JPWO2019026781A1 - 電解めっき液添加剤及びその用途 - Google Patents
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Abstract
Description
アルキル基の鎖長を変化させる方法は、主にポリマー全体の有機性を向上させることを目的として行われるが、鎖長を伸ばすと極端に重合性が悪化する一方で、大きな性能向上は見られない。これは、形成するめっき皮膜上に電気化学的に影響を与えるアンモニウム基の反応性を延長されたアルキル基が阻害してしまう事が原因と考えられる。
第三成分を共重合させる方法では、共重合性に優れるモノマーが少ない上に、例えば二酸化硫黄を共重合した場合にはスルホニル基の電子吸引性によって、合成した高分子量体の解重合が起こり易く、安定性が悪くなる場合がある。また、付加塩の選択肢は限られており、またその変更のみによる性能の変化には、一定の限界があった。
すなわち本発明は、下記[1]に関する。
[1]
下記一般式(1)で表される構造のジアリルアミン系化合物(i)から導かれる構成単位(I)を有するジアリルアミン系(共)重合体を含有する、電解めっき液添加剤
(但し、上記式(1)中、R1及びR2は、それぞれ独立に水素又は炭素数1から2のアルキル基であり、ただしR1及びR2は、同時に水素ではなく、R3及びR4は、それぞれ独立に水素又は炭素数1から2のアルキル基であり、X−はカウンターイオンである。)。
[2]
前記ジアリルアミン系化合物(i)が、下記一般式(1’)で表される構造を有する、[1]に記載の電解めっき液添加剤
(但し、上記式(1)中、R5及びR6は、それぞれ独立に水素又は炭素数1から2のアルキル基であり、X−はカウンターイオンである。)。
[3]
前記ジアリルアミン系(共)重合体が、二酸化硫黄から導かれる構成単位(II)を更に有する、[1]又は[2]に記載の、電解めっき液添加剤。
[4]
前記ジアリルアミン系(共)重合体の全構成単位中に占める、構成単位(I)の割合が、10モル%以上である、[1]から[3]のいずれか一項に記載の、電解めっき液添加剤。
[5]
[1]から[4]のいずれか一項に記載の電解めっき液添加剤を含有する電解めっき液。
[6]
更に銅化合物を含有する、[5]に記載の電解めっき液。
[7]
[5]又は[6]に記載の電解めっき液中に部材を浸漬し、該部材上に金属を析出させる工程を有する、電解めっき付き部材の製造方法。
[8]
前記電解めっき付き部材が、電気電子部品である、[7]に記載の電解めっき付き部材の製造方法。
本発明の好ましい形態である、電解めっき液、及び電解めっき付き部材の製造方法も、上記同様の実用上高い価値を有する顕著な技術的効果を実現するものである。
本発明の電解めっき液添加剤は、下記一般式(1)で表される構造のジアリルアミン系化合物(i)から導かれる構成単位(I)を有するジアリルアミン系(共)重合体を含有するものである。
但し、上記式(1)中、R1及びR2は、それぞれ独立に水素又は炭素数1から2のアルキル基であり、ただしR1及びR2は、同時に水素ではなく、R3及びR4は、それぞれ独立に水素又は炭素数1から2のアルキル基であり、X−はカウンターイオンである。
本発明の電解めっき液添加剤を構成するジアリルアミン系(共)重合体の全部又は一部を構成する構成単位(I)は、下記一般式(1)で表される構造のジアリルアミン系化合物(i)から導かれる。
上記一般式(1)中、上記式(1)中、R1及びR2は、それぞれ独立に水素又は炭素数1から2のアルキル基である。ただしR1及びR2は同時に水素ではなく、この点において、従来技術で用いられるジアリルアミン系化合物と異なる。
R1及びR2が同時に水素ではなく、したがってR1及びR2の少なくとも一方が、炭素数1から2のアルキル基であることによって、ポリマー全体の有機性を向上でき、電解めっきにおける均一電着性を大幅に向上できるなどの、顕著な技術的効果を実現することができる。ポリマー全体の有機性を向上する観点からは、R1及びR2は、上記の条件を満たしアンモニウム基の反応性を阻害しない限りにおいて、大きな基であることが好ましい。
