本発明は、被験者の頭部位置づけが行われる歯科用X線撮影装置に関する。
歯科におけるX線撮影では、X線撮影装置に被験者を案内した後、術者が被験者の頭部位置づけを行う。具体的には、術者が被験者に指示しつつ装置を調整することで被験者の頭部位置づけが行われる。
一般に、パノラマX線撮影では、被験者の頭部はフランクフルト平面が水平面(例えば床面)に平行になるように位置づけされる。フランクフルト平面とは、前方基準点である左右の眼窩最下点と、後方基準点である両外耳孔の上端を結んだ仮想平面である。フランクフルト平面を水平面に平行にすると咬合平面が適正な角度に前方傾斜するため、被験者の顎部の解剖学的構造がパノラマ断層撮影において明瞭にX線撮影されることが知られている。特許文献1にはビーム発生器を備えるX線撮影装置が示されている。このX線撮影装置では、ビーム発生器から水平面に平行なフランクフルト平面を示す水平ビームが被験者に照射され、当該水平ビームに基づいて被験者の頭部位置づけが行われる。
しかしながら、特許文献1に示されるX線撮影装置において、術者が被験者に指示しつつ装置を調整してフランクフルト平面を水平ビームに沿わせることは容易ではない。また、被験者がフランクフルト平面を認識することは難しく、被験者が視野付近の水平ビームを不快と感じることもある。
上記実情に鑑み、被験者の頭部位置づけを容易に行うことができる歯科用X線撮影装置が求められている。
本発明に係る歯科用X線撮影装置の特徴構成は、X線発生部とX線検出部とを有する旋回アームと、
前記旋回アームを旋回可能に支持するアーム支持部と、
前記アーム支持部を昇降可能に支持する支柱部と、
前記支柱部に昇降可能に支持され、前記X線発生部と前記X線検出部との間に設けられた被験者の顎部を支持する顎位置決め部と、
前記支柱部及び前記顎位置決め部の何れか一方に設けられ、前記顎位置決め部に支持された被験者の顎部の正面方向からの撮影が可能なカメラと、を備え、
前記カメラの光軸が水平面を基準にして斜め上方に向けられている点にある。
フランクフルト平面が水平面に平行になるように被験者の頭部をX線撮影装置に位置づけると、特に被験者の顎部の解剖学的構造がパノラマ断層撮影において明瞭にX線撮影される。上下の歯が接する平面である咬合平面は、フランクフルト平面に対して所定の角度を有しており、フランクフルト平面が水平面に平行になると、咬合平面は水平面から被験者の前方下向きに傾斜した状態になる。本構成においては、支柱部及び顎位置決め部の何れか一方に設けられたカメラによって、当該カメラの光軸が水平面を基準にして斜め上方に向けられるようにカメラを配置して、顎位置決め部に支持された被験者の顎部を撮影することができる。
本構成により、フランクフルト平面が水平面に平行であるときに、被験者の顎部の正面撮影用のカメラは、その光軸が咬合平面上に位置させ易くなる。カメラの光軸が咬合平面にある状態では、カメラの撮影画像において被験者の上下の歯が咬合する境界部分が直線状になる。従って、カメラの撮影画像で境界部分を確認することにより、被験者の顎部がX線撮影をする上で適正な姿勢、すなわち被験者のフランクフルト平面が水平面に平行であるか否かが判断できる。その結果、被験者の頭部位置づけを容易に行うことができる。
他の特徴構成は、前記カメラの光軸は、前記水平面を基準にした傾斜角度が10〜15度である点にある。
咬合平面は、フランクフルト平面に対し、平均的に12度傾斜している。そこで、本構成では、個人差を考慮して、カメラの光軸が水平面を基準にして10〜15度に傾斜するようにカメラを配置している。このように、水平面を基準としたカメラの光軸の傾斜角度を12度が含まれる狭い範囲内になるようにカメラを配置することで、被験者の頭部位置づけにおいて、カメラの光軸を咬合平面上に位置させやすくなり、容易にフランクフルト平面を水平面に平行にすることができる。これにより、簡便な方法で、カメラの撮影画像に基づく被験者の頭部位置づけをより精度よく行うことができる。
他の特徴構成は、前記カメラの光軸から前記水平面の鉛直方向に60〜80mm上方であって当該光軸に平行な仮想平行線上に、前記被験者の視線を誘導するための視線誘導体を有する点にある。
フランクフルト平面は、顎位置決め部に顎部が載置された被験者の頭部の傾きに応じて水平面に対する角度が変化する。フランクフルト平面が水平面に平行になると咬合平面は水平面に対して被験者の前方下向きに傾斜する。このことから、被験者の頭部が前傾になるとフランクフルト平面が水平面に平行になり易いことが理解される。
そこで、本構成では、カメラの光軸から水平面の鉛直方向に60〜80mm上方であって当該光軸に平行な仮想平行線上に、被験者の視線を誘導するための視線誘導体を有する。カメラの光軸は水平面を基準にして斜め上方に向けられており、カメラによって顎部の正面が撮影される。また、被験者において歯の咬合位置から視点位置までの距離は、通常60〜80mmの間に収まる。
すなわち、視線誘導体は、顎位置決め部に顎部が載置された被験者の眼の位置よりも低い位置に配置され、術者の指示等により被験者が視線誘導体を直視することで、被験者の頭部は前傾姿勢になる。これにより、被験者自身の動作を利用してフランクフルト平面を水平面に平行になるように被験者を位置づけすることができる。その結果、被験者の頭部位置づけをさらに容易に行うことができる。
他の特徴構成は、前記視線誘導体が前記支柱部に配置されている点にある。
歯科用X線撮影装置において、支柱部は、顎位置決め部に支持された被験者の顎部の正面方向を撮影するカメラを設けることが可能であり、当該カメラの位置から上方に延設されている。すなわち、支柱部にはカメラの光軸よりも上方に視線誘導体を配置するためのスペースが存在する。そのため、本構成では視線誘導体が支柱部に配置されている。これにより、視線誘導体を配置するためのブラケット等の部材は不要になる。その結果、歯科用X線撮影装置において視線誘導体を容易に配置することができる。
歯科用X線撮影装置の斜視図である。
歯科用X線撮影装置の部分側面図である。
歯科用X線撮影装置の部分正面図である。
第1カメラ及び第2カメラによる撮影状態を示す平断面図である。
歯科用X線撮影装置のブロック構成図である。
第1カメラによる撮影状態を示す側面図である。
モニタ部に表示される第1カメラの撮影画像の一例を示す図である。
モニタ部に表示される第2カメラの撮影画像の一例を示す図である。
別形態のX線撮影装置を示す部分側面図である。
別形態の視線誘導体を示す図である。
別形態の視線誘導体を示す図である。
別形態の視線誘導体を示す図である。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1〜図6に示される歯科用のX線撮影装置Aは、パノラマ断層撮影モード及びCT断層撮影モードを有している。X線撮影装置Aは、X線発生部2とX線検出部3とを有する旋回アーム10と、旋回アーム10を旋回可能に支持するアーム支持部20と、アーム支持部20を昇降可能に支持する支柱部30と、を備える。旋回アーム10においてX線発生部2とX線検出部3とは対向して配置可能に構成される。支柱部30は、床面に設置される基台40に立設される支柱本体31と、支柱本体31に昇降可能に取付けられる昇降体32とを有する。アーム支持部20は、昇降体32の上部に取り付けられて昇降体32とともに上下する。昇降体32は、モータ等の昇降機構(不図示)を介して支柱本体31に対して上下昇降可能に構成されている。
旋回アーム10は、X線発生部2及びX線検出部3を備える。旋回アーム10は、アーム支持部20に対して回転軸Pを中心に旋回可能に取り付けられている。旋回アーム10において、X線発生部2及びX線検出部3は回転軸Pを挟んで対向配置可能に備えられている。X線検出部3は、X線発生部2に対して対向配置された位置から退避可能に構成されている。本実施形態では、X線検出部3は、X線発生部2に対して対向配置された位置から独立して旋回アーム10の回転軸P周りに移動可能に構成されている。
X線発生部2は、X線管等のX線発生器と、X線ビームの広がりを規制するスリット等によって構成され、X線検出部3は、2次元的に広がったCCDセンサ等のX線検出器によって構成されている。
X線撮影装置Aは、昇降体32が昇降する上下方向をZ軸とし、該Z軸に直交するX軸(例えばアーム支持部20の延設方向)、Y軸(例えばアーム支持部20の横幅方向)からなる3次元の軸方向において、少なくとも旋回アーム10をX軸方向、Y軸方向の2次元において位置制御する。旋回アーム10は、アーム支持部20に内蔵されたX−Yテーブル(不図示)によって水平面域での2次元移動が可能とされている。
旋回アーム10の下方に、被験者Bの顎部を支持する顎位置決め部50が設けられている。図2、図3に示すように、顎位置決め部50は、支持フレーム51と、本体部52とを備える。昇降体32に支持フレーム51の一端が取付けられ、支持フレーム51の他端に本体部52が配置されている。これにより、顎位置決め部50は支柱部30に昇降可能に支持され、昇降体32の上下動に伴い、旋回アーム10と顎位置決め部50とが一体的に上下動する。
本体部52には被験者Bの頭部を固定するための頭部固定部53が備えられ、支持フレーム51には被験者Bが握るためのハンドル54が備えられている。頭部固定部53は、撮影に際して被験者Bの頭部を安定的に固定するために、被験者Bの顎を支持するためのチンレスト55と、一対の側頭部押さえ56とを有している。側頭部押さえ56は側頭部を固定するために左右に配置される。一対の側頭部押さえ56の間隔は、チンレスト55の側部に設けられたダイヤル57によって調整することができる。チンレスト55の上部には被験者Bの開口用のバイトブロック58が設けられている。
