JP5949114B2 - 脆性き裂伝播停止特性に優れた構造用高強度厚鋼板の製造方法 - Google Patents

脆性き裂伝播停止特性に優れた構造用高強度厚鋼板の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、脆性き裂伝播停止特性に優れた高強度厚鋼板およびその製造方法に関し、特に、船舶、海洋構造物、低温貯蔵タンク、建築・土木構造物等の大型構造物に好適なものに関する。
船舶、海洋構造物、低温貯蔵タンク、建築・土木構造物等の大型構造物においては、脆性破壊に伴う事故が経済や環境に及ぼす影響が大きいため、安全性の向上が常に求められ、使用される鋼材に対しては、使用温度における靭性や、脆性き裂伝播停止特性が要求されている。
コンテナ船やバルクキャリアーなどの船舶はその構造上、船体外板に高強度の厚肉材を使用するが、最近は船体の大型化に伴い一層の高強度厚肉化が進展し、一般に、鋼板の脆性き裂伝播停止特性は高強度あるいは厚肉材ほど劣化する傾向があるため、脆性き裂伝播停止特性への要求も一段と高度化している。
鋼材の脆性き裂伝播停止特性を向上させる手段として、従来からNi含有量を増加させる方法が知られており、液化天然ガス(LNG)の貯槽タンクにおいては、9%Ni鋼が商業規模で使用されている。
しかし、Ni量の増加はコストの大幅な上昇を余儀なくさせるため、LNG貯槽タンク以外の用途には適用が難しい。
一方、LNGのような極低温にまで至らない、船舶やラインパイプに使用される、板厚が50mm未満の比較的薄手の鋼材に対しては、TMCP法により細粒化を図り、低温靭性を向上させて、優れた脆性き裂伝播停止特性を付与することができる。
また、合金コストを上昇させることなく、脆性き裂伝播停止特性を向上させるため表層部の組織を超微細化した鋼材が特許文献1で提案されている。
特許文献1記載の脆性き裂伝播停止特性に優れた鋼材は、脆性き裂が伝播する際、鋼材表層部に発生するシアリップ(塑性変形領域)が脆性き裂伝播停止特性の向上に効果があることに着目し、シアリップ部分の結晶粒を微細化させて、伝播する脆性き裂が有する伝播エネルギーを吸収させることを特徴とする。
製造方法として、熱間圧延後の制御冷却により表層部分をAr変態点以下に冷却し、その後制御冷却を停止して表層部分を変態点以上に復熱させる工程を1回以上繰り返して行い、この間に鋼材に圧下を加えることにより、繰り返し変態させ又は加工再結晶させて、表層部分に超微細なフェライト組織又はベイナイト組織を生成させることが記載されている。
さらに、特許文献2では、フェライト−パーライトを主体のミクロ組織とする鋼材において脆性き裂伝播停止特性を向上させるためには、鋼材の両表面部は円相当粒径:5μm以下、アスペクト比:2以上のフェライト粒を有するフェライト組織を50%以上有する層で構成し、フェライト粒径のバラツキを抑えることが重要で、バラツキを抑える方法として仕上げ圧延中の1パス当りの最大圧下率を12%以下とし局所的な再結晶現象を抑制することが記載されている。
しかし、特許文献1、2に記載の脆性き裂伝播停止特性に優れた鋼材は、鋼材表層部のみを一旦冷却した後に復熱させ、かつ復熱中に加工を加えることによって、特定の組織を得るもので、実生産規模では制御が容易でなく、特に板厚が50mmを超える厚肉材では圧延、冷却設備への負荷が大きいプロセスである。
一方、特許文献3には、フェライト結晶粒の微細化のみならずフェライト結晶粒内に形成されるサブグレインに着目し、脆性き裂伝播停止特性を向上させる、TMCPの延長上にある技術が記載されている。
具体的には、板厚30〜40mmにおいて、鋼板表層の冷却および復熱などの複雑な温度制御を必要とせずに、(a)微細なフェライト結晶粒を確保する圧延条件、(b)鋼材板厚の5%以上の部分に微細フェライト組織を生成する圧延条件、(c)微細フェライトに集合組織を発達させるとともに加工(圧延)により導入した転位を熱的エネルギーにより再配置しサブグレインを形成させる圧延条件、(d)形成した微細なフェライト結晶粒と微細なサブグレイン粒の粗大化を抑制する冷却条件、によって脆性き裂伝播停止特性を向上させる。
