JPWO2018030186A1 - 高強度厚鋼板およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
質量%で、C:0.03〜0.20%、Si:0.03〜0.5%、Mn:0.5〜2.2%、P:0.02%以下、S:0.01%以下、Ti:0.005〜0.03%、Al:0.005〜0.080%、およびN:0.0050%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、 かつ下記(1)式で定義されるCeqが下記(2)式の条件を満足する成分組成を有し、板厚1/2位置における{113}<110>方位強度が4.0以上、鋼板表面における{113}<110>方位強度が1.7以上の集合組織を有する、高強度厚鋼板。
Ceq=[C]+[Mn]/6+[Cu]/15+[Ni]/15+[Cr]/5+[Mo]/5+[V]/5…(1)
Ceq≧0.40…(2)
Description
C :0.03〜0.20%、
Si:0.03〜0.5%、
Mn:0.5〜2.2%、
P :0.02%以下、
S :0.01%以下、
Ti:0.005〜0.03%、
Al:0.005〜0.080%、および
N :0.0050%以下を含有し、
残部がFeおよび不可避的不純物からなり、
かつ下記(1)式で定義されるCeqが下記(2)式の条件を満足する成分組成を有し、
板厚1/2位置における{113}<110>方位強度が4.0以上、鋼板表面における{113}<110>方位強度が1.7以上の集合組織を有する、高強度厚鋼板。
記
Ceq=[C]+[Mn]/6+[Cu]/15+[Ni]/15+[Cr]/5+[Mo]/5+[V]/5…(1)
Ceq≧0.40…(2)
ここで、上記(1)式における括弧は、前記高強度厚鋼板における該括弧内の元素の含有量(質量%)を表し、該元素が含有されていない場合には0とする
Kca(−10℃)が7000N/mm3/2以上、
板厚1/4位置におけるvE(−40℃)が250J以上、かつ
板厚1/4位置における引張強さTSが570MPa以上である、上記1に記載の高強度厚鋼板。
Nb:0.005〜0.05%、
Cu:0.01〜0.5%、
Ni:0.01〜1.5%、および
Cr:0.01〜0.5%からなる群より選択される1または2以上をさらに含有する、上記1〜3のいずれか一項に記載の高強度厚鋼板。
Mo:0.01〜0.5%、
V :0.001〜0.10%、
B :0.0030%以下、
Ca:0.0050%以下、および
REM:0.0100%以下からなる群より選択される1または2以上をさらに含有する、上記1〜4のいずれか一項に記載の高強度厚鋼板。
上記1、4、および5のいずれか一項に記載の成分組成を有する鋼を1000〜1200℃の加熱温度に加熱する加熱工程と、
加熱された前記鋼を熱間圧延して熱延鋼板とする熱間圧延工程とを有し、
前記熱間圧延工程が、
板厚1/2位置がオーステナイト再結晶温度域での熱間圧延と、
板厚1/2位置がオーステナイト未再結晶温度域での熱間圧延とを含み、
前記熱間圧延工程の間に、前記鋼を表裏の両面から加熱する、高強度厚鋼板の製造方法。
まず、本発明において鋼の成分組成を上記のように限定する理由を説明する。なお、成分組成に関する「%」表示は、特に断らない限り「質量%」を意味するものとする。
Cは、鋼の強度を向上する元素であり、本発明では、所望の強度を確保するためには0.03%以上の含有を必要とする。しかし、C含有量が0.20%を超えると、溶接性が劣化するばかりか靭性にも悪影響がある。このため、C含有量は、0.03〜0.20%とする。なお、C含有量は0.05〜0.15%とすることが好ましい。
Siは、脱酸元素として、また、鋼の強化元素として有効であるが、0.03%未満の含有量ではその効果がない。一方、Si含有量が0.5%を超えると、鋼の表面性状を損なうばかりか、靭性が極端に劣化する。従って、Si含有量は0.03〜0.5%とする。Si含有量は0.04〜0.40%とすることが好ましい。
Mnは、強化元素として含有される。Mn含有量が0.5%より少ないとその効果が十分でない。一方、Mn含有量が2.2%を超えると溶接性が劣化することに加え、鋼材コストも上昇する。そのため、Mn含有量は、0.5〜2.2%とする。
Pは、鋼中の不可避的不純物であり、含有量が多くなると靭性が劣化してしまう。そのため、板厚が50mm超えるような厚鋼板においても良好な靭性を保つために、P含有量を0.02%以下とする。P含有量は0.01%以下とすることが好ましく、0.006%以下とすることがより好ましい。一方、下限については限定されず、0%であってもよいが、工業的には0%超である。