顎位置決め部50の支持フレーム51の近傍には第1カメラ33が取付けられ、旋回アーム10のX線発生部2には第2カメラ34が設けられている。第1カメラ33及び第2カメラ34は、顎位置決め部50に支持された被験者Bの顎部を含む顔部を撮影するために設けられている。本実施形態では、第1カメラ33は昇降体32に取付けられたカメラ支持体35に設けられている。支持フレーム51は、カメラ支持体35から延出している。第1カメラ33及び第2カメラ34は、写真用カメラとしてのみならず、連続的に撮影可能なビデオカメラとして機能するように構成されている。第1カメラ33は、顎位置決め部50に支持された被験者Bの顎部の正面方向からの撮影が可能であり、顎位置決め部50とともに上下動して被験者Bの顎部正面の画像を取得する。一方、第2カメラ34は、旋回アーム10においてX線発生部2を被験者Bの側方位置に移動させることで被験者Bの顎部側面の画像を取得する。
以下、図8を参照し、被験者Bのフランクフルト平面F及び咬合平面Gとの関係と、第1カメラ33について説明する。図8に示されるように、フランクフルト平面Fが図6に示す水平面Hに平行になるように被験者Bの頭部位置づけを行うと、パノラマX線撮影において被験者Bの顎部の解剖学的構造が明瞭に撮影されることが知られている。ここで、水平面HとはX線撮影装置Aの載置面(例えば床面)に平行な面である。上下の歯が接する平面である咬合平面Gは、フランクフルト平面Fに対して所定の角度を有しており、フランクフルト平面Fが水平面Hに平行になると、咬合平面Gは水平面Hから被験者Bの前方下向きに傾斜した状態になる。そこで、本実施形態では、図6に示されるように、第1カメラ33の光軸Cが水平面Hを基準にして斜め上方に向けられるように第1カメラ33を配置して、顎位置決め部50に支持された被験者Bの顎部を撮影する。
これにより、第1カメラ33の光軸Cを咬合平面G(図8参照)上に位置させることができる。第1カメラ33の光軸Cが咬合平面Gにある状態では、第1カメラ33の撮影画像(第1画像33a)において被験者Bの上下の歯が咬合する咬合部位が直線状になる(図7参照)。第1画像33a上には横方向に延びた直線である咬合線Dが重畳表示されている。従って、第1カメラ33の撮影画像で咬合部位と咬合線Dとが重なっていることを確認することにより、被験者Bの顎部がX線撮影をする上で適正な姿勢、すなわち被験者Bのフランクフルト平面Fが水平面Hに平行であるか否かを判断することができる。その結果、被験者Bの頭部位置づけを容易に行うことができる。
咬合平面Gは、フランクフルト平面Fに対し平均的に12度傾斜している。このため、個人差を考慮して、光軸Cが水平面Hを基準にして10〜15度上向きに傾斜するように第1カメラ33を配置することが好ましい。このように、水平面Hを基準とした第1カメラ33の光軸Cの傾斜角度が12度を含む狭い範囲内になるように第1カメラ33を配置することで、被験者Bの頭部位置づけにおいて、第1カメラ33の光軸Cを咬合平面G上に位置させやすくなり、容易にフランクフルト平面Fを水平面Hに平行にすることができる。これにより、簡便な方法で、第1カメラ33の撮影画像に基づく被験者Bの頭部位置づけをより精度よく行うことができる。
図6に示すように、X線撮影装置Aは、第1カメラ33の光軸Cから水平面Hの鉛直方向に60〜80mm上方であって当該光軸Cに平行な仮想平行線K上に、被験者Bの視線を誘導するための視線誘導体70を有する。本実施形態では、図1〜図3に示すように、支柱部30の昇降体32において、第1カメラ33の光軸Cとの交点を基準にして60〜80mm上方となる位置に、被験者Bの視線を誘導するための視線誘導体70が配置されている。被験者において歯の咬合位置から視点位置までの距離は、通常60〜80mmの間に収まる。視線誘導体70は、顎位置決め部50に顎部が載置された被験者Bの眼の位置よりも低い位置に配置され、術者の指示等により被験者Bが視線誘導体70を直視することで、被験者Bの頭部は前傾姿勢になる。これにより、被験者B自身の動作を利用してフランクフルト平面Fを水平面Hに平行になるように被験者Bを位置づけすることができる。その結果、被験者Bの頭部位置づけをさらに容易に行うことができる。本実施形態では、視線誘導体70は円形状のシール体で構成されている。シール体の形状は円形状に特定されず三角形、四角形等の他の形状であってもよい。
顎位置決め部50の支持フレーム51には、ブラケット51aを介して操作パネル60(モニタ部の一例)が取り付けられている。操作パネル60は支持フレーム51に対して姿勢変更可能に取り付けられている。操作パネル60は、第1カメラ33及び第2カメラ34によって撮影された撮影画像を表示可能に構成される。操作パネル60は、例えばタッチパネルで構成され、X線撮影装置Aの各種動作を指示するためのアイコンが表示され、該当するアイコンをタッチすることでその動作が選択される。
図5は、X線撮影装置Aのブロック図である。X線撮影装置Aは制御部80を含んで構成される。制御部80は、X線発生部2、X線検出部3、旋回アーム10、昇降体32、第1カメラ33及び第2カメラ34、頭部固定部53等を制御する。制御部80は操作パネル60による表示を制御し、操作パネル60からの指示に基づいて各種制御を実行することができる。操作パネル60は支持フレーム51から取り外し可能であって、取り外された状態であっても制御部80と通信可能に構成されている。
次に、X線撮影装置Aの使用方法について説明する。X線撮影装置Aに被験者Bを案内する前に、図4に示すように、X線発生部2及びX線検出部3が対向する状態から、第2カメラ34を有するX線発生部2に対して第2カメラ34を有しないX線検出部3を独立して旋回アーム10の回転軸P周りに移動させる。これにより、図4の二点鎖線で示されるように、X線検出部3をX線発生部2と同じく被験者Bの右側であって、第1カメラ33の撮影領域33Sと第2カメラ34の撮影領域34Sのいずれにも重複しない位置に移動させることができる。X線撮影装置Aに被験者Bを案内後に、X線発生部2に対してX線検出部3を独立して旋回アーム10の回転軸P周りに移動させるようにしてもよい。
このように、旋回アーム10において、第2カメラ34を有しないX線検出部3が第2カメラ34を有するX線発生部2に対して対向配置された位置から独立して旋回アーム10の回転軸P周りに移動することにより退避する。X線検出部3は回転軸P周りに移動するので、退避後も旋回アーム10の旋回領域内に収めることができる。これにより、第2カメラ34の撮影領域34SからX線検出部3が外れるようにすることができる。また、被験者Bを挟んで第2カメラ34に対向する位置に術者用のスペースを確保することができ、術者が被験者Bの側方からX線撮影装置Aの調整や操作パネル60での撮影画像の確認等を行うことができる。その結果、術者が被験者Bの頭部位置づけを容易に行うことができる。
次に、X線撮影装置Aの顎位置決め部50に被験者Bを案内し、被験者Bの頭部位置づけを行う。このとき、術者は、X線検出部3が存在しない被験者Bの左側に位置することで、被験者Bの顔部側面を直視しつつX線撮影装置Aの調整を行うことができる。術者は、チンレスト55の高さを調整して被験者Bの顎がチンレスト55に載置される状態にして被験者Bにバイトブロック58を噛ませる。この状態で、術者は被験者Bに対して視線誘導体70を見るように指示する。
術者は、操作パネル60に表示される被験者Bの正面画像(第1カメラ33によって撮影された第1画像33a)と、被験者Bの側面画像(第2カメラ34によって撮影された第2画像34a)を参照しつつチンレスト55の高さを微調整する。
操作パネル60に表示される、第1画像33aの一例を図7に示し、第2画像34aの一例を図8に示す。図7に示されるように、第1画像33aにおいて被験者Bの上下の歯が咬合する咬合部位が咬合線Dと重なって直線状に写ると、被験者Bの顎部がX線撮影をする上で適正な姿勢、すなわち被験者Bのフランクフルト平面Fが図6に示す水平面Hに平行であると判断できる。一方、図8に示すように、側面画像である第2画像34aには、フランクフルト平面Fの指標線と咬合平面Gの指標線とが重畳されるように構成されている。咬合部位が直線状に写っていれば、被験者Bの耳部付近を通るフランクフルト平面Fの指標線が水平面Hと平行になるように重畳表示され、被験者Bの咬合部付近を通る水平面Hを基準に被験者Bの前方下向きに傾斜する咬合平面Gの指標線が重畳表示される。術者は、第1画像33a及び第2画像34aにおいて、咬合線D、及びフランクフルト平面Fと咬合平面Gの夫々の指標線を参照することで被験者Bの頭部位置づけが容易になる。
第1画像33a及び第2画像34aと被験者Bの直視に基づいて、被験者Bの顎部の位置及び姿勢が適正であることを確認した後に被験者Bの側頭部を固定する。
被験者Bの頭部位置づけが完了すると、第1カメラ33及び第2カメラ34を用いてX線撮影のためのカメラスカウト指定を行う。図7に示すように、第1画像33aは、撮影領域を指定するための矩形の指標線Eが表示可能に構成されている。指標線Eによって特定される領域の大きさ、形状は適宜変更することができる。図8に示すように、第2画像34aにも、第1画像33aと同様の指標線Jが表示可能に構成されている。