また、制御圧延において、変態したフェライトに圧下を加えて集合組織を発達させることにより、脆性き裂伝播停止特性を向上させる方法も知られている。鋼材の破壊面上にセパレーションを板面と平行な方向に生ぜしめ、脆性き裂先端の応力を緩和させることにより、脆性破壊に対する抵抗を高める。
例えば、特許文献4には、制御圧延により(110)面X線強度比を2以上とし、かつ円相当径20μm以上の粗大粒を10%以下とすることにより、耐脆性破壊特性を向上させることが記載されている。
特許文献5には継手部の脆性き裂伝播停止性能の優れた溶接構造用鋼として、板厚内部の圧延面における(100)面のX線面強度比が1.5以上を有することを特徴とする鋼板が開示され、当該集合組織発達による応力負荷方向とき裂伝播方向の角度のずれにより脆性き裂伝播停止特性に優れることが記載されている。
ところで、最近の6、000TEUを超える大型コンテナ船では板厚50mmを超える厚鋼板が使用されるが、非特許文献1は、板厚65mmの鋼板の脆性き裂伝播停止特性を評価し、母材の大型脆性き裂伝播停止試験で脆性き裂が停止しない結果を報告している。
また、供試材のESSO試験では使用温度−10℃におけるKcaの値が3000N/mm3/2に満たない結果が示され、50mmを超える板厚の鋼板を適用した船体構造の場合、安全性確保が課題となることが示唆されている。
上述した特許文献1〜5に記載の脆性き裂伝播停止特性に優れる鋼板は、製造条件や開示されている実験データから板厚50mm程度が主な対象で、50mmを超える厚肉材へ適用した場合、所定の特性が得られるか不明で、船体構造で必要な板厚方向のき裂伝播に対しての特性については全く検証されていない。
そこで本発明は、圧延条件を最適化し、板厚方向での集合組織を制御する工業的に極めて簡易なプロセスで安定して製造し得る脆性き裂伝播停止特性に優れる高強度厚鋼板およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題の達成に向けて鋭意研究を重ね、厚肉鋼板でも優れたき裂伝播停止特性を有する高強度厚鋼板および当該鋼板を安定して得る製造方法について以下の知見を得た。
1.脆性き裂伝播停止特性の向上に有効な{100}<011>方位は圧延時にロールと圧延材間で発生するせん断歪の影響を受けて{110}<001>方位へ変化する。
2.せん断歪は、板厚が小さい場合には表層付近に発生するが、板厚が大きい場合には板厚1/4付近が最も高い値を示す。
3.その結果、厚肉材に二相域圧延を施した場合、板厚1/4部{100}<011>方位強度が低下し、{100}<011>方位の発達は板厚中央部付近だけに限られ、脆性き裂伝播停止性能が低下する。
4.ロールと鋼板との間に発生するせん断歪は、圧延時に潤滑剤を用いることで低減可能であり、それに伴い厚肉材においても板厚1/4部{100}<011>方位強度を高めることが可能となり、更に母材靭性を向上させることで優れた脆性き裂伝播停止性能が達成される。
本発明は得られた知見に更に検討を加えてなされたもので、すなわち、本発明は、
1.鋼組成が、質量%で、C:0.03〜0.20%、Si:0.03〜0.50%、Mn:0.5〜2.2%、A1:0.005〜0.08%、P:0.03%以下、S:0.010%以下、N:0.0075%以下、Ti:0.005〜0.03%、Nb:0.005〜0.05%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼素材を900〜1200℃の温度に加熱した後、板厚中央部が再結晶γ域となる温度域で累積圧下率30%以上、板厚中央部がα+γ域となる温度域において累積圧下率50%以上の圧延を潤滑剤を用いて行い、その後2℃/s以上の冷却速度にて600℃以下まで冷却することを特徴とする脆性き裂伝播停止特性に優れた構造用高強度厚鋼板の製造方法。
2.鋼組成が、更に、質量%で、Cu:0.01〜0.5%、Ni:0.01〜1.0%、Cr:0.01〜0.5%、Mo:0.01〜0.5%、V:0.001〜0.10%、B:0.003%以下、Ca:0.005%以下、REM:0.01%以下のいずれか1種、または2種以上を含有することを特徴とする1に記載の脆性き裂伝播停止特性に優れた構造用高強度厚鋼板の製造方法。
