JPWO2017170524A1 - 太陽電池用電極およびその製造方法、並びに太陽電池 - Google Patents

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Abstract

本発明は、太陽電池に優れた耐久性を付与しうる太陽電池用電極を提供することを目的とする。本発明の太陽電池用電極は、支持体と、前記支持体上に形成された触媒層とを備える太陽電池用電極であって、前記触媒層の厚みの平均値が0.5μm以上3.0μm以下であり、前記触媒層の厚みの標準偏差が0.2μm以下である。

Description

本発明は、太陽電池用電極およびその製造方法、並びに太陽電池に関するものである。
近年、光エネルギーを電力に変換する光電変換素子として、太陽電池が注目されている。なかでも、光吸収に有機材料を用いる有機系太陽電池や、光吸収に有機と無機の材料を組み合わせて用いる有機無機ハイブリッド型太陽電池は、シリコン(Si)系の太陽電池に比して、屈曲性に優れ、かつ安価な材料を用いて製造し得ることから、特に注目を集めている。
例えば、有機系太陽電池の一種である色素増感型太陽電池は、光電極および対向電極と、これらの2つの電極の間に介在した電解質層を有する。そして、光電極中の増感色素が光を受けて励起されると、増感色素の電子が取り出される。この電子は、光電極から出て、外部の回路を通って対向電極に移動し、さらにその触媒層を介して、電解質層に移動する。
ここで、太陽電池の性能を向上させるべく、太陽電池に用いる電極の改良が行われている。例えば、特許文献1には、支持体上に所定の性状を有するカーボンナノチューブを含む触媒層を備えてなる色素増感型太陽電池用対向電極が開示されている。
特開2014−120219号公報
ここで、太陽電池には、長期に亘り優れた光電変換効率を保持することが求められる。そして、上記従来の電極には、太陽電池の耐久性を高めて、太陽電池に長期に亘り優れた光電変換効率を発揮させるという点において、改善の余地があった。従って、本発明は、太陽電池に優れた耐久性を付与しうる太陽電池用電極、および耐久性に優れる太陽電池を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた。そして、本発明者らは、支持体と、厚みの平均値が所定の範囲内であり且つ厚みの標準偏差が所定の値以下である触媒層とを備える電極を用いれば、太陽電池の耐久性を高めることが可能であることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の太陽電池用電極は、支持体と、前記支持体上に形成された触媒層とを備える太陽電池用電極であって、前記触媒層の厚みの平均値が0.5μm以上3.0μm以下であり、前記触媒層の厚みの標準偏差が0.2μm以下であることを特徴とする。このように、支持体と、厚みの平均値が所定の範囲内であり且つ厚みの標準偏差が所定の値以下である触媒層とを備える電極を用いれば、太陽電池の耐久性を高めて、太陽電池に長期に亘り優れた光電変換効率を発揮させることができる。
ここで、本発明の太陽電池用電極は、前記触媒層の厚みの最大値と最小値の差が、前記触媒層の厚みの平均値の50%以下であることが好ましい。触媒層の厚みの最大値と最小値の差が、厚みの平均値の50%以下であれば、太陽電池の耐久性を一層高めることができる。
また、本発明の太陽電池用電極において、前記触媒層が繊維状炭素ナノ構造体を含むことが好ましい。カーボンナノチューブなどの繊維状炭素ナノ構造体を含む触媒層を用いれば、触媒層に一般的に用いられる白金のような貴金属を使用することなく、製造コストを低下することができる。
更に、本発明の太陽電池用電極において、前記繊維状炭素ナノ構造体の、吸着等温線から得られるt−プロットが上に凸な形状を示すことが好ましい。t−プロットが上に凸な形状を示す繊維状炭素ナノ構造体を用いれば、太陽電池の光電変換効率を高めることができる。
そして、本発明の太陽電池用電極において、前記触媒層に含まれる前記繊維状炭素ナノ構造体の量が、0.1mg/m以上20000mg/m以下であることが好ましい。繊維状炭素ナノ構造体の含有量が上述の範囲内である触媒層を用いれば、太陽電池の光電変換効率を高めることができる。
ここで、本発明の太陽電池用電極において、前記触媒層は、メタルマスクを使用するスクリーン印刷法を用いて形成されたものであることが好ましい。メタルマスクを使用するスクリーン印刷法を用いて形成された触媒層を使用すれば、太陽電池の耐久性をより一層高めることができる。
また、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の太陽電池は、対向する2つの電極を備え、前記2つの電極の少なくとも1つが、上述した何れかの太陽電池用電極であることを特徴とする。上述した太陽電池用電極の何れかを備える太陽電池は、耐久性に優れ、長期に亘り優れた光電変換効率を保持する。
ここで、本発明の太陽電池は、前記2つの電極の支持体間の距離が70μm以下であることが好ましい。支持体間距離が70μm以下であれば、太陽電池の耐久性を一層高めることができる。
また、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の太陽電池用電極の製造方法は、繊維状炭素ナノ構造体を含む分散液を、メタルマスクを使用するスクリーン印刷法により支持体上に塗布する工程と、塗布した繊維状炭素ナノ構造体を含む分散液を乾燥させて触媒層を形成する工程と、を含むことを特徴とする。上述の工程を経れば、太陽電池の耐久性を高めることが可能な太陽電池用電極を、効率よく製造することができる。
本発明によれば、太陽電池の耐久性を高めることが可能な太陽電池用電極を提供することができる。
また、本発明によれば、耐久性に優れる太陽電池を提供することができる。
そして、本発明によれば、太陽電池の耐久性を高めることが可能な太陽電池用電極を製造しうる、太陽電池用電極の製造方法を提供することができる。
表面に細孔を有する試料のt−プロットの一例を示すグラフである。 色素増感型太陽電池の一例の概略構成を示す図である。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
ここで、本発明の太陽電池用電極は、屈曲性を有し、太陽電池、好ましくは色素増感型太陽電池等の有機系太陽電池や、ペロブスカイト型太陽電池などの有機無機ハイブリッド型太陽電池の電極として好適に用いることができる。また、本発明の太陽電池用電極は、例えば、本発明の太陽電池用電極の製造方法を用いて製造することができる。そして、本発明の太陽電池は、本発明の太陽電池用電極を備えることを特徴とする。
(太陽電池用電極)
本発明の太陽電池用電極は、支持体と、支持体上に形成された触媒層とを備え、触媒層の厚みの平均値が0.5μm以上3.0μm以下であり、前記触媒層の厚みの標準偏差が0.2μm以下であることを特徴とする。このような所定の厚みを有し且つ厚みの標準偏差が所定の値以下である触媒層は、層厚ムラが十分に小さい。そのため、この触媒層を有する電極を用いれば、太陽電池内部において、例えば、厚みが凸の部分がもう一方の電極(光電極等)側に接してしまうことにより生じる部分的な短絡を防止できる。特に、支持体としてフィルムを用いる際、電池セルに荷重がかかると電極間の距離が狭くなり、短絡しやすくなってしまう。しかしながら、このような場合においても、上述したように層厚ムラが十分に小さい触媒層を備える本発明の太陽電池用電極を用いれば、電極の短絡を十分に防止することができる。そのため、このような触媒層を備える電極を用いれば、太陽電池に優れた耐久性を付与して、長期間に亘り優れた光電変換効率を発揮させることができる。