パノラマ断層撮影の場合は、図7に示される第1画像33aの指標線Eで正中位置を指定し、図8に示される第2画像34aの指標線Jで犬歯位置を指定する。CT断層撮影の場合は、図7に示される第1画像33aの指標線Eで顔部の左右方向における撮影領域を指定し、図8に示される第2画像34aの指標線Jで顔部の前後方向における撮影領域を指定する。操作パネル60から制御部80が撮影領域の指定を受けると、制御部80はX線発生部2及びX線検出部3や旋回アーム10に対して制御信号を送信する。これにより、指定された撮影領域を撮影可能にする位置に、X線発生部2及びX線検出部3が移動するとともに、X線発生部2においてX線照射領域が調整され、X線検出部3においてX線検出領域が調整される。その後パノラマ断層撮影またはCT断層撮影が開始される。
〔別実施形態〕
(1)上記の実施形態では、第1カメラ33を支柱部30の昇降体32に取付けられたカメラ支持体35に設ける構成を示したが、図9に示すように、第1カメラ33は顎位置決め部50の本体部52から延びるステー52aに取付けてもよい。図示しないが、第1カメラ33は顎位置決め部50の支持フレーム51にブラケット51a等を介して取付けてもよい。
(2)上記の実施形態では、顎位置決め部50がチンレスト55とチンレスト55に設けられたバイトブロック58とを有する構成を示したが、図9に示すように、顎位置決め部50はチンレスト55を有さずに本体部52等からバイトブロック58が延設される構成でもよい。
(3)上記の実施形態では、第2カメラ34が旋回アーム10のX線発生部2に備えられた例を示したが、第2カメラ34はX線検出部3に備えられてもよい。
(4)X線発生部2及びX線検出部3のうち、第2カメラ34を有しない一方が第2カメラ34を有する他方に対して対向配置された位置から退避可能となる構成は上記の実施形態に限定されない。例えば、第2カメラ34を有しない一方(X線発生部2又はX線検出部3)を旋回アーム10に対して着脱可能に構成してもよい。旋回アーム10から第2カメラ34を有しない一方(X線発生部2又はX線検出部3)を取り外すことで第2カメラ34を有しない一方は当該対向配置された位置から退避可能になる。尚、X線撮影の際には、旋回アーム10に対して第2カメラ34を有しない一方(X線発生部2又はX線検出部3)を再度取付けることになる。その他、第2カメラ34を有しない一方(X線発生部2又はX線検出部3)を旋回アーム10の上方に向けて移動可能に構成してもよい。
(5)上記の実施形態では、視線誘導体70が支柱部30の昇降体32に配置されている例を示したが、視線誘導体70は、第1カメラ33の光軸Cから水平面Hの鉛直方向に60〜80mm上方であって当該光軸Cに平行な仮想平行線K上に存在していればよく、他の部材に配置されていてもよい。例えば、視線誘導体70を配置する部材(不図示)を、顎位置決め部50(支持フレーム51、本体部52、チンレスト55等)に対して上方に向けて取付けたり、アーム支持部20に対して下方に向けて取付けてもよい。
(6)視線誘導体70は、昇降体32の上下方向に複数設けてもよい。図10では、視線誘導体71が3つのシール体71a、71b、71cによって構成された例を示す。複数のシール体71a〜71cは、例えば、別途カバー体75a〜75cを備え、表示状態と非表示状態とに切換可能に構成してもよい。図11に示すように、視線誘導体72は昇降体32の上下方向に位置変更可能であってもよい。また、図12に示すように、視線誘導体73は、複数の発光体73a、73b、73cによって構成され、いずれか1つの発光体(例えば73b)を点灯させるようにしてもよい。
本発明は、頭部用のX線撮影装置に広く利用することができる。
2 :X線発生部
3 :X線検出部
10 :旋回アーム
20 :アーム支持部
30 :支柱部
32 :昇降体
33 :第1カメラ
33a :第1画像
34 :第2カメラ
34a :第2画像
35 :カメラ支持体
40 :基台
50 :顎位置決め部
51 :支持フレーム
53 :頭部固定部
55 :チンレスト
60 :操作パネル(モニタ部)
70,71,72,73 :視線誘導体
80 :制御部
A :X線撮影装置
B :被験者
C :光軸
F :指標線(フランクフルト平面)
G :指標線(咬合平面)
K :仮想平行線
P :回転軸
本発明は、被験者の頭部位置づけが行われる歯科用X線撮影装置、歯科用X線撮影装置における頭部姿勢調整方法、及び、視線誘導体に関する。
歯科におけるX線撮影では、X線撮影装置に被験者を案内した後、術者が被験者の頭部位置づけを行う。具体的には、術者が被験者に指示しつつ装置を調整することで被験者の頭部位置づけが行われる。
一般に、パノラマX線撮影では、被験者の頭部はフランクフルト平面が水平面(例えば床面)に平行になるように位置づけされる。フランクフルト平面とは、前方基準点である左右の眼窩最下点と、後方基準点である両外耳孔の上端を結んだ仮想平面である。フランクフルト平面を水平面に平行にすると咬合平面が適正な角度に前方傾斜するため、被験者の顎部の解剖学的構造がパノラマ断層撮影において明瞭にX線撮影されることが知られている。特許文献1にはビーム発生器を備えるX線撮影装置が示されている。このX線撮影装置では、ビーム発生器から水平面に平行なフランクフルト平面を示す水平ビームが被験者に照射され、当該水平ビームに基づいて被験者の頭部位置づけが行われる。
しかしながら、特許文献1に示されるX線撮影装置において、術者が被験者に指示しつつ装置を調整してフランクフルト平面を水平ビームに沿わせることは容易ではない。また、被験者がフランクフルト平面を認識することは難しく、被験者が視野付近の水平ビームを不快と感じることもある。
上記実情に鑑み、被験者の頭部位置づけを容易に行うことができる歯科用X線撮影装置が求められている。
本発明に係る歯科用X線撮影装置の特徴構成は、X線発生部とX線検出部とを有する旋回アームと、前記旋回アームを旋回可能に支持するアーム支持部と、前記アーム支持部を昇降可能に支持する支柱部と、前記支柱部に昇降可能に支持され、前記X線発生部と前記X線検出部との間に設けられた被験者の顎部を支持する顎位置決め部と、前記支柱部及び前記顎位置決め部の何れか一方に設けられ、前記顎位置決め部に支持された前記被験者の顎部の正面方向からの撮影が可能な第1カメラと、前記X線発生部及び前記X線検出部の何れか一方に設けられ、前記顎位置決め部に支持された前記被験者の顎部の側面方向からの撮影が可能な第2カメラと、前記顎位置決め部の近傍に配置され、前記第1カメラ及び前記第2カメラの撮影画像を表示可能に構成されるモニタ部と、を備え、前記第1カメラの光軸が水平面を基準にして斜め上方に向けられており、前記モニタ部に表示される前記第2カメラの撮影画像に、フランクフルト平面の指標線が水平面と平行になるように重畳表示される点にある。
フランクフルト平面が水平面に平行になるように被験者の頭部をX線撮影装置に位置づけると、特に被験者の顎部の解剖学的構造がパノラマ断層撮影において明瞭にX線撮影される。上下の歯が接する平面である咬合平面は、フランクフルト平面に対して所定の角度を有しており、フランクフルト平面が水平面に平行になると、咬合平面は水平面から被験者の前方下向きに傾斜した状態になる。本構成においては、支柱部及び顎位置決め部の何れか一方に設けられた第1カメラによって、当該第1カメラの光軸が水平面を基準にして斜め上方に向けられるようにカメラを配置して、顎位置決め部に支持された被験者の顎部を撮影することができる。
本構成により、フランクフルト平面が水平面に平行であるときに、被験者の顎部の正面撮影用の第1カメラは、その光軸が咬合平面上に位置させ易くなる。第1カメラの光軸が咬合平面にある状態では、第1カメラの撮影画像において被験者の上下の歯が咬合する境界部分が直線状になる。従って、第1カメラの撮影画像で境界部分を確認することにより、被験者の顎部がX線撮影をする上で適正な姿勢、すなわち被験者のフランクフルト平面が水平面に平行であるか否かが判断できる。その結果、被験者の頭部位置づけを容易に行うことができる。
他の特徴構成は、前記モニタ部に表示される前記第2カメラの撮影画像に、前記フランクフルト平面に対して所定の角度を有する咬合平面の指標線が更に重畳表示され、前記咬合平面の指標線は前記第1カメラの光軸に平行である点にある。
他の特徴構成は、前記第1カメラの光軸は、前記水平面を基準にした傾斜角度が10〜15度である点にある。
咬合平面は、フランクフルト平面に対し、平均的に12度傾斜している。そこで、本構成では、個人差を考慮して、カメラの光軸が水平面を基準にして10〜15度に傾斜するようにカメラを配置している。このように、水平面を基準としたカメラの光軸の傾斜角度を12度が含まれる狭い範囲内になるようにカメラを配置することで、被験者の頭部位置づけにおいて、カメラの光軸を咬合平面上に位置させやすくなり、容易にフランクフルト平面を水平面に平行にすることができる。これにより、簡便な方法で、カメラの撮影画像に基づく被験者の頭部位置づけをより精度よく行うことができる。
本発明に係る歯科用X線撮影装置の特徴構成は、X線発生部とX線検出部とを有する旋回アームと、前記旋回アームを旋回可能に支持するアーム支持部と、前記アーム支持部を昇降可能に支持する支柱部と、前記支柱部に昇降可能に支持され、前記X線発生部と前記X線検出部との間に設けられた被験者の顎部を支持する顎位置決め部と、前記支柱部及び前記顎位置決め部の何れか一方に設けられ、前記顎位置決め部に支持された前記被験者の顎部の正面方向からの撮影が可能なカメラと、を備え、前記カメラの光軸が水平面を基準にして斜め上方に向けられており、前記カメラの光軸から前記水平面の鉛直方向の上方且つ前記顎位置決め部に顎部が支持された前記被験者の眼の位置よりも低い位置であって当該光軸に平行な仮想平行線上に、前記被験者の視線を誘導するための視線誘導体を有する点にある。
他の特徴構成は、前記視線誘導体は、前記カメラの光軸から前記水平面の鉛直方向に60〜80mm上方に配置される点にある。
