JPWO2017043090A1 - 粉末冶金用合金鋼粉の製造方法 - Google Patents

粉末冶金用合金鋼粉の製造方法 Download PDF

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Abstract

移動床炉を用いた粉末冶金用合金鋼粉の製造方法であって、煩雑な維持管理が必要となるガス分析を必要とせずに、CrおよびMnを含有する鉄基粉末を熱処理し、C含有量およびO含有量を安定して低減することができる粉末冶金用合金鋼粉の製造方法を提供する。特定の成分組成を有するアトマイズ鉄基粉末を用意し、前記アトマイズ鉄基粉末を、厚さd(mm)の充填層を形成するように移動床炉内へ供給し、前記移動床炉内に、水素含有気体を平均ガス流速v(mm/s)となるように供給し、前記アトマイズ鉄基粉末を前記移動床炉内で熱処理することによって還元し、粉末冶金用合金鋼粉とする、粉末冶金用合金鋼粉の製造方法であって、前記dおよびvが、下記の式を満足する、粉末冶金用合金鋼粉の製造方法。d/√v≦3.2(mm1/2・s1/2)

Description

本発明は、アトマイズ鉄基粉末を還元して粉末冶金用合金鋼粉とする、粉末冶金用合金鋼粉の製造方法に関し、特に、前記アトマイズ鉄基粉末が、酸化されやすい元素であるCrおよびMnを含有していても、合金鋼粉中のC(炭素)含有量およびO(酸素)含有量を効果的に下げることができる粉末冶金用合金鋼粉の製造方法に関する。
粉末冶金技術は、複雑な形状の部品を、製品形状に極めて近い形状(いわゆるニアネット形状)で、しかも高い寸法精度で製造することができる。よって、粉末冶金技術を用いて部品を作製すると、大幅な切削コストの低減が可能となる。このため、粉末冶金技術を適用した粉末冶金製品は、各種の機械用部品として、多方面に利用されている。さらに、最近では、部品の小型化、軽量化のために、粉末冶金製品の強度の向上が強く要望されており、特に、鉄基粉末冶金製品(鉄基焼結体)に対する高強度化の要求が強い。
この高強度化の要求に応じるため、粉末冶金に用いられる鉄基粉末に対して合金元素が添加される。前記合金元素としては、例えば、焼入れ性向上効果が高く、比較的安価であることから、CrやMnが使用される。
上記のような合金元素を含む粉末冶金用合金粉としては、例えば、Cr−Mo系合金鋼粉(特許文献1)、Cr−Mn−Mo系合金鋼粉(特許文献2、特許文献3)が知られている。
また、粉末冶金用鉄基粉末の製造においては、原料としての鉄基粉末中のC含有量およびO含有量を低減するために熱処理が行われる。前記熱処理は、一般的に移動床炉(moving bed furnace)を用いて連続的に実施され、前記鉄基粉末としては、アトマイズしたままの粗鉄基粉末や、ミルスケールを粗還元した粗還元鉄基粉末などの粗鉄基粉末が用いられる。そして、前記熱処理においては、粉末の用途に応じて、脱炭、脱酸、および脱窒の少なくとも1つの処理が行われる。
上記熱処理を行うための装置としては、例えば、特許文献4に記載された装置が知られている。特許文献4に記載の装置では、原料粉末の走行方向に垂直となるように設けられた仕切壁によって、移動床炉内の空間が複数に分割されている。そして、分割された各空間の上部には、雰囲気ガスを流すための流路が設けられている。熱処理は、前記流路に、原料粉末の移動方向と反対の方向に、雰囲気ガスを流しながら、連続的に行われる。
特許第3224417号公報 特許第5125158号公報 特許第5389577号公報 特公平01−40881号公報 特表2002−501123号公報 特許第4225574号公報
しかし、特許文献1〜3に記載されているような合金元素を含む粉末冶金用合金粉の製造において、C含有量やO含有量を低減するために特許文献4に記載されているような熱処理法を用いた場合、次のような問題があった。すなわち、Feに比べて酸化されやすい性質を有するCrやMnとった元素(以下、「易酸化性元素」という)が含まれている。そのため、アトマイズ法(特に水アトマイズ法)によりCrやMnを含有する鉄基粉末を製造すると、得られた鉄基粉末にはアトマイズの際にCrやMnが酸化されてできた酸化物が含まれることとなる。前記酸化物は、前記熱処理においても十分に還元されることなく残留する。また、場合によっては、熱処理の際にさらにCrやMnが酸化され、かえって酸化物の量が増加する。一般にC含有量やO含有量が多いと加圧成形時における前記合金鋼粉の圧縮性が低下するので、酸化物が多く残留するのは問題である。
そこで、特許文献5および特許文献6では、CrおよびMnなどの易酸化性元素を含む合金鋼粉の製造の際に、脱炭や脱酸を可能とする方法が提案されている。
しかし、特許文献5で提案されている処理方法では、気密性のバッチ炉を使用して、不活性ガス雰囲気下で熱処理が行われる。前記方法ではバッチ炉が用いられるため、ベルト炉を含む移動床炉を用いて連続的に熱処理を行う場合に比べて生産性が低く、したがって大量生産に不向きである。
