以下、添付図面を参照して、本願の開示するネジ締めシステムおよびネジ締め方法の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
図1Aは、実施形態に係るネジ締めシステムの模式説明図である。なお、これから説明するネジ締めシステムでは、ネジを締めるだけでなく、締め付けられたネジを緩める作業も行う。
また、このようなネジ締めシステムによって締緩されるネジにはボルト等も含む。ここでは、「ネジ」という呼称をボルト等のようならせん状の溝が設けられた締結部材の総称として用いる。
図1Aに示すように、ネジ締めシステム1では、ロボット70がネジ締め装置を用いてネジを締緩させる作業を行う。ネジ締め装置は、ビット駆動部11と、ビット保持部18とを備える。なお、このようなネジ締め装置は、ネジを締めるまたは緩める作業のいずれにも用いることができる。
図1Aに示すように、ビット駆動部11としては、第1ビット駆動部11aおよび第2ビット駆動部11bの2種類がある。第1ビット駆動部11aおよび第2ビット駆動部11bはいずれも、出力軸を介して軸まわりの回転駆動力をビット保持部18へと出力する。
第1ビット駆動部11aは、モータMaを備え、モータMaによる回転駆動力を直接出力する。このような第1ビット駆動部11aからは、モータMaによる回転駆動力が直に出力されるため、高回転数の回転駆動力が出力される。
一方、第2ビット駆動部11bは、モータMbと、減速機Gとを備え、モータMbによる回転駆動力を、減速機Gを介して出力する。このような第2ビット駆動部11bからは、減速機GによってモータMbの回転駆動力が減速され、高トルク(低回転数)の回転駆動力が出力される。なお、ここでは、モータMaおよびモータMbの能力は等しいものとする。
図1Aに示すように、ビット保持部18は、締緩させるネジに係合されるビット20を先端側に保持する。また、ビット保持部18は、末端側がビット駆動部11に取り付けられる。具体的には、ビット保持部18は、第1ビット駆動部11aあるいは第2ビット駆動部11bの少なくともいずれかに取り付けられる。
ビット保持部18では、第1ビット駆動部11aあるいは第2ビット駆動部11bから出力された回転駆動力が入力されると、入力された回転駆動力によってビット20が軸まわりに回転する。
図1Aに示すように、ネジ締めシステム1は、ロボット70を備える。ロボット70は、複数のアーム部を有するとともに、先端にハンド71を有する多関節のロボットである。ロボット70では、ハンド71がビット駆動部11を把持することで、ロボット70の外部軸としてネジ締め装置を備えることができる。
また、ネジ締めシステム1は、制御装置80をさらに備える。制御装置80は、ロボット70の各関節部を駆動制御する他、ハンド71によって把持された第1ビット駆動部11aのモータMaをロボット70の外部軸として駆動制御する。そのため、第1ビット駆動部11aを制御するための制御装置を別途設ける必要がない。
ところで、上述したネジ締めシステム1におけるネジ締め工程は、ネジをネジ穴に配置し、次に、ネジを着座するまで仮締めし(以下、「仮締め工程」という)、最後に、ネジを規定トルクに達するまで本締めする(以下、「本締め工程」という)という流れとなる。そして、これらの各工程は、ロボット70がネジ締め装置を用いて行う。
従来は、本締めで規定トルクを得るために、ネジの締付け(仮締め工程および本締め工程)を減速機付きのビット駆動部で行っていた。なお、ビット駆動部は、本締めで規定トルクに達する必要があるため、通常は減速機を有する。
しかし、減速機を有するビット駆動部を用いる場合、ビット駆動部から出力される回転数が遅く(低回転数)、ネジの締付けに時間がかかっていた。たとえば、出力回転数が600rpmの場合、ピッチ1mm、長さ50mmのネジのネジ締めには、5秒/本を要し、ネジを30本締める場合にかかる時間は150秒程度となる。このように、ネジの本数が多い場合は、締付けにかかる時間が長期化していた。また、ネジの締付け時間が長期化することで、組立工程全体のタクトタイムが長期化していた。
そこで、実施形態に係るネジ締めシステム1では、第1ビット駆動部11aおよび第2ビット駆動部11bをハンド71が持ち替えることとした。すなわち、上記した仮締め工程では、回転数が高い第1ビット駆動部11aを用い、本締め工程では、トルクが高い第2ビット駆動部11bを用いることとした。これにより、各工程に適した回転数やトルクでネジ締めを行うことができる。
また、ネジ締めシステム1では、ビット保持部18を第1ビット駆動部11aあるいは第2ビット駆動部11bに着脱自在に取り付けられることとした。さらに、ビット保持部18を第1ビット駆動部11aと第2ビット駆動部11bとで共用することとした。これにより、部品点数を少なくすることができる。
ここで、図1Bを参照してビット駆動部(第1ビット駆動部あるいは第2ビット駆動部)に取り付けられるビット保持部について説明する。図1Bは、ビット駆動部およびビット保持部の模式説明図である。なお、図1Bでは、ビットの種類ごとに、ビットおよびビット保持部の符号に「−番号」の形式で符番を付している。
