には、水酸化ナトリウム、水酸ィ匕カリウム、アンモニア、塩酸、硫酸、これらの水溶液等 を用いればよ!、が、 pHを調整可能な限り限定されるものではな!/、。
[0118] 培地を作製した後は、通常の方法で殺菌した後に、 L— PGAの生産に用いる N. ae gyptiacaを添加して培養すればよい。なお、培地の殺菌は、従来公知の方法で行な
えばよぐ例えば、 110〜140でで8〜20分行なぇばょぃ。なお、培地の NaClの濃 度を飽和濃度にすることで、殺菌工程を省略することもできる。上述のように、 N. aegy ptiacaは高度好塩菌であるため、飽和濃度の NaCl存在下でも生育可能である力 他 の微生物は生育不可能である力もである。
[0119] N. aegyptiacaを液体培養する場合には、振とう培養、通気攪拌培養等を行なうこと が好ましい。また、培養温度は、特に限定されるものではないが、 25°C以上 50°C以 下が好ましぐ 30°C以上 45°C以下がさらに好ましい。
[0120] N. aegyptiacaの培養期間は、他の培養条件、目的とする L PGAの生産量に応じ て適宜設定すればよく特に限定されるものではなぐ例えば 2〜4日間程度でよい。
[0121] 上述の培養条件等に基づいて N. aegyptiacaの培養を行なうと、 L— PGAは、主とし て菌体外に蓄積される。
[0122] N. aegyptiacaを培養した後の培地から、 L— PGAを分離、回収する方法は、特に 限定されるものではなぐ従来公知の方法を用いればよい。具体的には、上記 < 1 > 欄に記載した(1)〜(6)の方法を用いることができる。
[0123] 以下に、 N. aegyptiacaを培養した後の培地から L PGAを分離、回収する方法の 一例を説明するが、これに限定されるものではない。
[0124] まず、遠心分離等により、 N. aegyptiacaを培養した後の培養液力も菌体を取り除き、 次に、得られた上清から、エタノール等の低級アルコールを加えることで、 L— PGA を沈殿させるとよい。当該沈殿物は、適宜緩衝液に溶解させた上で、透析等により、 不純物を除去することが好ましい。なお、本発明者らは、後述する実施例でも示すよ うに、菌体を回収した後の上清に、 3倍量の水を加えて希釈して、さらに、 pHを 3. 0 に調整した後、 5時間、室温で攪拌した上で、 3倍量のエタノールをカ卩えることで沈殿 物を回収した。また、当該沈殿物を 0. ImM Tris—HCl緩衝液 (pH8. 0)に溶解さ せ、これを透析することにより、不純物を除去した。
[0125] 透析を行なっても、核酸やタンパク質が混入していることが考えられるため、 DNase 処理、 RNase処理、 Proteinase処理等を行なうことが好ましい。また、これらの処理後、 さらに透析等の精製処理をすることで、より高純度の L— PGAを得ることができる。
[0126] 以上により、 L PGAを含有する溶液を得ることができる。さら〖こ、得られた溶液に
対して凍結乾燥等を行なえば、粉末状の L PGA架橋体を得ることができる。また、 必要に応じて、さらに、当該溶液の精製を行なってもよい。精製は、従来公知の方法 で行なえばよぐ例えば上述の透析を行なってもよぐ陰イオン交換榭脂を用いれば よい。
[0127] なお、 DL— PGA分子や D— PGA分子を含んだ、 L PG A架橋体を製造する場 合は、 01^—?0八分子及び7又は0—?0八分子を、上述の L—PGAの溶液に混合 した上で、上述の架橋反応に当該溶液を供すればよい。
[0128] 〔本発明に係るハイド口ゲル〕
本発明に係るハイド口ゲルは、上記の本発明に係る L— PGA架橋体を含んでなる。 本発明に係るノ、イド口ゲルは、 L PGA架橋体を含んでなるため、無色透明であり、 生分解性も有している。
[0129] なお、本明細書において「ノヽイド口ゲル」とは、ポリマーが水等の溶媒を含むことによ り膨潤して形成したゲルを意図する。換言すれば、ポリマーと溶媒等の水分とを主成 分とするポリマーの溶媒膨潤体である。ノ、イド口ゲルは、多量の水を含んでおり、液 体と固体との中間の状態にある物質であり、流動性がない点で液体と異なる。また、 押す等して加圧しても、ハイド口ゲル中の溶媒が滲み出ることはない。
[0130] つまり、本発明に係るハイド口ゲルとは、 L— PGA架橋体と溶媒とを主成分とする溶 媒膨潤体と言える。
[0131] 本発明に係るハイド口ゲルは、本発明に係る L—PGA架橋体の製造方法において 説明した通り、水等の溶媒に L PGAを溶解した溶液に、架橋反応を施すことで、得 ることがでさる。
[0132] また、上述の粉末状の L PGA架橋体に、水等の溶媒を加えることにより、本発明 に係るノ、イド口ゲルを得ることができる。このとき、当該溶媒の量を少量とした上でハイ ドロゲルを得ておけば、さらに水等の溶媒を吸収可能な、吸水性に優れたノ、イドロゲ ルを得ることができる。また、本発明に係るノ、イド口ゲルを構成する L— PGA架橋体 に吸収された溶媒は、当該ハイド口ゲル力 滲み出ることがないため、本発明に係る ハイド口ゲルは保湿性に優れて 、る。
[0133] 本発明に係るハイド口ゲルは、所定の形状に均一に造粒してもよぐまた、不定形
破砕状、球状等であってもよい。また、衛生分野のみならず、多種多様な分野におい ても利用可能である。例えば、保湿剤としての化粧品、紙ォムッ等のトイレタリ—品、 体液吸収体等の医療品等、土壌改良剤として利用することもできる。
[0134] 保、湿剤としてのィ匕粧品とはフェイスケア製品、ノ、ンドケア製品、ボディケア製品、フッ トケア製品、ヘッドケア製品、及びヘアケア製品、ネィノレケア製品、又はマウスケア製 品等が挙げられる。
[0135] 以下に実施例を示し、本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。もちろ ん、本発明は以下の実施例に限定されるものではなぐ細部については様々な態様 が可能であることはいうまでもない。さらに、本発明は上述した実施形態に限定される ものではなぐ請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、それぞれ開示された 技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲 に含まれる。
[0136] < 3 ;皮膚外用剤 >
〔本発明に係る皮膚外用剤〕
本発明に係る皮膚外用剤は L PGA及び L PGA架橋体のうち少なくとも一方を 含めばよぐその他の具体的な構成は特に限定されるものではない。
[0137] L—PGAは、 L—グルタミン酸が結合してなるため、光学活性が均一であり、分子 毎の性質も均一である。よって、 L— PGAから得られる L— PGA架橋体も、所望の品 質で安定に製造することができる。そのため、 L— PGA及び L— PGA架橋体のうち、 少なくとも一方を用いることで、所望の品質を有する皮膚外用剤を安定して提供する ことができる。
[0138] さらに、 L— PGA及び L— PGA架橋体は、保湿性に優れているため、本発明に係 る皮膚外用剤は、保湿剤及び Z又は化粧料として好適に用いることができる。