一方、特許文献6で提案されている方法は、ベルト炉を用いて連続的に熱処理を行う方法であるため、量産に適している。しかし、前記方法では、熱処理を行う間、雰囲気ガス中のCOまたはCO2濃度、あるいは酸素ポテンシャル(O2濃度またはH2/H2O濃度比)を連続的に測定することが必須であり、さらにこれらの測定値が目標の値になるよう炉内に注入する水蒸気量を調節する必要がある。このようなガス分析のための装置を、実際に、鉄粉等を製造する工場において連続的に使用する場合、センサー部分の汚れやガス取り込み口の詰まりが発生し、測定が正常に行えなくなるという問題がある。そのため、特許文献6の方法を連続的に実施する上で、分析装置の維持管理が大きな負担となる。
本発明は、上記実状に鑑みてなされたものであり、移動床炉を用いた粉末冶金用合金鋼粉の製造方法であって、煩雑な維持管理が必要となるガス分析を必要とせずに、CrおよびMnを含有する鉄基粉末を熱処理し、C含有量およびO含有量を安定して低減することができる粉末冶金用合金鋼粉の製造方法を提供することを目的とする。
本発明の要旨構成は次のとおりである。
1.質量%で、
C :0.8%以下、
O :1.0%以下、
Mn:0.08%以下、
Cr:0.3〜3.5%、
Mo:0.1〜2%、
S :0.01%以下、および
P :0.01%以下を含有し、
残部Feおよび不可避不純物であるアトマイズ鉄基粉末を用意し、
前記アトマイズ鉄基粉末を、厚さd(mm)の充填層を形成するように移動床炉内へ供給し、
前記移動床炉内に、水素含有気体を平均ガス流速v(mm/s)となるように供給し、
前記アトマイズ鉄基粉末を前記移動床炉内で熱処理することによって還元し、粉末冶金用合金鋼粉とする、粉末冶金用合金鋼粉の製造方法であって、
前記dおよびvが、下記(1)式を満足する、粉末冶金用合金鋼粉の製造方法。

d/√v≦3.2(mm1/2・s1/2)…(1)
2.前記水素含有気体の露点を0℃以下とする、上記1に記載の粉末冶金用合金鋼粉の製造方法。
3.前記熱処理において、雰囲気温度T:1000℃以上、保持時間t:104-0.0037・T時間以上の条件で脱酸が行われる、上記1または2に記載の粉末冶金用合金鋼粉の製造方法。
本発明によれば、易酸化性元素であるCrおよびMnを含有する合金鋼粉であっても、煩雑な維持管理が必要となるガス分析を行うことなく移動床炉を用いて熱処理し、C含有量およびO含有量を安定して低減することができる。そしてその結果、低コストで、かつ加圧成形時の圧縮性に優れた合金鋼粉を製造することができる。また、本発明の製造方法によって得られる粉末冶金用合金鋼粉を用いて製造される焼結部品は、優れた強度、靭性、疲労特性などの機械的特性を有することから、粉末冶金用合金鋼粉および焼結体の用途を拡大できる。
本発明の一実施形態において用いることのできる熱処理装置の例を示す側断面図である。 特許文献4に記載された熱処理装置における温度パターンの例を示す図である。
以下、本発明を具体的に説明する。本発明においては、原料となるアトマイズ鉄基粉末を、移動床炉を用いて熱処理することによって粉末冶金用合金鋼粉(以下、単に「合金鋼粉」という場合がある)が製造される。具体的には、本発明の製造方法は、次の各処理を含む;
(1)アトマイズ鉄基粉末を用意する、
(2)前記アトマイズ鉄基粉末を、厚さd(mm)の充填層を形成するように移動床炉内へ供給する、
(3)前記移動床炉内に、水素含有気体を平均ガス流速v(mm/s)となるように供給する、および
(4)前記アトマイズ鉄基粉末を前記移動床炉内で熱処理することによって還元し、粉末冶金用合金鋼粉とする。
上記各処理は、それぞれ独立して、任意のタイミングで行うことができ、複数の処理を同時に行うこともできる。
さらに本発明では、上記処理を行う際に、充填層厚さdおよび前記平均ガス流速vが、下記(1)式を満足することが重要である。
d/√v≦3.2(mm1/2・s1/2)…(1)
以下、各処理の詳細と、上記条件の限定理由について説明する。
[アトマイズ鉄基粉末]
本発明においては、原料としてアトマイズ鉄基粉末を使用する。アトマイズ鉄基粉末の製造方法は特に限定されず、常法に従って製造することができる。なお、「アトマイズ鉄基粉末」とは、アトマイズ法によって製造された鉄基粉末を意味する。また、「鉄基粉末」とは、Feを50質量%以上含有する粉末を意味する。
前記アトマイズ鉄基粉末としては、ガスアトマイズ法によって得られるガスアトマイズ鉄基粉末と、水アトマイズ法によって得られる水アトマイズ鉄基粉末の、いずれをも使用することができる。前記ガスアトマイズ法では、窒素、アルゴンなどの不活性ガスを用いることが好ましい。ただし、ガスは水に比べて冷却能力に劣るため、ガスアトマイズ法で鉄基粉末を製造する場合には、多量のガスを使用する必要がある。そのため、量産性や製造コストの観点からは、水アトマイズ法を用いることが好ましい。また、水アトマイズ法は、通常大気が混入するような雰囲気でアトマイズが行われるため、ガスアトマイズ法に比べて製造過程における鉄基粉末の酸化が生じやすい。そのため、本発明の方法は、水アトマイズ鉄基粉末を用いる場合に特に有効である。