一方で、上記ジアリルアミン系(共)重合体の重合性の観点からは、R1及びR2の一方のみがアルキル基であることが好ましく、R1及びR2の一方がメチル基であり、他方が水素であることが特に好ましい。
R3及びR4がそれぞれ水素又は炭素数1から2のアルキル基という比較的小さな基であることによって、R3及びR4がアンモニウム基の電気化学的な反応性を阻害することが抑制され、電解めっき液添加剤として十分な金属親和性を維持することができる。また、重合性の点でも有利であり、本発明の電解めっき液添加剤を構成するジアリルアミン系(共)重合体を、実用上十分な高い定量性で重合することができる。
一方、ポリマー全体の有機性を向上する観点からは、R3及びR4は、上記本願第1発明の条件を満たしアンモニウム基の反応性を阻害しない限りにおいて、大きな基であることが好ましく、R3及びR4の両方が、メチル基またはエチル基であることが特に好ましい。
重合性等の観点から、上記ジアリルアミン系化合物(i)として、下記一般式(1’)で表される構造のアリルメタアリルアミン系化合物(i’)を用いることが好ましい。
上記一般式(1’)中、R5及びR6は、それぞれ独立に水素又は炭素数1から2のアルキル基である。炭素数1から2のアルキル基としては、メチル基、及びエチル基を例示することができる。
R5及びR6がそれぞれ水素又は炭素数1から2のアルキル基という比較的小さな基であることによって、R5及びR6がアンモニウム基の電気化学的な反応性を阻害することが抑制され、本実施形態のジアリルアミン系(共)重合体を、実用上十分な高い定量性で重合することができる。
一方、ポリマー全体の有機性を向上する観点からは、R5及びR6は、上記の条件を満たしアンモニウム基の電気化学的な反応性を阻害しない限りにおいて大きな基であることが好ましく、R5及びR6の両方が、メチル基またはエチル基であることが特に好ましい。
一方で、1のアリル基と1のメタアリル基とを有することで、一層高い定量性で重合を行うことができるとともに、アンモニウム基の反応性を向上することができる。
本発明の電解めっき液添加剤を構成するジアリルアミン系(共)重合体は、上記一般式(1)で表される構造のジアリルアミン系化合物(i)から導かれる構成単位(I)に加えて、他の構造を有する構成単位を有していてもよい。
他の構造を有する構成単位には特に限定はなく、本発明の目的及び電解めっき液添加剤としての用途に反しない範囲で、上記ジアリルアミン系化合物(i)と共重合可能な他の単量体を適宜使用して、他の構造を有する構成単位を導入することができる。適切な他の構造を有する構成単位を導入することで、本実施形態のアリルメタアリルアミン系共重合体の重合性を向上し、あるいは該共重合体の特性をある程度制御することができる。
上記ジアリルアミン系化合物(i)と共重合可能な他の単量体の代表的なものの例として、二酸化硫黄、上記ジアリルアミン系化合物(i)以外のジアリルアミン系化合物(すなわちジアリルアミン骨格を有する化合物)やその塩をはじめとするカチオン性単量体、ジカルボン酸、不飽和カルボン酸、不飽和スルホン酸やその塩をはじめとするアニオン性単量体、(メタ)アクリルアミド系単量体等を例示することができるが、これらには限定されない。
構成単位(I)が、本実施形態のジアリルアミン系(共)重合体の全構成単位に占める割合は、20モル%以上であることがより好ましく、50モル%以上であることが特に好ましい。
構成単位(I)が、本実施形態のジアリルアミン系(共)重合体の全構成単位に占める割合には特に上限は存在せず、したがって全構成単位が構成単位(I)であっても差し支えないが、例えば90モル%以下であると、重合がより容易になるなどの点で好ましい。
構成単位(I)以外の構造を有する構成単位としては、二酸化硫黄から導かれる構成単位(II)が、特に好ましい。
