JPWO2020171192A1 - 植物細胞のゲノム編集用核酸及びその用途 - Google Patents

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Abstract

本発明は、(1)トランスポゾン、及び(2)植物細胞の有する二本鎖DNAの標的領域の少なくとも一部に相同な配列を含む核酸であって、該トランスポゾンが、マーカー遺伝子、及び誘導性プロモーターに作動可能に連結されたトランスポザーゼをコードする遺伝子を含む、核酸を提供する。

Description

本発明は、トランスポゾンを含む植物細胞のゲノム編集用核酸、及び該核酸を用いて、二本鎖DNAの標的領域に変異を有する植物細胞を製造する方法に関する。
近年の急激な人口増加や気候変動など、農業事情が急変する中で食糧増産や環境改善を推進するため、迅速かつ汎用性の高い新規植物育種技術が求められている。その代表例が、ランダムな遺伝子組換えを利用した分子育種であるが、従来の植物遺伝子組換え技術では、目的とする遺伝子とともに抗生物質耐性遺伝子等のマーカー遺伝子を植物ゲノム中に組み込む必要があり、それら外来の遺伝子が植物ゲノム中のどの領域に何コピー組み込まれるかを制御することができないとの課題が存在する。この課題を解決するため、TALENやCRISPR/Cas等の人工ヌクレアーゼを利用したゲノム編集技術が着目されている(例えば、非特許文献1)。これらのゲノム編集技術では、主に、植物ゲノム中の標的DNAで二重鎖切断(Double strand break: DSB)を引き起こすことにより、該植物細胞における非相同末端結合 (Non homologous end joining: NHEJ)修復機構を誘引し、その過程にてランダムに生じる変異により、標的遺伝子の機能が喪失する。標的遺伝子を設計通りに改変するためには、人工ヌクレアーゼによりDSBが生じた領域に鋳型DNAを供給し、相同組換え(Homologous recombination: HR)により植物ゲノム側へ組み込むが、高等植物ではNHEJに対してHRの頻度が極めて低い上(非特許文献2)、同一細胞内で人工ヌクレアーゼの発現と鋳型DNAの供給を両立する必要があり、未だ技術的障壁が高い。また、人工ヌクレアーゼを用いる場合は、標的遺伝子以外にもDSBを引き起こすoff-target効果や、それに起因する大規模な構造変異の可能性も不可避である。さらに、人工ヌクレアーゼ等をRNA及びタンパク質にて高等植物細胞へ導入する事は非常に困難であり、従ってゲノム編集技術を利用するためには、必要な遺伝子群を予めDNAとして植物ゲノム中に組み込み、発現させる必要がある。
従来の遺伝子組換え、又はゲノム編集技術により得られた改変植物体を新品種として展開するためには、ゲノム中に含まれる人工的なDNA配列を除去する必要がある。その主な対応策の一つとして、遺伝分離を利用する手法があるが、人工交配等が必要であり、数年間におよぶ植物育成が必要となる。また、栄養繁殖性の植物には適用不可能である。一方、部位特異的組換え技術を利用して人工的なDNA配列を削除する手法として、バクテリオファージP1由来のCre-loxPや酵母由来のFLP-FRPシステム等が知られるが(例えば、非特許文献3)、これらは数十bpの外来DNA配列が痕跡として植物ゲノム中に残るとの課題を有する。
Jung C. et al., Plant Breeding, 137:1-9 (2018) Paszkowski J. et al., EMBO J., 7(13):4021-4026 (1988) Dang T.T. et al., Plant Cell Physiol, 54(12):2058-2070 (2013)
従って、本発明の課題は、外因性の人工的なDNA配列の痕跡を残すことなく植物ゲノム中に変異を導入することが可能な、精緻かつ迅速な植物育種技術を提供することを課題とする。
本発明者らは、Cre-loxPを用いた、ポジティブ−ネガティブ選択法に基づく遺伝子ターゲティング法を改良し、Cre-loxPの代わりに改変型トランスポゾンを応用した自律的なマーカー削除機構を組み込むことで、標的遺伝子改変の成功頻度を向上させ、さらに必要工数の短縮化を両立することができるのではないかとの着想を得た。その着想に基づき研究を進めた結果、Ac/Dsシステムを用いることで、一度の遺伝子組換え操作で、自律的に二段階の標的遺伝子改変を行うことができ、該改変後のゲノムには、外因性の遺伝子を、その痕跡を残すことなく除去することができること、しかもこの方法によれば、わずか10ヶ月程度で有用な表現型を有する新規な植物系統を作出できることを見出した。本発明者らは、これらの知見に基づいてさらに研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は以下の通りである。
[1](1)トランスポゾン、及び
(2)植物細胞の有する二本鎖DNAの標的領域の少なくとも一部に相同な配列
を含む核酸であって、
該トランスポゾンが、マーカー遺伝子、及び誘導性プロモーターに作動可能に連結されたトランスポザーゼをコードする遺伝子を含む、核酸。
[2]前記トランスポゾンが、Dsエレメント、Acエレメント、Spm-sエレメント、En1エレメント、Spm-I8(dSpm)エレメント、Muエレメント、Tam1エレメント、Tam2エレメント、Tam3エレメント、nDartエレメント、Dartエレメント及びPiggyBacエレメントからなる群から選択されるトランスポゾンに由来する、[1]に記載の核酸。
[3]前記トランスポゾンがDsエレメント又はAcエレメントに由来し、かつ前記トランスポザーゼがAcTPase又はその改変体である、[1]又は[2]に記載の核酸。
[4]前記マーカー遺伝子が蛍光タンパク質をコードする遺伝子を含む、[1]〜[3]のいずれかに記載の核酸。
[5]前記誘導性プロモーターが熱ショック誘導性プロモーターである、[1]〜[4]のいずれかに記載の核酸。
[6]二本鎖DNAの標的領域に変異を有し、かつ外因性のトランスポゾン及びトランスポザーゼをコードする遺伝子のいずれも有さない植物細胞を製造する方法であって、
(1)[1]〜[5]のいずれかの核酸が導入された植物細胞を選択する工程、
(2)工程(1)で選択された植物細胞を、誘導性プロモーターが活性化する条件下で培養する工程、及び
(3)工程(2)で培養された植物細胞を含む集団から、マーカータンパク質の発現が消失した細胞を選択する工程
を含む、方法。
[7]前記植物細胞が単子葉植物の細胞である、[6]に記載の方法。
[8]前記単子葉植物がイネ科植物である、[7]に記載の方法。
[9][6]〜[8]のいずれかに記載の方法により得られた植物細胞、又は該細胞を含む植物体。
本発明の植物ゲノム編集技術によれば、一度の遺伝子組換え操作で、自律的に二段階の標的遺伝子改変を実現することができる。即ち、一次改変では、相同組換えを介した遺伝子ターゲティングにより広範囲のDNA配列をデザイン通りに改変し、二次改変ではトランスポゾンシステムにより、トランスポゾンやトランスポザーゼをコードする遺伝子などの人工的なDNA配列が自律的に除去される。このようにして作製された、人工的なDNA配列が除去された植物は、カルタヘナ法の対象外となり得るという有利な効果も奏する。上記二次改変により外因性のトランスポゾンやトランスポザーゼなどを除去することができるため、従来技術のように、前記外因性因子を除去するための、多重形質転換体の作製や、野生型と戻し交配を行う必要もない。従って、本ゲノム編集技術は標的遺伝子だけを精緻かつ迅速に改変可能であるため、実用的な植物育種技術として極めて有用である。
図1は、熱ショック誘導性のAc/Ds−媒介型(Ac/Ds-mediated)マーカー切除システムの評価に用いたバイナリーベクターのT-DNA構造を示す。(A)pZEN30PCコンストラクトの概略図。図中、p35Sはカリフラワーモザイクウイルス(CaMV)35Sプロモーター(配列番号37又は38で示される配列)を、GUSPlusはβ-グルクロニダーゼ遺伝子を、iCATはヒマCatalaseのイントロン1、tNOSはノパリン合成酵素ターミネーターを、pAct1及びiAct1はイネActin1のイントロンを有するイネActin1プロモーター(配列番号43で示される配列)を、hptはハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼ遺伝子を、t35SはCaMV 35Sターミネーター(配列番号40又は41で示される配列)を示す。(B)pZEN30NCコンストラクトの概略図。図中、ΔEnはトウモロコシEn/Spmトランスポゾン由来の機能的な転写停止配列を、Ds_5及びDs_3はトウモロコシAcエレメントの300bpの末端領域を示す。(C)pZEN31Eコンストラクトの概略図。図中、pHSPはイネの熱ショックタンパク質であるOshsp16.9Cのプロモーター領域を、NLSはSV40ラージT抗原の核移行シグナルを、AcTPase4xOs-intはイントロンを有する亢進型AcTPaseのコドン最適化ORFを、RB及びLBはそれぞれ右側及び左側の境界配列を示す。 図2は、イネのカルスにおける熱ショック誘導性のAc/Ds−媒介型マーカー切除システムの評価方法及びその結果を示す。(A)pZEN31Eを用いたGUSレポーターアッセイの模式図。転写ターミネーターとしてΔEnを挿入することで、GUSPlusを機能的に破壊した。Ds_5及びDs_3はトウモロコシAcエレメントの300bpの末端領域を示す。(B)除去ユニット(removal unit)の熱ショック誘導性のAc/Ds−媒介型切除の頻度及び挙動は、GUS-レポーターアッセイによって視覚化することができる。水平矢印として示したプライマー(表5)を用いたPCR分析により、切除を確認することができる。(C)形質転換したイネのカルスのPCR分析結果。PCRで増幅された断片は、pZEN30NC及び31EのT-DNA領域から、除去ユニットが熱ショック誘導性に切除されたことを表す。(D)X-Glucを用いた組織化学的染色による、遺伝子組換えイネカルスのGUS-レポーターアッセイの結果。 図3は、イネカルスにおける自律的なマーカーの切除システムを有する遺伝子ターゲティングベクターの設計及びコンストラクトを示す。(A)改変されることとなる遺伝子のモデル。(B)相同領域(homology region)のクローニング。Ds_5(配列番号34で示される配列)及びDs_3(配列番号35で示される配列)は、AcTpase4xOsトランスポザーゼによるマーカー切除に必要なAcエレメントの末端領域である。(C)ポジティブマーカー遺伝子(Hmr)を含む、除去ユニットを有する相同領域。(D)gateway LR反応による熱ショック誘導性のAcTPase4xOsと、構成的活性型EGFPとの、gateway LR反応による統合。(E)自律的なマーカーの切除システムを有する遺伝子ターゲティングベクターの完成図。構築した成分は、構成的プロモーターの制御下で、2つのジフテリア毒素Aサブユニット遺伝子(DT-A)(配列番号39で示される配列)間で移転する。 図4は、相同組換えに媒介される遺伝子ターゲティングによる、OsClpP5の一次改変を示す。(A)イネゲノム中のOsClpP5遺伝子。白色ボックスと黒色ボックスは、それぞれ非翻訳領域(UTR)及びエキソンを示す。(B)遺伝子ターゲティングベクターであるpOsClpP5KO-AcDsの構造。左右のバーは、ベクターにより運ばれる相同領域に対応するDNA配列を表す。