上述したように、ビット保持部18は、第1ビット駆動部11aあるいは第2ビット駆動部11bに対して着脱自在に取り付けられる。ビット保持部18は、締緩させるネジのサイズや種類等に応じて交換可能である。
図1Bに示すように、ビット保持部18に保持されるビット20は、ネジのサイズや種類等に応じて様々である。図1Bには、ネジの呼び径(たとえば、M6,M8,M10)に対応した3種類のビット20−1,20−2,20−3を保持する3つのビット保持部18−1,18−2,18−3を例示している。
そして、第1ビット駆動部11aおよび第2ビット駆動部11bにはそれぞれ、3つのビット保持部18−1〜18−3が着脱自在に取り付けられる。すなわち、第1ビット駆動部11aおよび第2ビット駆動部11bには、3つのビット保持部18−1〜18−3が共用される。
また、ネジ締めシステム1では、ビット保持部18が、回転部と、直動部と、押圧部とを備える構成とした。ビット保持部18では、押圧部によってビット20を先端側へ押圧することで、ビット20を軸方向に移動するネジに追従させることができる。なお、このようなビット保持部18の構成については、図2A等を用いて後述する。
また、ネジ締めシステム1では、上記したように、ロボット70が、ネジの仮締めに第1ビット駆動部11aを用いるとともに、本締めに第2ビット駆動部11bを用いることとした。この場合、ネジの仮締めでは、ネジを速く締めるために高トルクよりも高回転数が好適であるので、第1ビット駆動部11aを用いる。また、本締めでは、ネジをしっかり締めるために高トルクが必要であるので、第2ビット駆動部11bを用いる。これにより、ネジの仮締めを高速で行うことができるので。ネジ締め全体にかかる時間を短縮することができる。
また、ネジ締めシステム1では、ロボット70は、ハンド71によって第1ビット駆動部11aを把持した後、第1ビット駆動部11aにビット保持部18を取り付けてネジの仮締めを行う。また、ロボット70は、第1ビット駆動部11aからビット保持部18を取り外し、ハンド71による第1ビット駆動部11aの把持を解除する。
さらに、ロボット70は、第2ビット駆動部11bを把持した後、第2ビット駆動部11bにビット保持部18を取り付けてネジの本締めを行う。すなわち、ロボット70が、第1ビット駆動部11aでネジの仮締めを行い、仮締めが終了すると、第1ビット駆動部11aから第2ビット駆動部11bに持ち替えて、第2ビット駆動部11bで本締めを行う。なお、ネジが複数ある場合には、たとえば、すべてのネジの仮締めを第1ビット駆動部11aで行った後に、第2ビット駆動部11bに持ち替えてすべてのネジの本締めを行う。このようにすることで、ネジ締め作業全体としてのタクトタイムを短縮することができる。
なお、実施形態に係るネジ締めシステム1では、ロボット70は、単腕型の多関節ロボットである。しかし、これに限定されず、ロボット70が双腕ロボットであってもよい。双腕ロボットとすることで、たとえば、一方の腕に第1ビット駆動部11aが把持され、他方の腕に第2ビット駆動部11bが把持され、ネジの仮締めを一方の腕で行い、本締めを他方の腕で行うことができる。
このように、ロボット70を双腕ロボットとすることにより、第1ビット駆動部11aから第2ビット駆動部11bへと持ち替えるのに要する時間をなくすことができる。この結果、ネジ締めにかかる時間をさらに短縮することができる。
また、実施形態に係るネジ締めシステム1では、制御装置80は、ハンド71に把持された第1ビット駆動部11aのモータMaをロボット70の外部軸として駆動制御するが、第1ビット駆動部11aの他に第2ビット駆動部11bを駆動制御してもよい。これにより、単一の制御装置80によって、ロボット70、第1ビット駆動部11a、第2ビット駆動部11bの駆動制御が可能となり、簡素な構成となる。
なお、第2ビット駆動部11bでは、ネジの本締めにおいて、トルク付与に係る精密な制御が必要となる。したがって、第2ビット駆動部11bを駆動制御するための専用制御装置81,82(図7参照)を別途設けてもよい。
以下では、図2A〜図2Cを参照してネジ締め装置について詳細に説明する。図2Aは、ネジ締め装置の正面図である。図2Bは、ネジ締め装置の右側面図である。図2Cは、図2BにあらわれるB−B線断面図である。なお、図2Bにあらわれる斜線部分は、図2AにあらわれるA−A線断面である。
また、図2A〜図2Cに示す軸AXは、ネジ締め装置10の各部の共通する軸である。また、以下の説明では、図中上側(ビット駆動部11の上端側)を末端側と称し、図中下側(ビット20の下端側)を先端側と称する場合がある。さらに、上記したように、ビット駆動部11には、第1ビット駆動部11aおよび第2ビット駆動部11b(図1A参照)の2種類があるが、以下、ビット駆動部11と総称して説明する。
図2Aおよび図2Bに示すように、ネジ締め装置10は、ビット駆動部11と、着脱部17と、ビット保持部18と、押圧部27とを備える。なお、ネジ締め装置10は、自動でネジを締め付ける(またはネジを緩めて取り外す)、いわゆるナットランナである。
図2Aおよび図2Bに示すように、ビット駆動部11は、平板状のベース12と、ベース12上面に設けられ、軸AX方向に長い筒状の筐体13とを備える。ベース12上面には、筐体13の他、着脱部17を駆動する第1の駆動源28やロボット70のハンド71(図6参照)に把持されるブロック14等が配設される。