3.前記加速冷却後、Ac1点以下で焼戻しを行うことを特徴とする1または2に記載の脆性き裂伝播停止特性に優れた構造用高強度厚鋼板の製造方法。
本発明によれば、板厚方向に集合組織が適切に制御され、脆性き裂伝播停止特性に優れる、高強度厚肉鋼板が得られ、板厚50mm以上、より好ましくは板厚55mm以上の鋼板に適用することが有効である。そして、例えば、造船分野では大型のコンテナ船、バルクキャリアーの強力甲板部構造においてハッチサイドコーミングや甲板部材へ適用することにより船舶の安全性向上に寄与するなど、産業上極めて有用である。
本発明では、1.板厚内部(板厚中央部および板厚1/4部)の集合組織、2.靭性、および3.製造条件を規定する。板厚中央部(板厚1/2部と言う場合がある)は板厚の1/2位置、板厚1/4部は板厚の1/4位置または板厚の3/4位置を指す。
1.板厚内部の集合組織
本発明は板厚方向の広い領域で、き裂伝播停止特性の向上に有効な{100}<011>方位を発達させた集合組織を得ることを主眼とし、板厚中央部における圧延面での{100}<011>方位強度と、かつ板厚1/4部における圧延面での{100}<011>方位強度を所望する脆性き裂伝播停止特性に応じて適宜規定する。{100}<011>方位を発達させると、き裂の屈曲すなわち応力付加方向からき裂が逸れることによるき裂先端の応力拡大係数が低下する効果や、微細なセパレーションの発生により脆性き裂先端の応力緩和の効果により脆性き裂伝播停止性能が向上する。
最近のコンテナ船やバルクキャリアーなど船体外板に用いられるようになった板厚50mm以上の厚肉材で、構造安全性を確保する上で目標とされるKca(−10℃)≧6000N/mm3/2の脆性き裂伝播停止性能を得る場合、板厚中央部における圧延面での{100}<011>方位強度を2.0以上、かつ板厚1/4部における圧延面での{100}<011>方位強度を1.2以上とする。
ここで、方位強度は、X線回折装置(理学電機株式会社製)を使用し、Mo線源を用いて(200)、(110)および(211)正極点図を求め、得られた正極点図から3次元結晶方位密度関数を計算することにより求めた。
2.母材靭性
母材靭性が、良好な特性を有することがき裂の進展を抑制するための前提となるので、本発明に係る鋼板では板厚1/4部におけるシャルピー破面遷移温度も所望する脆性き裂伝播停止特性に応じて適宜規定する。
板厚50mm以上の厚肉材で、構造安全性を確保する上で目標とされるKca(−10℃)≧6000N/mm3/2の脆性き裂伝播停止性能を得る場合、板厚1/4部におけるシャルピー破面遷移温度は−40℃以下と規定する。
上述した特徴を備えた集合組織は、鋼の化学成分と製造条件を適切に選択した場合に得られる。
3.鋼の化学成分
説明において%は質量%とする。
C:0.03〜0.20%
Cは鋼の強度を向上する元素であり、本発明では、所望の強度を確保するためには0.03%以上の含有を必要とするが、0.20%を超えると、溶接性が劣化するばかりか靭性にも悪影響がある。このため、Cは、0.03〜0.20%の範囲に規定した。なお、好ましくは0.05〜0.15%である。
Si:0.03〜0.50%
Siは脱酸元素として、また、鋼の強化元素として有効であるが、0.03%未満の含有量ではその効果がない。一方、0.50%を超えると鋼の表面性状を損なうばかりか靭性が極端に劣化する。従ってその添加量を0.03%以上、0.50%以下とする。
Mn:0.5〜2.2%
Mnは、強化元素として添加する。0.5%より少ないとその効果が十分でなく、2.2%を超えると溶接性が劣化し、鋼材コストも上昇するため、0.5%以上、2.2%以下とする。
Al:0.005〜0.08%
Alは、脱酸剤として作用し、このためには0.005%以上の含有を必要とするが、0.08%を超えて含有すると、靭性を低下させるとともに、溶接した場合に、溶接金属部の靭性を低下させる。このため、Alは、0.005〜0.08%の範囲に規定した。なお、好ましくは、0.02〜0.04%である。
