明 細 書
イオン性有機化合物
技術分野
[0001] 本発明は、ゲル化剤や固体分散剤等として有用な新規なイオン性有機化合物に関 し、詳しくは、水あるいはイオン性液体等の媒体をゲルイ匕し得るゲル化剤、これを含 有するハイド口ゲルやイオン性液体ゲル並びに水中への単層カーボンナノチューブ 分散剤として有用な新規なイオン性有機化合物とその製造方法及びこれを用いたゲ ル化剤やゲル更には分散剤に関するものである。
背景技術
[0002] 近年、ソフトマテリアルとしての「ゲル」が、食品、化粧品、競技用靴及びクロマトダラ フィ一等の広範な分野における工業目的への応用が期待されている。
しかし、その多くは、寒天、ゼラチン、カラギーナンと言った天然ゲルであり、その機 能には限界があり、またこのものを単に化学的修飾だけでは更なる最適な機能をもた せることは困難であった。
[0003] こうした背景から、最近、天然ゲルの持つ機能を人工的に模倣した合成ゲルに関 する基礎研究とその応用開発が活発に進められている。
このような合成ゲル化剤の一つとして、ポリアクリル酸などの高分子を用いたノヽイド 口ゲル化剤が知られて ヽるが、これらの高分子ゲル化剤カゝら生成するハイド口ゲルは 、ー且形成すると元の水には戻らない不可逆な化学ゲルであり、そのゲルの固さ、熱 安定性などのゲルの諸物性を制御することは不可能であった。
[0004] また、最近、生分解性や生体適合性を有する分子構造ユニットなどを利用した幾つ 力の合成ハイド口ゲル化剤も提案されているが(例えば、特許文献 1〜3参照)、これ らは、すべてが多段階の合成ステップと分離操作を必要とするために、実用化のため の大量合成には大きな課題が残されて 、る。
[0005] また、従来の合成ハイド口ゲル化剤および天然のノ、イド口ゲル化剤(寒天)にお!/、て は、分子構造内に酸性条件では不安定なァセタール結合、エステル結合を含むこと から、適用できる水溶液の酸性度が中性に近 、ものに限定されてしまうと 、う問題点
があった。
[0006] 更に、これらのゲル化剤力 作られるハイド口ゲルは、機械的負荷の無!、条件での 擬固体状態と高歪負荷条件で生じる擬液体状態の平衡が緩慢であり、機械的刺激 によってー且擬固体構造が崩壊した場合には、その構造復帰には例えばゼラチンの ように数時間から数日単位の長時間が必要となるものが一般的であり、ゲルの応用を 極めて限定してきた。
[0007] この問題を解消するために、側鎖に電荷を有する共重合体高分子ゲル化剤が提案 されて ヽるが (たとえば非特許文献 1)、合成や構造が複雑で未だ一般的とは!ヽぇな い。
[0008] 一方、水だけでなく幅広 、溶媒に適用できる人工ゲル化剤も求められて 、る。
たとえば、イオン性液体は不揮発性で高いイオン伝導性を有することから、これをゲ ルイ匕することにより、二次電池、センサーなどの固体 (擬固体)電解質として電池分野 への用途が期待されるほか、ゲル状態の液体中での有機合成反応への応用が期待 される。
[0009] このようなイオン性液体をゲルイ匕することのできる低分子化合物としては、これまで に、数種類が合成開発されてきているが (例えば、特許文献 4および非特許文献 2参 照)、いずれも複雑な分子構造を持つことから、多段階の合成ステップと分離精製操 作を必要とするものであり、またゲルィ匕後の粘度上昇によって、イオン伝導度 (導電 率)の低下が知られ、早急に克服されるべき課題となって 、る。
[0010] また、合成高分子ゲル化剤も提案されて!ヽるが(例えば、特許文献 5参照)、イオン 性液体をゲルイ匕させるためのゲル化剤が比較的大量に必要であるうえに、ゲル化の 際に、水やアセトンなどの他の溶媒を使用する場合が多ぐ純粋なイオン性液体のみ のゲルを得るためには、それらの助溶媒を除くための高温乾燥を経る必要があるとい う問題がある。
[0011] 更に、高分子ゲル化剤として、熱的に不可逆な化学ゲルを用いる方法が開発され ている(非特許文献 3、 4)。この方法は、イオン性液体電解質とゲル化剤および架橋 剤を混ぜ合わせたゲル電解質前駆体をセルに注入したあと、加熱することによりセル 中でゲルィ匕が起こるものである力 化学結合による三次元ネットワークの構築である
ため、高温でも溶液状態に戻ることのな 、ものであった。
[0012] 一方、カーボンナノチューブが、ナノテクノロジーの有用な素材として注目されてお り、特にトランジスタ、電子放出電極、燃料電池用電極、走査型顕微鏡用チップなど 広い分野での応用が期待されているが、その精製や材料ィ匕の為には簡便に取り扱う ことのできるカーボンナノチューブ溶液や分散液さらにはそれを含有するゲルの調製 が必要とされる。
このため、疎水性カーボンナノチューブを溶媒に可溶ィ匕する手法として、分散剤( 主に両親媒性界面活性剤)を添加した分散溶液 (例えば、特許文献 6、非特許文献 3 参照)が提案されている力 より最良のものへの検討が依然として進められているの が現状である。
[0013] また、従来、カーボンナノチューブを含んだゲル材料としては、下記の特許文献 7と 非特許文献 4が知られている。しカゝしこの方法では、イオン性液体という特殊な溶媒 を用いる必要があり、水のような環境負荷の小さな一般的溶媒を用いて、ゲルを調製 することは困難であった。
[0014] このように、従来のゲル化剤は専らゲル化機能を持つに過ぎず、ゲル化能以外の 機能である分散能を併せ持ち、たとえば、水を媒体として単層カーボンナノチューブ を分散させつつ、同時にゲル形成も可能な人工ゲル化剤はこれまでに開発されて ヽ ないのが現状である。
[0015] 特許文献 1:特開 2003 - 327949号公報
特許文献 2 :特開 2003— 49154号公報
特許文献 3:特開 2003 - 55642号公報
特許文献 4:特開 2002— 3478号公報
特許文献 5:特願 2003 - 257240号公報
特許文献 6:特開 2003 - 238126号公報
特許文献 7:特開 2004 - 142972号公報
非特許文献 1 : Nature, Vol.417, p.424 (2002).
非特許文献 2 : Chem. Commun. 2002, p.374.
非特許文献 3 : Science, Vol.297, p.593 (2002).
非特許文献 4 : Science, Vol.300, p.2072 (2003).
発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0016] 本発明は、上記のような従来の技術における問題点を克服することを目的としてな されたものであって、その第 1の目的は、入手容易な有機化合物から数少ない反応 工程で簡易に合成できることに加え、クロマトグラフィーのような精製技術を用いな ヽ で得られ、かつごく少量で水やイオン性液体を他の助溶媒を用いることなくこれらを ゲルィヒできる新規なイオン性有機化合物及びこのものの簡便な製造方法を提供する ことにある。
第 2の目的は、酸性条件下で安定であり、かつ少量で多量の水を固化できるハイド 口ゲル化剤、および機械的歪みによる構造破壊に対して高速に弾性率が原状復帰 するハイド口ゲルを提供することにあり、第 3の目的は、ゲルイ匕の際に水などの他の溶 媒を用いることなくイオン性液体を直接ゲルィ匕できる良好なイオン性液体ゲル化剤お よびゲル化後もイオン電導度を損なうことのない固体電解質等として有用なイオン性 液体ゲルを提供することにある。
また、第 4の目的は、環境負荷の小さい水にカーボンナノチューブを簡便に分散さ せることのできるカーボンナノチューブ分散剤、およびそれを用いた分散溶液、分散 ゲル、薄膜並びに発光材料を提供することにある。
課題を解決するための手段
[0017] 本発明者らは、先にナノテクノロジー分野で注目されている自己組織化現象に注 目し、主に有機溶媒中でゲル化を誘起する種々の有機ゲル化剤を開発してきた。 その研究的背景を基にして、簡便な合成反応で得られ、かつごく少量で水やイオン 性液体を他の助溶媒を用いることなくゲルィ匕することができ、しかも機械的歪みによる 構造破壊に対して、高速に弾性率が原状復帰するハイド口ゲルやゲル化後もイオン 電導度を損なうことのない固体電解質等として有用なイオン性液体ゲルを与え、更に はカーボンナノチューブの分散剤やゲル化剤としても応用可能なイオン性有機化合 物が得られることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
すなわち、この出願によれば、以下の発明が提供される。
[1]下記一般式 (I)で表される繰り返し単位を有するイオン性有機化合物。
(式中、 Aは窒素原子を一個以上含む複素環式ィ匕合物から形成される第 4級アン モニゥムカチオンを含む基を、 Bはアミド基、ウレァ基、ウレタン基及びペプチド基から 選ばれた置換基を有してもよ!、官能基を、 Cは Aと Bを連結する置換基を有してもよ い 2価の炭化水素基を表す。 Xは、ァ-オンを、 nは繰り返し単位数を、 mはァ-オン の総数を表し、 nと mは同一の整数である。 )
[2]前記一般式 (I)の Aにおいて、窒素原子を一個以上含む複素環式化合物が、芳 香族性複素環式化合物であることを特徴とする上記 [1]に記載のイオン性有機化合 物。
[3]芳香族性複素環式化合物が、置換基を有してもよい、ピリジン、ピラジン、ピリミジ ン、トリアジン、キノリン、イソキノリン、キノキサリン、イミダゾール、チアゾール及びトリ ァゾールカ 選ばれた少なくとも 1種であることを特徴とする上記 [2]に記載のイオン 性有機化合物。
[4]前記一般式 (I)において、 Bがアミド基、ウレァ基、ウレタン基及びペプチド基から 選ばれた少なくとも 1種であることを特徴とする上記 [1]〜 [3]の何れかに記載のィォ ン性有機化合物。