5'-相同領域の星は、新規なPvuII部位と、OsClpP5のイントロン1のスプライスドナー部位の破壊をもたらす所望の変異の位置を示す。(C)遺伝子ターゲティングにより改変されたOsClpP5の構造。Clp 5J及びClp 3Jでマークした水平の線は、相同組換えにより作製された5'及び3'接合断片を示す。隣接する黒色の矢印は、標的のカルス系統のPCRスクリーニングに用いたプライマーを示す(表1)。(D)遺伝子ターゲティングの標的(Gene-Targeted:GT)カルス系統のPCRスクリーニング結果。PはClp 5J又はClp3Jを含む対照プラスミド(図4C)を、Nは非形質転換のイネ品種「日本晴」のカルスを、レーン1-8はpOsClpP5KO-AcDsで形質転換されたGTカルスを示す。(E)GTカルス中のEGFP発現。スケールバー:2.5mm。 図5は、熱ショック誘導性のAc/Dsシステムにより改変されたOsClpP5からの、ポジティブマーカーの切除を示す。(A)GTカルスにおける標的のOsClpP5遺伝子のヘテロ接合の状態。黒色の矢印は、除去ユニットの存在を検出するためのPCR分析に用いたプライマーを示す(表1)。(B)Ac/Dsに媒介された除去ユニットの切除後の、改変されたOsClpP5遺伝子。黒色の矢印は、CAPS及びDNAのシーケンシング分析に用いたプライマーを示す(表1及び図6A)。(C)熱ショック処理後の、GTカルス系統の経時的な増殖。EGFPシグナルのない増殖性の細胞系統を、点線で囲んだ。スケールバー:2.5mm。(D)GTカルス系統における除去ユニットの存在。矢印は、プライマーのペア(En No.2-F/pHSP J-R)(表1及び図5A)を用いたPCRにより増幅したDNA断片を示す。EGFPシグナルの有無に関わらず、増殖性のカルスを分析に用いた。 図6は、T0植物への改変されたOsClpP5遺伝子の伝達(transfer)を示す。(A)T0植物における標的領域のCAPS分析。プライマーのペア(Clp Ex F-6/Clp Ex-R)(表1、図5B)は、OsClpP5 イントロン1の領域(0.92kb)を含む特有のPCR断片を増幅する。改変されたOsClpP5 KO遺伝子に由来するPCR増幅産物を、PvuIIにより2つの断片(0.56kb及び0.36kb)に消化した。WTは、野生型の「日本晴」植物を示す。(B)OsClpP5遺伝子座のサンガーシーケンシングのスペクトル。矢印は、重複した、異型遺伝子性の変異を示す。(C)T0植物の根組織におけるEGFP発現。野生型、及び熱ショック処理を行った、又は行わなかったGTカルス系統に由来する再分化体を示す。スケールバー:1.25mm。(D)T0植物における除去ユニットの存在。PはコントロールプラスミドであるpOsClpP5KO-Con5を、Nは非形質転換の「日本晴」のカルスを示す。 図7は、T0OsClpP5 KO植物の生育状況を示す。(A)出穂期のT0植物。左:野生型の「日本晴」。中:熱ショック処理を行わなかったカルス系統由来のOsClpP5 KO T0植物。右:熱ショック処理を行ったカルス系統由来のOsClpP5 KO T0植物。スケールバー:12.5cm。(B)T0植物の草高に対する熱ショック処理の相対的効果。種子から発芽した野生型植物、及びマーカーフリーのカルス系統から再分化したT0植物の高さを、各植物の出穂期で測定した。横軸の数字は、熱ショック処理時間の長さを示す。0分は熱ショック処理なしを、40分、60分、90分は、Ac/Ds−媒介型マーカー切除のために、42℃に維持した時間を示す。各ドットは個々の植物を示す。(C)T0植物の種子稔性に対する熱ショック処理の相対的効果。各植物の稔性は、2つの穂の稔性を平均することにより評価した。 図8は、T1世代における改変されたOsClpP5遺伝子の遺伝及び分離を示す。(A)ヘテロ接合型のOsClpP5 KO変異を有するT0植物に由来するT1植物における表現型の分離。(B)ホモ接合型のosclpp5変異を有する分離したアルビノ植物。スケールバー:5mm。(C)分離したアルビノ植物における除去ユニットの存在。PはコントロールプラスミドであるpOsClpP5KO-Con5を、WTは野生型の「日本晴」植物を示す。(D)分離した植物における標的領域のCAPS分析の結果。レーン1-3は分離した野生型植物、レーン4-6はヘテロ接合型の植物、レーン7-9はアルビノの表現型を示すホモ接合型のosclpp5植物を示す。塗りつぶした矢印は、PvuII部位を有さないPCR増幅産物を指す。白抜きの矢印は、アルビノ植物から増幅し、PvuIIで消化した断片を指す。(E)OsClpP5遺伝子座のサンガーシーケンシングのスペクトル。矢印は導入された変異を示す。 図8は、T1世代における改変されたOsClpP5遺伝子の遺伝及び分離を示す。(F)アルビノの表現型を示すosclpp5破壊株間で検出されたAc/Ds−媒介型マーカー切除のフットプリント配列。 図9は、相同組換えに媒介される、遺伝子ターゲティングによるOsRacGEF1の一次改変を示す。(A)イネゲノム中のOsRacGEF1遺伝子。(B)遺伝子ターゲティングベクターであるpGEF1S549D-AcDsの構造。白色ボックスと黒色ボックスは、それぞれ非翻訳領域(UTR)及びエキソンを示す。左右のバーは、ベクターにより運ばれる相同領域に対応するDNA配列を表す。5'-相同領域の星は、OsRacGEF1タンパク質のS549Dアミノ酸置換をもたらす所望の変異の位置を示す。矢印は、S549D変異に隣接する新規なBssHII部位を指す。(C)遺伝子ターゲティングにより改変されたOsRacGEF1の構造。GEF 5J及びGEF 3Jでマークした水平の線は、相同組換えにより作製された5'及び3'接合断片を示す。隣接する黒色の矢印は、標的のカルス系統のPCRスクリーニングに用いたプライマーを示す(表2)。(D)GTカルス系統のPCRスクリーニング結果。PはGEF 5J又はGEF 3Jを含む対照プラスミド(図9C)を、Nは非形質転換の「金南風(きんまぜ)」のカルスを、レーン1-8はpGEF1S549D-AcDsで形質転換されたGTカルスを示す。 図10は、熱ショック誘導性のAc/Dsシステムによる改変されたOsRacGEF1からの、ポジティブマーカーの切除を示す。黒色の矢印は、除去ユニットの存在を検出するためのPCR分析に用いたプライマーを示す(表2)。(A)Ac/Ds−媒介型除去ユニットの切除前の、改変されたOsRacGEF1遺伝子。(B)Ac/Ds−媒介型除去ユニットの切除後の、改変されたOsRacGEF1遺伝子。黒色の矢印は、CAPS及びDNAのシーケンシング分析に用いたプライマーを示す(表2)。(C)熱ショック処理後の、GTカルス系統の経時的な増殖。EGFPシグナルのない増殖性の細胞系統を、点線で囲んだ。スケールバー:2.5mm。(D)OsRacGEF1 S549D GT T0植物のPCR及びCAPS分析。除去ユニットの存在を、プライマーのペア(En No.2-F/pHSP J-R)(表2及び図10A)を用いてPCRにより分析した。所望の変異を含むDNA断片を、プライマーのペア(GEF Ex F-5/GEF Ex-R)を用いたPCRにより増幅し、BssHIIで消化した。塗りつぶした矢印は、未改変のOsRacGEF1からのPCR増幅産物を指す。白抜きの矢印は、改変された標的から増幅したBssHIIで消化した断片を指す。PはコントロールプラスミドであるpGEF1S549D-Conを、Nは非形質転換の「金南風」のカルスを示す。(E)OsRacGEF1遺伝子座のサンガーシーケンシングのスペクトル。矢印は導入された変異を示す。 図11は、OsRacGEF1 S549D改変体カルスの標的領域をクローニングシークエンス解析した結果を示す。 図12は、本発明の核酸を導入したカルスから、T1植物作製までのフローチャートを示す。 図13は、本発明の核酸を導入したカルスから、T1植物作製までの間に生じる遺伝子改変のフローチャートを示す。 図14は、clpP5-Δspl二次改変カルス由来T1イネ発芽葉におけるRNA発現解析の結果を示す。A: OsClpP5改変系統のT1世代における遺伝子型とmRNAの模式図。B: OsClpP5改変体のmRNA配列の一部。TGA: ストップコドン, 小文字: 第1イントロンを示す。C: OsClpP5 cDNAの電気泳動像。WT: Wild type, HT: Hetero, HM: Homoを示す。 図15は、OsClpP5改変体T1植物体のcDNA配列を示す。A: T1世代にて分離した野生型植物体におけるOsClpP5遺伝子のスプライシング模式図。B: T1世代にて分離した野生型植物体のOsClpP5遺伝子及びcDNAの塩基配列。C: osclpP5ホモ接合型におけるスプライシング模式図。D: osclpP5ホモ接合型における遺伝子及びcDNAの塩基配列。
1.植物細胞のゲノム改変用核酸
本発明は、トランスポゾンを含む植物細胞のゲノム改変用核酸(以下「本発明の核酸」と称することがある)を提供する。前記トランスポゾンには、マーカー遺伝子、及びトランスポザーゼをコードする遺伝子(ヌクレオチド配列)を含む(これらの配列を含むトランスポゾンを、「本発明のトランスポゾン」と称することがある)。また、本発明の核酸には、植物細胞内の標的領域と相同組換えを生じさせるための、該標的領域の少なくとも一部に相同な2種類の領域(即ち、標的領域中の上流側及び下流側の領域)(以下、「相同領域」と呼ぶことがあり、各相同領域を区別する場合には、「5’相同領域」及び/又は「3’相同領域」ということがある)を含む。以下では、前記トランスポゾンと相同領域とからなる領域を、「組換え配列」と称することがある。植物細胞の定義、植物の種類等については、下記2.に記載の通りである。
本明細書において、「トランスポゾン」とは、トランスポザーゼにより除去されるDNA配列を意味し、該トランスポゾンの両端には、トランスポザーゼにより認識される、末端逆向き反復配列(terminal inverted repeat:TIR)が配置される。本発明に用いるトランスポゾンシステムとしては、植物細胞に導入された該トランスポゾンが、該植物細胞のゲノム中に痕跡を残すことなく除去できる限り特に制限されないが、例えば、DNA型トランスポゾンシステムが挙げられる。前記DNA型トランスポゾンシステムとしては、例えば、トウモロコシ、シロイヌナズナ、タバコ、トマト又はペチュニア由来のAc/Dsシステム、トウモロコシ、シロイヌナズナ又はダイズ由来のEnSpm/CACTAシステム、トウモロコシ由来のMuシステム、キンギョソウ由来のTam1/Tam2システム、Tam3システム、イネ由来のDart/nDartシステム、Trichoplusia ni由来PiggyBacシステムなどが挙げられる。従って、本発明に用いるトランスポゾンとしては、例えば、Ac/DsシステムのDs(Dissociation) エレメント(例:Ds1、Ds2、Ds6)、Ac(Activator)エレメント;EnSpm/CACTAシステムのSpm-sエレメント、En1エレメント、Spm-I8(dSpm)エレメント等;MuシステムのMuエレメント(例:Mu1、Mu1.7、Mu7等);Tam-1/Tam-2システムのTam1エレメント、Tam2エレメント等;Tam3システムのTam3エレメント等;Dart/nDartシステムのDartエレメント、nDartエレメント;PiggyBacエレメントなどの天然型のトランスポゾンに、又は該天然型のトランスポゾンの配列の少なくとも一部を改変したトランスポゾン(人工型トランスポゾンともいう)に、マーカー遺伝子、及びトランスポザーゼをコードする遺伝子を挿入した、並びに/又はこれらの遺伝子の配列により該トランスポゾンの一部を置換した配列が挙げられる。上記人工型トランスポゾンとしては、例えば、上記エレメントを組み合わせたもの(例:DsエレメントのTIR及びサブターミナル(subterminal)領域を、AcエレメントのTIR及びサブターミナル領域で置換した配列)などが挙げられる。本明細書において、天然型又は人工型のトランスポゾンに対して、上述のように配列の挿入や置換などの改変が施されたトランスポゾン、あるいは各トランスポザーゼに認識されるTIRを含む任意の配列を、各天然型のトランスポゾンに由来するトランスポゾンと称する。例えば、天然型又は人工型のDsエレメントに改変を施したトランスポゾンを、Dsエレメントに由来するトランスポゾンと称する。また、本発明に用いるトランスポザーゼとしては、上記トランスポゾンを除去することができれば特に制限されないが、Dsエレメント及びAcエレメントを除去できるAcTPase(Genebank Accession No: X05424.1)、PiggyBacエレメントを除去できるPBase(Genebank Accession No: EF587698.1)、上記の各天然型のトランスポゾンの一部にコードされるトランスポザーゼなどが挙げられる。