(成分組成)
次に、本発明においてアトマイズ鉄基粉末の成分組成を上記のように限定する理由について説明する。なお、特に断らない限り、以下の説明において「%」は「質量%」を意味するものとする。
本発明において、CおよびOは、後述する熱処理によって低減させるべき元素である。そして、最終的に得られる粉末冶金用合金鋼粉の圧縮性を向上させるという観点からは、該合金鋼粉のC含有量およびO含有量を可能な限り低減することが望ましく、具体的には、C:0.1%以下、O:0.28%以下とすることが好ましい。これらCおよびOの適正量を達成するために、本発明に従う熱処理で低減できる量を見込み、アトマイズ鉄基粉末のC含有量およびO含有量の適正範囲を以下のように定める。
C:0.8%以下
Cは、主にセメンタイトなどの析出物として、あるいは固溶状態でアトマイズ鉄基粉末中に存在する。アトマイズ鉄基粉末中のC含有量が0.8%を超えると、本発明の熱処理においてC含有量を0.1%以下まで下げることが困難となり、優れた圧縮性を有する合金粉末を得ることができない。そのため、アトマイズ鉄基粉末のC含有量を0.8%以下とする。一方、C含有量が低ければ低いほど、熱処理時のC含有量の低減(脱炭)が容易になる。そのため、C含有量の下限は特に限定されず、0%であって良く、工業的には0%超であってよい。
O:1.0%以下
Oは、主にCr酸化物やFe酸化物として鉄基粉末表面に存在する。アトマイズ鉄基粉末中のO含有量が1.0%を超えると、熱処理においてO含有量を0.28%以下まで下げることが困難となり、優れた圧縮性を有する合金粉末を得ることができない。そのため、アトマイズ鉄基粉末のO含有量を1.0%以下とする。O含有量は、0.9%以下とすることが好ましい。一方、O含有量が低ければ低いほど、熱処理時のO含有量の低減(脱酸)が容易になる。そのため、O含有量の下限は特に限定されないが、過度の低減は製造コストの増加を招くため、O含有量は0.4%以上とすることが好ましい。
また、Mn、Cr、Mo、S、およびPの含有量は、いずれも本発明の熱処理によって変化はしない。したがって、アトマイズ鉄基粉末中に含まれるこれらの元素は、熱処理後の粉末冶金用合金鋼粉中にそのまま残留する。このことを踏まえ、アトマイズ鉄基粉末におけるこれらの元素の含有量を、それぞれ以下のように規定する。
Mn:0.08%以下
Mnは、焼入性向上、固溶強化などによって、焼結体の強度を向上させる作用を有する元素である。しかし、Mn含有量が0.08%より高いと、Mn酸化物の生成量が多くなり、合金鋼粉の圧縮性が低下する。また、Mn酸化物が、焼結体内部の破壊の起点となって、疲労強度および靱性を低下させる。したがって、Mn含有量を0.08%以下とする。Mn含有量は0.07%以下とすることが好ましい。一方、Mn含有量の下限は特に限定されず、0%であってもよいが、焼結体の強度を向上させるという観点からは、0.01%以上とすることが好ましく、0.05%以上とすることがより好ましい。
Cr:0.3〜3.5%
Crは、焼入性を向上させて、焼結体の引張強度および疲労強度を向上させる作用を有する元素である。さらにCrは、焼結体の焼入れ・焼き戻しなどの熱処理後の硬さを高め、耐摩耗性を向上させる効果を有している。これらの効果を得るために、Cr含有量を0.3%以上とする。一方、Cr含有量が3.5%を超えると、Cr酸化物の生成量が多くなる。Cr酸化物は、焼結体内部の疲労破壊の起点となるため、焼結体の疲労強度を低下させる。したがって、Cr含有量を3.5%以下とする。
Mo:0.1〜2%
Moは、焼入性向上、固溶強化、析出強化などによって、焼結体の強度を向上させる作用を有する元素である。前記効果を得るために、Mo含有量を0.1%以上とする。一方、Moの含有量が2%を超えると、焼結体の靭性が低下する。したがって、Mo含有量を2%以下とする。
S:0.01%以下
本発明では、アトマイズ鉄基粉末中のMn含有量を0.08%以下としている。そのため、アトマイズ鉄基粉末に含有されているSのうち、MnSとして存在する量は少なくなり、固溶Sとして存在する量が多くなる。最終的に得られる合金鋼粉のS含有量が0.01%を超えると、固溶Sが増え、粒界強度が低下する。そのため、アトマイズ鉄基粉末の段階でのS含有量を0.01%以下とする。一方、S含有量は低ければ低いいほど、固溶Sが減るため好ましい。そのため、S含有量の下限は特に限定されず、0%であって良いが、工業的には0%超であってよい。しかし、過度の低減は製造コストの増加を招くため、S含有量は0.0005%以上とすることが好ましい。