Sは、鋼中の不可避的不純物であり、含有量が多くなると靭性が劣化してしまう。そのため、板厚が50mm超えるような厚鋼板においても良好な靭性を保つために、S含有量を0.01%以下とする。S含有量は0.005%以下とすることが好ましく、0.003%以下とすることがより好ましい。一方、下限については限定されず、0%であってもよいが、工業的には0%超である。
Tiは、微量の含有により、窒化物、炭化物、あるいは炭窒化物を形成し、結晶粒を微細化して母材靭性を向上させる効果を有する。前記効果は、Ti含有量が0.005%以上であれば得ることができる。一方、Ti含有量が0.03%を超えると、母材および溶接熱影響部における靭性が低下する。そのため、Ti含有量は0.005〜0.03%とする。Ti含有量は0.006〜0.028%とすることが好ましい。
Alは、脱酸材として添加される元素であり、その効果を得るためには0.005%以上の添加が必要である。一方、Al含有量が0.080%を超えると、靭性が低下するとともに、溶接した場合に溶接金属部の靭性が低下する。このため、Al含有量は、0.005〜0.080%とする。なお、Al含有量は、0.020〜0.040%とすることが好ましい。
Nは、鋼中のAlと結合し、圧延加工時の結晶粒径を調整し、鋼を強化する元素である。しかし、N含有量が0.0050%を超えると靭性が劣化するため、N含有量は0.0050%以下とする。一方、N含有量の下限は特に限定されないが、0.0010%以上とすることが好ましく、0.0015%以上とすることがより好ましい。
Nbは、NbCとしてフェライト変態時あるいは再加熱時に析出し、高強度化に寄与する。また、Nbは、オーステナイト域の圧延において未再結晶域を拡大させる効果を有し、フェライトの細粒化に寄与するので、靭性の改善にも有効である。その効果は0.005%以上の含有により発揮されるが、0.05%を超えて含有すると、粗大なNbCが析出することにより、かえって靭性の低下を招く。そのため、Nbを含有する場合、Nb含有量を0.005〜0.05%とする。
Cuは、鋼の焼入れ性を高める元素であり、圧延後の強度向上に加え、靭性、高温強度、耐候性などの機能向上に寄与する。これらの効果は、0.01%以上の含有によって発揮されるが、過度の含有は靭性や溶接性をかえって劣化させる。そのため、Cu含有量は0.01〜0.5%とする。
Niは、鋼の焼入れ性を高める元素であり、圧延後の強度向上に加え、靭性、高温強度、耐候性などの機能向上に寄与する。これらの効果は、0.01%以上の含有によって発揮される。一方、過度の含有は靭性や溶接性をかえって劣化させることに加え、合金のコスト増加を招く。そのため、Ni含有量は0.01〜1.5%とする。
Crは、Cuと同様に、鋼の焼入れ性を高める元素であり、圧延後の強度向上に加え、靭性、高温強度、耐候性などの機能向上に寄与する。これらの効果は、0.01%以上の含有によって発揮されるが、過度の含有は靭性や溶接性をかえって劣化させる。そのため、Cr含有量は0.01〜0.5%とする。
Moは、CuやCrと同様に、鋼の焼入れ性を高める元素であり、圧延後の強度向上に加え、靭性、高温強度、耐候性などの機能向上に寄与する。これらの効果は、0.01%以上の含有によって発揮されるが、過度の含有は靭性や溶接性をかえって劣化させる。そのため、Mo含有量は0.01〜0.5%とする。
Vは、V(CN)として析出する析出強化によって、鋼の強度を向上させる元素である。この効果はVを0.001%以上含有させることにより発揮される。一方、Vを0.10%を超えて含有すると、かえって靭性が低下する。このため、Vを含有させる場合には、V含有量を0.001〜0.10%とする。
Bは、微量で鋼の焼入れ性を高める効果を有する元素であり、任意に含有させることができる。しかし、B含有量が0.0030%を超えると、溶接部の靭性が低下する。そのため、B含有量を0.0030%以下とする。なお、B含有量の下限は特に限定されないが、Bを含有させる場合、良好な焼入れ性を得るという観点からは、B含有量を0.0006%以上とすることが好ましい。
Caは、溶接熱影響部の組織を微細化して靭性を向上させる効果を有する元素であり、適量の含有であれば本発明の効果が損なわれることはない。したがって、必要に応じてCaを含有することができる。しかし、過度にCaを含有すると、粗大な介在物を形成して母材の靭性を劣化させる。そのため、Caを含有させる場合には、Ca含有量を0.0050%以下とする。一方、Ca含有量の下限値は特に限定されないが、Caを添加する場合、添加効果を十分に得るためにはCa含有量を0.0001%以上とすることが好ましい。