また、トランスポザーゼは、野生型でもよく、トランスポゾンを除去する活性を有するその改変体であってもよい。トランスポザーゼの改変体としては、野生型のトランスポザーゼのアミノ酸配列において、1若しくは数個(例:2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個)のアミノ酸が置換、欠失、付加、及び/又は挿入されたアミノ酸配列からなる、トランスポゾン除去活性を有するタンパク質、あるいは上記アミノ酸配列と90%以上(例:91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又はそれ以上)の同一性を有するアミノ酸配列からなる、トランスポゾン除去活性を有するタンパク質が挙げられる。トランスポザーゼの改変体としては、例えば、AcTPaseの改変体として、4アミノ酸残基を置換することで(即ち、E249A/E336A/D459A/D545A)、トランスポゾン除去活性が向上したAcTPase4x(Lazarow K. et al., Genetics, 191(3):747-756 (2012))が挙げられる。
アミノ酸配列の同一性は、次の条件下(expectancy =10; gap allowed; matrix=BLOSUM62; filtering=OFF)で、相同性計算アルゴリズムのNCBI BLAST(National Center for Biotechnology Information Basic Local Alignment Search Tool)(https://blast.ncbi.nlm.nih.gov/Blast.cgi)を用いて計算することができる。同一性を決定するため、トランスポザーゼの全長の配列を別の配列と比較する。
本発明者らは、トランスポザーゼとしてAcTPaseを用いる場合には、トランスポゾンの領域の両端に接する片方の鎖の塩基を、その相補的な塩基と入れ替える(例えば、一端に接する塩基対がA:Tの場合は、T:Aに入れ替え、G:Cの場合は、C:Gに入れ替える)ことで、痕跡を残さずに該トランスポゾンを除去できることを見出した。従って、トランスポザーゼとしてAcTPaseを用いる場合には、トランスポゾンを植物細胞のゲノム中に痕跡を全く残すことなく除去するためには、トランスポゾンの領域の両端に接する片方の鎖の塩基を、その相補的な塩基と入れ替えることが通常必要となる。また、トランスポザーゼをコードする遺伝子には、植物細胞で機能し得る核移行シグナル(NLS)をコードする配列(例:SV40由来NLSコード配列(配列番号33で示される配列))が付加されていることが望ましい。
本明細書において、トランスポゾンが植物細胞のゲノム中に痕跡を残さないには、該ゲノム中にトランスポゾンの痕跡(例えば、該トランスポゾン、トランスポザーゼをコードする配列、トランスポゾンの除去により生じるフットプリントなど)が全く認められない場合だけでなく、10以下(例:9、8、7、6、5、4、3、2、又は1)のヌクレオチド残基の欠失、置換及び/又は挿入が認められる場合も包含されるものとする。
本発明のトランスポゾンの両端に位置するTIRは、トランスポザーゼの種類に応じて適宜選択することができる。具体的には、AcTPaseを用いる場合には、一方の末端のTIRの配列として、例えば、CAGGGATGAAA(配列番号1)、TAGGGATGAAA(配列番号2)、GAGGGATGAAA(配列番号3)、TAGAGATGAAA(配列番号4)、GAGCTATGAAA(配列番号5)などが挙げられ、もう一方の末端のTIRの配列として、TTTCATCCCTA(配列番号6)、TTTCATCTGAG(配列番号7)、TTTCATCCCTA(配列番号8)、TTTCATCCCTG(配列番号9)、TTTCATCTCTA(配列番号10)などが挙げられ、これらを適宜組み合わせて用いることができる。上記組み合わせとしては、例えば、配列番号1で示される配列/配列番号6で示される配列、配列番号1で示される配列/配列番号7で示される配列、配列番号2で示される配列/配列番号8で示される配列、配列番号2で示される配列/配列番号9で示される配列、配列番号2で示される配列/配列番号10で示される配列、配列番号3で示される配列/配列番号9で示される配列、配列番号4で示される配列/配列番号8で示される配列、配列番号5で示される配列/配列番号8で示される配列などが挙げられる。EnSpm/CACTAシステムを用いる場合には、一方の末端のTIRの配列として、例えば、CACTACAAGAAAA(配列番号11)、CACTACAACAAAA(配列番号12)、CACTACAAAAAAA(配列番号13)、CACTATAAGAAAA(配列番号14)、CACTACGCCAAAA(配列番号15)、CACTACCGGAATT(配列番号16)などが挙げられ、もう一方の末端のTIRの配列として、前記各配列の相補配列(配列番号17〜22)が挙げられる。PiggyBacシステムを用いる場合には、一方の末端のTIRの配列として、例えば、CCCTAGAAAGATA(配列番号23)、CCCTAGAAAGATAGTCTGCGTAAAATTGACGCATG(配列番号24)、CATGCGTCAATTTTACGCAGACTATCTTTCTAGGG(配列番号25)などが挙げられ、もう一方の末端のTIRの配列として、前記各配列の相補配列(配列番号26〜28)が挙げられる。上記の具体的な配列は例示であり、トランスポゼースに認識される限り、上記配列と高い同一性(例:90%以上)を示す配列も、TIRとして用いることができる。また、上記で挙げたトランスポゾンシステム以外のものを用いる場合にも、当業者であれば適宜配列を選択することができる。
また、本発明のトランスポゾンの一端又は両端には、上記のTIRの他に、トランスポザーゼに結合される、該TIRに隣接するサブターミナル領域(STR)が含まれていてもよい。STRは、通常100〜300bpからなる。トランスポザーゼとしてAcTPaseを用いる場合には、該STRには、例えば、AcTPaseの結合に必要なAACGGからなる配列を少なくとも1つ(好ましくは3つ以上)含むことが好ましい。好ましい実施態様において、IVR及びSTRを含むトランスポゾンは、その一方の末端に、配列番号34で示される配列(本明細書では、便宜上「Ds_5」と称する)を有し、もう一方の末端に、配列番号35で示される配列(本明細書では、便宜上「Ds_3」と称する)を有するトランスポゾン、あるいはこれらの配列と高い同一性(例:90%以上、95%以上、96%、97%、98%、99%又はそれ以上)を有する配列を有するトランスポゾンなどが挙げられる。STRは、トランスポザーゼの種類に応じて、当業者であれば適宜配列を選択することができる。
本発明のトランスポゾンのヌクレオチド数としては、トランスポザーゼにより切り出され得るヌクレオチド数であればよく、後述のマーカー遺伝子やトランスポザーゼ等のヌクレオチド数にもよるが、通常1500〜10000ヌクレオチドであり、好ましくは3000〜8000ヌクレオチドである。
本明細書において、「標的領域」とは、組換え配列と相同組換えが生じる植物細胞のゲノム上の領域を意味する。組換え配列の5’相同領域及び3’相同領域の少なくとも一方に、あらかじめ所望の変異を導入しておき、該変異を有する配列と標的領域とで相同組換えを生じさせることで、植物細胞の標的領域に所望の変異を導入することができる。標的領域は、植物細胞のゲノム上の領域から任意に選択することができ、タンパク質をコードする領域であってもよく、機能性RNA等のノンコーディングRNAをコードするDNAであってもよい。あるいは、標的領域は、タンパク質やノンコーディングRNAをコードしていない領域(UTR等)のみならず、タンパク質をコードする転写産物やノンコーディングRNAの発現や染色体構造を調節する領域であってもよい。また、標的領域は、通常内因性のものであるが、植物細胞のゲノムDNAに外来的に挿入されているDNAであってもよい。
相同領域の配列は、標的領域の少なくとも一部の領域と完全に同一な配列であってもよいが、植物細胞内で相同組換えが起こり得る限り、完全に同一な配列に対して、好ましくは80%以上(例:85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上)の同一性を有する配列であってもよい。
また、相同領域のヌクレオチド数としては、該相同領域と標的領域との間で相同組換えが生じ得る数であればよく、通常、トランスポゾンの両側には各々、500〜7000ヌクレオチド(好ましくは1000〜5000ヌクレオチド、より好ましくは1500〜4000ヌクレオチド、さらに好ましくは約3000ヌクレオチド(例えば、2500〜3500ヌクレオチド))からなる相同領域が付加される。
標的領域に導入される「変異」としては、特に制限はなく、ナンセンス変異、フレームシフト変異、挿入変異又はスプライス部位変異等のヌル変異であってもよく、サイレント変異であってもよい。また、標的領域における変異としては、例えば、該領域における、1個又は複数個(例:2、3、4、5、6、7、8、9、10個又はそれ以上)のヌクレオチドの欠失、置換、付加及び/又は挿入が挙げられる。また、変異は1箇所のみに導入されてもよいし、複数箇所(例:2、3、4、5箇所又はそれ以上)に導入されてもよく、複数箇所に導入される場合、各変異導入部位は、近接してもよく、あるいは数百又は数千塩基程度離れていてもよい。
トランスポゾンに含まれる「マーカー遺伝子」は、その発現が、組換え配列が導入された少数の形質転換細胞を非形質転換細胞の中から選択するための指標となるものであればよく、例えば、レポーター遺伝子(例:蛍光タンパク質をコードする遺伝子、発光タンパク質をコードする遺伝子、蛍光、発光又は呈色を補助するタンパク質をコードする遺伝子)、薬剤耐性遺伝子などが挙げられる。マーカー遺伝子は、1種類のみ用いてもよいし、2種類以上(例えば、蛍光タンパク質をコードする遺伝子と薬剤耐性遺伝子とを組み合わせて)用いてもよい。2種以上用いることで、偽陽性をより減少させることができる。本明細書において、マーカー遺伝子にコードされるタンパク質を、「マーカータンパク質」と称することがある。