二酸化硫黄は、上記一般式(1)で表される構造のジアリルアミン系化合物(i)と比較的共重合しやすいため、二酸化硫黄から導かれる構成単位(II)を導入することで、本実施形態のアリルメタアリルアミン系共重合体を比較的容易に、あるいは共重合比率を適宜設定することで比較的狭い分子量分布で、重合することができる。
本実施形態におけるジアリルアミン系(共)重合体中の、構成単位(II)は、下記構造式(2)で表される構造を有する二酸化硫黄から導かれる。
二酸化硫黄から導かれる構成単位(II)の割合は、10モル%以上であることがより好ましく、40モル%以上であることが特に好ましい。
二酸化硫黄から導かれる構成単位(II)の割合には特に上限はないが、本発明の効果を実現するために構成単位(I)が存在する余地を確保する観点から、通常60モル%以下であり、好ましくは50モル%以下である。
ポリマー全体の有機性を向上するための試みとして、ジアリルアミン系化合物におけるアルキル基の鎖長を延長した従来技術のジアリルアミン系(共)重合体においては、重合性に劣ることから、重量平均分子量Mw1000以上のジアリルアミン系(共)重合体を得ることは、必ずしも容易ではなかった。
本発明の電解めっき液添加剤を構成するジアリルアミン系(共)重合体の重量平均分子量Mwは、1000〜1000000であることがより好ましく、1000〜300000であることが更に好ましい。
本発明の電解めっき液添加剤を構成するジアリルアミン系(共)重合体の重量平均分子量Mwは、ゲル・パーミエーションクロマトグラフィー(GPC法)により測定することができ、より具体的には、例えば本願実施例に記載の方法で測定することができる。
ポリマー全体の有機性を向上するための試みとして、ジアリルアミン系化合物におけるアルキル基の鎖長を延長した従来技術のジアリルアミン系(共)重合体においては、重合性に劣ることから、重合度5以上のジアリルアミン系(共)重合体を得ることは、必ずしも容易ではなかった。
本発明の電解めっき液添加剤を構成するジアリルアミン系(共)重合体の重合度は、5〜300であることがより好ましく、5〜200であることが更に好ましく、5〜300であることが特に好ましい。
本発明の電解めっき液添加剤を構成するジアリルアミン系(共)重合体の重合度は、上記GPC法で得られた重量平均分子量から、以下の計算式で求めることできる。
重合度=重量平均分子量/ユニット分子量
ここで、ユニット分子量(ユニットMW)とは、高分子における繰り返し単位1単位当たりの分子量である。高分子が共重合体である場合、すなわち当該高分子が、異なる単量体から導かれる2種以上の構成単位を有する場合には、各構成単位の分子量と割合(総計で1となる)とを乗じてからこれらを積算した加重平均を、ユニット分子量とする。
重量平均分子量をこのユニット分子量で除することで、重合度(平均的な繰り返し単位の数)を得ることができる。
本発明の電解めっき液添加剤を構成するジアリルアミン系(共)重合体の製造方法としては、下記一般式(1)で表される構造のジアリルアミン系化合物(i)を含有する単量体原料を重合する工程を有する、ジアリルアミン系(共)重合体の製造方法を用いることが好ましい。
(但し、上記式(1)中、R1及びR2は、それぞれ独立に水素又は炭素数1から2のアルキル基であり、ただしR1及びR2は、同時に水素ではなく、R3及びR4は、それぞれ独立に水素又は炭素数1から2のアルキル基であり、X−はカウンターイオンである。)
上記方法によれば、本発明の電解めっき液添加剤を構成するジアリルアミン系(共)重合体をはじめとする、ポリマー全体の有機性の高いジアリルアミン系(共)重合体を、高い定量性で重合することができる。
上記製造方法において重合される単量体原料は、上記ジアリルアミン系化合物(i)を含有するものである。したがって、当該単量体原料は、上記ジアリルアミン系化合物(i)のみで構成されていてもよく、上記ジアリルアミン系化合物(i)に加えて、共重合可能な他の単量体をも含有していてもよい。ここで、共重合可能な他の単量体は、本発明の電解めっき液添加剤を構成するジアリルアミン系(共)重合体に関連して、上記「その他の構成単位」において説明したものと同様である。