フランクフルト平面は、顎位置決め部に顎部が載置された被験者の頭部の傾きに応じて水平面に対する角度が変化する。フランクフルト平面が水平面に平行になると咬合平面は水平面に対して被験者の前方下向きに傾斜する。このことから、被験者の頭部が前傾になるとフランクフルト平面が水平面に平行になり易いことが理解される。
そこで、本構成では、第1カメラの光軸から水平面の鉛直方向の上方且つ前記顎位置決め部に顎部が支持された前記被験者の眼の位置よりも低い位置であって当該光軸に平行な仮想平行線上に、被験者の視線を誘導するための視線誘導体を有する。第1カメラの光軸は水平面を基準にして斜め上方に向けられており、第1カメラによって顎部の正面が撮影される。また、被験者において歯の咬合位置から視点位置までの距離は、通常60〜80mmの間に収まる。
すなわち、視線誘導体は、顎位置決め部に顎部が支持された被験者の眼の位置よりも低い位置に配置され、術者の指示等により被験者が視線誘導体を直視することで、被験者の頭部は前傾姿勢になる。これにより、被験者自身の動作を利用してフランクフルト平面を水平面に平行になるように被験者を位置づけすることができる。その結果、被験者の頭部位置づけをさらに容易に行うことができる。
他の特徴構成は、前記視線誘導体が前記支柱部に配置されている点にある。
歯科用X線撮影装置において、支柱部は、顎位置決め部に支持された被験者の顎部の正面方向を撮影するカメラを設けることが可能であり、当該カメラの位置から上方に延設されている。すなわち、支柱部にはカメラの光軸よりも上方に視線誘導体を配置するためのスペースが存在する。そのため、本構成では視線誘導体が支柱部に配置されている。これにより、視線誘導体を配置するためのブラケット等の部材は不要になる。その結果、歯科用X線撮影装置において視線誘導体を容易に配置することができる。
本発明に係る歯科用X線撮影装置における頭部姿勢調整方法の特徴構成は、X線発生部とX線検出部とを有する旋回アームと、前記旋回アームを旋回可能に支持するアーム支持部と、前記アーム支持部を昇降可能に支持する支柱部と、前記支柱部に昇降可能に支持され、前記X線発生部と前記X線検出部との間に設けられた被験者の顎部を支持する顎位置決め部と、前記X線発生部及び前記X線検出部の何れか一方に設けられ、前記顎位置決め部に支持された前記被験者の顎部の側面方向からの撮影が可能なカメラと、前記顎位置決め部の近傍に配置され、前記カメラの撮影画像を表示可能に構成されるモニタ部と、を備える歯科用X線撮影装置を用いた頭部姿勢調整方法であって、前記被験者の視線を誘導する視線誘導体を、前記支柱部の近傍且つ前記顎位置決め部に顎部が支持された前記被験者の眼の位置よりも低い位置に配置し、前記モニタ部において表示される前記カメラの撮影画像を参照しつつ、前記顎位置決め部に顎部が支持された前記被験者に前記視線誘導体を直視させることで、前記被験者の頭部姿勢を所定の前傾姿勢に調整する点にある。
本発明に係る視線誘導体の特徴構成は、X線発生部とX線検出部とを有する旋回アームと、前記旋回アームを旋回可能に支持するアーム支持部と、前記アーム支持部を昇降可能に支持する支柱部と、前記支柱部に昇降可能に支持され、前記X線発生部と前記X線検出部との間に設けられた被験者の顎部を支持する顎位置決め部と、を備える歯科用X線撮影装置に配置された視線誘導体であって、前記歯科用X線撮影装置によるX線撮影の際に、前記顎位置決め部に顎部が支持された前記被験者の頭部姿勢を所定の前傾姿勢にするために用いられ、前記支柱部の近傍且つ前記顎位置決め部に顎部が支持された前記被験者の眼の位置よりも低い位置に配置されて前記被験者の視線を誘導する点にある。
歯科用X線撮影装置の斜視図である。
歯科用X線撮影装置の部分側面図である。
歯科用X線撮影装置の部分正面図である。
第1カメラ及び第2カメラによる撮影状態を示す平断面図である。
歯科用X線撮影装置のブロック構成図である。
第1カメラによる撮影状態を示す側面図である。
モニタ部に表示される第1カメラの撮影画像の一例を示す図である。
モニタ部に表示される第2カメラの撮影画像の一例を示す図である。
別形態のX線撮影装置を示す部分側面図である。
別形態の視線誘導体を示す図である。
別形態の視線誘導体を示す図である。
別形態の視線誘導体を示す図である。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1〜図6に示される歯科用のX線撮影装置Aは、パノラマ断層撮影モード及びCT断層撮影モードを有している。X線撮影装置Aは、X線発生部2とX線検出部3とを有する旋回アーム10と、旋回アーム10を旋回可能に支持するアーム支持部20と、アーム支持部20を昇降可能に支持する支柱部30と、を備える。旋回アーム10においてX線発生部2とX線検出部3とは対向して配置可能に構成される。支柱部30は、床面に設置される基台40に立設される支柱本体31と、支柱本体31に昇降可能に取付けられる昇降体32とを有する。アーム支持部20は、昇降体32の上部に取り付けられて昇降体32とともに上下する。昇降体32は、モータ等の昇降機構(不図示)を介して支柱本体31に対して上下昇降可能に構成されている。
旋回アーム10は、X線発生部2及びX線検出部3を備える。旋回アーム10は、アーム支持部20に対して回転軸Pを中心に旋回可能に取り付けられている。旋回アーム10において、X線発生部2及びX線検出部3は回転軸Pを挟んで対向配置可能に備えられている。X線検出部3は、X線発生部2に対して対向配置された位置から退避可能に構成されている。本実施形態では、X線検出部3は、X線発生部2に対して対向配置された位置から独立して旋回アーム10の回転軸P周りに移動可能に構成されている。
X線発生部2は、X線管等のX線発生器と、X線ビームの広がりを規制するスリット等によって構成され、X線検出部3は、2次元的に広がったCCDセンサ等のX線検出器によって構成されている。
X線撮影装置Aは、昇降体32が昇降する上下方向をZ軸とし、該Z軸に直交するX軸(例えばアーム支持部20の延設方向)、Y軸(例えばアーム支持部20の横幅方向)からなる3次元の軸方向において、少なくとも旋回アーム10をX軸方向、Y軸方向の2次元において位置制御する。旋回アーム10は、アーム支持部20に内蔵されたX−Yテーブル(不図示)によって水平面域での2次元移動が可能とされている。
旋回アーム10の下方に、被験者Bの顎部を支持する顎位置決め部50が設けられている。図2、図3に示すように、顎位置決め部50は、支持フレーム51と、本体部52とを備える。昇降体32に支持フレーム51の一端が取付けられ、支持フレーム51の他端に本体部52が配置されている。これにより、顎位置決め部50は支柱部30に昇降可能に支持され、昇降体32の上下動に伴い、旋回アーム10と顎位置決め部50とが一体的に上下動する。
本体部52には被験者Bの頭部を固定するための頭部固定部53が備えられ、支持フレーム51には被験者Bが握るためのハンドル54が備えられている。頭部固定部53は、撮影に際して被験者Bの頭部を安定的に固定するために、被験者Bの顎を支持するためのチンレスト55と、一対の側頭部押さえ56とを有している。側頭部押さえ56は側頭部を固定するために左右に配置される。一対の側頭部押さえ56の間隔は、チンレスト55の側部に設けられたダイヤル57によって調整することができる。チンレスト55の上部には被験者Bの開口用のバイトブロック58が設けられている。
顎位置決め部50の支持フレーム51の近傍には第1カメラ33が取付けられ、旋回アーム10のX線発生部2には第2カメラ34が設けられている。第1カメラ33及び第2カメラ34は、顎位置決め部50に支持された被験者Bの顎部を含む顔部を撮影するために設けられている。本実施形態では、第1カメラ33は昇降体32に取付けられたカメラ支持体35に設けられている。支持フレーム51は、カメラ支持体35から延出している。第1カメラ33及び第2カメラ34は、写真用カメラとしてのみならず、連続的に撮影可能なビデオカメラとして機能するように構成されている。第1カメラ33は、顎位置決め部50に支持された被験者Bの顎部の正面方向からの撮影が可能であり、顎位置決め部50とともに上下動して被験者Bの顎部正面の画像を取得する。一方、第2カメラ34は、旋回アーム10においてX線発生部2を被験者Bの側方位置に移動させることで被験者Bの顎部側面の画像を取得する。
以下、図8を参照し、被験者Bのフランクフルト平面F及び咬合平面Gとの関係と、第1カメラ33について説明する。図8に示されるように、フランクフルト平面Fが図6に示す水平面Hに平行になるように被験者Bの頭部位置づけを行うと、パノラマX線撮影において被験者Bの顎部の解剖学的構造が明瞭に撮影されることが知られている。ここで、水平面HとはX線撮影装置Aの載置面(例えば床面)に平行な面である。上下の歯が接する平面である咬合平面Gは、フランクフルト平面Fに対して所定の角度を有しており、フランクフルト平面Fが水平面Hに平行になると、咬合平面Gは水平面Hから被験者Bの前方下向きに傾斜した状態になる。そこで、本実施形態では、図6に示されるように、第1カメラ33の光軸Cが水平面Hを基準にして斜め上方に向けられるように第1カメラ33を配置して、顎位置決め部50に支持された被験者Bの顎部を撮影する。
これにより、第1カメラ33の光軸Cを咬合平面G(図8参照)上に位置させることができる。第1カメラ33の光軸Cが咬合平面Gにある状態では、第1カメラ33の撮影画像(第1画像33a)において被験者Bの上下の歯が咬合する咬合部位が直線状になる(図7参照)。第1画像33a上には横方向に延びた直線である咬合線Dが重畳表示されている。従って、第1カメラ33の撮影画像で咬合部位と咬合線Dとが重なっていることを確認することにより、被験者Bの顎部がX線撮影をする上で適正な姿勢、すなわち被験者Bのフランクフルト平面Fが水平面Hに平行であるか否かを判断することができる。その結果、被験者Bの頭部位置づけを容易に行うことができる。