[5]前記一般式 (I)の Cにおいて、 2価の炭化水素基が、置換基を有してもよい脂肪 族炭化水素基又は芳香族炭化水素基であることを特徴とする上記 [ 1]〜 [4]の何れ かに記載のイオン性有機化合物。
[6]前記一般式 (I)において、 nと mが 2〜30の整数であることを特徴とする上記 [1] 〜 [5]の何れかに記載のイオン性有機化合物。
[7]前記一般式において、 Xがハロゲン原子 (F, CI, Br, I)、テトラフルォロホウ酸基 (BF )、 へキサフルォロリン酸基(PF )、ビス(トリフルォロメタンスルホ -ル)イミド、チ
4 6
オシァネート(SCN)、硝酸基 (NO )、硫酸基 (SO )、チォ硫酸基 (S O )、炭酸基(
2 3
CO )、炭酸水素基 (HCO )、リン酸基、亜リン酸基、次亜リン酸基、各ハロゲン酸ィ匕
物酸基 (XO , XO , XO , ΧΟ : X=C1, Br, I)、トリス(トリフルォロメチルスルホ-
4 3 2
ル)炭素酸基、トリフルォロメチルスルホン酸基、ジシアンアミド基、酢酸基 (CH CO
3
0)、ハロゲン化酢酸基((CX H ) COO, X=F, CI, Br, I ;n= l, 2, 3)、テトラ フエニルホウ酸基(BPh )およびその誘導体(B (Aryl) : Aryl =置換フ ニル基)か
4 4
ら選ばれた少なくとも 1種であることを特徴とする上記 [ 1]〜 [6]の何れかに記載のィ オン性有機化合物。
[8]上記 [ 1 ]〜 [7]の何れかに記載のイオン性有機化合物を製造する方法であって 、アミノビリジン類と活性メチレン基を分子内にもつハロゲノメチルカルボン酸ハライド もしくはイソシァネートイ匕合物を縮合反応させることを特徴とする上記 [ 1]〜 [7]の何 れかに記載のイオン性有機化合物の製造方法。
[9]上記 [ 1 ]〜 [7]の何れかに記載のイオン性有機化合物を製造する方法であって 、上記 [8]の方法で得られたイオン性有機化合物のァ-オンをァ-オン交換反応に より他のァ-オンに置換することを特徴とするイオン性有機化合物の製造方法。
[10]上記 [1]〜[7]の何れかに記載のイオン性有機化合物を必須成分とすることを 特徴とするハイド口ゲル化剤。
[ 11 ]上記 [ 10]に記載のノ、イド口ゲル化剤を含有するハイド口ゲル。
[ 12]高 ヽ高速貯蔵弾性復帰率を有する上記 [11]に記載のハイド口ゲル
[13]30g/Lの濃度において、 25° Cで動的粘弾性測定によって得られる物性値が、 周波数 6 rad/s、歪み 0.02%の貯蔵弾性率(G' )が lOOOPa以上、 50000Pa以下、損失 正接 (tand)力 以下の擬固体性を示す値であり、周波数 6 rad/s、歪み 100%適用時 の貯蔵弾性率 (Gs' )が lPa以上、 lOOPa以下、損失正接 (tand)が 2以上の擬液体性 を示す値であって、さらに 1分間以上の連続 100%歪負荷による擬液体ィ匕直後、歪み 0 .02%に再調整時に貯蔵弾性率初期値 (G0' )に対する貯蔵弾性率復帰率 (G' /G0') が 10秒以内に 75%を超え、 10分以内に 90%を超えることを特徴とする上記 [12]に記載 のノヽイドロゲノレ。
[ 13 ]上記 [ 1 ]〜 [ 7]の何れかに記載のイオン性有機化合物を必須成分とすることを 特徴とするイオン性液体ゲル化剤。
[ 14]上記 [ 13]に記載のイオン性液体ゲル化剤を含有するイオン性液体ゲル。
[15]ゲルィ匕前のイオン導電率が 85%以上保持されていることを特徴とする上記 [14 ]に記載のイオン性液体ゲル。
[16]上記 [1]〜 [7]の何れか〖こ記載のイオン性有機化合物を必須成分とすることを 特徴とするカーボンナノチューブ分散剤。
[17]上記 [16]に記載のカーボンナノチューブ分散剤と、カーボンナノチューブと、 少なくとも水を含む溶媒と、を含んでなるカーボンナノチューブ分散溶液又は分散ゲ ル。
[18]上記 [17]に記載のカーボンナノチューブ分散溶液またはカーボンナノチュー ブ分散ゲル力 得られるカーボンナノチューブ含有薄膜。
[ 19]カーボンナノチューブ分散溶液またはカーボンナノチューブ分散ゲルを基板上 に展開して乾燥させてなることを特徴とする上記 [18]に記載のカーボンナノチューブ 含有薄膜。
[20]複数のカーボンナノチューブが相互に分離した状態で分散されていることを特 徴とする上記 [ 18]または [ 19]に記載のカーボンナノチューブ含有薄膜。
[21]上記 [18]〜 [20]の何れかに記載のカーボンナノチューブ含有薄膜からなる発 光材料。
発明の効果
(1)本発明のイオン性有機化合物は、入手の容易な有機化合物から一段階もしくは 二段階と ヽぅ少な ヽ反応工程数で簡易に合成できるうえに、特別な精製操作も必要 ないため、工業的生産に好適である。
(2)本発明のイオン性有機化合物は、極少量で大量の水分を固化させるハイドロゲ ル化剤として有用なものであり、水の保水剤 (砂漠緑化、植物栽培用土の保水剤など )、水分の吸収剤(ペット用トイレの尿吸収剤、生理用水分吸収剤など)などとして使 用できる。
イオン性ィ匕合物カゝらなるゲル化剤は、それ自体が電荷を持った電解質構造を有し ているため、電子材料である電解質ゲルとして応用できる。さらには、ファインケミカル 工業分野、医薬、化粧品分野などにおける水分保湿剤などとして広範な分野に利用 可能である。また従来知られたハイド口ゲルに比べて、機械的歪による構造破壊に対
して高速に貯蔵弾性率が復帰することから、衝撃吸収剤やソフトァクチユエ一タの基 盤材料、さらにペイント材料のたれ性制御剤として有望である。
(3)本発明のイオン性有機化合物は、極めて少量で種々のイオン性液体をゲルィ匕さ せることができることから、イオン性液体のゲル化剤としても有用である。
また従来用いられてきた媒介としての助溶媒を用いることなく直接イオン性液体ゲ ルを低濃度で容易に得ることが可能であり、調製後のイオン性液体ゲルは、ゲルィ匕 前のイオン性液体のイオン伝導度を損なわな 、と 、う利点がある。
さらに、このイオン性液体ゲルは、実際にリチウムイオン電池等への電解質としての 応用に際して、漏洩等の問題を生じない擬固体として有用であり、また電極などにデ イッブさせた様々なセンサーとしての応用や新しい固体電解質材料として利用可能 である。
(4)本発明のイオン性有機化合物は、有機溶媒のような環境負荷の大きい媒体を一 切用 、ることなく、環境負荷の小さ 、水にカーボンナノチューブを均一に分散させ、 ゲルイ匕させることが可能である。
そして、得られたカーボンナノチューブ分散溶液を用いることによって、その高導電 性と優れた半導体特性を持つ分散体を、容易に室温で形成することができる。また、 カーボンナノチューブ分散ゲル (カーボンナノチューブ含有ハイド口ゲル)をも容易に 合成できることから、電動ァクチユエータ等のインテリジェント材料への応用展開が期 待できる。さらには、上記の分散溶液や分散ゲル力 カーボンナノチューブ含有薄膜 を容易に形成することができ、その膜厚も容易に均一に制御 ·形成することができる。 また、カーボンナノチューブを電子放出源とした電子放出素子やカーボンナノチュー ブを発光体とする発光材料を得ることができる。
図面の簡単な説明
[図 1]本発明のイオン性有機化合物 l 'Clをゲル化剤として用いて作成したサンプル 管中のハイド口ゲルの写真である。
[図 2]本発明のイオン性有機化合物 l 'Clをゲル化剤として用いて作成したノ、イドロゲ ルの IR ^ベクトル図である(縦軸は透過度、横軸は cm— 。
[図 3]本発明のイオン性有機化合物 l 'Clをゲル化剤として用いて作成したノ、イドロゲ
ルを凍結乾燥したキセロゲルの SEM写真である(右下部白色スケール長が 5 μ m)。 圆 4]本発明のイオン性有機化合物 15 'C1をゲル化剤として用いて作成したサンプル 管中のハイド口ゲルの写真である。
圆 5]本発明のイオン性有機化合物 15 'C1をゲル化剤として用いて作成したノ、イド口 ゲルを凍結乾燥したキセロゲルの SEM写真である(右下部白色スケール長が 2 μ m )。
圆 6]実施例 5における連続歪負荷測定における貯蔵弾性率 (G')の経時変化 (a:貯 蔵弾性率絶対値表示、 b:復帰率 (G'ZG ')表示)
0
[図 7]ァ-オン交換反応 1で得られたイオン性有機化合物 1.PFの、 HNMR^ぺク
6
トノレ図である。
[図 8]イオン性有機化合物 l 'PFとイオン性液体 EMIm— BFからなるイオン性液体
6 4
ゲルである。左力も順に 20gZL、 30gZLおよび 40gZLの濃度のものである。
[図 9]イオン性有機化合物 l 'PFとイオン性液体 EMIm— BFを用いて作成したィォ
6 4
ン性液体ゲルを水で洗浄した残渣の SEM写真である。
[図 10]イオン性有機化合物 1 · TFSIとイオン性液体 PP 13— TFSIからなるイオン性 液体ゲルである。左がリチウム塩添カ卩のもの、右がリチウム塩無添カ卩のものである。ィ オン性有機化合物 1 · TFSIの濃度はどちらも 40gZLである。
[図 11]イオン性有機化合物 l 'PF (l 'PF )とイオン性液体 EMIm— BFからなるィ
6 6 4 オン性液体ゲルの導電率とイオン性液体 EMIm— BFのみの導電率との比較を示
4
すグラフである。
[図 12]イオン性有機化合物 1 'PFの濃度の違いによるイオン性液体ゲルの導電率の
6
変化を示すグラフである。
[図 13]イオン性有機化合物 1 · TFSI ( 1 · TFSI)とイオン性液体 PP 13— TFSIからな るイオン性液体ゲルの導電率とイオン性液体 PP13— TFSIのみの導電率との比較 を示すグラフである。