上記製造方法においても、共重合可能な他の単量体としては、二酸化硫黄を用いることが好ましい。
単量体原料に占めるジアリルアミン系化合物(i)の割合が10モル%以上であることで、ジアリルアミン系化合物(i)から導かれる構成単位(I)の割合が10モル%以上である、好ましいジアリルアミン系(共)重合体を、一層効率的に製造することができる。
上記工程における重合度は、5〜100であることがより好ましく、5〜200であることが更に好ましく、5〜300であることが特に好ましい。
重合性を向上し、上記工程における重合度を5以上とするためには、ジアリルアミン系化合物(i)として、下記一般式(1’)で表される構造のアリルメタアリルアミン系化合物(i’)を用いることが好ましい。
(但し、上記式(1)中、R5及びR6は、それぞれ独立に水素又は炭素数1から2のアルキル基であり、X−はカウンターイオンである。)
下記一般式(1’)で表される構造のアリルメタアリルアミン系化合物(i’)の詳細は、本発明の電解めっき液添加剤を構成するジアリルアミン系(共)重合体に関して、上記にて説明したものと同様である。
収率を向上する観点からも、ジアリルアミン系化合物(i)として、上記一般式(1’)で表される構造のアリルメタアリルアミン系化合物(i’)を用いることが好ましい。
上記製造方法においては、前記ジアリルアミン系化合物(i)を含有する単量体原料を重合する工程における収率が、60%以上であることがより好ましく、80%以上であることが特に好ましい。
単量体の濃度は、単量体や溶媒、分散媒の種類によって異なるが、通常5〜95質量%であり、10〜70質量%が好ましい。
重合開始剤の使用量には特に制限はなく、反応速度、反応の安定性などの観点から適宜設定することができるが、単量体の総質量に対して0.1〜30質量%使用することが好ましく、1〜10質量%使用することが特に好ましい。
上記のジアリルアミン系(共)重合体は、ポリマー全体の有機性が高く、かつ十分な分子量を有する一方で、アンモニウム基の反応性が十分に維持されている。したがって、該ジアリルアミン系(共)重合体は、ポリマー全体の有機性と金属親和性とが高いレベルで両立しており、電解めっき液添加剤として使用した際に、被めっき体表面の凸部に吸着して、凸部のめっき析出を抑制する平坦化効果等に優れ、広範な電流密度範囲にわたって、電解めっきにおける均一電着性を大幅に向上することができる。
電解めっきにおける均一電着性は、ハルセル試験によって評価することができ、より具体的には、例えば本願実施例記載の条件によるハルセル試験によって評価することができる。
電解銅めっき液に配合される、電解めっき液添加剤以外の成分としては、従来公知の電解銅めっき液におけるものと同様の成分を使用することができる。例えば、銅の供給源である銅塩としては、硫酸銅、酢酸銅、フルオロホウ酸銅、硝酸銅などが挙げられ、電解質である無機酸としては、硫酸、燐酸、硝酸、ハロゲン化水素、スルファミン酸、ホウ酸、フルオロホウ酸などを、好ましい例として挙げることができる。
上述の好ましい実施形態である、電解銅めっき液を用いる場合を例に説明すると、電解銅めっき液として本発明の電解めっき液添加剤を添加した銅めっき液を使用する他は、従来の電解銅めっき方法と同様に行うことができる。例えば、電解銅めっき液温度は、15〜50℃、好ましくは20〜30℃であり、電流密度は、1.0〜30A/dm2、好ましくは2.0〜10A/dm2の範囲内であることが望ましい。めっき時間は、所望の膜厚、電流密度、めっき膜の均一性、連続めっきか否か等の条件に応じて、当業者が適宜設定することができる。また、めっき液の撹拌方法は、空気撹拌、急速液流撹拌、撹拌羽根などによる機械撹拌などを使用することができる。
(1)共重合体の重量平均分子量
共重合体の重量平均分子量(Mw)は、日立L−6000型高速液体クロマトグラフを使用し、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC法)によって測定した。