[0139] 本発明に係る皮膚外用剤を保湿剤として用いる場合、具体的には、フェイスケア製 品、ノヽンドケア製品、ボディケア製品、フットケア製品、ヘッドケア製品、及びヘアケア 製品、ネイルケア製品、又はマウスケア製品等として、好適に用いることができる。
[0140] また、本発明に係る皮膚外用剤を化粧料として用いる場合、具体的には、乳液、美 容液、クリーム、ローション、洗顔料、メイク落とし等のフェイスケア製品、ハンドケア製
品の他、ボディケア製品、フットケア製品、ヘッドケア製品、及びヘアケア製品、ネィ ルケア製品、又はマウスケア製品等として、好適に用いることができる。
[0141] なお、本明細書において、「皮膚」とは、顔、首、胸、背中、腕、脚、手および頭皮の 皮膚が意図される。また、本明細書において「皮膚外用剤」とは、乾燥、荒れ肌等、 皮膚状態を改善しあるいは皮膚状態の悪ィ匕を抑制するために使用されるものを意図 する。
[0142] (L-PGA)
本発明に係る皮膚外用剤に含まれる L - PGAは、 L -グルタミン酸が結合してなる ホモポリマーであり、その構造は上記式(1)にて示される構造を有する。
[0143] 本発明に係る皮膚外用剤に含まれる L— PGAの平均分子量としては、皮膚外用剤 の用途等に応じて、適宜選択すればよいが、好ましくは 130万以上、より好ましくは 2 00万以上、さらに好ましくは 350万以上である。
[0144] L PGAの平均分子量が高ければ高いほど、当該 L PGAを含む皮膚外用剤の 保湿性が向上する。そのため、 L PGAの平均分子量の上限値は特に限定されるも のではない。なお、後述する L PGAの製造方法によれば、例えば、平均分子量 60 0万、最大で 1500万の L— PGAを得ることができる。
[0145] なお、上記「平均分子量」とは、上記 < 1 >欄の定義の通りである。
[0146] 本発明に係る皮膚外用剤に含まれる L PGAとしては、従来公知の種々の方法で 得た L PGAを用いればよぐ例えば、 L PGAを生産する微生物(以下、単に「L PGA生産微生物」と表記する)を用 V、て得た L PGAを用 V、ればよ 、。
[0147] (L PGA生産微生物)
L PGA生産微生物としては、 L PGAを合成する微生物である限り限定されるも のではなぐ L PGA生産微生物の野生型、その変異株、又は、遺伝子組換え技術 により、 L PGAの生産能力を付与、又は強化された微生物を用いればよい。具体 的には、上記く 1 > ,く 2 >欄で記載したものを好適に用いることができる。
[0148] なお、従来、液体培養条件下で、 PGA生産微生物をスクリーニングすることは困難 であった。何故なら、例えば N. aegyptiacaは、固体培地表面でムコイド状のコロニー を形成すると、コロニー同士が融合するため、シングルコロニーの分離が困難だった
力もである。さらに、シングルコロニーの分離可能であったとしても、一株ずつ液体培 養し、 L— PGAの生産の有無を確認するために、膨大な時間と労力が必要であった 。つまり、本発明に係る皮膚外用剤は、本発明者らが独自に見出したスクリーニング 方法により得た、高分子量の L— PGA生産菌を用いることで、初めて可能となった全 く新たな皮膚外用剤である。
[0149] (L PGAの製造方法)
L— PGAの製造方法は、上記く 1 >、 < 2 >欄に記載した方法を好適に用いること ができるため、ここではその説明を省略する。
[0150] 以上により、 L PGAを含有する溶液を得ることができる。さら〖こ、得られた溶液に 対して凍結乾燥等を行なえば、粉末状の L PGA架橋体を得ることができる。また、 必要に応じて、さらに、当該溶液の精製を行なってもよい。精製は、従来公知の方法 で行なえばよぐ例えば上述の透析を行なってもよぐ陰イオン交換榭脂を用いれば よい。
[0151] (L PGA架橋体)
本発明に係る皮膚外用剤に含まれる L PGA架橋体は、 L PGA分子同士の架 橋構造を有するものであればよぐその他の具体的な構成は特に限定されるもので はない。
[0152] 上記「架橋構造」及び「架橋体」の定義については、上記 < 2 >欄と同様である。
[0153] 本発明に係る皮膚外用剤に含まれる L PGA架橋体を構成する、 L PGAの平 均分子量は、その分子同士が架橋している限り、限定されるものではないが、 100万 以上が好ましぐさらに好ましくは 200万以上であり、さらに好ましくは 350万以上であ る。分子量が 100万以上であれば、原料である L— PGAからハイド口ゲルを製造した ときのゲル化率が向上するため、ハイド口ゲルの収率を向上させることができる。
[0154] L PGAの平均分子量が高ければ高いほど、得られる L PGA架橋体の吸水倍 率が向上する。そのため、本発明に係る L—PGA架橋体を構成する L— PGAの平 均分子量の上限値は特に限定されるものではない。
[0155] 本発明に係る皮膚外用剤に含まれる L PGA架橋体の吸水倍率は、特に限定さ れるものではないが、後述する本発明に係る L PGA架橋体の製造方法によれば、
例えば 10倍以上 5000倍以下、特に 1900倍以上 4400倍以下のものを好適に得る ことができる。特に、 PGAを材料した吸水性榭脂として、吸水倍率が 3300倍より大き いものは、上記特許文献 2において DL— PGAを用いても得ることができなかった、 画期的な PGA性の生分解性吸水性榭脂である。
[0156] 上記「吸水倍率」は、上記く 2 >欄で説明した通りである。
[0157] なお、本発明に係る皮膚外用剤に含まれる L—PGA架橋体としては、 L— PGAの み力 なる架橋体であることが好まし 、が、 DL— PGA分子や D - PGA分子を含ん でいてもよい。ただし、製造する L— PGA架橋体毎の品質を安定にするため、その含 有量は 0重量%以上 20重量%以下であることが好ましい。
[0158] (L PGA架橋体の製造方法)
本発明に係る皮膚外用剤に含まれる L PGA架橋体を製造する方法は、 L PG
Aの分子同士を架橋させる架橋工程を含んでいればよぐ具体的には、上記 < 2> 欄の説明と同様である。
[0159] 本発明に係る皮膚外用剤に含まれる L PGA架橋体を製造するために用いる L
PGAとしては、従来公知の種々の方法で得た L PGAを用いればよぐ例えば、上 述の L - PGAを用 V、ればよ 、。
[0160] なお、 DL— PGA分子や D— PGA分子を含んだ、 L PG A架橋体を製造する場 合は、 01^—?0八分子及び7又は0—?0八分子を、上述の L—PGAの溶液に混合 した上で、上述の架橋反応に当該溶液を供すればよい。
[0161] 本発明に係る皮膚外用剤に含まれる L PGA架橋体として、 L PGA架橋体を含 んでなるノ、イド口ゲルを用いてもよい。具体的には、例えば、上記 < 2>欄の記載の ものを用いることができる。
[0162] (皮膚外用剤の組成)
本発明に係る皮膚外用剤に含まれる L PGA及び L PGA架橋体のうち少なくと も一方の濃度は、特に限定されるものではないが、 L— PGAのみを含む場合は、 0.