P:0.01%以下
Mn、Sの含有量が多いときは、Pの含有量は靭性に影響を及ぼさないが、合金鋼粉のMn量が0.08%以下、S含有量が0.01%以下のときは、P含有量を0.01%以下にすることによって、粒界強度が増加し、靭性が向上する。そのため、アトマイズ鉄基粉末の段階でのP含有量を0.01%以下とする。一方、P含有量は低ければ低いほど粒界強度が増加し、靭性が向上するため好ましい。そのため、P含有量の下限は特に限定されず、0%であってよいが、工業的には0%超であってよい。しかし、過度の低減は製造コストの増加を招くため、P含有量は0.0005%以上とすることが好ましい。
本発明におけるアトマイズ鉄基粉末の成分組成は、上記元素と、残部Feおよび不可避不純物からなる。
(平均粒径)
アトマイズ鉄基粉末の平均粒径は特に限定されず、アトマイズ法によって得られた鉄基粉末であれば、任意の粒径のものを用いることができる。しかし、アトマイズ鉄基粉末の平均粒径が30μmを下回ると、アトマイズ鉄基粉末の流動性が低下し、ホッパなどを用いて移動床炉へ供給することが困難となる場合がある。また、アトマイズ鉄基粉末の平均粒径が30μmを下回ると、熱処理後の合金鋼粉の流動性も低下するため、該合金鋼粉をプレス成形する際の金型への充填の作業効率が低下する場合がある。そのため、アトマイズ鉄基粉末の平均粒径を30μm以上とすることが好ましく、40μm以上とすることがより好ましく、50μm以上とすることがさらに好ましい。
一方、アトマイズ鉄基粉末の平均粒径が120μmより大きいと、得られた合金粉末を用いて得られる焼結体に粗大な空孔が生じて焼結体の密度が低下し、強度や靭性が不足する場合がある。そのため、アトマイズ鉄基粉末の平均粒径を120μm以上とすることが好ましく、100μm以下とすることがより好ましく、90μm以下とすることがさらに好ましい。なお、ここで平均粒径とは、メジアン径(いわゆるd50、体積基準)を指すものとする。
(見掛密度)
アトマイズ鉄基粉末の見掛密度は、特に限定しないが、2.0〜3.5Mg/m3とすることが好ましく、2.4〜3.2Mg/m3とすることがより好ましい。
[移動床炉]
上記成分組成を有するアトマイズ鉄基粉末を、移動床炉に供給し、該移動床炉の移動床上に厚さd(mm)の充填層を形成する。前記移動床炉としては、アトマイズ鉄基粉末を熱処理できるものであれば任意のものを用いることができるが、搬送用のベルトを備えた移動床炉(以下、「ベルト式移動床炉」または「ベルト炉」ともいう)を用いることが好ましい。ベルト炉を用いて熱処理を行う場合には、ベルト上にアトマイズ鉄基粉末を供給して、充填層を形成することができる。アトマイズ鉄基粉末の供給は、任意の方法で行うことができるが、ホッパを用いて行うことが好ましい。また、移動床炉におけるアトマイズ鉄基粉末の搬送方向は特に限定されないが、移動床炉の入り口側から出口側へ直線的に搬送することが一般的である。なお、充填層の厚さについては後述する。
上記移動床炉の加熱方式は特に限定されず、アトマイズ鉄基粉末を加熱することができるものであれば、任意の方式を用いることができるが、雰囲気制御の観点からは、間接加熱式とすることが好ましく、ラジアントチューブを用いた加熱を用いることがより好ましい。また、マッフル炉も、間接加熱式の炉として好適に用いることができる。
[水素含有気体]
上記移動床炉には、水素含有気体が供給される。前記水素含有気体としては、水素を含有する気体であれば任意のものを用いることができる。前記水素含有気体としては、例えば、純H2ガスや、H2ガスと不活性ガスとの混合ガスなどが挙げられる。前記混合ガスとしては、H2ガスとN2ガスとの混合ガスを用いることが好ましい。アンモニアを分解して得られる、H2ガスとN2ガスとの混合ガス(いわゆるAXガス)も用いることができる。熱処理における還元、すなわち、アトマイズ鉄基粉末からの酸素の除去を効率的に進めるという観点からは、水素含有気体のH2含有量を、75%以上とすることが好ましく、90vol%以上とすることがより好ましく、100vol%(H2ガス)とすることがさらに好ましい。
前記水素含有気体は、上記移動床炉においてアトマイズ鉄基粉末の熱処理を行う間、平均ガス流速v(mm/s)となるように該移動床炉内へ供給される。水素含有気体は、移動床炉内に、原料粉末の移動方向と反対の方向に流すことが好ましい。例えば、移動床炉の一端(上流側)からアトマイズ鉄基粉末を供給し、該アトマイズ鉄基粉末をベルト等の搬送手段により該移動床炉の他端(下流側)へ搬送する場合には、水素含有気体を前記他端(下流側)から導入し、前記一端(上流側)より排気することが好ましい。そのため、移動床炉は、一端にアトマイズ鉄基粉末供給口および雰囲気ガス排出口を備え、他端に処理済みの粉末(合金鋼粉)の排出口および水素含有気体供給口を備えることが好ましい。
[熱処理]