[図 14]イオン性有機化合物 1 'TFSI (1 -TFSI)とイオン性液体 PY13—TFSIからな るイオン性液体ゲルの導電率とイオン性液体 PY13— TFSIのみの導電率との比較 を示すグラフである。
[図 15]イオン性有機化合物 1 'TFSI (1 -TFSI)とリチウム塩を添加したイオン性液体 PP13— TFSI ( + LiTFSI)からなるイオン性液体ゲルの導電率とリチウム塩を添カロし たイオン性液体 PP13—TFSI ( + LiTFSI)のみの導電率との比較を示すグラフであ る。
[図 16]実施例 10における単層カーボンナノチューブ分散水溶液の超音波照射前と 照射後の写真である( (a)照射前、(b)照射後 (照射時間: 60分) )。
[図 17]実施例 10における単層カーボンナノチューブ分散水溶液 (溶媒:重水)の近 赤外 UVスペクトルである (横軸:波長、縦軸:吸光度)。
[図 18]実施例 11における単層カーボンナノチューブ分散ゲルの写真である(バイァ ルを倒立させた状態、単層カーボンナノチューブ含有量 (濃度)は 0. 02mgZml)。 圆 19]実施例 12における単層カーボンナノチューブ分散薄膜 (石英基板上)の蛍光 スペクトルである(励起波長: 662nm、横軸は波長、縦軸は蛍光強度)。
発明を実施するための最良の形態
[0020] 本発明に係る新規なイオン性有機化合物は、下記一般式 (I)で示される。
[化 1]
-(A-B-C)n- m(X) (i)
(式中、 Aは窒素原子を一個以上含む複素環式ィ匕合物力 形成される第 4級アンモ ユウムカチオンを含む基を、 Bはアミド基、ウレァ基、ウレタン基及びペプチド基力 選 ばれた置換基を有してもょ 、官能基を、 Cは Aと Bを連結する置換基を有してもょ ヽ 2 価の炭化水素基を表す。 Xは、ァ-オンを、 nは繰り返し単位数を、 mはァ-オンの総 数を表し、 nと mは同一の整数である。 )
[0021] 一般式 (I)において、 Aは、そのイオン性によって水及びイオン性液体への溶解性 を担 、、また芳香族化合物等と親和的「カチオン Z π相互作用」と呼ばれる強!、親 和力をもたらし、さらに高速弾性率復帰に必要な静電相互作用を誘起す部位である 具体的には、少なくとも窒素原子を 1個含む複素環式ィ匕合物力 形成される第 4級
アンモ-ゥムカチオンを含む基を意味する。
[0022] 少なくとも窒素原子を一個含む複素環式ィ匕合物としては、置換基を有していてもよ いピリジン、キノリン、イソキノリン、キノキサリン、ピぺリジン、ピロリジン、モノレフォリン、 チアゾールなどが、窒素を二個以上有する複素環式化合物としては、置換基を有し ていてもよいビラジン、ピリミジン、トリアジン、ピぺラジン、イミダゾール、トリァゾールな どが例示される。
[0023] 本発明で好ましく使用される含窒素複素環式ィ匕合物は、所謂、芳香族性を示す 含窒素複素環式化合物である。
このような芳香族性含窒素複素環式ィ匕合物としては、置換基を有してもよい、ピリジ ン、ピラジン、ピリミジン、トリアジン、キノリン、イソキノリン、キノキサリン、イミダゾール、 チアゾール、トリァゾール等が例示される。
上記置換基としては、たとえば、アルキル基、ァリール基、ケトン基、アルデヒド基、 カルボキシル基、エーテル基、アミノ基、ハロゲン基、シリル基、ホスフィン基等が例示 される。
[0024] また少なくとも窒素原子を一個含む複素環式ィ匕合物における、 Bならびに Cへの連 結位置は、各位置異性体 (例えば 6員環の場合は、 1, 2—位、 1, 3—位および 1,4 一位の 3種、 5員環化合物では 1, 2—位および 1, 3—位の 2種)の全てが考慮される
[0025] 前記一般式 (I)において、 Bは、イオン性有機化合物の主鎖に位置するものであり、 水素結合を介在した分子間相互作用によってゲル化に必要な自己組織化現象 (凝 集)を促進させて、最終的に溶液が固化したゲルを形成させる機能を担う部位である
[0026] 具体的には、アミド基、ウレァ基、ウレタン基、及びペプチド基力 選ばれた置換基 を有してもょ 、官能基を意味する。
この場合、置換基としては、アルキル基、ァリール基、ケトン基、アルデヒド基、カル ボキシル基、エーテル基、アミノ基、ハロゲン基、シリル基、ホスフィン基等などが例示 される。
[0027] 前記 Bとしては、好ましくは、アミド基、ウレァ基、ウレタン基が用いられる。
[0028] 前記一般式 (I)にお 、て、 Cは Aと Bを連結多量ィ匕することによって、それらの性質 を増幅および複合ィ匕し、最終的にゲルを形成させる機能を担う部位である。
具体的には、置換基を有していてもよい 2価の炭化水素基である。 2価の炭化水素 としては、 C H (n= l〜18)に相当する直鎖アルキレン基、および C H (n= 3 n 2n n 2 (n- l)
〜8)に相当する環状アルキレン基、一個以上の不飽和結合を有する直鎖アルキレ ン基および環状アルキレン基等の脂肪族炭化水素基、ベンジレン基、フ ネチレン 基、ピリジルメチレン基、チェ-ルメチレン基、ピロリルメチレン基、フエ二レン基、ピリ ジレン基、チェ-レン基等の芳香族炭化水素基が挙げられる。
この場合、置換基としては、アルキル基、ァリール基、ケトン基、アルデヒド基、カル ボキシル基、エーテル基、アミノ基、ハロゲン基、シリル基、ホスフィン基等などが例示 される。
[0029] 前記 Cとしては、好ましくは、ベンジレン基、アルキレン基が用いられる。
[0030] 前記一般式 (I)にお 、て、 Xは、ァ-オンを、 nは繰り返し単位数を、 mはァ-オンの 総数を表し、 nと mは同一の整数である。
[0031] Xとしては、たとえばハロゲン原子(F, CI, Br, I)、テトラフルォロホウ酸基(BF )、
4 へキサフルォロリン酸基(PF )、ビス(トリフルォロメタンスルホ -ル)イミド、チオシァネ
6
ート(SCN)、硝酸基 (NO )、硫酸基 (SO )、チォ硫酸基 (S O )、炭酸基 (CO )、
3 4 2 3 3 炭酸水素基 (HCO )、リン酸基、亜リン酸基、次亜リン酸基、各ハロゲン酸化物酸基 (
3
XO , XO , XO , XO : X=C1, Br, I)、トリス(トリフルォロメチルスルホ -ル)炭素
4 3 2
酸基、トリフルォロメチルスルホン酸基、ジシアンアミド基、酢酸基(CH COO)、ノ、口
3
ゲン化酢酸基((CX H ) COO, X=F, CI, Br, I ;n= l, 2, 3)、テトラフエ-ル ホウ酸基 (BPh )およびその誘導体 (B (Aryl) : Aryl=置換フ -ル基)から選ばれ
4 4
た少なくとも 1種が挙げられる。
[0032] また、 nと mは 2〜30、好ましくは 2〜 15の整数である。
[0033] 本発明に係る一般式 (I)で示されるイオン性有機化合物の代表的な化合物 (A1) 〜 (A25)を例示すれば以下のとおりである。
なお、各表において、 Xはハロゲン原子(F, CI, Br, 1)、テトラフルォロホウ酸基(B F )、へキサフルォロリン酸基 (PF )、ビス(トリフルォロメタンスルホ -ル)イミド、チォ
シァネート(SCN)、硝酸基 (NO )、硫酸基 (SO )、チォ硫酸基 (S O )、炭酸基 (C
3 4 2 3
O )、炭酸水素基 (HCO )、リン酸基、亜リン酸基、次亜リン酸基、各ハロゲン酸化物
3 3
酸基(XO , XO , XO , XO : X=C1, Br, 1)、トリス(トリフルォロメチルスルホニル)
4 3 2
炭素酸基、トリフルォロメチルスルホン酸基、ジシアンアミド基、酢酸基 (CH COO)、
3 ハロゲン化酢酸基((CX H ) COO, X=F, CI, Br, I ;n= l, 2, 3)、テトラフエ ニルホウ酸基(BPh )およびその誘導体(B (Aryl) : Aryl=置換フ ニル基)から選
4 4
ばれた少なくとも 1種である。 [表 1]
[0037] [表 4]
)
[0038] 上記一般式 (I)で示されるイオン性有機化合物は、 (a)「イオン性自己縮合」反応に よる直接合成、もしくは (b)「イオン性自己縮合」反応により直接合成されたイオン性 有機化合物を原料とする、カウンターァ-オン交換反応等により簡単に合成すること ができる。
[0039] (a)の直接合成法により、一般式 (I)で示されるイオン性有機化合物を製造するには 、ァミノを有する窒素原子を一個以上含む複素環式化合物と活性メチレン基を分子 内にもつハロゲノメチルカルボン酸ノヽライドもしくはイソシァネート化合物を縮合反応 させればよい。
たとえば、アミノビリジン類と活性メチレン基を分子内に持つ安息香酸クロライドとを 用いてアミド化反応させる。その際、反応活性なアミド化合物が中間体として系内に 生成し、次いでピリジン環と活性メチレンの 4級化カップリング反応によって更に自発 的な縮合が起こり、電解質構造を持った、表 1の式 (A1)で示されるイオン性有機化 合物が得られる。
この合成反応は、下記反応式で示される。
[0041] 上記反応は、好ましくは、トリェチルァミン存在下、溶媒に溶解させて攪拌する。溶 媒としては有機溶剤が用いられる。その有機溶剤としては、エーテル類、炭化水素類 、塩素原子を含む炭化水素類等が使用できるが、なかでも、クロロメチル安息香酸ク 口ライドの分解を抑え、反応を制御する目的から、塩素原子を含む炭化水素類、特に 塩化メチレンが好ましい。その反応温度としては 0〜100°Cの範囲が好ましぐ 20〜4 0°Cがより好ましい。また、反応時間は反応温度に依存するが、 12〜50時間が好ま しい。