蛍光タンパク質としては、例えば、Sirius、TagBFP、EBFP等の青色蛍光タンパク質;mTurquoise、TagCFP、AmCyan、mTFP1、MidoriishiCyan、CFP等のシアン蛍光タンパク質;TurboGFP、AcGFP、TagGFP、Azami-Green (例:hmAG1)、ZsGreen、EmGFP、EGFP、GFP2、HyPer等の緑色蛍光タンパク質;TagYFP、EYFP、Venus、YFP、PhiYFP、PhiYFP-m、TurboYFP、ZsYellow、mBanana等の黄色蛍光タンパク質;KusabiraOrange (例:hmKO2)、mOrange等の橙色蛍光タンパク質;TurboRFP、DsRed-Express、DsRed2、TagRFP、DsRed-Monomer、AsRed2、mStrawberry等の赤色蛍光タンパク質;TurboFP602、mRFP1、JRed、KillerRed、mCherry、HcRed、KeimaRed(例:hdKeimaRed)、mRasberry、mPlum等の近赤外蛍光タンパク質が挙げられるが、これらに限定されない。
発光タンパク質としては、例えばイクオリンが挙げられるが、これに限定されない。また、蛍光、発光又は呈色を補助するタンパク質として、例えば、ルシフェラーゼ、ホスファターゼ、ペルオキシダーゼ、βラクタマーゼ等の蛍光、発光又は呈色前駆物質を分解する酵素が挙げられるが、これらに限定されない。
薬剤耐性遺伝子としては、例えば、ハイグロマイシン耐性遺伝子(ハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼ遺伝子、hpt)、カナマイシン耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子等の薬剤耐性遺伝子、ALS(AHAS)遺伝子やPPO遺伝子等の除草剤耐性遺伝子が挙げられる。中でも、イネカルスを用いた形質転換において、その選択効率が高いという観点から、ハイグロマイシン耐性遺伝子が好ましい。
また、本発明の核酸は、標的領域以外の領域に、該核酸の一部又は全部の領域が意図せずに挿入された細胞を取り除くため、組換え配列以外の領域にネガティブマーカー遺伝子を含んでいることが好ましい。従って、本発明の一態様において、(1)本発明のトランスポゾン、(2)相同領域、及び(3)ネガティブマーカー遺伝子を含む核酸が提供される。上記ネガティブマーカー遺伝子としては、例えば、ジフテリア毒素タンパク質A鎖遺伝子(DT-A)、Exotoxin A遺伝子、Ricin toxin A遺伝子、codA遺伝子、シトクロムP-450遺伝子、RNase T1遺伝子及びbarnase遺伝子が挙げられるが、これらに限定されない。
本発明の核酸には、上記マーカー遺伝子及び/又はネガティブマーカー遺伝子に、植物細胞内で該遺伝子がコードするタンパク質を発現させるための制御領域が作動可能に連結されている。該タンパク質を恒常的に発現させる場合には、制御領域として、例えば、カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)35Sプロモーター、ノパリン合成酵素遺伝子のプロモーター、トウモロコシ由来のポリユビキチン1プロモーター、イネ由来のアクチンプロモーター、イネ由来の伸長因子1αプロモーター等のプロモーターと、該プロモーター等により誘導された遺伝子の転写を終結するためのターミネーター配列(イネ由来の熱ショックタンパク質17.3ターミネーター、イネ由来の熱ショックタンパク質16.9aターミネーター、イネ由来のアクチンターミネーター、ノパリン合成酵素遺伝子のターミネーター、オクトピン合成酵素(OCS)遺伝子のターミネーター、CaMV 35Sターミネーター等)、トウモロコシEn/Spmトランスポゾン(Enエレメント)に由来するΔEnターミネーター(Terada R. et al., Nat Biotechnol, 20(10):1030-1034 (2002))が挙げられる。さらに、遺伝子の発現効率を高めるために、ヒマCatalase遺伝子のイントロン1、CaMV 35Sエンハンサー、転写エンハンサーE12、オメガ配列等のエンハンサーも、前記制御領域には含まれていてもよい。
また、本発明の核酸には、上記トランスポザーゼをコードする遺伝子に、植物細胞内で該タンパク質を一過的に発現させるため、誘導性プロモーターが作動可能に連結されていることが好ましい。前記誘導性プロモーターとしては、例えば、薬剤によりトランスポザーゼの発現が誘導される薬剤誘導性プロモーター、刺激によりトランスポザーゼの発現が誘導される刺激誘導性プロモーター(例:光刺激でトランスポザーゼの発現が誘導される光誘導性プロモーター、熱ショックでトランスポザーゼの発現が誘導される熱ショック誘導性プロモーター等)などが挙げられる。好ましくは、熱ショック誘導性プロモーターである。また、本発明の核酸には、上述のターミネーターやエンハンサーが、トランスポザーゼの発現を制御するために繋がれていてもよい。
薬剤誘導性プロモーターとしては、TREプロモーター(ドキシサイクリン(Dox)、テトラサイクリン又はそれらの誘導体を接触させる、又は接触を解除することによりタンパク質の発現が誘導される)、メタロチオネインプロモーター(重金属イオンを接触させることによりタンパク質の発現が誘導される)、ステロイド応答性プロモーター(ステロイドホルモン又はその誘導体を接触させることによりタンパク質の発現が誘導される)などが挙げられる。光誘導性プロモーターとしては、例えば、リブロース2リン酸カルボキシラーゼ小サブユニット遺伝子(Rubisco)プロモーター(R. Fluhret al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 83:2358, 1986)、フルクトース−1,6−ビスホスファターゼ遺伝子のプロモーター(特表平7-501921号公報)、集光性クロロフィルa/b結合タンパク質遺伝子のプロモーター(特開平5-89号公報)、イネのLP2ロイシンリッチリピートレセプターキナーゼ遺伝子プロモーターが挙げられる(Plant Biotechnology Journal (2009)7, pp.1-16)が、これらに限定されない。熱ショック誘導性プロモーターとしては、例えば、イネ由来の熱ショックタンパク質(hsp)16.9A遺伝子のプロモーター、hsp 16.9B遺伝子のプロモーター、hsp 16.9C遺伝子のプロモーター、シロイヌナズナ由来のhsp 18.2遺伝子のプロモーター、ショウジョウバエ由来のhsp 70遺伝子のプロモーターが挙げられるが、これらに限定されない。
本発明の核酸は、自体公知の方法により作製することができ、例えば、トランスポゾン、トランスポザーゼ、標的領域などの公知のDNA配列情報に基づいて、当該配列の所望の部分をカバーするようにオリゴDNAプライマーを合成し、当該配列を有する細胞より調製した全RNAもしくはmRNA画分を鋳型として用い、RT-PCR法によって増幅することにより、クローニングすることができる。あるいは、化学的にDNA鎖を合成するか、もしくは合成した一部オーバーラップするオリゴDNA短鎖を、PCR法(オーバーラップPCR法)やGibson Assembly法を利用して接続することにより、その全長をコードするDNAを構築することも可能である。化学合成又はPCR法もしくはGibson Assembly法との組み合わせで全長DNAを構築することの利点は、該DNAを導入する宿主に合わせて使用コドンをCDS全長にわたり設計できる点にある。異種DNAの発現に際し、そのDNA配列を宿主生物において使用頻度の高いコドンに変換することで、タンパク質発現量の増大が期待できる。使用する宿主におけるコドン使用頻度のデータは、例えば(公財)かずさDNA研究所のホームページに公開されている遺伝暗号使用頻度データベース(http://www.kazusa.or.jp/codon/index.html)を用いることができ、又は各宿主におけるコドン使用頻度を記した文献を参照してもよい。入手したデータと導入しようとするDNA配列を参照し、該DNA配列に用いられているコドンの中で宿主において使用頻度の低いものを、同一のアミノ酸をコードし使用頻度の高いコドンに変換すればよい。例えば、宿主細胞がイネ細胞の場合、イネ等の単子葉植物、あるいはシロイヌナズナ等の被子植物一般のコドン使用に最適化されたトランスポザーゼをコードする遺伝子を使用することができる。例えば、イネでの発現に適したコドン使用を有するAcTPase4xとして、配列番号29で表されるヌクレオチド配列を有するDNA(アミノ酸配列を配列番号30で示す)が挙げられる。
本発明の核酸は、一本鎖DNAの形態であっても、二本鎖DNAの形態であってもよく、また、直鎖状DNAであっても、環状DNAであってもよい。本発明の核酸は、好ましくは、宿主細胞内で機能的な前記制御領域の制御下に配置した発現ベクターの形態で提供される。導入対象の植物細胞の種類に応じて、適した形態に調製することができる。
植物細胞で複製可能な発現ベクターとしては、植物細胞で機能する複製起点(例、Tiプラスミド、Riプラスミドのori等)を有するものであれば特に制限はないが、大腸菌の複製起点(例、ColE1 ori等)も有していることが好ましい。遺伝子導入法としてアグロバクテリウム法を用いる場合、通常、Tiプラスミド、Riプラスミドの病原性遺伝子を除いたT-DNA断片(境界配列RB(right border)(例えば、配列番号31で示される配列)及びLB(left border)(例えば、配列番号32で示される配列)を含む)をさらに含む必要がある。具体的なベクターとしては、例えば、pBI系、pPZP系又はpSMA系のベクターなどが挙げられ、また、より好適な形態として、バイナリーベクター系のベクター(pZHG、pKOD4、pBI121、pBI101、pBI101.2、pBI101.3、pBIG2113等)が挙げられる。
2.ゲノムが改変された植物細胞の製造方法
別の実施態様において、本発明は、上記1.の本発明の核酸が導入された植物細胞に対して、2段階の選択工程により、二本鎖DNAの標的領域に変異を有する植物細胞を製造する方法(以下「本発明の製法」と称することがある)を提供する。前記方法は、例えば、(1)本発明の核酸が導入された植物細胞を選択する工程、(2)工程(1)で選択された植物細胞を、誘導性プロモーターが活性化する条件下で培養する工程、及び(3)工程(2)で培養された植物細胞を含む集団から、マーカータンパク質の発現が消失した細胞を選択する工程を含む。かかる方法によって、後述の実施例において示す通り、植物細胞のゲノム中に、外因性のトランスポゾンや、トランスポザーゼをコードする遺伝子などの不要な人工的なDNA配列を残すことなく、あるいは該配列の残存を抑えて、必要な変異のみを導入することが可能となる。従って、本発明の製法により、二本鎖DNAの標的領域に変異を有し、外因性のトランスポゾン及びトランスポザーゼをコードする遺伝子のいずれも有さない、より好ましくは、さらにトランスポゾンの除去により生じるフットプリントも有さない植物細胞が製造される。言い換えれば、本発明により、トランスポゾンの痕跡がゲノム中に残らない植物細胞が製造される。即ち、従来技術のように、前記外因性因子を除去するための、多重形質転換体の作製や、野生型と戻し交配を行う工程を必要とせず、迅速に植物細胞のゲノムを改変することも可能となる。