咬合平面Gは、フランクフルト平面Fに対し平均的に12度傾斜している。このため、個人差を考慮して、光軸Cが水平面Hを基準にして10〜15度上向きに傾斜するように第1カメラ33を配置することが好ましい。このように、水平面Hを基準とした第1カメラ33の光軸Cの傾斜角度が12度を含む狭い範囲内になるように第1カメラ33を配置することで、被験者Bの頭部位置づけにおいて、第1カメラ33の光軸Cを咬合平面G上に位置させやすくなり、容易にフランクフルト平面Fを水平面Hに平行にすることができる。これにより、簡便な方法で、第1カメラ33の撮影画像に基づく被験者Bの頭部位置づけをより精度よく行うことができる。
図6に示すように、X線撮影装置Aは、第1カメラ33の光軸Cから水平面Hの鉛直方向に60〜80mm上方であって当該光軸Cに平行な仮想平行線K上に、被験者Bの視線を誘導するための視線誘導体70を有する。本実施形態では、図1〜図3に示すように、支柱部30の昇降体32において、第1カメラ33の光軸Cとの交点を基準にして60〜80mm上方となる位置に、被験者Bの視線を誘導するための視線誘導体70が配置されている。被験者において歯の咬合位置から視点位置までの距離は、通常60〜80mmの間に収まる。視線誘導体70は、顎位置決め部50に顎部が載置された被験者Bの眼の位置よりも低い位置に配置され、術者の指示等により被験者Bが視線誘導体70を直視することで、被験者Bの頭部は前傾姿勢になる。これにより、被験者B自身の動作を利用してフランクフルト平面Fを水平面Hに平行になるように被験者Bを位置づけすることができる。その結果、被験者Bの頭部位置づけをさらに容易に行うことができる。本実施形態では、視線誘導体70は円形状のシール体で構成されている。シール体の形状は円形状に特定されず三角形、四角形等の他の形状であってもよい。
顎位置決め部50の支持フレーム51には、ブラケット51aを介して操作パネル60(モニタ部の一例)が取り付けられている。操作パネル60は支持フレーム51に対して姿勢変更可能に取り付けられている。操作パネル60は、第1カメラ33及び第2カメラ34によって撮影された撮影画像を表示可能に構成される。操作パネル60は、例えばタッチパネルで構成され、X線撮影装置Aの各種動作を指示するためのアイコンが表示され、該当するアイコンをタッチすることでその動作が選択される。
図5は、X線撮影装置Aのブロック図である。X線撮影装置Aは制御部80を含んで構成される。制御部80は、X線発生部2、X線検出部3、旋回アーム10、昇降体32、第1カメラ33及び第2カメラ34、頭部固定部53等を制御する。制御部80は操作パネル60による表示を制御し、操作パネル60からの指示に基づいて各種制御を実行することができる。操作パネル60は支持フレーム51から取り外し可能であって、取り外された状態であっても制御部80と通信可能に構成されている。
次に、X線撮影装置Aの使用方法について説明する。X線撮影装置Aに被験者Bを案内する前に、図4に示すように、X線発生部2及びX線検出部3が対向する状態から、第2カメラ34を有するX線発生部2に対して第2カメラ34を有しないX線検出部3を独立して旋回アーム10の回転軸P周りに移動させる。これにより、図4の二点鎖線で示されるように、X線検出部3をX線発生部2と同じく被験者Bの右側であって、第1カメラ33の撮影領域33Sと第2カメラ34の撮影領域34Sのいずれにも重複しない位置に移動させることができる。X線撮影装置Aに被験者Bを案内後に、X線発生部2に対してX線検出部3を独立して旋回アーム10の回転軸P周りに移動させるようにしてもよい。
このように、旋回アーム10において、第2カメラ34を有しないX線検出部3が第2カメラ34を有するX線発生部2に対して対向配置された位置から独立して旋回アーム10の回転軸P周りに移動することにより退避する。X線検出部3は回転軸P周りに移動するので、退避後も旋回アーム10の旋回領域内に収めることができる。これにより、第2カメラ34の撮影領域34SからX線検出部3が外れるようにすることができる。また、被験者Bを挟んで第2カメラ34に対向する位置に術者用のスペースを確保することができ、術者が被験者Bの側方からX線撮影装置Aの調整や操作パネル60での撮影画像の確認等を行うことができる。その結果、術者が被験者Bの頭部位置づけを容易に行うことができる。
次に、X線撮影装置Aの顎位置決め部50に被験者Bを案内し、被験者Bの頭部位置づけを行う。このとき、術者は、X線検出部3が存在しない被験者Bの左側に位置することで、被験者Bの顔部側面を直視しつつX線撮影装置Aの調整を行うことができる。術者は、チンレスト55の高さを調整して被験者Bの顎がチンレスト55に載置される状態にして被験者Bにバイトブロック58を噛ませる。この状態で、術者は被験者Bに対して視線誘導体70を見るように指示する。
術者は、操作パネル60に表示される被験者Bの正面画像(第1カメラ33によって撮影された第1画像33a)と、被験者Bの側面画像(第2カメラ34によって撮影された第2画像34a)を参照しつつチンレスト55の高さを微調整する。
操作パネル60に表示される、第1画像33aの一例を図7に示し、第2画像34aの一例を図8に示す。図7に示されるように、第1画像33aにおいて被験者Bの上下の歯が咬合する咬合部位が咬合線Dと重なって直線状に写ると、被験者Bの顎部がX線撮影をする上で適正な姿勢、すなわち被験者Bのフランクフルト平面Fが図6に示す水平面Hに平行であると判断できる。一方、図8に示すように、側面画像である第2画像34aには、フランクフルト平面Fの指標線と咬合平面Gの指標線とが重畳されるように構成されている。咬合部位が直線状に写っていれば、被験者Bの耳部付近を通るフランクフルト平面Fの指標線が水平面Hと平行になるように重畳表示され、被験者Bの咬合部付近を通る水平面Hを基準に被験者Bの前方下向きに傾斜する咬合平面Gの指標線が重畳表示される。術者は、第1画像33a及び第2画像34aにおいて、咬合線D、及びフランクフルト平面Fと咬合平面Gの夫々の指標線を参照することで被験者Bの頭部位置づけが容易になる。
第1画像33a及び第2画像34aと被験者Bの直視に基づいて、被験者Bの顎部の位置及び姿勢が適正であることを確認した後に被験者Bの側頭部を固定する。
被験者Bの頭部位置づけが完了すると、第1カメラ33及び第2カメラ34を用いてX線撮影のためのカメラスカウト指定を行う。図7に示すように、第1画像33aは、撮影領域を指定するための矩形の指標線Eが表示可能に構成されている。指標線Eによって特定される領域の大きさ、形状は適宜変更することができる。図8に示すように、第2画像34aにも、第1画像33aと同様の指標線Jが表示可能に構成されている。
パノラマ断層撮影の場合は、図7に示される第1画像33aの指標線Eで正中位置を指定し、図8に示される第2画像34aの指標線Jで犬歯位置を指定する。CT断層撮影の場合は、図7に示される第1画像33aの指標線Eで顔部の左右方向における撮影領域を指定し、図8に示される第2画像34aの指標線Jで顔部の前後方向における撮影領域を指定する。操作パネル60から制御部80が撮影領域の指定を受けると、制御部80はX線発生部2及びX線検出部3や旋回アーム10に対して制御信号を送信する。これにより、指定された撮影領域を撮影可能にする位置に、X線発生部2及びX線検出部3が移動するとともに、X線発生部2においてX線照射領域が調整され、X線検出部3においてX線検出領域が調整される。その後パノラマ断層撮影またはCT断層撮影が開始される。
〔別実施形態〕
(1)上記の実施形態では、第1カメラ33を支柱部30の昇降体32に取付けられたカメラ支持体35に設ける構成を示したが、図9に示すように、第1カメラ33は顎位置決め部50の本体部52から延びるステー52aに取付けてもよい。図示しないが、第1カメラ33は顎位置決め部50の支持フレーム51にブラケット51a等を介して取付けてもよい。
(2)上記の実施形態では、顎位置決め部50がチンレスト55とチンレスト55に設けられたバイトブロック58とを有する構成を示したが、図9に示すように、顎位置決め部50はチンレスト55を有さずに本体部52等からバイトブロック58が延設される構成でもよい。
(3)上記の実施形態では、第2カメラ34が旋回アーム10のX線発生部2に備えられた例を示したが、第2カメラ34はX線検出部3に備えられてもよい。
(4)X線発生部2及びX線検出部3のうち、第2カメラ34を有しない一方が第2カメラ34を有する他方に対して対向配置された位置から退避可能となる構成は上記の実施形態に限定されない。例えば、第2カメラ34を有しない一方(X線発生部2又はX線検出部3)を旋回アーム10に対して着脱可能に構成してもよい。旋回アーム10から第2カメラ34を有しない一方(X線発生部2又はX線検出部3)を取り外すことで第2カメラ34を有しない一方は当該対向配置された位置から退避可能になる。尚、X線撮影の際には、旋回アーム10に対して第2カメラ34を有しない一方(X線発生部2又はX線検出部3)を再度取付けることになる。その他、第2カメラ34を有しない一方(X線発生部2又はX線検出部3)を旋回アーム10の上方に向けて移動可能に構成してもよい。