溶離液流路ポンプは日立L−6000、検出器はショーデックスRI−101示差屈折率検出器、カラムはショーデックスアサヒパックの水系ゲル濾過タイプのGS−220HQ(排除限界分子量3,000)とGS−620HQ(排除限界分子量200万)とを直列に接続したものを用いた。サンプルは溶離液で0.5g/100mlの濃度に調製し、20μlを用いた。溶離液には、0.4モル/リットルの塩化ナトリウム水溶液を使用した。カラム温度は30℃で、流速は1.0ml/分で実施した。標準物質として、分子量106、194、440、600、1470、4100、7100、10300、12600、23000などのポリエチレングリコールを用いて較正曲線を求め、その較正曲線を基に共重合体の重量平均分子量(Mw)を求めた。
(2)共重合体の重合収率
GPC法により得られたピーク面積比から、下記式にしたがって求めた。
(3)赤外分光スペクトル(FT−IR)による構造解析
フーリエ変換赤外分光光度計 FT−720 FREEXACT−II(株式会社堀場製作所製)を使用し、ダイヤモンドATRによる全反射法にて測定した。
(アリルメタアリルジメチルアンモニウムクロライドの合成)
攪拌機、温度計、ガラス栓を備えた300mlの四つ口フラスコにジメチルアリルアミン1モルと希釈水102.06gを仕込み40℃に昇温した。メタアリルクロライド0.95モルを3.5時間かけて滴下した。滴下中は50℃〜55℃に温度を維持した。滴下終了後60℃に昇温し一晩反応を継続した。25%の水酸化ナトリウム水溶液でpHを10.56に調整後、エバポレーターで未反応ジメチルアリルアミンを留去した。希釈水90gを加え274.16gの目的物を得た。リンタングステン酸法によるアンモニウム塩の定量では、濃度:62.84%、分子量:173.68(理論分子量:175.70)であった。電位差滴定では残存アミンは不検出であった。
攪拌機、温度計、ガラス栓を備えた100mlの三つ口フラスコに、上記で合成したアリルメタアリルジメチルアンモニウムクロライド0.12モルと希釈水6.71gを仕込み、30℃以下で二酸化イオウを0.12モル仕込んだ後、26℃で過硫酸アンモニウムをモノマーの合計モル数に対し0.2モル%添加し重合を開始した。25〜30℃に維持しながら1時間毎に0.3、0.5、0.5モル%(計1.5モル%)の過硫酸アンモニウムを更に添加した。添加1時間後に60℃に昇温し、一晩反応を継続した。希釈水50gを加え重合を終了した。GPC収率:98.3%、Mw:3,780(Mw/Mn:1.39)であった。本測定において得られたGPCチャートを、図1に示す。
固形分を測定し、固形分濃度:30.09%の無色溶液を、93.8g得た。溶液の一部を採取し、イソプロピルアルコールにて再沈殿した後減圧乾燥し、得られた白色粉末状固体の赤外分光スペクトルを、図2に示す。赤外分光スペクトル中に、スルホニル基由来の1,300、1,125cm−1付近の吸収が確認できた。
高い重合収率でアリルメタアリルジメチルアンモニウムクロライドと二酸化硫黄の共重合体が得られたことが、確認できた。
(アリルメタアリルジメチルアンモニウムクロライドと二酸化硫黄の共重合体の合成−2)
攪拌機、温度計、ガラス栓を備えた100mlの三つ口フラスコに、合成例1で合成したアリルメタアリルジメチルアンモニウムクロライド0.12モルと希釈水3.02gと35%塩酸0.012モルを仕込み、30℃以下で二酸化イオウを0.12モル仕込んだ後、25℃で過硫酸アンモニウムをモノマーの合計モル数に対し0.2モル%添加し重合を開始した。25〜30℃に維持しながら1時間毎に0.3、0.5、0.5モル%(計1.5モル%)の過硫酸アンモニウムを更に添加した。添加24時間後に60℃に昇温し、一晩反応を継続した。希釈水50gを加え重合を終了した。GPC収率:100%、Mw:14,113(Mw/Mn:1.43)であった。本測定において得られたGPCチャートを、図3に示す。