この縮重合反応の際、反応活性なアミドィ匕合物が中間体として系内に生成し、次い でピリジン環と活性メチレンの 4級化カップリング反応によって更に自発的な縮合が 起こり、上記一般式 (A1)で示される多量ィ匕したイオン性ィ匕合物が沈殿する。この沈 殿粉末を濾過および塩化メチレン等の有機溶媒で洗浄することにより容易に所望の イオン性ィ匕合物を得ることができる。その際、特に他の精製操作を行う必要がない。
[0042] また、(a)の直接合成法により、一般式 (I)で示されるイオン性有機化合物の中で表 1の式 (A2)で示される化合物を製造するには、たとえば、 4位に置ァミノ基 (NH )を
2 有するピリジン類と活性メチレン基を分子内に持つクロロメチル安息香酸イソシァネ ート化合物とを縮合反応させればよい。その際、分子間でピリジン環と活性メチレン の 4級化カップリング反応によって更に自発的な縮合が起こり、電解質構造を持った 、表 1の式 (A2)で示される化合物を沈殿物として得ることができる。
この合成反応は、下記反応式で示される。
[0043] [化 3]
[0044] 上記反応においては、ピリジン類とクロロメチル安息香酸イソシァネートイ匕合物の反 応基質の使用割合を、 1 : 1を基準とすることができ、反応温度は溶媒の沸点もしくは その近傍とし、反応温度は 1〜10時間の範囲程度とすればよい。
上記の反応によって、化合物のユニット数を表わす係数 nが 2〜30の範囲のもの、 たとえば主として n= 3〜10のもの等を得ることができる。この係数 nについては、反 応条件の選択、特に反応温度、反応時間、反応基質の種類と使用割合等によって 帘 U御することができる。
[0045] (b)のカウンターァ-オン交換反応より、一般式 (I)で示されるイオン性有機化合物を 製造するには、「イオン性自己縮合」反応により直接合成されたイオン性有機化合物 を原料とし、この原料ィ匕合物とは異なるァ-オンを含む化合物を反応させ、カウンタ ーァ-オン交換反応に付せばよ 、。
[0046] たとえば、上記 (I)の直接合成法で得た、イオン性有機化合物を水に溶解させて 10 0°Cで加熱還流させ、その系中に、例えば、 Xがハロゲン原子 (F, CI, Br, 1)、テトラ フルォロホウ酸基(BF )、 へキサフルォロリン酸基(PF )、ビス(トリフルォロメタンスル
4 6
ホニル)イミド、チオシァネート(SCN)、硝酸基 (NO )、硫酸基 (SO )、チォ硫酸基(
3 4
S O )、炭酸基 (CO )、炭酸水素基 (HCO )、リン酸基、亜リン酸基、次亜リン酸基、
2 3 3 3
各ハロゲン酸化物酸基(XO , XO , XO , XO : X=C1, Br, 1)、トリス(トリフルォロ
4 3 2
メチルスルホニル)炭素酸基、トリフルォロメチルスルホン酸基、ジシアンアミド基、酢 酸基(CH COO)、ハロゲン化酢酸基((CX H ) COO, X=F, CI, Br, I ;n= l
3 n 3-n
, 2, 3)、テトラフヱニルホウ酸基 (BPh )およびその誘導体 (B (Aryl) : Aryl=置換
4 4
フエニル基)から選ばれる 1種の原子又はイオン水溶液をカ卩えることにより、陰イオン 交換反応が起こり、新たなイオン性有機化合物が析出してくる。
その加熱還流時間は、アンモ-ゥム塩水溶液をカ卩えてから 5〜30分間程度である。
析出してくるイオン性オリゴマー構造を持つイオン性有機化合物は、濾過することに より容易に分離できるものであり、その他の精製操作は要しない。
[0047] 本発明の一般式 (I)で表されるイオン性有機化合物は、 nが 2〜30のオリゴマーの 形で得られる。また、反応条件により、構造が開いた直鎖状 (非環状)化合物と構造 が閉じた環状ィ匕合物の混合物として得られる。これらは、適宜、分離することができる 力 特に分離することなく混合物の形でゲル化剤として使用することが可能である。ま た混合物として用いる場合には環状 Z非環状の混合比も自由に変えることができる。 本発明の一般式 (I)で表されるイオン性有機化合物は、その化学構造において、ピ リジ -ゥムなどの A部位力 そのイオン性によって水への溶解性を担っており、また、 主鎖に位置するアミド基などの B部位は、水素結合を介在した分子間相互作用によ つてゲルィ匕に必要な自己組織化現象 (凝集)を促進させて最終的にゲルを形成させ 、さらに、ベンゼン環などの C部位も、疎水相互作用と芳香環同士の親和性により、 凝集を促進させる。これらの官能基は、全てが酸性条件下において安定性を有する ものである。
これらのことから、本発明のイオン性有機化合物は、水に対して優れたゲル形成能 力を有するものであって、ごく微量の成分比で水を固化させるハイド口ゲル化剤として 有益なものであり、例えば、砂漠緑化、植物栽培用土の保水などに用いられる保水 剤、ペット用トイレの尿吸収、生理用水分吸収などに用いられる水分吸収剤、ファイン ケミカル工業、医薬、化粧品分野などにおける水分保湿剤などとして有用なものであ る。また、酸性条件下でも安定であることから、酸性水溶液の固化及び有機反応の酸 触媒等にも使用可能である。このゲル化剤は、電荷を持った電解質構造を有してい るので、電解質ゲルとして電子材料分野にも利用可能である。
[0048] また、本発明のイオン性有機化合物カゝら形成されるハイド口ゲルは、機械的歪み等 の圧力をカ卩えることによって、その構造が一時的に破壊されたとしても、短時間に現 状復帰し、もとの機械的強度を有するゲルに復元するという、従来のハイド口ゲルに は見出されない特異的な挙動を示す。
たとえば、本発明のイオン性有機化合物カゝら形成されるハイド口ゲルを、動的粘弾 性測定装置を用いて、せん断によってゲルに 100%歪を負荷し、機械的にゲル構造
を破壊することにより強制的に擬液体状態を作り出した後に、歪を解放すると、数秒 力 数分のきわめて短 、時間でゲルの貯蔵弾性率が原状復帰し、擬固体状態へと 高速に復帰することが明らかになつている。さらにこの歪負荷実験を連続して繰り返 しても、高速復帰挙動は損なわれない。
したがって、本発明のハイド口ゲルは、上記のような性質を利用することにより、衝撃 吸収剤やソフトァクチユエータの基盤材料、さらにペイント材料のたれ性制御剤として 有望である。
[0049] 本発明のイオン性有機化合物は、これを種々のイオン性液体に媒介としての溶媒 を用いることなく高温で溶解させ、そのまま室温に放置することにより、ごく少量の成 分比でイオン性液体を擬固体ィ匕させることができるから、イオン性液体ゲル化剤とし て有用なものである。
[0050] また、本発明のイオン性有機化合物から形成されるイオン性液体ゲルは、高 、電気 伝導性を有するイオン性液体の特性が実質的に保持されたまま擬固体化され (ゲル 化前のイオン導電率が少なくとも 85%以上保持される)、ゲル化後の電気伝導性が ゲルィ匕前のもほとんど変化しな ヽと 、う、従来のイオン性液体ゲルに見られな 、特性 を有することから、実際にイオン性液体を用いるリチウムイオン電池などには、漏洩等 の問題を生じな ヽ擬固体として有用であり、また電極などにディップさせた様々なセ ンサ一としての応用や新しい固体電解質材料として利用可能であり、また、ゲル状態 における有機合成反応などの新しい化学反応の場としての応用も期待できる。
[0051] このようなイオン性液体は、たとえば、本発明のイオン性有機化合物をゲル化剤とし 、イオン性液体に 80°C以上 300°C以下の高温、好ましくは 120°C以上 200°C以下で 溶解させ、溶解させた後そのまま室温に放置しておくことにより得ることができる。ゲ ル化剤のイオン性液体に対する使用量は、 5gZL以上 lOOgZL以下であり、好まし くは lOgZL以上 80gZL以下である。
[0052] 本発明のイオン性液体ゲルに用いられるイオン性液体は、特に限定されるものでは なぐ公知の各種イオン性液体が使用可能であるが、具体的には、下記一般式 (B1) 〜(B4)で表わされるカチオンと陰イオン (X—)力 成るものを例示できる。
[NRnH4— n]+ (B3)
[PRnH ]+ (B4)
[0054] 上記一般式 (Bl)〜(B4)にお 、て、 Rは炭素数 8以下のアルキル基 (エーテル結 合を含んでいてもよい)を表わし、特に炭素数 2〜4のものが好ましい。また上記一般 式(B3)および(B4)において、 nは 1から 4の整数である。
[0055] これらのイオン性液体の陰イオン (X—)としては、 Xがハロゲン原子(F, CI, Br, I)、 テトラフルォロホウ酸基 (BF )、 へキサフルォロリン酸基 (PF )、ビス(トリフルォロメタ
4 6
ンスルホ -ル)イミド、チオシァネート(SCN)、硝酸基 (NO )、硫酸基(SO )、チォ
3 4 硫酸基 (S O )、炭酸基 (CO )、炭酸水素基 (HCO )、リン酸基、亜リン酸基、次亜リ
2 3 3 3
ン酸基、各ハロゲン酸化物酸基 (XO , XO , XO , XO : X=C1, Br, 1)、トリス(トリ
4 3 2
フルォロメチルスルホニル)炭素酸基、トリフルォロメチルスルホン酸基、ジシアンアミ ド基、酢酸基(CH COO)、ハロゲン化酢酸基((CX H ) COO, X=F, CI, Br,
3 n 3-n
I ;n= l, 2, 3)、テトラフヱニルホウ酸基(BPh )およびその誘導体(B (Aryl) : Aryl
4 4
=置換フエニル基)より選ばれる原子又はイオンを例示できる。
[0056] また、本発明に係る上記一般式 (I)で示されるイオン性有機化合物は、その化学構 造にぉ 、て、ピリジ-ゥム等の A部位がそのイオン性によって水への溶解性を担って いる。さらにピリジ-ゥム部位上の陽電荷力 「カチオン Ζ π相互作用」として知られる 強い親和力によって、カーボンナノチューブ表面と容易に相互作用する。このため、 両親媒性ィ匕合物として効率良くカーボンナノチューブを溶媒中に分散することができ る。