また、筐体13の内部には、ビット駆動部11の末端側からベース12側となる先端側にかけて、モータMa,Mbや減速機G(図6参照)等が配設される。モータMa,Mbには、たとえば、サーボモータを用いる。なお、図示されるビット駆動部11の構成は、上記した第2ビット駆動部11bの構成に相当する。一方、第1ビット駆動部11aは、減速機が排除される点で、第2ビット駆動部11bと構成が相違する(図1A参照)。
図2Cに示すように、ビット駆動部11は、先端側端面、すなわち、ベース12下面から軸AXと同軸で延出する出力軸15をさらに備える。出力軸15は、モータMa,Mb(図1A参照)から出力される軸AXまわりの回転駆動力をビット保持部18へと出力する。出力軸15は、先端側が矩形軸に形成され、矩形軸となる先端側にトルク伝達軸16が同軸で連結される。
このように、ビット駆動部11は、出力軸15(トルク伝達軸16)を介してモータMa,Mb(図1A参照)からの軸AXまわりの回転駆動力をビット保持部18へと出力し、ビット保持部18に保持されるビット20を回転駆動する。
ビット駆動部11(すなわち、第2ビット駆動部11b)では、減速機Gを介してモータMb(図1A参照)からの駆動力をビット保持部18へと出力することで、ネジの締緩に必要なトルクが得られる。また、ビット駆動部11は、締緩されるネジのトルクを検出するトルク検出器TD(図6参照)を備える。
図2Aおよび図2Bに示すように、ビット駆動部11には、ベース12下面に着脱部17が設けられる。着脱部17は、ベース12下面に、ビット駆動部11に対して同軸となるようにビット保持部18を取り付ける。着脱部17は、ビット保持部18を着脱自在とする着脱機構を備える。着脱機構の詳細については、図3A、図3Bを用いて後述する。
図2Aおよび図2Bに示すように、ビット保持部18は、円筒状のハウジング19を備え、このハウジング19の先端側にビット20を保持する。
ビット20は、ネジの頭部に係合して、ネジを軸AXまわり(時計まわりまたは反時計まわり)に回転させる。上記したように、ビット20は交換可能であり、ネジの種類やサイズに応じて交換することもあれば、磨耗や劣化で新品と交換することもある。
図2Cに示すように、ビット保持部18は、ソケット21と、ジョイント24とをさらに備える。ビット保持部18は、ハウジング19の内部に配設されるソケット21およびジョイント24を介してビット20を保持する。
ソケット21は、筒状に形成され、ハウジング19の内部にこのハウジング19と同軸で配設される。ソケット21の先端側は、このソケット21と同様にハウジング19の内部に同軸で配設されるジョイント24に連結される。
ハウジング19の内周面には、軸AXに向けて突出する突出部19aが設けられる。突出部19aは、ソケット21の外周面よりも僅かに大径となるように設けられる。ソケット21は、突出部19aによって軸AX方向に沿うように規制された状態でハウジング19の内部に配設される。
ソケット21は、回転部22と直動部23とを備える。回転部22は、ソケット21の筒状本体の外周面と末端側におけるハウジング19の内周面との間に設けられる。回転部22は、軸受であり、ソケット21本体を軸AXまわりに回転可能に支持する。なお、回転部22としては、たとえば、ニードルベアリングを用いることができる。
直動部23は、ソケット21本体の内周面に設けられる。この直動部23は、ソケット21を、ソケット21の末端側から軸AX方向に挿入されるトルク伝達軸16に対して軸AX方向に直動可能とし、かつ、軸AXまわりに回転不可能とする。
トルク伝達軸16は、ビット駆動部11の出力軸15から出力される軸AXまわりの回転駆動力をビット保持部18へと伝達する。トルク伝達軸16の上面(末端側端面)には、出力軸15の矩形軸と嵌合可能な矩形凹部が設けられる。
トルク伝達軸16の外周面には、軸AX方向に伸びる溝、いわゆるスプラインが設けられる。一方、直動部23は、筒状に形成され、筒体の内周面にトルク伝達軸16のスプラインと嵌合するスプラインが設けられる。
このようなスプライン構造の直動部23によって、ソケット21は、軸AX方向の外力に倣ってこの軸AX方向に直動する。ソケット21は、外力が付与されない状態では静止する。また、ソケット21は、軸AX方向については、ビット駆動部11側から動力的に切り離される。
図2Cに示すように、ソケット21の先端側に連結されるジョイント24は、ソケット21が回転するとこれに追従して回転し、ソケット21が直動するとこれに追従して直動する。ジョイント24の先端側にはビット20が着脱可能に連結される。
ハウジング19の内周面とソケット21の外周面との間には、それぞれにビット20を軸AX方向に伸ばす場合の芯出しのテーパ部材25,25が設けられる。テーパ部材25,25は、ハウジング19の内周面およびソケット21の外周面に沿って環状に形成され、互いの傾斜面を対向させて配置される。
ハウジング19の内周面およびジョイント24の末端側外周縁のそれぞれには、ビット20を軸AX方向に縮める場合の芯出しのテーパ部26,26が設けられる。テーパ部26,26は、ハウジング19の内周面およびジョイント24の外周縁に沿って互いの傾斜面を対向させて設けられる。