<支持体>
支持体は、触媒層を担持する役割を担うものである。なお、本発明において、支持体と触媒層との間には必ずしも導電膜は必要ではないが、より良好な通電を確保して、太陽電池の光電変換効率を高める観点から、少なくとも触媒層と接しうる支持体の表面部分には導電膜が形成されているのが好ましい。
このような支持体としては、金属、金属酸化物、炭素材料、導電性高分子などを用いて形成された導電性のシートや、樹脂やガラスからなる非導電性のシートが用いられる。なかでも、軽量で、光電変換効率に優れる太陽電池を効率よく形成することができることから、前記支持体としては、樹脂やガラスからなる非導電性のシートが好ましく、軽量で、光電変換効率に優れ、安価な太陽電池が得られやすいことから、透明樹脂からなるものがより好ましい。
用いられる透明樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、シンジオタクチックポリスチレン(SPS)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリカーボネート(PC)、ポリアリレート(PAr)、ポリスルホン(PSF)、ポリエステルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド(PEI)、透明ポリイミド(PI)等の合成樹脂が挙げられる。これらは1種のみを単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
前記導電膜としては、白金、金、銀、銅、アルミニウム、インジウム、チタン等の金属;酸化スズ、酸化亜鉛等の導電性金属酸化物;インジウム−スズ酸化物(ITO)、インジウム−亜鉛酸化物(IZO)等の複合金属酸化物;グラフェンなどの炭素材料;及びこれら2種以上の組み合わせ;等からなるものが挙げられる。
導電膜の表面抵抗値は、好ましくは500Ω/□以下、より好ましくは150Ω/□以下、さらに好ましくは50Ω/□以下である。
導電膜は、スパッタリング法、コーティング法等の公知の方法により形成することができる。
支持体の厚みは、用途に応じて適宜決定すればよいが、通常、10μm以上10000μm以下である。
支持体の光透過率(測定波長:500nm)は、好ましくは60%以上、より好ましくは75%以上、さらに好ましくは80%以上である。支持体の光透過率が60%以上であることで、光電変換効率に優れる太陽電池を得ることができる。
<触媒層>
触媒層は、電極間の電子移動を担う層であり、例えば、色素増感型太陽電池においては、対向電極から電解質層に電子を渡すときの触媒として機能する。このような触媒層は、通常、導電性高分子、炭素材料、貴金属などの触媒成分を含む。これらは一種単独または二種以上を組み合わせて用いてもよい。例えば、カーボンブラックやカーボンナノチューブなど炭素材料に白金などの貴金属を担持させたものを使用することもできる。
導電性高分子としては、例えば、ポリ(チオフェン−2,5−ジイル)、ポリ(3−ブチルチオフェン−2,5−ジイル)、ポリ(3−ヘキシルチオフェン−2,5−ジイル)、ポリ(2,3−ジヒドロチエノ−[3,4−b]−1,4−ジオキシン)(PEDOT)等のポリチオフェン;ポリアセチレンおよびその誘導体;ポリアニリンおよびその誘導体;ポリピロールおよびその誘導体;ポリ(p−キシレンテトラヒドロチオフェニウムクロライド)、ポリ[(2−メトキシ−5−(2’−エチルヘキシロキシ))−1,4−フェニレンビニレン]、ポリ[(2−メトキシ−5−(3’,7’−ジメチルオクチロキシ)−1,4−フェニレンビニレン)]、ポリ[2−2’,5’−ビス(2’’−エチルヘキシロキシ)フェニル]−1,4−フェニレンビニレン]等のポリフェニレンビニレン類;を挙げることができる。
炭素材料としては、例えば、天然黒鉛、活性炭、人造黒鉛、グラフェン、そして、カーボンナノチューブ(CNT)、カーボンナノバッド、気相成長炭素繊維、内壁同士が近接または接着したテープ状部分を全長に亘って有する単層または多層の扁平筒状の繊維状炭素ナノ構造体であるグラフェンナノテープ(以下、「GNT」と称することがある。追って詳述)など繊維状炭素ナノ構造体を挙げることができる。なお、本発明において「テープ状部分を全長に亘って有する」とは、「長手方向の長さ(全長)の60%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは100%に亘って連続的にまたは断続的にテープ状部分を有する」ことを指す。
貴金属としては、触媒作用のあるものであればスパッタなどで製膜した薄膜、コロイド、貴金属の錯体、貴金属粒子など特に限定されず、公知の貴金属を適宜選択して用いることができる。形状も例えばスパッタで作成されるような薄膜、コロイドなどの球状や、棒状、板状など特に限定されない。例えば、白金、パラジウムおよびルテニウムなどが挙げられる。好ましくはスパッタや貴金属粒子などがよい。
[繊維状炭素ナノ構造体]
上述した触媒成分の中でも、スクリーン印刷時や乾燥時、保管時の取扱いの容易性、生産性の観点、そして、太陽電池の耐久性を一層高める観点から、触媒層は繊維状炭素ナノ構造体を含むことが好ましい。なお、繊維状炭素ナノ構造体を含む触媒層は、導電層の機能を兼ねることができる。
そして繊維状炭素ナノ構造体の中でも、CNTを含む繊維状炭素ナノ構造体を用いることが好ましい。CNTを含む繊維状炭素ナノ構造体を使用すれば、太陽電池の耐久性を一層高めることができる。
そして、CNTを含む繊維状炭素ナノ構造体としては、特に限定されることなく、CNTのみからなるものを用いてもよいし、CNTと、CNT以外の繊維状炭素ナノ構造体との混合物を用いてもよい。
また、繊維状炭素ナノ構造体としては、太陽電池の光電変換効率を高める観点から、吸着等温線から得られるt−プロットが上に凸な形状を示すものが好ましい。
ここで、一般に、吸着とは、ガス分子が気相から固体表面に取り去られる現象であり、その原因から、物理吸着と化学吸着に分類される。そして、t−プロットの取得に用いられる窒素ガス吸着法では、物理吸着を利用する。なお、通常、吸着温度が一定であれば、繊維状炭素ナノ構造体に吸着する窒素ガス分子の数は、圧力が大きいほど多くなる。また、横軸に相対圧(吸着平衡状態の圧力Pと飽和蒸気圧P0の比)、縦軸に窒素ガス吸着量をプロットしたものを「等温線」といい、圧力を増加させながら窒素ガス吸着量を測定した場合を「吸着等温線」、圧力を減少させながら窒素ガス吸着量を測定した場合を「脱着等温線」という。
そして、t−プロットは、窒素ガス吸着法により測定された吸着等温線において、相対圧を窒素ガス吸着層の平均厚みt(nm)に変換することにより得られる。即ち、窒素ガス吸着層の平均厚みtを相対圧P/P0に対してプロットした、既知の標準等温線から、相対圧に対応する窒素ガス吸着層の平均厚みtを求めて上記変換を行うことにより、繊維状炭素ナノ構造体のt−プロットが得られる(de Boerらによるt−プロット法)。
ここで、表面に細孔を有する試料の典型的なt−プロットを図1に示す。表面に細孔を有する試料では、窒素ガス吸着層の成長は、次の(1)〜(3)の過程に分類される。そして、下記の(1)〜(3)の過程によって、図1に示すようにt−プロットの傾きに変化が生じる。
(1)全表面への窒素分子の単分子吸着層形成過程
(2)多分子吸着層形成とそれに伴う細孔内での毛管凝縮充填過程
(3)細孔が窒素によって満たされた見かけ上の非多孔性表面への多分子吸着層形成過程