REM(希土類金属)は、Caと同様に、溶接熱影響部の組織を微細化して靭性を向上させる効果を有する元素であり、適量の含有であれば本発明の効果が損なわれることはない。したがって、任意にREMを含有することができる。しかし、過度にREMを含有すると、粗大な介在物を形成して母材の靭性を劣化させる。そのため、REMを含有させる場合には、REM含有量を0.0100%以下とする。一方、REM含有量の下限は特に限定されないが、REMを添加する場合、添加効果を十分に得るためにはREM含有量を0.0005%以上とすることが好ましい。
さらに、上記成分組成は、下記(1)式で定義される炭素当量Ceqが下記(2)式の条件を満足するものである。
Ceq=[C]+[Mn]/6+[Cu]/15+[Ni]/15+[Cr]/5+[Mo]/5+[V]/5…(1)
Ceq≧0.40…(2)
ここで、上記(1)式における括弧は、高強度厚鋼板における該括弧内の元素の含有量(質量%)を表し、該元素が含有されていない場合には0とする。
本発明では、圧延方向または圧延直角方向など板面に平行な方向に伝播するき裂に対するき裂伝播停止特性を向上させるために、板厚1/2位置および鋼板表面における{113}<110>方位強度を規定する。板厚1/2位置および鋼板表面において、{113}<110>方位を発達させると、き裂進展に先立ち微視的なクラックが発生してき裂進展の抵抗となる。なお、ここで「板厚1/2位置」とは板厚方向における中央の位置を意味し、「鋼板表面」とは、スケールを除去した後の鋼板の表面から0.5mmの深さの位置を意味する。
板厚1/2位置におけるベイナイトの面積分率を85%以上とすることが好ましい。組織をこのように制御することにより 脆性き裂伝播特性に有利な{113}<110>方位を高めることができる。なお、前記ベイナイトの面積分率は、90%以上とすることがより好ましい。一方、前記ベイナイトの面積分率の上限は特に限定されず、100%であってよい。なお、ベイナイト以外の残部は、特に限定されることなく、任意の組織とすることができる。それら残部組織の面積分率の合計は、15%以下とすることが好ましい。前記面積分率は、実施例に記載の方法で測定することができる。
上記のように成分組成と集合組織を制御することにより、優れた母材靭性を有する高強度厚鋼板を得ることができる。優れた母材靭性を有することは、き裂の進展を抑制する上で重要である。具体的には、板厚1/4位置での、−40℃におけるシャルピー吸収エネルギー:vE(−40℃)を250J以上とすることが好ましく、280J以上とすることがより好ましく、300J以上とすることがより好ましい。一方、前記vE(−40℃)の上限は特に限定されないが、一般的には、420J以下であってよく、400J以下であってもよい。
上述したように、本発明の高強度厚鋼板においては集合組織を制御することによってKca(−10℃)が7000N/mm3/2以上という、優れた脆性き裂伝播停止特性を実現することができる。Kca(−10℃)は、7500N/mm3/2以上とすることが好ましく、8000N/mm3/2以上とすることがより好ましく、9000N/mm3/2以上とすることがさらに好ましい。一方、Kca(−10℃)の値は高いほど好ましいため、その上限は特に限定されないが、一般的には、13000N/mm3/2以下であってよい。なお、前記Kca(−10℃)の値は温度勾配型ESSO試験によって測定することができ、具体的には実施例に記載した方法で得ることができる。
本発明の高強度厚鋼板の引張強さ(TS)は、特に限定されないが、板厚1/4位置における引張強さTSを570MPa以上とすることが好ましく、580MPa以上とすることがより好ましく、590MPa以上とすることがさらに好ましい。一方、TSの上限についても特に限定されないが、一般的には、板厚1/4位置における引張強さTSが700MPa以下であってよい。
本発明の高強度厚鋼板の板厚は特に限定されず、任意の値とすることができる。しかし、板厚が厚いほど本発明の効果が顕著となるため、板厚は、50mm以上とすることが好ましく、50mm超とすることがより好ましく、60mm以上とすることがさらに好ましく、70mm以上とすることがさらに好ましい。一方、板厚の上限についても特に限定されないが、一般的には100mm以下であってよい。
次に、本発明の一実施形態における高強度厚鋼板の製造方法を説明する。
(1)鋼を1000〜1200℃の加熱温度に加熱する加熱工程。