固形分を測定し、固形分濃度:31.76%の無色溶液を、92.6g得た。溶液の一部を採取し、イソプロピルアルコールにて再沈殿した後減圧乾燥し、得られた白色粉末状固体の赤外分光スペクトルを、図4に示す。赤外分光スペクトル中に、スルホニル基由来の1,300、1,125cm−1付近の吸収が確認できた。
高い重合収率でアリルメタアリルジメチルアンモニウムクロライドと二酸化硫黄の共重合体が得られたことが、確認できた。
(アリルメタアリルジエチルアンモニウムクロライドの合成)
攪拌機、温度計、ガラス栓を備えた300mlの四つ口フラスコに、ジエチルアリルアミン0.8モルと希釈水94.72gを仕込み、50℃に昇温した。メタアリルクロライド0.76モルを2時間かけて滴下した。滴下中は50℃〜55℃に温度を維持した。滴下終了後60℃、70℃、85℃、90℃と段階的に昇温し、三日間反応を継続した。分液ロートで下層を分液し、25%NaOH水溶液でpH11に調整し、エバポレーターで未反応ジエチルアリルアミンを留去した。適宜希釈し析出したNaClをデカント及び、桐山ロート(7ミクロン)でろ別し、pH7.7の淡褐色溶液を、39.76g(歩留18.9%)得た。リンタングステン酸法によるアンモニウム塩の定量では、濃度:73.77%、分子量:202.57(理論分子量:203.75)であった。電位差滴定では残存アミンは不検出であった。
攪拌機、温度計、ガラス栓を備えた100mlの三つ口フラスコに、上記で合成したアリルメタアリルジエチルアンモニウムクロライド0.1モルと希釈水10.61gを仕込み、30℃以下で二酸化イオウを0.1モル仕込んだ後、21℃で過硫酸アンモニウムをモノマーの合計モル数に対し0.2モル%添加し重合を開始した。25〜30℃に維持しながら1時間毎に0.3、0.5、0.5モル%(計1.5モル%)の過硫酸アンモニウムを更に添加した。添加1時間後に60℃に昇温し、一晩反応を継続した。希釈水50gを加えて重合を終了した。GPC収率:98.5%、Mw:3,033(Mw/Mn:1.42)であった。本測定において得られたGPCチャートを、図5に示す。
固形分を測定し、固形分濃度:29.28%の溶液を、91.3g得た。溶液の一部を採取し、イソプロピルアルコールにて再沈殿し後減圧乾燥し、得られた白色粉末状固体の赤外分光スペクトルを、図6に示す。赤外分光スペクトル中に、スルホニル基由来の1,300、1,125cm−1付近の吸収が確認できた。
高い重合収率でアリルメタアリルジエチルアンモニウムクロライドと二酸化硫黄の共重合体が得られたことが、確認できた。
(実施例1)
ハルセル試験器を用い、以下の条件にて、合成例1において合成したアリルメタアリルジメチルアンモニウムクロライドと二酸化硫黄の共重合体を電解めっき液添加剤に用いたときの、電解銅めっきにおけるレベリング性を評価した。
(i)めっき液における各成分の濃度
・硫酸銅五水和物:75g/L
・硫酸:190g/L
・塩化物イオン:50mg/L
・PEG(ポリエチレングリコール、重量平均分子量4000):100mg/L
・SPS(3,3’−ジチオビス(1−プロパンスルホン酸ナトリウム)):5mg/L
・合成例1おいて合成したアリルメタアリルジメチルアンモニウムクロライドと二酸化硫黄の共重合体:10mg/L
(ii)めっき条件
・電流値:2A
・めっき時間:20分
・液温度:室温
・攪拌方法:空気攪拌
(iii)評価方法)
267mlのハルセル容器(株式会社山本鍍金試験器製)に、上記(i)のめっき液を標線まで入れ、脱脂処理したテストピース(材質:黄銅。その概要を、図7に示す。図中、ドット部は被めっき部であり、斜線部は光沢範囲測定部である。)を浸漬し、上記(ii)の条件にて電解銅めっきを実施した。その後、めっきされたテストピースの外観について目視判定し、鏡面光沢のある電流密度の範囲を測定した。電流密度は、テストピース横方向の位置に依存し、その値は図7中に示すとおりである。
ハルセル試験後のテストピースの外観を、図8に示す。電流密度11.22〜−0.28(A/dm2)の範囲にわたって鏡面光沢のあるめっき膜が得られ、広い電流密度範囲にわたり高い均一電着性が得られた。