00001〜30重量%であることが好ましぐさらに好ましくは、 0. 0001〜20重量%で あり、 L PGA架橋体のみを含む場合は、 0. 00001〜30重量0 /0力 S好ましく、さらに 好ましくは 0. 0001〜20重量0 /0であり、 L— PGA及び L— PGA架橋体を含む場合
は、その総量が 0. 00001〜30重量%であることが好ましぐさらに好ましくは、 0. 00 01〜20重量%である。この範囲であれば、臭いが少なぐ色調も好ましい。さらに、 高い保湿性を発揮するため、保湿剤及び Z又は化粧料として、さらに有用な皮膚外 用剤を得ることができる。
[0163] 本発明に係る皮膚外用剤は、 L PGA及び L PGA架橋体のうち少なくとも一方 を、従来公知の溶媒に溶解して作製すればよい。本発明に係る皮膚外用剤の作製 に用いる溶媒としては、特に限定されるものではないが、水等を使用すればよい。
[0164] また、本発明に係る皮膚外用剤は、使用の目的等に応じて適宜、本発明の効果を 損なわない範囲内で、通常、化粧料、医薬部外品、医薬品等の皮膚外用剤に一般 的に用いられる添加剤、例えば、炭化水素類、油脂類等の油性成分、ロウ類、シリコ ーン類、アルコール類、脂肪酸、酸化防止剤、抗菌剤、紫外線吸収剤、薬剤、精製 水等の水性成分、植物の抽出物、中和剤、 L PGA及び L PGA架橋体以外の保 湿剤、増粘剤、防腐剤、界面活性剤、香料、着色剤、各種皮膚栄養剤等の添加物を 添カロしてちょい。
[0165] 以下に、これらの添加物の具体例を挙げる力 これに限定されるものではない。ま た、これらの添加物は、単独で用いてもよぐ 2種以上を混合して用いてもよい。
[0166] 上記炭化水素類としては、例えば、流動パラフィン、スクヮラン、マイクロクリスタリン ワックス、セレシンワックス、パラフィンワックス、ワセリン等が挙げられる。
[0167] 上記油脂類としては、例えば、アポガド油、ツバキ油、マカデミアナッツ油、ォリーブ 油、ラノリン、ヒマシ油、ォリーブ油、グレープシード油、カカオ油、ヤシ油、木ロウ、ホ ホバ油等の植物油脂類等が挙げられる。
[0168] 上記ロウ類としては、例えば、ホホバ油、カルナパロウ、キャンデリラロウ、ミツロウ、 鯨ロウ等が挙げられる。
[0169] 上記シリコーン類としては、例えば、ジメチルポリシロキサン、メチフエ-ルシロキサ ン等が挙げられる。
[0170] 上記アルコール類としては、例えば、力プリルアルコール、ラウリルアルコール、ミリ スチノレアノレコーノレ、セチノレアノレコーノレ、コレステロ一ノレ、フィトステロ一ノレ、セタノーノレ 、ステアリルアルコール、へキシルデカノール、オタチルドデカノール等の高級アルコ
ール類、エタノール等の低級アルコール類が挙げられる。
[0171] 上記脂肪酸としては、例えば、力プリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸 、ベへニン酸、ラノリン脂肪酸、リノール酸、リノレン酸、ラウリン酸、ォレイン酸、イソス テアリン酸等の高級脂肪酸等が挙げられる。
[0172] 上記酸化防止剤としては、例えば、ブチルヒドロキシトルエン、トコフエロール、フィ チン等が挙げられる。
[0173] 上記抗菌剤としては、例えば、上記安息香酸、サリチル酸、ソルビン酸、パラォキシ 安息香酸アルキルエステル、へキサクロ口フェン等が挙げられる。
[0174] 上記紫外線吸収剤としては、例えば、パラアミノ安息香酸系紫外線吸収剤、アントラ -ル酸系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤、ケィ皮酸系紫外線吸収剤、 ベンゾフエノン系紫外線吸収剤、糖系紫外線吸収剤、 3- (4'—メチルベンジリデン) —d—カンファー、 3 べンジリデン d、 1 カンファー、ゥロカニン酸、ゥロカニン酸 ェチルエステル、 2 フエ二ルー 5 メチルベンゾキサゾール、 2、 2'—ヒドロキシー5 —メチルフエニルベンゾトリァゾール、 2— (2'—ヒドロキシ一 5'—t—ォクチルフエ二 ル)ベンゾトリァゾール、 2— (2'ーヒドロキシ—5'—メチルフエ-ルペンゾトリアゾール 、ジベンザラジン、ジァニソィルメタン、 4ーメトキシ 4'—tーブチルジベンゾィルメタ ン、 5—(3, 3 ジメチルー 2 ノルボル-リデン)ー3 ペンタンー2 オン等が挙げ られる。
[0175] 上記薬剤としては、例えばグリシン、ァラニン、ノ リン、ロイシン、トレオニン、フエ二 ルァラニン、チロシン、ァスパラギン酸、ァスパラギン、グルタミン、タウリン、アルギ- ン、ヒスチジン等のアミノ酸、又は、これらのアルカリ金属塩と塩酸塩;ァシルサルコシ ン酸(例えばラウロイルサルコシンナトリウム)、ダルタチオン、クェン酸、リンゴ酸、酒 石酸、乳酸等の有機酸;ニコチン酸アミド、ニコチン酸ベンジル、 y オリザノール、 アラントイン、グリチルリチン酸 (塩)、グリチルレチン酸およびその誘導体、ヒノキチォ ール、ビサボロール、ユーカノレプトーン、チモーノレ、イノシトール、サイコサポニン、二 ンジンサポニン、へチマサポニン、ムクロジサポニン等のサポニン類、パントテュルェ チルエーテル、ェチュルエストラジオール、トラネキサム酸、アルブチン、セファランチ ン、プラセンタエキス等が挙げられる。
[0176] 上記各種皮膚栄養剤としては、ビタミン Aおよびその誘導体、ビタミン B2、パントテ ン酸及びその誘導体、ナイァシン、ピオチン及びこれらの混合物が挙げられる。
[0177] 上記中和剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、水酸ィ匕カリウム、水 酸ィ匕ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、リン酸水素ニナトリウム、酢酸ナ トリウム、 2 アミノー 2—メチルー 1 プロパノール、 2 アミノー 2—メチルー 1, 3— プロパンジオール、トリエタノールァミン等が挙げられる。
[0178] 上記界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキ シエチレンソルビンタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオ キシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンォレイルエーテル、ポリオキシ エチレン高級アルコールエーテル、ポリオキシアルキルァリルエーテル、ポリオキシェ チレンジスチレン化フエ-ルエーテル、ポリオキシエチレン誘導体、ソルビタンモノラ ゥレート、ソルビタンモノォレート、ソノレビンタンセスキ才レエート、ソノレビンタンモノライ レート、ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンラウレート、ポ リオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノォレエ ート、 1 ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタン モノォレエート、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、ポリエチレングリコー ルモノラウレート、ポリエチレングリコールモノォレート、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ 油、ポリオキシチェレンヒマシ油、ポリオキシエチレンラノリン等のノ-オン界面活'性剤 や、グリシン型、アルキルァミノべタイン、イミダゾリン型、 L—アルギニン型、 L—リジン 型等の両性界面活性剤が挙げられる。