本発明の核酸を導入する細胞の由来植物としては、特に制限はないが、単子葉植物又は双子葉植物が好ましい。単子葉植物としては、例えば、イネ科植物が挙げられ、該イネ科植物としては、Oryza、Triticum、Hordeum、Secale、Saccharum、Sorghum、又はZeaに属する植物が挙げられ、具体的には、トウモロコシ、モロコシ、コムギ、イネ、エンバク、オオムギ、ライムギ、アワが挙げられるが、これらに限定されない。好ましいイネ科植物は、トウモロコシ、コムギ及びイネである。コムギには、従来法では形質転換体を得ることが困難であったコムギ品種農林61号も含まれる。
双子葉植物としては、例えば、アブラナ科植物、マメ科植物、ナス科植物、ウリ科植物、ヒルガオ科植物が挙げられるが、これらに限定されない。アブラナ科植物としては、Raphanus、Brassica、Arabidopsis、Wasabia、又はCapsellaに属する植物が挙げられ、具体的には、ハクサイ、ナタネ、キャベツ、カリフラワー、大根、アブラナ、シロイヌナズナ、ワサビ、ナズナが挙げられるが、これらに限定されない。好ましいアブラナ科植物は、ハクサイ及びナタネである。マメ科植物としては、例えば、ダイズ、アヅキ、インゲンマメ、ササゲが挙げられるが、これらに限定されない。好ましいマメ科植物は、ダイズである。ナス科植物としては、例えば、トマト、ナス、バレイショが挙げられるが、これらに限定されない。好ましいナス科植物は、トマトである。ウリ科植物としては、例えば、マクワウリ、キュウリ、メロン、スイカが挙げられるが、これらに限定されない。好ましいウリ科植物は、マクワウリである。ヒルガオ科植物としては、例えば、アサガオ、カンショ、ヒルガオが挙げられるが、これらに限定されない。好ましいヒルガオ科植物は、カンショである。
さらに、上記以外の植物の例としては、バラ科、シソ科、ユリ科、アカザ科、セリ科、キク科などの植物が挙げられ、さらには、任意の樹木種、任意の果樹種、クワ科植物(例えば、ゴム)、及びアオイ科植物(例えば、綿花)が挙げられる。
本明細書において、「植物体」は、植物個体、植物器官、植物組織、植物細胞、及び種子のいずれをも包含する。植物器官の例としては、根、葉、茎、及び花などが挙げられる。また、植物細胞には、培養細胞の他、植物体中の細胞も含まれる。さらに、種々の形態の植物細胞、例えば、懸濁培養細胞、プロトプラスト、葉の切片、根の切片、カルス、未熟胚、花粉等が含まれる。
本発明の製法は、上記工程(1)の前に、植物細胞に本発明の核酸を導入する工程を含んでいてもよい。本発明の核酸(例:発現ベクターの形態の核酸)の導入は、植物細胞の種類に応じ、適当な組織(例、カルス、根、葉、種子、生長点等)に対し、公知の方法(例えば、アグロバクテリウム法、PEG法、エレクトロポレーション法、パーティクルガン法等)に従って実施することができる。例えば、イネの場合、通常、アグロバクテリウム法、ウイスカー直接導入法等が用いられるが、これらに限定されない。例えば、アグロバクテリウム法の場合、イネ種子から常法に従ってカルスを誘導し、アグロバクテリウム発現用ベクターのT-DNA断片中に本発明の核酸の一部又は全部の領域を組み込んだものを導入したアグロバクテリウムに、該カルスを感染させ、数日(例:3日)後に除菌する。一方、ウイスカー直接導入法の場合、発現ベクターをポリオルニチンと混合して複合体とした後、チタン酸カリウム製ウイスカーとともに、イネカルスに添加して混合した後、超音波処理を行う。
コムギやトウモロコシの場合は、例えば、未熟種子から採取した未熟胚を植物材料として、同様にアグロバクテリウム法を用いて、発現ベクターを導入することができる。
PEG法やエレクトロポレーション法を用いる場合は、適当な細胞・組織から常法に従ってプロトプラストを調製し、これに発現ベクターを導入する。パーティクルガン法の場合は、カルスや、未熟胚、茎頂や腋芽に存在する生長点等に、金微粒子に吸着させた発現ベクターを、パーティクルガンを用いて導入することができる。
パーティクルガン法やアグロバクテリウム法では、遺伝子導入がキメラとなる場合が多いので、生殖系列(germ line)の細胞に高頻度に上記核酸が導入されるような試料細胞を、形質転換のために使用する必要がある。例えば、胚、胚軸切片、胚形成カルス(embryogenic callus)、単離した生長点等が挙げられる。
本発明の核酸を導入した植物細胞の培養は、その種類に応じ、公知の方法に従って実施することができる。培養に使用される培地としては固形培地(例、寒天培地、アガロース培地、ゲランガム培地等)が好ましい。また、培地は、形質転換体の生育に必要な炭素源、窒素源、無機物、などを含有することが好ましい。例えば、基礎培地としてN6培地、MS培地、LS培地、B5培地などが用いられる。培地には、適宜、植物生長物質(例、オーキシン類、サイトカイニン類等)などを添加してもよい。培地のpHは好ましくは約5〜約8である。培養温度は、植物細胞の種類に応じて、通常約20℃〜約35℃の範囲内で適宜選択することができる。例えば、イネカルスの場合、通常28〜33℃、好ましくは30〜33℃で培養することができる。
本発明の製法の工程(1)は、当業者であれば用いるマーカー遺伝子の種類に合わせて適宜公知の手法により選択して行うことができる。例えば、薬剤耐性遺伝子を用いた場合には、本発明の核酸が導入された植物細胞を、対応する薬剤存在下にて培養することにより、標的領域に変異等が導入された植物細胞を選択することができる。薬剤として、例えばハイグロマイシンを用いる場合、その培地中での濃度は、10 mg/L〜200 mg/L(例:50 mg/L)が好ましい。
レポーター遺伝子を用いた場合には、所定の検出装置を用いて、該遺伝子にコードされるレポータータンパク質からの信号を検出することにより、標的領域に変異等が導入された植物細胞を選択することができる。検出装置としては、フローサイトメーター、イメージングサイトメーター、蛍光顕微鏡、発光顕微鏡、CCDカメラ等が挙げられるが、これらには限定されない。このような検出装置は、レポータータンパク質の種類に応じて、当業者が適したものを用いることができる。例えば、レポータータンパク質が、蛍光タンパク質又は発光タンパク質の場合には、フローサイトメーターを用いて選択が可能であり、レポータータンパク質が、蛍光、発光又は呈色を補助するタンパク質の場合には、顕微鏡を用いて、光応答性細胞培養器材をコーティングした培養皿を用いて、呈色等された植物細胞へ光照射し、照射されなかった細胞が培養皿から剥離されることを利用して選択することができる。
また、前記マーカータンパク質の発現を指標として選択する工程を行った後に、PCR法、シーケンシング法、サザンブロット法、CAPS(切断増幅多型配列)法等を用いることで、トランスポゾンが相同組換えによって植物細胞の標的領域に導入されたことを確認してもよい。
本発明の製法の工程(2)における、「誘導性プロモーターが活性化する条件」とは、誘導性プロモーターが薬剤誘導性プロモーターである場合には、各薬剤誘導性プロモーターに対応する、上記1.に記載の物質の存在下で継続して植物細胞を培養すること、あるいはプロモーターの活性化を阻害する物質の非存在下で継続して培養することで、プロモーターが活性化し、トランスポザーゼの発現が誘導される条件を意味する。誘導性プロモーターが刺激誘導性プロモーターである場合、各プロモーターに対応する刺激(例:光、熱)を与えて植物細胞を培養することで、プロモーターが活性化し、トランスポザーゼの発現が誘導される条件を意味する。
工程(2)の培養時間は、トランスポゾンが除去される時間であれば特に制限されないが、5分以上(例:5分、10分又はそれ以上)が好ましい。また、薬剤や刺激による植物細胞の障害を抑えるため、120分以下(例:120分、90分又はそれ以下)であることが好ましい。好ましい実施態様において、工程(1)の時間は40分間〜60分間、特に好ましくは40分間である。薬剤応答誘導性ベクターを用いる場合、工程(1)の培地中における薬剤の濃度は、細胞においてトランスポザーゼが発現される限り特に限定されない。例えば、Doxを用いる場合には、0.4μg/mL〜1.5μg/mL程度が好ましく、Dox以外を用いる場合も、当業者であれば適宜濃度を設定することができる。熱ショック応答誘導性ベクターを用いる場合の培養温度は、トランスポザーゼの発現が誘導される限り特に制限されないが、32℃以上(例:35℃、36℃、37℃、38℃、39℃、40℃又はそれ以上)であることが好ましい。また、熱による植物細胞の障害を抑えるため、47℃以下(例:46℃、45℃、44℃、43℃又はそれ以下)であることが好ましい。好ましい実施態様において、培養温度は42℃である。本発明者らは、熱ショック応答性ベクターを用いた場合において、熱ショック刺激を加えることなく除去ユニットを除去できる場合があること見出した(データは示さず)。従って、熱ショック応答性ベクターを用いた場合でも、通常の培養温度(例:約20℃〜約35℃)で培養してもよい。
本発明の製法の工程(3)において、マーカータンパク質の発現が検出できない場合、あるいはバックグラウンドレベルにまでマーカータンパク質の発現量が減少した場合に、該マーカータンパク質の発現が消失したと評価することができる。マーカータンパク質の発現の検出又は発現量の測定は、例えば、上述の検出装置を用いて、適宜行うことができる。
また、前記マーカータンパク質の発現を指標として選択する工程を行った後に、PCR法、シーケンシング法、サザンブロット法、CAPS(切断増幅多型配列)法等を用いることで、トランスポゾンが標的領域から除去されていることを確認してもよい。
3.ゲノムが改変された植物細胞又は該細胞を含む植物体
本発明の別の実施態様において、上記2.の本発明の製法により得られた植物細胞(以下「本発明の植物細胞」と称することがある)、又は該細胞を含む植物体を提供する。本発明の植物細胞を再分化させることにより、該細胞を含む植物体を得ることができる。本発明の植物細胞は、標的領域に所望の変異を有しているため、このような植物細胞から再分化させた植物体は、当該変異に伴い、表現型が変化し得る。従って、本発明の植物細胞を用いることで、前記標的領域の機能等を効率よく分析することが可能となる。植物細胞及び植物体の定義、植物の種類等については、上記2.に記載の通りである。
本発明の製法により得られた、変異導入が確認された形質転換体クローンは、自体公知の再分化法により、植物体に再分化させることができる。再分化法としては、イネの場合には、例えば、Toki S. et al., Plant Physiol. 100(3):1503-1507 (1992)に記載された方法、Christou P. et al., Bio/Technology 9:957-962 (1991)に記載された方法、Hiei Y. et al., Plant J., 6:271-282, (1994)に記載された方法などが挙げられる。
一旦、このようにして標的領域に変異が導入された細胞を含む植物体が得られれば、該植物体から有性生殖又は無性生殖により子孫を得ることが可能である。また、該植物体やその子孫あるいはクローンから繁殖材料(例えば、種子、果実、切穂、株、カルス、プロトプラスト等)を得て、それらを基に該植物体を量産することも可能である。従って、本発明には、本発明の植物細胞を含む植物体、該植物体の子孫及びクローン、並びに該植物体、その子孫、及びクローンの繁殖材料が含まれる。ヘテロ接合性に変異が導入されている場合、得られた植物体を自家受粉させて得られるR1植物を、さらに自家受粉させてR2植物を得ることにより、ホモ接合性に変異導入された植物体を得ることができる。