合成例1において合成したアリルメタアリルジメチルアンモニウムクロライドと二酸化硫黄の共重合体に代えて、合成例3において合成したアリルメタアリルジエチルアンモニウムクロライドと二酸化硫黄の共重合体を10mg/L使用したことを除くほか、実施例1と同様にして、ハルセル試験を行った。
ハルセル試験後のテストピースの外観を、図9に示す。電流密度9.01〜−0.28(A/dm2)の範囲にわたって鏡面光沢のあるめっき膜が得られ、広い電流密度範囲にわたり高い均一電着性が得られた。
合成例1において合成したアリルメタアリルジメチルアンモニウムクロライドと二酸化硫黄の共重合体に代えて、ジアリルジメチルアンモニウムクロライドと二酸化イオウの共重合体(ニットーボーメディカル株式会社製、商品名:PAS−A−5)を10mg/L使用したことを除くほか、実施例1と同様にして、ハルセル試験を行った。
ハルセル試験後のテストピースの外観を、図10に示す。電流密度7.78〜−0.28(A/dm2)の範囲にわたって鏡面光沢のあるめっき膜が得られた。高い均一電着性が得られた電流密度範囲は、実施例よりも狭く、特に高電流密度領域では、高い均一電着性が得られなかった。
合成例1において合成したアリルメタアリルジメチルアンモニウムクロライドと二酸化硫黄の共重合体に代えて、ジアリルジメチルアンモニウムクロライドの重合体(ニットーボーメディカル株式会社製、商品名:PAS−H−5L)を10mg/L使用したことを除くほか、実施例1と同様にして、ハルセル試験を行った。
ハルセル試験後のテストピースの外観を、図11に示す。電流密度5.56〜−0.28(A/dm2)の範囲にわたって鏡面光沢のあるめっき膜が得られたが、一部ムラが認められた。高い均一電着性が得られた電流密度範囲は、実施例よりもかなり狭く、特に高電流密領域では、高い均一電着性が得られなかった。
合成例1において合成したアリルメタアリルジメチルアンモニウムクロライドと二酸化硫黄の共重合体を使用しなかったことを除くほか、実施例1と同様にして、ハルセル試験を行った。
ハルセル試験後のテストピースの外観を、図12に示す。電流密度3.35〜−0.28(A/dm2)の範囲にわたって鏡面光沢のあるめっき膜が得られたが、かなりの部分が半光沢にとどまった。高い均一電着性が得られた電流密度範囲は、実施例よりもかなり狭く、特に高電流密度領域では、高い均一電着性が得られなかった。
実施例1から2及び比較例1から3の結果を、表1にまとめた。
Claims (8)
- 下記一般式(1)で表される構造のジアリルアミン系化合物(i)から導かれる構成単位(I)を有するジアリルアミン系(共)重合体を含有する、電解めっき液添加剤
(但し、上記式(1)中、R1及びR2は、それぞれ独立に水素又は炭素数1から2のアルキル基であり、ただしR1及びR2は、同時に水素ではなく、R3及びR4は、それぞれ独立に水素又は炭素数1から2のアルキル基であり、X−はカウンターイオンである。)。 - 前記ジアリルアミン系化合物(i)が、下記一般式(1’)で表される構造を有する、請求項1に記載の電解めっき液添加剤
(但し、上記式(1)中、R5及びR6は、それぞれ独立に水素又は炭素数1から2のアルキル基であり、X−はカウンターイオンである。)。 - 前記ジアリルアミン系(共)重合体が、二酸化硫黄から導かれる構成単位(II)を更に有する、請求項1又は2に記載の、電解めっき液添加剤。
- 前記ジアリルアミン系(共)重合体の全構成単位中に占める、構成単位(I)の割合が、10モル%以上である、請求項1から3のいずれか一項に記載の、電解めっき液添加剤。
- 請求項1から4のいずれか一項に記載の電解めっき液添加剤を含有する電解めっき液。
- 更に銅化合物を含有する、請求項5に記載の電解めっき液。
- 請求項5又は6に記載の電解めっき液中に部材を浸漬し、該部材上に金属を析出させる工程を有する、電解めっき付き部材の製造方法。
- 前記電解めっき付き部材が、電気電子部品である、請求項7に記載の電解めっき付き部材の製造方法。
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