そして、本発明で用いる好適な繊維状炭素ナノ構造体のt−プロットは、図1に示すように、窒素ガス吸着層の平均厚みtが小さい領域では、原点を通る直線上にプロットが位置するのに対し、tが大きくなると、プロットが当該直線から下にずれた位置となり、上に凸な形状を示す。かかるt−プロットの形状は、繊維状炭素ナノ構造体の全比表面積に対する内部比表面積の割合が大きく、繊維状炭素ナノ構造体を構成する炭素ナノ構造体に多数の開口が形成されていることを示しており、その結果として、繊維状炭素ナノ構造体は、優れた特性を発揮すると推察される。
なお、繊維状炭素ナノ構造体のt−プロットの屈曲点は、0.2≦t(nm)≦1.5を満たす範囲にあることが好ましく、0.45≦t(nm)≦1.5を満たす範囲にあることがより好ましく、0.55≦t(nm)≦1.0を満たす範囲にあることが更に好ましい。t−プロットの屈曲点の位置が上記範囲であると、繊維状炭素ナノ構造体の特性が更に向上するため、太陽電池の耐久性をより一層高めることができる。
ここで、「屈曲点の位置」とは、前述した(1)の過程の近似直線Aと、前述した(3)の過程の近似直線Bとの交点である。
更に、繊維状炭素ナノ構造体は、t−プロットから得られる全比表面積S1に対する内部比表面積S2の比(S2/S1)が0.05以上0.30以下であるのが好ましい。S2/S1が0.05以上0.30以下であれば、バンドルの形成を十分に抑制しつつ、繊維状炭素ナノ構造体の特性を更に向上させることができるので、太陽電池の耐久性を一層高めることができる。
また、繊維状炭素ナノ構造体の全比表面積S1および内部比表面積S2は、特に限定されないが、個別には、S1は、600m/g以上1400m/g以下であることが好ましく、800m/g以上1200m/g以下であることが更に好ましい。一方、S2は、30m/g以上540m/g以下であることが好ましい。
ここで、繊維状炭素ナノ構造体の全比表面積S1および内部比表面積S2は、そのt−プロットから求めることができる。具体的には、図1に示すt−プロットにより説明すると、まず、(1)の過程の近似直線の傾きから全比表面積S1を、(3)の過程の近似直線の傾きから外部比表面積S3を、それぞれ求めることができる。そして、全比表面積S1から外部比表面積S3を差し引くことにより、内部比表面積S2を算出することができる。
因みに、繊維状炭素ナノ構造体の吸着等温線の測定、t−プロットの作成、および、t−プロットの解析に基づく全比表面積S1と内部比表面積S2との算出は、例えば、市販の測定装置である「BELSORP(登録商標)−mini」(日本ベル(株)製)を用いて行うことができる。
また、CNTを含む繊維状炭素ナノ構造体を使用する場合、繊維状炭素ナノ構造体中のCNTとしては、特に限定されることなく、単層カーボンナノチューブおよび/または多層カーボンナノチューブを用いることができるが、CNTは、単層から5層までのカーボンナノチューブであることが好ましく、単層カーボンナノチューブであることがより好ましい。単層カーボンナノチューブを使用すれば、多層カーボンナノチューブを使用した場合と比較し、太陽電池の耐久性を一層高めることができる。
なお、CNTを含む繊維状炭素ナノ構造体は、CNTの開口処理が施されておらず、t−プロットが上に凸な形状を示すことがより好ましい。
また、繊維状炭素ナノ構造体としては、平均直径(Av)に対する、直径の標準偏差(σ)に3を乗じた値(3σ)の比(3σ/Av)が0.20超0.60未満の繊維状炭素ナノ構造体を用いることが好ましく、3σ/Avが0.25超の繊維状炭素ナノ構造体を用いることがより好ましく、3σ/Avが0.40超の繊維状炭素ナノ構造体を用いることが更に好ましい。3σ/Avが0.20超0.60未満の繊維状炭素ナノ構造体を使用すれば、太陽電池の耐久性を一層高めることができる。
なお、「繊維状炭素ナノ構造体の平均直径(Av)」および「繊維状炭素ナノ構造体の直径の標準偏差(σ:標本標準偏差)」は、それぞれ、透過型電子顕微鏡を用いて無作為に選択した繊維状炭素ナノ構造体100本の直径(外径)を測定して求めることができる。そして、繊維状炭素ナノ構造体の平均直径(Av)および標準偏差(σ)は、繊維状炭素ナノ構造体の製造方法や製造条件を変更することにより調整してもよいし、異なる製法で得られた繊維状炭素ナノ構造体を複数種類組み合わせることにより調整してもよい。
そして、繊維状炭素ナノ構造体としては、前述のようにして測定した直径を横軸に、その頻度を縦軸に取ってプロットし、ガウシアンで近似した際に、正規分布を取るものが通常使用される。
更に、繊維状炭素ナノ構造体は、ラマン分光法を用いて評価した際に、Radial Breathing Mode(RBM)のピークを有することが好ましい。なお、三層以上の多層カーボンナノチューブのみからなる繊維状炭素ナノ構造体のラマンスペクトルには、RBMが存在しない。
また、繊維状炭素ナノ構造体は、ラマンスペクトルにおけるDバンドピーク強度に対するGバンドピーク強度の比(G/D比)が1以上20以下であることが好ましい。G/D比が1以上20以下であれば、太陽電池の耐久性を一層高めることができる。
更に、繊維状炭素ナノ構造体の平均直径(Av)は、2nm以上であることが好ましく、2.5nm以上であることが更に好ましく、10nm以下であることが好ましく、6nm以下であることが更に好ましい。繊維状炭素ナノ構造体の平均直径(Av)が2nm以上10nm以下であれば、太陽電池の耐久性を一層高めることができる。
また、繊維状炭素ナノ構造体は、合成時における構造体の平均長さが100μm以上であることが好ましい。なお、合成時の構造体の長さが長いほど、分散時に繊維状炭素ナノ構造体に破断や切断などの損傷が発生し易いので、合成時の構造体の平均長さは5000μm以下であることが好ましい。
そして、繊維状炭素ナノ構造体のアスペクト比(長さ/直径)は、10を超えることが好ましい。なお、繊維状炭素ナノ構造体のアスペクト比は、透過型電子顕微鏡を用いて無作為に選択した繊維状炭素ナノ構造体100本の直径および長さを測定し、直径と長さとの比(長さ/直径)の平均値を算出することにより求めることができる。
更に、繊維状炭素ナノ構造体は、複数の微小孔を有することが好ましい。繊維状炭素ナノ構造体は、中でも、孔径が2nmよりも小さいマイクロ孔を有するのが好ましく、その存在量は、下記の方法で求めたマイクロ孔容積で、好ましくは0.40mL/g以上、より好ましくは0.43mL/g以上、更に好ましくは0.45mL/g以上であり、上限としては、通常、0.65mL/g程度である。繊維状炭素ナノ構造体が上記のようなマイクロ孔を有することで、太陽電池の耐久性を一層高めることができる。なお、マイクロ孔容積は、例えば、繊維状炭素ナノ構造体の調製方法および調製条件を適宜変更することで調整することができる。
ここで、「マイクロ孔容積(Vp)」は、繊維状炭素ナノ構造体の液体窒素温度(77K)での窒素吸脱着等温線を測定し、相対圧P/P0=0.19における窒素吸着量をVとして、式(I):Vp=(V/22414)×(M/ρ)より、算出することができる。なお、Pは吸着平衡時の測定圧力、P0は測定時の液体窒素の飽和蒸気圧であり、式(I)中、Mは吸着質(窒素)の分子量28.010、ρは吸着質(窒素)の77Kにおける密度0.808g/cmである。マイクロ孔容積は、例えば、「BELSORP(登録商標)−mini」(日本ベル(株)製)を使用して求めることができる。
そして、上述した性状を有し、触媒層に使用する繊維状炭素ナノ構造体として好適に使用し得るCNTを含む繊維状炭素ナノ構造体は、例えば、カーボンナノチューブ製造用の触媒層(CNT製造用触媒層)を表面に有する基材上に、原料化合物およびキャリアガスを供給して、化学的気相成長法(CVD法)によりCNTを合成する際に、系内に微量の酸化剤(触媒賦活物質)を存在させることで、CNT製造用触媒層の触媒活性を飛躍的に向上させるという方法(スーパーグロース法;国際公開第2006/011655号参照)において、基材表面へのCNT製造用触媒層の形成をウェットプロセスにより行うことで、効率的に製造することができる。なお、以下では、スーパーグロース法により得られるカーボンナノチューブを「SGCNT」と称することがある。