上記のように水素含有気体を供給した状態で、前記アトマイズ鉄基粉末を前記移動床炉内で熱処理することにより、粉末冶金用合金鋼粉を得ることができる。前記熱処理により、アトマイズ鉄基粉末に含まれるCおよびOは、後述する脱炭および脱酸(還元)の反応により、除去される。
・d/√v≦3.2
本発明においては、上記熱処理を行う間、前記充填層の厚さd(mm)および平均ガス流速v(mm/s)の両者を、下記(1)式を満足するように制御する。
d/√v≦3.2(mm1/2・s1/2)…(1)
上記条件で熱処理を行うことにより、アトマイズ鉄基粉末が易酸化性の元素であるCrおよびMnを含むにもかかわらず、アトマイズ鉄基粉末に含まれるCおよびOを安定して低減することができる。そしてその結果、熱処理後の合金鋼粉におけるC含有量およびO含有量を、例えば、C≦0.1%、O≦0.28%といった極めて低い値とすることができる。以下、その理由について説明する。
アトマイズ鉄基粉末に含まれるFe、Cr、およびMnの酸化物と、雰囲気中の水素との反応(脱酸反応)は、次の(2)〜(4)式で表される。
FeO(s)+ H2(g)= Fe(s)+H2O(g)…(2)
Cr23(s)+ 3H2(g)= 2Cr(in Fe)+3H2O(g)…(3)
MnO(s)+ H2(g)= Mn(in Fe)+H2O(g)…(4)
上記反応ではH2Oガスが生成するため、脱酸反応を効率よく進めるためには、炉内雰囲気ガスの露点を、上記(2)〜(4)式の平衡反応によってきまる平衡露点よりも常に低く保つ必要がある。そのため、上記反応によって発生するH2Oガスによって雰囲気ガスの露点が上がり過ぎないように、発生するH2Oガスの量を少なくする必要がある。
そのためには、移動床炉内へ装入する鉄基粉末の量すなわち充填層厚を抑制することが考えられる。また、上記反応により発生したH2Oガスを除去する、あるいは移動床炉に導入する水素含有気体で希釈することによってH2Oガス濃度を低下させることが考えられる。そこで、本発明では、充填層厚dと、水素含有気体を炉内へ導入したときの炉内での平均ガス流速vを、上記(1)式を満たすように制御することとした。
上記(1)式を満たすように充填層厚dと平均ガス流速vを制御することにより、脱酸が効率的に進む理由については、必ずしも明確ではないものの、次のように推定される。
すなわち、移動床炉内での熱処理中、充填層の表面上部の空間には流している水素含有気体の速度境界層ができる。この速度境界層の厚さは√vに反比例することが境界層に関する理論から導かれる。また、還元反応前の水素や還元反応により発生した水蒸気の拡散速度は、速度境界層の厚さによらず一定であると考えられるので、拡散時間は速度境界層の厚さに比例する。したがって、速度境界層厚さを半分にして同じ拡散時間を与えると、充填層表面での水素の濃度は2倍に、充填層表面での水蒸気の濃度は1/2になると考えられ、そうすると、充填層の厚さを2倍にしても充填層の最下層での水素や水蒸気の濃度を同じ濃度にできると推定される。したがって、濃度を一定と仮定すれば充填層厚と速度境界層の厚さは反比例することになり、つまりは、充填層厚と√vが比例関係にあると推定される。
上記知見に基づいて検討を行った結果、熱処理において、d/√v≦3.2の条件が満たされるように充填層厚とガス流速の調整を行えば、煩雑な維持管理が必要となるガス分析装置を使わなくても、Cr23あるいはMnOを還元するための平衡露点よりも炉内雰囲気ガスの露点が低い状態が維持されることを見出した。
なお、粉末冶金用合金鋼粉におけるO含有量をさらに低減するという観点からは、d/√v≦2.8(mm1/2・s1/2)とすることがより好ましい。一方、d/√vの下限は特に限定されず、低ければ低いほどよいが、dを過度に小さくすると生産効率が低下し、また、vを過度に大きくするとコストが増大するため、0.1以上とすることが好ましく、0.3以上とすることがより好ましい。
(平均ガス流速v)
なお、本発明において、上記平均ガス流速v(mm/s)は、移動床炉に供給される水素含有気体の体積流量f(1秒当たりに供給される水素含有気体の体積)を、該移動床炉の断面積Sで割ったものと定義される。ここで、断面積とは、アトマイズ鉄基粉末の搬送方向(ベルト炉においては、ベルトの進行方法)に垂直な断面の、焼鈍炉内部の空間の面積を指すものとする。ただし、焼鈍炉の断面積が搬送方向の位置によって異なる場合には、焼鈍炉内の最も高温である位置での断面積を前記断面積Sとする。後述するように、移動床炉内に脱炭ゾーン、脱酸ゾーン、および脱窒ゾーンを設ける場合は、通常、脱酸ゾーンが最も高温であるため、脱酸ゾーンにおける断面積を前記断面積Sとして用いればよい。さらに、上記体積流量fは、前記断面積Sの測定位置での体積流量とする。すなわち、高温でガスが体積膨張することを考慮して、前記位置における温度から求められる体積膨張率を上記流量に乗じておく。