[0179] 上記 L PGA及び L PGA架橋体以外の保湿剤としては、例えば、グリセリン、プ ロピレングリコール、 1, 3 ブチレングリコール、ポリエチレングリコール等の多価アル コール、グルコース、ソルビトール、デキストリン、トレハロース、乳糖等の糖類及びそ の誘導体、グルタミン酸ナトリウム、ケラチン誘導体、コラーゲン誘導体、トリメチルダリ シン等のアミノ酸類及びその誘導体、カルボキシビュルポリマー、コンドロイチン硫酸 ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム、ピロリドンカルボン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム等の 水溶性高分子、海藻エキス、酵母エキス、保湿作用を有する各種植物エキス、及び これらの混合物等、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸
オタチルドデシル、ォレイン酸オタチルドデシル、ォレイン酸コレステリル等のエステ ル類、ポリアクリル酸ナトリウム、結晶性セルロース、各種植物精油及びこれらの混合 物が挙げられる。また、上述の植物油脂類、ロウ類、脂肪酸類、高級アルコール類も 保湿剤として使用できる。
[0180] 上記増粘剤としては、例えば、キサンタンガム等の水溶性多糖類、ヒドロキシメチル セノレロースナトリウム、メチノレセノレロース、ヒドロキシェチノレセノレロース等の水溶'性セ ルロース類、プルラン、ポリアクリル酸ナトリウム等の水溶性高分子等が挙げられる。
[0181] 上記防腐剤としては、パラベン、サリチル酸、安息香酸塩、フエノキシエタノール、グ ルコン酸クロルへキシジン等が挙げられる。
[0182] 上記香料としては、バニリン、オレンジフレーバー、レモンフレーバー、ミルクフレー バーゲラ-オール、リナロール等が挙げられる。
[0183] 上記着色料としては、水溶性のタール系色素、水不溶性のタール系色素、クチナ シ系色素、ベニバナ系色素、ゥコン系色素、パプリカ色素、アナトー色素、コチニー ル色素等の天然色素、酸性、塩基性色素が挙げられる。
[0184] さらに、例えば、ギシギシ、クララ、コゥホネ、オレンジ、セージ、ノコギリソゥ、ゼニァ オイ、センブリ、タイム、トウキ、トウヒ、パーチ、スギナ、へチマ、マロニエ、ユキノシタ、 アル-力、ユリ、ョモギ、シャタヤク、アロエ、クチナシ、サワラ、ホワイトリリー等の植物 の抽出物等を添加してもよ!/、。
[0185] 以下に実施例を示し、本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。もちろ ん、本発明は以下の実施例に限定されるものではなぐ細部については様々な態様 が可能であることはいうまでもない。さらに、本発明は上述した実施形態に限定される ものではなぐ請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、それぞれ開示された 技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲 に含まれる。
[0186] また、本明細書中に記載された学術文献および特許文献の全てが、本明細書中に おいて参考として援用される。なお、以下の実施例に示す「%」は全て「重量%」であ る。
実施例
[0187] 以下に実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例に限定さ れるものではない。
[0188] (実施例 1 ;NTG変異処理方法)
N.aegyptiaca (JCM11194、独立行政法人理化学研究所より購入)のシングルコロ ニーを白金耳で 1白金耳搔き取り、 3mlの PGA生産液体培地 1 (22.5% NaCl、 2%MgSO · 7Η 0、 0.2% KC1、 3% TrisodiumCitrateゝ 1% Yeast Extractゝ 0.75
4 2
% Casaminoacid, pH7. 2) /18ml容試験管に植菌し、 37°C 300rpmで 3日間培養 する。得られた培養液 0. 5mlを 50mlの PGA生産液体培地— l/500ml容坂ロフラ スコに植菌し、 37°C 180rpmで 5日間培養した。得られた培養液を 3000rpmで 5 分間遠心し、菌体を回収した。回収した菌体に lOOmMクェン酸緩衝液 (pH6. 0)を 加え再懸濁した。この操作を 3度繰り返した。懸濁した溶液の 1/10量の飽和 NTG溶 液 (東京化成株式会社)、それを滅菌水で 70%、 50%、 20%、 10%としたものをそ れぞれ加え、 42°C 150rpmで 1時間インキュベートした。処理後、 PGA生産寒天培 地 1 (10% NaCl、 2% MgSO · 7Η 0、 0.2% KC1、 3% TrisodiumCitrateゝ 1%
4 2
Yeast Extractゝ 0.75% Casamino acid, 2% Agar)に播種し 37。Cで 5日間培養した。
[0189] 生存率が 1%以下となる条件 (飽和 NTG溶液を 70%としたもの)を設定した。
[0190] (実施例 2 ;ポリ γ—L—グルタミン酸高生産菌スクリーニング)
生存率が 1%以下の条件より得られたコロニーを PGA生産寒天培地 1 (10%Na
Cl、 2% MgSO · 7Η 0、 0.2% KC1、 3% TrisodiumCitrateゝ 1% Yeast Extractゝ 0
4 2
.75% Casaminoacid、 2% Agar)及び PGA生産寒天培地 2 (22.5%NaCl、 2%M gSO · 7Η 0、 0.2%KC1、 3% Trisodium Citrateゝ 1% Yeast Extractゝ 0.75%Casa
4 2