なお、スーパーグロース法により製造した繊維状炭素ナノ構造体は、SGCNTのみから構成されていてもよいし、SGCNTと、導電性を有する非円筒形状の炭素ナノ構造体とから構成されていてもよい。具体的には、繊維状炭素ナノ構造体には、内壁同士が近接または接着したテープ状部分を全長に亘って有する単層または多層の扁平筒状の炭素ナノ構造体(上述したGNT)が含まれていてもよい。
ここで、GNTは、その合成時から内壁同士が近接または接着したテープ状部分が全長に亘って形成されており、炭素の六員環ネットワークが扁平筒状に形成された物質であると推定される。そして、GNTの形状が扁平筒状であり、かつ、GNT中に内壁同士が近接または接着したテープ状部分が存在していることは、例えば、GNTとフラーレン(C60)とを石英管に密封し、減圧下で加熱処理(フラーレン挿入処理)して得られるフラーレン挿入GNTを透過型電子顕微鏡(TEM)で観察すると、GNT中にフラーレンが挿入されない部分(テープ状部分)が存在していることから確認することができる。
そして、GNTの形状は、幅方向中央部にテープ状部分を有する形状であることが好ましく、延在方向(軸線方向)に直行する断面の形状が、断面長手方向の両端部近傍における、断面長手方向に直交する方向の最大寸法が、いずれも、断面長手方向の中央部近傍における、断面長手方向に直交する方向の最大寸法よりも大きい形状であることがより好ましく、ダンベル状であることが特に好ましい。
ここで、GNTの断面形状において、「断面長手方向の中央部近傍」とは、断面の長手中心線(断面の長手方向中心を通り、長手方向線に直交する直線)から、断面の長手方向幅の30%以内の領域をいい、「断面長手方向の端部近傍」とは、「断面長手方向の中央部近傍」の長手方向外側の領域をいう。
なお、非円筒形状の炭素ナノ構造体としてGNTを含む繊維状炭素ナノ構造体は、触媒層を表面に有する基材を用いてスーパーグロース法によりCNTを合成する際に、触媒層を表面に有する基材(以下、「触媒基材」と称することがある。)を所定の方法で形成することにより、得ることができる。具体的には、GNTを含む繊維状炭素ナノ構造体は、アルミニウム化合物を含む塗工液Aを基材上に塗布し、塗布した塗工液Aを乾燥して基材上にアルミニウム薄膜(触媒担持層)を形成した後、アルミニウム薄膜の上に、鉄化合物を含む塗工液Bを塗布し、塗布した塗工液Bを温度50℃以下で乾燥してアルミニウム薄膜上に鉄薄膜(触媒層)を形成することで得た触媒基材を用いてスーパーグロース法によりCNTを合成することで得ることができる。
[触媒層の性状]
触媒層が繊維状炭素ナノ構造体を含む場合、金属を含まないものであっても、充分な活性を有する。したがって、触媒層は、必ずしも金属を含まないものであってもよいが、ナノサイズの微量な白金等を担持した繊維状炭素ナノ構造体を含んでいてもよい。その場合、触媒効果の向上が期待される。カーボンナノチューブ等の繊維状炭素ナノ構造体への金属の担持は公知の方法に従って行うことができる。
ここで、触媒層の厚みの平均値は、0.5μm以上3.0μm以下であることが必要であり、1.0μm以上であることが好ましく、1.5μm以上であることがより好ましく、2.5μm以下であることが好ましい。触媒層の厚みの平均値が0.5μmを下回ると、触媒層の表面積不足で太陽電池の光電変換効率が低下する。一方、触媒層の厚みの平均値が3.0μmを超えると、電解液浸透時などに触媒層が脆くなり、太陽電池の耐久性が低下する。したがって、触媒層の厚みの平均値が上述の範囲外であると、太陽電池の光電変換効率および/または耐久性を確保することができない。
また、触媒層の厚みの標準偏差は0.2μm以下であることが必要であり、0.15μm以下であることが好ましい。触媒層の厚みの標準偏差が0.2μmを超えると、電極の短絡の可能性が高くなり、太陽電池の耐久性を確保することができない。なお、触媒層の厚みの標準偏差は、通常、0.03μm以上である。
そして、触媒層の厚みの最大値と最小値の差が、触媒層の厚みの平均値の50%以下であることが好ましく、40%以下であることがより好ましく、30%以下であることが更に好ましく、20%以下であることが特に好ましい。触媒層の厚みの最大値と最小値の差が、厚みの平均値の50%以下であれば、短絡の可能性を更に低下させ、太陽電池の耐久性を一層向上させることができる。なお、触媒層の厚みの最大値と最小値の差は、通常、触媒層の厚みの平均値の1%以上である。
なお、「触媒層の厚みの平均値」、「触媒層の厚みの標準偏差(標本標準偏差)」、「触媒層の厚みの最大値と最小値の差」は、触媒層の、無作為に選択した100箇所の厚みを測定して求めることができる。
また、触媒層に含まれる繊維状炭素ナノ構造体の量は、0.1mg/m以上であることが好ましく、1mg/m以上であることがより好ましく、20000mg/m以下であることが好ましく、5000mg/m以下であることがより好ましい。繊維状炭素ナノ構造体の含有量を上述の範囲内である触媒層を用いれば、太陽電池の光電変換効率を高めることができる。
<太陽電池用電極の製造方法>
本発明の太陽電池用電極を製造する方法は、特に限定されない。例えば、触媒層に繊維状炭素ナノ構造体を含む太陽電池用電極は、繊維状炭素ナノ構造体を含む分散液を支持体上に塗布する工程(塗布工程)と、塗布した繊維状炭素ナノ構造体を含む分散液を乾燥させて触媒層を形成する工程(触媒層形成工程)を経て製造することができる。
[繊維状炭素ナノ構造体を含む分散液]
繊維状炭素ナノ構造体を含む分散液(繊維状炭素ナノ構造体分散液)は、既知の分散処理方法を使用し、好ましくは分散剤の存在下において、繊維状炭素ナノ構造体を溶媒中に分散させることで調製することができる。中でも、繊維状炭素ナノ構造体を良好に分散させ、分散性に優れる繊維状炭素ナノ構造体分散液を用いて触媒層を良好に形成する観点からは、溶媒中に繊維状炭素ナノ構造体および任意に分散剤を添加してなる粗分散液をキャビテーション効果または解砕効果が得られる分散処理に供し、繊維状炭素ナノ構造体分散液を調製することが好ましい。
−溶媒−
ここで、繊維状炭素ナノ構造体分散液の溶媒(繊維状炭素ナノ構造体の分散媒)としては、特に限定されることなく、例えば、水、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、アミルアルコールなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル類、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド系極性有機溶媒、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、オルトジクロロベンゼン、パラジクロロベンゼンなどの芳香族炭化水素類などが挙げられる。これらは1種類のみを単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
−分散剤−
また、繊維状炭素ナノ構造体分散液の調製に用いる分散剤としては、繊維状炭素ナノ構造体を分散可能であり、繊維状炭素ナノ構造体を分散させる溶媒に溶解可能であれば、特に限定されることなく、アニオン系、ノニオン系、カチオン系、ベタイン系など界面活性剤、合成高分子または天然高分子を用いることができる。
そして、界面活性剤としては、例えば、ドデシルスルホン酸ナトリウム、デオキシコール酸ナトリウム、コール酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどが挙げられる。