ここで、上記断面積Sの定義についてさらに説明する。上記断面積Sの算出では、炉内に存在する搬送手段、加熱手段などの構造物や、被処理物である鉄基粉末が占める面積を考慮する必要がない。すなわち、それら炉内に存在する物の面積を差し引くことなく、移動床炉の内部空間の断面積を、そのまま上記断面積Sとして用いる。
例えば、図1に示すようなラジアントチューブ型の熱処理炉の場合には、炉内には、ラジアントチューブ、ベルト、ベルトを送るためのロール(図示しない)、ベルト上に積層された鉄基粉末が存在する。しかし、これらの断面積を炉内の空間部分の断面積から差引くことは特に必要がない。炉内の空間部分の断面のなかで、ラジアントチューブやロールがない部分の方がガス流速は遅くなるが、この遅い部分の流速を制御することが特に重要であると、発明者らの試験結果から見出されたからである。また、ベルトや鉄粉の充填層厚部分の断面積は、炉の断面積全体に対しては無視できる大きさであるため、考慮する必要がない。
また、マッフル型の熱処理炉の場合には、炉内にラジアントチューブやロールは設置されないので、もとよりこれらの断面積を考慮する必要はなく、ベルトや鉄粉の充填層厚部分の断面積は、炉の断面積全体に対して無視できるため考慮する必要がないことは、ラジアントチューブ型の熱処理炉の場合と同じである。
そして、発明者らの試験結果から、上記定義に基づいて、移動床炉内に導入するガスの平均ガス流速を制御すれば、熱処理後の合金鋼粉のC含有量およびO含有量を、十分に安定して低減することができることが見出された。
(露点)
・水素含有気体の露点:0℃以下
炉内に導入する水素含有気体の露点は0℃以下とすることが好ましい。先に述べたように、熱処理での還元反応を効率よく進めるためには、雰囲気ガスの露点を、上記(2)〜(4)式で表される平衡反応から決まる平衡露点よりも低く保つ必要がある。そのため、導入される水素含有気体の露点を低くすることが好ましく、具体的には、0℃以下とすることが好ましい。
例えば、水素含有気体を、鉄基粉末の搬送方向と逆向きに流す場合には、鉄基粉末の搬送方向上流側に流れてくる水素含有気体には、反応によって生じた水蒸気が含まれており、供給時の水素含有気体よりも露点が上がっている。これを考慮して、導入される水素含有気体の露点を0℃以下と低くしておく。これにより、反応の進行に伴って露点が上昇しても、脱酸反応を十分に進行させることができる。
ここで、雰囲気温度(脱酸反応を行わせる温度)を上げれば、平衡露点は上がるので、一見、水素含有気体の露点を上げてもいいように思われる。しかし、炉内温度が上がると、それに伴って脱酸反応(還元反応)の反応速度が大きくなってH2Oの発生速度も大きくなる。すると、炉内ガスの露点も上がりやすくなる。そのため、上記のように移動床炉に導入される水素含有気体の露点を制御することが好ましい。
なお、従来のように、CrやMnといった易酸化性元素を含まない鉄基粉末では、特許文献4にあるように、露点を40℃以下とすれば問題はない。しかし、CrやMnを所定量含む鉄粉については、上式(3)および式(4)で表される脱酸反応を進めるために露点をさらに下げることが望ましく、具体的には、露点を0℃以下とすることが好ましい。
一方、脱酸反応の進みやすさの点では、水素含有気体の露点は低いほどよい。しかし、露点が低いガスは高価であり、過度に露点が低いガス使用することは製造コストの増加を招くため、通常は前記露点を−40℃以上とすることが好ましい。
上記のような低い露点を達成するためには、炉外ガスの炉内への侵入や炉内ガスの炉外への漏洩を遮断することが好ましい。そのため、上記移動床炉は、ガスの漏洩および侵入を防止するための封止手段を備えることが好ましい。前記封止手段としては、例えば、特許文献4に記載されているような水封槽(図1の15)を用いることができるが、シールロールなどの水を使わない方式とすることがより好ましい。前記封止手段は、搬送方向の上流側と下流側の両端に設けることが好ましい。
(雰囲気温度、保持時間)
さらに、上記熱処理では、雰囲気温度T:1000℃以上、保持時間t:104-0.0037・T時間以上の条件で脱酸を行うことが好ましい。言い換えれば、上記熱処理では、雰囲気温度T:1000℃以上で、保持時間t:104-0.0037・T時間以上保持する時間を設けることが好ましい。以下、その理由について説明する。
・雰囲気温度T:1000℃以上
従来のように、CrやMnといった易酸化性元素を含まない鉄基粉末を還元する場合には、還元すべき酸化物はFeOのみである。そのため、特許文献4に記載されているように脱酸ゾーンにおける雰囲気温度を700℃以上とすれば、上式(2)の平衡反応から決まる平衡露点は70℃以上と高い温度になる。このとき、導入するH2の露点を特許文献4にあるように40℃以下とすれば、十分な速度で脱酸反応(還元反応)が進むために問題は発生しなかった。