mino acid, 2% Agar)に播種し、 37°Cで 6日間培養した。培養後、 PGA生産液体培 地 1の培養条件においてもポリ γ—L—グルタミン酸を生産する変異株を選択し 、得られた変異株を再度、 PGA生産寒天培地 1に播種し再現性を確認した。再現 性が確認された変異株のシングルコロニーを白金耳で 1白金搔き取り、 3mlの PGA 生産液体培地— 1/18ml容試験管に植菌し、 37°C 300rpmで 3日間培養する。得 られた培養液 0. 5mlを 50mlの PGA生産液体培地— l/500ml容坂口フラスコに植 菌し、 37°C 180rpmで 3日間培養させ、培地中のポリ— γ—L グルタミン酸を 1/5
倍希釈しサフラニン法で測定した。親株と比較してポリ一 γ—L グルタミン酸の生 産性が高まった変異株をスクリーニングした。上記の方法により、 30,000株をスクリ 一ユングして、その結果、 3株のポリ γ—L—グルタミン酸高生産変異株を取得し た。
[0191] このようにして得られた菌株は、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託 センターに、ナトリアルバ ェジプチアキア(Natrialba aegyptiaca) 0830— 82株(受託 番号: FERM BP— 10747)、ナトリアルノ ェジプチアキア(Natrialba aegyptiaca) 0830— 243株(受託番号: FERM BP— 10748)、またはナトリアルバ ェジプチア キア(Natrialba aegyptiaca) 0831— 264株(受託番号: FERM BP— 10749)として
Hしした ο
[0192] (実施例 3;変異株によるポリ γ—L—グルタミン酸生産性比較)
実施例 2で得られた 0831— 264株(受託番号: FERM BP— 10749)と、親株 ([C Ml 1194)を実施例 2の培養条件で培養した。図 1に示したように、 FERM BP— 10 749は培養液中に 4. 99gZLのポリ— γ—L グルタミン酸の生産性を示した。対し て、親株は、 0. 61gZLの生産性であった。
[0193] (実施例 4 ;ポリ γ—L—グルタミン酸の精製)
上記実施例で得られた受託番号: FERM BP— 10749のシングルコロニーを白 金耳で 1白金耳搔き取り、 3mlの PGA生産液体培地 1 (22.5% NaCl、 2%MgS Ο · 7Η 0、 0.2% KC1、 3% TrisodiumCitrateゝ 1% Yeast Extractゝ 0.75% Casami
4 2
no acid) /18ml容試験管 X 5本に植菌し、 37°C 300rpmで 3日間培養する。得られ た培養液 0. 5mlを 50ml PGA生産液体培地—l/500ml容坂ロフラスコ X 10本に 植菌し、 37°Cで 5日間培養した。得られた培養液を遠心し、菌体を取り除いた。続い て、得られた上清液に 3倍量の水を加え希釈した後、 pHを 3. 0に調整した。 pH調整 後、 5時間 室温で攪拌した。その後、 3倍量のエタノールを加え遠心分離を行い、ポ リー γ—L—グルタミン酸を沈殿物として回収した。沈殿物を 0. ImM Tris— HCl緩 衝液 (PH8.0)に溶解させ、低分子物質を除去するために透析した。透析後、得られ た液を核酸除去のため、 ImM MgCl、 10U/ml DNasel (TAKARA社製)、 20 ^ g/
2
ml RNaseKNIPPON GENE社製)となるように加え 37°Cで 2時間インキュベートした。
次いでタンパク質除去のために、 3U/ml Proteinase K(TAKARA社製)処理を 37°C 5時間インキュベートした。 Proteinase K処理後、 MilliQ水で透析し、低分子物質を 除去した。透析後、ポリ— γ—L グルタミン酸を陰イオン交換榭脂、 Q sepharose Fa st Flow(Amersham Biosciences社製)に吸着させ、洗浄後 1M NaClで溶出した。得 られた溶液を MilliQ水で透析し、透析後の溶液を凍結乾燥することにより、ポリ γ
-L-グルタミン酸 · Na塩を得た。
[0194] (実施例 5 ;ポリ γ— L グルタミン酸 'Na塩の GPC分析)
得られたポリ— γ—L グルタミン酸 'Na塩の平均分子量を GPC分析にて測定し た。また、 IR分析も行った。
[0195] GPC分析の結果、 Mw= 7, 522,000、 Mn= 3,704,000、 Mw/Mn= 2. 031、 であることが確認された (プルラン換算)。
[0196] なお、前記 GPCの分析条件は以下の通りである。
装置: HLC— 8220GPC (東ソ 社製)
カラム: TSKgel α— M (東ソ一社製)
流速: 0.6mレ min
溶出液: 0.15M NaCl水溶液
カラム温度: 40°C
注入量: 10 1
検出器:示差屈折計
IR分析の結果力も Na塩であることが示された(図 2)。
[0197] (実施例 6 ;ポリ γ—L—グルタミン酸のフリー体の GPC分析及び IR分析)
実施例 4のポリ一 γ—L グルタミン酸精製工程において、陰イオン交換榭脂、 Q s epharoseFast Flow (Amersham Biosciences社製)に吸着させ、洗浄後 1M NaClで溶 出後、ポリ— Ύ L グルタミン酸含有液の pHを IN HC1により pH2. 0に調整した。 その後、 MilliQ水で透析し、さらに凍結乾燥することでポリ— γ—L グルタミン酸'フ リー体を得た。得られたポリ γ—L—グルタミン酸のフリー体の平均分子量を GPC 分析にて測定した。また、 IR分析も行った。
[0198] GPC分析の結果、 Mw= 2,888,000、 Mn= 1,327,000、 MwZMn= 2. 176、
であることが確認された (プルラン換算)。
[0199] なお、前記 GPCの分析条件は実施例 5に記載の通りである。
[0200] IR分析の結果力 フリ一体であることが示された(図 3)。
[0201] (実施例 7 ;ポリ γ— L グルタミン酸の構造確認)
図 4は、実施例 4において、得られたポリ一 y— L グルタミン酸の H— NMRのス ベクトル (500MHz)である。重水を用いて測定した。
[0202] (実施例 8 ;ポリ y L グルタミン酸の製造)
Natrialba aegyptiaca (受託番号: FERM BP— 10749)の L乾燥アンプルに、 0. 4 mlの PGA生産液体培地(22. 5% NaCl、 2% MgSO · 7Η 0、 0. 2% KC1、 3%
4 2
Trisodium Citrateゝ 1% Yeast Extract, 0. 75% Casamino acid)を加えて懸濁液を 得た。 0. 2mlの当該懸濁液を、 PGA寒天培地(10% NaCl、 2%MgSO · 7Η 0、 0
4 2