(5)上記の実施形態では、視線誘導体70が支柱部30の昇降体32に配置されている例を示したが、視線誘導体70は、第1カメラ33の光軸Cから水平面Hの鉛直方向に60〜80mm上方であって当該光軸Cに平行な仮想平行線K上に存在していればよく、他の部材に配置されていてもよい。例えば、視線誘導体70を配置する部材(不図示)を、顎位置決め部50(支持フレーム51、本体部52、チンレスト55等)に対して上方に向けて取付けたり、アーム支持部20に対して下方に向けて取付けてもよい。
(6)視線誘導体70は、昇降体32の上下方向に複数設けてもよい。図10では、視線誘導体71が3つのシール体71a、71b、71cによって構成された例を示す。複数のシール体71a〜71cは、例えば、別途カバー体75a〜75cを備え、表示状態と非表示状態とに切換可能に構成してもよい。図11に示すように、視線誘導体72は昇降体32の上下方向に位置変更可能であってもよい。また、図12に示すように、視線誘導体73は、複数の発光体73a、73b、73cによって構成され、いずれか1つの発光体(例えば73b)を点灯させるようにしてもよい。
本発明は、頭部用のX線撮影装置に広く利用することができる。
2 :X線発生部
3 :X線検出部
10 :旋回アーム
20 :アーム支持部
30 :支柱部
32 :昇降体
33 :第1カメラ
33a :第1画像
34 :第2カメラ
34a :第2画像
35 :カメラ支持体
40 :基台
50 :顎位置決め部
51 :支持フレーム
53 :頭部固定部
55 :チンレスト
60 :操作パネル(モニタ部)
70,71,72,73 :視線誘導体
80 :制御部
A :X線撮影装置
B :被験者
C :光軸
F :指標線(フランクフルト平面)
G :指標線(咬合平面)
K :仮想平行線
P :回転軸
本発明は、被験者の頭部位置づけが行われる歯科用X線撮影装置に関する。
歯科におけるX線撮影では、X線撮影装置に被験者を案内した後、術者が被験者の頭部位置づけを行う。具体的には、術者が被験者に指示しつつ装置を調整することで被験者の頭部位置づけが行われる。
一般に、パノラマX線撮影では、被験者の頭部はフランクフルト平面が水平面(例えば床面)に平行になるように位置づけされる。フランクフルト平面とは、前方基準点である左右の眼窩最下点と、後方基準点である両外耳孔の上端を結んだ仮想平面である。フランクフルト平面を水平面に平行にすると咬合平面が適正な角度に前方傾斜するため、被験者の顎部の解剖学的構造がパノラマ断層撮影において明瞭にX線撮影されることが知られている。特許文献1にはビーム発生器を備えるX線撮影装置が示されている。このX線撮影装置では、ビーム発生器から水平面に平行なフランクフルト平面を示す水平ビームが被験者に照射され、当該水平ビームに基づいて被験者の頭部位置づけが行われる。
しかしながら、特許文献1に示されるX線撮影装置において、術者が被験者に指示しつつ装置を調整してフランクフルト平面を水平ビームに沿わせることは容易ではない。また、被験者がフランクフルト平面を認識することは難しく、被験者が視野付近の水平ビームを不快と感じることもある。
上記実情に鑑み、被験者の頭部位置づけを容易に行うことができる歯科用X線撮影装置が求められている。
本発明に係る歯科用X線撮影装置の特徴構成は、X線発生部とX線検出部とを有する旋回アームと、前記旋回アームを旋回可能に支持するアーム支持部と、前記アーム支持部を昇降可能に支持する支柱部と、前記支柱部に昇降可能に支持され、前記X線発生部と前記X線検出部との間に設けられた被験者の顎部を支持する顎位置決め部と、前記支柱部及び前記顎位置決め部の何れか一方に設けられ、前記顎位置決め部に支持された前記被験者の顎部の正面方向からの撮影が可能な第1カメラと、前記X線発生部及び前記X線検出部の何れか一方に設けられ、前記顎位置決め部に支持された前記被験者の顎部の側面方向からの撮影が可能な第2カメラと、前記顎位置決め部の近傍に配置され、前記第1カメラ及び前記第2カメラの撮影画像を表示可能に構成されるモニタ部と、を備え、前記第1カメラの光軸が水平面を基準にして斜め上方に向けられており、前記モニタ部に表示される前記第1カメラの撮影画像に前記被験者の咬合部位が直線状に写っているときに、前記モニタ部に表示される前記第2カメラの撮影画像に写る前記被験者のフランクフルト平面が、前記水平面と平行になる点にある。
フランクフルト平面が水平面に平行になるように被験者の頭部をX線撮影装置に位置づけると、特に被験者の顎部の解剖学的構造がパノラマ断層撮影において明瞭にX線撮影される。上下の歯が接する平面である咬合平面は、フランクフルト平面に対して所定の角度を有しており、フランクフルト平面が水平面に平行になると、咬合平面は水平面から被験者の前方下向きに傾斜した状態になる。本構成においては、支柱部及び顎位置決め部の何れか一方に設けられた第1カメラによって、当該第1カメラの光軸が水平面を基準にして斜め上方に向けられるようにカメラを配置して、顎位置決め部に支持された被験者の顎部を撮影することができる。
本構成により、フランクフルト平面が水平面に平行であるときに、被験者の顎部の正面撮影用の第1カメラは、その光軸が咬合平面上に位置させ易くなる。第1カメラの光軸が咬合平面にある状態では、第1カメラの撮影画像において被験者の上下の歯が咬合する境界部分が直線状になる。従って、第1カメラの撮影画像で境界部分を確認することにより、被験者の顎部がX線撮影をする上で適正な姿勢、すなわち被験者のフランクフルト平面が水平面に平行であるか否かが判断できる。その結果、被験者の頭部位置づけを容易に行うことができる。
他の特徴構成は、前記モニタ部に表示される前記第1カメラの撮影画像に、横方向に延びた直線である咬合線が重畳表示される点にある。
他の特徴構成は、前記モニタ部に表示される前記第1カメラの撮影画像に重畳表示された前記咬合線に、前記被験者の前記咬合部位が重なって写っているときに、前記モニタ部に表示される前記第2カメラの撮影画像に写る前記被験者のフランクフルト平面が、前記水平面と平行になる点にある。
他の特徴構成は、前記モニタ部に表示される前記第1カメラの撮影画像に前記被験者の前記咬合部位が直線状に写っているときに、前記モニタ部に表示される前記第2カメラの撮影画像に、前記フランクフルト平面の指標線が前記水平面と平行になるように重畳表示される点にある。
他の特徴構成は、前記モニタ部に表示される前記第2カメラの撮影画像に、前記フランクフルト平面に対して所定の角度を有する咬合平面の指標線が更に重畳表示され、前記咬合平面の指標線は前記第1カメラの光軸に平行である点にある。
他の特徴構成は、前記第1カメラの光軸は、前記水平面を基準にした傾斜角度が10〜15度である点にある。
咬合平面は、フランクフルト平面に対し、平均的に12度傾斜している。そこで、本構成では、個人差を考慮して、カメラの光軸が水平面を基準にして10〜15度に傾斜するようにカメラを配置している。このように、水平面を基準としたカメラの光軸の傾斜角度を12度が含まれる狭い範囲内になるようにカメラを配置することで、被験者の頭部位置づけにおいて、カメラの光軸を咬合平面上に位置させやすくなり、容易にフランクフルト平面を水平面に平行にすることができる。これにより、簡便な方法で、カメラの撮影画像に基づく被験者の頭部位置づけをより精度よく行うことができる。
本発明に係る歯科用X線撮影装置の特徴構成は、X線発生部とX線検出部とを有する旋回アームと、前記旋回アームを旋回可能に支持するアーム支持部と、前記アーム支持部を昇降可能に支持する支柱部と、前記支柱部に昇降可能に支持され、前記X線発生部と前記X線検出部との間に設けられた被験者の顎部を支持する顎位置決め部と、前記支柱部及び前記顎位置決め部の何れか一方に設けられ、前記顎位置決め部に支持された前記被験者の顎部の正面方向からの撮影が可能なカメラと、を備え、前記カメラの光軸が水平面を基準にして斜め上方に向けられており、前記カメラの光軸から前記水平面の鉛直方向の上方且つ前記顎位置決め部に顎部が支持された前記被験者の眼の位置よりも低い位置であって当該光軸に平行な仮想平行線上に、前記被験者の視線を誘導するための視線誘導体を有する点にある。
他の特徴構成は、前記視線誘導体は、前記カメラの光軸から前記水平面の鉛直方向に60〜80mm上方に配置される点にある。
フランクフルト平面は、顎位置決め部に顎部が載置された被験者の頭部の傾きに応じて水平面に対する角度が変化する。フランクフルト平面が水平面に平行になると咬合平面は水平面に対して被験者の前方下向きに傾斜する。このことから、被験者の頭部が前傾になるとフランクフルト平面が水平面に平行になり易いことが理解される。
そこで、本構成では、第1カメラの光軸から水平面の鉛直方向の上方且つ前記顎位置決め部に顎部が支持された前記被験者の眼の位置よりも低い位置であって当該光軸に平行な仮想平行線上に、被験者の視線を誘導するための視線誘導体を有する。第1カメラの光軸は水平面を基準にして斜め上方に向けられており、第1カメラによって顎部の正面が撮影される。また、被験者において歯の咬合位置から視点位置までの距離は、通常60〜80mmの間に収まる。
すなわち、視線誘導体は、顎位置決め部に顎部が支持された被験者の眼の位置よりも低い位置に配置され、術者の指示等により被験者が視線誘導体を直視することで、被験者の頭部は前傾姿勢になる。これにより、被験者自身の動作を利用してフランクフルト平面を水平面に平行になるように被験者を位置づけすることができる。その結果、被験者の頭部位置づけをさらに容易に行うことができる。
他の特徴構成は、前記視線誘導体が前記支柱部に配置されている点にある。
歯科用X線撮影装置において、支柱部は、顎位置決め部に支持された被験者の顎部の正面方向を撮影するカメラを設けることが可能であり、当該カメラの位置から上方に延設されている。すなわち、支柱部にはカメラの光軸よりも上方に視線誘導体を配置するためのスペースが存在する。そのため、本構成では視線誘導体が支柱部に配置されている。これにより、視線誘導体を配置するためのブラケット等の部材は不要になる。その結果、歯科用X線撮影装置において視線誘導体を容易に配置することができる。