これに対して、CrやMnを含む鉄基粉末を還元する場合、平衡露点を、脱酸反応によって発生するH2Oにより上昇した露点よりも高くするために、雰囲気温度を1000℃以上とすることが好ましい。一方、雰囲気温度の上限は、特に限定されないが、装置の耐熱性能、製造コスト等を考慮すれば、1200℃程度とすることが好ましい。なお、ここで「雰囲気温度」とは、移動床炉内の鉄基粉末(充填層)の表面から直上20mmの位置で、熱電対により測定した温度とする。
・保持時間t:104-0.0037・T時間以上
保持時間tを、雰囲気温度T(℃)に応じて、104-0.0037・T時間以上とすれば、Oをより低減することができるため好ましい。なお、前記tおよびTの間の関係は、様々なTおよびtで合金鋼粉を製造する実験を行った結果から決定した。具体的には、得られた合金鋼粉のO含有量を、T−t図上へプロットし、同一酸素量を結ぶ曲線(等高線)を近似式として定めた。一方、保持時間の上限は特に限定されないが、脱酸反応完了に必要な時間以上に保持を行っても製造コストが増加するだけであるため、 前記保持時間は4時間以下とすることが好ましい。
次に、特許文献4の記載された移動床炉を用いて、本発明を実施する場合について、さらに詳細に説明する。特許文献4の記載では、連続式移動床炉を用いて、脱炭、脱酸または脱窒のうちの1種以上の処理を連続的に行い、鉄基粉末の熱処理を行うとされている。また、特許文献4の記載では、移動床炉の分割された空間を利用して、脱炭、脱酸、脱窒の各処理工程を独立させ、脱炭工程では600〜1100℃、脱酸工程では700〜1100℃、脱窒工程では450〜750℃に独立に温度制御して、鉄基粉末の熱処理を行うとされている。さらに、特許文献4では、雰囲気ガスとして、脱炭ゾーンではH2やAXガスなどの還元性ガス、または、N2やArなどの不活性ガス、脱酸ゾーンではH2やAXガスなどの還元性ガス、さらに脱窒ゾーンではH2主体のガスが用いられる、とされている。
ここで、特許文献4に記載された連続式移動床炉と同型の熱処理装置を、図1に示す。図1に示した熱処理装置100は、仕切壁1により複数のゾーン、すなわち脱炭ゾーン2、脱酸ゾーン3、脱窒ゾーン4に分割された炉体30と、炉体30の入側に設けられたホッパ8と、炉体30の入出側に設けられたホイール10と、該ホイール10により連続回転し、炉体30内の各ゾーンを巡回するベルト9と、ラジアントチューブ11と、を有する。ホッパ8から、ホイール10の連続回転により連続的に移動するベルト9上に所定の充填層厚(ベルト上に積載される粗製鉄基粉末の厚み)にて供給された粗製鉄基粉末7は、ラジアントチューブ11により適正温度に加熱された各ゾーン2,3,4を移動しながら熱処理され、脱炭、脱酸、脱窒されて製品粉13とされる。なお、製品粉13は製品タンク14に貯められる。
そして、特許文献4に記載された技術において、各ゾーンでの反応はつぎのように考えられている。 脱炭ゾーン2では、ラジアントチューブ11により雰囲気温度を600〜1100℃に制御し、脱炭ゾーン2の下流側に設けられた水蒸気吹込み口12から導入された水蒸気(H2Oガス)により、次ゾーンである脱酸ゾーン3の雰囲気ガスを露点:30〜60℃に調整しつつ、粗製鉄基粉末から脱炭を行うとしている。
脱炭ゾーン2の上流側には、雰囲気ガスの排出口6が設けられ、雰囲気ガスを装置外に排出している。なお、脱炭の反応式は、次式(I)で表される。
C(in Fe)+ H2O(g)=CO(g)+H2(g)・・・(I)
脱酸ゾーン3では、ラジアントチューブ11により雰囲気温度を700〜1100℃に制御し、脱窒ゾーン4からの雰囲気ガス(露点:40℃以下の水素ガス)を用いて、粗製鉄基粉末から脱酸を行うとしている。なお、脱酸の反応式は、次式(II)で表される。
FeO(s)+ H2(g)=Fe(s)+H2O(g)・・・(II)
脱窒ゾーン4では、ラジアントチューブ11により雰囲気温度を450〜750℃に制御し、この脱窒ゾーン4の下流側に設けられた雰囲気ガス導入口5から反応ガスである水素ガス(露点:40℃以下)を導入して、粗製鉄基粉末から脱窒するとしている。なお、脱窒の反応式は、次式(III)で表される。
N(in Fe)+ 3/2H2(g)=NH3(g)・・・(III)
水封槽15は、炉外ガスの炉内ガスへの混入や炉内ガスの炉外への漏洩を遮断する働きを果たしている。
また、特許文献4に記載されたベルト炉タイプの熱処理装置による熱処理温度パターンの典型例を図2に示す。処理される鉄基粉末は、(イ)または(ロ)に示したように、炉に入るとまず脱炭ゾーンで昇温され、続いて脱酸ゾーンで均熱され、最後に脱窒ゾーンで冷却される。鉄基粉末の流れと逆向きに導入される水素ガスは、まず脱窒ゾーンに入って昇温されながら鉄基粉末の脱窒を行い、次に脱酸ゾーンに入って一定の温度に保たれながら鉄基粉末の脱酸を行い、最後に脱炭ゾーンに所定量の水蒸気とともに入り、冷却されながら鉄基粉末の脱炭を行う。