P:0.03%以下、S:0.010%以下
P、Sは、鋼中の不可避不純物であるが、Pは0.03%を超え、Sは0.010%を超えると靭性が劣化するため、それぞれ、0.03%以下、0.010%以下とする。望ましくはそれぞれ、0.02%以下、0.005%以下とする。
N:0.0075%以下
Nは、鋼中のAlと結合し、圧延加工時の結晶粒径を調整し、鋼を強化するが、0.0075%を超えると靭性が劣化するため、0.0075%以下とする。
Ti:0.005〜0.03%、
Tiは微量の添加により、窒化物、炭化物、あるいは炭窒化物を形成し、結晶粒を微細化して母材靭性を向上させる効果を有する。その効果は0.005%以上の添加によって得られるが、0.03%を超える含有は、母材および溶接熱影響部の靭性を低下させるので、添加する場合は、0.005〜0.03%の範囲にするのが好ましい。
Nb:0.005〜0.05%
Nbは、NbCとしてフェライト変態時あるいは再加熱時に析出し、高強度化に寄与する。また、オーステナイト域の圧延において未再結晶域を拡大させる効果をもち、フェライトの細粒化に寄与するので、靭性の改善にも有効である。その効果を得るためには0.005%以上の添加が必要であるが0.05%を超えて添加すると、粗大なNbCが析出し、逆に、靭性の低下を招くので添加する場合は、その上限は0.05%とするのが好ましい。
以上が本発明の基本成分組成で残部がFeおよび不可避的不純物であるが、更に特性を向上させるため、Cu、Ni、Cr、Mo、V、B、Ca、REMの一種または二種以上を含有することが可能である。
Cu、Ni、Cr、Mo
Cu、Ni、Cr、Moはいずれも鋼の焼入れ性を高める元素である。圧延後の強度アップに直接寄与するとともに、靭性、高温強度、あるいは耐候性などの機能向上のために添加することができるが、過度の添加は靭性や溶接性を劣化させるため、添加する場合にはそれぞれ上限を0.5%、1.0%、0.5%、0.5%とすることが好ましい。一方、添加量が0.01%未満であるとその効果が現れないため、添加する場合は0.01%以上とすることが好ましい。
V:0.001〜0.10%
Vは、V(CN)として析出強化により、鋼の強度を向上する元素であり、0.001%以上含有してもよいが、0.10%を超えて含有すると、靭性を低下させる。このため、添加する場合は、0.001〜0.10%とすることが好ましい。
B:0.003%以下
Bは微量で鋼の焼き入れ性を高める元素として添加してもよい。しかし、0.003%を超えて含有すると溶接部の靭性を低下させるので、添加する場合は0.003%以下とすることが好ましい。
Ca:0.005%以下、REM:0.01%以下
Ca、REMは溶接熱影響部の組織を微細化し靭性を向上させ、添加しても本発明の効果が損なわれることはないので必要に応じて添加してもよい。しかし、過度に添加すると、粗大な介在物を形成し母材の靭性を劣化させるので、添加する場合は上限をそれぞれ0.005%、0.01%とするのが好ましい。
4.製造条件
製造条件はスラブ加熱温度、熱間圧延における再結晶γ域(オーステナイト再結晶温度域)での累積圧下率、α+γとなる二相域(フェライト+オーステナイトの二相域、単にα+γ域、とも記す)での累積圧下率および潤滑の条件を設定する。
最近のコンテナ船やバルクキャリアーなど船体外板に用いられるようになった板厚50mm以上の厚肉材で、構造安全性を確保する上で目標とされるKca(−10℃)≧6000N/mm3/2の脆性き裂伝播停止性能を得る場合は、まず、上記した組成の溶鋼を、転炉等で溶製し、連続鋳造等で鋼素材(スラブ)とする。ついで、鋼素材を、900〜1200℃の温度に加熱してから熱間圧延を行う。
加熱温度が900℃未満では、オーステナイト再結晶温度域における圧延を行う時間が十分に確保できず、また、1200℃超えではオーステナイト粒が粗大化し、靭性の低下を招くばかりか、酸化ロスが顕著となり、歩留が低下するので、加熱温度は900〜1200℃とする。靭性の観点から好ましい加熱温度の範囲は1000〜1150℃であり、より好ましくは1000〜1050℃である。