また、ハウジング19の内部には、ソケット21を先端側へと押圧する押圧部27が設けられる。押圧部27は、たとえば、圧縮コイルばねであり、ソケット21の末端側に同軸で配設される。
ソケット21は、押圧部27であるばねによって、直動部23を介して先端側へと常時付勢される。すなわち、ソケット21およびジョイント24と軸AX方向に一体的に連結されるビット20は、ソケット21とジョイントとを介して押圧部27の付勢力によって先端側へと押圧される。
ここから、図3Aおよび図3Bを参照して着脱部の着脱機構について説明する。図3Aは、着脱部の着脱機構(ビット保持部の装着前)を示す断面図である。図3Bは、着脱部の着脱機構(ビット保持部の装着後)を示す断面図である。
図3Aに示すように、着脱部17は、第1の駆動源としての一対のエアシリンダ28,28を備える。一対のエアシリンダ28,28は、ビット駆動部11側となるベース12上面において軸AXの同心円上に180度の位相差で配設される。
一対のエアシリンダ28,28のそれぞれの伸縮ロッド28a,28aは、ベース12を貫通して先端側がビット保持部18側に配置される。伸縮ロッド28a,28aは、先端側がビット保持部18側でフローティングジョイント29,29に連結される。
フローティングジョイント29,29は、短筒状の円形受部30の外周面に設けられたフランジ部31に連結される。円形受部30は、軸AX方向に伸縮可能に設けられ、伸縮ロッド28a,28aの伸縮に追従して軸AX方向に伸縮する。
円形受部30には、先端側端面に円形凹部32が設けられる。円形凹部32の内周面は、拡径するように傾斜して設けられたテーパ面33である。また、円形受部30には、ビット駆動部11側からビット保持部18側まで連通する連通穴34が設けられる。
連通穴34には、筒部35が嵌入される。筒部35には、ビット保持部18の装着状態においてビット駆動部11の出力軸15が挿通される。筒部35の先端側内周縁には、拡径するようにテーパ面36が設けられる。
筒部35の内周面には、厚さ方向に貫通する貫通穴37が設けられる。貫通穴37には、鋼球38が配設される。貫通穴37の内周面側の開口径は、鋼球38の径よりも小径に形成される。鋼球38は、エアシリンダ28,28の伸縮ロッド28a,28aが縮んだ状態では、テーパ面36によって形成される空間に退避した状態にある。
一方、ビット保持部18側には、ビット保持部18の末端側端面にフランジ部39が設けられる。フランジ部39の末端側端面には、本体部11側の円形凹部32に嵌入可能な円形凸部40が設けられる。
円形凸部40の末端側端面には、本体部11側の筒部35に嵌入可能な筒部41が設けられる。筒部41の外周面には、末端側にV字溝42が設けられる。円形凸部40の側周面には、末端側端面に向けて縮径するように傾斜したテーパ面43が設けられる。
図3Bに示すように、ビット駆動部11にビット保持部18が取り付けられると、ビット駆動部11側の筒部35にビット保持部18側の筒部41が嵌入された状態となる。筒部41には、出力軸15が挿通される。出力軸15は、筒部41の内周面を経て、ハウジング19の内部に進入し、先端側がトルク伝達軸16の末端側と連結される。
このとき、ビット保持部18側の筒部41が鋼球38の位置まで到達すると、エアシリンダ28,28の駆動によって伸縮ロッド28a,28aがビット保持部18側へと伸張する。
伸縮ロッド28a,28aが伸びた状態では、貫通穴37に配設される鋼球38が連通穴34の内周面によって筒部35の内周面側に所定寸法押し出される。なお、鋼球38は、貫通穴37の内周面側の径が鋼球38の径よりも小径であることから、所定寸法以上の突出が規制される。
所定寸法突出した鋼球38は、ビット保持部18側の筒部41に設けられたV字溝42に嵌り込む。鋼球38がV字溝42に嵌り込むと、ビット駆動部11側筒部35のテーパ面36とビット保持部18側の筒部41のテーパ面43とが当接する。
これにより、鋼球38がV字溝42を押す力と、ビット駆動部11側の筒部35のテーパ面36がビット保持部18側の筒部41のテーパ面43を押す力とで、ビット保持部18がビット駆動部11にロックされる。このようないわゆるカプラ構造の着脱機構によって、ビット駆動部11に対してビット保持部18は着脱自在に取り付けられる。また、単純な動作によって容易に着脱が可能となる。
また、図示しないが、着脱部17は、ビット保持部18の装着時または装着後に、ビット駆動部11とビット保持部18とが軸AXまわりに相対回転することを防ぐための位置決め機構を備える。
着脱部17は、位置決め機構として、位置決めピンと、ブッシュとを備える。位置決めピンは、ビット駆動部11のベース13下面から先端側へと突出する軸状に形成される。また、ブッシュは、ビット保持部18のフランジ部39に設けられた貫通穴に取り付けられるとともに、位置決めピンを挿通可能に設けられる。なお、ブッシュが設けられる位置は、ビット保持部18の装着後に位置決めピンの位置と対応する位置である。
また、ビット保持部18の装着時には、出力軸15の先端側(矩形軸)とトルク伝達軸16の矩形凹部との位相が合致する必要がある。図示しないが、着脱部17は、たとえば、ドグやセンサを用いた位相合わせ機構を備える。