4.植物細胞のゲノム改変方法
別の実施態様において、本発明は、上記1.の本発明の核酸が導入された植物細胞に対して、植物細胞の二本鎖DNAの標的領域に変異を導入する方法を提供する。前記方法は、例えば、(1)本発明の核酸が導入された植物細胞を選択する工程、(2)工程(1)で選択された植物細胞を培養する(好ましくは誘導性プロモーターが活性化する条件下で培養する)工程を含み、必要に応じて、(3)工程(2)で培養された植物細胞を含む集団から、マーカータンパク質の発現が消失した細胞を選択する工程を含んでいてもよい。かかる方法によって、植物細胞のゲノム中に、外因性のトランスポゾンや、トランスポザーゼをコードする遺伝子などの不要な人工的なDNA配列を残すことなく、あるいは該配列の残存を抑えて、必要な変異のみを導入することが可能となる。従って、上記方法により、植物細胞外因性のトランスポゾン及びトランスポザーゼをコードする遺伝子、より好ましくは、さらにトランスポゾンの除去により生じるフットプリントのいずれも導入されることなく、目的の変異のみを植物細胞のゲノムに導入することができる。言い換えれば、本発明により、トランスポゾンの痕跡がゲノム中に残らない、植物細胞のゲノム改変方法が提供される。上記工程(1)〜(3)については、上記2.で記載した方法と同様に行うことができる。
以下に、本発明を実施例により説明する。ただし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
後述の実施例では、以下のようにして実験を行った。
<植物材料及び生育条件>
実施例では、ジャポニカ米(Oryza sativa L.)(栽培品種:「日本晴」及び「金南風(きんまぜ)」)を用いた。イネを長日条件(16時間:8時間、明:暗、28℃:22℃)下で、温室内で生育した。
<マーカーの切除システムの構築>
人工操作したトウモロコシのDNAトランスポゾンAc/Ds(Activator/Dissociation)システムを、熱ショック誘発性のマーカー切除に用いた。トウモロコシのwx-m7アレルから単離したAcエレメントのDNA配列(Muller-Neumann M. et al., Mol. Gen. Genet, 198(1):19-24 (1984))を参照した。
誘導型AcTPaseの発現カセットを、以下の設計に基づいて合成した。イネのAcTPase遺伝子(AcTPase4xOs)には、SV40ラージT抗原の核移行シグナルと、対応する位置で野生型AcTPase遺伝子のイントロン2とを融合させた亢進型AcTPase(Lazarow K. et al., Genetics 191:747-756 (2012))のコドン最適化ORF(配列番号47で示される配列)が含まれる。Oshsp16.9C(Chang P.L. et al., Botanical Bulletin- Academia Sinica Taipei, 42(2):85-92 (2001)、Guan J.C. et al., Plant Mol Biol, 56(5):795-809 (2004)、Itoh H. et al., Nat Genet, 42(7):635-638 (2010))の5’に隣接する領域を熱ショックプロモーター(配列番号46で示される配列)として用いた。AcTPase4xOsをイネの熱ショックプロモーターとNOSターミネーター(配列番号48で示される配列)の間に配置した(図1C)。
人工のDsエレメントは、Acエレメントの両末端から300bp以内の領域に、転写ターミネーターであるΔEn(Terada R. et al., Nat Biotechnol, 20(10):1030-1034 (2002))(配列番号45で示される配列)を有するように設計した。かかる末端領域は、末端逆向き反復配列(terminal inverted repeat:TIR)と、Ac/Dsエレメントの転位効率化に必須のAcTPase結合モチーフを有する隣接するサブターミナル(subterminal)領域とを含む(Becker H.A. and Kunze R., Mol Gen Genet. 254(3):219-230 (1997))。
GUSレポーターアッセイ用のバイナリーベクターを、pZEN11(Shimatani Z. et al., Mol Genet Genomics. 281(3):329-344 (2009))をベースに作製した。pZEN30NCを構築するために、GUSPlusの発現を妨げるp35Sプロモーターの下流に、Dsエレメントを挿入した(図1B)。pZEN31Eにおいて、誘導性AcTPaseカセットをpZEN30NCのΔEnエレメントの隣に挿入した(図1C)。また、Ds切除の結果を模倣するベクターを、pZEN30PCとして構築した(図1A)。
<Ac/Ds−媒介型(Ac/Ds-mediated)マーカー切除システムの評価>
以前の報告(Shimatani Z. et al., Mol Genet Genomics. 281(3):329-344 (2009))と同様に、「日本晴」の胚盤に由来する、増殖性のイネカルスにバイナリーベクター pZEN30PC、pZEN30NC及びpZEN31Eを導入した。4週間の選択後、ハイグロマイシン耐性カルス系統を、誘導性のAc/Ds−媒介型マーカー切除システムの評価に使用した。各カルス系統を2つのコピーに分割し、一方は常温(31.5℃)で培養し、もう一方は42℃で90分間の高温に曝した。1週間の継代培養の後、人工のDsエレメントの切除を、前述同様に(Shimatani Z. et al., Mol Genet Genomics. 281(3):329-344 (2009))、組織化学的なGUSレポーターアッセイ及びPCR分析によって調べた。Ds切除によって生成されたフットプリントを決定するために、PCRの増幅産物をpCR-BlutnII-TOPO(Thermo Fisher Scientific)にクローニングし、サンガーシーケンシングにより分析した。
<自律的なマーカー切除システムを有する遺伝子ターゲティングベクター>
図3及び図4に示すようなモジュールを組み合わせることにより、自律的なマーカー除去システムを有する遺伝子ターゲティングベクターを構築した。相同組換え(HR)のための相同領域を、Tks Gflex DNAポリメラーゼ(Takara Bio)と、表1及び2に列挙した適切なプライマーとを用いて、PCRにより作製した。
ベクターpOsClpP5KO-AcDs及びpOsClpP5KO-Dsを構築するために、OsClpP5のプロモーター領域を含む5'ホモロジーアームの3kb(配列番号42で示される配列)を、「日本晴」のゲノムから、ネステッドPCR(nested PCR)により調製した。次いで、オーバーラップPCR(overlapping PCR)法により、Dsエレメントの5 '末端領域と融合させた(図3B)。KO変異をもたらすPvuII部位の導入を、このプロセスで行った(図4B)。同様に、OsClpP5をコードする配列を含む3'ホモロジーアームの3kb(配列番号50で示される配列)を増幅し、Dsエレメントの3'末端領域に融合させた。同様にして、3.55kb及び3.66kbの断片をクローニングし、ポジティブコントロールベクターであるpOsClpP5KO-Con5及びpOsClpP5KO-Con3をそれぞれ構築した。これら2つのベクターは、遺伝子ターゲティングの標的(Gene-Targeted:GT)候補のPCRスクリーニングにおいて、真正な5'及び3'接合断片を作製するために用いた。作製したターゲティングベクターpOsClpP5KO-AcDsの全長配列を配列番号36として示す。pOsClpP5KO-Dsの配列は、配列番号36において、8626番目〜9394番目の領域(熱ショックプロモーターの配列)、9411番目〜11626番目の領域(イントロン及びSV40 NLSを含むAcTPase4x遺伝子の配列)、及び11665番目〜11917番目の領域(NOSターミネーターの配列)を取り除いたものに相当する。
OsRacGEF1遺伝子にS549D変異を導入するためのベクター(pGEF1S549D-AcDs及びpGEF1S549D-Ds)については、それぞれ5'及び3'ホモロジーアーム用の「金南風」ゲノムから、3kb及び3.24kbの断片を増幅した。次いで、オーバーラップPCRにより、Dsの末端領域を融合させた(図9B)。この工程で、S549D変異及び隣接するBssHII部位を、5'ホモロジーアームに導入した。真正な5'及び3'接合断片を有する対照ベクターである、pGEF1S549D-Conも構築した。作製したターゲティングベクターpGEF1S549D-AcDsの配列は、配列番号36において、1593番目〜4592番目の領域(5'ホモロジーアームの配列)を配列番号155で示される配列に置換し、13915番目〜16912番目の領域(3'ホモロジーアームの配列)を配列番号156で示される配列に置換したものに相当する。pGEF1S549D-Dsの配列は、pGEF1S549D-AcDsの配列において、8626番目〜9394番目の領域(熱ショックプロモーターの配列)、9411番目〜11626番目の領域(イントロン及びSV40 NLSを含むAcTPase4x遺伝子の配列)、及び11665番目〜11917番目の領域(NOSターミネーターの配列)を取り除いたものに相当する。
LR clonaseII(Thermo Fisher Scientific)を用いた部位特異的組換えにより、誘導性AcTPase4xOs及び蛍光タンパク質の遺伝子を含むDNA断片を組み込んだ(図3D)。
表1及び2に列挙したプライマーを用いたサンガーシーケンシングにより、ホモロジーアームのDNA配列を確認した。
Figure 2020171192
Figure 2020171192
<遺伝子ターゲティングのためのイネの形質転換>
OsClpP5をノックアウト(KO)するため、及びOsRacGEF1にS549D変異を導入するため、それぞれ「日本晴」及び「金南風」を用いた。大規模なアグロバクテリウムに媒介される形質転換を、基本的には以前の報告(Terada R. et al., Nat Biotechnol, 20(10):1030-1034 (2002)、Terada R. et al., Plant Physiol, 144(2):846-856 (2007))に従い行ったが、以下の変更を加えた。胚盤由来のembryogenic calliを、N6D培地上で250〜500個の成熟な種子から誘導した。ここで、embryogenic calliは、高い再分化能を維持したカルスを意味する。アグロバクテリウムを除去した後、イネカルスをN6DNU培地で10日間培養してアグロバクテリウムを確実に除去した。次いで、N6DSE-H40培地に移して、ポジティブ−ネガティブ選択により、GT候補を選択した。増殖性のカルス系統を、適切なプライマー(表1及び2、図5B及び9C)を用いてPCRスクリーニングに付し、GTカルス系統を同定した。選択したカルス系統を個別に継代培養し、42℃で40、60又は90分間熱ショック処理を行い、Ac/Ds−媒介型マーカー切除を誘導した。以下に記載するように、PCR及びDNAシーケンシング分析により、カルス系統において、所望の変異の導入及びマーカーの切除が行われていることを確認した。選択したカルス系統をMSRE培地に移し、T0植物を再分化した。マーカーフリーのT0植物の自家受粉によって得られたT1分離個体(segregant)を、さらなる分析に供した。実施例で用いた植物組織用培養培地の一般的な組成を、表3に示す。