また、合成高分子としては、例えば、ポリエーテルジオール、ポリエステルジオール、ポリカーボネートジオール、ポリビニルアルコール、部分けん化ポリビニルアルコール、アセトアセチル基変性ポリビニルアルコール、アセタール基変性ポリビニルアルコール、ブチラール基変性ポリビニルアルコール、シラノール基変性ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン−ビニルアルコール−酢酸ビニル共重合樹脂、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、アクリル系樹脂、エポキシ樹脂、変性エポキシ系樹脂、フェノキシ樹脂、変性フェノキシ系樹脂、フェノキシエーテル樹脂、フェノキシエステル樹脂、フッ素系樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹脂、フェノール樹脂、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドンなどが挙げられる。
更に、天然高分子としては、例えば、多糖類であるデンプン、プルラン、デキストラン、デキストリン、グアーガム、キサンタンガム、アミロース、アミロペクチン、アルギン酸、アラビアガム、カラギーナン、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、カードラン、キチン、キトサン、セルロース、並びに、その塩または誘導体が挙げられる。
これらの分散剤は、1種または2種以上を混合して用いることができる。また分散剤は、特に限定されないが、繊維状炭素ナノ構造体100質量部に対し、通常10〜2000質量部を用いることができる。
−粗分散液−
粗分散液は、特に限定されることなく、上述した繊維状炭素ナノ構造体と、任意に使用する上述した分散剤と、上述した溶媒とを既知の方法で混合することにより得ることができる。なお、繊維状炭素ナノ構造体と、分散剤と、溶媒とは任意の順序で混合することができ、例えば、繊維状炭素ナノ構造体と、分散剤と、溶媒とを同時に混合してもよいし、分散剤と溶媒との混合溶液中に繊維状炭素ナノ構造体を添加して混合してもよい。また、粗分散液には、上述した成分以外に、繊維状炭素ナノ構造体分散液および成形体の製造に一般に用いられる添加剤を更に添加してもよい。添加剤としては、硬化剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、顔料、シリカなどの充填剤、着色剤、発泡剤、帯電防止剤、難燃剤、滑剤、軟化剤、粘着付与剤、可塑剤、離型剤、防臭剤、香料などが挙げられる。
−キャビテーション効果が得られる分散処理−
ここで、キャビテーション効果が得られる分散処理は、液体に高エネルギーを付与した際、水に生じた真空の気泡が破裂することにより生じる衝撃波を利用した分散方法である。この分散方法を用いることにより、繊維状炭素ナノ構造体を良好に分散させることができる。
そして、キャビテーション効果が得られる分散処理の具体例としては、超音波による分散処理、ジェットミルによる分散処理および高剪断撹拌による分散処理が挙げられる。これらの分散処理は一つのみを行なってもよく、複数の分散処理を組み合わせて行なってもよい。より具体的には、例えば超音波ホモジナイザー、ジェットミルおよび高剪断撹拌装置が好適に用いられる。これらの装置は従来公知のものを使用すればよい。
繊維状炭素ナノ構造体の分散に超音波ホモジナイザーを用いる場合には、粗分散液に対し、超音波ホモジナイザーにより超音波を照射すればよい。照射する時間は、繊維状炭素ナノ構造体の量等により適宜設定すればよく、例えば、3分以上が好ましく、30分以上がより好ましく、また、5時間以下が好ましく、2時間以下がより好ましい。また、例えば、出力は20W以上500W以下が好ましく、100W以上500W以下がより好ましく、温度は15℃以上50℃以下が好ましい。
また、ジェットミルを用いる場合、処理回数は、繊維状炭素ナノ構造体の量等により適宜設定すればよく、例えば、2回以上が好ましく、100回以下が好ましく、50回以下がより好ましい。また、例えば、圧力は20MPa以上250MPa以下が好ましく、温度は15℃以上50℃以下が好ましい。
さらに、高剪断撹拌を用いる場合には、粗分散液に対し、高剪断撹拌装置により撹拌および剪断を加えればよい。旋回速度は速ければ速いほどよい。例えば、運転時間(機械が回転動作をしている時間)は3分以上4時間以下が好ましく、周速は5m/秒以上50m/秒以下が好ましく、温度は15℃以上50℃以下が好ましい。
なお、上記したキャビテーション効果が得られる分散処理は、50℃以下の温度で行なうことがより好ましい。溶媒の揮発による濃度変化が抑制されるからである。
−解砕効果が得られる分散処理−
また、解砕効果が得られる分散処理は、繊維状炭素ナノ構造体を溶媒中に均一に分散できることは勿論、上記したキャビテーション効果が得られる分散処理に比べ、気泡が消滅する際の衝撃波による繊維状炭素ナノ構造体の損傷を抑制することができる点で有利である。
この解砕効果が得られる分散処理では、粗分散液にせん断力を与えて繊維状炭素ナノ構造体の凝集体を解砕・分散させ、さらに粗分散液に背圧を負荷し、また必要に応じ、粗分散液を冷却することで、気泡の発生を抑制しつつ、繊維状炭素ナノ構造体を溶媒中に均一に分散させることができる。
なお、粗分散液に背圧を負荷する場合、粗分散液に負荷した背圧は、大気圧まで一気に降圧させてもよいが、多段階で降圧することが好ましい。
ここに、粗分散液にせん断力を与えて繊維状炭素ナノ構造体をさらに分散させるには、例えば、以下のような構造の分散器を有する分散システムを用いればよい。
すなわち、分散器は、粗分散液の流入側から流出側に向かって、内径がd1の分散器オリフィスと、内径がd2の分散空間と、内径がd3の終端部と(但し、d2>d3>d1である。)、を順次備える。
そして、この分散器では、流入する高圧(例えば10〜400MPa、好ましくは50〜250MPa)の粗分散液が、分散器オリフィスを通過することで、圧力の低下を伴いつつ、高流速の流体となって分散空間に流入する。その後、分散空間に流入した高流速の粗分散液は、分散空間内を高速で流動し、その際にせん断力を受ける。その結果、粗分散液の流速が低下すると共に、繊維状炭素ナノ構造体が良好に分散する。そして、終端部から、流入した粗分散液の圧力よりも低い圧力(背圧)の流体が、繊維状炭素ナノ構造体の分散液として流出することになる。
なお、粗分散液の背圧は、粗分散液の流れに負荷をかけることで粗分散液に負荷することができ、例えば、多段降圧器を分散器の下流側に配設することにより、粗分散液に所望の背圧を負荷することができる。
そして、粗分散液の背圧を多段降圧器により多段階で降圧することで、最終的に繊維状炭素ナノ構造体の分散液を大気圧に開放した際に、分散液中に気泡が発生するのを抑制できる。
また、この分散器は、粗分散液を冷却するための熱交換器や冷却液供給機構を備えていてもよい。というのは、分散器でせん断力を与えられて高温になった粗分散液を冷却することにより、粗分散液中で気泡が発生するのをさらに抑制できるからである。
なお、熱交換器等の配設に替えて、粗分散液を予め冷却しておくことでも、繊維状炭素ナノ構造体を含む溶媒中で気泡が発生することを抑制できる。
上記したように、この解砕効果が得られる分散処理では、キャビテーションの発生を抑制できるので、時として懸念されるキャビテーションに起因した繊維状炭素ナノ構造体の損傷、特に、気泡が消滅する際の衝撃波に起因した繊維状炭素ナノ構造体の損傷を抑制することができる。加えて、繊維状炭素ナノ構造体への気泡の付着や、気泡の発生によるエネルギーロスを抑制して、繊維状炭素ナノ構造体を均一かつ効率的に分散させることができる。