. 2% KC1、 3% Trisodium Citrate ^ 1% Yeast Extract ^ 0. 75% Casamino acid、 2 % Agar)に接種し、 37°Cで 3日間培養して、シングルコロニーを得た。
[0203] 次に、 5本の 18ml容試験管に、それぞれ、 3mlの PGA生産液体培地(22. 5%Na Cl、 2%MgSO · 7Η 0、 0. 2% KC1、 3% Trisodium Citrateゝ 1% Yeast Extract,
4 2
0. 75% Casamino acid, pH7. 2)を入れ、さらに、上記シングルコロニーを白金耳で 1白金耳搔き取り植菌した。植菌後の試験管を、 37°C、 300rpmで 3日間培養して、さ らに、得られた培養液 0. 5mlを、 50ml PGA生産液体培地を入れた 500ml容坂ロ フラスコ 10本にそれぞれ植菌し、 37°Cで 5日間培養した。培養後、得られた培養液 を遠心し、菌体を取り除いて上清を回収した。
[0204] 次に、回収した上清に 3倍量の水をカ卩ぇ希釈した後、 1N硫酸で pHを 3. 0に調整し た。 pHを調整した後、室温で 5時間攪拌した。その後、 3倍量のエタノールを加えて 遠心分離を行い、沈殿物を回収した。この沈殿物が L— PGAである。
[0205] 回収した L PGAを 0. ImM Tris— HC1緩衝液(pH8. 0)に溶解して、これを、低 分子物質等の不純物を除去するために透析した。次に、透析後の液体に含まれる核 酸を除去するために、当該液体に、 MgCl力 lmM、 DNaseI (TAKARA社製)が 10U
2
/ml、 RNaseKNIPPON GENE社製)が 20 g/mlとなるように加えて、 37°Cで 2時間イン キュベ—トした。次いでタンパク質を除去するために、核酸を除去した後の液体に Pro
teinase K(TAKARA社製)を 3U/mlとなるように添カ卩して、 37°Cで 5時間インキュべ一 トして Proteinase K処理を行なった。
[0206] Proteinase K処理の後、超純水で透析し、低分子物質を除去した。次に、 L PGA を陰イオン交換榭脂(Q sepharose Fast Flow, GEヘルスケアバイオサイエンス社製 )に吸着させ、 0. 5Mの NaCl水溶液で洗浄した後、 1Mの NaCl水溶液で溶出した。 得られた溶液を、さらに超純水で透析し、透析後の溶液を凍結乾燥することにより、 L — PGAのナトリウム塩(以下、「L— PGA'Na塩」と表記する)を得た。なお、超純水 は、 MilliQ (Millipore社製の純水製造装置)で作製した。
[0207] (実施例 9 ;ポリ γ L グルタミン酸の分子量分析 1)
実施例 8で得た L— PGA'Na塩の平均分子量を、 GPC分析にて測定した。その結 果、 Mw= 7, 522, 000、 Mn= 3,704, 000、 Mw/Mn= 2. 031であること力 S確認 された (プルラン換算)。
[0208] なお、 GPC分析は、以下の条件で行なった。装置: HLC— 8220GPC (東ソ一社製) 、カラム: TSKgel α—M (東ソ一社製)、流速: 0. 6ml/min、溶出液: 0. 15M NaCl水 溶液、カラム温度: 40°C、注入量: 10 1、検出器:示差屈折計。
[0209] (実施例 10 ;ポリ γ L グルタミン酸の分子量分析 2)
実施例 8において、陰イオン交換樹脂に吸着した L— PGAの溶出を、 0. 7Μ、 0. 8 Μ、 1. 0Μの NaCl水溶液で段階的に溶出した以外は、実施例 8と同様の操作を行 なって得た L— PGA'Na塩の平均分子量を GPC分析により測定した。その結果、 0 . 7M NaCl水溶液による溶出で得た L— PGA'Na塩は、 Mw= 2, 135, 000、 Mn = 1, 021, 000、 Mw/Mn= 2. 091であり、 1. 0M NaCl水溶液による溶出で得 た L— PGA'Na塩は、 Mw= 7, 522, 000、 Mn= 3, 704, 000、 Mw/Mn= 2. 0 31であることが確認された (プルラン換算)。なお、本実施例における GPC分析は、 実施例 9と同様の操作で行なった。
[0210] (実施例 11;ポリ γ—L—グルタミン酸の構造確認)
実施例 8で得た L— PGA'Na塩を、 H— NMRに供して、その構造を分析した。そ の結果を図 5に示す。なお、 H— NMRによる分析は、以下の条件で行なった。装置: フーリエ変換核磁気共鳴装置 (BRUKER製 AVANCE500)、測定溶媒:重水、試料溶
液濃度: 0. 5〜1. 0%、 共鳴周波数: 500MHz、化学シフト基準: TSP (トリメチル シリルプロピオン酸ナ卜リウム- 2, 2, 3, 3-d4), δ =0. Oppm。
[0211] (実施例 12;ハイド口ゲルの作製と吸水倍率の評価)
本実施例では、 L PGAを架橋させるために用いる γ線の照射線量と、 γ線を照 射する L PGA · Na塩水溶液の濃度と、得られる L PGA架橋体の吸水倍率との 関係を、実施例 8及び実施例 10で得た L - PGA · Na塩の 2種類を用 、て検討した。
[0212] まず、当該 2種類の L PGA'Na塩について、それぞれ 2重量%水溶液及び 5重 量%水溶液を作製し、合計 4種類の L PGA · Na塩水溶液を得た。
[0213] 次に、それぞれの L— PGA'Na塩水溶液を、窒素を用いて 3分間パブリングした後 、それぞれ 2mlを、蓋付き 10mlサンプル瓶に分取して蓋を閉めた。後述するように本 実施例では、 6種類の γ線照射線量について検討を行なったため、当該サンプル瓶 を、当該 4種類の L— PGA'Na塩水溶液についてそれぞれ 6本作製し、合計 24本作 製した。
[0214] 次に、それぞれのサンプル瓶に、線源をコノ レト 60とする γ線照射装置を用いて γ線を照射した。照射線量は、当該 6本のサンプル瓶に対して、それぞれ lkGy、 3k Gy、 5kGy、 7kGy、 10kGy、 20kGyとなるように照射した。 γ線照射後に得られた生 成物を、サンプル瓶力も取り出し、余分な水分を 80メッシュの金網で水切りした後、 凍結乾燥することで、 L PGA架橋体粉末を得た。なお、上記余分な水分には、未 架橋の L PGAが含まれており、当該水切りは、未架橋の L PGAを除去すること が主たる目的である。
[0215] 次に、得られた L PGA架橋体粉末を、当該 L PGA架橋体粉末が膨潤するた めに十分な量の水に入れて 1週間静置した。静置した後、 80メッシュの金網で濾過 することで、未架橋の L—PGAを除去して、ハイド口ゲルを得た。
[0216] 本実施例により得た L PGA架橋体の吸水倍率は、本実施例により得たハイドロゲ ルの湿重量から、当該ハイド口ゲルの作製に用いた L PGA架橋体粉末の乾燥重 量を引!ヽた値を、当該 L PGA架橋体粉末の乾燥重量で割って算出した。