ここで、図2A〜図2Cに戻り、ネジの把持機構について説明する。図2Aおよび図2Bに示すように、ネジ締め装置10は、ネジ把持機構として、第2の駆動源50と、アーム52と、チャック54とをさらに備える。
図2Bに示すように、第2の駆動源としてのエアシリンダ50は、シリンダから軸AX方向に伸縮する伸縮ロッド50aを備える。伸縮ロッド50aの先端側には、ばね部51が連結される。ばね部51は、シリンダの内部にばね51aとロッド51bとを備える。なお、ばね51aとしては、たとえば、圧縮コイルばねを用いることができる。
また、エアシリンダ50とばね部51とは、軸AX方向と平行に同軸で配置される。ばね部51は、先端側において、ばね51aに付勢されたロッド51bがアーム52に連結される。
図2Aおよび図2Bに示すように、アーム52は、矩形板状に形成される。アーム52には、ビット保持部18のハウジング19側に近接するように屈曲部が設けられる。アーム52とハウジング19との間には、アーム52の軸AX方向と平行方向への直動をガイドするリニアガイド53が設けられる。
アーム52は、先端側においてチャック54のリンク部に連結される。チャック54は、一対の腕部54a,54aおよび爪部54b,54bを備える。なお、腕部54a,54aは、それぞれ複数(3つ)の軸を備える。腕部54a、爪部54bおよび軸によってリンク部が形成される。
図2Bに示すように、エアシリンダ50では、伸縮ロッド50aの伸縮によって、アーム52を介してチャック54を開閉する。ばね部51は、チャック54を開くように常時付勢する。これにより、チャック54のネジ把持時に適度なグリップ力が得られる。
なお、チャック54は、軸AXまわりに回転可能に設けられる。したがって、図2Bにおいて、チャック54は、アーム52の厚さ方向と直交する方向に開閉するが、同図において、たとえば、チャック54をアーム52の厚さ方向と平行な方向に開閉させることもできる。
ここから、図4を参照してネジ把持時の各部動作について説明する。図4は、ネジ把持時における各部動作の説明図である。なお、図4において、図の上半部には、ネジにビットを係合させた状態を示し、下半部には、そこからチャックを閉じてネジを把持した状態を示す。
図4(上半部)に示すように、ネジ締め装置10を軸AX方向に沿って先端側に移動させ、ネジ台61に設置されたネジ60に向けて近接させると(図4では、下降させると)、ビット20の先端側がネジ60の頭部(上端面)に係合される。このとき、チャック54は開いた状態である。すなわち、対向する一対の脚部54a,54aおよび爪部54b,54bの一方と他方とが離間した状態である。なお、ネジ台61に設置されたネジ60の先には図示しないネジ穴がある。
そして、図4(下半部)に示すように、ネジ締め装置10をさらに先端側に移動させると、ビット20が末端側へとネジ60の長さに応じた距離移動する。このとき、チャック54は閉じた状態となる。すなわち、対向する一対の爪部54b,54bが近接し、爪部54b,54bによってネジ60の頭部(側周面側および下面の一部)を把持した状態となる。
チャック54は、ネジ締め装置10によってネジ60を締める場合、ネジ60に係合されたビット20が、押圧部としてのばね27(図2C参照)の押圧に抗してビット保持部18の末端側にネジ60の長さ分だけ移動した状態で閉じる。また、閉じたチャック54は、ビット20がネジ60を締めるために回転を開始するまでには開く。
また、チャック54は、ネジ締め装置10によってネジを緩める場合にネジ60緩めが完了すると、ビット20が押圧部としてのばね27(図2C参照)の押圧に抗してビット保持部18の末端側にネジ60の長さ分だけ移動した状態、かつ、ビットの回転が停止した状態で閉じる。
このように、チャック54の開閉タイミングを制御することで、ネジ締め装置10によってネジ60を締めるまたは緩める場合にビット20による押圧でネジ60が飛び出すことを確実に防止することができる。
なお、チャック54を開閉させるタイミングは、後述する制御装置80(図6参照)が制御するように構成されてもよい。また、チャック54の開閉専用の制御装置を別途設け、このような制御装置によって制御するように構成されてもよい。
次に、図5を参照してネジ把持時におけるビット保持部の各部動作を説明する。図5は、ネジ把持時におけるビット保持部の断面図である。
図5に示すように、ネジ60把持時、ビット保持部18では、ハウジング19の内部においてビット20が軸AX方向に沿って末端側へと移動(直動)する。これにより、ジョイント24を介してビット20と軸AX方向に並んで一体的に連結されたソケット21が末端側へと移動する。
このとき、ソケット21は、スプライン構造の直動部23にガイドされながら直動する。ソケット21(直動部23)の末端側への移動によって、押圧部としてのばね27が圧縮され、ソケット21およびジョイント24を介して先端側のビット20を押圧する。これにより、ビット20は、ネジ60に常に押し付けられた状態となる。
このようなネジ締め装置10によれば、ビット20をビット保持部18の先端側へと常時押圧する押圧部27をビット保持部18に備えることによって、締緩されるネジ60の軸AX方向の移動にビット20を追従させることができる。これにより、これまでネジ60の軸AX方向の移動に追従させるために必要であった駆動源や伝達機構が不要となり、ビット保持部18を小径にすることができる。また、ネジ締め装置10全体としても、構造簡素で小型となる。