以上のような構成を有する分散システムとしては、例えば、製品名「BERYU SYSTEM PRO」(株式会社美粒製)などがある。そして、解砕効果が得られる分散処理は、このような分散システムを用い、分散条件を適切に制御することで、実施することができる。
[塗布工程]
上述のようにして得られた繊維状炭素ナノ構造体分散液を支持体上に塗布する方法としては、特に限定されないが、例えば、スピンコート法、ディッピング法、ロールコート法、グラビアコート法、ナイフコート法、エアナイフコート法、ロールナイフコート法、ダイコート法、スクリーン印刷法、スプレーコート法、グラビアオフセット法などを用いることができる。これらの中でも、厚みムラが少ない(厚みの標準偏差の値が小さい)触媒層を得る観点から、スクリーン印刷法が好ましい。
そして、スクリーン印刷法においては、メタルマスクを使用することが好ましい。ここで、メタルマスクとしては、例えば、ステンレス鋼又はニッケルの薄板に、触媒層の外形および配置位置を規定する開口部を設けたものを用いることができる。メタルマスクの板厚は、所望の触媒層の厚みに応じて、触媒層の厚み以上の値を設定することができる。ここで、メタルマスクの板厚と触媒層の厚みとの差は、通常、乾燥前の塗膜の厚みと乾燥後に得られる触媒層の厚みの差に一致する。
そして、メタルマスクの板厚は、50μm以上1000μm以下であることが好ましい。メタルマスクの板厚が50μm未満であると、メタルマスク自体の耐久性が低下する。一方、メタルマスクの板厚が1000μmを超えると、繊維状炭素ナノ構造体分散液の塗布量が多くなるため、得られる触媒層中央部の厚みが低下し、厚みの標準偏差の値が高まる傾向がある。加えて、このように触媒層中央部に凹みができると、太陽電池の電池性能(光電変換効率など)が低下する。
また、メタルマスクの支持体と接する面は、樹脂塗膜やシリコン塗膜等で表面処理されていることが好ましい。このような表面処理が施されているメタルマスクを用いれば、触媒層のにじみを低減して、厚みの標準偏差の値が小さい触媒層を作製できる。
メタルマスクを使用するスクリーン印刷法では、具体的には、
(1)まず、支持体上に、所望の触媒層の形状に対応する開口部を備えるメタルマスクを配置し、
(2)次いで、配置したメタルマスクの表面上に繊維状炭素ナノ構造体分散液を供給し、
(3)そして、繊維状炭素ナノ構造体分散液が供給されたメタルマスクの表面に沿ってブレードを移動させることにより、メタルマスクの開口部に繊維状炭素ナノ構造体分散液を充填する。
上記(1)〜(3)の工程を経ることで、薄く、均一な厚みを有する塗膜を支持体上に形成することができる。メタルマスクの表面上でのブレードの移動速度は、特に限定されないが、例えば100mm/秒以上1000mm/秒以下である。
[触媒層形成工程]
塗布工程で支持体上に形成した繊維状炭素ナノ構造体分散液の塗膜を乾燥する方法としては、公知の乾燥方法を採用できる。乾燥方法としては、風乾法、熱風乾燥法、真空乾燥法、赤外線照射法等が挙げられる。乾燥温度は、特に限定されないが、通常、25℃以上200℃以下、乾燥時間は、特に限定されないが、通常、0.1分以上150分以下である。
(太陽電池)
本発明の太陽電池は、対向する2つの電極を備え、2つの電極の少なくとも1つとして、上述した本発明の太陽電池用電極を用いることを特徴とする。本発明の太陽電池は、本発明の太陽電池用電極を備えているため、耐久性に優れ、長期に亘り優れた光電変換効率を発揮することができる。
そして、太陽電池に含まれる2つの電極の支持体間の距離は、70μm以下であることが好ましく、60μm以下であることがより好ましく、50μm以下であることがさらに好ましい。支持体間距離が70μm以下であれば、太陽電池の耐久性を一層高めることができる。ここで、支持体間距離の下限は特に限定されないが、通常10μm以上である。
なお、「2つの電極の支持体間の距離」は、無作為に選択した10箇所における2つの電極の支持体間の距離を測定して、これらの値の平均値として求めることができる。
以下、太陽電池が色素増感型太陽電池である場合を例に挙げ説明するが、本発明は、色素増感型太陽電池などの有機系太陽電池に限定されず、ペロブスカイト型太陽電池などの有機無機ハイブリッド型太陽電池にも適用することができる。
<色素増感型太陽電池>
本発明の太陽電池としての色素増感型太陽電池の一例を図2に示す。
図2に示す色素増感型太陽電池は、光電極(透明電極)10、電解質層20、対向電極30がこの順に並んでなる構造を有し、対向電極30として、本発明の太陽電池用電極を用いたものである。また、矢印は電子の動きを示す。
光電極10は、光電極基板10aと、その上に形成された多孔質半導体微粒子層10bと、この多孔質半導体微粒子層の表面に増感色素が吸着されて形成された増感色素層10cとからなる。
光電極基板10aは、多孔質半導体微粒子層10b等を担持する役割と、集電体としての役割を担うものである。
光電極基板10aとしては、例えば、透明樹脂やガラスのシートよりなる支持体10dの上に、インジウム−スズ酸化物(ITO)やインジウム−亜鉛酸化物(IZO)等の複合金属酸化物;繊維状炭素ナノ構造体やグラフェン等の炭素材料;銀ナノワイヤーや金属メッシュ配線等の金属材料;などからなる導電膜10eを積層してなるものが挙げられる。
多孔質半導体微粒子層10bは、半導体微粒子を含有する多孔質状の層である。多孔質状の層であることで、増感色素の吸着量が増え、変換効率が高い色素増感型太陽電池が得られやすくなる。
半導体微粒子としては、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ等の金属酸化物の粒子が挙げられる。
半導体微粒子の粒子径(一次粒子の平均粒子径)は、好ましくは2〜80nm、より好ましくは2〜60nmである。粒子径が小さいことで、抵抗を低下させることができる。
多孔質半導体微粒子層の厚みは、特に限定されないが、通常、0.1〜50μm、好ましくは5〜30μmである。
多孔質半導体微粒子層は、プレス法、水熱分解法、泳動電着法、バインダーフリーコーティング法等の公知の方法により形成することができる。
増感色素層10cは、光によって励起されて多孔質半導体微粒子層10bに電子を渡し得る化合物(増感色素)が、多孔質半導体微粒子層10bの表面に吸着されてなる層である。
増感色素としては、シアニン色素、メロシアニン色素、オキソノール色素、キサンテン色素、スクワリリウム色素、ポリメチン色素、クマリン色素、リボフラビン色素、ペリレン色素等の有機色素;鉄、銅、ルテニウム等の金属のフタロシアニン錯体やポルフィリン錯体等の金属錯体色素;等が挙げられる。
増感色素層10cは、例えば、増感色素の溶液中に多孔質半導体微粒子層10bを浸漬する方法や、増感色素の溶液を多孔質半導体微粒子層10b上に塗布する方法等の公知の方法により形成することができる。
光電極は、図2に示すものに限定されず、光を受けることで、外部の回路40に電子を放出し得る電極であればよく、色素増感型太陽電池の光電極として公知のものを用いることができる。
電解質層20は、光電極10と対向電極30とを分離するとともに、電荷移動を効率よく行わせるための層である。
電解質層20は、通常、支持電解質、酸化還元対(酸化還元反応において可逆的に酸化体および還元体の形で相互に変換しうる一対の化学種)、溶媒等を含有する。
支持電解質としては、リチウムイオン、イミダゾリウムイオン、4級アンモニウムイオン等の陽イオンを含む塩が挙げられる。