また、このイオン性有機化合物の主鎖に位置するアミド基等の Β部位は、水素結合 を介在した分子間相互作用によってゲルイ匕に必要な自己組織化現象 (凝集)を促進 させて、最終的に溶液が固化したゲルを形成させ、さらに、ベンゼン環など C部位も、
疎水相互作用により、凝集を促進させる。
これらのことから、本発明のイオン性有機化合物は、有機溶媒のような環境負荷の 大き 、媒体を一切用 、ることなく、環境負荷の小さ 、水にカーボンナノチューブを均 一に分散させ、ゲル化させることができるので、カーボンナノチューブの分散剤として 有用なものである。
この場合、これらのイオン性有機化合物は、各々単独あるいは 2種以上の混合物と して使用することができる。
また、この分散剤力も得られるカーボンナノチューブ分散溶液や分散ゲルは、高導 電性と優れた半導体特性を持つことから、電動ァクチユエータ等のインテリジェント材 料への応用展開が期待できる。
さらには、上記の分散溶液や分散ゲル力 カーボンナノチューブ含有薄膜を容易 に形成することができ、その膜厚も容易に均一に制御'形成することができる。また、 カーボンナノチューブを電子放出源とした電子放出素子やカーボンナノチューブを 発光体とする発光材料を得ることができる。
[0057] 本発明のカーボンナノチューブ分散溶液は、好ましくは、前記イオン性有機化合物 からなるカーボンナノチューブ分散剤と、カーボンナノチューブと、少なくとも水を含 む溶媒とを含んでなり、カーボンナノチューブ分散剤を、溶媒に対して 1重量%未満 で添加することにより調製される。その下限値としては特に限定されるものではないが 0. 01重量%以上であれば、好適的な分散効果を得ることができる。ここで、カーボン ナノチューブ分散剤の添加量が溶媒に対して 1重量%以上である場合には、分散溶 液が固化し、後述するカーボンナノチューブ分散ゲルが生成されることになる。
[0058] 対象となるカーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブあるいは多層カー ボンナノチューブのいずれかであってよぐその大きさも直径が数 nm〜数百 nm、長 さが数 nm〜数/ z mなど一般的なものであってよい。カーボンナノチューブの分散性 、あるいは電気伝導性、熱伝導性の効果を考慮すると、特に単層カーボンナノチュー ブを用いることが好ましい。なお、ここで用いられるカーボンナノチューブは、一般に 知られているものであってよぐその製造方法も従来より知られている方法で製造され る。
カーボンナノチューブの添加量としては、例えば、単層カーボンナノチューブの場 合、溶媒に対して最大 0. 3重量%程度まで添加することで、好適に分散させることが できる。特に好ましくは、溶媒に対して 0. 001-0. 1重量%が望ましい。
[0059] カーボンナノチューブ分散溶液の溶媒は、少なくとも水を含むものである力 水以 外に必要に応じて水溶性有機溶媒、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、 イソプロパノール等の各種アルコール類、アセトン等のケトン類、ジメチルスルホキシ ド、 N, N—ジメチルホルムアミド、 N—メチルピロリドン等を用いた混合溶媒であって もよぐその混合比率も特に限定されるものではない。なお、カーボンナノチューブの 分散性を考慮すると、溶媒は脱イオン化された純水であることが好ま 、。
[0060] 本発明のカーボンナノチューブ分散溶液は、例えば、カーボンナノチューブ分散剤 を所定の濃度になるように高温の上記溶媒に溶解し、これにカーボンナノチューブを 加えて超音波照射することで得ることができる。超音波は、市販の超音波洗浄器、例 えば、出力: 130W、周波数: 35kHzを用いてもよぐ約 1時間処理することによって 良好な分散効果を得ることができる。超音波の条件はこれに限定されるものではなく 、その出力、周波数及び照射時間は、分散溶液に含まれる各成分の配合比によって 、適宜決めることができる。
[0061] また、本発明のカーボンナノチューブ分散ゲルは、少なくとも水を含む溶媒と、前記 いずれかのイオン性有機化合物力もなるカーボンナノチューブ分散剤を含んでなる。 カーボンナノチューブ分散剤の添加量は、好ましくは、溶媒に対して 1重量%以上で あり、その上限値としては、カーボンナノチューブの溶媒中での分散性を考慮すると 1 0重量%以下であることが好まし 、。
このカーボンナノチューブ分散ゲルは、上記カーボンナノチューブ分散溶液から溶 媒を蒸発させ、カーボンナノチューブ分散剤を溶媒に対して 1重量%以上とすること で製造することもできるが、溶媒に対して添加するカーボンナノチューブ分散剤を 1 重量%以上として、直接合成することもできる。
[0062] なお、本願発明のカーボンナノチューブ分散ゲルに用いられる溶媒、カーボンナノ チューブおよびその添加量、超音波照射等は、上述のカーボンナノチューブ分散溶 液と同様であるため説明は省略する。
[0063] さらに、本発明のカーボンナノチューブ含有薄膜は、上記カーボンナノチューブ分 散溶液もしくはゲルカーボンナノチューブ分散ゲルを基板上に展開して乾燥すること により容易に得ることができる。
基板上への展開方法としては、キャスト法もしくはスピンコート法が望ましいが、これ に限定されるものではない。用いる基板としては、一般的には石英基板であるがこれ に限定されるものではない。そして、このようにして得られた薄膜は、薄膜化後であつ ても複数のカーボンナノチューブが相互に分離した状態で分散されている。
[0064] 以上のようにして製造されたカーボンナノチューブ含有薄膜は、カーボンナノチュ ーブを発光体とする発光材料として用いることができる。
実施例
[0065] 以下、本発明を実施例等によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施 例によって何ら限定されるものではない。
[0066] 実施例 1 (ァミン類と酸クロライドからのイオン性有機化合物の合成)
4—アミノビリジン 4. 27g (45. 3mmol)と 4— (クロロメチル)安息香酸クロライド 8. 3 4g (45. 3mmol)を、トリェチルァミン 6. 95mL (49. 9mmol)の存在下に、無水ジク ロロメタン lOOmL中で混合し、室温で一晩攪拌したところ白色沈殿が生成した。これ を濾過することにより、下記式(1)に示される Xが塩素イオンのイオン性有機化合物 1 •C1を 9. 51g得た。この収率は 85%であった。この生成物の構造式および合成反応 は下記で示される。
[化 5]
[0067] このイオン性有機化合物においては、一般式中 Aに相当するのが陽電荷を持つピ リジ -ゥム環、 Bが水素結合性のアミド基、 Cはピリジ-ゥム環内の窒素上に結合した ベンジル部位とみなされる。また Xは塩素原子のァ-オンである。また質量分析の結 果、 n mは 2 30の整数であった。このイオン性有機化合物を、真空乾燥した後、 高温の水溶液に溶解させ、そのまま室温に放置することにより、ハイド口ゲルを簡便 に合成できる(図 1)。
[0068] 得られたイオン性有機化合物 1 'C1の化学構造は、希薄溶液 (重水)の 1H NMRより 、ゲル化剤の部分構造であるべンジルピリジ-ゥム塩に特徴的な低磁場シフトしたメ チレンのピーク (約 6 ppm)が観測されたことから、その化学構造を確認した。また、重 水を用いて作成したハイド口ゲルの IRでは、図 2に見られるように、フリーのカルボ- ルと水素結合にかかわる 2つの伸縮振動がそれぞれ、 1691cm— 1635cm— 1に観測さ れた。
イオン性有機化合物 l 'Clの NMRデータ(300MHz, D 0) δ 5.83 (Ph- CH - Ν+, 2Η)
2 2
, 7.66 (2Η), 8.05, (2Η), 8.31 (2Η), 8.77 (2Η)。
[0069] イオン性有機化合物 l 'Clは、始めに反応系内に中間体として生成する、下記式(2 )で示される安息香酸アミドィ匕合物が、さらに 4級化自己縮合することにより生成して いるものと考えられる。
[化 7]
この式(2)の化合物は、極めて反応活性のため単離することは困難である力 塩ィ匕 水素トラップ剤であるトリェチルァミンを含まな ヽ条件で合成した場合に、下記構造式
で示されるピリジ-ゥム塩(3)の生成が確認されたことによって、アミド化反応による一 段階目のカップリング反応 (アミドィ匕反応)が確認された。
上記式(3)のピリジ-ゥム塩の NMRデータ(300MHz, MeOH- d ) : δ 4.64 (Ph-CH -
4 2
CI, 2H), 6,87 (d, 2H), 7.46, (d, 2H), 7.91 (d, 2H), 8.00 (d, 2H)。
[0070] また Xが臭素ァ-オンの誘導体は、酸ハライドとして 4 (プロモメチル)安息香酸ブ ロマイドを用いる同様の反応により合成した。
[0071] また、上記と同様のアミド化反応およびそれに続く 4級化自己縮合反応を利用して
、対応するァミン類、および酸クロリドィ匕合物から下記式 (4)〜(14)のイオン性有機 化合物群を合成した。その結果を以下に示す。
[化 9]
イオン性有機化合物 4· C1の NMRデータ(300MHz, D 0): δ 6.00 (brs, 2H), 7.76 (
2
m, 2H), 8.16 (m, 3H), 8.73 (m, 1H), 8.88 (m, 1H), 9.71 (brs, 1H)。 [化 10]
イオン性有機化合物 5 'CIの NMRデータ(300MHz, MeOH- d ): δ 4.63 (m, 2H), 5.