また、押圧部27がビット保持部18(ハウジング19)の内部に設けられることによって、ビット保持部18をさらに小径にすることができる。また、押圧部27にばねのような簡素な部材を用いることによって、ネジ締め装置10を構成簡素で小型、そして、安価にすることができる。
また、ネジ締め装置10では、着脱部17を駆動する第1の駆動源(エアシリンダ)28がビット駆動部11側に設けられるため、ビット保持部18がさらに小径となり、ネジ締め装置10としてもさらに構造簡素で小型となる。
ここから、図6を参照してネジ締めシステム1のシステム構成について説明する。図6は、ネジ締めシステム1のシステム構成図である。なお、図6には、説明を分かりやすくするために、鉛直下向きを正方向とするZ軸を含む3次元の直交座標系を図示している。
図6に示すように、ネジ締めシステム1は、上記したネジ締め装置10の他、ロボット70と、制御装置80とをさらに備える。また、ネジ締めシステム1は、ネジを締め付けるまたは緩めて外す作業台62を備える。作業台62では、ネジ台61にネジ60が設置される(図4参照)。
図6に示すように、ロボット70は、たとえば、単腕型の多関節ロボットである。具体的には、ロボット70は、上記したハンド71と、第1アーム部72と、第2アーム部73と、第3アーム部74と、第4アーム部75と、第5アーム部76と、基台部77とを備える。なお、ロボット70は、たとえば、双腕ロボットでもよい。
第1アーム部72は、基端部を第2アーム部73によって支持される。第2アーム部73は、基端部を第3アーム部74によって支持され、先端部において第1アーム部72を支持する。
第3アーム部74は、基端部を第4アーム部75によって支持され、先端部において第2アーム部73を支持する。第4アーム部75は、基端部を第5アーム部76によって支持され、先端部において第3アーム部74を支持する。
第5アーム部76は、床面等に固定された基台部77によって基端部を支持され、先端部において第4アーム部75を支持する。また、第1アーム部72〜第5アーム部76の各連結部分である各関節部にはそれぞれサーボモータ等のアクチュエータが搭載される。ロボット70は、アクチュエータの駆動によって多軸動作を行うことができる。
具体的には、第1アーム部72および第2アーム部73を連結する関節部のアクチュエータは、第1アーム部72をB軸まわりに回転させる。また、第2アーム部73および第3アーム部74を連結する関節部のアクチュエータは、第2アーム部73をU軸まわりに回転させる。
また、第3アーム部74および第4アーム部75を連結する関節部のアクチュエータは、第3アーム部74をL軸まわりに回転させる。また、第4アーム部75および第5アーム部76を連結する関節部のアクチュエータは、第4アーム部75をS軸まわりに回転させる。
また、ロボット70は、第1アーム部72をT軸まわりに、第2アーム部73をR軸まわりに、第3アーム部74をE軸まわりに、それぞれ回転させる個別のアクチュエータを備える。
すなわち、ロボット70は、7軸を有する。そして、ロボット70は、後述する制御装置80の制御部90(図8参照)からの動作指示に基づき、7軸を組み合わせた多様な多軸動作を行うことができる。
第1アーム部72の先端部は、ロボット70の先端可動部であり、この先端可動部には、ハンド71が取り付けられる。ハンド71は、ロボット70の最先端部でネジ締め装置10のブロック14(図2A等参照)を把持する。
図6に示すように、制御装置80は、いわゆるロボットコントローラであり、ロボット70のハンド71および各アーム部72〜76を含む各関節部のアクチュエータを駆動制御する。制御装置80とロボット70とは、ケーブル78等によって接続される。
また、制御装置としてのロボットコントローラ80は、第1ビット駆動部11aを駆動制御する。ロボットコントローラ80と第1ビット駆動部11aとは、ケーブル79等によって接続される。なお、第2ビット駆動部11bについては、後述する専用制御装置81,82(図7参照)が駆動制御する。
図6に示すように、2種類のビット駆動部11のうち、第1ビット駆動部11aは、モータMaを備える。また、第2ビット駆動部11bは、モータMbと、減速機Gと、トルク検出器TDとを備える。第2ビット駆動部11bでは、モータMb、減速機G、トルク検出器TDが直列に並んで配設される。
第1ビット駆動部11aまたは第2ビット駆動部11bは、いずれかがハンド71に選択的に把持される。なお、図6では、第1ビット駆動部11aが選択された例を示している。そして、選択された第1ビット駆動部11aには、ビット20を保持したビット保持部18が取り付けられる。
ここから、図7を参照してネジ締めシステムの制御構成について説明する。図7は、ネジ締めシステムの制御構成図である。図7に示すように、制御装置としてのロボットコントローラ80は、ロボット70を駆動制御するとともに、第1ビット駆動部11aを駆動制御する。なお、ロボットコントローラ80は、第2ビット駆動部11bを駆動制御することもできる。