(2)加熱された前記鋼を熱間圧延して熱延鋼板とする熱間圧延工程。
そして、前記(2)熱間圧延工程においては、次の(2−1)および(2−2)の工程を順次行う。
(2−1)板厚1/2位置がオーステナイト再結晶温度域での熱間圧延(再結晶域圧延)。
(2−2)板厚1/2位置がオーステナイト未再結晶温度域での熱間圧延(未再結晶域圧延)。
(3)前記熱延鋼板を、3℃/s以上の冷却速度で、500℃以下の冷却停止温度まで冷却する冷却工程。
(4)前記冷却工程で冷却された熱延鋼板を、Ac1点以下の焼戻温度で焼戻す焼戻し工程。
加熱温度:1000〜1200℃
熱間圧延に先立って、上記成分組成を有する鋼を加熱する。その際、加熱温度が1000℃未満では、オーステナイト再結晶温度域における圧延時間を十分に確保することができない。一方、加熱温度が1200℃超では、オーステナイト粒が粗大化し、靭性の低下を招くばかりか、酸化ロスが顕著となって歩留が低下する。そのため、加熱温度は1000〜1200℃とする。なお、鋼板の靭性向上の観点からは、前記加熱温度を1000〜1170℃とすることが好ましく、1050〜1170℃とすることがより好ましい。
次いで、熱間圧延を行う。熱間圧延工程においては、まず、(2−1)板厚1/2位置がオーステナイト再結晶温度域での熱間圧延(再結晶域圧延)を行い、次いで、(2−2)板厚1/2位置がオーステナイト未再結晶温度域での熱間圧延(未再結晶域圧延)を行う。前記熱間圧延工程における圧延終了温度は、特に限定されないが、Ar3点以上とすることが好ましい。
冷却速度:3℃/s以上
冷却停止温度:500℃以下
圧延が終了した鋼板は、圧延時に発達させた集合組織の保持という観点からは、3℃/s以上の冷却速度で、500℃以下の冷却停止温度まで冷却することが好ましい。冷却速度の上限は特に限定されないが、10℃/s以下とすることが好ましい。また、冷却停止温度の下限は特に限定されないが、0℃以上とすることが好ましい。また、前記冷却工程における冷却開始温度は、Ar3点以上とすることが好ましい。
焼戻温度:Ac1点以下
前記冷却工程の後に焼戻処理を行う場合は、Ac1点以下の焼戻し温度で焼戻しを行うことが好ましい。焼戻温度がAc1点より高いと、圧延時に発達させた集合組織が失われる場合があるためである。焼戻し温度の下限は特に限定されないが、400℃以上とすることが好ましい。
次に、本発明の実施例について説明する。
表1に示す各成分組成を有する溶鋼を転炉で溶製し、連続鋳造法でスラブとした。次いで、前記スラブを加熱した後、板厚:50〜100mmとなるよう熱間圧延した。前記加熱と熱間圧延の条件は、表2に示した通りとした。その後、表2に示した条件で冷却を行い、その後、放冷して高強度厚鋼板を得た。一部の鋼板については、冷却後に表2に示した温度で焼戻しを行った。
得られた高強度厚鋼板の靭性を評価するために、シャルピー衝撃試験を行って、各鋼板の(1)鋼板表面から5mmの位置、(2)板厚1/4位置、および(3)板厚1/2位置の3カ所の、−40℃におけるシャルピー吸収エネルギーvE(−40℃)を測定した。前記シャルピー衝撃試験には、JIS(日本工業規格)に規定された4号衝撃試験片(長さ55mm、幅10mm、厚さ10mm)を用い、前記試験片は、該試験片の長手方向が鋼板の圧延方向と平行となるように採取した。なお、前記鋼板表面から5mmの位置におけるvE(−40℃)を測定するために用いる試験片は、鋼板の表面に形成されているスケール(黒皮)を除去した後、該鋼板の表面から採取した。試験片の厚さは10mmであるから、前記試験片における測定位置は、該試験片の厚さ方向の中心位置、すなわち、鋼板表面から板厚方向に5mmの位置となる。
得られた高強度厚鋼板の板厚1/4位置から、試験片の長手方向が圧延方向と垂直になるように、JIS 4号試験片を採取した。前記試験片を用いて、JIS Z 2241の規定に準拠して引張試験を行い、板厚1/4位置における引張強さ(TS)を求めた。
得られた高強度厚鋼板の集合組織を評価するため、(1)板厚1/2位置および(2)鋼板表面における{113}<110>方位強度を、以下の方法で測定した。まず、前記鋼板の表面に形成されているスケールを除去した後、(1)板厚1/2位置および(2)鋼板の表面から0.5mmの深さの位置が測定位置となるように、板厚厚さ1mmのサンプルを採取した。次いで、採取されたサンプルの板面に平行な面を機械研磨・電解研磨することにより、X線回折用の試験片を用意した。なお、板厚表面のサンプルについては、鋼板の表面に近い側の面を研磨した。得られた試験片のそれぞれについて、Mo線源を用いたX線回折装置を使用してX線回折測定を実施し、(200)、(110)、および(211)正極点図を求めた。得られた正極点図から3次元結晶方位密度関数を算出することによって、{113}<110>方位強度のランダム強度に対する比を算出した。