上記のような熱処理装置を用いて本発明を実施する場合、すなわち、CrやMnなどの易酸化性元素を含む鉄基粉末を処理する場合には、これらの元素を含まない鉄基粉末を処理する場合と違って、以下の点に注意を要する。すなわち、通常、水素ガスが最後の脱炭ゾーンに入る際には上記のように所定量の水蒸気が追加導入されるが、易酸化性元素を含む鉄基粉末を処理する場合には、水蒸気を追加導入してはいけない。水蒸気を追加導入すると、易酸化性元素がますます酸化され、脱酸(還元)が完了しなくなるおそれがあるからである。また、本発明の方法では、脱酸反応で発生した水蒸気だけで脱炭が完了できるよう、前記の通りアトマイズ鉄基粉末中のC含有量を0.8%以下と定めている。そのため、水蒸気を追加導入せずとも、脱炭を完了することができる。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の例に何ら限定されるものではない。
水アトマイズ法にて、表1に示す成分組成を有するアトマイズ鉄基粉末を製造した。これらのアトマイズ鉄基粉末を、移動床炉を用いて熱処理し、解砕して粉末冶金用合金鋼粉を得た。使用したアトマイズ鉄基粉末と、熱処理条件を表2に示す。また、前記熱処理においては、前記アトマイズ鉄粉を表2に示した充填層厚さdとなるように移動床炉内へ供給し、表2に示した平均ガス流速vとなるように水素含有気体を供給しながら、連続的に熱処理を実施した。得られた粉末冶金用合金鋼粉の成分組成は表3に示した通りであった。なお、表2に示した水素含有気体の組成における%表示は、vol%を意味する。
Figure 2017043090
Figure 2017043090
Figure 2017043090
表2から分かるように、充填層厚dと平均ガス流速vが本発明の条件を満たす実施例においては、得られた合金鋼粉におけるC含有量が0.1%以下、O含有量が0.28%以下まで低減されていた。これに対して、dおよびvが本発明の条件を満たさない比較例(A5、C1、およびC2)においては、O含有量が0.28%を超えていた。
また、水素含有気体として100%H2(純水素ガス)を使用し、d/√v≦2.8(mm1/2・s1/2)である実施例においては、得られた合金鋼粉におけるC含有量が0.1%以下、O含有量が0.2%以下となっており、O含有量がより低減されていた。
また、粉末記号:B1〜B3においてはいずれもO含有量で0.28%以下が得られているが、使用した水素含有気体のH2濃度が高くなるほど低いO含有量が得られた。粉末記号:D1〜D4について見ると、露点が0℃以下であるD2〜D4において、O含有量が0.15%以下と、一段と良好な結果が得られていることが分かる。さらに、粉末記号:E1〜E3およびF1〜F3のうち、雰囲気温度が1000℃以上、かつt≧104-0.0037・Tの条件を満たすもの(粉末記号:E3、F3)は、O含有量が0.15%以下と、一段と良好な結果が得られている。
他方、J1およびK1については、アトマイズ鉄基粉末のC含有量またはO含有量が高過ぎたために、熱処理によってもC含有量またはO含有量が規定の量まで低減できていない。
1 仕切り壁
2 脱炭ゾーン
3 脱酸ゾーン
4 脱窒ゾーン
5 雰囲気ガス供給口(供給雰囲気ガス)
6 雰囲気ガス排出口(排出雰囲気ガス)
7 粗製鉄基粉末
8 ホッパ
9 ベルト
10 ホイール
11 ラジアントチューブ
12 水蒸気吹込み管
13 製品粉
14 製品タンク
15 水封槽
20 製品粉粉砕用装置
21 冷却器
22 循環ファン
30 炉体(加熱炉)
100 熱処理装置

Claims (3)

  1. 質量%で、
    C :0.8%以下、
    O :1.0%以下、
    Mn:0.08%以下、
    Cr:0.3〜3.5%、
    Mo:0.1〜2%、
    S :0.01%以下、および
    P :0.01%以下を含有し、
    残部Feおよび不可避不純物であるアトマイズ鉄基粉末を用意し、
    前記アトマイズ鉄基粉末を、厚さd(mm)の充填層を形成するように移動床炉内へ供給し、
    前記移動床炉内に、水素含有気体を平均ガス流速v(mm/s)となるように供給し、
    前記アトマイズ鉄基粉末を前記移動床炉内で熱処理することによって還元し、粉末冶金用合金鋼粉とする、粉末冶金用合金鋼粉の製造方法であって、
    前記dおよびvが、下記(1)式を満足する、粉末冶金用合金鋼粉の製造方法。

    d/√v≦3.2(mm1/2・s1/2)…(1)
  2. 前記水素含有気体の露点を0℃以下とする、請求項1に記載の粉末冶金用合金鋼粉の製造方法。
  3. 前記熱処理において、雰囲気温度T:1000℃以上、保持時間t:104-0.0037・T時間以上の条件で脱酸が行われる、請求項1または2に記載の粉末冶金用合金鋼粉の製造方法。
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