図7に示すように、ロボットコントローラ80は、ロボット70の各関節部を駆動制御するとともに、先端関節部を介してハンド71を駆動制御する。また、ロボットコントローラ80は、ハンド71に把持された第1ビット駆動部11aを駆動制御する。詳細には、第1ビット駆動部11aのモータMaをロボット70の外部軸として駆動制御する。
また、図7に示すように、ネジ締めシステム1は、ロボットコントローラ80と第2ビット駆動部11bとの間に、第2ビット駆動部11b専用の制御装置として、プログラマブルコントローラ81およびナットランナコントローラ82をさらに備える。
上記したように、第2ビット駆動部11bは、高トルクの回転駆動力を出力するため、精密な駆動制御が必要となる。そのため、第2ビット駆動部11bは、トルク検出器TDを備える。トルク検出器TDで検出されるトルクの値は、ナットランナコントローラ82を介してプログラマブルコントローラ81へと出力される。
トルク検出器TDによって検出されるトルクが本締め工程終了を示す規定のトルクに到達すると、プログラマブルコントローラ81から第2ビット駆動部11bのモータMbへと駆動停止の信号が出力される。
図7に示すように、第2ビット駆動部11bは、ロボットコントローラ80の制御系統に含まれる。そのため、ロボットコントローラ80またはプログラマブルコントローラ81のいずれかによって第2ビット駆動部11bを駆動制御することができる。なお、その選択はユーザが適宜設定することとしてもよい。また、第2ビット駆動部11bの駆動制御をロボットコントローラ80の制御系統ではなく、プログラマブルコントローラ81による別系統の制御系統としてもよい。
このようなネジ締めシステム1では、ネジの締付け作業において、まず、ロボット70は、第1ビット駆動部11aを選択し、ハンド71によって第1ビット駆動部11aを把持する。次に、ロボット70は、ハンド71に把持された第1ビット駆動部11aに対してビット保持部18を取り付ける。なお、ビット保持部18の着脱は、ロボットコントローラ80が第1の駆動源としての一対のエアシリンダ28,28(図3A等参照)を駆動制御して行う。
そして、ロボット70は、ネジの仮締め作業を行う。仮締めが終了すると、まず、ロボット70は、第1ビット駆動部11aからビット保持部18を取り外す。次に、ロボット70は、ハンド71による第1ビット駆動部11aの把持を解除する。次に、ロボット70は、第2ビット駆動部11bを選択し、ハンド71によって第2ビット駆動部11bを把持する。すわなち、ロボット70は、第1ビット駆動部11aを第2ビット駆動部11bに持ち替える。
そして、ロボット70は、ネジの本締め作業を行う。本締めが終了、すなわち、ネジ締め作業が完了すると、ロボット70は、たとえば、次のネジ締め作業へと移行するために再び第1ビット駆動部11aに持ち替える。
ここから、図8を参照してネジ締めシステムに含まれる制御装置(ロボットコントローラ)、ロボット、第1ビット駆動部および第2ビット駆動部の内部構成について説明する。図8は、ネジ締めシステムの機能ブロック図である。なお、図8には、上記各部の内部構成の一例を示しているとともに、ネジの締付けに係る構成要素のみを示している。
図8に示すように、制御装置としてのロボットコントローラ80は、制御部90を備える。制御部90は、指示部91と、取得部92と、判定部93とを備える。指示部91は、図示しない教示部からの教示情報等に基づき、ロボット70のハンド71や各アーム部72〜76を動作させる信号を出力する。
また、指示部91は、第1ビット駆動部11aのモータ(たとえば、サーボモータ)Maへと駆動信号を出力する。第1ビット駆動部11aでは、駆動信号が入力されると、モータMaが回転する。ネジ締めシステム1では、たとえば、モータMaの出力トルクが設定値に到達したか否かを判断する。そのため、取得部92にはモータMaの出力トルクを知らせる検出信号が入力される。
取得部92は、検出信号を判定部93へと出力する。判定部93では、モータMaの出力トルクが設定値に到達すると、指示部91へと信号を出力する。指示部91では、判定部93からの信号が入力されると、モータMaへと停止信号を出力する。これにより、モータMaは停止し、ネジの仮締めが終了する。
図8に示すように、第2ビット駆動部専用の制御装置としてのプログラマブルコントローラ81は、指示部94と、取得部95と、判定部96とを備える。また、同じく、第2ビット駆動部専用の制御装置としてのナットランナコントローラ82は、指示部97を備える。
プログラマブルコントローラ81では、指示部94は、ナットランナコントローラ82の指示部97を介して第2ビット駆動部11bのモータMbへと駆動信号を出力する。第2ビット駆動部11bでは、駆動信号が入力されると、モータMbが回転する。ネジ締めシステム1では、トルク検出器TDによって検出されたトルクが規定トルクに達すると、ネジの本締めが終了する。そのため、トルク検出器TDからプログラマブルコントローラ81の取得部95へと検出トルクを知らせる検出信号が出力される。
取得部95は、検出信号を判定部96へと出力する。判定部96では、トルクが規定トルクに到達すると、指示部94へと信号を出力する。指示部94では、判定部96からの信号が入力されると、ナットランナコントローラ82の指示部97へと指示信号を出力する。ナットランナコントローラ82の指示部97は、指示信号が入力されると、モータMbへと停止信号を出力する。