Figure 2020171192
<GT植物のPCR及びDNAシーケンシング分析>
ゲノムDNA及びRNAの調製、PCR、CAPS並びにDNAシーケンシング分析を含む核酸操作の方法を、以前記載した方法(Shimatani Z. et al., Mol Genet Genomics. 281(3):329-344 (2009)、Shimatani Z. et al., Nat Biotechnol, 35(5):441-443 (2017))と同様に実施した。実施例で用いたプライマーを表1及び2に示す。
まず、OsClpP5 KO変異を有するGT候補を、ジャンクションPCR(junction PCR)分析によりスクリーニングした。プロモーター領域を含む4.1kbの5 '接合断片を、メーカーの説明書に従い、Tks Gflex DNA polymerase(Takara Bio)を用いて、プライマーのClp 5J-F及びpAct-R(図4C及び表1)で増幅した。pOsClpP5KO-Con5と、ヘテロ接合の状態を模倣する「日本晴」ゲノムDNAとの等モル混合物を、対照DNAサンプルとして使用した。同様に、OsClpP5をコードする領域を含む5.6-kbの3 '接合断片を、プライマーのTPase 3-F及びClp 3J-Rを用いたPCR分析により検出した(図4C及び表1)。pOsClpP5KO-Con3を対照として用いた。次に、標的の遺伝子座をCAPS分析により分析し、遺伝子ターゲティングにより導入されたOsClpP5中の制限酵素部位の存在を確認した。920bpのDNA断片を、プライマーのClp Ex F-6及びClp Ex-Rを用いたPCRにより増幅し、PvuIIを用いて消化した。OsClpP5における所望のKO変異を確認するためのダイレクトDNAシーケンシング分析、及びAc/Ds−媒介型ポジティブマーカーの切除を確認するための、Zero Blunt TOPO PCR cloning kit (Thermo Fisher Scientific)を用いたクローニングシーケンシング分析にも、上記DNA断片を用いた。
同様に、OsRacGEF1のS549D変異を有するGT候補のカルス系統をスクリーニングするために、ジャンクションPCR分析を行った。GEF 5J-F / pAct-R及びTPase 3-F / GEF 3J-Rのプライマーのペアをそれぞれ用いて、4.2kbの5 '接合断片及び6.1kbの3'接合断片を増幅した。プライマーGEF EX F-5及びGEF Ex-Rを用いたPCRにより増幅した980bpのDNA断片を、DNAシーケンシング分析及びBssHIIを用いたCAPS分析に用いた。
実施例1:人工操作したトウモロコシAc/Dsを用いた誘導型の自律的なマーカー切除システム
熱ショック誘導性のAc/Ds−媒介型マーカー切除システムの機能を評価するために、GUSレポーターアッセイ用プラスミドベクターである、pZEN30NC及びpZEN31Eを調製した(図1)。これらのベクターを、アグロバクテリウムを媒介した形質転換を用いて、イネのカルスに導入し、それぞれ74及び196の独立した遺伝子組換えカルス系統を作製した(表4)。さらに、pZEN30PCを有する約50の遺伝子組換えカルス系統も、GUSPlusを構成的に発現する対照群として作製した。続いて、pZEN30NCを有する各カルス系統について、Dsが切除されているか分析した。プライマーDs Ex-F / Ds Ex-R(表5)を用いたPCR分析の結果、全ての遺伝子組換えカルスの系統において、Dsの切除は検出されなかった(表4、図2C)。同様に、pZEN30NCを導入したカルス系統ではGUSポジティブのシグナルはほとんど認められなかったが、pZEN30PCを導入したカルス系統は、ほとんど全てがGUSシグナルを示した(表4、図2D)。この結果から、Ac/Dsシステムと機能互換を有し、かつ組織培養プロセスで活性化されるDNA型トランスポゾンシステムは、イネゲノム中には存在しないことが示唆される。
pZEN31Eを導入したカルス系統を、2つの群に分けた。一方の群は、対照として常温(31.5℃)で培養し、他方は、42℃、90分間の加熱状況下に置いた。通常の条件(31.5℃)で1週間保護培養(nurse culture)した後に、各遺伝子組換えカルス系統のゲノムDNAを抽出し、プライマーDs Ex-F / Ds Ex-R(表5)を用いたPCR分析によりDsの切除を検出した。その結果、Dsの切除を示す650bpの断片は、対照及び熱ショック処理群において、それぞれ159(81.1%)及び187(95.1%)のカルス系統で増幅が確認された(表4、図2C)。
さらに、熱ショックプロモーターの制御下で、AcTPase4xOsによるDs切除の頻度及び時空間的な発生を分析するために、GUS染色アッセイを行った。その結果、AcTPase4xOsは、イネカルス中の合成されたDsエレメントを除去する機能を有することが示された。Dsエレメントは、通常の条件でさえ低頻度で切除されたが、熱ショック処理により、AcTPase4xOsに媒介されたDsの切除の頻度を増加させることが明らかとなった(表4、図2D)。
Figure 2020171192
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実施例2:遺伝子ターゲティングによる標的遺伝子のデザインベースの改変
OsClpP5は、ATP依存性カゼイン分解酵素(caseinolytic protease)のP5サブユニットをコードするイネ内在性の遺伝子であり、ホモ接合の破壊は、淡黄色葉のような葉色変異につながる葉緑体機能不全を引き起こす(Tsugane K. et al., Plant J. 45(1):46-57 (2006))。自律的なAc/Ds−媒介型マーカー切除システムと組み合わせて、遺伝子ターゲティングによるデザインベースの改変を技術的に実証するためのモデルとして、OsClpP5を選択した。
遺伝子ターゲティングベクター、pOsClpP5KO-AcDsは、OsClpP5のイントロン1の5'末端にヌクレオチド置換を導入して、スプライス部位の変異並びに新規なPvuII部位が導入されるように設計した(図4A及びB)。一次改変では、転写ターミネーター(ΔEn)、ポジティブマーカー(hpt)(配列番号44で示される配列)及び視覚マーカー(EGFP)(配列番号49で示される配列)を含む「除去ユニット」を、相同組換えを介してOsClpP5イントロン1に挿入する(図4C)。続く二次改変では、除去ユニットを、自律的なAc/Dsシステムにより標的領域から切り出す(図5A及びB)。得られたOsClpP5の転写産物は、早発性の終止コドンをもたらす、スプライシングを受けていないイントロン1を含むことが予期された。pOsClpP5KO-AcDsを、大規模なアグロバクテリウム形質転換を介して、日本晴種子由来のembryogenic calliに導入した。GT候補のカルス系統を、3〜4週間のポジティブ−ネガティブ選択後に、67.5gのカルスから選択した。
相同組換えにより適切に改変されたOsClpP5を有する真正なGT(True GT:TGT)カルス系統をスクリーニングするために、プライマーのペア(それぞれ、Clp 5J-F/pAct-R及びTPase 3-F/Clp 3J- R)を用いて、ジャンクションPCR解析を行った(図4C及びD)。297のGT候補のうち、真正な遺伝子標的として、71のカルス系統を見出した。従って、OsClpP5遺伝子座におけるGTの頻度は、生存カルス当たり約23.9%であると見積もられた(表6)。
各GTカルス系統の5'接合断片のシーケンシング解析により、所望の変異が、除去ユニットと共にOsClpP5の標的の位置に導入されたことが明らかとなった。また、蛍光顕微鏡分析を行い、EGFPシグナルを発現する67のGTカルス系統(67/71、94.4%)を確認した(表6及び図4E)。
Figure 2020171192
実施例3:TGTカルス系統における熱ショック誘導性のAc/Ds−媒介型マーカー切除
Ac/Ds−媒介型マーカー遺伝子切除を誘導するための熱ショック条件を最適化するために、改変されたOsClpP5を有する最も頑健な15のTGTカルス系統を以下の分析に用いた。
各GTカルス系統を均等に分割し、上記の予備実験の結果(図2A−D)に基づき、42℃で0、40、60又は90分間処理した。処理したカルス系統を、N6D培地で4週間培養し、二次改変の頻度を分析した。EGFP発現が、特定の細胞系統における「除去ユニット」の切除の指標として機能するであろうと予測された。ユニットを切り出した場合、EGFPの発現は、対応する細胞及びその子孫において除去されると考えられた。かかる細胞系列、二次改変の結果物は、周囲のEGFP発現細胞と区別することができる。予想どおり、PCR分析により、全てのEGFPポジティブ細胞は、「除去ユニット」を有することが確認された(図5D)。一方、EGFPネガティブ細胞系統が、対応する暴露時間熱ショックで処理した後に、13又は14のTGTカルス系統にいくつか現れた(表7及び図5C)。各GT系統のEGFPネガティブカルスの一部を、PCR分析のために選んだ。その結果、分析したEGFPネガティブカルスの全てにおいて、「除去ユニット」の除去が成功していることが確認できた(表7及び図5D)。これらの結果から、熱ショック誘導性のAc/Dsシステムを用いた、ポジティブマーカーを除去するOsClpP5の二次改変が実証された。
熱ショック処理を行った、又は行っていないGTカルス系統を、MSRE培地に移し、T0植物が再分化されるまで4〜6週間培養した。熱ショック処理群の再分化率(regeneration rate)は56.3%から62.5%の範囲であったが、熱ショック未処理の対照群は68.8%であった(表7)。各群から十分な数のT0植物が得られた。これらの結果は、熱ショック工程が、植物再分化に有害ではないことを示唆している。
再分化させたT0植物を、1/2MS培地上で個々に増殖し、さらなる分析に供した。CAPS及びDNAシーケンシング分析により、熱ショック処理を行ったGTカルス系統由来のT0植物の大部分において、所望の変異が導入されていることが示された(図6A及びB)。さらに、根組織におけるPCR分析及びEGFP発現により、このようなT0植物のほとんど全てが、「除去ユニット」を有していないことが確認された(表8、図6C及びD)。一方、熱ショック未処理群由来のT0植物中では、「除去ユニット」の切除頻度は、明確に低いことが確認された(表8)。
次に、遺伝子ターゲティング及び熱ショック誘導性のAc/Ds−媒介型マーカー切除がイネ植物体に及ぼす影響を調べた。T0植物の生育を評価するために、その出穂期における植物の草高を評価した。その結果、マーカーフリーのカルス系統から再分化されたT0植物の草高が、比較的低いことが確認された(図7A及びB)。これはおそらく、遺伝子ターゲティングプロセスで生じた体細胞変異に起因し、熱ショック処理との関連性はほとんどないと考えられる。なぜなら、熱ショック処理の有無に関わらず、カルス系統から再分化されたT0植物の草高は、WT植物と比較して抑制されたためである(図7B)。一方、熱ショック処理した植物の草高は、T0植物の稔性に影響するようである。42℃で90分間熱ショック処理を行った後のGTカルス系統由来のT0植物は、稔性が相対的に低下していた(図7C)。そこで、Ac/Ds−媒介型マーカー切除を誘導するための熱ショック条件が、イネカルスのストレスをできるだけ減らす、40分間42℃であると仮定した。