[0217] 算出した L PGAの吸水倍率と、 L PGA架橋体の作製において照射した γ線 の照射線量との関係を比較した結果を表 1、表 2、図 6及び図 7に示す。表 1及び図 6
は、 L PGA架橋体の作製に 2重量%の L— PGA · Na塩水溶液を用いた場合であ り、図 6は表 1に示す数値をグラフにしたものである。表 2及び図 7は、 L— PGA架橋 体の作製に 5重量0 /0の L PGA · Na塩水溶液を用 、た場合であり、図 7は表 2に示 す数値をグラフにしたものである。また、表 1及び表 2に示す数値は、上述した 2種類 の L— PGA'Na塩力 得た L— PGA架橋体の、吸水倍率の平均値である。なお、図 6及び図 7において、縦軸は吸水倍率を示し、横軸は γ線の照射線量を示す。
[0220] 表 1、表 2、図 6及び図 7に示すとおり、本実施例おいて得られた L PGA架橋体は
、吸水倍率が 10倍〜 4400倍であることが確認できた。
[0221] (実施例 13 ;ゲル化率の評価)
本実施例では、 L PGAを架橋させるために用いる γ線の照射線量と、 L-PGA からハイド口ゲルを作製する際のゲルィ匕率との関係を検討した。
[0222] まず、実施例 12で用いた、 γ線照射前の L— PGA'Na塩の乾燥重量を測定した( 当該乾燥重量を「仕込み L— PGA重量」とする)。次に、実施例 12において得られた L PGA架橋体の粉末の乾燥重量を測定した(当該重量を「架橋 L PGA重量」と する)。そして、仕込み L PGA重量に対する架橋 L PGA重量の割合(%)をゲル 化率として算出した。表 3に示す値は、上述した 4種類の L— PGA'Na塩水溶液を用 いて作製したハイド口ゲルのゲルィ匕率の、当該 L— PGA'Na塩水溶液に照射した γ 線の照射線量毎の平均値である。
[0223] [表 3] 照射線量 1 kGy 3kGy 5kGy 7kGy l OkGy 20kGy ゲル化率 35 90 98 94 90 86
[0224] (実施例 14 ;ポリ γ—L—グルタミン酸ノヽイド口ゲルのロット間差による吸水倍率) 実施例 8に記載の方法と同じ方法で、 L— PGAの製造を 3回行なった (得られた L — PGAを、それぞれロット A、ロット B、ロット Cとする)。実施例 12に記載の方法と同じ 方法で、 γ線の照射線量を 5kGyとして、ロット A〜Cの L— PGAから、ハイドロゲノレを 作製した。さらに、実施例 12に記載の方法と同じ方法で、ロット A〜Cの L— PGAか ら得たハイド口ゲルの吸水倍率を算出した。その結果を表 4に示す。
[0226] 表 4に示すように、再現性が高ぐ異なるロットの L PGAを用いても一定の性質の ノ、イド口ゲルを安定して製造することが可能であることが確認された。
[0227] (比較例 1;ポリ一 γ—DL グルタミン酸を用いたノヽイド口ゲルの作製)
平均分子量 150万〜 250万及び 400万〜 600万の 2種類の DL PGAナトリウム 塩 (和光純薬製)用いた以外は、実施例 12と同様の操作を行い、 DL— PGAのハイ ドロゲルの製造を試みた。し力し、いずれの DL—PGAナトリウム塩においても、 DL
— PGAのハイド口ゲルを得ることはできなかった。従って、 DL— PGAから DL— PG Aのハイド口ゲルを得る際のゲル化率は、表 5に示すように全てゼロである。なお、 DL
— PGA架橋体を得ることができな力 たため、吸水倍率を算出できな力つた。
[0228] [表 5]
[0229] (実施例 15;ポリ γ L グルタミン酸架橋体の作製)
実施例 8で得た L - PGA · Na塩の 5%水溶液を作製した。
[0230] 次に、 L— PGA'Na塩水溶液を、窒素を用いて 3分間パブリングした後、蓋付き 10 mlサンプル瓶に、 2ml分取して蓋を閉めた。
[0231] 次に、サンプル瓶に、線源をコバルト 60とする γ線照射装置を用いて γ線を照射し た。照射線量は、 5kGyとなるように照射した。 γ線照射後に得られた生成物を、サン
プル瓶力も取り出し、余分な水分を 80メッシュの金網で水切りした後、凍結乾燥する ことで、 L PGA架橋体粉末を得た。なお、上記余分な水分には、未架橋の L PG Aが含まれており、当該水切りは、未架橋の L PGAを除去することが主たる目的で ある。
[0232] (実施例 16;乾燥肌荒れモデルによるポリ γ—L—グルタミン酸の保湿性評価) テストスキン (東洋紡績株式会社製: Code No. LSE— 002)キット付属の取り扱い 説明に従い、 LSE (Living Skin Equivalent)組織を取り出した。次に、アツセィプレート (上記テストスキンキットに付属)内に、当該 LSE組織をセットして、乾燥状態 (温度 37 °C、相対湿度 15%RHに調整した COインキュベーター内)で 7時間静置した。これに
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より、角層の水分が蒸発した乾燥肌荒れモデル (以下、「乾燥 LSE組織」と表記する) を得た。
[0233] 次に、純水、 0. 5%DL— PGA水溶液、 2. 5%DL— PGA水溶液、 0. 5%L— PG A水溶液、 2. 5%L— PGA水溶液を、各 70 1、マイクロピペットにて、それぞれ乾燥 LSE組織の表面に滴下した。なお、 L— PGAとして、実施例 8で得た L— PGA'Na 塩を用いた。また、 DL— PGAとして、和光純薬製の DL— PGA'Na塩を用いた。
[0234] 次に、乾燥 LSE組織をセットしたアツセィプレート下部にアツセィ培地(上記テストス キンキットに付属) 600 1を添カ卩した後、温度 37°C、相対湿度 15%RHに調整した C Oインキュベーター内に静置して、 24時間インキュベートした。その後、乾燥 LSE組
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織を COインキュベーターより取り出し、上記テストスキンキットに付属の取り扱い説
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明に従って、テトラゾリゥム塩 (MTT)試薬 0. 333g/mlが含まれるアツセィ培地(上 記テストスキンキットに付属)の混合液 600 1をアツセイトレイに入れて、温度 37°C、 相対湿度 15%RHに調整した COインキュベーター内で 3時間インキュベートすること
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で、当該乾燥 LSE組織に MTT処理を施した。