酸化還元対としては、酸化された増感色素を還元し得るものであれば、公知のものを用いることができる。酸化還元対としては、塩素化合物−塩素、ヨウ素化合物−ヨウ素、臭素化合物−臭素、タリウムイオン(III)−タリウムイオン(I)、ルテニウムイオン(III)−ルテニウムイオン(II)、銅イオン(II)−銅イオン(I)、鉄イオン(III)−鉄イオン(II)、コバルトイオン(III)−コバルトイオン(II)、バナジウムイオン(III)−バナジウムイオン(II)、マンガン酸イオン−過マンガン酸イオン、フェリシアン化物−フェロシアン化物、キノン−ヒドロキノン、フマル酸−コハク酸等が挙げられる。
溶媒としては、太陽電池の電解質層の形成用溶媒として公知のものを用いることができる。溶媒としては、アセトニトリル、メトキシアセトニトリル、メトキシプロピオニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、エチルメチルイミダゾリウムビストリフルオロメチルスルホニルイミド、炭酸プロピレン、γ-ブチルラクトン等が挙げられる。
電解質層20は、その構成成分を含有する溶液(電解液)を光電極10上に塗布し、光電極10と対向電極30を有するセルを作製し、その隙間に電解液を注入することで形成することができる。
対向電極30は、本発明の太陽電池用電極であり、支持体30a上に形成された導電膜30cと、該導電膜30c上に形成された触媒層30bとからなる。また、触媒層30bは、上述した繊維状炭素ナノ構造体を構成材料とすることができる。
図2に示す色素増感型太陽電池においては、次のようなサイクルが繰り返されることで、光エネルギーが電気エネルギーに変換される。すなわち、(i)増感色素10cが光を受けて励起されると、増感色素10cの電子が取り出される。(ii)この電子は、光電極10から出て、外部の回路40を通って対向電極30に移動し、さらにその触媒層30bを介して、電解質層20に移動する。(iii)電解質層20に含まれる酸化還元対(還元剤)により、酸化状態の増感色素が還元され、増感色素10cが再生され、再び光を吸収できる状態に戻る。
本発明の太陽電池としての色素増感型太陽電池は、図2に示すものに限定されず、光電極、電解質層、対向電極の他に、保護層、反射防止層、ガスバリア層等の機能層を有していてもよい。
また、本発明の太陽電池は、太陽を光源とするものに限定されず、例えば屋内照明を光源とするものであってもよい。
<太陽電池モジュール>
本発明の太陽電池を直列及び/又は並列に接続することで、太陽電池モジュールとすることができる。具体的に、太陽電池モジュールは、例えば、本発明の太陽電池を平面状または曲面状に配列し、各電池間に非導電性の隔壁を設けるとともに、各電池の電極(光電極や対向電極)を導電性の部材を用いて電気的に接続することで得ることができる。
用いる太陽電池の数は特に限定されず、目的の電圧に応じて適宜決定することができる。
以下、本発明について実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、物性等の評価は、以下の方法により行った。
<触媒層の厚み>
レーザー変位計(LT−9500V、キーエンス社製)を用いて、対向電極の無作為に選択した100箇所の支持体表面と触媒層の変位の差(触媒層の厚み)を測定して、厚みの平均値、標準偏差、および最大値と最小値の差を算出した。
<支持体間距離>
多層膜厚測定器(SI−T80、キーエンス社製)を用いて、無作為に選択した10箇所における太陽電池中の2つの電極(対向電極、光電極)の支持体の間の距離を測定して、これらの平均値を算出した。
<光電変換効率>
光源として、150Wキセノンランプ光源にAM1.5Gフィルタを装着した擬似太陽光照射装置(PEC−L11型、ペクセル・テクノロジーズ社製)を用いた。光量は、1sun(AM1.5G、100mW/cm(JIS C8912のクラスA))に調整した。作製した色素増感型太陽電池をソースメータ(2400型ソースメータ、Keithley社製)に接続し、以下の電流電圧特性の測定を行なった。
1sunの光照射下、バイアス電圧を0Vから0.8Vまで0.01V単位で変化させながら出力電流を測定した。出力電流の測定は、各電圧ステップにおいて、電圧を変化させた後、0.05秒後から0.15秒後までの値を積算することで行った。バイアス電圧を、逆方向に0.8Vから0Vまで変化させる測定も行い、順方向と逆方向の測定の平均値を光電流とした。
上記の電流電圧特性の測定結果より、光電変換効率(%)を算出し、以下の基準で評価した。
A:光電変換効率が3.0%以上
B:光電変換効率が2.5%以上3.0%未満
C:光電変換効率が2.5%未満
<耐久性>
作製した色素増感型太陽電池を恒温恒湿槽(60℃、60RH%)に2日間放置した。そして、放置後の色素増感型太陽電池について、上記と同様にして、光電変換効率(%)を算出し、以下の基準で評価した。
A:光電変換効率が3.0%以上
B:光電変換効率が2.0%以上3.0%未満
C:光電変換効率が2.0%未満
(実施例1)
<繊維状炭素ナノ構造体の調製>
アルミニウム化合物であるアルミニウムトリ−sec−ブトキシド1.9gを有機溶剤としての2−プロパノール100mLに溶解させた。さらに、安定剤としてトリイソプロパノールアミン0.9gを加えて溶解させて、触媒担持層形成用の塗工液Aを調製した。
また、鉄化合物である酢酸鉄174mgを有機溶剤としての2−プロパノール100mLに溶解させた。さらに、安定剤としてトリイソプロパノールアミン190mgを加えて溶解させて、触媒層形成用の塗工液Bを調製した。
基材としてのFe−Cr合金SUS430基板(JFEスチール株式会社製、40mm×100mm、厚さ0.3mm、Cr18%、算術平均粗さRa≒0.59μm)の表面に、室温25℃、相対湿度50%の環境下で、ディップコーティングにより上述の塗工液Aを塗布した。具体的には、基材を塗工液Aに浸漬後、20秒間保持して、10mm/秒の引き上げ速度で基材を引き上げた。その後、5分間風乾し、温度300℃の空気環境下で30分間加熱後、室温まで冷却することにより、基材上に膜厚40nmのアルミナ薄膜(触媒担持層)を形成した。
次いで、室温25℃、相対湿度50%の環境下で、基材に設けられたアルミナ薄膜の上に、ディップコーティングにより上述の塗工液Bを塗布した。具体的には、アルミナ薄膜を備える基材を塗工液Bに浸漬後、20秒間保持して、3mm/秒の引き上げ速度でアルミナ薄膜を備える基材を引き上げた。その後、5分間風乾し、温度300℃の条件下で20分間加熱後、室温まで冷却することにより、膜厚3nmの鉄薄膜(CNT製造用触媒層)を形成した。このようにして、基材の上に、アルミナ薄膜、鉄薄膜をこの順に有してなる触媒基材を得た。
作製した触媒基材を、炉内温度:750℃、炉内圧力:1.02×10Paに保持されたCVD装置の反応炉内に設置し、この反応炉内に、He:100sccmおよびH:800sccmの混合ガスを10分間導入した。次いで、炉内温度:750℃、炉内圧力:1.02×10Paに保持された状態の反応炉内に、He:850sccm、エチレン:100sccmおよびHO含有He(相対湿度23%):50sccmの混合ガスを8分間供給した。
その後、反応炉内にHe:1000sccmを供給し、残余の原料ガスおよび触媒賦活物質を排除した。これにより、触媒基材上にCNTよりなる繊維状炭素ナノ構造体の集合物が得られた。そして、作製した繊維状炭素ナノ構造体の集合物を触媒基材から剥離し、CNTよりなる繊維状炭素ナノ構造体を得た。
得られた繊維状炭素ナノ構造体を評価および分析したところ、収量は1.7mg/cm、G/D比は4.5、炭素純度は99.9%であった。