上記の結果により、Ac/Ds−媒介型自律的なマーカー切除システムと組み合わせた遺伝子ターゲティングによる、イネカルスにおける効率的なデザインベースの遺伝子改変が実証された。次の実施例では、T0植物の自家受粉の子孫を調べることにより、所望の変異の安定性及び遺伝を調べた。
Figure 2020171192
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実施例4:OsClpP5 KO変異を有するマーカーフリーのT 1 子孫の解析
2段階の改変により得られたT0世代のマーカーフリーの植物は、OsClpP5 KO変異をヘテロ接合性の劣性変異として有する。従って、それらのT1子孫の表現型は、3:1の比率で、正常とアルビノとが分離すると予測された。実際、各T0植物由来のT1子孫の1/4は、アルビノの表現型を示した(表9、図8A及びB)。さらに、CAPS及びDNAシーケンシング分析によるジェノタイピングの結果は、各T1植物の表現型と一致した(図8D及びE)。これらの結果により、遺伝子ターゲティング及びAc/Ds−媒介型マーカー切除を通じた標的遺伝子の改変の正確さ及び効率が実証された。
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実施例5:Ac/Ds−媒介型マーカー切除後のフットプリント配列
Ac/Ds−媒介型マーカー切除後の遺伝子ターゲティングによる、2段階改変後に標的遺伝子座が適切に編集されたかどうかを確認するために、T1世代で分離されたアルビノ植物のゲノム配列を分析した。Ac/Ds切除に関連して生成したフットプリント配列は、1bpの挿入又は2-6bpの欠失として観察された(図8F)。同一のGTカルス系統由来の植物は、同じフットプリント配列を共有することが判明した。この結果は、熱ショック処理後のごく初期段階で、除去ユニットの切除が生じたこと、及びT0植物は同じ細胞系統内の増殖したカルスから再分化されたことを意味する。
実施例6:OsRacGEF1の改変
植物の細胞膜には、病原性感染を認識するための多数の受容体キナーゼが存在する。OsRacGEF1は、イネの「defensome」の重要な構成要素として同定された。OsRacGEF1は、キチン駆動性の免疫応答の初期段階に決定的に関与しており、シグナル伝達経路において重要な役割を果たす。イネにおいて、キチンエリシター(chitin elicitor)受容体キナーゼ1(OsCERK1)とキチンエリシター結合タンパク質(OsCEBiP)とは、受容体複合体を形成し、下流のシグナル伝達経路を認識し、活性化する。OsRacGEF1は、シグナル伝達経路の中継点として機能する。OsRacGEF1はOsCERK1と直接相互作用し、そのC末端のS549のリン酸化によって活性化され、イネ免疫の主要制御因子であるOsRac1を活性化する。そのリン酸化を模倣する変異であるOsRacGEF1 S549Dは、OsRac1の活性化を介して、いもち病菌に対する耐性を増加させることが明らかになった(Akamatsu A. et al., Cell Host Microbe, 13(4):465-476 (2013))。
OsRacGEF1の遺伝子ターゲティングベクターを、S549D変異及び新規なBssHII部位を生じるサイレント突然変異を引き起こすヌクレオチド置換を導入するように設計した(図9A及びB)。一次改変では、相同組換えを介してOsRacGEF1の3'UTR領域に転写ターミネーター(ΔEn)及び視覚マーカー(EGFP)を含む「除去ユニット」を挿入する(図9B)。次の二次改変では、自律的なAc/Dsシステムにより、除去ユニットを標的領域から切り出す。得られたOsRacGEF1はS549D変異を有する事を確認した(図10A、B及び図11)。さらに、痕跡の残らない「除去ユニット」の削除を確認した(図11)。
大規模なアグロバクテリウム形質転換及びポジティブ−ネガティブ選択により、「金南風」種子由来のembryogenic calliにpGEF1S549D-AcDsを導入した。3回繰り返した後、252.5gのカルスから1322のGT候補カルス系統を得た。HRによって適切に改変されたOsRacGEF1を有する真正なGT(TGT)カルス系統をスクリーニングするために、プライマーのペア(それぞれ、GEF 5-J-F/pAct-R及びTPase 3-F/GEF 3J-R)を用いて、5’-及び3’-ジャンクションPCR分析を行った(図9C、表2)。その結果、59のカルス系統を真正な遺伝子標的として見出した。従って、OsRacGEF1遺伝子座におけるGT頻度は、生存カルス当たり約10.3%であると推定された(表6)。
上述の通り、pGEF1S549D-Dsも金南風に導入した。5'-及び3'-ジャンクションPCR分析により、113の候補のうち13のカルス系統がTGTとして確認された。 GTの頻度は、ポジティブ−ネガティブ選択されたカルス系統に対して11.5%であった(表6)。所望の変異及びEGFP発現もまた確認した。
改変されたOsRacGEF1遺伝子座から、それに続くAc/Ds−媒介型マーカーの切除を上述の通り行った。所望の変異を有する16のTGTカルス系統を均等に分割し、42℃で40、60又は90分間処理した。保護培養4週間後に、EGFPネガティブ細胞系統が得られた(図10C)。かかるカルスを、T0植物の再分化のために選択した。再分化頻度(regeneration frequency)は、37.5〜62.5%であった(表10)。T0植物のPCR及びCAPS分析の結果、除去ユニットの除去に成功し、OsRacGEF1の標的位置に所望の変異を導入されたことを確認した(表11、図10D及びE)。かかるT0植物を生育し、自家受粉を経てT1世代における所望の変異遺伝分離を確認した。
Figure 2020171192
Figure 2020171192
実施例7:OsClpP5 KO改変体における転写産物の解析
本実施例によるOsClpP5改変では、塩基置換を介したスプライシング阻害により遺伝子機能破壊を引き起こす設計とした。具体的には、OsClpP5第1イントロンの5’側末端に位置するスプライシングドナーサイトを改変し、GTからCTへ改変する。これにより、当該OsClpP5遺伝子由来のmRNAには第1イントロン配列に起因したフレームシフト変異等により未成熟終止コドンが出現し、正常なタンパク質が翻訳されず機能破壊に至ると予測した。そこで、標的遺伝子の正確な編集とそれによる機能改変を確認するため、実施例2に方法により、OsClpP5改変に成功した2系統についてT1植物体を展開し、各個体の表現型と遺伝子型をもとに野生型、ヘテロ接合型、およびアルビノ変異体であるosclpp5ホモ接合型に分類した上で、それらの転写産物を解析した(図14A−C, 図15A−D)。まず、各植物体からmRNAを単離し、OsClpP5遺伝子の5’UTRおよび3’UTR領域に設定したプライマーセット(Clp 5UTR-F No1;ACCACCCTCTCCCGGATAAGAGGCGCAACC(配列番号157)、Clp 3UTR-R No1;TGTGGAATCGCAAAACTATCTTGCCAAGCT(配列番号158))を用いた逆転写反応によりcDNAを得た。野生型OsClpP5に由来するcDNAは約1.0 kbだが、アルビノ変異体におけるcDNAは第1イントロンに相当する83bpの配列を含むため、約1.1 kbのDNA断片として検出されるはずである(図14A、B、C)。アガロースゲル電気泳動により各植物体のOsClpP5 cDNAを分画した結果、予測通り野生型の植物体からは約1.0 kb、osclpp5ホモ接合型の植物体からは約1.1 kbのDNA断片が検出され、ヘテロ接合型の植物体では双方のDNA断片が確認された(図14C)。次いで、得られたcDNAについてクローニングシークエンス解析を実施した結果、野生型の個体ではOsClpP5由来のmRNAでは第一イントロンのスプライスアウトが確認された(図15A、B)。一方、osclpp5ホモ接合型の植物体由来のmRNAでは第1イントロンに由来する約80塩基の残存が確認された(図15C、D)。また、第1イントロン配列に起因する未成熟終止コドンの出現が確認された。
以上の結果から、遺伝子ターゲティングによる標的遺伝子のスプライシングパターンの改変と、それによる機能破壊が実証された。
本発明によれば、植物の品種改良技術として、精緻かつ迅速な標的遺伝子改変が可能となる。本発明は、従来のゲノム編集技術と異なり、広範囲(〜数kb)を改変可能であるとともに、Cis genesisやノックイン改変などが可能であり、標的遺伝子の改変が成立した後に、マーカー遺伝子等の人為的配列が自律的に除去される、さらに、短期間で有用遺伝子を蓄積する「ピラミッディング」も実施可能である。従って、本発明は、高等植物の品種改良における実践的な育種技術としての活用が期待できる。
本出願は、日本で出願された特願2019−030971(出願日:2019年2月22日)を基礎としており、その内容はすべて本明細書に包含されるものとする。

Claims (9)

  1. (1)トランスポゾン、及び
    (2)植物細胞の有する二本鎖DNAの標的領域の少なくとも一部に相同な配列
    を含む核酸であって、
    該トランスポゾンが、マーカー遺伝子、及び誘導性プロモーターに作動可能に連結されたトランスポザーゼをコードする遺伝子を含む、核酸。
  2. 前記トランスポゾンが、Dsエレメント、Acエレメント、Spm-sエレメント、En1エレメント、Spm-I8(dSpm)エレメント、Muエレメント、Tam1エレメント、Tam2エレメント、Tam3エレメント、nDartエレメント、Dartエレメント及びPiggyBacエレメントからなる群から選択されるトランスポゾンに由来する、請求項1に記載の核酸。
  3. 前記トランスポゾンがDsエレメント又はAcエレメントに由来し、かつ前記トランスポザーゼがAcTPase又はその改変体である、請求項1又は2に記載の核酸。
  4. 前記マーカー遺伝子が蛍光タンパク質をコードする遺伝子を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の核酸。
  5. 前記誘導性プロモーターが熱ショック誘導性プロモーターである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の核酸。
  6. 二本鎖DNAの標的領域に変異を有し、かつ外因性のトランスポゾン及びトランスポザーゼをコードする遺伝子のいずれも有さない植物細胞を製造する方法であって、
    (1)請求項1〜5のいずれか1項の核酸が導入された植物細胞を選択する工程、
    (2)工程(1)で選択された植物細胞を、誘導性プロモーターが活性化する条件下で培養する工程、及び
    (3)工程(2)で培養された植物細胞を含む集団から、マーカータンパク質の発現が消失した細胞を選択する工程
    を含む、方法。
  7. 前記植物細胞が単子葉植物の細胞である、請求項6に記載の方法。
  8. 前記単子葉植物がイネ科植物である、請求項7に記載の方法。
  9. 請求項6〜8のいずれか1項に記載の方法により得られた植物細胞、又は該細胞を含む植物体。
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