本発明に係る歯科用X線撮影装置における頭部姿勢調整方法の特徴構成は、X線発生部とX線検出部とを有する旋回アームと、前記旋回アームを旋回可能に支持するアーム支持部と、前記アーム支持部を昇降可能に支持する支柱部と、前記支柱部に昇降可能に支持され、前記X線発生部と前記X線検出部との間に設けられた被験者の顎部を支持する顎位置決め部と、前記X線発生部及び前記X線検出部の何れか一方に設けられ、前記顎位置決め部に支持された前記被験者の顎部の側面方向からの撮影が可能なカメラと、前記顎位置決め部の近傍に配置され、前記カメラの撮影画像を表示可能に構成されるモニタ部と、を備える歯科用X線撮影装置を用いた頭部姿勢調整方法であって、前記被験者の視線を誘導する視線誘導体を、前記支柱部の近傍且つ前記顎位置決め部に顎部が支持された前記被験者の眼の位置よりも低い位置に配置し、前記モニタ部において表示される前記カメラの撮影画像を参照しつつ、前記顎位置決め部に顎部が支持された前記被験者に前記視線誘導体を直視させることで、前記被験者の頭部姿勢を所定の前傾姿勢に調整する点にある。
本発明に係る視線誘導体の特徴構成は、X線発生部とX線検出部とを有する旋回アームと、前記旋回アームを旋回可能に支持するアーム支持部と、前記アーム支持部を昇降可能に支持する支柱部と、前記支柱部に昇降可能に支持され、前記X線発生部と前記X線検出部との間に設けられた被験者の顎部を支持する顎位置決め部と、を備える歯科用X線撮影装置に配置された視線誘導体であって、前記歯科用X線撮影装置によるX線撮影の際に、前記顎位置決め部に顎部が支持された前記被験者の頭部姿勢を所定の前傾姿勢にするために用いられ、前記支柱部の近傍且つ前記顎位置決め部に顎部が支持された前記被験者の眼の位置よりも低い位置に配置されて前記被験者の視線を誘導する点にある。
歯科用X線撮影装置の斜視図である。
歯科用X線撮影装置の部分側面図である。
歯科用X線撮影装置の部分正面図である。
第1カメラ及び第2カメラによる撮影状態を示す平断面図である。
歯科用X線撮影装置のブロック構成図である。
第1カメラによる撮影状態を示す側面図である。
モニタ部に表示される第1カメラの撮影画像の一例を示す図である。
モニタ部に表示される第2カメラの撮影画像の一例を示す図である。
別形態のX線撮影装置を示す部分側面図である。
別形態の視線誘導体を示す図である。
別形態の視線誘導体を示す図である。
別形態の視線誘導体を示す図である。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1〜図6に示される歯科用のX線撮影装置Aは、パノラマ断層撮影モード及びCT断層撮影モードを有している。X線撮影装置Aは、X線発生部2とX線検出部3とを有する旋回アーム10と、旋回アーム10を旋回可能に支持するアーム支持部20と、アーム支持部20を昇降可能に支持する支柱部30と、を備える。旋回アーム10においてX線発生部2とX線検出部3とは対向して配置可能に構成される。支柱部30は、床面に設置される基台40に立設される支柱本体31と、支柱本体31に昇降可能に取付けられる昇降体32とを有する。アーム支持部20は、昇降体32の上部に取り付けられて昇降体32とともに上下する。昇降体32は、モータ等の昇降機構(不図示)を介して支柱本体31に対して上下昇降可能に構成されている。
旋回アーム10は、X線発生部2及びX線検出部3を備える。旋回アーム10は、アーム支持部20に対して回転軸Pを中心に旋回可能に取り付けられている。旋回アーム10において、X線発生部2及びX線検出部3は回転軸Pを挟んで対向配置可能に備えられている。X線検出部3は、X線発生部2に対して対向配置された位置から退避可能に構成されている。本実施形態では、X線検出部3は、X線発生部2に対して対向配置された位置から独立して旋回アーム10の回転軸P周りに移動可能に構成されている。
X線発生部2は、X線管等のX線発生器と、X線ビームの広がりを規制するスリット等によって構成され、X線検出部3は、2次元的に広がったCCDセンサ等のX線検出器によって構成されている。
X線撮影装置Aは、昇降体32が昇降する上下方向をZ軸とし、該Z軸に直交するX軸(例えばアーム支持部20の延設方向)、Y軸(例えばアーム支持部20の横幅方向)からなる3次元の軸方向において、少なくとも旋回アーム10をX軸方向、Y軸方向の2次元において位置制御する。旋回アーム10は、アーム支持部20に内蔵されたX−Yテーブル(不図示)によって水平面域での2次元移動が可能とされている。
旋回アーム10の下方に、被験者Bの顎部を支持する顎位置決め部50が設けられている。図2、図3に示すように、顎位置決め部50は、支持フレーム51と、本体部52とを備える。昇降体32に支持フレーム51の一端が取付けられ、支持フレーム51の他端に本体部52が配置されている。これにより、顎位置決め部50は支柱部30に昇降可能に支持され、昇降体32の上下動に伴い、旋回アーム10と顎位置決め部50とが一体的に上下動する。
本体部52には被験者Bの頭部を固定するための頭部固定部53が備えられ、支持フレーム51には被験者Bが握るためのハンドル54が備えられている。頭部固定部53は、撮影に際して被験者Bの頭部を安定的に固定するために、被験者Bの顎を支持するためのチンレスト55と、一対の側頭部押さえ56とを有している。側頭部押さえ56は側頭部を固定するために左右に配置される。一対の側頭部押さえ56の間隔は、チンレスト55の側部に設けられたダイヤル57によって調整することができる。チンレスト55の上部には被験者Bの開口用のバイトブロック58が設けられている。
顎位置決め部50の支持フレーム51の近傍には第1カメラ33が取付けられ、旋回アーム10のX線発生部2には第2カメラ34が設けられている。第1カメラ33及び第2カメラ34は、顎位置決め部50に支持された被験者Bの顎部を含む顔部を撮影するために設けられている。本実施形態では、第1カメラ33は昇降体32に取付けられたカメラ支持体35に設けられている。支持フレーム51は、カメラ支持体35から延出している。第1カメラ33及び第2カメラ34は、写真用カメラとしてのみならず、連続的に撮影可能なビデオカメラとして機能するように構成されている。第1カメラ33は、顎位置決め部50に支持された被験者Bの顎部の正面方向からの撮影が可能であり、顎位置決め部50とともに上下動して被験者Bの顎部正面の画像を取得する。一方、第2カメラ34は、旋回アーム10においてX線発生部2を被験者Bの側方位置に移動させることで被験者Bの顎部側面の画像を取得する。
以下、図8を参照し、被験者Bのフランクフルト平面F及び咬合平面Gとの関係と、第1カメラ33について説明する。図8に示されるように、フランクフルト平面Fが図6に示す水平面Hに平行になるように被験者Bの頭部位置づけを行うと、パノラマX線撮影において被験者Bの顎部の解剖学的構造が明瞭に撮影されることが知られている。ここで、水平面HとはX線撮影装置Aの載置面(例えば床面)に平行な面である。上下の歯が接する平面である咬合平面Gは、フランクフルト平面Fに対して所定の角度を有しており、フランクフルト平面Fが水平面Hに平行になると、咬合平面Gは水平面Hから被験者Bの前方下向きに傾斜した状態になる。そこで、本実施形態では、図6に示されるように、第1カメラ33の光軸Cが水平面Hを基準にして斜め上方に向けられるように第1カメラ33を配置して、顎位置決め部50に支持された被験者Bの顎部を撮影する。
これにより、第1カメラ33の光軸Cを咬合平面G(図8参照)上に位置させることができる。第1カメラ33の光軸Cが咬合平面Gにある状態では、第1カメラ33の撮影画像(第1画像33a)において被験者Bの上下の歯が咬合する咬合部位が直線状になる(図7参照)。第1画像33a上には横方向に延びた直線である咬合線Dが重畳表示されている。従って、第1カメラ33の撮影画像で咬合部位と咬合線Dとが重なっていることを確認することにより、被験者Bの顎部がX線撮影をする上で適正な姿勢、すなわち被験者Bのフランクフルト平面Fが水平面Hに平行であるか否かを判断することができる。その結果、被験者Bの頭部位置づけを容易に行うことができる。
咬合平面Gは、フランクフルト平面Fに対し平均的に12度傾斜している。このため、個人差を考慮して、光軸Cが水平面Hを基準にして10〜15度上向きに傾斜するように第1カメラ33を配置することが好ましい。このように、水平面Hを基準とした第1カメラ33の光軸Cの傾斜角度が12度を含む狭い範囲内になるように第1カメラ33を配置することで、被験者Bの頭部位置づけにおいて、第1カメラ33の光軸Cを咬合平面G上に位置させやすくなり、容易にフランクフルト平面Fを水平面Hに平行にすることができる。これにより、簡便な方法で、第1カメラ33の撮影画像に基づく被験者Bの頭部位置づけをより精度よく行うことができる。
図6に示すように、X線撮影装置Aは、第1カメラ33の光軸Cから水平面Hの鉛直方向に60〜80mm上方であって当該光軸Cに平行な仮想平行線K上に、被験者Bの視線を誘導するための視線誘導体70を有する。本実施形態では、図1〜図3に示すように、支柱部30の昇降体32において、第1カメラ33の光軸Cとの交点を基準にして60〜80mm上方となる位置に、被験者Bの視線を誘導するための視線誘導体70が配置されている。被験者において歯の咬合位置から視点位置までの距離は、通常60〜80mmの間に収まる。視線誘導体70は、顎位置決め部50に顎部が載置された被験者Bの眼の位置よりも低い位置に配置され、術者の指示等により被験者Bが視線誘導体70を直視することで、被験者Bの頭部は前傾姿勢になる。これにより、被験者B自身の動作を利用してフランクフルト平面Fを水平面Hに平行になるように被験者Bを位置づけすることができる。その結果、被験者Bの頭部位置づけをさらに容易に行うことができる。本実施形態では、視線誘導体70は円形状のシール体で構成されている。シール体の形状は円形状に特定されず三角形、四角形等の他の形状であってもよい。