また、繊維状炭素ナノ構造体のt−プロットは、上に凸な形状で屈曲していた。そして、屈曲点の位置のtは0.7nmであり、全比表面積S1は1010m/gであり、内部比表面積S2は120m/gであり、S2/S1は0.12であった。更に、得られた繊維状炭素ナノ構造体の平均直径(Av)は3.3nm、直径の標準偏差(σ)は、0.64nm、3σ/Avは0.58であった。
<対向電極の製造>
30mlのガラス容器に、水5g、エタノール1g、および上述の繊維状炭素ナノ構造体0.0025gを加えた。
このガラス容器の内容物に対して、バス型超音波洗浄機(BRANSON社製、5510J−MT(42kHz、180W)を用いて、2時間分散処理を行い、繊維状炭素ナノ構造体分散液を得た。
次に、支持体としてのインジウム−スズ酸化物(ITO)をスパッタ処理したポリエチレンナフタレートフィルム(ITO−PENフィルム、フィルム厚み:200μm、ITO厚み:200nm、シート抵抗:15Ω/□)のITO面上に、上述の繊維状炭素ナノ構造体分散液を、メタルマスクを使用したスクリーン印刷法にて塗布した。メタルマスクは板厚250μmのSUS製マスクを使用した。またブレードとしては、厚さ0.5mmのSUSブレードを使用し、500mm/秒の速度で掃引することで塗布を行った。得られた塗膜を100℃で30分乾燥させて触媒層を形成し、対向電極を得た。得られた触媒層の厚みを測定し、厚みの平均値、標準偏差、および最大値と最小値の差を算出した。結果を表1に示す。
<光電極の製造>
支持体としてのインジウム−スズ酸化物(ITO)をスパッタ処理したポリエチレンナフタレートフィルム(ITO−PENフィルム、フィルム厚み200μm、ITO厚み200nm、シート抵抗15Ω/□)のITO面上に、バインダーフリーの酸化チタンペースト(PECC−C01−06、ペクセル・テクノロジーズ社製)を、ベーカー式アプリケーターを用いて、塗布厚み150μmとなるように塗布した。得られた塗膜を常温で10分間乾燥させた後、150℃の恒温層中でさらに5分間加熱乾燥して、ITO−PENフィルムと多孔質半導体微粒子層とからなる積層体を得た。
この積層体を幅1.2cm、長さ2.0cmの大きさにカットし、さらに積層体の短辺の2mm内側より、多孔質半導体微粒子層を直径6mmの円になるように成形した。これを増感色素溶液〔増感色素:ルテニウム錯体(N719、ソラロニクス社製)、溶媒:アセトニトリル、tert−ブタノール、濃度:0.4mM〕に、40℃で2時間浸漬させることで、増感色素を多孔質半導体微粒子層に吸着させた。浸漬処理の後、積層体をアセトニトリルで洗浄し、乾燥させることで光電極を得た。
<電解液の調製>
ヨウ素0.05mol/L、ヨウ化リチウム0.1mol/L、t−ブチルピリジン0.5mol/L、および1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウムヨージド0.6mol/Lとなるように、これらをメトキシアセトニトリルに溶解して、電解液を得た。
<色素増感型太陽電池の製造>
ITO−PENフィルム(光電極基板)上に設けた多孔質半導体微粒子層(酸化チタン層)に対応する位置に電解質用孔を形成するように、光電極上に脂環式エポキシ系樹脂(スリーエム製、スコッチウェルドEW2050、硬化温度120℃)を配置した。
そして、アルミニウム製の貼り合せ用の治具の下基板に、光電極と対向電極を貼り合わせた際、4辺のうち3辺が脂環式エポキシ系樹脂で封止された光電極を置き、その上に、対向電極を重ねた。
次いで、真空下で電解液(ペクセル・テクノロジーズ(株)社製、PECE−G3)を4辺のうち1辺が空いている部分から充填し、充填後の4辺のうち残り1辺にUV硬化性樹脂(ポリイソブチレン系)を塗布し、UVを照射し硬化させて封止をした。
得られた色素増感型太陽電池の電池性能を評価した。結果を表1に示す。
(実施例2)
ITO−PENフィルムをPENフィルム(フィルム厚み200μm)に変更した以外は、実施例1と同様にして対向電極を作製し、これを用いて得られた色素増感型太陽電池の電池性能を評価した。結果を表1に示す。
(比較例1)
繊維状炭素ナノ構造体分散液を、メッシュスクリーン(メッシュ数:32、紗厚:460μm)を使用したスクリーン印刷法にて塗布した以外は、実施例1と同様にして対向電極を作製し、これを用いて得られた色素増感型太陽電池の電池性能を評価した。結果を表1に示す。
(比較例2)
繊維状炭素ナノ構造体分散液を、バーコーター(テスター産業社製、SA−203、No.10)を用いて、塗布厚み200μmとなるように塗布し得られた塗膜を、100℃で2時間乾燥させて対向電極を作製した。この対向電極を用いて得られた色素増感型太陽電池の電池性能を評価した。結果を表1に示す。
(比較例3)
実施例1で作製した対向電極の触媒層と同じ部分に、実施例1同様の繊維状炭素ナノ構造体分散液を、メタルマスクを使用したスクリーン印刷法にて重ねて塗布した以外は、実施例1と同様にして対向電極を作製した。この対向電極を用いて得られた色素増感型太陽電池の電池性能を評価した。結果を表1に示す。
Figure 2017170524
表1より、支持体上に、厚みの平均値が0.5μm以上3.0μm以下であり、且つ厚みの標準偏差が0.2μm以下である触媒層を有する対向電極を用いた実施例1〜2は、厚みの標準偏差が0.2μmを超える触媒層を有する対向電極を用いた比較例1〜2や、厚みの平均値が3.0μmを超える触媒層を有する対向電極を用いた比較例3に比して、色素増感型太陽電池の耐久性に優れることがわかる。
本発明によれば、太陽電池の耐久性を高めることが可能な太陽電池用電極を提供することができる。
また、本発明によれば、耐久性に優れる太陽電池を提供することができる。
そして、本発明によれば、太陽電池の耐久性を高めることが可能な太陽電池用電極を製造しうる、太陽電池用電極の製造方法を提供することができる。
10・・・光電極(透明電極)
10a・・・光電極基板
10b・・・多孔質半導体微粒子層
10c・・・増感色素層
10d・・・支持体
10e・・・導電膜
20・・・電解質層
30・・・対向電極
30a・・・支持体
30b・・・触媒層
30c・・・導電膜
40・・・外部の回路

Claims (9)

  1. 支持体と、前記支持体上に形成された触媒層とを備える太陽電池用電極であって、
    前記触媒層の厚みの平均値が0.5μm以上3.0μm以下であり、前記触媒層の厚みの標準偏差が0.2μm以下である、太陽電池用電極。
  2. 前記触媒層の厚みの最大値と最小値の差が、前記触媒層の厚みの平均値の50%以下である、請求項1に記載の太陽電池用電極。
  3. 前記触媒層が繊維状炭素ナノ構造体を含む、請求項1又は2に記載の太陽電池用電極。
  4. 前記繊維状炭素ナノ構造体の、吸着等温線から得られるt−プロットが上に凸な形状を示す、請求項3に記載の太陽電池用電極。
  5. 前記触媒層に含まれる前記繊維状炭素ナノ構造体の量が、0.1mg/m以上20000mg/m以下である、請求項3又は4に記載の太陽電池用電極。
  6. 前記触媒層は、メタルマスクを使用するスクリーン印刷法を用いて形成された、請求項1〜5の何れかに記載の太陽電池用電極。
  7. 対向する2つの電極を備え、前記2つの電極の少なくとも1つが、請求項1〜6の何れかに記載の太陽電池用電極である、太陽電池。
  8. 前記2つの電極の支持体間の距離が70μm以下である、請求項7に記載の太陽電池。
  9. 繊維状炭素ナノ構造体を含む分散液を、メタルマスクを使用するスクリーン印刷法により支持体上に塗布する工程と、
    塗布した繊維状炭素ナノ構造体を含む分散液を乾燥させて触媒層を形成する工程と、
    を含む、請求項3〜5の何れかに記載の太陽電池用電極の製造方法。
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