m
SZ"8 '(HZ 'ω) US '(HZ '- HD- (+) 'V) Sff '(HZ 'ω) S"2 '(HZ 'ω) SO '(Η2 'ω) 8 Ζ·ΐ '(Η2 'ω) ΙΥ\ 9: (—HO, 'ΖΗ勵 OS)^—、^1顺 0)H呦^]膽单 'ベ
°(HS 'ω) 90·6 '(Η2 'ω) 06·8 '(Η2 'ω) S0'8 ΗΖ 'ω) 09· Ζ '(Η2 's-iq) 9:
斜单 'ベ
\ Ζ 00·6 (Η 'ω) 0Γ8 (Η2 'ω) 09"Ζ Ζ 06
Z0M0C/900Zdf/X3d 83 89.Ζ80/900Ζ OAV
[化 16]
[0072] 実施例 2 (ァミン類とイソシァネートイ匕合物力ものイオン性有機化合物の合成)
4—アミノビリジン(0. 562g、 5. 97mmol)と 4—クロロメチル安息香酸イソシァネー ト(1. OOg、 5. 97mmol)を、無水テトラヒドロフラン(THF)、 100ml中で混合し、一 晚加熱攪拌した。反応後白色沈殿が生成し、ろ過によってイオン性有機化合物 (生 成物 15)を白色粉末として、 1. 56g得た この Xが塩素であるイオン性有機化合物( 15) (イオン性有機化合物 15 · C1)の収率は定量的(100%)であった。この生成物の 構造式および合成反応は下記に示される。
[化 20]
[0073] このイオン性有機化合物 15 · C1においては、一般式中 Aに相当するのが陽電荷を 持つピリジ-ゥム環、 Bが水素結合性のウレァ (尿素)基、 Cはピリジ-ゥム環内の窒素 上に結合したベンジル部とみなされる。また Xは塩素原子である。また質量分析より、 n、 mは 2〜30の整数であった。このイオン性有機化合物を真空乾燥した後、高温の 水溶液に溶解させ、そのまま室温に放置することにより、ノ、イド口ゲルを簡便に合成 できる。
また、このイオン性有機化合物 15 · CIの化学構造は、重水中の1 H NMRより、ゲル ィ匕剤の部分構造であるべンジルピリジ-ゥム塩に特徴的な低磁場シフトしたメチレン のピーク (約 5.4 ppm)が観測されたことから、その化学構造を確認した。
イオン性有機化合物 15 · C1の NMRデータ(300MHz, D 0): δ 5.3 (Ph- CH - Ν+, 2
2 2
Η), 6.9(2Η), 7.5, (2Η), 8.0(2Η), 8.5(2Η)。
[0074] イオン性有機化合物 15 · C1は、始めに反応系内に中間体として生成する下記構造 式(16)で示される安息香酸ゥレア (尿素)化合物が、分子間で 4級化反応を起こして さらにイオン性自己縮合することにより生成して 、るものと考えられる。
[0075] また Xが臭素ァ-オンの誘導体は、酸ハライドとして 4 ブロモメチル安息香酸プロ マイドを用いる同様の反応により合成した。
[0076] また、同様に、対応するァミン類とイソシァネートとの 4級化自己縮合反応を利用し て、下記式(17)の誘導体を合成した。
[化 23]
イオン性有機化合物 17· C1の NMRデータ(300MHz, DMSO- d ): δ 5.81 (brs, 2H),
6
7.55 (m, 4H), 8.05 (m, IH), 8.30 (m, IH), 8.73 (m, IH), 9.40 (m, IH), 10.10 (br, IH ), 10.80 (br, 1H)。
さらに 4—ヒドロキシピリジンとイソシァネートの反応で、ウレタン結合部位を持つ下 記イオン性有機化合物(18)も同様に合成された。
[0078] 実施例 3 (ハイド口ゲルの作成 1)
上記式(1)に示されるイオン性有機化合物 l 'Clが 1重量%程度の濃度になるよう に、中性の水と混合し加熱すると、 80°C付近で溶液が透明になり無色均一溶液とな つた。これを室温に放冷し 5分間程度経過すると、図 1に見られるように、安定な半透 明のハイド口ゲルが生成した。このゲルィ匕の過程は、ガラスサンプル管を用いて簡便 に判定することができる。すなわち、サンプル管中で 1重量%程度となるように水とゲ ル化剤を混合し、均一溶液になるまで加熱した後に室温で冷却し、これを倒立させた 際に溶液の落下が見られない場合を、ゲルイ匕した状態として判定した。中性の水の 室温における限界ゲルィ匕濃度は、 7.5g/Lであり、それ以上の濃度でゲルイ匕が可能で ある。
[0079] 上記と同様の手法を用いて、酸性溶液のゲル化も可能であることを確認した。具体 的には、表 5に示すように、 0. 1Nの塩酸溶液や 45重量%のリン酸溶液においても、 ゲルィ匕することが観測された。調製したハイド口ゲル(中性)を、凍結乾燥させたキセ 口ゲルの SEM写真(図 3参照)からは、微細なシート状構造が観測された。このことか ら、ゲルィ匕はイオン性有機化合物 l 'Cl (ゲル化剤)のラメラ的な凝集によって誘起さ れていることが示唆される。なお、表 1は、このゲル化剤を 1重量%濃度で用いた際の 、種々のゲル化条件をまとめたものである。
[表 5]
HC1の濃度は規定度、 リン酸濃度は重量%, G :ゲル化、 I:不溶、 S :溶液 実施例 4 (ノヽイド口ゲルの作成 2)
同様のゲル化機能は、異なるイオン性有機化合物 15 · C1を用 、ても観測された。
すなわち上記ウレァ基を分子内に有する、イオン性有機化合物 15 'C1が 1重量%程 度の濃度になるように、中性の水と混合し加熱すると、 80°C付近で溶液が透明になり 黄色の均一溶液となった。これを室温に放冷し 5分間程度経過すると、図 4に見られ るように、安定なハイド口ゲルが生成した。このゲルィ匕の過程は、ガラスサンプル管を 用いて簡便に判定することができる。すなわち、サンプル管中で 1重量%程度となる ように水とイオン性有機化合物 15 · C1 (ゲル化剤)を混合し、均一溶液になるまでカロ 熱した後に室温で冷却し、これを倒立させた際に溶液の落下が見られない場合を、 ゲルイ匕した状態として判定した。
[0081] 上記と同様の手法を用いて、酸性溶液 (酸性度は約 1)のゲル化も可能であることを 確認した。具体的には、 0. 1Nの塩酸溶液や 45重量%のリン酸溶液においても、溶 液のゲルィ匕が起こることが観測された。調製したハイド口ゲル(中性)を、凍結乾燥さ せたキセロゲルの SEM写真(図 5参照)からは、微細構造が観測された。このことから 、ゲルィ匕は上記ゲル化剤であるイオン性有機化合物 15 · C1のラメラ的な凝集によつ て誘起されて ヽることが示唆される。
[0082] 実施例 5 (ハイド口ゲルのレオロジー評価:高速粘弾性復帰特性)
イオン性有機化合物 1 'C1と脱イオン処理後の純水を用いて、イオン性有機化合物 l 'Clの濃度が 30gZLとなるように分散させた分散溶液を加熱し、透明均一な溶液と した後、室温に放置して白色のヒドロゲルを調製した。 25° Cでこのヒドロゲルの動的 粘弾性測定を行った。
この測定によって得られる物性値力 周波数 6rad/s、歪み 0. 02%の条件で貯蔵弹 性率 (G ' )が約 8000Paであり、さらに損失正接 (tand)が約 0. 1である擬固体性を示
0
す値であった(図 6a)。このゲルに同じ周波数 6rad/sを保持したまま、歪みを 100%適 用した際の貯蔵弾性率 (Gs' )は 30Pa程度まで減少し、損失正接 (tand)が 10以上の 擬液体性を示す値となった。さらに 500秒間連続で 100%歪負荷を与え続けた直後、 再び歪みを 0. 02%に戻して動的粘弾性を測定したところ、貯蔵弾性率 (G' )は 8秒後 に約 6200Pa、 600秒(10分)後には、約 7500Paとなった。これを貯蔵弾性率初期値 (G ' )に対する貯蔵弾性率復帰率 (G' /G ')に換算すると、 8秒後の値が 78%、 10分
0 0
後が 94%となった(図 6b)。この復帰速度は、ゼラチンなどの従来知られる天然ゲルィ匕
剤の場合に比べて二桁以上速 、値であり、このハイド口ゲルに特徴的な性質である。 さらにこの高速復帰挙動には繰り返し特性があり、連続して低歪負荷 (0. 02%)と高 歪負荷(100%)のサイクルを 3回繰り返しても、高速弾性率復帰挙動は損なわれな かった(図 6)。
[0083] 実施例 6 (イオン性有機化合物 1 · C1を用 V、たイオン性液体ゲルの調製)
イオン性有機化合物 1 · C1は、水に可溶なイオン性液体 (例えば 1 -ェチル— 3—メ チルイミダゾリゥム硝酸塩や N—ブチルピリジ-ゥムテトラフルォロボレートなど)を、水 を含んだ状態にぉ 、て、ゲルィ匕することができる。
[0084] ァ-オンが塩素イオンであるイオン性有機化合物 l 'Clを、 20gZLの濃度になるよ うに、水を 10%含んだ 1—ェチル—3—メチルイミダゾリゥム硝酸塩に加え、ホットプレ ート上でおよそ 100°Cに加熱溶解させる。完全に溶解させた後、室温で放冷し 5分間 程度経過すると、安定な白濁のイオン性液体ゲルが生成した。なお、このサンプルを 真空中 90°Cで一晩乾燥させたところ、ゲル状態は保たれたままであった。