圧延方向と平行な面が観察面となるように、板厚1/2位置から試料を採取した。前記試料の表面を鏡面研磨した後、エッチングにより現出させた金属組織の光学顕微鏡写真を撮影し、画像解析によりベイナイトの面積分率を評価した。
脆性き裂伝播停止特性を評価するため、温度勾配型ESSO試験を行い、前記高強度厚鋼板の−10℃におけるKca値(以下、Kca(−10℃)とも記す)を求めた。前記温度勾配型ESSO試験には、全厚試験片を用いた。
Claims (11)
- 質量%で、
C :0.03〜0.20%、
Si:0.03〜0.5%、
Mn:0.5〜2.2%、
P :0.02%以下、
S :0.01%以下、
Ti:0.005〜0.03%、
Al:0.005〜0.080%、および
N :0.0050%以下を含有し、
残部がFeおよび不可避的不純物からなり、
かつ下記(1)式で定義されるCeqが下記(2)式の条件を満足する成分組成を有し、
板厚1/2位置における{113}<110>方位強度が4.0以上、鋼板表面における{113}<110>方位強度が1.7以上の集合組織を有する、高強度厚鋼板。
記
Ceq=[C]+[Mn]/6+[Cu]/15+[Ni]/15+[Cr]/5+[Mo]/5+[V]/5…(1)
Ceq≧0.40…(2)
ここで、上記(1)式における括弧は、前記高強度厚鋼板における該括弧内の元素の含有量(質量%)を表し、該元素が含有されていない場合には0とする - 板厚が50〜100mmであり、
Kca(−10℃)が7000N/mm3/2以上、
板厚1/4位置におけるvE(−40℃)が250J以上、かつ
板厚1/4位置における引張強さTSが570MPa以上である、請求項1に記載の高強度厚鋼板。 - 板厚1/2位置における組織に占めるベイナイトの面積分率が85%以上である、請求項1または2に記載の高強度厚鋼板。
- 前記成分組成が、質量%で、
Nb:0.005〜0.05%、
Cu:0.01〜0.5%、
Ni:0.01〜1.5%、および
Cr:0.01〜0.5%からなる群より選択される1または2以上をさらに含有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の高強度厚鋼板。 - 前記成分組成が、質量%で、
Mo:0.01〜0.5%、
V :0.001〜0.10%、
B :0.0030%以下、
Ca:0.0050%以下、および
REM:0.0100%以下からなる群より選択される1または2以上をさらに含有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の高強度厚鋼板。 - 鋼板表面から5mm位置と板厚1/2位置とにおけるvE(−40℃)が、いずれも250J以上である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の高強度厚鋼板。
- 請求項1〜6のいずれか一項に記載の高強度厚鋼板の製造方法であって、
請求項1、4、および5のいずれか一項に記載の成分組成を有する鋼を1000〜1200℃の加熱温度に加熱する加熱工程と、
加熱された前記鋼を熱間圧延して熱延鋼板とする熱間圧延工程とを有し、
前記熱間圧延工程が、
板厚1/2位置がオーステナイト再結晶温度域での熱間圧延と、
板厚1/2位置がオーステナイト未再結晶温度域での熱間圧延とを含み、
前記熱間圧延工程の間に、前記鋼を表裏の両面から加熱する、高強度厚鋼板の製造方法。 - 前記熱延鋼板を、3℃/s以上の冷却速度で、500℃以下の冷却停止温度まで冷却する冷却工程をさらに有する、請求項7に記載の高強度厚鋼板の製造方法。
- 前記冷却工程で冷却された熱延鋼板を、Ac1点以下の焼戻温度で焼戻す焼戻し工程をさらに有する、請求項8に記載の高強度厚鋼板の製造方法。
- 前記表裏の両面からの加熱が終了した時点における前記鋼の表面と板厚1/2位置における温度差を30℃以下とする、請求項7〜9のいずれか一項に記載の高強度厚鋼板の製造方法。
- 前記表裏の両面からの加熱を、前記板厚1/2位置がオーステナイト未再結晶温度域での熱間圧延の開始より前に行う、請求項7〜10のいずれか一項に記載の高強度厚鋼板の製造方法。
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