顎位置決め部50の支持フレーム51には、ブラケット51aを介して操作パネル60(モニタ部の一例)が取り付けられている。操作パネル60は支持フレーム51に対して姿勢変更可能に取り付けられている。操作パネル60は、第1カメラ33及び第2カメラ34によって撮影された撮影画像を表示可能に構成される。操作パネル60は、例えばタッチパネルで構成され、X線撮影装置Aの各種動作を指示するためのアイコンが表示され、該当するアイコンをタッチすることでその動作が選択される。
図5は、X線撮影装置Aのブロック図である。X線撮影装置Aは制御部80を含んで構成される。制御部80は、X線発生部2、X線検出部3、旋回アーム10、昇降体32、第1カメラ33及び第2カメラ34、頭部固定部53等を制御する。制御部80は操作パネル60による表示を制御し、操作パネル60からの指示に基づいて各種制御を実行することができる。操作パネル60は支持フレーム51から取り外し可能であって、取り外された状態であっても制御部80と通信可能に構成されている。
次に、X線撮影装置Aの使用方法について説明する。X線撮影装置Aに被験者Bを案内する前に、図4に示すように、X線発生部2及びX線検出部3が対向する状態から、第2カメラ34を有するX線発生部2に対して第2カメラ34を有しないX線検出部3を独立して旋回アーム10の回転軸P周りに移動させる。これにより、図4の二点鎖線で示されるように、X線検出部3をX線発生部2と同じく被験者Bの右側であって、第1カメラ33の撮影領域33Sと第2カメラ34の撮影領域34Sのいずれにも重複しない位置に移動させることができる。X線撮影装置Aに被験者Bを案内後に、X線発生部2に対してX線検出部3を独立して旋回アーム10の回転軸P周りに移動させるようにしてもよい。
このように、旋回アーム10において、第2カメラ34を有しないX線検出部3が第2カメラ34を有するX線発生部2に対して対向配置された位置から独立して旋回アーム10の回転軸P周りに移動することにより退避する。X線検出部3は回転軸P周りに移動するので、退避後も旋回アーム10の旋回領域内に収めることができる。これにより、第2カメラ34の撮影領域34SからX線検出部3が外れるようにすることができる。また、被験者Bを挟んで第2カメラ34に対向する位置に術者用のスペースを確保することができ、術者が被験者Bの側方からX線撮影装置Aの調整や操作パネル60での撮影画像の確認等を行うことができる。その結果、術者が被験者Bの頭部位置づけを容易に行うことができる。
次に、X線撮影装置Aの顎位置決め部50に被験者Bを案内し、被験者Bの頭部位置づけを行う。このとき、術者は、X線検出部3が存在しない被験者Bの左側に位置することで、被験者Bの顔部側面を直視しつつX線撮影装置Aの調整を行うことができる。術者は、チンレスト55の高さを調整して被験者Bの顎がチンレスト55に載置される状態にして被験者Bにバイトブロック58を噛ませる。この状態で、術者は被験者Bに対して視線誘導体70を見るように指示する。
術者は、操作パネル60に表示される被験者Bの正面画像(第1カメラ33によって撮影された第1画像33a)と、被験者Bの側面画像(第2カメラ34によって撮影された第2画像34a)を参照しつつチンレスト55の高さを微調整する。
操作パネル60に表示される、第1画像33aの一例を図7に示し、第2画像34aの一例を図8に示す。図7に示されるように、第1画像33aにおいて被験者Bの上下の歯が咬合する咬合部位が咬合線Dと重なって直線状に写ると、被験者Bの顎部がX線撮影をする上で適正な姿勢、すなわち被験者Bのフランクフルト平面Fが図6に示す水平面Hに平行であると判断できる。一方、図8に示すように、側面画像である第2画像34aには、フランクフルト平面Fの指標線と咬合平面Gの指標線とが重畳されるように構成されている。咬合部位が直線状に写っていれば、被験者Bの耳部付近を通るフランクフルト平面Fの指標線が水平面Hと平行になるように重畳表示され、被験者Bの咬合部付近を通る水平面Hを基準に被験者Bの前方下向きに傾斜する咬合平面Gの指標線が重畳表示される。
術者は、第1画像33a及び第2画像34aにおいて、咬合線D、及びフランクフルト平面Fと咬合平面Gの夫々の指標線を参照することで被験者Bの頭部位置づけが容易になる。
第1画像33a及び第2画像34aと被験者Bの直視に基づいて、被験者Bの顎部の位置及び姿勢が適正であることを確認した後に被験者Bの側頭部を固定する。
被験者Bの頭部位置づけが完了すると、第1カメラ33及び第2カメラ34を用いてX線撮影のためのカメラスカウト指定を行う。図7に示すように、第1画像33aは、撮影領域を指定するための矩形の指標線Eが表示可能に構成されている。指標線Eによって特定される領域の大きさ、形状は適宜変更することができる。図8に示すように、第2画像34aにも、第1画像33aと同様の指標線Jが表示可能に構成されている。
パノラマ断層撮影の場合は、図7に示される第1画像33aの指標線Eで正中位置を指定し、図8に示される第2画像34aの指標線Jで犬歯位置を指定する。CT断層撮影の場合は、図7に示される第1画像33aの指標線Eで顔部の左右方向における撮影領域を指定し、図8に示される第2画像34aの指標線Jで顔部の前後方向における撮影領域を指定する。操作パネル60から制御部80が撮影領域の指定を受けると、制御部80はX線発生部2及びX線検出部3や旋回アーム10に対して制御信号を送信する。これにより、指定された撮影領域を撮影可能にする位置に、X線発生部2及びX線検出部3が移動するとともに、X線発生部2においてX線照射領域が調整され、X線検出部3においてX線検出領域が調整される。その後パノラマ断層撮影またはCT断層撮影が開始される。
〔別実施形態〕
(1)上記の実施形態では、第1カメラ33を支柱部30の昇降体32に取付けられたカメラ支持体35に設ける構成を示したが、図9に示すように、第1カメラ33は顎位置決め部50の本体部52から延びるステー52aに取付けてもよい。図示しないが、第1カメラ33は顎位置決め部50の支持フレーム51にブラケット51a等を介して取付けてもよい。
(2)上記の実施形態では、顎位置決め部50がチンレスト55とチンレスト55に設けられたバイトブロック58とを有する構成を示したが、図9に示すように、顎位置決め部50はチンレスト55を有さずに本体部52等からバイトブロック58が延設される構成でもよい。
(3)上記の実施形態では、第2カメラ34が旋回アーム10のX線発生部2に備えられた例を示したが、第2カメラ34はX線検出部3に備えられてもよい。
(4)X線発生部2及びX線検出部3のうち、第2カメラ34を有しない一方が第2カメラ34を有する他方に対して対向配置された位置から退避可能となる構成は上記の実施形態に限定されない。例えば、第2カメラ34を有しない一方(X線発生部2又はX線検出部3)を旋回アーム10に対して着脱可能に構成してもよい。旋回アーム10から第2カメラ34を有しない一方(X線発生部2又はX線検出部3)を取り外すことで第2カメラ34を有しない一方は当該対向配置された位置から退避可能になる。尚、X線撮影の際には、旋回アーム10に対して第2カメラ34を有しない一方(X線発生部2又はX線検出部3)を再度取付けることになる。その他、第2カメラ34を有しない一方(X線発生部2又はX線検出部3)を旋回アーム10の上方に向けて移動可能に構成してもよい。
(5)上記の実施形態では、視線誘導体70が支柱部30の昇降体32に配置されている例を示したが、視線誘導体70は、第1カメラ33の光軸Cから水平面Hの鉛直方向に60〜80mm上方であって当該光軸Cに平行な仮想平行線K上に存在していればよく、他の部材に配置されていてもよい。例えば、視線誘導体70を配置する部材(不図示)を、顎位置決め部50(支持フレーム51、本体部52、チンレスト55等)に対して上方に向けて取付けたり、アーム支持部20に対して下方に向けて取付けてもよい。
(6)視線誘導体70は、昇降体32の上下方向に複数設けてもよい。図10では、視線誘導体71が3つのシール体71a、71b、71cによって構成された例を示す。複数のシール体71a〜71cは、例えば、別途カバー体75a〜75cを備え、表示状態と非表示状態とに切換可能に構成してもよい。図11に示すように、視線誘導体72は昇降体32の上下方向に位置変更可能であってもよい。また、図12に示すように、視線誘導体73は、複数の発光体73a、73b、73cによって構成され、いずれか1つの発光体(例えば73b)を点灯させるようにしてもよい。
本発明は、頭部用のX線撮影装置に広く利用することができる。
2 :X線発生部
3 :X線検出部
10 :旋回アーム
20 :アーム支持部
30 :支柱部
32 :昇降体
33 :第1カメラ
33a :第1画像
34 :第2カメラ
34a :第2画像
35 :カメラ支持体
40 :基台
50 :顎位置決め部
51 :支持フレーム
53 :頭部固定部
55 :チンレスト
60 :操作パネル(モニタ部)
70,71,72,73 :視線誘導体
80 :制御部
A :X線撮影装置
B :被験者
C :光軸
F :指標線(フランクフルト平面)
G :指標線(咬合平面)
K :仮想平行線
P :回転軸