これにより、モータMbは停止し、ネジの本締めが終了する。なお、プログラマブルコントローラ81の指示部94は、ロボットコントローラ80の指示部91へと本締め終了を知らせる信号を出力する。これにより、ロボット70は、たとえば、次のネジ締め作業の動作へと移ることができる。
実施形態に係るネジ締めシステム1によれば、ロボット70が、ネジの仮締めに高回転数の第1ビット駆動部11aを用いるため、ネジの仮締めを高速で行うことができる。この結果、ネジ締めにかかる時間を短縮することができる。なお、たとえば、出力回転数が3000rpmの場合、ピッチ1mm、長さ50mmのネジのネジ締めには、1秒/本を要し、ネジを30本締める場合にかかる時間は30秒程度となる。
また、ネジ締めシステム1によれば、ビット保持部18を、第1ビット駆動部11aあるいは第2ビット駆動部11bに着脱自在とするとともに、第1ビット駆動部11aと第2ビット駆動部11bとで共用することで、部品点数を少なくすることができる。
また、ネジ締めシステム1によれば、制御装置としてのロボットコントローラ80が、ハンド71に把持された第1ビット駆動部11aのモータMaをロボット70の外部軸として駆動制御するため、簡素な構成となる。
なお、上述したネジ締めシステム1では、ロボット70が、単腕型の多関節ロボットであるが、これに限定されない。ロボット70は、双腕ロボットであってもよい。双腕ロボットとすることで、たとえば、一方の腕に第1ビット駆動部11aが把持され、他方の腕に第2ビット駆動部11bが把持される。そして、ネジの仮締めを一方の腕で行い、本締めを他方の腕で行うことができる。
これにより、第1ビット駆動部11aから第2ビット駆動部11bへと持ち替えることに要する時間をなくすことができ、ネジ締めにかかる時間をさらに短縮することができる。
ここから、図9を参照してネジ締めシステムによるネジ締め方法について説明する。図9は、ネジ締め方法の手順を示すフローチャートである。以下で説明するネジ締め方法は、ネジの仮締め工程と、本締め工程とを備える。
図9に示すように、まず、ロボットは、第1ビット駆動部を選択し、ハンドによって第1ビット駆動部を把持する(ステップS101)。次に、ロボットは、ハンドによって把持された第1ビット駆動部にビット保持部を取り付ける(ステップS102)。そして、ネジの仮締めを開始する(ステップS103)。
仮締め開始後、モータMaの出力トルクが設定値に到達したか否かを判定する(ステップS104)。設定値に到達したと判定されると(ステップS104,Yes)、ネジの仮締めが終了する(ステップS105)。なお、ステップS104において、設定値に到達していないと判定されると(ステップS104,No)、設定値に到達するまでステップS104を繰り返すこととなる。
図9に示すように、ネジの仮締め工程が終了すると、ロボットは、第1ビット駆動部からビット保持部を取り外す(ステップS106)。次に、ロボットは、ハンドに把持された第1ビット駆動部の把持を解除する(ステップS107)。次に、ロボットは、第2ビット駆動部を選択し、ハンドによって第2ビット駆動部を把持する(ステップS108)。すなわち、ロボットは、第1ビット駆動部から第2ビット駆動部へと持ち替える。
次に、ロボットは、ハンドによって把持された第2ビット駆動部に、ステップS106において取り外したビット保持部を取り付ける(ステップS109)。そして、ネジの本締めを開始する(ステップS110)。
本締め開始後、トルク検出器TDからの出力値(ネジ締めトルク)が規定トルクに達したか否かを判定する(ステップS111)。規定トルクに達したと判定されると(ステップS111,Yes)、ネジの本締めが終了する(ステップS112)。これにより、ネジの本締め工程が終了する。すなわち、ネジの締付け作業が完了する。なお、ステップS111において、規定トルクに達していないと判定されると(ステップS111,No)、規定トルクに達するまでステップS111を繰り返すこととなる。
実施形態に係るネジ締め方法によれば、ロボットは、ネジの仮締めを高回転数の回転駆動力を出力する第1ビット駆動部を用いて行い、本締めを高トルク(低回転数)の回転駆動力を出力する第2ビット駆動部を用いて行う。これにより、仮締めに要する時間を大幅に短くすることができ、ネジ締めにかかる時間を短縮することができる。この結果、ネジ締付け工程を含む組立工程全体のタクトタイムを短縮することができる。
なお、上記したネジ締め方法以外の方法として、たとえば、ネジが複数ある場合には、ロボットが、第1ビット駆動部を用いてすべてのネジの仮締めを行った後に、第2ビット駆動部に持ち替えてすべてのネジを本締めするという方法がある。
また、ロボットが双腕ロボットである場合には、一方の腕に把持された第1ビット駆動部を用いてネジの仮締めを行い、他方の腕に把持された第2ビット駆動部を用いて本締めを行うという方法もある。このようなネジ締め方法によれば、第1ビット駆動部から第2ビット駆動部へと持ち替える動作を省略することができ、ネジ締めにかかる時間をさらに短縮することができる。
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。