[0085] また、同様にイオン性有機化合物 1 'C1を、 20gZLの濃度になるように、水を 20% 含んだ N—ブチルピリジ-ゥムテトラフルォロボレートに加え、ホットプレート上でおよ そ 100°Cに加熱溶解させる。室温で放冷し 5分間程度経過すると、白濁のイオン性 液体ゲルが生成した。
[0086] 実施例 7 (ァ-オン交換反応によるイオン性有機化合物の合成)
<ァ-オン交換反応 1:ァ-オン Xがへキサフルォロリン酸イオンであるイオン性有 機化合物 l 'PFの合成 >
ァ-オンが塩素であるイオン性有機化合物 l .Cl、 860mgに水 200mLをカ卩え、カロ 熱することにより完全に溶解させた。この溶液に、加熱還流下、へキサフルォロリン酸 アンモ-ゥム 625mgの水溶液 20mLをカ卩え、 10分間加熱還流を行った。加えた瞬 間に溶液が白濁した。その後、この溶液の熱時濾過を行うことにより、 目的物であるァ ユオンがへキサフルォロリン酸イオンであるイオン性有機化合物 l 'PFを 1. 24g得
6
た。この収率はほぼ 100%であった。
イオン性有機化合物 l 'PFの NMRデータ(600MHz, DMSO- d ): δ 11.65 (ΝΗ, 1Η)
6 6
, 8.94 (2H), 8.33, (2H), 8.06 (2H), 7.66 (2H), 5.83 (CH , 2H) (図 7参照)。
[0087] <ァ-オン交換反応 2:ァ-オン Xがテトラフルォロホウ酸イオンであるイオン性有機 化合物 l 'BFの合成 >
4
ァ-オンが塩素であるイオン性有機化合物 l 'Cl、 150mgに水 25mLをカ卩え、加熱 することにより完全に溶解させた。この溶液に、加熱還流下、テトラフルォロホウ酸ァ ンモ -ゥム 6. 40gの水溶液 20mLをカ卩え、 3時間加熱還流を行った。加えた瞬間に 溶液が白濁した。その後、この溶液の熱時濾過を行うことにより、目的物であるァ-ォ ンがテトラフルォロホウ酸イオンのイオン性有機化合物 l 'BFを 155mg得た。この収
4
率は 82%であった。
得られたイオン性有機化合物 l 'BFの NMRデータ(300MHz, DMSO- d ): δ 11.66
4 6
(ΝΗ, 1Η), 8.96 (2H), 8.34, (2H), 8.07 (2H), 7.66 (2H), 5.84 (CH , 2H)。
2
[0088] <ァ-オン交換反応 3:ァ-オン Xがビス(トリフルォロメタンスルホ -ル)イミドイオン であるイオン性有機化合物 1 · TFSIの合成 >
ァ-オンが塩素であるイオン性有機化合物 l 'Cl、 190mgに水 25mLをカ卩え、加熱 することにより完全に溶解させた。この溶液に、加熱還流下、リチウムビス(トリフルォ ロメタンスルホ -ル)イミド 1. l lgの水溶液 10mLを加え、 30分間加熱還流を行った 。その後、反応溶液を室温まで冷却すると白色の固体が析出し、ろ過することにより 目的物であるァ-オンがビス(トリフルォロメタンスルホ -ル)イミドイオンのイオン性有 機化合物 1 'TFSIを 300mg得た。この収率は 79%であった。
イオン性有機化合物 l 'TFSIの NMRデータ(300MHz, DMSO- d ): δ 11.66 (ΝΗ, 1
6
Η), 8.96 (2Η), 8.34, (2Η), 8.07 (2Η), 7.67 (2Η), 5.84 (CH , 2Η)。
2
[0089] <ァ-オン交換反応 4:ァ-オン Xがヨウ素イオンであるイオン性有機化合物 1 ·Ιの 合成〉
ァ-オンが塩素であるイオン性有機化合物 l 'Cl、 150mgに水 20mLをカ卩え、加熱 することにより完全に溶解させた。この溶液に、加熱還流下、ヨウ化アンモ-ゥム 8. 8 lgの水溶液 20mLを加え、 30分間加熱還流を行った。その後、反応溶液を室温ま で冷却すると黄色に着色した固体が析出し、ろ過することにより目的物であるァ-ォ ンがヨウ素イオンのイオン性有機化合物 1 ·Ιを 192mg得た。この収率は 93%であつ
[0090] <ァ-オン交換反応 5:ァ-オン Xがチオシァネートイオンであるイオン性有機化合 物 l ' SCNの合成 >
ァ-オンが塩素であるイオン性有機化合物 l 'Cl、 200mgに水 30mLをカ卩え、加熱 することにより完全に溶解させた。この溶液に、加熱還流下、リチウムチオシァネート 4 . 10gの水溶液 30mLをカ卩え、 10分間加熱還流を行った。その後、反応溶液を室温 まで冷却すると白色の固体が析出し、ろ過することにより目的物であるァ-オンがチ オシァネートイオンのイオン性有機化合物 1 ' SCNを 210mg得た。この収率は 96% であった。
[0091] 実施例 8— 1 (イオン性有機化合物 l 'PFを用いたイオン性液体ゲルの調製)
6
ァ-オン交換反応 1で得られたァ-オンがへキサフルォロリン酸イオン (PF )である
6 イオン性有機化合物 l 'PFの白色粉末を、 20gZLの濃度になるように、 1 ェチル
6
3—メチルイミダゾリゥムテトラフルォロボレート(以下、 EMIm— BFと略す)に加え
4
、ホットプレート上でおよそ 120°Cに加熱溶解させた。完全に溶解させた後、室温で 放冷し 5分間程度経過すると、図 8に見られるように、安定な白濁のイオン性液体ゲ ルが生成した。このゲル形成の限界濃度は、室温 (およそ 20°C)で llgZLであった 。さらに 20gZLの濃度で調整したイオン性液体ゲルは、 80°Cに温度上昇させても壊 れずにゲル状態を維持して ヽた。
[0092] 前記反応で得られたイオン性液体ゲルを多量の水で洗浄して、イオン性液体であ る EMIm— BFを留去し、その残渣を濾過した。得られた粉末の SEM写真から、シー
4
ト構造が幾重にも重なった層(ラメラ)構造を形成していることが確認された(図 9参照 )。すなわち、ゲル形成の際、まずゲル化剤であるイオン性有機化合物が自己集合 することによりシート状構造を形成し、それらが寄り集まって層(ラメラ)構造を構築し、 媒体であるイオン性液体がそのシート状構造の間に担持されることにより、容器を逆 さまにしても溶液の落下が見られなカゝつたものと考えられる。
[0093] また同様に、イオン性有機化合物 l 'PFを、 25gZLの濃度になるように、 N—プチ
6
ルピリジ-ゥムテトラフルォロボレートに加え、ホットプレート上でおよそ 120°Cに加熱 溶解させた。室温で放冷し 5分間程度経過すると、白濁のイオン性液体ゲルが生成 した。このゲル形成濃度の限界点は、室温 (およそ 20°C)で 20gZLであった。
[0094] 実施例 8— 2 (イオン性有機化合物 l 'BFを用いたハイド口ゲルの調製)
4
ァ-オン交換反応 2で得られたァ-オンがテトラフルォロホウ酸イオンであるイオン 性有機化合物 l 'BFの白色粉末を、 lOgZLの濃度になるよう純粋を加え、加熱溶
4
解させた。完全に溶解させた後、室温で放冷し 5分間程度経過すると、白濁のハイド 口ゲルが生成した。このときのゲル生成限界濃度は lOgZLであった。また、水酸ィ匕 ナトリウムの希薄溶液 (濃度 0. 01N)、塩酸の希薄溶液 (濃度 0. 5N)およびリン酸水 溶液 (濃度 45重量%)においても同様に、 l 'BFを用いてゲルィ匕できることがわかつ
4
た。このときのゲル生成限界濃度は lOgZLであった。
[0095] 実施例 8— 3 (イオン性有機化合物 l 'TFSIを用いたイオン性液体ゲルの調製) ァ-オン交換反応 3で得られたァ-オンがビス(トリフルォロメタンスルホ -ル)イミド であるイオン性有機化合物 l 'TFSIの白色粉末を、 40gZLの濃度になるように、 N ーメチルー N—プロピルピベリジ-ゥムビス(トリフルォロメタンスルホ -ル)イミド(以下 、 PP13— TFSIと略す)にカロえ、ホットプレート上でおよそ 120°Cに加熱溶解させる。 完全に溶解させた後、室温で放冷し 5分間程度経過すると、安定な白濁のイオン性 液体ゲルが生成した(図 10参照)。
[0096] また、 PP 13—TFSIに 10重量0 /0の濃度でリチウムビス(トリフルォロメタンスルホ- ル)イミド塩を添加したイオン性液体を用いても、本発明のゲル化剤はこれをゲルイ匕 することができる。
[0097] イオン性有機化合物 1 'TFSIを、 40gZLの濃度になるように、 10重量%の濃度で リチウム塩を添カ卩したイオン性液体 PP13— TFSIに加え、ホットプレート上でおよそ 1 20°Cに加熱溶解させる。完全に溶解させた後、室温で放冷し 1時間程度経過すると 、安定な白濁のイオン性液体ゲルが生成した(図 10参照)。
[0098] 同様に、イオン性有機化合物 1 'TFSIの白色粉末を、 40gZLの濃度になるように 、 N—メチル N プロピルピロリジ -ゥムビス(トリフルォロメタンスルホ -ル)イミド( 以下、 PY13— TFSIと略す)に加え、ホットプレート上でおよそ 120°Cに加熱溶解さ せる。完全に溶解させた後、室温で放冷し 5分間程度経過すると、安定な白濁のィォ ン性液体ゲルが生成した。