熱間圧延はまず、板厚中央部が再結晶γ域となる温度域で累積圧下率を30%以上の圧延を行う。累積圧下率が30%未満であると、オーステナイトの細粒化が不十分で靭性が向上しない。次に、板厚中央部がα+γ域となる温度域において累積圧下率50%以上の圧延を行う。この温度域での累積圧下率が50%以上でないと集合組織の発達が小さくなり、板厚中央部での{100}<011>方位強度が2.0以上とならない。
再結晶γ域は、当該成分組成を有する鋼に、条件を変化させた熱・加工履歴を与える予備的実験を行うことにより、把握することができる。
圧延時に使用する潤滑剤の種類については特に規定しないが、以下の要件を満足する潤滑剤を使用する。板厚1/4部での{100}<011>方位強度を1.2以上とするために、圧延時の摩擦係数が0.35以下となる潤滑剤を用いることが好ましい。また、厚板の圧延では、薄板の圧延とは異なり外部から張力を負荷させることが出来ないため、極端に摩擦係数の低い潤滑剤では鋼板をロールにかみ込むことができない。そこで、圧延時の摩擦係数が0.10以上となる潤滑剤を用いることが好ましい。例えば、鉱油、合成エステル、黒鉛等の固体潤滑剤が利用できる。
ロールと鋼板との間の摩擦係数は、予め試験材を用いて、種々の表面粗度のロールを用いた熱間圧延を行い、変形抵抗、板厚、圧下率を含めた熱間圧延条件と計測された圧延荷重から、計算により求めておく。圧延荷重より摩擦係数を求める方法は圧延理論によるが、例えば、Orowanの理論による数値計算が好適に用いられる。
本発明で規定する摩擦係数はα+γ域での圧延の時に達成されていればよく、再結晶γ域の圧延において摩擦係数は重要な制御因子ではない。しかし、一連の圧延プロセスにおいて摩擦係数が大きく変化することはないので、再結晶γ域の圧延でも同じ様な摩擦係数となるのが通常である。
尚、熱間圧延では規定した温度域外での圧延を制限するものではない。上記規定する温度域で規定の累積圧下がおこなわれていれば規定する組織が得られる。
熱間圧延の終了温度は板厚中央部がα+γ域にある温度領域とし、終了後、直ちには2℃/s以上の冷却速度にて600℃以下まで冷却する。圧延によって導入された、変態および加工集合組織が再結晶により減少するのを防ぐためであり、圧延後には鋼板を低温まで冷却する必要がある。
冷却速度が2℃/s未満では所望の集合組織が得られないばかりか、鋼板の強度も低下するので、冷却速度は2℃/s以上とする。冷却停止温度が600℃超えの場合、冷却停止後にも再結晶が進行して所望の集合組織が得られないので冷却停止温度は600℃以下とする。
なお、これら冷却速度や冷却停止温度は、鋼板の板厚中央部の温度とする。板厚中央部の温度は、板厚、表面温度および冷却条件等から、シミュレーション計算等により求められる。例えば、差分法を用い、板厚方向の温度分布を計算することにより、鋼板の板厚中央部の温度が求められる。
以上の説明は、板厚が50mm以上の厚肉材について行ったが、せん断歪は、板厚が小さい場合には表層付近に発生するようになるので、板厚中央部における圧延面での{100}<011>方位強度が2.0以上、板厚1/4部における圧延面での{100}<011>方位強度が1.2以上で板厚1/4部におけるシャルピー破面遷移温度が―40℃以下の特性を備える鋼板は、板厚50mm未満の場合も優れた脆性き裂伝播特性を備えることは明らかである。
加速冷却後に焼戻し処理を行うことも可能である。焼き戻しを実施することにより、鋼板の靭性をさらに向上させることができる。この場合、圧延で得られた集合組織を低減させないために、焼戻し温度は鋼板平均温度としてAc1点以下で行うこととする。本発明ではAc1点(℃)を下式で求める。
Ac1点=751−26.6C+17.6Si−11.6Mn−169Al−23Cu−23Ni+24.1Cr+22.5Mo+233Nb−39.7V−5.7Ti−895B
式において各元素記号は鋼中含有量(質量%)で、含有しない場合は0とする。
鋼板の平均温度も、板厚中央部の温度と同様、板厚、表面温度および冷却条件等から、シミュレーション計算等により求められる。