[0235] MTT処理後、バイオプシーパンチ (東洋紡社製;直径 8mm)を用いて、乾燥 LSE 組織の中央部を、当該乾燥 LSE組織の下部のポリカーボネート膜ごとくり抜いた。次 に、くり抜いた切片を、試験管に移して、 0. 04N塩酸 イソプロパノールを 300 1カロ えて、暗所にて 2時間静置した。次に、当該試験管中の溶液を攪拌して、十分混和さ せた後、 3, 000rpm、 5分間遠心して上清を得た。次に、当該上清 200 1に含まれ
る青紫色のホルマザンの量を、 572nmの吸光度を測定することで算出した。
[0236] 結果を図 8に示す。図 8は、保湿性評価の結果を示す図であり、縦軸は、乾燥処理 を施さなかった LSE組織力も抽出されたホルマザンの量を 100%としたときの、ホル マザンの量(吸光度)を示しており、横軸は、各サンプルの種類を示している。なお、 図 8において、「乾燥未処理」とは、乾燥処理を施していない LSE組織を示し、「無試 料」とは、乾燥処理を施した LSE組織に対して、純水、 DL— PGA水溶液及び L— P GA水溶液のいずれも滴下しなカゝつたものを示す。即ち、図 8には、乾燥未処理のサ ンプルに対して、直接 MTT処理を施してホルマザンの量を測定した結果及び、上述 の乾燥 LSE組織に対して、直接 MTT処理を施してホルマザンの量を測定した結果 ち示している。
[0237] なお、本実施例に記載の方法により得られる吸光度 (ホルマザンの量)と、肌荒れ改 善効果とは密接な関係があり、ヒトの乾燥肌荒れの状態評価を定量的、簡易的、且 つ経済的に実施できる有効な乾燥肌荒れ改善評価方法である。
[0238] 図 8から明らかなように、従来力も保湿剤として使用されている巿販の DL— PGAで は、 2. 5%水溶液を滴下した結果、ホルマザンの量、即ち、肌荒れの回復率が 30% 、であったのに対し、 L PGAの 2. 5%水溶液を滴下した結果、 60%の肌荒れ回復 率が示された。これにより、 L— PGAが、従来の市販品にくらべ約 2倍の肌荒れ回復 率を示し、高い保湿性を有することが示された。
[0239] (実施例 17 ;ヒト肌荒れ試験によるポリ— γ—L グルタミン酸架橋体ハイド口ゲル の保湿効果)
ヒト上腕内部に 0. 5%SDS溶液を 10分間接触させて SDS処理をすることで、肌荒 れの状態とした。一方、実施例 16で得た L PGA架橋体粉末を、 0. 15%となるよう に、水に混合してノ、イド口ゲル得た。
[0240] 次に、当該ハイド口ゲルを、上記肌荒れの状態のヒト上腕内部に塗布して、 1時間、 室温(23°C)、湿度 45%の恒温恒湿部屋で静置した。次に、角質水分量測定器 (ァ ィ'ビィ'エス株式会社製、品名:スキコン)で、静置後のヒト上腕内部 (サンプル D)の 皮膚角質水分量を測定した。
[0241] 同様の皮膚角質水分量の測定を、 SDS処理前のヒト上腕内部(サンプル A)、 SDS
処理を施した後、当該ノ、イド口ゲル塗布前のヒト上腕内部(サンプル B)、 SDS処理を 施した後、当該ハイド口ゲルの代わりに水を塗布して、上記恒温恒湿部屋に上述の 条件と同じ条件で静置した後のヒト上腕内部 (サンプル C)に対しても行なった。
[0242] 結果を図 9に示す。図 9はヒト肌荒れ試験の結果を示す図であり、縦軸は皮膚角質 水分量を示し、横軸はサンプルの種類を表す。図 9において、 A〜Dはそれぞれ、上 記サンプル A〜Dに対応して!/、る。
[0243] 図 9に示したように、サンプル Dで、高い皮膚角質水分量が得られ、角質水分含量 が回復したことが示された。
[0244] なお、発明を実施するための最良の形態の項においてなした具体的な実施態様ま たは実施例は、あくまでも、本発明の技術内容を明らかにするものであって、そのよう な具体例にのみ限定して狭義に解釈されるべきものではなぐ本発明の精神と次に 記載する特許請求の範囲内で、いろいろと変更して実施することができるものである 産業上の利用の可能性
[0245] 本発明により、均一な光学純度でかつ高分子量のポリ γ L グルタミン酸を液 体培養などで大量に調製することが可能となった。より具体的には、本発明により、数 平均分子量が 130万以上で、かつ均一な光学純度のポリ γ L グルタミン酸を 、培養液 1Lあたり 4. 99g以上の高い生産性で取得できる。
[0246] 本発明に係る L— PGA架橋体は、以上のように、 L— PGA分子同士の架橋構造を 有している。そのため、生分解性及び吸水性に優れた L—PGA架橋体を、所望の品 質で安定に提供することができると 、う効果を奏する。
[0247] また、本発明に係る L PGA架橋体の製造方法によれば、 L PGAの分子同士を 架橋させる架橋工程を含んでいる。そのため、生分解性及び吸水性に優れた L— P GA架橋体を、所望の品質で安定に提供することができるという効果を奏する。さらに 、 L— PGA力 L— PGA架橋体を得るときのゲルィ匕率が高いため、高い製造効率で L PGA架橋体を製造することができるというさらなる効果を奏する。
[0248] また、本発明に係るハイド口ゲルは、本発明に係る L— PGAを含んでなる。そのた め、所望の品質を有するハイド口ゲルを安定して製造することができるという効果を奏
する。
[0249] 本発明に係る皮膚外用剤は、以上のように、 L PGA及び L PGA架橋体のうち 少なくとも一方を含む。そのため、所望の品質を有する皮膚外用剤を、安定に提供 することができるという効果を奏する。すなわち、上記 L— PGAは、 L グルタミン酸 のみが結合してなるため、光学活性が均一であり、かつ、分子量が高いことから優れ た保湿性を有することから、皮膚外用剤に、 L PGA及び Z又は L PGAの架橋体 を含有させることで、所望の品質を有する皮膚外用剤を、安定に提供することができ る。
[0250] また、 L PGA及び L PGA架橋体は、優れた保湿性を有するため、特に、化粧 料、保湿剤として有用な、皮膚外用剤を提供することができるという効果を奏する。
[0251] 本発明により、均一な光学純度でかつ高分子量のポリ γ L グルタミン酸を、 液体培養などで大量に調製することが可能となり、培養も非常に容易であることから も、産業界に大きく寄与することが期待される。
[0252] また、本発明に係る L - PGA架橋体及び本発明に係るノ、イド口ゲルは、紙ォムッ等 の衛生分野、医療分野、建築分野、食品分野、農業'園芸分野等への幅広い分野 へ応用可能である。
[0253] さらに、本発明により、均一な光学純度でかつ高分子量のポリ γ— L グルタミン 酸、ポリ γ—L—グルタミン酸の架橋体によって、従来品よりも高い保湿性を有する 皮膚外用剤を提供することが可能となり、特に化粧品業界に大きく寄与することが期 待される。
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