[0099] 実施例 8— 4 (イオン性有機化合物 1 · Iを用 V、た有機ゲルおよびイオン性液体ゲルの
調製)
ァ-オン交換反応 4で得られたァ-オンがヨウ素イオンであるイオン性有機化合物 1 •Iを、 20gZLの濃度になるように、ジメチルスルホキシド(以下、 DMSOと略す)にカロ え、加熱溶解させる。完全に溶解させた後、室温で放冷し 5分間程度経過すると、黄 濁な有機ゲルが生成した。このときのゲル生成限界濃度は lOgZLであった。
[0100] ァ-オン交換反応 4で得られたァ-オンがヨウ素イオンであるイオン性有機化合物 1
•Iを、 20g/Lの濃度になるように、水もしくは DMSOを 10%含んだイオン性液体、 1 —ェチル— 3—プロピルイミダゾリゥムヨウ化物に加え、ヒートガンにより加熱し、完全 に溶解させる。室温で放冷し 5分間程度経過すると、黄濁なイオン性液体ゲルが生 成した。またこのとき、ヨウ素やヨウ化リチウム、 4— t—ブチルピリジン等の添加物をあ る程度の濃度で添加してもゲルィ匕することを確認している。
[0101] 実施例 9 (イオン性液体ゲルの導電率測定)
上記実施例 8 - 1に示した、 20gZLの濃度で調製したイオン性液体ゲル (イオン性 有機化合物 l 'PF (1 -PF ) +EMIm-BF )の導電率を、複素インピーダンス法に
6 6 4
より測定し、イオン性液体である EMIm—BFそのものの導電率と比較した。その結
4
果を表 6および図 11に示す。その結果、ゲル状態における導電率は、測定温度範囲 (5-45°C)においてゲルィ匕前と比べて最大でも数%の減少しか見られず、ゲル化後 もほぼ変化しな 、ことが判明した。
[0102] [表 6]
温度
5 °C 2 5 °C 3 5 °C 4 5 °C
状態
イオン性液体
(EMIm-BF4) 6. 37 14.37 19. 74 25. 92
の導電率 A(mS/cm)
イオン性液体ゲル
( 1 · P F 6 +EMIm-BF4)
の導電率 A,(mS/cm)
および
変化率 (AVA)
! O一
[0103] また、ゲル化剤の濃度を 30gZL、 40gZLと変 OO化させて調製したイオン性液体ゲル の導電率についても、同様の複素インピーダンス法により測定した。得られた結果を 下記の表 7および図 12に示す。その結果、ゲル化剤の量を増加させた場合に導電 率が僅かに減少する傾向が見られたが、減少率は最大でも 10%程度であり、擬固体
3
状態のゲルを形成した後にお 、ても十分にイオン伝導性が保たれてO O C、ることを示唆 している。
[0104] [表 7]
注:表中力ッコ内の数字は、 0 g/ Lの値を基準とした変化率を表す
[0105] また、上記実施例 8 - 3に示した、 40gZLの濃度で調製したイオン性液体ゲル (ィ
オン性有機化合物 1 'TFSI (1 'TFSI) +PP13-TFSI)の導電率を複素インピーダ ンス法により測定し、母体のイオン性液体である PP13— TFSIそのものの導電率と比 較した。得られた結果を下記の表 8および図 13に示す。その結果、イオン性液体そ のものの導電率と比較した低下率は最大でも 12%程度であり、擬固体状態の広い温 度範囲で導電率を十分に保っていることがわ力 た。
[0106] [表 8]
[0107] さらに、上記実施例 8— 3に示した、 40gZLの濃度で調製したイオン性液体ゲル( イオン性有機化合物 1 'TFSI (1 'TFSI) +PY13-TFSI)の導電率を複素インピー ダンス法により測定し、母体のイオン性液体である PY13— TFSIそのものの導電率と 比較した。得られた結果を下記の表 9および図 14に示す。この場合も同様に、イオン 性液体そのものの導電率と比較した低下率は最大でも 11 %程度であり、擬固体状態 の広 、温度範囲で導電率を十分に保持して 、ることがわ力つた。
[0108] [表 9]
イオン性液体
(PY13-TFSI) 3.8 7.6
の導電率 A (mS/cm) (25.1) (44.7)
および測定温度(°c)
イオン性液体ゲル
( 1 · TFSI +
PY13-TFSI) ^
の導電率 A'(mS/cm)
および測定温度 C)
変化率 (A'/A) 0.92 0.97 0.89 0.95 0.95 1.00
[0109] 続レ、てリチウム塩添加条件でのイオン性液体 1 1 ' 'ゲル (イオン性有機化合物 1 'TFSI (1 •TFSI) +PP13— TFSI(Li))の導電率を、複素インピーダンス法により測定し、ゲ ル化剤を入れて!/ヽな ヽ状態の導電率と比較した。得られた結果を下記の表 10およ び図 15に示す。その結果、イオン性液体そのものの導電率と比較した低下率は最大 でも 14%程度であり、添加剤のリチウム塩存在下の擬固体状態においても、広い温 度範囲で導電率を十分に保持して!/、ることがわ力つた。
[0110] [表 10]
o
[0111] 実施例 10 (イオン性有機化合物を用いた単層カーボンナノチューブ分散溶液の作
成)
イオン性有機化合物 1 · α (25πι8)をサンプル管中で脱イオン処理後の純水(5ml) と混合し、加熱して均一な溶液を得た。この溶液に HiPco法 (高圧一酸化炭素法)に より作製された単層カーボンナノチューブ (0. 5mg)を混合し、洗浄用超音波照射装 置(130W, 35kHz)を用いて 1時間超音波照射することにより、黒色のカーボンナノ チューブ分散溶液となり、沈殿は生じな力つた。この結果を図 16に示す。(a)は超音 波照射前で、(b)は超音波照射後である。
[0112] この溶液は半年以上放置しても全く沈殿は見られず、イオン性有機化合物 1 'C1を カロえな ヽ場合とは明確な違 、が観測された。また単層カーボンナノチューブが可溶 化していることは、溶媒に重水を用いた分散溶液の近赤外 UVスペクトルを測定する と、 400—1600nmの波長範囲で、孤立分散した単層カーボンナノチューブに特徴 的なシャープな吸収が連続する鋸型の吸収スペクトルが明瞭に観測されたことからも 確認できた。この結果を図 17に示す。
[0113] 上記分散溶液調製の際の各成分の配合比は目的に応じて適宜決定することがで き、溶媒に対して生成物 1の重量比率が 0. 001-0. 95重量%、単層カーボンナノ チューブの重量比率が 0. 001〜0. 3重量%の範囲において、カーボンナノチュー ブ分散溶液を容易に調製することができることを確認した。
また、ァ-オン Xが C1以外の Br、 BFであるときにも、カーボンナノチューブ分散溶
4
液を容易に調製することができることを確認した。さらに基本骨格「B」の部位がゥレア 基であるイオン性有機化合物 15 · C1を用 、ても同様の手法でカーボンナノチューブ 分散溶液が得られることを確認した。
[0114] 実施例 11 (イオン性有機化合物を用いた単層カーボンナノチューブ分散ゲルの作 成)
実施例 10で調製した分散溶液を、開放したサンプル管中で室温に放置して、徐々 に溶媒を蒸発させることにより、黒色の単層カーボンナノチューブ分散ゲルを得た。こ の写真を図 18に示す。
[0115] また、溶媒に対して添加するイオン性有機化合物 l 'Clの重量比率を 1重量%以上 として、直接合成することができることも確認した。すなわち、イオン性有機化合物 1 ·
Cl(60mg)をサンプル管中で脱イオン水(5ml)と混合し、さらに HiPco法(高圧一酸 化炭素法)により作製された単層カーボンナノチューブ (0. lmg)を加え、加熱して 生成物 1を溶解後に洗浄用の超音波照射装置( 130W, 35kHz)を用いて 1時間超 音波照射し、室温に静置することによつても、同様のカーボンナノチューブ分散ゲル が得られた。なおゲルの生成は、分散体の入ったサンプル管を倒立させた際に溶液 の落下が見られな ヽ場合を、ゲルイ匕した状態として判定した。
[0116] ゲル調製の際の各成分の配合比は目的に応じて適宜決定することができ、溶媒に 対してイオン性有機化合物 1 'C1の重量比率が 1〜: L0重量%、単層カーボンナノチュ ーブの重量比率が 0. 001〜0. 3重量%の範囲において、カーボンナノチューブ分 散ゲルを容易に調製することができることを確認した。
[0117] 実施例 12 (イオン性有機化合物を用いた単層カーボンナノチューブ分散薄膜の作 成)
先の実施例 10で調製した単層カーボンナノチューブ分散溶液 (2ml)を石英基板 上に展開し、室温、空気中で 12時間乾燥させて、カーボンナノチューブ含有薄膜を 得た。基板上への展開方法としては上記のキャスト法とした力 スピンコート法でも作 製することができることを確認した。
図 19は、作製したカーボンナノチューブ含有薄膜の蛍光スペクトルである。この図 から、薄膜の蛍光スペクトル(励起波長: 662nm)〖こより、 900— 1400nmの波長範 囲に、孤立分散した単層カーボンナノチューブの場合にのみ観測される、特徴的な 発光ピークが観察できた。したがって、薄膜化後も単層カーボンナノチューブが分子 レベルで相互に分散して 、ることが確認できた。