表1に示す各組成の溶鋼(鋼記号A〜J)を、転炉で溶製し、連続鋳造法で鋼素材(スラブ280mm厚)とし、板厚50〜80mmに熱間圧延後、冷却を行いNo.1〜25の供試鋼を得た。表2に製造条件を示す。なお、本実施例においては、潤滑剤として鉱油を用いた。
Figure 0005949114
Figure 0005949114
得られた厚鋼板について、板厚の1/4部よりΦ14mmのJIS14A号試験片を試験片の長手方向が圧延方向と直角となるように採取し、引張試験を行い、降伏点(YS)、引張強さ(TS)を測定した。また、板厚の1/4部よりJIS4号衝撃試験片を試験片の長手軸の方向が圧延方向と平行となるように採取し、シャルピー衝撃試験を行って、破面遷移温度(vTrs)を求めた。板厚1/4部におけるシャルピー破面遷移温度が−40℃以下のものを本発明範囲内とした。
また、鋼板の集合組織を評価するため、板厚中央部における圧延面での{100}<011>方位強度と、板厚1/4部における圧延面での{100}<011>方位強度を測定した。方位強度は、X線回折装置(理学電機株式会社製)を使用し、Mo線源を用いて(200)、(110)および(211)正極点図を求め、得られた正極点図から3次元結晶方位密度関数を計算することにより求めた。
次に、脆性き裂伝播停止特性を評価するため、温度勾配型ESSO試験を行い、Kca(−10℃)を求めた。
表3にこれらの試験結果を示す。板厚中央部、板厚1/4部における集合組織が本発明の範囲内である供試鋼板(製造番号1〜13)の場合、Kca(−10℃)=6200〜7600N/mm3/2と優れた脆性き裂伝播停止性能を示した。
一方、鋼板の成分組成が本発明範囲外の供試鋼板および製造条件が本発明範囲外で、鋼板の集合組織が本発明の規定を満たさない鋼板(製造番号14〜25)ではKcaの値は5300N/mm3/2以下で本発明例に及ばなかった。
Figure 0005949114
特公平7−100814号公報 特開2002−256375号公報 特許第3467767号公報 特許第3548349号公報 特許第2659661号公報
井上ら:厚手造船用鋼における長大脆性き裂伝播挙動、日本船舶海洋工学会講演論文集 第3号、 2006、 pp359−362。

Claims (3)

  1. 鋼組成が、質量%で、C:0.03〜0.20%、Si:0.03〜0.50%、Mn:0.5〜2.2%、A1:0.005〜0.08%、P:0.03%以下、S:0.010%以下、N:0.0075%以下、Ti:0.005〜0.03%、Nb:0.005〜0.05%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼素材を900〜1200℃の温度に加熱した後、板厚中央部が再結晶γ域となる温度域で累積圧下率30%以上、板厚中央部がα+γ域となる温度域において累積圧下率50%以上の圧延を、摩擦係数0.35以下の潤滑剤を用いて行い、その後2℃/s以上の冷却速度にて600℃以下まで冷却することを特徴とする、板厚中央部における圧延面での{100}<011>方位強度が2.0以上、板厚1/4部における圧延面での{100}<011>方位強度が1.2以上、板厚1/4部におけるシャルピー破面遷移温度が―40℃以下、Kca(−10℃)≧6000N/mm 3/2 、引張強さ(TS)が566MPa以上、降伏点(YS)が404MPa以上である脆性き裂伝播停止特性に優れた構造用高強度厚鋼板の製造方法。
  2. 鋼組成が、更に、質量%で、Cu:0.01〜0.5%、Ni:0.01〜1.0%、Cr:0.01〜0.5%、Mo:0.01〜0.5%、V:0.001〜0.10%、B:0.003%以下、Ca:0.005%以下、REM:0.01%以下のいずれか1種、または2種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の脆性き裂伝播停止特性に優れた構造用高強度厚鋼板の製造方法。
  3. 前記加速冷却後、Ac1点以下で焼戻しを行うことを特徴とする請求項1または2に記載の脆性き裂伝播停止特性に優れた構造用高強度厚鋼板の製造方法。
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